(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ロール状ペーパータオル
(51)【国際特許分類】
A47L 13/16 20060101AFI20240529BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20240529BHJP
D04H 1/425 20120101ALN20240529BHJP
D04H 3/16 20060101ALN20240529BHJP
D04H 5/02 20120101ALN20240529BHJP
【FI】
A47L13/16 A
A47K10/16 B
D04H1/425
D04H3/16
D04H5/02
(21)【出願番号】P 2021028669
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-527473(JP,A)
【文献】特開2011-122277(JP,A)
【文献】特開平10-033442(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071250(WO,A1)
【文献】特開2018-183514(JP,A)
【文献】特開2017-101338(JP,A)
【文献】特開2020-002512(JP,A)
【文献】特開2016-013306(JP,A)
【文献】特開2021-024124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L13/00 -13/62
A47K10/16 -10/22
D04H 1/425
D04H 3/16
D04H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維及びパルプ繊維を含有し、CD方向にミシン目を施された1プライのペーパータオルが、ロール状に巻き取られたロール状ペーパータオルであって、
前記ペーパータオルの坪量が50g/m
2以上200g/m
2以下であり、
前記合成繊維の含有割合が5%以上45%以下であり、前記パルプ繊維の含有割合が55%以上95%以下であり、
前記ミシン目を含まない部分における、前記ペーパータオルのMD方向の破断伸びが20%以上65%以下であり、
前記ミシン目を含む部分における、前記ペーパータオルの乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)が2.5N/75mm以上36N/75mm以下であることを特徴とする、ロール状ペーパータオル。
【請求項2】
(前記ミシン目を含む部分における、前記ペーパータオルのDMDT/前記ミシン目を含まない部分における、前記ペーパータオルのDMDT)×100が1.3以上17以下であることを特徴とする、請求項1に記載のロール状ペーパータオル。
【請求項3】
(前記ミシン目を含む部分における、前記ペーパータオルのDMDT×前記ミシン目を含まない部分における、前記ペーパータオルのMD方向の破断伸び)/100が1以上18以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のロール状ペーパータオル。
【請求項4】
(前記ミシン目を含む部分における、前記ペーパータオルのDMDT×前記ミシン目を含む部分における、前記ペーパータオルのMD方向の破断伸び)/100が0.1以上3.1以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のロール状ペーパータオル。
【請求項5】
前記合成繊維の坪量が8g/m
2
以上55g/m
2
以下であり、かつ、前記パルプ繊維の坪量が38g/m
2
以上160g/m
2
以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のロール状ペーパータオル。
【請求項6】
(前記ミシン目を含む部分における、前記ペーパータオルのDMDT/前記ロール状ペーパータオルのロール幅275mmあたりの重量)×1000が6以上110以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のロール状ペーパータオル。
【請求項7】
前記ペーパータオルにおいて、(前記ミシン目の繋ぎ部の長さ/(前記ミシン目の切込部の長さ+前記ミシン目の繋ぎ部の長さ))×100が1以上15以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のロール状ペーパータオル。
【請求項8】
前記ミシン目を含まない部分における、前記ペーパータオルのDMDTが45N/75mm以上340N/75mm以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のロール状ペーパータオル。
【請求項9】
前記ペーパータオルはエンボス加工によりエンボスが設けられ、前記エンボスの深さが0.08mm以上2mm以下であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のロール状ペーパータオル。
【請求項10】
前記ロール状ペーパータオルのロール密度が0.06g/cm
3以上0.19g/cm
3以下であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のロール状ペーパータオル。
【請求項11】
前記ペーパータオルの紙厚が0.45mm以上1.8mm以下であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載のロール状ペーパータオル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン目が施されたロール状ペーパータオルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハンドタオルロール、キッチンタオルロール等の、厚手の紙をロール状に巻き取ったロール状ペーパータオルが市販されている。
ロール状ペーパータオルの中でも、流れ方向の等間隔において、幅方向にミシン目を施した2プライのペーパータオルは、必要な長さでミシン目をカットすることができることから、様々な製品が開発され、市販されている。
また、通常の紙製のペーパータオルとは別に、合成繊維にパルプ繊維を水流交絡させて、合成繊維をパルプ繊維に含ませたペーパータオルが市販されている。合成繊維を含むペーパータオルは、耐久性に優れることから、汚れを水で洗い流せば繰り返し使うことができる。
【0003】
