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特許7495934共役ジエンフェロモンおよび関連化合物の合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】共役ジエンフェロモンおよび関連化合物の合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/293 20060101AFI20240529BHJP
   C07C 69/145 20060101ALI20240529BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20240529BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240529BHJP
【FI】
C07C67/293
C07C69/145
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021532848
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 US2019065519
(87)【国際公開番号】W WO2020123534
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】62/777,680
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518173953
【氏名又は名称】プロビビ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ワンプラー キース エム.
(72)【発明者】
【氏名】リ チュン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ロゼル デビッド
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/154244(WO,A1)
【文献】特表2013-522351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0145204(US,A1)
【文献】国際公開第2018/038928(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/034931(WO,A1)
【文献】Chem. Eur. J.,2011年,Vol.17,pp.5045-5053
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
B01J
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
による共役ジエンを調製するための方法であって、
(i)式V
によるオレフィン、
クロトンアルデヒド、および
式VI
で表されるメタセシス触媒
を含む反応混合物を形成する工程;
(ii)式III
によるメタセシス生成物を形成するのに十分な条件下で、前記反応混合物を維持する工程;ならびに
(iii)式Iによる前記共役ジエンを形成するのに十分な条件下で、式IIIによる前記メタセシス生成物と、式II
によるホスホニウムイリドとを組み合わせる工程
を含み、
式中、
R1は、-OR1a、-C(O)OR1b、または-C(O)Hであり、
R1aは、C1~6アシルまたはHであり、
R1bは、HまたはC1~6アルキルであり、
R2は、C3~12アルキルまたはC1~2アルキルであり、
R3aおよびR3b 、独立してHまたはC1~6アルキルであり、
それぞれのR5は独立して、置換されていてもよいC6~C10アリールであり、
添字であるxは、6~12の範囲の整数または1~5の範囲の整数であり、
R 6 およびR 7 は、それらが結合する炭素原子と共に、第1カルベン配位子を形成し;
R 8 およびR 9 は、独立してアニオン性配位子であり;
L 1 は、N-複素環カルベン配位子であり;
L 2 は、フェニルホスフィン配位子、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、ジメチルスルホキシド配位子、アセトニトリル配位子またはピリジン配位子である、方法。
【請求項2】
前記共役ジエンがE,Z-ジエンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1カルベン配位子が、置換されていてもよいインデニリデン、置換されていてもよいアルキリデン、置換されていてもよいベンジリデン、置換されていてもよいビニリデン、または置換されていてもよいアレニリデンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
R6およびR7が、それらが結合する炭素原子と共に、3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン、ベンジリデン、または3-メチルブタ-2-エン-1-イリデンを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
R6およびR7が、それらが結合する炭素原子と共に、3-フェニル-1H-インデン-1-イリデンを形成する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
L1が、置換されていてもよいイミダゾリジン-2-イリデンである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記メタセシス触媒が、


から選択され、式中、「Ph」はフェニルを表し、「iPr」はイソプロピルを表しDMSOはジメチルスルホキシドを表す、請求項記載の方法。
【請求項8】
前記反応混合物中の前記メタセシス触媒の量が、式Vによるオレフィンおよびクロトンアルデヒドの総量に対して0.05mol%未満である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
クロトンアルデヒドと式Vによる前記オレフィンとのモル比が、約1.5:1~約3:1の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)の式IIIによる前記メタセシス生成物が、工程(iii)の前に精製されない、請求項1記載の方法。
【請求項11】
式IIによる前記ホスホニウムイリドが、塩基と、式IIa
によるアルキルホスホニウムハライドとを反応させることにより形成され、
式中、Xはハロゲンである、
請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記塩基がカリウムtert-ブトキシドである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記共役ジエンが、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-ドデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-ドデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-イルアセタート、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-オール、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエナール、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-オール、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエナール、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-オール、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエナール、(2E,4Z)-ヘプタ-2,4-ジエン-1-オール、(2E,4Z)-ヘプタ-2,4-ジエナール、(2E,4Z)-オクタ-2,4-ジエナール、(4E,6Z)-オクタ-4,6-ジエン酸、(2E,4Z)-デカ-2,4-ジエナール、エチル(2E,4Z)-デカ-2,4-ジエノアート、(10E,12Z)-テトラデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-テトラデカ-3,5-ジエン酸、(3E,5Z)-テトラデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエナール、(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-テトラデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタート、(6E,8Z)-ペンタデカ-6,8-ジエナール、(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-オール、(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-ペンタデカ-9,11-ジエナール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-オール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエナール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-オール、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエナール、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエナール、および(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタートからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記共役ジエンが、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタートである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
工程(ii)中に形成される式IIIで表されるメタセシス生成物が、20:1超のEオレフィンとZオレフィンとのモル比を有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
工程(iii)中に形成される式Iで表される共役ジエンが、8:1超のZオレフィンとEオレフィンとのモル比を有する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
式Vによる前記オレフィンがオクタ-7-エン-1-イルアセタートであり
IIIによる前記メタセシス生成物が、E-9-オキソノン-7-エン-1-イルアセタートであり、
式IIによる前記ホスホニウムイリドが、トリフェニル(プロピリデン)-λ5-ホスファンであり、
前記共役ジエンが、E,Z-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタートである、
請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記メタセシス触媒が、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)
である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記フェニルホスフィン配位子が、トリフェニルホスフィンである、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月10日に出願された米国仮特許出願番号第62/777,680号に関する優先権を主張するものであり、該出願はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
昆虫侵入は、世界全体で作物損失の主要な原因である。害虫を防除するため、従来、広範な種類の化学殺虫剤に依存してきた。しかし、環境的配慮および消費者の安全に対する配慮により、多くの殺虫剤の登録取り消し、および最終的に食物として消費される農業製品へのそれ以外の殺虫剤の使用に対する忌避が生じている。結果として、代替的な生物学的防除剤の開発が求められている。
【0003】
