(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】同期信号変換装置及び同期信号変換方法
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20240529BHJP
H04L 7/08 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H04L7/00 830
H04L7/08 500
H04L7/00 990
(21)【出願番号】P 2021047703
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】高島 光博
(72)【発明者】
【氏名】串岡 洋一
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/044861(WO,A1)
【文献】特開2006-201151(JP,A)
【文献】特開平08-015405(JP,A)
【文献】特開2015-119257(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108387(WO,A1)
【文献】特開2017-169150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00 - 7/10
H04J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、
LTE信号を受信するLTE信号受信部と、
前記受信したLTE信号
を復調して同期用LTE信号を探索し、前記同期用LTE信号から報知情報を取り出す同期用LTE信号探索部と、
放送波を受信
し、前記放送波から時刻情報を含むTOT取得チャンネルを探索して保持する放送波受信部と、
前
記TOT取得チャンネルから取得した時刻情報と、前記報知情報から取得したシステム同期情報に基づいて、前記基地局の受信機においてGPS受信信号と同等に扱われる疑似GPS受信信号を生成して、前記基地局の受信機に出力する疑似GPS受信信号送出部とを備え、
前記同期用LTE信号探索部が、
前記同期用LTE信号を正常に受信しているかどうかを判断し、前記疑似GPS受信信号の出力後に、一定時間以上に亘って前記同期用LTE信号を
正常に受信しない場合に、新たな
同期用LTE信号の探索を行わず、再度当該同期用LTE信号の受信を試み、前記同期用LTE信号を受信した場合には、前記同期用LTE信号の報知情報を前記疑似GPS受信信号送出部に出力し、
前記放送波受信部が、前記疑似GPS受信信号の出力後に、前記同期用LTE信号探索部において一定時間以上に亘って前記同期用LTE信号を正常に受信しない場合に、新たなTOT取得チャンネルの探索を行わず、
前記疑似GPS受信信号送出部が、前記疑似GPS受信信号の出力後に、前記一定時間以上に亘って前記報知情報が入力されない場合に、前記疑似GPS受信信号の出力を停止し、前記報知情報の入力が再開されると、前記疑似GPS受信信号送出部から疑似GPS受信信号の出力を再開することを特徴とする同期信号変換装置。
【請求項2】
疑似GPS受信信号送出部は、報知情報に基づいてクロックを生成して自走させ、前記報知情報が入力されない場合に、前記自走するクロックに基づいて疑似GPS受信信号を生成し、前記報知情報が入力されない状態が一定時間以上になると、前記疑似GPS受信信号の出力を停止し、その後前記報知情報の入力が再開されると、前記入力が再開された報知情報に基づいて前記クロックを補正して、前記疑似GPS受信信号の出力を再開することを特徴とする請求項1記載の同期信号変換装置。
【請求項3】
無線通信システムの基地局の受信機に接続され
る同期信号変換装置における同期信号変換方法であって、
前記同期信号変換装置が、
受信したLTE信号を復調して前記復調されたLTE信号から同期用LTE信号を探索し、前記同期用LTE信号から報知情報を取り出し、受信した放送波から時刻情報を含むTOT取得チャネルを探索して保持し、前記TOT取得チャネルから取得した時刻情報と、前記報知情報から取得したシステム同期情報に基づいて、前記基地局の受信機においてGPS受信信号と同等に扱われる疑似GPS受信信号を生成して出力し、
前記同期用LTE信号を正常に受信しているかどうかを判断し、前記疑似GPS受信信号の出力後に、一定時間以上
に亘って前記同期用LTE信号を正常に受信しなかった場合に
は、前記疑似GPS受信信号の出力を停止し、新たな
同期用LTE信号