ミシン目を施されたロール状ペーパータオルの先行技術文献としては、例えば、特許文献1には一方の面が凸部となり、対応する反対面が凹部となる凹凸を複数有すると共に、幅方向に沿ってミシン目を有するキッチンタオルシートをロール状に巻き取ったキッチンタオルロールであって、巻長が15~60m、巻直径が85~155mm、ロール幅200mm当たりのコアを含むロール質量が130~530g、ロール幅76mm当たりの前記ミシン目のJIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTが3~25N/76mmであるキッチンタオルロールが開示されている。
また、合成繊維にパルプ繊維を水流交絡する技術の先行技術文献としては、例えば、特許文献2にはパルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとを水流交絡処理して得られる不織布ワイパーであって、パルプ繊維ウエブに含まれるパルプ繊維の平均繊維長が1.0~5.0mmであり、当該不織布ワイパーの坪量が20~42g/m2であり、構成比がパルプ繊維ウエブ70~50質量%、合成繊維ウエブ30~50質量%である、ことを特徴とする不織布ワイパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-183514号公報
【文献】特開2018-193634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高坪量のペーパータオルは、強度や吸水量が高く、使いやすいが、その一方で、1プライで坪量を高くした紙製のペーパータオルは、強度が高くなるため、ミシン目でカットしにくくなる。そのため、ミシン目を含む部分の強度とミシン目を含まない部分の強度の比を低くすることで、カットしやすくなる。
【0006】
ところが、合成繊維を含む高坪量のペーパータオルの場合、同じようにミシン目を設けても、ミシン目部で切りにくくなる。この理由として、合成繊維を含む高坪量ペーパータオルの場合、紙製ペーパータオルと破断伸びが大きく異なるため、紙製ペーパータオルと同様のミシン目強度では、ミシン目の切れやすさが大きく異なることが分かった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、1プライで合成繊維を含む高坪量のペーパータオルがロール状に巻き取られたロール状ペーパータオルであっても、ミシン目でカットしやすい、ロール状ペーパータオルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行い、合成繊維及びパルプ繊維を含有し、CD方向にミシン目を施された1プライのペーパータオルにおいて、ペーパータオルの坪量、MD方向の破断伸び及びミシン目を含む部分における、乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)を所定の数値範囲内に規定することで、1プライで合成繊維を含む高坪量のペーパータオルがロール状に巻き取られたロール状ペーパータオルであっても、ミシン目でカットしやすい、ロール状ペーパータオルとすることができ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、合成繊維及びパルプ繊維を含有し、CD方向にミシン目を施された1プライのペーパータオルが、ロール状に巻き取られたロール状ペーパータオルであって、上記ペーパータオルの坪量が50g/m2以上200g/m2以下であり、上記ミシン目を含まない部分における、上記ペーパータオルのMD方向の破断伸びが20%以上65%以下であり、上記ミシン目を含む部分における、上記ペーパータオルの乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)が2.5N/75mm以上36N/75mm以下であることを特徴とする、ロール状ペーパータオルである。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のロール状ペーパータオルであって、(上記ミシン目を含む部分における、上記ペーパータオルのDMDT/上記ミシン目を含まない部分における、上記ペーパータオルのDMDT)×100が1.3以上17以下であることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のロール状ペーパータオルであって、(上記ミシン目を含む部分における、上記ペーパータオルのDMDT×上記ミシン目を含まない部分における、上記ペーパータオルのMD方向の破断伸び)/100が1以上18以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のロール状ペーパータオルであって、(上記ミシン目を含む部分における、上記ペーパータオルのDMDT×上記ミシン目を含む部分における、上記ペーパータオルのMD方向の破断伸び)/100が0.1以上3.1以下であることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載のロール状ペーパータオルであって、上記合成繊維の含有割合が5%以上45%以下であり、上記パルプ繊維の含有割合が55%以上95%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載のロール状ペーパータオルであって、上記合成繊維の坪量が8g/m2以上55g/m2以下であり、かつ、上記パルプ繊維の坪量が38g/m2以上160g/m2以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載のロール状ペーパータオルであって、(上記ミシン目を含む部分における、上記ペーパータオルのDMDT/上記ロール状ペーパータオルのロール幅275mmあたりの重量)×1000が6以上110以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(8)本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載のロール状ペーパータオルであって、上記ペーパータオルにおいて、(上記ミシン目の繋ぎ部の長さ/上記ミシン目の切込部の長さ+上記ミシン目の繋ぎ部の長さ)×100が1以上15以下であることを特徴とするものである
【0017】
(9)本発明の第9の態様は、(1)から(8)のいずれかに記載のロール状ペーパータオルであって、上記ミシン目を含まない部分における、上記ペーパータオルのDMDTが45N/75mm以上340N/75mm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(10)本発明の第10の態様は、(1)から(9)のいずれかに記載のロール状ペーパータオルであって、上記ペーパータオルはエンボス加工が施され、上記エンボスの深さが0.08mm以上2mm以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(11)本発明の第11の態様は、(1)から(10)のいずれかに記載のロール状ペーパータオルであって、上記ロール状ペーパータオルのロール密度が0.06g/cm3以上0.19g/cm3以下であることを特徴とするものである。
