(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】被膜を生成する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240529BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20240529BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240529BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20240529BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/35
A61Q1/00
A61Q1/12
A61K8/81
(21)【出願番号】P 2021506728
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019044927
(87)【国際公開番号】W WO2020033266
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-14
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 明日香
(72)【発明者】
【氏名】浅見 信之
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078063(JP,A)
【文献】特開2015-000872(JP,A)
【文献】国際公開第2002/009653(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0034513(US,A1)
【文献】特開2013-181013(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104983721(CN,A)
【文献】特開2017-210487(JP,A)
【文献】特開2018-024681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚上に被膜を生成する方法であって、
A)以下の成分(a)及び以下の成分(b):
(a)
少なくともエタノールを含有する揮発性物質、並びに
(b)
ポリビニルブチラール樹脂、
を含む組成物Xを直接皮膚上に静電スプレーし、これによって、皮膚表面上に被膜を形成するステップと、
B)以下の成分(c)及び以下の成分(d):
(c) 5質量%以上10質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール、
を含み、
成分(c)が
1N以上の最大引張剪断荷重を有するアクリル酸接着性ポリマーであ
り、かつ
組成物Y中の成分(d)の成分(c)に対する質量比((d)/(c))が、0.1以上6以下である、
組成物X以外の組成物Yを皮膚に塗布するステップを、
この順序又は逆の順序で含む方法。
【請求項2】
成分(c)が、1種又は複数のアルキル(メタ)アクリレートをモノマー成分として使用したアクリルポリマーを基材ポリマーとするアクリル酸接着性ポリマーである、請求項1に記載の被膜を生成する方法。
【請求項3】
組成物Yが(e)油をさらに含む、請求項1
又は2に記載の被膜を生成する方法。
【請求項4】
組成物Y中の成分(e)の含有量が、1質量%以上20質量%以下である、請求項
3に記載の被膜を生成する方法。
【請求項5】
成分(e)の成分(c)に対する質量比((e)/(c))が、0.06以上4以下である、請求項
3又は
4に記載の被膜を生成する方法。
【請求項6】
組成物Yが水中油型エマルジョン組成物である、請求項
3~
5のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
【請求項7】
ステップB)が、静電スプレーデバイス以外のデバイスを使用することにより組成物Yを皮膚に塗布するステップである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
【請求項8】
ステップA)において静電スプレーにより形成された被膜が多孔質被膜である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
【請求項9】
ステップA)が、静電スプレーデバイスを使用して組成物Xを皮膚上に静電スプレーし、これによって、繊維堆積物で作製された被膜を形成するステップであり、静電スプレーデバイスが、組成物Xを収容するための容器、組成物Xを吐出するためのノズル、容器内に収容されている組成物Xをノズルに供給するための供給デバイス、及び電圧をノズルに加えるための電源を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
【請求項10】
組成物を直接皮膚上に静電スプレーすることによって皮膚表面上に被膜が形成される前又は後に、静電スプレーデバイス以外のデバイスを使用することにより皮膚に塗布することによって皮膚上に被膜を生成するために使用される組成物であって、
以下の成分(c)及び以下の成分(d):
(c) 5質量%以上10質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール
を含み、
成分(c)が
1N以上の最大引張剪断荷重を有するアクリル酸接着性ポリマーであ
り、かつ
組成物Y中の成分(d)の成分(c)に対する質量比((d)/(c))が、0.1以上6以下である、
皮膚に塗布するための組成物Y。
【請求項11】
静電スプレーに使用される組成物が、以下の成分(a)及び(b):
(a)
少なくともエタノールを含有する揮発性物質、及び
(b)
ポリビニルブチラール樹脂
を含む組成物Xである、請求項
10に記載の組成物Y。
【請求項12】
組成物を直接皮膚上に静電スプレーすることによって皮膚表面上に被膜が形成される前又は後に、静電スプレー以外のユニットを使用することにより組成物Yを皮膚に塗布することによって、皮膚上に被膜を生成するために使用される方法であって、
組成物Yが以下の成分(c)及び(d):
(c) 5質量%以上10質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール
を含み、
成分(c)が
1N以上の最大引張剪断荷重を有するアクリル酸接着性ポリマーであ
り、かつ
組成物Y中の成分(d)の成分(c)に対する質量比((d)/(c))が、0.1以上6以下である、
組成物Yを皮膚に塗布する方法。
【請求項13】
静電スプレーに使用される組成物が、以下の成分(a)及び(b):
(a)
少なくともエタノールを含有する揮発性物質、並びに
(b)
ポリビニルブチラール樹脂
を含む組成物Xである、請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電スプレーにより皮膚上に被膜を形成する方法が報告されてきた。例えば、特許文献1は、皮膚上に組成物を静電スプレーすることにより皮膚を処理する方法について記載している。この方法に使用される組成物は、液体絶縁性物質、導電性物質、顆粒状粉末状物質及び増粘剤を含有する。このような組成物と同様に、通常、顔料を含有する化粧品又はスキンケア組成物が使用される。具体的には、化粧ファンデーションは組成物として使用される。すなわち、特許文献1に記載されている発明は、美容目的のために化粧用ファンデーションを静電スプレーすることにより、皮膚をメイクアップすることを主に企図している。特許文献2は、化粧品のための静電スプレー装置に使用される使い捨てカートリッジを記載している。
【0003】
しかし、特許文献1及び2に記載されている方法に従い、静電スプレーにより皮膚上に被膜が形成される場合、皮膚と、静電スプレーにより形成される被膜との間の接着性が十分ではなく、被膜が摩擦などの外部の力により破損又は剥離することが判明した。ここで、本発明の出願人は、静電スプレーにより皮膚上に被膜が形成される前又は後に、水、ポリオール又は20℃で液体の油を含む液剤を塗布すると、静電スプレーで得られる被膜との接着性が改善されることを見出した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-104211号公報
【文献】特開2003-507165号公報
【文献】特開2017-78062号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、皮膚上に被膜を生成する方法であって、
A)以下の成分(a)及び以下の成分(b):
(a) 水、アルコール、及びケトンからなる群から選択される1種又は複数の揮発性物質、並びに
(b) 被膜形成性を有するポリマー、
を含む組成物Xを直接皮膚上に静電スプレーし、これによって、皮膚表面上に被膜を形成するステップと、
B)以下の成分(c)及び以下の成分(d):
(c) 5質量%以上20質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール、
を含む、組成物X以外の組成物Yを皮膚に塗布するステップを、
この順序又は逆の順序で含む方法を提供する。
【0006】
さらに、本発明は、組成物を直接皮膚上に静電スプレーすることによって皮膚表面上に被膜が形成される前又は後に、静電スプレー以外のユニットを使用することにより皮膚に塗布し、これによって、皮膚上に被膜を生成する、皮膚上に被膜を生成するための組成物であり、以下の成分(c)及び成分(d):
(c) 5質量%以上20質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール
を含む、皮膚表面に塗布するための組成物Yを提供する。
【0007】
さらに、本発明は、組成物Yを皮膚に塗布する方法であって、組成物を直接皮膚上に静電スプレーすることによって皮膚表面上に被膜が形成される前又は後に、静電スプレー以外のユニットを使用することにより組成物Yを皮膚に塗布することによって、皮膚上に被膜を生成するために使用される方法であり、組成物Yが、以下の成分(c)及び以下の成分(d):
(c) 5質量%以上20質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール
を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明において好適に使用される静電スプレー装置を示す概略図である。
【
図2】静電スプレー装置を使用して静電スプレー法を実施している状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
しかし、従来の方法で得た被膜は、皮膚との接着性には優れているが、動きが存在する皮膚部分に塗布された場合、動きについて行くことができず、これが、場合によっては衣服との接触により、皮膚への被膜の剥離を起こすことが明らかとなった。
【0010】
本発明者らは、皮膚上への静電スプレー前又は後に塗布される組成物を研究し、静電スプレーのために使用される組成物とは異なる接着性ポリマー及びポリオールを含む組成物の使用が、耐擦過性及び伸展性に優れた被膜の形成を可能にすることを見出した。
本発明で得た被膜は、優れた耐擦過性を有し、衣服などとの接触により簡単に剥離することはない。さらに、被膜は優れた伸展性を有し、皮膚の動きが存在する部分に形成された場合でも剥離しない。
【0011】
本発明の方法は、A)組成物Xを直接皮膚上に静電スプレーし、これによって、皮膚表面上に被膜を形成するステップ(ステップA)と、組成物Yを皮膚上に塗布するステップ(ステップB)とを含む。
ステップAにおいて被膜を形成する方法として、本発明は静電スプレー法を採用している。静電スプレー法とは、正又は負の高電圧を組成物にかけて組成物を帯電させ、帯電した組成物を標的に向けてスプレーする方法である。スプレーされた組成物は、クーロン反発力による微細化を繰返しながら、空間に拡散し、その過程で、又はスプレーされた組成物が標的に接着した後に、揮発性物質の役目を果たす溶媒が乾燥し、これによって、標的の表面上に被膜を形成する。
【0012】
本発明に使用される、上述の組成物X(以下、「スプレー組成物」ともいう)は、静電スプレー法が行われる環境では液体である。組成物Xは以下の成分(a)及び成分(b)を含む。
成分(a) 水、アルコール、及びケトンからなる群から選択される1種又は複数の揮発性物質
成分(b) 被膜形成性を有するポリマー
以下、各成分について説明する。
【0013】
成分(a)の揮発性物質は、その液体状態で揮発性を有する物質である。成分(a)は、電場に配置されたスプレー組成物が、完全に帯電した後、ノズル先端から皮膚に向けて放出される目的のためにスプレー組成物にブレンドされ、成分(a)が蒸発するにつれて、スプレー組成物の電荷密度が過剰となり、成分(a)がクーロン反発によりさらに微細化されると、成分(a)はさらに蒸発し、これによって最後に皮膚上に乾燥被膜を形成する。この目的のためには、20℃における揮発性物質の蒸気圧は、好ましくは0.01kPa以上106.66kPa以下、より好ましくは0.13kPa以上66.66kPa以下、更に好ましくは0.67kPa以上40.00kPa以下、更に好ましくは1.33kPa以上40.00kPa以下である。
【0014】
成分(a)の揮発性物質の中でも、アルコール、例えば、一価の鎖状脂肪族アルコール、一価の脂環式アルコール又は一価の芳香族アルコールを使用することができる。一価の脂肪族アルコールはC1~C6アルコールを含み、一価の脂環式アルコールはC4~C6環式アルコールを含み、一価の芳香族アルコールはベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコールを含む。その具体例として、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n-プロパノール及びn-ペンタノールが挙げられる。アルコールに関しては、これらのアルコールから選択される1種又は複数を使用することができる。
【0015】
成分(a)の揮発性物質の中でも、ケトンには、ジ-C1~C4アルキルケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンが含まれる。これらのケトンは単独又は2種以上の組合せで使用することができる。
