(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】潤滑性添加剤を有する燃料組成物
(51)【国際特許分類】
C10L 1/19 20060101AFI20240529BHJP
C10L 1/06 20060101ALI20240529BHJP
C10M 129/40 20060101ALI20240529BHJP
C10M 129/74 20060101ALI20240529BHJP
C10L 10/08 20060101ALI20240529BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20240529BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240529BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20240529BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240529BHJP
【FI】
C10L1/19
C10L1/06
C10M129/40
C10M129/74
C10L10/08
C10N20:00 Z
C10N30:06
C10N30:12
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2021544617
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2020053047
(87)【国際公開番号】W WO2020161265
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-30
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス,ヤジュナナーラーヤナ・ハルマター
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ,ジョセフ・マイケル
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-297622(JP,A)
【文献】特表2003-519718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0094203(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108977240(CN,A)
【文献】特開平09-013052(JP,A)
【文献】特開平10-237470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/19
C10L 1/06
C10M 129/40
C10M 129/74
C10L 10/08
C10N 20/00
C10N 30/06
C10N 30/12
C10N 40/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンまたはガソリンベース燃料を含むベース燃料、
潤滑性添加剤パッケージを含み、
前記潤滑性添加剤パッケージが、(1)ドデカン酸および(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールを含み、
潤滑性添加剤パッケージが、燃料組成物の総重量に基づいて、5重量ppm~100重量ppmの濃度でベース燃料とブレンドされ、1-ラウロイル-rac-グリセロールの配合比がドデカン酸の配合比の少なくとも2倍である、燃料組成物。
【請求項2】
燃料組成物が、ASTM D6079-11に基づいて測定される0.300~0.600の範囲の摩擦係数を
有する、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項3】
燃料組成物が、ASTM D6079-11に基づいて測定される480μm~680μmの範囲の摩耗痕径を
有する、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項4】
前記潤滑性添加剤パッケージが、
燃料に可溶性である、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項5】
燃料組成物が、50ppm未満の硫黄濃度を
有する、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項6】
燃料組成物の潤滑性を改善するための方法であって、前記方法が、
ガソリンまたはガソリンベース燃料を含むベース燃料を提供すること、
前記
ベース燃料に潤滑性添加剤パッケージを添加することを含み、
前記潤滑性添加剤パッケージが、(1)ドデカン酸および(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールを含み、
潤滑性添加剤パッケージが、燃料組成物の総重量に基づいて、5重量ppm~100重量ppmの濃度でベース燃料とブレンドされ、1-ラウロイル-rac-グリセロールの配合比がドデカン酸の配合比の少なくとも2倍である、方法。
【請求項7】
前記燃料組成物が、前記潤滑性添加剤パッケージを前記
ベース燃料に添加した後、
ASTM D6079-11に基づいて測定される0.300~0.600の範囲の摩擦係数を示す潤滑性を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料組成物が、前記潤滑性添加剤パッケージを前記
