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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】電機子および電機子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20240529BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K15/085
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020556103
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043383
(87)【国際公開番号】W WO2020095920
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-02-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2018211083
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小淵 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇史
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】柿崎 拓
【審判官】西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0040859(US,A1)
【文献】特開2006-158044(JP,A)
【文献】特開平11-168845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子コアと、
前記電機子コアの前記軸方向の一方側に配置されるとともに前記軸方向の他方側に延びる第1脚部を含む複数の第1セグメント導体と、
前記電機子コアの前記軸方向の他方側に配置され、前記軸方向の一方側に延びる第2脚部を含む複数の第2セグメント導体と、
複数の前記第1セグメント導体の各々の前記第1脚部の先端部側に設けられ、前記軸方向に沿って延びるように設けられる第1面の先端部側の一部と、複数の前記第2セグメント導体の各々の前記第2脚部の先端部側に設けられ、前記軸方向に沿って延びるように設けられる第2面の先端部側の一部とが、1つの前記スロット内または1つの前記スロットの前記軸方向の外側において接合されている接合部を含むコイル部と、
前記第1面と前記第2面とを接着させるとともに、前記第1脚部と前記第2脚部とを導通させる導電性接着剤と、を備え、
前記第1脚部は、第1脚部本体部と、前記第1面が設けられているとともに前記第1脚部本体部よりも径方向の厚みが小さい第1面側部分とを有し、
前記第2脚部は、第2脚部本体部と、前記第2面が設けられているとともに前記第2脚部本体部よりも前記径方向の厚みが小さい第2面側部分とを有し、
前記径方向において、前記接合部の厚みは、前記接合部以外の部分の厚み以上であり、
1つの前記スロットに並んで配置される複数の前記第1セグメント導体および複数の前記第2セグメント導体において、前記導電性接着剤を含む前記接合部の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、前記第1面および前記第2面が設けられていない部分の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値以上であり、
接合されていない部分である前記第1面側部分の根元部および前記第2面側部分の根元部の各々は、段差形状となっている、電機子。
【請求項2】
1つの前記スロットに配置される複数の前記第1セグメント導体のうちの前記第1面側部分の前記径方向の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、1つの前記スロットに配置される複数の前記第1セグメント導体のうちの前記第1脚部本体部の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値の1/2以上であり、
1つの前記スロットに配置される複数の前記第2セグメント導体のうちの前記第2面側部分の前記径方向の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、1つの前記スロットに配置される複数の前記第2セグメント導体のうちの前記第2脚部本体部の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値の1/2以上である、請求項1に記載の電機子。
【請求項3】
前記接合部のうち、前記径方向に隣接する前記接合部同士を絶縁するシート状の接合部絶縁部材をさらに備え、
前記接合部絶縁部材は、前記第1脚部本体部同士の間および前記第2脚部本体部同士の間に配置されず、前記接合部同士の間に配置されており、
1つの前記スロットに配置される複数の前記第1セグメント導体および複数の前記第2セグメント導体において、前記接合部絶縁部材を含む前記接合部の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、前記接合部絶縁部材を含まない前記第1面および前記第2面が設けられていない部分の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値以上である、請求項1または2に記載の電機子。
【請求項4】
前記接合部のうち、前記径方向に隣接する前記接合部同士を絶縁するシート状の接合部絶縁部材をさらに備え、
前記接合部絶縁部材は、前記接合部同士の間、前記第1脚部本体部同士の間および前記第2脚部本体部同士の間に配置されており、
1つの前記スロットに配置される複数の前記第1セグメント導体および複数の前記第2セグメント導体において、前記接合部絶縁部材を含む前記接合部の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、前記接合部絶縁部材を含む前記第1面および前記第2面が設けられていない部分の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値以上である、請求項1または2に記載の電機子。
【請求項5】
1つの前記スロットに配置される複数の前記第1セグメント導体および複数の前記第2セグメント導体において、前記接合部の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値は、前記スロットの前記径方向の幅以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電機子。
【請求項6】
1つの前記スロットに配置される複数の前記第1セグメント導体および複数の前記第2セグメント導体の前記接合部は、前記径方向から見て、互いにオーバラップするように配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電機子。
【請求項7】
前記第1セグメント導体および前記第2セグメント導体の各々は、それぞれ、一対の前記第1脚部および一対の前記第2脚部を含むU字形状を有しており、
1つの前記スロットに配置されるU字形状の複数の前記第1セグメント導体およびU字形状の複数の前記第2セグメント導体の前記接合部は、前記径方向から見て、互いにオーバラップするように配置されている、請求項6に記載の電機子。
【請求項8】
前記第1面および前記第2面の各々は、前記軸方向に対して平行に延びるように設けられ、
前記第1面および前記第2面は、互いに前記径方向に接合されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の電機子。
【請求項9】
軸方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子コアと、
前記電機子コアの前記軸方向の一方側に配置されるとともに前記軸方向の他方側に延びる第1脚部を含む複数の第1セグメント導体と、
前記電機子コアの前記軸方向の他方側に配置され、前記軸方向の一方側に延びる第2脚部を含む複数の第2セグメント導体と、
複数の前記第1セグメント導体の各々の前記第1脚部の先端部側に設けられ、前記軸方向に沿って延びるように設けられる第1面の先端部側の一部と、複数の前記第2セグメント導体の各々の前記第2脚部の先端部側に設けられ、前記軸方向に沿って延びるように設けられる第2面の先端部側の一部とが、1つの前記スロット内または1つの前記スロットの前記軸方向の外側において接合されている接合部を含むコイル部と、
前記第1面と前記第2面とを接着させるとともに、前記第1脚部と前記第2脚部とを導通させる導電性接着剤と、を備え、
前記第1脚部は、前記第1面が設けられている第1面側部分よりも前記径方向の厚みが大きい第1脚部本体部を有し、
1つの前記スロットに配置される複数の前記第1セグメント導体のうちの前記第1面側部分の前記径方向の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、1つの前記スロットに配置される複数の前記第1セグメント導体のうちの前記第1脚部本体部の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値の1/2以上であり、
前記第2脚部は、前記第2面が設けられている第2面側部分よりも前記径方向の厚みが大きい第2脚部本体部を有し、
1つの前記スロットに配置される複数の前記第2セグメント導体のうちの前記第2面側部分の前記径方向の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、1つの前記スロットに配置される複数の前記第2セグメント導体のうちの前記第2脚部本体部の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値の1/2以上であり、
1つの前記スロットに並んで配置される複数の前記第1セグメント導体および複数の前記第2セグメント導体において、前記導電性接着剤を含む前記接合部の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、前記第1面および前記第2面が設けられていない部分の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値以上であり、
接合されていない部分である前記第1面側部分の根元部および前記第2面側部分の根元部の各々は、段差形状となっている、電機子。
【請求項10】
軸方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子の製造方法であって、
電機子コアの前記軸方向の一方側に配置されるとともに前記軸方向の他方側に延びる第1脚部を含む複数の第1セグメント導体を準備する工程と、
前記電機子コアの前記軸方向の他方側に配置され、前記軸方向の一方側に延びる第2脚部を含む複数の第2セグメント導体を準備する工程と、
前記電機子コアの一方側から前記複数の第1セグメント導体を前記スロット側に移動させる工程と、
前記電機子コアの前記軸方向の他方側から、前記複数の第2セグメント導体を前記スロット側に移動させる工程と、
複数の前記第1セグメント導体の各々の前記第1脚部の先端部側に設けられ、前記軸方向に沿って延びるように設けられる第1面の先端部側の一部と、複数の前記第2セグメント導体の各々の前記第2脚部の先端部側に設けられ、前記軸方向に沿って延びるように設けられる第2面の先端部側の一部とを、1つの前記スロット内または1つの前記スロットの前記軸方向の外側において接合することにより接合部を形成する工程とを備え、
前記第1セグメント導体を準備する工程は、前記第1脚部が、第1脚部本体部と、前記第1面が設けられているとともに前記第1脚部本体部よりも径方向の厚みが小さい第1面側部分とを有する前記第1セグメント導体を準備する工程であり、
前記第2セグメント導体を準備する工程は、前記第2脚部が、第2脚部本体部と、前記第2面が設けられているとともに前記第2脚部本体部よりも前記径方向の厚みが小さい第2面側部分とを有する前記第2セグメント導体を準備する工程であり、
前記第1セグメント導体を準備する工程および前記第2セグメント導体を準備する工程では、前記径方向において、前記接合部の厚みが、前記接合部以外の部分の厚み以上になるように前記第1セグメント導体および前記第2セグメント導体が準備され、
前記接合部を形成する工程は、導電性接着剤により、接合されない部分であり段差形状に形成された根元部を有する前記第1面側部分の前記第1面と、接合されない部分であり段差形状に形成された根元部を有する前記第2面側部分の前記第2面とを接着させるとともに、前記第1脚部と前記第2脚部とを導通させるように、前記接合部を形成する工程であり、
前記接合部を形成する工程は、1つの前記スロットに並んで配置される複数の前記第1セグメント導体および複数の前記第2セグメント導体において、前記導電性接着剤を含む前記接合部の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値が、前記第1面および前記第2面が設けられていない部分の前記径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値以上となるように、前記接合部を形成する工程である、電機子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子および電機子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸方向に延びる複数のスロットが設けられた電機子コアを備える電機子が知られている。このような電機子は、たとえば、特開2015-23771号公報に開示されている。
【0003】
特開2015-23771号公報には、複数のスロットを含む回転電機ステータが開示されている。回転電機ステータは、複数のスロットの各々に挿入され、互いに軸方向に対向して設けられる第1セグメント導体と第2セグメント導体とにより構成されるコイル部を備えている。具体的には、第1セグメント導体の軸方向に延びるように設けられる第1脚部と、第2セグメント導体の軸方向に延びるように設けられる第2脚部とがスロット内において接合されている。また、第1脚部は、軸方向に突出する凸部を有し、第2脚部は、軸方向に窪む凹部を有する。そして、第1セグメント導体と、第2セグメント導体とが軸方向に沿って互いに近接するように相対移動されることにより、第1脚部の凸部と第2脚部の凹部とが接合されている。
【0004】
