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特許7495980改善された加工性および衝撃強さを有するポリプロピレン組成物
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  • 特許-改善された加工性および衝撃強さを有するポリプロピレン組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】改善された加工性および衝撃強さを有するポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20240529BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240529BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240529BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240529BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240529BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20240529BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/16
C08K3/013
C08K3/34
C08K3/26
C08F4/6592
C08F4/654
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022523951
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2020079753
(87)【国際公開番号】W WO2021078861
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】19204928.6
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジンボォ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ベルンライトナー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン,パウリ
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/002294(WO,A1)
【文献】特表2018-529810(JP,A)
【文献】特表2020-535295(JP,A)
【文献】特表2017-509753(JP,A)
【文献】特表2019-521208(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03357964(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/070416(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0166776(US,A1)
【文献】国際公開第2019/042875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08F 4/00- 4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
75~95重量%の第1異相プロピレンコポリマー(A)、該第1異相プロピレンコポリマー(A)は以下:
〇78.0~92.0重量%の、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーである結晶性マトリックス(A1)、該結晶性マトリックスは、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定した結晶性画分(CF)に対応し、0.0~2.0重量%のコモノマーを含む、
〇前記結晶性マトリックス(A1)中に分散した、さらなるコモノマーとしてC4-C12アルファ-オレフィンを場合により含む、8.0~22.0重量%の、アモルファスプロピレン-エチレンエラストマー(A2)
を含む、
〇ここで、(A1)および(A2)は合計して100重量%であり、ここで、前記アモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)は、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定した可溶性画分(SF)に対応し、15.0~30.0重量%のエチレンおよび/または1つ以上のC4-C8アルファ-オレフィンであるコモノマーを含有し、
〇前記異相プロピレンコポリマーは、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、30~120g/10minのメルトフローレートMFRを特徴とする、
および、
・5~25重量%の、ISO1133に従い、190℃、2.16kg荷重で測定して、0.1~100g/10minのMFRを特徴とし、かつ、840~900kg/m未満の範囲の密度を特徴とする、エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)、
を含む、
ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
5.0~15.0重量%の、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して5~25g/10minのメルトフローレートMFRを特徴とし、25.0~50.0重量%の範囲の低温キシレン可溶性画分(XCS)を含む、第2異相プロピレンコポリマー(C)をさらに含む、ここで、ポリプロピレン組成物中の前記第1異相プロピレンコポリマー(A)の量は75~90重量%であり、前記エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)の量は5~25重量%である、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項3】
5.0~30.0重量%の強化無機フィラー(D)をさらに含む、ここで、ポリプロピレン組成物中の前記第1異相プロピレンコポリマー(A)の量は75~90重量%であり、前記エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)の量は5~25重量%である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、10.0~100g/10minメルトフローレートMFRを有し、20.0~50.0重量%の範囲の低温キシレン可溶性画分(XCS)を含み、前記画分はエチレンおよび/またはC4-C12アルファ-オレフィンから選択されるコモノマーの、20.0~40.0重量%の範囲の含量を有する、請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
【請求項5】
100μg/g未満の揮発性物質(VOC、VDA 278、2011年10月)および200μg/g未満の半揮発性有機凝縮可能性分(FOG、VDA 78、2011年10月)を特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
【請求項6】
第1異相プロピレンコポリマー(A)は以下:
・(A1)79.0~91.0重量%の、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定される結晶性画分(CF)に対応する結晶性マトリックス、該結晶性画分(CF)は、0.5~1.8重量%のエチレンを含有し、ISO1628に従い測定して、0.6~2.0dl/gの固有粘度(iv)を有する、
及び
・(A2)9.0~21.0重量%の、前記結晶性マトリックス(A1)中に分散したアモルファスプロピレンエチレンエラストマー、該プロピレンエチレンエラストマーは、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定される可溶性画分(SF)に対応し、16.5~28.0重量%のエチレンを含有し、ISO1628に従い測定して、1.8~3.5dl/gの固有粘度(iv)を有する、
を含むことを特徴とし、
・ここで、(A1)および(A2)は合計して100重量%である、
請求項1~5のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
【請求項7】
第1異相プロピレンコポリマー(A)は、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、35~110g/10minのメルトフローレートMFR、および/または
0.8~2.8重量%の範囲の、FDA法(C6FDA)に従うヘキサン-可溶性画分
を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
【請求項8】
エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)は、シングルサイト触媒を用いる溶液重合プロセスに基づき、ISO1133に従い190℃、2.16kg荷重で測定して0.2~50g/10minのメルトフローレートMFR、および、850~890kg/m未満の範囲の密度を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
【請求項9】
強化無機フィラーは、0.5-15μmのメジアン粒子径(D50)および1-50μmのトップカット(D95)を有する、タルク、マイカ、ウォラストナイト、および炭酸カルシウムから選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
【請求項10】
以下のプロセスステップ:
(i)シングルサイト触媒系の存在下での連続重合プロセスにおいて、第1異相プロピレンコポリマー(A)を重合するステップ、および
(ii)該コポリマー(A)を適量のエラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)と溶融混合するステップ、
(iii)前記溶融混合ステップにおいて、チーグラー-ナッタ型触媒系の存在下で重合された適量の第2異相プロピレンコポリマー(C)、および/または適量の強化無機フィラー(D)を場合により添加するステップ、次いで、
(iv)得られる溶融物をストランドペレット化または水中ペレット化ステップで固化するステップ
を含む、請求項1~9のいずれかに記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項11】
第1異相プロピレンコポリマー(A)を重合するためのシングルサイト触媒系は、非対称メタロセン触媒複合体と、1つまたは複数の共触媒とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2異相プロピレンコポリマー(C)を重合するためのチーグラー-ナッタ型触媒系は、マグネシウム化合物、チタン化合物および非フタル系内部電子供与体(ID)を含む、自己支持型チーグラー-ナッタ触媒を含み、共触媒はアルミニウム化合物であり、外部供与体(ED)はシランである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ISO 178に従い測定して、500~1000MPaの範囲の曲げ弾性率、ISO 179/1eAに従い23℃で測定して、20.0kJ/mを超える、シャルピーノッチ付き衝撃強さ(NIS)、および、ISO 179/1eAに従い-20℃で測定して、6.0kJ/mを超えるシャルピーNISを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のポリプロピレン組成物を含む射出成形品。
【請求項14】
請求項1~9のいずれかに記載のポリプロピレン組成物を含み、最大で1.5mmの壁厚を有する、包装部材または自動車部品。
【請求項15】
請求項1~7のいずれかに記載のポリプロピレン組成物を含み、射出成形プロセスにおいて最大1.5mmの壁厚を有する、包装部材または自動車部品を製造するための、請求項1~9のいずれかに記載のポリプロピレン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスとしての結晶性画分を形成するプロピレンホモポリマーまたはコポリマーと、該マトリックス中に分散した可溶性画分としてのアモルファスプロピレンエチレンエラストマーとを含む、異相ポリプロピレン組成物に関する。異相ポリプロピレン組成物は、エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマーをさらに含む。異相ポリプロピレン組成物は、剛性および衝撃強さ、低い揮発性および半揮発性放出量、並びに良好な加工性の間で、バランスの良い関係を有している。