【0016】
成分(a)の揮発性物質は、好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール及び水からなる群から選択される1種又は複数、より好ましくはエタノール及びブチルアルコールからなる群から選択される1種又は複数、更に好ましくは少なくともエタノールを含有する揮発性物質である。
【0017】
スプレー組成物中の成分(a)の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。また、含有量は好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、更に好ましくは94質量%以下である。スプレー組成物中の成分(a)の含有量は、好ましくは30質量%以上98質量%以下、より好ましくは55質量%以上96質量%以下、更に好ましくは60質量%以上94質量%以下である。この割合での成分(a)のスプレー組成物への組込みは、静電スプレー法が行われた場合、スプレー組成物の十分な揮発を可能にする。
エタノールは、成分(a)の揮発性物質の総量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。さらには、100質量%以下が好ましい。エタノールは、成分(a)の揮発性物質の総量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは65質量%以上100質量%以下、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0018】
成分(b)としての被膜形成性を有するポリマーは普通、成分(a)としての揮発性物質に溶解することができる物質である。本明細書で、溶解するとは、20℃で分散した状態であることを指し、この分散した状態は目視により均質な状態、好ましくは目視により透明又は半透明の状態である。
【0019】
被膜形成性を有するポリマーとして適切なポリマーは、成分(a)の揮発性物質の特性に従って使用される。具体的には、被膜形成性を有するポリマーは、大まかに水溶性ポリマーと水不溶性のポリマーとに分類される。本発明の記載において、「水溶性ポリマー」とは、1gのポリマーを1気圧、23℃の環境で秤量し、その後10gのイオン交換水に浸し、24時間経過後、浸したポリマーの0.5g以上が水に溶解しているという特性を有するポリマーを指す。他方、本発明の記載において、「水不溶性ポリマー」とは、1gのポリマーを1気圧、23℃の環境で秤量し、その後10gのイオン交換水に浸し、24時間経過後、浸したポリマーの0.5g以上が水に溶解していないという特性を有するポリマーを指す。
【0020】
被膜形成性を有する水溶性ポリマーの例として、ムコ多糖体、例えば、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ-γ-グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン及びケラト硫酸、天然ポリマー、例えば、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、オオバコ種子ガム、タマリン種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、ダイズ水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナム、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、並びに合成ポリマー、例えば、部分けん化ポリビニルアルコール(架橋剤と同時に使用しない場合)、低けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド及びポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。これら水溶性ポリマーは単独又は2種以上の組合せで使用することができる。これらの水溶性ポリマーの中でも、被膜生成の容易さという観点から、プルラン、及び合成ポリマー、例えば、部分けん化ポリビニルアルコール、低けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキシドを使用することが好ましい。ポリエチレンオキシドを水溶性ポリマーとして使用する場合、その数平均分子量は、好ましくは50,000以上3,000,000以下、より好ましくは100,000以上2,500,000以下である。
【0021】
他方では、被膜形成性を有する水不溶性ポリマーの例として、被膜形成後不溶化することができる完全けん化ポリビニルアルコール、架橋剤を同時に使用することにより被膜形成後架橋することができる部分けん化ポリビニルアルコール、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)-グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマーのオキサゾリン修飾シリコーンなど、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ゼイン(トウモロコシタンパク質の主成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、アクリル樹脂、例えば、ポリアクリロニトリル樹脂及びポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂並びにポリアミドイミド樹脂が挙げられる。これら水不溶性ポリマーは、単独又は2種以上の組合せで使用することができる。これら水不溶性ポリマーの中でも、被膜形成後不溶化することができる完全けん化ポリビニルアルコール、架橋剤を同時に使用することにより被膜形成後架橋することができる部分けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)-グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマーのオキサゾリン修飾シリコーンなど、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート及びゼインからなる群から選択される1種又は複数を使用することが好ましく、ポリブチラール樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種又は複数を使用することがより好ましい。
【0022】
スプレー組成物中の成分(b)の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上である。含有量は好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。スプレー組成物中の成分(b)の含有量は、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは4質量%以上45質量%以下、更に好ましくは6質量%以上40質量%以下である。スプレー組成物に成分(b)をこの割合でブレンドすることにより、繊維堆積物で構成され、むき出しの皮膚の表面を覆い隠し、耐擦過性及び伸展性に優れ、化粧持続性に優れた被膜を成功裏に形成することができる。
【0023】
スプレー組成物中の成分(a)と成分(b)との含有量の比((a)/(b))は、静電スプレー法が行われる際、成分(a)が十分に揮発され得るという観点から、好ましくは0.5以上40以下、より好ましくは1以上30以下、更に好ましくは1.3以上25以下である。
スプレー組成物中のエタノールと成分(b)の含有量の比(エタノール/(b))は、静電スプレー法が行われる際、エタノールが十分に揮発され得るという観点から、好ましくは0.5以上40以下、より好ましくは1以上30以下、更に好ましくは1.3以上25以下である。
【0024】
スプレー組成物は、グリコールを更に含むことができる。グリコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールが含まれる。静電スプレー法が行われる際、成分(a)を十分に揮発させる能力という観点から、グリコールは、スプレー組成物中に、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
さらに、水は、繊維成形性及び導電性という観点から、成分(a)の揮発性物質の総量に対して、好ましくは50質量%未満、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下であり、また、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上である。
【0025】
スプレー組成物は、粉末を更に含むことができる。粉末には、着色顔料、増量剤顔料、パール顔料及び有機粉末が含まれる。粉末は、皮膚表面にスベスベ感を与えるという観点から、スプレー組成物中に、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、更には実質的に粉末を含有しないことが好ましい。
【0026】
スプレー組成物は、上述の成分(a)及び成分(b)のみを含んでもよいし、又は成分(a)及び成分(b)に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分の例として、油、例えば、ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)ラウロイルグルタメート、界面活性剤、UV保護剤、香料、忌避剤、抗酸化剤、安定剤、防腐剤、制汗剤及び様々なビタミンが挙げられる。ここで、これら薬剤は、薬剤としてのこれらの元の用途に限定されず、目的に応じて他の用途に使用することができ、例えば、制汗剤は香料として使用することができる。代わりに、これらの薬剤は複数の目的を有する薬剤として使用することもできる、例えば、制汗剤はまた、香料としても機能することもできる。スプレー組成物が他の成分を含有する場合、他の成分の含有率は、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0027】
本発明の方法において、ステップBの前又は後に、スプレー組成物を静電スプレーすることによって、直接皮膚表面上に被膜が形成される。すなわち、本発明の方法において、ステップA及びステップBの順序は、ステップA→ステップBであっても、又はステップB→ステップAであってもよい。
【0028】
静電スプレー法を実行する場合、25℃における粘度が好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上、更に好ましくは50mPa・s以上であるスプレー組成物が使用される。25℃における粘度が好ましくは5,000mPa・s以下、より好ましくは2,000mPa・s以下、更に好ましくは1,500mPa・s以下であるスプレー組成物が使用される。25℃におけるスプレー組成物の粘度は、好ましくは1mPa・s以上5,000mPa・s以下、より好ましくは10mPa・s以上2,000mPa・s以下、更に好ましくは50mPa・s以上1,500mPa・s以下である。この範囲の粘度を有するスプレー組成物を使用することにより、静電スプレー法により繊維堆積物で構成される被膜、特に多孔質被膜を成功裏に形成することができる。多孔質被膜の形成は、皮膚のべたつき防止を改善するという観点から、被膜の皮膚への接着性を改善するという観点から、被膜を皮膚から剥がす際に、簡単にきれいに剥がすことができるという観点から、並びに他の観点から、有利である。スプレー組成物の粘度は、E型粘度計を使用して25℃で測定する。E型粘度計として、例えば、東京計器株式会社製のE型粘度計を使用することができる。ローターは、この場合、ローターNo.43を使用することができる。
【0029】
スプレー組成物は、静電スプレー法により直接ヒトの皮膚上にスプレーする。静電スプレー法は、静電スプレーステップ、すなわち、静電スプレー装置を使用することにより皮膚上にスプレー組成物を静電スプレーして、これによって被膜を形成するステップを含む。静電スプレー装置は、スプレー組成物を収容する容器、スプレー組成物を吐出するためのノズル、容器内に収容されているスプレー組成物をノズルに供給するための供給デバイス、及び電圧をノズルに加えるための電源を有する。
図1は、本発明で適切に使用されている静電スプレー装置の概要を示す概略図を示す。
図1に示されている静電スプレー装置10は低電圧電源11を有する。低電圧電源11は、数ボルトから数十ボルトの電圧を生成することができる電源である。静電スプレー装置10の運搬性を増強する目的のため、低電圧電源11は1つ又は複数の電池で構成されることが好ましい。低電圧電源11として電池を使用することは、電池は必要に応じて簡単に交換できるというような利点もある。電池の代わりに、ACアダプターなどを低電圧電源11として使用することもできる。
【0030】
静電スプレー装置10は高電圧電源12もまた有する。高電圧電源12は、低電圧電源11に連結しており、低電圧電源11で生成された電圧を高電圧に押し上げるための電子回路(図には示されていない)を有する。押し上げる電子回路は普通、変圧器、コンデンサー、半導体素子などで構成される。
【0031】
静電スプレー装置10は補助電気回路13を更に有する。補助電気回路13は、上述の低電圧電源11と高電圧電源12との間に介入し、低電圧電源11の電圧を調節して、高電圧電源12を安定的に作動させる機能を有する。補助電気回路13は、後に記載されているポンプ機構14を備えたモーターの回転数を制御する機能をさらに有する。モーターの回転数の制御は、後に記載のスプレー組成物容器15からポンプ機構14に供給されるスプレー組成物の量の制御をもたらす。スイッチSWは、補助電気回路13と低電圧電源11との間に組み込まれ、スイッチSWのオン/オフにより静電スプレー装置10が作動/停止できるように設計されている。
【0032】