また、特開2015-23771号公報には記載されていないが、従来、複数の第1セグメント導体の第1脚部の先端部と、複数の第2セグメント導体の第2脚部の先端部とが、径方向に押圧されることにより接合される回転電機ステータが知られている。なお、第1脚部の先端部は、第1脚部の根元部に比較して径方向の厚みが小さく形成されている。同様に、第2脚部の先端部は、第2脚部の根元部に比較して径方向の厚みが小さく形成されている。そして、この回転電機ステータでは、複数の第1セグメント導体の第1脚部の先端部と、複数の第2セグメント導体の第2脚部の先端部とが、径方向に隣り合うように配置される。そして、治具により、複数の第1セグメント導体の第1脚部の先端部と、複数の第2セグメント導体の第2脚部の先端部とが径方向に押圧される。これにより、複数の第1セグメント導体の第1脚部の先端部と複数の第2セグメント導体の第2脚部の先端部とが接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-23771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来、複数の第1セグメント導体の第1脚部の先端部と、複数の第2セグメント導体の第2脚部の先端部とが、径方向に押圧されることにより接合される回転電機ステータにおいて、コイル(第1セグメント導体、第2セグメント導体)の形状(寸法)などのばらつきが生じる場合がある。この場合、複数の第1セグメント導体の第1脚部の先端部と、複数の第2セグメント導体の第2脚部の先端部とを径方向に隣り合うように配置した場合、第1脚部の先端部と第2脚部の先端部との合計の厚み(径方向の厚み)が比較的小さくなる。あるいは、第1脚部の先端部と第2脚部の先端部との合計の厚み(接合部)が、接合部以外の径方向の合計の厚みよりも小さくなる場合がある。これらの場合、治具により、第1脚部の先端部と第2脚部の先端部とに十分な力によって押圧できない場合がある。たとえば、治具が径方向に沿って一定の距離を移動するように構成されている場合において、第1脚部の先端部と第2脚部の先端部との合計の厚み(径方向の厚み)が小さいため(つまり、治具に対して第1脚部の先端部と第2脚部の先端部とが比較的大きく離間しているため)、治具が一定の距離を移動しても第1脚部の先端部と第2脚部の先端部とに十分な力が加えられない場合がある。その結果、第1脚部の先端部と第2脚部の先端部とを十分に接合できない場合があるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、第1セグメント導体と第2セグメント導体とが十分に接合できなくなるのを防止することが可能な電機子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における電機子は、軸方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子コアと、電機子コアの軸方向の一方側に配置されるとともに軸方向の他方側に延びる第1脚部を含む複数の第1セグメント導体と、電機子コアの軸方向の他方側に配置され、軸方向の一方側に延びる第2脚部を含む複数の第2セグメント導体と、複数の第1セグメント導体の各々の第1脚部の先端部側に設けられ、軸方向に沿って延びるように設けられる第1面の先端側の一部と、複数の第2セグメント導体の各々の第2脚部の先端部側に設けられ、軸方向に沿って延びるように設けられる第2面の先端側の一部とが、1つのスロット内または1つのスロットの軸方向の外側において接合されている接合部を含むコイル部と、第1面と第2面とを接着させるとともに、第1脚部と第2脚部とを導通させる導電性接着剤と、を備え、第1脚部は、第1脚部本体部と、第1面が設けられているとともに第1脚部本体部よりも径方向の厚みが小さい第1面側部分とを有し、第2脚部は、第2脚部本体部と、第2面が設けられているとともに第2脚部本体部よりも径方向の厚みが小さい第2面側部分とを有し、径方向において、接合部の厚みは、接合部以外の部分の厚み以上であり、1つのスロットに並んで配置される複数の第1セグメント導体および複数の第2セグメント導体において、導電性接着剤を含む接合部の径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、第1面および第2面が設けられていない部分の径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値以上であり、接合されていない部分である第1面側部分の根元部および第2面側部分の根元部の各々は、段差形状となっている。なお、接合部とは、接合剤を介して接合されている部分のみならず、接合剤を介さずに接触しているだけの部分を含む広い意味である。
【0009】
この発明の第1の局面による電機子では、上記のように、径方向において、接合部の厚みは、接合部以外の部分の厚み以上である。これにより、接合部の厚みが、接合部以外の部分の厚み以上であるので(接合部が接合部以外の部分よりも径方向に窪むことはないので)、治具(または、ばね部材など)により、接合部を十分な力によって押圧することができる。その結果、第1セグメント導体と第2セグメント導体とが十分に接合できなくなるのを防止することができる。また、接合部の径方向の厚みが、第1面および第2面が設けられていない部分の径方向の厚みよりも小さい場合、治具により接合部を押圧すると、コイル部(第1セグメント導体、第2セグメント導体)が湾曲してしまう。そこで、上記のように構成することによって、治具により接合部を押圧した場合でもコイル部が湾曲するのを防止することができる。また、第1面側部分の径方向の厚みが、第1脚部本体部の径方向の厚みよりも小さいとともに、第2面側部分の径方向の厚みが、第2脚部本体部の径方向の厚みよりも小さいので、接合面の面積を確保しながら、接合部の径方向の厚みが大きくなるのを抑制することができる。
【0010】
この発明の第2の局面における電機子は、軸方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子コアと、電機子コアの軸方向の一方側に配置されるとともに軸方向の他方側に延びる第1脚部を含む複数の第1セグメント導体と、電機子コアの軸方向の他方側に配置され、軸方向の一方側に延びる第2脚部を含む複数の第2セグメント導体と、複数の第1セグメント導体の各々の第1脚部の先端部側に設けられ、軸方向に沿って延びるように設けられる第1面の先端側の一部と、複数の第2セグメント導体の各々の第2脚部の先端部側に設けられ、軸方向に沿って延びるように設けられる第2面の先端側の一部とが、1つのスロット内または1つのスロットの軸方向の外側において接合されている接合部を含むコイル部と、第1面と第2面とを接着させるとともに、第1脚部と第2脚部とを導通させる導電性接着剤と、を備え、第1脚部は、第1面が設けられている第1面側部分よりも径方向の厚みが大きい第1脚部本体部を有し、1つのスロットに配置される複数の第1セグメント導体のうちの第1面側部分の径方向の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、1つのスロットに配置される複数の第1セグメント導体のうちの第1脚部本体部の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値の1/2以上であり、第2脚部は、第2面が設けられている第2面側部分よりも径方向の厚みが大きい第2脚部本体部を有し、1つのスロットに配置される複数の第2セグメント導体のうちの第2面側部分の径方向の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、1つのスロットに配置される複数の第2セグメント導体のうちの第2脚部本体部の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値の1/2以上であり、1つのスロットに並んで配置される複数の第1セグメント導体および複数の第2セグメント導体において、導電性接着剤を含む接合部の径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、第1面および第2面が設けられていない部分の径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値以上であり、接合されていない部分である第1面側部分の根元部および第2面側部分の根元部の各々は、段差形状となっている。
【0011】
この発明の第2の局面による電機子では、上記のように、1つのスロットに配置される複数の第1セグメント導体のうちの第1面側部分の径方向の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、1つのスロットに配置される複数の第1セグメント導体のうちの第1脚部本体部の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値の1/2以上であり、1つのスロットに配置される複数の第2セグメント導体のうちの第2面側部分の径方向の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値は、1つのスロットに配置される複数の第2セグメント導体のうちの第2脚部本体部の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値の1/2以上である。これにより、第1面側部分および第2面側部分(接合部)の径方向の厚みが最小値であっても、第1脚部本体部および第2脚部本体部(第1面および第2面が設けられていない部分)の径方向の厚みよりも大きくなるので、治具(または、ばね部材など)により、第1面側部分および第2面側部分(接合部)を十分な力によって押圧することができる。その結果、第1セグメント導体と第2セグメント導体とが十分に接合できなくなるのを防止することが可能な電機子を提供することができる。また、接合部の径方向の厚みが、第1面および第2面が設けられていない部分の径方向の厚みよりも小さい場合、治具により接合部を押圧すると、コイル部(第1セグメント導体、第2セグメント導体)が湾曲してしまう。そこで、上記のように構成することによって、治具により接合部を押圧した場合でもコイル部が湾曲するのを防止することが可能な電機子を提供することができる。
【0012】
この発明の第3の局面における電機子の製造方法は、軸方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子コアの製造方法であって、電機子コアの軸方向の一方側に配置されるとともに軸方向の他方側に延びる第1脚部を含む複数の第1セグメント導体を準備する工程と、電機子コアの軸方向の他方側に配置され、軸方向の一方側に延びる第2脚部を含む複数の第2セグメント導体を準備する工程と、電機子コアの一方側から複数の第1セグメント導体をスロット側に移動させる工程と、電機子コアの軸方向の他方側から、複数の第2セグメント導体をスロットに移動させる工程と、複数の第1セグメント導体の各々の第1脚部の先端部側に設けられ、軸方向に沿って延びるように設けられる第1面の先端側の一部と、複数の第2セグメント導体の各々の第2脚部の先端部側に設けられ、軸方向に沿って延びるように設けられる第2面の先端側の一部とを、1つのスロット内または1つのスロットの軸方向の外側において接合することにより接合部を形成する工程とを備え、第1セグメント導体を準備する工程は、第1脚部が、第1脚部本体部と、第1面が設けられているとともに第1脚部本体部よりも径方向の厚みが小さい第1面側部分とを有する第1セグメント導体を準備する工程であり、第2セグメント導体を準備する工程は、第2脚部が、第2脚部本体部と、第2面が設けられているとともに第2脚部本体部よりも径方向の厚みが小さい第2面側部分とを有する第2セグメント導体を準備する工程であり、第1セグメント導体を準備する工程および第2セグメント導体を準備する工程では、径方向において、接合部の厚みが、接合部以外の部分の厚み以上になるように第1セグメント導体および第2セグメント導体が準備され、接合部を形成する工程は、導電性接着剤により、接合されない部分であり段差形状に形成された根元部を有する第1面側部分の第1面と、接合されない部分であり段差形状に形成された根元部を有する第2面側部分の第2面とを接着させるとともに、第1脚部と第2脚部とを導通させるように、接合部を形成する工程であり、接合部を形成する工程は、1つのスロットに並んで配置される複数の第1セグメント導体および複数の第2セグメント導体において、導電性接着剤を含む接合部の径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最小値が、第1面および第2面が設けられていない部分の径方向の合計の厚みの寸法ばらつきの範囲の最大値以上となるように、接合部を形成する工程である。
【0013】
この発明の第3の局面による電機子の製造方法では、上記のように、第1セグメント導体を準備する工程および第2セグメント導体を準備する工程では、径方向において、接合部の厚みが、接合部以外の部分の厚み以上になるように第1セグメント導体および第2セグメント導体が準備される。これにより、接合部の厚みが、接合部以外の部分の厚み以上であるので(接合部が接合部以外の部分よりも径方向に窪むことはないので)、治具(または、ばね部材など)により、接合部を十分な力によって押圧することができる。その結果、第1セグメント導体と第2セグメント導体とが十分に接合できなくなるのを防止することが可能な電機子の製造方法を提供することができる。また、接合部の径方向の厚みが、第1面および第2面が設けられていない部分の径方向の厚みよりも小さい場合、治具により接合部を押圧すると、コイル部(第1セグメント導体、第2セグメント導体)が湾曲してしまう。そこで、上記のように構成することによって、治具により接合部を押圧した場合でもコイル部が湾曲するのを防止することが可能な電機子の製造方法を提供することができる。また、第1面側部分の径方向の厚みが、第1脚部本体部の径方向の厚みよりも小さいとともに、第2面側部分の径方向の厚みが、第2脚部本体部の径方向の厚みよりも小さいので、接合面の面積を確保しながら、接合部の径方向の厚みが大きくなるのを抑制することが可能な電機子の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、第1セグメント導体と第2セグメント導体とが十分に接合できなくなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態によるステータ(回転電機)の構成を示す平面図である。
図2】第1実施形態によるステータの構成を示す斜視図である。
図3】第1実施形態によるステータコアの構成を示す平面図である。
図4】第1実施形態による第1絶縁部材および第2絶縁部材の構成を示す断面図である。
図5】第1実施形態によるコイル部の結線構成を示す回路図である。
図6】第1実施形態によるセグメント導体の構成を示す横断面図である。
図7】第1実施形態による第1セグメント導体の構成を示す斜視図である。(図7(A)は、第1セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。図7(B)は、第1セグメント導体を径方向内側から見た斜視図である。)
図8】第1実施形態による第2セグメント導体の構成を示す斜視図である。(図8(A)は、第2セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。図8(B)は、第2セグメント導体を径方向内側から見た斜視図である。)
図9】第1実施形態による動力セグメント導体の構成を示す図である。
図10】第1実施形態による外径側中性点導体の構成を示す図である。
図11】第1実施形態による内径側中性点導体の構成を示す図である。
図12図1の1000-1000線に沿った断面図である。
図13図12の接合部近傍の部分拡大図である。
図14図13の接合部近傍の部分拡大図である。
図15】接合部近傍の部分拡大図(接合部の厚みが、第1面および第2面が設けられていない部分の厚みよりも大きい例)である。
図16】第1実施形態による第1絶縁部材の構成を模式的に示した断面図である。
図17】第1実施形態による発泡される前の固定層を含む第1絶縁部材および第2絶縁部材の構成を示す断面図である。
図18】第1実施形態による発泡された後の固定層を含む第1絶縁部材および第2絶縁部材の構成を示す断面図である。
図19】第1実施形態による第2絶縁部材の構成を示す断面図である。
図20】第1実施形態による第2絶縁部材の構成を示す斜視図である。
図21】第1実施形態によるステータコア、第1絶縁部材、および、第2絶縁部材を分解した分解斜視図である。
図22】第1実施形態による第1絶縁部材の厚みおよび第2絶縁部材の厚みを示す図である。
図23】第1実施形態によるステータの製造装置を示す図である。
図24】第1実施形態によるステータの製造方法を示すフロー図である。
図25】第2実施形態によるステータの構成を示す斜視図である。
図26】第2実施形態によるステータの分解斜視図である。
