(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240529BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240529BHJP
H01M 6/10 20060101ALI20240529BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20240529BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240529BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20240529BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240529BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240529BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20240529BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240529BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20240529BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20240529BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M6/10 Z
H01M6/16 D
H01M50/533
H01M50/538
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/06 A
H01M4/66 A
H01G11/74
H01G11/68
(21)【出願番号】P 2021192059
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 翔太
(72)【発明者】
【氏名】細川 尚士
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 智之
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141613(WO,A1)
【文献】特開2012-174411(JP,A)
【文献】特開2016-189247(JP,A)
【文献】特開2016-115422(JP,A)
【文献】国際公開第2021/192664(WO,A1)
【文献】特開2016-058264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/50-50/598
H01M 6/00- 6/22
H01M 4/00- 4/84
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極とが、セパレータを介して捲回された扁平状の捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容する電池ケースと、
を備えた電池であって、
前記捲回電極体は、前記第1電極および前記第2電極が、前記セパレータを介して複数積層された積層構造を有しており、
前記捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部からは、第1電極に接続された複数のタブが突出しており、
前記複数のタブのそれぞれが具備する根元幅の最大値は15mm以上であり、
前記積層構造の積層方向における両端の外面のうち一方側から数えて5層目までの前記第1電極を包含する領域を第1最外周近傍領域、前記両端の外面のうち他方側から数えて5層目までの前記第1電極を包含する領域を第2最外周近傍領域とし、
前記第1最外周近傍領域において、前記タブの枚数をA、前記第1電極の積層数をBとし、
前記第2最外周近傍領域において、前記タブの枚数をC、前記第1電極の積層数をDとしたとき、
A/BおよびC/Dのうち少なくともいずれか一方は1未満で
あり、
前記捲回電極体の捲回軸方向に沿って延び且つ前記捲回電極体の厚み方向に沿って延びる断面において、積層された前記タブの枚数が10枚以上である、電池。
【請求項2】
前記捲回電極体の捲回中心よりも一方側および前記捲回電極体の捲回中心よりも他方側の両方に、それぞれ前記複数のタブが存在する、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記A/Bは1未満であり、かつ、前記C/Dは1未満である、請求項1
または2に記載の電池。
【請求項4】
前記A/Bおよび前記C/Dのうち少なくともいずれか一方は3/5未満である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記捲回電極体の捲回中心よりも一方側に存在する前記複数のタブそれぞれの、前記一方の端部から前記タブの突出方向における先端に至るまでの最短距離の平均値は、前記捲回中心よりも他方側に存在する前記複数のタブそれぞれの、前記最短距離の平均値よりも小さい、請求項1~
4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記A/Bは1未満である、請求項
5に記載の電池。
【請求項7】
前記C/Dは1未満である、請求項
5または
6に記載の電池。
【請求項8】
第1電極と、第2電極とが、セパレータを介して捲回された扁平状の捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容する電池ケースと、
を備えた電池であって、
前記捲回電極体は、前記第1電極および前記第2電極が、前記セパレータを介して複数積層された積層構造を有しており、
前記捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部からは、第1電極に接続された複数のタブが突出しており、
前記複数のタブのそれぞれが具備する根元幅の最大値は15mm以上であり、
前記積層構造の積層方向における両端の外面のうち一方側から数えて5層目までの前記第1電極を包含する領域を第1最外周近傍領域、前記両端の外面のうち他方側から数えて5層目までの前記第1電極を包含する領域を第2最外周近傍領域とし、