【0020】
(12)本発明の第12の態様は、(1)から(11)のいずれかに記載のロール状ペーパータオルであって、上記ペーパータオルの紙厚が0.45mm以上1.8mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、1プライで合成繊維を含む高坪量のペーパータオルがロール状に巻き取られたロール状ペーパータオルであっても、ミシン目でカットしやすい、ロール状ペーパータオルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のロール状ペーパータオルの全体を示す斜視図である。
【
図2】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
【
図3】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルをグラフで示す図である
【
図4】本発明のロール状ペーパータオルのエンボスについて、エンボスの深さの求め方を示す図である。
【
図5】本発明のロール状ペーパータオルの吸水量の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。
【0024】
1.ロール状ペーパータオル
図1は、本発明のロール状ペーパータオル1の全体を示す斜視図である。本発明のロール状ペーパータオル1は、合成繊維及びパルプ繊維を含有し、CD方向にミシン目1cを施された1プライのペーパータオル1xが、ロール状に巻き取られたロール状ペーパータオル1である。また、ミシン目1cはペーパータオル1xのMD方向における等間隔に施されることが好ましい。
このとき、MD(Machine Direciton)方向とはペーパータオル1xが巻き取られる方向(ペーパータオル1xが製造される方向であり、流れ方向とも称する)であり、CD(Cross Direciton)方向とはMD方向に直交する方向(幅方向とも称する)である。
なお、本願発明におけるペーパータオル1xは、様々な紙製品として用いることができ、ワイパー又はキッチンタオルの用途で使用することが好ましいが、キッチンタオルの用途で使用することがより好ましい。また、本願発明は、ワイパー又はキッチンタオルの用途で使用される紙製品であるが、不織布製品として使用されても良い。
【0025】
また、
図1に示すように、ペーパータオル1xの表面のうち、ロール外側に指向した表面を表面1a(ペーパータオル1xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面を裏面1b(ペーパータオル1xの裏面)と称する。なお、後述する水流交絡によって、ペーパータオル1xに含まれる合成繊維の量においては、ペーパータオル1xの表面側(すなわち表面1a側)が多く、裏面1b側が少ないことが好ましい。
【0026】
(巻長及び巻直径)
ロール状ペーパータオル1の巻長は5m以上24m以下であり、7m以上20m以下であることが好ましく、8m以上16m以下であることがより好ましい。巻長が5m未満であると交換頻度が多くなり、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。巻長が24mを超えると巻直径を一定の範囲にするために代わりに坪量を低くする必要があり、結果としてロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。
また、ロール状ペーパータオル1の巻直径DRは105mm以上155mm以下であることが好ましく、110mm以上140mm以下であることがより好ましく、115mm以上130mm以下であることが更に好ましい。巻直径DRが105mm未満であると巻直径を一定の範囲にするために代わりに坪量を低くする必要があり、結果としてロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。巻直径DRが155mmを超えるとロール状にした時に大きすぎて、ミシン目1cで切りにくくなる。
【0027】
巻長は、ロール状ペーパータオル1のミシン目1cとミシン目1cの間のペーパータオル1xについて、10枚分の長さを実測する。その後、ロール状ペーパータオル1におけるペーパータオル1xの枚数を実測し、巻長は10枚分の長さとペーパータオル1xの枚数から比例計算で求める。例えば、10枚分の長さが1.80m、ペーパータオル1xの枚数が150枚の場合、1.80m×(150/10)=27mとなる。また、ロールの巻直径DRは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、10個のロール状ペーパータオル1を測定し、測定結果を平均する。
【0028】
(ミシン目)
ロール状ペーパータオル1におけるミシン目1cは、繋ぎ部と切込部が交互に連続することによって形成される。このとき、切込部の1つ分の長さは1.0mm以上30mm以下であることが好ましく、4.0mm以上25mm以下であることがより好ましく、8.0mm以上20mm以下であることが更に好ましい。長さが1.0mm未満であると、ミシン目1cが切りにくくなる。長さが30mmを超えると、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。
また、繋ぎ部の1つ分の長さは0.2mm以上3.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以上2.0mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上1.2mm以下であることが更に好ましい。長さが0.2mm未満であると、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。長さが3.5mmを超えると、ミシン目1cが切りにくくなる。
【0029】
さらに、切込部の1つ分の長さと繋ぎ部の1つ分の長さの合計に対する繋ぎ部の1つ分の長さの比率である、(ミシン目1cの繋ぎ部の長さ/(ミシン目1cの切込部の長さ+ミシン目1cの繋ぎ部の長さ))×100が1以上15以下であることが好ましく、1.5以上9.5以下であることがより好ましく、2.0以上8.0以下であることが更に好ましい。比率が1未満であると、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。比率が15を超えると、ミシン目1cが切りにくくなる。