ベース燃料に添加した後、
ASTM D6079-11に基づいて測定される480μm~680μmの範囲の摩耗痕径を示す潤滑性を含む、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース燃料と、潤滑性添加剤パッケージとを含む燃料組成物、より詳細には、内燃エンジンでの使用に好適なベース燃料と、潤滑性添加剤パッケージとを含む燃料組成物、燃料組成物の潤滑性を改善するための方法、および直噴エンジンの燃料性能を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンメーカーは、特に内燃エンジンを設計する際に、エンジン効率の改善およびパワー出力の最大化に絶えず挑戦している。このようなエンジンは、燃焼した燃料の一部が有用なエネルギーに変換されないが、摩擦力を克服するために使用されるため、効率が低いことが既知である。より典型的には、燃焼した燃料から利用可能なエネルギーの顕著な部分が、相互に接触している可動エンジン部品の表面間に発生した摩擦力を克服するために使用される。このような摩擦力を克服するために費やされるエネルギーは、エネルギー損失または摩擦損失と見なされる。このような損失を克服するためにより高いエネルギー要件が必要な場合、エンジンを作動するために利用可能な有用なエネルギーの量は、しばしば低減する。エンジンおよび燃料効率を改善するために、現在の傾向には、エンジンの摩擦損失を低減するために、摩擦低減添加剤、摩擦低減燃料添加剤、または表面コーティングなどを使用することが含まれる。
【0003】
摩擦調整剤としても既知である摩擦低減添加剤は、エンジンおよび燃料の効率の両方を改善するための潤滑剤における添加剤として使用され得る。潤滑剤は、可動面間の摩擦を低減することが理解されているが、潤滑剤組成物への摩擦低減添加剤の添加は、粘度、密度、流動点などのような他の潤滑剤の物理的特性を変更することなく摩擦損失をさらに低減し得る。さらに、より燃料効率の高い車両に対する高まる需要を満たすために、摩擦低減添加剤が、燃料組成物に組み込まれ得る。例えば、摩擦低減添加剤を含む燃料組成物を使用して、摩擦が高いがその領域に流入する潤滑剤の量が少ないエンジンのピストンリング-シリンダー壁界面に摩擦調整特性を送達し得る。
【0004】
米国特許第6,866,690号は、飽和カルボン酸塩とアルキル化アミンとを組み合わせることによって調製され、かつ可燃性燃料組成物で使用するための摩擦調整剤を記載する。摩擦調整剤は、例えば、(i)分岐飽和カルボン酸またはその混合物を、(ii)モノ-および/もしくはジアルキル化モノアミン、ならびに/またはモノ-および/もしくはジアルキル化ポリアミンと約1:1のモル比で混合することによって作製することができる。記載された摩擦調整剤についての境界摩擦係数は、PCS Instruments高周波往復リグを使用して測定され、6ミリメートル(mm)直径のANSI 52100鋼球とANSI 52100平綱との間に4ニュートン(N)の荷重を加えた。
【0005】
米国特許第9,011,556号は、摩擦調整量でヒドロカルビル置換スクシンイミドを含有する中間留分燃料組成物を記載する。中間留分燃料組成物を、ASTM方法D6079に記載されている高周波往復リグ(HFRR)に供し、平均HFRR摩耗痕径を記録した。
【0006】
米国特許第6,835,217号は、炭化水素燃料および少なくとも1つの天然油または合成油と少なくとも1つのアルカノールアミンとの反応生成物である摩擦調整成分を含有する燃料組成物を記載する。潤滑性試験を、ASTM方法D6079-97に記載されている高周波往復リグ(HFRR)を使用して実行し、摩耗痕径の測定値を、長軸および短軸に基づいて計算した。
【0007】
米国特許公開第2011/0146143号は、内燃エンジンで使用するための摩擦低減成分を含有する燃料組成物を記載する。摩擦低減成分は、飽和脂肪酸アミン、不飽和脂肪酸アミン、およびそれらの混合物を含む、少なくとも1つのC6~C30脂肪族アミンを含む。SRV試験リグを利用して、成分の摩擦係数および摩耗痕性能を測定した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料ポンプおよびインジェクターなどの多くの内部エンジンコンポーネントは、摩擦力による過度の摩耗および金属損傷(すなわち、腐食、侵食)を起こしやすい傾向がある。過度の摩擦は、エンジンを作動するためにより多くの燃料が必要となるため、しばしばエンジン寿命の短縮、エンジン交換コストの高さ、および非効率的な燃料経済に貸す。しかし、前述の摩擦低減添加剤は、このような課題ならびに他のエンジンおよび燃料性能に関連する問題を克服する上でわずかな改善しか生み出さない。したがって、向上した摩擦低減に対する継続的な要求を満たすために、例示的な潤滑特性ならびにエンジンの摩擦損失、摩耗、堆積物、および腐食に対する優れた保護を提供する燃料組成物が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、改善された燃料組成物に関する。より具体的には、各々の本発明の燃料組成物は、炭化水素ベース燃料と、潤滑性添加剤パッケージとを含有する。本発明によれば、燃料組成物は、ベース燃料としてのガソリンと、(1)ドデカン酸および(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールの両方を含む潤滑性添加剤パッケージとを具体的に含む。
【0010】
