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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/675 20180101AFI20240529BHJP
   F21S 41/365 20180101ALI20240529BHJP
   F21S 41/255 20180101ALI20240529BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20240529BHJP
【FI】
F21S41/675
F21S41/365
F21S41/255
F21S41/147
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021530708
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2020026605
(87)【国際公開番号】W WO2021006281
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2019127256
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】本多 貴彦
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-190579(JP,A)
【文献】特開2015-123855(JP,A)
【文献】特開2006-172840(JP,A)
【文献】特開2016-162589(JP,A)
【文献】特開2008-034182(JP,A)
【文献】特開2015-144059(JP,A)
【文献】特開2017-054608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
二次元配列され傾倒状態を個別に切り替え可能な複数の反射素子を含み、入射する光を前記複数の反射素子で反射して前記複数の反射素子の傾倒状態に応じる配光パターンを有する光を出射する配光パターン形成部と、
前記光源から出射する光の一部を前記配光パターン形成部に導光する導光部材と、
前記光源から出射する光のうち前記導光部材に入射しない光の少なくとも一部を特定の配光パターンとなるように反射するリフレクタユニットと、
を備える
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記リフレクタユニットは、前記光源から出射する光のうち前記導光部材に入射しない光の少なくとも一部を反射する第1反射部と、前記第1反射部で反射する光を前記特定の配光パターンとなるように反射する第2反射部と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記配光パターン形成部の光を出射する出射面と平行な所定の方向において、前記第1反射部は前記配光パターン形成部よりも前記光源側と反対側に位置し、前記第2反射部は前記第1反射部よりも前記配光パターン形成部側かつ前記配光パターン形成部よりも前記第1反射部側に位置する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記配光パターン形成部から出射する光、及び前記リフレクタユニットで反射した光が透過する投影レンズを更に備え、
前記第2反射部は、前記配光パターン形成部の光を出射する出射面を含む基準面と交わる
ことを特徴とする請求項2または3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記配光パターン形成部から出射する光、及び前記リフレクタユニットで反射した光が透過する投影レンズを更に備え、
前記投影レンズの入射面における前記配光パターン形成部から出射する光が入射する第1入射領域と、前記リフレクタユニットで反射した光が入射する第2入射領域とが互いに重ならない
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記配光パターン形成部から出射する光、及び前記リフレクタユニットで反射した光が透過する投影レンズを更に備え、
前記導光部材は、反射面を有するリフレクタとされ、前記投影レンズと前記光源との間の領域全体を横切る
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具として、自動車用ヘッドライトに代表される車両用前照灯や、路面等に画像を描画する描画装置等が知られている。ところで、車両用灯具では、出射する光の配光パターンを所定の配光パターンとするために様々な構成が検討されている。例えば、下記特許文献1には、光を反射する装置であるDMD(Digital Mirror Device)を用いて所定の配光パターンを形成する車両用灯具が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に記載の車両用灯具は、光源と、DMDと、リフレクタと、筐体とを備える。光源、DMD、及びリフレクタは筐体によって囲われ、光源から出射する光はリフレクタによってDMDに導光されている。DMDは、傾倒状態を個別に切り替え可能である複数の反射素子の反射面によって構成される反射制御面を有し、光を反射制御面によって反射して複数の反射素子の傾倒状態に応じる配光パターンを形成する。このため、下記特許文献1の車両用灯具は、DMDにおける複数の反射素子の傾倒状態を制御することで、出射する光の配光パターンを変更できる。
【0004】
【文献】特開2014-56746号公報
【発明の概要】
【0005】
一般的に、光源から出射する光は拡散する。このため、特許文献1に記載の車両用灯具のように光源から出射する光をDMDに導光するリフレクタを有していても、光源から出射する光の一部がリフレクタに入射せずにDMDに導光されない場合がある。リフレクタに入射しない光はDMDに導光されず、例えば光源やDMD等を囲う筐体等に吸収される。このように光源から出射する光の一部が車両用灯具から出射しない場合があり、エネルギー効率を向上したいとの要請がある。