なお、ミシン目1cとミシン目1cの間の長さ(流れ方向のペーパータオル1xの長さ)は、100mm以上360mm以下が好ましく、150mm以上320mm以下がより好ましく、200mm以上280mm以下が更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水量が多い(坪量が高い)ロール状ペーパータオル1を使用する際、使用する面積が適正になり、多くの水を吸収することができる。
【0030】
(ロール幅及びロール重量)
ロール状ペーパータオル1のロール幅は155mm以上365mm以下であることが好ましく、195mm以上335mm以下であることがより好ましく、235mm以上305mm以下であることが更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水量が多い(坪量が高い)ロール状ペーパータオル1を使用する際、使用する面積が適正になり、多くの水を吸収することができる。
また、ロール状ペーパータオル1のロール重量は170g以上480g以下であることが好ましく、250g以上410g以下であることがより好ましく、280g以上360g以下であることが更に好ましい。ロール重量が170g未満であるとロールが軽くなって、ミシン目1cが切りにくくなる。また、交換頻度が多くなり、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。ロール重量が460gを超えるとロールが重くなり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。
なお、ロール重量は、コア(紙管)を含まないロール幅275mmあたりの1ロールの重量とする。ロール幅が275mmでない場合は、比例計算により275mmあたりの重量に換算する。
また、コア(紙管)の重量は4g以上30g以下であることが好ましく、7g以上25g以下であることがより好ましく、10g以上20g以下であることが更に好ましい。コア(紙管)の重量は、ロール幅275mmあたりの重量とする。ロール幅が275mmでない場合は、比例計算により275mmあたりの重量に換算する。
【0031】
(コア外径)
また、本発明のロール状ペーパータオル1の芯(紙管)の外径である、コア外径DIは、30mm以上60mm以下であることが好ましく、34mm以上55mm以下であることがより好ましく、37mm以上50mm以下であることが更に好ましい。コア外径DIが30mm未満であるとロール状にした時に、コアが小さすぎて使用しにくく、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。コア外径DIが60mmを超えるとロール状にした時に、コアが大きすぎて使用しにくくなり、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。
コア外径DIは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、10個のロール状ペーパータオル1を測定し、測定結果を平均する。
【0032】
(ロール密度)
ロール状ペーパータオル1のロール密度は0.06g/cm3以上0.19g/cm3以下であることが好ましく、0.09g/cm3以上0.17g/cm3以下であることがより好ましく、0.11g/cm3以上0.15g/cm3以下であることが更に好ましい。ロール状ペーパータオル1のロール密度が0.06g/cm3未満であると、ロールの巻きが緩いためエンボスが深すぎてペーパータオル1xの強度や伸びが変わり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)場合がある。ロール状ペーパータオル1のロール密度が0.19g/cm3を超えると、ロールの巻きが固いためエンボスが浅すぎてペーパータオル1xの強度や伸びが変わり、ミシン目1cが切りにくくなる場合がある。
【0033】
ロール密度は、(ロール質量)÷(ロールの体積)で表される。ロール質量は、ロール幅275mmあたりのロール状ペーパータオル1の質量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(コア外径部分の断面積)]×ロール幅(275mmあたりに換算する)で表される。例えば、ロール幅275mmあたりのロール質量(コアを除く)が337g、巻直径119mm、コアの外径が49mmの場合、ロール密度=0.13g/cm3となる。なお、ロール状ペーパータオル1にコアが無い場合は、中心孔の直径をコア外径DIとする。
【0034】
2.ペーパータオル
本発明のペーパータオル1xは、合成繊維及びパルプ繊維を含有する。合成繊維としては、例えばナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられるが、本願発明のような、高坪量でミシン目1cを設けるペーパータオル1xを得るには、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。合成繊維として使用される不織布は制限がないが、スパンボンド不織布が好ましい。ポリプロピレンのスパンボンド不織布を用いることで、本願のような高坪量のペーパータオル1xであっても、ミシン目1cで切りやすくなる。また、ロール状ペーパータオル1としての機能も良好になる。また、パルプ繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維を用いることができる。パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は、NBKP:LBKP=50:50~100:0が好ましく、NBKP:LBKP=70:30~100:0がより好ましく、NBKP:LBKP=90:10~100:0が更に好ましく、NBKP:LBKP=100:0が最も好ましい。NBKPとしては、例えばラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。
このとき、ペーパータオル1xにおける合成繊維の割合(含有割合)が5%以上45%以下であることが好ましく、9%以上38%以下であることがより好ましく、12%以上28%以下であることが更に好ましい。合成繊維の割合が5%未満であると、ペーパータオル1xの破断伸びが低くなり、適正な伸びにならない。合成繊維の割合が45%を超えると、ペーパータオル1xの破断伸びが高くなり、適正な伸びにならない。
