(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20240529BHJP
D04B 1/18 20060101ALI20240529BHJP
D04B 1/22 20060101ALI20240529BHJP
D04B 21/18 20060101ALI20240529BHJP
D04B 21/20 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A43B23/02 101Z
D04B1/18
D04B1/22
D04B21/18
D04B21/20 Z
(21)【出願番号】P 2022513000
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2020014837
(87)【国際公開番号】W WO2021199290
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千早
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-164617(JP,A)
【文献】特開2006-000258(JP,A)
【文献】特開2015-066280(JP,A)
【文献】特開2005-329270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0174660(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0279720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
D04B 1/18
D04B 1/22
D04B 21/18
D04B 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール及びアッパーを備える履物であって、
前記アッパーは、伸張を制限する機能を有する制限生地部を含み、
前記制限生地部は、
伸縮性を有する伸縮ストランドと、
伸縮性を有し、かつ、前記伸縮ストランドの伸張を制限する制限ストランドと、を含み、
前記伸縮ストランド及び前記制限ストランドを伸張させる方向に前記制限生地部に引張り荷重が作用した場合において、前記制限生地部の伸張率が所定値よりも大きな範囲における前記伸縮ストランドの伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される伸縮側抵抗指標よりも、前記制限生地部の前記伸張率が所定値よりも大きな範囲における前記制限ストランドの伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される制限側抵抗指標の方が大きく、
前記制限生地部は、
前記伸縮ストランド及び前記制限ストランドを織ることにより形成された織物からなる、履物。
【請求項2】
前記制限ストランドは、前記制限生地部の前記伸張率が所定値以下の範囲において弛んだ状態を呈する弛み部を有し、
前記弛み部は、前記制限生地部の前記伸張率が所定値より大きな範囲において伸びきった状態を呈することにより、前記制限生地部の前記伸張率が所定値より大きな範囲における前記制限側抵抗指標が前記伸縮側抵抗指標よりも大きくなる、請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記伸縮ストランドと前記制限ストランドとは、一体的に構成されている、請求項1又は2に記載の履物。
【請求項4】
前記アッパーは、
足の内足面の少なくとも一部を被覆する内足被覆部と、
足の外足面の少なくとも一部を被覆する外足被覆部と、
前記履物の幅方向における前記内足被覆部と前記外足被覆部との間に設けられており、足の出し入れを許容する足入れ部と、
前記足入れ部から前記履物の長手方向における前方に向けて延びるスリット部と、を有する、請求項1から3のいずれかに記載の履物。
【請求項5】
前記制限生地部は、前記スリット部の側方に配置されている、請求項4に記載の履物。
【請求項6】
前記制限生地部は、前記外足被覆部のうち前記スリット部の側方の部位に配置された外足制限部を有し、
前記外足制限部は、前記スリット部の縁部から、少なくとも前記スリット部と前記ソールとの中央部に至るように前記幅方向に沿って外向きに延びる形状を有する、請求項5に記載の履物。
【請求項7】
前記制限生地部は、
前記内足被覆部のうち前記スリット部の側方の部位に配置された内足制限部と、
前記外足被覆部のうち前記スリット部の側方の部位に配置された外足制限部と、を有し、
前記内足制限部は、前記スリット部の後部から前記幅方向に沿って前記ソールに至るように延びる形状を有し、
前記外足制限部は、前記スリット部の前部から前記幅方向に沿って前記ソールに至るように延びる形状を有する、請求項5に記載の履物。
【請求項8】
前記制限生地部は、前記足入れ部の周囲に配置された足入れ部制限部を有する、請求項4に記載の履物。
【請求項9】
前記制限生地部は、前記スリット部の前方でかつ前記スリット部の前端部を含む位置に配置された前方制限部を有し、
前記前方制限部は、前記幅方向に沿って延びる形状を有する、請求項4に記載の履物。
【請求項10】
前記アッパーは、前記制限ストランドの伸張率以下の伸張率を有する非伸縮ストランドを含む非伸縮生地部をさらに含み、
