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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
E02F9/00 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020187153
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076663
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長南 悠太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智之
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188558(JP,A)
【文献】特開2017-094888(JP,A)
【文献】特開平09-088122(JP,A)
【文献】特開2017-227166(JP,A)
【文献】特開2015-121102(JP,A)
【文献】特開2018-150741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0160469(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に配置され、尿素水を貯える尿素水タンクと、
前記車体に設けられ、前記尿素水タンクを収容するタンク収容ケースとを備えた建設機械において、
前記タンク収容ケースは、
前記タンク収容ケースに収容された前記尿素水タンクよりも上側に設けられ、前記尿素水タンクを上側から覆う上面部と、
前記上面部に設けられ、前記上面部の上面から下方に向けて有底状に凹む凹部と、
前記凹部の底部に設けられ、前記尿素水タンクに尿素水を補給するための補給口とを備えることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記尿素水タンクは内部に尿素水を供給する給水口を有し、
前記タンク収容ケースは、
一端側が前記補給口に接続されると共に他端側が前記尿素水タンクの前記給水口に接続され、前記補給口から補給された尿素水を前記尿素水タンクの前記給水口に導く尿素水補給管を備えることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記タンク収容ケースは、
前記タンク収容ケースの前記補給口と前記尿素水タンクに補給する尿素水を貯える補給タンクの注水口との両方に対して取付け取外しが可能な蓋体を備え、
前記蓋体は、
前記タンク収容ケースの前記補給口と前記補給タンクの前記注水口との両方に係合可能な係合孔、および、前記係合孔とは別に設けられ前記補給口に接続可能な接続孔を有する蓋体本体と、
前記蓋体本体に設けられ、前記係合孔と前記接続孔との間を尿素水の通過を可能に接続する尿素水通路と、
前記タンク収容ケースの前記補給口に前記係合孔を係合させたときに、前記尿素水通路を閉塞し、前記タンク収容ケースの前記補給口に前記接続孔を接続させたときに、前記尿素水通路を連通する弁部材とを有していることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記タンク収容ケースの前記補給口には、前記補給口内を延びるピン部材が設けられており、
前記ピン部材は、前記蓋体の前記接続孔を前記タンク収容ケースの前記補給口に接続させたときに、前記蓋体の前記弁部材を前記尿素水通路が連通する位置に移動させることを特徴とする請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記蓋体本体は、内部が中空となった中空構造となっており、
前記尿素水通路は、前記蓋体本体の中空構造によって構成されており、
前記弁部材は、前記中空構造の前記蓋体本体内で前記尿素水通路を閉塞する閉塞位置と前記尿素水通路を連通する連通位置とに移動可能に設けられており、
前記弁部材は、前記ピン部材との当接によって前記連通位置に移動されることを特徴とする請求項4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記蓋体は、
前記弁部材を前記尿素水通路が閉塞する位置に向けて押圧する弾性部材を有していることを特徴とする請求項3に記載の建設機械。
【請求項7】
前記タンク収容ケースの前記補給口には、前記補給口から前記尿素水タンクに向けて流通する尿素水から異物を分離するためのフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、走行可能な車体と、車体に設けられたエンジンと、エンジンからの排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置とを備えている。排気ガス浄化装置としては、例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中の窒素酸化物(Nox)を浄化する尿素SCRシステムが採用されている(SCR:Selective Catalytic Reduction)。
【0003】
この場合、例えば、特許文献1に記載されているように、排気ガス浄化装置は、エンジンの排気管に接続され排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒と、液体還元剤である尿素水を尿素選択還元触媒の上流側に噴射する尿素水噴射弁と、尿素水噴射弁に供給される尿素水を貯える尿素水タンクとを備えている。尿素水タンクには、外部から尿素水を供給(給水)するための給水口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-121102号公報(特許第5965892号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来技術によれば、尿素水タンクに尿素水を供給(給水、補給)するときに、この作業を行う作業者は、尿素水を貯えた補給タンクを保持し続ける必要がある。BIB(バック・イン・ボックス)とも呼ばれる尿素水の補給タンクの容量は、例えば、20L程度あり、重いため、尿素水の補給作業を行う作業者にとって、その作業が負担になる可能性がある。
