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特許7495981少なくとも1つの半導体基板を処理するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】少なくとも1つの半導体基板を処理するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20240529BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240529BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
H01L29/78 301Y
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022533074
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2020084030
(87)【国際公開番号】W WO2021110631
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】102019218727.7
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ルートハルト,ヨアヒム
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-281620(JP,A)
【文献】特開昭54-132164(JP,A)
【文献】特開昭54-125144(JP,A)
【文献】特開2012-004272(JP,A)
【文献】特開2002-075954(JP,A)
【文献】特表平10-512100(JP,A)
【文献】特開2009-283725(JP,A)
【文献】特開2018-186149(JP,A)
【文献】米国特許第06271143(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/336
H01L 21/3065
H01L 21/461
H01L 29/76
H01L 29/772
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの半導体基板(281)を処理するための装置(200)であって、
反応室(221)の広さを規定する壁と、前記反応室(221)に少なくとも1つの半導体基板(281)を設置し、前記反応室(221)から前記少なくとも1つの半導体基板(281)を取り出し、前記反応室(221)をフッ化水素酸で密閉するように構成された閉鎖構造(230)と、前記反応室(221)内の少なくとも1つの温度範囲に少なくとも1つの所定温度を設定するように構成された加熱装置(210)とを備えた反応器(220)と、
蒸気状のフッ化水素酸を前記反応室(221)に供給するように構成されたガス吸気口(240、250)と、
蒸気状のフッ化水素酸を前記反応室(221)から排出するように構成されたガス排気口(260)と、
前記ガス吸気口(240、250)に連結され、前記ガス吸気口(240、250)に所定温度で蒸気状のフッ化水素酸を供給するように構成されたガス供給システム(270)と
を有する装置(200)において、
前記加熱装置(210)が、前記反応室(221)内の前記所定温度を、前記半導体基板が少なくとも熱酸化される第1の温度範囲にわたる温度範囲内の温度に設定するように構成されている、
装置(200)。
【請求項2】
前記第1の温度範囲が900℃から1400℃である請求項1に記載の装置(200)。
【請求項3】
少なくとも1つの半導体基板(281)を処理するための装置(200)であって、
反応室(221)の広さを規定する壁と、前記反応室(221)に少なくとも1つの半導体基板(281)を設置し、前記反応室(221)から前記少なくとも1つの半導体基板(281)を取り出し、前記反応室(221)をフッ化水素酸で密閉するように構成された閉鎖構造(230)と、前記反応室(221)内の少なくとも1つの温度範囲に少なくとも1つの所定温度を設定するように構成された加熱装置(210)とを備えた反応器(220)と、
蒸気状のフッ化水素酸を前記反応室(221)に供給するように構成されたガス吸気口(240、250)と、
蒸気状のフッ化水素酸を前記反応室(221)から排出するように構成されたガス排気口(260)と、
前記ガス吸気口(240、250)に連結され、前記ガス吸気口(240、250)に所定温度で蒸気状のフッ化水素酸を供給するように構成されたガス供給システム(270)と、
