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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ゴム組成物、タイヤ及びゴム用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240529BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240529BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20240529BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20240529BHJP
   C08K 5/24 20060101ALI20240529BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20240529BHJP
   C08K 5/3462 20060101ALI20240529BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240529BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/36
C08K5/3492
C08K5/3445
C08K5/24
C08K5/3472
C08K5/3462
B60C1/00 A
C09K3/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020175724
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067163
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 真也
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-108204(JP,A)
【文献】特開2011-246514(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235526(WO,A1)
【文献】特表2014-509689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物と、ゴム成分とを含むゴム組成物。
【化1】
〔式中、Aはイソキノリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、又はトリアジニル基を示し、さらにアミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基からなる群より選ばれる1又は複数の置換基を有してもよい。〕
【請求項2】
上記Aがイソキノリル基、トリアゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、又はピラジニル基である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
上記ゴム成分がジエン系ゴムである、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
さらに充填材を含む、請求項1~3の何れか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
上記充填材がシリカである、請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【請求項7】
下記式(1)で表される化合物を含むゴム用添加剤。
【化2】
〔式中、Aはイソキノリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、又はトリアジニル基を示し、さらにアミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基からなる群より選ばれる1又は複数の置換基を有してもよい。〕
【請求項8】
低発熱化剤である、請求項7に記載のゴム用添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、タイヤ及びゴム用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源、省エネルギー、及び環境保護の観点から、二酸化炭素をはじめとした排出ガスの規制が厳しくなっており、自動車に対する低燃費化の要求が高まっている。自動車の低燃費化には、エンジン等の駆動系及び伝達系の寄与が大きいが、タイヤの転がり抵抗も大きく関与しているため、駆動系及び伝達系だけでなく、タイヤの転がり抵抗の改善も必要とされており、その改善方法として、発熱性の低いゴム組成物をタイヤに適用することが知られている。
【0003】
発熱性の低いゴム組成物を作製する方法として、特許文献1のように充填材としてのシリカを、シランカップリング剤で予め表面処理させる方法や、特許文献2のように表面処理したシリカと、ジエン系ゴムラテックスとを水系媒体中にて混合、凝固及び乾燥して得られたウェットマスターパッチを用いる方法等が挙げられる。
【0004】
しかし、特許文献1及び2は、予めシリカに表面処理をする必要があり、更に特許文献2はウェットマスターバッチを使用する必要があり、作業工程が増えるため、好ましくない。
【0005】
上記のような作業工程を増やさず、充填材を含むゴム組成物の低発熱化を向上させる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平05-017705号公報
【文献】特開2012-92166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、優れた低発熱性を有するゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の化合物をゴム成分に加えることにより優れた低発熱性を有するゴム組成物を得ることができることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下のゴム組成物を提供する。
項1.
下記式(1)で表される化合物又はその塩と、ゴム成分とを含むゴム組成物。
【化1】
〔式中、Aはイソキノリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、又はトリアジニル基を示し、さらにアミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基からなる群より選ばれる1又は複数の置換基を有してもよい。〕
項2.
上記Aがイソキノリル基、トリアゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、又はピラジニル基である、項1に記載のゴム組成物。
項3.
上記ゴム成分がジエン系ゴムである、項1又は2に記載のゴム組成物。
項4.
さらに充填材を含む、項1~3の何れかに記載のゴム組成物。
項5.
上記充填材がシリカである、項4に記載のゴム組成物。
項6.
項1~5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
項7.
下記式(1)で表される化合物又はその塩を含むゴム用添加剤。
【化2】
〔式中、Aはイソキノリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、又はトリアジニル基を示し、さらにアミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基からなる群より選ばれる1又は複数の置換基を有してもよい。〕
項8.