前記第1最外周近傍領域において、前記タブの枚数をA、前記第1電極の積層数をBとし、
前記第2最外周近傍領域において、前記タブの枚数をC、前記第1電極の積層数をDとしたとき、
A/BおよびC/Dの両方が3/5未満である、電池。
【請求項9】
第1電極と、第2電極とが、セパレータを介して捲回された扁平状の捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容する電池ケースと、
を備えた電池であって、
前記捲回電極体は、前記第1電極および前記第2電極が、前記セパレータを介して複数積層された積層構造を有しており、
前記捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部からは、第1電極に接続された複数のタブが突出しており、
前記複数のタブのそれぞれが具備する根元幅の最大値は15mm以上であり、
前記積層構造の積層方向における両端の外面のうち一方側から数えて5層目までの前記第1電極を包含する領域を第1最外周近傍領域、前記両端の外面のうち他方側から数えて5層目までの前記第1電極を包含する領域を第2最外周近傍領域とし、
前記第1最外周近傍領域において、前記タブの枚数をA、前記第1電極の積層数をBとし、
前記第2最外周近傍領域において、前記タブの枚数をC、前記第1電極の積層数をDとしたとき、
A/BおよびC/Dはいずれも1未満であり、且つ、A/BとC/Dの値は同じである、電池。
【請求項10】
前記第1電極の幅は、150mm以上である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の電池。
【請求項11】
前記第1電極は正極であり、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の両面に形成された正極活物質層と、を含んでおり、
前記正極集電体はアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されており、
前記正極活物質層の密度は3.00g/cm
3以上である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、捲回電極体の長手方向の一方の端部に正極タブ群が設けられ、他方の端部に負極タブ群が設けられた電池が開示されている。そして、かかるタブ群を折り曲げた状態で電極集電部に接続する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような捲回電極体は、典型的には、長尺な集電体と、該集電体における長尺方向に沿った複数の箇所に形成されたタブとを備えた正極および負極(以下、あわせて「電極」ということもある)を、セパレータを介在させつつ捲き取り芯に捲き取った後、扁平状に成形することで作製される。捲き取り時の捲き取り芯の回転速度は一定である一方、捲回一周ごとに部材厚みは増大するため、該部材が捲回される時間当たりの長さは長くなる。即ち、捲回電極体の外周側は内周側と比較して相対的に高速で捲回されることになるため、該外周側におけるタブが捲き取り芯等に接触することで折れる可能性がある。これによって、捲回電極体の歩留まりが低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0005】
本発明の目的は、捲回電極体を備えた電池を生産性高く得るための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を実現するべく、本発明は、第1電極と、第2電極とが、セパレータを介して捲回された扁平状の捲回電極体と、上記捲回電極体を収容する電池ケースと、を備えた電池を提供する。上記捲回電極体は、上記第1電極および上記第2電極が、上記セパレータを介して複数積層された積層構造を有しており、上記捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部からは、第1電極に接続された複数のタブが突出しており、上記複数のタブのそれぞれが具備する根元幅の最大値は15mm以上であり、上記積層構造の積層方向における両端の外面のうち一方側から数えて5層目までの上記第1電極を包含する領域を第1最外周近傍領域、上記両端の外面のうち他方側から数えて5層目までの上記第1電極を包含する領域を第2最外周近傍領域とし、上記第1最外周近傍領域において、上記タブの枚数をA、上記第1電極の積層数をBとし、上記第2最外周近傍領域において、上記タブの枚数をC、上記第1電極の積層数をDとしたとき、A/BおよびC/Dのうち少なくともいずれか一方は1未満である。
このように、捲回電極体の外周側におけるタブを除くことによって、捲き取り時のタブ折れを好適に抑制することができる。これによって、捲回電極体を備えた電池を生産性高く得ることができる。
【0007】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記A/Bは1未満であり、かつ、上記C/Dは1未満である。かかる構成によると、捲き取り時のタブ折れをより好適に抑制することができる。また、いくつかの態様において、上記A/Bおよび上記C/Dのうち少なくともいずれか一方は3/5未満である。
【0008】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記捲回電極体の捲回中心よりも一方側に存在する上記複数のタブそれぞれの、上記一方の端部から上記タブの突出方向における先端に至るまでの最短距離の平均値は、上記捲回中心よりも他方側に存在する上記複数のタブそれぞれの、上記最短距離の平均値よりも小さい。かかる構成によると、捲回電極体が備える複数のタブを集箔した際に、タブの先端部分を好適に揃えることができるため、好ましい。
【0009】
かかる態様の一態様では、上記A/Bは1未満である。また、いくつかの態様において、上記C/Dは1未満である。
【0010】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記第1電極の幅は、150mm以上である。このように、長尺方向に直交する方向における幅が大きい第1電極によると、捲き取り時に反り等が生じ易く、これによって、捲回電極体の外周側のタブの折れが発生し易くなる。したがって、かかる構成はここで開示される技術を適用する対象として好適である。