図27】第2実施形態によるセグメント導体の構成を示す横断面図である。(図27Aは、脚部の横断面図である。図27Bは、コイルエンド部の横断面図である。)
図28】第2実施形態による第1セグメント導体の構成を示す斜視図である。(図28Aは、第1セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。図28Bは、第1セグメント導体を径方向内側から見た斜視図である。)
図29】第2実施形態による第2セグメント導体の構成を示す斜視図である。(図29Aは、第2セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。図29Bは、第2セグメント導体を径方向内側から見た斜視図である。)
図30】第2実施形態によるスロット内の径方向に沿った断面図である。
図31図30の接触部近傍の部分拡大図である。
図32】第2実施形態による絶縁部材の構成を示す断面図である。
図33】第2実施形態による接触部絶縁部分の絶縁層および固定層の構成を示す断面図である。
図34】第2実施形態によるコア脚部絶縁部分の絶縁層および固定層の構成を示す断面図である。
図35】第2実施形態によるステータの製造方法を示すフロー図である。
図36】第3実施形態によるステータの構成を示す斜視図である。
図37】第3実施形態によるスロット内の径方向に沿った断面図である。
図38】第3実施形態による絶縁部材の構成を示す断面図である。
図39】第3実施形態による接触部絶縁部分の絶縁層および固定層の構成を示す断面図である。
図40】第3実施形態によるコア脚部絶縁部分の絶縁層および固定層の構成を示す断面図である。
図41】第1実施形態の第1変形例による接合部近傍の断面図である。
図42】第1実施形態の第2変形例による接合部近傍の断面図である。
図43】第1実施形態の第3変形例による第1セグメント導体および第2セグメント導体の斜視図である。(図43(A)は、第1セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。図43(B)は、第2セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。)
図44】第1実施形態の第4変形例による接合部近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の本実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
[ステータの構造]
図1図23を参照して、第1実施形態によるステータ100の構造について説明する。ステータ100は、中心軸線C1を中心に円環形状を有する。なお、ステータ100は、特許請求の範囲の「電機子」の一例である。
【0018】
本願明細書では、「軸方向(軸方向、軸線方向)」とは、図1に示すように、ステータ100の中心軸線C1(ロータ101の回転軸線)に沿った方向(Z方向)を意味する。また、「周方向」とは、ステータ100の周方向(A1方向、A2方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータ100の半径方向(R方向)を意味する。また、「径方向内側」とは、径方向に沿ってステータ100の中心軸線C1に向かう方向(R1方向)を意味する。また、「径方向外側」とは、径方向に沿ってステータ100の外に向かう方向(R2方向)を意味する。
【0019】
ステータ100は、ロータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成される。ステータ100は、図1に示すように、永久磁石(図示せず)が設けられるロータ101の径方向外側に配置されている。すなわち、第1実施形態では、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部を構成する。
【0020】
図2に示すように、ステータ100は、ステータコア10と、第1絶縁部材20と、コイル部30とを備える。コイル部30は、第1コイルアッセンブリ30a(反リード側コイル)と第2コイルアッセンブリ30b(リード側コイル)とを含む。また、コイル部30は、複数のセグメント導体40(図4参照)からなる。また、第1実施形態では、ステータ100は、第1絶縁部材20とは別個に設けられた第2絶縁部材21(図4参照)を備える。なお、ステータコア10は、特許請求の範囲の「電機子コア」の一例である。また、第2絶縁部材21は、特許請求の範囲の「接合部絶縁部材」の一例である。
【0021】
(ステータコアの構造)
ステータコア10は、中心軸線C1(図1参照)を中心軸とした円筒形状を有する。また、ステータコア10は、たとえば、複数枚の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)が軸方向に積層されることにより、形成されている。図3に示すように、ステータコア10は、軸方向に見て円環状を有するバックヨーク11と、バックヨーク11の径方向内側に設けられ、軸方向に延びる複数のスロット12とが設けられている。そして、ステータコア10には、スロット12の周方向両側に複数のティース13が設けられている。
【0022】
スロット12は、径方向外側に設けられたバックヨーク11の壁部11aと、2つのティース13の周方向側面13aとに囲まれた部分である。そして、スロット12には、径方向内側に開口する開口部12aが設けられている。また、スロット12は、軸方向両側のそれぞれに開口している。ティース13は、バックヨーク11から径方向内側に突出するように形成されており、径方向内側の先端部にスロット12の開口部12aを構成する凸部13bが形成されている。
【0023】
開口部12aは、周方向に開口幅W1を有する。ここで、開口幅W1は、ティース13の凸部13bの先端部同士の距離に対応する。また、スロット12のコイル部30が配置される部分の幅W2は、開口幅W1よりも大きい。すなわち、スロット12は、セミオープン型のスロットとして構成されている。ここで、幅W2は、スロット12の周方向両側に配置されているティース13の周方向側面13a同士の距離に対応する。また、スロット12の幅W2は、径方向に亘って略一定である。
【0024】
(コイル部の構造)
コイル部30は、図4に示すように、平角導線により構成されている。たとえば、コイル部30は、銅またはアルミニウムにより構成されている。
【0025】
また、コイル部30は、図2に示すように、軸方向一方側(矢印Z2方向側)に設けられた第1コイルアッセンブリ30aと、軸方向他方側(矢印Z1方向側)に設けられた第2コイルアッセンブリ30bとが、軸方向に組み合わされるとともに、接合されて形成されている。第1コイルアッセンブリ30aおよび第2コイルアッセンブリ30bは、それぞれ、ステータコア10と同一の中心軸線C1(図1参照)を中心とした円環状に形成されている。また、図4に示すように、第1実施形態では、コイル部30は、複数のセグメント導体40の後述する第1脚部71と第2脚部81とが、接合部90において接合されて形成されている。
【0026】
コイル部30は、たとえば、波巻きコイルとして構成されている。また、コイル部30は、8ターンのコイルとして構成されている。すなわち、コイル部30は、スロット12内に、径方向に8個のセグメント導体40が並列して配置されて構成されている。
【0027】
〈コイル部の結線の構成〉
図5に示すように、コイル部30では、電源部(図示せず)から3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。具体的には、コイル部30は、3相のY結線により接続(結線)されている。すなわち、コイル部30は、U相コイル部30Uと、V相コイル部30Vと、W相コイル部30Wとを含む。そして、コイル部30には、複数(たとえば、2つ)の中性点Nが設けられている。詳細には、コイル部30は、4並列結線(スター結線)されている。すなわち、U相コイル部30Uには、4つの中性点接続端部NtUと、4つの動力線接続端部PtUとが設けられている。V相コイル部30Vには、4つの中性点接続端部NtVと、4つの動力線接続端部PtVとが設けられている。W相コイル部30Wには、4つの中性点接続端部NtWと、4つの動力線接続端部PtWとが設けられている。なお、以下の記載では、中性点接続端部および動力線接続端部について、U相、V相、および、W相を特に区別しない場合、単に、「中性点接続端部Nt」および「動力線接続端部Pt」として記載する。
【0028】
〈コイルアッセンブリの構造〉
図2に示すように、第1コイルアッセンブリ30aは、セグメント導体40としての複数の第1セグメント導体70(以下、「第1導体70」とする)から構成されている。好ましくは、第1コイルアッセンブリ30aは、複数の第1導体70のみが組み合わされて構成されている。
【0029】
また、第2コイルアッセンブリ30bは、セグメント導体40としての複数(たとえば、3つ)の動力セグメント導体50(以下、「動力導体50」とする)と、セグメント導体40としての複数(たとえば、2つ)の中性点セグメント導体60(以下、「中性点導体60」とする)と、複数のセグメント導体40のうちの動力導体50および中性点導体60とは異なる導体(一般のセグメント導体40)であり、コイル部30を構成する第2セグメント導体80(以下、「第2導体80」とする)とを含む。すなわち、ステータ100に設けられる動力導体50および中性点導体60の全ては、第2コイルアッセンブリ30bに設けられている。
【0030】
(セグメント導体の構造)
セグメント導体40は、図6に示すように、横断面が略矩形形状を有する平角導線として構成されている。そして、セグメント導体40の導体表面40bには、厚みt1を有する絶縁被膜40aが設けられている。絶縁被膜40aの厚みt1は、たとえば、相間絶縁性能(第1コイルエンド部72同士の絶縁、第2コイルエンド部82同士の絶縁、図2参照)を確保することが可能な程度に設定されている。なお、図6では、説明のために、厚み等の大小関係を強調して図示しているが、この図示の例に限られない。
【0031】
〈第1導体および第2導体の構造〉
図7および図8に示すように、複数のセグメント導体40は、ステータコア10の軸方向の一方側(Z2方向側)に配置される複数の第1導体70と、ステータコア10の軸方向の他方側(Z1方向側)で、且つ、第1導体70に対して軸方向に対向して配置される複数の第2導体80とを含む。すなわち、コイル部30は、軸方向に2分割された第1導体70と第2導体80とが接合されて形成されている。ここで、第2導体80とは、第2コイルアッセンブリ30bを構成するセグメント導体40のうちの動力導体50および中性点導体60以外のセグメント導体40である。そして、第1実施形態では、第1導体70は、軸方向の長さL1を有する軸方向に延びる第1脚部71を含む。第1脚部71は、軸方向の他方側(Z1方向側)に延びている。また、第2導体80は、第1脚部71のZ1方向側に配置され、軸方向に長さL1よりも大きい長さL2を有する軸方向に延びる第2脚部81を含む。第2脚部81は、軸方向の一方側(Z2方向側)に延びている。
【0032】
第1実施形態では、図7(A)および図7(B)に示すように、複数の第1導体70は、それぞれ、互いに異なるスロット12に配置される一対の第1脚部71が互いに接続されることにより、径方向に見てU字状(略U字状)を有するように形成されている。第1導体70のコイルピッチは6である。すなわち、一対の第1脚部71は、スロット12が6つ分、周方向に異なる位置に配置される。すなわち、一対の第1脚部71のうちの一方の第1脚部71が配置されているスロット12と、他方の第1脚部71が配置されているスロット12との間に、5つのスロット12が設けられている。具体的には、第1導体70は、互いに異なるスロット12に配置され、それぞれ軸方向に沿って直線状に形成されている一対の第1脚部71と、第1コイルエンド部72とを含む。第1脚部71とは、ステータコア10の軸方向における端面10a(図2参照)の軸方向位置からスロット12の内に配置されている部分を意味し、第1コイルエンド部72は、第1脚部71に連続して形成され、ステータコア10の端面10aよりも軸方向外側に配置されている部分を意味するものとする。また、第1コイルエンド部72は、軸方向に折れ曲がる屈曲形状を有する。また、第1コイルエンド部72は、軸方向から見て、径方向に1本のセグメント導体40の幅分、階段状に屈曲するクランク状に形成された第1クランク部分73を有する。つまり、第1クランク部分73の径方向の幅は、1本のセグメント導体40の幅の2倍である。
【0033】
また、一対の第1脚部71の軸方向長さL1は互いに略等しい。なお、軸方向長さL1とは、第1導体70のうちスロット12内において軸方向に直線状に延びている部分の長さを意味する。また、軸方向長さL1は、ステータコア10の軸方向長さL3(図2参照)よりも小さい。なお、ステータコア10の軸方向長さL3とは、軸方向における端面10aおよび端面10bの間の、軸方向の距離(間隔)を意味する。
【0034】
同様に、図8(A)および図8(B)に示すように、第2導体80は、スロット12に配置される一対の第2脚部81と、第2コイルエンド部82とを含む。また、第2コイルエンド部82は、第2クランク部分83を有する。第1実施形態では、第2導体80は、互いに異なるスロット12に配置される一対の第2脚部81が互いに接続されることにより、U字状を有するように形成されている。また、第2導体80の一対の第2脚部81の軸方向長さL2は互いに略等しい。また、第2導体80の一対の第2脚部81の軸方向長さL2は、第1導体70の一対の第1脚部71の軸方向長さL1よりも大きい(L2>L1)。なお、軸方向長さL2とは、第2導体80のうちスロット12内において軸方向に直線状に延びている部分の長さを意味する。
【0035】
〈動力導体の構成〉
図9に示すように、動力導体50では、同相の複数(たとえば、4つ)の動力線接続端部Pt同士が電気的に接続されているとともに、接続された複数の動力線接続端部Ptと1つの動力端子部材51とが電気的に接続されている。動力導体50は、一対の第1脚部71のうちの一方に接合(図12参照)されている第2脚部81と、動力端子部材51とが接合されている。そして、動力導体50は、電源部(図示せず)からコイル部30に電力を導入する機能を有する。
【0036】
詳細には、動力導体50は、スロット12(図1参照)の径方向外側に配置され、動力線接続端部Ptを有する外径側動力導体52と、外径側動力導体52よりも径方向内側でかつ軸方向外側に配置され、動力線接続端部Ptを有する内径側動力導体53とを含む。言い換えると、動力導体50は、二股状に形成されている。
【0037】
また、外径側動力導体52と動力端子部材51とは、引出線54により電気的に接続されている。また、内径側動力導体53と動力端子部材51とは、引出線54とにより電気的に接続されている。外径側動力導体52と内径側動力導体53とは、動力端子部材51および引出線54を介して、電気的に接続されている。また、引出線54は、たとえば、撚線(導体)により形成されており、絶縁チューブ51aが外周に配置されている。
【0038】
外径側動力導体52および内径側動力導体53には、それぞれ、第2脚部81が設けられている一方、第1コイルエンド部72または第2コイルエンド部82は設けられていない。また、外径側動力導体52および内径側動力導体53では、引出線54と第2脚部81とが、導体板55を介して、接合されている。たとえば、この接合は、ロウ付け、または、溶接(たとえば、抵抗溶接、アーク溶接、レーザー溶接、または、高エネルギービーム溶接のいずれか)により実施される。
【0039】
〈中性点導体の構成〉