【背景技術】
【0002】
プロピレンコポリマーをベースとする組成物は、高度なパッケージングソリューションから、自動車または電子分野などの技術的用途に至るまで、ポリマー産業のいくつかの分野で広く使用されている。結晶成分とエラストマー成分とを含むこれらの組成物は、剛性と衝撃強さのバランスの取れた組み合わせを特徴としているが、しばしば加工性が制限される。エネルギーと部品重量の両方を節約するための壁の厚さを薄くするという傾向は、粘度を低くすること、個々にメルトフローレート(MFR)を高くすることを必要とする。しかし問題は、特定のレベルの剛性またはエラストマー含有量でのMFRがそれぞれ高くなると、通常、衝撃強さが顕著に低下することである。さらに、食品包装および自動車分野の両方において、揮発性および半揮発性炭化水素成分の放出量(すなわち、VDA 278に従い決定されるVOCレベルおよびFOGレベル)をできるだけ低くすべきである。さらに、MFRを上げると、既存の組成物はより高いレベルの放出量を示す。したがって、剛性および衝撃強さ、低い揮発性および半揮発性放出量、並びに良好な加工性、すなわち高いメルトフローレート(MFR)のバランスの取れた関係を組み合わせた組成物を開発することが求められている。
【0003】
欧州特許出願公開第EP 2275485 A1号には、(A)45~70重量%の、(ISO 1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して)少なくとも80g/10minのMFRを有する、プロピレンホモポリマー又はコポリマーマトリックス、(B)25~40重量%の、3.3dl/g以上の固有粘度 IV (ISO 1628、溶媒としてデカリンを使用)を有し、20~50重量%のエチレン含量を有する、エラストマー性プロピレン-エチレンコポリマー、(C)0-15重量%のエラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー、ならびに(D)3-25重量部の無機フィラーを含む異相ポリプロピレン組成物が記載されている。それぞれの異相ポリプロピレン組成物は、少なくとも5g/10minの合計MFR、ISO 179/1eAに従い、+23℃で、少なくとも15.0kJ/mのシャルピーノッチ衝撃強さ、ISO 179/1eAに従い、-20℃で、少なくとも7.0kJ/mのシャルピーノッチ衝撃強さ、およびISO 527-3に従い、少なくとも1200MPaの引張モジュラスを有する。該発明の組成物についてはVOCレベルもFOGレベルも示されておらず、さらには、該組成物はフィラーと組み合わせた場合にのみ、より高いMFRおよび高い剛性で限られた衝撃性能を示す。
【0004】
欧州特許出願公開第EP 2426171 A1には、(ISO 1133に従い、230℃および2.16kg荷重で測定して)25~100g/10min未満のMFRを有する異相ポリプロピレン樹脂であって、結晶性ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(A)と、該マトリックス中に分散した、アモルファスプロピレン/エチレンもしくはプロピレン/アルファオレフィンコポリマー相(B)とを含む樹脂が開示されている。該異相ポリプロピレン樹脂は、(i)35~75重量%の、DIN EN ISO 1628-1および-3に従い測定して、1.1dl/g未満の固有粘度を有し、150℃より高い融点を有する、25℃でのp-キシレン不溶性画分(XCU)、および、(ii)25~65重量%の、2.0~5.0dl/gの固有粘度を有し、ならびに、XCS画分の総重量に基づいて40~70重量%の範囲のエチレンおよび/またはアルファ-オレフィン含量を有し、DSC分析において0~300℃の間に融点を有さない、25℃でのp-キシレン可溶性画分(XCU)を有する。該発明の組成物のVOCレベルもFOGレベルも示されておらず、該組成物はまた、限られた剛性を有する。
【0005】
欧州特許出願公開第EP 2681277 A1号において、ポリオレフィン組成物は、(a)(i)異相ポリプロピレン組成物の重量に基づいて10-50重量%の、30-80g/10minのMFR(ISO 1133に従い230℃および2.16kg荷重にて測定)を有する、第1プロピレンホモポリマー(PPH1)と、(ii)異相ポリプロピレン組成物の重量に基づいて20-65重量%の、100-250g/10minのMFRを有する第2プロピレンホモポリマー(PPH2)と、(iii)異相ポリプロピレン組成物の重量に基づいて5-30重量%の、2.0-3.0dl/gの固有粘度 IVXS1を有する、第1キシレン低温可溶性画分(XS1)と、(iv)異相ポリプロピレン組成物の重量に基づいて5-25重量%の、1.5-2.8dl/gの固有粘度 IVXS2を有する、第2キシレン低温可溶性画分(XS2)(但しIVXS1≠IVXS2)とを含む、異相ポリプロピレン組成物の重量に基づいて35-90重量%の異相ポリプロピレン組成物、(b)ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて5-40重量%の無機フィラー、および、(c)ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて5-25重量%のエチレン/1-ブテンエラストマーを含む。該発明の組成物のVOCレベルもFOGレベルも示されておらず、該組成物はかなりの量のフィラーと組み合わせた場合にのみ高い剛性を示す。
【0006】
最後に、国際公開第WO 2019042875 A1において、ポリプロピレン組成物は、5~50g/10minの範囲のメルトフローレートMFR(ISO 1133に従い230℃および2.16kg荷重にて測定)を有し、該ポリプロピレン組成物は、以下を含む:(a)ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて55~75重量%の、CRYSTEX QC法に従い決定される結晶性画分(CF)、該結晶性画分(CF)は、(i)示差走査熱量測定(DSC)により測定して147℃~162℃の溶融温度(Tm)、および、(ii)結晶性画分(CF)の総重量に基づいて1重量%未満のエチレン含分を有する;および(b)ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて25~45重量%の、CRYSTEX QC法に従い決定される可溶性画分(SF)、該可溶性画分(SF)は、(i)1.0~2.0dl/の範囲の固有粘度(iv)、および(ii)可溶性画分(SF)の総重量に基づいて18~40重量%の範囲のエチレン含分を有する。該ポリプロピレン組成物は、0.7~<1.2の、結晶性画分(IV(CF))の固有粘度に対する可溶性画分(IV(SF))の固有粘度の割合[(IV(SF))/(IV(CF))]を有する。該発明の組成物のVOCレベルもFOGレベルも示されておらず、該組成物はまた、制限された剛性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第EP 2275485 A1号
【文献】欧州特許出願公開第EP 2426171 A1号
【文献】欧州特許出願公開第EP 2681277 A1号
【文献】国際公開第WO 2019042875 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の対象は、剛性と衝撃強さとの間のバランスの良い関係、低い揮発性および半揮発性放出量、ならびに良好な加工特性、すなわちより高いメルトフローレート(MFR)を組み合わせた、ポリプロピレン組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、そのようなポリプロピレン組成物は、以下:78.0~92.0重量%の、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーである結晶性マトリックス(A1)(該結晶性マトリックスは、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定された結晶性画分(crystalline fraction、CF)に相当し、0.0~2.0重量%のコモノマーを含有する)と、8.0~22.0重量%のアモルファスプロピレン-エチレンエラストマー(A2)とを含み、さらなるコモノマーとして該結晶性マトリックス(A1)中に分散したC4-C8アルファ-オレフィンを任意に含む、60~95重量%の第1異相プロピレンコポリマー(A)と、ここで、(A1)および(A2)は合計して100重量%までであり、前記アモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)は、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bにより決定された可溶性画分(可溶性画分、SF)に相当し、15.0~30.0重量%のコモノマーを含有し、前記異相プロピレンコポリマーは、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、30~120g/10minのメルトフローレートMFRであることを特徴とする;5~40重量%の、ISO1133に従い190℃、2.16kg荷重で測定して0.1~100g/10minのMFR、および、840~900kg/m未満の範囲の密度であることを特徴とする、エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)とを組み合わせることにより達成できることがわかった、ここで、(A)および(B)は合計して100重量%までである。
【0010】
場合により、前記ポリプロピレン組成物は、5.0~15.0重量%の、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して5~25g/10minのメルトフローレートMFRを特徴とし、25.0~50.0重量%の範囲の低温キシレン可溶性画分(低温キシレン可溶性画分、XCS)を含む、第2異相プロピレンコポリマー(C)をさらに含んでよい。さらに任意に、前記ポリプロピレン組成物は、5.0~30.0重量%の強化無機フィラー(D)を含んでよい。好ましくは、それぞれのポリプロピレン組成物は、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、10.0~100g/10minのメルトフローレートMFRを特徴とし、20.0~50.0重量%の範囲の低温キシレン可溶性画分(XCS)を含み、該画分は、20.0~40.0重量%の範囲の、エチレンおよび/またはC4-C8アルファ-オレフィンコモノマーから選択されるコモノマーの含量を有する。より好ましくは、それぞれのポリプロピレン組成物は、100μg/g未満の揮発分(VOC、VDA 278 October 2011)および200μg/g未満の半揮発性有機凝縮可能性分(FOG、VDA 278 October 2011)を特徴とする。
【0011】
本発明はさらに、以下による、このようなポリプロピレン組成物の製造方法に関する:
(i)シングルサイト触媒系の存在下での連続重合プロセスにおいて、第1異相プロピレンコポリマー(A)を重合すること、および
(ii)該コポリマー(A)を適量のエラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)と溶融混合すること、
(iii)前記溶融混合ステップにおいて、チーグラー-ナッタ型触媒系の存在下で重合された適量の第2異相プロピレンコポリマー(C)および/または適量の強化無機フィラー(D)を場合により添加すること、続いて、
(iv)得られた溶融物を、ストランドペレット化ステップまたは水中ペレット化ステップで固化すること。
【0012】
さらに、本発明は、該ポリプロピレン組成物を含む射出成形品に関し、これは、ISO 178に従い測定して500~1000MPaの範囲の曲げ弾性率、ISO 179/1eAに従い23℃で測定して20.0kJ/mより大きいシャルピーノッチ衝撃強さ(NIS)、および、ISO 179/1eAに従い-20℃で測定して6.0kJ/mより大きいシャルピーNISにより特徴づけられる。これはまた、最大で1.5mmの壁厚を有し、前記ポリプロピレン組成物を含む、包装部材または自動車部品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】CRYSTEX QC装置の概略図およびCRYSTEX分析を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、前記ポリプロピレン組成物の成分ならびに該組成物を詳細に説明する。
【0015】
〔第1異相プロピレンコポリマー(A)〕
