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特許7495900情報提供装置、情報提供方法、及び情報提供プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】情報提供装置、情報提供方法、及び情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240529BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240529BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240529BHJP
   H04W 4/46 20180101ALI20240529BHJP
   H04W 4/90 20180101ALI20240529BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20240529BHJP
【FI】
G08G1/16 A
B60W50/14
G08G1/09 H
H04W4/46
H04W4/90
H04W92/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021060607
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156760
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391008559
【氏名又は名称】株式会社トランストロン
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】谷野 浩司
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-285692(JP,A)
【文献】特開2005-234921(JP,A)
【文献】特開2018-036796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 50/14
H04W 4/46
H04W 92/18
H04W 4/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺における第1危険事象と、前記車両の前方を走行する前方車両又は前記車両の後方を走行する後方車両の周辺における第2危険事象と、を含む危険事象に関する情報を提供する情報提供装置であって、
前記車両の周辺映像を取得する映像取得部と、
前記周辺映像を解析して前記第1危険事象を抽出する映像解析部と、
前記前方車両又は前記後方車両から送信される前記第2危険事象の情報を受信する周辺情報受信部と、
前記第1危険事象及び前記第2危険事象を前記車両の運転者に報知するドライバー向け情報提供部と、
前記危険事象の少なくとも一部を、前記前方車両又は前記後方車両に送信する情報発信部と、
を備え
前記映像解析部は、前記第1危険事象が抽出された位置が、前記車両の前方であるか後方であるかを判別し、
前記情報発信部は、前記車両の前方で抽出された前記第1危険事象を前記後方車両に送信し、前記車両の後方で抽出された前記第1危険事象を前記前方車両に送信する
ことを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記運転者が注意すべき前記危険事象の優先度を算出する優先度算出部を備え、
前記ドライバー向け情報提供部及び前記情報発信部は、前記危険事象を前記優先度が高い順に報知する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記危険事象の種類と危険度とを対応付けた事象情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記優先度算出部は、前記事象情報に基づいて前記危険事象の前記危険度を算出し、前記危険度に基づいて前記優先度を算出する
ことを特徴とする請求項に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記映像解析部は、前記危険事象と前記車両との距離及び前記危険事象と前記車両との相対速度を求め、
前記優先度算出部は、前記距離及び前記相対速度に基づいて前記優先度を算出する
ことを特徴とする請求項又はに記載の情報提供装置。
【請求項5】
車両の周辺における第1危険事象と、前記車両の前方を走行する前方車両又は前記車両の後方を走行する後方車両の周辺における第2危険事象と、を含む危険事象に関する情報を提供する情報提供方法であって、
