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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ダンパー装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20240529BHJP
   F16F 9/02 20060101ALI20240529BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20240529BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240529BHJP
   F16J 15/3236 20160101ALI20240529BHJP
【FI】
F16F9/32 M
F16F9/02
F16F9/34
F16J15/3204 101
F16J15/3236
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021027046
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128690
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 克利
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-032206(JP,A)
【文献】米国特許第04948103(US,A)
【文献】実開昭49-088539(JP,U)
【文献】実開昭54-127988(JP,U)
【文献】実開平02-004036(JP,U)
【文献】国際公開第2017/047775(WO,A1)
【文献】米国特許第06116832(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00 - 9/54
F16J 15/3204-15/3236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン体とこれを納めるシリンダー体と前記ピストン体とシリンダー体との間をシールするシール部材とを備え、前記ピストン体の移動又は相対的な移動により制動力を生じさせるダンパー装置であって、
前記シール部材は、前記ピストン体を取り巻く環状をなすと共に、前記ピストン体によって区分される前記シリンダー体内の一方空間側に位置する基部と、この基部から前記シリンダー体内の他方空間側に延び出す延長部分とを有しており、
前記ピストン体に、前記シール部材の前記基部に向き合う第一保持部と、前記シール部材の延長部分の延び出し端に向き合う第二保持部と、前記シール部材の延長部分の内方に形成された被保持部に向き合う第三保持部とを備えさせてなり、
かつ、前記第二保持部に、一又は二以上の流体の通過部を形成させており、
しかも、前記第三保持部を、前記第一保持部と前記第二保持部との間となる箇所において前記ピストンの移動中心軸に直交する向きに突き出す突出部における前記第一保持部側に向いた端部としてなる、ダンパー装置。
【請求項2】
前記ピストン体における前記第一保持部と前記第二保持部との間となる箇所に、前記シール部材との間に流体の流路を形成させる凹所を、前記通過部に連続するように形成させてなる、請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
前記一方空間は、この一方空間を狭める向きの前記ピストン体の移動時に高圧となるようにしてなる、請求項1又は請求項2に記載のダンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダンパー装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンとこれを納めるシリンダーとを備え、前記ピストンの移動に基づく制動力を生じさせるダンパーとして、特許文献1に示されるものがある。特許文献1のものでは、断面V字状をなすシール材をピストンに嵌め付けて、ピストンとシリンダーとの間をシールしている。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-32206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のダンパー装置において、シール部材の組み付け状態の可及的安定化を図りながら、ピストン体によって区分されるシリンダー体内の一方空間を縮小させる向きのピストン体の移動をできるだけ抵抗少なく行わしむるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ダンパー装置を、 ピストン体とこれを納めるシリンダー体と前記ピストン体とシリンダー体との間をシールするシール部材とを備え、前記ピストン体の移動又は相対的な移動により制動力を生じさせるダンパー装置であって、