第1異相プロピレンコポリマー(A)は、本発明のポリプロピレン組成物中に、60~95重量%の量、好ましくは65~92重量%の量、より好ましくは70~90重量%の量で存在する。
【0016】
前記第1異相プロピレンコポリマー(A)は、78.0~92.0重量%、好ましくは79.0~91.0重量%、より好ましくは80.0~90.0重量%の、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーである結晶性マトリックス(A1)を含み、該結晶性マトリックスは、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定した結晶性画分(CF)に対応し、0.0~2.0重量%、好ましくは0.5~1.8重量%、より好ましくは0.7~1.6重量%のコモノマーを含有する。前記コモノマーは好ましくはエチレンである。結晶性画分(CF)は、ISO1628に従い測定して、0.6~2.0dl/g、より好ましくは0.8~1.8dl/g、最も好ましくは0.9~1.6dl/gの固有粘度(IV)を好ましくは有する。
【0017】
前記第1異相プロピレンコポリマー(A)は、前記結晶性マトリックス(A1)中に分散した、8.0~22.0重量%、好ましくは9.0~21.0重量%、より好ましくは10.0~20.0重量%のアモルファスプロピレン-エチレンエラストマー(A2)をさらに含み、これは任意に、C4-C12アルファ-オレフィンをさらなるコモノマーとして含み、ここで、前記アモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)は、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定した可溶性画分(SF)に対応し、15.0~30.0重量%、好ましくは16.5~28.0重量%、より好ましくは17.5~26.0重量%のコモノマーを含有する。前記コモノマーは、エチレンおよび/または1つまたはそれより多くのC4-C8アルファ-オレフィンである。好ましくは、前記コモノマーはエチレンである。可溶性画分(SF)は、ISO1628に従い測定して、1.8~3.5dl/g、より好ましくは2.0~3.2dl/g、最も好ましくは2.1~3.1dl/gの固有粘度(IV)を好ましくは有する。
【0018】
結晶性マトリックス(A1)とアモルファスプロピレン-エチレンエラストマー(A2)の相対量は合計して100重量%である。
【0019】
好ましい一実施形態によれば、第1異相プロピレンコポリマー(A)は、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、20~120g/10min、好ましくは35~110g/10min、より好ましくは38~100g/10minのメルトフローレートMFRを有する。さらなる別の好ましい一実施形態によれば、第1異相プロピレンコポリマー(A)は、0.8~2.8重量%の範囲、好ましくは1.0~2.3重量%の範囲、より好ましくは1.1~2.0重量%の範囲の、FDA法(C6FDA)に従うヘキサン-可溶性画分を有する。
【0020】
異相ポリプロピレン組成物は、8.0~22.0重量%の範囲、好ましくは9.0~21.0重量%の範囲、より好ましくは10.0~20.0重量%の範囲の、低温キシレン可溶性画分(XCS)を有し得る。異相ポリプロピレン組成物の、前記低温キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含量は、15.0~30.0重量%の範囲、好ましくは16.5超~28.0重量%の範囲、より好ましくは17.5~26.0重量%の範囲であり得る。異相ポリプロピレン組成物の低温キシレン可溶性画分(XCS)の固有粘度IV(XCS)は、1.8~3.5dl/gの範囲、好ましくは2.0~3.2dl/gの範囲、より好ましくは2.1~3.1dl/gの範囲であり得る。
【0021】
本発明のポリマーの溶融温度、Tm(DSC)は、145~162℃の範囲、好ましくは150~160℃の範囲、より好ましくは152~158℃の範囲であってよい。本発明のポリマーの結晶化温度Tc(DSC)は、103~123℃の範囲、好ましくは108~120℃の範囲、より好ましくは110~118℃の範囲であってよい。
【0022】
第1異相プロピレンコポリマー(A)の結晶性マトリックス(A1)は、プロピレンホモポリマー、またはプロピレンランダムコポリマーのようなコポリマーである。これは、エチレンおよびC4~C8アルファオレフィンから選択される、好ましくはエチレンまたは1-ブテンから選択される、アルファ-オレフィンを含有してよい。好ましい実施形態において、該結晶性マトリックスは、コモノマーとしてエチレンを含む。等しく好ましい実施形態において、結晶性マトリックスはプロピレンホモポリマーである。したがって、結晶性マトリックスは、0.0~2.0重量%の量、好ましくは0.3~1.8重量%の量、より好ましくは0.5~1.6重量%の量で、上記に概説したようなコモノマーを含んでよい。
【0023】
結晶性マトリックスは、第1異相プロピレンコポリマー(A)の78.0~95.0重量%、好ましくは80.0~93.0重量%、より好ましくは81.0~92.0重量%を形成する。
【0024】
結晶性マトリックス(A1)のメルトフローレートMFRは、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、80~200g/10minの範囲、好ましくは90~180g/10minの範囲、より好ましくは95~170g/10minの範囲であってよい。
【0025】
アモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)は、第1異相プロピレンコポリマー(A)の結晶性マトリックス(A1)中に分散粒子として存在し、該異相プロピレンコポリマーの5.0~22.0重量%、好ましくは7.0~20.0重量%、より好ましくは8.0~19.0重量%を形成する。
【0026】
アモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)は、主に、CRYSTEX QC法 ISO6427-Bの可溶性画分により特徴付けられ、8.0~22.0重量%の範囲、好ましくは9.0~21.0重量%の範囲、より好ましくは10.0~20.0重量%の範囲であり得る。
【0027】
アモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)は、C4-C8アルファオレフィンから選択されるアルファーオレフィン、好ましくは1-ブテンまたは1-ヘキセンを含んでもよい。好ましい一実施形態において、アモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)は、コモノマーとして、エチレンおよび1-ブテンを含む。とりわけ好ましい一実施形態において、アモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)は、唯一のコモノマーとして、プロピレンおよびエチレンを含み、より好ましくはこれらからなる。
【0028】
好ましい一実施形態によれば、第1異相プロピレンコポリマー(A)は、シングルサイト触媒系の存在下での連続重合プロセスにおいて製造される。好ましくは、該触媒系は、非対称メタロセン触媒複合体と、1つまたは複数の共触媒とを含む。
【0029】
〔エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)〕
エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)は、本発明のポリプロピレン組成物中に、5~40重量%の量、好ましくは8~35重量%の量、より好ましくは10~30重量%の量で存在する。
【0030】
好ましいエラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)は、エチレン-1-ブテンコポリマー、エチレン-1-ヘキセンコポリマー、またはエチレン-1-オクテンコポリマーのような、エチレンおよびC4~C8アルファ-オレフィンのエラストマー性コポリマーである。より好ましいエチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマーは、エチレン-1-ブテンコポリマーおよびエチレン-1-オクテンコポリマーである。最も好ましくは、エチレン-1-オクテンコポリマーが使用される。
【0031】
エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)は、ISO1133に従い、190℃、2.16kg荷重で測定して、0.1~100g/10min、好ましくは0.2~50g/10min、より好ましくは0.5~20g/10minのMFR、および、840~900kg/m未満の範囲、好ましくは850~890kg/m未満の範囲、より好ましくは852~880kg/m未満の範囲の密度を有する。
【0032】
好ましい一実施形態によれば、エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)は、少なくとも20重量%、好ましくは約25-50重量%、より好ましくは約30-45重量%のオクテン含量、および、880kg/m未満、好ましくは870kg/m未満の密度を有する、エチレン-1-オクテンコポリマーである。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)は、示差走査熱量測定(DSC)または動機械的熱分析(DMTA)により測定して、-90~-35℃の範囲、好ましくは-85~-40℃の範囲、より好ましくは-80~-45℃の範囲の1つまたはそれより多くのガラス転移温度を特徴とする。
【0034】
さらなる別の好ましい一実施形態によれば、エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定して20~65℃の範囲、好ましくは25~60℃の範囲、より好ましくは30~55℃の範囲の溶融温度を特徴とする。
【0035】
好ましくは、エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)は、シングルサイト触媒を用いる溶液重合プロセスに基づく。エラストマー性エチレン-1-オクテンコポリマーの製造については、以下に詳細に記載されている:Chum SP、Kao CIおよびKnight GW:Structure, properties and preparation of polyolefins produced by single-site technology. In: Metalosen based Polyolefins - Volume 1, Scheirs J and Kaminsky W Eds, John Wiley and Sons Ltd, Chichester (West Sussex, England), 2000 pp. 262-264。あるいは、市販され入手可能なエラストマー性エチレン-1-オクテンコポリマーを使用することができる。適当なグレードは、例えば、米国のDOW ChemicalによるEngageグレードシリーズ、オーストリアのBorealis AGによるQueoグレードシリーズ、米国のExxonMobilによるExactグレードシリーズで提供されている。
【0036】
〔第2異相プロピレンコポリマー(C)〕
存在する場合、本発明の異相ポリプロピレン組成物中の第2異相プロピレンコポリマー(C)の量は、異相ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、5.0~15.0重量%の範囲、好ましくは7.0~13.0重量%の範囲、より好ましくは8.0~12.0重量%の範囲であってよい。
【0037】
第2異相プロピレンコポリマー(C)は、コモノマー、好ましくはエチレンおよびC4-C8アルファオレフィンから選択されるアルファ-オレフィン、好ましくはエチレン、1-ブテンまたは1-ヘキセンから選択されるアルファ-オレフィンを含有する。好ましい一実施形態において、第2異相プロピレンコポリマーは、エチレンおよび1-ブテンをコモノマーとして含む。とりわけ好ましい一実施形態において、第2異相プロピレンコポリマーは、唯一のコモノマーとしてエチレンのみを含む。
【0038】
第2異相プロピレンコポリマー(C)のメルトフローレートMFRは、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、5.0~25.0g/10minの範囲、好ましくは7.0~20.0g/10minの範囲、より好ましくは8.0~15.0g/10minの範囲であってよい。
【0039】
第2異相プロピレンコポリマーは、25.0~50.0重量%の範囲、好ましくは28.0~45.0重量%の範囲、より好ましくは30.0~40.0重量%の範囲の低温キシレン可溶性画分(XCS)を有する。
