(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】車両サスペンションのための可変減衰油圧ショックアブソーバ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/46 20060101AFI20240529BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F16F9/46
F16F9/32 N
(21)【出願番号】P 2021504387
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 IB2019056386
(87)【国際公開番号】W WO2020021500
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】102018000007584
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】503336534
【氏名又は名称】マレッリ・サスペンション・システムズ・イタリー・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARELLI SUSPENSION SYSTEMS ITALY S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ピエロ・アントニオ・コンティ
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ・コット
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ディ・ヴィットーリオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルダーノ・グレコ
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144733(JP,A)
【文献】特開平11-030264(JP,A)
【文献】特開平06-330977(JP,A)
【文献】特開2014-122656(JP,A)
【文献】特開2002-070921(JP,A)
【文献】特開平04-054339(JP,A)
【文献】特開平10-318321(JP,A)
【文献】特開2011-169462(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216716(WO,A1)
【文献】米国特許第05586627(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102005053394(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第04007261(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の軸(x)に沿って延在する円筒形の本体(12)と前記本体(12)から部分的に突き出て、前記本体(12)に対して軸方向に移動可能なロッド(14)を備える、可変減衰油圧式のショックアブソーバであって、
前記本体(12)は、内側円筒管(16)と、減衰流体を含むリザーバ室(20)を包む外側円筒管(18)を備え、
前記ショックアブソーバ(10)は、さらに前記内側円筒管(16)に滑り可能に取り付けられ、前記ロッド(14)の下端に取り付けられ、前記内側円筒管(16)の内部容積を減衰流体で両方とも満たされる反発室(24)と圧縮室(26)に分けるピストン(22)と、
前記本体(12)は、さらに前記内側円筒管(16)の周りに配置され、前記内側円筒管(16)と共に中間室(38)を包む中間円筒管(36)であって、前記中間室(38)は、前記圧縮室(26)と永続的に流体連通する、中間円筒管(36)を備え、
前記ショックアブソーバ(10)は、さらに
、反発段階の間、前記反発室(24)と前記圧縮室(26)の間の減衰流体の流れを調節するために配置された第1の電子制御弁(40)と、圧縮段階の間、前記圧縮室(26)と前記リザーバ室(20)の間の減衰流体の流れを調節するために配置された第2の電子制御弁(42)と、を備え、
前記第2の電子制御弁(42)は、前記ショックアブソーバ(10)の前記本体(12)の外側に配置され、一方が前記リザーバ室(20)に、他方が前記中間室(38)に油圧で接続されて、前記圧縮段階の間、前記圧縮室(26)から前記中間室(38)を通って前記リザーバ室(20)へ減衰流体の流れを調節し、
