IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルクセンブルク・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー・(エルアイエスティ)の特許一覧

特許7495929溶融ポルフィリンポリマーの導電膜及びコーティング基板の形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】溶融ポルフィリンポリマーの導電膜及びコーティング基板の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20240529BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C23C16/18
H01L21/205
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021525791
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2019080991
(87)【国際公開番号】W WO2020099385
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】LU100988
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】516296566
【氏名又は名称】ルクセンブルク・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー・(エルアイエスティ)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ボーシャー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ベンガジ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】ババ,カマル
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-503181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/18
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ-メソ、β-β二重及び/またはメソ-β、β-メソ二重及び/またはメソ-メソ、β-β、β-β三重結合融合(ポリ)ポルフィリンのポリマーの薄い導電性コーティングを基板上に形成するための方法であって、前記方法は、
-真空チャンバ内に基板を提供するステップと、
-前記基板上で、酸化剤及び化学式(化)の少なくとも1つのポルフィリンモノマーを用いて酸化化学蒸着反応を行うステップと、を含み、
【化1】
式中、R’~R’のうちの少なくとも2つが、Hであり、他方は、それぞれ独立して、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン酸基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、置換もしくは非置換のアリールチオ基、アルキルアミノ基、置換もしくは非置換のアリールアミノ基、置換もしくは非置換のカルボキシレート基、置換もしくは非置換のカルボン酸、アミノ基、置換もしくは非置換のスルホネート基、置換もしくは非置換のスルホンアミド基、置換もしくは非置換のカルボニル基、置換もしくは非置換のシリル基または置換もしくは非置換のシロキシ基からなる群から選択され、式中、Mは2H、またはCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、In、Pt、Sc、Y、Eu、Er、Yb、Ti、V、Nb、Ta、U、Mo、W、Ru、Os、Rh、Ir、Ag、Au、Cd、Hg、Ti、Sn、Pb、As、Sb、及びBiの群から選択される1つの金属原子である、方法。
【請求項2】
前記基板上で酸化剤及び式の少なくとも1つのポルフィリンモノマーを用いて酸化化学蒸着反応を行うステップは、前記真空チャンバ内で前記酸化剤及び前記少なくとも1つのポルフィリンモノマーを別々に昇華させて、それぞれ気相を形成すること、及び前記気相を前記基板上に供給することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記基板上で、酸化剤及び化学式の少なくとも1つのポルフィリンモノマーを用いて酸化化学蒸着反応を行うステップは、モノ-メソ-置換ポルフィリンモノマー及び/またはポルフィンモノマーである少なくとも1つの架橋モノマーを使用してさらに行う、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
R’~R’の少なくとも2つがHであり、他方は、フェニル、p-トリル、メシチレン、4-tert-ブチルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジ-オクチルオキシフェニル、2,6-ジ-ドデシルオキシフェニル、3,4,5-トリ-トリメトキシフェニル、4-カルボキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、3,5-ジ-ヒドロキシフェニル、4-アミノフェニル、4-ピリジル、4-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、3,5-ジ-フルオロフェニル、2,6-ジ-フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニルからそれぞれ選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R’及びR’が、Hであり、R’及びR’は、両方とも、フェニル、p-トリル、メシチレン、4-tert-ブチルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジ-オクチルオキシフェニル、2,6-ジ-ドデシルオキシフェニル、3,4,5-トリ-トリメトキシフェニル、4-カルボキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、3,5-ジ-ヒドロキシフェニル、4-アミノフェニル、4-ピリジル、4-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、3,5-ジ-フルオロフェニル、2,6-ジ-フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニルからそれぞれ選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤が、FeCl、CuClまたはCu(ClOからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化化学蒸着反応を行うステップが、圧力10-4mbar~10-2mbarで行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤が、100℃~350℃の温度で昇華する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
化学式2の前記少なくとも1つのポルフィリンモノマーが、200℃~300℃の温度で昇華する、請求項2および8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
化学式の前記少なくとも1つのポルフィリンモノマーが、金属化5,15(ジフェニル)ポルフィリン(MDPP)であり、Mは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、In、Ptの群から選択される1つの金属原子である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤が、FeClであり、100℃~200℃、好ましくは130℃~180℃で昇華する、請求項2、8および9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、ポリマーであり、好ましくはポリエチレンナフタレートまたは紙、好ましくはプリンター用紙である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基板が、ガラス、ポリマー、好ましくは、ポリエチレンナフタレートまたは紙、好ましくは、プリンター用紙からなる群から選択される絶縁基板である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接溶融ポリ(ポルフィリン)の導電性コーティング、及び直接溶融ポリ(ポルフィリン)のコーティングを合成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直接溶融ポルフィリンポリマーなどの共役ポルフィリンポリマーは、自己の魅力的な電子特性及び光電子特性を有し、高性能の電子ノーズ(electronic nose)または有機太陽電池を生み出し得る。しかし、共役ポリ(ポルフィリン)に向けた2つの主な合成経路である(i)好適な酸化剤を使用する液相酸化重合、または(ii)電着は、共役ポリ(ポルフィリン)の研究及びデバイスへの統合に対する主要な欠点である。実際、ポルフィリンのモノマー、オリゴマー、及びポリマーの溶解性が低いため、共役ポリ(ポルフィリン)を形成するには、嵩高いペンダント基の導入が必要とされ、ここでは、標的とされる特性の主因となるテトラピロールポルフィン核が最終的に希釈された。