前記車両の周辺映像を取得するステップと、
前記周辺映像を解析して前記第1危険事象を抽出するステップであって、前記第1危険事象が抽出された位置が、前記車両の前方であるか後方であるかを判別するステップと、
前記前方車両又は前記後方車両から送信される前記第2危険事象の情報を受信するステップと、
前記第1危険事象及び前記第2危険事象を前記車両の運転者に報知し、かつ、前記前方車両又は前記後方車両に送信するステップであって、前記車両の前方で抽出された前記第1危険事象を前記後方車両に送信し、前記車両の後方で抽出された前記第1危険事象を前記前方車両に送信するステップと、
を含むことを特徴とする情報提供方法。
【請求項6】
コンピュータを、車両の周辺における第1危険事象と、前記車両の前方を走行する前方車両又は前記車両の後方を走行する後方車両の周辺における第2危険事象と、を含む危険事象に関する情報を提供する情報提供装置として機能させる情報提供プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記車両の周辺映像を取得する映像取得部、
前記周辺映像を解析して前記第1危険事象を抽出する映像解析部、
前記前方車両又は前記後方車両から送信される前記第2危険事象の情報を受信する周辺情報受信部、
前記第1危険事象及び前記第2危険事象を前記車両の運転者に報知するドライバー向け情報提供部、
前記危険事象の少なくとも一部を、前記前方車両又は前記後方車両に送信する情報発信部、
として機能させ
前記映像解析部は、前記第1危険事象が抽出された位置が、前記車両の前方であるか後方であるかを判別し、
前記情報発信部は、前記車両の前方で抽出された前記第1危険事象を前記後方車両に送信し、前記車両の後方で抽出された前記第1危険事象を前記前方車両に送信する
ことを特徴とする情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置、情報提供方法、及び情報提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の運転者が周囲の状況を確認する手段として、目視、ミラー、バックモニタ、アラウンドビューモニタ等がある。また、車両の周囲を撮影した画像から車両又は歩行者等を検出する技術も実用化されている。
【0003】
特許文献1には、複数の車両が隊列を組んで自動走行されている車列中の先頭車両とその直前を走行する前方車両との間の状態を表す前方情報と、車列のいずれかの車両の走行状態を表す走行情報とを、車列の最後尾の情報伝達車両の直後を走行する後方車両の運転者に伝達する伝達方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-84147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転者が周囲の状況を確認する場合、目視では死角が存在し、アラウンドビューモニタを走行中に注視するのは危険である。また、目視又はアラウンドビューモニタでは、自車の周囲の状況しか確認できない。すなわち、例えば車両脇をすり抜けて後方より接近する自転車又はバイク等の小型車両や、前方の車両に遮られて見えない歩行者等といった危険事象の認知が遅れ、事故につながる可能性がある。さらに、目視による確認は、運転者の能力の個人差又は疲労状況等により精度にばらつきが生じる。特に、高齢のドライバーにおいては、危険事象の認知が遅れる傾向にあり、事故の危険性が高い。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、危険事象を運転者に適切に認知させ、車両を安全に走行させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る情報提供装置は、例えば、車両の周辺における第1危険事象と、前記車両の前方を走行する前方車両又は前記車両の後方を走行する後方車両の周辺における第2危険事象と、を含む危険事象に関する情報を提供する情報提供装置であって、前記車両の周辺映像を取得する映像取得部と、前記周辺映像を解析して前記第1危険事象を抽出する映像解析部と、前記前方車両又は前記後方車両から送信される前記第2危険事象の情報を受信する周辺情報受信部と、前記第1危険事象及び前記第2危険事象を前記車両の運転者に報知するドライバー向け情報提供部と、前記危険事象の少なくとも一部を、前記前方車両又は前記後方車両に送信する情報発信部