【0006】
そこで、本発明は、出射する光の配光パターンを変更し得るとともに、エネルギー効率を向上し得る車両用灯具を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的の達成のため、本発明の車両用灯具は、光源と、入射する光を反射して所定の配光パターンを有する光を出射するとともに、前記所定の配光パターンを変更可能な配光パターン形成部と、前記光源から出射する光の一部を前記配光パターン形成部に導光する導光部材と、前記光源から出射する光の他の一部を特定の配光パターンとなるように反射するリフレクタユニットと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この車両用灯具は、配光パターン形成部から出射する所定の配光パターンを有する光と、リフレクタユニットから出射する特定の配光パターンを有する光とを車外に出射できる。また、配光パターン形成部は所定の配光パターンを変更可能である。このため、この車両用灯具は、これら光を含む光によって所望の配光パターンを形成し得るとともに、この配光パターンを変更し得る。また、この車両用灯具では、光源から出射する光の一部が導光部材によって配光パターン形成部に導光され当該配光パターン形成部で反射され、光源から出射する光の他の一部がリフレクタユニットで反射される。つまり、リフレクタユニットは、光源から出射する光のうち配光パターン形成部に導光されない光を反射する。そして、この車両用灯具は、導光部材によって配光パターン形成部に導光される光と配光パターン形成部に導光されない光とを含む光によって、配光パターンを形成できる。従って、この車両用灯具は、光源から出射して導光部材に入射しない光が生じるとともに当該光を含まない光によって配光パターンを形成する場合と比べて、エネルギー効率を向上し得る。
【0009】
前記リフレクタユニットは、前記光源から出射する光の前記他の一部を反射する第1反射部と、前記第1反射部で反射する光を前記特定の配光パターンとなるように反射する第2反射部と、を有することとしてもよい。
【0010】
光を反射して当該光を導光する場合、一般的に反射の回数を多くすることで当該光を導光可能な範囲を広げ得る。この車両用灯具では、リフレクタユニットは、光源から出射する光のうちリフレクタユニットに入射する光を第1反射部で反射し、この反射した光を更に第2反射部で反射することで、特定の配光パターンの光を出射する。このため、このリフレクタユニットは、光を第1反射部で1回だけ反射する場合と比べて、第1反射部における光を反射する領域内の各部位で反射した各光を導光可能な範囲を広げ得る。このため、この車両用灯具は、光源からの光をリフレクタユニットが1回だけ反射する場合と比べて、リフレクタユニットから出射する光によって形成される特定の配光パターンの自由度を向上し得る。
【0011】
リフレクタユニットが第1反射部と第2反射部とを有する場合、前記配光パターン形成部の光を出射する出射面と平行な所定の方向において、前記第1反射部は前記配光パターン形成部よりも前記光源側と反対側に位置し、前記第2反射部は前記第1反射部よりも前記配光パターン形成部側かつ前記配光パターン形成部よりも前記第1反射部側に位置することとしてもよい。
【0012】
リフレクタユニットが第1反射部と第2反射部とを有する場合、上記車両用灯具は、前記配光パターン形成部から出射する光、及び前記リフレクタユニットで反射した光が透過する投影レンズを更に備え、前記第2反射部は、前記配光パターン形成部の光を出射する出射面を含む基準面と交わることとしてもよい。
【0013】
このような構成にすることで、投影レンズを備えない場合と比べて、配光パターン形成部から出射する光の所定の配光パターンの大きさ、及びリフレクタユニットから出射する光の特定の配光パターンの大きさを所望の大きさにし易い。また、第2反射部が配光パターン形成部における出射面を含む基準面と交わらない場合と比べて、配光パターン形成部から投影レンズに向かう方向における配光パターン形成部と第2反射部とのずれを小さくし得る。このため、上記の場合と比べて、配光パターン形成部から投影レンズに向かう所定の配光パターンを有する光の一部が第2反射部によって遮られたり、第2反射部から投影レンズに向かう特定の配光パターンを有する光の一部が配光パターン形成部によって遮られたりすることを抑制し得る。
【0014】
上記車両用灯具は、前記配光パターン形成部から出射する光、及び前記リフレクタユニットで反射した光が透過する投影レンズを更に備え、前記投影レンズの入射面における前記配光パターン形成部から出射する光が入射する第1入射領域と、前記リフレクタユニットで反射した光が入射する第2入射領域とが互いに重ならないこととしてもよい。
【0015】
配光パターン形成部から出射する光とリフレクタユニットで反射した光とは互いに異なる位置から出射するため、これら光の投影レンズへの入射角は異なる。このため、これら光が投影レンズの入射面の同じ領域に入射する場合、当該領域における入射面の設計が難しくなる傾向にある。しかし、この車両用灯具では、これら光が投影レンズの入射面の互いに異なる領域に入射するため、投影レンズの設計を容易にし得る。
【0016】
上記車両用灯具は、前記配光パターン形成部から出射する光、及び前記リフレクタユニットで反射した光が透過する投影レンズを更に備え、前記導光部材は、反射面を有するリフレクタとされ、前記投影レンズと前記光源との間の領域全体を横切ることとしてもよい。
【0017】
このような構成にすることで、光源から出射する光が直接投影レンズに入射することを抑制して意図しない光が出射することを抑制し得る。
【0018】
以上のように本発明によれば、出射する光の配光パターンを変更し得るとともに、エネルギー効率を向上し得る車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態における車両用灯具を備える車両を概略的に示す正面図である。
図2図1のII-II線における1つの灯具の鉛直方向の断面図である。
図3】投影レンズを概略的に示す正面図である。
