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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】EGFR阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20240529BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240529BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240529BHJP
   C07D 487/04 20060101ALN20240529BHJP
【FI】
A61K31/519 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 105
C07D487/04 140
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022536419
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026461
(87)【国際公開番号】W WO2022014639
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020121525
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】小口 憩
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特許第6783974(JP,B1)
【文献】国際公開第2017/038838(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/118817(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/065898(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/145374(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/519
A61P 35/00
A61P 43/00
C07D 487/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、EGFRが関与する疾患の治療剤。
【請求項2】
前記ピリミジン化合物が、下記一般式(II)
【化2】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、置換基としてC1-C4アルコキシ基を1から5個有しても良いC1-C6アルキル基である化合物である、請求項1又は2に記載の治療剤。
【請求項4】
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基である化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項5】
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、フッ素原子及び塩素原子からなる群から選択される置換基を1又は2個有してもよいフェニル基である化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項6】
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、メチル基、tert-ブチル基、又はシクロプロピル基である化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項7】
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、又はエトキシメチル基である化合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項8】
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、メチル基である化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項9】
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、水素原子である、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項10】
ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、フェニル基である化合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項11】
前記ピリミジン化合物が、以下の(1)~(3)から選択される化合物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の治療剤。
(1)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(2)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(3)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(3,3-ジメチルブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
【請求項12】
前記ピリミジン化合物が、7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドである、請求項1~11のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項13】
EGFRが関与する疾患が、EGFR過剰発現、EGFR遺伝子増幅、又はEGFR変異を有する悪性腫瘍である、請求項1~12のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項14】
下記一般式(I)
【化3】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、EGFR阻害剤。
【請求項15】
下記一般式(I)
【化4】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、EGFR陽性腫瘍の治療剤。
【請求項16】
下記一般式(I)
【化5】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む、EGFRが関与する疾患の治療に使用するための医薬組成物。
【請求項17】
EGFRが関与する疾患が、EGFR過剰発現、EGFR遺伝子増幅、又はEGFR変異を有する悪性腫瘍である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
EGFRが関与する疾患の治療剤を製造するための、下記一般式(I)
【化8】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項19】
EGFR陽性腫瘍の治療剤を製造するための、下記一般式(I)
【化11】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリミジン化合物又はその塩を用いたEGFR阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
EGFR(「ErbB1」とも呼ばれる)は、ErbBファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼであり、正常組織においては主に上皮組織においてEpidermal Growth Factor(「EGF」とも呼ばれる)と結合し細胞増殖やアポトーシス阻害に寄与するとの報告がある(非特許文献1)。
【0003】
EGFRは、がん原因遺伝子として考えられ、EGFRの遺伝子増幅や過剰発現、変異等が様々ながんで報告されている。非臨床・臨床研究データから、これらEGFRの遺伝子異常・過剰発現等を伴うがん細胞において、EGFR及び下流シグナルの活性化が、がん細胞の生存・増殖等において重要な役割を担っていると考えられている。例えばEGFRのエクソン19領域の746~750番アミノ酸が欠失した変異(「エクソン19欠失変異」とも呼ばれる)、エクソン21領域の858番アミノ酸がロイシンからアルギニンへ変異したもの(「L858R変異」とも呼ばれる)については、EGF非依存的にEGFRを自己リン酸化することでキナーゼ活性を誘導し、がん細胞の生存・増殖に寄与すると考えられている(非特許文献2)。これらの変異については、東アジアでは非小細胞肺癌の約30~50%、欧米では非小細胞肺癌の約10%に存在するとの報告がある(非特許文献3)。
【0004】
従って、EGFRのキナーゼ活性を制御できる阻害剤は、EGFRの遺伝子増幅、過剰発現、及び/又は変異を有するがん細胞において、EGFR及び下流シグナル伝達を阻害することにより抗腫瘍効果を発揮することが想定されるため、がん患者の治療、延命、及びQOL向上に有用であると考えられる。
【0005】
そのため、抗がん剤としてのEGFR阻害剤研究開発は従来から複数行われ、EGFR変異陽性腫瘍に対する治療に用いられている。例えば、アファチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブといった薬剤がエクソン19欠失変異やL858R変異を有するEGFR変異陽性肺癌に対する治療剤として承認されている。また、オシメルチニブについては、エクソン19欠失変異やL858R変異に加え、エクソン20領域の790番アミノ酸がスレオニンからメチオニンへ変異したもの(「T790M変異」とも呼ばれる)を有するEGFR変異陽性肺癌に対する治療剤として承認されている。
【0006】
エクソン20領域に一つ以上のアミノ酸が挿入された変異(「エクソン20挿入変異」とも呼ばれる)についても、肺癌等で活性化変異と考えられているが(非特許文献4)、これらの変異を有するがんについては、複数の既存のEGFR阻害剤に低感受性である傾向が報告されている。例えばアファチニブについては、EGFR変異陽性肺癌に対する臨床効果として、エクソン19欠失変異やL858R変異に対する効果と比較して、エクソン20挿入変異に対する効果は、著しく低い傾向が報告されている(非特許文献5)。EGFRのエクソン20挿入変異を有する肺癌について複数の治験が実施されているが、未だ治療法は確立されていない状況である。従って、エクソン20挿入変異に対して阻害活性を持つEGFR阻害剤が求められている。
【0007】
また、肺癌では約25~40%、乳癌では約15~30%、その他複数のがんにおいても一定の割合で脳転移を生じるとの報告がある(非特許文献6、7)。
【0008】
脳転移巣も含めた病態のコントロールという観点から、EGFR変異に対して阻害活性を持ち、かつ、脳移行性も有するEGFR阻害剤が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Nat.Rev.Cancer,vol.6,pp803-812(2006)
【文献】Nature Medicine,vol.19,pp1389-1400(2013)
【文献】Nat.Rev.Cancer,vol.7,pp169-181(2007)
【文献】Signal Transduct Target Ther.4:5pp.1-10(2019)
【文献】Lancet Oncol.vol.16,pp830-838(2015)
【文献】Current Oncology,25,p.S103-S114(2018)
【文献】Breast Cancer Reseach,18(1),8,p.1-9(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、EGFR阻害活性を有し、かつ脳移行性を有する化合物を有効成分として含有する、EGFRが関与する疾患の治療剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意探索した結果、ピリミジンを基本骨格とする下記式(I)で表される化合物又はその塩がEGFR阻害活性及び脳移行性を有し、EGFRを阻害することによりEGFRが関与する疾患(特に、悪性腫瘍)の治療剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の一形態は、下記の態様を含む。
[1] 下記一般式(I)
【化1】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、EGFRが関与する疾患の治療剤。
[2] 前記ピリミジン化合物が、下記一般式(II)
