(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ロータリーバルブ
(51)【国際特許分類】
B65G 65/48 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
B65G65/48 G
(21)【出願番号】P 2020181761
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 理
(72)【発明者】
【氏名】山本 仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 克巳
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-128262(JP,A)
【文献】特開2011-241089(JP,A)
【文献】特開昭53-098668(JP,A)
【文献】特開昭64-038322(JP,A)
【文献】特開平05-238734(JP,A)
【文献】特開昭51-028599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/30-65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン鉱石の供給口及び排出口を有する筐体と、前記供給口から前記筐体の内部に供給されたチタン鉱石を前記排出口へ送り出すべく前記筐体の内部で回転可能なローターとを備えるロータリーバルブであって、
前記ローターが、回転軸部、及び、前記回転軸部の周囲に互いに間隔をおいて設けられた複数枚の回転羽根を含む羽根部を有し、
前記回転軸部の軸線方向で前記ローターの前記羽根部の端部と前記筐体の内側部との間に、チタン鉱石を前記排出口側へ通す鉱石用通路が設けられ
ており、
前記軸線方向に沿う前記鉱石用通路の通路幅が、2mm~10mmの範囲内であるロータリーバルブ。
【請求項2】
チタン鉱石の供給口及び排出口を有する筐体と、前記供給口から前記筐体の内部に供給されたチタン鉱石を前記排出口へ送り出すべく前記筐体の内部で回転可能なローターとを備えるロータリーバルブであって、
前記ローターが、回転軸部、及び、前記回転軸部の周囲に互いに間隔をおいて設けられた複数枚の回転羽根を含む羽根部を有し、
前記回転軸部の軸線方向で前記ローターの前記羽根部の端部と前記筐体の内側部との間に、チタン鉱石を前記排出口側へ通す鉱石用通路が設けられており、
前記筐体が、前記羽根部の前記軸線方向の端部から間隔をおくとともに前記回転軸部の周囲に位置して前記内側部を構成する環状部材を有
し、
前記羽根部と前記環状部材との間に、前記回転軸部の周囲に位置して前記鉱石用通路の通路幅を狭める環状の通路幅調整部材が、前記環状部材の表面に接触して設けられたロータリーバルブ。
【請求項3】
前記軸線方向に沿う前記鉱石用通路の通路幅が、2mm~10mmの範囲内である請求項2に記載のロータリーバルブ。
【請求項4】
前記鉱石用通路が、前記排出口側に位置する出口に、当該鉱石用通路でのチタン鉱石の通過方向の前方側に向かうに従って前記軸線方向の内側に傾斜する傾斜面を有する請求項1~
3のいずれか一項に記載のロータリーバルブ。
【請求項5】
前記羽根部が、各回転羽根の外周側縁部に設けられた可撓性部材を含む請求項1~
4のいずれか一項に記載のロータリーバルブ。
【請求項6】
前記可撓性部材が、前記筐体の内周面に接触して配置された請求項
5に記載のロータリーバルブ。
【請求項7】
前記可撓性部材が、前記外周側縁部における前記ローターの回転方向の後方側を向く表面側に設けられた請求項
5又は
6に記載のロータリーバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筐体の内部に設けられたローターの回転により、チタン鉱石の通過量を制御するロータリーバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリーバルブは、筐体の内部に供給された対象物を、回転軸部及びその周囲の複数枚の回転羽根を有するローターの回転で送り出すものであり、たとえば、穀物の通過量の制御等に用いられることがある。