【0040】
第2異相プロピレンコポリマーの低温キシレン可溶性画分のコモノマー含量、C2(XCS)は、20.0~60.0重量%の範囲、好ましくは26.0~55.0重量%の範囲、より好ましくは30.0~50.0重量%の範囲であってよい。
【0041】
低温キシレン可溶性画分の固有粘度、IV(XCS)は、1.0~10.0dl/gの範囲、好ましくは1.2~9.0dl/gの範囲、より好ましくは1.4~8.0dl/gの範囲であってよい。
【0042】
好ましい一実施形態によれば、第2異相プロピレンコポリマー(C)は、チーグラー-ナッタ型触媒系の存在下での連続重合プロセスにおいて製造される。好ましくは、該触媒系は、マグネシウム化合物、チタン化合物、および非フタル系内部電子供与体(ID)を含む、自己支持型(self-supported)チーグラー-ナッタ触媒を含み、共触媒はアルミニウム化合物であり、外部供与体(ED)はシランである。
【0043】
〔強化無機フィラー(D)〕
存在する場合、本発明の異相ポリプロピレン組成物中の強化無機フィラー(D)の量は、5.0~30.0重量%の範囲、好ましくは7.0~25.0重量%の範囲、より好ましくは8.0~20.0重量%の範囲であってよい。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態によれば、強化無機フィラー(D)は、タルク、マイカ、ウォラストナイト、および炭酸カルシウムからなる群から選択される。より好ましくは、該強化無機フィラー(D)はタルクである。
【0045】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明のポリプロピレン組成物に使用される強化無機フィラー(D)は、0.5-15μmのメジアン粒子径(D50)および1-50μmのトップカット(D95)を有する。より好ましくは、該強化無機フィラー(D)は、0.8-12μmのメジアン粒子径(D50)および1.0-30μmのトップカット(D95)を有し、最も好ましくは1.5-10μmのメジアン粒子径(D50)および2.0-20μmのトップカット(D95)を有する。
【0046】
粒子サイズ分布を測定するための通常の方法は、レーザー回折法であり、これによりメジアン粒子サイズ(D50)およびトップカット(D90)を算出することができる。トップカットを定めるための別の方法は、特定の限度を超える直径を有するフィラー粒子の割合、すなわちスクリーン残分を特定することである。
【0047】
〔本発明のポリプロピレン組成物〕
第1異相プロピレンコポリマー(A)、エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)、および任意に、上記に定義するような第2の異相プロピレンコポリマー(C)および/または強化無機フィラー(D)を含む、各ポリプロレン組成物は、サマリーの特性によっても特徴付けられる。
【0048】
好ましくは、それぞれのポリプロピレン組成物は、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、10.0~100g/10min、より好ましくは13.0~75g/10min、最も好ましくは15.0~50g/10minのメルトフローレートMFRを特徴とする。それぞれのポリプロピレン組成物が、20.0~50.0重量%の範囲、より好ましくは24.0~45.0重量%の範囲、最も好ましくは26.0~42.0重量%の範囲の低温キシレン可溶性画分(XCS)を含むことも、等しく好ましい。かかる低温キシレン可溶性画分(XCS)は、エチレンおよび/またはC4-C8アルファ-オレフィンから選択されるコモノマーの、20.0~40.0重量%の範囲、好ましくは22.0~38.0重量%の範囲、より好ましくは24.0~36.0重量%の範囲の含量を有してよい。
【0049】
特に好ましい一実施形態によれば、それぞれのポリプロピレン組成物は、100μg/g未満、好ましくは80μg/g未満、より好ましくは60μg/g未満の揮発分(VOC、VDA 278 October 2011)および200μg/g未満、好ましくは175μg/g未満、より好ましくは150μg/g未満の半揮発性有機凝縮可能成分(FOG、VDA 278 October 2011)を特徴とする。VOCおよびFOG含有量は、通常、曝気のような放出量を低減するための特別な操作を行うことなく、製造直後のペレットで測定される。
【0050】
本発明のポリプロピレン組成物は、5.0重量%以下の量、好ましくは2.0重量%以下の量、より好ましくは1.0重量%以下の量で、通常の添加剤をさらに含んでよい。添加剤の例としては、これらに限定されないが、酸化防止剤(例えば立体障害フェノール、ホスファイト/ホスフォナイト、硫黄含有酸化防止剤、アルキルラジカルスカベンジャー、芳香族アミン、立体障害アミン安定剤、またはこれらのブレンド)、金属不活性化剤(例えばIrganox(登録商標)MD 1024)、またはUV安定剤(例えば立体障害アミン光安定剤)などの安定剤が挙げられる。他の典型的な添加剤は、核剤(例えば安息香酸ナトリウムまたはナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート)、帯電防止剤または防曇剤(例えばエトキシル化アミンおよびアミドまたはグリセロールエステル)、酸スカベンジャー(例えばステアリン酸Ca)および発泡用ブロー剤などの改質剤である。さらなる改質剤は、潤滑剤および樹脂(例えばイオノマーワックス、ポリエチレン-およびエチレンコポリマーワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタン系ワックス、フッ素系化合物、またはパラフィンワックス)、ならびにスリップ剤およびアンチブロッキング剤(例えばエルカミド、オレアミド、タルク、天然シリカおよび合成シリカまたはゼオライト)ならびにそれらの混合物である。
【0051】
〔製造方法〕
本発明のポリプロピレン組成物の製造方法は、以下のプロセスステップを含む:
(i)好ましくはシングルサイト触媒系の存在下で、連続重合プロセスにおいて第1異相プロピレンコポリマー(A)を重合すること、および
(ii)該コポリマー(A)を適量のエラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)と溶融混合すること、
(iii)該溶融混合ステップにおいて、チーグラー-ナッタ型触媒系の存在下で重合された適量の第2異相プロピレンコポリマー(C)ならびに適量の強化無機フィラー(D)を任意に添加すること、および、続いて、
(iv)得られた溶融物を、ストランドペレット化ステップまたは水中ペレット化ステップで固化すること。
【0052】
本発明のポリプロピレン組成物を製造するための前記プロセスのステップ(i)は、第1異相プロピレンコポリマー(A)を重合するためのプロセスである。これは、好ましくは、シングルサイト触媒系の存在下での連続重合によって達成され、ここで、
・0.0~1.0重量%のコモノマー含量を有する、プロピレンホモポリマーまたはプロピレン-エチレンランダムコポリマーである第1ポリプロピレン画分を、ループ反応器中の第1重合ステージのバルク相反応器で製造する、
・該第1ポリプロピレン画分を場合により第2重合ステージに移し、ここで、0.0~1.0重量%のコモノマー含量を有する、プロピレンホモポリマーまたはプロピレン-エチレンランダムコポリマーである第2ポリプロピレン画分を、気相反応器(GPR1)で製造し、該バルク相反応器または場合により該GPR1から、第1異相プロピレンコポリマー(A)の結晶性マトリックス(A1)を回収し、
・該結晶性マトリックス(A1)を第2(任意に第3)重合ステージに移し、ここで、15.0~30.0重量%、16.5~28.0重量%または17.5~26.0重量%などのようなコモノマー含量(SFのC2)を有するアモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)を気相反応器(GPR2)で製造し、
・かかる2つ(場合により3つ)のポリマーの混合物に、場合により不活性化および精製ステップを施し、続いてコンパウンド化およびペレット化する。
【0053】
第1異相プロピレンコポリマー(A)は、典型的に、好ましくは、当技術分野でよく知られる多段重合プロセスで製造される。好ましい多段プロセスは、例えばEP-A-0887379またはWO 92/12182のような特許文献に記載される、デンマークのBorealis A/Sにより開発されたような(BORSTAR(登録商標) technologyとして知られる)、ループ気相プロセスである。
【0054】
本発明は、好ましくは、異相ポリプロピレン組成物を形成するための、少なくとも2つ、場合により3つのステップの方法における、プロピレン、エチレンおよび任意に上記および以下に記載するようなさらなるコモノマーのコポリマー化に関する。好ましくは、プロピレンおよびエチレンが使用される唯一のモノマーである。
【0055】
理想的には、本発明の方法は、2つ、好ましくは3つの主反応器、バルクで作動する第1反応器、任意に第1気相反応器および第2気相反応器を用いる。
【0056】
この方法はまた、2つ(3つ)の主反応器の前に、別の反応器で行われる予備重合ステップを利用してもよい。
【0057】
第1異相プロピレンコポリマー(A)は、好ましくは、シングルサイト触媒系により、より好ましくは、非対称メタロセン触媒複合体および共触媒を含むシングルサイト触媒系により得られる。
【0058】
〔シングルサイト触媒系〕
好ましいメタロセン触媒の錯体としては、以下が挙げられる:
rac-ジメチルシランジイルビス[2-メチル-4-(3',5'-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロライド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4´-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4´-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロライド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4´-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロライド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3',5'-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロライド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4'-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロライド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロライド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ditert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロライド。
【0059】
とりわけ好ましくは、rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロライドである。
【0060】
〔共触媒〕
活性触媒種を形成するために、通常、当業者によく知られるような共触媒を用いることが必要である。
【0061】
本発明によれば、ホウ素含有共触媒およびアルミノキサン共触媒を含む共触媒系を、上記のメタロセン触媒複合体と組み合わせて使用する。
【0062】
アルミノキサン共触媒は、式(II):
【化1】
[ここで、nは6~20であり、Rは以下の意味を有する]
の1つであり得る。
【0063】
アルミノキサンは、有機アルミニウム化合物の、例えば式AlR3、AlR2Y、およびAl2R3Y3[ここで、Rは、例えばC1-C10-アルキル、好ましくはC1-C5-アルキル、またはC3-C10-シクロアルキル、C7-C12-アリールアルキル、または-アルキルアリール、および/または、フェニルまたはナフチルであり得り、Yは、水素、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、またはC1-C10-アルコキシ、好ましくはメトキシまたはエトキシであり得る]のものの、部分加水分解物で形成され得る。得られる酸素含有アルミノキサンは、一般的に純粋な化合物ではなく、式(II)のオリゴマーの混合物である。
【0064】
好ましいアルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)である。本発明により共触媒として使用されるアルミノキサンは、その製造方式のために、純粋な化合物ではないため、以下において、アルミノキサン溶液のモル濃度は、そのアルミニウム含量に基づく。