前記シール部材は、前記ピストン体を取り巻く環状をなすと共に、前記ピストン体によって区分される前記シリンダー体内の一方空間側に位置する基部と、この基部から前記シリンダー体内の他方空間側に延び出す延長部分とを有しており、
前記ピストン体に、前記シール部材の前記基部に向き合う第一保持部と、前記シール部材の延長部分の延び出し端に向き合う第二保持部と、前記シール部材の延長部分の内方に形成された被保持部に向き合う第三保持部とを備えさせてなり、
かつ、前記第二保持部に、一又は二以上の流体の通過部を形成させており、
しかも、前記第三保持部を、前記第一保持部と前記第二保持部との間となる箇所において前記ピストンの移動中心軸に直交する向きに突き出す突出部における前記第一保持部側に向いた端部としてなる、ものとした。
【0007】
かかる構成によれば、前記一方空間を縮小させる向きのピストン体の移動時は、シール部材の基部と第一保持部とを離間させることができることから、ピストン体とシール部材との間を通じて一方空間から他方空間に向けた流体の移動を許容させることができる。このとき、シール部材の延長部分の延び出し端は第二保持部によって、被保持部は第三保持部によって、それぞれ保持することができ、また、シール部材が変形してシール部材とシリンダー体との間に予期しない摺動抵抗を生じさせるような事態の可及的防止が図られる。
一方、第二保持部には、前記通過部が形成されていることから、一方空間から他方空間に向けた流体の移動を可及的に円滑化でき、ピストン体の復動を抵抗少なく行わしむることができる。
【0008】
前記ピストン体における前記第一保持部と前記第二保持部との間となる箇所に、前記シール部材との間に流体の流路を形成させる凹所を、前記通過部に連続するように形成させておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記一方空間を、この一方空間を狭める向きの前記ピストン体の移動時に高圧となるようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、シール部材の組み付け状態の可及的安定化を図りながら、ピストン体によって区分されるシリンダー体内の一方空間を縮小させる向きのピストン体の移動をできるだけ抵抗少なく行わしむることができる。すなわち、この発明によれば、前記一方空間を拡大させる往動時にのみ実質的に制動対象物に制動力を作用させるいわゆるワンウェイダンパー装置を適切に構成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかるダンパー装置の分解斜視図である。
図2図2は、前記ダンパー装置の分解斜視図であり、図1と異なる向きからこれらを示している。
図3図3は、前記ダンパー装置を構成するピストン体とシール部材とを分離して示した斜視図である。
図4図4は、前記ダンパー装置を構成するピストン体とシール部材とを分離して示した斜視図であり、図3と異なる向きからこれらを示している。
図5図5は、前記ダンパー装置の図8におけるA-A線位置での断面図であり、ピストン体は一方空間を縮小する向きに移動している。
図6図6は、図5の要部拡大図である。
図7図7は、前記ダンパー装置の図8におけるB-B線位置での要部断面図であり、ピストン体は一方空間を縮小する向きに移動している。
図8図8は、前記ダンパー装置を図5の右側から見て示した側面図である。
図9図9は、前記ダンパー装置の図5におけるC-C線位置での断面図である。
図10図10は、前記ダンパー装置の要部断面図であり、ピストン体は一方空間を拡大する向きに移動している。
図11図11は、図1図10に示されるダンパー装置のピストン体の構成の一部変更例を示した斜視構成図である。
図12図12は、図1図10に示されるダンパー装置のシール部材の構成の一部変更例を示した斜視構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図12に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるダンパー装置は、これを構成するピストン体1の移動又は相対的な移動に制動力を生じさせるものであって、典型的には、制動対象となる可動部など(図示は省略する)を備える物品に組み合わされて、かかる制動対象の移動に対し前記制動力を作用させてかかる制動対象の移動を、ゆっくりとしたもの、高級感をもったもの、節度をもったもの、ないしは、突飛なものにしないように、するために用いられるものである。
【0013】
かかるダンパー装置は、ピストン体1とこれを納めるシリンダー体2と前記ピストン体1とシリンダー体2との間をシールするシール部材3とを備える。
【0014】