【化2】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物である、[1]に記載の治療剤。
[3] 前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、置換基としてC1-C4アルコキシ基を1から5個有しても良いC1-C6アルキル基である化合物である、[1]又は[2]に記載の治療剤。
[4] 前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基である化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の治療剤。
[5] 前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、フッ素原子及び塩素原子からなる群から選択される置換基を1又は2個有してもよいフェニル基である化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の治療剤。
[6] 前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、メチル基、tert-ブチル基、又はシクロプロピル基である化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の治療剤。
[7] 前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、又はエトキシメチル基である化合物である、[1]~[6]のいずれかに記載の治療剤。
[8] 前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、メチル基である化合物である、[1]~[7]のいずれかに記載の治療剤。
[9] 前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、水素原子である、[1]~[8]のいずれかに記載の治療剤。
[10] ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、フェニル基である化合物である、[1]~[9]のいずれかに記載の治療剤。
[11] 前記ピリミジン化合物が、以下の(1)~(3)から選択される化合物である、[1]~[10]のいずれかに記載の治療剤。
(1)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(2)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(3)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(3,3-ジメチルブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
[12] 前記ピリミジン化合物が、7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドである、[1]~[11]のいずれかに記載の治療剤。
[13] EGFRが関与する疾患が、EGFR過剰発現、EGFR遺伝子増幅、又はEGFR変異を有する悪性腫瘍である、[1]~[12]のいずれかに記載の治療剤。
[14] 下記一般式(I)
【化3】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、EGFR阻害剤。
[15] 下記一般式(I)
【化4】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、EGFR陽性腫瘍の治療剤。
[16] 下記一般式(I)
【化5】

(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む、EGFRが関与する疾患の治療に使用するための医薬組成物。
[17] EGFRが関与する疾患が、EGFR過剰発現、EGFR遺伝子増幅、又はEGFR変異を有する悪性腫瘍である、[16]に記載の医薬組成物。
【0013】
本発明は、以下の態様にも関する。
・EGFRが関与する疾患を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
・EGFRが関与する疾患を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・EGFRが関与する疾患の治療剤を製造するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・EGFR陽性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
・EGFR陽性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・EGFR陽性腫瘍の治療剤を製造するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・EGFRが関与する疾患の治療方法であって、それを必要とする対象に、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することを含む、方法。
・EGFR陽性腫瘍の治療方法であって、それを必要とする対象に、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することを含む、方法。
・エクソン18変異型EGFRを有する悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
・エクソン18変異型EGFRを有する悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・エクソン18変異型EGFRを有する悪性腫瘍の治療剤を製造するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・エクソン18変異型EGFRを有する悪性腫瘍の治療方法であって、それを必要とする対象に、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することを含む、方法。
・エクソン19変異型EGFRを有する悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
・エクソン19変異型EGFRを有する悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・エクソン19変異型EGFRを有する悪性腫瘍の治療剤を製造するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・エクソン19変異型EGFRを有する悪性腫瘍の治療方法であって、それを必要とする対象に、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することを含む、方法。
・エクソン20変異型EGFRを有する悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
・エクソン20変異型EGFRを有する悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・エクソン20変異型EGFRを有する悪性腫瘍の治療剤を製造するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・エクソン20変異型EGFRを有する悪性腫瘍の治療方法であって、それを必要とする対象に、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することを含む、方法。
・エクソン21変異型EGFRを有する悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
・エクソン21変異型EGFRを有する悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・エクソン21変異型EGFRを有する悪性腫瘍の治療剤を製造するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・エクソン21変異型EGFRを有する悪性腫瘍の治療方法であって、それを必要とする対象に、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することを含む、方法。
・既存のEGFR阻害剤耐性の悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
・既存のEGFR阻害剤耐性の悪性腫瘍を治療するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・既存のEGFR阻害剤耐性の悪性腫瘍の治療剤を製造するための上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
・既存のEGFR阻害剤耐性の悪性腫瘍の治療方法であって、それを必要とする対象に、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することを含む、方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のEGFRが関与する疾患の治療剤によれば、EGFRが関与する疾患、又はEGFR陽性腫瘍の治療のための新たな治療方法が提供される。
本発明の化合物又はその塩は、野生型EGFR及び変異型EGFRに対して優れた阻害活性を有し、優れた脳移行性、悪性腫瘍に対する抗腫瘍効果及び生存期間の延長効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、H1975-EGFRinsSVD細胞株の皮下移植モデルに対する実施例2、11及び12の化合物の抗腫瘍効果を示す。
図2図2は、H1975-EGFRinsSVD細胞株の皮下移植モデルに対して実施例2、11及び12の化合物を投与した際のマウスの体重変化率を示す。
図3図3は、実施例11の化合物のLuciferase遺伝子導入エクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株(H1975-EGFRinsSVD-Luc)の脳直接移植モデルに対する抗腫瘍効果を示す。
図4図4は、Luciferase遺伝子導入エクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株(H1975-EGFRinsSVD-Luc)の脳直接移植モデルに対し実施例11の化合物を投与した際のマウスの生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一形態は、下記一般式(I)
【化6】

で表される化合物又はその塩に関する。
(式中、R~Rは前記定義のとおりである。)
【0017】
本発明の好ましい一形態は、下記一般式(II)で表されるピリミジン化合物又はその塩である。
【化7】

(式中、R~Rは前記定義のとおりである。)
【0018】
本発明の上記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物は、ピロロ[2,3-d]ピリミジンを基本構造とする化合物であり、前記のいずれの先行技術文献等にも記載されていない新規な化合物である。
【0019】
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、具体的には塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、フッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
【0020】
本明細書において、「アルキル基」とは、直鎖状若しくは分枝状の飽和炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1~4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、tert-ブチル基である。
【0021】
本明細書において、「ハロアルキル基」とは、直鎖状若しくは分枝状の飽和炭化水素基のうち、1個~全ての水素原子が前記のハロゲン原子で置換された基を示し、具体的にはモノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1-フルオロエチル基、2-フルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、1-クロロエチル基、2-クロロエチル基、1,1-ジクロロエチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状の飽和炭化水素基のうち、1個~3個の水素原子が前記のハロゲン原子で置換された基であり、より好ましくはモノフルオロメチル基である。
【0022】