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の他態様に係る情報提供方法は、例えば、車両の周辺における第1危険事象と、前記車両の前方を走行する前方車両又は前記車両の後方を走行する後方車両の周辺における第2危険事象と、を含む危険事象に関する情報を提供する情報提供方法であって、前記車両の周辺映像を取得するステップと、前記周辺映像を解析して前記第1危険事象を抽出するステップと、前記前方車両又は前記後方車両から送信される前記第2危険事象の情報を受信するステップと、前記第1危険事象及び前記第2危険事象を前記車両の運転者に報知し、かつ、前記前方車両又は前記後方車両に送信するステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の他態様に係る情報提供プログラムは、例えば、コンピュータを、車両の周辺における第1危険事象と、前記車両の前方を走行する前方車両又は前記車両の後方を走行する後方車両の周辺における第2危険事象と、を含む危険事象に関する情報を提供する情報提供装置として機能させる情報提供プログラムであって、前記コンピュータを、前記車両の周辺映像を取得する映像取得部、前記周辺映像を解析して前記第1危険事象を抽出する映像解析部、前記前方車両又は前記後方車両から送信される前記第2危険事象の情報を受信する周辺情報受信部、前記第1危険事象及び前記第2危険事象を前記車両の運転者に報知するドライバー向け情報提供部、前記危険事象の少なくとも一部を、前記前方車両又は前記後方車両に送信する情報発信部、として機能させることを特徴とする。
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【0010】
本発明の上記いずれかの態様では、危険事象を運転者に適切に認知させ、車両を安全に走行させることができる。運転者は、自車両のカメラで捕捉できない、自車両から離れた危険事象についてもいち早く把握することができるため、対処するための準備時間を得ることができる。その結果、認知の遅れや見逃しによる偶発的な事故を低減し、より安全に走行することができる。また、前方車両や後方車両の運転者に、自車両のカメラでは補足できない範囲の危険事象を通知することができる。
【0011】
前記映像解析部は、前記第1危険事象が抽出された位置が、前記車両の前方であるか後方であるかを判別し、前記情報発信部は、前記車両の前方で抽出された前記第1危険事象を前記後方車両に送信し、前記車両の後方で抽出された前記第1危険事象を前記前方車両に送信してもよい。これにより、前方車両及び後方車両は、車両に遮られた側に存在する危険事象を取得することができる。したがって、前方車両及び後方車両は、あらかじめ危険事象に注意して、安全に走行することができる。
【0012】
前記運転者が注意すべき前記危険事象の優先度を算出する優先度算出部をさらに備え、前記ドライバー向け情報提供部は、前記危険事象を、前記優先度が高い順に報知するものとしてもよい。これにより、運転者は、運転中で他の情報に多く気を配れない状況においても、注意が必要な事象を適切に把握できる。
【0013】
前記危険事象の種類と危険度とを対応付けた事象情報を記憶する記憶部をさらに備え、前記優先度算出部は、前記事象情報に基づいて前記危険事象の前記危険度を算出し、前記危険度に基づいて前記優先度を算出してもよい。これにより、危険事象の種類に応じて、運転者が注意すべき危険事象の優先度を適切に算出できる。
【0014】
前記映像解析部は、前記危険事象と前記車両との距離及び前記危険事象と前記車両との相対速度を求め、前記優先度算出部は、前記距離及び前記相対速度に基づいて前記優先度を算出してもよい。これにより、運転者が注意すべき危険事象の優先度を適切に算出できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、危険事象を運転者に適切に認知させ、車両を安全に走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る情報提供装置1を有する複数の車両C、前方車両CF及び後方車両CBが情報を送受信する様子を示す概念図である。
図2】情報提供装置1の電気的な機能ブロックの概略を示す図である。
図3】情報提供装置1のハードウェア構成の概略を示す図である。
図4】事象データベースT1の一例を示す図である。
図5】(a)は車内情報データベースT10の一例を示す図であり、(b)は車内情報データベースT11の一例を示す図であり、(c)は車内情報データベースT12の一例を示す図であり、(d)は車内情報データベースT13の一例を示す図である。