【0003】
この種のロータリーバルブとして、たとえば特許文献1には、「乾燥室の排出口に設けられ、羽根の先端部に排出口の内面に摺接する弾性部材又はブラシを取り付けてなる穀物乾燥機のロータリーバルブ」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したロータリーバルブは、たとえば次に述べるような四塩化チタンを製造する際等におけるチタン鉱石の通過量の制御に使用することが考えられる。
【0006】
四塩化チタンの製造では、塩化炉の内部に塩素ガスを供給して形成する流動層にて、コークス等の還元材とともにチタン鉱石を加熱する。これにより、酸化チタンを含むチタン鉱石が塩素ガスと反応し、その塩化反応によって四塩化チタンが生成される。なおここでは、反応効率等の観点から、たとえば粒径が100μm~200μm程度の微細なチタン鉱石を用いる場合がある。
【0007】
四塩化チタンの生成に際し、塩化炉の流動層内のチタン鉱石は、塩化反応の進行に伴って消費される。これを補うため、新たなチタン鉱石を塩化炉の外部から内部の流動層に、たとえば上方側からの落下等により供給する場合がある。ここで、流動層内のチタン鉱石の割合ないし量は、四塩化チタンの製造効率に影響を及ぼす。それ故に、流動層へのチタン鉱石の供給は、その供給量を適切に制御しながら行うことが望まれる。このようなチタン鉱石の供給量の制御に、ロータリーバルブが使用され得る。
【0008】
但し、これまでのロータリーバルブでは、チタン鉱石を対象とした場合、比較的微細で、しかも硬度の高いチタン鉱石が、ロータリーバルブの筐体内で回転羽根の軸線方向外側の端部と、筐体の内側部との間に挟み込まれる現象、いわゆる噛込みが発生することがあった。このことは、ローターの回転不良、それによるチタン鉱石の通過量の変動を発生させる他、甚だしくはローターの意図しない回転停止やロータリーバルブの破損を招くおそれがある。
【0009】
この発明の目的は、筐体内でのローターの回転羽根の端部と筐体の内側部との間へのチタン鉱石の噛込みを抑制することができるロータリーバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のロータリーバルブは、チタン鉱石の供給口及び排出口を有する筐体と、前記供給口から前記筐体の内部に供給されたチタン鉱石を前記排出口へ送り出すべく前記筐体の内部で回転可能なローターとを備えるロータリーバルブであって、前記ローターが、回転軸部、及び、前記回転軸部の周囲に互いに間隔をおいて設けられた複数枚の回転羽根を含む羽根部を有し、前記回転軸部の軸線方向で前記ローターの前記羽根部の端部と前記筐体の内側部との間に、チタン鉱石を前記排出口側へ通す鉱石用通路が設けられたものである。
【0011】
前記軸線方向に沿う前記鉱石用通路の通路幅は、2mm~10mmの範囲内であることが好ましい。
【0012】
前記筐体は、たとえば、前記羽根部の前記軸線方向の端部から間隔をおくとともに前記回転軸部の周囲に位置して前記内側部を構成する環状部材を有するものとすることができる。
この場合、前記羽根部と前記環状部材との間に、前記回転軸部の周囲に位置して前記鉱石用通路の通路幅を狭める環状の通路幅調整部材が、前記環状部材の表面に接触して設けられていることが好ましい。
【0013】
前記鉱石用通路は、前記排出口側に位置する出口に、当該鉱石用通路でのチタン鉱石の通過方向の前方側に向かうに従って前記軸線方向の内側に傾斜する傾斜面を有することが好ましい。
【0014】
前記羽根部は、各回転羽根の外周側縁部に設けられた可撓性部材を含むことが好適である。
【0015】
上記の可撓性部材は、前記筐体の内周面に接触して配置されていることが好ましい。