静電スプレー装置10はノズル16を更に有する。ノズル16は、金属を含む様々な導電体、並びにプラスチック、ゴム及びセラミクスなどの非導電体で構成され、その先端からスプレー組成物を放出できる形状を有する。ノズル16では、スプレー組成物が流れる微細な空間がノズル16の縦方向に沿って形成されている。微細な空間のサイズは、直径100μm以上1,000μm以下が好ましい。ノズル16はパイプ17を介してポンプ機構14に通じている。パイプ17は、導電体であっても、非導電体であってもよい。ノズル16は、高電圧電源12に電気的に接続されている。よって、ノズル16は、これに高電圧を加えることができるように設計されている。この場合、ヒトの体がノズル16に直接接触した際にヒトの体に過剰な電流が流れるのを防止するために、ノズル16及び高電圧電源12は限流抵抗19を介して電気的に接続されている。
【0033】
パイプ17を介してノズル16に通じているポンプ機構14は、容器15内に収容されているスプレー組成物をノズル16に供給するための供給デバイスとして機能する。ポンプ機構14は、低電圧電源11から電力を受けることにより作動する。ポンプ機構14は、補助電気回路13の制御下で、既定量のスプレー組成物をノズル16に供給するよう構成されている。
【0034】
ポンプ機構14には、容器15が柔軟性のあるパイプ18を介して接続されている。スプレー組成物は容器15内に収容されている。容器15は交換可能なカートリッジ型形態を有することが好ましい。ポンプ機構14はギアポンプ型又はピストンポンプ型が好ましい。
【0035】
上記構成を有する静電スプレー装置10は、例えば、
図2に示されているように使用することができる。
図2は、片手で持てるサイズの手持ち式型静電スプレー装置10を示す。図に示されている静電スプレー装置10は、
図1に示されている状態図のすべての部材が円柱状の筺体20の中に収容されるよう設計されている。筺体20の縦方向の一末端10aに、ノズル(図には示されていない)が配置されている。ノズルは、被膜形成の標的としての皮膚側に突き出るように筺体20上に配置することによって、組成物のジェット式噴射の方向が筺体20の縦方向と一致するようになっている。被膜形成の標的に向けて筺体20の縦方向にノズル先端が突き出るようにノズルを配置することによって、スプレー組成物は筺体上に接着しにくくなり、被膜は安定的に形成され得る。
【0036】
被膜形成の標的としての皮膚がユーザー自身の皮膚である場合、静電スプレー装置10が作動すると、ユーザー、すなわち、自分の皮膚上に静電スプレーで被膜を形成する人は、装置10を手で持ち、装置10上に配置されたノズル(図には示されていない)を有する装置10の一末端10aを静電スプレーの標的部位の方向に向ける。
図2は、静電スプレー装置10の一末端10aが、ユーザーの前腕の内側に向けられた状態を例示している。この状態で、装置10のスイッチを入れて静電スプレー法を行う。電力が装置10に供給されて、ノズルと皮膚との間に電場が生じる。
図2に例示されている一実施形態では、高い正電圧がノズルに加わり、皮膚は陰極となる。電場がノズルと皮膚との間に生じると、ノズル先端上のスプレー組成物は静電誘導により減極され、スプレー組成物の前部分は円錐状の形状に拡散し、スプレー組成物の帯電した小滴は広がった円錐の前部分から電場に沿って皮膚に向けて空中に放出される。溶媒としての役目を果たす成分(a)は空中に放出された帯電したスプレー組成物から蒸発し、スプレー組成物の表面の電荷密度は過剰となり、これによって、スプレー組成物の微細化がクーロン撥水性により繰り返されると共に、スプレー組成物は空中に拡散して皮膚に到達するようになっている。この場合、スプレー組成物の粘度を適切に調節することにより、スプレーされたスプレー組成物は、小滴の状態で皮膚に到達させることができる。代わりに、空中への放出中、溶媒としての役目を果たす揮発性物質の成分(a)を組成物から揮発させることによって、被膜形成性を有する溶質としての役目を果たすポリマーの凝固を引き起こし、スプレー組成物を電位差により伸展的に変形させ、繊維を形成し、この繊維を皮膚表面上に堆積させることも可能となる。例えば、スプレー組成物の粘度を上昇させた場合、組成物は容易に皮膚表面上に繊維形態で堆積するようになる。よって、繊維堆積物で構成される被膜が皮膚表面上に形成される。繊維の堆積物で構成される被膜は、ノズルと皮膚間の距離、及びノズルに加わる電圧を調節することにより形成させることも可能である。
【0037】
静電スプレー法を実行している間、被膜形成の標的の役目を果たす皮膚とノズルとの間に高い電位差が生じる。しかし、インピーダンスは非常に高いので、ヒトの体に流れる電流は非常に微量である。本発明の発明者らは、静電スプレー法を実行している間にヒトの体に流れる電流が、例えば、日常生活で生じる静電気によりヒトの体に流れる電流よりも数桁低いことを確認した。
【0038】
静電スプレー法により繊維堆積物を形成する上で、繊維の厚さは、円相当径として、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上である。厚さは好ましくは3,000nm以下、より好ましくは2,000nm以下である。繊維の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により倍率10,000×で繊維を観察し、その2次元画像から欠陥(繊維の塊、繊維の交差部分、小滴)を除外した10の繊維を随意に選び、繊維の縦方向と直交する方向に線を描き、繊維直径を直接読み取ることにより測定することができる。
【0039】
上記繊維は、その生成の原理では、無限大の長さの連続繊維になるが、繊維は繊維の厚さの少なくとも100倍以上の長さを有することが好ましい。本発明の記載では、繊維の厚さの100倍以上の長さを有する繊維は「連続繊維」と定義される。静電スプレー法により生成される被膜は、連続繊維の堆積物で構成される多孔質不連続被膜であることが好ましい。このような形態の被膜は、凝集物として1枚のシートとして取り扱うことができるばかりでなく、非常に軟質であるという特徴を有し、剪断力下でもほとんど小片にはならず、体の動きに対する追随性に優れているという利点を有する。被膜はまた、皮膚から生じる汗の拡散性に優れているという利点も有する。被膜はさらに、簡単に剥離されるという利点も有する。対照的に、細孔を有さない連続被膜は簡単に剥離せず、汗の拡散性が非常に低いため、皮膚のべたつきを容易に引き起こす。
【0040】
繊維状になったスプレー組成物は、帯電した状態で皮膚に到達する。以載されたように皮膚もまた帯電しているので、繊維は静電気力で皮膚に密接に接着する。微細な不規則性、例えば、テクスチャーが皮膚表面に形成されるので、繊維は、不規則性によるアンカー効果と共同して皮膚表面により密接に接着する。静電スプレーがこうして完了したら、静電スプレー装置10の電源を切る。これによって、ノズルと皮膚との間の電場が消え、電荷は皮膚表面上で固定化する。結果的に被膜の接着性が更に生じる。
【0041】
上記記載は、被膜としての、繊維堆積物で構成される多孔質被膜に対するものであるが、被膜の形態はこれに限定されない。細孔を有さない連続被膜が形成されてもよいし、又は繊維堆積物以外の形態を有する多孔質被膜、例えば、連続被膜上に不規則に又は規則的に複数の貫通孔を形成することにより作製される多孔質被膜、すなわち、不連続被膜が形成されてもよい。上に記載されているように、スプレー組成物の粘度、ノズルと皮膚との間の距離、ノズルに加えられる電圧などを制御することにより、任意選択の形状を有する被膜を形成することができる。
【0042】
成功裏に被膜を形成するためには、ノズルと皮膚との間の距離は、ノズルに加わる電圧にもよるが、50mm以上150mm以下であることが好ましい。ノズルと皮膚との間の距離は、普通使用されている非接触型センサーなどにより測定することができる。
【0043】
静電スプレー法で形成される被膜が多孔質であるかどうかに関係なく、被膜の坪量は好ましくは0.1g/m2以上、より好ましくは1g/m2以上である。坪量は好ましくは30g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下である。被膜の坪量は、例えば、好ましくは0.1g/m2以上30g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上20g/m2以下である。こうして被膜の坪量を設定することにより、被膜の接着性を改善することができる。組成物を直接皮膚上に静電スプレーし、これによって被膜を形成する静電スプレーステップとは、静電スプレーを皮膚上で実行し、これによって、被膜を形成するステップを意味する。組成物を皮膚以外の場所に静電スプレーして、繊維で構成されるシートを形成し、このシートを皮膚に塗布するステップは上記静電スプレーステップとは異なる。
【0044】
次に、ステップBについて記載する。
ステップBは、成分(c)及び成分(d)からなる群を含む、組成物X(スプレー組成物)以外の組成物Yを皮膚に塗布するステップである。ステップBは、静電スプレーステップAの前又は後に行う。
(c) 5質量%以上20質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール
【0045】
ステップBは、静電スプレー以外のユニットを使用することにより組成物Yを皮膚に塗布するステップである。
【0046】
組成物Yに使用される(c)接着性ポリマーは、静電スプレーにより皮膚上に形成される被膜の耐擦過性及び伸展性に寄与する。接着性ポリマーとして、接着剤又は粘着剤として普通使用されている接着性ポリマーを使用することができる。接着性ポリマーの例として、ゴムベース接着性ポリマー、シリコーンベース接着性ポリマー、アクリル酸接着性ポリマー及びウレタンベース接着性ポリマーが挙げられ、これらから選択される1種又は複数を使用することができる。(c)接着性ポリマーとしてさらに、非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。(c)接着性ポリマーは成分(b)のポリマー以外のポリマーであることが好ましい。
【0047】
ゴムベース接着性ポリマーの例として、基材ポリマーとして、天然ゴム;合成ゴム、例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエン(SB)ゴム、スチレン-イソプレン(SI)ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)ゴム、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)ゴム、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEPS)ゴム、スチレン-エチレン-プロピレンブロックコポリマー(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン又はこれらの修飾物質などを使用して製造されるものが挙げられる。
これらゴムベース接着性ポリマーの中でも、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレンゴム及びシリコーンゴムからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。ゴムベース接着性ポリマーの市販の製品として、Yodosol GH41F(Akzo Nobel, N.V.製)が挙げられる。
【0048】
アクリル酸接着性ポリマーの例として、モノマー成分として、1種又は複数のアルキル(メタ)アクリレートを使用して生成されるアクリルポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)を基材ポリマーとして使用して製造されるアクリル酸接着剤が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートの具体例として、C1-20アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート及びエイコシルメタクリレートが挙げられる。
これらの基材ポリマーと一緒に使用される補助モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸及び酢酸ビニルが挙げられる。アクリルポリマーの市販の製品として、Amphomer 28-4910(Akzo Nobel N.V.製)、Yodosol GH256F(AkzoNobel N.V.製、粒子直径:20~40nm)、Yodosol GH800F(Akzo Nobel N.V.製)、Yodosol GH810F(Akzo Nobel N.V.製)、Daitosol 5000AD(大東化成工業株式会社製)及びDaitosol 5000SJ(大東化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0049】
シリコーンベース接着性ポリマーとして、例えば、基材ポリマーとして、オルガノポリシロキサンを含有するシリコーンゴム又はシリコーン樹脂を使用することにより生成されるシリコーンベース接着剤が好ましくは使用される。シリコーンベース接着剤を構成する基材ポリマーとして、シリコーンゴム又はシリコーン樹脂を架橋することにより生成される基材ポリマーを使用することができる。シリコーンゴムの例として、これらの構成単位としてジメチルシロキサンを含有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。オルガノポリシロキサンには、必要に応じて、官能基(例えば、ビニル基)が導入されてもよい。シリコーン樹脂の例として、R3SiO1/2構成単位、SiO2構成単位、RSiO3/2構成単位及びR2SiO構成単位からなる群から選択される少なくとも1つの構成単位をこれらの構成単位として含有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。シリコーンベース粘着性ポリマーは架橋剤を含有してもよい。架橋剤の例として、シロキサンベース架橋剤及び過酸化物ベース架橋剤が挙げられる。過酸化物ベース架橋剤として、任意選択の適切なものを使用することができる。過酸化物ベース架橋剤の例として、過酸化ベンゾイル、t-ブチルペルオキシベンゾエート及び過酸化ジクミルが挙げられる。シロキサンベース架橋剤の例としてポリオルガノハイドロジェンシロキサンが挙げられる。