図6】車両Cに搭載される情報提供装置1が取得した事象を別の車両(前方車両CF及び後方車両CB)に送信する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る情報提供装置1の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。情報提供装置1は、車両が取得した危険事象に関する情報を、車両の運転手及び近傍に存在する他の車両に提供する装置である。
【0018】
図1は、情報提供装置1をそれぞれ有する複数の車両である車両C、前方車両CF及び後方車両CBが情報を送受信する様子を示す概念図である。前方車両CFは、車両Cの進行方向前方を走行している車両である。後方車両CBは、車両Cの進行方向後方を走行している車両である。前方車両CFの進行方向前方には、前方車両CF前部に配設された前方カメラ11(図2参照)の撮像領域A11が形成されている。撮像領域A11には、交差点K、右折待ちの対向車CC、歩行者Hが存在している。また、後方車両CBの進行方向後方には、後方車両CB後部に配設された後方カメラ12(図2参照)の撮像領域A12が形成されている。撮像領域A12には、小型車両CS(例えば、自転車)が接近してくる様子が捉えられている。
【0019】
交差点K、右折待ちの対向車CC、歩行者H及び小型車両CSは、車両C、前方車両CF及び後方車両CBが走行する際に事故を引き起こす原因となりうる事象、すなわち危険事象の例である。情報提供装置1は、このような危険事象を抽出する。図1に示す例においては、前方車両CFは、対向車CC、歩行者H及び交差点Kを危険事象として抽出する。後方車両CBは、接近中の小型車両CSを危険事象として抽出する。
【0020】
また、車両C、前方車両CF及び後方車両CBが有する各情報提供装置1は、抽出した危険事象を前後の車両に送信する。例えば、車両Cの情報提供装置1は、前方車両CFから受信した危険事象を後方車両CBに送信するとともに、後方車両CBから受信した危険事象を前方車両CFに送信する。車両C、前方車両CF及び後方車両CBの運転者は、車内の表示装置又はスピーカーを介して、自車両により抽出した危険事象、及び他車両から受信した危険事象を把握することができる。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態に係る情報提供装置1の電気的な機能ブロックの概略を示す図である。図2に示す情報提供装置1は、車両C、前方車両CF及び後方車両CBにそれぞれ搭載される。ここでは、車両Cに搭載される情報提供装置1について説明する。
【0022】
情報提供装置1は、主として、映像取得部10と、情報処理部20と、周辺情報送受信部30と、ドライバー向け情報提供部40とを備える。映像取得部10、情報処理部20、周辺情報送受信部30及びドライバー向け情報提供部40は、それぞれ独立して構成されてネットワークを介して接続されていてもよいし、一部又は全部の構成が1個のハードウェア構成で実現されていてもよい。
【0023】
情報処理部20、周辺情報送受信部30及びドライバー向け情報提供部40は、図3に示すように、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)56及びRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリ58を含む制御装置50、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置54、通信装置52により実現される機能ブロックである。
【0024】
記憶装置54は、制御装置50における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。制御装置50では、記憶装置54等に格納された所定のプログラムをCPUが実行することにより、各種の機能部として機能する。通信装置52は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置52は、端末装置等との間で各種の情報を送受信する。
【0025】