及び新たなTOT取得チャネルの探索を行わずに、再度当該同期用LTE信号の受信を試み、当該同期用LTE信号を受信した場合には、前記疑似GPS受信信号の出力を再開することを特徴とする同期信号変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムの基地局に取り付けられる同期信号変換装置に係り、特に、一時的にLTE信号を受信できなくなった場合でも、GPS信号に同期した信号のタイミングの変化を防ぎ、 安定して出力することができる同期信号変換装置及び同期信号変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
移動体通信システムの基地局に設けられる同期信号変換装置では、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)の基準時刻に同期した信号を生成して、システムに供給している。これにより、システム全体で通信のタイミングを一致させることが可能となっている。
【0003】
同期信号変換装置には、LTE(Long Term Evolution)信号と地上デジタル放送の放送波信号とを用いて、GPS信号に同期した疑似GPS受信信号を生成して出力するものがあり、基地局装置では、当該疑似GPS受信信号を本来のGPS受信信号と同等に処理することで、本来のGPS信号に同期した同期信号を生成する。
尚、疑似GPS受信信号は、後述するように、当該信号をGPS受信機で受信した基地局が、GPSの基準時刻に同期した時刻を算出可能なように、複数の衛星からのGPS信号が重なった疑似的な信号として生成されるものである。
【0004】
具体的には、同期信号変換装置は、任意のLTE信号を探索して受信し、当該LTE信号から、GPSに同期したシステム同期情報を取得すると共に、地上デジタル放送の任意のチャンネルを探索して受信し、当該チャンネルのTOT(Time Offset Table)信号から時刻情報を取得する。
そして、放送波から取得した時刻情報を、LTEのシステムタイミング信号に合わせて出力することで、GPSに同期した時刻情報を生成し、更に、受信側の基地局装置において、当該時刻情報が算出されるような疑似GPS受信信号を生成して基地局装置に出力する。
基地局装置では、疑似GPS受信信号に基づいて、GPSに同期した1秒周期のタイミング信号を生成して同期信号として用いる。
【0005】
従来の同期信号変換装置では、一旦疑似GPS受信信号を出力した後、受信していたLTE信号を一定時間受信できなくなった場合、LTE信号の受信環境が変化したと認識して、疑似GPS受信信号の出力を停止し、LTE信号及び地上デジタル放送のチャンネルを再度探索して受信し、改めて疑似GPS受信信号を生成して出力するようにしていた。
【0006】
[従来の同期信号変換装置における処理:
図4]
従来の同期信号変換装置における処理について
図4を用いて説明する。
図4は、従来の同期信号変換装置における処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、従来の同期信号変換装置では、LTE信号を探索し(S31)、LTE信号を検出したかどうかを判断し(S32)、LTE信号を検出していなければ(Noの場合)、処理S31に戻ってLTE信号の探索を続ける。
【0007】
また、処理S32において、LTE信号を検出した場合(Yesの場合)、同期信号変換装置は、受信したLTE信号の同期情報からLTEと同期したクロックを生成する(S33)。
そして、同期信号変換装置は、地上デジタル放送のチャンネルを探索し(S34)、地上デジタル放送のチャンネルを検出したかどうかを判断し(S35)、検出していない場合(Noの場合)には、処理S34に戻って探索を続ける。
【0008】
処理S35で地上デジタル放送のチャンネルを検出した場合(Yesの場合)には、同期信号変換装置は、地上デジタル放送の放送波からTOT信号を取得する。
そして、同期信号変換装置は、処理S33で生成したクロックと、処理S35で取得したTOT信号に基づいて疑似GPS受信信号(図では「GPSに同期した信号」と記載)を生成して、接続される基地局装置に出力する(S37)。
【0009】
同期信号変換装置は、生成したクロックに基づいて自走し、疑似GPS信号を生成するが、LTE信号を受信するとクロックのタイミングを補正する。
そして、同期信号変換装置は、LTE信号の受信状態を監視して、一定時間に亘ってLTE信号が受信できなかったかどうか判断し(S38)、一定時間に亘ってLTE信号が受信できなかった場合(Yesの場合)には、疑似GPS受信信号の出力を停止し(S39)、処理S31に戻って、再度LTE信号と地上デジタル放送のチャンネルの探索を行う。