図4】ハイビームの配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る車両用灯具を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0021】
図1は、本発明の実施形態における車両用灯具を備える車両を概略的に示す正面図である。本実施形態の車両用灯具1は自動車用の前照灯とされる。図1に示すように車両100は、前方の左右方向のそれぞれに一対の車両用灯具1を備える。車両100に備わる一対の車両用灯具1は、互いに左右方向に対称な形状とされる。本実施形態の車両用灯具1は、複数の灯具1a,1bが互いに横並びに並べられており、灯具1aは灯具1bよりも車両100の外側に配置され、灯具1bは灯具1aよりも車両100の中央側に配置される。本実施形態の車両用灯具1は、以下に説明するように、灯具1a及び1bから光を出射することで、ハイビームを出射するように構成される。なお、灯具1bの構成は特に限定されるものではない。例えば、灯具1bは、パラボラ型の灯具やプロジェクター型の灯具や直射レンズ型の灯具等とされてもよい。また、これら灯具1a,1bの並び順も特に限定されるものではない。
【0022】
図2は、図1のII-II線における断面図であり、灯具1aの鉛直方向の断面を概略的に示す図である。図2に示すように、車両用灯具1の一部である灯具1aは、筐体10と、灯具ユニット20とを主な構成として備える。本実施形態において灯具ユニット20は、ハイビームの一部を出射する灯具ユニットとされる。
【0023】
筐体10は、ランプハウジング11、フロントカバー12及びバックカバー13を主な構成として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
【0024】
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室Rであり、この灯室R内に灯具ユニット20が収容されている。
【0025】
本実施形態の灯具ユニット20は、光源30と、導光部材としてのリフレクタ40と、配光パターン形成部50と、リフレクタユニット60と、投影レンズ70と、光吸収部材80とを主な構成として備え、不図示の構成により筐体10に固定されている。
【0026】
光源30は、光を出射する発光素子とされ、本実施形態では光を出射する出射面が概ね長方形で白色の拡散光を出射する表面実装型のLED(Light Emitting Diode)とされる。光源30は、回路基板31に実装され、光を出射する出射面が前方かつ上方を向くように配置される。なお、光源30の数や種類は特に限定されるものではなく、例えば、光源30はレーザ光を出射するレーザ素子とされてもよい。
【0027】
導光部材としてのリフレクタ40は、光源30から出射する光の一部を後述する配光パターン形成部50に導光する部材であり、光源30から出射する光の一部を反射面40rによって配光パターン形成部50に向けて反射するように構成される。また、光源30から出射する光の他の一部はリフレクタ40に入射しない。
【0028】
本実施形態のリフレクタ40は、曲面状の板状部材とされ、前方側から光源30に被さるように配置される。リフレクタ40における光源30側の面が光源30から出射する光を反射する反射面40rとされる。この反射面40rは光源30側と反対側に凹状となるように湾曲し、例えば、回転楕円曲面を基調として光源30から出射する光を集光して配光パターン形成部50に照射するように構成される。
【0029】
配光パターン形成部50は、入射する光を反射して所定の配光パターンを有する光を出射するとともに、この所定の配光パターンを変更可能に構成される。本実施形態の配光パターン形成部50は、所謂DMDとされ、反射部51と、縁部カバー52と、保護カバー53とを主な構成として備える。なお、図2では反射部51の内部の記載が省略されている。反射部51は、入射する光を反射する反射制御面51Sを有し、この反射制御面51Sによって反射する光によって所定の配光パターンを形成するように構成される。本実施形態では、反射部51は、正面視において概ね長方形に形成され、正面視における全領域が反射制御面51Sとされている。縁部カバー52は、反射部51の側面の全周及び反射制御面51Sと反対側を覆っている。保護カバー53は、透光性を有する板状部材とされ、反射制御面51Sを覆うように縁部カバー52に固定される。
【0030】
配光パターン形成部50は、光源30から出射してリフレクタ40で反射した光が保護カバー53を介して反射制御面51Sに照射されるように配置される。本実施形態では、配光パターン形成部50は、光源30よりも後方側かつ上方側に位置するとともに、保護カバー53の面53Sが概ね鉛直かつ左右方向に延在するように配置される。そして、反射制御面51Sで反射した光は、保護カバー53を介して配光パターン形成部50から出射する。このため、保護カバー53の反射制御面51S側と反対側の面53Sは、配光パターン形成部50における入射面及び出射面である。なお、縁部カバー52は特に限定されるものではなく、例えば反射部51の背面側を覆っていなくてもよい。また、配光パターン形成部50は縁部カバー52や保護カバー53を備えなくてもよい。
【0031】
反射部51は、不図示の二次元配列される複数の反射素子を有し、反射部51の反射制御面51Sはこれら複数の反射素子の反射面によって構成されている。複数の反射素子は、不図示の基板に個別に傾倒可能に支持される。この複数の反射素子は、一方側に所定の角度傾倒する第1傾倒状態と他方側に所定の角度傾倒する第2傾倒状態とにそれぞれ個別に切り替え可能とされている。反射部51には不図示の反射部駆動回路が接続され、この反射部駆動回路によるそれぞれの反射素子に対する印加電圧に応じてそれぞれの反射素子の傾倒状態が切り換えられる。このため、それぞれの反射素子は、傾倒状態に応じて入射する光を所定の方向または他の所定の方向に反射する。なお、複数の反射素子の傾倒状態が当該複数の反射素子の反射面が同一平面上に位置する状態とされる場合の反射制御面51Sは、保護カバー53の面53Sと概ね平行である。
【0032】