【0003】
公開された先行技術特許文献:欧州特許出願公開第1318151号明細書では、メソ-メソ結合ポルフィリン配列の酸化により2つのβ-β位置を直接結合することにより、メソ-メソ直鎖ポルフィリンポリマー及び溶融ポルフィリンオリゴマーを直接合成するための方法を開示している。この特許では、少なくとも2つの結合により直接溶融したポルフィリンのいずれのポリマーも、少なくとも2つの結合を有する直接溶融ポルフィリンのポリマーのコーティングを直接合成するための方法も開示していない。共役ポリ(ポルフィリン)は、塊形態で溶解性が低く、溶融できないため、その結果、これらの技術的適用が複雑になる複雑な加工性となる。この方法は、溶融ポルフィリンポリマーの薄膜を得ることができないという点で制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第1318151号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、言及された先行技術の少なくとも1つの欠点を克服するための技術的課題を有する。より詳細には、本発明は、直接溶融ポリ(ポルフィリン)の導電膜を提供し、直接溶融ポリ(ポルフィリン)の導電性薄膜を直接合成するための簡単な方法を提供するという技術的課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、メソ-メソ、β-β二重結合融合及び/またはメソ-β、β-メソ二重結合融合及び/またはメソ-メソ、β-β、β-β三重結合融合(ポリ)ポルフィリンのポリマーを含む導電性コーティングに関し、ポリマーは次のように表される:
【0007】
【化1】
化学式1
式中、R~Rは独立して、
水素、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン酸基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、置換もしくは非置換のアリールチオ基、アルキルアミノ基、置換もしくは非置換のアリールアミノ基、置換もしくは非置換のカルボキシレート基、置換もしくは非置換のカルボン酸、アミノ基、置換もしくは非置換のスルホネート基、置換もしくは非置換のスルホンアミド基、置換もしくは非置換のカルボニル基、置換もしくは非置換のシリル基または置換もしくは非置換のシロキシ基の群から選択され:
式中、Mは、2Hであるか、またはCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、In、Pt、Sc、Y、Eu、Er、Yb、Ti、V、Nb、Ta、U、Mo、W、Ru、Os、Rh、Ir、Ag、Au、Cd、Hg、Ti、Sn、Pb、As、Sb、及びBiの群から選択される1つの金属原子であり、化学式1のポリマーは、n個のモノマーを含み、nは、2より大きく、これらのモノマーは同じであるかまたは異なるものである。
【0008】
好ましい実施形態によれば、nは50より大きく、好ましくは100より大きい。
【0009】
好ましい実施形態によれば、R~Rは、独立して、H、フェニル、p-トリル、メシチレル、4-tert-ブチルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジオクチルオキシフェニル、2,6-ジ-ドデシルオキシフェニル、3,4,5-トリ-トリメトキシフェニル、4-カルボキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、3,5-ジ-ヒドロキシフェニル、4-アミノフェニル、4-ピリジル、4-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、3,5-ジ-フルオロフェニル、2,6-ジ-フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニルの群から選択され、式中、Mは2H、またはCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、In、Ptの群から選択される1つの金属原子である。
【0010】
本発明は、メソ-メソ、β-β二重及び/またはメソ-β、β-メソ二重及び/またはメソ-メソ、β-β、β-β三重結合融合(ポリ)ポルフィリンのポリマーの薄い導電性コーティングを基板上に形成するための方法にも関し、本方法は、以下のステップ:
-真空チャンバ内に基板を提供するステップと、
-基板上で、酸化剤及び化学式2の少なくとも1つのポルフィリンモノマーを用いて酸化化学蒸着反応を行うステップと、を含み、
【0011】
【化2】
式中、R’~R’のうちの少なくとも2つはHであり、他方は、それぞれ独立して、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン酸基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、置換もしくは非置換のアリールチオ基、アルキルアミノ基、置換もしくは非置換のアリールアミノ基、置換もしくは非置換のカルボキシレート基、置換もしくは非置換のカルボン酸、アミノ基、置換もしくは非置換のスルホネート基、置換もしくは非置換のスルホンアミド基、置換もしくは非置換のカルボニル基、置換もしくは非置換のシリル基または置換もしくは非置換のシロキシ基からなる群から選択され、式中、Mは2H、またはCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、In、Pt、Sc、Y、Eu、Er、Yb、Ti、V、Nb、Ta、U、Mo、W、Ru、Os、Rh、Ir、Ag、Au、Cd、Hg、Ti、Sn、Pb、As、Sb、及びBiの群から選択される1つの金属原子である。
【0012】
好ましい実施形態によれば、基板上で酸化剤及び式2の少なくとも1つのポルフィリンモノマーを用いて酸化化学蒸着反応を行うステップは、真空チャンバ内で酸化剤及び少なくとも1つのポルフィリンモノマーを別々に昇華させて、それぞれ気相を形成すること、及び気相を基板上に供給することを含む。
【0013】
好ましい実施形態によれば、基板上で、酸化剤及び化学式2の少なくとも1つのポルフィリンモノマーを用いて酸化化学蒸着反応を行うステップは、さらに、モノ-メソ置換ポルフィリンモノマー及び/またはポルフィンモノマーである少なくとも1つの架橋モノマーを使用してさらに行うことである。
【0014】
好ましい実施形態によれば、R’~R’の少なくとも2つはHであり、他方は、それぞれ、フェニル、p-トリル、メシチレン、4-tert-ブチルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジオクチルオキシフェニル、2,6-ジ-ドデシルオキシフェニル、3,4,5-トリ-トリメトキシフェニル、4-カルボキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、3,5-ジ-ヒドロキシフェニル、4-アミノフェニル、4-ピリジル、4-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、3,5-ジ-フルオロフェニル、2,6-ジ-フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニルからなる群から選択される。
【0015】
好ましい実施形態によれば、R’及びR’はHであり、R’及びR’は、両方とも、フェニル、p-トリル、メシチレン、4-tert-ブチルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジ-オクチルオキシフェニル、2,6-ジ-ドデシルオキシフェニル、3,4,5-トリ-トリメトキシフェニル、4-カルボキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、3,5-ジ-ヒドロキシフェニル、4-アミノフェニル、4-ピリジル、4-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、3,5-ジ-フルオロフェニル、2,6-ジ-フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニルからなる群から選択される。
【0016】
好ましい実施形態によれば、酸化剤は、FeCl、CuCl、またはCu(ClOからなる群から選択される。
【0017】
好ましい実施形態によれば、酸化化学蒸着反応を行うステップは、圧力10-4mbar~10-2mbarで行われる。
【0018】
好ましい実施形態によれば、酸化剤は、100℃~350℃の温度で昇華する。
【0019】
好ましい実施形態によれば、化学式2の少なくとも1つのポルフィリンモノマーは、200℃~300℃の温度で昇華する。
【0020】
好ましい実施形態によれば、化学式2の少なくとも1つのポルフィリンモノマーは、金属化5,15-(ジフェニル)ポルフィリン(MDPP)であり、Mは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、In、Ptの群から選択される1つの金属原子である。
【0021】