前記非伸縮ストランドを伸張させる方向に前記非伸縮生地部に引張り荷重が作用した場合における当該非伸縮生地部の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される非伸縮側抵抗指標は、前記伸張率が前記所定値よりも大きな範囲における前記制限側抵抗指標以上であり、
前記非伸縮生地部は、前記前方制限部の前方に配置された前方非伸縮部を有する、請求項9に記載の履物。
【請求項11】
前記制限生地部は、前記スリット部の前方でかつ前記スリット部の前端部を含む位置に配置された前方制限部を有し、
前記前方制限部は、
前記スリット部の前端部から前記幅方向における内側に向かうにしたがって前方に向かうように延びる形状を有する第1内側制限部と、
前記幅方向における前記第1内側制限部の内側の端部でかつ前記第1内側制限部の前端部から前記幅方向における内側に向かうにしたがって前記第1内側制限部から離間するように延びる形状を有する第2内側制限部と、
前記スリット部の前端部から前記幅方向における外側に向かうにしたがって前方に向かうように延びる形状を有する第1外側制限部と、
前記幅方向における前記第1外側制限部の内側の端部でかつ前記第1外側制限部の前端部から前記幅方向における外側に向かうにしたがって前記第1外側制限部から離間するように延びる形状を有する第2外側制限部と、を有する、請求項4に記載の履物。
【請求項12】
前記第1内側制限部は、前記幅方向における内側に向かうにしたがって次第に前記長手方向の長さが小さくなる形状を有し、
前記第2内側制限部は、前記幅方向における内側に向かうにしたがって次第に前記長手方向の長さが小さくなる形状を有し、
前記第1外側制限部は、前記幅方向における外側に向かうにしたがって次第に前記長手方向の長さが小さくなる形状を有し、
前記第2外側制限部は、前記幅方向における外側に向かうにしたがって次第に前記長手方向の長さが小さくなる形状を有する、請求項11に記載の履物。
【請求項13】
前記アッパーは、前記制限ストランドの伸張率以下の伸張率を有する非伸縮ストランドを含む非伸縮生地部をさらに含み、
前記非伸縮ストランドを伸張させる方向に前記非伸縮生地部に引張り荷重が作用した場合における当該非伸縮生地部の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される非伸縮側抵抗指標は、前記伸張率が前記所定値よりも大きな範囲における前記制限側抵抗指標以上であり、
前記非伸縮生地部は、
前記第1内側制限部と前記第2内側制限部との間に配置された内側非伸縮部と、
前記第1外側制限部と前記第2外側制限部との間に配置された外側非伸縮部と、
前記第2内側制限部と前記第2外側制限部との間に配置された前端非伸縮部と、を有する、請求項11又は12に記載の履物。
【請求項14】
前記アッパーは、
足の内足面の少なくとも一部を被覆する内足被覆部と、
足の外足面の少なくとも一部を被覆する外足被覆部と、
前記履物の幅方向における前記内足被覆部と前記外足被覆部との間に設けられており、足の出し入れを許容する足入れ部と、を有し、
前記制限生地部は、前記足入れ部の前方に配置された中央制限部を有し、
前記アッパーは、前記制限ストランドの伸張率以下の伸張率を有する非伸縮ストランドを含む非伸縮生地部をさらに含み、
前記非伸縮ストランドを伸張させる方向に前記非伸縮生地部に引張り荷重が作用した場合における当該非伸縮生地部の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される非伸縮側抵抗指標は、前記伸張率が前記所定値よりも大きな範囲における前記制限側抵抗指標以上であり、
前記非伸縮生地部は、
前記内足被覆部のうち前記中央制限部の側方に配置された内足非伸縮部と、
前記外足被覆部のうち前記中央制限部の側方に配置された外足非伸縮部と、を有する、請求項1から3のいずれかに記載の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、履物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アッパーを備える履物が知られている。例えば、特許第6302478号公報には、アッパーとソール構造とを備える履物が開示されている。アッパーは、ニット要素とインレイストランドとを含んでいる。インレイストランドは、ニット要素の伸張抵抗性よりも大きな伸張抵抗性を有している。すなわち、インレイストランドは、ニット要素よりも伸張しにくい。インレイストランドは、締めひもと連動して、履物のフィット性を高めることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
履物においては、履物に足を入れた状態における足へのフィット性(いわゆる静的フィット性)と、動作時における足への追従性(いわゆる動的フィット性)と、の双方を高めることが望ましい。
【0005】
しかしながら、静的フィット性と動的フィット性との双方を高めることは困難が伴う。例えば、アッパーを比較的高い伸縮性を有するストランドで構成した場合、静的フィット性は高まるものの、当該ストランドの伸張応力が小さいため、動的フィット性が低下する。一方、アッパーを比較的大きなキックバック性を有するストランドで構成した場合、動的フィット性は高まるものの、足に対する圧迫が大きくなり、静的フィット性が低下する。
【0006】