【0050】
オルガノポリシロキサンとして、以下のポリ(N-アシルアルキレンイミン)修飾オルガノポリシロキサン(本明細書のこれより以下において、単に「修飾オルガノポリシロキサン」とも呼ばれる)を使用することができる。
【0051】
修飾オルガノポリシロキサンとは、以下の一般式(1):
【0052】
【0053】
〔式中、R1は水素原子、1~22個の炭素原子を有するアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示す。〕
で表される繰返し単位で構成されるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを、その主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの少なくとも2個のケイ素原子に、ヘテロ原子を含有するアルキレン基を介して結合することにより作製され、この修飾オルガノポリシロキサンにおいて、その主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(α)とポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(β)との質量比(α/β)は40/60以上98/2以下であり、その主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量は30,000以上100,000以下である。
【0054】
修飾オルガノポリシロキサンにおけるオルガノポリシロキサンセグメント(α)とポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(β)との質量比(α/β)は、被膜の摩擦抵抗を改善するという観点から、好ましくは40/60以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは65/35以上である。さらに、比は、繊維状形態で被膜を形成するという観点から、好ましくは98/2以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは82/18以下である。
【0055】
修飾オルガノポリシロキサンでは、少なくとも2つのポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが、オルガノポリシロキサンセグメントを構成する任意のケイ素原子に、ヘテロ原子を含有するアルキレン基を介して結合していてもよいが、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントは、両末端上のものを除く1個又は複数のケイ素原子に、上記アルキレン基を介して結合していることが好ましく、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントは、両末端上のものを除く2個以上のケイ素原子に、上記アルキレン基を介して結合していることがより好ましい。
【0056】
オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)との結合に介入するヘテロ原子を含有するアルキレン基は、1~3個の窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子を含有する2~20個の炭素原子を有するアルキレン基を含む。その具体例として以下が挙げられる。
【0057】
【0058】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを構成するN-アシルアルキレンイミン単位は、上記一般式(1)で表される。一般式(1)において、R1の1~22個の炭素原子を有するアルキル基の例として、1~22個の炭素原子を有する直鎖、分枝又は環式アルキル基が挙げられ、その具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基及びドコシル基が挙げられる。
【0059】
アラルキル基の例として、7~15個の炭素原子を有するアラルキル基が挙げられ、その具体例として、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基、ナフチルメチル基及びアントラセニルメチル基が挙げられる。
【0060】
アリール基の例として、6~14個の炭素原子を有するアリール基が挙げられ、その具体例として、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基及びフェナントリル基が挙げられる。
【0061】
本明細書で、本発明の記載において、質量比(α/β)とは、重クロロホルムに修飾オルガノポリシロキサン5質量%を溶解し、この溶液を核磁気共鳴(1H-NMR)分析にかけ、オルガノポリシロキサンセグメント中のアルキル基又はフェニル基の、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント中のメチレン基に対する積分比を決定することにより得られた値を指す。
【0062】
修飾オルガノポリシロキサンにおいて、隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間のオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)は、好ましくは1,300以上、より好ましくは1,500以上、更に好ましくは1,800以上であり、また、好ましくは32,000以下、より好ましくは10,000以下、更に好ましくは5,000以下である。
【0063】
本発明の記載において、「隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間のオルガノポリシロキサンセグメント」は、以下の式(2)で表されているとおり、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントとのオルガノポリシロキサンセグメントの結合点(結合点A)から、隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントとのオルガノポリシロキサンセグメントの結合点(結合点B)までの2点の間の破線で取り囲んだ部分であり、1つのR2SiO単位、1つのR6及び(y+1)個のR2
2SiO単位で構成されるセグメントを指す。さらに、「ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント」とは、上記R6に結合している-Z-R7を指す。
【0064】
【0065】
一般式(2)において、R2は各々独立して、1~22個の炭素原子を有するアルキル基又はフェニル基を表し、R6はヘテロ原子を含有するアルキレン基を表し、R7は重合開始剤の残基を表し、-Z-R7はポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを表し、yは正の数を表す。
【0066】
MWgは、上記一般式(2)において破線で取り囲まれた部分の分子量であるが、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント1モル当たりのオルガノポリシロキサンセグメントの質量(g/モル)と解釈することができ、原料化合物としての役目を果たすオルガノポリシロキサンの官能基の100%がポリ(N-アシルアルキレンイミン)で置換されている場合、MWgは修飾オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/モル)と一致する。
【0067】
原料化合物としての役目を果たすオルガノポリシロキサンの官能基当量(g/モル)がすでに公知の場合、MWgは、100%の官能基がポリ(N-アシルアルキレンイミン)で置換されているわけではない場合でも、以下の式で計算することができる。
【0068】
MWg=[オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)]/[置換率(%)/100(%)]
【0069】
さらに、オルガノポリシロキサンの官能基当量が公知ではない場合、MWgは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの含有率(Csi)及びポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)を使用することによって、以下の式で決定することができる。
【0070】
【0071】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)は、N-アシルアルキレンイミン単位の分子量及び重合度から計算することもできるし、後で記載されるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法で測定することもできるが、本発明では、GPC法により測定した数平均分子量を指す。修飾オルガノポリシロキサンのMWoxは、摩擦抵抗の優秀さという観点から、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、更に好ましくは700以上であり、また、好ましくは5,500以下、より好ましくは3,500以下、更に好ましくは3,000以下である。
【0072】
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)は、摩擦抵抗の優秀さという観点から、好ましくは7,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、また、好ましくは120,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは60,000以下である。主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントは原料化合物としての役目を果たすオルガノポリシロキサンの骨格と共通の骨格を有するため、MWsiは、原料化合物としての役目を果たすオルガノポリシロキサンの重量平均分子量とほぼ等しい。本明細書で、原料化合物としての役目を果たすオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、ポリスチレンとして、以下の条件下、GPCで測定する。
【0073】
カラム:Super HZ4000+Super HZ2000(東ソー株式会社製)
溶出液:1mM トリメチルアミン/THF
流量:0.35mL/分
カラム温度:40℃
検出器:UV
試料:50μL
【0074】
修飾オルガノポリシロキサンの重量平均分子量(MWt)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは12,000以上、更に好ましくは24,000以上であり、また、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、更に好ましくは120,000以下、更に好ましくは92,000以下、更に好ましくは80,000以下である。よって、十分な被膜強度を有し、摩擦抵抗に優れた被膜が作製される。本発明の記載において、MWtは、原料化合物としての役目を果たす修飾オルガノポリシロキサンの重量平均分子量及び上述の質量比(α/β)から決定することができる。
【0075】
修飾オルガノポリシロキサンは、例えば、JP-A-2009-024114及びWO2011/062210で開示された方法を含む周知の生成方法により生成することができる。
【0076】
ウレタンベース粘着性ポリマーとして、ポリオールをポリイソシアネート化合物と反応させることにより得られるウレタン樹脂で構成されるものが挙げられる。ポリオールの例として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。ポリイソシアネート化合物の例として、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。ウレタンベース接着性ポリマーの市販の製品として、Baycusan C1004(Covestro AG製)が挙げられる。
【0077】
非イオン性ポリマーは特に限定されないが、化粧品分野で普通使用されているものである限り、そのいずれも使用することができる。1種又は複数の非イオン性ポリマーが上記組成物Yに含有されていてもよく、アニオン性、カチオン性及び/又は両性ポリマーのうちの1種又は複数が非イオン性ポリマーと組み合わせて含有されていてもよい。
【0078】
非イオン性ポリマーの例として、(メタ)アクリル酸の水溶性非イオン性ポリマー、(メタ)アクリル酸の水不溶性非イオン性ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、低けん化ポリビニルアルコール(けん化度:60モル%以下)、中性多糖及びその誘導体(そのエーテル、エステルなど)、及びポリエーテルが挙げられる。中性糖類及びその誘導体として、中性ガム(グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーなど)、セルロースエーテル(ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びその疎水化誘導体(HM-EHECなど)、並びにデンプン及びその誘導体(デキストリンなど)が挙げられる。ポリエーテルとして、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0079】
本明細書のこれより以下において、上述の非イオン性ポリマーを構成することができるエチレン不飽和結合を有する化合物の例、例えば、(メタ)アクリル酸の水溶性非イオン性ポリマー、(メタ)アクリル酸の水不溶性非イオン性ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及び低けん化ポリビニルアルコール(けん化度:60モル%以下)が挙げられているが、本発明はもはや以下の具体例に限定されない。