【0006】
本発明の一実施形態の目的は、補給タンク(BIB)から尿素水タンクに尿素水を供給(補給)する作業者の負担を低減できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、車体に配置され、排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒の還元剤である尿素水を貯える尿素水タンクと、前記車体に設けられ、前記尿素水タンクを収容するタンク収容ケースとを備えた建設機械において、前記タンク収容ケースは、前記タンク収容ケースに収容された前記尿素水タンクよりも上側に設けられ、前記尿素水タンクを上側から覆う上面部と、前記上面部に設けられ、前記上面部の上面から下方に向けて有底状に凹む凹部と、前記凹部の底部に設けられ、前記尿素水タンクに尿素水を補給するための補給口とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、補給タンクから尿素水タンクに尿素水を供給(補給)する作業者の負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態による油圧ショベルを示す右側面図である。
図2】油圧ショベルの旋回フレーム上にエンジン、燃料タンク、作動油タンク、タンク収容ケース、工具収容ケース等を搭載した状態を示す平面図である。
図3】旋回フレームの右前部、タンク収容ケース、工具収容ケース等を右前側からみた斜視図である。
図4】タンク収容ケースのカバーを開いた状態を示す図3と同様位置の斜視図である。
図5図2中の矢示V-V方向からみた断面図である。
図6】補給タンクから尿素水タンクに尿素水の補給(給水)を行う手順を示す説明図である。
図7】補給タンクの尿素水を尿素水タンクに補給している状態を示す図5と同様位置の断面図である。
図8図6中の矢示VIII-VIII方向からみた凹部の底部の平面図である。
図9】給水キャップ(蓋体)の断面図である。
図10】変形例を示す図5と同様位置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態による建設機械を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1ないし図9は、実施の形態を示している。図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、クローラ式の油圧ショベルとして構成されている。即ち、建設機械としての油圧ショベル1は、走行可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に設けられた旋回装置3と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う多関節構造のフロント作業装置5(以下、作業装置5という)とを備えている。この場合、下部走行体2と上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体(油圧ショベル本体)を構成している。
【0012】
下部走行体2は、左,右の履帯2Aを周回駆動させる左,右の走行用油圧モータ(図示せず)を備えている。上部旋回体4は、旋回軸受、旋回用油圧モータ、減速機構等を含んで構成される旋回装置3を介して、下部走行体2上に搭載されている。作業装置5は、例えば、ブーム5A、アーム5B、作業具としてのバケット5Cを備えている。作業装置5は、ブーム5Aを駆動するブームシリンダ5D、アーム5Bを駆動するアームシリンダ5E、バケット5Cを駆動する作業具シリンダとしてのバケットシリンダ5Fを備えている。
【0013】
上部旋回体4は、支持構造体をなす旋回フレーム6と、旋回フレーム6の後側に設けられ、作業装置5との重量バランスをとるカウンタウエイト7と、旋回フレーム6の前部左側に設けられオペレータが搭乗するキャブ8と、カウンタウエイト7の前側に設けられ、内部にエンジン10、熱交換装置12、排気ガス浄化装置16を構成する排気ガス後処理装置17等を収容する建屋カバー9とを含んで構成されている。実施の形態では、上部旋回体4は、エンジン10と、排気ガス浄化装置16(尿素選択還元触媒17B、尿素水タンク18等)と、タンク収容ケース21とを備えている。
【0014】
旋回フレーム6は、車体フレームとも呼ばれており、上部旋回体4の支持構造体を構成している。図2に示すように、旋回フレーム6は、前,後方向に延びる厚肉な底板6Aと、底板6A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板6B,右縦板6Cと、底板6Aまたは各縦板6B,6Cから左,右方向の外向きに延び前,後方向に間隔をもって配置された複数本の張出しビーム6Dと、左,右方向の外側に位置して各張出しビーム6Dの先端に取り付けられ、前,後方向に延びた左サイドフレーム6E,右サイドフレーム6Fとを含んで構成されている。
【0015】
図3および図4に示すように、旋回フレーム6の前部右側には、右サイドフレーム6Fの前端部から左側に延びた前側ビーム6Gと、底板6Aの右側端縁と右サイドフレーム6Fとの間を覆ったアンダカバー(図示せず)とが設けられている。旋回フレーム6の前部右側は、後述するタンク収容ケース21の底部側を形成している。前側ビーム6Gには、長方形状の足掛け板6Hが前方に突出して設けられている。足掛け板6Hは、エンジン10等のメンテナンスを行う作業者が下部走行体2から上部旋回体4上に上るときに、最初に足を掛ける1段目のステップを構成している。
