(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】画像復号装置、画像復号方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 19/70 20140101AFI20240529BHJP
【FI】
H04N19/70
(21)【出願番号】P 2020164131
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-03-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、「多様な用途、環境下での高精細映像の活用に資する次世代映像伝送・通信技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】木谷 佳隆
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭
(72)【発明者】
【氏名】海野 恭平
【審査官】岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0373362(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0103925(US,A1)
【文献】SERIES H: AUDIOVISUAL AND MULTIMEDIA SYSTEMS Infrastructure of audiovisual services - Coding of movi,Recommendation ITU-T H.265 (06/2019) High efficiency video coding,ITU-T,2019年09月23日,pp.34-36, 74-80
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 - 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像復号装置であって、
高ビット深度のシーケンスにおいて、レンジ拡張フラグの存在の有無を示す第1フラグを復号し、前記第1フラグが有効な場合に、前記レンジ拡張フラグを復号するように構成されている復号部を備え
、
前記復号部は、所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御する第2フラグの全てが無効な場合に、前記レンジ拡張フラグを復号するように構成されていることを特徴とする画像復号装置。
【請求項2】
前記復号部は、前記
第2フラグのいずれかが有効な場合に、前記
レンジ拡張フラグを復号しないように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項3】
前記復号部は、前記レンジ拡張フラグが有効な場合に、スライスの量子化パラメータに応じて、前記所定の符号化ツールの適用の有無を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項4】
前記復号部は、前記レンジ拡張フラグが有効な場合に、前記スライスの量子化パラメータに応じて前記所定の符号化ツールの適用の有無を制御するための所定の制御データを復号するように構成されていることを特徴とする請求項
3に記載の画像復号装置。
【請求項5】
前記復号部は、前記レンジ拡張フラグが有効な場合に、ブロックの量子化パラメータに応じて、前記所定の符号化ツールの適用の有無を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項6】
前記復号部は、前記レンジ拡張フラグが有効な場合に、前記
ブロックの量子化パラメータに応じて前記所定の符号化ツールの適用の有無を制御するための所定の制御データを復号するように構成されていることを特徴とする請求項
5に記載の画像復号装置。
【請求項7】
前記所定の符号化ツールは、色差残差共同符号化(JCCR:Joint Coding of Chrome Residual)、ALF(Adaptive Loop Filter)、CC-ALF(Cross Component ALF)、SBT(Subblock Transform)及び幾何学分割マージ(GPM:Geometry Prediction Merge)の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
1~6に記載の画像復号装置。
【請求項8】
前記所定の制御データは、前記量子化パラメータによる前記所定の符号化ツールの制御の要否を判定するフラグ、前記所定の符号化ツールの制御に用いられる前記量子化パラメータの閾値、或いは、前記閾値を示すインデックスであることを特徴とする請求項
4又は6に記載の画像復号装置。
【請求項9】
画像復号方法であって、
高ビット深度のシーケンスにおいて、レンジ拡張フラグの存在の有無を示す第1フラグを復号する工程と、
前記第1フラグが有効な場合
で、且つ、所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御する第2フラグの全てが無効な場合に、前記レンジ拡張フラグを復号する工程とを有することを特徴とする画像復号方法。
【請求項10】
コンピュータを、画像復号装置として機能させるプログラムであって、
前記画像復号装置は、
高ビット深度のシーケンスにおいて、レンジ拡張フラグの存在の有無を示す第1フラグを復号し、前記第1フラグが有効な場合に、前記レンジ拡張フラグを復号するように構成されている復号部を備え
、
前記復号部は、所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御する第2フラグの全てが無効な場合に、前記レンジ拡張フラグを復号するように構成されていることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像復号装置、画像復号方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1では、シーケンス単位でそれぞれ所定の符号化ツールの適用有無を制御できるフラグが、シーケンス・パラメータ・セット(SPS:Sequence Parameter Set)のフラグとして備えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Versatile Video Coding(Draft 10)、JVET-R2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1では、上述のフラグが有効な場合、高ビット深度のシーケンスにおいて、かかるフラグが最終的にブロック単位で適用される可能性があるというという問題点があった。 そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、複雑度が大きくなりやすい高ビット深度のシーケンスにおいて、所定の符号化ツールによる複雑度の増加を回避することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴は、画像復号装置であって、高ビット深度のシーケンスにおいて、レンジ拡張フラグの存在の有無を示す第1フラグを復号し、前記第1フラグが有効な場合に、前記レンジ拡張フラグを復号するように構成されている復号部を備えることを要旨とする。
【0006】
本発明の第2の特徴は、画像復号方法であって、高ビット深度のシーケンスにおいて、レンジ拡張フラグの存在の有無を示す第1フラグを復号する工程と、前記第1フラグが有効な場合に、前記レンジ拡張フラグを復号する工程とを有することを要旨とする。
【0007】