なお、情報処理部20、周辺情報送受信部30及びドライバー向け情報提供部40は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータ、ECU(Electronic Control Unit)等の情報処理装置を用いて実現することができる。また、情報処理部20、周辺情報送受信部30及びドライバー向け情報提供部40は、単一の情報処理装置により構成されるものであってもよく、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置により構成されるものであってもよい。また、図3は、情報処理部20、周辺情報送受信部30及びドライバー向け情報提供部40が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、情報処理部20、周辺情報送受信部30及びドライバー向け情報提供部40は、情報処理装置が一般的に備える他の構成を備えることができる。
【0026】
図2の説明に戻る。映像取得部10は、車両Cの周辺映像を取得する機能部である。映像取得部10は、主として、前方カメラ11及び後方カメラ12を有する。前方カメラ11は、例えば車両Cの進行方向前部において、進行方向を向いて配設され、車両Cの前方の映像を取得する。また、後方カメラ12は、進行方向後部において、進行方向後方を向いて配設され、車両Cの後方の映像を取得する。映像取得部10で取得される情報は、例えば動画である。映像取得部10で取得された映像は映像解析部21に送信される。
【0027】
情報処理部20は、取得される情報に基づいて、危険事象を抽出及び分析する機能部である。情報処理部20は、主として、映像解析部21、情報解析部22、優先度算出部23、情報生成部24、及び記憶部25の各機能ブロックを有している。
【0028】
映像解析部21は、映像取得部10で取得される映像を解析する機能部である。映像解析部21は、適宜の画像解析技術を用いて、映像中に映り込む危険事象(本発明の第1危険事象に相当する)を抽出する。画像解析技術はAI(人工知能)を用いた技術であってもよい。
【0029】
映像解析部21が抽出する危険事象は、記憶部25に記憶されている事象データベースT1(本発明の事象情報に相当する)に含まれる危険事象である。事象データベースT1は、危険事象の種類と危険度とを対応付けている。図4は、事象データベースT1の一例を示す図である。
【0030】
事象データベースT1は、危険事象として、例えば、対向車、右折待ちの対向車、信号機、交差点、歩行者、緊急車両、自転車及びバイクを格納している。また、事象データベースT1は、各危険事象の危険度が点数付けされて記憶されている。危険事象は、注視が必要な事象や僅かに留意すれば足りる事象等、様々な種類があり、危険の程度は危険事象の種類に応じて異なる。本実施形態においては、危険度の数値が大きいほど、危険の程度が大きいことを示している。
【0031】
図2の説明に戻る。映像解析部21は、抽出された危険事象が車両Cの前方及び後方のいずれに存在するかを判別する。映像解析部21は、危険事象が前方カメラ11の取得映像に映っている場合には、当該危険事象が車両Cの前方に存在していると判別し、危険事象が後方カメラ12の取得映像に映っている場合には、当該危険事象が車両Cの後方に存在していると判別する。
【0032】
また、映像解析部21は、危険事象が前方カメラ11及び後方カメラ12に映っている場合には、どちらのカメラで取得された映像に大きく映り込んでいるかによって危険事象の位置を判別してもよい。例えば、映像解析部21は、危険事象が後方カメラ12よりも前方カメラ11の取得映像に大きく映り込んでいる場合には、当該危険事象が車両Cの前方に存在していると判別してもよい。また、映像解析部21は、危険事象が前方カメラ11よりも後方カメラ12の取得映像に大きく映り込んでいる場合には、当該危険事象が車両Cの後方に存在していると判別してもよい。
【0033】
また、映像解析部21は、危険事象と車両Cとの距離を求める。さらに、映像解析部21は、危険事象と車両Cの相対速度を求める。なお、危険事象と車両Cとの距離や相対速度は、公知の様々な技術を用いて算出することができる。
【0034】
映像解析部21は、抽出した危険事象、危険事象の危険度、危険事象の方向、危険事象までの距離、及び相対速度を車内情報データベースT10に格納する。車内情報データベースT10は後に詳述する。
【0035】
情報解析部22は、後述する周辺情報受信部31により受信される、前方車両CF又は後方車両CBからの危険事象(本発明の第2危険事象に相当する)の情報を取得して、車内情報データベースT10に登録する機能部である。
【0036】
前方車両CF及び後方車両CBからの情報には、前方車両CF及び後方車両CBがそれぞれ有する情報提供装置1が抽出した危険事象、危険事象の方向、前方車両CF及び後方車両CBから危険事象までの距離、及び前方車両CF又は後方車両CBと危険事象の相対速度が含まれている。また、前方車両CF及び後方車両CBからの情報には、車両Cと前方車両CFとの距離及び車両Cと後方車両CBとの距離が含まれていてもよい。また、前方車両CF及び後方車両CBからの情報には、前方車両CF及び後方車両CBの速度が含まれていてもよい。