本開示の目的は、静的フィット性と動的フィット性との双方を高めることが可能な履物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示の一局面に従った履物は、ソール及びアッパーを備える履物であって、前記アッパーは、伸張を制限する機能を有する制限生地部を含み、前記制限生地部は、伸縮性を有する伸縮ストランドと、伸縮性を有し、かつ、前記伸縮ストランドの伸張を制限する制限ストランドと、を含み、前記伸縮ストランド及び前記制限ストランドを伸張させる方向に前記制限生地部に引張り荷重が作用した場合において、前記制限生地部の伸張率が所定値よりも大きな範囲における前記伸縮ストランドの伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される伸縮側抵抗指標よりも、前記制限生地部の前記伸張率が所定値よりも大きな範囲における前記制限ストランドの伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される制限側抵抗指標の方が大きい。
【発明の効果】
【0008】
この開示によれば、静的フィット性と動的フィット性との双方を高めることが可能な履物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態の履物を概略的に示す平面図である。
【
図4】織物として構成された制限生地部の構成を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図4に示される制限生地部に引張り荷重が作用した状態を概略的に示す断面図である。
【
図6】編物として構成された制限生地部の構成を概略的に示す断面図である。
【
図7】
図6に示される制限生地部に引張り荷重が作用した状態を概略的に示す断面図である。
【
図8】制限生地部及び伸縮生地部の特性を示すグラフである。
【
図9】
図1に示される履物のアッパーの展開図である。
【
図10】
図9に示されるアッパーの変形例を示す平面図である。
【
図11】
図9に示されるアッパーの変形例を示す平面図である。
【
図12】本開示の第2実施形態の履物のアッパーの展開図である。
【
図13】本開示の第3実施形態の履物のアッパーの展開図である。
【
図14】本開示の第4実施形態の履物のアッパーの展開図である。
【
図15】本開示の第5実施形態の履物のアッパーの展開図である。
【
図16】本開示の第6実施形態の履物のアッパーの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。以下の説明では、長手方向、幅方向、前方、後方等の用語が用いられる。これら方向を示す用語は、地面等の平らな面に置かれた履物1を着用した着用者の視点から見た方向を示す。例えば、前方は、つま先側を指し、後方は、踵側を指す。また、内足側は、幅方向における足の内側(足の第1趾側)を指し、外足側は、幅方向における足の外側を指す。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態の履物を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1に示される履物の左側面図である。
図3は、
図1に示される履物の右側面図である。なお、
図1~
図3には、左足用の履物1が示されているが、この履物1は、右足にも適用可能であり、この場合、左足用の履物1と対称になる。本実施形態の履物1は、例えば、スポーツシューズやウォーキングシューズとして適用可能であり、履物の用途は問わない。
【0012】
図1~
図3に示されるように、履物1は、ソール5と、アッパー10と、を備えている。
【0013】
アッパー10は、ソール5に接続されており、ソール5とともに足を収容する空間を形成する。アッパー10は、内足被覆部11と、外足被覆部12と、足入れ部10h1と、スリット部10h2と、を有している。
【0014】
内足被覆部11は、足の内足面の少なくとも一部を被覆する部位である。内足被覆部11は、アッパー10のうち、履物1の幅方向における中央を通る中心線Aから内側(
図1における右側)の部位で構成されている。なお、中心線Aは、幅方向における履物1の中心線でなく、履物1において、標準的な着用者の足の踵骨中心と足の第1趾と第2趾の間を通過する線と対応する位置を結ぶ線としてもよい。また、内側及び外側は、幅方向における履物1の中心線を基準として規定されているが、これは厳密なものではない。
【0015】
外足被覆部12は、足の外足面の少なくとも一部を被覆する部位である。外足被覆部12は、アッパー10のうち中心線Aから外側(
図1における左側)の部位で構成されている。
【0016】
足入れ部10h1は、履物1の幅方向における内足被覆部11と外足被覆部12との間に設けられており、足の出し入れを許容する部位である。
【0017】
スリット部10h2は、足入れ部10h1から履物1の長手方向における前方に向けて延びる形状を有する開口部である。スリット部10h2は、中足領域R3に設けられている。中足領域R3は、履物1の長手方向における前部に位置する前足領域R1と、履物1の長手方向における後部に位置する後足領域R2と、の間に位置する領域である。
【0018】
前足領域R1は、履物1の全長に対して履物1の前端部から後端部に向かって0%~30%程度の範囲に位置する領域である。中足領域R3は、履物1の全長に対して履物1の前端部から後端部に向かって30%~80%程度の範囲に位置する領域である。後足領域R2は、履物1の全長に対して履物1の前端部から後端部に向かって80%~100%の範囲に位置する領域である。
【0019】
図1~