図1に示すように、中性点導体60は、外径側中性点導体61と内径側中性点導体62とを含む。図5に示すように、外径側中性点導体61および内径側中性点導体62は、それぞれ、中性点Nを含み、U相コイル部30Uの中性点接続端部NtUと、V相コイル部30Vの中性点接続端部NtVと、W相コイル部30Wの中性点接続端部NtWとが電気的に接続されたものである。
【0040】
外径側中性点導体61は、図10に示すように、2つのU相W相中性点セグメント導体61aと、2つのV相中性点セグメント導体61bとを含む。U相W相中性点セグメント導体61aは、3相交流のうちのU相の第1導体70の第1脚部71に接続されるU相用の第2脚部81と、W相の第1脚部71に接続されるW相用の第2脚部81と、U相用の第2脚部81とW相用の第2脚部81とを接続する2つの中性点コイルエンド部61cとを含む。中性点コイルエンド部61cは、U相用の第2脚部81に連続して形成されているとともに、W相用の第2脚部81に連続して形成されている。
【0041】
U相W相中性点セグメント導体61aは、径方向内側から見て、略U字(略コの字)形状に形成されている。V相中性点セグメント導体61bは、径方向内側から見て、略直線状に形成されている。
【0042】
中性点コイルエンド部61cは、図1に示すように、第2導体80の第2コイルエンド部82の径方向外側において、周方向に沿って形成されている。そして、中性点コイルエンド部61cは、矢印Z2方向に見て、略円弧状に形成されている。2つのU相W相中性点セグメント導体61aのうちの一方は、他方の軸方向外側(矢印Z1方向側)に配置されている。
【0043】
V相中性点セグメント導体61bは、図10に示すように、V相の第1導体70に接続されるV相用の第2脚部81と、中性点コイルエンド部61dとを含む。中性点コイルエンド部61dは、第2脚部81から軸方向外側(矢印Z1方向に)突出するように形成されている。そして、2つの中性点コイルエンド部61dは、それぞれ、2つの中性点コイルエンド部61cの両方に接合されることにより、電気的に接合されている。
【0044】
内径側中性点導体62は、図11に示すように、2つのU相W相中性点セグメント導体62aと、2つのV相中性点セグメント導体62bとを含む。U相W相中性点セグメント導体62aは、3相交流のうちのU相の第1導体70の第1脚部71に接続されるU相用の第2脚部81と、W相の第1導体70に接続されるW相用の第2脚部81と、U相用の第2脚部81とW相用の第2脚部81とを接続する中性点コイルエンド部62cとを含む。中性点コイルエンド部62cは、U相用の第2脚部81に連続して形成されているとともに、W相用の第2脚部81に連続して形成されている。これにより、U相W相中性点セグメント導体62aは、径方向内側から見て、略U字形状に形成されている。V相中性点セグメント導体62bは、径方向内側から見て、略直線状に形成されている。
【0045】
中性点コイルエンド部62cは、図12に示すように、第2導体80の第2コイルエンド部82よりも軸方向外側に突出して形成されている。そして、中性点コイルエンド部62cは、第2導体80の第2コイルエンド部82の軸方向外側に近接して配置されているとともに、軸方向に見て、周方向に沿って形成されている。そして、2つのU相W相中性点セグメント導体62aのうちの一方は、他方の径方向外側に配置されている。
【0046】
V相中性点セグメント導体62bは、V相の第1導体70の第1脚部71に接続されるV相用の第2脚部81と、中性点コイルエンド部62dとを含む。中性点コイルエンド部62dは、第2脚部81から軸方向外側(矢印Z1方向)に突出するように形成されている。そして、2つの中性点コイルエンド部62dは、それぞれ、2つの中性点コイルエンド部62cの両方に接合されることにより、電気的に接合されている。
【0047】
(接合部の構成)
図12および図13に示すように、第1脚部71は、1つのスロット12内において、ステータコア10の径方向に隣り合って複数設けられている。また、第2脚部81は、1つのスロット12内において、ステータコア10の径方向に隣り合って複数設けられている。第1脚部71の後述する第1面71aと、第2脚部81の後述する第2面81aとが接合されることにより、接合部90が構成されている。
【0048】
また、1つのスロット12内において、複数の第1導体70(第1脚部71)と複数の第2導体80(第2脚部81)とが接合されている。具体的には、1つのスロット12内において、第1脚部71の後述する第1面71aが設けられている第1面配置部71b、および、第2脚部81の後述する第2面81aが設けられている第2面配置部81bは、径方向に沿って交互に複数配列されている。すなわち、複数の第1脚部71および複数の第2脚部81の後述する接合部90同士は、1つのスロット12内において、径方向に隣り合って配置されている。なお、第1面配置部71bおよび第2面配置部81bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1面側部分」および「第2面側部分」の一例である。
【0049】
具体的には、第1実施形態では、1つのスロット12に配置される第1導体70および第2導体80の接合部90は、径方向から見て、径方向に隣り合う接合部90がオーバラップするように構成されている。詳細には、1つのスロット12内に配置される複数の(全ての)接合部90は、径方向から見て、オーバラップするように構成されている。つまり、1つのスロット12内に配置される全ての接合部90が水平方向に沿って並んだ状態で配置されている。言い換えると、1つのスロット12内において、軸方向における複数の接合部90の各々位置は、互いに略等しい。なお、接合部90は、後述するように、径方向から見て、第1脚部71の第1面71aと、第2脚部81の第2面81aとが接合された(オーバラップした)部分である。
【0050】
また、図14に示すように、第1脚部71の先端部71cおよび第2脚部81の先端部81cの各々は、先細り形状を有している。具体的には、周方向(A方向)から見て、第1脚部71の先端部71cおよび第2脚部81の先端部81cの各々は、先細り形状を有している。
【0051】
複数の第1導体70の各々の第1脚部71の先端部71c側には、軸方向に延びるように設けられる第1面71aが設けられている。また、複数の第2導体80の各々の第2脚部81の先端部81c側には、軸方向に延びるように設けられる第2面81aが設けられている。具体的には、第1実施形態では、第1面71aおよび第2面81aの各々は、軸方向に対して平行に延びるように設けられている。また、第1脚部71および第2脚部81は、それぞれ、第1面71aが設けられている第1面配置部71b、および、第2面81aが設けられている第2面配置部81bを含む。
【0052】
また、第1脚部71は、第1面71aが設けられている第1面配置部71bに連続して設けられる第1脚部本体部71dを有する。第1脚部本体部71dは、第1面配置部71bに対して、先端部71cとは反対側(Z2方向側)に設けられている。また、第2脚部81は、第2面81aが設けられている第2面配置部81bに連続して設けられる第2脚部本体部81dを有する。第2脚部本体部81dは、第2面配置部81bに対して、先端部81cとは反対側(Z1方向側)に設けられている。
【0053】
ここで、第1実施形態では、図14に示すように、第1面配置部71bの径方向の厚みt2は、第1脚部本体部71dの径方向の厚みt3よりもが小さい。また、第2面配置部81bの径方向の厚みt4は、第2脚部本体部81dの径方向の厚みt5よりもが小さい。そして、図15に示すように、径方向において、接合部90の厚み(t2+t4)は、接合部90以外の部分E2の厚み(t3またはt5)以上である。なお、接合部90の合計の厚みt21も、接合部90以外の部分E2の合計の厚みt22以上である。
【0054】
ここで、第1実施形態では、図13に示すように、1つのスロット12に配置される複数の第1導体70のうちの第1面配置部71bの径方向の厚みt2の寸法ばらつきの範囲の最小値t2minは、1つのスロット12に配置される複数の第1導体70のうちの第1脚部本体部71dの厚みt3の寸法ばらつきの範囲の最大値t3maxの1/2以上である。具体的には、第1導体70の第1面配置部71bの厚みt2、および、第1脚部本体部71dの厚みt3は、第1導体70の形状のばらつきや、第1面配置部71bを加工する際の製造のばらつきなどに起因して、ばらつく場合(寸法ばらつき)がある。そして、第1面配置部71bの径方向の厚みt2の寸法ばらつきの範囲の最小値t2min(寸法ばらつきの範囲内で、最も厚みt2が小さくなる場合)が、第1脚部本体部71dの厚みt3の寸法ばらつきの範囲の最大値t3max(寸法ばらつきの範囲内で、最も厚みt3が大きくなる場合)の1/2以上になるように、第1導体70が製造(加工)されている。同様に、1つのスロット12に配置される複数の第2導体80のうちの第2面配置部81bの径方向の厚みt4の寸法ばらつきの範囲の最小値t4minは、1つのスロット12に配置される複数の第2導体80のうちの第2脚部本体部81dの厚みt5の寸法ばらつきの範囲の最大値t5maxの1/2以上である。なお、厚みt2と厚みt4とは略等しく、厚みt3と厚みt5とは略等しい。
【0055】
上記のように構成することによって、第1実施形態では、1つのスロット12に配置される複数の第1導体70および複数の第2導体80において、接合部90(部分E1)の径方向の合計の厚みt21の寸法ばらつきの範囲の最小値t21minは、第1面71aおよび第2面81aが設けられていない部分E2の径方向の合計の厚みt22の寸法ばらつきの範囲の最大値t22max以上となる。ここで、接合部90(部分E1)とは、第1面71aと第2面81aとが互いに接合されている部分(径方向から見て、第1面71aと、第2面81aとがオーバラップしている部分)である。また、第1面71aおよび第2面81aが設けられていない部分E2とは、径方向に複数の第1脚部本体部71dが積層されている部分と、径方向に複数の第2脚部本体部81dが積層されている部分とである。つまり、接合部90(部分E1)において、第1面配置部71b(t2min≧t3max/2)と第2面配置部81b(t4min≧t5max/2)とが径方向に沿って交互に複数個ずつ(たとえば、8個ずつ、合計16個)積層されている。また、部分E2において、第1脚部本体部71d(t3)または第2脚部本体部81d(t5)が、径方向に沿って複数個(たとえば、8個)積層されている。これにより、t21min(=8×t2min+8×t4min)≧t22max(=8×t3max、または、8×t5max)の関係が成立する。
【0056】
なお、図13では、t21min=t22maxの状態が示されている。つまり、t2min=t3max×1/2、でかつ、t4min=t5max×1/2の状態が示されている。一方、図15では、t21min>t22maxの状態が示されている。つまり、t2min>t3max×1/2、でかつ、t4min>t5max×1/2の状態が示されている。
【0057】
また、第1実施形態では、図14に示すように、接合部90において第1面71aと第2面81aとを接着させるとともに、第1脚部71と第2脚部81とを導通させる導電性接着剤91が設けられている。なお、図13および図15では、導電性接着剤91を省略している。また、導電性接着剤91の詳細な構成は後述する。そして、1つのスロット12に配置される複数の第1導体70および複数の第2導体80において、導電性接着剤91を含む接合部90(部分E1)の径方向の合計の厚みt21の寸法ばらつきの範囲の最小値t21minは、第1面71aおよび第2面81aが設けられていない部分E2の径方向の合計の厚みt22の寸法ばらつきの範囲の最大値t22max以上である。ここで、導電性接着剤91には、後述するように、加熱された際に揮発する部材(樹脂部材)が含有されており、揮発する部材が加熱されることにより、導電性接着剤91の体積が減少する。このため、導電性接着剤91の厚みは、揮発する部材が揮発した結果残留する後述する銀粒子の厚み程度になる。したがって、導電性接着剤91の厚みを考慮した場合でも、t21min≧t22maxの関係は維持される。
【0058】
また、第1実施形態では、図13図15に示すように、接合部90のうち、径方向に隣接する接合部90同士を絶縁するシート状の第2絶縁部材21が設けられている。なお、第2絶縁部材21の詳細な構成は、後述する。また、第2絶縁部材21は、接合部90同士の間と、第1脚部本体部71d同士の間と、第2脚部本体部81d同士の間とに配置されている。つまり、第2絶縁部材21は、第1脚部本体部71dから第2脚部本体部81dに渡るように配置されている。そして、1つのスロット12に配置される複数の第1導体70および複数の第2導体80において、第2絶縁部材21を含む接合部90(部分E1)の径方向の合計の厚みt21の寸法ばらつきの範囲の最小値t21minは、第2絶縁部材21を含む部分E2の径方向の合計の厚みt22の寸法ばらつきの範囲の最大値t22max以上である。つまり、第2絶縁部材21は、第1脚部本体部71dから第2脚部本体部81dに渡るように配置されているので、厚みt21minおよび厚みt22maxには、それぞれ、第2絶縁部材21の厚みの分が含まれている。一方、第2絶縁部材21の厚みを考慮した場合でも、t21min≧t22maxの関係は維持される。
【0059】
また、第1実施形態では、図13に示すように、1つのスロット12に配置される複数の第1導体70および複数の第2導体80において、接合部90(部分E1)の径方向の合計の厚みt21の寸法ばらつきの範囲の最大値t21maxは、スロット12の径方向の幅W3以下である。つまり、第1導体70および第2導体80は、スロット12の内径側(R1方向側)に突出しない。
【0060】
また、コイル部30(図2参照)は、第1面71aと第2面81aとが1つのスロット12内において接合されている接合部90を含む。すなわち、接合部90は、軸方向において、ステータコア10の端面10a(図2参照)と端面10b(図2参照)との間に位置している。
【0061】
また、図14に示すように、第1面71aおよび第2面81aは、接合部90において互いに径方向(R方向)に接合されている。具体的には、第1面71aのうちの先端部71c側の一部の面部分71eと、第2面81aのうちの先端部81c側の一部の面部分81eとが、径方向に接合されている。言い換えると、第1面71aと第2面81aとは、軸方向にずらされた状態で接合されている。
【0062】
なお、第1面71a(面部分71e)および第2面81a(面部分81e)は、軸方向に対して平行に延びるとともに、互いに径方向に対向するように設けられる。すなわち、第1面71a(面部分71e)および第2面81a(面部分81e)の各々は、径方向に対して直交するように延びている。また、第1面71a(面部分71e)は、径方向内側(R1方向側)を向いているとともに、第2面81a(面部分81e)は、径方向外側を向いている。
【0063】
また、互いに軸方向に対向する第1導体70と第2導体80との間において、第1脚部71の先端部71cと第2脚部81との間には、軸方向に延びる第1隙間部74が設けられている。また、互いに軸方向に対向する第1導体70と第2導体80との間において、第2脚部81の先端部81cと第1脚部71との間には、軸方向に延びる第2隙間部84が設けられている。具体的には、第1隙間部74は、周方向(A方向)から見て、互いに接合される第1脚部71および第2脚部81と、径方向内側(R1方向側)に隣接する第2絶縁部材21とにより取り囲まれている。また、第2隙間部84は、周方向(A方向)から見て、互いに接合される第1脚部71および第2脚部81と、径方向外側(R2方向側)に隣接する第2絶縁部材21とにより取り囲まれている。なお、第2絶縁部材21の構成の詳細については後述する。
【0064】
また、第1隙間部74および第2隙間部84の各々は、互いに接合される第1脚部71と第2脚部81との組毎に設けられている。すなわち、第1隙間部74および第2隙間部84の各々は、径方向に複数(第1実施形態では8つ、図13参照)並んで設けられている。具体的には、径方向から見て、複数の第1隙間部74は、互いにオーバラップしているとともに、複数の第2隙間部84は、互いにオーバラップしている。