【0037】
優先度算出部23は、車両C、前方車両CF及び後方車両CBにより抽出された危険事象の情報に基づいて、車両Cにおける各危険事象の優先度を算出する機能部である。優先度は、数値が大きいほど、運転者がより多くの注意を払うべきであることを示している。優先度算出部23は、優先度を以下の式(1)により算出する。なお、距離が0のときは危険事象と接触することを意味するため、距離が0でないときに式(1)に従って計算する。
優先度=相対速度/距離×危険度・・・(1)
【0038】
式(1)における距離/相対速度は、危険事象が車両Cに接触するまでの時間を示している。危険事象が車両Cに接触するまでの時間により、危険事象に注意すべき程度が異なる。本実施形態においては、危険事象が車両Cに接触するまでの時間が短いほどより注意する必要があるとみなす。数式(1)においては、接触するまでの時間の逆数(相対速度/距離)を乗じており、危険事象が車両Cに接触するまでの時間が短いほど優先度は大きくなる。これにより、運転者が注意すべき危険事象の優先度をより適切に算出できる。
【0039】
なお、優先度算出部23は、相対速度/距離を優先度としてもよいし、危険度を優先度としてもよい。
【0040】
優先度算出部23は、算出した優先度を、抽出された危険事象と対応付けて車内情報データベースT10に格納する。図5(a)は、車内情報データベースT10の一例を示す図である。
【0041】
映像解析部21が抽出した危険事象(ID及び名称)、危険事象の危険度、危険事象の方向、危険事象までの距離、及び相対速度が既に車内情報データベースT10に格納されている。同図の例では、相対速度は、危険事象が車両Cに近づく方向を正として算出されている。そして、優先度算出部23は、記憶部25に記憶されている車内情報データベースT10に、算出した優先度を追加する。このとき、優先度算出部23は、危険事象(例えば、ID)と算出した優先度とを対応付ける。
【0042】
なお、優先度算出部23は、前方車両CF及び後方車両CBにより抽出された危険事象については、前方車両CF及び後方車両CBにおいて抽出された危険事象までの距離に、車両Cと前方車両CF及び後方車両CBとの距離を加算して、当該加算した距離に基づいて優先度を計算してもよい。また、優先度算出部23は、前方車両CF又は後方車両CBと危険事象との相対速度と、前方車両CF又は後方車両CBと車両Cとの相対速度とに基づいて、車両Cと危険事象との相対速度を求め、該求めた相対速度に基づいて優先度を計算してもよい。さらに、優先度算出部23は、前方車両CF又は後方車両CBの速度と、車両Cの速度とに基づいて、車両Cと危険事象との相対速度を求めてもよい。これにより、他の車両(前方車両CF及び後方車両CB)で抽出された危険事象に対しても、車両Cとの距離を加味して優先度を適切に算出することができる。
【0043】
車両Cと前方車両CF及び後方車両CBとの距離や、車両Cと他の車両で抽出された危険事象との距離は、映像取得部10で取得される映像に基づいて映像解析部21により算出されてもよい。また、車両Cと前方車両CF及び後方車両CBとの距離は、周辺情報送受信部30において通信距離を推定することで算出されてもよい。また、車両C、前方車両CF及び後方車両CBに搭載されるGNSS(Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム)機能を利用した全世界測位システム等を用いて距離や相対速度を求めてもよい。
【0044】
図2の説明に戻る。情報生成部24は、車内情報データベースT10に登録された情報に基づいて、車両C、前方車両CF及び後方車両CBの各運転者に対し報知する情報を生成する機能部である。
【0045】
情報生成部24は、車内情報データベースT10の情報を、優先度が大きい順に並び替えて、車内情報データベースT11を生成する。図5(b)は、車内情報データベースT11の一例を示す図である。車内情報データベースT11は、車両Cの運転者に向けた情報であり、車両Cのドライバー向け情報提供部40に送信される。
【0046】
また、情報生成部24は、車内情報データベースT10から車両Cの後方に検出された危険事象を抽出して、前方車両CFに送信する情報(車内情報データベースT12)を生成する。さらに、情報生成部24は、車内情報データベースT10から車両Cの前方に検出された危険事象を抽出して、後方車両CBに送信する情報(車内情報データベースT13)を生成する。