図示の例では、前記ピストン体1は、ロッド体4の内端に一体化されており、典型的には、かかるダンパー装置は、ロッド体4及びシリンダー体2のいずれか一方を前記制動対象側に直接あるいは間接に連係させ、これらの他方をかかる制動対象を移動可能に支持する側に直接あるいは間接に連係させることで、かかる制動対象を備えた物品に組み合わされる。
【0015】
(シリンダー体2)
図示の例では、前記シリンダー体2は、円筒状を呈したものとなっている。かかるシリンダー体2の形状は例えば扁平円筒状を呈したものとするなど必要に応じて適宜変更して構わない。
【0016】
シリンダー体2内は、前記ピストン体1を挟んだ一方空間5と、他方空間6とに区分されている。 図示の例では、シリンダー体2の一方の筒端2aは、中央に流体の通過孔7aを備えた壁部7により閉塞されている。前記ピストン体1とかかる壁部7との間が前記一方空間5として機能するようになっている。一方、シリンダー体2の他方の筒端2bは中央に前記ロッド体4の通過部8aを備えたキャップ体8により閉塞されるようになっており、ピストン体1とこのキャップ体8との間が前記他方空間6として機能するようになっている。
【0017】
前記壁部7は、開放された一端をシリンダー体2の一方の筒端2aと同面上に位置させその余の箇所をシリンダー体2内に位置させるように配される筒状突出部7bと、この筒状突出部7bの前記開放された一端とシリンダー体2の一方の筒端2aの縁とをつなぐ周回面部7cとを備えている(図10参照)。前記筒状突出部7b内には、この筒状突出部7bの底部の中央に一端を一体化させて筒状突出部7bの開口側に延びる管体7dが配されており、この管体7dの内部を通じてシリンダー体2の内外が連通されるようになっている。すなわち、図示の例では、かかる管体7dが前記通過孔7aとして機能するようになっている。
【0018】
また、図示の例では、前記壁部7の外側には、前記通過孔7aに入り込む軸部9aを備えた可動体9がシリンダー体2の軸線方向に移動可能に支持されている。かかる可動体9と壁部7との間には図中符号10で示す圧縮コイルバネが介装されており、このバネ10により可動体9は基準位置(図5の位置)に位置づけられるようになっている。なお、図中符号11で示されるのは、前記壁部7の外側に形成された可動体9の支持部であり、この支持部11に形成された窓穴11aに可動体9に形成された突起9bを納めることで、可動体9は窓穴11aの範囲でシリンダー体2に前記のように移動可能に支持されている。
【0019】
前記一方空間5を拡大させる向きのピストン体1の移動(以下、この向きのピストン体1の移動を往動と、この往動と逆向きのピストン体1の移動を復動と称する。)は前記通過孔7aを通じた流体の移動、図示の例では前記通過孔7aを通じた通気によって許容される。
【0020】
図示の例では、ピストン体1が往動されることによる一方空間5の圧力変化によって前記バネ10の付勢に抗して可動体9が壁部7との距離を狭める向きに移動するようになっている。可動体9の移動量が大きくなればなるほど、前記通過孔7aへの前記軸部9aの進入量が大きくなるため、流体は通過孔7aを通過し難くなり、ピストン体1は往動し難くなる。これにより図示の例では、ピストン体1の移動速度が速くなればなる程、可動体9の移動量を大きくして、ピストン体1の移動に対する制動力が大きくなるようにしている。すなわち、図示の例のダンパー装置は、いわゆる速度応答型ないしは荷重応答型のダンパー装置として機能するものとなっている。
【0021】
また、シリンダー体2の側部の外側には図中符号2cで示す前記連係のための接続部が形成されている。
【0022】
(シール部材3)
前記シール部材3は、前記ピストン体1を取り巻く環状をなすと共に、前記ピストン体1によって区分される前記シリンダー体2内の一方空間5側に位置する基部3aと、この基部3aから前記シリンダー体2内の他方空間6側に延び出す延長部分3bとを有している。シール部材3のピストン体1の移動中心軸x(図5参照)に沿った断面形状は、この移動中心軸xを周回するいずれの位置においても実質的に同一の形状となっている。また、 かかる前記シール部材3は、典型的には、ゴムやゴム状弾性を備えたプラスチックから構成される。
【0023】
図1図10に示す例にあっては、シール部材3は、前記基部3aから前記他方空間6側に延び出す延長部分3bの内方に、前記基部3aから前記他方空間6側に前記延長部分3bより延び出し寸法を小さくして延び出す内側部分3cを備えている。図示の例では、内側部分3cの基部3aからの延び出し寸法は、延長部分3bの基部3aからの延び出し寸法の実質的に半分程度となっている。
【0024】