を有する装置(200)において、
前記ガス排気口(260)に連結されたコールドトラップ(290)をさらに有し、
前記コールドトラップ(290)が、前記コールドトラップ(290)から液体フッ化水素酸が前記ガス供給システム(270)に供給されるように、前記ガス供給システム(270)に連結されていている、
装置(200)。
【請求項4】
前記コールドトラップ(290)が、フッ化水素酸を検出するように構成された検出装置(292)を有する、請求項に記載の装置(200)。
【請求項5】
前記加熱装置(210)が、前記反応室(221)内の前記所定温度を、60℃~400℃にわたる第2の温度範囲内の温度に設定するようにさらに構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項6】
前記壁、前記閉鎖構造(230)、前記ガス吸気口(240、250)および前記ガス排気口(260)は、蒸気状のフッ化水素酸が前記所定温度で前記ガス供給システム(270)から前記ガス吸気口(240、250)に供給されるようにさらに構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項7】
前記壁、前記閉鎖構造(230)、前記ガス吸気口(240、250)および前記ガス排気口(260)がそれぞれ、非酸化性および耐フッ化水素酸性の材料から形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項8】
前記反応室(221)内で陰圧または真空を調整可能なように前記反応器(220)に連結された真空ポンプシステムをさらに有する、請求項1~のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(200)を用いた、少なくとも1つの半導体基板(281)を処理するための方法(300)であって、
前記反応室(221)内での少なくとも1つの半導体基板の熱酸化(320)と、その後の前記ガス吸気口(240、250)から供給されるフッ化水素酸を用いた前記少なくとも1つの半導体基板の前記酸化された半導体材料の一部の除去(330)とを有するサイクル(350)であって、少なくとも2回実行されるサイクル(350)を有する方法(300)であり、
前記閉鎖構造(230)が、前記サイクルの最初の実行開始から前記サイクルの最後の実行終了まで閉鎖されたままである、方法(300)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの半導体基板(281)がマスク構造を有し、前記マスク構造が、窒化ケイ素層およびシリコンリッチ窒化ケイ素層からの積層体を有する、請求項に記載の方法(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの半導体基板を処理するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野では、電気自動車の進展に伴い、高速かつ損失のないスイッチングパワー半導体のソリューションが求められている。横型部品から縦型部品への移行と同時に、数十年前から確立されてきたシリコン技術が、例えば炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)など、いわゆる「ワイドバンドギャップ」材料へと移行する傾向があり、新しい部品コンセプトと製造工程が開発されている。
【0003】
SiCの場合、可能な限りシリコン技術の設備を使用していることが好ましい。これは、結果的に、相乗効果による投資コスト側の節約につながる。選択された設備や工程、特に、例えば酸化やドーパント活性化などの高温工程は、炭化ケイ素について特化した個別の調整がなされている。
【0004】
文献上で「FinFET(Fin Field-Effect Transistor)」と呼ばれる炭化ケイ素からなるパワー半導体部品の製造には、100nmから200nmの範囲の非常に薄い自立構造(半導体フィン)が必要である。ここで、考えられる容易な製造工程では、適切なドライエッチング工程を用いて、パターニングされたグリッドを作成することが企図される。しかし、この工程だけでは薄型構造の生成には不十分であるため、その後のフィン形成工程で、それぞれのグリッドで発生する構造がさらに薄型化される。この方法では、例えばフッ化水素酸水溶液を用いた水槽などで、繰り返し酸化とその後のSiC酸化物の除去とが企図される。この一連のステップは、初期グリッドと半導体フィンの所望の最終的な厚さとに応じて、連続して数回行われる。