【0016】
キャブ8の内部には、オペレータが着席する運転席、油圧ショベル1を操作するための操作装置である走行用レバー・ペダル操作装置および作業用レバー操作装置(いずれも図示せず)等が設けられている。オペレータは、走行用レバー・ペダル操作装置および作業用レバー操作装置を操作することにより、下部走行体2による走行動作、上部旋回体4の旋回動作、作業装置5による掘削作業等を行うことができる。
【0017】
図2に示すように、エンジン10は、旋回フレーム6の後側に搭載されている。この場合、エンジン10は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム6上に左,右方向に延びる横置き状態で設けられている。エンジン10は、油圧ショベル1の原動機(駆動源)を構成するものであり、ディーゼルエンジン(内燃機関)によって構成されている。エンジン10の左側には、熱交換装置12に冷却風を供給するための冷却ファン10Aが設けられている。一方、エンジン10の右側には、油圧ポンプ13が設けられている。
【0018】
エンジン10には、排気ガスを排出するための排気管11が接続されている。排気管11は、エンジン10の前側を左,右方向に延びる金属製の排気管路として形成されている。排気管11は、エンジン10から排出された高温の排気ガスを排気ガス後処理装置17へと導く。
【0019】
熱交換装置12は、エンジン10の左側に配設されている。熱交換装置12は、エンジン10の冷却ファン10Aに対面して設けられている。熱交換装置12は、例えば、エンジン冷却水を冷却するラジエータ、作動油を冷却するオイルクーラ、エンジン10が吸込む空気を冷却するインタクーラ等により構成されている。
【0020】
油圧ポンプ13は、エンジン10の右側に設けられている。油圧ポンプ13は、エンジン10によって駆動されることにより、作動油タンク14に貯溜された作動油を圧油として吐出する。油圧ポンプ13から吐出された圧油は、コントロールバルブ装置(図示せず)を介して油圧アクチュエータ(例えば、ブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5F、旋回用油圧モータ、走行用油圧モータ)に供給される。
【0021】
作動油タンク14は、油圧ポンプ13の前側に位置して旋回フレーム6の右側に設けられている。作動油タンク14は、油圧アクチュエータを駆動するための作動油を貯える。一方、燃料タンク15は、作動油タンク14の前側に位置して旋回フレーム6に設けられている。
【0022】
コントロールバルブ装置は、複数の方向制御弁からなる制御弁群である。コントロールバルブ装置は、油圧ポンプ13から吐出された圧油を、キャブ8内の走行用レバー・ペダル操作装置および作業用レバー操作装置の操作に応じて、油圧アクチュエータに分配する。即ち、コントロールバルブ装置は、オペレータによる走行用レバー・ペダル操作装置および作業用レバー操作装置のレバー操作、ペダル操作に応じて、油圧ポンプ13から吐出された圧油を油圧アクチュエータに供給または排出する。
【0023】
排気ガス浄化装置16は、エンジン10からの排気ガスを浄化する。排気ガス浄化装置16は、エンジン10から排出される排気ガス中の有害物質を除去する。排気ガス浄化装置16は、排気ガスの騒音を低減するための消音機構を備えている。排気ガス浄化装置16は、尿素選択還元触媒17Bおよび尿素水噴射弁(図示せず)を有する排気ガス後処理装置17、後述する尿素水タンク18、排気ガス後処理装置17の尿素水噴射弁(図示せず)と尿素水タンク18との間を接続する尿素水供給管路(図示せず)、尿素水供給管路に設けられ尿素水タンク18の尿素水を尿素水噴射弁に供給する尿素水供給装置(図示せず)等を備えている。
【0024】
排気ガス後処理装置17は、排気管11の出口側に接続されている。排気ガス後処理装置17は、NOx浄化装置とも呼ばれており、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を、還元剤となる尿素水(尿素水溶液)を用いて浄化する。排気ガス後処理装置17は、排気管11に接続された収容筒体17Aと、収容筒体17A内の上流側に収容された尿素選択還元触媒17Bと、尿素選択還元触媒17Bの下流側に配置された酸化触媒17Cと、尿素選択還元触媒17Bの上流側に設けられた尿素水噴射弁とにより構成されている。
【0025】
尿素選択還元触媒17Bは、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去する。即ち、尿素選択還元触媒17Bは、エンジン10から排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物を、尿素水(尿素水溶液)から生成されたアンモニアによって選択的に還元反応させ、窒素と水に分解する。尿素水噴射弁は、尿素水供給管路等を介して尿素水タンク18に接続されている。排気ガス後処理装置17は、尿素水噴射弁により排気ガス中に尿素水を噴射し、尿素選択還元触媒17Bにより尿素水から生成されたアンモニアを用いて排気ガス中のNOxを還元反応させ、水と窒素に分解する。酸化触媒17Cによって排気ガス中のアンモニアを低減させる。
【0026】
尿素水タンク18は、尿素選択還元触媒17Bの還元剤(液体還元剤)である尿素水を貯える。図2図7に示すように、尿素水タンク18は、設置場所の一例として、燃料タンク15よりも前側に位置して旋回フレーム6に設けられている。即ち、尿素水タンク18は、車体(上部旋回体4)、具体的には、旋回フレーム6の前側で、かつ、作業装置5を挟んでキャブ8とは車体(車両)の左,右方向の反対側に配置されている。尿素水タンク18は、尿素水供給管路および尿素水供給装置を介して尿素水噴射弁に接続されている。尿素水タンク18内の尿素水は、尿素水供給装置の駆動により尿素水供給管路内を流通して尿素水噴射弁に供給される。