図示の例では、基部3aは、前記移動中心軸xに実質的に直交する面を形成する前端部3dと、シリンダー体2の側部2dの内壁2eに隙間をあけて向き合う外側部3eと、ピストン体1の後述する前記胴部1iに向き合う内側部3fとを有している。前記延長部分3bの外面は外側部3eに連続し、前記内側部分3cの外面は内側部3fに連続し、前記延長部分3bの内面と前記内側部分3cの内面との間には前記基部3aの後方を向いた面を溝底とする周回溝状部3gが形成された態様となっている。すなわち、 前記延長部分3b及び内側部分3cは共に、短寸の筒状を呈している。前記基部3aは、前記延長部分3bの筒一端と前記内側部分3cの筒一端との間に亘るように形成されている。
【0025】
また、前記延長部分3bは後方に向かうに従ってシール部材3の外径を漸増させるように前記基部3aから突き出し、また、前記内側部分3cは後方に向かうに従ってシール部材3の内径を漸減させるように前記基部3aから突き出している。
【0026】
この実施の形態にあっては、前記延長部分3bをシリンダー体2の内方に向けてやや弾性変形させた状態で、その延び出し端をシリンダー体2の側部の内壁25に摺接させることで、ピストン体1とシリンダー体2との間をシールするようになっている。また、ピストン体1の復動時には前記延長部分3bはシリンダー体2の内方に撓みやすくこの復動時の摺動抵抗が過大とならないようになっている。
【0027】
また、この実施の形態にあっては、前記基部3aの前端部3dに周回突条3hが形成されており、ピストン体1の往動時はピストン体1の後述の第一保持部1aにこの周回突条3hが圧接されて、シール部材3とピストン体1との間がシールされるようになっている。
【0028】
(ピストン体1)
前記ピストン体1は、前記シール部材3の前記基部3aに向き合う第一保持部1aと、前記延長部分3bの延び出し端3iに向き合う第二保持部1bと、前記延長部分3bの内方に形成された前記シール部材3の被保持部3kに向き合う第三保持部1cとを備えている。
【0029】
図示の例では、ピストン体1は、外径をシリンダー体2の内径よりも小さくすると共に、筒軸を前記移動中心軸xに一致させた短寸の円筒状体の外側に、前記各保持部1a、1b、1cを形成させた形態となっている。ピストン体1の一方空間5側の筒端は開放されており、ピストン体1が復動されきったときにシリンダー体2の前記筒状突出部7bがピストン体1内に納まるようになっている。ピストン体1の他方空間6側の筒端は閉塞されており、この閉塞箇所に後述のようにロッド体4の内端が一体化されている。
【0030】
第一保持部1aは、ピストン体1の一方空間5側の筒端をその全周に亘って縁取る外鍔状を呈している。第一保持部1aの外径は、シリンダー体2の内径よりもやや小さくなっている。
【0031】
第二保持部1bは、ピストン体1の他方空間6側の筒端をその全周に亘って縁取る外鍔状を呈している。図示の例では、第二保持部1bは、突き出し寸法を大きくする拡幅部1dと、突き出し寸法を小さくする縮幅部1eとを、前記移動中心軸xを周回する方向において、交互に形成させることで、形成されている。図示の例では拡幅部1d及び縮幅部1eはそれぞれ四つ形成されている。第二保持部1bの突き出し縁1fは、前記移動中心軸xを中心とした仮想の円(図示は省略する)の円弧に沿うように形成されている。四つの拡幅部1dの突き出し縁1fが沿う前記仮想の円の直径はシリンダー体2の内径よりやや小さくなっている。前記四つの縮幅部1eによって、前記移動中心軸xを周回する方向において隣り合う拡幅部1d間に流体の円滑な通過をもたらす通過部1gが形成されている。各拡幅部1dは、前記移動中心軸xを中心とした仮想の円の中心角20度~70度の範囲の円弧に対応した範囲に形成されるようにする。これにより、第二保持部1bに、一又は二以上の流体の通過部1g、図示の例では二以上の通過部1gが形成される(図9)。
【0032】
なお、図示の例では、縮幅部1eによって通過部1gを形成させたが、拡幅部1d間に外鍔状のものを設けないようにして通過部1gを形成させても構わない。
【0033】
また、図11に示されるように、通過部1gは、外鍔状をなす第二保持部1bに設けた穴1hによって形成させることもできる。
【0034】
第三保持部1cは、ピストン体1における前記第一保持部1aと前記第二保持部1bとの間となる箇所(以下、この箇所を胴部1iと称する。)に、形成されている。第三保持部1cは、胴部1iの外面から前記移動中心軸xに直交する向きに突き出す突出部として構成されている。第三保持部1cは、第一保持部1aにおける他方空間6側に向いた面に向いた段差状の前端部1jと、第二保持部1bの拡幅部1dにおける一方空間5側に向いた面に一体化された後端部1kと、胴部1iに一体化された底部1mと、シリンダー体2の内壁に向き合う頂部1nとを備えている(図6参照)。
【0035】
第一保持部1aと第二保持部1bとの間の距離は、シール部材3の周回突条3hと延長部分3bの延び出し端3iとの間の距離よりもやや大きい。
第一保持部1aと第三保持部1cの前端部1jとの間の距離は、シール部材3の周回突条3hと内側部分3cの延び出し端3jとの間の距離よりもやや大きい。