この際、物流上の取り扱いや移送、設備管理の手間が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、1つまたは複数の半導体基板をよりコスト効率よく処理することができる装置および方法を提供することである。これにより、例えばFinFETのような縦型電界効果トランジスタなどの半導体部品を、よりコスト効率よく製造することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、この課題は、少なくとも1つの半導体基板を処理するための装置によって解決される。この装置は、反応室の広さを規定する壁と、反応室に少なくとも1つの半導体基板を設置し、反応室から少なくとも1つの半導体基板を取り出し、反応室をフッ化水素酸で密閉するように構成された閉鎖構造と、反応室内の少なくとも1つの温度範囲に少なくとも1つの所定温度を設定するように構成された加熱装置とを備えた反応器を有する。この装置は、蒸気状のフッ化水素酸を反応室に供給するように構成されたガス吸気口と、蒸気状のフッ化水素酸を反応室から排出するように構成されたガス排気口と、ガス吸気口に連結され、所定温度で蒸気状のフッ化水素酸をガス吸気口に供給するように構成されたガス供給システムとをさらに有する。これにより、全体的な物流の手間や、設備準備のための任意選択的な待ち時間を最小化することが可能となる。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、この課題は、上述の態様に従って構成された装置を用いた、少なくとも1つの半導体基板を処理するための方法によって解決される。この方法は、反応室内での少なくとも1つの半導体基板の熱酸化と、その後のガス吸気口から供給されるフッ化水素酸を用いた少なくとも1つの半導体基板の酸化された半導体材料の一部の除去とを有するサイクルであって、少なくとも2回実行されるサイクルを有し、閉鎖構造は、サイクルの最初の実行開始からサイクルの最後の実行終了まで閉鎖されたままである。これにより、全体的な物流の手間や、設備準備のための任意選択的な待ち時間を最小化することが可能となる。例えば、FinFETの製造方法における完全なフィン形成工程を、1つの設備の1つの方法ステップで行うことができるため、投資や設備コストを削減することが可能となる。さらに、複数回の設備交換を防止または低減できるため、物流の手間を低減し、生産時間を削減することができる。さらに、半導体フィン形状の「フィン形成」のための表面マスキングと組み合わせて、より良好な工程制御が可能となる場合もある。さらに、この装置は、細かな「成形」のための道具を提供することができる。
【0008】
この態様の発展形態は、従属請求項および明細書に記載されている。本発明の実施形態を図示し、以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】少なくとも1つの半導体基板を処理するための方法のフローの概略図である。
図2】様々な実施形態に係る少なくとも1つの半導体基板を処理するための装置の概略図である。
図3】様々な実施形態に係る少なくとも1つの半導体基板を処理するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を構成し、本発明が実施され得る特定の実施例が例示のために示されている添付図面が参照される。本発明の保護範囲から逸脱することなく、他の実施例を用いてもよく、構造的または論理的な変更を行ってもよいことは自明である。本明細書に記載された様々な実施例の特徴は、特に別段の指示がない限り、互いに組み合わせてもよいことは自明である。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきものではなく、本発明の保護範囲は、添付の請求項によって定義される。図中、同一または類似の要素には、これが適切である限り、同一の参照符号を付す。
【0011】
FinFETの薄い半導体フィン(横方向構造幅100nm~200nm)を生成する方法の一つは、図1に概略的に示すように、生成した酸化と酸化物の除去の一連のサイクルを行うことである。ここでは、対応する第1の初期グリッドを、半導体基板、例えばSiC基板のトレンチ構造などにパターニングする。この成形物に基づいて、例えば高温酸化設備100において酸化工程が続く。高温酸化設備100は、石英または炭化ケイ素からなる反応器110と、制御可能な加熱装置111と、ガス供給ユニット装置130と、工程中および基板処理中のホルダまたは基板支持体(ボートとも呼ばれる)における炭化ケイ素基板120とを有する。
【0012】