フェロモンは昆虫の体の外部に分泌される化学物質であり、それらが誘発する行動学的反応の種類に従って分類され得る。フェロモンのクラスには、集合フェロモン、性フェロモン、道標フェロモンおよび警報フェロモンが含まれる。例えば、性フェロモンは、典型的には、交配を目的としてパートナーを引きつけるために昆虫によって分泌される。フェロモンが、作物の葉の上で、または果樹園の環境で、連続した期間にわたり少量まき散らされると、フェロモンのレベルは昆虫の挙動を変更させ得る閾値に達する。かかる閾値でまたはそれよりも高くフェロモンのレベルを維持することで、昆虫の繁殖プロセスに影響を与え、交配を減少させることができる。したがって、従来の殺虫剤と併用したフェロモンの使用は、効果的な防除に必要な殺虫剤の量を減少させることができ、有用な昆虫集団を保持しながら害虫を特異的に標的とすることができる。これらの利点により、ヒトおよび環境に対する危険性を減少させ、昆虫防除のコスト全体を低減することができる。
【0004】
これらの利点にもかかわらず、こうした活性成分のコストが高いことから、フェロモンは今日広く使用されていない。数千の昆虫フェロモンがこれまでに同定されているにもかかわらず、フェロモン戦略を用いて現在防除されている害虫は世界全体で約20未満であり、フェロモンが使用されている農地は地球全体でわずか0.05%のみである。鱗翅目(Lepidopteran)のフェロモンは、天然の化合物またはそれと同一のもしくは実質的に類似する合成化合物であり、アルコール、アルデヒド、またはアセタート官能基で終端し、脂肪族骨格中に3つ以下の二重結合を含有する非分岐脂肪族鎖(9個~18個の炭素原子)によって典型的には特徴づけられる。両方の位置でオレフィンの幾何学的形状を制御して共役ジエンフェロモン化合物を調製することは、依然として特に困難である。
【発明の概要】
【0005】
式I
による共役ジエンを調製するための方法が本明細書において提供される。
この方法は、
(i)式V
によるオレフィン、
式IV
によるアルデヒド、および
遷移金属と、(a)第1カルベン配位子と、(b)N-複素環カルベン配位子と、(c)フェニルホスフィン配位子、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、ジメチルスルホキシド配位子、アセトニトリル配位子、またはピリジン配位子とを含む、メタセシス触媒
を含む反応混合物を形成する工程;
(ii)式III
によるメタセシス生成物を形成するのに十分な条件下で、反応混合物を維持する工程;ならびに
(iii)式Iによる共役ジエンを形成するのに十分な条件下で、式IIIによるメタセシス生成物と、式II
によるホスホニウムイリドとを組み合わせる工程
を含み、
式中、
R1は、-OR1a、-C(O)OR1b、または-C(O)Hであり、
R1aは、HまたはC1~6アシルであり、
R1bは、HまたはC1~6アルキルであり、
R2は、C1~12アルキルであり、
R3a、R3b、R4aおよびR4bは、独立してHまたはC1~6アルキルであり、
それぞれのR5は独立して、置換されていてもよいC6~C10アリールであり、
添字であるxは、1~12の範囲の整数である。
[本発明1001]
式I
による共役ジエンを調製するための方法であって、
(i)式V
によるオレフィン、
式IV
によるアルデヒド、および
遷移金属と、(a)第1カルベン配位子と、(b)N-複素環カルベン配位子と、(c)フェニルホスフィン配位子、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、ジメチルスルホキシド配位子、アセトニトリル配位子またはピリジン配位子とを含む、メタセシス触媒
を含む反応混合物を形成する工程;
(ii)式III
によるメタセシス生成物を形成するのに十分な条件下で、前記反応混合物を維持する工程;ならびに
(iii)式Iによる前記共役ジエンを形成するのに十分な条件下で、式IIIによる前記メタセシス生成物と、式II
によるホスホニウムイリドとを組み合わせる工程
を含み、
式中、
R 1 は、-OR 1a 、-C(O)OR 1b 、または-C(O)Hであり、
R 1a は、C 1~6 アシルまたはHであり、
R 1b は、HまたはC 1~6 アルキルであり、
R 2 は、C 3~12 アルキルまたはC 1~2 アルキルであり、
R 3a 、R 3b 、R 4a およびR 4b は、独立してHまたはC 1~6 アルキルであり、
それぞれのR 5 は独立して、置換されていてもよいC 6 ~C 10 アリールであり、
添字であるxは、6~12の範囲の整数または1~5の範囲の整数である、方法。
[本発明1002]
前記共役ジエンがE,Z-ジエンである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記メタセシス触媒が、式VI
による構造を有し、
式中、
R 6 およびR 7 は、それらが結合する炭素原子と共に、前記第1カルベン配位子を形成し;
R 8 およびR 9 は、独立してアニオン性配位子であり;
L 1 は、前記N-複素環カルベン配位子であり;
L 2 は、前記フェニルホスフィン配位子、前記トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、前記ジメチルスルホキシド配位子、前記アセトニトリル配位子または前記ピリジン配位子である、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記第1カルベン配位子が、置換されていてもよいインデニリデン、置換されていてもよいアルキリデン、置換されていてもよいベンジリデン、置換されていてもよいビニリデン、または置換されていてもよいアレニリデンである、本発明1003の方法。
[本発明1005]
R 6 およびR 7 が、それらが結合する炭素原子と共に、3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン、ベンジリデン、または3-メチルブタ-2-エン-1-イリデンを形成する、本発明1003の方法。
[本発明1006]
R 6 およびR 7 が、それらが結合する炭素原子と共に、3-フェニル-1H-インデン-1-イリデンを形成する、本発明1005の方法。
[本発明1007]
L 1 が、置換されていてもよいイミダゾリジン-2-イリデンである、本発明1003の方法。
[本発明1008]
前記メタセシス触媒が、
から選択され、式中、「Ph」はフェニルを表し、「iPr」はイソプロピルを表し、「Cy」はシクロヘキシルを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表す、本発明1003の方法。
[本発明1009]
前記反応混合物中の前記メタセシス触媒の量が、式Vによるオレフィンおよび式IVによる前記アルデヒドの総量に対して0.05mol%未満である、本発明1001の方法。
[本発明1010]
式IVによる前記アルデヒドと式Vによる前記オレフィンとのモル比が、約1.5:1~約3:1の範囲である、本発明1001の方法。
[本発明1011]
式IVによる前記アルデヒドがクロトンアルデヒドである、本発明1001の方法。
[本発明1012]
工程(ii)の式IIIによる前記メタセシス生成物が、工程(iii)の前に精製されない、本発明1001の方法。
[本発明1013]
式IIによる前記ホスホニウムイリドが、塩基と、式IIa
によるアルキルホスホニウムハライドとを反応させることにより形成され、
式中、Xはハロゲンである、
本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記塩基がカリウムtert-ブトキシドである、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記共役ジエンが、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-ドデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-ドデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-イルアセタート、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-オール、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエナール、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-オール、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエナール、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-オール、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエナール、(2E,4Z)-ヘプタ-2,4-ジエン-1-オール、(2E,4Z)-ヘプタ-2,4-ジエナール、(2E,4Z)-オクタ-2,4-ジエナール、(4E,6Z)-オクタ-4,6-ジエン酸、(2E,4Z)-デカ-2,4-ジエナール、エチル(2E,4Z)-デカ-2,4-ジエノアート、(10E,12Z)-テトラデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-テトラデカ-3,5-ジエン酸、(3E,5Z)-テトラデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエナール、(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-テトラデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタート、(6E,8Z)-ペンタデカ-6,8-ジエナール、(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-オール、(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-ペンタデカ-9,11-ジエナール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-オール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエナール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-オール、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエナール、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエナール、および(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタートからなる群から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1016]
前記共役ジエンが、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタートである、本発明1001の方法。
[本発明1017]
工程(ii)中に形成されるEオレフィンとZオレフィンとのモル比が20:1超である、本発明1001の方法。
[本発明1018]
工程(iii)中に形成されるZオレフィンとEオレフィンとのモル比が8:1超である、本発明1001の方法。
[本発明1019]
式Vによる前記オレフィンがオクタ-7-エン-1-イルアセタートであり、
式IVによる前記アルデヒドがクロトンアルデヒドであり、
式IIIによる前記メタセシス生成物が、E-9-オキソノン-7-エン-1-イルアセタートであり、
式IIによる前記ホスホニウムイリドが、トリフェニル(プロピリデン)-λ 5 -ホスファンであり、
前記共役ジエンが、E,Z-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタートである、
本発明1001の方法。
[本発明1020]
前記メタセシス触媒が、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)
である、本発明1019の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の詳細な説明
標的生成物および関連する合成中間体におけるオレフィン幾何学的形状を高度に制御して1,3-ジエン生成物を調製するための効率的な方法が、本明細書において提供される。末端アルケン(例えば、オクタ-7-エン-1-オールのアセチル化により得られる、オクタ-7-エン-1-イルアセタート)およびα,β-非置換アルデヒド(例えば、クロトンアルデヒド)は、高い選択性を有する遷移金属触媒(例えば、第2世代Grubbs触媒)を使用するクロスメタセシスによって共役アルデヒド中間体へと変換される。クロスメタセシスは、非常に低い触媒充填量で実施され得る。次に共役アルデヒド中間体は、単離なしで直接、アルキルホスホニウムハライドを用いてWittig反応に供され、高度な選択性で標的生成物を得ることができる。ショートパス分留が使用され、高い異性体純度(例えば、87%超)を有する精製生成物(例えば、E,Z-ドデカジエン-7,9-1-イルアセタート)を、工業規模で得ることができる。方法の1つの非限定的な態様をスキーム1に示す。
【0007】
スキーム1
