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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240529BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H01L23/12 J
H01L23/14 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021062494
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022157944
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100167232
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 みな
(72)【発明者】
【氏名】大日方 賢二
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-266172(JP,A)
【文献】特開2018-032608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0062059(US,A1)
【文献】特開2020-191410(JP,A)
【文献】特開2007-116078(JP,A)
【文献】特開2008-130946(JP,A)
【文献】特開2020-194933(JP,A)
【文献】特開2007-311510(JP,A)
【文献】特開2017-098526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなり、貫通孔を有する枠状に形成された基板本体と、
金属材料からなり、自身の上面を素子搭載面とし、前記素子搭載面が前記貫通孔に配置される放熱部材とを有し、
前記基板本体に設けられた下側を向く裏面と、前記放熱部材に設けられた上側を向く表面とが接合剤によって接合されている
半導体パッケージであって、
前記基板本体は、前記裏面から前記放熱部材の前記表面へと下側に突出する第1段差部を有し、
前記放熱部材は、前記表面から前記基板本体の前記裏面へと上側に突出する第2段差部を有し、
前記接合剤は、前記裏面と前記第1段差部と前記表面と前記第2段差部とによって囲まれた空間に配置されていることを特徴とする
半導体パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体パッケージであって、
前記基板本体の内側側面と、前記内側側面に対向する前記放熱部材の側面とは、離間していることを特徴とする
半導体パッケージ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体パッケージであって、
前記接合剤は、ろう材であることを特徴とする
半導体パッケージ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の半導体パッケージであって、
前記基板本体はアルミナであり、
前記放熱部材は銅であることを特徴とする
半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁材料によって枠状に形成された基板本体と、金属材料からなり、基板本体に重ねて配置されて半導体を支持する放熱部材と、を備える半導体パッケージが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような半導体パッケージでは、一般に、ろう材や接着剤等の接合剤を用いて、基板本体と放熱部材とが接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-311510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ろう材や接着剤等の接合剤を用いて基板本体と放熱部材とを接合する場合には、接合時に溶融した接合剤が、基板本体と放熱部材との接合面に広がって、半導体パッケージの表面や裏面に漏れ出す可能性があった。接合剤が半導体パッケージの表面や裏面に漏れ出して、例えば、半導体の実装エリアや、半導体パッケージをマザーボードに実装するための接続箇所の近傍に接合剤が流れると、不都合を生じる可能性があるため、接合剤の漏れ出しを低減ないし抑える技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、絶縁材料からなり、貫通孔を有する枠状に形成された基板本体と、金属材料からなり、自身の上面を素子搭載面とし、前記素子搭載面が前記貫通孔に配置される放熱部材とを有し、前記基板本体に設けられた下側を向く裏面と、前記放熱部材に設けられた上側を向く表面とが接合剤によって接合されている半導体パッケージが提供される。この半導体パッケージにおいて、前記基板本体は、前記裏面から下側に突出する第1段差部を有し、前記放熱部材は、前記表面から上側に突出する第2段差部を有し、前記接合剤は、前記裏面と前記第1段差部と前記表面と前記第2段差部とによって囲まれた空間に配置されている。