低発熱化剤である、項7に記載のゴム用添加剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴム組成物は、優れた低発熱性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、後述する式(1)で表される化合物又はその塩、並びにゴム成分を含む。当該ゴム組成物を使用して得られるゴム材料は、優れた低発熱性を有し、例えばタイヤ等に好適に使用することが可能である。
【0012】
1.1.式(1)で表される化合物
式(1)で表される化合物は、下記式の構造式により表される。
【0013】
【化3】
〔式中、Aはイソキノリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、又はトリアジニル基を示し、さらにアミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基からなる群より選ばれる1又は複数の置換基を有してもよい。〕
【0014】
上記トリアゾリル基として、より具体的には、1,2,3-トリアゾリル基及び1,2,4-トリアゾリル基を例示することが可能であり、もちろんこれらに限定されない。また、上記トリアジニル基としても、1,2,3-トリアジニル基、1,2,4-トリアジニル基、及び1,3,5-トリアジニル基を例示することが可能であり、もちろんこれらに限定されない。
【0015】
これらの中でも、Aとしてはイソキノリル基、トリアゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、又はピラジニル基であることが好ましく、複素環基内に窒素原子が2個以上あることが好ましく、トリアゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、又はピラジニル基であることがより好ましい。また、トリアゾリル基の中でも、1,2,4-トリアゾリル基であることが特に好ましい。
【0016】
Aがさらに有していてもよい置換基としては、アミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基を例示することができる。
【0017】
「アミノ基」は、-NHで表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、1-エチルプロピルアミノ、n-ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3-メチルペンチルアミノ基等の炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
【0018】
「アルキル基」は、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、更に、1-エチルプロピル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、5-プロピルノニル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数5~18の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3~8の環状アルキル基等が挙げられる。
【0019】
「アルコキシ基」は、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ基の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられる。
【0020】
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0021】
式(1)で表される化合物として具体的には、1H-ピラゾール-3-カルボヒドラジド、1H-ピラゾール-4-カルボヒドラジド、1H-イミダゾール-2-カルボヒドラジド、1H-イミダゾール-5-カルボヒドラジド、1H-1,2,3-トリアゾール-5-カルボヒドラジド、4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボヒドラジド、ピラジン-2-カルボヒドラジド、ピリミジン-2-カルボヒドラジド、ピリミジン-4-カルボヒドラジド、ピリミジン-5-カルボヒドラジド、ピリダジン-3-カルボヒドラジド、ピリダジン-4-カルボヒドラジド、1,2,3-トリアジン-4-カルボヒドラジド、1,2,3-トリアジン-5-カルボヒドラジド、1,2,4-トリアジン-3-カルボヒドラジド、1,2,4-トリアジン-5-カルボヒドラジド、1,2,4-トリアジン-6-カルボヒドラジド、1,3,5-トリアジン-2-カルボヒドラジド、イソキノリン-1-カルボヒドラジド、イソキノリン-3-カルボヒドラジド、イソキノリン-4-カルボヒドラジド、イソキノリン-5-カルボヒドラジド、イソキノリン-6-カルボヒドラジド、イソキノリン-7-カルボヒドラジド、及びイソキノリン-8-カルボヒドラジドを挙げることができる。
【0022】
これらの中でも、4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボヒドラジド、ピラジン-2-カルボヒドラジド、ピリミジン-2-カルボヒドラジド、ピリダジン-3-カルボヒドラジド、ピリダジン-4-カルボヒドラジド及びイソキノリン-1-カルボヒドラジドがより好ましい。
【0023】
式(1)で表される化合物の塩としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0024】
また、式(1)で表される化合物としては、例えば、下記式(1a)に示すように、Aの窒素原子がヒドラジド基等により置換されて四級化され、塩素等のアニオン性のハロゲン化物、水酸化物等と塩を形成する化合物であってもよい。
【0025】
【化4】
【0026】
式(1)で表される化合物又はその塩の配合割合は、後述するゴム成分100質量部に対して0.01~30質量部とすることが好ましく、0.05~5量部とすることがより好ましい。当該割合で配合することにより、低発熱性の向上効果を、効果的に得ることができる。
【0027】
1.2.ゴム成分
本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分としては、特に制限はなく、ジエン系ゴム及び非ジエン系ゴムの双方を好適に使用することができる。ここで、ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、並びに天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの混合物等を挙げることができ、もちろんこれらに限定されない。