【0008】
I. 定義
以下の定義および略語が、本発明の解釈に用いられる。本明細書において使用する場合、用語「発明」または「本発明」は非限定的な用語であり、いかなる単一の態様を指すことも意図せず、考えられる全ての態様を包含する。
【0009】
本明細書において使用する場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」またはそれらのその他の変形は、非排除的な包含を含むことを意図している。要素の列挙を含む組成物、混合物、プロセスまたは方法は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明確に列挙されていないか、またはかかる組成物、混合物、プロセスまたは方法に本来備わっている他の要素を含んでよい。さらには、明確に特段の記載がないかぎり、「または」は、包括的な「または」を指し、排除的な「または」を指すものではない。
【0010】
用語「約」および「およそ」は、数値を修飾するために本明細書において使用する場合、その明示されている値の周辺の近似範囲を表す。値が「X」である場合、「約X」または「およそX」は、0.9X~1.1Xである値を表し、特定の例においては、0.95X~1.05X、0.98X~1.02X、または0.99X~1.01Xである値を表す。「約X」または「およそX」というときは、具体的には、X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04Xおよび1.05Xである値を少なくとも指す。よって、「約X」および「およそX」は、例えば「0.99X」といった、クレームにおける限定についてのサポート記載を教示および提供することを意図する。
【0011】
本明細書において使用する場合、用語「フェロモン」は、ある物質、または複数の物質の特徴的な混合物を指し、これはある生物から分泌および放出され、同種または近縁種の第2の生物によって検出される。典型的には、第2の生物によるフェロモンの検出により、特異的な反応、例えば一定の挙動反応または発生プロセスなどが促進される。昆虫フェロモンは、例えば、交配および集合などの挙動に影響を与え得る。フェロモンの例としては、例えばC10~C18アセタート、C10~C18アルコール、C10~C18アルデヒド、およびC17~C23ポリエンなどの、鱗翅目(例えば、シャクガ科(Geometridae)、ヤガ科(Noctuidae)、ヒトリガ科(Arctiidae)およびドクガ類(Lymantriidae families)に属するガおよびチョウ)によって産生される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。「不飽和フェロモン」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するあらゆるフェロモンを指す。
【0012】
本明細書において使用する場合、用語「接触させる」および「組み合わせる」は、少なくとも2つの別個の種が反応するようにこれらを接触させるプロセスを指す。得られる反応生成物は、加えられた試薬間の反応により直接、または反応混合物中に産生され得る、1つまたは複数の加えられた試薬に由来する中間体により、産生され得ることが理解されるであろう。
【0013】
本明細書において使用する場合、用語「オレフィン」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する直鎖または分岐炭化水素化合物、およびそれらの誘導体を指す。オレフィンは非置換であるか、またはアルコール基、保護アルコール基、カルボキシレート基およびカルボン酸エステル基を含む1つまたは複数の官能基で置換され得る。複数の炭素-炭素二重結合を有する炭化水素およびそれらの誘導体は、「ポリエン」とも呼ばれる。用語「脂肪オレフィン」は、少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンを指し、脂肪オレフィンは、例えば、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24または28個の炭素原子を有し得る。「オレフィン誘導体」は、オレフィン出発材料(例えば、脂肪オレフィン出発材料)から得られる化合物を指す。オレフィン誘導体の例としては、不飽和アルコール、不飽和アルコールアセタート、不飽和アルデヒド、不飽和脂肪酸エステルおよびポリエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書において使用する場合、用語「メタセシス反応」は、炭素-炭素二重結合の形成および開裂による、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合(例えば、オレフィン化合物)を含有する化合物の中でのアルキリデン単位(すなわち、R2C=単位)の交換に関わる、触媒反応を指す。メタセシスは、同じ構造を有する2分子間で生じる(多くの場合、自己メタセシスと呼ばれる)ことがあり、および/または、異なる構造を有する2分子間で生じる(多くの場合、クロスメタセシスと呼ばれる)ことがある。
【0015】
本明細書において使用する場合、用語「メタセシス触媒」は、メタセシス反応を触媒する任意の触媒または触媒系を指す。当業者であれば、メタセシス触媒は、反応速度を増加させるためにメタセシス反応に関与するが、それ自体は反応で消費されないことを理解するだろう。「ルテニウム触媒」は、1つまたは複数のルテニウム原子を有するメタセシス触媒を指す。
【0016】
本明細書において使用する場合、用語「メタセシス生成物」は、少なくとも1つの二重結合を含有するオレフィンを指し、当該結合はメタセシス反応によって形成される。
【0017】
本明細書において使用する場合、用語「変換する」は、出発材料と少なくとも1つの試薬とを反応させ、中間体種または中間生成物を形成することを指す。変換は、中間体と少なくとも1つの試薬とを反応させ、さらなる中間体種または中間生成物を形成することも含み得る。
【0018】
本明細書において使用する場合、用語「アシル化」は、アルコール基(-OH)をエステル基(-OC(O)R、式中、Rは以下に記載するアルキル基である)に変換することを指す。
【0019】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書において使用する場合、完全飽和した、もしくは1つもしくは複数の不飽和単位を含有する、直鎖(すなわち、非分岐)もしくは分岐鎖の、置換炭化水素鎖もしくは非置換炭化水素鎖、または完全飽和した、もしくは1つもしくは複数の不飽和単位を含有する、単環式炭化水素、二環式炭化水素、もしくは三環式炭化水素であるが、芳香族ではなく(本明細書において「炭素環」もしくは「脂環式」とも呼ばれる)、分子の残りに対する単一の結合点を有するものを指す。特段の記載がないかぎり、脂肪族基は、1~30個の脂肪族炭素原子を含有する。いくつかの態様において、脂肪族基は1~20個の脂肪族炭素原子を含有する。他の態様において、脂肪族基は1~10個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の態様において、脂肪族基は1~5個の脂肪族炭素原子を含有し、さらに他の態様において、脂肪族基は1個、2個、3個または4個の脂肪族炭素原子を含有する。いくつかの態様において、「脂環式」(または「炭素環」)は、完全飽和した、または1つもしくは複数の不飽和単位を含有するが、芳香族ではなく、分子の残りに対する単一の結合点を有する、単環式C3~C6炭化水素、またはC8~C10二環式炭化水素を指す。好適な脂肪族基としては、直鎖または分岐鎖の、置換または非置換であるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびそれらの複合型、例えば(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロ脂肪族」は、脂肪族基の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、任意の酸化形態の窒素または硫黄、および任意の四級化形態の塩基性窒素を含む、窒素、酸素または硫黄)に置き換えられている脂肪族基を指す。
【0020】
本明細書において使用する場合、用語「アルキル」は当技術分野におけるその通常の意味を与えられており、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含む。特定の態様において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格中に約1~30個の炭素原子を有し(例えば、直鎖に関してはC1~C30、分岐鎖に関してはC3~C30)、代替的には約1~20個の炭素原子を有する。いくつかの態様において、アルキル基は低級アルキル基であってよく、低級アルキル基は1~4個の炭素原子を含む(例えば、直鎖低級アルキルに関してはC1~C4)。
【0021】
本明細書において使用する場合、用語「アルコキシ」は部分-ORを指し、式中、Rは先に定義したとおりアルキル基である。
【0022】
本明細書において使用する場合、用語「シクロアルキル」は、分子の残りに対する単一の結合点を有する飽和単環式炭化水素基、飽和二環式炭化水素基または飽和三環式炭化水素基を指す。シクロアルキル基には、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基が含まれる。いくつかの態様において、シクロアルキル環は、それらの環構造に約3~10個の炭素原子を有する。この場合、かかる環は単環式または二環式であり、代替的には環構造に約5個、6個または7個の炭素を有する。
【0023】
本明細書において使用する場合、用語「アルケニル」は、本明細書において定義されるように、1つまたは複数の二重結合を有するアルキル基を指す。用語「ヘテロアルケニル」は、1つまたは複数の炭素原子がヘテロ原子(例えば、任意の酸化形態の窒素または硫黄、および任意の四級化形態の塩基性窒素を含む、窒素、酸素、または硫黄)に置き換えられているアルケニル基を指す。
【0024】
本明細書において使用する場合、用語「アルキニル」は、本明細書において定義されるように、1つまたは複数の三重結合を有するアルキル基を指す。
【0025】
単独で、または別の置換基の一部として使用される用語「アリール」は、全部で5~14の環メンバーを有する、単環系または二環系を指し、系中の少なくとも1つの環は芳香族であり、系中の各環は、3~7の環メンバーを含有する。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に用いられ得る。本発明の特定の態様において、「アリール」は、1つまたは複数の置換基を有し得る、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含むがこれらに限定されない芳香族環系を指す。本明細書において使用する場合、例えばインダニル、フタルイミジル、ナフチイミジル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチルなど、芳香族環が1つまたは複数の非芳香族環に縮合している基も、用語「アリール」の範囲内に含まれる。用語「アリールオキシ」は部分-ORを指し、Rは先に定義したとおりアリール基である。
【0026】
単独で、または別の置換基の一部として使用される、用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアル-」は、5~10個の環原子(例えば、単環または二環)、いくつかの態様において、5、6、9または10個の環原子を有する基を指す。いくつかの態様において、かかる環は、環状配置にて共有されている6個のπ電子、10個のπ電子または14個のπ電子を有し、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を有する。用語「ヘテロ原子」は、窒素、酸素または硫黄を指し、任意の酸化形態の窒素または硫黄、および任意の四級化形態の塩基性窒素を含む。ヘテロアリール基には、限定されないが、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニルおよびプテリジニルが含まれる。用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアル-」には、本明細書において使用する場合、ヘテロ芳香族環が、1つまたは複数のアリール、脂環式環、または複素環に縮合している基も含まれ、ここで、基または結合点はヘテロ芳香族環上にある。非限定的な例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノオキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノオキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式または二環式であってよい。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「ヘテロ芳香族」と互換的に用いられることがあり、これらの用語のいずれも、置換されていてもよい環を含む。