【0047】
図5(c)は、車内情報データベースT10から前方車両CFに送信する情報を抽出した車内情報データベースT12の一例であり、図5(d)は、車内情報データベースT10から後方車両CBに送信する情報を抽出した車内情報データベースT13の一例である。車両Cにおいて優先度の高い危険事象は、前方車両CF及び後方車両CBにおいても注意すべきである可能性が高いからである。情報生成部24は、車内情報データベースT12、T13の危険事象を、優先度の高い順に並べてもよい。
【0048】
車両Cの後方に検出された危険事象は、前方車両CFから見て車両Cの陰に隠れていたり、前方車両CFから遠く離れていたりするため、前方車両CFの後方カメラ12では撮影できない可能性が高い。同様に、車両Cの前方に検出された危険事象は、後方車両CBのカメラでは撮影できない可能性が高い。
【0049】
そこで、車両Cの後方に検出された危険事象を前方車両CFに送信したり、車両Cの前方に検出された危険事象を後方車両CBに送信したりすることで、自車両のカメラでは捕捉できない範囲の危険事象を取得できる。これにより、将来的に対峙しうる危険事象に対する認知の遅れや見逃しによる偶発的な事故を低減し、より安全に走行することができる。
【0050】
図2の説明に戻る。周辺情報送受信部30は、車両Cの近傍に存在する車両と情報を送受信する機能部である。送受信の具体的な態様は任意である。周辺情報送受信部30は、主として、周辺情報受信部31及び情報発信部32の各機能ブロックを有している。周辺情報受信部31は、前方又は後方を走行する前方車両CF及び後方車両CBから送信される危険事象に関する情報を受信して、情報解析部22に送信する機能部である。
【0051】
情報発信部32は、車両Cの前方で抽出された危険事象の情報(車内情報データベースT13に格納された情報)を後方車両CBに送信し、車両Cの後方で抽出された危険事象の情報(車内情報データベースT12に格納された情報)を前方車両CFに送信する機能部である。
【0052】
なお、情報発信部32から送信される情報には、車両Cの映像取得部10で取得される情報に基づく危険事象の他、前方車両CF及び後方車両CBにより抽出された危険事象も含まれている。すなわち、例えば、前方車両CFにより抽出された危険事象は、車両Cを介して後方車両CBに送信される。また、後方車両CBにより抽出された危険事象は、車両Cを介して前方車両CFに送信される。これにより、本発明に係る情報提供装置1を有する複数の車両間で危険事象の情報を共有させ、危険事象の情報を遠くまで伝達することができる。
【0053】
ドライバー向け情報提供部40は、車両Cの運転者に対する情報を提供する機能部である。ドライバー向け情報提供部40は、危険事象を優先度が高い順に報知する。ドライバー向け情報提供部40は、主として、情報表示部41及び音声発信部42の各機能ブロックを有している。
【0054】
情報表示部41は、車両Cに搭載される表示装置に有線又は無線で接続され、表示装置に情報を表示させる機能部である。情報表示部41は、危険事象を優先度の高い順に表示する。情報表示部41は、運転者に対する情報を一覧表示させ、優先度の高い情報ほど上部に表示してもよい。また、情報表示部41は、表示される情報を所定時間毎に切り替えて、表示装置に1個ずつ表示させる態様において、優先度の高い情報ほど先に表示してもよい。また、情報表示部41は、優先度の最も高い情報を他の情報とは異なる態様で表示させてもよく、例えば字体、字の大きさ、字の色、背景色等を他の情報とは異ならせて表示させてもよい。
【0055】
音声発信部42は、車両Cに搭載されるスピーカーに有線又は無線で接続され、スピーカーに情報を音声で通知させる機能部である。音声発信部42は、運転者に対する情報を、優先度の高い順に通知する。
【0056】
このように、ドライバー向け情報提供部40が危険事象を、優先度が高い順に報知することにより、運転者は注意が必要な事象を明確に把握することができる。
【0057】
図6は、車両Cに搭載される情報提供装置1が取得した危険事象を別の車両(前方車両CF及び後方車両CB)に送信する処理の流れを示すフローチャートである。情報提供装置1は、図6に示す処理を、一定時間おきに連続して行う。
【0058】
まず、映像解析部21は、前方カメラ11及び後方カメラ12で撮影した映像を取得する(ステップSP11)。次いで、映像解析部21は、映像から危険事象を抽出した上で、事象データベースT1と照合して当該危険事象の危険度を取得する(ステップSP12)。また、映像解析部21は、危険事象の方向、距離及び相対速度を解析して車内情報データベースT10に登録する(ステップSP12)。