このようにして、従来の同期信号変換装置における処理が行われるようになっていた。
【0010】
[関連技術]
尚、同期信号変換装置に関する従来技術としては、尚、同期信号変換装置の従来技術としては、特開2016-39514号公報「同期信号変換装置」(特許文献1)、特開2019-204999号公報「同期信号変換装置」(特許文献2)がある。
【0011】
特許文献1には、受信した放送波から放送波同期信号を取得して、疑似的なGPS信号の同期信号に変換し、当該変換された同期信号を含む疑似的なGPS受信信号を生成してGPS受信部を備えた基地局装置に出力し、基地局装置に基準クロックを生成させる同期信号変換装置が記載されている。
【0012】
特許文献2には、無線通信システムの報知情報からGPSの基準時刻に同期したシステム同期信号を抽出し、当該システム同期信号と放送波から抽出した時刻情報とを用いて、受信側の基地局装置でGPSの基準時刻に同期した時刻情報が算出されるような疑似GPS受信信号を生成して出力する同期信号変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2016-39514号公報
【文献】特開2019-204999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の同期信号変換装置では、地上デジタル放送のチャンネルを再探索した結果、前回受信していたチャンネルと異なった場合、TOT信号の受信タイミングが異なると、再探索前に生成した疑似GPS受信信号と、再探索後に生成した疑似GPS受信信号の1秒周期のタイミングが変わってしまい、基地局において正確な同期信号が生成できず、システム同期がとれなくなるという問題点があった。
【0015】
更に、再探索したチャンネルが再探索前のチャンネルと同一であったとしても、地上デジタル放送の送信タイミングの精度の揺らぎの影響により、再探索前後で疑似GPS受信信号の1秒周期のタイミングが変わってしまうという問題点がある。
これらの問題点は、地上デジタル放送のチャンネルの再探索によって発生するものである。
【0016】
尚、特許文献1及び特許文献2には、受信していたLTE信号を一定時間受信できなくなった場合、LTE信号と地上デジタル放送のチャンネルの探索を行わず、1秒周期のタイミングを自走させつつ、それまで受信していたLTE信号の再受信を試み、当該LTE信号を受信できた場合には、改めて疑似GPS受信信号を生成して出力することは記載されていない。
【0017】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、一時的にLTE信号を受信できなくなった場合でも、疑似GPS受信信号の1秒周期のタイミングの変化を防ぎ、安定して出力することができる同期信号変換装置及び同期信号変換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、LTE信号を受信するLTE信号受信部と、受信したLTE信号を復調して同期用LTE信号を探索し、同期用LTE信号から報知情報を取り出す同期用LTE信号探索部と、放送波を受信し、放送波から時刻情報を含むTOT取得チャンネルを探索して保持する放送波受信部と、TOT取得チャンネルから取得した時刻情報と、報知情報から取得したシステム同期情報に基づいて、基地局の受信機においてGPS受信信号と同等に扱われる疑似GPS受信信号を生成して、基地局の受信機に出力する疑似GPS受信信号送出部とを備え、同期用LTE信号探索部が、同期用LTE信号を正常に受信しているかどうかを判断し、疑似GPS受信信号の出力後に、一定時間以上に亘って同期用LTE信号を正常に受信しない場合に、新たな同期用LTE信号の探索を行わず、再度当該同期用LTE信号の受信を試み、同期用LTE信号を受信した場合には、同期用LTE信号の報知情報を疑似GPS受信信号送出部に出力し、放送波受信部が、疑似GPS受信信号の出力後に、同期用LTE信号探索部において一定時間以上に亘って同期用LTE信号を正常に受信しない場合に、新たなTOT取得チャンネルの探索を行わず、疑似GPS受信信号送出部が、疑似GPS受信信号の出力後に、一定時間以上に亘って報知情報が入力されない場合に、疑似GPS受信信号の出力を停止し、報知情報の入力が再開されると、疑似GPS受信信号送出部から疑似GPS受信信号の出力を再開することを