図3に示されるように、アッパー10は、非伸縮生地部100と、制限生地部200と、を有している。以下、まず、制限生地部200について説明する。なお、各図において、制限生地部200には、ドット状の模様が付されている。
【0020】
制限生地部200は、一定の範囲において伸縮性を有し、その範囲よりも大きな範囲において伸張を制限する機能を有している。
図4~
図7に示されるように、制限生地部200は、伸縮ストランド21,22と、制限ストランド23と、を有している。伸縮ストランド21,22と制限ストランド23とは、一体的に構成されている。制限生地部200は、織物として構成されていてもよいし、編物として構成されていてもよい。
図4及び
図5には、織物として構成された制限生地部200の構成が示されており、
図6及び
図7には、織物として構成された制限生地部200の構成が示されている。
【0021】
伸縮ストランド21,22は、第1伸縮ストランド21と、第2伸縮ストランド22と、を有している。各伸縮ストランド21,22は、伸縮性を有している。第1伸縮ストランド21及び第2伸縮ストランド22は、互いに同じストランドで構成されてもよいし、異なるストランドで構成されてもよい。なお、
図4~
図7では、第1伸縮ストランド21と第2伸縮ストランド22との識別を容易にするため、第1伸縮ストランド21が破線で示され、第2伸縮ストランド22が一点鎖線で示されている。
【0022】
制限ストランド23は、伸縮性を有し、かつ、各伸縮ストランド21,22の伸張を制限する機能を有している。具体的に、
図5又は
図7に示されるように、伸縮ストランド21,22及び制限ストランド23を伸張させる方向に制限生地部200に引張り荷重が作用した場合において、制限生地部200の伸張率が所定値よりも大きな範囲における伸縮側抵抗指標よりも、制限生地部200の伸張率が所定値よりも大きな範囲における制限側抵抗指標の方が大きい。
【0023】
前記伸縮側抵抗指標は、伸縮ストランド21,22の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される。前記制限側抵抗指標は、制限ストランド23の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される。
【0024】
本実施形態では、
図4~
図7に示されるように、制限ストランド23は、制限生地部200の伸張率が前記所定値以下の範囲において弛んだ状態を呈する弛み部23aを有している。弛み部23aは、制限生地部200の伸張率が所定値より大きな範囲において伸びきった状態を呈する。これにより、制限生地部200の伸張率が所定値より大きな範囲における制限側抵抗指標が伸縮側抵抗指標よりも大きくなる。
【0025】
本実施形態では、前記所定値は、25%に設定されている。すなわち、弛み部23aは、制限生地部200の伸張率が25%になったときに伸びきった状態を呈する。ただし、前記所定値は、25%に限られない。所定値が25%に設定された理由は、履物1を履いた状態での動作時には、制限生地部200の伸張率が約25%となる引張応力が当該制限生地部200に生じることが見出されたためである。すなわち、前記所定値は、動作時に制限生地部200に生じる引張応力に基づいて設定される。
【0026】
ここで、
図8を参照しながら、制限生地部200の特性について説明する。
図8には、制限生地部200と、比較例としての伸縮生地部と、に対する引っ張り試験の結果が示されている。伸縮生地部は、第1伸縮ストランド21及び第2伸縮ストランド22のみからなる。
【0027】
図8に示されるように、伸縮生地部は、当該伸縮生地部の伸張率がいずれの範囲においても、各伸縮ストランド21,22の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合(傾き)は、概ね一定である。
【0028】
一方、制限生地部200は、伸張率が25%以下の範囲において、伸縮生地部と同様の挙動を示し、伸張率が25%よりも大きな範囲において、制限側抵抗指標が伸縮側抵抗指標よりも大きくなる。これは、制限生地部200の伸張率が25%を超えたときに弛み部23aが伸びきった状態となるためである。つまり、弛み部23aは、伸張率が25%以下の範囲においては、引張応力の値に実質的に寄与しない。
【0029】
以上のように、制限生地部200の伸張率が25%以下の範囲においては、各伸縮ストランド21,22に依存して制限生地部200が伸張するため、制限側抵抗指標は、伸縮側抵抗指標と実質的に等しく、制限生地部200の伸張率が25%よりも大きな範囲においては、弛み部23aが伸びきることによって制限ストランド23が伸縮ストランド21,22の伸張を制限するため、制限側抵抗指標は、伸縮側抵抗指標よりも大きくなる。
【0030】
次に、
図9を参照しながら、本実施形態の制限生地部200の配置について説明する。
図9に示されるように、制限生地部200は、スリット部10h2の側方、すなわち、中足領域R3に配置されている。具体的に、制限生地部200は、内足制限部210と、外足制限部220と、を有している。
【0031】
内足制限部210は、内足被覆部11のうちスリット部10h2の側方の部位に配置されている。内足制限部210は、スリット部10h2の縁部から幅方向に沿ってソール5に至るように延びる形状を有している。
【0032】
外足制限部220は、外足被覆部12のうちスリット部10h2の側方の部位に配置されている。外足制限部220は、スリット部10h2の縁部から幅方向に沿ってソール5に至るように延びる形状を有している。