また、ペーパータオル1xにおけるパルプ繊維の割合(含有割合)が55%以上95%以下であることが好ましく、62%以上91%以下であることがより好ましく、72%以上88%以下であることが更に好ましい。パルプ繊維の割合が55%未満であると、後述するミシン目1cを含む部分におけるDMDTが高くなり、ミシン目1cが切りにくくなる。また、強度や吸水量が低くなり、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。パルプ繊維の割合が95%を超えると、後述するミシン目1cを含む部分におけるDMDTが低くなり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。
【0035】
さらに、ペーパータオル1xには、一般的な湿潤紙力剤を含有することが好ましい。湿潤紙力剤(固形分(有効成分)換算)の含有率は、パルプ繊維(絶乾)に対して、0.05%以上1.0%以下が好ましく、0.10%以上0.50%以下がより好ましく、0.20%以上0.40%以下が更に好ましい。湿潤紙力剤の含有率を上記の数値範囲内にすることで、本願のような、高坪量でミシン目1cを施されたロール状ペーパータオル1を得ることができる。
また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、ペーパータオル1xに耐熱安定剤、滑剤等を配合することができる。耐熱安定剤としては、例えば、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)等のフェノール系安定剤等が挙げられる。
【0036】
(坪量)
ペーパータオル1xの坪量は、50g/m2以上200g/m2以下であり、60g/m2以上170g/m2以下であることが好ましく、90g/m2以上140g/m2以下であることがより好ましい。ペーパータオル1xの坪量が50g/m2未満であると、後述するミシン目1cを含む部分におけるDMDTが低くなり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。また、強度や吸水量が低くなり、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。ペーパータオル1xの坪量が200g/m2を超えると、後述するミシン目1cを含む部分におけるDMDTが高くなり、ミシン目1cが切りにくくなる。
【0037】
また、ペーパータオル1xに含まれる合成繊維の坪量は、8g/m2以上55g/m2以下であることが好ましく、12g/m2以上45g/m2以下であることがより好ましく、15g/m2以上38g/m2以下であることが更に好ましい。合成繊維の坪量が8g/m2未満であると、ペーパータオル1xの破断伸びが低くなり、適正な伸びにならない。合成繊維の坪量が55g/m2を超えると、ペーパータオル1xの破断伸びが高くなり、適正な伸びにならない。
さらに、ペーパータオル1xに含まれるパルプ繊維の坪量は、38g/m2以上160g/m2以下であることが好ましく、45g/m2以上140g/m2以下であることがより好ましく、60g/m2以上120g/m2以下であることが更に好ましい。パルプ繊維の坪量が38g/m2未満であると、後述するミシン目1cを含む部分におけるDMDTが低くなり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。また、強度や吸水量が低くなり、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。パルプ繊維の坪量が160g/m2を超えると、後述するミシン目1cを含む部分におけるDMDTが高くなり、ミシン目1cが切りにくくなる。
なお、ペーパータオル1xの坪量はJIS P 8124に基づいて測定するが、合成繊維及びパルプ繊維の坪量は、後述する水流交絡した後に個別に測定することが困難であるため、例えば、以下の方法で測定する。
【0038】
まず、0.1M酢酸水溶液と0.1M酢酸ナトリウム水溶液を調製する。約830gの0.1M酢酸水溶液と約160gの0.1M酢酸ナトリウム水溶液を混合してpHが4となるようにし、これを酢酸緩衝液とする。この酢酸緩衝液にセルラーゼオノズカp1500(ヤクルト薬品工業株式会社製)を添加量が1重量%となるように添加する。
セルラーゼオノズカp1500を添加した酢酸緩衝液50mlと、ペーパータオル1x0.5gとをバイアル瓶に入れて、しっかりと蓋をする。次に、180rpm、40℃の条件で24時間振とうした後、バイアル瓶から合成繊維を採取し、合成繊維の質量を測定する。(合成繊維及びパルプ繊維を含む)ペーパータオル1xの質量(0.5g)と採取した合成繊維の質量から、下記式により、合成繊維及びパルプ繊維のそれぞれの坪量を算出する。
合成繊維の坪量=
ペーパータオル1xの坪量×(合成繊維の質量/ペーパータオル1xの質量)
パルプ繊維の坪量=
ペーパータオル1xの坪量×[(ペーパータオル1xの質量-合成繊維の質量)/ペーパータオル1xの質量]
【0039】
また、上記の方法で測定が困難な場合は、JIS P 8124に基づいて測定したペーパータオル1xの坪量-用いた合成繊維の坪量=パルプ繊維の坪量として求めるが、水流交絡後の原反(原紙)とエンボスを設けたペーパータオル1xの坪量は異なる(エンボス加工後は、坪量が低くなる)ので、下記のように補正することで、最終的な合成繊維及びパルプ繊維のそれぞれの坪量とする。
例えば、合成繊維の坪量が26g/m2であり、水流交絡後の原紙の坪量が128g/m2、エンボス加工後のペーパータオル1xの坪量が125g/m2である場合は、合成繊維の坪量は26×125/128=25g/m2、パルプ繊維の坪量は125-25=100g/m2とする。
【0040】
(紙厚及び比容積)
ペーパータオル1xの紙厚は0.45mm以上1.8mm以下であることが好ましく、0.55mm以上1.45mm以下であることがより好ましく、0.75mm以上1.20mm以下であることが更に好ましい。紙厚が0.45mm未満であると、後述するミシン目1cを含む部分におけるDMDTが低くなり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。また、結果的に坪量が低くなり、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。紙厚が1.8mmを超えると、後述するミシン目1cを含む部分におけるDMDTが高くなり、ミシン目1cが切りにくくなる。なお、紙厚はシックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定する。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取る。また、測定を10回繰り返して測定結果を平均する。なお、測定は3枚のペーパータオル1xを重ねて測定し、値を1/3にして、紙厚の値とする。