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記同期信号変換装置において、疑似GPS受信信号送出部は、報知情報に基づいてクロックを生成して自走させ、報知情報が入力されない場合に、自走するクロックに基づいて疑似GPS受信信号を生成し、報知情報が入力されない状態が一定時間以上になると、疑似GPS受信信号の出力を停止し、その後報知情報の入力が再開されると、入力が再開された報知情報に基づいてクロックを補正して、疑似GPS受信信号の出力を再開することを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置における同期信号変換方法であって、同期信号変換装置が、受信したLTE信号を復調して前記復調されたLTE信号から同期用LTE信号を探索し、同期用LTE信号から報知情報を取り出し、受信した放送波から時刻情報を含むTOT取得チャネルを探索して保持し、TOT取得チャネルから取得した時刻情報と、報知情報から取得したシステム同期情報に基づいて、基地局の受信機においてGPS受信信号と同等に扱われる疑似GPS受信信号を生成して出力し、同期用LTE信号を正常に受信しているかどうかを判断し、疑似GPS受信信号の出力後に、一定時間以上に亘って同期用LTE信号を正常に受信しなかった場合には、疑似GPS受信信号の出力を停止し、新たな同期用LTE信号及び新たなTOT取得チャネルの探索を行わずに、再度当該同期用LTE信号の受信を試み、当該同期用LTE信号を受信した場合には、疑似GPS受信信号の出力を再開することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、LTE信号を受信するLTE信号受信部と、受信したLTE信号を復調して同期用LTE信号を探索し、同期用LTE信号から報知情報を取り出す同期用LTE信号探索部と、放送波を受信し、放送波から時刻情報を含むTOT取得チャンネルを探索して保持する放送波受信部と、TOT取得チャンネルから取得した時刻情報と、報知情報から取得したシステム同期情報に基づいて、基地局の受信機においてGPS受信信号と同等に扱われる疑似GPS受信信号を生成して、基地局の受信機に出力する疑似GPS受信信号送出部とを備え、同期用LTE信号探索部が、同期用LTE信号を正常に受信しているかどうかを判断し、疑似GPS受信信号の出力後に、一定時間以上に亘って同期用LTE信号を正常に受信しない場合に、新たな同期用LTE信号の探索を行わず、再度当該同期用LTE信号の受信を試み、同期用LTE信号を受信した場合には、同期用LTE信号の報知情報を疑似GPS受信信号送出部に出力し、放送波受信部が、疑似GPS受信信号の出力後に、同期用LTE信号探索部において一定時間以上に亘って同期用LTE信号を正常に受信しない場合に、新たなTOT取得チャンネルの探索を行わず、疑似GPS受信信号送出部が、疑似GPS受信信号の出力後に、一定時間以上に亘って報知情報が入力されない場合に、疑似GPS受信信号の出力を停止し、報知情報の入力が再開されると、疑似GPS受信信号送出部から疑似GPS受信信号の出力を再開する同期信号変換装置としているので、一時的に同期用LTE信号を受信できなくなった場合でも、疑似GPS受信信号の1秒周期のタイミングの変化を防ぎ、安定した疑似GPS受信信号を出力して、システム全体の信頼性を向上させることができる効果がある。
【0022】
また、本発明によれば、疑似GPS受信信号送出部は、報知情報に基づいてクロックを生成して自走させ、報知情報が入力されない場合に、自走するクロックに基づいて疑似GPS受信信号を生成し、報知情報が入力されない状態が一定時間以上になると、疑似GPS受信信号の出力を停止し、その後報知情報の入力が再開されると、入力が再開された報知情報に基づいてクロックを補正して、疑似GPS受信信号の出力を再開する上記同期信号変換装置としているので、一時的に報知情報が入力されなくても疑似GPS受信信号の供給を続けることができ、供給断が一定時間以上になった場合には、精度が低下する恐れのある疑似GPS受信信号の出力を停止し、報知情報が再入力されると、再び精度の高い疑似GPS受信信号を出力できる効果がある。
【0023】