好ましい実施形態によれば、酸化剤は、FeClであり、100℃~200℃、好ましくは、130℃~180℃で昇華する。
【0022】
好ましい実施形態によれば、基板は、ポリマー、好ましくはポリエチレンナフタレート、または紙、好ましくはプリンター用紙である。
【0023】
好ましい実施形態によれば、基板は、ガラス、ポリマー、好ましくはポリエチレンナフタレートまたは紙、好ましくはプリンター用紙の群から選択される絶縁基板である。
【0024】
本発明はまた、基板及び直接溶融(ポリ)ポルフィリンの薄い導電性コーティングを含むデバイスに関し、薄い導電性コーティングは、本発明によるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、溶融ポルフィリンコーティングが導電性であるという点で特に興味深い。本発明の方法により、直接溶融ポリ(ポルフィリン)薄膜の同時合成、蒸着及びp-ドープ効果が可能になる。選択された酸化化学蒸着(oCVD)アプローチでは、ポルフィリンモノマーの特定の任意の官能基化を必要とすることなく、市販のポルフィリンの使用が可能になる。この方法は、柔軟かつ有機的な電子用途にとって特に興味深いものである。oCVDにより、敏感な及び/または柔軟な基板上のコーティングが可能になり、デバイス製造のためのパターン形成が可能になる。
【0026】
特に、ポリマーのoCVDは、いかなる溶媒も必要としないため、ポリマー及びモノマーの溶解度が低いことに関連する問題を回避することができる。本発明の方法では、モノマー及び形成されたポリマーがいずれも可溶性または溶融性である必要はなく、共役ポリマー系のデバイスへの統合はかなり単純化される。さらに、oCVD重合化は高い蒸着温度を必要とせず、様々な材料において蒸着を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】直接溶融ポリ(ポルフィリン)の薄い導電性コーティングを蒸着させるために使用されるoCVDリアクターを示す概略図である。
図2】本発明の方法による、導電性二重及び/または三重融合ポリ(ポルフィリン)コーティングのoCVDに好適であるジ-メソ置換ポルフィリンの例を表す図である。
図3】共役ポリ(ポルフィリン)コーティングのoCVDには不適切であるポルフィリンを表す図である。
図4】コーティングの一例によるoCVDリアクターを示す概略図である。
図5】NiDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示す図である。
図6】NiDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのLDI-HRMSスペクトルを表す図である。
図7】NiDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのヘリウムイオン顕微鏡画像を表す図である。
図8】NiDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングの横方向の電気伝導率測定結果を表す図である。
図9】NiDDt-BuPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDDt-BuPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを表す図である。
図10】NiDDOPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDDOPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを表す図である。
図11】NiDMP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDMP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを表す図である。
図12】NiDMP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDMP)コーティングのヘリウムイオン顕微鏡画像を表す図である。
図13】パターン化されたマスクを使用した、NiDMP及びFeClのoCVD反応から調製した(左)オレンジ色の参照NiDMPコーティング(蒸着)及び(右)暗緑色のポリ(NiDMP)コーティングによってコーティングされたA4シートのプリンター用紙を表す写真である。
図14】HDPP及びFeClのoCVD反応から得られたコーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを表す図である。
図15】HDPP及びFeClのoCVD反応から得られたコーティングのLDI-HRMSスペクトルを表す図である。
図16】CoDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(CoDPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを表す図である。
図17】PdDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(PdDPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示す図である。
図18】ZnDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(ZnDPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを表す図である。
図19】Fe(III)Cl-DPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(Fe(III)Cl-DPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを表す図である。
図20】CuDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(CuDPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを表す図である。
図21】複数のポルフィリンモノマーからの直接溶融コポリ(ポルフィリン)コーティングの同時合成及び蒸着に使用される酸化化学蒸着リアクターのスキームを示す図である。
図22】NiDPP及びCu(ClOのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示す図である。
図23】NiDPP及びCuClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示す図である。
図24】NiDPP及びCuClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのLDI-HRMSスペクトルを表す図である。
図25】基板温度200℃でのNiDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示す図である。
図26】基板温度200℃でのNiDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのLDI-HRMSスペクトルを表す図である。
図27】室温(25℃)でのNiDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのUV-Vis-NIR吸収スペクトルである。
図28】室温でのNiDPP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのLDI-HRMSスペクトルを表す図である。
図29】室温で、パターン化されたマスクを使用して、NiDPP及びFeClのoCVD反応から調製された(左)オレンジ色の参照NiDPPコーティング(蒸着)及び(右)暗緑色ポリ(NiDPP)コーティングによってコーティングされたA4シートのプリンター用紙を示す写真である。
図30】NiTPP(上)及びNiDPP(下)とFeClとのoCVD反応から得られたoCVDコーティングのLDI-HRMSスペクトルを示す図である。
図31】CrTEPP及びFeClのoCVD反応後のガラス基板のUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示す図である。
図32】DEPP及びFeClのoCVD反応後のガラス基板のUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、メソ-メソ、β-β二重結合及び/またはメソ-β、β-メソ二重結合及び/またはメソ-メソ、β-β、β-β三重結合(ポリ)ポルフィリンのポリマーを含むコーティングを提供し、本ポリマーは次のように表される:
【0029】
【化3】
化学式1(化3)
式中、R~Rは独立して、水素、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン酸基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、置換もしくは非置換のアリールチオ基、アルキルアミノ基、置換もしくは非置換のアリールアミノ基、置換もしくは非置換のカルボキシレート基、置換もしくは非置換のカルボン酸、アミノ基、置換もしくは非置換のスルホネート基、置換もしくは非置換のスルホンアミド基、置換もしくは非置換のカルボニル基、置換もしくは非置換のシリル基または置換もしくは非置換のシロキシ基の群から選択され;