胴部1iの外径はシール部材3の内側部分3cの外面側の径(すなわち、シール部材3の内径)と実質的に等しいか、やや大きくなっている。
第三保持部1cの頂部1nは、第二保持部1bの拡幅部1dの突き出し縁1fよりも前記移動中心軸x側に位置している。
第三保持部1cは、前記移動中心軸xを周回する方向を厚さとした板状を呈していると共に、前記拡幅部1dにおける前記移動中心軸xを周回する方向の中間となる位置に形成されている。
【0036】
また、前記ピストン体1の胴部1iの外面側には、前記シール部材3との間に流体の流路y(図9参照)を形成させる凹所1oが、前記通過部1gに連続するように形成されている。図示の例では、前記移動中心軸xを周回する方向における縮幅部1eの形成長さと実質的に等しい凹所幅を備えた凹所1oが、第一保持部1aと第二保持部1bとの間に亘って形成されており、これによって、凹所1oと通過部1gとが連続するようになっている。
【0037】
これにより、この実施の形態にあっては、第一保持部1aと第三保持部1cとの間に、シール部材3の内側部分3cを、前記移動中心軸xに沿う向きでのシール部材3の若干の移動を許容した状態で、納めるようになっている。また、内側部分3cの外面を、前記凹所1oの形成箇所以外においては胴部1iの外面に密着させる一方で、前記凹所1oの形成箇所においては前記シール部材3との間に流体の流路yが形成されるようになっている(図9参照)。また、シール部材3の内側部分3cの延び出し端3jは、第三保持部1cの前端部1jに向き合うようになっている。すなわち、図1図10に示される例では、シール部材3の内側部分3cの延び出し端3jが、延長部分3bの内方に形成された被保持部3kとして機能するようになっている。
【0038】
なお、図12に示されるように、被保持部3kは、延長部分3bの内側に、この延長部分3bの延び出し端3i側に向いた周回段差面3mを形成させることによって、形成させるようにしても構わない。この図12の例では、シール部材3は内側部分3cを備えていない。
【0039】
(ロッド体4)
図示の例では、前記ロッド体4は、前記ピストン体1の移動方向に長い棒状をなしている。ロッド体4における前記シリンダー体2外に位置される外端には前記連係のための接続部4aが形成されている。
【0040】
一方空間5を拡大させるピストン体1の往動時は、シール部材3の延長部分3bがシリンダー体2の側部2dの内壁2eに接し、かつ、シール部材3の基部3aの周回突条3hが第一保持部1aに接して、シリンダー体2とピストン体1との間をシールすることができ、一方空間5への流体の流入を前記通過孔7aに限定してピストン体1の往動に基づく制動力を生じさせることができる。
ピストン体1の復動時は、シール部材3の基部3aと第一保持部1aとを離間させることができることから、ピストン体1とシール部材3との間を通じて一方空間5から他方空間6に向けた流体の移動を許容させることができる。このとき、シール部材3の延長部分3bの延び出し端3iは第二保持部1bによって、被保持部3kは第三保持部1cによって、それぞれ保持することができ、これによってまた、シール部材3が変形してシール部材3とシリンダー体2との間に予期しない摺動抵抗を生じさせるような事態の可及的防止が図られる。
特に、図1図10に示される例では、シール部材3の基部3aからの延び出し寸法を小さくする内側部分3cによってシール部材3の剛性が高められており、前記のような事態のより効果的な防止が図られている。
一方、第二保持部1bには、前記通過部1gが形成されていることから、一方空間5から他方空間6に向けた流体の移動を可及的に円滑化でき、ピストン体1の復動を抵抗少なく行わしむることができる。すなわち、この実施の形態のダンパー装置は往動時にのみ実質的に制動対象物に制動力を作用させるいわゆるワンウェイダンパー装置として機能するものとなっている。
特にこの実施の形態にかかるダンパー装置では、シール部材3の内側部分3cは前記ピストン体1の胴部1iにおける凹所1oの形成箇所以外の箇所で胴部1iに安定的に支持される一方で、それ以外の箇所ではシール部材3の内側部分3cとピストン体1の胴部1iとの間は前記通過部1gに連続した流体の流路yとなることから、一方空間5内からの流体の流出は可及的に効率化される。
【0041】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施形態を含むものである。
【符号の説明】
【0042】
1 ピストン体
1a 第一保持部
1b 第二保持部
1c 第三保持部
1g 通過部
2 シリンダー体
3 シール部材
3a 基部
3b 延長部分
3i 延び出し端
3k 被保持部
5 一方空間
6 他方空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12