また、ペーパータオル1xの比容積は5cm3/g以上15cm3/g以下であることが好ましく、6cm3/g以上13cm3/g以下であることがより好ましく、7cm3/g以上11cm3/g以下であることが更に好ましい。比容積が5cm3/g未満であると、ペーパータオル1xの吸水量に劣り、結果としてロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。比容積が15cm3/gを超えると、結果的に紙厚が厚くなりすぎ、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。なお、比容積はペーパータオル1xの紙厚を坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表す。
【0041】
(エンボス)
本発明のロール状ペーパータオル1(ペーパータオル1x)は、エンボス加工が施されることが好ましく、ロールワインダにて施されることが好ましい。なお、エンボス単体の形状は、円形、楕円形、長方形、正方形、花柄、多角形、文字、線、ロゴ等、特に制限なく用いることができ、本願発明のような高坪量で所定のエンボスを設けることが好ましいペーパータオル1xを得るには、六角形状が好ましい。
また、エンボスの深さは0.08mm以上2mm以下であることが好ましく、0.3mm以上1.5mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上1.0mm以下であることが更に好ましい。エンボスの深さが0.08mm未満であると、エンボスが浅すぎて、ペーパータオル1xの強度や伸びが変わり、ミシン目1cが切りにくくなる場合がある。深さが2mmを超えると、エンボスが深すぎてペーパータオル1xの強度や伸びが変わり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)場合がある。
【0042】
エンボスの深さは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0043】
図2は、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、ペーパータオル1x表面の高さが濃淡で表されている。
図2の濃淡が周辺と異なる六角形状の部位が個々のエンボスを示している。エンボスの深さは、上記マイクロスコープを用いて上述のエンボスの高低差を測定して求める。なお、測定はペーパータオル1xの表面1a側で行う。また、測定時に、ロール状ペーパータオル1からペーパータオル1xを3周分取り除き、4周目のペーパータオル1xを用いて、ペーパータオル1xの状態を測定する。また、ミシン目1cは避けて測定する。
まず、
図2のように線分ABを引き、
図3の高さプロファイルを得る。なお、線分ABは、エンボスを横切るように引けばよい。また、線分ABは、ペーパータオル1xの幅方向(CD方向)になるように引くが、エンボスとエンボスの間隔が例えば2mm以上開いている場合は、線分を斜め方向に引いたり、流れ方向に引いたりしてもよい。高さプロファイルは、実際のペーパータオル1xの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(ペーパータオル1xの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、
図3の(測定)断面曲線Sを重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした
図4の断面曲線Wを得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。そして、
図4に示すグラフにおいて、グラフの凸部H1と、凸部H1に隣接する凸部H2の縦軸のそれぞれの最大値の平均値を算出し、凸部H1と凸部H2とに挟まれる凹部D1における縦軸の最小値を求める。このようにして求められた最大値の平均値から最小値を差し引いた数値を暫定的なエンボスの深さとする。そして、
図4に示すように、断面曲線上において連続する計2カ所(凹部D1と、凸部H2と凸部H3に挟まれる凹部D2の連続する計2カ所)について同様の測定を行う(この時点で2つの測定結果が得られる)。その後、ペーパータオル1xの流れ方向にロール状ペーパータオル1を90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(流れ方向における測定位置は計4カ所となる)、合計8カ所(2×4)の平均値をエンボスの深さとして最終的に採用する。
【0044】
(吸水量)
本発明において、ペーパータオル1xの1m2あたりの吸水量が270g以上600g以下であることが好ましく、310g以上560g以下であることがより好ましく、360g以上490g以下であることが更に好ましい。1m2あたりの吸水量が270g未満であると、ペーパータオル1xの坪量が低くなりすぎて、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。また、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。1m2あたりの吸水量が600gを超えると、結果的にペーパータオル1xの坪量が高くなりすぎて、ミシン目1cが切りにくくなる。
また、ペーパータオル1xの1gあたりの吸水量が2.5g以上5.7g以下であることが好ましく、2.9g以上5.3g以下であることがより好ましく、3.3g以上4.8g以下であることが更に好ましい。1gあたりの吸水量が2.5g未満であると、合成繊維の割合が高いことになるため、結果的にペーパータオル1xの破断伸びが高くなり、適正な伸びにならない。
なお、ペーパータオル1xの各吸水量は以下のように測定する。
【0045】
まず、ペーパータオル1xを採取し、一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片200を作製する。その後、吸水前の試験片200の質量を電子天秤で測定しておく。そして、試験片200をホルダー220(試験片200の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ2cm入れ、ホルダー220にセットした試験片200を蒸留水中に2分間浸漬する。2分間浸漬後に試験片200をホルダー220と共に蒸留水から取り出し、
図5に示すように、試験片200の1つの隅部200dに帯210を貼り付ける。帯210は、測定するサンプルと同じペーパータオル1xを幅2mm×長さ15mmの大きさに切り、試験片200の隅部200dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。次に、ホルダー220と試験片200を、隅部200dに対向する隅部200aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて10分間、放置する。その後、ホルダー220と試験片200を水槽から取り出し、帯210とホルダー220を外し、電子天秤で試験片200の質量を測定する。蒸留水に浸す前後での試験片200の質量変化から、試験片200の1m