【0030】
Mは、2HまたはCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、In、Pt、Sc、Y、Eu、Er、Yb、Ti、V、Nb、Ta、U、Mo、W、Ru、Os、Rh、Ir、Ag、Au、Cd、Hg、Ti、Sn、Pb、As、Sb、及びBiからなる群から選択される1つの金属原子である。
【0031】
化学式1(化3)の各ポリマーは、n個のモノマーを含み、nは2より大きく、化学式2のモノマーは同じであるかまたは異なる。ポリマーは、少なくとも50のモノマーn、好ましくは100を超えるモノマーnを含む。
【0032】
好ましくは、R~Rは、独立して、H、フェニル、p-トリル、メシチレン、4-tert-ブチルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジ-オクチルオキシフェニル、2,6-ジ-ドデシルオキシフェニル、3,4,5-トリ-トリメトキシフェニル、4-カルボキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、3,5-ジ-ヒドロキシフェニル、4-アミノフェニル、4-ピリジル、4-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、3,5-ジ-フルオロフェニル、2,6-ジ-フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニルからなる群から選択され、Mは、2Hであるか、またはCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、In、Ptからなる群から選択される1つの金属原子である。
【0033】
本発明はまた、酸化化学蒸着による、メソ-メソ、β-β二重結合及び/またはメソβ、β-メソ二重結合及び/またはメソ-メソ、β-β、β-β三重結合(ポリ)ポルフィリンのポリマーの薄い導電性コーティングを基板上に形成するための方法を提供する。この方法は、真空チャンバ内に基板を提供するステップと、基板上で、酸化剤及び化学式2(化4)の少なくとも1つのポルフィリンモノマーを用いて酸化化学蒸着反応を行うステップと、を含み、
【0034】
【化4】
式中、R’~R’のうちの少なくとも2つはHであり、他方は、それぞれ、独立して、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン酸基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、置換もしくは非置換のアリールチオ基、アルキルアミノ基、置換もしくは非置換のアリールアミノ基、置換もしくは非置換のカルボキシレート基、置換もしくは非置換のカルボン酸、アミノ基、置換もしくは非置換のスルホネート基、置換もしくは非置換のスルホンアミド基、置換もしくは非置換のカルボニル基、置換もしくは非置換のシリル基または置換もしくは非置換のシロキシ基の群から選択される。
【0035】
Mは、2HまたはCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、In、Pt、Sc、Y、Eu、Er、Yb、Ti、V、Nb、Ta、U、Mo、W、Ru、Os、Rh、Ir、Ag、Au、Cd、Hg、Ti、Sn、Pb、As、Sb、及びBiからなる群から選択される金属原子である。
【0036】
R’~R’のうちの少なくとも2つはHであり、他方は、それぞれ、フェニル、p-トリル、メシチレン、4-tert-ブチルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジ-オクチルオキシフェニル、2,6-ジ-ドデシルオキシフェニル、3,4,5-トリ-トリメトキシフェニル、4-カルボキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、3,5-ジ-ヒドロキシフェニル、4-アミノフェニル、4-ピリジル、4-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、3,5-ジ-フルオロフェニル、2,6-ジ-フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニルからなる群から選択される。
【0037】
R’及びR’(またはR’及びR’)がHであり、R’及びR’(またはR’及びR’)は、両方とも、フェニル、p-トリル、メシチレン、4-tert-ブチルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジ-オクチルオキシフェニル、2,6-ジ-ドデシルオキシフェニル、3,4,5-トリ-トリメトキシフェニル、4-カルボキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、3,5-ジ-ヒドロキシフェニル、4-アミノフェニル、4-ピリジル、4-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、3,5-ジ-フルオロフェニル、2,6-ジ-フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニルからなる群から選択される。
【0038】
より具体的には、基板上で酸化剤及び化学式2の少なくとも1つのポルフィリンモノマーを用いて酸化化学蒸着反応を行うステップは、真空チャンバ内で酸化剤及び少なくとも1つのポルフィリンモノマーを別々に昇華させて、それぞれ気相を形成すること、及び気相を基板上に供給することを含む。酸化化学蒸着は、モノ-メソ置換ポルフィリンモノマー及び/またはポルフィンモノマーである少なくとも1つの架橋モノマーを用いて行うこともできる。この場合、気相を得るために架橋モノマーもまたoCVD中に昇華し、架橋モノマーの気相も基板上に供給される。
【0039】
酸化剤は、好ましくはFeCl、CuClまたはCu(ClOである。酸化剤は、100℃~350℃の温度で昇華し、化学式2の少なくとも1つのポルフィリンモノマーは200℃~300℃の温度で昇華する。
【0040】
oCVD実験は、真空チャンバ4を備え、高真空を達成するためにドライスクロールポンプ(Varian)及びターボ分子ポンプ(Agilent)を備えたoCVDリアクター2(図1)を使用して行う。バタフライ型スロットルバルブ(VAT)及びアルゴン(Air Liquide、99.999%)が供給されたマイクロリークバルブ6を使用して、全蒸着実験で圧力を10-3mbarに維持した。圧力は、バラトロン真空計8(MKS)によって監視した。基板10は、基板ホルダー12により真空チャンバ4内で保持される。チャンバ4の底には、ポルフィリン及び酸化剤を約20cm上方に位置する温度制御基板ホルダー(Thermocoax)に供給するための2つの低温蒸発(LTE)点源14(Kurt J.Lesker Co.)がある。点源の数は、モノマーの数に依存する。
【0041】
図2は、導電性二重結合及び三重結合ポリポルフィリンコーティングの酸化化学蒸着に好適であるジ-メソ置換ポルフィリンを表している。
a)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン、
b)5,15-ジ(p-トリル)ポルフィリン、
c)5,15-ジ(メシチル)ポルフィリン、
d)5,15-ジ(4-tert-ブチルフェニル)ポルフィリン、
e)5,15-ジ(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ポルフィリン、
f)5,15-ジ(2,6-ジ-オクチルオキシフェニル)ポルフィリン、
g)5,15-ジ(2,6-ジ-ドデシルオキシフェニル)ポルフィリン、
h)5,15-ジ(3,4,5-トリ-トリメトキシフェニル)ポルフィリン、
i)5,15-ジ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン、
j)5,15-ジ(4-ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、
k)5,15-ジ(3-ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、
l)5,15-ジ(3,5-ジヒドロキシフェニル)ポルフィリン、
m)5,15-ジ(4-アミノフェニル)ポルフィリン、
n)5,15-ジ(4-ピリジル)ポルフィリン、
o)5,15-ジ(4-ブロモフェニル)ポルフィリン、
p)5,15-ジ(4-クロロフェニル)ポルフィリン、
q)5,15-ジ(2,6-クロロフェニル)ポルフィリン、
r)5,15-ジ(4-フルオロフェニル)ポルフィリン、
s)5,15-ジ(3,5-ジ-フルオロフェニル)ポルフィリン、
t)5,15-ジ(2,6-ジ-フルオロフェニル)ポルフィリン、
u)5,15-ジ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン、
v)5,15-ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ポルフィリン、
w)5,15-ジ(3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニル)ポルフィリン。