本発明はさらに、燃料組成物の潤滑性を改善するための方法に関する。特に、この方法は、可溶性潤滑性添加剤パッケージを炭化水素ベース燃料に添加して、改善された潤滑特性を含む燃料組成物を形成することを含む。本発明によれば、方法は、(1)ドデカン酸および(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールの両方から構成される潤滑性添加剤パッケージを、好ましいベース燃料として選択されるガソリンに添加することを具体的に含む。
【0011】
本発明はまた、直噴エンジンの燃料性能を改善する方法に関する。より具体的には、本発明は、炭化水素ベース燃料と、潤滑性添加剤パッケージとを含む燃料組成物で直噴エンジンに燃料を供給する方法を記載する。本発明によれば、直噴エンジンで使用される燃料組成物は、ベース燃料としてのガソリンと、(1)ドデカン酸および(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールから構成される潤滑性添加剤パッケージとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
特定の例示的な実施形態を、以下の詳細な説明および図面を参照して説明する。
【0013】
【
図1】様々な燃料組成物についての摩擦係数のグラフ表示を示す。
【
図2】様々な燃料組成物についての摩耗痕値のグラフ表示を示す。
【
図3】各燃料組成物についての摩耗痕および摩擦係数データのグラフ比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
内燃エンジンなどの可動機械アセンブリは、エンジンの非効率性の大部分を構成する摩擦損失を起こしやすい。摩擦損失は、クランクシャフト、ベアリング、ピストン、ピストンリング、ピストンスカート、バルブおよびバルブガイド、プーリー、タイミングベルト、ならびにコネクティングロッドなどのエンジンコンポーネント間で生じる。例えば、ピストンおよびピストンリングなどの往復部品は、様々なエンジンコンポーネント間のすべての摩擦損失の最大50%を占める最大の要因である。エンジン作動中に発生した摩擦を完全に排除することは不可能であるが、摩擦損失を低減するために、典型的には潤滑剤、表面コーティング、および燃料などの用途が使用される。潤滑剤は、一般に、表面接触時のその挙動および/または可動エンジンコンポーネントに粘性せん断応力を課すその能力に基づいて摩擦を低減する。いくつかの自動車メーカーによる現在の傾向には、摩擦係数も低減するための表面コーティングの開発が含まれる。加えて、特定の燃料組成物は、可動コンポーネント間の摩擦損失を下げるように配合されている。
【0015】
本発明は、各燃料組成物が潤滑性添加剤パッケージを含むいくつかの燃料組成物に関する。具体的には、燃料組成物の各実施形態は、炭化水素ベース燃料と、組成物が可動エンジン部品と接触するときの表面吸着による摩擦を低減するための潤滑性添加剤パッケージとを含む。例えば、本発明の燃料組成物の潤滑性添加剤は、燃焼室に入ると、燃焼室のエンジン壁上にある油膜に吸着して、可動部品間の減摩層として作用し、金属同士の接触を防止し、したがって、表面接触時の摩擦損失を低減する。
【0016】
エンジンベアリング区画などの、潤滑剤接液しているか、または潤滑剤と直接接触するエンジンの領域がある。しかしながら、潤滑特性の向上から恩恵を受ける可能性のある、潤滑剤ではなく燃料組成物と接触するエンジンコンポーネント(すなわち、非潤滑剤接液したコンポーネント)がある。本実施形態では、本発明の燃料組成物は、潤滑剤接液し、かつ非潤滑剤接液している両方である内部エンジンコンポーネント用の潤滑源として挙動する。例えば、本発明の燃料組成物の潤滑性添加剤パッケージは、燃焼室からオイルサンプに変化せずに流れて、時間とともに蓄積し、オイルサンプ内でエンジン潤滑剤、すなわちエンジンオイルと混合し得る。この点に関して、本発明の燃料組成物は、カムシャフト、クランクシャフト、および吸気バルブなどの潤滑剤接液したコンポーネントのための追加の潤滑剤源として作用する。加えて、ポート燃料噴射(PFI)エンジンでは、吸気バルブは、燃焼室に入る直前に燃料に曝露される。したがって、現在の燃料組成物への曝露は、堆積物の形成を除去するのを助けるだけでなく、バルブガイド中のバルブステムを潤滑するのにも役立つ。しかし、燃料インジェクターおよび燃料ポンプなどのエンジンのいくつかの領域があり、本発明の燃料組成物は、潤滑剤の量を意図的に最小レベルに維持しながら、摩擦を低減する潤滑性添加剤を送達する。全体として、潤滑性添加剤パッケージを含む本発明の燃料組成物は、特に潤滑剤の化学的性質が枯渇しもはや効果がないときのオイル排出間隔の終わりに向かって、広範囲の可動エンジン部品間の摩擦を実質的に低減する。
【0017】
驚くべきことに、本発明の燃料組成物を使用するエンジンは、従来の摩擦低減添加剤を含有するか、またはベース燃料のみを含有する燃料組成物を使用するエンジンよりも、摩擦損失の低減および耐摩耗性の改善を含む顕著なエンジン改善を示したことが分かった。例えば、各々の本発明の燃料組成物についての試験データは、典型的な燃料のものと比較して、摩擦係数および摩耗痕値の低減によって示されるように、説得力のある潤滑性の改善を示した。潤滑性添加剤を含有する各々の本発明の燃料組成物はまた、より低いエンジン堆積物および腐食挙動を含む改善されたエンジン保護に関して相乗的挙動を示した。摩擦損失の低減が、しばしばより高いエンジン出力およびより良い燃料効率につながることは当業者に周知である。したがって、本発明の燃料組成物によって提供されるような別の利点には、燃料性能の増加および燃料経済性の改善が含まれる。
【0018】