【0011】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記第1電極は正極であり、上記正極は、正極集電体と、上記正極集電体の両面に形成された正極活物質層と、を含んでおり、上記正極集電体はアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されており、上記正極活物質層の密度は3.00g/cm3以上である。このように、正極活物質層の密度が大きい正極によると、捲き取り時に反り等が生じやすく、これによって、捲回電極体の外部側のタブの折れが発生し易くなる。したがって、かかる構成はここで開示される技術を適用する対象として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
【
図5】封口板に取り付けられた電極体群を模式的に示す斜視図である。
【
図6】正極第2集電部および負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図8】正極端子と負極端子と正極第1集電部と負極第1集電部と正極絶縁部材と負極絶縁部材とが取り付けられた封口板を模式的に示す斜視図である。
【
図10】一実施形態に係る捲回電極体の捲回前の態様を示す模式図である。
【
図11】一実施形態に係る捲回電極体の態様について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の説明は、ここで開示される技術を以下の実施形態に限定することを意図したものではない。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、Aを上回りBを下回る意を包含するものとする。
【0014】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0015】
<電池の構成の概要>
図1は、電池100の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向(捲回軸方向ともいう)、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。なお、以下では、ここで開示される技術を正極および負極に適用した場合について説明するが、ここで開示される技術は、正極のみに適用されていてもよいし、負極のみに適用されていてもよい。
【0016】
図2に示すように、電池100は、電池ケース10と、電極体(ここでは、電極体群20)と、を備えている。また、本実施形態に係る電池100は、電池ケース10と電極体群20の他に、正極端子30と、正極外部導電部材32と、負極端子40と、負極外部導電部材42と、外部絶縁部材92と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極内部絶縁部材70と、負極内部絶縁部材80と、を備えている。また、図示は省略するが、本実施形態に係る電池100は、さらに電解液を備えている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。電池100の内部抵抗は、例えば0.2~2.0mΩ程度であり得る。また、本実施形態では、電池100の体積当たりの容量を40Ah/L以上としている。
【0017】
電池ケース10は、電極体群20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、所定の強度を有する金属製であることが好ましい。具体的には、電池ケース10に使用される金属の引張強度は、50N/mm2~200N/mm2程度が適切である。また、電池ケース10に使用される金属の物性値(剛性率)は、20GPa~100GPa程度が好適である。この種の金属材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0018】
そして、電池ケース10は、外装体12と、封口板14と、ガス排出弁17を備えている。外装体12は、一つの面が開口部12hとなった扁平な角型の容器である。具体的には、外装体12は、
図1に示すように、略矩形状の底壁12aと、底壁12aの短辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第1側壁12bと、底壁12aの長辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第2側壁12cと、を備えている。そして、開口部12hは、上記一対の第1側壁12bと一対の第2側壁12cに囲まれた外装体12の上面に形成されている。封口板14は、外装体12の開口部12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、平面視において略矩形状の板材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。電池ケース10は、外装体12の開口部12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって形成される。封口板14の接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。
【0019】
図1および
図2に示すように、ガス排出弁17は、封口板14に形成されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になった際に開口して、電池ケース10内のガスを排出するように構成される。
【0020】
また、封口板14には、上記ガス排出弁17の他に、注液孔15と、2つの端子挿入穴18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12の内部空間と連通しており、電池100の製造工程において電解液を注液するために設けられた開口である。注液孔15は、封止部材16により封止されている。かかる封止部材16としては、例えば、ブラインドリベットが好適である。これによって、電池ケース10の内部で封止部材16を強固に固定できる。なお、注液孔15の直径は、2mm~5mm程度とすることができる。また、端子挿入穴18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子挿入穴18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。