この形態の半導体パッケージによれば、基板本体の裏面側に第1段差部を設けると共に、放熱部材の表面側に第2段差部を設け、基板本体の裏面と第1段差部と放熱部材の表面と第2段差部とによって囲まれた空間に接合剤を配置している。そのため、加熱により接合剤を溶融させたときには、接合剤が上記空間に広がることができ、溶融した接合剤が、基板本体と放熱部材とが接する面で広がることを抑えることができる。その結果、溶融した接合剤が、半導体パッケージの表面や裏面に漏れ出すことを抑えることができる。
(2)上記形態の半導体パッケージにおいて、前記基板本体の内側側面と、前記内側側面に対向する前記放熱部材の側面とは、離間していることとしてもよい。このような構成とすれば、接合剤による接合のための加熱時に、基板本体および放熱部材が膨張する際に、基板本体と放熱部材との側面同士が接触することを抑えることができる。その結果、基板本体と放熱部材との接触部に応力が発生することに起因する不都合を抑えることができる。
(3)上記形態の半導体パッケージにおいて、前記接合剤は、ろう材であることとしてもよい。このような構成とすれば、基板本体と放熱部材との接合に先だって、基板本体と放熱部材とを重ね合わせて、基板本体の裏面と第1段差部と放熱部材の表面と第2段差部とによって囲まれた空間に接合剤を配置する際に、第1段差部と第2段差部とによって接合剤を挟み込むことで、基板本体と放熱部材とを精度良く位置決めすることができる。
(4)上記形態の半導体パッケージにおいて、前記基板本体はアルミナであり、前記放熱部材は銅であることとしてもよい。このような構成とすれば、半導体パッケージの性能を確保しつつ、溶融した接合剤が、半導体パッケージの表面や裏面に漏れ出すことを抑える効果を高めることができる。
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、半導体パッケージの製造方法や、半導体パッケージを構成する部材間の位置決め方法などの形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の半導体パッケージの構成を模式的に表す断面図。
図2】第1実施形態の半導体パッケージの外観を模式的に表す平面図。
図3】基板本体の構成を模式的に表す断面図。
図4】放熱部材の構成を模式的に表す断面図。
図5】比較例の半導体パッケージの構成を模式的に表す断面図。
図6】第2実施形態の半導体パッケージの外観を模式的に表す平面図。
図7】第3実施形態の半導体パッケージの構成を模式的に表す断面図。
図8】第4実施形態の半導体パッケージの構成を模式的に表す断面図。
図9】第4実施形態の半導体パッケージの外観を模式的に表す底面図。
図10】第5実施形態の半導体パッケージの構成を模式的に表す断面図。
図11】第6実施形態の半導体パッケージの構成を模式的に表す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
(A-1)半導体パッケージの全体構成:
図1は、第1実施形態における半導体パッケージ10の構成を模式的に表す断面図である。また、図2は、半導体パッケージ10の外観を模式的に表す平面図である。図2には、図1の断面の位置を、I-I断面として示している。図1および図2には、方向を特定するために、互いに直交するXYZ軸を示している。各図に示されるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ同じ向きを表す。本願明細書においては、Z軸は鉛直方向を示し、X軸およびY軸は水平方向を示している。また、上記した鉛直方向および水平方向は、説明のために便宜的に特定したものであり、半導体パッケージ10の実装方向とは一致しなくてもよい。なお、図1および図2は、各部の配置を模式的に表しており、各部の寸法の比率を正確に表すものではない。
【0008】