また、本発明によれば、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置における同期信号変換方法であって、同期信号変換装置が、受信したLTE信号を復調して前記復調されたLTE信号から同期用LTE信号を探索し、同期用LTE信号から報知情報を取り出し、受信した放送波から時刻情報を含むTOT取得チャネルを探索して保持し、TOT取得チャネルから取得した時刻情報と、報知情報から取得したシステム同期情報に基づいて、基地局の受信機においてGPS受信信号と同等に扱われる疑似GPS受信信号を生成して出力し、同期用LTE信号を正常に受信しているかどうかを判断し、疑似GPS受信信号の出力後に、一定時間以上に亘って同期用LTE信号を正常に受信しなかった場合には、疑似GPS受信信号の出力を停止し、新たな同期用LTE信号及び新たなTOT取得チャネルの探索を行わずに、再度当該同期用LTE信号の受信を試み、当該同期用LTE信号を受信した場合には、疑似GPS受信信号の出力を再開する同期信号変換方法としているので、一時的に同期用LTE信号を受信できなくなった場合でも、疑似GPS受信信号の1秒周期のタイミングの変化を防ぎ、安定した疑似GPS受信信号を出力して、システム全体の信頼性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本同期信号変換装置の概略を示す説明図である。
【
図2】本同期信号変換装置の構成ブロック図である。
【
図3】本同期信号変換装置における処理を示すフローチャートである。
【
図4】従来の同期信号変換装置における処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る同期信号変換装置(本同期信号変換装置)は、LTE信号のシステム同期信号と地上デジタル放送波信号の時刻情報に基づいてGPSの基準時刻に同期した1秒周期のタイミング信号を抽出可能な疑似GPS受信信号を生成して出力するものであり、一旦疑似GPS受信信号を出力した後で一定時間LTE信号を受信できなかった場合に、LTE信号及び地上デジタル放送波のチャンネルの探索を行わずに、疑似GPS受信信号の出力を停止すると共に、それまで受信していたLTE信号の受信を試み、再受信した場合には当該LTE信号に基づいて疑似GPS受信信号を生成して出力を再開するものであり、一時的にLTE信号を受信できなくなった場合でも、地上デジタル放送のチャンネルの再探索によって発生する疑似GPS受信信号の1秒周期のタイミングのずれを防ぎ、GPSに同期した信号を安定して提供することができるものである。
【0026】
尚、以下の実施の形態では、無線システムとして、LTE/LTE-Advancedに適用した例を説明するが、本発明の実施の形態に係る同期信号変換装置は、LTE/LTE-Advancedに特化したものではなく、5Gや、システム報知情報に時刻情報を含まず、GPSの基準時刻に同期したシステム同期信号を含むシステム全般における時刻同期に適用可能なものである。
【0027】
[本同期信号変換装置の概略:
図1]
次に、本同期信号変換装置の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本同期信号変換装置の概略を示す説明図である。
本同期信号変換装置10は、
図1に示すように、GPS受信機21を備えた基地局装置20に接続されて用いられ、基地局装置20に、GPSに同期した信号として疑似GPS受信信号を供給するものである。
【0028】
具体的には、本同期信号変換装置1は、LTEの無線信号を受信するLTE受信アンテナ102,103と、放送局からの放送波信号を受信する放送波受信アンテナ104,105とを備え、LTEの無線信号と放送波信号とを用いて、GPSの基準時刻に同期した時刻情報を生成し、更に受信側の装置(ここでは基地局装置20)に当該GPSの基準時刻に同期した時刻情報を取得させるための情報を含む疑似GPS受信信号を生成して、基地局装置20に出力するものである。
【0029】
基地局装置20は、GPS受信機21を備えているが、GPSアンテナは設けられていない。そして、GPS受信機21が、GPS受信信号の代わりに本同期信号変換装置10からの疑似GPS受信信号を入力して、GPSの基準時刻に同期した時刻情報を取得し、それに基づいて同期信号を生成する。
【0030】
ここで、本発明の同期信号変換装置で生成される疑似GPS受信信号は、接続された基地局装置20のGPS受信機21が、UTCに同期した正確な時刻情報と正しい位置情報とを取得できるように生成された信号であり、複数の衛星からのGPS信号をGPS受信信号として受信した場合と同様に、複数の衛星に対応する軌道情報や各衛星の送信時刻に相当する時刻情報を含む信号である。
つまり、基地局装置20のGPS受信機21は、疑似GPS受信信号が入力されると、複数の衛星からのGPS信号が重畳されてGPS受信信号として入力されたものとして認識し、本来のGPS受信信号を入力した場合と同じ動作を行うものである。