非イオン性モノマーの例として、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート)、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、γ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、(メタ)アクリル酸の酸化エチレン付加体、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート及び2-パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート;芳香族アルケニル化合物、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-メトキシスチレン;シアン化ビニル化合物、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル;コンジュゲートしたジエン系化合物、例えば、ブタジエン及びイソプレン;ハロゲン含有不飽和化合物、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン;ケイ素含有不飽和化合物、例えば、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン;不飽和カルボン酸無水物、例えば、無水マレイン酸;不飽和ジカーボキシレートジエステル、例えば、マレイン酸ジアルキル及びフマル酸ジアルキル;ビニルエステル化合物、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル及びケイヒ酸ビニル;マレイミド化合物、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-ステアリルマレイミド、N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド;(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリルアミド及び2~4個の炭素原子を有する酸化アルキレン由来のモノマー、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ-(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びN-ポリアルキレンオキシ(メタ)アクリルアミド;並びに親水性非イオン性モノマー、例えば、N-ビニルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン及びアクリルアミドが挙げられる。
【0080】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸の水不溶性非イオン性ポリマー、ポリビニルピロリドン及び低けん化ポリビニルアルコール(けん化度:60モル%以下)からなる群から選択される1種又は複数が好ましい。その市販の製品の例として、MAS683(コスメディ製薬株式会社製)、Polyvinylpyrrolidone K-90(BASF AG製)及びJMR-150L(日本酢ビ・ポバール株式会社製)が挙げられる。
【0081】
本明細書で、本発明の記載において、「(メタ)アクリル」という表現は「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0082】
アニオン性ポリマーは特に限定されないが、化粧品分野で普通使用されているものである限り、そのいずれも使用することができる。上述の液剤は、1種又は複数のアニオン性ポリマーを含むことができ、1種又は複数の非イオン性、カチオン性及び/又は両性ポリマーをアニオン性ポリマーと組み合わせてさらに含むことができる。
【0083】
アニオン性ポリマーの例として、アニオン性多糖及びその誘導体(アルギン酸塩、ペクチン、ヒアルロン酸塩など)、アニオン性ガム(キサンタンガム、デヒドロキサンタンガム、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガムなど)、アニオン性セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)など)、(メタ)アクリル酸の水溶性アニオン性ポリマー及びアクリルアミドベース水溶性アニオン性ポリマーが挙げられる。
【0084】
本明細書のこれより以下において、上述のアニオン性ポリマーを構成することができるエチレン不飽和結合を有する化合物の例、例えば、(メタ)アクリル酸の水溶性アニオン性ポリマーが挙げられているが、本発明はもはや以下の具体例に限定されない。アニオン性モノマーの例として、不飽和カルボン酸化合物、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸及びクロトン酸;ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)との不飽和多塩基酸無水物(例えば、コハク酸無水物又はフタル酸無水物)の部分エステル化合物;スルホネート基を有する化合物、例えば、スチレンスルホン酸及びスルホエチル(メタ)アクリレート;並びにリン酸基を有する化合物、例えば、酸性ホスホオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのアニオン性不飽和モノマーは、そのままで、又は部分的に中和もしくは完全に中和することにより酸として使用することができる。又は、アニオン性不飽和モノマーはまた、共重合のためにそのまま酸として提供された後、部分的に中和又は完全に中和することもできる。中和のために使用される塩基性化合物の例として、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム、アンモニア水、並びにアミン化合物、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン及びトリメチルアミンが挙げられる。
【0085】
これらの中でも、アクリル酸の水不溶性アニオン性ポリマーが特に好ましい。その市販の製品の例として、MASCOS10(コスメディ製薬株式会社製)及びHiPAS 10(コスメディ製薬株式会社製)が挙げられる。
【0086】
さらに、これらの非イオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含有する乳化増粘剤もまた使用することができる。その例として、Polyacrylamide/(C13,C14)Isoparafin/Laureth-7(Sepigel 305、Seppic製)が挙げられる。
【0087】
カチオン性ポリマーは特に限定されないが、化粧品分野で普通使用されているものである限り、そのいずれも使用することができる。上述の液剤は1種又は複数のカチオン性ポリマーを含むことができ、1種又は複数の非イオン性、アニオン性及び/又は両性ポリマーをカチオン性ポリマーと組み合わせてさらに含むことができる。
【0088】
カチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム基などのカチオン性基、又はカチオン性基にイオン化され得る第1級、第2級もしくは第3級アミノ基などの基を有するポリマーである。カチオン性ポリマーは通常、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基もしくはアンモニウム基を有するポリマー、又はその構成単位としてジアリル第4級アンモニウム塩を含有するポリマーである。
【0089】
好ましいカチオン性ポリマーの例として、カチオン化セルロース、カチオン性デンプン、カチオン性グアーガム、第4級アンモニウム側鎖を有するビニル性もしくは(メタ)アクリルポリマー又はそのコポリマー、4級化ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート/アミノアクリレートコポリマー、アミン置換ポリ(メタ)アクリレート架橋ポリマー、(メタ)アクリル酸の水溶性カチオン性ポリマー及びアクリルアミドベース水溶性カチオン性ポリマーが挙げられる。
【0090】
本明細書のこれより以下において、上述のカチオン性ポリマーを構成することができるエチレン不飽和結合を有する化合物の例、例えば、(メタ)アクリル酸の水溶性カチオン性ポリマーが挙げられているが、本発明はもはや以下の具体例に限定されない。カチオン性モノマーの例として、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、p-ジメチルアミノメチルスチレン、p-ジメチルアミノエチルスチレン、p-ジエチルアミノメチルスチレン、p-ジエチルアミノエチルスチレンなどを、カチオン化薬剤(例えば、ハロゲン化アルキル、例えば、塩化メチル、臭化メチルもしくはヨウ化メチル、ジアルキル硫酸、例えば、ジメチル硫酸、第3級アミン鉱酸塩のエピクロロヒドリン付加体、例えば、N-(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機塩、又はカルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸もしくはプロピオン酸)を用いて、カチオン化することにより作製されるものが挙げられる。
【0091】
カチオン化セルロースの具体例として、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドをヒドロキシエチルセルロースに加えることにより得られる第4級アンモニウム塩のポリマー(ポリクオタニウム-10)、ヒドロキシエチルセルロース/塩化ジメチルジアリルアンモニウムコポリマー(ポリクオタニウム-4)、及びヒドロキシエチルセルロースをトリメチルアンモニウム置換エポキシド及びラウリルジメチルアンモニウム置換エポキシドと反応させることにより得られる第4級アンモニウム塩のポリマー(ポリクオタニウム-67)が挙げられる。
【0092】
第4級アンモニウム側鎖を有するビニル性又は(メタ)アクリルポリマー又はそのコポリマーの例として、ポリ(2-メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)(ポリクオタニウム-37)が挙げられる。
【0093】
4級化ポリピロリドンの具体例として、ビニルピロリドン(VP)とジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマー、及び硫酸ジエチルから合成した第4級アンモニウム塩(ポリクオタニウム-11)が挙げられる。
【0094】
(メタ)アクリレート/アミノアクリレートコポリマーの例として、(アクリレート/アミノアクリレート/C10-30アルキルPEG-20イタコン酸)コポリマーが挙げられる。
【0095】
アミン置換ポリ(メタ)アクリレート架橋ポリマーの例として、ポリアクリレート-1架橋ポリマー及びポリクオタニウム-52が挙げられる。
【0096】
これらの中でも、アクリルアミドベース水溶性カチオン性ポリマーが特に好ましい。その市販の製品の例として、t-ブチルアクリルアミド/エチルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートコポリマー(RP77S、花王株式会社製)が挙げられる。
【0097】
両性ポリマーは、カチオン性基とアニオン性基の両方を有するポリマーである。構造的観点から述べると、両性ポリマーは、アニオン性基又はアニオン性基を有するコモノマーを上述のカチオン性ポリマーのいずれか1つに導入することにより得ることができる。
【0098】
化粧品分野で普通使用されているものである限り、両性ポリマーのいずれも使用することができる。上述の液剤は1種又は複数の両性ポリマーを含むことができ、非イオン性、アニオン性及び/又はカチオン性ポリマーを両性ポリマーと組み合わせてさらに含むことができる。
【0099】
両性ポリマーの例として、カルボキシル修飾又はスルホネート修飾カチオン性多糖(カルボキシメチルキトサンなど)、これらの側鎖上にホスホベタイン基又はスルホベタイン基を有する(メタ)アクリレートベースポリマー、及び(メタ)アクリル酸両性ポリマーが挙げられる。
【0100】
本明細書のこれより以下において、上述の両性ポリマーを構成することができるエチレン不飽和結合を有する化合物の例、例えば、(メタ)アクリル酸両性ポリマーが挙げられているが、本発明はもはや以下の具体例に限定されない。両性モノマーの例には、ハロ酢酸ナトリウム又はハロ酢酸カリウムなどの変性剤を、カチオン性モノマー前駆体の上述の具体例に作用させることにより得られる化合物が含まれる。さらに、偏光モノマーの具体例として、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノビニルプロピオネート、p-ジメチルアミノメチルスチレン、p-ジメチルアミノエチルスチレン、p-ジエチルアミノメチルスチレン、p-ジエチルアミノエチルスチレンなどの酸化アミン化合物が挙げられる。
【0101】
その他の例として、カチオン性ビニル性又は(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリル酸のコポリマー(ジメチルアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸コポリマー(ポリクオタニウム-22)など)が挙げられる。
【0102】
(c)接着性ポリマーとして、被膜の耐擦過性及び伸展性を改善するという観点から、接着性が良好な接着性ポリマーが選択される。接着性ポリマーとして、JISK6850を参照して測定した場合、1N以上の最大引張剪断荷重を有するポリマーが好ましい。3N以上のポリマーがより好ましく、5N以上のポリマーがさらにより好ましい。さらに、接着性を確保するという観点から、8N以上のポリマーがさらにより好ましい。最大引張剪断荷重は好ましくは200N以下、より好ましくは150N以下、更に好ましくは100N以下である。具体的には、ゴムベース接着性ポリマー、シリコーンベース接着性ポリマー、アクリル酸接着性ポリマー及びウレタンベース接着性ポリマーからなる群から選択される1種又は複数を使用することが好ましく、よって、非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0103】