半導体パッケージ10は、基板本体20と、放熱部材30と、接合剤40と、半導体50と、を備える。以下の説明では、XY平面に沿って広がる部材において、+Z方向(鉛直上方)側の面を「表面」とも呼び、-Z方向(鉛直下方)側の面を「裏面」とも呼ぶ。
【0009】
基板本体20は、絶縁材料からなり、上面視した中央部に貫通孔21を有する矩形の枠状に形成されている。具体的には、基板本体20は、例えば酸化アルミニウム(Al:アルミナ)窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化ベリリウム(BeO:ベリリア)ガラス等のセラミック材料や、樹脂材料を用いて形成することができる。セラミック材料は、耐熱性および強度に優れるため、基板本体20の材料として望ましく、上記したセラミック材料の中でも、アルミナは、比較的安価で入手が容易であるため望ましい。
【0010】
図3は、図1と同様の断面における基板本体20の構成を模式的に表す断面図である。基板本体20は、水平方向(XY平面に平行な方向)に広がると共に、上面視形状が矩形の枠状となっている3つの層である、基板第1層20a、基板第2層20b、および、基板第3層20cを、この順で-Z方向に積層した構造を有する。これら3つの層は、外周形状が同一形状で、上面視したときに各層の外周が一致するように積層されている。また、これら3つの層は、それぞれ、大きさが異なる貫通孔を中央部に有している。基板第1層20aの貫通孔が最も小さく、基板第3層20cの貫通孔が最も大きい。上記3つの層の貫通孔は、上面視したときの中心が一致しており、半導体パッケージ10を上面視したときの貫通孔21は、基板第1層20aの貫通孔に相当する。
【0011】
基板第1層20aは、XY平面に平行であって、基板本体20の表面を構成する基板表面22と、Z軸方向に平行な中央部側の内壁面である内周面23と、XY平面に平行であって、-Z方向側の裏面を構成する第1平面部24と、を有する。基板第2層20bは、Z軸方向に平行な中央部側の内壁面である段差部25と、XY平面に平行であって、-Z方向側の裏面を構成する第2平面部26と、を有する。基板第3層20cは、Z軸方向に平行な中央部側の内壁面である段差部27と、XY平面に平行であって、-Z方向側の裏面を構成する基板底面28と、を有する。内周面23と第1平面部24と段差部25と第2平面部26と段差部27とは、この順で接続して基板本体20の貫通孔21を形成する。段差部25は、基板本体20の裏面である第1平面部24から下側(-Z方向)に突出しており、「第1段差部」とも呼ぶ。
【0012】
放熱部材30は、金属材料からなり、上面視したときに矩形であり、+Z方向に突出する凸構造を有する板状部材である。図2では、放熱部材30の外周の位置を破線で示している。図1に示すように、放熱部材30の上面、すなわち、放熱部材30における最も+Z方向に高い面は、半導体50が載置される素子搭載面38となっている。素子搭載面38は、半導体パッケージ10を上面視したときに、基板本体20の貫通孔21に配置される。図2では、上面視したときに基板本体20の貫通孔21内に配置される素子搭載面38および半導体50は、図1の断面図と同様のハッチングを付して示している。放熱部材30は、例えば、銅、アルミニウム、金、銀などを含む金属を用いて形成することができる。放熱部材30における放熱性を高める観点から、放熱部材30は、熱伝導性が比較的高い銅およびアルミニウムの少なくとも一方を含むことが望ましく、銅により形成することが、より望ましい。
【0013】
図4は、図1と同様の断面における放熱部材30の構成を模式的に表す断面図である。放熱部材30は、水平方向(XY平面に平行な方向)に広がる3つの層である、放熱第1層30a、放熱第2層30b、および、放熱第3層30cを、この順で+Z方向に積層した構造を有する。これら3つの層は、上面視したときの中心が一致しており、放熱第1層30a、放熱第2層30b、放熱第3層30cの順で、外周形状が小さくなるように形成されている。
【0014】
放熱第1層30aは、放熱部材30の裏面である放熱部裏面32と、Z軸方向に平行な外側面33と、XY平面に平行であって、+Z方向側の表面を構成する第3平面部34と、を有する。放熱第2層30bは、Z軸方向に平行な外側面である段差部35と、XY平面に平行であって、+Z方向側の表面を構成する第4平面部36とを有する。放熱第3層30cは、Z軸方向に平行な外側面である段差部37と、XY平面に平行であって、+Z方向側の表面を構成する素子搭載面38と、を有する。段差部35は、放熱部材30の表面である第3平面部34から上側(+Z方向)に突出しており、「第2段差部」とも呼ぶ。