【0059】
また、情報解析部22は、後方車両CBからの通知を受信した場合には(ステップSP21でYES)、当該受信した情報を車内情報データベースT10に登録する(ステップSP22)。なお、情報解析部22は、当該情報に含まれる危険事象までの距離に、車両Cと後方車両CBとの距離を加算して、車両Cと危険事象との距離を求め、この求められた距離を車内情報データベースT10に登録する。情報解析部22は、後方車両CBからの通知を受信しなかった場合には(ステップSP21でNO)、処理をステップSP13に進める。
【0060】
さらに、情報解析部22は、前方車両CFからの通知を受信した場合には(ステップSP31でYES)、当該情報を車内情報データベースT10に登録する(ステップSP32)。なお、情報解析部22は、当該情報に含まれる危険事象までの距離に、車両Cと前方車両CFとの距離を加算して、車両Cと危険事象との距離を求め、この求められた距離を車内情報データベースT10に登録する。情報解析部22は、前方車両CFからの通知を受信しなかった場合には(ステップSP31でNO)、処理をステップSP13に進める。
【0061】
次いで、優先度算出部23は、車内情報データベースT10に登録された各危険事象についての優先度を計算する(ステップSP13)。そして、優先度算出部23は、車内情報データベースT10の危険事象を優先度が大きい順に並び替えて、車内情報データベースT11を生成する(ステップSP13)。
【0062】
情報生成部24は、車内情報データベースT10において、危険事象の方向が「前方」とされているデータが存在するか否かを判断する(ステップSP14)。方向が「前方」のデータが有る場合(ステップSP14でYES)には、情報発信部32は、当該データを後方車両CBに送信する(ステップSP23)。なお、ステップSP23において方向が「前方」のデータが複数ある場合には、情報発信部32は優先度の高いものから順に送信してもよい。また、情報発信部32は当該複数のデータを全て同時に送信してもよい。次いで、情報提供装置1は処理をステップSP15に進める。なお、ステップSP14においてデータが存在しない場合(ステップSP14でNO)にも、情報提供装置1は処理をステップSP15に進める。
【0063】
情報生成部24は、車内情報データベースT10において、危険事象の方向が「後方」とされているデータが存在するか否かを判断する(ステップSP15)。方向が「後方」のデータが有る場合(ステップSP15でYES)には、情報発信部32は、当該データを前方車両CFに送信する(ステップSP33)。なお、ステップSP33において方向が「後方」のデータが複数ある場合には、情報発信部32は優先度の高いものから順に送信してもよい。また、情報発信部32は当該複数のデータを全て同時に送信してもよい。次いで、情報提供装置1は処理をステップSP16に進める。なお、ステップSP15においてデータが存在しない場合にも、情報提供装置1は処理をステップSP16に進める。
【0064】
次いで、ドライバー向け情報提供部40は、車内に対して警告を発報する(ステップSP16)。これにより、図6に示す一連の処理を終了する。
【0065】
本実施の形態によれば、危険事象を運転者に適切に認知させ、車両を安全に走行させることができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、優先度算出部23は、各危険事象についての優先度を計算し、車内情報データベースT10の危険事象を優先度が大きい順に並び替えて、車内情報データベースT11を生成したが、優先度算出部23は必須ではない。ただし、優先度算出部23を有することで、より適切な情報提供が可能となる。
【0067】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 :情報提供装置
10 :映像取得部
11 :前方カメラ
12 :後方カメラ
20 :情報処理部
21 :映像解析部
22 :情報解析部
23 :優先度算出部
24 :情報生成部
25 :記憶部
30 :周辺情報送受信部
31 :周辺情報受信部
32 :情報発信部
40 :情報提供部
41 :情報表示部
42 :音声発信部
50 :制御装置
52 :通信装置
54 :記憶装置
56 :CPU
58 :メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6