【0033】
内足制限部210及び外足制限部220において、各伸縮ストランド21,22及び制限ストランド23は、幅方向に沿って延びるように配置されている。
【0034】
続いて、非伸縮生地部100について説明する。非伸縮生地部100は、制限ストランド23の伸張率以下の伸張率を有する非伸縮ストランドを含んでいる。このため、非伸縮ストランドを伸張させる方向に非伸縮生地部100に引張り荷重が作用した場合における当該非伸縮生地部100の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される非伸縮側抵抗指標は、伸張率が前記所定値以上よりも大きな範囲における制限側抵抗指標以上である。
【0035】
本実施形態では、非伸縮ストランドは、伸びきった状態を呈する制限ストランド23で構成されている。このため、前記伸縮側抵抗指標は、伸張率が前記所定値以上よりも大きな範囲における制限側抵抗指標と等しい。
【0036】
非伸縮生地部100は、前方非伸縮部110と、後方非伸縮部120と、を有している。
【0037】
前方非伸縮部110は、スリット部10h2、内足制限部210及び外足制限部220の前方に配置されている。具体的に、前方非伸縮部110は、スリット部10h2の前端部、内足制限部210の前端部及び外足制限部220の前端部からアッパー10の前端部に至る範囲の全域に配置されている。
【0038】
後方非伸縮部120は、内足制限部210の後方及び外足制限部220の後方に配置されている。具体的に、後方非伸縮部120は、内足制限部210の後端部及び外足制限部220の後端部からアッパー10の後端部に至る範囲の全域に配置されている。
【0039】
前方非伸縮部110及び後方非伸縮部120において、非伸縮ストランドは、幅方向に沿って延びるように配置されている。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態の履物1では、当該履物1に足を入れた静的な状態では、伸縮ストランド21,22の伸縮力によってアッパー10が足に沿うため、静的フィット性が高まる。さらに、履物1を履いた状態での動作時には、制限生地部200の伸張率が所定値(約25%)となる引張応力が当該制限生地部200に生じるが、制限生地部200の伸張率が所定値よりも大きくなる引張応力が生じる範囲では、制限ストランド23が伸縮ストランド21,22の伸張を制限するため、換言すれば、履物1内での足のブレが抑制されるため、動的フィット性が高まる。以上のことは、特に中足領域R3において顕著である。
【0041】
なお、この実施形態において、
図10に示されるように、内足制限部210が省略され、内足被覆部11は、全域にわたって非伸縮生地部100で構成されていてもよい。つまり、非伸縮生地部100は、スリット部10h2の縁部から幅方向に沿ってソール5に至るように延びる形状を有する内足非伸縮部130を有していてもよい。
【0042】
また、外足制限部220は、スリット部10h2の縁部から、少なくともスリット部10h2とソール5との中央部に至るように幅方向に沿って外向きに延びる形状を有していればよい。例えば、
図11に示されるように、幅方向における外足制限部220の外側の縁部は、ソール5から離間していてもよい。この場合、外足被覆部12のうち外足制限部220の外側の部位には、非伸縮生地部100が配置される。つまり、非伸縮生地部100は、外足被覆部12のうち外足制限部220の外側の部位に配置された外足非伸縮部140を有していてもよい。外足制限部220の外側の縁部は、少なくとも着用者の足の最も外に出っ張っている部分を覆う位置に達しているのが好ましい。すなわち、外足制限部220の外側の縁部は、平面視(
図1に相当)において、外足側の輪郭線に対応する部位まで達しているのが好ましい。
【0043】
(第2実施形態)
次に、
図12を参照しながら、本開示の第2実施形態の履物1のアッパー10について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0044】
本実施形態では、内足制限部210は、スリット部10h2の後部から幅方向に沿ってソール5に至るように延びる形状を有している。外足制限部220は、スリット部10h2の前部から幅方向に沿ってソール5に至るように延びる形状を有している。
【0045】
非伸縮生地部100は、内足非伸縮部130と、外足非伸縮部140と、をさらに有している。
【0046】
内足非伸縮部130は、スリット部10h2の側方でかつ内足制限部210の前方に配置されている。内足非伸縮部130は、スリット部10h2の前部から幅方向に沿ってソール5に至るように延びる形状を有している。
【0047】
外足非伸縮部140は、スリット部10h2の側方でかつ外足制限部220の後方に配置されている。外足非伸縮部140は、スリット部10h2の後部から幅方向に沿ってソール5に至るように延びる形状を有している。
【0048】
この態様では、アッパー10が屈曲した際にしわが生じやすい部位に制限生地部200が配置されるため、アッパー10の屈曲時における前記部位へのしわの発生が抑制される。このため、動作時における足へのフィット性が高まる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、
