(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】再生産可能な資源を用いたウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20240529BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240529BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240529BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/08 038
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020218169
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】505015587
【氏名又は名称】株式会社日本アクア
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】江川 慎一
(72)【発明者】
【氏名】原 光透波
(72)【発明者】
【氏名】永田 和久
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110964173(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109593175(CN,A)
【文献】特開2012-144625(JP,A)
【文献】特開昭59-081325(JP,A)
【文献】特開2005-200484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/08
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物を含む主剤と、ポリオール化合物を含む硬化剤とを吹付混合することによって得られる、建築物の断熱層として使用される現場吹付型のウレタン樹脂組成物であって、
前記硬化剤は、パーム油を含有していない第1のポリオール化合物、パーム油を予め含有してある
ポリエーテルポリオールである第2のポリオール化合物、相溶化剤、整泡剤、触媒、および水からなる発泡剤、を少なくとも含む混合物であり、
前記ウレタン樹脂組成物が、発泡倍率が120倍以上、かつJIS A 9526のA種3に属することを特徴とする、
ウレタン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の断熱層に使用される現場吹付型のウレタン樹脂組成物であって、特に、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に寄与する、ウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の断熱層として、ポリイソシアネート化合物を含む主剤と、ポリオール化合物を含む硬化剤とを建築現場で吹付混合して発泡させる硬質のウレタン樹脂組成物(「ウレタンフォーム」ともいう。)が使用されている。
これらのウレタン樹脂組成物は、以下の特許文献に記載するように、用途にあわせて、密度、独立気泡率、熱伝導率、透湿係数、難燃性、防蟻性などを所定の基準に満たすよう原料が調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4919449号公報
【文献】特許第6150539号公報
【文献】特許第6200435号公報
【文献】特許第6725606号公報
【文献】特許第6775472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した各特許文献に記載されるウレタン樹脂組成物の形成に用いる主剤および硬化剤は、主に化石資源からなる化学製品を用いて生産されることが一般的であり、当該化石資源を、再生産可能な資源に置き換える等の観点において、近年着目されているSDGs(持続可能な開発目標)に取り組む余地が残されていた。
【0005】
よって、本発明は、断熱層に用いるウレタン樹脂組成物の開発にあたり、再生産可能な資源からなる植物由来の原料を用いることで、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することを目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、ポリイソシアネート化合物を含む主剤と、ポリオール化合物を含む硬化剤とを吹付混合することによって得られる、建築物の断熱層として使用される現場吹付型のウレタン樹脂組成物であって、前記硬化剤は、パーム油を含有していない第1のポリオール化合物、パーム油を予め含有してあるポリエーテルポリオールである第2のポリオール化合物、相溶化剤、整泡剤、触媒、および水からなる発泡剤、を少なくとも含む混合物であり、前記ウレタン樹脂組成物が、発泡倍率が120倍以上、かつJIS A 9526のA種3に属することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
(1)ウレタンフォームに用いる硬化剤の一部として、再生産可能な資源からなる植物由来の原料であるパーム油を用いることで、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に貢献することができる。
(2)パーム油を含有していない第1のポリオール化合物と、パーム油を予め含有してあるポリエーテルポリオールである第2のポリオール化合物とを含めて混合することで、貯蔵安定性を確保した硬化剤を得ることができる。
(3)パーム油が減粘剤として機能すると考えられるため、他の減粘剤の使用量の削減に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ウレタン樹脂組成物の比較試験の結果を示す表(1)
【
図2】ウレタン樹脂組成物の比較試験の結果を示す表(2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1>全体構成
本発明に係るウレタン樹脂組成物は、建築物の断熱材を構成する発泡体を形成するためのものであり、ポリイソシアネート化合物を含む主剤と、ポリオール化合物を含む硬化剤とをスプレーガン等によって噴霧しながら混合して吹き付ける方法や、両者を混合しながら吹き付ける方法等によって、建築物に断熱層を形成する。
本発明では、前記の組成によって得られるウレタン樹脂組成物の発泡体が、JIS A 9526のA種3に属することを前提とする。