【0015】
接合剤40は、基板本体20の下側を向く裏面と、放熱部材30の上側を向く表面とを接合する。具体的には、接合剤40は、基板本体20の裏面である第1平面部24と、第1段差部(段差部25)と、放熱部材30の表面である第3平面部34と、第2段差部(段差部35)とによって囲まれた空間(以下では、「接合剤配置空間」とも呼ぶ)に配置されて、基板本体20と放熱部材30とを接合する。このとき、図1~4に示すように、基板本体20の第1段差部(段差部25)は、上面視したときに、放熱部材30の第3平面部34と重なっている。また、放熱部材30の第2段差部(段差部35)は、上面視したときに、基板本体20の第1平面部24と重なっている。図2では、接合剤40が配置される部位の外周および内周の位置を、一点鎖線で示している。接合剤40は、例えば、銀ろうとする他、金、銅、錫、アルミニウムなどを含むろう材や、はんだ材により構成することができる。本願明細書では、「ろう材」とは、溶融温度がより低いはんだ材を含むものとする。接合剤40は、基板本体20や放熱部材30の構成材料等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0016】
半導体50は、例えば、発光ダイオード(LED)などの発光部品や、ICチップなどの電子部品とすることができる。半導体50は、図示しない配線によって、半導体パッケージ10の外部の制御装置と電気的に接続される。本実施形態の半導体50は基板本体20の基板表面22より+Z方向側に突出しているが、必ずしも+Z方向に突出している必要はない。
【0017】
(A-2)半導体パッケージの製造方法:
半導体パッケージ10の製造方法の概略を、以下に説明する。まず、基板本体20と放熱部材30と接合剤40とを用意する。
【0018】
基板本体20を、セラミック材料を用いて作製する場合には、例えば、公知のシート積層法やプレス成形法を採用することができる。放熱部材30は、例えば、金属製の板状部材をプレス成型することにより作製することができる。接合剤40としては、上面視したときの外周および内周の形状が矩形である枠状の、板状に形成されたろう剤を用いている。接合剤40の外周は、基板本体20の第1段差部(段差部25)の内周とほぼ同じ大きさ、あるいは若干小さい大きさに形成されており、接合剤40の内周は、放熱部材30の第2段差部(段差部35)の外周とほぼ同じ大きさ、あるいは若干大きい大きさに形成されている。本実施形態の接合剤40は、基板本体20と放熱部材30とを接合すると共に、後述するように、基板本体20と放熱部材30との間の位置決めに寄与する。そのため、製造時の寸法精度等を考慮して、接合および位置決めの機能を実現可能となるように、接合剤40の大きさを適宜設定すればよい。
【0019】
半導体パッケージ10を製造する際には、基板本体20の裏面と放熱部材30の表面とを対向させて、基板本体20の裏面である第1平面部24と、第1段差部(段差部25)と、放熱部材30の表面である第3平面部34と、第2段差部(段差部35)と、によって囲まれた空間(接合剤配置空間)に、接合剤40を配置しつつ、基板本体20と放熱部材30とを重ね合わせる。このとき、基板本体20の段差部25を接合剤40の外周に当接させると共に、放熱部材30の段差部35を接合剤40の内周に当接させる、すなわち、段差部25および段差部35で接合剤40を挟み込むことにより、基板本体20と放熱部材30との間で位置決めが行われる。
【0020】
その後、加熱により、ろう材によって構成される接合剤40を溶融させて、基板本体20と放熱部材30とを接合する。加熱により溶融したろう材は、上記した接合剤配置空間内で広がって、基板本体20の第1平面部24(図3参照)と、放熱部材30の第3平面部34(図4参照)とを介して、基板本体20と放熱部材30とを接合する。その後、素子搭載面38上に、半導体50が実装される。
【0021】