ポリマーの接着性(最大引張剪断荷重)は、以下の通り測定することができる。20mgのポリマー溶液(10%エタノール溶液、飽和エタノール溶液又は飽和水溶液)を、1枚のポリカーボネート基材(Standard Test Piece、Carboglass Polish Clear、10cm×2.5cm×2.0cm)の1端の1.25cm×2.5cmの領域に塗布し、もう1枚のポリカーボネート基材に積層し、12時間以上乾燥させる。株式会社オリエンテック製、Tensilon UTC-100Wを使用することによって、5mm/分の引張速度でポリカーボネート基材の両端を引っ張り、最大引張剪断荷重を測定した。
【0104】
組成物Y中の(c)接着性ポリマーの含有量は、被膜の耐擦過性及び伸展性という観点から、5質量%以上20質量%以下である。含有量はより好ましくは6質量%以上である。そして、含有量はより好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。具体的には、含有量は好ましくは5質量%以上15質量%以下、より好ましくは5質量%以上12質量%以下、更に好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0105】
組成物Yに対して使用される成分(d)はポリオールである。ポリオールの例として、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール及び1,3-ブタンジオール;ポリアルキレングリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、並びに1,000以下の重量平均分子量を有するポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、並びにグリセロール、例えば、グリセロール、ジグリセロール及びトリグリセロールが挙げられる。これらの中でも、被膜の耐擦過性及び伸展性という観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,000以下の重量平均分子量を有するポリエチレングリコール、グリセロール及びジグリセロールが好ましく、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール及びグリセロールがより好ましく、グリセロールがさらにより好ましい。
【0106】
組成物Y中の成分(d)の含有量は、被膜の耐擦過性及び伸展性という観点から、好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは1質量%以上30質量%以下、更に好ましくは3質量%以上25質量%以下、更に好ましくは5質量%以上20質量%以下、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
【0107】
組成物Y中の成分(d)の、成分(c)に対する質量比率((d)/(c))は、被膜の耐擦過性及び伸展性という観点から、好ましくは0.1以上8以下、より好ましくは0.2以上7以下、更に好ましくは0.3以上6以下である。
【0108】
組成物Yは成分(e)油をさらに含むことができる。成分(e)の組込みは、被膜の耐擦過性及び伸展性、固形物の安定した固定並びに皮膚の動きに対する被膜の追随性をさらに改善する。成分(e)は、液体油(20℃で液体の油)及び固形油(20℃で固体の油)からなる群から選択される1種又は複数を含む。
【0109】
本発明の液体油は20℃で液体の油であり、流動性を有する半固体の油を含む。液体油として、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、シリコーン油及び脂肪酸が挙げられる。これらの中でも、塗布における滑らかさ、被膜の摩擦抵抗性及び伸展性という観点から、炭化水素油、エステル油及びシリコーン油が好ましい。これらの液体油から選択されるさらなる1種又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0110】
液体炭化水素油として、流動パラフィン、スクワラン、スクアレン、n-オクタン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、液体イソパラフィン、水素化ポリイソブテン、ポリブテン及びポリイソブテンが挙げられ、使用感という観点から、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、液体イソパラフィン、スクワラン、スクアレン、n-オクタン、n-ヘプタン及びシクロヘキサンが好ましく、流動パラフィン及びスクアレンがより好ましい。30℃での炭化水素油の粘度は、静電スプレー被膜の耐擦過性及び伸展性という観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上である。次いで、液剤中のイソデカン、イソヘキサデカン及び水素化ポリイソブテンの総含有量は、被膜の耐擦過性及び伸展性という観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であり、液剤はこれらを含有しなくてもよい。
30℃におけるエステル油及びシリコーン油の粘度は、同様に静電スプレー被膜の耐擦過性及び伸展性という観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上である。
本明細書で使用されている粘度は、30℃で、BM型粘度計(東京計器株式会社製、測定条件:ローター、No.1、60rpm、1分間)により測定されたものである。エーテル油、例えば、セチル-1,3-ジメチルブチルエーテル、ジカプリルエーテル、ジラウリルエーテル及びジイソステアリルエーテルの液剤中の総含有量は、類似の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0111】
エステル油は、直鎖又は分枝鎖脂肪酸、及び直鎖もしくは分枝鎖アルコール又は多価アルコールで構成されるエステルを含む。その具体例として、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、オクタン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、コレステリル12-ヒドロキシステアレート、エチレングリコールジ-2-エチルヘクサノエート、ジペンタエリトリトール脂肪酸エステル、N-アルキルグリコールモノ-イソステアレート、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、グリセロールジ-2-ヘプチルウンデカノエート、トリメチロールプロパントリ-2-エチルヘクサノエート、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットテトラ-2-エチルヘクサノエート、グリセリルトリ-2-エチルヘクサノエート、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘクサノエート、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ジエチルヘキシルナフタレンジカーボキシレート、C12-15安息香酸アルキル、イソノナン酸ステアリル、グリセリルトリ(カプリレート/カプレート)、ブチレングリコール(ジカプリレート/カプレート)、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプレート)、トリイソステアリン酸グリセリル、グリセリルトリ-2-ヘプチルウンデカノエート、トリ-ココナッツ油脂肪酸グリセリルエステル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、2-ヘプチルウンデシルパルミテート、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、ジ-2-ヘプチルウンデシルアジペート、ラウリン酸エチル、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、2-ヘキシルデシルミリステート、2-ヘキシルデシルパルミテート、2-ヘキシルデシルアジペート、セバシン酸ジイソプロピル、ジ-2-エチルヘキシルスクシネート、クエン酸トリエチル、2-エチルヘキシルパラメトキシシンナメート及びトリプロピレングリコールジピバレートが挙げられる。
これらの中でも、静電スプレー被膜を皮膚上に密接に接着させること、及び被膜が皮膚に塗布された際の気持ち良さという観点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸ステアリル、アジピン酸ジイソブチル、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ネオペンチルグリコールジカプレート及びグリセロールトリ(カプリレート/カプレート)からなる群から選択されるものが好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ネオペンチルグリコールジカプレート、C12-15安息香酸アルキル及びグリセロールトリ(カプリレート/カプレート)からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ネオペンチルグリコールジカプレート及びグリセロールトリ(カプリレート/カプレート)からなる群から選択される少なくとも1種がさらにより好ましい。
【0112】
エステル油として、上記エステル油を含有する植物油及び動物性油脂を使用することができ、その例として、オリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ヒマシ油、ベニバナ油、ヒマワリ種子油、アボカド油、アブラナ油、アンズ核油、米胚油及び米ぬか油が挙げられる。
【0113】
高級アルコールとして、12~20個の炭素原子を有する液体高級アルコールが挙げられ、分枝脂肪酸を構成物質として含有する高級アルコールが好ましく、高級アルコールとして、具体的にはイソステアリルアルコール及びオレイルアルコールが挙げられる。
【0114】
液体シリコーン油には直鎖シリコーン、環状シリコーン及び修飾シリコーンが含まれ、その例として、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニル修飾シリコーン及び高級アルコール修飾オルガノポリシロキサンが挙げられる。成分(d)中のシリコーン油の含有量は、皮膚への接着性という観点から、好ましくは35質量%以下であり、剥離性を改善するという観点から、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
25℃におけるシリコーン油の動粘度は、静電スプレー被膜の摩擦抵抗性、固形物の固定、及び皮膚の動きに対する被膜の追随性という観点から、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上であり、また、好ましくは30mm2/s以下、より好ましくは20mm2/s以下、更に好ましくは10mm2/s以下である。
これらの中でも、静電スプレー被膜の摩擦抵抗性、固形物の固定及び皮膚の動きに対する被膜の追随性という観点から、シリコーン油はジメチルポリシロキサンを含有することが好ましい。
【0115】
さらに、20℃において固体の油(固形油)もまた使用することができる。20℃において固体の油は、20℃において固体という特性を示し、40℃以上の融点を有するものが好ましい。20℃において固体の油として、炭化水素ワックス、エステルワックス、パラオキシ安息香酸エステル、高級アルコール、14個以上の炭素原子を有する直鎖脂肪酸のエステル、構成物質として12個以上炭素原子を有する3つの直鎖脂肪酸を含有するトリグリセリド及びシリコーンワックスが挙げられ、固形油はこれらから選択される1種又は複数を含有することができる。このようなワックスは、通常の化粧品に使用されているものである限り、限定されず、その例として、ミネラルワックス、例えば、オゾケライト及びセレシン;石油ワックス、例えば、パラフィン、微結晶性ワックス及びワセリン;合成炭化水素ワックス、例えば、Fischer-Tropshワックス及びポリエチレンワックス;植物ワックス、例えば、カルナバワックス、キャンデリアワックス、ライスワックス、木蝋、ヒマワリワックス及び水素添加ホホバ油;動物ワックス、例えば、蜜ろう及びクジラワックス;合成ワックス、例えば、シリコーンワックス、フッ素ベースワックス及び合成蜜ろう;並びに脂肪酸、高級アルコール及びその誘導体が挙げられる。さらにパラオキシ安息香酸エステルとして、パラオキシ安息香酸メチル、パラミノ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル及びパラオキシ安息香酸ベンジルが挙げられ、構成物質として12個以上の炭素原子を有する3つの直鎖脂肪酸を含有するトリグリセリドとして、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル及びトリベヘン酸グリセリルが挙げられる。構成物質として14個以上の炭素原子を有する直鎖脂肪酸を有する脂肪酸エステル油として、ミリスチン酸ミリスチルが挙げられる。
【0116】
組成物Y中の成分(e)の含有量は、被膜の耐擦過性及び伸展性並びに使用感という観点から、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上18質量%以下、更に好ましくは3質量%以上16質量%以下である。
【0117】
組成物Y中の成分(e)の成分(c)に対する質量比((e)/(c))は、被膜の耐擦過性及び伸展性という観点から、好ましくは0.06以上4以下、より好ましくは0.07以上3.5以下、更に好ましくは0.08以上3以下である。
【0118】