【0065】
また、第1隙間部74の軸方向の長さL4は、第2隙間部84の軸方向の長さL5と略等しい。なお、第1隙間部74の長さL4とは、第1脚部71の先端部71cと、第2脚部81との間の軸方向における距離を意味する。また、第2隙間部84の長さL5とは、第2脚部81の先端部81cと、第1脚部71との間の軸方向における距離を意味する。
【0066】
また、第1隙間部74の軸方向における長さL4、および、第2隙間部84の軸方向における長さL5の両方は、径方向における、第1脚部71の第1面71aが設けられている第1面配置部71bの厚みt2、および、第2脚部81の第2面81aが設けられている第2面配置部81bの厚みt4よりも大きい。なお、第1隙間部74の長さL4、および、第2隙間部84の長さL5の各々は、第1導体70および第2導体80の各々の製造において生じる寸法のばらつきと、第1導体70と第2導体80との組み付けの際に生じる組み付けばらつきとを十分吸収できる程度の長さに設定されている。
【0067】
また、第1脚部71の第1面71aが設けられている第1面配置部71bと、第1脚部本体部71dとの間には、第2隙間部84に面するとともに丸型形状を有する角部内面71fを含む第1段差部71gが設けられている。また、第2脚部81の第2面81aが設けられている第2面配置部81bと、第2脚部本体部81dとの間には、第1隙間部74に面するとともに丸型形状を有する角部内面81fを含む第2段差部81gが設けられている。具体的には、角部内面71fおよび角部内面81fは、それぞれ、第1面配置部71bの径方向の厚みt2および第2面配置部81bの径方向の厚みt4よりも小さい曲率半径の円弧形状を有している。この場合、第1脚部71および第2脚部81には、それぞれ、角部内面71fおよび角部内面81fに連続して設けられる平坦面71hおよび平坦面81hが設けられている。平坦面71hおよび平坦面81hの各々は、軸方向に直交するように延びるように設けられている。
【0068】
また、図13に示すように、第1隙間部74および第2隙間部84の各々は、スロット12内に配置されている。具体的には、第1隙間部74および第2隙間部84の各々の全体が、スロット12内に配置されている。
【0069】
また、一対の第1脚部71の長さL1(図7参照)と一対の第2脚部81の長さL2(図8参照)とが互いに異なっているので、第1脚部71の第1面71aと第2脚部81の第2面81aとが接合されることにより、第1隙間部74および第2隙間部84の各々(接合部90)が、軸方向において、軸方向中心C2(図12参照)よりも端面10a側に設けられる。これにより、第1隙間部74および第2隙間部84の各々は、ステータコア10の軸方向中心C2よりも、ステータコア10の端面10aの近傍に設けられている。具体的には、第2隙間部84の軸方向の一方側(Z2方向側)の縁部が、ステータコア10の端面10aと、軸方向において略同一の位置に設けられている。また、第2隙間部84の軸方向の一方側(Z2方向側)の縁部が、端面10aからZ1方向またはZ2方向に略絶縁沿面距離の範囲内に設けられていてもよい。
【0070】
また、ステータ100は、接合部90において第1面71aと第2面81aとを接着させるとともに、第1脚部71と第2脚部81とを導通させる導電性接着剤91を備える。導電性接着剤91は、たとえば、溶剤に、銀をナノメートルレベルまで微細化した金属粒子を導電性粒子として含んだペースト状の接合材(銀ナノペースト)である。また、導電性接着剤91は、熱によって溶融するように構成されている。
【0071】
また、導電性接着剤91には、加熱された際に揮発する部材(樹脂部材)が含有されており、揮発する部材が加熱されることにより、導電性接着剤91の体積が減少して、第1面71aと第2面81aとを近接させる機能を有する。また、第1面71aと第2面81aとを接合するために、第1面71aおよび第2面81aのうちの少なくとも一方の接合部90に対応する部分(面部分71eおよび面部分81eのうちの少なくとも一方)に、予め導電性接着剤91が塗布された状態で、第1導体70と第2導体80との組み付けが行われる。なお、図14では、説明のために導電性接着剤91の厚みを強調して図示しているが、この図示の例に限られない。
【0072】
また、導電性接着剤91は、面部分71eおよび面部分81eのうちの少なくとも一方に加えて、径方向から見て、第1面71aのうち、第2隙間部84と面する面部分71i、および、第2面81aのうち、第1隙間部74と面する面部分81iに塗布されている。具体的には、導電性接着剤91は、面部分71iおよび面部分81iの各々の全体に塗布されている。すなわち、第1面71aおよび第2面81aの各々は、径方向から見て、導電性接着剤91により全体が覆われている。なお、導電性接着剤91は、角部内面71fおよび角部内面81fの各々には塗布されていない。
【0073】
(第1絶縁部材の構造)
第1絶縁部材20は、図4に示すように、壁部11aおよびティース13と、第1脚部71および第2脚部81(セグメント導体40)との間に配置されている。図16に示すように、第1絶縁部材20は、3層構造を有している。具体的には、図12に示すように、第1絶縁部材20は、スロット12内において、バックヨーク11の壁部11aおよびティース13の周方向側面13a(図4参照)と、第1脚部71および第2脚部81との間に設けられ、壁部11aおよび周方向側面13aと、第1脚部71および第2脚部81とを絶縁する絶縁層20aと、絶縁層20aのうちの接合部90に対応する軸方向の位置P1とは異なる位置(領域)(P2)の部分20bに重ねて設けられ、ステータコア10と第2脚部81とを固定する固定層20cとを含む。固定層20cは、好ましくは、接着剤を含む接着層として構成されている。また、位置P2は、たとえば、軸方向において、軸方向の位置P1を除く部分のスロット12内の全域と、ステータコア10の端面10bの近傍部分(スロット12よりも軸方向外側の部分を含む)とを含む。
【0074】
そして、第1絶縁部材20は、矢印Z2方向に見て、径方向に並列して配置された複数の第2脚部81の周囲を一体的に覆うように配置されている。言い換えると、径方向に並列して配置された複数の第2脚部81の周方向両側および径方向両側が第1絶縁部材20により覆われる。これにより、第1絶縁部材20によって、接合部90とステータコア10との絶縁を確保することが可能となる。
【0075】
絶縁層20aは、たとえば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS:Poly Phenylene Sulfide Resin)により構成されている。また、絶縁層20aは、アラミド紙等の不織布状に形成されていてもよい。また、図12に示すように、絶縁層20aは、ステータコア10の軸方向の一方側の端面10aから他方側の端面10bに亘って設けられている。すなわち、絶縁層20aは、各スロット内において、壁部11aおよび周方向側面13aを覆うように配置されている。なお、「覆う」とは、壁部11aおよび周方向側面13aの全ての部分を被覆することのみを意味するものではなく、図4に示すように、周方向側面13aの径方向内側部分(先端隙部分)が露出している場合も含む、広い概念を意味するものとする。
【0076】
固定層20cは、図16に示すように、熱によって発泡する発泡剤20d(膨張剤)を含む。具体的には、固定層20cは、たとえば、発泡剤20dとしての複数のカプセル体が、熱硬化性樹脂20eに配合されて形成されている。発泡剤20dは、発泡温度T1以上に加熱されることにより、カプセル体の体積が膨張するように構成されている。固定層20cは、たとえば、ステータ100の製造工程において、加熱されることにより、厚みt6が(図17参照)から厚みt7(図18参照)に増大する。これにより、固定層20cは、加熱された際に、発泡剤20dが発泡(膨張)することにより、第2脚部81と壁部11aおよび周方向側面13aとの間を満たす。
【0077】
また、熱硬化性樹脂20eは、発泡温度T1よりも高い温度である硬化温度T2以上に加熱されることにより、硬化するように構成されている。固定層20cを構成する熱硬化性樹脂20eは、たとえば、エポキシ樹脂である。そして、固定層20cは、加熱された際に、熱硬化性樹脂20eが硬化することにより、第2脚部81と壁部11aおよび周方向側面13aとを接着して固定するように構成されている。
【0078】
図12に示すように、発泡された状態の発泡剤20dを含む固定層20cにより、接合部90に対応する軸方向の位置P1とは異なる位置P2において、第2脚部81の少なくとも一部と、スロット12を構成する壁部11aおよび周方向側面13aとの間が満たされている。詳細には、固定層20cは、絶縁層20aのうちの接合部90に対応する軸方向の位置P1よりも軸方向の他方側(Z1方向側)の部分20bに重ねて設けられている。言い換えると、固定層20cは、絶縁層20aのうちの軸方向の一方側(Z2方向側)の端面10aの近傍よりも軸方向の他方側の部分20bに重ねて設けられている。また、固定層20cは、スロット12内において、絶縁層20aのうちの第2脚部81とステータコア10との間に配置される部分20bに重ねて設けられている。たとえば、図15に示すように、固定層20cは、絶縁層20aのうちの接合部90に対応する軸方向の位置とは異なる位置の部分20bにおいて、絶縁層20aを挟み込むように重ねて設けられている。
【0079】
また、図13に示すように、スロット12とコイル部30との間に設けられる第1絶縁部材20と、第1絶縁部材20とは別個に設けられる第2絶縁部材21とが設けられている。そして、図19に示すように、1つのスロット12において径方向に隣接するコイル間における第1導体70の第1脚部71の第1面71aと、第2導体80の第2脚部81の第2面81aとが接合された接合部90のうち、径方向に隣接する接合部90同士は、第1絶縁部材20とは別個に設けられるシート状の第2絶縁部材21により絶縁されている。なお、「コイル」とは、コイル部30における、第1導体70と第2導体80とが接合された後のスロット12内に配置される直線状の部分を意味する。したがって、一つのスロット12には、複数のコイルが配置される。また、第2絶縁部材21は、特許請求の範囲の「接合部絶縁部材」の一例である。
【0080】
また、図19に示すように、第2絶縁部材21は、たとえば、ノーメックスなどの1枚のシート状の絶縁部材が折りたたまれて形成されている。そして、第2絶縁部材21は、径方向に隣り合う接合部90の対向面90aを覆う対向面絶縁部分21aと、対向面絶縁部分21aの周方向の両端部から連続し、かつ、径方向に隣り合う接合部90の周方向面90bのうちのいずれか一方を少なくとも絶縁距離分覆う周方向面絶縁部分21bとを含む。なお、接合部90の対向面90aとは、径方向に隣り合う接合部90の互いに対向する径方向外側の面および径方向内側の面を意味する。また、絶縁距離とは、周方向面絶縁部分21bの径方向に沿った長さであるとともに、径方向に隣り合う接合部90同士を絶縁するために十分な距離(沿面距離)を意味する。
【0081】
なお、図20に示すように、第2絶縁部材21は、最外径側に配置される接合部90の径方向外側を覆う部分21cと、最内径側に配置される接合部90の径方向内側を覆う部分21dとを含む。
【0082】
また、第2絶縁部材21では、径方向に隣り合う対向面絶縁部分21aは、周方向の一方または他方において周方向面絶縁部分21bにより連結されている。具体的には、径方向に隣り合うように配置される一対の対向面絶縁部分21aのうちの径方向外側の対向面絶縁部分21aと、周方向の一方側に設けられる周方向面絶縁部分21bと、一対の対向面絶縁部分21aのうちの径方向内側の対向面絶縁部分21aと、周方向の他方側に設けられる周方向面絶縁部分21bとが連続するように形成されている。つまり、接合部90のA1方向側の周方向面90bと、接合部90のA2方向側の周方向面90bとが交互に、周方向面絶縁部分21bにより覆われる。言い換えると、第2絶縁部材21は、径方向に沿って隣り合うように配置される複数の接合部90の周方向面90bを連続して覆わないように構成されている。
【0083】
このように、第2絶縁部材21は、軸方向から見て、蛇行形状(蛇腹形状)を有する。また、1つの第2絶縁部材21によって、1つのスロット12内に配置される径方向に隣接する接合部90同士が絶縁されるので、スロット12内の全ての接合部同士が絶縁される。これにより、1つのスロット12内に配置される複数の接合部90を個別に絶縁部材により覆う場合と比べて、第2絶縁部材21を配置するための工程数を低減することが可能になる。
【0084】
また、図20に示すように、第2絶縁部材21は、径方向に沿って伸縮可能に構成されている。第2絶縁部材21は、柔軟性を有するシート状の絶縁部材により構成されているとともに、径方向に沿って隣り合うように配置される複数の接合部90の周方向面90bを連続して覆わないように構成されているためである。これにより、第1脚部71と第2脚部81とを接合する際に、第1脚部71および第2脚部81が径方向または軸方向に沿って押圧されても、第1脚部71および第2脚部81の移動とともに第2絶縁部材21は変形可能である。
【0085】
また、図13に示すように、第2絶縁部材21は、径方向から見て、第1隙間部74および第2隙間部84の両方を覆うように軸方向に延びるように設けられている。具体的には、第2絶縁部材21は、軸方向における一方側(Z2方向側)の縁部が、ステータコア10の軸方向の端面10aから外側(Z2方向側)に突出するように配置されている。また、第2絶縁部材21は、軸方向における他方側(Z1方向側)の縁部が、スロット12内において、第1隙間部74の軸方向における他方側(Z1方向側)の縁部よりも、軸方向における他方側(Z1方向側)に設けられている。
【0086】
また、図13に示すように、第1絶縁部材20も、第2絶縁部材21と共に、ステータコア10の軸方向の端面10aから外側(Z2方向側)に突出するように配置されている。そして、第2絶縁部材21のステータコア10の端面10aから外側に突出した部分の高さ位置h1と、第1絶縁部材20のステータコア10の端面10aから外側に突出した部分の高さ位置h2とは、略等しい。また、第1絶縁部材20および第2絶縁部材21の、ステータコア10の端面10aからの突出量は、第1絶縁部材20および第2絶縁部材21が、第1セグメント導体70の第1コイルエンド部72に接触して折れ曲がらない程度に調整されている。
【0087】
また、図21に示すように、軸方向において、第2絶縁部材21の長さL12は、第1絶縁部材20の長さL11よりも小さい。具体的には、第1絶縁部材20の長さL11は、軸方向におけるステータコア10の長さL3よりも大きい。また、第2絶縁部材21の長さL12は、ステータコア10の長さL3よりも小さい。また、第2絶縁部材21は、接合部90を覆うとともに、接合部90からZ1方向側とZ2方向側とに延びるように設けられている。第2絶縁部材21の長さL12は、コイル部30に印加される電圧の大きさなどに基づいて(必要な沿面距離に基づいて)調整される。なお、図21では、第1導体70および第2導体80の図示は、簡略化のため省略している。
【0088】
また、第2絶縁部材21の長さL12が第1絶縁部材20の長さL11よりも小さいので、図22に示すように、第1絶縁部材20は、径方向から見て、第2絶縁部材21にオーバラップする部分20fと、オーバラップしない部分20bとを含む。具体的には、スロット12内における軸方向の端部(端面10a)近傍において、第1絶縁部材20は、第2絶縁部材21にオーバラップしている。そして、第1絶縁部材20の第2絶縁部材21にオーバラップする部分20fの厚みt11は、第1絶縁部材20の第2絶縁部材21にオーバラップしない部分20bの厚みt12よりも小さい。