以上のように構成された本実施形態の半導体パッケージ10によれば、基板本体20の裏面に第1段差部(段差部25)を設けると共に、放熱部材30の表面に第2段差部(段差部35)を設け、これらの段差部によって形成される接合剤配置空間内に接合剤40を配置して、基板本体20と放熱部材30とを接合している。そのため、加熱により接合剤40を溶融させたときには、接合剤40が接合剤配置空間内で広がることができる。このように、接合剤40が広がる空間を設けることにより、溶融した接合剤40が、基板本体20と放熱部材30とが接する面で広がることを抑えることができる。その結果、溶融した接合剤40が、半導体パッケージ10の表面や裏面に漏れ出すことを抑えることができる。具体的には、例えば、基板本体20の内周面23と放熱部材30の段差部37(図3および図4参照)との間の隙間を溶融した接合剤が這い上がって、半導体パッケージ10の表面に接合剤が漏れ出すことを抑えることできる。また、基板本体20の段差部27と放熱部材30の外側面33(図3および図4参照)との間を溶融した接合剤が伝い降りて、半導体パッケージ10の裏面に接合剤が漏れ出すことを抑えることできる。
【0022】
図5は、本実施形態の半導体パッケージ10とは異なり、第1段差部を有しない基板本体120と、第2段差部を有しない放熱部材130とを備える、比較例としての半導体パッケージ110の構成を、図1と同様にして模式的に表す断面図である。半導体パッケージ110では、基板本体120の-Z方向側の裏面の一部を構成する平面部124と、放熱部材30の+Z方向側の表面の一部を構成する平面部134とは、接合剤40を配置しなければ直接接触する形状となっている。このような場合には、平面部124と平面部134との間に配置した接合剤40は、溶融と共に、基板本体120と放熱部材130との接触面に沿って広がる。そのため、溶融した接合剤40が、半導体パッケージ110の表面や裏面に漏れ出す可能性がある。図5では、溶融した接合剤40が半導体パッケージ110の表面や裏面から漏れ出す様子を、白抜き矢印により示している。また、溶融した接合剤40が、半導体パッケージ110の表面や裏面に漏れ出さないようにするためには、基板本体120や放熱部材130や接合剤40において、高い加工精度が要求されて、採用し難い場合がある。これに対して、本実施形態の半導体パッケージ10では、溶融した接合剤40が広がる空間として、上記した接合剤配置空間が予め設けられているため、接合剤40が接合剤配置空間内に留まり易くなり、半導体パッケージ10の表面や裏面からの接合剤の漏れ出しを抑制することができる。
【0023】
なお、半導体パッケージ10において、素子搭載面38への半導体50の実装や、半導体パッケージ10のマザーボードへの実装を妨げない場所および程度であれば、半導体パッケージ10の表面や裏面からの接合剤の漏れ出しを許容することとしてもよい。このような場合であっても、接合剤配置空間に接合剤40を配置して、半導体パッケージ10の表面や裏面からの接合剤の漏れ出しを抑制することにより、漏れ出し量が過剰となることを抑えることができる。
【0024】
ここで、加熱を伴う接合の工程の後に、接合剤配置空間に配置される接合剤40は、接合剤配置空間全体を塞ぐ必要はなく、完成された半導体パッケージ10の接合剤配置空間内において、接合剤40によって満たされない空隙が形成されていてもよい。基板本体20と放熱部材30とが接合されるならば、接合剤配置空間全体の容積よりも小さい体積を有する接合剤40を用いてもよい。
【0025】
さらに、本実施形態の半導体パッケージ10では、溶融前の接合剤40は、溶融前の接合剤40を接合剤配置空間に配置したときに、基板本体20の第1段差部(段差部25)と放熱部材30の第2段差部(段差部35)とによって接合剤40が挟まれる形状に成形している。そのため、基板本体20と放熱部材30との間の位置決めの精度を高めることができる。図5に示したように、第1段差部および第2段差部を設けない場合には、基板本体120と放熱部材130との間に溶融前の接合剤40を配置したときに、接合剤40の側面が、基板本体120および放熱部材130に接触せず、接合剤40は、基板本体120と放熱部材130との間の位置決めに寄与することができない。図5では、基板本体120と放熱部材130とが、XY平面に平行な方向に位置ずれする様子を、両向き矢印により表している。これに対して、本実施形態の半導体パッケージ10では、第1段差部と第2段差部とが接合剤40を挟むことにより、位置決めに寄与することができる。なお、本実施形態では、基板本体20の第1段差部(段差部25)と放熱部材30の第2段差部(段差部35)とは、Z軸方向に平行な面としたが、異なる形状としてもよい。例えば、第1段差部と第2段差部とのうちの少なくとも一方をテーパ状にしてもよく、第1段差部と第2段差部とを接合剤40に当接させて、溶融前の接合剤40を挟むことにより、基板本体20と放熱部材30との間の位置決めが可能となればよい。
【0026】