図2に示すように、長辺方向Yの一方(左側)の端子挿入穴18には正極端子30が挿入される。また、長辺方向Yの他方(右側)の端子挿入穴19には負極端子40が挿入される。なお、端子挿入穴18、19の直径は、10mm~20mm程度とすることができる。
【0021】
図5は、封口板14に取り付けられた電極体群20を模式的に示す斜視図である。本実施形態では、複数個(ここでは3個)の電極体20a、20b、20cが電池ケース10の内部に収容される。なお、1つの電池ケース10の内部に収容される電極体20の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上(複数)であってもよい。
図2に示すように、各々の電極体の長辺方向Yの一方側(
図2の左側)には正極集電部50が配置され、長辺方向Yの他方(
図2の右側)には負極集電部60が配置される。そして、電極体20a、20b、20cの各々は、並列に接続されている。ただし、電極体20a、20b、20cは、直列に接続されていてもよい。電極体群20は、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29(
図3参照)に覆われた状態で電池ケース10の外装体12の内部に収容される。
【0022】
図6は、電極体20aを模式的に示す斜視図である。
図7は、電極体20aの構成を示す模式図である。なお、以下では電極体20aを例として詳しく説明するが、電極体20b、20cについても同様の構成とすることができる。
【0023】
図7に示すように、電極体20aは、正極22と負極24とセパレータ26とを有する。電極体20aは、ここでは、帯状の正極22と帯状の負極24とが2枚の帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回された捲回電極体である。即ち、電極体20aは、正極22および負極24が、セパレータ26を介して複数積層された積層構造28を有している(
図11を参照)。ここで、電極体20aの厚み(即ち、X方向における幅)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば5mm~40mm程度(好ましくは、10mm~30mm程度)とすることができる。また、電極体20aの捲回軸方向に直交する方向の幅は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば50mm~120mm程度(好ましくは、70mm~100mm程度)とすることができる。
【0024】
電極体20aは、扁平形状を有している。電極体20aは、捲回軸WLが長辺方向Yと略平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。具体的には、
図3に示すように、電極体20aは、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結し、外装体12の第2側壁12cに対向する平坦部20fとを有している。平坦部20fは、第2側壁12cに沿って延びている。
【0025】
正極22は、
図7に示すように、正極集電体22cと、当該正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0026】
ここで、正極集電体22cの長尺方向に直交する方向における幅(
図7のV)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば100mm以上とすることができる。なお、上記Vの値が150mm以上、200mm以上である場合、捲き取り時に反り等が生じ易く、これによって、捲回電極体の外周側のタブの折れが発生し易くなる。したがって、ここで開示される技術を適用する対象として好適である。また、正極集電体22cの厚みは、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば5μm以上であり、好ましくは8μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。正極集電体22cの厚みの上限は、例えば30μm以下であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下である。そして、正極活物質層22aの密度は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば2.00g/cm
3程度とすることができる。なお、かかる密度が2.95g/cm
3以上(例えば、2.98g/cm
3)、3.00g/cm
3以上である場合、捲き取り時に反り等が生じやすく、これによって、捲回電極体の外部側のタブの折れが発生し易くなる。したがって、ここで開示される技術を適用する対象として好適である。
【0027】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図7の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、帯状の正極22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の正極タブ22tは、捲回軸WLの軸方向の一方側(
図7の左側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。なお、正極タブ22tは、捲回軸WLの軸方向の他方(
図7で示すと右側)に設けられていてもよいし、捲回軸WLの軸方向の両側の各々に設けられていてもよい。正極タブ22tは、正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。ただし、正極タブ22tは、正極集電体22cとは別の部材であってもよい。正極タブ22tの少なくとも一部には、正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されずに、正極集電体22cが露出した領域が形成される。また、本実施形態においては、正極タブ22tの形状を台形状としているが、これに限定されず、正極タブの形状は矩形状等の種々の形状とすることができる。なお、複数の正極タブ22tの詳細に関しては、後述する。
【0028】
図4に示すように、複数の正極タブ22tは、捲回軸WLの軸方向の一方の端部(