【0027】
ところで、前述の従来技術によれば、尿素水タンクに尿素水を供給(給水、補給)するときに、この作業を行う作業者は、尿素水を貯えた補給タンクを保持し続ける必要がある。BIB(バック・イン・ボックス)とも呼ばれる尿素水の補給タンクの容量は、例えば、20L程度あり、重いため、尿素水の補給作業を行う作業者にとって、その作業が負担になる可能性がある。
【0028】
実施の形態では、補給タンク(BIB)から尿素水タンクに尿素水を供給(補給)する作業者の負担を低減できるように、次の構成を採用している。即ち、実施の形態では、尿素水タンク18を覆うタンク収容ケース21に補給口28を設けている。この補給口28は、タンク収容ケース21の最外面(最上面)となる上面部23より一段下がった面、即ち、タンク収容ケース21の上面部23に設けられた凹部27の底部27Aに設けられている。
【0029】
タンク収容ケース21の補給口28と尿素水タンク18の給水口18Aとの間は、尿素水補給管34を介して接続している。このため、図7に示すように、BIB(バック・イン・ボックス)とも呼ばれる補給タンク51から尿素水タンク18に尿素水を補給する作業は、補給タンク51をタンク収容ケース21上(上面部23上)に置いた状態で行うことができる。この結果、補給作業を行う作業者は、給水作業中に補給タンク51を保持し続ける必要がなくなり、作業者の負担を軽減できる。
【0030】
以下、実施の形態によるタンク収容ケース21、尿素水タンク18等を含む上部旋回体4の右前側の構造について、図3ないし図9を参照しつつ説明する。
【0031】
図3に示すように、車体(上部旋回体4)の右前側、即ち、旋回フレーム6の前部位置でキャブ8とは反対側となる右前側には、内部に尿素水タンク18を収容するタンク収容ケース21と、タンク収容ケース21の上側に配置され内部に工具を収容する工具収容ケース41とが設けられている。換言すれば、旋回フレーム6の前部右側には、燃料タンク15の前側に位置してタンク収容ケース21および工具収容ケース41が設けられている。
【0032】
タンク収容ケース21は、旋回フレーム6の前側ビーム6Gの前端縁から立ち上がって形成された前面部22と、前面部22の上端縁から後側に向けて延びる上面部23と、上面部23の後端縁から燃料タンク15の前面に対面しつつ下側に向けて延びる後面部(図示せず)と、前面部22と後面部とを挟むように立設された左側面部24(図5等参照)および右側面部25とにより直方体形状をなした中空構造体として構成されている。
【0033】
なお、タンク収容ケース21の後面部は、燃料タンク15の前面が代わりとなってタンク収容ケース21の後側を閉塞する場合には、省略することができる。タンク収容ケース21の上面部23は、開閉カバー26と共に、旋回フレーム6の足掛け板6Hに続く2段目のステップを構成している。
【0034】
工具収容ケース41は、タンク収容ケース21の上部位置に設けられている。工具収容ケース41は、その前,後方向の長さ寸法が、タンク収容ケース21の前,後方向の長さ寸法の半分程度に設定されている。工具収容ケース41は、タンク収容ケース21の上面部23の後側半分に位置して取り付けられている。
【0035】
工具収容ケース41の内部には、例えば、メンテナンス作業に必要なスパナ、ドライバ、ボルト等の工具を収容することができる。工具収容ケース41は、工具の出し入れをするときに開閉される開閉カバー42を備えている。開閉カバー42は、タンク収容ケース21の上面部23(開閉カバー26)に続く3段目のステップを構成している。
【0036】
タンク収容ケース21は、「旋回フレーム6の右縦板6C」と「右側最前部に位置する張出しビーム(図示せず)」と「右サイドフレーム6Fの前側部分」と「前側ビーム6G」とに囲まれた旋回フレーム6のアンダカバー上の空間を利用することにより、その内部に大きな収容空間を備えている。このようなタンク収容ケース21内の収容空間には、尿素水タンク18が配置されている。
【0037】
尿素水タンク18は、タンク収容ケース21内に位置して、旋回フレーム6のアンダカバー上に取り付けられている。尿素水タンク18は、内部に尿素水を供給する給水口18Aを有している。給水口18Aは、尿素水タンク18の上側に設けられている。給水口18Aは、尿素水タンク18をタンク収容ケース21内に収めた状態で、タンク収容ケース21の補給口28と上,下方向に対面する位置に設けられている。尿素水タンク18の給水口18Aとタンク収容ケース21の補給口28は、尿素水補給管34により接続されている。
【0038】
次に、タンク収容ケース21について詳しく説明する。
【0039】
タンク収容ケース21は、上面部23と、凹部27と、補給口28とを備えている。タンク収容ケース21は、尿素水補給管34と、蓋体としての給水キャップ36とを備えている。上面部23は、タンク収容ケース21に収容された尿素水タンク18よりも上側に設けられており、尿素水タンク18を上側から覆っている。図7に示すように、上面部23には、尿素水の補給作業のときに、補給タンク51が載置される。
【0040】
凹部27は、上面部23に設けられており、上面部23の上面23Aから下方に向けて有底状に凹んでいる。即ち、図4に示すように、凹部27は、上面部23の上面23Aから下方に向けて四角形状に凹んでいる。凹部27は、四角形状の底部27Aと、底部27Aから上側に向けて立ち上がり、底部27Aと上面部23とを接続する側壁部27Bとを有している。
【0041】
凹部27の開口は、開閉カバー26により覆われている。即ち、上面部23には、開閉カバー26がヒンジ26Aにより取付けられている。油圧ショベル1の稼働中(換言すれば、尿素水の補給作業を行っていないとき)は、図3に示すように、開閉カバー26によって凹部27を閉塞することができる。これに対して、補給タンク51により尿素水タンク18に尿素水を補給するときは、図4に示すように、開閉カバー26を上側に開くことにより、凹部27を露出させることができる。