【0042】
ジ-メソ置換ポルフィリンは、クロム(II)、マンガン(III)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、亜鉛(II)、ガリウム(III)、パラジウム(II)、インジウム(III)及び白金(II)で金属化することができ、金属は化学式2においてMで表される。
【0043】
トリ-メソ置換ポルフィリンは、末端基として機能できる。ジ-メソ置換ポルフィリンは、直鎖の形成に好適である。モノ-メソ置換ポルフィリン及びポルフィンは、架橋単位として使用できる。
【0044】
図3は、共役ポルフィリンコーティングの酸化化学蒸着に好適でないポルフィリンを表している。a~e)テトラ-メソ置換ポルフィリン及びf)ベータ置換ポルフィリン。c)エテニル及びd~h)エチニル基を1つ以上保持するポルフィリンは、一般に、共役ポルフィリンアレイの溶液ベースの合成で使用され、一時的な昇華中に急速に分解される。
【0045】
実施例1-NiDPP&FeCl
ニッケル(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(NiDPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、高真空を得るために、ドライスクロールポンプ及びターボ分子ポンプを備えた特注のリアクター102(図4)で行った。バタフライ型スロット弁及びアルゴンを供給したマイクロリーク弁を使用して、全蒸着実験期間中、圧力を10-3mbarに維持した。圧力は、バラトロン真空計で監視した。チャンバの底で、2つの低温蒸発点源112を使用して、NiDPPポルフィリン及びFeCl酸化剤を約20cm上に位置する温度制御基板ホルダーに供給した。エバポレータに10mgのNiDPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ235℃及び150℃まで加熱した。基板ホルダー114は、150℃に維持され、蒸着時間は30分であった。
【0046】
NiDPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD NiDPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiDPPの昇華から生成された参照NiDPPコーティングの鮮やかなオレンジ色とは対照的に、暗緑色を呈する。紫外-可視-近赤外(UV-Vis-NIR)分光分析は、コーティングされたガラス基板上で、直径150mmの積分球を備えたUV-Vis-NIR分光光度計(PerkinElmer,Lambda950)を使用して実行され、オレンジ色の参照NiDPPコーティングと比較して、暗緑色のoCVDNiDPPコーティングの吸収スペクトルに大きい差があることを明らかにしている。360nm付近の吸収が増加し、ソーレー帯が広がり、赤方偏移したQ帯が668nm付近の新しい幅広い帯に対して崩壊し、さらに重要なことに、2000nmまでのNIR領域に幅広い吸収が現れる(図5)。これらの観察結果は、典型的には、NIRスペクトル領域に到達できる幅広い吸収を呈する溶融ポルフィリンの形成と完全に一致する。可溶性参照NiDPPコーティングとは対照的に、oCVD NiDPPコーティングは、DCM、アセトン、またはクロロホルムなどの一般的な有機溶媒に不溶である。
【0047】
LTQ/Orbitrap Elite(Thermo Scientific)と連結させて、AP-MALDI PDF+イオン源(MassTech,Inc.)で実施した、oCVD NiDPPコーティングのレーザー脱離/イオン化高分解能質量スペクトル(LDI-HRMS)分析により、NiDPPオリゴマーの存在が明らかになり、NiDPPの酸化重合が成功したことが確認された(図6)。遊離塩基ポルフィリンHDPPの存在に関連する信号は無視できるほど弱く、NiDPPが蒸着及び重合中にポルフィリンコアにニッケルイオンを効果的に保持することが確認される。最大7量体のオリゴマーが、m/z=4000(機器限界)までの質量スペクトルで観察される。残念なことに、膜の不溶性によりGPC分析が禁じられ、その結果、ポリ(ポルフィリン)鎖の詳細な質量分布は依然として得られにくい。その一方で、UV-Vis-NIR吸収スペクトル(図5)の2000nmまでの吸収は、単一結合ポルフィリンがNIR透過性であるため、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の存在を強く示唆している。質量分析では、ポルフィリン単位間の複数のC-C結合の形成が確認される。LDI-HRMSスペクトルは、三重結合β-β/メソ-メソ/β-βポルフィリンの形成に関連する信号を表示する。これは、NiDPP間のメソ-β/メソ-β結合が2つのみである、溶液ベースの酸化重合プロセスとは対照的である。LDI-HRMSでは、oCVDアプローチと報告された溶液ベースの方法との間での別の想定外の差が明らかになる。NiDPPモノマー及びNiDPPオリゴマーの両方に関連するピーク分布について、LDI-HRMSスペクトル(図6)は、2つの水素原子2Hが同時に消失していることを示唆する信号を呈している。消失する水素対の最大数は、検出されたモノマー種及びオリゴマー種内のフェニル環の数に比例するため、これらの信号は脱水素種に起因する。これらの種は、フェニル置換基とポルフィリン ピロール ベータ位置との間の分子内環化反応によって形成された可能性があることが示唆されている。導電性である溶融ポルフィリンコーティングが予想されるため、マイクロプローブステーション(Cascade Microtech、PM8)を使用して、oCVD NiDPPコーティングの基本的な電荷輸送特性を調べた。2点の電流電圧スキャンを記録し、(横方向の)薄膜導電率を単純な線形フィット(オームの法則)から計算した。測定は、室温及び周囲雰囲気下で行い、チャネルの形状は2.5μm(長さ)×10mm(全幅)×40nm(高さ)であった。データは、Keithley(2401)ソースメーターを使用して、電圧を-4Vから4Vまでスイープして戻し(ヒステリシススキャン)、500mVs-1のスキャンレートで記録した。2点プローブ測定(4点プローブ測定とは対照的に)を使用する場合、Au接点と薄膜との間の接触抵抗は無視される。これは、膜の導電率がこのパラメータを無視するのに十分に高いためである。
【0048】
図7は、NiDPPとFeClとのoCVD反応から得られたP(NiDPP)コーティングのヘリウムイオン顕微鏡画像であり、薄膜が得られたことを示している。
【0049】
市販のOFETチップ上に蒸着されたoCVD NiDPPコーティングの電気伝導率は、オームの法則を使用して電気伝導率を抽出するために、いかなるゲート電圧も印加せずに、2点プローブで電流-電圧スキャンを記録することなく測定した。望ましいことに、oCVD NiDPPコーティングは、ポリ(ポルフィリン)化合物の電気オーム伝導率が0.7S・cm-1であることを示している(図8)。しかし、測定された導電率は、oCVD法中にドーピング剤として作用することが知られている過剰のFeClのおかげで、oCVD NiDPPコーティングがpドープ半導体材料であることを示唆している。残念なことに、電界効果測定によりホール移動度を決定することは、oCVD NiDPPコーティング(pドープ)の高い導電率のために不可能であり、これによりチャネルがゼロゲート電圧ですでにオンになっていることが判明した。
【0050】
実施例2-NiDDt-BuPP&FeCl
ニッケル(II)5,15-ジ(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ポルフィリン(NiDDt-BuPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注oCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は150℃とした。エバポレータに10mgのNiDDt-BuPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ260℃及び150℃まで加熱した。NiDDt-BuPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVDNiDDt-BuPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiDDt-BuPPの昇華から生成された参照NiDDt-BuPPコーティングの鮮やかなオレンジ色とは対照的に、暗緑色を呈する。oCVD NiDDt-BuPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図9)。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。五量体オリゴマーは、質量分析法により、機器限界に対応するm/z=4000まで観察される。LDI-HRMS分析では、NiDDt-BuPP単位間の複数のC-C結合の形成が確認される。oCVD NiDDt-BuPPコーティングの不溶性により、GPC分析が禁じられ、その結果、P(NiDDt-BuPP)鎖の詳細な質量分布は依然としてわかりにくい。それにもかかわらず、NIR領域での強い吸収(図9)は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の存在を示すものである。