尚、ここでは「GPSの基準時刻に同期した時刻情報」は「UTCに同期した時刻情報」と同義として用いる。
【0031】
[本同期信号変換装置の構成:
図2]
本同期信号変換装置の構成について
図2を用いて説明する。
図2は、本同期信号変換装置の構成ブロック図である。
図2に示すように、本同期信号変換装置10は、LTE受信アンテナ102,103と、放送波受信アンテナ104,105と、LTE信号受信部111と、同期用LTE信号探索部116と、放送波信号受信部121と、疑似GPS受信信号送出部115と、制御部130とを備えている。
【0032】
本同期信号変換装置10の各部について説明する。
LTE受信アンテナ102,103は、LTEシステムの基地局からの電波を受信するアンテナである。
放送波受信アンテナ104,105は、放送局からの放送波を受信するアンテナである。
尚、ここでは、空間ダイバーシティ効果を得るためにアンテナを2本ずつ設けているが、1本であってもよい。
【0033】
LTE信号受信部111は、LTE受信アンテナ102,103からの受信信号から、LTE信号探索部116によって指定された探索範囲の信号を抽出する。
探索範囲とは、同期用LTE信号の中心周波数を探索する範囲であり、ここでは、LTEシステムで用いられる2GHz帯1つと、800MHz帯2つとしている。
【0034】
同期用LTE信号探索部116は、疑似GPS受信信号の生成に用いるLTE信号を探索する。
具体的には、同期用LTE信号探索部116は、受信信号におけるS-SS信号と、504パターンの既知のリファレンスとの相関演算を行って相関値を算出し、相関値が最大となったLTE信号について、報知信号を復調し、CRC(Cyclic Redundancy Check)結果に基づいて当該探索範囲での同期用LTE信号候補を特定する。
そして、全ての探索範囲における候補の内で、相関値が最大となったものを同期用LTE信号とし、内部に当該LTE信号の情報を記憶する。
【0035】
更に、同期用LTE信号探索部116は、LTE信号に同期した場合には、当該LTE信号に含まれる報知情報を疑似GPS受信信号送出部115に出力する。
また、同期用LTE信号探索部116は、一旦LTE信号と同期した後は、受信したLTE信号を復調して、CRC結果を監視し、正常に受信しているかどうかを判断し、正常に受信している場合には報知情報を疑似GPS受信信号送出部115に出力し、正常に受信できなかった場合には、報知情報を出力しない。
【0036】
制御部130は、本同期信号変換装置10の各部の状態を監視すると共に、装置全体の制御を行う。
特に、本同期信号変換装置では、制御部130は、同期用LTE信号探索部116におけるLTE信号の受信状況を把握し、それに基づいて同期用LTE信号探索部116における動作や疑似GPS受信信号送出部115における動作を制御する。
【0037】
放送波信号受信部121は、放送波用アンテナ104,105で受信した放送波信号を取得する。本同期信号変換装置10が利用する放送波は、地上波デジタル放送の放送波としている。
放送波信号受信部121では、地上デジタル放送の時刻情報としてTOTを取得する1セグメント放送(ワンセグ)のチャンネルを特定するため、設定された方法で探索を行って、ワンセグの無線品質が設定値以上のチャンネルをTOT取得チャンネルとして選択する。
放送波信号受信部121は、探索したTOT取得チャンネルを内部に記憶しておく。
【0038】
疑似GPS受信信号送出部115は、時刻情報同期部13を備えており、同期用LTE信号探索部116から入力される報知情報から、GPSの基準時刻に同期したシステム同期信号(例えばフレーム番号)を抽出すると共に、放送波信号受信部121から入力される放送波信号から時刻情報を抽出し、放送波の時刻情報をLTEのシステム同期情報で補正して、GPSに同期した時刻情報を生成し、当該GPSに同期した時刻情報を含む疑似GPS受信信号として、基地局装置20等に出力する。
【0039】
時刻情報同期部13は、LTE信号の報知情報に含まれるシステム同期信号と放送波の時刻情報とに基づいて、GPS基準時刻に同期した時刻情報を生成する。
また、時刻情報同期部13は、LTE信号のシステム同期信号に同期した1秒周期のクロックを生成して自走するカウンタを備えている。
当該カウンタは、LTE信号を受信した場合には受信したLTE信号の同期信号で補正されるため、LTE信号を受信している間は、GPSの基準時刻に同期したタイミングを生成し、疑似GPS受信信号送出部115は、それに基づいて疑似GPS受信信号を生成して出力する。