また、上記の可撓性部材は、前記外周側縁部における前記ローターの回転方向の後方側を向く表面側に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明のロータリーバルブによれば、筐体内でのローターの回転羽根の端部と筐体の内側部との間へのチタン鉱石の噛込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の一の実施形態のロータリーバルブを示す、鉛直方向に沿う断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】
図1のロータリーバルブへの通路幅調整部材の配設例を示す、
図1と同様の断面図である。
【
図5】他の実施形態のロータリーバルブを示す、
図1と同様の断面図である。
【
図6】
図1のロータリーバルブでの回転羽根への可撓性部材の取付け態様を示す、
図2の部分拡大断面図である。
【
図7】さらに他の実施形態のロータリーバルブを示す、
図1と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1~3に示す一の実施形態のロータリーバルブ1は、金属製等の筐体2と、筐体2の内部で回転可能なローター3とを備えるものである。前記ローター3は
図1の左右方向に延びる後述の回転軸部6を有し、ローター3は、この回転軸部6の回転の中心となる回転軸線の周りに回転可能である。この回転軸線に沿う方向を軸線方向という。
【0019】
ここで、筐体2は、鉛直方向の上方側(
図1、2の上方側)に位置して筐体2内へのチタン鉱石の供給に用いられる供給口4、及び、その供給口4と上記のローター3を隔てて反対側である鉛直方向の下方側(
図1、2の下方側)に位置して筐体2からのチタン鉱石の排出に用いられる排出口5を有する。供給口4及び排出口5を区画する筒状部分のそれぞれの周囲には、外周側に広がって延びる環状のフランジ部4aもしくは5aが形成されている。なお、供給口4には、チタン鉱石が投入されて貯蔵される図示しないホッパーが取り付けられることがある。ロータリーバルブ1を塩化炉へのチタン鉱石の供給に用いる場合、排出口5側は、図示は省略するが、必要に応じて他の設備等を介して塩化炉の内部に接続される。
【0020】
またここで、ローター3は、ほぼ水平方向に沿う回転軸部6と、回転軸部6の周囲で回転軸部6から半径方向外側に向かって放射状に延びるように設けられた金属製の平板等の複数枚の回転羽根7aを含む羽根部7とを有するものである。図示の例では、羽根部7は、回転軸部6の周囲で互いに等しい間隔をおいて配置された八枚の回転羽根7aを含むものとしているが、回転羽根の枚数は適宜変更することができる。なお、たとえば筐体2の外部には、ローター3に回転駆動力を直接的に又は他の部材を介して間接的に付与する図示しないモーターその他の駆動源が設けられ得る。
【0021】
かかるロータリーバルブ1では、ホッパー等から供給口4を介して筐体2内に供給されたチタン鉱石は、ローター3の複数枚の回転羽根7aの相互間に入り込む。そして、ローター3の回転に伴い、複数枚の回転羽根7a間のチタン鉱石は、回転軸部6の周囲で供給口4側から排出口5側に送られ、その後、排出口5から排出される。
【0022】
ここにおいて、たとえば塩化炉に供給されるチタン鉱石は、たとえば粒径(すなわち重量基準のメジアン径)が100μm~200μm程度という比較的微細なものとする場合がある。そのような微細で高硬度のチタン鉱石の通過量ないし塩化炉への供給量を、これまでのロータリーバルブを用いて制御した場合、回転軸部の軸線方向で羽根部の端部と筐体の内側部との間に、当該チタン鉱石が挟み込まれ、その間でチタン鉱石の噛込みが発生することがあった。この場合、羽根部の端部と筐体との間に挟み込まれたチタン鉱石が、ローターの回転を阻害し、回転不良によりチタン鉱石の通過量が変動することがある。さらには、ローターの回転が意図せずに停止したり、ロータリーバルブが破損したりする懸念もあった。
【0023】
これに対処するため、この実施形態では、
図1及び3に示すところから解かるように、回転軸部6の軸線方向でローター3の羽根部7の端部7bと筐体2の内側部2aとの間に隙間を設けて、そこにチタン鉱石を排出口5側へ通す鉱石用通路8を設ける。つまり、羽根部7の端部7bと筐体2の内側部2aとを離隔して位置させ、その間を鉱石用通路8としてチタン鉱石が通れるようにする。鉱石用通路8は、羽根部7の軸線方向の両端部7b側のそれぞれに設けられている。なおここでは、羽根部7の軸線方向の両端部7bはそれぞれ、回転軸部6の周囲を取り囲む円環形状の板状部分としている(