本明細書において、「シクロアルキル基」とは、炭素数3~7の単環式若しくは多環式の飽和炭化水素基を示し、具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられ、好ましくはシクロプロピル基、シクロブチル基である。
【0023】
本明細書において、「芳香族炭化水素基」とは、不飽和結合を有する炭素及び水素からなる環状の置換基であって、環状のπ電子系に4e+2個(eは1以上の整数)の電子が含まれる置換基を示す。
【0024】
本明細書において、「C6-C14芳香族炭化水素基」とは、炭素数6~14の単環式若しくは多環式の芳香族炭化水素基を示し、具体的にはフェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0025】
本明細書において、「アラルキル基」とは、前記芳香族炭化水素基で置換された前記アルキル基を示し、具体的にはベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のC7-C16アラルキル基が挙げられ、好ましくはベンジル基である。
【0026】
本明細書において、「不飽和炭化水素基」とは、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合若しくは三重結合を含む炭素数2~6の直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基を示し、具体的にはビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、エチニル基、2-プロピニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基、アリル基、1-プロペニル基である。
【0027】
本明細書において、「アルケニル基」とは、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を含む炭素数2~6の直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基を示し、具体的にはビニル基、アリル基2-メチル-2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-、2-若しくは3-ブテニル基、2-、3-若しくは4-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、5-ヘキセニル基等のC2-C6アルケニル基が挙げられ、好ましくはビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基である。
【0028】
本明細書において「アルキニル基」としては、三重結合を少なくとも1個(例えば、1~2個、好ましくは1個)有する、直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基を示し、具体的にはエチニル基、1-若しくは2-プロピニル基、1-、2-若しくは3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基等のC2-C6アルキニル基が挙げられ、好ましくはエチニル基、2-プロピニル基である。
【0029】
本明細書において、「C3-C10環状不飽和炭化水素基」とは、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を含む炭素数3~10の単環式若しくは多環式の炭化水素基を示し、具体的にはシクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロノニル基等が挙げられ、好ましくは少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を含む炭素数3~7の単環式若しくは多環式の炭化水素基であり、より好ましくはシクロプロペニル基である。
【0030】
本明細書において、「アルコキシ基」とは、前記アルキル基を有するオキシ基を示し、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基及びヘキシルオキシ基等のC1-C6アルコキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基であり、より好ましくはメトキシ基である。
【0031】
本明細書において「ハロアルコキシ基」としては、ハロゲン原子を少なくとも1個(好ましくは1~13個、より好ましくは1~3個)有する前記アルコキシ基を示し、具体的にはフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、フルオロエトキシ基、1,1,1-トリフルオロエトキシ基、モノフルオロ-n-プロポキシ基、パーフルオロ-n-プロポキシ基、パーフルオロ-イソプロポキシ基等のC1-C6ハロアルコキシ基が挙げられる。
【0032】
本明細書において「シクロアルコキシ基」としては、前記シクロアルキル基を有するオキシ基を示し、具体的にはシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基及びシクロヘプチルオキシ基等のC3-C7シクロアルコキシ基が挙げられ、好ましくはシクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基である。
【0033】
本明細書において「アラルキルオキシ基」としては、前記アラルキル基を有するオキシ基を示し、具体的にはベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、フルオレニルメチルオキシ基等のC7-C20アラルキルオキシ基が挙げられ、好ましくはベンジルオキシ基である。
【0034】
本明細書において「アルキルチオ基」としては、前記アルキル基を有するチオキシ基を示し、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等のC1-C6アルキルチオ基が挙げられ、好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基である。
【0035】
本明細書において「アルコキシアルキル基」としては、前記アルコキシ基を少なくとも1個有する前記アルキル基を示し、具体的にはメトキシメチル基、エトキシエチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基等のC1-C6アルコキシ-C1-C6アルキル基が挙げられる。
【0036】
本明細書において、「アルキルアミノ基」とは、1個又は2個の水素原子の代わりに炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基で置換されたアミノ基を示し、具体的にはメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等が挙げられ、好ましくは1個又は2個の水素原子の代わりに炭素数1~3の直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基で置換されたアミノ基で置換されたアミノ基である。
【0037】
本明細書において、「モノアルキルアミノ基」とは、1個の水素原子の代わりに直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基で置換されたアミノ基を示し、具体的にはメチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基等が挙げられ、好ましくは1個の水素原子の代わりに炭素数1~3の直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基で置換されたアミノ基である。
【0038】
本明細書において、「ジアルキルアミノ基」とは、2個の水素原子の代わりに炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基で置換したアミノ基を示し、具体的にはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等が挙げられ、好ましくは2個の水素原子の代わりに炭素数1~3の直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基で置換されたアミノ基であり、より好ましくはジメチルアミノ基である。
【0039】
本明細書において、「アシル基」とは、水素原子の代わりに直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基で置換されたホルミル基を示し、具体的にはアセチル基、n-プロパノイル基、イソプロパノイル基、n-ブチロイル基、tert-ブチロイル基等が挙げられ、好ましくはホルミル基の水素原子の代わりに炭素数1~3の直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基で置換された基であり、より好ましくはアセチル基である。
【0040】
本明細書において「アシルオキシ基」は、前記アシル基を有するオキシ基を示し、具体的にはアルキルカルボニルオキシ基又はアリールカルボニルオキシ基が挙げられ、好ましくはホルミル基の水素原子の代わりに炭素数1~3の直鎖状若しくは分枝状の炭化水素基で置換されたオキシ基であり、好ましくはアルキルカルボニルオキシ基である。
【0041】
本明細書において「アルコキシカルボニル基」としては、前記アルコキシ基を有するカルボニル基を示し、具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基及びヘキシルオキシカルボニル基等の(C1-C6アルコキシ)カルボニル基が挙げられ、好ましくはtert-ブトキシカルボニル基である。
【0042】
本明細書において「アラルキルオキシカルボニル基」としては、前記アラルキルオキシを有するカルボニル基を示し、具体的にはベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ナフチルメチルオキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基等の(C6-C20アラルキル)オキシカルボニル基が挙げられ、好ましくはベンジルオキシカルボニル基である。
【0043】
本明細書において「飽和複素環基」としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個(好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個)有する単環式若しくは多環式の飽和の複素環基を示し、具体的にはアジリジニル基、アゼチジニル基、イミダゾリジニル基、モルホリノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフェニル基、チアゾリジニル基、オキサゾリジニル基等が挙げられ、好ましくはアゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基であり、より好ましくはアゼチジニル基、ピロリジニル基である。
【0044】
本明細書において「不飽和複素環基」としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個(好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個)有する単環式若しくは多環式の完全不飽和又は部分不飽和の複素環基を示し、具体的にはイミダゾリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、オキサジアゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、トリアゾロピリジル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリル基、メチレンジオキシフェニル基、エチレンジオキシフェニル基、ジヒドロベンゾフラニル基等が挙げられ、好ましくはイミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソキサゾリル基、フラニル基であり、より好ましくはイミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基であり、最も好ましくはイミダゾリル基である。
【0045】
本明細書において「飽和複素環オキシ基」としては、前記飽和複素環基を有するオキシ基を示し、具体的にはモルホリニルオキシ基、1-ピロリジニルオキシ基、ピペリジノオキシ基、ピペラジニルオキシ基、4-メチル-1-ピペラジニルオキシ基、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、テトラヒドロチオフェニルオキシ基、チアゾリジニルオキシ基、オキサゾリジニルオキシ基等が挙げられ、好ましくは1-ピロリジニルオキシ基、ピペリジノオキシ基、ピペラジニルオキシ基である。