【0040】
LTE信号を受信していない場合でも、疑似GPS受信信号送出部115は、時刻情報同期部13で自走させたクロックに基づいて疑似GPS受信信号を生成して、出力する。
しかし、LTE信号を受信していない状態が一定時間を超えた場合には、自走させたクロックがGPSの基準時刻のタイミングとずれる可能性があるため、疑似GPS受信信号の出力を一旦停止する。
【0041】
[LTE信号を一定時間以上受信していない場合]
本同期信号変換装置では、疑似GPS受信信号の出力後に、LTE信号を一定時間以上受信しなかった場合の動作が特徴となっている。
同期用LTE信号探索部116では、疑似GPS受信信号を出力した後もLTE信号を正常に受信しているかどうかをCRCによってチェックしており、LTE信号が正常に受信できない場合には、LTE信号の報知情報を疑似GPS受信信号送出部115に出力しない。
上述したように、この場合でも、疑似GPS受信信号送出部115は、時刻情報同期部13で自走するクロックに基づいて疑似GPS受信信号を生成して出力を続ける。
【0042】
制御部130は、同期用LTE信号探索部116におけるLTE信号の受信状況を監視しており、正常に受信できない状態が一定時間以上継続した場合には、疑似GPS受信信号送出部115に対して、疑似GPS受信信号の外部への出力を停止させる。
但し、時刻情報同期部13で生成するLTEの報知情報に同期したクロックは、1秒周期の情報を保持するため自走を継続させる。
【0043】
それと共に、制御部130は、同期用LTE信号探索部116に対して、記憶している同期用LTE信号の情報に基づいて、それまで受信していたLTE信号の再捕捉を行わせる。
つまり、本同期信号変換装置では、一時的にLTE信号を受信できなくなった場合でも、すぐに全候補の中から同期用LTE信号の探索及びTOT取得用の放送波信号のチャンネル探索を行うのではなく、TOT取得用の放送波信号のチャンネルは保持したまま、それまでのLTE信号を再度受信できないか、試みるようにしている。
【0044】
そして、同期用LTE信号探索部116で、それまでのLTE信号を受信した場合には、報知情報を疑似GPS受信信号送出部115に出力させて、それまでと同じLTE信号及び放送波信号のチャンネルを用いて継続して疑似GPS受信信号を生成できるようにしている。
【0045】
放送波信号のチャンネルを再探索すると、TOT取得用のチャンネルの変化や地上デジタル放送の送信タイミングの精度の揺らぎの影響で、1秒周期のタイミングがそれまでとずれてしまうことがあったが、本同期信号変換装置では、なるべく放送波信号のチャンネルの再探索を行わないようにして、1秒周期のタイミングのずれが発生するのを防ぐことができるものである。
【0046】
[本同期信号変換装置における処理:
図3]
次に、本同期信号変換装置における処理について
図3を用いて説明する。
図3は、本同期信号変換装置における処理を示すフローチャートである。
図3に示すように、本同期信号変換装置では、LTE信号受信部111でLTE信号を受信し、同期用LTE信号探索部116で同期用LTE信号を探索する(S11)。
同期用LTE信号探索部116では、同期用LTE信号を探索(検出)したかどうか判断し(S12)、同期用LTE信号を検出していなければ(Noの場合)、処理S11に戻ってLTE信号の探索を行う。
【0047】
また、処理S12において、同期用LTE信号を検出した場合(Yesの場合)、同期用LTE信号探索部116は、受信したLTE信号の報知情報を疑似GPS受信信号送出部115に出力し、疑似GPS受信信号送出部115では、報知情報に含まれる同期情報からLTEと同期したクロックを生成する(S13)。 このクロックはGPSの基準タイミングに同期している。
【0048】
次に、本同期信号変換装置では、放送波信号受信部121で地上デジタル放送のチャンネルを探索し(S14)、TOT取得用の地上デジタル放送のチャンネルを検出したかどうかを判断し(S15)、検出していない場合(Noの場合)には、処理S14に戻って探索を続ける。
【0049】
処理S15で地上デジタル放送のチャンネルを検出した場合(Yesの場合)には、放送波信号受信部121は、探索した地上デジタル放送のチャンネルからTOT信号を取得し、疑似GPS受信信号送出部115に出力する。
疑似GPS受信信号送出部115では、TOT信号から時刻情報を取得し(S16)、当該時刻情報と処理S13で生成するクロックとに基づいて、疑似GPS受信信号(図では「GPSに同期した信号」と記載)を生成して、接続される基地局装置20に出力する(S17)。