図1及び2参照)。図示の実施形態では、羽根部7の端部7bと筐体2の内側部2aとの間に、上記の鉱石用通路8が区画される。
【0024】
このことによれば、いずれも金属製等で比較的高硬度の羽根部7の端部7bと筐体2の内側部2aとの間に、高硬度のチタン鉱石が挟み込まれにくくなる。その結果として、ローター3の回転不良によるチタン鉱石の通過量の変動や、ローター3の回転停止、ロータリーバルブ1の破損を良好に抑制することができる。
【0025】
ロータリーバルブ1を通過するチタン鉱石の粒径(重量基準のメジアン径)は、先述したように、100μm~200μmとすることがある。これに対し、鉱石用通路8の通路幅Wpは、回転軸部6の軸線方向に沿う向きに測って、2mm~10mmとすることが好適である。軸線方向に沿う通路幅Wpを2mm以上とすることにより、鉱石用通路8でのチタン鉱石の噛込みの発生をさらに良好に抑制することができる。また、通路幅Wpを10mm以下とすれば、鉱石用通路8でチタン鉱石が意図せずに多量に通過してしまうことを抑えることができる。
【0026】
筐体2は、より詳細には、羽根部7の端部7bから間隔をおいて位置して回転軸部6の周囲に配置された内側部2aとしての環状部材2aと、ローター3の周囲を取り囲んで配置されて先述した供給口4、排出口5並びにフランジ部4a及び5aを形成する本体部2bとを有することがある。環状部材2aは、筐体2の先述した内側部2aを構成するものであり、本体部2bの側方(羽根部7よりも軸線方向の外側)に形成された開口部を塞ぐように本体部2bに取り付けられ得る。ローター3の軸線方向における環状部材2aの配設位置を変更することにより、鉱石用通路8の通路幅Wpを調整することが可能になる。なおここでは、環状部材2aはその中央の貫通孔に回転軸部6が挿入されて配置されており、環状部材2aの貫通孔の周縁には、ベアリング等の軸受部材を設けることができる。ローター3の軸線方向で環状部材2aの外側には、さらに他の部材が設けられる場合がある。
【0027】
また、回転軸部6の軸線方向にて羽根部7と環状部材2aとの間には、
図4に示すように、回転軸部6の周囲に位置して鉱石用通路8の通路幅Wpを狭くする環状の通路幅調整部材9を設けることができる。かかる通路幅調整部材9は、羽根部7と環状部材2aとの間で環状部材2a側に片寄って、環状部材2aにおける筐体2の内部を向く表面に接触するように配置している。通路幅調整部材9を設けることにより、羽根部7と環状部材2aとの間の隙間が狭くなるので、鉱石用通路8の通路幅Wpは、通路幅調整部材9の軸線方向に沿う厚みに応じて所定の大きさに調整することが可能になる。通路幅調整部材9は、軸線方向で羽根部7を隔てた両側の鉱石用通路8のうち、少なくとも一方の鉱石用通路8に設けることができる。
【0028】
図1~4に示す実施形態のロータリーバルブ1では、鉱石用通路8が、排出口5側に位置する出口に、鉱石用通路8でのチタン鉱石の通過方向の前方側(
図1に矢印で示す側)に向かうに従って軸線方向の内側に傾斜する傾斜面10を有するものとしている。この実施形態では、傾斜面10は、羽根部7の端部7bと回転羽根7aの外周側縁部7cとの角部から離れて位置するように設けられている。これにより、鉱石用通路8に入ったチタン鉱石は、回転軸部6を通過した後の出口付近で、傾斜面10により軸線方向の内側に送られて円滑に排出口5に到達する。
【0029】
但し、
図5に示す他の実施形態のように、上記の傾斜面10を設けないことも可能である。
図5のロータリーバルブ1は、鉱石用通路8の出口を傾斜面ではなく、入口とほぼ同様の段差のある表面20とし、該表面20を羽根部7の端部7bと回転羽根7aの外周側縁部7cとの角部に近接させて位置させたことを除いて、
図1~3のロータリーバルブ1と実質的に同様の構成を有するものである。
図5のロータリーバルブ1でも、チタン鉱石は鉱石用通路8の出口を、羽根部7の端部7bと上記の表面20との間から通過し、排出口5に至ることができる。