また、本実施形態では、上記のように、溶融前の接合剤40によって、基板本体20と放熱部材30との間の位置決めを行うことができるため、XY平面に平行な方向の位置決めを行うための構造を、基板本体20や放熱部材30において不要にすることができる。そのため、基板本体20および放熱部材30の側面(Z軸方向と平行な面)を、互いに離間させることができる。すなわち、基板本体20の内側側面と、この内側側面に対向する放熱部材30の側面との間、具体的には、基板本体20の内周面23と放熱部材30の段差部37との間、および、基板本体20の段差部27と放熱部材30の外側面33との間を、離間させることができる。接合剤40による接合のための加熱時に、基板本体20および放熱部材30が膨張する際には、熱膨張率が比較的大きい金属製の放熱部材30の方が、基板本体20よりも膨張の程度が大きくなり、放熱部材30の外側面が、基板本体20の内側面に接近する。本実施形態では、上記のように基板本体20と放熱部材30とを離間させることにより、熱膨張時であっても、基板本体20と放熱部材30との側面同士が接触することを抑えることができる。その結果、例えば、基板本体20において放熱部材30との接触部に応力が発生して、基板本体20が損傷されることを抑えることができる。
【0027】
なお、基板本体20と放熱部材30とを接合するための加熱を伴う接合工程においては、基板本体20と放熱部材30との間の熱膨張率差により、基板本体20の第1段差部(段差部25)と放熱部材30の第2段差部(段差部35)との間の距離も短くなる。このとき、第1段差部と第2段差部との間には接合剤40が配置されているが、接合工程においては接合剤40は溶融状態であるため、基板本体20の第1段差部と放熱部材30の第2段差部とが近づくことに起因する応力の発生を、抑えることができる。
【0028】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態の半導体パッケージ210の外観を、図2と同様にして模式的に表す平面図である。第2実施形態の半導体パッケージ210において、第1実施形態の半導体パッケージ10と共通する部分には同じ参照番号を付す。図6にI-I断面として示す断面において、第2実施形態の半導体パッケージ210の形状は、図1に示す第1実施形態の半導体パッケージ10と同じになり、基板本体20および放熱部材30の断面形状も、図3の基板本体20および図4の放熱部材30と同じになる。
【0029】
図6に示すように、半導体パッケージ210では、半導体パッケージ210を上面視したときに、接合剤40の外周および内周の形状、基板本体20の貫通孔21を形成する内周面23の形状、放熱部材30に設けられた素子搭載面38の外周形状は、いずれも円形となっている。そして、図6には現れていないが、溶融前の接合剤40を挟む構造である、基板本体20の第1段差部である段差部25(図3参照)と、放熱部材30の第2段差部である段差部35(図4参照)との外周形状も、円形となっている。上記のように、接合剤40や接合剤配置空間の上面視における形状にかかわらず、第1段差部および第2段差部によって形成される接合剤配置空間内に接合剤40を配置することにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0030】
C.第3実施形態:
図7は、第3実施形態の半導体パッケージ310の構成を、図1と同様にして模式的に表す断面図である。第3実施形態の半導体パッケージ310において、第1実施形態の半導体パッケージ10と共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0031】
第3実施形態の半導体パッケージ310は、放熱部材30に代えて放熱部材330を備える点で、第1実施形態と異なっている。放熱部材330は、放熱第1層30aの外周部において、放熱部材330の外周方向に突出する凸部39を備える。凸部39は、基板本体20と放熱部材330とを重ね合わせたときに、基板本体20の内壁面である段差部27(図3参照)に当接する。図7では、基板本体20の内壁面に凸部39が当接する部位を、部位Cとして破線で囲んで示している。このように、放熱部材330に設けた凸部39によって、基板本体20と放熱部材330との間の位置決めを行うことができる。凸部39は、放熱部材330の放熱第1層30aの外周全体に設けてもよく、放熱第1層30aの外周の一部の1箇所、あるいは複数箇所に設けることとしてもよい。凸部39の数および形状は、既述した接合工程における加熱時に、基板本体20における凸部39との接触箇所に生じる応力の大きさが許容範囲内となるように、適宜設定すればよい。接合剤40による接合を行うための加熱時に、基板本体20における凸部39との接触箇所で生じる応力を低減する観点からは、凸部39は、放熱第1層30aの外周の一部において、位置決めに寄与する範囲で数を抑えて設けることが望ましい。例えば、凸部39は、放熱第1層30aの外周上の互いに離間した2~3箇所に設けることとすればよい。