【0046】
本発明の一般式(I)または一般式(II)で表される化合物において、Rは、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基である。
【0047】
で示される「置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基」における「C1-C4アルコキシ基」としては、好ましくはメトキシ基、又はエトキシ基であり、最も好ましくはメトキシ基である。ここで置換基の個数は、好ましくは1から3個であり、最も好ましくは1個である。置換基が2個以上の場合、置換基は同一又は異なっていても良い。
【0048】
で示される「置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基」における「C1-C4アルキル基」としては、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であり、最も好ましくはメチル基、又はtert-ブチル基である。
【0049】
で示される「置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基」としては、好ましくは置換基としてメトキシ基を1から3個有しても良いC1-C4アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、又は1-メチル-1-メトキシエチル基であり、最も好ましくはメチル基、又はtert-ブチル基である。
【0050】
で示される「C3-C4シクロアルキル基」としては、好ましくはシクロプロピル基、又はシクロブチル基であり、最も好ましくはシクロプロピル基である。
【0051】
は、好ましくは、置換基としてC1-C4アルコキシ基を1から3個有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基である。
【0052】
は、より好ましくは、置換基としてメトキシ基を1から3個有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基である。
【0053】
は、より好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、1-メチル-1-メトキシエチル基、又はシクロプロピル基である。
【0054】
は、最も好ましくは、メチル基、tert-ブチル基、又はシクロプロピル基である。
【0055】
本発明の一般式(I)または一般式(II)で表される化合物において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基である。
【0056】
で示される「ハロゲン原子」としては、好ましくはフッ素原子又は塩素原子である。
【0057】
で示される「置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基」の「C1-C4アルコキシ基」としては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基であり、最も好ましくはメトキシ基である。
【0058】
で示される「置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基」の「C1-C6アルキル基」としては、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0059】
で示される「置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基」としては、好ましくは置換基としてメトキシ基、エトキシ基又はフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基(具体的には、メチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等)であり、より好ましくはC1-C6アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0060】
で示される「C1-C6アルコキシ基」としては、好ましくはメトキシ基、又はエトキシ基であり、最も好ましくはメトキシ基である。
【0061】
は、好ましくは置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C6アルキル基である。一実施形態において、Rは、置換基としてメトキシ基、エトキシ基又はフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基である。さらなる実施形態において、Rは、置換基としてメトキシ基、エトキシ基又はフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基(好ましくは、メチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基)である。
【0062】
は、より好ましくは置換基としてC1-C4アルコキシ基を1から5個有しても良いC1-C6アルキル基である。一実施形態において、Rは、置換基としてメトキシ基、エトキシ基をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基である。さらなる実施形態において、Rは、置換基としてメトキシ基又はエトキシ基をそれぞれ1から5個有しても良いメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基(好ましくは、メチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基)である。さらなる実施形態において、Rは、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、又はエトキシメチル基である。
【0063】
は、より一層好ましくはC1-C6アルキル基である。
【0064】
は、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基である。
は、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
は、最も好ましくはメチル基である。
【0065】
本発明の一般式(I)または一般式(II)で表される化合物において、Rは、水素原子、置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基である。
【0066】
で示される「置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基」の「C1-C4アルキル基」としては、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であり、より好ましくはメチル基、又はエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0067】
で示される「置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基」としては、好ましくはメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、又はエチル基であり、より好ましくはメチル基、トリフルオロメチル基、又はエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0068】
は、好ましくは、置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基である。
【0069】
は、より好ましくは、メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基である。
【0070】
は、より好ましくは、メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、又はエチル基である。
【0071】
は、さらに好ましくは、メチル基、トリフルオロメチル基、又はエチル基である。
は、特に好ましくは、メチル基、又はエチル基である。
は、最も好ましくは、メチル基である。
【0072】
本発明の一般式(I)または一般式(II)で表される化合物において、Rは水素原子、又はC1-C4アルキル基である。
【0073】
で示される「C1-C4アルキル基」としては、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であり、より好ましくはメチル基、又はエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0074】
は、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基である。
【0075】
は、より好ましくは水素原子、メチル基、又はエチル基である。
【0076】
は、さらに好ましくは水素原子、又はメチル基である。
は、最も好ましくは水素原子である。
【0077】
本発明の一般式(I)または一般式(II)で表される化合物において、Rは、フッ素原子及び塩素原子からなる群から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基である。
【0078】
は、好ましくは、フッ素原子及び塩素原子からなる群から選択される置換基を1又は2個有してもよいフェニル基である。
【0079】
は、さらに好ましくはフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-クロロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、又は3,5-ジフルオロフェニル基である。
【0080】
は、最も好ましくはフェニル基である。
【0081】
本発明の化合物は、一般式(I)または一般式(II)中、Rは、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基であり、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を1から5個有しても良いC1-C6アルキル基であり、
は、置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基であり、
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基であり、
は、フッ素原子及び塩素原子からなる群から選択される置換基を1又は2個有してもよいフェニル基である、化合物又はその塩が好ましい。
【0082】
より好ましくは、一般式(I)または一般式(II)中、Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、1-メチル-1-メトキシエチル基、シクロプロピル基、又はシクロブチル基であり、
は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、又はエトキシメチル基であり、
は、メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であり、
は、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基であり、
は、フェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、又は3,5-ジクロロフェニル基である、化合物又はその塩である。
【0083】
より好ましくは、一般式(II)中、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、1-メチル-1-メトキシエチル基、又はシクロプロピル基であり、
は、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、又はエトキシメチル基であり、
は、メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、又はエチル基であり、
は、水素原子、メチル基、又はエチル基であり、
は、フェニル基、2-フルオロフェニル基、3-クロロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、又は3,5-ジフルオロフェニル基である、化合物又はその塩である。
【0084】
さらに好ましくは、一般式(II)中、Rは、メチル基、tert-ブチル基、又はシクロプロピル基であり、
は、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、又はエトキシメチル基であり、
は、メチル基、トリフルオロメチル基、又はエチル基であり、
は、水素原子、又はメチル基であり、
は、フェニル基である、化合物又はその塩である。