【0030】
なお
図5では、
図1~3に示すロータリーバルブ1とほぼ同様の構造ないし部分は、同一の符号を付して示している。後述する
図7についても同様である。
【0031】
また、ロータリーバルブ1は、
図1~5に示すように、各回転羽根7aの外周側縁部7cに可撓性部材7dを設けて、羽根部7が、回転軸部6から半径方向の最も外側に離れた位置に当該可撓性部材7dを有することが好ましい。回転羽根が金属製等の硬度の高い材料からなる場合、回転羽根7aの外周側縁部7cと、内周側を向く高硬度の筐体2の内周面2cとの間にチタン鉱石が挟まって、そこでも噛込みが発生するおそれがあるが、可撓性部材7dを設けることにより、そのような箇所でのチタン鉱石の噛込みの発生をも良好に抑制することができる。また、ロータリーバルブ1の使用に伴い、筐体2の内周面2cが摩耗した場合であっても、回転羽根7aの外周側縁部7cへの可撓性部材7dの取付け箇所や大きさ等を変更することにより、羽根部7と筐体2の内周面2cとの間のチタン鉱石の通過を抑えることができて、チタン鉱石の安定した通過量を長期間にわたって実現することができる。
【0032】
可撓性部材7dは、具体的には、たとえば、ゴムその他の弾性材料からなる板状弾性部材を含むもの又は、多数の繊維を設けたブラシを含むもの等とすることができる。なかでも板状弾性部材、とりわけ板状ゴム部材を含む可撓性部材7dは、ブラシを含むものに比して、チタン鉱石が回転羽根7aを乗り越えて移動することを抑制できる点で好ましい。但し、可撓性部材7dは、これに限定されず、筐体2の内周面2cとの間にチタン鉱石が挟まった際に撓んで、チタン鉱石の噛込みが発生しないようにすることが可能なものであればよい。
【0033】
また、可撓性部材7dは、その周囲を取り囲む筐体2の内周面2cに接触して配置することが好適である。これにより、可撓性部材7dと筐体2の内周面2cとの間での意図しないチタン鉱石の通過が抑制されて、チタン鉱石の通過量をより高精度に制御することができる。場合によっては、可撓性部材7dが撓んだ状態になるように、可撓性部材7dを筐体2の内周面2cに押し付けて配置することもできる。
【0034】
回転羽根7aの外周側縁部7cに可撓性部材7dを設けるに当り、具体的には、可撓性部材7dを、
図6に矢印で示すローター3の回転方向Drにて、回転羽根7aの外周側縁部7cの後方側を向く表面上に取り付ける等して、当該後方側の表面側に設けることが好ましい。これにより、ロータリーバルブ1の作動時に、可撓性部材7dが外周側縁部7cと筐体2の内周面2cとの間に挟まれ難くなり、ローター3の回転が良好になる。この場合、回転羽根7aは、外周側縁部7cが筐体2の内周面2cに到達せずに内周面2cから離れるような半径方向の長さとし、可撓性部材7dは、その回転羽根7aの外周側縁部7cと筐体2の内周面2cとの間を埋めるように、外周側縁部7cの後方側の表面上に取り付けることができる。
【0035】
なお、上記の可撓性部材7dを設けることは必須ではなく、可撓性部材7dは省略することもある。
図7に示す実施形態は、羽根部7が可撓性部材7dを有しないことを除いて、
図1~3のものと実質的に同様の構成を有するものである。
図7のロータリーバルブ1であっても、回転羽根7aの半径方向の長さの調整等によっては、先述したような外周側縁部7cと筐体2の内周面2cとの間でのチタン鉱石の噛込みがほぼ発生しないことがある。
【実施例】
【0036】
次に、この発明のロータリーバルブを試作し、その効果を評価したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
【0037】
実施例1~4のロータリーバルブは、
図1~7に示す構造を有するものとした。実施例1では、鉱石用通路の通路幅を3mmとし、可撓性部材として板状ゴム(板状ゴム部材)を設けた。実施例2のロータリーバルブは、
図7に示す構造を有するものであり、可撓性部材を無くしたことを除いて実施例1と同様とした。実施例3のロータリーバルブは、