【0027】
アリール基およびヘテロアリール基の例としては、フェニル、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニルおよびピリミジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アリールおよびヘテロアリール基は、金属中心と配位結合する配位子として使用される場合、アリールおよびヘテロアリール基は、金属中心と配位結合するのに十分なイオン性を有し得ることが理解されよう。例えば、ピロールなどのヘテロアリール基が窒素含有配位子として用いられる場合、本明細書において記載されるように、ピロール基は金属中心と配位結合するのに十分なイオン性を有する(例えば、ピロリルを特徴づけるのに十分脱プロトン化される)ことが理解されよう。場合によっては、アリールまたはヘテロアリール基は、金属中心と配位結合するのに十分なイオン性を有する少なくとも1つの官能基、例えばビフェノラート基を含んでよい。
【0028】
本明細書において使用する場合、用語「複素環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル」、「複素環式基」および「複素環(heterocyclic ring)」は互換的に使用され、先に定義したとおり、飽和または部分的に不飽和状態のいずれかであり、炭素原子に加えて、1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、1~4個のヘテロ原子)を有する、安定な5~7員の単環式複素環部分または7~10員の二環式複素環部分を指す。複素環の環原子に言及して使用される場合、用語「窒素」は置換窒素を含む。一例として、酸素、硫黄または窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を有する飽和環または部分不飽和環において、窒素はN(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるように)、NH(ピロリジニルにおけるように)、またはNR(N-置換ピロリジニルにおけるように)であってよい。
【0029】
複素環は、任意のヘテロ原子または安定な構造を生じる炭素原子でそのペンダント基に結合することができ、環原子のうちいずれかは、置換されていてもよい可能性がある。かかる飽和複素環式基または部分不飽和複素環式基の例としては、限定されないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ピペリジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニルおよびキヌクリジニルが挙げられる。「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基(group)」、「複素環部分」、および「複素環式基(radical)」という用語は、本明細書において互換的に使用され、ヘテロシクリル環が1つ以上のアリール、ヘテロアリール、または脂環式環に縮合している基、例えばインドリニル、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルも含む。ヘテロシクリル基は、単環式または二環式であり得る。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルで置換されたアルキル基を指し、アルキル部分およびヘテロシクリル部分は独立して置換されていてもよい。
【0030】
用語「ハロゲン」および「ハロ」は、互換的に使用され、F、Cl、BrまたはIを指す。
【0031】
本明細書において記載されるように、本発明の化合物は、「置換されていてもよい」部分を含有し得る。用語「置換された」は、概して、用語「されていてもよい(optionally)」が付されているかどうかにかかわらず、指定された部分の1つまたは複数の水素が好適な置換基で置き換えられることを意味する。特段の記載がないかぎり、「置換されていてもよい」基は、基のそれぞれの置換可能な位置において好適な置換基を有してよく、任意の所与の構造における複数の位置は、具体的に明記された基から選択される複数の置換基で置換されてよく、置換基はいずれの位置でも同じかまたは異なっていてよい。本発明によって構想された置換基の組合せは、概して、結果として安定な、または化学的に実現可能な化合物を形成する。用語「安定な」は、本明細書において使用する場合、その製造、検出、ならびに特定の態様において、本明細書において開示された1つまたは複数の目的のために回収、精製および使用を可能とする条件に供された場合、実質的に変性されない化合物を指す。
【0032】
「置換されていてもよい」基の置換可能な炭素原子における好適な1価の置換基は、独立して、ハロゲン;-(CH20~4Rα;-(CH20~4ORα;-O(CH20~4Rα、-O-(CH20~4C(O)ORα;-(CH20~4CH(ORα2;-(CH20~4SRα;Rαで置換されていてもよい-(CH20~4Ph;Rαで置換されていてもよい-(CH20~4O(CH20~1Ph;Rαで置換されていてもよい-CH=CHPh;Rαで置換されていてもよい-(CH20-4O(CH20~1-ピリジル;-NO2;-CN;-N3;-(CH20~4N(Rα2;-(CH20~4N(Rα)C(O)Rα;-N(R°)C(S)Rα;-(CH20~4N(Rα)C(O)NRα 2;-N(Rα)C(S)NRα 2;-(CH20~4N(Rα)C(O)ORα;-N(Rα)N(Rα)C(O)Rα;-N(Rα)N(Rα)C(O)NRα 2;-N(Rα)N(Rα)C(O)ORα;-(CH20~4C(O)Rα;-C(S)Rα;-(CH20~4C(O)ORα;-(CH20~4C(O)SRα;-(CH20~4C(O)OSiRα 3;-(CH20~4OC(O)Rα;-OC(O)(CH20~4SR-SC(S)SRα;-(CH20~4SC(O)Rα;-(CH20~4C(O)NRα 2;-C(S)NRα 2,-C(S)SRα;-SC(S)SRα,-(CH20~4OC(O)NRα 2;-C(O)N(ORα)Rα;-C(O)C(O)Rα;-C(O)CH2C(O)Rα;-C(NORα)Rα;-(CH20~4SSRα;-(CH20~4S(O)2Rα;-(CH20~4S(O)2ORα;-(CH20~4OS(O)2Rα;-S(O)2NRα 2;-(CH20~4S(O)Rα;-N(Rα)S(O)2NRα 2;-N(Rα)S(O)2Rα;-N(ORα)Rα;-C(NH)NRα 2;-P(O)2Rα;-P(O)Rα 2;-OP(O)Rα 2;-OP(O)(ORα2;SiRα 3;-(C1~4直鎖または分岐)アルキレン)-O-N(Rα2;または-(C1~4直鎖または分岐)アルキレン)C(O)O-N(Rα2;であり、式中、それぞれのRαは、以下に定義されるように置換されてよく、独立して、水素、C1~6脂肪族、-CH2Ph、-O(CH20~1Ph、-CH2-(5~6員ヘテロアリール環)、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員飽和環もしくは部分的不飽和である5~6員環もしくは5~6員の芳香族環、あるいは上記の定義にかかわらず、独立して出現する2つのRαは、1つまたは複数のそれらの介在原子と共に、窒素、酸素および硫黄から独立して選択され、以下に定義されるように置換されていてもよい0~4個のヘテロ原子を有する、3~12員の飽和単環もしくは二環、3~12員の部分的に不飽和である単環もしくは二環、または芳香族単環もしくは二環を形成する。
【0033】
Rαにおける好適な1価の置換基(または独立して出現する2つのRαがそれらの介在原子と共に形成する環)は、独立してハロゲン、-(CH20~2Rβ;-(ハロRβ);-(CH20~2OH;-(CH20~2ORβ;-(CH20~2CH(ORβ2;-O(ハロRβ);-CN;-N3;-(CH20~2C(O)Rβ;-(CH20~2C(O)OH;-(CH20~2C(O)ORβ;-(CH20~2SRβ;-(CH20~2SH;-(CH20~2NH2,-(CH20~2NHRβ;-(CH20~2NRβ 2;-NO2;SiRβ 3;-OSiRβ 3;-C(O)SRβ;-(C1~4直鎖または分岐アルキレン)C(O)ORβ;または-SSRβであり、各Rβは、非置換であるか、「ハロ」が前についている場合、1つまたは複数のハロゲンでのみ置換され、C1-4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH20~1Ph、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和環もしくは5~6員の部分的に不飽和である環もしくは5~6員の芳香族環から独立して選択される。Rαの飽和炭素原子における好適な2価の置換基は、=Oおよび=Sである。
【0034】
「置換されていてもよい」基の飽和炭素原子における好適な2価の置換基には、以下: =O;=S;=NNRγ 2;=NNHC(O)Rγ;=NNHC(O)ORγ;=NNHS(O)2Rγ;=NRγ;=NORγ;-O(C(Rγ 2))2~3O-;または-S(C(Rγ 2))2~3S-が含まれ、それぞれ独立して出現するRγは、水素、以下に定義されるように置換されていてもよいC1~6脂肪族、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の5~6員の飽和環もしくは非置換の部分的に不飽和である5~6員環もしくは非置換の5~6員の芳香族環から独立して選択される。「置換されていてもよい」基の隣接する置換可能な炭素に結合している好適な2価の置換基には、-O(CRβ 22~3O-が含まれ、それぞれ独立して出現するRβは、水素、以下に定義されるように置換されていてもよいC1~6脂肪族、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の5~6員の飽和環もしくは非置換の部分的に不飽和である5~6員環もしくは非置換の5~6員の芳香族環から独立して選択される。
【0035】
Rγの脂肪族基における好適な置換基には、ハロゲン、-Rδ、-(ハロRδ)、-OH、-ORδ、-O(ハロRδ)、-CN、-C(O)OH、-C(O)ORδ、-NH2、-NHRδ、-NRδ 2、または-NO2が含まれ、それぞれのRδは、非置換であるか、「ハロ」が前についている場合、1つまたは複数のハロゲンでのみ置換され、これは独立して、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH20~1Ph、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する飽和5~6員環もしくは部分的に不飽和である5~6員環もしくは芳香族環である。
【0036】
「置換されていてもよい」基の置換可能な窒素における好適な置換基には、-Rε、-NRε 2、-C(O)Rε、-C(O)ORε、-C(O)C(O)Rε、-C(O)CH2C(O)Rε、-S(O)2Rε、-S(O)2NRε 2、-C(S)NRε 2、-C(NH)NRε 2または-N(Rε)S(O)2Rεが含まれ、それぞれのRεは、独立して、水素、以下に定義されるように置換されていてもよいC1~6脂肪族、非置換-OPh、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和環もしくは部分的に不飽和である5~6員環もしくは5~6員の芳香族環であり、あるいは上記の定義にかかわらず、独立して出現する2つのRεは、1つまたは複数のそれらの介在原子と共に、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の3~12員の飽和単環もしくは飽和二環、非置換で部分的に不飽和である3~12員の単環もしくは二環、または3~12員の芳香族単環もしくは二環を形成する。
【0037】
Rεの脂肪族基における好適な置換基は、独立して、ハロゲン、-Rδ、-(ハロRδ)、-OH、-ORδ、-CN、-C(O)OH、-C(O)ORδ、-NH2、-NHRδ、-NRδ 2、または-NO2であり、それぞれのRδは、非置換であるか、「ハロ」が前についている場合、1つまたは複数のハロゲンでのみ置換され、これは独立して、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH20~1Ph、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する飽和5~6員環もしくは部分的に不飽和である5~6員環もしくは5~6員の芳香族環である。
【0038】