本発明の第3の特徴は、コンピュータを、画像復号装置として機能させるプログラムであって、前記画像復号装置は、高ビット深度のシーケンスにおいて、レンジ拡張フラグの存在の有無を示す第1フラグを復号し、前記第1フラグが有効な場合に、前記レンジ拡張フラグを復号するように構成されている復号部を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複雑度が大きくなりやすい高ビット深度のシーケンスにおいて、所定の符号化ツールによる複雑度の増加を回避することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る画像処理システム1の構成の一例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る画像符号化装置100の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る画像復号装置200の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る画像復号装置200の復号部210で受信する符号化データ(ビットストリーム)の構成の一例を示す図である。
【
図5】SPS211内に含まれる制御データの一例を示す図である。
【
図6】
図5に示すSPS211内に含まれる制御データの変更例を示す図である。
【
図7】PPS212に含まれる制御データの一例を示す図である。
【
図8】
図7に示すPPS212に含まれる制御データの変更例を示す図である。
【
図9】
図6に示すSPS211内に含まれる制御データの変更例を示す図である。
【
図10】
図8に示すPPS212内に含まれる制御データの変更例を示す図である。
【
図11】
図11は、
図9に示すSPS211内に含まれる制御データの変更例を示す図である。
【
図12】
図11に示す変更例における一実施形態に係る画像復号装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図14】SPS211のレンジ拡張向けの制御データの復号処理である「sps_range_extension_flag()」の一例を示す図である。
【
図19】PPS212のレンジ拡張向けの制御データの復号処理である「pps_range_extension_flag()」の一例を示す図である。
【
図20】PPS212のレンジ拡張向けの制御データの復号処理である「pps_range_extension_flag()」の一例を示す図である。
【
図21】PPS212のレンジ拡張向けの制御データの復号処理である「pps_range_extension_flag()」の一例を示す図である。
【
図22】PPS212のレンジ拡張向けの制御データの復号処理である「pps_range_extension_flag()」の一例を示す図である。
【
図23】PPS212のレンジ拡張向けの制御データの復号処理である「pps_range_extension_flag()」の一例を示す図である。
【
図24】JCCRの信号処理に係る制御データの復号条件の一例を示す
【
図26】ALF及びCC-ALFの信号処理に係る制御データの復号条件の一例を示す。
【
図27】ALF及びCC-ALFの信号処理に係る制御データの復号条件の一例を示す。
【
図28】SBTの信号処理に係る制御データの復号条件の一例を示す
【
図29】GPMの信号処理に係る制御データの復号条件の一例を示す
【
図30】
図24~
図29に示す復号条件に基づく画像復号装置200の動作の一例について説明する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0011】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図30を参照して、本発明の第1実施形態に係る画像処理システム10について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像処理システム10について示す図である。
【0012】
(画像処理システム10)
図1に示すように、本実施形態に係る画像処理システム10は、画像符号化装置100及び画像復号装置200を有する。
【0013】
画像符号化装置100は、入力画像信号(ピクチャ)を符号化することによって符号化データを生成するように構成されている。画像復号装置200は、符号化データを復号することによって出力画像信号を生成するように構成されている。
【0014】
符号化データは、画像符号化装置100から画像復号装置200に対して伝送路を介して送信されてもよい。符号化データは、記憶媒体に格納された上で、画像符号化装置100から画像復号装置200に提供されてもよい。
【0015】
(画像符号化装置100)
以下、
図2を参照して、本実施形態に係る画像符号化装置100について説明する。
図2は、本実施形態に係る画像符号化装置100の機能ブロックの一例について示す図である。
【0016】
図2に示すように、画像符号化装置100は、インター予測部111と、イントラ予測部112と、減算器121と、加算器122と、変換・量子化部131と、逆変換・逆量子化部132と、符号化部140と、インループフィルタ処理部150と、フレームバッファ160とを有する。
【0017】
インター予測部111は、インター予測(フレーム間予測)によって予測信号を生成するように構成されている。
【0018】
具体的には、インター予測部111は、対象フレームとフレームバッファ160に格納される参照フレームとの比較によって、参照フレームに含まれる参照ブロックを特定し、特定された参照ブロックに対する動きベクトル(mv)を決定するように構成されている。
【0019】
また、インター予測部111は、参照ブロック及び動きベクトルに基づいて符号化対象ブロック(以下、対象ブロック)に含まれる予測信号を対象ブロック毎に生成するように構成されている。インター予測部111は、予測信号を減算器121及び加算器122に出力するように構成されている。ここで、参照フレームは、対象フレームとは異なるフレームである。
【0020】
イントラ予測部112は、イントラ予測(フレーム内予測)によって予測信号を生成するように構成されている。
【0021】
具体的には、イントラ予測部112は、対象フレームに含まれる参照ブロックを特定し、特定された参照ブロックに基づいて予測信号を対象ブロック毎に生成するように構成されている。また、イントラ予測部112は、予測信号を減算器121及び加算器122に出力するように構成されている。
【0022】
ここで、参照ブロックは、対象ブロックについて参照されるブロックである。例えば、参照ブロックは、対象ブロックに隣接するブロックである。
【0023】
減算器121は、入力画像信号から予測信号を減算し、予測残差信号を変換・量子化部131に出力するように構成されている。ここで、減算器121は、イントラ予測又はインター予測によって生成される予測信号と入力画像信号との差分である予測残差信号を生成するように構成されている。
【0024】
加算器122は、逆変換・逆量子化部132から出力される予測残差信号に予測信号を加算してフィルタ処理前復号信号を生成し、かかるフィルタ処理前復号信号をイントラ予測部112及びインループフィルタ処理部150に出力するように構成されている。
【0025】
ここで、フィルタ処理前復号信号は、イントラ予測部112で用いる参照ブロックを構成する。
【0026】
変換・量子化部131は、予測残差信号の変換処理を行うとともに、係数レベル値を取得するように構成されている。さらに、変換・量子化部131は、係数レベル値の量子化を行うように構成されていてもよい。
【0027】
ここで、変換処理は、予測残差信号を周波数成分信号に変換する処理である。かかる変換処理としては、離散コサイン変換(Discrete Cosine Transform、以下、DCTと記す)に対応する基底パタン(変換行列)が用いられてもよく、離散サイン変換(Discrete Sine Transform、以下、DSTと記す)に対応する基底パタン(変換行列)が用いられてもよい。
【0028】