前記第1の電子制御弁(40)は、前記長手方向の軸(x)に沿って並進するために前記ロッド(14)と駆動的に接続されるように、前記ショックアブソーバ(10)の前記本体(12)の内側、すなわち前記内側円筒管(16)の内側に配置され、一方が前記反発室(24)に、他方が前記圧縮室(26)に油圧で接続されて、前記反発段階の間、前記反発室(24)から前記圧縮室(26)へ減衰流体の流れを調節する、可変減衰油圧ショックアブソーバ。
【請求項2】
前記第1の電子制御弁(40)は、連続制御比例弁またはオン/オフ弁である、請求項1に記載のショックアブソーバ。
【請求項3】
前記第2の電子制御弁(42)は、連続制御比例弁またはオン/オフ弁である、請求項1または2に記載のショックアブソーバ。
【請求項4】
前記ピストン(22)は、一対の第1の逆止弁(28,30)、すなわち、前記減衰流体の流れを、前記圧縮室(26)から前記反発室(24)の方向のみ許容する補償弁(28)と、前記減衰流体の流れを前記反発室(24)から前記圧縮室(26)の方向のみ許容する反発弁(30)を備える第1の弁アセンブリが設けられ、
第2の弁アセンブリは、前記内側円筒管(16)の下部に取り付けられ、一対の第2の逆止弁(32,34)、すなわち、前記減衰流体の流れを、前記圧縮室(26)から前記リザーバ室(20)の方向のみ許容する圧縮弁(32)と、前記減衰流体の流れを、前記リザーバ室(20)から前記圧縮室(26)の方向のみ許容する吸
入弁(34)とを備え、
前記第1の逆止弁(28,30)及び前記第2の逆止弁(32,34)は、パッシブバルブである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のショックアブソーバ。
【請求項5】
前記吸
入弁(34)は、全反発段階の間、開いたままであるように構成され、それにより前記全反発段階の間、前記リザーバ室(20)から前記圧縮室(26)への減衰流体の流れは、前記第2の電子制御弁(42)を通るよりむしろ前記吸
入弁(34)を通ってのみ行われる、請求項4に記載のショックアブソーバ。
【請求項6】
前記補償弁(28)は、全圧縮段階の間、開いたままであるように構成され、それにより前記全圧縮段階の間、前記圧縮室(26)から前記反発室(24)へ減衰流体の流れは、前記第1の電子制御弁(40)を通るよりむしろ前記補償弁(28)を通ってのみ行われる、請求項4または5に記載のショックアブソーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1のプレアンブルに規定されるように、特に車両サスペンションに用いられる、可変減衰油圧ショックアブソーバに関する。
【背景技術】
【0002】
さらに具体的に、本発明は、その1つが圧縮段階の間のみ、ショックアブソーバの減衰流体(通常、油)の流れを調節するために配置され、他が反発(または拡張)段階の間のみ、減衰流体の流れを調節するために配置された例えば電磁弁として作られた一対の電子制御弁を備える、可変減衰油圧ショックアブソーバに関する。
【0003】
上記されたタイプのショックアブソーバは、例えば独国特許公開公報第DE10 2005 053 394A1号から知られている。
【0004】
この既知の解決法によると、ショックアブソーバは、外側円筒管と、外側円筒管と同軸で、外側円筒管と共にリザーバ室を画定する内側円筒管と、2つの円筒管と同軸に配置され、部分的にそこから突き出るロッドと、内側円筒管に滑り可能に取り付けられ、ロッドの下端に取り付けられるピストンと、を備える。ピストンは、内側円筒管の内部容積を、減衰流体を含む反発室及び圧縮室に分ける。ピストンは、一対の逆止弁、すなわち、ショックアブソーバの圧縮段階の間、減衰流体の流れを、圧縮室から反発室へ調節する補償弁と、ショックアブソーバの反発段階の間、減衰流体の流れを反発室から圧縮室へ調節する反発弁を備える第1の弁アセンブリが設けられる。第2の弁アセンブリは、内側円筒管の下部に取り付けられ、一対の逆止弁、すなわち、圧縮段階の間、減衰流体の流れを、圧縮室からリザーバ室へ調節する圧縮弁と、反発段階の間、減衰流体の流れを、リザーバ室から圧縮室へ調節する吸入弁とを備える。第1の弁アセンブリの逆止弁及び第2の弁アセンブリの逆止弁は、パッシブバルブとして作られる。
【0005】
この既知のショックアブソーバは、さらにそれぞれ反発段階の間及び圧縮段階の間、減衰流体の流れを調節するために配置された第1及び第2の電子制御弁を備える。さらに具体的に、第1の電子制御弁は、一方がリザーバ室と、他方が内側円筒管と、内側円筒管と外側円筒管の間に径方向に介在する第1の中間円筒管の間を画定する第1の中間室と接続され、当該第1の中間室は、永続的に反発室と流体連通する。第1の電子制御弁は、反発段階の間、減衰流体の流れを反発室から第1の中間室を通ってリザーバ室に調節し、このためその段階の間ショックアブソーバの減衰力を調節するために配置される。第2の電子制御弁は、一方がリザーバ室と、他方が内側円筒管と、内側円筒管と外側円筒管の間に径方向に介在する第2の中間円筒管の間を画定する第2の中間室と接続され、当該第2の中間室は、永続的に圧縮室と流体連通する。第2の電子制御弁は、圧縮段階の間、減衰流体の流れを圧縮室から第2の中間室を通ってリザーバ室へ調節し、このためその段階の間、ショックアブソーバの減衰力を調節するために配置される。