このような配光パターン形成部50は、反射部51の複数の反射素子の傾倒状態を制御することで、反射制御面51Sから所定の方向に向けて出射する光によって所定の配光パターンを形成できるとともに、この配光パターンを変更できる。また、配光パターン形成部50は、反射素子の傾倒状態を経時的に制御することで、所定の配光パターンにおける光の強度分布を所定の強度分布にできる。なお、反射制御面51Sによって所定の方向と異なる他の所定の方向に向けて反射される光の多くは、後述する光吸収部材80によって熱に変換される。
【0033】
リフレクタユニット60は、光源30から出射する光のうち導光部材としてのリフレクタ40に入射せずに配光パターン形成部50に導光されない光の少なくとも一部を特定の配光パターンとなるように反射する。このため、光源30から出射する光の一部は、リフレクタ40で反射されて配光パターン形成部50に入射し、当該配光パターン形成部50で反射される。また、光源30から出射する光の他の一部は、リフレクタユニット60に入射して当該リフレクタユニット60で反射される。本実施形態では、リフレクタユニット60は、第1反射部61と、第2反射部62とを有する。そして、リフレクタユニット60は、光源30から出射してリフレクタ40で反射されない光の少なくとも一部を第1反射部61によって第2反射部62に向けて反射する。また、リフレクタユニット60は、第1反射部61で反射した光を第2反射部62によって特定の配光パターンとなるように反射する。つまり、リフレクタユニット60は、光源30から出射してリフレクタ40で反射されない光を2回反射することで、特定の配光パターンの光を出射している。また、第1反射部61は第2反射部62に光を導光している。また、本実施形態では、配光パターン形成部50の反射制御面51Sから所定の方向と異なる他の所定の方向に向けて出射する光が第1反射部61に入射し、第1反射部61は当該光を後述する光吸収部材80に向けて反射する。
【0034】
本実施形態の第1反射部61は、前後方向及び左右方向に延在する曲面状の板状部材とされる。第1反射部61は、配光パターン形成部50よりも前方かつ上方に配置される。このため、配光パターン形成部50の光を出射する出射面である面53Sと平行な上下方向において、第1反射部61は配光パターン形成部50よりも光源30側と反対側に位置していると理解できる。第1反射部61における光源30側の面が光源30から出射してリフレクタ40で反射されない光を反射する反射面61rとされ、上下方向において、この反射面61rと光源30とが互いに重なっている。
【0035】
本実施形態の第2反射部62は、上下方向及び左右方向に延在する曲面状の板状部材とされる。第2反射部62は、第1反射部61と離隔しており、第1反射部61よりも下方かつ配光パターン形成部50よりも上方に配置されている。このため、配光パターン形成部50の光を出射する出射面である面53Sと平行な上下方向において、第2反射部62は第1反射部61よりも配光パターン形成部50側かつ配光パターン形成部50よりも第1反射部61側に位置すると理解できる。また、第2反射部62は、配光パターン形成部50における保護カバー53の面53Sを含む基準面RP1と交わっている。なお、この基準面RP1は平面である。第2反射部62における前方側の面が第1反射部61の反射面61rで反射した光を反射する反射面62rとされる。なお、第2反射部62は、第1反射部61に接続していてもよく、第1反射部61と第2反射部62とが一体に形成されていてもよく、反射面61rと反射面62rとが接続していてもよい。
【0036】
第1反射部61の反射面61rは、光源30側と反対側に凹状となるように湾曲している。この反射面61rは、光源30から出射してリフレクタ40で反射されない光の少なくとも一部が第2反射部62の反射面62rに集光するように当該光を反射する。具体的には、この反射面61rは、一方の焦点が光源30と重なり他方の焦点が第2反射部62の反射面62rと重なる回転楕円曲面を基調とする曲面とされ、この回転楕円曲面の少なくとも一部を含んでいる。この回転楕円曲面における反射面62rと重なる焦点は、この反射面62rの中心またはその近傍に位置している。一方、第2反射部62の反射面62rは、左右方向において後方側に凹状となるように湾曲し、第1反射部61で反射した光を特定の配光パターンとなるように前方へ向けて反射する。そして、リフレクタユニット60から特定の配光パターンを有する光が出射する。また、本実施形態では、第1反射部61の反射面61rは、配光パターン形成部50の反射制御面51Sから所定の方向と異なる他の所定の方向に向けて出射する光を後述する光吸収部材80に向けて反射する。つまり、この光が反射面61rによって光吸収部材80に向けて反射するように、第1反射部61及び配光パターン形成部50の配置、及び反射面61rの形状が調節されている。なお、第1反射部61の反射面61rは、光源30から出射してリフレクタ40で反射されない光の少なくとも一部を第2反射部62の反射面62rに向けて反射すればよく、例えば平面とされもよい。また、第2反射部62の反射面62rは、第1反射部61で反射した光を特定の配光パターンとなるように反射すればよく、例えば平面とされてもよい。
【0037】
投影レンズ70は、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ70は、配光パターン形成部50、及び第2反射部62よりも前方に配置される。配光パターン形成部50から出射する所定の配光パターンを有する光、及びリフレクタユニット60から出射する特定の配光パターンを有する光が投影レンズ70に入射し、これら光の発散角が投影レンズ70で調整される。このように投影レンズ70で発散角が調整されたこれら光がフロントカバー12を介して灯具1aから出射する。本実施形態では、投影レンズ70は、入射面70i及び出射面70oが凸状に形成されたレンズとされる。投影レンズ70の光軸70aは、配光パターン形成部50における反射制御面51Sの中心またはその近傍を通り、投影レンズ70の後方焦点は、反射制御面51S上またはその近傍に位置している。また、投影レンズ70の光軸70aは、反射制御面51Sと概ね垂直である。この投影レンズ70の光軸70aを基準とする場合、配光パターン形成部50の光を出射する出射面である面53Sと平行な上下方向において、リフレクタユニット60の第1反射部61は、この光軸70aよりも光源30側と反対側に位置している。また、第2反射部62は、第1反射部61よりも光軸70a側かつ光軸70aよりも第1反射部61側に位置している。また、投影レンズ70と光源30との間の領域全体を導光部材としてのリフレクタ40が横切っている。なお、投影レンズ70の上部や下部が切り欠かれてもよい。