【0085】
さらに好ましくは、一般式(II)中、Rは、メチル基、tert-ブチル基、又はシクロプロピル基であり、
は、メチル基、エチル基、又はメトキシメチル基であり、
は、メチル基であり、
は、水素原子であり、
は、フェニル基である、化合物又はその塩である。
【0086】
特に好ましくは、一般式(II)中、Rは、メチル基、tert-ブチル基、又はシクロプロピル基であり、
は、メチル基であり、
は、メチル基であり、
は、水素原子であり、
は、フェニル基である、化合物又はその塩である。
【0087】
具体的な一般式(I)または一般式(II)中の化合物としては、以下の実施例にて製造される化合物が例示できるが、これらには限定されない。
【0088】
本発明の一実施形態は、以下の(1)~(19)から選択される化合物、又はその塩である。本発明の一実施形態は、下記の(1)~(15)から選択される化合物、又はその塩である。
(1)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(2)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(3)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(3,3-ジメチルブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(4)7-(R)-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(5)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-フェニルプロパン-2-イル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(6)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルプロピル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(7)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-(2-フルオロフェニル)プロパン-2-イル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(8)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-(3-クロロフェニル)エチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(9)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-(2,4-ジフルオロフェニル)エチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(10)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-N-((S)-2,2,2-トリフルオロ-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(11)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-(2-フェニルプロパン-2-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(12)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-(2,3-ジフルオロフェニル)エチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(13)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(3-メトキシ-3-メチルブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(14)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(ブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(15)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-(2-フルオロフェニル)プロパン-2-イル)-6-(3-メチルブチ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(16)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-エチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(17)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-エチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(18)7-((3R,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(19)7-((3R,5R)-1-アクリロイル-5-(エトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
【0089】
好適な一般式(I)または一般式(II)中の化合物としては以下の(1)~(3)から選択される化合物、又はその塩が例示できる。
(1)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(2)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(3)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(3,3-ジメチルブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
【0090】
本発明における最も好適なピリミジン化合物は、7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドである。
【0091】
<式(I)で表される化合物の製造方法>
本発明に係わる化合物は、例えば下記の製造方法又は実施例に示す方法により製造することができる。ただし、本発明に係わる化合物の製造方法はこれらの例に限定されるものではない。
【0092】
本発明の化合物(I)及び(II)は、例えば下記製造方法を用いて製造することができる。
<製造方法>
【化8】

[式中、L、L、Lは、同一または異なって脱離基を示し、P、Pは同一または異なって保護基を示し、その他の記号は前記と同義である。]
【0093】
<第1工程>
本工程は、式1で表される化合物と、市販または、公知の方法によって製造できる式2で表される化合物との光延反応により、式3で表される化合物を得る方法である。光延反応は、通常、光延試薬およびホスフィン試薬の存在下で行われる。
【0094】
式2で表される化合物(式2中Pはアミノ基の保護基を表す)の使用量は、式1で表される化合物(1モル)に対して、1~10当量用いることができ、好ましくは1~3当量である。
【0095】
「アミノ基の保護基」としては、その機能を有するものであれば特に限定されないが、例えばベンジル基、p-メトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、o-ニトロベンジル基、p-ニトロベンジル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、クミル基等のアラルキル基;例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基等の低級アルカノイル基;例えばベンゾイル基;例えばフェニルアセチル基、フェノキシアセチル基等のアリールアルカノイル基;例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基;例えばp-ニトロベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;例えばトリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等の低級アルキルシリル基;例えばテトラヒドロピラニル基;例えばトリメチルシリルエトキシメチル基;例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、tert-ブチルスルホニル基等の低級アルキルスルホニル基等;例えばtert-ブチルスルフィニル基等の低級アルキルスルフィニル基等;例えばベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等のアリールスルホニル基等、例えばフタルイミド基等のイミド基が挙げられ、特にトリフルオロアセチル基、アセチル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、トリメチルシリルエトキシメチル基、又はクミル基が好ましい。
【0096】
光延試薬としては、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート等が用いられる。光延試薬の使用量は、式1で表される化合物(1モル)に対して、通常約1~100モル、好ましくは約1~10モル程度である。
【0097】
ホスフィン試薬としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフリルホスフィン等が用いられる。ホスフィン試薬の使用量は、式1で表される化合物(1モル)に対して、通常約1~100モル、好ましくは約1~10モル程度である。
【0098】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル等)、エーテル類(例、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール等)、非プロトン性極性溶媒(例、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等)、水あるいはそれらの混合物等が挙げられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0℃~溶媒の沸騰する温度であり、好ましくは0℃~100℃である。
【0099】
このようにして得られる式3で表される化合物は、公知の分離精製手段により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0100】
<第2工程>
本工程は、式3で表される化合物を、アンモニア又はその塩と反応させることにより、式4で表される化合物を得る方法である。
【0101】
アンモニア又はその塩としては、その使用量は、式3で表される化合物(1モル)に対して、1~1000当量用いることができ、好ましくは1~100当量である。
【0102】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル等)、エーテル類(例、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール等)、非プロトン性極性溶媒(例、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等)、水あるいはそれらの混合物等が挙げられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0℃~溶媒の沸騰する温度であり、好ましくは0℃~150℃である。
【0103】
このようにして得られる式4で表される化合物は、公知の分離精製手段により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0104】
<第3工程>
本工程は、式4で表される化合物を一酸化炭素雰囲気下、例えば、遷移金属触媒、塩基及びアルコール存在下、式5で表される化合物を得る方法である。
【0105】
本工程に於いて、一酸化炭素の圧力は、通常、1気圧から20気圧であり、好ましくは1気圧から10気圧である。
【0106】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジエチルアミノエタノール、イソブタノール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、3-モルホリノプロパノール、ジエチルアミノプロパノール等が挙げられる。
【0107】
アルコールの使用量は、式4で表される化合物(1モル)対して、通常1~100モル、好ましくは約1~50モル程度である。
【0108】