【0051】
実施例3-NiDDOPP&FeCl
ニッケル(II)5,15-ジ(2,6-ドデシルオキシフェニル)ポルフィリン(NiDDOPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注oCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は150℃とした。エバポレータに10mgのNiDDOPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ270℃及び150℃まで加熱した。NiDDOPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD NiDDOPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiDDOPPの昇華から生成された参照NiDDOPPコーティングのピンク色とは対照的に、緑がかった色を呈する。oCVD NiDDOPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図10)。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。三量体オリゴマーは、質量分析法により、機器限界に対応するm/z=4000まで観察される。LDI-HRMS分析では、NiDDOPP単位間に複数のC-C結合を有するP(NiDDOPP)オリゴマーの形成が確認される。oCVD NiDDOPPコーティングの不溶性により、GPC分析が禁じられ、その結果、P(NiDDOPP)鎖の詳細な質量分布は依然としてわかりにくい。それにもかかわらず、NIR領域での強い吸収(図10)は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の存在を示すものである。
【0052】
実施例4-ZnDPOHP&FeCl
亜鉛(II)5,15-ジ(4-ヒドロキシフェニル)ポルフィリン(ZnDPOHP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は5×10-4mbar、基板温度は100℃とした。エバポレータにZnDPOHP及びFeClを入れ、それぞれ250℃及び110℃まで加熱した。ZnDPOHP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD ZnDPOHPコーティングは、同じ操作条件下でのZnDPOHPの昇華から生成された参照ZnDPOHPコーティングのオレンジ色とは対照的に、緑がかった色を呈する。oCVD ZnDPOHPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。LDI-HRMS分析では、ZnDPOHP単位間に複数のC-C結合を有するP(ZnDPOHP)オリゴマーの形成が確認される。oCVD ZnDPOHPコーティングの不溶性により、GPC分析が禁じられ、その結果、P(ZnDPOHP)鎖の詳細な質量分布は依然としてわかりにくい。それにもかかわらず、NIR領域での強い吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の存在を示すものである。
【0053】
実施例5-NiDPFPP&FeCl
ニッケル(II)5,15-ジ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(NiDPFPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-2mbar、基板温度は100℃とした。エバポレータにNiDPFPP及びFeClを入れ、それぞれ275℃及び170℃まで加熱した。NiDPFPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD NiDPFPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiDPFPPの昇華から生成された参照NiDPFPPコーティングのオレンジ色とは対照的に、緑がかった色を呈する。oCVD NiDPFPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。五量体オリゴマーは、質量分析法により、機器限界に対応するm/z=4000まで観察される。LDI-HRMS分析では、NiDPFPP単位間の複数のC-C結合の形成が確認される。oCVD NiDPFPPコーティングの不溶性により、GPC分析が禁じられ、その結果、P(NiDPFPP)鎖の詳細な質量分布は依然としてわかりにくい。それにもかかわらず、NIR領域での強い吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の存在を示すものである。
【0054】
実施例6-NiDMP&FeCl
ニッケル(II)5,15-ジ(メシチル)ポルフィリン(NiDMP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は150℃とした。エバポレータに10mgのNiDMP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ230℃及び150℃まで加熱した。NiDMP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD NiDMPコーティングでは、同じ操作条件下でのNiDMPの昇華から生成された参照NiDMPコーティングのオレンジ色とは対照的に、暗緑色を呈する。oCVD NiDMPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびにより長い波長での新しいQ帯の出現及び2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図11)。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。六量体オリゴマーは、質量分析法により、機器限界に対応するm/z=4000まで観察される。LDI-HRMS分析では、NiDMP単位間の複数のC-C結合の形成が確認される。NIR領域での強い吸収(図11)は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の存在を示すものである。
【0055】
図12は、NiDMP及びFeClのoCVD反応から得られたP(NiDMP)コーティングのヘリウムイオン顕微鏡画像を表している。
【0056】
実施例7-紙及びポリマー基板上のパターン化された導電性直接溶融ポルフィリンコーティング
ニッケル(II)5,15-ジ(メシチル)ポルフィリン(NiDMP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで紙及びポリエチレンナフタレート(PEN)基板上で行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は50℃とした。エバポレータに10mgのNiDMP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ230℃及び130℃まで加熱した。NiDMP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD NiDMPコーティングでは、同じ操作条件下でのNiDMPの昇華から生成された参照NiDMPコーティングのオレンジ色とは対照的に、暗緑色を呈する(図13)。パターン化されたP(NiDMP)コーティングは、使用されているマスクに完全に類似しており、共役ポリ(ポルフィリン)線は薄さ1ミリメートルほどである。興味深いことに、プリンター用紙及びPEN箔に蒸着させたoCVD NiDPPコーティングについても、電気伝導が観察された(図13)。
【0057】
実施例8-HDPP&FeCl
5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(HDPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は130℃とした。エバポレータに10mgのHDPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃及び150℃まで加熱した。HDPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD HDPPコーティングは、同じ操作条件下でのHDPPの昇華から生成されたHDPP参照コーティングの紫色とは対照的に、緑色を呈する。oCVD HDPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびにより低い波長での新しいソーレー帯の出現が明らかになった。スペクトルは、2000nmまでのNIR領域内に弱い幅広い吸収を示している(図14)。2000nmまでのこの吸収は、共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。三量体オリゴマーは、質量分析によって観察される(図15)。LDI-HRMS分析では、ポルフィリンコアへの鉄の導入が強調され、ポルフィリン単位間の複数のC-C結合の形成が確認される。
【0058】
実施例9-CoDPP&FeCl