図4の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成する。そして、複数の正極タブ22tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して電池100を小型化することができる。
図2に示すように、正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続される。具体的には、正極タブ群23と正極第2集電部52とは接続部Jにおいて接続される(
図4参照)。そして、正極第2集電部52は、正極第1集電部51を介して正極端子30と電気的に接続される。
【0029】
図7に示すように、正極活物質層22aは、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0030】
正極保護層22pは、
図7に示すように、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの捲回軸WLの軸方向の一方の端部(
図7の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、軸方向の両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0031】
負極24は、
図7に示すように、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。ここで、負極集電体24cの長尺方向に直交する方向における幅(
図7のW)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば100mm以上であり得る。なお、上記Wの値が150mm以上、200mm以上である場合、捲き取り時に反り等が生じ易く、これによって、捲回電極体の外周側のタブの折れが発生し易くなる。したがって、ここで開示される技術を適用する対象として好適である。
【0032】
負極集電体24cの捲回軸WLの軸方向の一方の端部(
図7の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、帯状の負極24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の負極タブ24tの各々は、軸方向の一方側(
図7の右側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。ただし、負極タブ24tは、軸方向の他方の端部(
図7の左端部)に設けられていてもよいし、軸方向の両端部の各々に設けられていてもよい。負極タブ24tは、負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。ただし、負極タブ24tは、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。負極タブ24tの少なくとも一部には、負極活物質層24aが形成されずに、負極集電体24cが露出した領域が設けられている。また、本実施形態においては、負極タブ24tの形状を台形状としているが、これに限定されず、負極タブの形状は矩形状等の種々の形状とすることができる。なお、複数の負極タブ24tのサイズ等の詳細に関しては、後述する。
【0033】
図4に示すように、複数の負極タブ24tは、軸方向の一方の端部(
図4の右端部)で積層されて負極タブ群25を構成する。負極タブ群25は、軸方向において、正極タブ群23と対称的な位置に設けられていることが好ましい。そして、複数の負極タブ24tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して、電池100を小型化することができる。
図2に示すように、負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。具体的には、負極タブ群25と負極第2集電部62とは接続部Jにおいて接続される(
図4参照)。そして、負極第2集電部62は、負極第1集電部61を介して負極端子40と電気的に接続される。
【0034】
図7に示すように、負極活物質層24aは、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0035】
続いて、本実施形態に係る電極体20aが備える複数の正極タブ22tおよび複数の負極タブ24tの詳細について説明する。ここで、
図10は、本実施形態に係る電極体20aの捲回前の態様を示す模式図である。
図11は、本実施形態に係る電極体20aの態様について説明するための模式図である。
図12Aおよび
図12Bは、
図11のXII-XII線に沿う模式的な断面図である。
図10および
図12Aに示すように、複数の正極タブ22tおよび負極タブ24tの突出方向における大きさは、湾曲させたときに外方側の端が揃うように相互に異ならせている。また、
図4に示すように、本実施形態では、第1領域Pおよび第2領域Qに存在する複数の正極タブ22tは、第1領域Pに偏在した位置に集箔されている。
【0036】
図12Aに示すように、本実施形態では、積層構造28の積層方向Xにおける両端の外面のうち一方側から数えて5層目までの正極22(負極24)を包含する領域を第1最外周近傍領域R、該両端の外面のうち他方側から数えて5層目までの正極22(負極24)を包含する領域を第2最外周近傍領域Sとしている。また、
図12Aに示すように、本実施形態では、第1最外周近傍領域Rを包含する、電極体20aの捲回中心Oよりも一方側を第1領域Pとしており、第2最外周近傍領域Sを包含する、電極体20aの捲回中心Oよりも他方側を第2領域Qとしている。本実施形態では、第1最外周近傍領域Rにおいて一部の正極タブ22t(
図12Aの22t
10に相当)および負極タブ24t(
図12Aの24t
10)を削除しており、第2最外周近傍領域Sにおいて一部の正極タブ22t(
図12Aの22t
10’、22t
9’に相当)および負極タブ24t(
図12Aの24t
10’、24t
9’に相当)を削除している。なお、
図12Aおよび
図12Bでは、削除した正極タブ22tおよび負極タブ24tを破線で示している。電極体20aの外周側におけるタブを除くことによって、捲き取り時のタブ折れを好適に抑制することができる。
【0037】
また、
図12Aに示すように、第1領域Pが備える正極タブ22tをそれぞれ22t
1,22t
2,・・・,22t