【0038】
図3は、投影レンズ70を概略的に示す正面図であり、投影レンズ70を入射面70i側から見る図である。図3に示すように、入射面70iは、第1領域70iaと、第2領域70ibとを含んでいる。なお、図3において、第2領域70ibにはハッチングが施されている。第1領域70iaは、第2領域70ibよりも上方側に位置している。つまり、第1領域70iaは、第2領域70ibよりも光源30側と反対側に位置している。第2領域70ibには、光を拡散する不図示の複数の拡散素子が設けられている。拡散素子として、突起や窪みが挙げられる。このような拡散素子の上下左右の幅は概ね1mmであることが好ましい。また、拡散素子が突起とされる場合、拡散素子の高さは概ね10μmよりも小であることが好ましい。また、拡散素子が窪みとされる場合、拡散素子の深さは概ね10μmよりも小であることが好ましい。また、隣接する拡散素子間の距離は概ね1mmであることが好ましい。そして、配光パターン形成部50から出射する所定の配光パターンを有する光は、第1領域70ia内に入射し、リフレクタユニット60で反射した光は、第2領域70ib内に入射する。このため、配光パターン形成部50から出射する所定の配光パターンを有する光が入射する第1入射領域と、リフレクタユニット60で反射した光が入射する第2入射領域とが互いに重ならず、この第2入射領域には複数の拡散素子が設けられていると理解できる。なお、第2入射領域には拡散素子が設けられていなくてもよい。また、第1入射領域と第2入射領域とが互いに重なっていてもよい。
【0039】
光吸収部材80は、光吸収性を有する部材であり、入射する光の多くを熱に変換するように構成される。図2に示すように、本実施形態では、光吸収部材80は、光吸収性を有する板状部材とされ、配光パターン形成部50よりも下方、及び光源30よりも後方に配置される。このため、配光パターン形成部50の面53Sと平行な上下方向において、光吸収部材80は配光パターン形成部50よりも光源30側に位置していると理解できる。また、配光パターン形成部50の面53Sと垂直な前後方向において、光吸収部材80は光源30よりも配光パターン形成部50側に位置していると理解できる。なお、前後方向において、配光パターン形成部50の一部は、配光パターン形成部50よりも光源30側に位置している。そして、配光パターン形成部50の反射制御面51Sから所定の方向と異なる他の所定の方向に向けて出射してリフレクタユニット60における第1反射部61の反射面61rで反射する光が光吸収部材80に入射し、この光の多くが熱に変換される。光吸収部材80として、例えばアルミニウム等の金属から構成されて表面に黒アルマイト加工等が施される板状部材が挙げられる。なお、光吸収部材80は、筐体10のランプハウジング11と一体に形成されて、ランプハウジング11の一部とされてもよい。また、灯具ユニット20が光源30や配光パターン形成部50が搭載されるヒートシンクを更に備える場合、光吸収部材80は、このヒートシンクと一体に形成されて、ヒートシンクの一部とされてもよい。
【0040】
次に車両用灯具1の動作について説明する。具体的には、ハイビームを出射する動作について説明する。
【0041】
本実施形態では、車両用灯具1の灯具1a,1bから出射する光によってハイビームの配光パターンが形成される。図2に示すように、灯具1aでは、不図示の電源から電力が供給されることで、光源30から白色の光が出射する。光源30から出射する光の一部は、導光部材としてのリフレクタ40の反射面40rによって配光パターン形成部50に向かって反射される。このリフレクタ40の反射面40rで反射した光L1Aは、集光して配光パターン形成部50の反射制御面51Sに照射され、反射制御面51Sによって反射される。本実施形態では、この光L1Aは、反射制御面51Sの全面に照射される。そして、配光パターン形成部50から所定の方向に所定の配光パターンを有する光L1Bが出射し、この光L1Bは、投影レンズ70を透過し、フロントカバー12を介して灯具1aから出射する。なお、反射制御面51Sから所定の方向と異なる他の所定の方向に向けて出射する光L1Cの多くは、リフレクタユニット60における第1反射部61の反射面61rで反射され、光吸収部材80に入射して熱に変換される。また、光源30から出射する光の他の一部でありリフレクタ40の反射面40rで反射されない光の少なくとも一部は、リフレクタユニット60における第1反射部61の反射面61rで第2反射部62に向かって反射される。この第1反射部61の反射面61rで反射された光L2Aは、第2反射部62の反射面62rによって特定の配光パターンとなるように反射される。そして、リフレクタユニット60から特定の配光パターンを有する光L2Bが出射し、この光L2Bは、投影レンズ70を透過し、フロントカバー12を介して灯具1aから出射する。
【0042】
図4はハイビームの配光パターンを示す図である。図4においてSは水平線を示す。図4に示すように、ハイビームの配光パターンPHは、複数の配光パターンから形成される。具体的には、ハイビームの配光パターンPHは、光L1Bによって形成される所定の配光パターンPT1と、光L2Bによって形成される特定の配光パターンPT2と、灯具1bから出射する光によって形成される配光パターンPT3とによって形成される。なお、図4において、ハイビームの配光パターンPHの輪郭は太線で示され、所定の配光パターンPT1の輪郭は点線で示され、特定の配光パターンPT2の輪郭は一点鎖線で示され、配光パターンPT3の輪郭は二点鎖線で示されている。また、所定の配光パターンPT1の輪郭及び配光パターンPT3の輪郭のうち、ハイビームの配光パターンPHの輪郭と重なる部位は、ハイビームの配光パターンPHの輪郭からずらして示されている。