【0089】
また、第2絶縁部材21の厚みt13は、厚みt11よりも小さい。また、厚みt12は、厚みt11に固定層20cの厚みt7の2枚分(t7×2)を加えたものである。
【0090】
また、第2絶縁部材21は、第1絶縁部材20の固定層20cよりも軸方向の一方側(Z2方向側)で、かつ、接合部90同士の径方向の間に配置され、接合部90同士を絶縁するように構成されている。具体的には、固定層20cは、絶縁層20aのうちの第2絶縁部材21と径方向に見てオーバラップしない部分20bに重ねて設けられている。また、絶縁層20aは、第2絶縁部材21と、径方向に見てオーバラップする部分20fに配置されている。
【0091】
(ステータの製造装置)
次に、図23を参照して、ステータ100の製造装置200aについて説明する。ステータ100の製造装置200aは、押圧治具201を備えている。押圧治具201は、複数のスロット12に配置された第1導体70の第1脚部71と第2導体80の第2脚部81とを、複数のスロット12毎に径方向に独立して押圧するように構成されている。具体的には、押圧治具201は、複数のスロット12毎に配置され、径方向に移動可能に構成されている。また、押圧治具201は、複数のスロット12に対応するように複数(スロット12の数と同数)設けられており、複数の押圧治具201毎に、独立して径方向に移動可能に構成されている。
【0092】
また、ステータ100の製造装置200aは、複数のスロット12毎に独立して押圧治具201を移動させる移動機構部202を備える。移動機構部202は、複数の押圧治具201毎に設けられており、複数の押圧治具201毎に径方向の移動量を調整可能に構成されている。移動機構部202は、たとえば、アクチュエータからなる。
【0093】
そして、押圧治具201は、複数のスロット12に配置された第1導体70の第1脚部71と第2導体80の第2脚部81との接合部90を押圧する。ここで、t21min≧t22maxの関係が成立しているので、接合部90が径方向外側(R2方向側)に、第1脚部本体部71dおよび第2脚部本体部81dよりも凹んだ状態で配置されることはない。これにより、押圧治具201の押圧力が十分に接合部90に伝達される。
【0094】
また、図12に示すように、ステータ100の製造装置200aは、接着層加熱部203を備える。接着層加熱部203は、ステータコア10よりも径方向内側または径方向外側の少なくとも一方(好ましくは、両方)に配置され、誘導加熱(IH:Induction Heating)を行うことが可能に構成されている。そして、接着層加熱部203は、第1絶縁部材20の固定層20cを発泡温度T1よりも高く、かつ、硬化温度T2よりも高い温度に(室温から)加熱するように構成されている。なお、接着層加熱部203は、誘導加熱を用いることにより、一般的な加熱炉に比べて、所望の温度上昇率(比較的高い温度上昇率)で固定層20cを加熱させることが可能である。また、接合部90は、押圧治具201に押圧された状態で、加熱炉に配置されることにより、加熱される。
【0095】
(ステータの製造方法)
次に、ステータ100の製造方法について説明する。
【0096】
図24に示すように、ステップS11において、ステータコア10の軸方向の一方側に配置される軸方向の他方側に延びる第1脚部71を含む複数の第1導体70を準備する。なお、第1脚部71が、第1脚部本体部71dと、第1面71aが設けられているとともに第1脚部本体部71dよりも径方向の厚みt2が小さい第1面配置部71bとを有する第1導体70が準備される。
【0097】
ステップS12において、ステータコア10の軸方向の他方側に配置され、軸方向の一方側に延びる第2脚部81を含む複数の第2導体80を準備する。なお、第2脚部81が、第2脚部本体部81dと、第2面81aが設けられているとともに第2脚部本体部81dよりも径方向の厚みt4が小さい第2面配置部81bとを有する第2導体80が準備される。なお、ステップS11の第1導体70を準備する工程およびステップS12の第2導体80を準備する工程では、径方向において、接合部90の厚みが、接合部90以外の部分E2の厚み以上になるように第1導体70および第2導体80が準備される。
【0098】
ステップS13において、ステータコア10の一方側から複数の第1導体70をスロット12側に移動させる(スロット12に挿入する)。なお、第1絶縁部材20は、第1導体70がスロット12に挿入される前に予めスロット12に配置されている。また、第2絶縁部材21は、予めスロット12に配置されているか、または、第1導体70とともに、スロット12に挿入される。
【0099】
ステップS14において、ステータコア10の軸方向の他方側から、複数の第2導体80をスロット12側に移動させる(スロット12に挿入する)。
【0100】
ステップS15において、複数の第1導体70の各々の第1脚部71の第1面71aの少なくとも一部と、複数の第2導体80の各々の第2脚部81の第2面81aの少なくとも一部とを、1つのスロット12内において接合することにより接合部90を形成する。具体的には、押圧治具201は、複数のスロット12に配置された第1導体70の第1脚部71と第2導体80の第2脚部81とを、複数のスロット12毎に径方向に独立して押圧する。これにより、接合部90が形成される。ここで、第1実施形態では、接合部90を形成する工程では、径方向において、接合部90の厚み(合計の厚みt21)が、接合部90以外の部分E2の厚み(合計の厚みt22)以上(図14および図15参照)になるように接合部90が形成される。なお、第1脚部71および第2脚部81が、押圧治具201により、押圧されながら、加熱装置(図示せず)により、導電性接着剤91が加熱されることにより、第1面71aの少なくとも一部と第2面81aの少なくとも一部とが接合され、接合部90が形成される。
【0101】
[第2実施形態]
次に、図4、および、図25図34を参照して、第2実施形態によるステータ200について説明する。第2実施形態のステータ200では、互いに別個に設けられる第1絶縁部材20および第2絶縁部材21を備える上記第1実施形態のステータ100と異なり、一体的に形成された絶縁部材(121、122)が設けられている。なお、上記第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
【0102】
[ステータの構造]
図4、および、図25図34を参照して、第2実施形態によるステータ200の構造について説明する。なお、ステータ200は、請求の範囲の「電機子」の一例である。
【0103】
図25に示すように、ステータ200は、シート状の絶縁部材121と、コイル部130とを備える。また、コイル部130は、第1コイルアッセンブリ130a(反リード側コイル)と第2コイルアッセンブリ130b(リード側コイル)とを含む。また、コイル部130は、複数のセグメント導体140(図27AおよびB参照)からなる。
【0104】
また、図26に示すように、軸方向において、絶縁部材121(後述する接触部絶縁部分121c)、および、後述するコア脚部絶縁部分122の各々は等しい長さL22を有する。長さL22は、軸方向におけるステータコア10の長さL3よりも大きい。なお、図26では、第1導体70および第2導体80の図示は、簡略化のため省略している。また、図26では、絶縁部材121およびコア脚部絶縁部分122の各々の形状を概略的に図示している。
【0105】
(セグメント導体の構造)
図27AおよびBに示すように、セグメント導体140は、横断面が略矩形形状を有する平角導線として構成されている。そして、セグメント導体140のうち、後述する第1脚部171(第2脚部181)は、絶縁被膜により被覆されずに導体表面140bが露出(図27A参照)している。一方、セグメント導体140のうち、後述する第1コイルエンド部172(第2コイルエンド部182)の導体表面140bには、厚みt21aを有する絶縁被膜140a(図27B参照)が設けられている。絶縁被膜140aの厚みt21aは、たとえば、相間絶縁性能(第1コイルエンド部172同士の絶縁、第2コイルエンド部182同士の絶縁{図28AおよびB、図29AおよびB参照})を確保することが可能な程度に設定されている。なお、図27AおよびBでは、説明のために、厚み等の大小関係を強調して図示しているが、この図示の例に限られない。また、図27AおよびBでは、後述する第1導体170についてのみ図示しているが、第2導体180についても同様であるので図示は省略する。
【0106】
〈第1導体および第2導体の構造〉
図28A(B)および図29A(B)に示すように、複数のセグメント導体140は、ステータコア10の軸方向の一方側(Z2方向側)に配置される複数の第1導体170と、ステータコア10の軸方向の他方側(Z1方向側)に配置される複数の第2導体180とを含む。第1導体170と第2導体180とは、軸方向に互いに対向して配置されている。また、第1導体170は、軸方向の長さL31を有する第1脚部171を含む。第1脚部171は、軸方向の他方側(Z1方向側)に延びている。また、第2導体180は、軸方向に長さL32を有する第2脚部181を含む。第2脚部181は、軸方向の一方側(Z2方向側)に延びている。なお、第1脚部171の長さL31と、第2脚部181の長さL32とは、略等しい。また、第1脚部171および第2脚部181の各々は、スロット12に挿入されている。なお、第1導体170および第2導体180は、それぞれ、請求の範囲の「第1セグメント導体」および「第2セグメント導体」の一例である。
【0107】
図28Aおよび図28Bに示すように、複数の第1導体170は、それぞれ、互いに異なるスロット12に配置される一対の第1脚部171が互いに接続されることにより、径方向に見てU字形状(略U字形状)を有するように形成されている。第1導体170のコイルピッチは6である。すなわち、一対の第1脚部171は、スロット12が6つ分、周方向に異なる位置に配置される。すなわち、一対の第1脚部171のうちの一方の第1脚部171が配置されているスロット12と、他方の第1脚部171が配置されているスロット12との間に、5つのスロット12が設けられている。具体的には、第1導体170は、互いに異なるスロット12に配置され、それぞれ軸方向に沿って直線状に形成されている一対の第1脚部171と、第1コイルエンド部172とを含む。第1脚部171とは、ステータコア10の軸方向における端面10a(図2参照)の軸方向位置からスロット12の内に配置されている部分を意味し、第1コイルエンド部172は、第1脚部171に連続して形成され、ステータコア10の端面10aよりも軸方向外側に配置されている部分を意味するものとする。また、第1コイルエンド部172は、軸方向に折れ曲がる屈曲形状を有する。また、第1コイルエンド部172は、軸方向から見て、径方向に1本のセグメント導体140の幅分、階段状に屈曲するクランク状に形成された第1クランク部分173を有する。つまり、第1クランク部分173の径方向の幅は、1本のセグメント導体140の幅の2倍である。
【0108】
また、一対の第1脚部171の軸方向長さL31は互いに略等しい。なお、軸方向長さL31とは、第1導体170のうちスロット12内において軸方向に直線状に延びている部分の長さを意味する。また、軸方向長さL31は、ステータコア10(スロット12)の軸方向の長さL3(図26参照)よりも小さい。
【0109】
同様に、図29Aおよび図29Bに示すように、第2導体180は、スロット12に配置される一対の第2脚部181と、第2コイルエンド部182とを含む。また、第2コイルエンド部182は、第2クランク部分183を有する。また、第2導体180は、互いに異なるスロット12に配置される一対の第2脚部181が互いに接続されることにより、U字形状を有するように形成されている。また、第2導体180の一対の第2脚部181の軸方向長さL32は互いに略等しい。なお、軸方向長さL32とは、第2導体180のうちスロット12内において軸方向に直線状に延びている部分の長さを意味する。
【0110】
図30に示すように、第1脚部171は、複数のスロット12の各々において、ステータコア10の径方向に隣り合って複数設けられている。また、第2脚部181は、複数のスロット12の各々において、ステータコア10の径方向に隣り合って複数設けられている。
【0111】
また、1つのスロット12内において、第1脚部171に設けられる第1面171a、および、第2脚部181に設けられる第2面181aは、径方向に沿って交互に複数配列されている。第1面171aは、第1脚部171の先端部171b側に設けられている。また、第2面181aは、第2脚部181の先端部181b側に設けられている。なお、第1面171aおよび第2面181aは、後述するように互いに接触するように設けられており、互いに接触する第1面171aと第2面181aとは、径方向に対向するように配置されている。
【0112】
また、ステータ200は、複数のスロット12の各々において、コイル部130とスロット12の開口部12a(凸部13b)との間に挟まれるように設けられるばね部材210を備える。すなわち、ばね部材210は、スロット12内の径方向内側に設けられる先端隙12bに設けられている。
【0113】
ばね部材210は、第1導体170の第1脚部171の第1面171aと、第2導体180の第2脚部181の第2面181aとが接触するように、コイル部130を径方向内側から押圧するように構成されている。第1脚部171の第1面171aと、第2脚部181の第2面181aとが接触することにより接触部190が形成されている。なお、接触部190は、請求の範囲の「接合部」の一例である。
【0114】
第1面171aおよび第2面181aは、第1面171aと第2面181aとの間に接合剤を介さずに、ばね部材210により押圧されることにより互いに接触されている。すなわち、第1面171aと第2面181aとは接合されておらず、第1面171aと第2面181aとの接触状態は、ばね部材210による押圧力によって維持されている。
【0115】
また、1つのスロット12内には、互いに接触している第1面171aと第2面181aとの複数(第2実施形態では8つ)の組が設けられている。すなわち、1つのスロット12内には、複数の接触部190が設けられている。複数の接触部190同士は、1つのスロット12内において、径方向に隣り合って配置されている。
【0116】
具体的には、複数の接触部190は、径方向から見て、互いにオーバラップするように配置されている。つまり、1つのスロット12内に配置される全ての接触部190が水平方向に沿って並んだ状態で配置されている。言い換えると、1つのスロット12内において、軸方向における複数の接触部190の各々の位置は、互いに略等しい。
【0117】
また、複数の接触部190の各々は、スロット12内において、ステータコア10の軸方向における中央部に配置されている。また、ばね部材210も、ステータコア10の軸方向における中央部に配置されている。具体的には、ばね部材210は、径方向から見て、複数の接触部190の各々とオーバラップするように設けられている。
【0118】
また、第1面171aおよび第2面181aの各々は、メッキ処理されている。すなわち、メッキ処理された面同士(第1面171aおよび第2面181a)が接触されている。
【0119】
また、メッキ処理においては、たとえば、Ni、Ag、Au、および、Su等の金属が用いられる。なお、上記の金属のうちの複数の金属(たとえば、NiとAg)を用いてメッキ処理を行ってもよい。
【0120】
図31に示すように、第1脚部171は、第1面171aが形成されている第1面形成部171cを含む。第1面形成部171c(第1面171a)は、軸方向に沿って延びるように設けられている。また、第1脚部171は、第1面形成部171cから連続して第1面形成部171cの軸方向の一方側(Z2方向側)に設けられる第1脚部本体部171dを含む。第1面形成部171cは、径方向の厚みt31を有する。また、第1脚部本体部171dは、径方向の厚みt32を有する。第1脚部本体部171dの径方向の厚みt32は、第1面形成部171cの径方向の厚みt31よりも大きい。