【0028】
天然ゴムとしては、天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴムなどの天然ゴムに加えて、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴム等が挙げられる。
【0029】
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムとしては、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが挙げられる。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基、水酸基などのヘテロ原子を含有する官能基を1種類以上含むものが挙げられる。また、ジエン部分のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの平均分子量および分子量分布は、特に制限はなく、平均分子量500~300万が好適に用いることができる。また、合成ジエン系ゴムの製造方法についても、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などで合成されたものが挙げられる。
【0030】
非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
【0031】
ゴム成分は、ジエン系ゴムを含んでいることが好ましく、ゴム成分100質量部中、ジエン系ゴムが50質量部以上含まれることが好ましく、75質量部以上含まれることがより好ましく、80~100質量部の割合で配合されることが特に好ましい。
【0032】
また、ジエン系ゴムのガラス転移点においては、-70℃から-20℃の範囲のものが耐摩耗性と制動特性の両立の観点から有効である。本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム中の50質量%以上が、ガラス転移点が-70℃から-20℃の範囲にあるジエン系ゴムであることが好ましい。
【0033】
ゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。また、これらのブレンド比率は、特に制限はないが、ゴム成分100質量部中に、SBR、BR又はこれらの混合物を50~100質量部の比率で配合することが好ましく、75~100質量部で配合することがより好ましい。SBR及びBRの混合物を配合する場合には、SBR及びBRの合計量が上記範囲であることが好ましい。また、このときのSBRは50~100質量部であり、BRが0~50質量部の範囲であることが好ましい。
【0034】
1.3.その他の成分
本発明のゴム組成物は、上記した化合物及びゴム成分以外にも、充填材、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、発泡剤、オイル、ステアリン酸、亜鉛華(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。
【0035】
充填材としては、ゴム工業界で使用される公知の充填材を広く使用することが可能である。具体的には、カーボンブラック及び無機充填材を例示することができ、もちろんこれらに限定されない。
【0036】
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon-Silica Dual phase filler等が挙げられる。
【0037】
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
【0038】
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60~200cm/100g、より好ましくは70~180cm/100g、特に好ましくは80~160cm/100gである。
【0039】
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JISK 6217-2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30~200m/g、より好ましくは40~180m/g、特に好ましくは50~160m/gである。
【0040】
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)];炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
【0041】
中でも、無機充填材としては、制動特性の観点からシリカが好ましく、シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40~350m/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO 5794/1に準拠して測定される。
【0042】
この観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が40~350m/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積が100~270m/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積が110~270m/gの範囲にあるシリカである。
【0043】
このようなシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積=165m/g)、「HD115MP」(BET比表面積=115m/g)、「HD200MP」(BET比表面積=200m/g)、「HD250MP」(BET比表面積=250m/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積=240m/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m/g)等が挙げられる。
【0044】
充填材の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常20~120質量部であり、好ましくは30~100質量部であり、より好ましくは40~90質量部である。
【0045】
充填材の中でも、カーボンブラック又はシリカが好ましく、それぞれ単独で使用しても良いし、併用しても良い。
【0046】
充填材の中でも、シリカが更に好ましい。
【0047】