半導体基板の酸化および移送140の後、例えば、従来は浸漬槽150で、フッ化水素酸を含有する溶液160中でウェットで化学的に酸化物が除去される。酸化工程中の酸化物の自己規制のため、矢印140および160で示すように、この工程を複数回周期的に繰り返すことは、経済的観点からだけでなく、工程工学的観点からも有利かつ必要な場合がある。このため、140と160で必要な設備交換によって、繰り返される物流の手間が増え、任意で時間遅延が発生する。
【0013】
この工程では、酸化設備が縦型か横型かは基本的に重要でない。また、図2に示すように、炉をあるいは水平に設置してもよい。
【0014】
図2は、様々な実施形態に係る少なくとも1つの半導体基板281を処理するための装置200の概略図である。装置200は、反応器220と、ガス吸気口240、250と、ガス排気口260と、ガス供給システム270とを有する。
【0015】
反応器220は、壁と、閉鎖構造230と、加熱装置210とを有する。壁は反応室221の広さを規定する。閉鎖構造230は、1つまたは複数の半導体基板281を反応室221に設置し、1つまたは複数の半導体基板281を反応室221から取り出し、反応室221をフッ化水素酸で密閉するように構成されている。加熱装置210は、反応室221の少なくとも1つの温度範囲に少なくとも1つの所定温度を設定するように構成されている。所定温度は、室温よりも高い温度であってもよいし、半導体基板281が設置される反応室221内の温度よりも高い温度であってもよい。加熱装置210は、反応室221内の所定温度を、少なくとも1つの半導体基板が少なくとも熱酸化される第1の温度範囲、例えば約900℃から約1400℃にわたる温度範囲内の温度に設定するように構成されていてもよい。加熱装置210は、反応室221内の所定温度を、約60℃~約600℃、例えば200℃~400℃にわたる第2の温度範囲内の温度に設定するようにさらに構成されていてもよい。
【0016】
ガス吸気口240、250は、少なくとも、蒸気状のフッ化水素酸(フッ化水素酸蒸気)を反応室221に供給するように構成されている。ガス排気口260は、反応室221から蒸気状のフッ化水素酸を排出するように構成されている。ガス供給システム270は、ガス吸気口240、250に連結され、ガス吸気口240、250に少なくとも所定温度で蒸気状のフッ化水素酸を供給するように構成されている。
【0017】
壁、閉鎖構造230、ガス吸気口240、250およびガス排気口260は、蒸気状のフッ化水素酸が所定温度でガス供給システム270からガス吸気口240、250に供給されるようにさらに構成されていてもよい。壁、閉鎖構造230、ガス吸気口240、250、およびガス排気口260はそれぞれ、非酸化性または低酸化性および耐フッ化水素酸性または略耐フッ化水素酸性の材料から形成されてもよい。
【0018】
装置200は、ガス排気口260に連結されたコールドトラップ290をさらに有してもよい。コールドトラップ290は、コールドトラップ290から液体フッ化水素酸がガス供給システム270に供給されるように、ガス供給システム270に連結されていてもよい。コールドトラップ290は、フッ化水素酸を検出するように構成された検出装置292を有してもよい。
【0019】
装置200は、反応室221内で陰圧または真空を調整可能なように反応器220に連結された真空ポンプシステムをさらに有してもよい。
【0020】
加熱装置210は、反応器200の反応室外部に配置されていてもよい。例えば、反応器200は、反応室221が焼成室であり、壁がマッフルであるマッフル炉を有してもよい。最も単純なケースでは、加熱装置は電気抵抗型加熱装置であってもよい。これを複数のゾーンに分割してもよい。熱電対を適切な箇所に配置し、対応する加熱制御により、管全体に所望の温度分布を確保することができる。内部温度および外部温度の較正によって、内部熱電対が不要になる。
【0021】
壁は、管またはプロセス管として構成されてもよい。炭化ケイ素、または非酸化性および耐フッ化水素酸性の材料、例えばセラミックからなるプロセス管を炉内に設けてもよい。プロセス管は、半導体基板をプロセス管に設置し、プロセス管から取り出すための対応するドアクロージャまたは管クロージャ、すなわち閉鎖構造を有する。あるいは、内管付き炭化ケイ素管((英語で)「ライナ」ともいう)を用いてもよい。ライナは、例えば炭化ケイ素、セラミック、または焼結窒化ホウ素などで形成することができる。これにより、装置の耐用年数を延ばすことができる。
【0022】
ガス吸気口240、250は、少なくとも蒸気状のフッ化水素酸を反応室に分配するよう構成された1つまたは複数のガスランス240、250を有してもよい。
【0023】