【0050】
本同期信号変換装置の制御部130は、同期用LTE信号探索部116におけるLTE信号の受信状況を監視しており、疑似GPS受信信号の出力後、一定時間以上LTE信号が受信できない状態になっているかどうかを判断する(S18)。
処理S18で、継続してLTE信号を受信しており、一定時間以上LTE信号が受信できない状態ではない場合(Noの場合)には、制御部130は、処理S18に戻って監視を続ける。
【0051】
また、処理S18で、一定時間以上LTE信号が受信できない状態となっている場合(YESの場合)には、制御部130は、疑似GPS受信信号送出部115に、疑似GPS受信信号の外部への出力停止を指示し、疑似GPS受信信号送出部115は、疑似GPS受信信号の出力を停止する(S19)。
【0052】
そして、制御部130は、同期用LTE信号探索部116に、それまで同期用LTE信号として受信していたLTE信号について、受信したかどうかを再度確認し(S20)、受信しない場合(Noの場合)には、処理S20を繰り返して、受信を再確認する。
【0053】
処理S20において、それまで受信していたLTE信号を再び受信できた場合(Yesの場合)には、制御部130は、同期用LTE信号探索部116及び疑似GPS受信信号送出部115を通常の動作に移行させる。
【0054】
すなわち、同期用LTE信号探索部116から当該LTE信号の報知情報が出力され、疑似GPS受信信号送出部115では、自走していたクロックを報知情報に基づいて補正(図では生成と記載)し(S21)、処理S17に移行して、当該クロックと、放送波信号受信部121から取得したTOT信号に含まれる時刻情報とに基づいて、疑似GPS受信信号を生成して、出力を再開する。
【0055】
尚、処理S20の再確認処理を予め設定した特定時間以上行った場合には、処理S11に移行して、LTE信号及び地上デジタル放送波信号のチャンネルの探索を行うようにしてもよい。
このようにして、本同期信号変換装置における処理が行われる。
【0056】
本同期信号変換装置の処理では、LTE信号が受信できない状態となっても、一時的な不具合等によるものである場合には、再度受信できる可能性があるため、疑似GPS受信信号による同期信号のずれを招く恐れのあるLTE信号及び地上デジタル放送波信号のチャンネルの再探索を敢えて行わず、それまでと同じ信号を用いて疑似GPS受信信号の生成を継続し、疑似GPS受信信号の1秒周期のタイミングのずれを防ぐことができるものである。
【0057】
[実施の形態の効果]
本同期信号変換装置によれば、同期用LTE信号探索部116がLTE信号のシステム同期信号を取得し、放送波信号受信部121が地上デジタル放送波信号の時刻情報を取得し、疑似GPS受信信号送出部115が、LTE信号の同期信号と放送波信号の時刻情報とに基づいて、GPSの基準時刻に同期した1秒周期のタイミング信号を抽出可能な疑似GPS受信信号を生成して出力し、疑似GPS信号送出部115が、一旦疑似GPS受信信号を出力した後で、一定時間以上同期用LTE信号探索部116からのLTE信号の報知情報を入力しなかった場合に、疑似GPS受信信号の出力を停止し、同期用LTE信号探索部116が、新たなLTE信号の探索を行わずに、それまで受信していたLTE信号の受信を再度試み、再受信した場合には当該LTE信号のシステム同期信号を出力し、疑似GPS受信信号送出部115が、入力されたシステム同期信号に基づいて疑似GPS受信信号を生成して出力を再開するものであり、一時的にLTE信号を受信できなくなった場合でも、地上デジタル放送のチャンネルの再探索によって発生する疑似GPS受信信号の1秒周期のタイミングのずれを防ぎ、GPSに同期した信号を安定して提供することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、一時的にLTE信号を受信できなくなった場合でも、疑似GPS受信信号の1秒周期のタイミングの変化を防ぎ、安定して出力することができる同期信号変換装置及び同期信号変換方法に適している。
【符号の説明】
【0059】
10… 同期信号変換装置、 13… 時刻情報同期部、 20… 基地局装置、 21… GPS受信機、 102,103… LTE受信アンテナ、 104,105… 放送波受信アンテナ、 111… LTE信号受信部、 115…疑似GPS受信信号送出部、 116… 同期用LTE信号探索部、 121… 放送波信号受信部、 130… 制御部