【0065】
また、ホウ素含有共触媒を、アルミノキサン共触媒と組み合わせて使用してよい。
【0066】
触媒複合体は、理想的には共触媒を含み、特定のホウ素含有共触媒が好ましい。したがって、本発明で使用されるとりわけ好ましいホウ酸塩は、トリチル、すなわちトリフェニルカルベニウムイオンを含む。したがって、Ph3CB(PhF5)4および類似体の使用が特に好ましい。
【0067】
本発明の触媒系は、支持された形態で使用される。使用される粒子状支持物質は、シリカまたはシリカ-アルミナなどの混合酸化物、特にシリカである。
【0068】
シリカ支持体の使用が好ましい。当業者は、メタロセン触媒を支持するために必要な手順を知っている。
【0069】
好ましい一実施形態において、触媒系は、EP19177308.4に開示されるようなICS3に対応する。
【0070】
本発明のポリプロピレン組成物を製造するための前記プロセスのステップ(ii)は、第1異相プロピレンコポリマー(A)とエラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)とを組み合わせるための溶融混合プロセスである。溶融混合プロセスは、任意の適当な溶融混合装置で行ってよい。このプロセスステップ(ii)に適した装置は、不連続および連続ニーダー、二軸押出機、および特殊混合セクションを備える一軸押出機、ファレルニーダー、およびバスコニーダーのようなコニーダーである。温度、回転速度、スループットおよび滞留時間は、十分に高度な均質化が達成されるように選択すべきである。
【0071】
通常、特殊混合セクションを備える共回転およびかみ合い二軸押出機が、このプロセスステップ(ii)に適用される。典型的な溶融混合温度は、200~280℃の範囲である。押出機は、典型的には、供給ゾーン、溶融ゾーン、混合ゾーン、および任意にダイゾーンを含み、通常、60以下:1、好ましくは40以下:1の長さ直径比、L/Dを有する。
【0072】
さらに、安定剤または核剤のような添加剤を溶融混合ステップ中に添加してよい。
【0073】
場合により、(iii)に従い、チーグラー-ナッタ型触媒系の存在下で重合された適量の第2異相プロピレンコポリマー(C)、ならびに適量の強化無機フィラー(D)を、溶融混合ステップに添加することができる。
【0074】
〔チーグラー-ナッタ触媒系〕
第2異相プロピレンコポリマー(C)を製造するために、第1異相プロピレンコポリマー(A)について記載した同様の方法を用いてよい。第2異相プロピレンコポリマー(C)を重合するために使用されるチーグラー-ナッタ型触媒系は、好ましくは、マグネシウム化合物、チタン化合物、および非フタル系内部電子供与体(ID)を含む自己支持型チーグラー-ナッタ触媒を含み、共触媒はアルミニウム化合物であり、外部供与体(ED)はシランである。
【0075】
概して、重合チーグラー-ナッタ触媒は、チタンのような、IUPACバージョン2013において定義される4~6族の遷移金属(TM)の1つまたは複数の化合物を含み、さらに、マグネシウム化合物のような2族の金属化合物、および、内部供与体(ID)を含む。
【0076】
触媒成分が外部支持体に支持されていないことがさらに好ましいが、該触媒は、触媒製造の当業者によく知られるような、乳化固化法または沈殿法により製造される。
【0077】
より好ましくは、本発明の方法において、特定の種類のチーグラー-ナッタ触媒が存在する。この特定の種類のチーグラー-ナッタ触媒においては、非フタル系化合物が内部供与体であることが必須である。好ましくは、特定の種類のチーグラー-ナッタ触媒製造の全てにわたり、フタレート化合物を使用せず、そのため最終的な特定の種類のチーグラー-ナッタ触媒は、フタル系化合物を何ら含有しない。したがって、特定の種類のチーグラー-ナッタ触媒はフタル系化合物不含である。よって、本発明の方法により得られたポリマーは、フタル系化合物不含である。
【0078】
一般に、特定の種類のチーグラー-ナッタ触媒は、非フタル系化合物であるように選択される内部供与体(ID)を含み、このようにして、特定の種類のチーグラー-ナッタ触媒は、完全にフタル系化合物不含になる。さらに、特定の種類のチーグラー-ナッタ触媒は、固体触媒であってよく、好ましくはシリカまたはMgClのような外部支持物質不含であり、したがって、固体触媒は自己支持型である。
【0079】
固体触媒は次の一般的な手順によって得ることができる:
a)以下の溶液を提供すること:
a1)場合により有機液体反応媒体中の、少なくとも第2族金属アルコキシ化合物(Ax)、これは、第2族金属化合物と、ヒドロキシル部分に加えて少なくとも1つのエーテル部分を含むアルコール(A)との反応生成物である;または、
a2)場合により有機液体反応媒体中の、少なくとも第2族金属アルコキシ化合物(Ax')、これは、第2族金属化合物と、アルコール(A)および式ROHの一価アルコール(B)のアルコール混合物との反応生成物である;または
a3)場合により有機液体反応媒体中の、第2族金属アルコキシ化合物(Ax)と、第2族金属アルコキシ化合物(Bx)との混合物、これは第2族金属化合物と一価アルコール(B)との反応生成物である;または
a4)式M(OR1)(OR2)2-n-mの第2族金属アルコキシ化合物、または、第2族アルコキシド M(OR1)n’2-n’およびM(OR2)m’2-m’の混合物、ここで、Mは第2族金属であり、Xはハロゲンであり、R1およびR2は2~16個の炭素原子の異なるアルキル基であり、0<n<2、0<m<2、およびn+m+(2-n-m)=2であり、但し、nおよびmは同時に0ではなく、0<n’<2、かつ0<m’<2である;および
b)ステップa)からの前記溶液を、第4~6族の遷移金属の少なくとも1つの化合物に加えること、および、
c)固体触媒成分粒子を得ること、
および、ステップc)よりも前の少なくとも1つのステップで、非フタル系内部電子供与体(ID)を加えること。
【0080】
内部供与体(ID)またはその前駆体は、好ましくは、ステップa)の溶液を加える前に、ステップa)の溶液に、または、遷移金属化合物に加えられる。上記の手順によれば、固体触媒は、物理的条件、特にステップb)およびc)で用いられる温度に応じて、沈殿法を介して、または、エマルション-凝固法を介して得られる。エマルションは、液-液2相系とも称される。両方の方法(沈殿法またはエマルション-凝固法)において、触媒化学は同じである。沈殿法において、ステップb)における、ステップa)の溶液と少なくとも1つの遷移金属化合物との組合せが行われ、固体触媒成分粒子の形態での触媒成分の沈殿(ステップc)を確保するために、全反応混合物は、少なくとも50℃、より好ましくは55~110℃の温度範囲、より好ましくは70~100℃の範囲に保たれる。
【0081】
エマルション-凝固法では、ステップb)において、ステップa)の溶液は、通常、少なくとも1つの遷移金属化合物に、-10~50℃未満、好ましくは-5~30℃のような低温で添加される。エマルションの撹拌中、該温度は通常、-10~40℃未満、好ましくは-5~30℃に保たれる。エマルションの分散相の液滴は、活性触媒組成物を形成する。液滴の凝固(ステップc)は、該エマルションを70~150℃、好ましくは80~110℃の温度に加熱することにより適切に実行される。エマルション-凝固法により製造された触媒が、好ましくは本発明において使用される。ステップa)において、好ましくは溶液a2)またはa3)、すなわち(Ax’)の溶液、または、(Ax)および(Bx)の混合物の溶液が使用される。
【0082】
好ましくは、第2族金属はマグネシウムである。マグネシウムアルコキシ化合物(Ax)、(Ax’)、(Bx)は、触媒製造プロセスの第1ステップ、ステップa)において、マグネシウム化合物と上記に記載するようなアルコールとを反応させることにより、系中で製造することができる。別の選択肢は、該マグネシウムアルコキシ化合物を別に製造することであるか、または、これは、既に製造されたマグネシウムアルコキシ化合物として市販され入手可能であり、これを本発明の触媒製造プロセスにおいてそのまま使用することができる。
【0083】
アルコール(A)の具体例は、グリコールモノエーテルである。好ましいアルコール(A)は、C2~C4グリコールモノエーテルであり、ここで、エーテル部分は2~18個の炭素原子、好ましくは4~12個の炭素原子を含む。好ましい例は、2-(2-エチルヘキシルオキシ)エタノール、2-ブチルオキシエタノール、2-ヘキシルオキシエタノール、および1,3-プロピレン-グリコール-モノブチルエーテル、3-ブトキシ-2-プロパノールであり、2-(2-エチルヘキシルオキシ)エタノール、および1,3-プロピレン-グリコール-モノブチルエーテル、3-ブトキシ-2-プロパノールは特に好ましい。
【0084】
具体的な一価アルコール(B)は、構造式ROHで表され、Rは直鎖状または分枝状C2-C16アルキル基、好ましくはC4~C10アルキル基、より好ましくはC6~C8アルキル基である。最も好ましい一価アルコールは、2-エチル-1-ヘキサノールまたはオクタノールである。
【0085】
好ましくは、Mgアルコキシ化合物(Ax)および(Bx)の混合物、または、アルコール(A)および(B)の混合物は、それぞれ、10:1~1:10、より好ましくは6:1~1:6、さらにより好ましくは5:1~1:3、最も好ましくは5:1~3:1のBx:AxまたはB:Aのモル比で使用され用いられる。
【0086】
マグネシウムアルコキシ化合物は、上記に定義するようなアルコールと、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムアルコキシド、マグネシウムジアルコキシド、アルコキシマグネシウムハライド、およびアルキルマグネシウムハライドから選択されるマグネシウム化合物との反応生成物であってよい。さらに、マグネシウムジアルコキシド、マグネシウムジアリールオキシド、マグネシウムアリールオキシハライド、マグネシウムアリールオキシド、およびマグネシウムアルキルアリールオキシドを使用することができる。マグネシウム化合物におけるアルキル基は、同様または異なる、C1-C20アルキル基、好ましくはC2-C10アルキル基である。使用する場合、典型的なアルキル-アルコキシマグネシウム化合物は、エチルマグネシウムブトキシド、ブチルマグネシウムペントキシド、オクチルマグネシウムブトキシド、およびオクチルマグネシウムオクトキシドである。好ましくは、ジアルキルマグネシウムが使用される。最も好ましくは、ジアルキルマグネシウムは、ブチルオクチルマグネシウムまたはブチルエチルマグネシウムである。
【0087】
マグネシウム化合物が、アルコール(A)およびアルコール(B)に加えて、式R’’(OH)の多価アルコール(C)と反応して、前記マグネシウムアルコキシド化合物を得ることも可能である。好ましい多価アルコールは、使用される場合、アルコールであり、ここで、R’’は、直鎖状、環状または分枝状のC2~C10の炭化水素基であり、mは2~6の整数である。
【0088】
したがって、ステップa)のマグネシウムアルコキシ化合物は、マグネシウムジアルコキシド、ジアリールオキシマグネシウム、アルキルオキシマグネシウムハライド、アリールオキシマグネシウムハライド、アルキルマグネシウムアルコキシド、アリールマグネシウムアルコキシド、ならびに、アルキルマグネシウムアリールオキシド、またはマグネシウムジハライドとマグネシウムジアルコキシドとの混合物からなる群から選択される。
【0089】
本発明の触媒の製造に使用される溶媒は、5~20個の炭素原子、より好ましくは5~12個の炭素原子を有する、芳香族および脂肪族直鎖状、分枝状および環状炭化水素、またはそれらの混合物の中から選択してよい。適当な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、クメン、キシロール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびノナンが挙げられる。ヘキサンおよびペンタンが特に好ましい。
【0090】
マグネシウムアルコキシ化合物の製造のための反応は、40~70℃の温度で実施してよい。当業者は、使用するMg化合物およびアルコールに応じて、最適な温度を選択する方法を知っている。
【0091】
IUPACバージョン2013で定義されるような4~6族の遷移金属(TM)化合物は、好ましくはチタン化合物、最も好ましくはTiClのようなハロゲン化チタンである。本発明で使用される特定のタイプのチーグラー-ナッタ触媒の製造に使用される非フタル系内部供与体(ID)は、好ましくは、非フタル系カルボン(二)酸、1,3-ジエーテル、誘導体およびそれらの混合物から選択される。特に好ましい供与体は、モノ不飽和非フタル系ジカルボン酸のジエステル、特にマロネート、マレエート、スクシネート、シトラコネート、グルタレート、シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレートおよびベンゾエートならびにそれらの誘導体および/またはそれらの混合物を含む群に属するエステルである。好ましい例は、例えば、置換型マレエートおよびシトラコネート、最も好ましくはシトラコネートである。本明細書および以下では、誘導体という用語は、置換された化合物を含む。