【0006】
この既知のショックアブソーバの両方の電子制御弁の弁体は、外側円筒管の外側に配置される。独国特許公開公報第DE10 2005 053 394A1号から知られるショックアブソーバは、1つの電子制御弁のみを有する可変減衰油圧ショックアブソーバより大きく、そのため特に利用可能な空間のかなり小さい車両上に取り付けることがさらに難しい。
【0007】
さらに、独国特許公開公報第DE10 2005 053 394A1号から知られるショックアブソーバは、第1の電子制御弁と共に並列で、油圧で第1の中間円筒管の下部に設置され、油の流れを圧縮段階の間、リザーバ室から第1の中間室を通って反発室への方向にのみ許容する逆止弁の存在によって特徴付けられる。逆止弁の存在は、当該弁は、標準設計、すなわちショックアブソーバの全ての他のパッシブバルブの設計のような設計を有さず、非標準環状形態であるので、ショックアブソーバの設計を非常に複雑にする。さらに、当該逆止弁は、その開放閉鎖動作の間、電波妨害を受ける。最終的に、当該逆止弁の存在は、大きな直径の第1の中間円筒管と、そのため大きな直径の外側円筒管を必要とし、1つの電子制御弁のみを有する可変減衰油圧ショックアブソーバに対してショックアブソーバの径方向の大きさの増加を引き起こす。
【0008】
他方において、1つのみの代わりに2つの電子制御弁の使用により、互いに無関係にショックアブソーバの反発段階と圧縮段階を制御することができ、特に圧縮段階の間、広い範囲の調節を提供し、またショックアブソーバの応答が、あらかじめ、すなわちそれぞれの段階(反発または圧縮)の開始前に、それぞれ電子制御弁を設定することが可能であるという利点によって非常に速いならば、車両の車輪の典型的な「高い」周波数(約15Hz)のよりよい制御を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許公開公報第DE10 2005 053 394A1号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、2つの電子制御弁の使用に関して上記利点を保持し、同時に標準形態を備える全てパッシブバルブに基づく構造を有しながら、従来技術より大きさが小さい可変減衰油圧ショックアブソーバを提供することである。
【0011】
この及び他の目的は、添付された独立請求項1に定義される特徴を有する可変減衰油圧ショックアブソーバの利点によって本発明によって完全に達成される。
【0012】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に規定され、その主題は、次の記載の不可欠な部分を形成するとして意図される。
【0013】
要するに、本発明は、それぞれ反発段階の間及び圧縮段階の間、減衰流体の流れを制御するように構成された第1及び第2の電子制御弁を備える油圧ショックアブソーバを提供する発想に基づき、第1の電子制御弁は、ショックアブソーバの本体の内側に配置され、特に、ピストンまたはロッドに取り付けられ、そのためピストン及びロッドアセンブリと共に並進するために駆動的に取り付けられる一方で、第2の電子制御弁は、ショックアブソーバの本体の外側に配置される。
【0014】
そのような形態によって、本発明による油圧ショックアブソーバは、圧縮及び反発段階の間、減衰流体の流れを制御するために2つの電子制御弁の使用に関連して従来技術の上記利点を保持し、2つの電子制御弁の1つのみがショックアブソーバの本体の外側に配置されるので、従来技術より大きさが小さい。
【0015】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付された図面を参照して非限定の例として完全に与えられ、次の詳細な説明からさらに明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による可変減衰油圧ショックアブソーバの構造を概略的に示す軸方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、特に車両サスペンションでの使用が意図される可変減衰油圧ショックアブソーバ(以後、単にショックアブソーバという)が一般的に10で示される。
【0018】
ショックアブソーバ10は、長手方向の軸xに沿って延在する円筒本体12(以後、単に本体という)と、本体12から(
図1を見る人の視点によると上に)部分的に突き出て、本体12に対して軸方向に(すなわち長手方向の軸xの方向に沿って)移動可能なロッド14と、を備える。
【0019】