逆変換・逆量子化部132は、変換・量子化部131から出力される係数レベル値の逆変換処理を行うように構成されている。ここで、逆変換・逆量子化部132は、逆変換処理に先立って、係数レベル値の逆量子化を行うように構成されていてもよい。
【0029】
ここで、逆変換処理及び逆量子化は、変換・量子化部131で行われる変換処理及び量子化とは逆の手順で行われる。
【0030】
符号化部140は、変換・量子化部131から出力された係数レベル値を符号化し、符号化データを出力するように構成されている。
【0031】
ここで、例えば、符号化は、係数レベル値の発生確率に基づいて異なる長さの符号を割り当てるエントロピー符号化である。
【0032】
また、符号化部140は、係数レベル値に加えて、復号処理で用いる制御データを符号化するように構成されている。
【0033】
ここで、制御データは、符号化ブロックサイズ、予測ブロックサイズ、変換ブロックサイズ等のサイズデータを含んでもよい。
【0034】
また、制御データは、後述するシーケンス・パラメータ・セット(SPS:Sequence Parameter Set)、ピクチャ・パラメータ・セット(PPS:Picutre Parameter Set)、ピクチャヘッダ(PH:Picture Header)、スライスヘッダ(SH:Slice Header)等のヘッダ情報を含んでもよい。
【0035】
インループフィルタ処理部150は、加算器122から出力されるフィルタ処理前復号信号に対してフィルタ処理を行うとともに、フィルタ処理後復号信号をフレームバッファ
160に出力するように構成されている。
【0036】
ここで、例えば、フィルタ処理は、ブロック(符号化ブロック、予測ブロック又は変換ブロック)の境界部分で生じる歪みを減少するデブロッキングフィルタ処理や画像符号化装置100から伝送されるフィルタ係数やフィルタ選択情報、画像の絵柄の局所的な性質等に基づいてフィルタを切り替える適応ループフィルタ処理である。
【0037】
フレームバッファ160は、インター予測部111で用いる参照フレームを蓄積するように構成されている。
【0038】
ここで、フィルタ処理後復号信号は、インター予測部111で用いる参照フレームを構成する。
【0039】
(画像復号装置200)
以下、
図3を参照して、本実施形態に係る画像復号装置200について説明する。
図3は、本実施形態に係る画像復号装置200の機能ブロックの一例について示す図である。
【0040】
図3に示すように、画像復号装置200は、復号部210と、逆変換・逆量子化部220と、加算器230と、インター予測部241と、イントラ予測部242と、インループフィルタ処理部250と、フレームバッファ260とを有する。
【0041】
復号部210は、画像符号化装置100によって生成される符号化データを復号し、係数レベル値を復号するように構成されている。
【0042】
ここで、復号は、例えば、符号化部140で行われるエントロピー符号化とは逆の手順のエントロピー復号である。
【0043】
また、復号部210は、符号化データの復号処理によって制御データを取得するように構成されていてもよい。なお、上述したように、制御データは、サイズデータやヘッダ情報等を含んでもよい。
【0044】
逆変換・逆量子化部220は、復号部210から出力される係数レベル値の逆変換処理を行うように構成されている。ここで、逆変換・逆量子化部220は、逆変換処理に先立って、係数レベル値の逆量子化を行うように構成されていてもよい。
【0045】
ここで、逆変換処理及び逆量子化は、変換・量子化部131で行われる変換処理及び量子化とは逆の手順で行われる。
【0046】
加算器230は、逆変換・逆量子化部220から出力される予測残差信号に予測信号を加算してフィルタ処理前復号信号を生成し、フィルタ処理前復号信号をイントラ予測部242及びインループフィルタ処理部250に出力するように構成されている。
【0047】
ここで、フィルタ処理前復号信号は、イントラ予測部242で用いる参照ブロックを構成する。
【0048】
インター予測部241は、インター予測部111と同様に、インター予測(フレーム間予測)によって予測信号を生成するように構成されている。
【0049】
具体的には、インター予測部241は、符号化データから復号した動きベクトル及び参照フレームに含まれる参照信号に基づいて予測信号を生成するように構成されている。イ
ンター予測部241は、予測信号を加算器230に出力するように構成されている。
【0050】
イントラ予測部242は、イントラ予測部112と同様に、イントラ予測(フレーム内予測)によって予測信号を生成するように構成されている。
【0051】
具体的には、イントラ予測部242は、対象フレームに含まれる参照ブロックを特定し、特定された参照ブロックに基づいて予測信号を予測ブロック毎に生成するように構成されている。イントラ予測部242は、予測信号を加算器230に出力するように構成されている。
【0052】
インループフィルタ処理部250は、インループフィルタ処理部150と同様に、加算器230から出力されるフィルタ処理前復号信号に対してフィルタ処理を行うとともに、フィルタ処理後復号信号をフレームバッファ260に出力するように構成されている。
【0053】
ここで、例えば、フィルタ処理は、ブロック(符号化ブロック、予測ブロック、変換ブロック或いはそれらを分割したサブブロック)の境界部分で生じる歪みを減少するデブロッキングフィルタ処理や、画像符号化装置100から伝送されるフィルタ係数やフィルタ選択情報や画像の絵柄の局所的な性質等に基づいてフィルタを切り替える適応ループフィルタ処理である。
【0054】
フレームバッファ260は、フレームバッファ160と同様に、インター予測部241で用いる参照フレームを蓄積するように構成されている。
【0055】
ここで、フィルタ処理後復号信号は、インター予測部241で用いる参照フレームを構成する。
【0056】
(復号部210)
以下、
図4~
図13を用いて、符号化部140で符号化され復号部210で復号される制御データについて説明する。
【0057】
図4は、復号部210で受信する符号化データ(以下、ビットストリーム)の構成の一例である。
【0058】
ビットストリームは、先頭にSPS211を含んでもよい。SPSは、シーケンス(ピクチャの集合)単位での制御データの集合である。具体例については後述する。各SPS211は、複数のSPS211が存在する場合に個々を識別するためのSPS id情報を少なくとも含む。
【0059】
また、ビットストリームは、SPS211の次に、PPS212を含んでもよい。PPS212は、ピクチャ(スライスの集合)単位での制御データの集合である。各PPS212は、複数のPPS212が存在する場合に個々を識別するためのPPS id情報を少なくとも含む。また、各PPS212は、各PPS212に対応するSPS211を指定するためのSPS id情報を少なくとも含む。
【0060】
また、ビットストリームは、PPS212の次に、ピクチャヘッダ213を含んでもよい。ピクチャヘッダ213も、ピクチャ(スライスの集合)単位での制御データの集合である。PPS212は、複数のピクチャに対して単一のPPS212を共有することができる。一方、ピクチャヘッダ213は、ピクチャ毎に必ず伝送される。ピクチャヘッダ213には、各ピクチャに対応するPPS212を指定するためのPPS id情報を少なくとも含む。
【0061】
また、ビットストリームは、ピクチャヘッダ213の次に、スライスヘッダ214Aを含んでもよい。スライスヘッダ214Aは、スライス単位での制御データの集合である。具体例については後述する。スライスヘッダ214Aは、スライスヘッダ214Aの一部として、上述のピクチャヘッダ213の情報を含むこともできる。
【0062】
また、ビットストリームは、スライスヘッダ214Aの次に、スライスデータ215Aを含んでもよい。スライスデータ214Aは、上述の係数レベル値やサイズデータ等を含んでもよい。
【0063】