【0092】
エマルション-凝固法において、二相液液系は、単純な撹拌と、必要に応じて(さらなる)溶媒および/または乱流最小化剤(TMA)および/または乳化剤および/または界面活性剤のような乳化安定剤などの、当技術分野で知られている方法で使用される、添加剤を添加することによって形成することができる。これらの溶媒および/または添加剤は、エマルジョンの形成を促進し、および/または、それを安定化するために使用される。
【0093】
好ましくは、界面活性剤は、アクリルまたはメタクリルポリマーである。特に好ましくは、例えばポリ(ヘキサデシル)-メタクリレートおよびポリ(オクタデシル)-メタクリレートおよびそれらの混合物などの、非分枝状C12~C20(メタ)アクリレートである。乱流最小化剤(TMA)は、使用される場合、ポリオクテン、ポリノネン、ポリデセン、ポリウンデセンまたはポリドデセンまたはそれらの混合物のような、6~20個の炭素原子を有するα-オレフィンモノマーのポリマーから好ましくは選択される。最も好ましくはポリデセンである。
【0094】
沈殿またはエマルション凝固法によって得られた固体粒子生成物は、少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回、最も好ましくは少なくとも3回洗浄され得る。洗浄は、芳香族および/または脂肪族炭化水素、好ましくはトルエン、ヘプタンまたはペンタンを用いて行うことができる。芳香族および/または脂肪族炭化水素と場合により組み合わせたTiClでの洗浄も可能である。洗浄液はまた、トリアルキルアルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物またはアルコキシアルミニウム化合物のような、供与体および/または第13族化合物を含むことができる。アルミニウム化合物を、触媒合成中に添加することもできる。触媒は、例えば蒸発または窒素でのフラッシングによって、さらに乾燥させることができ、または、乾燥工程なしで油性液体にスラリー化することができる。
【0095】
最終的に得られる特定のタイプのチーグラー-ナッタ触媒は、望ましくは、概して5~ら200μm、好ましくは10~100μmの範囲の平均粒子サイズを有する粒子の形態で得られる。粒子は一般にコンパクトで多孔性が低く、一般に、20g/m未満、より好ましくは10g/m未満の表面積を有する。典型的には、触媒中に存在するTiの量は1~6重量%の範囲であり、Mgの量は10~20重量%の範囲であり、触媒中に存在する内部供与体の量は、触媒組成物の10~40重量%の25の範囲である。。本発明で使用される触媒の製造の詳細な説明は、WO2012 /007430、EP2610271およびEP2610272に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
外部供与体(ED)は、好ましくは、本発明による重合プロセスにおけるさらなる成分として存在する。適当な外部供与体(ED)としては、特定のシラン、エーテル、エステル、アミン、ケトン、複素環式化合物、およびこれらのブレンドが挙げられる。シランを使用することが特に好ましい。一般式(I)のシランを使用することが最も好ましい:
【化2】
式中、R、RおよびRは、炭化水素基、特にアルキルまたはシクロアルキル基を表し、ここで、pおよびqは、それらの合計(p+q)が3以下であると共に、0~3の範囲の数である。R、RおよびRは、互いに独立して選択でき、同じでも異なっていてもよい。式(I)に従うシランの具体例は、(tert-ブチル)Si(OCH、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH、(フェニル)Si(OCHおよび(シクロペンチル)Si(OCHである。別の最も好ましいシランは、一般式(II)によるものである:
【化3】
ここで、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、1~12個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状の炭化水素基を表す。RおよびRは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、オクチル、デカニル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert.-ブチル、tert.-アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチルおよびシクロヘプチルからなる群から独立して選択されることが特に好ましい。最も好ましくはエチルが使用される。
【0097】
一般に、チーグラー-ナッタ触媒または特定のタイプのチーグラー-ナッタ触媒および任意の外部供与体(ED)に加えて、共触媒(Co)が本発明による重合プロセスに存在しなければならない。共触媒は、好ましくは、周期表(IUPAC、バージョン2013)の第13族の化合物、例えば、アルミニウム化合物(例えば有機アルミニウムまたはハロゲン化アルミニウム化合物)である。適当な有機アルミニウム化合物の例は、アルミニウムアルキルまたはアルミニウムアルキルハライド化合物である。したがって、1つの特定の実施形態において、共触媒(Co)は、トリエチルアルミニウム(TEAL)、ジアルキルアルミニウムクロリドまたはアルキルアルミニウムジクロリドまたはそれらの混合物のようなトリアルキルアルミニウムである。1つの特定の実施形態では、共触媒(Co)はトリエチルアルミニウム(TEAL)である。
【0098】
一般に、共触媒(Co)と外部供与体(ED)との間のモル比[Co/ED]および/または共触媒(Co)と遷移金属(TM)との間のモル比[Co/TM]はプロセスごとに注意深く選択される。共触媒(Co)と外部供与体(ED)との間のモル比[Co/ED]は、適切には、2.5~30 50.0モル/モルの範囲、好ましくは4.0~35.0モル/モルの範囲、より好ましくは、5.0~30.0モル/モルの範囲であり得る。適当な下限は、2.5モル/モル、好ましくは4.0モル/モル、より好ましくは5.0モル/モルであり得る。適当な上限は、50.0モル/モル、好ましくは35.0モル/モル、より好ましくは30.0モル/モルであり得る。範囲の下限と上限に示される値は含まれる。
【0099】
共触媒(Co)と遷移金属(TM)との間のモル比[Co/TM]は、適切には20.0~500.0モル/モルの範囲、好ましくは50.0~400.0モル/モルの範囲、より好ましくは100.0~300.0モル/モルの範囲であり得る。適当な下限は、20.0モル/モル、好ましくは50.0モル/モル、より好ましくは100.0モル/モルであり得る。適当な上限は、500.0モル/モル、好ましくは400.0モル/モル、より好ましくは300.0モル/モルであり得る。範囲の下限と上限に示される値は含まれる。
【0100】
〔物品および用途〕
本発明はまた、本発明によるポリプロピレン組成物を含む、成形された、好ましくは射出成形された物品に関する。かかる物品は、ISO 178に従って測定して、500~1000MPaの範囲、より好ましくは550~950MPaの範囲、最も好ましくは580~900MPaの範囲の曲げ弾性率によって好ましくは特徴付けられる。物品は、同様に好ましくは、23℃でISO 179/1eAに従って測定して、20.0kJ/mを超える、より好ましくは25.0~95.0kJ/mの範囲、最も好ましくは30.0~85.0kJ/mの範囲のシャルピーノッチ付き衝撃強さ(NIS)によって特徴付けられる。該物品は、さらに等しく好ましくは、ISO 179/1eAに従って-20℃で測定して、6.0kJ/mを超える、より好ましくは7.0~75.0kJ/mの範囲、最も好ましくは7.5~70.0kJ/mの範囲のシャルピーノッチ付き衝撃強度(NIS)によって特徴付けられる。
【0101】
本発明はさらに、本発明によるポリプロピレン組成物を含む、0.1~1.5mmの範囲のような、最大で1.5mmの壁厚を有する包装部材または自動車部品に関する。このような物品としては、カップ、蓋、トレイ、バケツ、およびヒンジカップ容器などの包装部材だけでなく、ドアクラッディング、アームレスト、センターコンソール、ダッシュボードの要素などの自動車部品も含まれる。
【0102】
本発明はまた、包装部材または自動車部品を製造するための、射出成形プロセスにおいて最大1.5mmの壁厚を有する、本発明のポリプロピレン組成物の使用にも関する。
【実施例
【0103】
〔方法及び実施例〕
(メルトフローレート)
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に従って測定され、g/10分で示される。MFRは、ポリマーの流動性、したがってポリマーの加工性を示す。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度は低くなる。ポリプロピレンホモポリマーとコポリマーのMFRは、230℃の温度、および2.16kgの荷重で測定される。ポリエチレンならびにエラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマーのMFRは、230℃の温度、および2.16kgの荷重で測定される。
【0104】
(示差走査熱量測定(DSC))
示差走査熱量測定(DSC)分析、融解温度(Tm)および融解エンタルピー(Hm)、結晶化温度(Tc)、および結晶化エンタルピー(Hc)は、TA Instrument Q200示差走査熱量測定(DSC)を使用して、5~7mgの試料で測定される。DSCは、ISO 11357/パート3/メソッドC2に従って、-30~+225℃の温度範囲で、10℃/分のスキャン速度で、加熱/冷却/加熱サイクルで実行される。結晶化温度(Tc)と結晶化熱(Hc)は冷却ステップから決定され、融解温度(Tm)と融解エンタルピー(Hm)は2回目の加熱ステップから決定される。
【0105】
(キシレン低温可溶性(XCS))
室温でのキシレン低温可溶性画分(重量%でのXCS)は、ISO16152;第5版;2005-07-01に従って、25℃で測定される。
【0106】
(曲げ弾性率)
曲げ弾性率は、EN ISO1873-2に準拠して射出成形された80×10×4mmテストバーで、ISO178に従って、23℃で3点曲げにて決定される。
【0107】
(ノッチ付き衝撃強さ(NIS))
シャルピーノッチ付き衝撃強さ(NIS)は、EN ISO 1873-2に従って準備された80×10×4mmの射出成形バー試験片を使用して、+23℃または-20℃で、ISO1791eAに従って測定される。
【0108】
(ヘキサン可溶性画分(C6 FDA))
FDA法(federal registration、タイトル21、第1章、パート177、セクション1520、s、付録B)によるヘキサン抽出可能なポリマーの量は、約220℃の溶融温度で、L/D20、スクリュー直径30mm(フィードゾーン4D長、深さ5.8mm、圧縮ゾーン10D長、計量ゾーン6D長、深さ2.3mm、36-400-900-400メッシュ/cmスクリーンパックを使用)を有する、PM30キャストフィルム押出ラインで製造されたフィルムから決定した。ダイギャップ0.55~0.60mmの200mmダイ、スクリュー速度:50r/min、水の冷却ロール温度:両方のロール40℃(加熱-冷却ユニット)、エアギャップ:0.5mm、エアナイフブロワーエア供給:1バール。フィルム厚さは100μmである。
【0109】
ヘキサン可溶性ポリマーの量は、上記のように製造されたフィルムサンプルから、FDA法(federal registration、タイトル21、第1章、パート177、セクション1520、s、付録B)に従って決定される。抽出は、50℃の温度および2時間の抽出時間で実行された。
【0110】
(クリステックス分析)
結晶性および可溶性画分法
ポリプロピレン(PP)組成物の結晶性(CF)および可溶性画分(SF)、ならびにそれぞれの画分のコモノマー含有量および固有粘度を、CRYSTEX QC、Polymer Char(バレンシア、スペイン)によって分析した。
【0111】
CRYSTEX QC装置の概略図を図1aに示す。結晶性画分とアモルファス画分は、160℃での溶解、40℃での結晶化、および160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン(1,2,4-TCB)への再溶解の温度サイクルによって、図1bに示すようなTREFカラム(例えばガラスビーズなどの不活性物質が充填されたカラム)で、分離される(Del Hierro, P.;Ortin, A.; Monrabal, B.;ポリプロピレンにおける可溶性画分分析、The Column Advanstar Publications、2014年2月、18~23ページも参照)。SFとCFの定量化、および、エチレン含有量(C2)の測定は、赤外線検出器(IR4)と固有粘度(IV)の測定に使用されるオンライン2-キャピラリー粘度計によって行われる。