コバルト(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(CoDPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は130℃とした。エバポレータに10mgのCoDPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃及び150℃まで加熱した。CoDPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD CoDPPコーティングは、同じ操作条件下でのCoDPPの昇華から生成された参照CoDPPコーティングのオレンジ色とは対照的に、暗緑色を呈する。oCVD CoDPPコーティングのUV-Vis-NIR(紫外可視近赤外線)分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2500nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図16)。UV-Vis-NIRでのコーティングの吸光度は、コーティング中のポリマーが少なくとも100モノマーを含むことを示している。LDI-HRMS分析では、CoDPP単位間に複数のC-C結合を有するP(CoDPP)オリゴマーの形成が確認される。
【0059】
実施例10-PdDPP&FeCl
パラジウム(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(PdDPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は130℃とした。エバポレータに10mgのPdDPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ260℃及び150℃まで加熱した。PdDPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD PdDPPコーティングは、同じ操作条件下でのPdDPPの昇華から生成された参照PdDPPコーティングのオレンジ色とは対照的に、濃いオレンジ色を呈する。oCVD PdDPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図17)。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。LDI-HRMS分析では、PdDPP単位間に複数のC-C結合を有するP(PdDPP)オリゴマーの形成が確認される。
【0060】
実施例11-ZnDPP&FeCl
亜鉛(II)5,15-ジ(ジフェニル)ポルフィリン(ZnDPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は130℃とした。エバポレータに10mgのZnDPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃及び150℃まで加熱した。ZnDPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD ZnDPPコーティングは、同じ操作条件下でのZnDPPの昇華から生成された参照ZnDPPコーティングのオレンジ色とは対照的に、暗緑色を呈する。oCVD ZnDPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図18)。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。LDI-HRMS分析では、ZnDPP単位間に複数のC-C結合を有するP(ZnDPP)オリゴマーの形成が確認される。
【0061】
実施例12-FeDPP&FeCl
塩化鉄(III)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(Fe(III)Cl-DPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は130℃とした。エバポレータに10mgのFe(III)Cl-DPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃及び150℃まで加熱した。Fe(III)Cl-DPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD Fe(III)Cl-DPPコーティングは、同じ操作条件下でのFe(III)Cl-DPPの昇華から生成された参照Fe(III)Cl-DPPコーティングのオレンジ色とは対照的に、緑がかった色を呈する。oCVD Fe(III)Cl-DPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図19)。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。LDI-HRMS分析では、Fe(III)Cl DPP単位間に複数のC-C結合を有するP(Fe(III)Cl-DPP)オリゴマーの形成が確認される。
【0062】
実施例13-CuDPP&FeCl
銅(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(CuDPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は130℃とした。エバポレータに10mgのCuDPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃及び150℃まで加熱した。CuDPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD CuDPPコーティングは、同じ操作条件下でのCuDPPの昇華から生成された参照CuDPPコーティングのオレンジ色とは対照的に、暗緑色を呈する。oCVD CuDPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、スペクトルの拡大及びQ帯の深色シフト、及び2000nmまでのNIR領域内の幅広い吸収の出現が明らかになった(図20)。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。LDI-HRMS分析では、CuDPP単位間に複数のC-C結合を有するP(CuDPP)オリゴマーの形成が確認される。
【0063】
実施例14-P(NiDPP-co-CoDPP)
ニッケル(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(NiDPP)、コバルト(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(CoDPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、3つの低温蒸発点源212と、高真空を達成するためにドライスクロールポンプ及びターボ分子ポンプを備えた特注のリアクター202(図21)で行った。全蒸着実験期間中、圧力は、10-3mbarであり、基板ホルダー214は、130℃に維持された。エバポレータ212には、10mgのNiDPP、10mgのCoDPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃、250℃及び170℃まで加熱させた。NiDPP及びCoDPPのFeClとのoCVD反応から生成されたoCVD NiDPP/CoDPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiDPP及びCoDPPの同時昇華から生成された参照NiDPP/CoDPPコーティングのオレンジ色とは対照的に、暗緑色を呈する。oCVD NiDPP/CoDPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。六量体オリゴマーは、質量分析法により、機器限界に対応するm/z=4000まで観察される。oCVD NiDPP/CoDPPコーティングのLDI-HRMS分析では、NiDPPとCoDPPと間の共有結合による結合の形成から予想されるタイプの断片の形成、及びNiDPPのみまたはCoDPPのみの反応から形成される他の断片の形成を決定的に明らかにした。これらの観察により、P(NiDPP-co-CoDPP)高分子鎖の形成が確認される。LDI-HRMS及びUV-Vis-NIR分析では、ポルフィリン単位(LDI-HRMS)間の複数のC-C結合及びNIR領域での強い吸収を有する高度に共役したP(NiDPP-co-CoDPP)の形成が確認される。
【0064】
実施例15-NiDPP&Cu(ClO