【0042】
図5ないし図8に示すように、補給口28は、凹部27の底部27Aに設けられている。補給口28は、尿素水タンク18に尿素水を補給するための開口である。補給口28は、給水キャップ36が着脱可能に取付けられる接続体29を備えている。補給口28の下側には、尿素水タンク18の給水口18Aが配置されている。補給口28は、尿素水タンク18の給水口18Aと尿素水補給管34を介して接続されている。
【0043】
尿素水補給管34は、一端側が補給口28に接続されると共に、他端側が尿素水タンク18の給水口18Aに接続されている。尿素水補給管34は、補給口28から補給された尿素水を尿素水タンク18の給水口18Aに導く。尿素水補給管34は、凹部27の補給口28に接続される大径部34Aと、尿素水タンク18の給水口18Aに接続される小径部34Bと、大径部34Aと小径部34Bとを接続する縮径部34Cとを備えている。縮径部34Cは、大径部34Aから小径部34Bに進む程(下側に進む程)、径方向寸法が小さくなっている。大径部34Aは、小径部34Bよりも内径寸法が大きい。大径部34Aには、補給口28の内側に位置して接続体29が取付けられている。即ち、大径部34Aの内側には、接続体29が取付けられている。接続体29は、大径部34Aと縮径部34Cとの接続部分に支持された状態で、大径部34Aに嵌っている。
【0044】
接続体29は、補給口28に設けられている。実施の形態では、接続体29は、補給口28に尿素水補給管34の大径部34Aを介して設けられている。接続体29は、底板部30と、筒部31と、側板部32(図8)と、ピン部材33とを備えている。底板部30は、筒部31よりも外径方向寸法が大きい円板状に形成されている。この場合、底板部30は、尿素水補給管34の大径部34Aの内径とほぼ同じ外径寸法を有しており、大径部34A内に配置されている。
【0045】
底板部30のうち筒部31よりも外径側には、尿素水が通過する貫通孔30Aが設けられている。図8に示すように、貫通孔30Aは、例えば、4個所位置、即ち、周方向に隣り合う側板部32の間に対応する位置に筒部31の軸方向に平行にあいた貫通孔として形成されている。底板部30のうち筒部31の筒内(内側空間)と対応する部位は、閉塞されている。底板部30の中央部位には、ピン部材33が設けられている。
【0046】
筒部31は、底板部30から垂直に延びる円筒体として形成されている。筒部31には、尿素水が通過する貫通孔31Aが設けられている。図8に示すように、貫通孔31Aは、例えば、筒部31の4個所位置、即ち、周方向に隣り合う側板部32の間に対応する位置に筒部31の径方向にあいた貫通孔として形成されている。筒部31の一端側(底板部30とは反対側となる上端側)には、給水キャップ36が着脱可能に取付けられる。
【0047】
この場合、図5に示すように、油圧ショベル1の稼働中(尿素水の補給作業以外のとき)は、筒部31の一端側に給水キャップ36の係合孔37Aが係合されている。例えば、筒部31の一端側の外周は雄ねじとなっており、この雄ねじとなった筒部31の径方向外側に、雌ねじが形成された係合孔37Aが螺合される。
【0048】
一方、図7に示すように、尿素水の補給作業のときは、筒部31の一端側に給水キャップ36の接続孔37Bが接続されている。例えば、筒部31の一端側の内周は平滑面となっており、この平滑面となった筒部31の径方向内側に、接続孔37Bを構成する筒体37Cの外周面(平滑面)が嵌着される。
【0049】
側板部32は、底板部30上に周方向に離間して設けられている。例えば、側板部32は、周方向に等間隔(90°)に離間した4個所位置に設けられている。周方向に隣り合う側板部32の間は、フィルタ取付け部となっており、それぞれフィルタ35が装着されている。これにより、タンク収容ケース21の補給口28には、フィルタ35が設けられている。フィルタ35は、補給口28から尿素水タンク18に向けて流通する尿素水から異物を分離する。
【0050】
ピン部材33は、底板部30の中央位置に設けられている。ピン部材33は、底板部30から筒部31内を筒部31の軸方向と平行に延びている。これにより、タンク収容ケース21の補給口28内には、底板部30によって補給口28内を軸方向に延びるピン部材33が設けられている。ピン部材33は、筒部31の軸方向寸法よりも大きくなっており、筒部31の開口縁よりも上側に突出している。
【0051】
図7に示すように、ピン部材33は、給水キャップ36の筒体37Cが接続体29の筒部31の一端側に接続された状態で、給水キャップ36の弁部材39と当接し、弁部材39を上方に押し上げる。即ち、尿素水の補給作業のときは、給水キャップ36の接続孔37B(より具体的には、接続孔37Bを構成する筒体37C)をタンク収容ケース21の補給口28(より具体的には、補給口28に設けられた接続体29の筒部31)に接続させる。このとき、ピン部材33は、給水キャップ36の弁部材39を、尿素水通路38が連通する位置に移動させる。これにより、補給タンク51から給水キャップ36を通じて尿素水タンク18に尿素水を供給することができる。
【0052】
図5ないし図7に示すように、給水キャップ36は、タンク収容ケース21の補給口28と補給タンク51の注水口51Aとの両方に対して取付け取外しが可能である。補給タンク51は、BIB(バック・イン・ボックス)とも呼ばれ、尿素水タンク18に補給する尿素水を貯える。給水キャップ36は、油圧ショベル1の稼働中、換言すれば、尿素水の補給作業以外のときに、タンク収容ケース21の補給口28、より具体的には、補給口28に設けられた接続体29に取付けられている。これに対して、補給タンク51を用いて尿素水の補給作業を行うときは、図6に示すように、タンク収容ケース21の補給口28(接続体29)から給水キャップ36を取外し、補給タンク51の注水口51Aに取付ける。