本体12は、互いに同軸で配置され、その下部に減衰流体(典型的に油であり、そのため簡単にするため、以後油という)と残る上部にガスを含むリザーバ室20を包む、内側円筒管16と外側円筒管18を備える。当該リザーバ室の上部及び下部は、それぞれ20a及び20bで示される。
【0020】
ピストン22は、内側円筒管16に滑り可能に取り付けられ、ロッド14の下端に取り付けられる。ピストン22は、内側円筒管16の内部容積を両方とも油を含む反発室24及び圧縮室26に分けられる。
【0021】
ピストン22は、一対の逆止弁28及び30、すなわち、油の流れを圧縮室26から反発室24の方向にのみ許容する補償弁28と、油の流れを反発室24から圧縮室26の方向にのみ許容する反発弁30を備える、第1の弁アセンブリが設けられる。第2の弁アセンブリは、内側円筒管16の下部に取り付けられ、一対の逆止弁32及び34、すなわち油の流れを圧縮室26からリザーバ室20の方向にのみ許容する圧縮弁32と、油の流れをリザーバ室20から圧縮室26の方向にのみ許容する吸入弁34を備える。第1の弁アセンブリ逆止弁28及び30及び第2の弁アセンブリの逆止弁32及び34は、パッシブバルブとして作られる。
【0022】
さらに、中間円筒管36は、そこに同軸で内側円筒管16の周りに配置され、内側円筒管16と共に中間室38を包む。中間室38は、永続的に、圧縮室26と流体連通する。
【0023】
ショックアブソーバ10は、さらに以後、単にそれぞれ第1及び第2の電子弁と言う第1の電子制御弁40と第2の電子制御弁42を備える。
【0024】
第1の電子弁40は、好ましくは双方向電磁弁として作られ、基本的にそれ自体既知の方法で、弁体44、弁体44に対して移動可能な閉鎖部材46、弁のいずれかの方向を通る油の流れを調節するために閉鎖部材46の移動を制御するように配置されたソレノイド48を含む。ソレノイド48は、ロッド14(この目的のために中空ロッドとして作られる)を通って長手方向の軸xに沿って延在する電線49によって供給される。同様に、第2の電子弁42は、好ましくは双方向電磁弁として作られ、基本的にそれ自体既知の方法で、弁体50、弁体50に対して移動可能な閉鎖部材52、弁のいずれかの方向を通る油の流れを調節するために閉鎖部材52の移動を制御するように配置されたソレノイド54を含む。ソレノイド54は、電線55によって供給される。
【0025】
しかしながら、他の形態は、2つの電子弁40及び42において可能である。例えば、2つの電子弁は、パイロットバルブまたは2段バルブであってもよい。実際に、本発明は、特定のタイプの電子弁の使用に限定しないことが明確である。
【0026】
第1及び第2の電子弁40及び42は、両方とも連続制御比例弁または両方ともオン/オフ弁で作られてもよい。2つの弁の1つは、連続制御比例弁であり他の1つはオン/オフ弁であることも想定される。
【0027】
第1の電子弁40は、ショックアブソーバの本体12の内側に配置される。さらに具体的に、第1の電子弁40は、ロッド14及びピストン22によって形成されたアセンブリと共に、長手方向の軸xに沿って並進するために駆動的に接続されるように、内側円筒管16の内側に配置される。
図1に概略的に示される実施形態において、第1の電子弁40は、ロッド14に取り付けられるが、代わりにピストン22に取り付けられてもよい。
【0028】
第1の電子弁40は、ショックアブソーバの反発段階の間、ピストン22を通って延在するバイパス導管56に沿って、反発室24から圧縮室26へ油の流れを制御し、ピストン22に設けられた第1の弁アセンブリの逆止弁28及び30に並列に作動する。したがって、第1の電子弁40は、第1の方向で反発室24とその及びその第2の方向でバイパス導管56と接続される。
【0029】
代わりに、第2の電子弁42は、ショックアブソーバの本体12の外側に配置される。さらに具体的に、第2の電子弁42は、外側円筒管18の外側に配置される。
【0030】
第2の電子弁42は、ショックアブソーバの圧縮段階の間、圧縮室26から中間室38を通ってリザーバ室20に(特にその室の下部20aに)油の流れを制御し、内側円筒管16の下部に設けられた第2の弁アセンブリの逆止弁32及び34に並列に動作する。この目的を達成するために、第2の電子弁42は、その第1の方向で中間室38に(及びその室を通って圧縮室26に)、その第2の方向でリザーバ室20に接続される。
【0031】
上記されたショックアブソーバ10は、次のように動作する。
【0032】
ショックアブソーバの反発段階の間、反発室24から圧縮室26への油の流れは、互いに並列に動作する第1の電子弁40及び/または反発弁30を通って行われるが、補償弁28は閉じたままである。
【0033】