用語「置換された」は、概して、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことを意図しており、「許容可能」とは、当業者には公知である原子価の化学的法則に即している。場合によっては、「置換された」は、概して、本明細書において記載される置換基で水素原子を置き換えることを指し得る。ただし、本明細書において使用する場合、「置換された」は、例えば、「置換された」官能基が、置換を通して異なる官能基になるような、分子を識別するような重要な官能基の置き換えおよび/または変性を包含しない。例えば、「置換フェニル」基は依然としてフェニル部分を含まなければならず、この定義では、例えばシクロヘキシル基になるように置換することにより修飾することはできない。広範な局面において、許容可能な置換基には、非環式置換基および環式置換基、分岐置換基および非分岐置換基、炭素環置換基および複素環式置換基、有機化合物の芳香族置換基および非芳香族置換基が含まれる。例示的な置換基には、例えば本明細書において記載のものが含まれる。許容可能な置換基は、1つまたは複数であり得、適切な有機化合物について同じまたは異なるものであり得る。例えば、置換されたアルキル基はCF3であってよい。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基、および/またはヘテロ原子の原子価を充足する、本明細書において記載の有機化合物の任意の許容可能な置換基を有し得る。本発明は、有機化合物の許容可能な置換基によって、いかなる形でも限定されることを意図していない。
【0039】
置換基の例としては、アルキル、アリール、アリールアルキル、環式アルキル、複素環アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アリールアルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、アジド、アミノ、ハロゲン、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシル、カルボキサミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
II. 共役ジエンの合成方法
式I
による共役ジエンを調製するための方法が本明細書において提供される。
この方法は、
(i)式V
によるオレフィン、
式IV
によるアルデヒド、および
遷移金属と、(a)第1カルベン配位子と、(b)N-複素環カルベン配位子と、(c)フェニルホスフィン配位子、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、ジメチルスルホキシド配位子、アセトニトリル配位子、またはピリジン配位子とを含む、メタセシス触媒
を含む反応混合物を形成する工程;
(ii)式III
によるメタセシス生成物を形成するのに十分な条件下で、反応混合物を維持する工程;ならびに
(iii)式Iによる共役ジエンを形成するのに十分な条件下で、式IIIによるメタセシス生成物と、式II
によるホスホニウムイリドとを組み合わせる工程
を含み、
式中、
R1は、-OR1a、-C(O)OR1b、または-C(O)Hであり、
R1aは、HまたはC1~6アシルであり、
R1bは、HまたはC1~6アルキルであり、
R2は、C1~12アルキルであり、
R3a、R3b、R4aおよびR4bは、独立してHまたはC1~6アルキルであり、
それぞれのR5は独立して、置換されていてもよいC6~C10アリールであり、
添字であるxは、1~12の範囲の整数である。
【0041】
いくつかの態様において、R1は、-OR1aまたは-C(O)OR1bであり、R1bはC1~6アルキルである。
【0042】
A. 出発材料の調製
いくつかの態様において、オレフィンは、式Va
による構造を有し、式中、R1aはC1~6アシル(例えば、アセチル)である。いくつかの態様において、オレフィンは末端オレフィンであり、式中、R3aおよびR3bはHである。いくつかの態様において、オレフィンは内部オレフィンであり、式中、R3aおよびR3bのうち少なくとも1つはアルキル基である。アシル化オレフィンは、アシル化剤で対応するアルケノール(例えば、式中、R1a、R3aおよびR3bがHである、式Vaの化合物)をアシル化することで調製され得る。式Vaによるアシル化オレフィンを形成するのに好適な任意のアシル化剤が、本明細書において提供される方法で用いられ得る。好適なアシル化剤の例としては、酸無水物(例えば、無水酢酸)、酸塩化物(例えば、塩化アセチル)、活性化エステル(例えば、カルボン酸のペンタフルオロフェニルエステル)およびカップリング剤と共に使用されるカルボン酸、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドまたはカルボニルジイミダゾールが挙げられる。典型的には、アルケノールに対して1~10モル当量のアシル化剤が用いられる。例えば、1~5モル当量のアシル化剤または1~2モル当量のアシル化剤が用いられ得る。いくつかの態様において、アルケノールに対しておよそ1.0モル当量、1.1モル当量、1.2モル当量、1.3モル当量、1.4モル当量または1.5モル当量のアシル化剤(例えば、無水酢酸)が用いられ、式Vaによるオレフィンを形成する。
【0043】
塩基は、アシル化剤によるアルケノールのアシル化を促進するために用いられ得る。好適な塩基の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、Huenig塩基(すなわち、N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、2,6-ルチジン(すなわち、2,6-ジメチルピリジン)を含むルチジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)、キヌクリジンおよびコリジンが挙げられる。2種または複数の塩基の組合せが用いられ得る。典型的には、アルケノールに対して1モル当量未満の塩基が本発明の方法に使用される。例えば、0.05~0.9モル当量または0.1~0.5モル当量の塩基が用いられ得る。いくつかの態様において、アルケノールに対しておよそ0.05モル当量、0.1モル当量、0.15モル当量または0.2モル当量の塩基(例えば、酢酸ナトリウム)が、アシル化剤(例えば、無水酢酸)と併せて用いられ、式Vaのアシル化オレフィンを形成する。
【0044】
任意の好適な溶媒が、アルケノールのアシル化のために用いられ得る。好適な溶媒としては、トルエン、塩化メチレン、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルスルホキシド、石油エーテルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。代替的には、アルケノールは、追加の溶媒を含むことなく、無水酢酸のようなアシル化剤および酢酸ナトリウムのような塩基と組み合わされ得る。アシル化反応は、典型的には、式Vaのアシル化オレフィンを形成するのに十分な時間にわたり、およそ25℃~約100℃の範囲の温度で実施される。反応は、反応で用いられる特定のアルケノールおよびアシル化剤に応じて、数分~数時間以上の範囲の時間で実施され得る。例えば、反応は、およそ40℃、またはおよそ50℃、またはおよそ60℃、またはおよそ70℃、またはおよそ80℃で、およそ10分間、またはおよそ30分間、またはおよそ1時間、またはおよそ2時間、またはおよそ4時間、またはおよそ8時間、またはおよそ12時間にわたって実施され得る。
【0045】
B. メタセシス触媒
米国特許第9,598,531号;国際公開公報第00/015399号;国際公開公報第00/046256号および国際公開公報第2013/029079号に記載されるものを含むがこれらに限定されない、式IIIによるメタセシス生成物を形成するために、多数の触媒が用いられ得る。遷移金属および(a)第1カルベン配位子、(b)N-複素環カルベン配位子、および(c)フェニルホスフィン配位子、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、ジメチルスルホキシド配位子、アセトニトリル配位子またはピリジン配位子を含有する以下に記載の触媒は、昆虫フェロモンおよび合成的に困難な共役ジエンモチーフ(例えば、E,Z-1,3-ジエン)を有する他の化合物を工業規模で調製するのに特に有用であることが今般見出された。いくつかの態様において、メタセシス触媒における遷移金属は、第8族遷移金属である。第8族遷移金属は、例えば、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであってよい。いくつかの態様において、遷移金属はルテニウムである。いくつかの態様において、触媒は、本明細書において記載される配位子を有するルテニウム(II)錯体である。いくつかの態様において、触媒は、(a)第1カルベン配位子、(b)N-複素環カルベン配位子、および(c)フェニルホスフィン配位子、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、またはピリジン配位子を含む。
【0046】
いくつかの態様において、メタセシス触媒は、式VI
による構造を有し、
式中、
R6およびR7は、それらが結合する炭素原子と共に、第1カルベン配位子を形成し;
R8およびR9は、独立してアニオン性配位子であり;
L1は、N-複素環カルベン配位子であり;
L2は、フェニルホスフィン配位子、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、ジメチルスルホキシド配位子、アセトニトリル配位子またはピリジン配位子である。
【0047】
いくつかの態様において、第1カルベン配位子は、置換されていてもよいアルキリデン、置換されていてもよいベンジリデン、置換されていてもよいインデニリデン、置換されていてもよいビニリデン、または置換されていてもよいアレニリデンである。いくつかの態様において、R6およびR7は、それらが結合する炭素原子と共に、3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン、ベンジリデン、または3-メチルブタ-2-エン-1-イリデンを形成する。いくつかの態様において、R6およびR7は、それらが結合する炭素原子と共に、3-フェニル-1H-インデン-1-イリデンを形成する。
【0048】
本明細書において使用する場合、用語「フェニルホスフィン配位子」は、少なくとも1つの共有結合したフェニル基を有するホスフィンを指す。いくつかの態様において、フェニルホスフィン配位子は、トリフェニルホスフィン、メトキシ-ジフェニル-ホスフィン、またはフェノキシ-ジフェニル-ホスフィンである。
【0049】
いくつかの態様において、L1は、置換されていてもよいイミダゾリジン-2-イリデンである。L1は、例えば、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-イミダゾリジン-2-イリデン]または[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-イミダゾリジン-2-イリデン]であってよい。
【0050】
いくつかの態様において、メタセシス触媒は、
から選択され、式中、「Ph」はフェニルを表し、「iPr」はイソプロピルを表し、「Cy」はシクロヘキシルを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表す。
【0051】
C. メタセシス反応条件
触媒は、典型的には、準化学量論量(例えば、触媒量)でメタセシス反応混合物中に提供される。特定の態様において、この量は、どの試薬が化学量論量過剰であるかによって、化学反応の限定試薬に対して約0.001~約50mol%の範囲である。いくつかの態様において、触媒は、限定試薬に対して約40mol%以下で存在する。いくつかの態様において、触媒は、限定試薬に対して約30mol%以下で存在する。いくつかの態様において、触媒は、限定試薬に対して約20mol%未満、約10mol%未満、約5mol%未満、約2.5mol%未満、約1mol%未満、約0.5mol%未満、約0.1mol%未満、約0.015mol%未満、約0.01mol%未満、約0.0015mol%未満、またはそれ未満で存在する。いくつかの態様において、触媒は、限定試薬に対して約2.5mol%~約5mol%の範囲で存在する。いくつかの態様において、反応混合物は、約0.5mol%の触媒を含有する。触媒錯体の分子式が複数の金属を含む場合、反応に使用される触媒錯体の量がそれに応じて調整され得る。
【0052】
いくつかの態様において、反応混合物中のメタセシス触媒の量は、式Vによるオレフィンおよび式IVによるアルデヒドの総量に対して、0.05mol%未満である。
【0053】
場合によっては、メタセシス反応は溶媒の非存在下(例えば原液)で実施される。場合によっては、1つまたは複数の溶媒が、メタセシス反応で用いられ得る。本発明で使用するのに好適であり得る溶媒の例としては、ベンゼン、p-クレゾール、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、グリコール、ジエチルエーテル、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル-リン酸トリアミド、酢酸エチル、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリンなど、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、溶媒は、ベンゼン、トルエン、ペンタン、塩化メチレンおよびTHFから選択される。特定の態様において、溶媒はベンゼンである。