【0032】
このような構成とすれば、接合剤配置空間内に接合剤40を配置することにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、放熱部材330に凸部39を設けることにより、位置決めの基準が増加するため、接合剤40のみにより位置決めする場合に比べて、基板本体20と放熱部材330との間の位置決め精度を、さらに高めることができる。
【0033】
図7に示す第3実施形態の半導体パッケージ310では、位置決めのための凸部39を、放熱部材330の放熱第1層30aの外周に設けたが、異なる構成としてもよい。例えば、放熱部材330の放熱第3層30cの外周に、基板本体20の内周面23(図3参照)に接する凸部を設けてもよい。あるいは、位置決めのための凸部を、基板本体20側に設けてもよい。例えば、基板本体20の内壁面である段差部27(図3参照)に、放熱部材30の外側面33(図4参照)に当接する凸部を設けてもよい。あるいは、基板本体20の内周面23(図3参照)に、放熱部材30の段差部37(図4参照)に当接する凸部を設けてもよい。このような構成としても、基板本体20と放熱部材30との間の位置決め精度を高める同様の効果が得られる。
【0034】
D.第4実施形態:
第1~第3実施形態では、基板本体と放熱部材とを接合する前に接合剤配置空間内に配置する接合剤40は、上面視が矩形や円形の枠状である板状部材としたが、異なる構成としてもよい。枠状とは異なる形状の接合剤を用いる構成の例を、第4実施形態として以下に説明する。
【0035】
図8は、第4実施形態の半導体パッケージ410の構成を、図1と同様にして模式的に表す断面図である。また、図9は、半導体パッケージ410が備える基板本体20を、裏面側から(+Z方向に)見た様子を表す底面図である。第4実施形態の半導体パッケージ410において、第1実施形態の半導体パッケージ10と共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0036】
第4実施形態の半導体パッケージ410は、第1実施形態の半導体パッケージ10の接合剤40に代えて、接合剤440を備えている。図8および図9は、加熱による溶融前の接合剤440を表す。図8および図9に示すように、基板本体20と放熱部材30とを接合する接合工程前の半導体パッケージ410は、複数の半球状の接合剤440を備える。複数の接合剤440は、図9に示すように、基板本体20の裏面の第1平面部24上において、第2平面部26との間に設けられた第1段差部(段差部25)に沿って設けられる。このような接合剤440は、例えば、基板本体20の裏面の第1平面部24を含む部位を金属でコートし、形成した金属コート層上に、例えばディスペンサを用いてドット状にろう材などの接合剤40の材料を塗布することにより、設けることができる。
【0037】
このような構成であっても、接合剤配置空間内に接合剤440を配置して基板本体20と放熱部材30とを接合することにより、第1実施形態と同様に、溶融した接合剤440が、半導体パッケージ410の表面や裏面に漏れ出すことを抑える同様の効果が得られる。また、溶融前の接合剤440を、基板本体20の第1段差部(段差部25)と、放熱部材30の第2段差部(段差部35)とによって挟む場合には、基板本体20と放熱部材30との間の位置決め精度を高めることができる。
【0038】
なお、接合剤配置空間内に複数の接合剤440を配置する際の、各接合剤440の形状は、上記した半球状の他、球状、直方体状、立方体状、円柱状など、任意に設定することができる。また、複数の接合剤440は、基板本体20の裏面に予め固定する他、放熱部材30の表面に予め固定してもよい。あるいは、複数の接合剤440は、基板本体20あるいは放熱部材30に予め固定することなく、半導体パッケージ410の組み立て時に、接合剤配置空間に対応する位置に配置することとしてもよい。
【0039】
E.第5実施形態:
図10は、第5実施形態の半導体パッケージ510の構成を、図1と同様にして模式的に表す断面図である。第5実施形態の半導体パッケージ510において、第1実施形態の半導体パッケージ10と共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0040】