【0053】
ここで、図9等に示すように、給水キャップ36は、蓋体本体としてのキャップ本体37と、尿素水通路38と、弁部材39とを有している。給水キャップ36は、弾性部材としてのばね40を有している。キャップ本体37は、円筒状に形成されており、係合孔37A、および、この係合孔37Aとは別に設けられた接続孔37Bとを有している。即ち、キャップ本体37の軸方向の一側(図9では下側)には、タンク収容ケース21の補給口28(より具体的には、補給口28の接続体29)と補給タンク51の注水口51Aとの両方に係合可能な係合孔37Aが設けられている。
【0054】
係合孔37Aは、例えば、雌ねじ孔として形成されている。タンク収容ケース21の補給口28および補給タンク51の注水口51Aは、例えば、外周が雄ねじとなった筒体として構成されている。図5ないし図7に示すように、給水キャップ36の係合孔37A(雌ねじ孔)は、補給口28に対して螺合により取付け取外しが可能となっており、注水口51Aに対しても螺合により取付け取外しが可能となっている。
【0055】
キャップ本体37の軸方向の他側(図9では上側)には、タンク収容ケース21の補給口28(より具体的には、補給口28の接続体29)に接続可能な接続孔37Bが設けられている。接続孔37Bは、例えば、キャップ本体37の軸方向の他側に設けられた筒体37Cによって構成されており、筒体37Cの外周は平滑面になっている。図7に示すように、筒体37Cは、補給口28の接続体29、より具体的には、接続体29の筒部31に挿入される。筒部31の内周は平滑面となっている。給水キャップ36の接続孔37Bは、接続体29の筒部31に筒体37Cが挿入(嵌合)されることにより、補給口28に接続される。
【0056】
尿素水通路38は、キャップ本体37に設けられており、係合孔37Aと接続孔37Bとの間を尿素水の通過を可能に接続している。キャップ本体37は、内部が中空となった中空構造となっており、尿素水通路38は、キャップ本体37の中空構造によって構成されている。弁部材39は、尿素水通路38内に設けられている。図5に示すように、弁部材39は、タンク収容ケース21の補給口28(接続体29)に給水キャップ36の係合孔37Aを係合させたときに、尿素水通路38を閉塞する。
【0057】
図7に示すように、弁部材39は、タンク収容ケース21の補給口28に給水キャップ36の接続孔37Bを接続させたときに、尿素水通路38を連通する。ばね40は、弁部材39を尿素水通路38が閉塞する位置に向けて押圧する。尿素水の補給作業のときは、弁部材39は、ピン部材33によって押圧される(押し上げられる)ことにより尿素水通路38が連通する位置にばね40の弾性力に抗して移動する。即ち、弁部材39は、中空構造のキャップ本体37内で尿素水通路38を閉塞する閉塞位置と尿素水通路38を連通する連通位置とに移動可能に設けられている。弁部材39は、ピン部材33との当接によって連通位置に移動される。
【0058】
弁部材39は、段付き円板状に形成されており、小径部39Aと、大径部39Bとを備えている。小径部39Aは、接続孔37Bに嵌合されることにより、尿素水通路38を閉塞する。弁部材39は、ばね40によって、小径部39Aが接続孔37Bに嵌合する方向に押し付けられている。大径部39Bは、尿素水通路38内を接続孔37B側の空間と係合孔37A側の空間とに区画している。
【0059】
大径部39Bには、軸方向に貫通する貫通孔39Cが設けられている。大径部39Bは、ばね40によって、接続孔37B側に押し付けられている。ピン部材33によって大径部39Bが係合孔37A側に移動しているときは、大径部39Bの貫通孔39Cを通じて接続孔37B側から係合孔37A側に向けて尿素水が流通する。
【0060】
補給タンク51を用いて尿素水の補給作業を行うときは、図6に示すように、開閉カバー26を開いた状態で、タンク収容ケース21の補給口28(接続体29)から給水キャップ36を取外し、取り外した給水キャップ36を補給タンク51の注水口51Aに取付ける。この場合、給水キャップ36は、タンク収容ケース21の補給口28(接続体29)に取付けられていた側を、補給タンク51の注水口51Aに取付ける。次いで、図6中に矢印Aで示すように、補給タンク51の注水口51Aが下向きとなるように補給タンク51を回転させ、図6中に矢印Bで示すように、補給タンク51の注水口51A(給水キャップ36)をタンク収容ケース21の補給口28(接続体29)に近付ける。
【0061】
図7に示すように、補給タンク51の注水口51A(給水キャップ36)をタンク収容ケース21の補給口28(接続体29)に接続(嵌合)すると共に、補給タンク51をタンク収容ケース21の上面部23に載置する。このとき、弁部材39は、ピン部材33によって尿素水通路38が連通する位置に移動する。これにより、補給タンク51の尿素水は、注水口51Aから給水キャップ36(より具体的には、尿素水通路38、弁部材39の大径部39Bの貫通孔39C、接続孔37B)、補給口28(より具体的には、接続体29の筒部31内、筒部31の貫通孔31A、フィルタ35、底板部30の貫通孔30A)、尿素水補給管34を通じて、尿素水タンク18に供給(補給)される。
【0062】
このように、実施の形態では、タンク収容ケース21の凹部27に補給口28が設けられており、補給口28には、接続体29によってフィルタ35が取付けられている。補給口28には、接続体29によってピン部材33が設けられている。補給口28と尿素水タンク18は、尿素水補給管34を介して接続されている。尿素水補給管34の大径部34Aの内径は、フィルタ35の外径と同じ寸法となっている。
【0063】