【0054】
いくつかの態様において、メタセシス反応は減圧下で実施される。これは、エチレンなどの揮発性副生成物がメタセシス反応の過程で生成され得る場合には、有利であり得る。例えば、反応容器からエチレン副生成物を除去することで、メタセシス反応の平衡を所望の生成物の形成へと有利に移動させ得る。いくつかの態様において、メタセシス反応は約760トール未満の圧力で実施される。いくつかの態様において、メタセシス反応は約600トール未満の圧力で実施される。いくつかの態様において、メタセシス反応は約500トール未満の圧力で実施される。いくつかの態様において、メタセシス反応は約250トール未満の圧力で実施される。いくつかの態様において、メタセシス反応は約100トール未満の圧力で実施される。いくつかの態様において、メタセシス反応は約50トール未満の圧力で実施される。いくつかの態様において、メタセシス反応は約25トール未満の圧力で実施される。いくつかの態様において、メタセシス反応は、約10トール(例えば、5トール未満または1トール未満)の圧力で実施される。
【0055】
典型的には、メタセシス反応は、過剰量の式IVによるアルデヒドを用いて実施される。例えば、式IVによるアルデヒドおよび式Vによるオレフィン(例えば、式Vaによる化合物)は、約20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1.5:1、1.25:1または1.1:1のモル比でメタセシス反応混合物中に存在し得る。いくつかの態様において、式IVによるアルデヒドおよび式Vによるオレフィンは、約5:1のモル比で存在する。特定の態様において、式IVによるアルデヒドおよび式Vによるオレフィンは、約2:1のモル比で存在する。
【0056】
いくつかの態様において、式IVによるアルデヒドおよび式Vによるオレフィンは、約1.5:1~約3:1のモル比で存在する。
【0057】
いくつかの態様において、式IVによるアルデヒドはクロトンアルデヒドである。
【0058】
有利には、本発明の方法は、数ミリグラム~数百キログラム以上の範囲の規模のメタセシス生成物を提供する。例えば、メタセシス反応は、およそ1~10グラムの式Vによるオレフィン(例えば、式Vaによる化合物);またはおよそ10~100グラムの式Vによるオレフィン;またはおよそ100~500グラムの式Vによるオレフィン;またはおよそ500~1000グラムの式Vによるオレフィンを用いて実施され得る。メタセシス反応は、少なくとも1キログラム、5キログラム、10キログラム、25キログラム、50キログラム、100キログラムまたは1,000キログラムの出発材料を用いて実施され得る。メタセシス反応は、例えば国際公開公報第2011/046872号に記載のメタセシス反応器を用いて実施され得る。この反応器は、特定の生成物流または副生成物流(例えば、オレフィン流、C2~C3化合物流、またはC3~C5化合物流)を分離および/または再利用するための、1つまたは複数の下流分離ユニットと併せて操作され得る。メタセシス反応器および1つまたは複数の分離ユニットは、1つまたは複数の吸着媒床と併せて使用され、触媒、および所望の生成物の精製のための洗浄ユニットならびに乾燥ユニットからの、メタセシス化された生成物の分離を促進し得る。メタセシス反応および他の工程(例えば、Wittig反応およびアシル化反応)が実施され、メートルトン規模で生成物を提供することができる。いくつかの態様において、共役ジエンは、約100グラム~約1,000キログラムの範囲の量で得られる。
【0059】
当業者は、時間、温度および溶媒の選択(または溶媒の非存在)は相互に依存し得ること、ならびに1つを変更することによって、本発明の方法でメタセシス生成物を調製するためにその他のものの変更も必要になることがあることを理解するだろう。メタセシス工程は、種々の温度および時間で進行し得る。概して、本発明の方法における反応は、数分間~数日間の反応時間を用いて実施される。例えば、約12時間~約7日間の反応時間が用いられ得る。いくつかの態様において、1~5日間の反応時間が用いられ得る。いくつかの態様において、約10分間~約10時間の反応時間が用いられ得る。概して、本発明の方法における反応は、約0℃~約200℃の温度で実施される。例えば、反応は15~100℃で実施され得る。いくつかの態様において、反応は20~80℃で実施され得る。いくつかの態様において、反応は100~150℃で実施され得る。
【0060】
特定の例では、メタセシス触媒の効果は、基質に触媒をゆっくりと添加することで改善され得る(例えば、触媒回転数を増加させることができるか、総触媒充填量を減少させることができる)。総触媒充填量は、単一のフルバッチ充填と同じ回転数を得るためにゆっくりと加える場合、少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%減少させることができる。総触媒充填量をゆっくりと添加する工程は、部分充填量の触媒を、1時間あたりの触媒重量でおよそ250ppm(ppmwt/時間)、100ppmwt/時間、50ppmwt/時間、25ppmwt/時間、10ppmwt/時間、5ppmwt/時間、1ppmwt/時間、0.5ppmwt/時間、0.1ppmwt/時間、0.05ppmwt/時間または0.01ppmwt/時間の平均速度で反応物質に加える工程を含み得る。いくつかの態様において、触媒は約0.01~10ppmwt/時間、0.05~5ppmwt/時間、または0.1~1ppmwt/時間の速度でゆっくりと加えられる。ゆっくりとした触媒の添加は、5分毎、15分毎、30分毎、1時間毎、2時間毎、4時間毎、12時間毎または1日毎の頻度で、バッチ充填量で実施され得る。他の態様において、ゆっくりとした添加は、連続添加プロセスで実施される。
【0061】
メタセシス工程は、メタセシス反応の選択性の観点、すなわち、反応が、例えば式IIIa
によるトランス型オレフィンであるEオレフィン、または式IIIb
によるシス型オレフィンであるZオレフィンのいずれかである特定のオレフィン異性体を生成する程度で評価され得る。
【0062】
概して、E選択触媒は、50%超のオレフィンがEオレフィンであるメタセシス生成物を提供する。好ましくは、E選択触媒は、85%超のオレフィンがEオレフィンであるメタセシス生成物を提供する。例えば、メタセシス生成物は、約86%~約100%の範囲の量でEオレフィンを含有し得る。メタセシス生成物は、約86%~約99%、または約88%~約98%、または約90%~約96%、または約92%~約94%の範囲の量でEオレフィンを含有し得る。メタセシス生成物は、約86%~約89%、または約89%~約92%、または約92%~約95%、または約95%~約98%の範囲の量でEオレフィンを含有し得る。メタセシス生成物は、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%の範囲の量でEオレフィンを含有し得る。
【0063】
E選択触媒としては、式VIによる化合物が挙げられるが、これらに限定されない。E選択触媒としては、以下の表に記載される触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
概して、Z選択触媒は、15%超のオレフィンがZオレフィンであるメタセシス生成物を提供する。例えば、メタセシス生成物は約20%~約100%の範囲の量でZオレフィンを含有し得る。メタセシス生成物は、約25%~約95%、または約30%~約90%、または約35%~約85%、または約40%~約80%、または約45%~約75%、または約50%~約70%、または約55%~約65%の範囲の量でZオレフィンを含有し得る。メタセシス生成物は、約15%~約20%、または約20%~約25%、または約25%~約30%、または約30%~約35%、または約35%~約40%、または約40%~約45%、または約45%~約50%、約50%~約60%、または約60%~約65%、または約65%~約70%、または約70%~約75%、または約75%~約80%、または約80%~約85%、または約85%~約90%、または約90%~約95%、または約95%~約99%の範囲の量でZオレフィンを含有し得る。メタセシス生成物は、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%の範囲の量でZオレフィンを含有し得る。
【0065】
Z選択触媒は、例えば、国際公開公報第2017/087710号および国際公開公報第2018/150379号、ならびにShahane et al.(Shahane,S.,et al. ChemCatChem,2013.5(12):p. 3436~3459)に記載され、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。以下に示す特定の触媒1~5は、以前に記載されている(Khan,R. K.,et al.J. Am. Chem. Soc.,2013.135(28):p. 10258~61;Hartung,J. et al. J. Am. Chem. Soc.,2013.135(28):p. 10183~5.;Rosebrugh,L. E.,et al. J. Am. Chem. Soc.,2013.135(4):p. 1276~9.;Marx,V. M.,et al. J. Am. Chem. Soc.,2013.135(1):p. 94~7.;Herbert,M. B.,et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl.,2013.52(1):p. 310~4;Keitz,B. K.,et al.J. Am. Chem. Soc.,2012.134(4):p. 2040~3.;Keitz,B. K.,et al. J. Am. Chem. Soc.,2012.134(1):p. 693~9.;Endo,K. et al. J. Am. Chem. Soc.,2011.133(22):p. 8525~7)。
【0066】
さらなるZ選択触媒が、(Cannon and Grubbs 2013;Bronner et al. 2014;Hartung et al. 2014;Pribisko et al. 2014;Quigley and Grubbs 2014)に記載され、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。かかるメタセシス触媒としては、無電荷ルテニウム、および形式上+2酸化状態にある金属中心を有し、電子係数16を有し、五配位状態であり、一般式LL'AA'M=CRbRcまたはLL'AA'M=(C=)nCRbRc(PedersonおよびGrubbs 2002)であるオスミウム金属カルベン錯体が挙げられるが、これらに限定されず、式中、
Mはルテニウムまたはオスミウムであり、
LおよびL'は、それぞれ独立して、任意の無電荷電子ドナー配位子であり、好ましくはホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト(phosphinite)、ホスホナイト、アルシン、輝安鉱、エーテル、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテルまたは複素環カルベンから選択され、
AおよびA'は、ハロゲン、水素、C1~C20アルキル、アリール、C1~C20アルコキシド、アリールオキシド、C2~C20アルコキシカルボニル、アリールカルボキシレート、C1~C20カルボキシレート、アリールスルホニル、C1~C20アルキルスルホニル、C1~C20アルキルスルフィニルから独立して選択されるアニオン性配位子であり、それぞれの配位子は、C1~C5アルキル、ハロゲン、C1~C5アルコキシで置換されていてもよく、またはハロゲン、C1~C5アルキル、もしくはC1~C5アルコキシで置換されていてもよいフェニル基で置換され、AおよびA'は共に場合によっては二座配位子を含んでよく、
RbおよびRcは、水素、C1~C20アルキル、アリール、C1~C20カルボキシレート、C1~C20アルコキシ、アリールオキシ、C1~C20アルコキシカルボニル、C1~C20アルキルチオ、C1~C20アルキルスルホニルおよびC1~C20アルキルスルフィニルから独立して選択され、RbおよびRcのそれぞれは、C1~C5アルキル、ハロゲン、C1~C5アルコキシで、またはハロゲン、C1~C5アルキル、もしくはC1~C5アルコキシで置換されていてもよいフェニル基で、置換されていてもよい。
【0067】
D. Wittig反応条件
メタセシス生成物は、式IIa
によるアルキルホスホニウムハライドから生成したイリドを含むイリドを用いて、Wittig反応により共役ジエンに変換され得る。
【0068】