図5に示す構造を有するものであり、鉱石用通路が傾斜面を有しないことを除いて実施例1と同様とした。実施例4のロータリーバルブは、鉱石用通路の通路幅を10mmとしたことを除いて実施例1と同様とした。
【0038】
比較例1のロータリーバルブは、羽根部の端部と筐体の内側部とが近接して位置しており、鉱石用通路が設けられていないことを除いて、実施例1と同様の構造を有するものとした。比較例2のロータリーバルブはさらに、羽根部が回転羽根の外周側縁部に可撓性部材を有しないことを除いて、比較例1と同様の構造を有するものとした。なお、比較例2のロータリーバルブでは、各回転羽根の外周側縁部と筐体の内周面とが近接して位置するようにした。
【0039】
上記の実施例1~4並びに比較例1及び2のロータリーバルブのそれぞれを用いて、チタン鉱石の噛込みが発生するかどうか、及び、チタン鉱石の計量誤差の評価を行った。
具体的には、ロータリーバルブの供給口の上方側に設置したホッパー内に35トンのチタン鉱石を入れた状態で、ロータリーバルブの運転を開始し、ホッパー内からロータリーバルブにチタン鉱石を供給し、チタン鉱石がロータリーバルブを通過するようにした。運転開始から180分が経過するまでの間に、ロータリーバルブが意図せずに停止した回数を計測した。ロータリーバルブのチタン鉱石の単位時間当たりの通過量は、狙い値180kg/minとした。チタン鉱石のメジアン径は100μm~200μmの範囲内であった。ロータリーバルブの停止回数が0回又は1回であれば、チタン鉱石の噛込みがほぼ生じておらず、良好な運転が行われたと判断できる。ロータリーバルブの停止回数が2回以上であると、実際の操業に支障をきたすと考えられる。
【0040】
また、この運転において、正確な計量器で計量済みのチタン鉱石1500kgを、ホッパーに供給した際に、ホッパーに設置した計量器で計量されるチタン鉱石の量を20回測定し、計量誤差を確認した。より詳細には、正確な計量器でチタン鉱石を1500kg計量する。次いで、ロータリーバルブを停止し、バルブ上に設置してあるホッパーのロードセル値をゼロリセットする。ホッパーへのチタン鉱石の投入完了後、ホッパーのロードセル値を読み取り、チタン鉱石の投入量を確認する。ここで1500kgと測定された場合、誤差は無し(0%)と判断できる。なおここで、誤差が発生するのは、チタン鉱石が停止中のロータリーバルブを通過し、ホッパー内のチタン鉱石がロータリーバルブ内に供給されてしまったことによるものと考えられる。このような計量器での計量からホッパーのロードセル値の確認までの操作を20回行い、それらの誤差の平均値を計量誤差とした。
ロータリーバルブの停止回数及び計量誤差の結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
表1から解かるように、実施例1~4のロータリーバルブは、停止回数が多くても1回であり、ほぼ停止が起こらなかった。また実施例1、3、4では、上記の計量誤差が極めて小さかった。
【0043】
一方、比較例1のロータリーバルブでは、運転中にローターの回転停止が4回起こり、その都度、ロータリーバルブに打撃を与えて、噛み込んだチタン鉱石を排出させた後、運転を再開させた。なお比較例1は、チタン鉱石の計量においてホッパーの計量値のほうが少なく、上記の計量誤差は0.23%であった。
比較例2のロータリーバルブでは、運転中にローターの回転停止が5回起こり、そのたびに噛み込んだチタン鉱石の排出の作業が必要になった。また比較例2は、チタン鉱石の計量においてホッパーの計量値のほうが少なく、上記の計量誤差は3.20%であった。
【0044】
以上より、この発明のロータリーバルブによれば、チタン鉱石の噛込みを抑制できることがわかった。
【符号の説明】
【0045】
1 ロータリーバルブ
2 筐体
2a 内側部(環状部材)
2b 本体部
2c 内周面
3 ローター
4 供給口
4a フランジ部
5 排出口
5a フランジ部
6 回転軸部
7 羽根部
7a 回転羽根
7b 羽根部の端部
7c 回転羽根の外周側縁部
7d 可撓性部材
8 鉱石用通路
9 通路幅調整部材
10 傾斜面
20 段差のある表面
Dr ローターの回転方向