反応器220と、プロセスガスにさらされる全ての高温部品、例えば閉鎖構造230、ガスランス240または250、ガス排気口260の領域、および反応器内に刻まれた基板支持体280は、炭化ケイ素から製造されてもよく、またはあるいは全体的もしくは部分的にセラミックで製造されてもよく、セラミックで被覆されていてもよい。あるいは、使用するプロセス温度(例えば、1350℃まで)およびガス雰囲気(窒素、アルゴン、亜酸化窒素、酸素、乾湿(水を含む)、フッ化水素酸含有気相)に適切に適合するものであれば、他の材料を考慮してもよい。
【0024】
様々な実施形態において、ガス供給システム270は、複数のバルブ271、272、273、274、275、276、277、27nと、蒸気圧飽和装置(バブラとも呼ばれる)278、2710とを有する。バルブ271、272、273、274、275、276、277、27nは、様々なプロセスガスを反応室221に直接および/またはキャリアガスによって導入することができる。バルブの制御は、対応するコンピュータ可読媒体によって、対応する制御装置でプログラムすることができる。
【0025】
キャリアガスとして、例えば窒素を用いてもよく、これは、例えばバブラ278によって、ジクロロエテン(DCE)または脱イオン(DI)水279と共に反応室221に導入される。あるいはまたはさらに、バブラ2710によってフッ化水素酸含有溶液2711にキャリアガス(例えば、窒素)を通し、キャリアガスによって運ばれたフッ化水素酸と共に反応室221に導入してもよい。
【0026】
ガス供給システム270の導管は、温度(T<60℃)にさらされる領域の外側の、例えばテフロン(登録商標)含有材料からなる耐薬品性のあるチューブと共に構成されてもよい。
【0027】
コールドトラップ290は、戻り管2712によってガス供給システム270に接続されてもよい。コールドトラップ290は、排気ガス中のフッ化水素酸含有成分を冷却するように構成されている。液体状のフッ化水素酸は、コールドトラップ290からバルブ291および戻り管2712を介して対応するバブラ2710に戻されてもよい。
【0028】
戻り管2712は、耐薬品性に、または適切に被覆されて作られている。安全技術の観点から、コールドトラップ290は、フッ化水素酸またはフッ化水素酸蒸気の検出装置292、例えばセンサユニットおよび評価ユニットをさらに含んでもよい。
【0029】
図3は、様々な実施形態に係る少なくとも1つの半導体基板を処理するための方法300のフローチャートである。方法300は、先に説明した装置200を用いて実行することができる。
【0030】
方法300は、反応室に少なくとも1つの半導体基板を設置すること310と、閉鎖構造を閉鎖することとを有してもよい。閉鎖構造は、反応室または壁と閉鎖構造との接触領域が、蒸気状のフッ化水素酸で密閉されるように閉鎖される。
【0031】
方法300は、さらに、サイクル350を有する。サイクル350は、反応室内での少なくとも1つの半導体基板の熱酸化320と、その後のガス吸気口から供給されるフッ化水素酸を用いた少なくとも1つの半導体基板の酸化された半導体材料の一部の除去330を有する。サイクル350は少なくとも2回実行される。サイクル350は、少なくとも1つの半導体基板からの所定量の材料除去が達成されるまで繰り返されてもよい。
【0032】
方法300は、さらに、閉鎖構造の開放と、反応室からの少なくとも1つの半導体基板の取り出し340とを有してもよい。閉鎖構造を開放する前に、本方法は、ガス排気口から受け取ったガス中のフッ化水素酸の検出を有してもよい。ガス排気口から受け取ったガス中にフッ化水素酸が検出されない場合、閉鎖構造を開放することができる。
【0033】
例示的に、閉鎖構造は、サイクル350の最初の実行開始からサイクル350の最後の実行終了まで閉鎖されたままである。
【0034】
FinFETの製造における「フィン形成工程」は、繰り返し酸化した後に形成された酸化物を除去することによって、100~200ナノメートルの厚さの垂直構造を生成することを目的としている。この繰り返し酸化とそれに続く、発生した酸化炭化ケイ素の除去の方法は、装置の反応室内の元の位置において、連続的な工程手順で行われる。
【0035】
本方法は、酸化と、酸化によって形成された半導体酸化物の除去とを有し、例えば、炭化ケイ素基板を酸化し、酸化された炭化ケイ素を炭化ケイ素基板から除去することを有する。
【0036】
方法の開始点において、炭化ケイ素基板はグリッド(トレンチ構造)がパターニングされたウェハ状のものである。このグリッドは、ドライエッチング工程で生成でき、適切なパターニング深さを有する。
【0037】