【0121】
また、第1脚部171は、第1面形成部171cと第1脚部本体部171dとの間に設けられる第1段差部171eを含む。第1段差部171eと、第2脚部181の先端部181bとの間には、隙間部171fが設けられている。
【0122】
第2脚部181は、第2面181aが形成されている第2面形成部181cを含む。第2面形成部181c(第2面181a)は、軸方向に沿って延びるように設けられている。また、第2脚部181は、第2面形成部181cから連続して第2面形成部181cの軸方向の他方側(Z1方向側)に設けられる第2脚部本体部181dを含む。第2面形成部181cは、径方向の厚みt33を有する。また、第2脚部本体部181dは、径方向の厚みt34を有する。第2脚部本体部181dの径方向の厚みt34は、第2面形成部181cの径方向の厚みt33よりも大きい。
【0123】
また、第2脚部181は、第2面形成部181cと第2脚部本体部181dとの間に設けられる第2段差部181eを含む。第2段差部181eと、第1脚部171の先端部171bとの間には、隙間部181fが設けられている。
【0124】
なお、第1面形成部171cの径方向の厚みt31と、第2面形成部181cの径方向の厚みt33とは、略等しい。また、第1脚部本体部171dの径方向の厚みt32と、第2脚部本体部181dの径方向の厚みt34とは、略等しい。なお、図31では、絶縁部材121を強調して図示するために、実際よりも大きい厚みを有しているように図示している。また、接触部190の径方向の厚み(t31+t33)は、接触部190以外の部分の厚み(t32またはt34)よりも大きい。
【0125】
また、図32に示すように、シート状の絶縁部材121は、1つのスロット12において径方向に隣接するコイル間における、導体表面140bが露出した第1脚部171と導体表面140b(図27AおよびB参照)が露出した第2脚部181とが接合剤を介さずに接触された接触部190同士を絶縁するように設けられている。具体的には、絶縁部材121は、スロット12内において径方向に複数(第2実施形態では8つ)配列されているコイル(互いに接触する第1脚部171と第2脚部181との組)同士の間のそれぞれに設けられている。
【0126】
詳細には、絶縁部材121は、たとえば、ノーメックスなどの1枚のシート状の絶縁部材が折りたたまれて形成されている。そして、絶縁部材121は、径方向に隣り合う接触部190の対向面190aを覆う対向面絶縁部分121aと、対向面絶縁部分121aの周方向の両端部から連続し、かつ、径方向に隣り合う接触部190の周方向面190bのうちのいずれか一方を少なくとも絶縁距離分覆う周方向面絶縁部分121bとを含む。なお、接触部190の対向面190aとは、径方向に隣り合う接触部190の互いに対向する径方向外側の面および径方向内側の面を意味する。また、絶縁距離とは、周方向面絶縁部分121bの径方向に沿った長さであるとともに、径方向に隣り合う接触部190同士を絶縁するために十分な距離(沿面距離)を意味する。また、周方向面190bとは、接触部190のうち、周方向と交差する面を意味する。言い換えると、周方向面190bとは、径方向および軸方向に延びる面を意味する。
【0127】
また、絶縁部材121は、径方向に隣り合うように配置される一対の対向面絶縁部分121aのうちの径方向外側の対向面絶縁部分121aと、周方向の一方側に設けられる周方向面絶縁部分121bと、一対の対向面絶縁部分121aのうちの径方向内側の対向面絶縁部分121aと、周方向の他方側に設けられる周方向面絶縁部分121bとが連続するように形成されている接触部絶縁部分121cを含む。
【0128】
また、ステータ200は、スロット12とコイル部130との間に設けられ、接触部絶縁部分121cと一体的に形成されているコア脚部絶縁部分122を備える。すなわち、コア脚部絶縁部分122は、接触部絶縁部分121cと同様にシート状であるとともに、接触部絶縁部分121cと同じ材質により形成されている。また、接触部絶縁部分121cとコア脚部絶縁部分122とは等しい大きさの厚み(図示せず)を有している。また、接触部絶縁部分121cとコア脚部絶縁部分122とは、軸方向において等しい長さL22(図30参照)を有する。
【0129】
具体的には、コア脚部絶縁部分122は、最外径の対向面絶縁部分121aと連続するとともに、スロット12の周方向の一方側(図32では左側)において、スロット12(周方向側面13a)とコイル部130(周方向面190b)との間に設けられる一方側絶縁部分122aを有する。また、コア脚部絶縁部分122は、最内径の対向面絶縁部分121aと連続するとともに、スロット12の周方向の他方側(図32では右側)において、スロット12(周方向側面13a)とコイル部130(周方向面190b)との間に設けられる他方側絶縁部分122bを有する。
【0130】
詳細には、一方側絶縁部分122a(他方側絶縁部分122b)は、スロット12の周方向側面13aとコイル部130の周方向面190bとにより挟まれる部分と、スロット12の周方向側面13aとコイル部130の周方向面190bを覆う周方向面絶縁部分121bとにより挟まれる部分とが、径方向に沿って交互に存在する。
【0131】
また、第2実施形態では、一方側絶縁部分122aは、スロット12内のコイル部130の径方向外側の端部230aから径方向内側の端部230bまで(端部230bに亘るように)延びている。また、他方側絶縁部分122bは、スロット12内のコイル部130の径方向内側の端部230bから径方向外側の端部230aまで(端部230aに亘るように)延びている。すなわち、スロット12内のコイル部130は、最外径の対向面絶縁部分121aと、最内径の対向面絶縁部分121aと、一方側絶縁部分122aと、他方側絶縁部分122bとにより取り囲まれるように設けられている。
【0132】
また、コア脚部絶縁部分122は、一方側絶縁部分122aと連続するとともに、最内径の対向面絶縁部分121aを径方向内側から覆うように設けられる径方向内側絶縁部分122cを含む。また、コア脚部絶縁部分122は、他方側絶縁部分122bと連続するとともに、最外径の対向面絶縁部分121aを径方向外側から覆うように設けられる径方向外側絶縁部分122dを有する。
【0133】
具体的には、径方向内側絶縁部分122cは、最内径の対向面絶縁部分121aとばね部材210とにより挟まれるように設けられている。すなわち、コイル部130とばね部材210とは、最内径の対向面絶縁部分121aと径方向内側絶縁部分122cとにより絶縁されている。また、径方向外側絶縁部分122dは、最外径の対向面絶縁部分121aとスロット12の壁部11aとにより挟まれるように設けられている。すなわち、コイル部130とスロット12の壁部11a(ステータコア10)とは、最外径の対向面絶縁部分121aと径方向外側絶縁部分122dとにより絶縁されている。
【0134】
また、径方向内側絶縁部分122cは、周方向において長さL41を有する。また、径方向外側絶縁部分122dは、周方向において長さL42を有する。径方向内側絶縁部分122cの長さL41、および、径方向外側絶縁部分122dの長さL42の各々は、たとえばスロット12の幅W2(図4参照)の1/2よりも大きい。
【0135】
また、図30に示すように、接触部絶縁部分121c(図32参照)およびコア脚部絶縁部分(図32参照)の各々の軸方向の長さL22は、スロット12の軸方向の長さL62よりも大きい。なお、スロット12の軸方向の長さL62は、ステータコア10の軸方向の長さL3(図25参照)と等しい。また、接触部絶縁部分121cおよびコア脚部絶縁部分122の各々は、軸方向における両側の縁部が、ステータコア10の軸方向の端面(10a、10b)から外側に突出するように配置されている。これにより、接触部絶縁部分121cおよびコア脚部絶縁部分122の各々は、軸方向において、スロット12の全体に渡って設けられている。
【0136】
また、図33に示すように、接触部絶縁部分121cは、絶縁層123aと、熱によって発泡する発泡剤123cを含み、発泡剤123cが発泡することによって膨張することによりコイル(互いに接触する第1脚部171と第2脚部181との組)を径方向に隣接するコイルに対して少なくとも軸方向に固定する固定層123bと、を含む。固定層123bは、絶縁層123aの両面に設けられている。固定層123bは、加熱された際に、熱硬化性樹脂123dが硬化する。これにより、接触部絶縁部分121cの固定層123bは、隣接するコイル同士を接着して固定する。また、図33では、ステータコア10等の図示は、簡略化のため省略している。
【0137】
また、図34に示すように、コア脚部絶縁部分122は、絶縁層124aと、熱によって発泡する発泡剤124cを含み、発泡剤124cが発泡することによって膨張することにより第1脚部171および第2脚部181の各々をステータコア10に対して少なくとも軸方向に固定する固定層124bと、を含む。コア脚部絶縁部分122の固定層124bは、第1脚部171および第2脚部181の各々とステータコア10とを接着して固定するように構成されている。これにより、第1脚部171および第2脚部181の各々を固定するのにワニス等を用いる必要がない。また、図33および図34では、絶縁部材121およびコア脚部絶縁部分122を強調して図示するために、実際よりも大きい厚みを有しているように図示している。なお、絶縁層123a(124a)および固定層123b(124b)は、それぞれ、上記第1実施形態の絶縁層20aおよび固定層20cと同一の構成(素材)であるので、詳細な説明は省略する。
【0138】
また、固定層124b(固定層123b)は、絶縁層124a(絶縁層123a)の全面に重ねて設けられている。具体的には、固定層124b(固定層123b)は、接触部190に対応する軸方向の位置、および、脚部(171、181)のうちの接触部190以外の部分に対応する軸方向の位置の各々において、絶縁層124a(絶縁層123a)と重ねて設けられている。
【0139】
(ステータの製造工程)
次に、図35を参照して、ステータ200の製造工程について説明する。
【0140】
図35に示すように、まず、ステップS1において、絶縁部材121(接触部絶縁部分121c)とコア脚部絶縁部分122とが一体的にスロット12内に挿入(配置)される。
【0141】
次に、ステップS2において、軸方向の他方側(Z1方向側)から、第2導体180の第2脚部181(図30参照)がスロット12内に挿入される。
【0142】
次に、ステップS3において、軸方向の一方側(Z2方向側)から、第1導体170の第1脚部171(図30参照)がスロット12内に挿入される。この際、第1脚部171の第1面171aと第2脚部181の第2面181aとが対向するように第1脚部171が配置される。
【0143】
次に、ステップS4において、ばね部材210(図30参照)が、スロット12の開口部12aを介して、径方向内側からスロット12内に挿入される。
【0144】
そして、ステップS5において、ステータコア10が加熱されるとともに固定層123bが加熱されることにより、発泡剤123cが発泡するとともに固定層123bが膨張される。これにより、コイル部130が、スロット12に対して少なくとも軸方向に固定される。
【0145】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0146】
[第3実施形態]
次に、図36図40を参照して、第3実施形態によるステータ300について説明する。第3実施形態のステータ300では、固定層123bが絶縁層123aの全面に設けられている上記第2実施形態と異なり、固定層223bが絶縁層223aに部分的に設けられている。なお、上記第2実施形態と同様の構成は、第2実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
【0147】
[ステータの構造]
図36図40を参照して、第3実施形態によるステータ300の構造について説明する。なお、ステータ300は、請求の範囲の「電機子」の一例である。
【0148】
図36および図37に示すように、ステータ300は、シート状の絶縁部材221と、コイル部130とを備える。
【0149】
図38に示すように、絶縁部材221は、径方向に隣り合うように配置される一対の対向面絶縁部分221aのうちの径方向外側の対向面絶縁部分221aと、周方向の一方側に設けられる周方向面絶縁部分221bと、一対の対向面絶縁部分221aのうちの径方向内側の対向面絶縁部分221aと、周方向の他方側に設けられる周方向面絶縁部分221bとが連続するように形成されている接触部絶縁部分221cを含む。
【0150】
また、ステータ300は、スロット12とコイル部130との間に設けられ、接触部絶縁部分221cと一体的に形成されているコア脚部絶縁部分222を備える。
【0151】
具体的には、コア脚部絶縁部分222は、最外径の対向面絶縁部分221aと連続するとともに、スロット12の周方向の一方側(図38では左側)において、スロット12(周方向側面13a)とコイル部130(周方向面190b)との間に設けられる一方側絶縁部分222aを有する。また、コア脚部絶縁部分222は、最内径の対向面絶縁部分221aと連続するとともに、スロット12の周方向の他方側(図38では右側)において、スロット12(周方向側面13a)とコイル部130(周方向面190b)との間に設けられる他方側絶縁部分222bを有する。
【0152】
また、コア脚部絶縁部分222は、一方側絶縁部分222aと連続するとともに、最内径の対向面絶縁部分221aを径方向内側から覆うように設けられる径方向内側絶縁部分222cを含む。また、コア脚部絶縁部分222は、他方側絶縁部分222bと連続するとともに、最外径の対向面絶縁部分221aを径方向外側から覆うように設けられる径方向外側絶縁部分222dを有する。
【0153】
また、図39に示すように、接触部絶縁部分221cは、絶縁層223aと、熱によって発泡する発泡剤223cを含み、発泡剤223cが発泡することによって膨張することによりコイルを径方向に隣接するコイルを固定する固定層223bと、を含む。固定層223bは、絶縁層223aの両面に設けられている。固定層223bは、加熱された際に、熱硬化性樹脂223dが硬化する。これにより、接触部絶縁部分221cの固定層223bは、隣接するコイル同士を接着して固定する。なお、図39では、ステータコア10等の図示は、簡略化のため省略している。
【0154】
また、図40に示すように、コア脚部絶縁部分222は、絶縁層224aと、熱によって発泡する発泡剤224cを含み、発泡剤224cが発泡することによって膨張することにより第1脚部171および第2脚部181の各々をステータコア10に対して少なくとも軸方向に固定する固定層224bと、を含む。コア脚部絶縁部分222の固定層224bは、第1脚部171および第2脚部181の各々とステータコア10とを接着して固定するように構成されている。なお、図39および図40では、絶縁部材221およびコア脚部絶縁部分222を強調して図示するために、実際よりも大きい厚みを有しているように図示している。
【0155】
ここで、第3実施形態では、固定層224b(固定層223b)は、接触部190に対応する軸方向の位置とは異なる位置の絶縁層224a(絶縁層223a)の部分に重ねて設けられている。言い換えると、コア脚部絶縁部分222(接触部絶縁部分221c)において、接触部190に対応する軸方向の位置には、絶縁層224a(絶縁層223a)しか設けられていない。具体的には、固定層224b(固定層223b)は、第1段差部171e(図39参照)よりも軸方向の一方側(Z2方向側)の部分と、第2段差部181e(図39参照)よりも軸方向の他方側(Z1方向側)の部分との2つの部分に分離して設けられている。