典型的には、メタセシス生成物中間体に対して1~5モル当量(例えば、1~2モル当量)のアルキルホスホニウムハライドが、Wittig反応に使用される。いくつかの態様において、メタセシス生成物中間体に対して、およそ1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5モル当量のアルキルホスホニウムハライド(例えば、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド)が、共役ジエンを形成するために使用される。メタセシス生成物の添加前に、アルキルホスホニウムハライドは、塩基で処理されて、対応するホスホニウムイリドを形成し得る。ホスホニウムイリドを形成するのに好適な塩基としては、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムヒドリド、トリエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、等モル量の塩基およびアルキルホスホニウムハライドが、Wittig反応に用いられるイリドを生成するために使用される。イリドを生成するために好適な溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、それらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。得られたイリドを式IIIによるメタセシス生成物と反応させる工程は、典型的には、式Iによる共役ジエンを形成するのに十分な時間にわたって、およそ0℃~約30℃の範囲の温度で実施される。反応は、反応に使用される特定のイリドおよびメタセシス産物に応じ、数分~数時間以上の範囲の時間にわたって実施され得る。例えば、反応は、およそ0℃で、またはおよそ2~4℃で、または20~25℃以下で、およそ10分間、またはおよそ30分間、またはおよそ1時間、またはおよそ2時間、またはおよそ4時間、またはおよそ8時間、またはおよそ12時間実施され得る。
【0069】
いくつかの態様において、工程(ii)の式IIIによるメタセシス生成物は、工程(iii)におけるWittig反応で粗形態(例えば、部分的に精製されるか、または未精製)で用いられる。いくつかのかかる態様において、第1反応混合物(メタセシス反応混合物)は、第2反応混合物(Wittig反応混合物)中のイリドと組み合わせられ得る。いくつかの態様において、工程(iii)における塩基は、カリウムtert-ブトキシドまたはナトリウム-tert-ブトキシドである。
【0070】
アルデヒドメタセシス生成物(例えば、式IIIの化合物)およびホスホニウムイリド(例えば、式IIの化合物)の構造といった因子によっては、Wittig反応は、Z選択様式またはE選択様式で、オレフィン生成物(例えば、式Iの共役ジエン中のR2に隣接するオレフィン)を提供し得る。例えば、Wittig生成物は、約20%~約100%の範囲の量でZオレフィンまたはEオレフィンを含有し得る。Wittig生成物は、約25%~約95%、または約30%~約90%、または約35%~約85%、または約40%~約80%、または約45%~約75%、または約50%~約70%、または約55%~約65%の範囲の量でZオレフィンまたはEオレフィンを含有し得る。Wittig生成物は、約15%~約20%、または約20%~約25%、または約25%~約30%、または約30%~約35%、または約35%~約40%、または約40%~約45%、または約45%~約50%、または約50%~約60%、または約60%~約65%、または約65%~約70%、または約70%~約75%、または約75%~約80%、または約80%~約85%、または約85%~約90%、または約90%~約95%、または約95%~約99%の範囲の量でZオレフィンまたはEオレフィンを含有し得る。Wittig生成物は、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または100%の量でZオレフィンまたはEオレフィンを含有し得る。
【0071】
いくつかの態様において、過剰なリチウム塩(例えば、塩化リチウムなどのリチウムハライド)が、E-アルケン(例えば、式I、式Ib、または式Icによる共役ジエン中のR2に隣接するE-オレフィン)の形成を促進するために、Wittig反応混合物に含まれてよい。例えば、Schlosser et al. Angew. Chem. Int. Ed. Eng. 1966,5,126;Hodgson,et al. J. Am. Chem. Soc.,2008,130,16500~16501;およびHe,et al. Synlett 2018,29,1117~1121を参照されたい。
【0072】
いくつかの態様において、工程(ii)中に形成されるEオレフィンとZオレフィンとのモル比は、20:1よりも大きい。いくつかの態様において、工程(iii)中に形成されるZオレフィンとEオレフィンとのモル比は、8:1よりも大きい。
【0073】
昆虫フェロモンおよび関連化合物を含む様々な共役ジエンが、本明細書において提供される方法に従って調製され得る。いくつかの態様において、共役ジエンは、式Ia
によるE,Z-ジエンである。
【0074】
いくつかの態様において、共役ジエンは、式Ib
によるE,E-ジエンである。
【0075】
いくつかの態様において、共役ジエンは、式Ic
によるZ,E-ジエンである。
【0076】
いくつかの態様において、共役ジエンは、式Id
によるZ,Z-ジエンである。
【0077】
式Iによる共役ジエンは、例えば、(4E,6Z)-ヘキサデカ-4,6-ジエン-1-オール;(4E,6Z)-ヘキサデカ-4,6-ジエン-1-イルアセタート;(4E,6Z)-ヘキサデカ-4,6-ジエナール;(2E,4Z)-デカ-2,4-ジエナール;(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタート;(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエナール;(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-オール;(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート;(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエナール;(3E,5Z)-テトラデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート;(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-オール;(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-イルアセタート;(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエナール;(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート;(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエナール;(9E,11Z)-テトラデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタート;(3E,5Z)-ドデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート;(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-オール;(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-イルアセタート;(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエナール;(10E,12Z)-テトラデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート;(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-オール;(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタート;(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエナール;(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-オール;(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート;(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエナール;(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-オール;(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート;または(9E,11Z)-ペンタデカ-9,11-ジエナールであり得る。
【0078】
いくつかの態様において、共役ジエンは、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-ドデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-ドデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-イルアセタート、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-オール、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエナール、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-オール、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエナール、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-オール、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエナール、(2E,4Z)-ヘプタ-2,4-ジエン-1-オール、(2E,4Z)-ヘプタ-2,4-ジエナール、(2E,4Z)-オクタ-2,4-ジエナール、(4E,6Z)-オクタ-4,6-ジエン酸、(2E,4Z)-デカ-2,4-ジエナール、エチル(2E,4Z)-デカ-2,4-ジエノアート、(10E,12Z)-テトラデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-テトラデカ-3,5-ジエン酸、(3E,5Z)-テトラデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエナール、(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-テトラデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタート、(6E,8Z)-ペンタデカ-6,8-ジエナール、(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-オール、(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-ペンタデカ-9,11-ジエナール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-オール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエナール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-オール、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエナール、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエナール、および(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタートから選択される。いくつかの態様において、共役ジエンは(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタートである。
【実施例
【0079】
III. 実施例
実施例1. オクタ-7-エン-1-イルアセタート(7-OAc)の合成