以上のように、ビットストリームは、各スライスデータ215A/215Bに対して、
1つずつスライスヘッダ214A/2154、ピクチャヘッダ213、PPS212、S
PS211が対応する構成となる。
【0064】
上述のように、ピクチャヘッダ213にてどのPPS212を参照するかをPPS idで指定し、さらに、PPS212がどのSPS211を参照するかをSPS idで指定するため、複数のスライスデータ215A/215Bに対して共通のSPS211、P
PS212を用いることができる。
【0065】
言い換えると、SPS211及びPPS212は、ピクチャごと、スライスごとに、必ずしも伝送する必要がない。
【0066】
例えば、
図4に示すように、スライスヘッダ214B/215Bの直前では、SPS2
11及びPPS212を符号化しないようなビットストリームの構成とすることもできる。
【0067】
なお、
図4に示す構成は、あくまで一例である。例えば、ビットストリームが、各スライスデータ215A/215Bに対して、スライスヘッダ214B/215B、ピクチャヘッダ213、PPS212、SPS211で指定された制御データが対応する構成となっていれば、ビットストリームの構成要素として、上述以外の要素が追加されてもよい。また、同様に、伝送に際して
図4と異なる構成に整形されてもよい。
【0068】
<SPS211内に含まれる制御データの一例>
図5は、SPS211内に含まれる制御データの一例を示す。
【0069】
図5に示すように、SPS211は、上述の通り、少なくとも各SPS211を識別するためのSPS id情報 (sps_seq_parameter_set_id)を含む
。
【0070】
図5に示すように、SPS211は、かかるシーケンスの各拡張フラグの存在有無を制御するフラグ(sps_extension_present_flag)(第1フラグ)
を含んでもよい。
【0071】
例えば、sps_extension_present_flagが無効な場合(すなわ
ち、sps_extension_present_flagの値が「0」の場合)、かか
るSPS211に対応するシーケンス内で各拡張フラグが存在しないことを意味するように定義することができる。
【0072】
他方、sps_extension_present_flagが有効な場合(すなわち
、sps_extension_present_flagの値が「1」の場合)、かかる
SPS211に対応するシーケンス内で各拡張フラグが存在することを意味するように定義することができる。
【0073】
ここで、各拡張フラグとは、
図5に示すsps_range_extension_fl
agやsps_extension_flagである。なお、以降では、sps_rang
e_extension_flagのことを「レンジ拡張フラグ」とも呼称する。
【0074】
なお、上述の各拡張フラグの前に、sps_extension_present_fl
agを復号することによって、次のような効果がある。sps_extension_present_flagが有効な場合にのみ、復号部210は、上述の各拡張フラグを復号
するため、画像符号化装置100から伝送される各拡張フラグ分の符号ビットが削減される。
【0075】
図5に示すように、SPS211は、かかるシーケンスの拡張フラグの一種であるsps_range_extension_flagを含んでもよい。
【0076】
ここで、復号部210は、sps_range_extension_flagの値が「
0」の場合、後述するレンジ拡張向けの制御データの復号処理(レンジ拡張向けのシンタ
ックス構造)が存在しないと特定し、sps_range_extension_flagの値が「1」の場合、後述するレンジ拡張向けの制御データの復号処理(レンジ拡張向けのシンタックス構造)が存在すると特定するように構成されていてもよい。
【0077】
ただし、かかるSPS211に、sps_range_extension_flagが
含まれていなかった場合、復号部210は、sps_range_extension_f
lagの値を「0」とみなしてよい。
【0078】
SPS211は、かかるシーケンスの拡張フラグの一種であるsps_extensi
on_flagを含んでもよい。sps_extension_flagの値に応じた復号
制御は、非特許文献1と同様の構成とすることができるため、説明は省略する。
【0079】
以上のように、本発明の画像復号装置200では、高ビット深度のシーケンスを復号する際、sps_range_extension_flagの値を変えることで、高ビット
深度向けの制御データの復号処理(レンジ拡張向けのシンタックス構造)の存在の有無を、シーケンス単位で制御することができる。ここで、高ビット深度のシーケンスとは、例えば、10ビットより大きいビット深度値(12ビットや14ビットや16ビット等)のシーケンスである。
【0080】
<
図5に示すSPS211内に含まれる制御データの変更例>
図6は、
図5に示すSPS211内に含まれる制御データの変更例を示す。
【0081】
SPS211は、上述の通り、少なくとも各SPS211を識別するためのSPS id情報(sps_seq_parameter_set_id)を含む。
【0082】
図6に示す例では、SPS211には、
図5に示すsps_extension_present_flagが含まれず、sps_range_extension_flag及びsps_extension_flagは、常に復号される構成となっている。
【0083】
ここで、
図6に示すように、sps_range_extension_flag及びs
ps_extension_flagが常に復号されることによる効果は、次の通りである。
【0084】
図5に示す構成では、sps_range_extension_flag及びsps_extension_flagが復号される場合、sps_extension_prese
nt_flagの復号と併せて、復号が必要な符号ビットの最大長(最悪値)は、3ビッ
トである。
【0085】
他方、
図6に示す構成では、sps_range_extension_flag及びs
ps_extension_flagが常に復号されるため、復号が必要な符号ビットの最大長(最悪値)は、2ビットである。
【0086】
この結果、
図6に示す構成の場合には、高ビット深度のシーケンス、すなわち、レンジ拡張向けの制御データの復号処理を行う場合に復号が必要な各拡張フラグの符号ビットの最大長(最悪値)が削減される。
【0087】
<PPS212内に含まれる制御データの一例>
図7は、PPS212に含まれる制御データの一例を示す。
【0088】
図7に示すように、PPS212は、上述の通り、少なくとも各PPS212を識別するためのPPS id情報 (pps_pic_parameter_set_id)を含む
。また、PPS212は、上述の通り、少なくとも当該PPS212に対応するSPS211を指定するためのid情報(pps_seq_parameter_set_id)を含む。
【0089】
図7に示すように、PPS212は、かかるピクチャの各拡張フラグの存在の有無を制御するフラグ(pps_extension_present_flag)を含んでもよい
。
【0090】
例えば、pps_extension_present_flagが無効な場合(すなわ
ち、pps_extension_present_flagの値が「0」の場合)、かか
るPPS212に対応するピクチャ内で各拡張フラグが存在しないことを意味するように定義することができる。
【0091】
他方、pps_extension_present_flagが有効な場合(すなわち
、pps_extension_present_flagの値が「1」の場合)、かかる
PPS212に対応するピクチャ内で各拡張フラグが存在することを意味するように定義することができる。
【0092】
ここで、各拡張フラグとは、
図7に示すpps_range_extension_fl