遷移金属触媒としては、例えば、パラジウム触媒(例、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、パラジウム炭素等)等が用いられ、必要に応じて、リガンド(例、トリフェニルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン等)を添加して用いても良い。遷移金属触媒の使用量は、触媒の種類により異なるが、化合物4(1モル)に対して、通常約0.0001~1モル、好ましくは約0.01~0.5モル程度、リガンドの使用量は、式4で表される化合物(1モル)に対して、通常約0.0001~4モル、好ましくは約0.01~2モル程度である。
【0109】
塩基としては、例えば、有機アミン類(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザピシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン等)、アルカリ金属塩(例、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、金属水素化物(例、水素化カリウム、水素化ナトリウム等)、アルカリ金属アルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等)、アルカリ金属ジシラジド(例;リチウムジシラジド、ナトリウムジシラジド、カリウムジシラジド等)等が挙げられる。なかでも、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属塩、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機アミン類等が好適である。塩基の使用量は、式4で表される化合物(1モル)対して、通常0.1~50モル、好ましくは約1~20モル程度である。
【0110】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル等)、エーテル類(例、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール等)、非プロトン性極性溶媒(例、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルピロリドン等)、水あるいはそれらの混合物等が挙げられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0℃~溶媒の沸騰する温度であり、好ましくは0℃~150℃である。
【0111】
この反応後に、使用したアルコールに対応したエステル体、又は、エステル体と式5で表される化合物との混合物に対して加水分解反応を行うことにより式5で表される化合物に変換処理を行う事ができる。
【0112】
塩基としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等用いることが好ましく、使用量は、式4で表される化合物(1モル)に対して、通常0.5~100モル、好ましくは約1~10モル程度である。
【0113】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミドなどを単一又は混合して用いることができる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0℃~溶媒の沸騰する温度であり、好ましくは0℃~100℃である。
【0114】
このようにして得られる式5で表される化合物は、公知の分離精製手段により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0115】
<第4工程>
本工程は、式5で表される化合物のカルボキシル基に保護基を導入して、式6で表される化合物(式6中Pがカルボキシル基の保護基を表す)を得る方法である。保護の方法としては、通常公知の方法、例えばProtective Groups in Organic Synthesis third edition,T.W.Greene andP.G.M.Wuts,John Wiley&Sons(1999年)に記載の方法、又はそれに準じる方法により行うことができる。
【0116】
「カルボキシル基の保護基」としては、その機能を有するものであれば特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基等の低級アルキル基;例えば2,2,2-トリクロロエチル基等のハロ低級アルキル基;例えばアリル基等の低級アルケニル基;例えばトリメチルシリルエトキシメチル基;例えばベンジル基、p-メトキシベンジル基、p-ニトロベンジル基、ベンズヒドリル基、トリチル基等のアラルキル基等が挙げられ、特にメチル基、エチル基、tert-ブチル基、アリル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、又はトリメチルシリルエトキシメチル基が好ましい。
【0117】
本反応においては、例えばtert-ブチルエステル基、メチルエステル基、エチルエステル基等の保護基を導入することが好ましい。
【0118】
本反応の保護基化剤は、例えば、2-tert-ブチル-1,3-ジイソプロピルイソウレア等が挙げられる。これらの保護基化剤の使用量は、式5で表される化合物(1モル)に対して、通常1~50モル、好ましくは約1~10モル程度である。
【0119】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル等)、エーテル類(例、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール等)、非プロトン性極性溶媒(例、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等)、水あるいはそれらの混合物等が挙げられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0℃~溶媒の沸騰する温度であり、好ましくは0℃~100℃である。
【0120】
このようにして得られる式6で表される化合物は、公知の分離精製手段により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0121】
<第5工程>
本工程は、式6で表される化合物をハロゲン化し、式7で表される化合物(式7中Lがハロゲン原子を表す)を得る方法である。ハロゲン化は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等を用いる方法、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド等を用いる方法により行うことができる。本反応においては、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド等を用いる方法が好ましい。
【0122】
N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド等は式6で表される化合物(1モル)に対して1~10当量用いることができ、好ましくは1~3当量である。
【0123】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル等)、エーテル類(例、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール等)、非プロトン性極性溶媒(例、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等)、水あるいはそれらの混合物等が挙げられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0℃~溶媒の沸騰する温度であり、好ましくは0℃~100℃である。
【0124】
このようにして得られる式7で表される化合物は、公知の分離精製手段により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0125】
<第6工程>
本工程は、式7で表される化合物のアミノ基の保護基(式7中のP)を脱保護して式8で表される化合物を得る方法である。脱保護の方法としては、通常公知の方法、例えばProtective Groups in Organic Synthesis third edition,T.W.Greene andP.G.M.Wuts,John Wiley&Sons(1999年)に記載の方法、又はそれに準じる方法により行うことができる。
【0126】
保護基としてはtert-ブチルオキシカルボニル等が例示される。例えば、保護基としてtert-ブチルオキシカルボニル基を用いた場合、酸性条件下での脱保護が好ましく、酸としては塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、トシル酸等が挙げられる。
【0127】
酸の使用量は、式7で表される化合物(1モル)に対して、好ましくは約1~100当量である。
【0128】
反応に用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、アルコール類(例、メタノール等)、炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、エーテル類(例えば、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなど)、非プロトン性極性溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミドなど)、あるいはそれらの混合物が用いられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0~100℃であり、好ましくは0~50℃である。
【0129】
このようにして得られる式8で表される化合物は、公知の分離精製手段により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0130】
<第7工程>
本工程は、式8で表される化合物のアミノ基とアクリル酸ハライド、又はアクリル酸無水物とのアミド化反応により、式9で表される化合物を得る方法である。
【0131】
アクリル酸ハライド又はアクリル酸無水物を用いる場合、式8で表される化合物(1モル)に対して、アクリル酸ハライド又はアクリル酸無水物を通常0.5~10モル、好ましくは約1~5モル程度である。なお、当該アクリル酸ハライド又はアクリル酸無水物は、市販品、又は公知の方法に準じて製造することができる。
【0132】
また、必要に応じて塩基を添加することができる。塩基としては、例えば、有機アミン類(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、イロプロピルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザピシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン等)、アルカリ金属塩(例、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、金属水素化物(例、水素化カリウム、水素化ナトリウム等)、アルカリ金属アルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等)等が挙げられる。塩基の使用量は、式8で表される化合物(1モル)対して、通常1~100モル、好ましくは約1~10モル程度である。
【0133】
反応に用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、アルコール類(例、メタノール等)炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、エーテル類(例えば、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなど)、非プロトン性極性溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、など)あるいはそれらの混合物が用いられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0℃~溶媒の沸騰する温度であり、好ましくは0℃~100℃である。
【0134】
このようにして得られる式9で表される化合物は、公知の分離精製手段により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0135】
<第8工程>
本工程は、式9で表される化合物を、市販品または、公知の方法によって製造できるアセチレン誘導体と薗頭反応させることにより、式10で表される化合物を得る方法である。
【0136】
アセチレン誘導体としては、その使用量は、式9で表される化合物(1モル)に対して、1~50当量用いることができ、好ましくは1~10当量である。