使用される場合、本明細書において「潤滑性」という用語は、エンジンコンポーネント部品間の摩擦を低減する燃料組成物の能力または特性を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「潤滑性添加剤」または「潤滑性向上剤」という用語は、潤滑特性を改善するためにベース燃料組成物に添加される添加剤を指し、したがって、エンジンコンポーネント部品間の摩擦、摩耗、堆積物、および腐食の低減をもたらす。
【0020】
本燃料組成物のベース燃料は、自動車エンジンならびにオフロードおよび航空エンジンなどの他のタイプのエンジンを含む、当技術分野で既知のスパーク点火(ガソリン)タイプの内燃エンジンでの使用に好適な炭化水素ベース燃料を含む。好ましくは、ベース燃料は、本明細書で「ガソリン」と呼ばれるガソリンまたはガソリンベース燃料を含む。例えば、ベース燃料は、15%のガソリンおよび85%のエタノールを含むE85燃料などのガソリンとエタノールとの一般的なブレンドを含み得る。燃料中のガソリンの量は、地理的な地域および季節に基づいて変動する可能性があり(典型的には、15体積%~90体積%)、それによってE10~E85の範囲のアルコール含有量を含む。
【0021】
ガソリンは、約25℃(77°F)~約220℃(428°F)の範囲で沸騰する揮発性炭化水素を含むことができ、直鎖ナフサ、ポリマーガソリン、天然ガソリン、接触分解もしくは熱分解された炭化水素、触媒的に改質されたストック、またはそれらの混合物から誘導されることができる。また、生物源から誘導されるガソリンブレンド成分も使用に好適である。
【0022】
揮発性炭化水素は、飽和炭化水素、オレフィン炭化水素、芳香族炭化水素、酸素化炭化水素、およびそれらの混合物を含む、以下の基のうちの1つ以上から選択することができる。ガソリンのオクタン価は、一般に約85を超える。ベース燃料の特定の炭化水素組成物およびオクタン価は、本実施形態では重要ではない。
【0023】
典型的には、ガソリンの飽和炭化水素含有量は、40体積%~約80体積%の範囲であり、酸素化炭化水素含有量は、0体積%~約35体積%の範囲である。ガソリンが酸素化炭化水素を含む場合、非酸素化炭化水素の少なくとも一部が、酸素化炭化水素に置換される。ガソリンの酸素含有量は、ガソリンに基づいて最大35重量%(EN1601)(例えば、エタノール自体)であり得る。例えば、ガソリンの酸素含有量は、最大25重量%、好ましくは最大10重量%であり得る。便宜的には、酸素化物濃度は、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、および1.2重量%のうちのいずれか1つから選択される最小濃度、ならびに5、4.5、4.0、3.5、3.0、および2.7重量%のうちのいずれか1つから選択される最大濃度を有する。
【0024】
典型的には、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有量は、ガソリン(ASTM D1319)に基づいて0体積%~40体積%の範囲である。好ましくは、オレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて0体積%~30体積%の範囲であり、より好ましくは、オレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて0体積%~20体積%の範囲である。ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリン(ASTM D1319)に基づいて0体積%~70体積%の範囲である。例えば、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて10体積%~60体積%の範囲である。好ましくは、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて10体積%~50体積%の範囲であり、より好ましくは、芳香族炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて10体積%~50体積%の範囲である。
【0025】
ガソリンはまた、鉱物キャリアオイル、合成キャリアオイル、それらの混合物、および/または溶媒を含有し得る。好適な鉱物キャリアオイルの例には、ブライトストックまたは基油などの原油処理で得られる留分、およびハイドロクラック油などの鉱油の精製で得られる留分が含まれる。好適な合成キャリアオイルの例には、ポリオレフィン(ポリ-アルファ-オレフィンまたはポリ(内部オレフィン))、(ポリ)エステル、(ポリ)アルコキシレート、ポリエーテル、脂肪族ポリエーテルアミン、アルキルフェノール開始ポリエーテル、アルキルフェノール開始ポリエーテルアミン、および長鎖アルカノールのカルボン酸エステルが含まれる。
【0026】
好適なポリオレフィンの例は、オレフィンポリマー、特にポリブテンまたはポリイソブテン(水素化または非水素化)に基づくオレフィンポリマーである。好適なポリエーテルまたはポリエーテルアミンの例は、好ましくは、C2~C60-アルカノール、C6~C30-アルカンジオール、モノ-もしくはジ-C2~C30-アルキルアミン、C1~C30-アルキルシクロヘキサノール、またはC1~C30-アルキルフェノールを、ヒドロキシル基またはアミノ基1つあたり1~30モルのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドと反応させることによって、かつポリエーテルアミンの場合には、その後のアンモニア、モノアミン、またはポリアミンとの還元的アミノ化によって得ることができるポリオキシ-C2~C4-アルキレン部分を含む化合物である。