使用される半導体基板、例えば数百マイクロメートルの範囲の厚さのウェハは、工程手順全体において、基板支持体、いわゆる「ボート」に保持される。基板支持体は、炭化ケイ素やセラミック(例えば窒化ホウ素)で形成されてもよい。
【0038】
基板支持体は、機械的な引き込み装置によって反応器内または内部の「ライナ」(SiC製またはセラミック製)に移動され、そこに置かれることができる。これはすでに、室温~数百℃の待機温度(例えば60℃から600℃、例えば400℃から600℃の範囲)で行うことができる。
【0039】
設置310の後、反応室は、フッ化水素酸が意図せずに反応室から漏れないように、閉鎖構造によって閉鎖される。
【0040】
ガス供給システムにより、反応室内を窒素でパージすることができる。任意で、加熱装置による反応室の所定温度(プロセス温度)への加熱中に、任意選択的な真空ポンプシステムにより、ポンピングとパージサイクルの組合せを実行することができる。最も単純なケースでは、半導体基板は、反応室がプロセス温度に加熱される間、不活性またはわずかに酸化性の雰囲気でパージされる。ガス供給システムは、このために、例えば窒素(N)、アルゴン(Ar)、または1%の酸素(O)を含むNなど、必要なガスをガス吸気口に供給することができる。
【0041】
酸化のためのプロセス温度(例えば炭化ケイ素基板で1000℃~1350℃)に到達し、その後温度が安定した後に、ガス供給システムによって不活性ガス相から酸化性ガス相に切り替えることができる。
【0042】
酸化性ガス相は、塩素が追加される、または追加されない乾式または湿式酸化であってよく、例えば、トランス-1,2-ジクロロエチレン(トランス-LC)または同等の特性を有する物質、例えばDCEがバブラによって供給される。
【0043】
例えば、酸素やキャリアガスとしての酸素は、DI水(279)を用いたバブラ(278)により使用することができる(図2参照)。酸化は、適切に設定された酸化時間後に終了してよい。反応室は、不活性ガスでパージされてもよい。公知および/または事前に指定された酸化速度および酸化時間に応じて、半導体基板の炭化ケイ素の一部が酸化され、炭化ケイ素酸化物として存在することができる。
【0044】
続いて、反応器を不活性ガスでパージし、酸化物エッチングステップのプロセス温度に制御することができる。
【0045】
少なくとも1つの半導体基板の酸化物の除去は、フッ化水素酸を含む雰囲気中で行われる。プロセス温度は、例えば酸化温度のままでもよく、例えば、1000℃~1350℃の範囲であってもよい。あるいは、例えば工程の実施を最適化するために、エッチングステップの所定温度をより低く、例えば約200℃から約400℃の範囲の温度であってもよい。
【0046】
必要なエッチング時間は、酸化物の厚さ、プロセス温度、蒸気状のフッ化水素酸含有溶液の供給量に応じてあらかじめ特定され、工程に応じて適宜設定され得る。
【0047】
蒸気状のフッ化水素酸は、ガス供給システムにより反応室に供給することができる。このため、キャリアガス、例えばNを、バブラシステム(2710)を介してフッ化水素酸含有水溶液(2711)に導いてもよい(図2参照)。キャリアガス流(数百標準立方センチメートル/分から数標準リットル/分の範囲)を、ガス供給システムおよびガス吸気口のガスランスを介して反応室に導いてもよい。キャリアガス流と共に導かれた分量のフッ化水素酸は、基板支持体位置のガスランスによって蒸気状で高温反応室内に放出することができる。その後、フッ化水素酸によって炭化ケイ素ウェハの以前酸化された領域をエッチングすることができる。
【0048】
フッ化水素酸蒸気に接触する高温表面は全て、酸化物もエッチングできる耐性のある炭化ケイ素で製造することができ、またはそうする必要がある。酸化したSiC部品の収縮は、適切なガスフロー、セラミックライナ(壁)の使用、セラミックで裏打ちされた領域、さらに適切な温度プロファイルと適切な量によって小さく保つことができる。あるいは、高温表面を不活性セラミック、例えば窒化ホウ素で形成してもよい。
【0049】
フッ化水素酸を含む残留ガス流は、反応室からコールドトラップを介して、ガス排気口を通り吸入装置に供給することができる。
【0050】
また、コールドトラップは精留塔に対応した多段式として作られ得る。
【0051】
したがって、(略)プロセス温度である領域外の全ての(非高温)部品(例えばT<60℃)は、例えばテフロンなどの耐フッ化水素酸コーティングで作られるか、フッ化水素酸に対して内在的に耐性を有することができる。
【0052】
コールドトラップは、凝縮したフッ化水素酸蒸気または液体のフッ化水素酸のための戻り装置および/または戻り管を有することができる。濃度によっては、コールドトラップで液化したフッ化水素酸を、戻り管(2712)により、ガス供給システムのバブラシステム(2710)の容器(2711)に再び供給することができる(図2参照)。