また、上記充填材が配合されたゴム組成物においては、充填材によるゴム組成物の靱性を高める目的、又はゴム組成物の引裂き強度と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤を配合してもよい。
【0048】
上記充填材と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0049】
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリル
プロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(
2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
【0050】
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシ
ラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0051】
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等を挙げることができる。
【0052】
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0053】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0054】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0055】
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0056】
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
【0057】
充填材と併用可能なチタネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなチタネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤が挙げられる。
【0058】
アルコキシド系のチタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等を挙げることができる。これらの内、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
【0059】
キレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等を挙げることができる。これらの内、チタンアセチルアセトネートが好ましい。
【0060】
アシレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート等を挙げることができる。
【0061】
充填材と併用可能なアルミネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなアルミネートカップリング剤として、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が挙げることができる。これらの内、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。
【0062】
充填材と併用可能なジルコネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなジルコネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のジルコネートカップリング剤が挙げられる。
【0063】
アルコキシド系のジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等を挙げることができる。この内、ノルマルブチルジルコネートが好ましい。
【0064】
キレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等を挙げることができる。この内、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
【0065】
アシレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等を挙げることができる。この内、ステアリン酸ジルコニウムが好ましい。
【0066】
本発明においては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
本発明のゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、上記充填材100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、3~15質量部が特に好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の引裂き強度向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。
【0068】
2.タイヤ
上述した本発明のゴム組成物を使用してタイヤを製造することにより、低発熱性に優れたタイヤを得ることができる。
【0069】
本発明のタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
【0070】
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部を当該ゴム組成物で形成するのが最も好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0071】
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカス部を保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
【0072】
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカス部を保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
【0073】
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
【0074】
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカス部を桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