【0137】
遷移金属触媒としては、例えば、パラジウム触媒(例、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ジパラジウム等)、ニッケル触媒(例、塩化ニッケル等)等が用いられ、必要に応じて、リガンド(例、トリフェニルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン等)を添加し、銅触媒(例、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅)等を共触媒として用いても良い。遷移金属触媒の使用量は、触媒の種類により異なるが、式9で表される化合物(1モル)に対して、通常約0.0001~1モル、好ましくは約0.01~0.5モル程度、リガンドの使用量は、式9で表される化合物(1モル)に対して、通常約0.0001~4モル、好ましくは約0.01~2モル程度、銅触媒の使用量は、式9で表される化合物(1モル)に対して、通常約0.0001~4モル、好ましくは約0.010~2モル程度である。
【0138】
塩基としては、例えば、有機アミン類(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザピシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン等)、アルカリ金属塩(例、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、金属水素化物(例、水素化カリウム、水素化ナトリウム等)、アルカリ金属アルコキシド、(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等)、アルカリ金属ジシラジド(例、リチウムジシラジド、ナトリウムジシラジド、カリウムジシラジド等)等が挙げられる。なかでも、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属塩、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機アミン類等が好適である。塩基の使用量は、式9で表される化合物(1モル)対して、通常0.1~10モル、好ましくは約1~5モル程度である。
【0139】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル等)、エーテル類(例、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール等)、非プロトン性極性溶媒(例、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等)、水あるいはそれらの混合物等が挙げられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0℃~溶媒の沸騰する温度であり、好ましくは0℃~150℃である。
【0140】
このようにして得られる式10で表される化合物は、公知の分離精製手段により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0141】
<第9工程>
本工程は、式10で表される化合物のカルボキシル基の保護基(式10中のP)を脱保護して式11で表される化合物を得る方法である。脱保護の方法としては、通常公知の方法、例えばProtective Groups in Organic Synthesis, T.W.Greene andP.G.M.Wuts,John Wiley&Sons(1981年)に記載の方法、又はそれに準じる方法により行うことができる。
【0142】
保護基としてはtert-ブチルエステル等が例示される。例えば、保護基としてtert-ブチルエステル基を用いた場合、酸性条件下での脱保護が好ましく、酸としては塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、トシル酸等が挙げられる。
【0143】
酸の使用量は、式10で表される化合物(1モル)に対して、好ましくは約1~100当量である。
【0144】
反応に用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、アルコール類(例、メタノール等)、炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、エーテル類(例えば、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなど)、非プロトン性極性溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、など)あるいはそれらの混合物が用いられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0~100℃であり、好ましくは0~50℃である。
【0145】
このようにして得られる式11で表される化合物は、公知の分離精製手段により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0146】
<第10工程>
本工程は、式11で表される化合物のカルボキシル基と、市販品または、公知の方法によって製造できるアミンとのアミド化反応により、式(I)で表される化合物を得る方法である。
【0147】
アミド化の方法は、従来公知の方法によって行うことが可能であり、縮合剤の存在下で反応させる方法、又カルボン酸部分を従来公知の方法により活性化させ反応性誘導体とし、次いで該誘導体とアミンとをアミド化する方法、が例示される(いずれの方法も、「ペプチド合成の基礎と実験」(泉屋信夫他、丸善株式会社、1983年)を参照のこと)。
【0148】
縮合剤としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリスピロリジノホスホニウムホスフェート(PyAOP)、ブロモトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BroP)、クロロトリス(ピロリジン-1-イル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyCroP)、3-(ジエトキシホスホリロキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT)、O-(アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)、4-(5,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリン塩酸塩(DMTMM)などが挙げられ、そのときの添加剤として1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)等が挙げられる。これらの使用量は、式11で表される化合物(1モル)対して、通常1~100モル、好ましくは約1~10モル程度である。
【0149】
また、必要に応じて塩基を添加することができる。塩基としては、例えば、有機アミン類(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザピシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン等)、アルカリ金属塩(例、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、金属水素化物(例、水素化カリウム、水素化ナトリウム等)、アルカリ金属アルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等)等が挙げられる。塩基の使用量は、式11で表される化合物(1モル)対して、通常1~100モル、好ましくは約1~10モル程度である。
【0150】
反応に用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、アルコール類(例、メタノール等)炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、エーテル類(例えば、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなど)、非プロトン性極性溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、など)あるいはそれらの混合物が用いられる。反応時間は0.1~100時間であり、好ましくは0.5~24時間である。反応温度としては0℃~溶媒の沸騰する温度であり、好ましくは0℃~100℃である。
【0151】
このようにして得られる化合物(I)及び(II)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製することができる。
【0152】
上記製造方法では、「式5で表される化合物のカルボキシル基に保護基を導入」(第4工程)から「式11で表される化合物のカルボキシル基と、市販品または、公知の方法によって製造できるアミンとのアミド化反応」(第10工程)を順番に行っているが、この順番を入れ替えることができる。また、「式5で表される化合物のカルボキシル基に保護基を導入」(第4工程)および「式10で表される化合物のカルボキシル基の保護基の脱保護」(第9工程)を省略することができる。
【0153】
具体的には、「式11で表される化合物のカルボキシル基と、市販品または、公知の方法によって製造できるアミンとのアミド化反応」(第10工程)、「式6で表される化合物をハロゲン化」(第5工程)、「式7で表される化合物のアミノ基の保護基の脱保護」(第6工程)、「式8で表される化合物のアミノ基とアクリル酸ハライド、又はアクリル酸無水物とのアミド化反応」(第7工程)、「式9で表される化合物のL3がハロゲン等の脱離基を有する場合、市販品または、公知の方法によって製造できるアセチレン誘導体との薗頭反応」(第8工程)の順序で各工程を経て、式(I)及び(II)で表される化合物へと導くことができる。各工程の条件は前記の条件と同じである。
【0154】
本発明の化合物が、光学異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体等の異性体を有する場合には、特に明記しない限り、いずれの異性体も混合物も本発明の化合物に包含される。例えば、本発明の化合物に光学異性体が存在する場合には、特に明記しない限り、ラセミ体及びラセミ体から分割された光学異性体も本発明の化合物に包含される。
【0155】
本発明の化合物の塩とは、薬学的に許容可能な塩を意味し、例えば塩基付加塩又は酸付加塩を挙げることができる。
【0156】
本発明のピリミジン化合物又はその塩には、そのプロドラッグも含まれる。プロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により本発明の化合物又はその塩に変換する化合物、即ち酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして本発明の化合物又はその塩に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして本発明の化合物又はその塩に変化する化合物をいう。また、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような生理的条件で本発明の化合物又はその塩に変化するものであってもよい。
【0157】
本発明のピリミジン化合物又はその塩は、アモルファスであっても、結晶であってもよく、結晶形が単一であっても多形混合物であっても本発明の化合物又はその塩に包含される。結晶は、公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。本発明の化合物又はその塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、いずれも本発明の化合物又はその塩に包含される。同位元素(例えば、H、14C、35S、125Iなど)などで標識された化合物も、本発明の化合物又はその塩に包含される。
【0158】
本発明の化合物又はその塩は、優れたEGFR阻害活性を有する。したがって、本発明の化合物又はその塩は、EGFR過剰発現、EGFR遺伝子増幅、又はEGFR変異等を有する悪性腫瘍に対し、抗腫瘍剤として有用であり、またマウスの顕著な体重減少が見られなかったことから副作用が少ないという利点を有する。
本明細書において「EGFR」とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物のEGFRを含み、好ましくはヒトEGFRである。ヒトEGFRのNCBI Gene IDは1956である。また、「EGFR」の語にはアイソフォームが含まれる。
【0159】