【0043】
図4に示すように、ハイビームの配光パターンPHのうち上部は所定の配光パターンPT1によって形成され、下部は特定の配光パターンPT2と配光パターンPT3によって形成される。所定の配光パターンPT1の下部と配光パターンPT3の上部とは互いに重なっている。つまり、灯具1aの配光パターン形成部50における反射部51の複数の反射素子の傾倒状態は、このような所定の配光パターンPT1が形成されるように制御される。また、特定の配光パターンPT2の全体は、配光パターンPT3と重なっている。また、特定の配光パターンPT2と所定の配光パターンPT1とは互いに重なっていない。つまり、灯具1aのリフレクタユニット60は、特定の配光パターンPT2がこのようになるように構成されている。
【0044】
本実施形態の車両用灯具1は、上記のように、灯具1aから所定の配光パターンPT1を有する光L1B及び特定の配光パターンPT2を有する光L2Bを出射し、灯具1bから配光パターンPT3を有する光を出射する。そして、これら光によってハイビームの配光パターンPHが形成され、車両用灯具1からハイビームが出射される。このように出射されるハイビームの配光パターンPHの一部は、配光パターン形成部50から出射する光L1Bを含む光によって形成される。このため、ハイビームの配光パターンPHのうちこの光L1Bを含む光によって形成される領域であり、図4における所定の配光パターンPT1と重なる領域の配光パターンを変更することができる。従って、例えば、車両100前方の状況に応じてこの領域の配光パターンを変更することができ、車両用灯具1から出射するハイビームをADB(Adaptive Driving Beam)とすることができる。なお、特定の配光パターンPT2は、所定の配光パターンPT1と重なっていてもよい。また、特定の配光パターンPT2の少なくとも一部は、所定の配光パターンPT1及び灯具1bから出射する光の配光パターンPT3と重なっていなくてもよい。この場合、車両用灯具1から出射される光が照射される領域を拡大することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具は、光源30と、導光部材としてのリフレクタ40と、配光パターン形成部50と、リフレクタユニット60と、を備える。リフレクタ40は、光源30から出射する光の一部を配光パターン形成部50に導光する。配光パターン形成部50は、入射する光L1Aを反射して所定の配光パターンPT1を有する光L1Bを出射するとともに、当該所定の配光パターンPT1を変更可能である。リフレクタユニット60は、光源30から出射する光の他の一部を特定の配光パターンPT2となるように反射する。
【0046】
本実施形態の車両用灯具1は、配光パターン形成部50から出射する所定の配光パターンPT1を有する光L1Bと、リフレクタユニット60から出射する特定の配光パターンPT2を有する光L2Bとを車外に出射できる。また、配光パターン形成部50は所定の配光パターンPT1を変更可能である。このため、本実施形態の車両用灯具1は、これら光L1B,L2Bを含む光によって所望の配光パターンを形成し得るとともに、この配光パターンを変更し得、例えば上記のようにADBを出射することができる。また、本実施形態の車両用灯具1では、光源30から出射する光の一部が導光部材としてのリフレクタ40によって配光パターン形成部50に導光され当該配光パターン形成部50で反射される。また、光源30から出射する光の他の一部がリフレクタユニット60で反射される。つまり、リフレクタユニット60は、光源30から出射する光のうち配光パターン形成部50に導光されない光を反射する。そして、本実施形態の車両用灯具1は、リフレクタ40によって配光パターン形成部50に導光される光と配光パターン形成部50に導光されない光とを含む光によって、配光パターンを形成できる。従って、本実施形態の車両用灯具1は、光源30から出射してリフレクタ40に入射しない光が生じるとともに当該光を含まない光によって配光パターンを形成する場合と比べて、エネルギー効率を向上し得る。
【0047】
本実施形態の車両用灯具1では、リフレクタユニット60は、第1反射部61と、第2反射部62と、を有する。第1反射部61は、光源30から出射する光のうち配光パターン形成部50に導光されない光の少なくとも一部を反射する。第2反射部62は、第1反射部61で反射する光L2Aを特定の配光パターンとなるように反射する。光を反射して当該光を導光する場合、一般的に反射の回数を多くすることで当該光を導光可能な範囲を広げ得る。本実施形態のリフレクタユニット60は、光源30から出射する光のうちリフレクタユニット60に入射する光を第1反射部61で反射し、この反射した光L2Aを更に第2反射部62で反射することで、特定の配光パターンPT2の光L2Bを出射する。このため、本実施形態のリフレクタユニット60は、光を第1反射部61で1回だけ反射する場合と比べて、第1反射部61における光を反射する領域内の各部位で反射した各光を導光可能な範囲を広げ得る。このため、本実施形態の車両用灯具1は、光源30からの光をリフレクタユニット60が1回だけ反射する場合と比べて、リフレクタユニット60から出射する光L2Bによって形成される特定の配光パターンPT2の自由度を向上し得る。
【0048】
本実施形態の車両用灯具1では、第1反射部61の反射面61rは、一方の焦点が光源30と重なり他方の焦点が第2反射部62の反射面62rと重なる回転楕円曲面の少なくとも一部を含む曲面とされる。このため、第1反射部61の反射面61rが平面とされる場合と比べて、第1反射部61で反射して第2反射部62に入射する光量を増加し得、リフレクタユニット60から出射する光の光量を増加し得る。
【0049】