図13を参照しながら、本開示の第3実施形態の履物1のアッパー10について説明する。第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0050】
本実施形態では、制限生地部200は、足入れ部制限部230を有している。足入れ部制限部230は、足入れ部10h1の周囲に配置されている。
【0051】
アッパー10のうち足入れ部制限部230以外の部位は、非伸縮生地部100で構成されている。つまり、非伸縮生地部100は、前方非伸縮部110、後方非伸縮部120、内足非伸縮部130及び外足非伸縮部140を有している。足入れ部制限部230と内足非伸縮部130との境界、及び、足入れ部制限部230と外足非伸縮部140との境界は、それぞれ、着用者の足の内踝及び外踝の下縁に対応する位置付近とするのが好ましい。この場合、内足側の境界の高さは、外足側の境界の高さと異なっていてもよい。
【0052】
この態様では、足入れ部10h1における足の静的フィット性と動的フィット性が高まる。
【0053】
(第4実施形態)
次に、
図14を参照しながら、本開示の第4実施形態の履物1のアッパー10について説明する。第4実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0054】
本実施形態では、制限生地部200は、前方制限部240を有している。前方制限部240は、スリット部10h2の前方でかつスリット部10h2の前端部を含む位置に配置されている。前方制限部240は、幅方向に沿って延びる形状を有している。
【0055】
この態様では、アッパーのうち足のMP関節に対応する部位に制限生地部が配置されるため、アッパーの屈曲時における前記部位へのしわの発生が抑制される。
【0056】
(第5実施形態)
次に、
図15を参照しながら、本開示の第5実施形態の履物1のアッパー10について説明する。第5実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0057】
本実施形態では、制限生地部200は、内足制限部210及び外足制限部220を有しておらず、前方制限部240を有している。前方制限部240は、スリット部10h2の前方でかつスリット部10h2の前端部を含む位置に配置されている。前方制限部240は、第1内側制限部241と、第2内側制限部242と、第1外側制限部243と、第2外側制限部244と、を有している。
【0058】
第1内側制限部241は、スリット部10h2の前端部から幅方向における内側(
図15における右側)に向かうにしたがって前方に向かうように延びる形状を有している。第1内側制限部241は、幅方向における内側に向かうにしたがって次第に長手方向(
図15における前後方向)の長さが小さくなる形状を有している。
【0059】
第2内側制限部242は、幅方向における第1内側制限部241の内側の端部でかつ第1内側制限部241の前端部から、幅方向における内側に向かうにしたがって第1内側制限部241から離間するように延びる形状を有している。第2内側制限部242は、幅方向における内側に向かうにしたがって次第に長手方向の長さが小さくなる形状を有している。
【0060】
第1外側制限部243は、スリット部10h2の前端部から幅方向における外側(
図15における左側)に向かうにしたがって前方に向かうように延びる形状を有している。第1外側制限部243は、幅方向における外側に向かうにしたがって次第に長手方向の長さが小さくなる形状を有している。
【0061】
第2外側制限部244は、幅方向における第1外側制限部243の内側の端部でかつ第1外側制限部243の前端部から、幅方向における外側に向かうにしたがって第1外側制限部243から離間するように延びる形状を有している。第2外側制限部244は、幅方向における外側に向かうにしたがって次第に長手方向の長さが小さくなる形状を有している。
【0062】
非伸縮生地部100は、内足非伸縮部130と外足非伸縮部140とをさらに有している。内足非伸縮部130及び外足非伸縮部140の構成は、第3実施形態の構成と同じである。
【0063】
本実施形態では、前方非伸縮部110は、内側非伸縮部111と、外側非伸縮部112と、前端非伸縮部113と、を有している。
【0064】
内側非伸縮部111は、第1内側制限部241と第2内側制限部242との間に配置されている。
【0065】
外側非伸縮部112は、第1外側制限部243と第2外側制限部244との間に配置されている。
【0066】
前端非伸縮部113は、第2内側制限部242と第2外側制限部244との間に配置されている。
【0067】
この態様では、アッパー10に対して様々な角度に荷重が作用した際における動的フィット性と、アッパー10のうちスリット部10h2の前方の部位における剛性と、の双方が確保される。
【0068】
(第6実施形態)
次に、
図16を参照しながら、本開示の第6実施形態の履物1のアッパー10について説明する。第6実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0069】
本実施形態では、アッパー10は、内足被覆部11と、外足被覆部12と、足入れ部10h1と、を有しており、スリット部10h2を有していない。すなわち、この実施形態におけるアッパー10は、いわゆるモノソック構造で構成されている。
【0070】
制限生地部200は、足入れ部10h1の前方に配置された中央制限部250を有している。中央制限部250は、足入れ部10h1の前端部から前方に向かって延びる形状を有している。
【0071】