9としており、第2領域Qが備える正極タブ22tをそれぞれ22t
1’,22t
2’,・・・,22t
8’としている。また、
図12Bに示すように、正極タブ22t
1,22t
2,・・・,22t
9の、電極体20aの一方の端部21aから正極タブ22tの突出方向における先端に至るまでの最短距離(以下、単に「正極タブの最短距離」ともいう)をそれぞれ22h
1,22h
2,・・・,22h
9としており、正極タブ22t
1’,22t
2’,・・・,22t
8’の、電極体20aの一方の端部21aから正極タブ22tの突出方向における先端に至るまでの最短距離をそれぞれ22h
1’,22h
2’,・・・,22h
8’としている。負極タブ24tについても同様に、第1領域Pが備える負極タブ24tをそれぞれ24t
1,24t
2,・・・,24t
9としており、第2領域Qが備える正極タブ24tをそれぞれ24t
1’,24t
2’,・・・,24t
8’としている(
図12Aを参照)。そして、負極タブ24t
1,24t
2,・・・,24t
9の、電極体20aの他方の端部21bから負極タブ24tの突出方向における先端に至るまでの最短距離(以下、単に「負極タブの最短距離」ともいう)をそれぞれ24h
1,24h
2,・・・,24h
9としており、負極タブ24t
1’,24t
2’,・・・,24t
8’の、電極体20aの一方の端部21bから負極タブ24tの突出方向における先端に至るまでの最短距離をそれぞれ24h
1’,24h
2’,・・・,24h
8’としている(
図12Bを参照)。
【0038】
上述のとおり、本実施形態では、第1最外周近傍領域Rにおいて正極タブ22t
10および負極タブ24t
10を削除しており、第2最外周近傍領域Sにおいて正極タブ22t
10’、22t
9’および負極タブ24t
10’、24t
9’を削除している。即ち、第1最外周近傍領域Rにおいて、正極タブ22t(負極タブ24t)の枚数をA、正極22(負極24)の積層数をBとし、第2最外周近傍領域Sにおいて、正極タブ22t(負極タブ24t)の枚数をC、正極22(負極24)の積層数をDとしたとき、A/Bは4/5(即ち、1より小さい)であり、C/Dは3/5(即ち、1より小さい)である。ここで、上記正極の積層数とは、正極タブが形成されている層の数を示しており、正極タブが形成されているが正極活物質層や正極保護層が形成されていない層(例えば、
図10における第1層目を参照)も包含する概念である。負極の積層数についても同様である。なお、正極タブ22tの削除は、正極22の作製時に行ってもよいし、電極体を扁平状に成形した後に行ってもよい。ただし、電極体20aをより簡便に作製するという観点から、正極22の作製時に削除することが好ましい。正極タブ22tの削除は、例えばレーザーカット等によって実施することができる。負極タブ24tについても同様である。
【0039】
なお、上記では、A/Bを4/5、C/Dを3/5としているが、これに限定されない。上記A/Bは、例えば0であってもよく、電極体20aにおける電位ムラを均一化し易くするという観点から、好ましくは1/5以上、2/5以上とすることができる。また、上記A/Bは、4/5以下(例えば、4/5未満)、3/5以下(例えば、3/5未満)とすることができる。上記C/Dについても同様である。また、上記A/Bおよび上記C/Dの値は、同じとしてもよいし、異ならせてもよい。
【0040】
電極体20aが備える複数の正極タブ22tのそれぞれが具備する根元幅の最大値(本実施形態では、
図10の22Tに相当)および複数の負極タブ24tのそれぞれが具備する根元幅の最大値(本実施形態では、
図10の24Tに相当)は、15mm以上(好ましくは、20mm以上)である。上記根元幅の上限は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば40mm以下程度とすることができる。根元幅の大きなタブによると、破断等を好適に抑制することができるため、電極体の歩留まり率が低下することを好適に防止することができる。また、電極体20aが備える複数の正極タブ22tの枚数全体を100%としたとき、好ましくは50%以上、60%以上、より好ましくは70%以上、80%以上、さらに好ましくは90%以上(100%でもよい)の正極タブ22tの根元幅が15mm以上であることが好ましい。正極タブ22tの根元から突出方向における先端部分に至るまでの最短距離は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば5mm~50mm程度(好ましくは、10mm~30mm程度)とすることができる。負極タブ24tについても同様である。また、正極タブ22tおよび負極タブ24tの厚みは、例えば5μm~30μm程度とすることができる。
【0041】
また、
図12Bに示すように、本実施形態では、また、電極体20aの厚み方向Xにおける第2領域Qの外端から第1領域Pの外端にかけて、正極タブ22t(負極タブ24t)の最短距離が漸次減少するように短くなるように形成されている。ここで、これに限定されないが、第1領域Pおよび第2領域Qの、隣接する正極タブ22tどうしにおいて、第1領域P側に存在する正極タブ22tの最短距離に対する、第2領域Q側に存在する正極タブ22tの最短距離の比は、例えば1.1以上、1.2以上とすることができる。また、上記正極タブ22tの最短距離の比の上限は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば1.4以下、1.3以下とすることができる。負極タブ24tについても同様である。
【0042】
また、第1領域Pに存在する複数の正極タブ22tそれぞれの最短距離(22h1,22h2,・・・,22h9)の平均値は、第2領域Qに存在する複数の正極タブ22tそれぞれの最短距離(22h1’,22h2’,・・・,22h8’)の平均値よりも小さい。そして、第1領域Pに存在する複数の負極タブ24tそれぞれの最短距離(24h1,24h2,・・・,24h9)の平均値は、第2領域Qに存在する複数の負極タブ24tそれぞれの最短距離(24h1’,24h2’,・・・,24h8’)の平均値よりも小さい。
【0043】
なお、本実施形態では、電極体20aが備える正極タブ22tおよび負極タブ24tの枚数を17枚としているが、これに限定されない。電極体が備える正極タブの枚数は、例えば10枚以上であり、電極体の抵抗を好適に低減するという観点から、好ましくは15枚以上、20枚以上であり、より好ましくは30枚以上とすることができる。負極タブの枚数についても同様である。また、後述する第2実施形態および第3実施形態に関しても同様である。