給水キャップ36は、キャップ本体37と弁部材39とを含んで構成されている。弁部材39は、尿素水通路38を閉塞する位置にばね40により押し付けられている。このため、給水作業を行わないときは、給水キャップ36によって補給口28から尿素水が漏れ出ることを防止できる。
【0064】
図7は、尿素水の給水時の状態を示している。補給タンク51は、補給タンク51の注水口51Aに給水キャップ36を取り付けた状態で、補給口28および尿素水補給管34を介して尿素水タンク18に接続される。このとき、給水キャップ36の弁部材39は、尿素水通路38を連通する位置にピン部材33によって移動する。これにより、給水キャップ36を通じて尿素水の補給(給水)を行うことができる。
【0065】
給水作業中は、補給タンク51をタンク収容ケース21の上面部23に載置できる。このため、作業者は、補給タンク51を給水できる状態に設置したら、補給タンク51を保持する必要がなくなる。このため、作業者は、給水が終わるまで補給タンク51を保持しなくて済む。給水作業中に給水キャップ36と補給口28との間から尿素水が漏れた場合でも、漏れた尿素水は凹部27に溜り、凹部27から補給口28のフィルタ35を通じて尿素水タンク18に流れる。
【0066】
実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0067】
オペレータは、キャブ8に搭乗し、エンジン10を起動(始動)させる。エンジン10が起動すると、エンジン10によって油圧ポンプ13が駆動される。油圧ポンプ13から吐出した圧油は、キャブ8内に配置された走行用レバー・ペダル操作装置および作業用レバー操作装置のレバー操作、ペダル操作に応じて、走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ、ブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5F等に向けて吐出する。これにより、油圧ショベル1は、下部走行体2による走行動作、上部旋回体4の旋回動作、作業装置5による掘削作業等を行うことができる。
【0068】
エンジン10の運転時に、エンジン10から排出される排気ガスは、排気管11および排気ガス後処理装置17を通過して大気中に排出される。このときに、尿素水タンク18内の尿素水は、排気ガス後処理装置17の尿素水噴射弁に供給され、尿素水噴射弁から排気ガスに向けて噴射される。これにより、尿素選択還元触媒17Bでは、排気ガス中の窒素酸化物が窒素と水に分解される。さらに、酸化触媒17Cでは、残留アンモニアが酸化し、窒素と水に分離される。これにより、窒素酸化物の排出量を低減することができる。
【0069】
尿素水タンク18内の尿素水が減った場合は、尿素水の補給作業を行う。この場合、図6に示すように、開閉カバー26を開いた状態で、タンク収容ケース21の補給口28(接続体29)から給水キャップ36を取外し、取り外した給水キャップ36を補給タンク51の注水口51Aに取付ける。次いで、図6中に矢印Aで示すように、補給タンク51の注水口51Aが下向きとなるように補給タンク51を回転させ、図6中に矢印Bで示すように、補給タンク51の注水口51A(給水キャップ36)をタンク収容ケース21の補給口28(接続体29)に近付ける。
【0070】
図7に示すように、補給タンク51の注水口51A(給水キャップ36)をタンク収容ケース21の補給口28(接続体29)に接続すると共に、補給タンク51をタンク収容ケース21の上面部23に載置する。このとき、弁部材39がピン部材33によって尿素水通路38が連通する位置に移動し、補給タンク51の尿素水が、給水キャップ36、補給口28、尿素水補給管34を通じて、尿素水タンク18に供給(補給)される。
【0071】
以上のように、実施の形態によれば、タンク収容ケース21の上面部23に有底状に凹む凹部27が設けられており、この凹部27の底部27Aに尿素水タンク18に尿素水を補給するための補給口28が設けられている。このため、尿素水タンク18に尿素水を供給(補給)する作業者は、尿素水の補給タンク51をタンク収容ケース21の上面部23に載置したままの状態で補給タンク51から尿素水タンク18に尿素水を供給(補給)することができる。
【0072】
即ち、作業者は、補給タンク51の注水口51Aがタンク収容ケース21の凹部27に位置するように補給タンク51を下側に向け、かつ、補給タンク51をタンク収容ケース21の上面部23に載置する。これにより、補給タンク51をタンク収容ケース21の上面部23に載置した状態のまま、補給タンク51の注水口51Aから凹部27の補給口28を通じて補給タンク51の尿素水を尿素水タンク18に供給(補給)することができる。このため、作業者は、供給中(補給中)に補給タンク51を保持し続ける必要がなくなり、作業者の負担を低減することができる。
【0073】
実施の形態によれば、タンク収容ケース21は、凹部27の補給口28と尿素水タンク18の給水口18Aとを接続する尿素水補給管34を備えている。このため、タンク収容ケース21の形状の制約、尿素水タンク18の形状や設置空間の制約等に伴って、タンク収容ケース21の補給口28の位置と尿素水タンク18の給水口18Aの位置とが離れる場合でも、補給口28と給水口18Aとの間から尿素水がこぼれることを抑制できる。換言すれば、凹部の底部の補給口と尿素水タンクの給水口とを一体形成できない場合、または、凹部の底部の補給口と尿素水タンクの給水口とを直接接続できない場合でも、凹部27の底部27Aの補給口28と尿素水タンク18の給水口18Aとの間で尿素水がこぼれることを抑制できる。
【0074】
実施の形態によれば、タンク収容ケース21は、タンク収容ケース21の補給口28と補給タンク51の注水口51Aとの両方に対して取付け取外しが可能な蓋体としての給水キャップ36を備えている。給水キャップ36は、尿素水通路38を閉塞または連通する弁部材39を有している。弁部材39は、給水キャップ36の係合孔37Aをタンク収容ケース21の補給口28に係合させたときに尿素水通路38を閉塞し、給水キャップ36の接続孔37Bをタンク収容ケース21の補給口28に接続させたときに尿素水通路38を連通する。