組成物Yは、上記成分に加えて、界面活性剤、水溶性ポリマー、pH調節剤、キレート剤、増粘剤、香料、着色物質、血液循環促進剤、清涼感剤、制汗剤、皮膚賦活剤、加湿剤、冷却剤、UV保護剤、剥離剤、抗酸化剤、安定剤、様々なビタミン、エタノールなどを含み得る。界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が含まれる。組成物Yの形態は、水中油型エマルジョン組成物であってもよいし、油中水型エマルジョン組成物であってもよいが、被膜の耐擦過性及び伸展性という観点から、水中油型エマルジョン組成物が好ましい。
【0119】
組成物Yを皮膚に塗布するステップ(ステップB)は、ステップAの前又は後でよい。組成物Yを皮膚に塗布するユニットは、ユニットが静電スプレー以外である限り、いずれのユニットでもよい。ユニットには、指などで皮膚に塗布するユニット、及びアプリケーターを使用することにより皮膚に塗布するユニットが含まれる。
【0120】
皮膚にはまた、ステップA及びステップBの前、これらの間又は後に、粉末を含有する化粧品を皮膚に塗布する(ステップC)ことによりメイクアップを施すこともできる。ステップは、例えば、ステップA、ステップB及びステップCの順序で、又はステップB、ステップA及びステップCの順序で行うことができる。さらにステップA)は、複数回行うことができ、ステップは、例えば、ステップB、ステップA、ステップC、ステップA及びステップBの順序で行うことができる。またステップCは、静電スプレー以外のユニットを使用することにより行われることが好ましい。
【0121】
ステップCの化粧品に対して使用される粉末として、着色顔料、体質顔料、パール顔料及び有機粉末が挙げられる。着色顔料には、無機着色顔料、有機着色顔料及び有機着色物質が含まれ、これらの1種又は複数を使用することができる。
【0122】
無機着色顔料として、具体的には、無機着色顔料、例えば、レッドオーカー、水酸化鉄、チタン酸鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、カーボンブラック、ベルリンブルー、ウルトラマリンブルー、ベルリンブルー酸化チタン、黒色酸化チタン、チタン-酸化チタン焼結物質、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、酸化コバルト及びチタン酸コバルト;及び無機白色顔料、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カラミン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム及びその複合体が挙げられる。その1種又は複数を使用することができる。
これらの中でも、酸化鉄、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選択される1種又は複数が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、レッドオーカー、黄色酸化鉄及び黒色酸化鉄からなる群から選択される1種又は複数がより好ましい。
【0123】
有機着色顔料及び有機着色物質として、有機タール顔料、例えば、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号及び青色404号;並びに有機着色物質、例えば、β-カロテン、カラメル及びパプリカ着色物質が挙げられる。さらに、ポリマーで覆われているもの、例えば、セルロース又はポリメタクリレートエステルなどが含まれる。これらの中でも、少なくとも赤色102号が含有されることが好ましい。
【0124】
体質顔料として、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、雲母、カオリン、セリサイト、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、粘土、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、スメクタイト、ゼオライト、セラミック粉末、第2リン酸カルシウム、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、合成雲母、合成セリサイト、金属石鹸、及び硫酸バリウム処理した雲母が挙げられる。これらの1種又は複数を使用することができる。
これらの中でも、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、雲母、無水ケイ酸、タルク、窒化ホウ素又は合成雲母が含有されることが好ましい。
【0125】
パール顔料(ブライトパウダー)として、フィッシュスケールフレーク、酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)、塩化酸化ビスマス、酸化チタン被覆塩化酸化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン・酸化鉄被覆雲母、ミクロ微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、ミクロ微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、有機顔料で処理した雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆合成雲母、酸化チタン被覆板状シリカ、中空板状酸化チタン、酸化鉄被覆雲母、板状酸化鉄(MIO)、アルミニウムフレーク、ステンレススチールフレーク、酸化チタン被覆板状アルミナ、ガラスフレーク、酸化チタン被覆ガラスフレーク、パールシェル、金箔、金蒸着樹脂フィルム及び金属蒸着樹脂フィルムが挙げられる。これらの1種又は複数を使用することができる。
【0126】
有機粉末として、シリコーンゴム粉末、シリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉末、ポリメチルシルセスキオキサン粉末、ポリアミド粉末、ナイロン粉末、ポリエステル粉末、ポリプロピレン粉末、ポリスチレン粉末、ポリウレタン粉末、ビニル樹脂粉末、ウレア樹脂粉末、フェノール樹脂粉末、フルオロ樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、アクリレート樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ジビニルベンゼン-スチレンコポリマー粉末、絹粉末、ウール粉末、セルロース粉末、長鎖-アルキルリン酸金属塩粉末、N-モノ-長鎖-アルキルアシル塩基性アミノ酸粉末、及びその複合体が挙げられる。これらの1種又は複数を使用することができる。
これらの中でも、セルロース粉末、シリコーンゴム粉末、シリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉末、ポリメチルシルセスキオキサン粉末、アクリレート樹脂粉末又はナイロン粉末が含有されることが好ましい。
【0127】
本発明に対して使用される粉末に対して、上記のいずれの粉末もそのまま使用することができ、疎水化処理の対象下におかれた粉末の1種又は複数も使用することができる。疎水化処理は、通常の化粧品粉末に対して行われるものである限り、限定されず、乾燥処理、含水処理などを表面処理剤、例えば、フルオロ化合物、シリコーンベース化合物、金属石鹸、アミノ酸ベース化合物、レシチン、アルキルシラン、油又はオルガノチタネートを使用して行えば十分である。
表面処理剤の具体例として、フッ素ベース化合物、例えば、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルホスフェート、パーフルオロアルキルアルコキシシラン及びフッ素修飾シリコーン;シリコーンベース化合物、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環式シリコーン、一端又は両端がトリアルコキシ基修飾されたオルガノポリシロキサン、架橋型シリコーン、シリコーン樹脂、フッ素修飾シリコーン樹脂及びアクリル修飾シリコーン;金属石鹸、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸マグネシウム;アミノ酸ベース化合物、例えば、プロリン、ヒドロキシプロリン、アラニン、グリシン、サルコシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン及びその誘導体;レシチン及び水素添加レシチン;アルキルシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン及びオクチルトリエトキシシラン;油、例えば、ポリイソブチレン、ワックス及び脂肪及び油;並びにオルガノチタネート、例えば、イソプロピルチタントリイソステアレートが挙げられる。
【0128】
本発明に使用される粉末に対して、親水化処理の対象下におかれた粉末の1種又は複数を使用することができる。親水化処理は、通常の化粧品粉末に対して行われる処理である限り、限定されない。
粉末の例として、植物ベースポリマー、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、アラビノガラクタン、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、デンプン(米、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦)、藻コロイド、トラントガム及びローカストビーンガム;微生物ポリマー、例えば、キサンタンガム、デキストラン、スクシノグルカン及びプルラン;動物ベースポリマー、例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、及びデオキシリボ核酸(DNA)及びその塩;デンプンベースポリマー、例えば、カルボキシメチルデンプン及びメチルヒドロキシプロピルデンプン;セルロースベースポリマー、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶性セルロース、及びセルロース粉末;アルギン酸ベースポリマー、例えば、アルギン酸ナトリウム及びアルギン酸プロピレングリコール;ビニル性ポリマー、例えば、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン及びカルボキシビニルポリマー;ポリオキシエチレンベースポリマー、例えば、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールシラン;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーベースポリマー;アクリルポリマー、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート及びポリアクリル酸アミド;並びに無機ケイ酸ベース化合物、例えば、シリカが挙げられる。
【0129】
粉末に対して、その形状が球状、板状、針状又は予測できない形状である粒子構造などを有する化粧品に対して普通使用されているものである限り、粉末は、フューム、マイクロ粒子又は顔料の粒子直径を有し、さもなければ多孔質又は無孔質である。
【0130】
粉末の平均粒径は、皮膚のヒロック、皮膚の溝及び細孔への均一で密接な接着、及び天然化粧品感触の付与という観点から、好ましくは0.001μm以上200μm以下、より好ましくは0.01μm以上50μm以下、更に好ましくは0.02μm以上20μm以下、更に好ましくは0.05μm以上10μm以下である。
本発明では、粉末の平均粒径は、レーザー回折/散乱法を使用して電子顕微鏡及び粒径分布分析器で測定する。具体的には、レーザー回折/散乱法の場合、エタノールは分散媒体として使用され、測定は、レーザー回折散乱型粒径分布分析器(例えば、LMS-350、株式会社セイシン企業製)で行う。本明細書では、粉末が疎水化処理又は親水化処理の対象下におかれた場合、平均粒径及び成分(c)の含有量は、疎水化処理又は親水化処理の対象下におかれた粉末のものを含む平均粒径及び質量を意味する。
【0131】
1種又は複数の粉末を使用することができ、その含有量は、化粧品の形態にもよるが、仕上がりという観点から、化粧品中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。粉末の含有量は、化粧品中、好ましくは1質量%以上99質量%以下、より好ましくは3質量%以上95質量%以下、更に好ましくは5質量%以上90質量%以下である。
【0132】
着色顔料の全粉末に対する質量比[着色顔料/全粉末]は、仕上がりという観点から、及び粉末を含有する化粧品が時間経過後もよれがなく、化粧持続性に優れるという観点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上であり、また、好ましくは1.0以下である。
【0133】
ステップCに対して使用される化粧品の種類は、それが粉末含有化粧品である限り、特に限定されず、化粧品は、組成化粧品、例えば、メイクアップベース、ファンデーション、コンシーラー、ルージュ、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート及びリップスティック;紫外線防御化粧品、例えば、サンスクリーンミルキーローション及びサンスクリーンクリームなどとして塗布することができる。これらの中でも、メイクアップベース、ファンデーション、コンシーラー、サンスクリーンミルキーローション及びサンスクリーンクリームがより好ましい。
さらに化粧品の形態は特に限定されず、粉末化粧品、固体粉末化粧品、液体化粧品、油性化粧品、エマルジョン化粧品及び油性の固体化粧品のうちのいずれかであってよい。
【0134】
ステップCに使用される化粧品に含有されている粉末以外の成分には、油(液体油及び固形油を含む)、乳化剤、水溶性ポリマー、香料、剥離剤、抗酸化剤、安定剤、防腐剤、増粘剤、pH調節剤、血液循環促進剤、様々なビタミン、清涼感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤及び加湿剤が含まれる。
【0135】