【0112】
IR4検出器は、エチレン-プロピレンコポリマーの濃度およびエチレン含有量を測定するために、2つの異なるバンド(CH3およびCH2)でIR吸光度を検出する、多波長検出器である。IR4検出器は、2重量%~69重量%の範囲の既知のエチレン含有量(13C-NMRで測定)を有し、キャリブレーションに使用されるEPコポリマーごとに2~13mg/mlの様々な濃度を有する、一連の8つのEPコポリマーを用いてキャリブレーションされる。
【0113】
可溶性画分(SF)および結晶性画分(CF)の量は、XSキャリブレーションを通じて、ISO16152に準拠した標準重量分析法に従って決定された、「キシレン冷溶性」(XCS)量とそれぞれキシレン冷不溶性(XCI)画分に関連付けられる。XSキャリブレーションは、XS含有量が2~31質量%の範囲にあるさまざまなEPコポリマーをテストすることによって実現される。
【0114】
親EPコポリマーの固有粘度(iv)、ならびにその可溶性および結晶性画分は、オンライン2-キャピラリー粘度計を使用して決定され、ISO1628に準拠したデカリンの標準法で決定された対応するIVと相関する。キャリブレーションは、IV=2-4dL/gのさまざまなEP PPコポリマーを用いて行われた。
【0115】
分析するPP組成物のサンプルを、10mg/ml~20mg/mlの濃度で秤量する。抗酸化剤として250mg/lの2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含む1,2,4-TCBをバイアルに自動充填した後、完全な溶解が達成されるまで、通常60分間、800rpmで一定撹拌しながら、サンプルを160℃で溶解する。
【0116】
図1aおよびbに示すように、定義された量のサンプル溶液が不活性担体で満たされたカラムに注入され、ここで、サンプルの結晶化と、結晶部分からの可溶性画分の分離が行われる。このプロセスは2回繰り返される。最初の注入中に、サンプル全体が高温で測定され、PP組成物のIV[dl/g]とC2[重量%]が決定される。2回目の注入中に、結晶化サイクルと共に、可溶性画分(低温で)と結晶性画分(高温で)が測定される(重量%SF、重量%C2、IV)。これに関して、EPはエチレンプロピレンコポリマーを意味し、PPはポリプロピレンを意味する。
【0117】
(固有粘度(Crystex装置で測定された場合を除く))
固有粘度(iv)は、DIN ISO 1628/1、1999年10月に従い、デカリン中、135℃で測定される。
【0118】
((ニート結晶性マトリックスの)コモノマー含有量)
定量的赤外(IR)分光法を使用して、第一法のキャリブレーションを通して、ポリ(エチレン-コ-プロペン)コポリマーのエチレン含有量を定量化した。
【0119】
キャリブレーションは、定量的13C溶液状態核磁気共鳴(NMR)分光法によって決定された、既知のエチレン含有量の社内の非商用キャリブレーション標準のセットを使用することで、容易になった。キャリブレーション手順は、文献に十分に文書化されている従来の方法で行った。キャリブレーションセットは、さまざまな条件下でパイロットスケールまたはフルスケールのいずれかで製造された、0.2~75.0重量%の範囲のエチレン含有量を有する38個のキャリブレーション標準から構成されていた。キャリブレーションセットは、最終的な定量的IR分光法が遭遇する、典型的なさまざまなコポリマーを反映するように選択した。
【0120】
定量的IRスペクトルは、Bruker Vertex70FTIR分光計を使用して固体状態で記録した。スペクトルは、180~210℃および4~6mPaでの圧縮成形によって調製された厚さ300umの25×25mmの正方形のフィルムに記録された。エチレン含有量が非常に高い(>50mol%)サンプルには、100umの厚さのフィルムを使用した。標準透過FTIR分光法は、5000~500cm-1のスペクトル範囲、6mmのアパーチャ、2cm-1のスペクトル分解能、16のバックグラウンドスキャン、16のスペクトルスキャン、64のインターフェログラムゼロ充填率およびブラックマン-ハリス 3-タームアポダイゼーションを用いて使用された。
【0121】
定量分析は、(CH>2構造単位に対応する730および720cm-1(A)でのCHロッキング変形の総面積を使用して行った(積分法G、限界762および694cm-1)。定量的バンドは、CH構造単位に対応する4323cm-1(A)でのCHバンドの面積に正規化された(積分法G、限界4650、4007cm-1)。次いで、重量パーセント単位でのエチレン含有量を、二次検量線を使用して、正規化された吸収(AQ/AR)から予測した。検量線は、キャリブレーションセットにおいて測定された正規化された吸光度と一次コモノマー含有量の通常の最小二乗(OLS)回帰によって事前に作成された。
【0122】
13C NMR分光法を使用したキャリブレーションのための、ポリ(プロピレン-コ-エチレン)-エチレン含量)
定量的13C{H}NMRスペクトルは、Hおよび13Cのそれぞれについて、400.15および100.62MHzで動作するBrukerAvance III400NMR分光計を使用して、溶液状態で記録された。全てのスペクトルは、13Cに最適化された10mmの拡張温度プローブヘッドを125℃で使用して、全ての空気圧に窒素ガスを使用して、記録された。約200mgの物質を3mlの1,2-テトラクロロエタン-d(TCE-d)にクロム(III)アセチルアセトナート(Cr(acac))と共に溶解し、溶媒中の緩和剤の65mM溶液を得た(Singh, G., Kothari, A., Gupta, V., Polymer Testing 28 5 (2009)、475)。均一な溶液を確保するために、ヒートブロックで最初にサンプルを準備した後、NMRチューブを回転オーブンで少なくとも1時間さらに加熱した。磁石に挿入し、該チューブを10Hzで回転させた。この設定は、主に高分解能のために選択され、正確なエチレン含有量の定量化に定量的に必要である。最適化された先端角度、1秒のリサイクル遅延、および2レベルのWALTZ16デカップリングスキームを使用して、NOEなしで標準のシングルパルス励起を採用した (Zhou, Z., Kuemmerle, R., Qiu, X., Redwine, D., Cong, R., Taha, A., Baugh, D. Winniford, B., J. Mag. Reson. 187 (2007) 225, Busico, V., Carbonniere, P., Cipullo, R., Pellecchia, R., Severn, J., Talarico, G., Macromol. Rapid Commun. 2007, 28, 1128)。スペクトルごとに合計6144(6k)のトランジェントが取得された。定量的13C{H}NMRスペクトルが処理され、積分され、該積分から関連する定量的特性が決定された。すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基を間接的に参照した。このアプローチにより、この構造単位が存在しない場合でも同等の参照が可能になった。エチレンの組み込みに対応する特徴的なシグナルが観察され(Cheng、H. N.、Macromolecules 17(1984)、1950)、ポリマー中の全てのモノマーに対する、ポリマー中のエチレンの割合として計算されたコモノマー画分:fE=(E/(P+E) 該コモノマー画分は、Wangらの方法(Wang, W-J., Zhu, S., Macromolecules 33 (2000), 1157)を使用して、13C{H}スペクトルのスペクトル領域全体にわたる複数のシグナルの積分を通じて定量化された。この方法は、その堅牢な性質と、必要に応じて位置欠陥の存在を説明することができるために選択された。積分領域は、遭遇するコモノマー含有量の全範囲にわたる適用性を高めるためにわずかに調整された。モルパーセントのコモノマー組み込みは、モル分率:E[mol%]=100*fEから計算した。重量パーセントのコモノマー組み込みは、モル分率:E[重量%]=100*(fE*28.06)/((fE*28.06)+((1-fE)*42.08))から計算した。
【0123】
(VOCおよびFOC(VDA278による))
VOC
VOC値は、VDA 278、2011年10月に従い、射出成形プラークから決定される。VDA 278、2011年10月、自動車用非金属物質の特性評価のための有機排出物の熱脱着分析、VDA ドイツ自動車工業会。VDA 278、2011年10月によれば、VOC値は「易揮発性物質~中程度揮発性物質の合計。これは、トルエン当量として算出される。この推奨に記載されている方法は、n-ペンタコサン(C25)までの沸騰/溶出範囲の物質の測定および分析を可能にする。」として定められている
【0124】
(FOG)
FOG値は、VDA 278、2011年10月に従い、射出成形プラークから決定される。VDA 278、2011年10月によれば、FOG値は「n-テトラデカンの保持時間から溶出する低揮発性の物質の合計(全てを含む)。これは、ヘキサデカン当量として算出される。n-アルカン「C14」~「C32」の沸点範囲の物質が測定および分析される。」として定められている
【0125】
実験例
<第1異相プロピレンコポリマー(A)用の触媒>
使用したメタロセン(MC)は、EP19177308.4に、ICS3として開示されている、アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロライドであった。
【0126】
(MAO-シリカ支持体の調製)
メカニカルスターラーとフィルターネットを備えたスチール製反応器を窒素でフラッシュし、反応器温度を20℃に設定した。次に、600℃(5.0kg)で予備焼成したAGC Si-Tech Co,製のシリカグレードDM-L-303を供給ドラムから添加し、手動バルブを使用して窒素で注意深く加圧および減圧した。次にトルエン(22kg)を加えた。混合物を15分間撹拌した。次に、ランクセスからのMAOの30重量%トルエン溶液(9.0kg)を、反応器の上部の供給ラインを介して70分以内に添加した。次いで、反応混合物を90℃まで加熱し、90℃でさらに2時間撹拌した。スラリーを沈降させ、母液を濾別した。触媒を90℃でトルエン(22kg)で2回洗浄した後、沈降および濾過した。反応器を60℃に冷却し、固体をヘプタン(22.2kg)で洗浄した。最後に、MAO処理SiOを、窒素流下で60°で2時間乾燥させ、次に真空下(-0.5barg)で5時間撹拌しながら乾燥させた。MAO処理支持体は、12.2重量%のAlを含むことがわかった自由流動性の白色粉末として収集された。
【0127】
(触媒調製)
トルエン中、30重量%のMAO(0.7kg)を、ビュレットを介して20℃で、スチール製窒素ブランク反応器に添加した。次に、トルエン(5.4kg)を撹拌しながら加えた。上記のMC(93g)を金属シリンダーから加え、続いて1kgのトルエンでフラッシュした。混合物を20℃で60分間撹拌した。次に、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(91g)を金属シリンダーから加え、続いて1kgのトルエンでフラッシュした。混合物を室温で1時間撹拌した。得られた溶液を、上記のように調製したMAO-シリカ支持体の撹拌ケーキに1時間かけて加えた。ケーキを12時間放置した後、N2流下、60℃で2時間、さらに、撹拌しながら真空(-0.5バール)下で5時間乾燥させた。乾燥した触媒は、13.9%のAlと0.11%のZrを含むピンク色の自由流動性粉末の形でサンプリングされた。
【0128】
<第2異相プロピレンコポリマー(C)用の触媒>
触媒の調製のために、3.4リットルの2-エチルヘキサノールおよび810mlのプロピレングリコールブチルモノエーテル(モル比4/1)を20.0リットルの反応器に加えた。次に、Crompton GmbHより提供されたBEM(ブチルエチルマグネシウム)の20.0%トルエン溶液7.8リットルを、十分に撹拌されたアルコール混合物にゆっくりと加えた。添加中、温度は10.0℃に保たれた。添加後、反応混合物の温度を60.0℃に上げ、この温度で30分間混合を続けた。最後に、室温まで冷却した後、得られたMg-アルコキシドを貯蔵容器に移した。
【0129】
上記で調製した21.2gのMgアルコキシドを4.0mlのビス(2-エチルヘキシル)シトラコネートと5分間混合した。混合後、得られたMg複合体をすぐに触媒成分の調製に使用した。
【0130】