【0075】
このため、油圧ショベル1が稼働しているときは、給水キャップ36の係合孔37Aがタンク収容ケース21の補給口28に係合するように給水キャップ36を補給口28に取付ける。これにより、補給口28を塞ぐことができる。これに対して、補給タンク51による尿素水の供給(補給)を行うときは、給水キャップ36の係合孔37Aが補給タンク51の注水口51Aに係合するように給水キャップ36を注水口51Aに取付けた状態で、給水キャップ36の接続孔37Bをタンク収容ケース21の補給口28に接続させる。これにより、給水キャップ36を通じて補給タンク51の尿素水を尿素水タンク18に供給(補給)することができる。このため、給水キャップ36によって補給口28を塞ぐことができ、かつ、給水キャップ36を通じて補給タンク51から尿素水タンク18に尿素水を供給(補給)することができる。
【0076】
実施の形態によれば、給水キャップ36の接続孔37Bをタンク収容ケース21の補給口28に接続させたときに、給水キャップ36の弁部材39は、タンク収容ケース21の補給口28に設けられたピン部材33によって尿素水通路38が連通する位置に移動する。このため、補給タンク51から尿素水タンク18に尿素水を供給(補給)すべく、補給タンク51に取付けられた給水キャップ36の接続孔37Bをタンク収容ケース21の補給口28に接続させたときにのみ、尿素水通路38を連通させることができる。これにより、補給タンク51の注水口51Aとタンク収容ケース21の補給口28とを接続する前に、給水キャップ36を通じて尿素水がこぼれることを抑制できる。
【0077】
実施の形態によれば、弁部材39を尿素水通路38が閉塞する位置に向けて押圧する弾性部材としてのばね40を有している。このため、ばね40によって、弁部材39が尿素水通路38を連通する位置に不必要に移動することを抑制できる。これにより、この面からも、尿素水がこぼれることを抑制できる。
【0078】
実施の形態によれば、タンク収容ケース21の補給口28に尿素水から異物を分離するフィルタ35が設けられている。このため、補給タンク51から尿素水タンク18に清浄な尿素水を供給できる。
【0079】
なお、実施の形態では、タンク収容ケース21の補給口28と尿素水タンク18の給水口18Aとを尿素水補給管34を介して接続する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図10に示す変形例のように、タンク収容ケース21の補給口61と尿素水タンク18の給水口18Aとを直接接続する構成としてもよい。即ち、尿素水補給管は、省略してもよい。この場合、補給口61に接続体62を(尿素水補給管を介することなく)直接設けることができる。接続体62は、例えば、底板部63と、筒部64と、ピン部材65とを備えている。底板部63の外径は、筒部64の外径と同寸法となっている。底板部63および筒部64は、補給口61に支持されている。底板部63には、貫通孔63Aが設けられている。補給口61と尿素水タンク18の給水口18Aは、例えば嵌合により接続することができる。変形例では、フィルタを省略しているが、例えば、接続体62の筒部64内に設けてもよい。
【0080】
実施の形態では、弁部材39を押圧する弾性部材としてばね40を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ゴム部材等、ばね以外の弾性部材を用いてもよい。弾性部材を省略してもよい。
【0081】
実施の形態では、キャップ本体37を中空構造とすることにより、給水キャップ36内に尿素水通路38を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、蓋体内に尿素水通路となる管体を設けてもよい。また、例えば、蓋体に尿素水通路となる通路孔を形成してもよい。即ち、管体または通路孔によって、係合孔と接続孔との間を尿素水の通過を可能に接続してもよい。
【0082】
実施の形態では、尿素水タンク18を燃料タンク15よりも前側、即ち、旋回フレーム6の前側に配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、尿素水タンクは、旋回フレームの前側以外の場所、例えば、カウンタウエイトの前側、エンジンの前側等に配置してもよい。この場合、尿素水タンクは、補給口を備えたタンク収容ケースに収容する。
【0083】
実施の形態では、下部走行体2と上部旋回体4とにより車体を構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、旋回体を有しない車体(例えば、前輪を有する前部車体と後輪を有する後部車体とを連結軸を介して屈曲可能に連結してなるアーティキュレート式の車体)としてもよい。
【0084】
実施の形態では、建設機械として、クローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ、ダンプトラック等、各種の建設機械に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
4 上部旋回体(車体)
17 排気ガス後処理装置
17B 尿素選択還元触媒
18 尿素水タンク
18A 給水口
21 タンク収容ケース
23 上面部
23A 上面
27 凹部
27A 底部
28 補給口
33 ピン部材
34 尿素水補給管
35 フィルタ
36 給水キャップ(蓋体)
37 キャップ本体(蓋体本体)
37A 係合孔
37B 接続孔
38 尿素水通路
39 弁部材
40 ばね(弾性部材)
51 補給タンク
51A 注水口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10