【0027】
長鎖アルカノールのカルボン酸エステルの例は、特にモノ-、ジ-、またはトリカルボン酸と長鎖アルカノールもしくはポリオールとのエステルである。使用されるモノ-、ジ-、またはトリカルボン酸は、脂肪族酸または芳香族酸であってよく、好適なエステルアルコールまたはポリオールは、特に、例えば、6~24個の炭素原子を有する長鎖の代表物である。エステルの典型的な代表物は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、およびイソトリデカノールのアジペート、フタレート、イソフタレート、テレフタレート、およびトリメリテート、例えば、ジ-(n-またはイソトリデシル)フタレートである。
【0028】
好適な合成キャリアオイルの他の例は、例えば、プロピレンオキシド、n-ブチレンオキシド、およびイソブチレンオキシド単位、またはそれらの混合物から選択される、約5~35のC3~C6-アルキレンオキシド単位を有するアルコール開始ポリエーテルである。好適な開始アルコールの非限定的な例は、長鎖アルキルラジカルが特に直鎖状もしくは分岐状C6~C18-アルキルラジカルである、長鎖アルキルによって置換された長鎖アルカノールまたはフェノールであり、好ましい例には、トリデカノールおよびノニルフェノールが含まれる。
【0029】
ガソリンのベンゼン含有量は、ガソリンに基づいて、多くとも10体積%、より好ましくは多くとも5体積%、最も好ましくは多くとも1体積%である。ガソリンは、好ましくは、例えば、多くとも1000ppmw(重量百万分率)、好ましくは500ppmw以下、より好ましくは100ppmw以下、さらにより好ましくは50ppmw以下、および最も好ましくはさらに10ppmw以下の低いまたは非常に低い硫黄含有量を有する。さらに、ガソリンは、好ましくは多くとも0.005グラム/リットル(g/l)などの低い総鉛含有量を有し、最も好ましくは鉛を含んでおらず、したがって、鉛化合物がガソリンに添加されていない(すなわち、無鉛)。本発明で使用されるガソリンは、水が円滑な燃焼を妨げる可能性があるため、実質的に水を含まない場合がある。
【0030】
本発明の各燃料組成物は、2つの異なる潤滑性添加剤から構成される潤滑性添加剤パッケージを含む。この点に関して、潤滑性添加剤パッケージは、個々の成分として選択され、市販のドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールから構成され、各潤滑性添加剤は、潤滑性を効果的に改善するその能力に基づいて選択された。各潤滑性添加剤は、燃料組成物を製造するためにベース燃料に十分に可溶性であり、好ましくは完全に可溶性であり、組成物に任意選択で添加され得る他の添加剤との負の相互作用を妨害または課さない。潤滑性添加剤パッケージは、燃料組成物の総重量に基づいて、約5重量ppm(百万分率)~約100重量ppmの濃度でそれぞれのベース燃料とブレンドされる。潤滑性添加剤パッケージ中のドデカン酸対1-ラウロイル-rac-グリセロールの比は、約0.1:0.9~0.9:0.1の範囲であり、0.3:0.7~0.7:0.3の範囲でより好ましい。
【0031】
ドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールの両方の分子には、極性頭基および非極性尾基が含まれる。分子の極性頭基は、金属表面に引き付けられ、したがって、比較的強く結合するが、このような表面には可逆的である、すなわち、持ち上げる、および移動することができる。表面改質または含浸セラミックファイバーを用いると、極性頭基がアルミナ表面などの他の表面に引き付けられ得る。分子の非極性尾基は、ベース燃料の分子よりもわずかに長く、すなわち、15原子より長くすることができ、分子パッキングおよび流体の流れを可能にするために、非線形、分岐状、または曲がった構成を含むことができる。非極性尾基は、炭化水素であり、したがって、分子全体を炭化水素ベース燃料に可溶化することができる。各潤滑性添加剤の極性頭基の性質および非極性尾基の構造により、本発明の燃料組成物は、エンジンコンポーネント間の摩擦を低減することにより、エンジンの効率および性能に驚くほど影響を与える。
【0032】
1-ラウロイル-rac-グリセロールは、(1)に示すように、グリセロールエステル(極性頭基)およびラウリン酸誘導体(非極性尾基)によって形成される。グリセロールエステルは、多機能であり、典型的には、酸にグラフトする際に安定している。ラウリン酸誘導体には、典型的には、ベース燃料分子よりも大きいが、従来の摩擦調整剤の分子よりも小さい分子が含まれる。
【化1】
【0033】
ドデカン酸は、(2)に示すように、12炭素原子鎖を有する飽和脂肪酸であり、したがって、中鎖脂肪酸ものと同様の特性を有し、カルボン酸(極性頭基)とラウリン酸誘導体(無極性尾基)によって形成される。ドデカン酸は、その極性末端基の近くの分子のうち最も立体障害が少なく、それによって、カルボン酸が金属表面により容易に吸着することを可能にする。また、ドデカン酸のアルキ基は、より保護的な様式(すなわち、より高い凝集力)で整列し、それによって金属表面を保護し、カルボン酸末端基が金属表面に強く吸着することを可能にする。
【化2】
【0034】
表面吸着により、両方の潤滑性添加剤は、金属間界面の摩擦特性を低減する。具体的には、柔軟で多機能な頭基とわずかに長い尾基との組み合わせは、1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびドデカン酸を含む潤滑性添加剤パッケージが、複数の部位に付着するか、または金属表面に吸着することを可能にし、したがって、例示的な表面接着を示す。