19.5mlの四塩化チタンを、25.0℃で、メカニカルスターラーを備えた300mlの反応器に入れた。混合速度を170rpmに調整した。26.0gの上記で調製したMg複合体を、温度を25.0℃に維持して、30分以内に添加した。3.0mlのViscoplex(登録商標)1-254、および、2mgのNecadd 447(商標)を含む1.0mlのトルエン溶液を加えた。次に、24.0mlのヘプタンを加えて、エマルションを形成した。混合を、25.0℃で30分間続けた後、反応器温度を30分以内に90.0℃まで上げた。反応混合物を90.0℃でさらに30分間撹拌した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を90.0℃で15分間静置させた。固体材料を5回洗浄した:洗浄は、170rpmで30分間撹拌しながら80.0℃で行った。撹拌を停止した後、反応混合物を20~30分間静置させ、続いてサイフォニングした。
【0131】
洗浄1:洗浄を、100mlのトルエンと1mlの供与体との混合物を用いて行った。
洗浄2:洗浄を、30mlのTiCl4と1mlの供与体との混合物を用いて行った。
洗浄3:洗浄を、100mlのトルエンを用いて行った。
洗浄4:洗浄を、60mlのヘプタンを用いて行った。
洗浄5:洗浄を、10分間撹拌しながら、60mlのヘプタンを用いて行った。
【0132】
その後、撹拌を停止し、温度を70℃に下げると共に反応混合物を10分間静置し、、続いてサイフォニングし、続いてNを20分間スパージし、空気に敏感な粉末を得た。
【0133】
<重合>
本発明の実施例および比較例の調製のために、4つの異相プロピレンコポリマーを、予備重合反応器、液相ループ反応器(ループ)および3つの気相反応器(GPR1、GPR2およびGPR3)を備えたBorstar PPタイプパイロットプラントで重合した。コポリマーPP-A1およびPP-A2は、第1異相プロピレンコポリマー(A)の記載に従う組成を有し、上記で概説したようなシングルサイト触媒系に基づく。コポリマーPP-C1およびPP-C2は、第2異相プロピレンコポリマー(C)の記載に従う組成を有し、上記で概説したチーグラー-ナッタ触媒系に基づく。後者の系では、ジシクロペンチル-ジメトキシシラン(供与体D)を外部電子供与体として使用し、トリエチルアルミニウムを共触媒として使用した。それぞれの比率および他の重合条件を以下の表1に示す。
【0134】
【表1-1】
【0135】
【表1-2】
【0136】
組成物の溶融混合
本発明の組成物IE1~IE4および比較用組成物CE1~CE3は、上記のコポリマーから、本発明のエラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)に対応する市販のエチレン-オクテンプラストマーとの組み合わせにおいて調製された。前記コポリマー(B)は、ダウケミカル(米国)のプラストマーEngage 8842であり、これは、1-オクテン含有量が45重量%、密度が857kg/m、メルトフローレートMFRが1.0g/10分(ISO 1133に従い、190℃および2.16kg荷重で測定)、および固有粘度が2.60dl/g(DIN ISO 1628/1に従い、デカリン中135℃で測定)である。
【0137】
溶融混合ステップは、L/D比45:1、57mmのDを有するCoperion ZSK57 二軸スクリュー押出機で、200~240℃の範囲の温度設定を使用して行った。溶融混合中、安定剤としての0.2重量%のIrganox B225(BASF AG(ドイツ)製 Irganox 1010(ペンタエリスリチルテトラキス(3-(3',5'-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシトルイル)-プロピオネートおよびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート)ホスファイト)の1:1ブレンド)、および酸スカベンジャーとしての0.05重量%のステアリン酸カルシウムを添加した。本発明の組成物IE1~IE4および比較用組成物CE1~CE3のそれぞれの組成ならびに特性を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
本発明の組成物は、比較用組成物それぞれのコポリマーPP-A1、PP-A2、およびPP-C2の機械的特性のバランスを超えているだけでなく、薄壁部材を製造するに十分に高いMFRを有し、該組成物はまた、要求に応じて、PP-C2よりも低い放出量を示す。
本明細書の当初の開示は、少なくとも下記の態様を包含する。
〔1〕・60~95重量%の第1異相プロピレンコポリマー(A)、該第1異相プロピレンコポリマー(A)は以下:
o78.0~92.0重量%の、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーである結晶性マトリックス(A1)、該結晶性マトリックスは、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定した結晶性画分(CF)に対応し、0.0~2.0重量%のコモノマーを含む、
o前記結晶性マトリックス(A1)中に分散した、さらなるコモノマーとしてC4-C12アルファ-オレフィンを場合により含む、8.0~22.0重量%の、アモルファスプロピレン-エチレンエラストマー(A2)
を含む、
oここで、(A1)および(A2)は合計して100重量%であり、ここで、前記アモルファスプロピレンエチレンエラストマー(A2)は、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定した可溶性画分(SF)に対応し、15.0~30.0重量%のコモノマーを含有し、
o前記異相プロピレンコポリマーは、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、30~120g/10minのメルトフローレートMFR を特徴とする、
および、
・5~40重量%の、ISO1133に従い、190℃、2.16kg荷重で測定して、0.1~100g/10minのMFR を特徴とし、かつ、840~900kg/m 未満の範囲の密度を特徴とする、エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)、
を含み、
・ここで、(A)および(B)は合計して100重量%である、
ポリプロピレン組成物。
〔2〕5.0~15.0重量%の、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して5~25g/10minのメルトフローレートMFR を特徴とし、25.0~50.0重量%の範囲の低温キシレン可溶性画分(XCS)を含む、第2異相プロピレンコポリマー(C)をさらに含む、〔1〕に記載のポリプロピレン組成物。
〔3〕5.0~30.0重量%の強化無機フィラー(D)をさらに含む、〔1〕又は〔2〕に記載のポリプロピレン組成物。
〔4〕ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、10.0~100g/10minメルトフローレートMFR を有し、20.0~50.0重量%の範囲の低温キシレン可溶性画分(XCS)を含み、前記画分はエチレンおよび/またはC4-C12アルファ-オレフィンから選択されるコモノマーの、20.0~40.0重量%の範囲の含量を有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
〔5〕100μg/g未満の揮発性物質(VOC、VDA 278、2011年10月)および200μg/g未満の半揮発性有機凝縮可能性分(FOG、VDA 78、2011年10月)を特徴とする、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
〔6〕第1異相プロピレンコポリマー(A)は以下:
・(A1)79.0~91.0重量%、好ましくは80.0~90.0重量%の、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定される結晶性画分(CF)に対応する結晶性マトリックス、該結晶性画分(CF)は、0.5~1.8重量%、好ましくは0.7~1.6重量%のエチレンを含有し、ISO1628に従い測定して、0.6~2.0dl/g、好ましくは0.8~1.8dl/gの固有粘度(iv)を有する、
及び
・(A2)9.0~21.0重量%、好ましくは10.0~20.0重量%の、前記結晶性マトリックス(A1)中に分散したアモルファスプロピレンエチレンエラストマー、該プロピレンエチレンエラストマーは、CRYSTEX QC法、ISO 6427-Bに従い決定される可溶性画分(SF)に対応し、16.5~28.0重量%、好ましくは17.5~26.0重量%のエチレンを含有し、ISO1628に従い測定して、1.8~3.5dl/g、好ましくは2.0~3.2dl/gの固有粘度(iv)を有する、
を含むことを特徴とし、
・ここで、(A1)および(A2)は合計して100重量%である、
〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
〔7〕第1異相プロピレンコポリマー(A)は、ISO1133に従い、230℃、2.16kg荷重で測定して、20~120g/10min、好ましくは35~110g/10minのメルトフローレートMFR 、および/または
0.8~2.8重量%の範囲、好ましくは1.0~2.3重量%の範囲の、FDA法(C6FDA)に従うヘキサン-可溶性画分
を有することを特徴とする、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
〔8〕エラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)は、シングルサイト触媒を用いる溶液重合プロセスに基づき、ISO1133に従い190℃、2.16kg荷重で測定して0.2~50g/10minのメルトフローレートMFR 、および、850~890kg/m 未満の範囲の密度を有することを特徴とする、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
〔9〕強化無機フィラーは、0.5-15μmのメジアン粒子径(D50)および1-50μmのトップカット(D95)を有する、タルク、マイカ、ウォラストナイト、および炭酸カルシウムから選択されることを特徴とする、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
〔10〕以下のプロセスステップ:
(i)シングルサイト触媒系の存在下での連続重合プロセスにおいて、第1異相プロピレンコポリマー(A)を重合するステップ、および
(ii)該コポリマー(A)を適量のエラストマー性エチレン/アルファ-オレフィンランダムコポリマー(B)と溶融混合するステップ、
(iii)前記溶融混合ステップにおいて、チーグラー-ナッタ型触媒系の存在下で重合された適量の第2異相プロピレンコポリマー(C)、および/または適量の強化無機フィラー(D)を場合により添加するステップ、次いで、
(iv)得られる溶融物をストランドペレット化または水中ペレット化ステップで固化するステップ
を含む、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
〔11〕第1異相プロピレンコポリマー(A)を重合するためのシングルサイト触媒系は、非対称メタロセン触媒複合体と、1つまたは複数の共触媒とを含む、〔10〕に記載の方法。
〔12〕第2異相プロピレンコポリマー(C)を重合するためのチーグラー-ナッタ型触媒系は、マグネシウム化合物、チタン化合物および非フタル系内部電子供与体(ID)を含む、自己支持型チーグラー-ナッタ触媒を含み、共触媒はアルミニウム化合物であり、外部供与体(ED)はシランである、〔10〕に記載の方法。
〔13〕ISO 178に従い測定して、500~1000MPaの範囲の曲げ弾性率、ISO 179/1eAに従い23℃で測定して、20.0kJ/m を超える、シャルピーノッチ付き衝撃強さ(NIS)、および、ISO 179/1eAに従い-20℃で測定して、6.0kJ/m を超えるシャルピーNISを特徴とする、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物を含む射出成形品。
〔14〕〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物を含み、最大で1.5mmの壁厚を有する、包装部材または自動車部品。
〔15〕〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物を含み、射出成形プロセスにおいて最大1.5mmの壁厚を有する、包装部材または自動車部品を製造するための、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のポリプロピレン組成物の使用。
図1