非伸縮生地部100は、内足非伸縮部130と、外足非伸縮部140と、を有している。
【0072】
内足非伸縮部130は、内足被覆部11のうち中央制限部250の側方に配置されている。前方非伸縮部110、内足非伸縮部130及び後方非伸縮部120は、長手方向に連続的につながっている。
【0073】
外足非伸縮部140は、外足被覆部12のうち中央制限部250の側方に配置されている。前方非伸縮部110、外足非伸縮部140及び後方非伸縮部120は、長手方向に連続的につながっている。
【0074】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0075】
例えば、上記第1実施形態~第5実施形態において、スリット部10h2が省略され、アッパー10がいわゆるモノソック構造で構成されてもよい。この場合、スリット部10h2の周囲に設けられた内足制限部210、外足制限部220及び前方制限部240の位置は、スリット部10h2が設けられている場合の位置と同じである。
【0076】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0077】
この開示の一局面に従った履物1は、ソール5及びアッパー10を備える履物1であって、前記アッパー10は、伸張を制限する機能を有する制限生地部200を含み、前記制限生地部200は、伸縮性を有する伸縮ストランド21,22と、伸縮性を有し、かつ、前記伸縮ストランドの伸張を制限する制限ストランド23と、を含み、前記伸縮ストランド及び前記制限ストランドを伸張させる方向に前記制限生地部に引張り荷重が作用した場合において、前記制限生地部200の伸張率が所定値よりも大きな範囲における前記伸縮ストランド21,22の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される伸縮側抵抗指標よりも、前記制限生地部200の前記伸張率が所定値よりも大きな範囲における前記制限ストランド23の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される制限側抵抗指標の方が大きい。
【0078】
この履物では、当該履物に足を入れた静的な状態では、伸縮ストランドの伸縮力によってアッパーが足に沿うため、静的フィット性が高まる。さらに、履物を履いた状態での動作時には、制限生地部の伸張率が所定値となる引張応力が当該制限生地部に生じるが、制限生地部の伸張率が所定値よりも大きくなる引張応力が生じる範囲では、制限ストランドが伸縮ストランドの伸張を制限するため、換言すれば、履物内での足のブレが抑制されるため、動的フィット性が高まる。
【0079】
また、前記制限ストランド23は、前記制限生地部の前記伸張率が所定値以下の範囲において弛んだ状態を呈する弛み部23aを有し、前記弛み部23aは、前記制限生地部の前記伸張率が所定値より大きな範囲において伸びきった状態を呈することにより、前記制限生地部の前記伸張率が所定値より大きな範囲における前記制限側抵抗指標が前記伸縮側抵抗指標よりも大きくなることが好ましい。
【0080】
この態様では、上記の効果が有効に得られる。
【0081】
また、前記伸縮ストランド21,22と前記制限ストランド23とは、一体的に構成されていることが好ましい。
【0082】
また、前記アッパー10は、足の内足面の少なくとも一部を被覆する内足被覆部11と、足の外足面の少なくとも一部を被覆する外足被覆部12と、前記履物の幅方向における前記内足被覆部と前記外足被覆部との間に設けられており、足の出し入れを許容する足入れ部10h1と、前記足入れ部から前記履物の長手方向における前方に向けて延びるスリット部10h2と、を有することが好ましい。
【0083】
前記制限生地部200は、前記スリット部の側方に配置されていてもよい。
【0084】
例えば、前記制限生地部200は、前記外足被覆部12のうち前記スリット部の側方の部位に配置された外足制限部220を有し、前記外足制限部220は、前記スリット部の縁部から、少なくとも前記スリット部と前記ソールとの中央部に至るように前記幅方向に沿って外向きに延びる形状を有していてもよい。
【0085】
この態様では、足の甲のうち比較的大きく隆起している部分に制限生地部が配置されるため、アッパーの足へのフィット性が高まる。
【0086】
あるいは、前記制限生地部200は、前記内足被覆部11のうち前記スリット部の側方の部位に配置された内足制限部210と、前記外足被覆部のうち前記スリット部の側方の部位に配置された外足制限部220と、を有していてもよい。前記内足制限部210は、前記スリット部の後部から前記幅方向に沿って前記ソールに至るように延びる形状を有し、前記外足制限部220は、前記スリット部の前部から前記幅方向に沿って前記ソールに至るように延びる形状を有している。
【0087】
この態様では、アッパーが屈曲した際にしわが生じやすい部位に制限生地部が配置されるため、アッパーの屈曲時における前記部位へのしわの発生が抑制される。このため、動作時における足へのフィット性が高まる。
【0088】
また、前記制限生地部200は、前記足入れ部の周囲に配置された足入れ部制限部230を有していてもよい。
【0089】
この態様では、足入れ部における足の静的フィット性と動的フィット性が高まる。
【0090】
また、前記制限生地部200は、前記スリット部の前方でかつ前記スリット部の前端部を含む位置に配置された前方制限部240を有し、前記前方制限部240は、前記幅方向に沿って延びる形状を有していてもよい。