2あたりの蒸留水の吸水量(g(水)/m
2(ペーパータオル)を計算する。さらに、1m
2あたりの吸水量(g(水)/m
2(ペーパータオル))を試験片200の坪量で割ることにより、1m
2あたりの吸水量(g(水)/m
2(ペーパータオル))/坪量(g(ペーパータオル)/m
2(ペーパータオル))=1gあたりの吸水量(g(水)/g(ペーパータオル))を算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用する。
なお、本測定は、JIS P 8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
【0046】
(DMDT及びDCDT)
ミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xの、JIS P 8113に基づく乾燥時におけるMD方向の引張強度DMDT(Dry Machine Direction Tensile Strength)は2.5N/75mm以上36N/75mm以下であり、3.5N/75mm以上22N/75mm以下であることが好ましく、5.5N/75mm以上16N/75mm以下であることがより好ましい。DMDTが2.5N/75mm未満であると、ミシン目1cを含む部分におけるDMDTが低くなり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。DMDTが36N/75mmを超えると、ミシン目1cを含む部分におけるDMDTが高くなり、ミシン目1cが切りにくくなる。
【0047】
また、ミシン目1cを含まない部分における、ペーパータオル1xのDMDTは45N/75mm以上340N/75mm以下であることが好ましく、60N/75mm以上290N/75mm以下であることがより好ましく、110N/75mm以上240N/75mm以下であることが更に好ましい。DMDTが45N/75mm未満であると、結果的にミシン目1cを含む部分におけるDMDTも低くなり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。また、ペーパータオル1xの強度や吸水量が低くなり、ロール状ペーパータオル1としての機能に劣る。DMDTが340N/75mmを超えると、結果的にミシン目1cを含む部分におけるDMDTも高くなり、ミシン目1cが切りにくくなる。
さらに、ミシン目1cを含まない部分における、ペーパータオル1xの、JIS P 8113に基づく乾燥時におけるCD方向の引張強度DCDT(Dry Cross Direction Tensile Strength)は12N/75mm以上230N/75mm以下であることが好ましく、17N/75mm以上180N/75mm以下であることがより好ましく、50N/75mm以上150N/75mm以下であることが更に好ましい。DCDTが12N/75mm未満であると、DMDTを含めたペーパータオル1x全体の強度が低くなり、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。DCDTが230N/75mmを超えると、DMDTを含めたペーパータオル1x全体の強度が高くなり、ミシン目1cが切りにくくなる。
【0048】
また、ミシン目1cを含まない部分におけるペーパータオル1xのDMDTに対するミシン目1cを含む部分におけるペーパータオル1xのDMDTの比率である、(ミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xのDMDT/ミシン目1cを含まない部分における、ペーパータオル1xのDMDT)×100が1.3以上17以下であることが好ましく、2.0以上11以下であることがより好ましく、3.0以上7以下であることが更に好ましい。比率が1.3未満であると、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。比率が17を超えると、ミシン目1cが切りにくくなる。
さらに、ミシン目1cを含まない部分におけるペーパータオル1xのDCDTに対する、ミシン目1cを含まない部分におけるペーパータオル1xのDMDTの比率(DMDT/DCDT)は1.2以上4.5以下であることが好ましく、1.5以上4.0以下であることがより好ましく、1.6以上3.5以下であることが更に好ましい。比率が4.5を超えると強度における縦と横のバランスが悪くなり、ミシン目1cが切りにくくなる場合がある。
また、上述したロール状ペーパータオル1のロール重量(ロール幅275mmあたりの重量)に対するミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xのDMDTの比率である、(ミシン目1cを含む部分におけるペーパータオル1xのDMDT/ロール状ペーパータオル1のロール幅275mmあたりの重量)×1000が6以上110以下であることが好ましく、10以上65以下であることがより好ましく、13以上55以下であることが更に好ましい。比率が6未満であると、ロールが重くなって、ロールをペーパーホルダーにセットして使用する際、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。比率が110を超えると、ミシン目1cが切りにくくなる。
【0049】
(破断伸び)
ミシン目1cを含まない部分における、ペーパータオル1xのMD方向の破断伸びは、20%以上65%以下であり、28%以上53%以下であることが好ましく、33%以上48%以下であることがより好ましい。MD方向の破断伸びが20%未満であると、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。MD方向の破断伸びが65%を超えると、ミシン目1cが切りにくくなる。
また、ミシン目1cを含まない部分における、ペーパータオル1xのCD方向の破断伸びは、50%以上100%以下であることが好ましく、60%以上95%以下であることがより好ましく、70%以上90%以下であることが更に好ましい。CD方向の破断伸びが50%未満であるか、100%を超えると、MD方向の破断伸びとのバランスが変わり、ミシン目1cが切りにくくなる。