【0044】
セパレータ26は、
図7に示すように、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが好適である。セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に設けられ、無機フィラーを含む耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有していてもよい。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等を使用し得る。
【0045】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体群20と一体化されていてもよい。
【0046】
正極端子30は、
図2に示すように、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(
図2の左端部)に形成された端子挿入穴18に挿入されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。一方、負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(
図2の右端部)に形成された端子挿入穴19に挿入されている。なお、負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。これらの電極端子(正極端子30、負極端子40)は、ここでは、電池ケース10の同じ面(具体的には封口板14)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子30および負極端子40は、電池ケース10の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。また、端子挿入穴18、19に挿入された電極端子(正極端子30、負極端子40)は、かしめ加工などによって封口板14に固定されていることが好ましい。
【0047】
上述した通り、正極端子30は、
図2に示すように、外装体12の内部で正極集電部50(正極第1集電部51、正極第2集電部52)を介して、各々の電極体の正極22(
図7参照)と電気的に接続される。正極端子30は、正極内部絶縁部材70およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70は、正極第1集電部51と封口板14との間に介在するベース部70aと、当該ベース部70aから電極体群20側に突出する突出部70bとを備えている。そして、端子挿入穴18を通じて電池ケース10の外部に露出した正極端子30は、封口板14の外部において正極外部導電部材32と接続される。一方、負極端子40は、
図2に示すように、外装体12の内部で負極集電部60(負極第1集電部61、負極第2集電部62)を介して、各々の電極体の負極24(
図7参照)と電気的に接続される。負極端子40は、負極内部絶縁部材80およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70と同様に、負極内部絶縁部材80も、負極第1集電部61と封口板14との間に介在するベース部80aと、当該ベース部80aから電極体群20側に突出する突出部80bとを備えている。そして、端子挿入穴19を通じて電池ケース10の外部に露出した負極端子40は、封口板14の外部において負極外部導電部材42と接続される。そして、上述した外部導電部材(正極外部導電部材32、負極外部導電部材42)と封口板14の外面14dとの間には、外部絶縁部材92が介在している。かかる外部絶縁部材92によって外部導電部材32、42と封口板14とを絶縁できる。
【0048】
また、上述した内部絶縁部材(正極内部絶縁部材70、負極内部絶縁部材80)の突出部70b、80bは、封口板14と電極体群20との間に配置される。かかる内部絶縁部材の突出部70b、80bによって、上方への電極体群20の移動が規制され、封口板14と電極体群20との接触を防止できる。
【0049】
<電池の製造方法>
電池100の製造方法は、上記したような電池ケース10(外装体12および封口板14)と、電極体群20(電極体20a、20b、20c)と、電解液と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50(正極第1集電部51および正極第2集電部52)と、負極集電部60(負極第1集電部61および負極第2集電部62)と、正極内部絶縁部材70および負極内部絶縁部材80と、を用意し、例えば、第1取付工程と、第2取付工程と、挿入工程と、封口工程と、を含む製造方法によって製造することができる。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
【0050】
第1取付工程では、
図8、
図9に示すような第1合体物を作製する。具体的にはまず、封口板14に、正極端子30と、正極第1集電部51と、正極内部絶縁部材70と、負極端子40と、負極第1集電部61と、負極内部絶縁部材80と、を取り付ける。
【0051】
正極端子30と正極第1集電部51と正極内部絶縁部材70とは、例えば、かしめ加工(リベッティング)によって封口板14に固定する。かしめ加工は、封口板14の外側の表面と正極端子30との間にガスケット90を挟み、さらに封口板14の内側の表面と正極第1集電部51との間に正極内部絶縁部材70を挟んで行われる。なお、ガスケット90の材質は、正極内部絶縁部材70と同様であってもよい。詳しくは、かしめ加工前の正極端子30を、封口板14の上方から、ガスケット90の貫通孔と、封口板14の端子挿入穴18と、正極内部絶縁部材70の貫通孔と、正極第1集電部51の貫通孔51hと、に順番に挿入して、封口板14の下方に突出させる。そして、上下方向Zに対して圧縮力が加わるように正極端子30の封口板14よりも下方に突出した部分をかしめる。これにより、正極端子30の先端部(
図2の下端部)に、かしめ部を形成する。
【0052】
このようなかしめ加工によって、ガスケット90と封口板14と正極内部絶縁部材70と正極第1集電部51とが封口板14に一体に固定されるとともに、端子挿入穴18がシールされる。なお、かしめ部は、正極第1集電部51に溶接接合されていてもよい。これにより、導通信頼性をさらに向上することができる。