ag及びpps_extension_flagである。なお、以降では、pps_ran
ge_extension_flagのことを「レンジ拡張フラグ」とも呼称する。
【0093】
なお、上述の各拡張フラグの前に、pps_extension_present_fl
agを復号することによって、次のような効果がある。pps_extension_present_flagが有効な場合にのみ、復号部210は、上述の拡張フラグを復号す
るため、画像符号化装置100から伝送される各拡張フラグ分の符号ビットが削減される。
【0094】
図7に示すように、PPS21は、かかるピクチャの拡張フラグの一種であるpps_
range_extension_flagを含んでもよい。
【0095】
ここで、復号部210は、pps_range_extension_flagの値が「
0」の場合、後述するレンジ拡張向けの制御データの復号処理(レンジ拡張向けのシンタックス構造)が存在しないと特定し、pps_range_extension_flag
の値が「1」の場合、後述するレンジ拡張向けの制御データの復号処理(レンジ拡張向けのシンタックス構造)が存在すると特定するように構成されていてもよい。
【0096】
ただし、かかるPPS212に、pps_range_extension_flagが
含まれていなかった場合、復号部210は、pps_range_extension_f
lagの値を「0」とみなしてよい。
【0097】
図7に示すように、PPS212は、かかるピクチャの拡張フラグの一種であるpps_extension_flagを含んでもよい。pps_extension_flagの値に応じた復号制御は、非特許文献1と同様の構成とすることができるため、説明は省略
する。
【0098】
以上のように、本発明の画像復号装置200では、高ビット深度のピクチャを復号する際、pps_extension_flagの値を変えることで、高ビット深度向け制御データの復号処理(レンジ拡張向けのシンタックス構造)の存在の有無を、ピクチャ単位で制御することができる。ここで、高ビット深度のピクチャとは、例えば、10ビットより大きいビット深度値(12ビットや14ビットや16ビット等)のピクチャである。
【0099】
<
図7に示すPPS212内に含まれる制御データの変更例>
図8は、
図7に示すPPS212内に含まれる制御データの変更例を示す。
【0100】
図8に示すように、PPS212は、上述の通り、少なくとも当該PPS212に対応するSPS211を指定するためのid情報(pps_seq_parameter_se
t_id)を含む。
【0101】
図8示す例では、当該PPSには、
図7に示すpps_extension_present_flagが含まれず、pps_range_extension_flag及びpps_extension_flagは、常に復号される構成となっている。
【0102】
ここで、
図8に示すように、pps_range_extension_flag及びp
ps_extension_flagが常に復号されることによる効果は、次の通りである。
【0103】
図7に示す構成では、pps_range_extension_flag及びpps_extension_flagが復号される場合、pps_extension_prese
nt_flagの復号と併せて、復号が必要な符号ビットの最大長(最悪値)は、3ビッ
トである。
【0104】
他方、
図8に示す構成では、pps_range_extension_flag及びp
ps_extension_flagが常に復号されるため、復号が必要な符号ビットの最大長(最悪値)は、2ビットである。
【0105】
この結果、
図8に示す構成の場合には、高ビット深度のピクチャ、すなわち、レンジ拡張向けの制御データの復号処理を行う場合に復号が必要な各拡張フラグの符号ビットの最大長(最悪値)が削減される。
【0106】
<
図6に示すSPS211内に含まれる制御データの変更例>
図9は、
図6に示すSPS211内に含まれる制御データの変更例を示す。
【0107】
図9に示すSPS211は、後述する符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位でそれぞれ制御するフラグ(第2フラグ)を含んでもよい。
【0108】
ここで、所定の符号化ツールは、色差残差共同符号化(JCCR:Joint Coding of Chrome Residual)、ALF(Adaptive Loop Filter)、CC-ALF(Cross Component ALF)、SB
T(Subblock Transform)及び幾何学分割マージ(GPM:Geometry Prediction Merge)の少なくとも1つを含む。
【0109】
これらの所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御するフラグ(第2フラグ)は、それぞれ、sps_joint_cbcr_enabled_flag、sps_
alf_enabled_flag、sps_ccalf_enabled_flag、sp
s_sbt_enabled_flag、sps_gpm_enabled_flagである。これらのフラグの意味は、非特許文献1で規定されている意味と同様のため、説明は省略する。
【0110】
図9に示す構成と
図6に示す構成との差分は、第2フラグによって、レンジ拡張フラグ(sps_range_extension_flag)の復号を制御する点にある。
【0111】
図9に示す構成では、復号部210は、第2フラグの全てが無効である場合に、レンジ拡張フラグを復号し、それ以外の場合には、レンジ拡張フラグを復号しないように構成されている。
【0112】
ここで、
図9に示す変更例として、
図9に示すレンジ拡張フラグの復号条件に、
図5に示すsps_extension_present_flagによる判定条件を追加しても
よい。
【0113】
また、
図9に示すレンジ拡張フラグの復号条件を、第2フラグのいずれか1つ或いは複数の組み合わせに基づく復号条件として構成してもよい。
【0114】
所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御するフラグによって、レンジ拡張フラグ(sps_range_extension_flag)の復号を制御する効果
は、次の通りである。
【0115】
高ビット深度のシーケンスにおいて、非特許文献1を特徴付ける所定の符号化ツールの複雑度は、大きくなりやすい。そのため、第2フラグが無効な場合にのみ、高ビット深度のシーケンス向けの制御データの復号処理が存在することを許容することとすれば、同条件下における上述の所定の符号化ツールの適用による複雑度の増大を抑制できる。
【0116】
<
図8に示すPPS212内に含まれる制御データの変更例>
図10は、
図8に示すPPS212内に含まれる制御データの変更例(
図9の変更例でもある)を示す。
【0117】
図10に示す構成と
図8に示す構成との差分は、第2フラグによって、レンジ拡張フラグ(pps_range_extension_flag)の復号を制御する点にある。
【0118】
図10に示す構成では、復号部210は、第2フラグの全てが無効である場合に、レンジ拡張フラグを復号し、それ以外の場合には、レンジ拡張フラグを復号しないように構成
されている。
【0119】
ここで、
図10の変更例として、
図10に示すレンジ拡張フラグの復号条件に、
図8に示すpps_extension_present_flagによる判定条件を追加しても
よい。
【0120】
また、
図10に示すレンジ拡張フラグの復号条件を、第2フラグのいずれか1つ或いは複数の組み合わせに基づく復号条件として構成してもよい。
【0121】
第2フラグによって、レンジ拡張フラグ(pps_range_extension_f
lag)の復号を制御する効果は、次の通りである。
【0122】