【0035】
本発明にとって重要ではないが、本発明の燃料ガソリン組成物は、上記の選択された潤滑性添加剤に加えて、1つ以上の任意選択の燃料添加剤をさらに含み得る。本発明における任意選択の燃料添加剤の濃度および性質は、重要ではないことに留意されたい。しかしながら、燃料組成物中に存在する任意の任意選択の燃料添加剤の濃度は、好ましくは総燃料組成物の最大1重量%、より好ましくは5~2000ppmwの範囲に、最も好ましくは90~1000ppmwなどの90~1500ppmwの範囲にあり得る。任意選択の燃料添加剤の非限定的な例には、酸化防止剤、腐食防止剤、洗浄剤、デヘイザー、アンチノック添加剤、金属不活性化剤、バルブシート後退保護化合物、染料、溶媒、担体流体、希釈剤、およびマーカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明は、以下の実施例によってより詳細にさらに説明される。特に、各実施例は、異なる濃度での従来のベース燃料、1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびベース燃料、ドデカン酸およびベース燃料、ならびに1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびドデカン酸の混合物についての摩擦係数ならびに摩耗痕値のベース燃料との比較に基づいている。各燃料組成物を、ガソリン用の改質された高周波往復リグ(HFRR)試験方法(ASTM D6079-11)を使用して、摩擦および摩耗痕の性能について評価した。実施例は、例示のためにのみ提供されており、いかなる方法でも本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0037】
実施例1
実施例1は、ドデカン酸、1-ラウロイル-rac-グリセロール、および5つの異なる燃料組成物についての摩擦係数データを示す。表1に特定されているように、5つの燃料組成物の各々は、様々な配合比で1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびドデカン酸から構成される潤滑性添加剤パッケージを含有する。具体的には、試験された各燃料組成物のための配合物は、(1)ベース燃料および50ppm wt/vの配合比でのドデカン酸(2)ベース燃料および50ppm wt/vの配合比での1-ラウロイル-rac-グリセロール(3)ベース燃料ならびに25+25ppm wt/vの配合比での1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびドデカン酸の平均値(4)ベース燃料ならびに10+40ppm wt/vの配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロール、すなわち、10ppmのドデカン酸+40ppmの1-ラウロイル-rac-グリセロール(5)ベース燃料ならびに15+35ppm wt/vの配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールの平均値(6)ベース燃料ならびに20+30ppm wt/vの配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールの平均値(7)ベース燃料ならびに35+15ppm wt/vの配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールを含んだ。各燃料組成物で使用されるベース燃料は、ほとんどの自動車および小型車の内燃エンジンでエンジンまたは燃料システムを変更せずに使用できる90%のガソリンと10%のエタノールとの燃料混合物であるE10を含んだ。ベース燃料は、典型的な条件下でHFRR(高周波往復リグ)試験方法を使用して実行した際に、約0.587の摩擦係数および約818.9μmの摩耗痕を示した。
【0038】
各燃料組成物についての摩擦係数を、900~4500秒の試験運転の1秒ごとにHFRR試験方法を使用して決定した。本実施形態のHFRR試験は、25℃で実施したが、様々な温度で行うことができ、試験される燃料組成物の特定の用途に適合するようにプログラムすることができる。
【表1】
【0039】
図1は、900~4500秒の試験運転中の様々な
配合比での燃料組成物の摩擦係数のグラフ表示を示す。
図1および表1に示されるように、燃料組成物番号1(ベース燃料+ドデカン酸)は約0.561の摩擦係数を示し、燃料組成物番号2(ベース燃料+1-ラウロイル-rac-グリセロール)は約0.393の摩擦係数を示し、燃料組成物番号3(ベース燃料および1-ラウロイル-rac-グリセロール+ドデカン酸の平均値)は約0.461の摩擦係数を示し、燃料組成物番号4(ベース燃料およびドデカン酸+1-ラウロイル-rac-グリセロール)は約0.362の摩擦係数を示し、燃料組成物番号5(ベース燃料+ドデカン酸+1-ラウロイル-rac-グリセロールの平均値)は約0.355の摩擦係数を示し、燃料組成物番号6(ベース燃料およびドデカン酸+1-ラウロイル-rac-グリセロール)は約0.495の摩擦係数を示し、燃料組成物番号7(ベース燃料およびドデカン酸+1-ラウロイル-rac-グリセロール)は約0.412の摩擦係数を示した。
【0040】