不活性雰囲気下で、容器にオクタ-7-エン-1-オール(1モル当量)および触媒量の無水酢酸ナトリウム(0.1モル当量)を入れる。懸濁液をかき混ぜ、約55℃に加温した。反応温度が60℃を超えない速度でおおよそ1時間、無水酢酸(1.2モル当量)を混合物に加えた。混合物をさらに1時間、約60℃でかき混ぜ、次に周囲温度に冷却した。粗混合物を1反応体積の脱イオン(DI)水で1回、1反応体積の飽和炭酸ナトリウム溶液で2回、最後に1反応体積のDI水で2回洗浄した。次に粗混合物を、約45℃および15トールでトルエンを用いた共沸蒸留により乾燥させ、淡黄色の油を得た。油を次に真空蒸留により精製し、約85~90モル%の収率および約93%の総純度で最終生成物を得た。主な混入物質は、オクタ-7-エン-1-オール原料中に存在するE/Z-オクタ-6-エン-1-オール由来のE/Z-オクタ-6-エン-1-イルアセタートであった。反応はまた、おおよそ700gのオクタ-7-エン-1-オールの規模で実施され、95%~98%の範囲のモル収率を得た。
【0080】
実施例2. 7-OAcおよびクロトンアルデヒドのクロスメタセシスによる、E-9-オキソノン-7-エン-1-イルアセタートの合成
不活性雰囲気下で、容器に7-OAc(200g、1モル当量)および新たに蒸留されたクロトンアルデヒド(2モル当量)を入れた。かき混ぜながら、原料の界面の下にカニューレを介して不活性ガスを導入し、出口を最初に-10°Cの凝縮器に、最後にシリコーンオイルバブラーに通した状態とした。メタセシス触媒である1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(全ての原料に対して0.015mol%)を、トルエン溶液として加えた。プロピレンガスの発生が直ちに観測されたが、その後の2時間でゆっくりと収まった。反応の進行を、反応混合物のアリコートをGC-FID分析することにより監視した。全生成物中の7-OAcの変換は、他のメタセシス共生成物と比べて、80モル%超であり、7-位置におけるE選択性は97%超であり、共役アルデヒドについての選択性は85%超であると測定された。過剰なクロトンアルデヒドを真空下で取り除き、粗混合物を単離なしで次の合成工程に直接移した。反応はまた、おおよそ700gのオクタ-7-エン-1-イルアセタートの規模で実施され、95%~98%の範囲のモル収率を得た。
【0081】
実施例3. Wittig反応によるE,Z-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタート(E7Z9-12Ac)の合成
不活性雰囲気下で、容器にプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(1.2モル当量)およびTHFを入れ、0.7M~1M溶液を作製した。混合物をかき混ぜ、固体のナトリウムtert-ブトキシド(1.2モル当量)を30分かけて滴下し、沈殿物を有する明るいオレンジ色の溶液を得た。次に反応混合物を氷浴中で2~4℃まで冷却し、全ての他の残りの成分を含む、実施例2からの粗E-9-オキソノン-7-エン-1-イルアセタート生成物(1モル当量)を、原液またはTHF溶液のいずれかとして60分かけて滴下した。混合物を、反応過程を通して0℃で撹拌した。2時間後、このGC-FID分析は、共役アルデヒド中間体が完全に消費されたことを示した。次にTHFを真空中で除去し、同等の体積のヘキサンを加えた。粗混合物を4℃に冷却し、無機塩をさらに24時間かけて沈殿させた。上清を別の容器に移し、ヘキサンを真空下で除去した。残留物を、ショートパス装置を用いて10トールで分別蒸留し、90%超の純度であり、87%超の異性体純度であり、75%超の収率(蒸留損失を含む)のE,Z-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタートを得た。この反応を、おおよそ100gの規模でも実施し、65%~75%の範囲のモル収率を得た。
【0082】
IV. 例示的な態様
今般開示された主題に従って提供される例示的な態様としては、特許請求の範囲および以下の態様が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
1. 式I
による共役ジエンを調製するための方法であって、
(i)式V
によるオレフィン、
式IV
によるアルデヒド、および
遷移金属と、(a)第1カルベン配位子と、(b)N-複素環カルベン配位子と、(c)フェニルホスフィン配位子、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、ジメチルスルホキシド配位子、アセトニトリル配位子またはピリジン配位子とを含む、メタセシス触媒
を含む、反応混合物を形成する工程;
(ii)式III
によるメタセシス生成物を形成するのに十分な条件下で、反応混合物を維持する工程;ならびに
(iii)式Iによる共役ジエンを形成するのに十分な条件下で、式IIIによるメタセシス生成物と、式II
によるホスホニウムイリドとを組み合わせる工程
を含み、
式中、
R1は、-OR1a、-C(O)OR1b、または-C(O)Hであり、
R1aは、HまたはC1~6アシルであり、
R1bは、HまたはC1~6アルキルであり、
R2は、C1~12アルキルであり、
R3a、R3b、R4aおよびR4bは、独立してHまたはC1~6アルキルであり、
それぞれのR5は独立して、置換されていてもよいC6~C10アリールであり、
添字であるxは、1~12の範囲の整数である、方法。
【0084】
2. メタセシス触媒が、式VI
による構造を有し、
式中、
R6およびR7は、それらが結合する炭素原子と共に、第1カルベン配位子を形成し;
R8およびR9は、独立してアニオン性配位子であり;
L1は、N-複素環カルベン配位子であり;
L2は、フェニルホスフィン配位子、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン配位子、ジメチルスルホキシド配位子、アセトニトリル配位子またはピリジン配位子である、
態様1記載の方法。
【0085】
3. 第1カルベン配位子が、置換されていてもよいアルキリデン、置換されていてもよいベンジリデン、置換されていてもよいインデニリデン、置換されていてもよいビニリデン、または置換されていてもよいアレニリデンである、態様1または態様2記載の方法。
【0086】
4. R6およびR7が、それらが結合する炭素原子と共に、3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン、ベンジリデン、または3-メチルブタ-2-エン-1-イリデンを形成する、態様2または態様3記載の方法。
【0087】
5. R6およびR7が、それらが結合する炭素原子と共に、3-フェニル-1H-インデン-1-イリデンを形成する、態様4記載の方法。
【0088】
6. L1が、置換されていてもよいイミダゾリジン-2-イリデンである、態様1~5のいずれか一項記載の方法。
【0089】
7. メタセシス触媒が、
から選択され、式中、「Ph」はフェニルを表し、「iPr」はイソプロピルを表し、「Cy」はシクロヘキシルを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表す、態様1~6のいずれか一項記載の方法。
【0090】
8. 反応混合物中のメタセシス触媒の量が、式Vによるオレフィンおよび式IVによるアルデヒドの総量に対して0.05mol%未満である、態様1~7のいずれか一項記載の方法。
【0091】
9. 式IVによるアルデヒドと式Vによるオレフィンとのモル比が、約1.5:1~約3:1の範囲である、態様1~8のいずれか一項記載の方法。
【0092】
10. 式IVによるアルデヒドがクロトンアルデヒドである、態様1~9のいずれか一項記載の方法。
【0093】
11. 工程(ii)の式IIIによるメタセシス生成物が、工程(iii)の前に精製されない、態様1~10のいずれか一項記載の方法。
【0094】
12. 式IIによるホスホニウムイリドが、塩基と、式IIa
によるアルキルホスホニウムハライドとを反応させることにより形成され、
式中、Xはハロゲンである、
態様1~11のいずれか一項記載の方法。
【0095】
13. 塩基がナトリウムtert-ブトキシドである、態様12記載の方法。
【0096】
14. 共役ジエンが、E,Z-ジエン、E,E-ジエン、Z,E-ジエン、Z,Z-ジエンおよびそれらの組合せから選択される、態様1~13のいずれか一項記載の方法。
【0097】
15. 共役ジエンが、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-ドデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-ドデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-イルアセタート、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエン-1-オール、(5E,7Z)-ドデカ-5,7-ジエナール、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-オール、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエナール、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエン-1-オール、(8E,10Z)-ドデカ-8,10-ジエナール、(2E,4Z)-ヘプタ-2,4-ジエン-1-オール、(2E,4Z)-ヘプタ-2,4-ジエナール、(2E,4Z)-オクタ-2,4-ジエナール、(4E,6Z)-オクタ-4,6-ジエン酸、(2E,4Z)-デカ-2,4-ジエナール、エチル(2E,4Z)-デカ-2,4-ジエノアート、(10E,12Z)-テトラデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート、(3E,5Z)-テトラデカ-3,5-ジエン酸、(3E,5Z)-テトラデカ-3,5-ジエン-1-イルアセタート、(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエナール、(8E,10Z)-テトラデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-テトラデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタート、(6E,8Z)-ペンタデカ-6,8-ジエナール、(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-オール、(8E,10Z)-ペンタデカ-8,10-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-ペンタデカ-9,11-ジエナール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-オール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエナール、(10E,12Z)-ヘキサデカ-10,12-ジエン-1-イルアセタート、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-オール、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエナール、(11E,13Z)-ヘキサデカ-11,13-ジエン-1-イルアセタート、(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエナール、および(9E,11Z)-ヘキサデカ-9,11-ジエン-1-イルアセタートからなる群から選択される、態様1~14のいずれか一項記載の方法。
【0098】
16. 共役ジエンが、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタートである、態様1~15のいずれか一項記載の方法。
【0099】
17. 工程(ii)中に形成されるEオレフィンとZオレフィンとのモル比が20:1超である、態様1~16のいずれか一項記載の方法。
【0100】
18. 工程(iii)中に形成されるZオレフィンとEオレフィンとのモル比が8:1超である、態様1~17のいずれか一項記載の方法。
【0101】
19. 式Vによるオレフィンがオクタ-7-エン-1-イルアセタートであり、
式IVによるアルデヒドがクロトンアルデヒドであり、
式IIIによるメタセシス生成物が、E-9-オキソノン-7-エン-1-イルアセタートであり、
式IIによるホスホニウムイリドが、トリフェニル(プロピリデン)-λ5-ホスファンであり、
共役ジエンが、E,Z-ドデカ-7,9-ジエン-1-イルアセタートである、
態様1~18のいずれか一項記載の方法。
【0102】
20. メタセシス触媒が、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)
である、態様19記載の方法。
【0103】
前述の内容は、平明さおよび理解を目的として、例示のためにいくぶん詳細に記載されているが、当業者であれば、特定の変更および修正が、添付の特許請求の範囲内で実施され得ることを理解するだろう。本明細書において引用される全ての刊行物、特許、特許出願および配列アクセッション番号は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。