高ビット深度のピクチャにおいて、非特許文献1を特徴付ける所定の符号化ツールの複雑度は、大きくなりやすい。そのため、上述の所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御するフラグが無効な場合にのみ、高ビット深度のピクチャ向けの制御データの復号処理を許容することとすれば、同条件下における複雑度の増大を抑制できる。
【0123】
<
図9に示すSPS211内に含まれる制御データの変更例>
図11は、
図9に示すSPS211内に含まれる制御データの変更例を示す。
【0124】
図11に示す構成と
図9に示す構成との差分は、第1に、レンジ拡張フラグ(sps_
range_extension_flag)が、第2フラグにより前に復号される点にある。
【0125】
第2に、
図11に示す構成では、レンジ拡張フラグ(sps_range_extension_flag)が、第2フラグの復号条件に追加される構成となっている。
【0126】
これにより、レンジ拡張フラグ(sps_range_extension_flag)
の値に応じて、第2フラグの復号有無を制御することができる。具体的には、レンジ拡張フラグが無効な場合に、第2フラグを復号し、レンジ拡張フラグが有効な場合は、第2フラグは復号しない。
【0127】
かかる構成による効果は、次の通りである。高ビット深度のシーケンスにおいて、非特許文献1を特徴付ける所定の符号化ツールの複雑度は、大きくなりやすい。そのため、高ビット深度のシーケンスにおいて、レンジ拡張フラグを復号し、かかるレンジ拡張フラグに基づいて、第2フラグの復号を制御する(レンジ拡張フラグが有効な場合に、第2フラグを復号しない、すなわち、上述の所定の符号化ツールをシーケンス単位で無効化する)ことで、高ビット深度のシーケンスにおける複雑度の増大を抑制できる。
【0128】
ここで、
図12を参照して、かかる変更例における画像復号装置200の動作の一例について説明する。
【0129】
図12に示すように、ステップS101において、本変更例に係る画像復号装置200の復号部210は、レンジ拡張フラグ(sps_range_extension_fla
g)の値が「0」であるか否か(すなわち、レンジ拡張フラグが有効であるか否か)について判定する。
【0130】
レンジ拡張フラグ(sps_range_extension_flag)の値が「0」
であると判定された場合(すなわち、レンジ拡張フラグが無効であると判定された場合)、本動作は、ステップS102に進む。
【0131】
一方、レンジ拡張フラグ(sps_range_extension_flag)の値が
「1」であると判定された場合(すなわち、レンジ拡張フラグが有効であると判定された場合)、本動作は、ステップS103に進む。
【0132】
ステップS102において、復号部210は、上述の所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御するフラグを復号する(すなわち、所定の符号化ツールを適用可能とする)。
【0133】
ステップS103において、復号部210は、上述の所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御するフラグを復号しない(すなわち、所定の符号化ツールを適用不可とする)。
【0134】
【0135】
図13に示すように、レンジ拡張フラグが、上述の所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御するフラグ(第2フラグ)より後に復号される場合において、レンジ拡張フラグに基づいて、上述の所定の符号化ツールの適用を制御したい場合(すなわち、レンジ拡張フラグが有効な場合に、上述の所定の符号化ツールを無効化したい場合)に、レンジ拡張向けの復号処理である「sps_range_extension_flag
()」の内部で、上述の所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御するフラグの値を無効な値に上書きして制御する構成を示している。
【0136】
<SPS211のレンジ拡張向けの制御データの復号処理の一例>
図14は、SPS211のレンジ拡張向けの制御データの復号処理である「sps_r
ange_extension_flag()」の一例を示す。
【0137】
SPS211のレンジ拡張向けの制御データの復号処理は、
図14に示すように、上述の所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御するフラグ(sps_joi
nt_cbcr_enabled_flag、sps_alf_enabled_flag、sps_ccalf_enabled_flag、sps_sbt_enabled_flag、sps_gpm_enabled_flag)のいずれか1つでも有効な場合、qp_check_enabled_flagを追加で含んでもよい。
【0138】
かかる処理内に、qp_check_enabled_flagが含まれていなかった場
合、復号部210は、qp_check_enabled_flagの値を「0」とみなし
てよい。
【0139】
ここで、qp_check_enabled_flagは、後述するスライスの量子化パ
ラメータ(SliceQpy)又は変換ブロックの量子化パラメータ(qP)と、予め画像符号化装置100及び画像復号装置200に記憶された所定の符号化ツールの有効/無
効を分岐させる量子化パラメータの閾値(QpTHRES)とを比較することで、上述の所定の符号化ツールの適用の有無を制御するか否かについて制御するフラグである。
【0140】
qp_check_enabled_flagが有効である場合、復号部210は、後述
するSliceQpy又はqPとQpTHRESとを比較して、SliceQpy又はqPがQpTHRESよりも大きい場合に、上述の所定の符号化ツールが適用されると判定するように構成されている。
【0141】
一方、qp_check_enabled_flagが有効である場合、復号部210は
、SliceQpy又はqPとQpTHRESとを比較して、SliceQpy又はqPがQpTHRES以下である場合に、上述の所定の符号化ツールが適用されないと判定するように構成されている。
【0142】
なお、QpTHRESの値として、上述の所定の符号化ツールの全てにおいて同じ値を用いてもよいし、上述の所定の符号化ツールのそれぞれで異なる値を用いてもよい。
【0143】
また、上述の所定の符号化ツールのQpTHRESの値は、非特許文献1で規定されている量子化パラメータの全範囲で設定可能である。例えば、非特許文献1では、量子化パラメータの範囲としては、下限値が{-6×(シーケンスのビット深度-8)}として規定されており、上限値が63として規定されている。
【0144】
すなわち、本変更例において、復号部210は、レンジ拡張フラグが有効な場合に、スライス又は変換ブロックの量子化パラメータに応じて、所定の符号化ツールの適用の有無を制御するように構成されている。
【0145】
上述した構成による効果は、次の通りである。高ビット深度のシーケンスにおいて、量子化パラメータが小さい場合に符号化性能の改善幅が小さくなりやすい所定の符号化ツールの適用有無を、スライス又は変換ブロックの量子化パラメータと予め設定した量子化パラメータの閾値とを比較して制御できる点にある。
【0146】
この結果、複雑度が大きくなりやすい高ビット深度のシーケンスにおいて、量子パラメータが小さい場合に、上述の所定の符号化ツールを無効化して、複雑度の増加を回避することができる。
【0147】
【0148】
第1に、
図15~
図17に示す復号処理について、
図14に示す復号処理に対する差分を説明する。
【0149】
図15~
図17に示す復号処理では、
図14に示す復号処理とは異なり、上述の所定の符号化ツールが無効となる量子化パラメータの閾値(Qp
THRES)が、所定の制御データを復号することで指定される。
【0150】