燃料組成物の各々は、典型的な条件下でHFRR試験方法を使用して実行した際に約0.587の摩擦係数を示したベース燃料の摩擦係数と比較して、より低い摩擦係数(すなわち、約0.300~約0.600の範囲の摩擦係数)を提供することによって摩擦特性の改善を提供した。さらに、データは、燃料組成物番号4および燃料組成物番号5によって示される、特に1-ラウロイル-rac-グリセロールの配合比がドデカン酸の配合比の少なくとも2倍である際の、ドデカン酸と1-ラウロイル-rac-グリセロールとの間の相乗的挙動を実証する。
【0041】
実施例2
実施例2は、表2に特定されるような、ドデカン酸、1-ラウロイル-rac-グリセロール、および5つの異なる燃料組成物についての比較摩耗痕データを示し、5つの燃料組成物の各々は、様々な配合比で1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびドデカン酸から構成される潤滑性添加剤パッケージを含有する。具体的には、試験された各燃料組成物のための配合物は、(1)ベース燃料および50ppm wt/vの配合比でのドデカン酸(2)ベース燃料および50ppm wt/vの配合比での1-ラウロイル-rac-グリセロール(3)ベース燃料ならびに25+25ppm wt/vの配合比での1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびドデカン酸の平均値(4)ベース燃料ならびに10+40ppm wt/vの配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロール、すなわち、10ppmのドデカン酸+40ppmの1-ラウロイル-rac-グリセロール](5)ベース燃料ならびに15+35ppm wt/vの配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールの平均値(6)ベース燃料ならびに20+30ppm wt/vの配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールの平均値(7)ベース燃料ならびに35+15ppm wt/vの配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールを含んだ。各燃料組成物で使用されるベース燃料は、ほとんどの自動車および小型車の内燃エンジンでエンジンまたは燃料システムを変更せずに使用できる90%のガソリンと10%のエタノールとの燃料混合物であるE10を含んだ。
【0042】
各燃料組成物についての摩耗痕値を、マイクロメートル(μm)で提供されるHFRR試験方法を使用して決定した。本実施形態のHFRR試験は、25℃で実施したが、様々な温度で行うことができ、試験される燃料組成物の特定の用途に適合するようにプログラムすることができる。
【表2】
【0043】
図2は、様々な
配合比での燃料組成物についての摩耗痕値のグラフ表示を示す。燃料組成物番号1(ベース燃料+1ドデカン酸)は約513.5μmの摩耗痕値を示し、燃料組成物番号2(ベース燃料+1-ラウロイル-rac-グリセロール)は約758μmの摩耗痕値を示し、燃料組成物番号3(ベース燃料および1-ラウロイル-rac-グリセロール+ドデカン酸の平均値)は約528.2μmの摩耗痕値を示し、燃料組成物番号4(ベース燃料およびドデカン酸+1-ラウロイル-rac-グリセロール)は約677.5μmの摩耗痕値を示し、燃料組成物番号5(ベース燃料+ドデカン酸+1-ラウロイル-rac-グリセロールの平均値)は約650.8μmの摩耗痕値を示し、燃料組成物番号6(ベース燃料およびドデカン酸+1-ラウロイル-rac-グリセロール)は約559μmの摩耗痕値を示し、燃料組成物番号7(ベース燃料およびドデカン酸+1-ラウロイル-rac-グリセロール)は約528μmの摩耗痕値を示した。表2に提供され、
図2に示されるように、燃料組成物の各々は、添加剤を有しないベース燃料の摩耗痕と比較して、摩耗痕(すなわち、約480μm~約680μmの範囲の摩耗痕)の改善を提供し、典型的な条件下でHFRR試験を使用して実施した場合、約818.9μmの摩耗痕値を示した。
【0044】
実施例3
図3は、燃料組成物の各々についての摩耗痕および摩擦係数データのグラフ比較を示す。具体的には、試験された各燃料組成の配合物は、(1)ベース燃料のみ、(2)ベース燃料および50ppm wt/vの
配合比でのドデカン酸、(3)ベース燃料および50ppm wt/vの
配合比での1-ラウロイル-rac-グリセロール、(4)ベース燃料ならびに25+25ppm wt/vの
配合比での1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびドデカン酸の平均値、(5)ベース燃料ならびに35+15ppm wt/vの
配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールの平均値、(6)ベース燃料ならびに15+35ppm wt/vの
配合比でのその順序でのドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールの平均値、(7)10+40ppm wt/vの
配合比でのその順序でのベース燃料およびドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロール、(8)20+30ppm wt/vの
配合比でのその順序でのベース燃料およびドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールを含んだ。各々の本発明の燃料組成物についての摩耗痕および摩擦係数を、ベース燃料のみの組成物についての摩耗痕および摩擦係数に対してプロットした。このようなデータを1つのプロットに組み合わせると、当業者は、ベース燃料および潤滑性添加剤パッケージを含む燃料組成物が、ベースのみの燃料組成物と比較した際に改善された摩耗痕および摩擦低減を提供することを容易に確認することができる。特に、