【0010】
以下、本発明に係るウレタン樹脂組成物の各原料の詳細について説明する。なお、各原料の配合は、特定用途で使用されるウレタン樹脂組成物に求められる、密度、独立気泡率、熱伝導率、透湿係数、難燃性、防蟻性などの基準を満足するように適宜調整すればよい。
【0011】
<2>ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、本発明に係るウレタン樹脂組成物の主剤として用いる材料である。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0012】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0013】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記ウレタン樹脂組成物の主剤は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0014】
<3>ポリオール化合物
ポリオール化合物は、本発明に係るウレタン樹脂組成物の硬化剤として用いる材料である。
ポリオール化合物は、エステル系ポリオール化合物、エーテル系ポリオール化合物、その他のポリオール化合物の何れか、またはこれらの組合せからなる。
【0015】
<3.1>エステル系ポリオール化合物
エステル系ポリオール化合物としては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
ここで前記多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。難燃性の面ではテレフタル酸変性が好ましく、接着性の面では脂肪酸変性が好ましい。
【0016】
<3.2>エーテル系ポリオール化合物
エーテル系ポリオール化合物としては、例えばグリコール、グリセリン、ペンタエリトリトールなどの官能基数2~8の開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させることにより得られ、水酸基価30~900mgKOH/gであるポリオールである。
ポリオールは、官能基数2~8の開始剤、重合触媒、アルキレンオキシドを用いて当該技術分野における公知の手法により製造することができる。
ポリオールの製造に用いられる開始剤としては、多価アルコール類、芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物、マンニッヒ化合物などが使用できる。
ポリオールの製造に用いられる重合触媒としては、アルカリ金属触媒、セシウム触媒、ホスフェイト系触媒、複合金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)などが挙げられる。
ポリオールの製造に用いるアルキレンオキシドの好適な例としては、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドが挙げられる。
したがって、アルキレンオキシドは、好ましくはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組み合わせである。アルキレンオキシド全量に対するエチレンオキシドの割合は、0~80質量%、好ましくは0質量%~50質量%であり、さらに好ましくは5~50質量%である。エチレンオキシドを用いると、ポリオールの水酸基の多くは一級水酸基となり、ポリオールの反応性が高くなり、イソシアネートとの反応性が高くなるためスプレー用途において好ましい。
また、エチレンオキシドの割合を上記範囲内とすることは、フォームの収縮を防止する上で好ましい。さらに、エチレンオキシドの割合を上記範囲内とすることは、ポリオールと発泡剤として用いる水との相溶性を向上させる。
【0017】
<3.3>その他のポリオール化合物
その他のポリオール化合物としては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
前記ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物と、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
前記芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
前記脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール等が挙げられる。
前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また前記ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
難燃性の面では芳香族ポリオールが望ましい。
【0018】
<4>発泡剤
発泡剤は、主剤と硬化剤とを混合する際の発泡作用を良好とするための材料である。
本発明では、発泡剤として水を用いており、硬化剤に添加している。
発泡剤の含有量は、発泡が促進され、得られる成形体の密度を低減することができる範囲で適宜決定すればよい。
【0019】
<5>パーム油
パーム油は、アブラヤシの果実から得られる植物油であり、植物由来の原料であるため、再生産可能な資源として取り扱うことができる。
本発明において、パーム油は、RSPO認証(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)のものを用いることが好ましい。
【0020】
<5.1>パーム油の機能
パーム油は、硬化剤内のポリオール化合物に対し減粘剤として機能すると考えられるため、ポリオール化合物の減粘剤として一般的に使用されていたジエチレングリコール、エチレングリコールなどの使用量の削減に寄与する。
【0021】
<5.2>パーム油の混合対象
パーム油を予めポリオール化合物に混合しておく際には、粘度の高いポリオール(例えばシュークロースを開始剤としたポリオール)を含んでなるポリオール化合物を混合対象としておくと、パーム油による減粘効果が期待でき、最終的な硬化剤を得る際にも各ポリオール化合物の粘度を下げた状態で混合させることができる。
【0022】
<6>その他
そのほか、本発明に係るウレタン樹脂組成物は、以下に示す材料を配合に加えてもよい。
【0023】
<6.1>相溶化剤
相溶化剤は、硬化剤にパーム油を含めた際に貯蔵安定性が低下する問題が発生した場合に、当該問題を解消するための材料である。