この結果、復号部210は、より柔軟に、上述の所定の符号化ツールが有効となる量子化パラメータの閾値を指定することができる。その指定方法としては、
図15~
図17に示す複数の指定方法が考えられる。
【0151】
1つ目の指定方法は、
図15に示すように、制御データ(qp_threshold)
によってQp
THRESを指定する方法である。なお、qp_thresholdの値と
しては、非特許文献1で規定されている量子化パラメータの全範囲で設定可能である。
【0152】
なお、このqp_thresholdの復号前に、qp_check_enabled_flagを復号し、qp_check_enabled_flagの値に応じて、qp_thresholdの復号有無を
図15のように制御してもよい。具体的には、qp_chec
k_enabled_flagの値が「1」の場合に、qp_thresholdを復号し
、qp_check_enabled_flagの値が「0」の場合に、qp_thresholdは復号しない。qp_thresholdが復号されない場合は、qp_thres
holdの値は、設定可能なQP範囲の最小値と推定される。これにより、qp_thr
esholdを常時復号することを回避できるため、符号ビット量が削減できる。
【0153】
2つ目の指定方法は、
図16に示すように、2つの制御データ(qp_thresho
ld_abs及びqp_threshold_sign)によってQp
THRESを指定す
る方法である。1つ目の指定方法との違いは、Qp
THRESの大きさ(絶対値)と正負の符号とを分離して復号する点にある。
【0154】
また、qp_threshold_signは、
図16に示すように、qp_thres
hold_absが「0」よりも大きい場合に、復号する構成となっている。これにより
、
図15に示す1つ目の指定方法と比べて、量子化パラメータQp
THRESを効率よく復号(符号化)することができる。
【0155】
なお、このqp_thresholdの復号前に、qp_check_enabled_flagを復号し、qp_check_enabled_flagの値に応じて、qp_threshold_abs及びqp_threshold_signの復号有無を
図16のよう
に制御してもよい。具体的には、qp_check_enabled_flagの値が「1
」の場合に、qp_threshold_absを復号し、qp_check_enabled_flagの値が「0」の場合に、qp_threshold_absは復号しない。q
p_threshold_abs及びqp_threshold_signが復号されない場合は、qp_threshold_abs及びqp_threshold_signの値は、それぞれ設定可能なQP範囲の最小値が設定される絶対値と正負符号が推定される。これにより、qp_threshold_abs及びqp_threshold_signを常時復号することを回避できるため、符号ビット量が削減できる。
【0156】
3つ目の指定方法は、
図17に示すように、が制御データ(qp_threshold_index)によってQp
THRESを指定する方法である。qp_threshold_indexとしては、非特許文献1で規定されている量子化パラメータの全範囲から、qp_threshold_indexのインデックス番号に対応した量子化パラメータをQp
THRESとして指定する。
【0157】
なお、このqp_threshold_idxの復号前に、qp_check_enabled_flagを復号し、qp_check_enabled_flagの値に応じて、qp_threshold_idxの復号有無を
図15のように制御してもよい。具体的には、qp_check_enabled_flagの値が「1」の場合に、qp_threshold_idxを復号し、qp_check_enabled_flagの値が「0」の場合に、qp_threshold_idxは復号しない。qp_threshold_idxが復号されない場合は、qp_threshold_idxの値は、設定可能なQP範囲の最小値と推定されるインデックス番号が推定される。これにより、qp_threshold
を常時復号することを回避できるため、符号ビット量が削減できる。
【0158】
かかるインデックス番号と量子化パラメータとの対応関係は、例えば、画像符号化装置100及び画像復号装置20で予めテーブルとして記録されていてもよい。
【0159】
また、インデックス番号は、設定可能な量子化パラメータの数分だけあってもよいし、設定可能な量子化パラメータを所定の方法で間引いた数分だけあってもよい。ここで、所定の方法は、例えば、設定可能な量子化パラメータの範囲をインデックス番号分で等分して対応づける方法であり、さらに設定可能な量子化パラメータの上限値からインデックス番号の昇順で対応付ける方法が考えられる。
【0160】
このように、量子化パラメータの上限値からインデックス番号を昇順で対応付けることで、高ビット深度のシーケンスにおいて、上述の所定の符号化ツールが有効となる量子化パラメータの閾値に対して、大きな量子化パラメータほど小さなインデックス番号が割り当てられるため、結果的に必要な符号ビットが削減される効果が期待できる。
【0161】
第2に、
図18に示す構成と
図14に示す構成との差分について説明する。
【0162】
図18に示す構成では、上述の所定の符号化ツールごとに、後述するスライスの量子化パラメータ(SliceQp
y)又は変換ブロックの量子化パラメータ(qP)と、予め画像符号化装置100及び画像復号装置200に記憶された所定の符号化ツールの有効/
無効を分岐させる量子化パラメータの閾値(Qp
THRES)とを比較することで、上述の所定の符号化ツールの適用の有無をシーケンス単位で制御するか否かを制御するフラグ(jccr_qp_check_enabled_flag、alf_qp_check_en
abled_flag、ccalf_qp_check_enabled_flag、sbt_qp_check_enabled_flag、gpm_qp_check_enabled_
flag)が復号されている。
【0163】
これにより、
図14に示す構成と比較して、上述の所定の符号化ツールごとに対して、Qp
THRESによる適用の有無の判定を含めるかどうかを制御することができる。
【0164】
その他の変更例として、図示はしていないが、
図15~
図17に示す構成のそれぞれと
図18に示す構成とを組み合わせて、上述の所定の符号化ツールごとに対して、量子化パラメータの閾値を複数の方法で指定する構成が考えられる。
【0165】
<PPS212のレンジ拡張向けの制御データの復号処理の一例>
図19~
図23は、PPS212のレンジ拡張向けの制御データの復号処理である「pps_range_extension_flag()」の一例を示す。
【0166】
すなわち、
図19~
図23に示す構成は、
図14~
図18に示す構成をpps_ran
ge_extension_flag()にて実現する構成である。
図19~
図23に示す構成と
図14~
図18に示す構成との差分は、pps_range_extension_
flag()内で復号処理を行う点のみにあるため、重複する説明は省略する。
【0167】
<JCCRの信号処理に係る制御データの復号条件の一例>
図24は、上述の所定の符号化ツールの1つであるJCCRの信号処理に係る制御データ(tu_joint_cbcr_residual_flag)の復号条件の一例を示す。ここで、tu_joint_cbcr_residual_flagの意味は、非特許文献1
と同様の意味と取ることができるため、説明は省略する。
【0168】
図24に示す復号条件では、非特許文献1の復号条件に対して、スライスの量子化パラメータ(SliceQp
y)とQp
THRESとの比較条件が追加されている。
【0169】