さらに、ミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xのMD方向の破断伸びは、4.8%以上18%以下であることが好ましく、5.6%以上15%以下であることがより好ましく、7.2%以上13.5%以下であることが更に好ましい。ミシン目1cを含む部分におけるMD方向の破断伸びが4.8%未満であると、ペーパータオル1xが伸びにくく、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。ミシン目1cを含む部分におけるMD方向の破断伸びが18%を超えると、ペーパータオル1xが伸びやすく、ミシン目1cが切りにくくなる。なお、ペーパータオル1xの各方向の破断伸びは、JIS P 8113に基づいて測定する。
なお、先に述べたミシン目1cを含む部分における各方向の引張強度(DMDT及びDCDT)、ミシン目1cを含まない部分における各方向の引張強度(DMDT及びDCDT)は、いずれもJIS P 8113に基づいて測定するが、引張速度は300m/min、試験片の幅は75mmとする。また、各方向の破断伸びはこの条件で得られた破断伸びのデータを採用する。
【0050】
また、上述したミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xのDMDTと、ミシン目1cを含まない部分における、ペーパータオル1xのMD方向の破断伸びを掛け合わせたものである、(ミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xのDMDT×ミシン目1cを含まない部分における、ペーパータオル1xのMD方向の破断伸び)/100が1以上18以下であることが好ましく、1.5以上15以下であることがより好ましく、2.0以上8.0以下であることが更に好ましい。値が1未満であると、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。値が18を超えると、ミシン目1cが切りにくくなる。
さらに、上述したミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xのDMDTと、ミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xのMD方向の破断伸びを掛け合わせたものである、(ミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xのDMDT×ミシン目1cを含む部分における、ペーパータオル1xのMD方向の破断伸び)/100が0.1以上3.1以下であることが好ましく、0.2以上2.2以下であることがより好ましく、0.4以上2.1以下であることが更に好ましい。値が0.1未満であると、ミシン目1cが切りにくくなる(意図せず切れてしまう)。値が3.1を超えると、ミシン目1cが切りにくくなる。
【0051】
3.ペーパータオル及びロール状ペーパータオルの製造方法
ペーパータオル1x及びロール状ペーパータオル1の製造方法としては、ペーパータオル1xが合成繊維及びパルプ繊維を含むキッチンタオルである場合は、例えば(1)所定のスパンボンド不織布にパルプ繊維を積層して水流交絡、(2)エンボス処理、(3)ミシン目加工、(4)ロール巻取り加工の順で製造することができる。
このとき、製造方法の(1)水流交絡において、合成繊維にパルプ繊維を水流交絡することで、合成繊維及びパルプ繊維を含む不織布を得る。水流交絡の方法に関しては、例えば、特開2018-193634号公報に記載された方法で行うことが好ましい。また、製造方法の(2)エンボス処理では、マッチドスチール(スチールマッチ)による熱エンボス処理をロールワインダにて実施することが好ましく、エンボスパターンとしては、六角形状であることが好ましい。
【0052】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが、当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0053】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(1)ポリプロピレンのスパンボンド不織布にパルプ繊維を積層して水流交絡、(2)エンボス処理、(3)ミシン目加工、(4)ロール巻取り加工の工程を経て、表1に記載された実施例1~19及び比較例1~6のロール状ペーパータオルを作製した。全ての実施例及び比較例のロール状ペーパータオルに関して上述の各パラメーターを測定し、かつ、下記の各評価を行った。全ての測定結果及び評価を表1に示す。
【0055】
坪量:ペーパータオルの坪量を実測して、下記の通り評価を行った。
35g/m2未満:1点
35g/m2以上50g/m2未満:2点
50g/m2以上60g/m2未満:3点
60g/m2以上90g/m2未満:4点
90g/m2以上:5点
【0056】
ペーパータオルの適正な伸び:ペーパータオルのミシン目を含まない部分におけるMD方向の破断伸びを測定して、下記の通り評価を行った。
17%未満、又は73%を超える:1点
17%以上73%以下(ただし、20%以上65%以下を除く):2点
20%以上65%以下(ただし、28%以上53%以下を除く):3点
28%以上53%以下(ただし、33%以上48%以下を除く):4点
33%以上48%以下:5点
【0057】
ミシン目の適度な切れやすさ:ペーパータオルのミシン目を含む部分におけるDMDTを測定して、下記の通り評価を行った。ただし、ミシン目を含まない部分におけるMD方向の破断伸びが20%以上65%以下であることを条件とした。
2.0N/75mm未満、又は41N/75mmを超える:1点
2.0N/75mm以上41N/75mm以下(ただし、2.5N/75mm以上36N/75mm以下を除く):2点
2.5N/75mm以上36N/75mm以下(ただし、3.5N/75mm以上22N/75mm以下を除く):3点
3.5N/75mm以上22N/75mm以下(ただし、5.5N/75mm以上16N/75mm以下を除く):4点
5.5N/75mm以上16N/75mm以下:5点
【0058】
【0059】
表1に示すように、実施例1~19のロール状ペーパータオルはいずれも坪量が十分なものであり、伸びも適正であり、かつ、ミシン目で適度に切れやすかった。一方で比較例1~6のロール状ペーパータオルは坪量が不十分であるか、伸びが適正でないか、又はミシン目で切れにくい(意図せず切れてしまう)ものであった。
以上より、本発明のロール状ペーパータオルは、1プライで合成繊維を含む高坪量のペーパータオルがロール状に巻き取られたロール状ペーパータオルであっても、ミシン目でカットしやすい、ロール状ペーパータオルを提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ロール状ペーパータオル
1a 表面
1b 裏面
1c ミシン目
1e ペーパータオルの最外巻の端縁
1x ペーパータオル
200 試験片
200a、200d 隅部
210 帯
220 ホルダー