第5実施形態の半導体パッケージ510は、第1実施形態の接合剤40に代えて接合剤540を備え、放熱部材30に代えて、第3実施形態と同様の放熱部材330を備える。図10の接合剤540は、接合工程における溶融前の状態を表している。図10に示すように、溶融前の接合剤540の断面積は、接合剤配置空間の断面積に比べて小さく、接合剤540は、接合剤配置空間内に配置したときに、基板本体20の第1段差部(段差部25)、および、放熱部材330の第2段差部(段差部35)と接触しない。第5実施形態では、基板本体20と放熱部材330との間の位置決めは、基板本体20の内壁面である段差部27に、放熱部材330の凸部39が当接することにより行われる。
【0041】
このように、接合剤540が、基板本体20と放熱部材330との位置決めに寄与しない場合であっても、接合剤540を接合剤配置空間内に配置することにより、第1実施形態と同様に、溶融した接合剤440が、半導体パッケージ510の表面や裏面に漏れ出すことを抑えることができる。なお、接合剤540が、基板本体20と放熱部材330との位置決めに寄与しない場合の、基板本体20と放熱部材330との間の位置決めのための構成は、図10に示したように放熱部材330に設けた凸部39を用いる構成の他、任意の構成を採用することができる。
【0042】
F.第6実施形態:
図11は、第6実施形態の半導体パッケージ610の構成を、図1と同様にして模式的に表す断面図である。第6実施形態の半導体パッケージ610において、第1実施形態の半導体パッケージ10と共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0043】
第6実施形態の半導体パッケージ610は、第1実施形態の放熱部材30に代えて、放熱部材630を備える。放熱部材630は、放熱第1層630aおよび放熱第2層630bによって構成される。放熱第1層630aおよび放熱第2層630bは、水平方向(XY平面に平行な方向)に広がる2つの層であり、放熱部材630において、この順で+Z方向に積層されている。放熱部材630では、素子搭載面38が形成された放熱第2層630bの外側面である段差部635が、接合剤配置空間を形成する第1段差部となる。
【0044】
このような構成であっても、基板本体20の第1段差部(段差部25)と放熱部材630の第2段差部(段差部635)との間に形成される接合剤配置空間に接合剤40が配置されることにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。放熱部材や基板本体が有する段差部の数にかかわらず、基板本体のいずれかの段差部である第1段差部と、放熱部材のいずれかの段差部である第2段差部との間に形成される接合剤配置空間に接合剤40を配置することで、同様の効果が得られる。
【0045】
G.他の実施形態:
上記した各実施形態では、接合剤は、ろう材により形成することとしたが、異なる構成としてもよく、例えば接着剤を用いてもよい。基板本体と放熱部材とを接合する接合工程に先立って、接合剤配置空間内に接合剤を配置するならば、半導体パッケージの表面や裏面からの接合剤の漏れ出しを抑制する同様の効果が得られる。このとき、溶融前の接合剤が、位置決めのための十分な剛性を有するならば、溶融前の接合剤に、基板本体の第1段差部と放熱部材の第2段差部とを当接させることにより、基板本体と放熱部材との位置合わせの精度を高めることができる。
【0046】
本開示は、上述の実施形態等に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10,110,210,310,410,510,610…半導体パッケージ
20,120…基板本体
20a…基板第1層
20b…基板第2層
20c…基板第3層
21…貫通孔
22…基板表面
23…内周面
24…第1平面部
25…段差部
26…第2平面部
27…段差部
28…基板底面
30,130,330,630…放熱部材
30a,630a…放熱第1層
30b,630b…放熱第2層
30c…放熱第3層
32…放熱部裏面
33…外側面
34…第3平面部
35,635…段差部
36…第4平面部
37…段差部
38…素子搭載面
39…凸部
40,440,540…接合剤
50…半導体
124,134…平面部
図1
図2
図3
図4
図5
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図11