本実施形態の車両用灯具1は、配光パターン形成部50から出射する光L1B、及びリフレクタユニット60で反射した光L2Bが透過する投影レンズ70を更に備える。このため、本実施形態の車両用灯具1は、投影レンズ70を備えない場合と比べて、配光パターン形成部50から出射する光L1Bの所定の配光パターンの大きさ、及びリフレクタユニット60から出射する光L2Bの特定の配光パターンの大きさを所望の大きさにし易い。
【0050】
本実施形態の車両用灯具1は、上記の投影レンズ70を備え、第2反射部62は、配光パターン形成部50における所定の配光パターンを有する光L1Bを出射する出射面である保護カバー53の面53Sを含む基準面RP1と交わる。このため、第2反射部62が配光パターン形成部50におけるこの基準面RP1と交わらない場合と比べて、配光パターン形成部50から投影レンズ70に向かう方向における配光パターン形成部50と第2反射部62とのずれを小さくし得る。このため、本実施形態の車両用灯具1は、上記の場合と比べて、配光パターン形成部50から投影レンズ70に向かう所定の配光パターンを有する光L1Bの一部が第2反射部62によって遮られたり、第2反射部62から投影レンズ70に向かう特定の配光パターンを有する光L2Bの一部が配光パターン形成部50によって遮られたりすることを抑制し得る。
【0051】
本実施形態の車両用灯具1では、投影レンズ70の入射面70iにおける配光パターン形成部50から出射する光L1Bが入射する第1入射領域と、リフレクタユニット60で反射した光L2Bが入射する第2入射領域とが互いに重ならない。配光パターン形成部50から出射する光L1Bとリフレクタユニット60で反射した光L2Bとは互いに異なる位置から出射するため、これら光L1B,L2Bの投影レンズ70への入射角は異なる。このため、これら光L1B,L2Bが投影レンズ70の入射面70iの同じ領域に入射する場合、当該領域における入射面70iの設計が難しくなる傾向にある。しかし、本実施形態の車両用灯具では、これら光L1B,L2Bが投影レンズ70の入射面70iの互いに異なる領域に入射するため、投影レンズ70の設計を容易にし得る。
【0052】
本実施形態の車両用灯具1では、投影レンズ70の入射面70iにおける上記の第2入射領域に、光を拡散する複数の拡散素子が設けられている。このため、リフレクタユニット60から出射する光L2Bによって形成される特定の配光パターンPT2の輪郭をぼやかすことができる。このため、特定の配光パターンPT2の輪郭を目立ちにくくして運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。なお、特定の配光パターンPT2の輪郭をぼやかす観点では、第2入射領域、及び投影レンズ70の出射面70oにおけるリフレクタユニット60で反射してこの第2入射領域に入射する光L2Bが出射する出射領域の少なくとも一方に、複数の拡散素子が設けられていればよい。
【0053】
本実施形態の車両用灯具1では、リフレクタ40は、投影レンズ70と光源30との間の領域全体を横切る。このため、本実施形態の車両用灯具1は、光源30から出射する光が直接投影レンズ70に入射することを抑制して意図しない光が出射することを抑制し得る。
【0054】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
例えば、上記実施形態では、車両用灯具1は、ハイビームを照射するものとされたが、本発明は特に限定されない。例えば、車両用灯具1は、ロービームとともに画像を構成する光を路面等の被照射体に照射するものとされてもよい。この場合、例えば、上記実施形態の灯具1aにおける灯具ユニット20を上下反転させた構成にする。つまり、配光パターン形成部50は光源30よりも下方に配置され、リフレクタユニット60の第1反射部61は、配光パターン形成部50よりも前方かつ下方に配置される。また、第2反射部62は、第1反射部61よりも上方かつ配光パターン形成部50よりも下方に配置される。また、配光パターン形成部50から出射する光L2Bが車両前方の路面に照射されるように、配光パターン形成部50の向きや投影レンズ70の形状が調節される。また、光L2Bによって形成される特定の配光パターンPT2の全体が灯具1bから出射する光によって形成される配光パターンPT3と重なるように、第1反射部61の反射面61r及び第2反射部62の反射面62rの形状、投影レンズ70の形状等が調節される。そして、この特定の配光パターンPT2と配光パターンPT3とによってロービームの配光パターンを形成する。つまり、光源30から出射する光のうち配光パターン形成部50に導光されない光の少なくとも一部がロービームに利用される。また、配光パターン形成部50から出射する光L1Bが画像を構成する光となるように、配光パターン形成部50における反射部51の複数の反射素子の傾倒状態を制御する。このようにすることで、ロービームとともに画像を構成する光を路面に照射することができる。また、反射素子の傾倒状態を制御することで、この画像を変化させることができる。この場合、車両用灯具1から出射する光の配光パターンは、ロービームと画像を構成する光とによって形成される配光パターンと理解できる。そして、灯具1aがこのような構成とされたとしても、車両用灯具1は、上記実施形態と同様に、光源30から出射してリフレクタ40に入射しない光が生じるとともに当該光を含まない光によって配光パターンを形成する場合と比べて、エネルギー効率を向上し得る。
【0056】
また、上記実施形態では、配光パターン形成部50から出射する光L1B、及びリフレクタユニット60から出射する光L2Bは、灯具1aから車両100の前方に向かって出射された。しかし、こられ光L1B,L2Bの灯具1aから出射方向は、互いに異なっていてもよい。例えば、灯具1aから光L1Aを車両100の側方の路面に向けて出射し、灯具1aから光L1Bを車両100の前方に向けて出射してもよい。また、車両用灯具1が画像を構成する光を路面等の被照射体に照射可能とされる場合、車両用灯具1が出射する光の方向や車両用灯具1が車両に取り付けられる位置は特に限定されない。
【0057】