ニッケル(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(NiDPP)及び過塩素酸銅(II)(Cu(ClO)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は130℃とした。エバポレータに10mgのNiDPP及び300mgのCu(ClOを入れ、それぞれを250℃まで加熱した。NiDPP及びCu(ClOのoCVD反応から生成されたoCVD NiDPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiDPPの昇華から生成された参照NiDPPコーティングの鮮やかなオレンジ色とは対照的に、暗緑色を呈する。FeClから生成されたoCVD NiDPPコーティングのUV-Vis-NIRスペクトルと同様に、Cu(ClOから生成されたoCVD NiDPPコーティングのUV-Vis-NIRスペクトルは、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2500nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになる(図22)。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。LDI-HRMS分析では、NiDPP単位間に複数のC-C結合を有するP(NiDPP)オリゴマーの形成が確認される。
【0065】
実施例16-NiDPP&CuCl
ニッケル(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(NiDPP)及び塩化銅(II)(CuCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は130℃とした。エバポレータに10mgのNiDPP及び250mgのCuClを入れ、それぞれ250℃及び350℃まで加熱した。NiDPP及びCuClのoCVD反応から生成されたoCVD NiDPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiDPPの昇華から生成された参照NiDPPコーティングの鮮やかなオレンジ色とは対照的に、緑色を呈する。oCVD NiDPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2000nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図23)。1600nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。LDI-HRMS分析では、NiDPP単位間に複数のC-C結合を有するP(NiDPP)オリゴマーの形成が確認される(図23)。oCVD NiDPPコーティングの電気伝導率は、マルチメーターを使用した簡素な抵抗率測定によって確認した。
【0066】
実施例17-200℃でのNiDPP&FeCl
ニッケル(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(NiDPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板温度は200℃とした。エバポレータに10mgのNiDPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃及び150℃まで加熱した。NiDPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD NiDPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiDPPの昇華から生成された参照NiDPPコーティングの鮮やかなオレンジ色とは対照的に、茶色を呈する。oCVD NiDPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2500nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図25)。2500nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。LDI-HRMS分析では、NiDPP単位間に複数のC-C結合を有するP(NiDPP)オリゴマーの形成が確認される(図26)。oCVD NiDPPコーティングは、6.3×10-3S・cm-1の電気オーム伝導率を示す。
【0067】
実施例18-室温でのNiDPP&FeCl
ニッケル(II)5,15-ジ(フェニル)ポルフィリン(NiDPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は10-3mbar、基板は、室温(25℃)で維持した。エバポレータに10mgのNiDPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃及び150℃まで加熱した。NiDPP及びFeClのoCVD反応から生成されたoCVD NiDPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiDPPの昇華から生成された参照NiDPPコーティングの鮮やかなオレンジ色とは対照的に、緑色を呈する。oCVD NiDPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析により、ソーレー帯及びQ帯の拡大及び深色シフト、ならびに2100nmまでのNIR領域での幅広い吸収の出現が明らかになった(図27)。2000nmまでのこの吸収は、高度に共役したポリ(ポルフィリン)の形成を示唆するものである。LDI-HRMS分析では、NiDPP単位間に複数のC-C結合を有するP(NiDPP)オリゴマーの形成が確認される(図28)。oCVD NiDPPコーティングは、1.5×10-3S・cm-1の電気オーム伝導率を示す。パターン化されたP(NiDPP)コーティングは、使用されているマスクに完全に類似しており、導電性共役ポリ(ポルフィリン)線は、薄さ1ミリメートルほどである。興味深いことに、プリンター用紙に蒸着させたoCVD NiDPPコーティングについても、電気伝導が観察された(図29)。
【0068】
実施例20-NiTPP
ニッケル(II)5,10,15,20(テトラフェニル)ポルフィリン(NiTPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は、10-3mbarであり、基板は、130℃に維持された。エバポレータに15mgのNiTPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃及び150℃まで加熱した。NiTPPとFeClのoCVD反応から生成されたoCVD NiTPPコーティングは、同じ操作条件下でのNiTPPの昇華から生成された参照NiTPPコーティングの1つと非常に類似したオレンジ色を呈する。oCVD NiTPPコーティングのUV-Vis-NIR分光分析では、ソーレー帯のわずかな拡大のみが明らかになる。より長い波長での吸光度の増加は観察されなかった。oCVD NITPPコーティングのLDI-HRMS分析では、モノマー種の存在のみが明らかになる(図30)。同じ条件下で生成されたoCVD NiDPPコーティングのLDI-HRMS分析では、NiDPP単位間に複数のC-C結合を有するP(NiDPP)オリゴマーの形成が示されているが、NiTPP単位の重合は、証明できなかった。これらの観察結果は、酸化化学蒸着による共役ポリ(ポルフィリン)コーティングの形成にNiTPPが好適でないことを強調している。
【0069】
実施例21-CrTEPP
クロム(III)メソ-テトラ(4-エチニルフェニル)塩化ポルフィン(CrTEPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は、5×10-4mbarであり、基板は、100℃に維持された。エバポレータに50mgのCrTEPP及び300mgのFeClを入れ、それぞれ275℃及び150℃まで加熱した。CrTEPP及びFeClのoCVD反応では、UV-Vis-NIR分光分析によって証明されるようなガラス基板の着色はいずれも生じなかった(図31)。CrTEPPモノマーまたは誘導体、及びCrTEPPの熱分解により、CrTEPPエバポレータ内に形成されたチャーに関連する吸収帯が存在しないことは、酸化化学蒸着による共役ポリ(ポルフィリン)コーティングの形成にこのエチニル置換ポルフィリンが好適でないことを強調している。
【0070】
実施例22-DEPP
メソ-ジ(4-エチニルフェニル)塩化ポルフィン(DEPP)及び塩化鉄(III)(FeCl)の酸化化学蒸着反応は、上記の特注のoCVDリアクターで行った。全蒸着実験期間中、圧力は、10-3mbarであり、基板は、100℃に維持された。エバポレータに50mgのDEPP及び150mgのFeClを入れ、それぞれ250℃及び150℃まで加熱した。DEPP及びFeClのoCVD反応では、UV-Vis-NIR分光分析によって証明されるようなガラス基板の着色はいずれも生じなかった(図32)。DEPPモノマーまたは誘導体、及びDEPPの熱分解により、DEPPエバポレータ内に形成されたチャーに関連する吸収帯が存在しないことは、この化合物が酸化化学蒸着に好適でないことを強調している。これらの観察結果は、酸化化学蒸着による直接溶融ポリ(ポルフィリン)コーティングの形成にDEPPが好適でないことを強調している。
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図2d)】
図2e)】
図2f)】
図2g)】
図2h)】
図2i)】
図2j)】
図2k)】
図2l)】
図2m)】
図2n)】
図2o)】
図2p)】
図2q)】
図2r)】
図2s)】
図2t)】
図2u)】
図2v)】
図2w)】
図3a)】
図3b)】
図3c)】
図3d)】
図3e)】
図3f)】
図3g)】
図3h)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32