【0091】
この態様では、アッパーのうち足のMP関節に対応する部位に制限生地部が配置されるため、アッパーの屈曲時における前記部位へのしわの発生が抑制される。
【0092】
この場合において、前記アッパー10は、前記制限ストランド23の伸張率以下の伸張率を有する非伸縮ストランドを含む非伸縮生地部100をさらに含んでいてもよい。前記非伸縮ストランドを伸張させる方向に前記非伸縮生地部100に引張り荷重が作用した場合における当該非伸縮生地部の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される非伸縮側抵抗指標は、前記伸張率が前記所定値以上よりも大きな範囲における前記制限側抵抗指標以上である。前記非伸縮生地部100は、前記前方制限部240の前方に配置された前方非伸縮部110を有していることが好ましい。
【0093】
また、前記制限生地部200は、前記スリット部の前方でかつ前記スリット部の前端部を含む位置に配置された前方制限部240を有し、前記前方制限部240は、前記スリット部の前端部から前記幅方向における内側に向かうにしたがって前方に向かうように延びる形状を有する第1内側制限部241と、前記幅方向における前記第1内側制限部の内側の端部でかつ前記第1内側制限部の前端部から前記幅方向における内側に向かうにしたがって前記第1内側制限部から離間するように延びる形状を有する第2内側制限部242と、前記スリット部の前端部から前記幅方向における外側に向かうにしたがって前方に向かうように延びる形状を有する第1外側制限部243と、前記幅方向における前記第1外側制限部の内側の端部でかつ前記第1外側制限部の前端部から前記幅方向における外側に向かうにしたがって前記第1外側制限部から離間するように延びる形状を有する第2外側制限部244と、を有していてもよい。
【0094】
この態様では、アッパーに対して様々な角度に荷重が作用した際における動的フィット性が確保される。
【0095】
この場合において、前記第1内側制限部241は、前記幅方向における内側に向かうにしたがって次第に前記長手方向の長さが小さくなる形状を有し、前記第2内側制限部242は、前記幅方向における内側に向かうにしたがって次第に前記長手方向の長さが小さくなる形状を有し、前記第1外側制限部243は、前記幅方向における外側に向かうにしたがって次第に前記長手方向の長さが小さくなる形状を有し、前記第2外側制限部244は、前記幅方向における外側に向かうにしたがって次第に前記長手方向の長さが小さくなる形状を有することが好ましい。
【0096】
また、前記アッパー10は、前記制限ストランドの伸張率以下の伸張率を有する非伸縮ストランドを含む非伸縮生地部100をさらに含み、前記非伸縮ストランドを伸張させる方向に前記非伸縮生地部に引張り荷重が作用した場合における当該非伸縮生地部の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される非伸縮側抵抗指標は、前記伸張率が前記所定値以上よりも大きな範囲における前記制限側抵抗指標以上であり、前記非伸縮生地部100は、前記第1内側制限部と前記第2内側制限部との間に配置された内側非伸縮部111と、前記第1外側制限部と前記第2外側制限部との間に配置された外側非伸縮部112と、前記第2内側制限部と前記第2外側制限部との間に配置された前端非伸縮部113と、を有していてもよい。
【0097】
この態様では、アッパーに対して様々な角度に荷重が作用した際における動的フィット性と、アッパーのうちスリット部の前方の部位における剛性と、の双方が確保される。
【0098】
また、前記アッパーは、足の内足面の少なくとも一部を被覆する内足被覆部と、足の外足面の少なくとも一部を被覆する外足被覆部と、前記履物の幅方向における前記内足被覆部と前記外足被覆部との間に設けられており、足の出し入れを許容する足入れ部と、を有し、前記制限生地部200は、前記足入れ部の前方に配置された中央制限部250を有し、前記アッパー10は、前記制限ストランドの伸張率以下の伸張率を有する非伸縮ストランドを含む非伸縮生地部100をさらに含み、前記非伸縮ストランドを伸張させる方向に前記非伸縮生地部に引張り荷重が作用した場合における当該非伸縮生地部の伸張率の増加量に対する引張応力の増加量の割合で示される非伸縮側抵抗指標は、前記伸張率が前記所定値以上よりも大きな範囲における前記制限側抵抗指標以上であり、前記非伸縮生地部100は、前記内足被覆部のうち前記中央制限部の側方に配置された内足非伸縮部130と、前記外足被覆部のうち前記中央制限部の側方に配置された外足非伸縮部140と、を有していてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 履物、5 ソール、10 アッパー、10h1 足入れ部、10h2 スリット部、11 内足被覆部、12 外足被覆部、21 第1伸縮ストランド、22 第2伸縮ストランド、23 制限ストランド、23a 弛み部、100 非伸縮生地部、110 前方非伸縮部、111 内側非伸縮部、112 外側非伸縮部、113 前端非伸縮部、120 後方非伸縮部、130 内足非伸縮部、140 外足非伸縮部、200 制限生地部、210 内足制限部、220 外足制限部、230 足入れ部制限部、240 前方制限部、241 第1内側制限部、242 第2内側制限部、243 第1外側制限部、244 第2外側制限部、250 中央制限部、R1 前足領域、R2 後足領域、R3 中足領域。