例えば、ウレタン樹脂組成物の発泡倍率(例えば、120倍以上)を大きくしようとすると、発泡剤として水を用いた場合に、硬化剤内の水分量も多くなるため、パーム油が分離しやすくなり、硬化剤の貯蔵安定性の悪化が起こりうる。
この場合、相溶化剤を所定量添加しておくと、水とパーム油とを分離させずに原料を均一に分散させて、貯蔵安定性に優れる硬化剤を得ることができる。 相溶化剤としては、例えば、Dow社製TERGITOL NP-9、Dow社製ECOSURF EH-6、EH-9、Evonik社製DABCO EM400などを使用することができる。
相溶化剤は、1種であってもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
<6.2>整泡剤
整泡剤は、発泡時の気泡を均一・安定化させて、気泡の不均一化、粗大化を防ぐための材料である。
整泡剤としては、シリコーン系整泡剤を使用することができる。
整泡剤は、1種であってもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
<6.3>難燃剤
難燃剤は、難燃性を付与するための材料である。
難燃剤は、好ましくはリン系難燃剤であり、好適な例としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリス(β-クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)などを使用することができる。
難燃剤は、1種であってもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
<6.4>触媒
触媒としては、アミン触媒、鉛触媒、ビスマス触媒等が挙げられるが、好ましくは不揮発性の反応性アミン触媒を用いることが好ましい。
不揮発性のアミン触媒は、アイレインボー(目の霞み)や毒性、成形性の悪化を回避する上で好ましい。
また、本発明において、アミン触媒は、泡化活性がより高いタイプの反応型アミン触媒が好ましく、具体的な例としては、イソシアネート反応性触媒が挙げられる。
したがって、本発明の触媒は、イソシアネート反応性触媒を含んでなることが好ましい。ここで、イソシアネート反応性触媒とは、分子中にイソシアネート反応性の活性水素基を1つ以上有する反応型アミン触媒とされる。イソシアネート反応性触媒を使用することは、フォームの連続気泡性の向上や低密度化、スプレー発泡における作業性(吹付け厚み量、垂れ下がり性)の向上において有利である。
イソシアネート反応性触媒の好適な具体例としては、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチル-ビスアミノエチルエーテルなどが挙げられる。
【実施例】
【0027】
<1>使用原料
以下、本発明に係るウレタン樹脂組成物を構成するポリオール化合物の各原料について説明する。
【0028】
【0029】
【0030】
<2>各例の概要(
図1)
図1に示した、実施例1、比較例1、2の概要は以下の通りである。
実施例1:パーム油を含有しないポリオール化合物であるC3135、C2020(第1のポリオール化合物)と、予めパーム油を25%含有するR8240(第2のポリオール化合物)を含めて混合した硬化剤を用いたもの。
比較例1:パーム油を含有しないポリオール化合物であるC3135、C2020およびSR-500を含めて混合した硬化剤を用いたもの。
比較例2:パーム油を含有しないポリオール化合物であるC2020およびSR-500と、別途RBDパーム油とを含めて混合した硬化剤を用いたもの。
【0031】
<2>貯蔵安定性の評価(
図1)
パーム油を含有しないポリオール化合物であるC3135、C2020(第1のポリオール化合物)と、予めパーム油を25%含有するR8240(第2のポリオール化合物)を含めて混合した硬化剤を用いた実施例1では、パーム油を含有しないポリオール化合物であるC3135、C2020およびSR-500を含めて混合した硬化剤を用いた比較例1と同等の貯蔵安定性を得ることができた。
本結果から、比較例1のSR-500に含まれている、減粘剤として機能すると考えられる、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル([CH2O(C3H6O)nH][CHO(C3H6O)nH][CH2O(C3H6O)nH])に換えて、実施例1のR8240に含まれているパーム油が、硬化剤に対する減粘効果を発揮し、貯蔵安定性の確保に寄与しているものと考えられる。
【0032】
一方、パーム油を含有しないポリオール化合物であるC3135、C2020およびSR-500に、別途RBDパーム油を含めて混合した硬化剤を用いた比較例2では、硬化剤に分離が生じ、貯蔵安定性が低下する結果となった。これは、通常の硬化剤の配合に、新たにパーム油を追加する態様では、硬化剤の貯蔵安定性に悪影響が生じるためと考えられる。
比較例2において上記の問題を解決する方法としては、相溶化剤の増量、パーム油の減量、または水の減量等を行うことが考えられるが、何れも、本発明が目的とするSDGs対応や、発泡倍率120倍以上のウレタン樹脂組成物の形成には不利に働くため、好ましく無い。
【0033】
<3>吹付試験
次に、上記ポリオールプレミックスおよびポリイソシアネートの混合液(ポリオールプレミックス:ポリイソシアネート成分=1:1(体積比率))を、以下の条件で、壁面を想定して垂直に設置した合板に吹き付け施工する方法で、JIS A 9526に準拠して硬質ウレタンフォームを製造し、物性評価(熱伝導率、燃焼性、密度測定)を行った。
・スプレー発泡機:グラコ社製リアクターA-25
・スプレーガン:グラコ社製APガン(チャンバーサイズ4242)
・吐出圧:6.0MPa
【0034】
<4>
JIS A 9526 A種3の品質評価(
図2)
実施例1,比較例1,2の何れも、成形後に大きな収縮は起きずに、発泡倍率が120倍以上の良好な発泡体を得ることができた。
実施例1に関しては、原料粘度、熱伝導率、燃焼性を測定した結果、比較例1と同様に、
JIS A 9526 A種3の品質を満足することを確認できた。
しかし、比較例2に関しては、燃焼性が
JIS A 9526 A種3の品質を満足できなかった。
【0035】
<5>まとめ
以上の結果から、本発明に係るウレタン樹脂組成物のうち、特に発泡倍率が120倍以上のウレタン樹脂組成物を得る場合において、ポリオール化合物にパーム油を含有する方法としては、貯蔵安定性、および、JIS A 9526 A種3の品質確保の観点から、予めパーム油を含有したポリエーテルポリオールを用いて硬化剤を得る態様が好ましい。