【0053】
コールドトラップは、フッ化水素酸用センサを有する検出装置(292)と、評価装置(図2参照)とを有してもよい(図2参照)。この検出装置は、次の酸化工程ステップの前、または処理された半導体基板を反応器から取り出す前に、パージステップが確実に正常に行われるように、複数の異なる場所に配置することができる。
【0054】
垂直炭化ケイ素構造の必要かつ望ましい薄型化に応じて、半導体基板の処理は、全工程時間に関して数回サイクル350を実行してもよい。この場合、エッチング工程後、反応室から不活性ガスでフッ化水素酸含有雰囲気をパージした後、再度酸化工程を開始し(上記参照)、その後、再度エッチングプロセスを行ってもよい。ここで、サイクル350の回数と時間は限定されておらず、自由に選択できる。
【0055】
所望の厚さの酸化物が生成され、そのエッチングが完了した後、反応室を不活性ガス、例えばNまたはArでパージすることができる。さらに、所定の取出し温度を設定することができる。検出装置のフッ化水素酸濃度センサにより、反応室の開放前のパージと半導体基板付き基板支持体の取り出し340を正常に制御し、確実に行うことができる。安全規制に対応するため、開口部に追加の排気口やセンサを設けてもよい。
【0056】
さらなる工程の前に、様々な実施形態において、装置は条件付けされてもよい。例えば、炭化ケイ素からなる部品が全て下地酸化膜を有すると、方法結果の再現性に有利な場合がある。その後、これを周期的にエッチングして、酸化ステップで再び生成させることができる。
【0057】
この「下地酸化膜」は、例えば、ウェハを用いずに酸化することで達成できる。炭化ケイ素部品は、再エッチングによって引き起こされる材料収縮を考慮して設定することができる。例えば、部品の耐用年数を十分に確保するために、部品に予備厚を設けることができる。
【0058】
ガスランスの領域でプロセスガスを適切に案内し、対応するガス量を管理することにより、予備厚は任意で、局所的または選択的にのみ供給してもよい。あるいは、マッフルとして反応器内に設けられた管(ライナ)を使用してもよい。耐用年数後は、場合によってライナのみを交換する必要がある。また、適切な材料の選択により、耐用年数を延ばすことができる。例えば、基板支持体や他の部品の全部または一部をセラミックや、例えば焼結窒化ホウ素などで形成してもよい。
【0059】
さらに、反応室の「高温部」にセラミックライナを設けてもよい。あるいは、セラミック製のクラッド管やセラミックコーティングされたガスランスを使用してもよい。あるいは、予備厚の炭化ケイ素ライナを設け、意図的に消費して定期的に交換し、管の耐用年数を長くしてもよい。
【0060】
様々な実施形態において、パターニングされたグリッドとは別に、基板前処理の一部として、半導体基板上に形成マスクが追加的に設けられてもよい。それぞれのマスク材料は、酸化工程および/またはエッチング工程に耐えられるように構成されていてもよい。炭化ケイ素基板の場合、マスク構造は、低圧化学蒸着法(LPCVD(Low-Pressure Chemical Vapor Deposition)法)で形成された窒化ケイ素から形成することができる。窒化ケイ素は自己抑制酸化速度が低く、酸化ケイ素と比較してフッ化水素酸でのエッチング速度が著しく低い。
【0061】
上述の装置や上述の方法で使用する場合、マスク構造として連続した一体型の窒化ケイ素層を使用しない方が有利な場合がある。あるいは、窒化ケイ素およびシリコンリッチ窒化物を交互に積層し、窒化ケイ素で終端する積層体をマスク構造として使用してもよい。窒化ケイ素は酸化工程での酸化速度が遅く、シリコンリッチ窒化物は調整可能なシリコン含有量が多いため、エッチング速度が遅く、フッ化水素酸含有蒸気に対する耐性が高くなる。シリコンリッチ窒化ケイ素層と窒化ケイ素層の層厚を調節することで、全体的に薄く、コスト効率の良い形成マスク構造を実現することが可能である。窒化ケイ素層とシリコンリッチ窒化ケイ素層の積層体は、LPVCD工程のガスフロー変動により作製することができる。シリコンリッチ窒化ケイ素層は、窒化ケイ素層よりもシリコンの含有割合が高い。
【0062】
図に記載され、示されている実施形態は、例示的にのみ選択されている。異なる実施形態は、完全に、または個々の特徴に関して互いに組み合わせてもよい。また、ある実施形態が他の実施形態の特徴によって補完されることもある。また、記載された方法ステップは繰り返されてもよく、記載された以外の順序で実施されてもよい。特に、本発明は、記載された方法に限定されるものではない。
図1
図2
図3