【0053】
負極端子40と、負極第1集電部61と、負極内部絶縁部材80との固定は、上記した正極側と同様に行うことができる。すなわち、かしめ加工前の負極端子40を、封口板14の上方から、ガスケットの貫通孔と、封口板14の端子挿入穴19と、負極内部絶縁部材80の貫通孔と、負極第1集電部61の貫通孔61hと、に順番に挿入して、封口板14の下方に突出させる。そして、上下方向Zに対して圧縮力が加わるように負極端子40の封口板14よりも下方に突出した部分をかしめる。これにより、負極端子40の先端部(
図2の下端部)に、かしめ部を形成する。
【0054】
次に、封口板14の外側の表面に、外部絶縁部材92を介して、正極外部導電部材32と負極外部導電部材42とを取り付ける。なお、外部絶縁部材92の材質は、正極内部絶縁部材70と同様であってもよい。また、正極外部導電部材32と負極外部導電部材42とを取り付けるタイミングは、挿入工程の後(例えば注液孔15を封止した後)であってもよい。
【0055】
第2取付工程では、第1取付工程で作製した第1合体物を用いて、
図5に示すような第2合体物を作製する。すなわち、封口板14と一体化された電極体群20を作製する。なお、電極体20aは、上述したような複数の正極タブ22tを備えた正極22と、同じく上述したような複数の負極タブ24tを備えた負極24と、セパレータと、を用意し、従来公知の捲回電極体の製造方法に基づいて作製することができる。そして、
図6に示すように、正極第2集電部52および負極第2集電部62の付設された電極体20aを3つ用意し、電極体20a、20b、20cとして、短辺方向Xに並べて配置する。このとき、電極体20a、20b、20cは、いずれも、正極第2集電部52が長辺方向Yの一方側(
図5の左側)に配置され、負極第2集電部62が長辺方向Yの他方側(
図5の右側)に配置されるように、並列に並べてもよい。
【0056】
次に、
図4に示すように複数の正極タブ22tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された正極第1集電部51と、電極体20a、20b、20cの正極第2集電部52と、をそれぞれ接合する。また、複数の負極タブ24tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された負極第1集電部61と、電極体20a、20b、20cの負極第2集電部62と、をそれぞれ接合する。接合方法としては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接を用いることができる。特に、レーザ等の高エネルギー線の照射による溶接を用いることが好ましい。このような溶接加工によって、正極第2集電部52の凹部および負極第2集電部62の凹部に、それぞれ接合部を形成する。
【0057】
挿入工程では、第2取付工程で作製した第2合体物を外装体12の内部空間に収容する。具体的には、まず、例えば、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料からなる絶縁性の樹脂シートを、袋状または箱状に折り曲げて、電極体ホルダ29を用意する。次に、電極体ホルダ29に電極体群20を収容する。そして、電極体ホルダ29で覆われた電極体群20を、外装体12に挿入する。電極体群20の重量が重い場合、概ね1kg以上、例えば1.5kg以上、さらには2~3kgである場合は、外装体12の長側壁12bが重力方向と交差するように(外装体12を横向きに)配置して、電極体群20を外装体12に挿入するとよい。
【0058】
封口工程では、外装体12の開口部12hの縁部に封口板14を接合して、開口部12hを封止する。封口工程は、挿入工程と同時または挿入工程の後に行うことができる。封口工程では、外装体12と封口板14とが溶接接合されることが好ましい。外装体12と封口板14との溶接接合は、例えばレーザ溶接等で行うことができる。その後、注液孔15から電解液を注入し、注液孔15を封止部材16で塞ぐことによって、電池100を密閉する。以上のようにして、電池100を製造することができる。
【0059】
電池100は各種用途に利用可能であるが、使用時に振動や衝撃等の外力が加わり得る用途、例えば移動体(典型的には、乗用車、トラック等の車両)に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。電池100は、複数の電池100を所定の配列方向に複数個並べて、配列方向から拘束機構で荷重を加えてなる組電池としても好適に用いることができる。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0061】
例えば上記実施形態では、複数の正極タブ(複数の負極タブ)の最短距離を異ならせているが、これに限定されない。ここで開示される技術は、例えば複数の正極タブ(複数の負極タブ)の最短距離を略同一とした場合についても適用することができる。
【0062】
例えば
図13は、第2実施形態に係る
図12対応図である。
図13に示すように、第2実施形態では、第1最外周近傍領域Rにおいて正極タブ22t
10および負極タブ24t
10を削除している。かかる場合、上記A/Bは9/10=0.9となる。
【0063】
例えば
図14は、第3実施形態に係る
図12対応図である。
図14に示すように、第3実施形態では、第2最外周近傍領域Sにおいて正極タブ22t
10’および負極タブ24t
10’を削除している。かかる場合、上記C/Dは9/10=0.9となる。
即ち、上記第2実施形態および第3実施形態のように、上記A/Bおよび上記C/Dのうち少なくともいずれか一方が1よりも小さい態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0064】
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
15 注液孔
16 封止部材
17 ガス排出弁
18、19 端子挿入穴
20 電極体群
20a~20c 電極体
22 正極
24 負極
26 セパレータ
30 正極端子
32 正極外部導電部材
40 負極端子
42 負極外部導電部材
50 正極集電部
60 負極集電部
70 正極内部絶縁部材
80 負極内部絶縁部材
90 ガスケット
92 外部絶縁部材
100 電池