リザーバ室20から圧縮室26への油の流れは、第2の電子弁42及び/または吸入弁34を通って行われるが、圧縮弁32は閉じたままである。有利に、吸入弁34は、リザーバ室20と圧縮室26の間で実質的に圧力降下がゼロであることを決定するように非常に柔軟な設定であり、そのため全反発段階の間、実質的に開いたままである。したがって、リザーバ室20から圧縮室26への全油の流れは、吸入弁に並列に油圧に配置された第2の電子弁42を通るよりむしろ、吸入弁34を通る。したがって、第2の電子弁42は、ソレノイド54に加えられる電流命令の値に無関係に、反発段階の間、ショックアブソーバ10の動作に実質的にいかなる効果も有さない。
【0034】
適切に第1の電子弁40を操作することによって、反発室24から圧縮室26へ油の流れを調節し、それにより反発段階の間、ロッド14に働く減衰力を調節することが可能である。
【0035】
ショックアブソーバの圧縮段階の間、圧縮室26からリザーバ室20への油の流れは、互いに並列に動作する第2の電子弁42及び/または圧縮弁32を通って行われるが、吸入弁34は閉じたままである。
【0036】
圧縮室26から反発室24への油の流れは、第1の電子弁40及び/または補償弁28を通って行われるが、反発弁30は閉じたままである。有利に、補償弁28は、圧縮室26と反発室24の間で実質的に圧力降下がゼロであることを決定するように非常に柔軟な設定であり、そのため全圧縮段階の間、実質的に開いたままである。したがって、圧縮室26から反発室24への全油の流れは、補償弁に並列に油圧に配置された第1の電子弁40を通るよりむしろ、補償弁28を通る。したがって、第1の電子弁40は、ソレノイド48に加えられる電流命令の値に無関係に、圧縮段階の間、ショックアブソーバ10の動作に実質的にいかなる効果も有さない。
【0037】
適切に第2の電子弁42を操作することによって、圧縮室26から中間室38を通ってリザーバ室20へ油の流れを調節し、それにより圧縮段階の間、ロッド14に働く減衰力を調節することが可能である。
【0038】
電子弁40及び42は、圧縮段階の間、圧縮室26から反発室24に油を流して第1の電子弁40を通る必要がない一方で、反発段階の間、リザーバ室20から圧縮室26に油を流して第2の電子弁42を通る必要がないので、両方とも逆止弁として(特に、第1の電子弁40が関わる限りにおいて、反発室24から圧縮室26の方向のみ油の流れを許容する弁として、第2の電子弁42が関わる限りにおいて、圧縮室26からリザーバ室20の方向にのみ油の流れを許容する弁として)作られる。
【0039】
本発明による可変減衰油圧ショックアブソーバで得られる利点は、上記から明白である。
【0040】
まず第1に、本発明によるショックアブソーバは、2つの電子弁が設けられる事実によって、互いに無関係に反発段階と圧縮段階を制御することができる。実際に、2つの弁の1つ(この場合において、第1の電子弁40)は、反発段階を制御する一方で、他の弁(この場合において、第2の電子弁42)は、圧縮段階を制御する。特に、2つの電子弁を有することにより、車両の車輪の動作の典型的な高周波数(約15Hz)のよりよい制御ができる。ショックアブソーバの応答は、前もって、すなわちそれぞれの段階(反発または圧縮))の開始前に、2つの電子弁のそれぞれを設定することができるので、実際に非常に速い。
【0041】
さらに、本発明によるショックアブソーバは、2つの電子弁の1つのみがショックアブソーバの本体の外側に配置され、現在の形態において、圧縮段階の間、リザーバ室から反発室へ油の流れを許容するために環状逆止弁を用いる必要がないとすれば、上記で議論された従来技術より大きさが小さい。もちろんこれは上記で議論された従来技術によるショックアブソーバが、その大きな大きさにより用いることができない、利用空間が減されたことよって特徴付けられる用途でさえ、ショックアブソーバを用いることができる。
【0042】
上記従来技術を超える別の利点は、圧縮段階の間、リザーバ室から反発室へ油の流れを許容するために従来技術で用いられる環状逆止弁がここで必要とされないので、本発明は、標準形態に基づくパッシブバルブのみ必要とすることである。
【0043】
最後に、上記で議論された従来技術を超えるさらなる利点は、1つの電子弁のみがショックアブソーバの本体に取り付けられ、そのためばね下質量であり(他方で他の電子弁はロッドに取り付けられ、そのためばね上質量である)、ショックアブソーバは、上記で議論された既知のショックアブソーバに提供される2つの中間円筒管の代わりに1つの中間円筒管のみを備えるので、ばね下質量(すなわち、車両の車輪と共に動く質量)の減少である。知られているように、ばね下質量の減少は、車両の動的な動作を改善することができる。
【0044】
当然、変更しないままの本発明の原理、実施形態及び構成の詳細を、添付された特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、非限定の例として完全に本明細書に記載され描かれるそれらから広く変えることができる。