【0075】
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
【0076】
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカス部を保護する役目を果たす。
【0077】
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0078】
3.ゴム用添加剤
上記の式(1)で表される化合物又はその塩は、ゴム用添加剤として使用することにより、形成されるゴム材料に優れた低発熱性を与えることが可能である。かかるゴム用添加剤は化合物それ自体、つまり、式(1)で表される化合物又はその塩のみからなる態様であってもよいし、その効果を妨げない範囲内でその他の成分を含んでもよい。かかるその他の成分としては、例えば公知のオイル、樹脂、ステアリン酸、亜鉛華(ZnO)、炭酸カルシウム及びシリカ等を広く使用することが可能である。
【0079】
4.低発熱化剤
上記の通り、本発明のゴム用添加剤は、ゴム材料に優れた低発熱性を付与することが可能であり、低発熱化剤として、好適に使用することが可能である。
【0080】
5.ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物の製造方法については特に限定はなく、例えば、上記したゴム成分、化合物、そして必要に応じてその他の成分を、混合することにより得ることが可能である。また、化合物についても、公知の方法により製造すればよい。
【0081】
上記した混合するための方法としては特に限定はなく、公知の方法を広く採用することが可能である。具体的には、上記したゴム成分、式(1)で表される化合物又はその塩、並びに必要に応じてその他の成分を、混練機などを使用して混練する方法を挙げることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例
【0083】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0084】
製造例1:4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボヒドラジド(化合物1)の製造
メタノール100mLに4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸メチル12.5gを加えた溶液に、ヒドラジン一水和物9.9gを加えて15時間還流した。この反応液を冷却し、析出した固体をろ過した。得られた固体をメタノールで洗浄し、乾燥することで、目的物を12.3g(収率98.0%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.5(br-s,2H),8.4(br-s,1H),9.8(br-s,1H),14.5(br-s,1H)
融点:208℃
【0085】
製造例2: ピラジン-2-カルボヒドラジド(化合物2)の製造
メタノール70mLにピラジン-2-カルボン酸メチル12.0gを加えた溶液に、ヒドラジン一水和物6.5gを加えて12時間還流した。この反応液を冷却し、析出した固体をろ過した。得られた固体をメタノールで洗浄し、乾燥することで、目的物を11.3g(収率94.1%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.7(m,2H),8.7(m,1H),8.8(d,1H),9.1(d,1H),10.1(br-s,1H)
融点:170℃
【0086】
製造例3: イソキノリン-1-カルボヒドラジド(化合物3)の製造
メタノール150mLにイソキノリン-1-カルボン酸10.4gを加えた溶液に濃硫酸27.8gを加え、72時間還流した。反応溶媒を減圧留去し、得られた残渣溶液をジクロロメタン100mLに溶かし、氷冷下で、炭酸ナトリウム飽和水溶液を加え、pHを8に調製した。有機層をジクロロメタン50mLで二回分液抽出し、硫酸ナトリウムを加え、撹拌後、ろ過し、有機溶媒を減圧留去することで目的のイソキノリン-1-カルボン酸メチル10.3g(収率91.6%)を得た。
上記で得られたイソキノリン-1-カルボン酸メチル10.3gにメタノール50mLとヒドラジン一水和物15.4gを加え、12時間還流した。この反応液を冷却し、溶媒を減圧留去した後、残渣に水200mLを加え、固体を析出させた。析出した固体をろ過し、メタノールで洗浄を行い、乾燥することで、目的物を8.3g(収率81.1%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.7(br-s,2H),7.7(m,1H),7.8(m,1H),7.98(d,1H),8.04(d,1H),8.5(d,1H),8.7(dd,1H),9.9(br-s,1H)
融点:107℃
【0087】
製造例4: ピリミジン-2-カルボヒドラジド(化合物4)の製造
2-シアノピリミジン25gに水50mLと25%苛性水80gを加え、外温60℃で2時間撹拌した。撹拌後、氷冷し、濃塩酸を用いてpHを3.8に調製し、室温で1時間撹拌した。次に溶媒を減圧留去し、トルエン50mL加え、共沸させた。得られた結晶にメタノール100mLと濃硫酸20gを加え12時間還流した。溶媒を減圧留去し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えpHを7に調製し、水を加えて塩を溶解させた。有機層をジクロロメタン50mLで三回分液抽出し、硫酸ナトリウムを加え、撹拌後、ろ過し、有機溶媒を減圧留去することでピリミジン-2-カルボン酸メチル12.6g(収率38.3%)を得た。
上記で得られたピリミジン-2-カルボン酸メチル8.3gにメタノール100mLとヒドラジン一水和物4.5gを加え、12時間還流した。この反応液を冷却し、析出した固体をろ過した。得られた固体をメタノールで洗浄し、乾燥することで、目的物を7.6g(収率91.5%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.6(m,2H),7.6(t,1H),8.9(d,2H),10.0(br-s,1H)
融点:180℃
【0088】
製造例5: ピリダジン-4-カルボヒドラジド(化合物5)の製造