ステップCの化粧品の塗布は、化粧品の種類に従い通常の塗布ユニットにより行うことができ、塗布ユニットには、例えば、指又は手のひらを使用したファンデーションの拡散又は加圧による塗布、及び例えば、専用ツールを使用したファンデーションの拡散又は加圧による塗布が含まれる。ステップCの化粧品は組成物X及び組成物Yとは異なる組成物である。よって、ステップCの化粧品は、静電スプレー以外のユニットを使用することにより塗布することができる。
【0136】
上述の実施形態に関連して、本発明は、被膜の以下の生成方法、組成物及び使用方法をさらに開示する。
【0137】
<1> 皮膚上に被膜を生成する方法であって、
A)以下の成分(a)及び以下の成分(b):
(a) 水、アルコール、及びケトンからなる群から選択される1種又は複数の揮発性物質、及び
(b) 被膜形成性を有するポリマー、
を含む組成物Xを直接皮膚上に静電スプレーし、これによって、皮膚表面上に被膜を形成するステップと、
B)以下の成分(c)及び以下の成分(d):
(c) 5質量%以上20質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール、
を含む、組成物X以外の組成物Yを皮膚に塗布するステップを、
この順序又は逆の順序で含む方法。
【0138】
<2> (c)接着性ポリマーが、好ましくは、ゴムベース接着性ポリマー、シリコーンベース接着性ポリマー、アクリル酸接着性ポリマー及びウレタンベース接着性ポリマーからなる群から選択される1種又は複数であり、また、好ましくは(c)接着性ポリマーが、非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である、<1>に記載の被膜を生成する方法。
<3> 接着性ポリマーが、好ましくは1N以上、より好ましくは3N以上、更に好ましくは5N以上の最大引張剪断荷重を有するポリマーである、<1>又は<2>に記載の被膜を生成する方法。
<4> 組成物Y中の(c)接着性ポリマーの含有量が、好ましくは6質量%以上であり、また、含有量が、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であり、また、好ましくは5質量%以上15質量%以下、より好ましくは5質量%以上12質量%以下、更に好ましくは5質量%以上10質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<5> 組成物Yに使用されるポリオールが、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール及び1,3-ブタンジオールなどのアルキレングリコール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、並びに1,000以下の重量平均分子量を有するポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;並びに、グリセロール、ジグリセロール及びトリグリセロールなどのグリセロール、より好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,000以下の重量平均分子量を有するポリエチレングリコール、グリセロール及びジグリセロール、更に好ましくはプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール及びグリセロール、更に好ましくはグリセロールである、<1>~<4>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<6> 組成物Y中の成分(d)の含有量が、好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは1質量%以上30質量%以下、更に好ましくは3質量%以上25質量%以下、更に好ましくは5質量%以上20質量%以下、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<7> 組成物Y中の成分(d)の成分(c)に対する質量比((d)/(c))が、好ましくは0.1以上8以下、より好ましくは0.2以上7以下、更に好ましくは0.3以上6以下である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<8> 組成物Yが、好ましくは成分(e)油を更に含み、好ましくは液体油(20℃において液体である油)及び固形油(20℃において固体である油)からなる群から選択される1種又は複数を含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<9> 液体油(20℃において液体である油)が、炭化水素油、エステル油、植物油、高級アルコール、シリコーン油及び脂肪酸からなる群から選択される1種又は複数である、<8>に記載の被膜を生成する方法。
<10> 20℃において固体である油が、炭化水素ワックス、エステルワックス、パラオキシ安息香酸エステル、脂肪酸エステル、高級アルコール、14個以上の炭素原子を有する直鎖脂肪酸エステル、構成成分として、12個以上の炭素原子を有する直鎖脂肪酸を3つ含有するトリグリセリド、及びシリコーンワックスからなる群から選択される1種又は複数である、<8>又は<9>に記載の被膜を生成する方法。
<11> 組成物Y中の成分(e)の含有量が、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上18質量%以下、更に好ましくは3質量%以上16質量%以下である、<8>~<10>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<12> 組成物Y中の成分(c)に対する成分(e)の質量比((e)/(c))が、好ましくは0.06以上4以下、より好ましくは0.07以上3.5以下、更に好ましくは0.08以上3以下である、<8>~<11>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<13> ステップB)が、静電スプレー以外のユニットを使用することにより組成物を皮膚に塗布するものである、<1>~<12>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<14> 好ましくは、粉末を含む化粧品を、ステップA及びステップBの前、その間又は後に皮膚に塗布する方法であり、ステップが、ステップA、ステップB及びステップCの順序で、又はステップB、ステップA及びステップCの順序で、又はステップB、ステップA、ステップC、ステップA及びステップBの順序で行われ得る、<1>~<13>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<15> ステップA)において静電スプレーにより形成される被膜が多孔質被膜である、<1>~<14>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<16> ステップA)が、静電スプレー装置を使用することにより組成物Xを皮膚上に静電スプレーし、これによって、繊維堆積物で作製された被膜を形成するステップであり、静電スプレー装置が、組成物Xを収容するための容器、組成物Xを吐出するためのノズル、容器内に収容されている組成物Xをノズルに供給するための供給デバイス、及び電圧をノズルに加えるための電源を含む、<1>~<15>のいずれか1項に記載の被膜を生成する方法。
<17> 組成物を直接皮膚上に静電スプレーすることによって皮膚表面上に被膜が形成される前又は後に、静電スプレー以外のユニットを使用することにより皮膚に塗布することによって、皮膚上に被膜を生成するために使用される組成物であって、以下の成分(c)及び以下の成分(d):
(c) 5質量%以上20質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール
を含む、皮膚に塗布するための組成物Y。
<18> 組成物を直接皮膚上に静電スプレーすることによって皮膚表面上に被膜が形成される前又は後に、静電スプレー以外のユニットを使用することにより組成物Yを皮膚に塗布することによって、皮膚上に被膜を生成するために使用される方法であって、組成物Yが、以下の成分(c)及び以下の成分(d):
(c) 5質量%以上20質量%以下の接着性ポリマー、及び
(d) 1質量%以上40質量%以下のポリオール
を含む、組成物Yを皮膚に塗布する方法。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。しかし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。特に明記しない限り「%」は「質量%」を意味する。
【0140】
合成例1(ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)修飾シリコーンの生成)
19.0g(0.12モル)の硫酸ジエチル及び81.0g(0.82モル)の2-エチル-2-オキサゾリンを203.0gの脱水酢酸エチルに溶解し、窒素大気中で8時間加熱還流させ、これによって、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCで測定すると、1,100であった。これに、300gの側鎖-第1級アミノプロピル修飾ポリジメチルシロキサンの(重量平均分子量:32,000、アミン当量:2,000)の33%酢酸エチル溶液をまとめて加え、10時間加熱還流させた。反応混合物を減圧下で濃縮させ、これによって、N-プロピオニルエチレンイミン-ジメチルシロザンコポリマーを淡黄色のゴム状固体として得た(390g、収率:97%)。最終生成物中のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は75質量%であり、重量平均分子量は40,000であった。メタノールを溶媒として使用した、塩酸での中和滴定の結果、約20モル%のアミノ基が残留したことが判明した。この接着性ポリマーはJIS K6850に従い測定した場合、8.6Nの最大引張剪断荷重を有した。
さらに、市販の接着性ポリマーの最大引張剪断荷重の測定結果を表1に示す。
【0141】
【0142】
[試験1]
(1)スプレー組成物(組成物X)の調製
使用したスプレー組成物は表2の組成物であった。
(2)組成物Yの調製
使用した組成物Yは表3~表10の液剤(組成物Y)であった。
(3)評価ステップ
(i)市販のスキンケア薬剤を厚さ0.7mmの人工皮革(出光テクノファイン株式会社製、タンパク質皮革PBZ13001BK)に塗布した。
(ii)組成物Yを塗布した(ステップB)。200mgの組成物Yをスポンジに取り、次いで人工皮革の5cm×5cmの範囲に塗布した。人工皮革上に塗布した量は40mgであった。
(iii)静電スプレー(ステップA)を行った。
図1に示されている構成を有し、
図2に例示された外観を有する静電スプレー装置10を使用することによって、組成物が塗布された人工皮革上の領域に向けて静電スプレー法を60秒間行った。静電スプレー法の条件は以下のとおりであった。
・印加電圧:10kV
・ノズルと皮膚との間の距離:100mm
・放出したスプレー組成物の量:5mL/時間
・環境:25℃、30%RH
静電スプレーにより、繊維堆積物で構成される多孔質被膜を人工皮革の表面に形成した。被膜は7cm×7cmの正方形の形状に塗布した。
(iv)被膜を指、スポンジなどで軽く押して被膜を組成物Yになじませ、その後、室温で2時間以上乾燥させた。
その後、以下の基準に従い、人工皮革上に形成された被膜について官能評価を行った。
【0143】
[評価]
(1)耐擦過性
被膜の耐擦過性を高い荷重でスクラッチ試験により評価した。人工皮革を両面テープで電子てんびん上に固定した。両面テープで布(コットンニット布)が取り付けられている、ねじ蓋付きビン(株式会社マルエム製、No.4)の角を、形成された被膜の表面上に500gfの力で押し付けた。500gfの荷重を加えながら、組成物Yがその反対側に塗布された範囲の外側から7cmの水平運動でスクラッチ試験を行った。被膜の耐久性を、剥離された人工皮革の状態に従い、以下の基準で評価した。
評価基準:
A:50回のスクラッチング試験後でも、組成物Yが塗布された範囲内に完全に剥離された部分は観察されなかった;
B:31~50回のスクラッチング試験において、組成物Yが塗布された範囲内に完全に剥離された部分が生じた;
C:11~30回のスクラッチング試験において、組成物Yが塗布された範囲内に完全に剥離された部分が生じた;及び
D:1~10回のスクラッチング試験において、組成物Yが塗布された範囲内に完全に剥離された部分が生じた。
(2)伸展性
10cmの形成された被膜(人工皮革)の側の両端を手で12cm引っぱり、しわ、隆起又は亀裂が生じたかどうか評価した。
評価基準:
A:1回の引張試験で、組成物Yが塗布された範囲内で被膜の外観にはいかなる変化も生じなかった;
B:1回の引張試験で、組成物Yが塗布された範囲内で被膜の領域の50%以下においてしわ、隆起又は亀裂が生じた;
C:1回の引張試験で、組成物Yが塗布された範囲内で被膜の領域の50%以上においてしわ、隆起又は亀裂が生じた;及び
D:1回の引張試験で、組成物Yが塗布された範囲内で被膜は完全に剥離した。
【0144】
【0145】
【0146】
表3から、(c)接着性ポリマーが組成物Y中に5質量%以上含有されなければならないことが明らかである。
【0147】
【0148】
【0149】
表4及び表5から、ポリオールが組成物Y中に含有されなければならないことが明らかである。
【0150】
【0151】
【0152】
表6及び表7から、組成物Y中のポリオールに加えて油成分を添加することが、特に伸展性を改善することが明らかである。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
[試験2]
(1)スプレー組成物(組成物X)の調製
表11の組成物をスプレー組成物として使用した。
(2)組成物Yの調製
表6の組成物Y(9)を使用した。
(3)耐擦過性及び伸展性を、上記試験1に記載した方式と同じ方式で評価した。結果は表11に示されている。
【0157】
【符号の説明】
【0158】
10 静電スプレー装置
11 低電圧電源
12 高電圧電源
13 補助電気回路
14 ポンプ機構
15 容器
16 ノズル
17 パイプ
18 フレキシブルパイプ
19 限流抵抗
20 筺体