図3は、組成物についての摩擦係数が個々の成分としてのドデカン酸またはベース燃料のいずれかについての摩擦係数よりも小さいため、ドデカン酸と1-ラウロイル-rac-グリセロール潤滑性添加剤との間の相乗的挙動を示す。摩耗痕に関しては、すべての燃料組成物は、ベース燃料よりも低い摩耗痕値を示す。
【0045】
本発明の目的は、ベース燃料に添加された潤滑性添加剤パッケージが、そこに添加された際にベース燃料の潤滑特性を増加させるかどうかを評価することを含んだ。潤滑性添加剤パッケージは、ドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロールから構成され、各々は、様々な極性基および非極性基ならびに独自の化学的性質に基づいて選択された。各潤滑性添加剤(すなわち、ドデカン酸および1-ラウロイル-rac-グリセロール)を、様々な濃度でベース燃料に個別に添加して、いくつかの燃料組成物を形成した。各燃料組成物を、潤滑性のそのレベルを決定するために後で試験した。実施例1~3の結果は、潤滑性添加剤パッケージを含む各燃料組成物が、摩擦係数および摩耗痕データの低減によって示されるように、改善された潤滑特性を実証したという目的が達成されたことを示す。
【0046】
潤滑性添加剤パッケージをベース燃料と組み合わせることによる相乗効果は、個々の潤滑性添加剤をベース燃料に添加すること、またはベース燃料単独の使用よりも多くの利点を生み出した。特に、潤滑性添加剤パッケージを含む燃料組成物は、摩擦係数および摩耗痕データの低減によって示されるように、エンジンの効率および性能を改善した。燃料組成に対するこのような潤滑性の改善は、高圧燃料ポンプおよびインジェクターなどの様々な直噴エンジンコンポーネントに保護を提供することができる。別の驚くべき利点では、潤滑性添加剤パッケージを含む各燃料組成物を使用して、直噴エンジンまたはガソリンの使用に好適なエンジンの任意の時間の燃料性能を改善することもできる。
【0047】
本発明の技術は、様々な修正および代替の形態が可能であるが、上述した例示的な例は、例としてのみ示されている。この技術は、本明細書に開示されている特定の例に限定されることを意図するものではないことを理解されたい。実際、本実施形態は、本技術の範囲内にあるすべての代替、修正、および同等物を含む。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[項目1]燃料、
潤滑性添加剤パッケージを含み、
前記潤滑性添加剤パッケージが、(1)ドデカン酸および(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールを含む、燃料組成物。
[項目2]前記燃料が、ガソリンである、項目1に記載の燃料組成物。
[項目3]前記潤滑性添加剤の濃度が、燃料組成物の総重量に基づいて、約5重量ppm~約100重量ppmの範囲である、項目1に記載の燃料組成物。
[項目4]前記潤滑性添加剤パッケージ中のドデカン酸対1-ラウロイル-rac-グリセロール比が、約0.1:0.9~0.9:0.1の範囲である、項目1に記載の燃料組成物。
[項目5]0.300~0.600の範囲の摩擦係数をさらに含む、項目1に記載の燃料組成物。
[項目6]480μm~680μmの範囲の摩耗痕径をさらに含む、項目1に記載の燃料組成物。
[項目7]前記潤滑性添加剤パッケージが、本質的に燃料に可溶性である、項目1に記載の燃料組成物。
[項目8]約50ppm未満の硫黄濃度をさらに含む、項目1に記載の燃料組成物。
[項目9]燃料組成物の潤滑性を改善するための方法であって、前記方法が、
燃料を提供すること、
前記燃料に潤滑性添加剤パッケージを添加することを含み、
前記燃料が、ガソリンであり、
前記潤滑性添加剤パッケージが、(1)ドデカン酸および(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールを含む、方法。
[項目10]前記潤滑性添加剤パッケージ中のドデカン酸対1-ラウロイル-rac-グリセロール比が、約0.1:0.9~0.9:0.1の範囲である、項目9に記載の方法。
[項目11]前記燃料組成物が、前記潤滑性添加剤パッケージを前記燃料に添加した後、0.300~0.600の範囲の摩擦係数を示す潤滑性を含む、項目9に記載の方法。
[項目12]前記燃料組成物が、前記潤滑性添加剤パッケージを前記燃料に添加した後、480μm~680μmの範囲の摩耗痕径を示す潤滑性を含む、項目9に記載の方法。
[項目13]直噴エンジンの燃料性能を改善するための方法であって、前記方法が、
燃料および潤滑性添加剤パッケージを含む燃料組成物で前記直噴エンジンに燃料を供給することと、
前記直噴エンジンを作動することとを含み、
前記燃料が、ガソリンであり、
前記潤滑性添加剤パッケージが、(1)ドデカン酸および(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールを含む、方法。
[項目14]前記潤滑性添加剤パッケージ中のドデカン酸対1-ラウロイル-rac-グリセロール比が、約0.1:0.9~0.9:0.1の範囲にある、項目13に記載の方法。
[項目15]前記燃料組成物で燃料を供給した後に前記直噴エンジンによって示された前記燃料性能が、0.300~0.600の範囲の摩擦係数および480μm~680μmの範囲の摩耗痕径を含む、項目13に記載の方法。