また、上記実施形態では、灯具1aから出射する光と灯具1bから出射する光とによってハイビームの配光パターンが形成されていた。しかし、車両用灯具1は、灯具1aから出射する光のみによってハイビーム等の配光パターンを形成してもよい。また、車両用灯具1は、灯具1a,1bとは異なる更に別の灯具を備え、これら灯具から出射する光によってハイビーム等の配光パターンを形成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、車両用灯具1は、光源30から出射する光を配光パターン形成部50に導光する導光部材として、リフレクタ40を備えていた。しかし、導光部材は特に限定されるものではない。例えば導光部材がレンズとされ、当該レンズによって光源30から出射する光を配光パターン形成部50に導光してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、配光パターン形成部50の出射面である面53Sと平行な方向において、第1反射部61は、配光パターン形成部50よりも光源30側と反対側に位置していた。また、第2反射部62は、上記の方向において、第1反射部61よりも配光パターン形成部50側かつ配光パターン形成部50よりも第1反射部61側に位置していた。しかし、第1反射部61や第2反射部62の位置は特に限定されるものではない。例えば、上記の方向において、第2反射部62は、配光パターン形成部50よりも第1反射部61側と反対側に位置していてもよい。つまり、第1反射部61と第2反射部62との間に配光パターン形成部50が位置するように第1反射部61と第2反射部62とが配置されてもよい。また、第1反射部61は、上記の方向において、光源30よりも配光パターン形成部50側と反対側に配置されてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、リフレクタユニット60は、第1反射部61の反射面61rと第2反射部62の反射面62rとによって光を2回反射して、特定の配光パターンPT2の光L2Bを出射していた。しかし、リフレクタユニット60は、光源30から出射する光のうち配光パターン形成部50に導光されない光の少なくとも一部を特定の配光パターンPT2となるように反射できればよい。例えば、リフレクタユニット60は、第1反射部61から構成され、光源30から出射する光のうち配光パターン形成部50に導光されない光の少なくとも一部を第1反射部61の反射面61rによって特定の配光パターンPT2となるように反射してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、リフレクタユニット60は、配光パターン形成部50の反射制御面51Sから所定の方向と異なる他の所定の方向に向けて出射する光L1Cがリフレクタユニット60に入射し、リフレクタユニット60はこの光L1Cを光吸収部材80に向けて反射していた。しかし、反射制御面51Sから出射するこの光L1Cが直接光吸収部材80に入射するように、光源30、リフレクタ40、配光パターン形成部50、リフレクタユニット60、及び光吸収部材80が配置されてもよい。この際、光源30から出射してリフレクタ40で反射した光L1A、光源30から出射してリフレクタユニット60の第1反射部61で反射した光L2A、反射制御面51Sから出射する所定の配光パターンを有する光L1B、及びリフレクタユニット60から出射する光L2Bが光吸収部材80に入射しないように、これらの部材が配置されることが好ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、車両用灯具1は、1つのレンズから成る投影レンズ70を備えていた。しかし、車両用灯具1が備える投影レンズ70は、光軸方向に並列される複数のレンズから成るレンズ群とされてもよく、並列される複数のレンズは、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面レンズ等のうち複数種類のレンズを含んでいてもよい。また、車両用灯具1は、投影レンズ70を備えていなくてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、配光パターン形成部50は、所謂DMDとされた。しかし、配光パターン形成部50は、入射する光を反射して所定の配光パターンを有する光を出射するとともに、当該所定の配光パターンを変更可能であればよい。例えば、配光パターン形成部として、反射型の液晶パネルであるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を用いることができる。配光パターン形成部がLCOSとされる場合、車両用灯具1は光吸収部材80を備えなくてもよい。
【0064】
LCOSは、それぞれ独立して電位が制御される複数の電極が表面にマトリックス状に配置されたシリコン基板、透明電極、及び電極と透明電極とに挟まれる液晶層を備える。LCOSでは、複数の電極の電位がそれぞれ独立して制御されることによって、それぞれの電極と透明電極とに挟まれる液晶層の屈折率が独立して変化する。このため、透明電極側から入射して電極で反射して透明電極側から出射する光は、電極の電位に応じる屈折率とされる液晶層を透過する。従って、LCOSに入射する光の位相は各電極に対応する部位ごとに調節され、位相分布が変調された光がLCOSから出射する。位相が互いに異なる光は干渉し合って回折するため、LCOSは、各電極に対応する液晶層の屈折率から成るパターンに応じて入射する光を回折し、この屈折率のパターンに基づく配光パターンの光を出射する。上記のように、LCOSでは、透明電極側から入射する光は、電極で反射して透明電極側から出射し、この透明電極側から出射する光によって配光パターンが形成される。このため、LCOSでは、電極の透明電極側の面が光を反射する反射面であり、電極の透明電極側の面によって反射する光によって配光パターンが形成されると理解できる。また、LCOSは、複数の電極の電位を制御することで、電極の透明電極側の面によって反射する光によって形成される配光パターンを変更できる。
【0065】
本発明によれば、出射する光の配光パターンを変更し得るとともに、エネルギー効率を向上し得る車両用灯具が提供され、自動車等の車両用灯具などの分野において利用可能である。

図1
図2
図3
図4