ピリジン1.2Lに3-メチルピリダジン25.5gを加えた溶液に二酸化セレン50gを加え、外温80℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、親水性PTFEメンブレンフィルターで固体を除き、溶媒を減圧留去した。残渣にメタノール500mLと濃硫酸90gを加え、外温80℃で12時間還流した。溶媒を減圧留去し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを7.7に調製した。溶液をジクロロメタン100mLで四回分液抽出し、硫酸ナトリウムを加え、撹拌後、ろ過し、有機溶媒を減圧留去することでピリダジン-3-カルボン酸メチル23.6g(収率63.1%)を得た。
上記で得られたピリダジン-3-カルボン酸メチル11.6gにメタノール100mLとヒドラジン一水和物8.3gを加えて1時間還流した。この反応液を冷却し、溶媒を減圧留去すると固体の生成物が得られた。この生成物をメタノールで解砕洗浄後、ろ過し、乾燥することで、目的物を6.0g(収率51.7%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.7(br-s,2H),8.0(dd,1H),9.4(dd,1H),9.5(m,1H),10.3(br-s,1H)
融点:119℃
【0089】
製造例6: ピリダジン-3-カルボヒドラジド(化合物6)の製造
クロロホルム50mLにピリダジン-4-カルボン酸5.5gを加えた溶液に、塩化チオニル27.2gを加え、外温65℃で6時間撹拌した。氷冷下、メタノール50mLを徐々に加えた後、溶媒を減圧留去した。残渣にジクロロメタン50mLを加え、氷冷下で撹拌しながら炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、pHを7.8に調製した。析出した固体をろ過し、溶液をジクロロメタン100mLで三回分液抽出し、硫酸ナトリウムを加え、撹拌後、ろ過し、有機溶媒を減圧留去することでピリダジン-4-カルボン酸メチル5.8g(収率94.7%)を得た。
上記で得られたピリダジン-4-カルボン酸メチル4.8gにメタノール50mLとヒドラジン一水和物4.5gを加えて12時間還流した。この反応液を冷却し、溶媒を減圧留去するとオイル状の生成物が得られた。得られた生成物にトルエン20mLを加え、共沸させた。共沸により得られた固体を乾燥することで、目的物を4.7g(収率97.9%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.7(m,2H),7.9(m,1H),8.1(dd,1H),9.4(dd,1H),10.4(br-s,1H)
融点:143℃
【0090】
製造例7: 1H-ピロール-2-カルボヒドラジド(化合物10)の製造
メタノール70mLに1H-ピロール-2-カルボン酸メチル12.0gを加えた溶液に、ヒドラジン一水和物14.4gを加えて12時間還流した。この反応液を冷却し、析出した固体をろ過した。得られた固体をメタノールで洗浄し、乾燥することで、目的物を10.5g(収率95.8%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.3(br-s,2H),6.0(m,1H),6.7(s,1H),6.8(s,1H),9.2(s,1H),11.4(br-s,1H)
融点:235℃
【0091】
実施例1~6、比較例1~4、及び参考例1:ゴム組成物の製造
下記表1の工程(I)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混練した。混合物の温度が80℃以下になるまで養生させた後、表1の工程(II)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が110℃以下になるよう調整しながら混練して、未加硫ゴム組成物を製造した。ここで得られた未加硫ゴム組成物を加硫プレス機を用いて150℃×30分で加熱することにより、各ゴムを得た。
【0092】
低発熱性(Tanδ値指数)試験
各実施例及び比較例のゴム組成物について、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度40℃、動歪5%、周波数15HzでTanδ値を測定した。比較するために、化合物を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(参考例1)を作製し、そのTanδ値を100とした指数により表し、下記式に基づいて低発熱性指数を算出した。なお、低発熱性指数の値が小さい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
式:低発熱性指数
=(各実施例1~6、及び比較例1~4のゴム組成物のTanδ値)×100/(参考例1のTanδ値)
【0093】
【表1】
※1:天然ゴム;GUANGKEN RUBBER社製、TSR-20
※2:化合物1;製造例1で製造した4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボヒドラジド
※3:化合物2;製造例2で製造したピラジン-2-カルボヒドラジド
※4:化合物3;製造例3で製造したイソキノリン-1-カルボヒドラジド
※5:化合物4;製造例4で製造したピリミジン-2-カルボヒドラジド
※6:化合物5;製造例5で製造したピリダジン-4-カルボヒドラジド
※7:化合物6;製造例6で製造したピリダジン-3-カルボヒドラジド
※8:化合物7;東京化成工業株式会社製、フェニルカルボヒドラジド
※9:化合物8;東京化成工業株式会社製、フラン-2-カルボヒドラジド
※10:化合物9;東京化成工業株式会社製、チオフェン-2-カルボヒドラジド
※11:化合物10;製造例7で製造した1H-ピロール-2-カルボヒドラジド
※12:シリカ;QueChen Silicon Chemical Co.,Ltd.社製、HD165MP
※13:シランカップリング剤;エボニック社製、Si69
※14:老化防止剤;Kemai Chemical Co.,Ltd社製、6-PPD
※15:ワックス;Rhein Chemie Rheinau社製、Antilux 111
※16:酸化亜鉛;Dalian Zinc Oxide Co.,Ltd社製
※17:ステアリン酸;Sichuan Tianyu Grease社製
※18:加硫促進剤1;Kemai Chemical Co.,Ltd社製、CBS
※19:加硫促進剤2;Kemai Chemical Co.,Ltd社製、DPG
※20:硫黄;Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd社製
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のゴム組成物は、式(1)で表される化合物又はその塩をゴム成分に含ませてゴム材料を調製したゴム組成物とすることにより、優れた低発熱性をも有することから、タイヤの材料として好適に活用できる。