【0156】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
【0157】
[第1~第3実施形態の効果]
第1~第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0158】
第1~第3実施形態では、上記のように、径方向において、接合部(90、190)の厚みは、接合部(90、190)以外の部分(E2)の厚み以上である。これにより、接合部(90、190)の厚みが、接合部(90、190)以外の部分(E2)の厚み以上であるので(接合部(90、190)が接合部(90、190)以外の部分(E2)よりも径方向に窪むことはないので)、治具(201)または、ばね部材(210)などにより、接合部を十分な力によって押圧することができる。その結果、第1セグメント導体(70)と第2セグメント導体(80)とが十分に接合できなくなるのを防止することができる。また、接合部(90、190)の径方向の厚みが、部分(E2)の径方向の厚みよりも小さい場合、治具(201)または、ばね部材(210)などにより接合部(90、190)を押圧すると、コイル部(30、130)(第1セグメント導体(70、170)、第2セグメント導体(80、180))が湾曲してしまう。そこで、上記のように構成することによって、治具(201)または、ばね部材(210)などにより接合部(90、190)を押圧した場合でもコイル部(30、130)が湾曲するのを防止することができる。また、第1面側部分(71b、171c)の径方向の厚みが、第1脚部本体部(71d、171d)の径方向の厚みよりも小さいとともに、第2面側部分(81b、181c)の径方向の厚みが、第2脚部本体部(81d、181d)の径方向の厚みよりも小さいので、接合面の面積を確保しながら、接合部(90、190)の径方向の厚みが大きくなるのを抑制することができる。
【0159】
また、第1実施形態では、上記のように、1つのスロット(12)に配置される複数の第1セグメント導体(70)および複数の第2セグメント導体(80)において、接合部(90)(E1)の径方向の合計の厚み(t21)の寸法ばらつきの範囲の最小値(t21min)は、部分(E2)の径方向の合計の厚み(t22)の寸法ばらつきの範囲の最大値(t22max)以上である。このように構成すれば、接合部(90)の径方向の合計の厚み(t21)が最小値(t21min)であっても、部分(E2)の径方向の合計の厚み(t22)よりも大きくなるので、治具(201)により、接合部(90)を十分な力によって押圧することができる。
【0160】
また、第1実施形態では、上記のように、1つのスロット(12)に配置される複数の第1セグメント導体(70)および複数の第2セグメント導体(80)において、接合部(90)(E1)の径方向の合計の厚み(t21)の寸法ばらつきの範囲の最小値(t21min)は、部分(E2)の径方向の合計の厚み(t22)の寸法ばらつきの範囲の最大値(t22max)以上である。このように構成すれば、接合部(90)の径方向の合計の厚み(t21)が最小値(t21min)であっても、部分(E2)の径方向の合計の厚み(t22)よりも大きくなるので、治具(201)により、接合部(90)を十分な力によって押圧することができる。その結果、セグメント導体(40)の寸法のばらつきに起因して、第1セグメント導体(70)と第2セグメント導体(80)とが十分に接合できなくなるのを防止することができる。
【0161】
また、第1実施形態では、上記のように、1つのスロット(12)に配置される複数の第1セグメント導体(70)のうちの第1面側部分(71b、171c)の径方向の厚み(t2)の寸法ばらつきの範囲の最小値(t2min)は、1つのスロット(12)に配置される複数の第1セグメント導体(70)のうちの第1脚部本体部(71d、171d)の厚み(t3)の寸法ばらつきの範囲の最大値(t3max)の1/2以上であり、1つのスロット(12)に配置される複数の第2セグメント導体(80)のうちの第2面側部分(81b、181c)の径方向の厚み(t4)の寸法ばらつきの範囲の最小値(t4min)は、1つのスロット(12)に配置される複数の第2セグメント導体(80)のうちの第2脚部本体部(81d、181d)の厚み(t5)の寸法ばらつきの範囲の最大値(t5max)の1/2以上である。このように構成すれば、第1面側部分(71b、171c)および第2面側部分(81d、181d)(接合部(90))の径方向の厚み(t2、t4)が最小値(t2min、t4min)であっても、第1脚部本体部(71d、171d)および第2脚部本体部(81d、181d)(部分(E2))の径方向の厚み(t3、t5)よりも大きくなるので、治具(201)により、第1面側部分(71b、171c)および第2面側部分(81d、181d)(接合部(90))を十分な力によって押圧することができる。
【0162】
また、第1実施形態では、上記のように、1つのスロット(12)に配置される複数の第1セグメント導体(70)および複数の第2セグメント導体(80)において、導電性接着剤(91)を含む接合部(90)の径方向の合計の厚み(t21)の寸法ばらつきの範囲の最小値(t21min)は、部分(E2)の径方向の合計の厚み(t22)の寸法ばらつきの範囲の最大値(t22max)以上である。このように構成すれば、第1面(71a)と第2面(81a)との間に導電性接着剤(91)が設けられた場合でも、治具(201)により、接合部(90)を十分な力によって押圧することができる。
【0163】
また、第1実施形態では、上記のように、1つのスロット(12)に配置される複数の第1セグメント導体(70)および複数の第2セグメント導体(80)において、接合部絶縁部材(21)を含む接合部(90)の径方向の合計の厚み(t21)の寸法ばらつきの範囲の最小値(t21min)は、接合部絶縁部材(21)を含む部分(E2)の径方向の合計の厚み(t22)の寸法ばらつきの範囲の最大値(t22max)以上である。このように構成すれば、接合部(90)の間、および、部分(E2)の両方に接合部絶縁部材(21)が設けられた場合でも、治具(201)により、接合部(90)を十分な力によって押圧することができる。
【0164】
また、第1実施形態では、上記のように、1つのスロット(12)に配置される複数の第1セグメント導体(70)および複数の第2セグメント導体(80)において、接合部(90)の径方向の合計の厚み(t21)の寸法ばらつきの範囲の最小値(t21min)は、スロット(12)の径方向の幅(W3)以下である。このように構成すれば、接合部(90)がスロット(12)からはみ出すのを防止することができる。
【0165】
また、第1~第3実施形態では、上記のように、1つのスロット(12)に配置される複数の第1セグメント導体(70、170)および複数の第2セグメント導体(80、180)の接合部(90、190)は、径方向から見て、互いにオーバラップするように配置されている。このように構成すれば、複数の接合部(90、190)が、径方向から見て、互いにオーバラップしないように配置(軸方向にずれて配置)されている場合と異なり、軸方向の長さの比較的小さい治具(201)、または、ばね部材(210)によって複数の接合部(90、190)を一斉に押圧することができる。
【0166】
また、第1~第3実施形態では、上記のように、第1セグメント導体(70、170)および第2セグメント導体(80、180)の各々は、それぞれ、一対の第1脚部(71、171)および一対の第2脚部(81、181)を含むU字形状を有している。このように構成すれば、第1セグメント導体(70、170)の一対の第1脚部(71、171)の長さ(L1、L31)が互いに略同じななるとともに、第2セグメント導体(80、180)の一対の第2脚部(81、181)の長さ(L2、L32)が互いに略同じなる。これにより、軸方向における複数の接合部(90、190)の位置を略同じにすることができるので、1つのスロット(12)内に配置される複数の接合部(90、190)の全てを、径方向から見て、互いにオーバラップするように配置することができる。
【0167】
また、第1~第3実施形態では、上記のように、第1面(71a、171a)および第2面(81a、181a)の各々は、軸方向に対して平行に延びるように設けられ、第1面(71a、171a)および第2面(81a、181a)は、互いに径方向に接合されている。ここで、第1面(71a、171a)および第2面(81a、181a)が軸方向に対して交差する場合(第1面(71a、171a)および第2面(81a、181a)が傾斜面の場合)では、治具(201)、または、ばね部材(210)によって第1面(71a、171a)および第2面(81a、181a)を径方向から押圧すると、第1面(71a、171a)および第2面(81a、181a)(傾斜面)を摺動面として、第1脚部(71、171)および第2脚部(81、181)が互いに離間するように軸方向に移動してしまう。そこで、上記のように構成することによって、治具(201)によって第1面(71a、171a)および第2面(81a、181a)を径方向から押圧した場合に、第1脚部(71、171)および第2脚部(81、181)が軸方向に移動してしまうのを防止することができる。
【0168】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0169】
たとえば、上記第1実施形態では、第1面71aおよび第2面81aの各々が、軸方向に対して平行に延びている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1面71aおよび第2面81aの各々が、軸方向に対して所定の角度(たとえば5度以下)傾いていてもよい。
【0170】
また、上記第1実施形態では、第2絶縁部材21が第1脚部本体部71dから第2脚部本体部81dに渡るように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2絶縁部材21が、第1脚部本体部71dと第2脚部本体部81dとの間には配置されずに、接合部90同士の間(第1面配置部71bと第2面配置部81bとの間)に配置されていてもよい。
【0171】
また、上記第1実施形態では、1つのスロット12に配置される全ての接合部90が径方向から見て、互いにオーバラップするように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、1つのスロット12内において、隣り合う接合部90同士は部分的にオーバラップする一方、隣り合っていない接合部90同士がオーバラップしていなくてもよい。つまり、1つのスロット12内に配置される複数の接合部90が、径方向内側から径方向外側に向かって、軸方向に徐々にずれずように配置されていてもよい。
【0172】
また、上記第1実施形態では、第1隙間部74および第2隙間部84の各々が、スロット12内に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1隙間部74および第2隙間部84のうちの一部(たとえば第2隙間部84だけ)がスロット12外に配置(図41参照)されていてもよいし、第1隙間部74および第2隙間部84の両方の全体が、スロット12外に配置(図42参照)されていてもよい。
【0173】
また、上記第1実施形態では、第1隙間部74および第2隙間部84の各々が、端面10a(一方側端面)の近傍に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1隙間部74および第2隙間部84の各々が、端面10a(一方側端面)および端面10b(他方側端面)の近傍に配置されていてもよい。この場合、図43に示すように、第1セグメント導体270の一対の第1脚部271は互いに長さが異なる(図43(A)参照)ように構成されているとともに、第2セグメント導体280の一対の第2脚部281は互いに長さが異なる(図43(B)参照)ように構成されている。すなわち、第1セグメント導体270および第2セグメント導体280の各々は、J字状(略J字状)を有する。
【0174】
また、上記第1実施形態では、第2脚部81の長さが、第1脚部71の長さよりも長い例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2脚部81の長さが、第1脚部71の長さよりも短くてもよい。
【0175】
また、上記第1実施形態では、脚部の長い第2導体80がリード側の導体であり、脚部の短い第1導体70が反リード側の導体である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、脚部の長い第2導体80が反リード側の導体であり、脚部の短い第1導体70がリード側の導体であってもよい。
【0176】
また、上記第1実施形態では、第1絶縁部材20および第2絶縁部材21(接合部絶縁部材)がシート状である例を示したが、本発明はこれに限られない。シート状でない第1絶縁部材20および第2絶縁部材21を備えるステータに対しても本発明を適用することは可能である。
【0177】
また、上記第1実施形態では、第1脚部71の先端部71cと第2脚部81との間に第1隙間部74が設けられているとともに、第2脚部81の先端部81cと第1脚部71との間に第2隙間部84が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。図44に示す第4変形例のように、第1脚部371の先端部と第2脚部381との間、および、第2脚部381の先端部と第1脚部371との間に隙間部が設けられていない場合にも本発明を適用することは可能である。
【0178】
また、上記第1実施形態では、第1面配置部71bの径方向の厚みt2の寸法ばらつきの範囲の最小値t2minが第1脚部本体部71dの厚みt3の寸法ばらつきの範囲の最大値t3maxの1/2以上であり、第2面配置部81bの径方向の厚みt4の寸法ばらつきの範囲の最小値t4minが第2脚部本体部81dの厚みt5の寸法ばらつきの範囲の最大値t5maxの1/2以上である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、最小値t2minが最大値t3maxの1/2以外の値以上であり、最小値t4minが最大値t5maxの1/2以外の値以上であってもよい。たとえば、最小値t2minが最大値t3maxの1/3以上(または、2/3以上)であり、最小値t4minが最大値t5maxの2/3以上(または、1/3以上)であってもよい。
【符号の説明】
【0179】
10 ステータコア(電機子コア)
12 スロット
21 第2絶縁部材(接合部絶縁部材)
30 コイル部
70、170、270 第1導体(第1セグメント導体)
71、171、271、371 第1脚部
71a、171a 第1面
71b 第1面配置部(第1面側部分)
71c 先端部(第1脚部の先端部)
71d、171d 第1脚部本体部
80、180、280 第2導体(第2セグメント導体)
81、181、281、381 第2脚部
81a、181a 第2面
81b 第2面配置部(第2面側部分)
81c 先端部(第2脚部の先端部)
81d、181d 第2脚部本体部
90 接合部
91 導電性接着剤
100、200、300 ステータ(電機子)
171c 第1面形成部(第1面側部分)
181c 第2面形成部(第2面側部分)
190 接触部
E2 第1面および第2面が設けられていない部分
t2 厚み(第1面側部分の厚み)
t3 厚み(第1脚部本体部の厚み)
t4 厚み(第2面側部分の厚み)
t5 厚み(第2脚部本体部の厚み)
t21 厚み(接合部の厚み)
t22 厚み(第1面および第2面が設けられていない部分の厚み)
W3 幅(スロットの幅)
図1
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