SliceQpyは、SPS211と及びピクチャヘッダ213又はスライスヘッダ214A/214Bの制御データ(pps_int_qp_minus26及びsh_qp_delta又はph_qp_delta)を復号することで導出可能であり、本実施形態では、これらの制御データの意味及びSliceQpyの導出手順は、非特許文献1できていされているものと同様に構成できるため、説明は省略する。
【0170】
かかるSliceQpyとQpTHRESとの比較条件が、tu_joint_cbcr_residual_flagの復号条件に追加されることで、復号部210は、スライス
の量子化パラメータに応じて、JCCRの適用の有無を制御することができる。
【0171】
<
図24に示すJCCRの信号処理に係る制御データの復号条件の変更例>
図25は、
図24に示すJCCRの信号処理に係る制御データの復号条件の変更例を示す。
【0172】
図25に示す復号条件では、非特許文献1の復号条件に対して、変換ブロックの量子化パラメータ(qP)とQp
THRESとの比較条件が追加されている。
【0173】
qPは、tu_joint_cbcr_residual_flagの復号条件より前に位置する制御データ(cu_qp_delta_abs、cu_qp_delta_sign_f
lag、cu_chroma_qp_offset、cp_chroma_qp_offset_idx等)を復号することで導出可能であり、かかる導出手順は、非特許文献1と同様の手順を取ることができるため、説明は省略する。
【0174】
なお、JCCRにおいては、QpTHRESと比較するqPは、色差信号(CbとCr)の変換ブロックの量子化パラメータを使用する。Cb及びCrでqPの値が異なる場合は、それぞれ独立に判定してもよいし、Cb及びCrのqP値を比較して最小値となる方のqP値に基づいて一括に判定してもよい。ブロックの分割構造が非特許文献1に記載のデュアルツリー構造(輝度信号及び色差信号が異なる分割となる構造)の場合や入力信号がRGB信号の場合は、各信号成分がそれぞれ独立にブロック分割或いは信号処理が実施されることが自明のため、独立に判定する。
【0175】
このqPとQpTHRESとの比較条件が、tu_joint_cbcr_residu
al_flagの復号条件に追加されることで、復号部210は、変換ブロックの量子化
パラメータに応じて、JCCRの適用の有無を制御することができる。
【0176】
<ALF及びCC-ALFの信号処理に係る制御データの復号条件の一例>
図26及び
図27は、上述の所定の符号化ツールであるALF及びCC-ALFの信号
処理に係る制御データ(sh_alf_enabled_flag及びph_alf_ena
bled_flag)の復号条件の一例を示す。
【0177】
図26及び
図27に示す復号条件は、非特許文献1で規定されている復号条件と比較して、以下に示す2点で異なっている。
【0178】
1つ目は、制御データであるsh_qp_delta又はph_qp_deltaの復号位置が、ALFの信号処理に係る制御データの1つであるsh_alf_enabled_f
lag及びph_alf_enabled_flagの復号位置よりも前に配置されている
点である。
【0179】
これは、sh_alf_enabled_flag及びph_alf_enabled_flagの復号条件に、sh_qp_delta又はph_qp_deltaの導出に使用されるSliceQpyに基づく判定条件を追加するためである。SliceQpyの導出手順は、非特許文献1と同様の手順を取ることができるため、説明は省略する。
【0180】
2つ目は、SliceQpyに基づく判定条件、具体的には、SliceQpyと量子化パラメータの閾値(QpTHRES)との比較条件が追加されている点にある。なお、SliceQpy及びQpTHRESは、ここで示すcoding_unit()より前
に導出可能である。
以上の工夫により、復号部210は、スライスの量子化パラメータに応じて、ALF及び
CC-ALFの適用の有無を制御することができる。
【0181】
<SBTの信号処理に係る制御データの復号条件の一例>
図28は、上述の所定の符号化ツールの1つであるSBTの信号処理に係る制御データ(cu_sbt_flag)の復号条件の一例を示す。
【0182】
図28の復号条件は、非特許文献1で規定されている復号条件と比較して、SliceQp
yYに基づく判定条件、具体的には、SliceQp
yと量子化パラメータの閾値(
Qp
THRES)との比較条件が追加されている点で異なる。なお、SliceQp
y及びQp
THRESは、ここで示すcoding_unit()より前に導出可能である。
【0183】
以上の工夫により、復号部210は、スライスの量子化パラメータに応じて、SBTの適用の有無を制御することができる。
【0184】
<GPMの信号処理に係る制御データの復号条件の一例>
図29は、上述の所定の符号化ツールの1つであるGPMの信号処理に係る制御データの復号条件の一例を示す。
【0185】
図29の復号条件は、非特許文献1で規定されている復号条件と比較して、SliceQp
yYに基づく判定条件、具体的には、SliceQp
yと量子化パラメータの閾値(
Qp
THRES)との比較条件が追加されている点で異なる。なお、SliceQp
y及びQp
THRESは、ここで示すcoding_unit()より前に導出可能である。
【0186】
以上の工夫により、復号部210は、スライスの量子化パラメータに応じて、GPMの適用の有無を制御することができる。
【0187】
ここで、
図30を参照して、
図24~
図29に示す復号条件に基づく画像復号装置200の動作の一例について説明する。
【0188】
図30に示すように、ステップS201において、本実施形態に係る画像復号装置200の復号部210は、変換ブロックの量子化パラメータ(qP)が量子化パラメータの閾値(Qp
THRES)よりも大きいか否かについて判定する。
【0189】
qPがQpTHRESよりも大きいと判定された場合、本動作は、ステップS202に進み、それ以外の場合、本動作は、ステップS203に進む。
【0190】
ステップS202において、復号部210は、上述の所定の符号化ツールが適用可能であると判定し、かかる所定の符号化ツールの信号処理に係る制御データを復号する。
【0191】
ステップS203において、復号部210は、上述の所定の符号化ツールが適用可能でないと判定し、かかる所定の符号化ツールの信号処理に係る制御データを復号しない。
【0192】
なお、上述では、QpTHRESとの比較対象を変換ブロックの量子化パラメータqPとしたが、スライスの量子化パラメータSliceQpyとしてもよい。
【0193】
上述の本実施形態によれば、レンジ拡張フラグに基づいて所定の符号化ツールの適用の有無を制御することが可能となるため、高ビット深度のシーケンスにおいて、符号化性能の改善幅が低下する所定の符号化ツールの適用を無効にできる。これにより、複雑度が大きくなりやすい高ビット深度のシーケンスにおいて、所定の符号化ツールによる複雑度の増加を回避することができる。
【0194】
上述の画像符号化装置100及び画像復号装置200は、コンピュータに各機能(各工程)を実行させるプログラムであって実現されていてもよい。
【0195】
なお、上述の各実施形態では、本発明を画像符号化装置100及び画像復号装置200への適用を例にして説明したが、本発明は、これのみに限定されるものではなく、画像符号化装置100及び画像復号装置200の各機能を備えた画像符号化システム及び画像復号システムにも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0196】
10…画像処理システム
100…画像符号化装置
111、241…インター予測部
112、242…イントラ予測部
121…減算器
122、230…加算器
131…変換・量子化部
132、220…逆変換・逆量子化部
140…符号化部
150、250…インループフィルタ処理部
160、260…フレームバッファ
200…画像復号装置
210…復号部