本発明の化合物又はその塩は、その優れたEGFR阻害活性により、EGFRが関与する疾患の予防または治療のための医薬として有用である。
【0160】
「EGFRが関与する疾患」とは、EGFRの機能を欠失、抑制及び/又は阻害することによって、発症率の低下、症状の寛解、緩和、及び/又は完治する疾患が挙げられる。このような疾患として、例えば、悪性腫瘍等が挙げられるがこれに限定はされない。好ましくは、EGFR過剰発現、EGFR遺伝子増幅、又はEGFR変異を有する悪性腫瘍である。
【0161】
本発明の一実施形態は、本発明の化合物又はその塩を含むEGFRが関与する疾患の治療剤を提供する。また、本発明の一実施形態は、本発明の化合物又はその塩を含むEGFR阻害剤を提供する。また、本発明の一実施形態は、本発明の化合物又はその塩を含むEGFR陽性腫瘍の治療剤を提供する。また、本発明の一実施形態は、EGFRが関与する疾患を治療するための本発明の化合物またはその塩が提供される。また、本発明の一実施形態は、EGFRが関与する疾患を治療するための本発明の化合物またはその塩の使用が提供される。また、本発明の一実施形態は、EGFRが関与する疾患の治療剤を製造するための本発明の化合物またはその塩の使用が提供される。また、本発明の一実施形態は、EGFRが関与する疾患の治療方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物又はその塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。また、本発明の一実施形態は、EGFR陽性腫瘍を治療するための本発明の化合物またはその塩が提供される。また、本発明の一実施形態は、EGFR陽性腫瘍を治療するための本発明の化合物またはその塩の使用が提供される。また、本発明の一実施形態は、EGFR陽性腫瘍の治療剤を製造するための本発明の化合物またはその塩の使用が提供される。また、本発明の一実施形態は、EGFR陽性腫瘍の治療方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物又はその塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0162】
本発明の一形態の化合物又はその塩は、野生型EGFR、及び挿入変異、点変異、または欠失変異などを有する変異型EGFRを阻害する。本発明の一実施形態は、野生型EGFR、及び変異型EGFRに対する阻害活性を有する化合物またはその塩、またはこれを含む医薬もしくは医薬組成物を提供する。本発明の一実施形態は、本発明の化合物又はその塩を含む、野生型EGFR、及び変異型EGFRに対する阻害剤を提供する。また、本発明の一実施形態は、野生型EGFR、及び変異型EGFRに対する阻害方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物又はその塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。また、本発明の一実施形態は、野生型EGFR、及び変異型EGFRに対する阻害剤を製造するための本発明の化合物またはその塩の使用が提供される。また、本発明の一実施形態は、野生型EGFR、及び変異型EGFRに対する阻害剤として使用するための本発明の化合物またはその塩が提供される。また、本発明の一実施形態は、野生型EGFR、及び変異型EGFRを阻害するための本発明の化合物またはその塩の使用が提供される。本発明の別の実施形態において、本発明は、野生型EGFR、及び変異型EGFRが関与する疾患を予防または治療するための、本発明の化合物又はその塩の使用を提供する。
【0163】
ヒト野生型EGFR遺伝子は、例えば配列番号1に示されるものであり、ヒト野生型EGFRタンパク質は、例えば配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる。ヒト野生型EGFR遺伝子の塩基配列情報は、NCBI Reference Sequence:NM_005228、ヒト野生型EGFRタンパク質のアミノ酸配列情報は、NCBI Reference Sequence:NP_005219等により得ることができる。
【0164】
いくつかの実施形態において、本発明のピリミジン化合物又はその塩は、変異型EGFRに対する阻害活性を示す。本明細書において「変異型EGFR」とは、ヒト野生型EGFRのエクソン18領域、エクソン19領域、エクソン20領域、エクソン21領域等に挿入変異、点変異、又は欠失変異等の1つ以上の活性化変異又は耐性獲得変異を有するEGFRである。
【0165】
本明細書において「エクソン18」とは、ヒト野生型EGFRタンパク質(例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質)のアミノ酸配列における688-728の領域を示す。
【0166】
本発明において「エクソン18変異」とは、ヒト野生型EGFRタンパク質(例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質)のエクソン18領域におけるアミノ酸の点変異、又は欠失変異を指す。エクソン18の点変異としては、例えば、エクソン18領域の709番目のグルタミン酸又は719番目のグリシンが任意のアミノ酸に置換した点変異であるE709X又はG719Xが挙げられる。E709Xとしては、例えば、エクソン18領域の709番目のグルタミン酸がリジンに置換した点変異であるE709K、アラニンに置換した点変異であるE709Aが挙げられる。G719Xとしては、例えば、エクソン18領域の719番目のグリシンがアラニンに置換した点変異であるG719A、セリンに置換した点変異であるG719S、システインに置換した点変異であるG719Cが挙げられる。また、エクソン18領域の欠失変異としては、エクソン18領域の一部のアミノ酸の欠失による変異のみならず、当該アミノ酸欠失に加えて1又は複数の任意のアミノ酸が挿入された変異も包含する。エクソン18の欠失変異としては、例えば、エクソン18領域の709番目のグルタミン酸と710番目のスレオニンが欠失後にアスパラギン酸が挿入された変異(Del E709-T710insD)が挙げられる。
【0167】
本明細書において「エクソン19」とは、ヒト野生型EGFRタンパク質(例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質)のアミノ酸配列における729-761の領域を示す。
【0168】
本明細書において「エクソン19変異」とは、ヒト野生型EGFRタンパク質(例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質)のエクソン19領域において1つ以上のアミノ酸を欠失した変異を指す。エクソン19領域の欠失変異としては、エクソン19領域の一部のアミノ酸の欠失による変異のみならず、当該アミノ酸欠失に加えて1又は複数の任意のアミノ酸が挿入された変異も包含する。エクソン19欠失変異としては、例えば、エクソン19領域の746番目のグルタミン酸から750番目のアラニンまでの5アミノ酸が欠失した変異(Del E746-A750(又はd746-750とも称する))、エクソン19領域の747番目のロイシンから753番目のプロリンまでの7アミノ酸が欠失後にセリンが挿入された変異(Del L747―P753insS)、エクソン19領域の747番目のロイシンから751番目のスレオニンまでの5アミノ酸が欠失した変異(Del L747-T751)、エクソン19領域の747番目のロイシンから750番目のアラニンまでの4アミノ酸が欠失後にプロリンが挿入された変異(Del L747―A750insP)等が挙げられる。本発明の好ましい一実施形態において、エクソン19欠失変異は、エクソン19領域の746番目のグルタミン酸から750番目のアラニンの5アミノ酸が欠失した変異(Del E746-A750)である。
【0169】
本明細書において「エクソン20」とは、ヒト野生型EGFRタンパク質(例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質)のアミノ酸配列における762-823の領域を示す。
【0170】
本発明において「エクソン20変異」とは、ヒト野生型EGFRタンパク質(例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質)のエクソン20領域におけるアミノ酸の点変異、挿入変異、欠失変異などを指す。エクソン20変異としては、例えば、A763insFQEA、A767insASV、S768dupSVD、V769insASV、D770insNPG、D770insSVD、D773insNPHなどが挙げられる(Nature medicine,24,p638-646,2018)。本発明の好ましい一実施形態において、エクソン20変異は、V769_D770insASV、D770_N771insNPG、D770_N771insSVD、H773_V774insNPH、及びT790Mから選択される1つ以上の挿入変異又は点変異である。
【0171】
本明細書において「エクソン21」とは、ヒト野生型EGFRタンパク質(例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質)のアミノ酸配列における824-875の領域を示す。
【0172】
本発明において「エクソン21変異」とは、ヒト野生型EGFRタンパク質(例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質)のエクソン21領域のアミノ酸における点変異を指す。エクソン21の点変異としては、例えば、エクソン21領域の1アミノ酸が置換された点変異が挙げられ、好ましくはエクソン21領域の858番目のロイシン又は861番目のロイシンが任意のアミノ酸に置換した点変異であるL858X又はL861Xが挙げられる。L858Xとしては、例えば、エクソン21領域の858番目のロイシンがアルギニンに置換した点変異であるL858Rが挙げられる。L861Xとしては、例えば、エクソン21領域の861番目のロイシンがグルタミンに置換した点変異であるL861Qが挙げられる。本発明の好ましい一実施形態において、エクソン21の点変異は、L858Rである。
【0173】
また、いくつかの実施形態において、あるEGFRアイソフォームにおける変異において、アミノ酸の欠失や挿入によって配列番号2で示されるアミノ酸の位置とは異なる場合であっても、配列番号2で示されるアミノ酸の位置に相当する位置の変異と同様であると解される。そのため、例えば、配列番号2で表されるEGFRにおける790番目のスレオニンは、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるEGFRにおいては、745番目のスレオニンに相当する。そのため、例えば、「T790M」は、配列番号2で表されるEGFRの790番目のスレオニンがメチオニンに変異していることを意味するが、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるEGFRにおいては、745番目のアミノ酸に相当する位置であるため、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるEGFRにおける「T745M」は配列番号2で表されるEGFRにおける「T790M」に相当する。また、例えば、配列番号2で表されるEGFRにおける790番目のスレオニンは、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるEGFRにおいては、523番目のスレオニンに相当する。そのため、例えば、「T790M」は、配列番号2で表されるEGFRの790番目のスレオニンがメチオニンに変異していることを意味するが、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるEGFRにおいては、523番目のアミノ酸に相当する位置であるため、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるEGFRにおける「T523M」は配列番号2で表されるEGFRにおける「T790M」に相当する。なお、あるEGFRアイソフォームのあるアミノ酸が、配列番号2で示されるアミノ酸のどの位置に相当するアミノ酸であるかどうかは、例えば、BLASTのMultiple Alignmentにより確認することができる。
【0174】
配列番号1~6は下記の通りである。
EGFR variant 1
【化9】
【0175】
【化10】
【0176】
EGFR variant 5
【化11】
【0177】
【化12】
【0178】
EGFRvIII (del2-7 EGFR)
【化13】

【0179】
【化14】
【0180】
本発明において、「EGFR陽性腫瘍」とは、EGFRタンパク質又はEGFR遺伝子が検出される腫瘍である。EGFRタンパク質及びEGFR遺伝子には、点変異、挿入変異、又は欠失変異などの変異型EGFRタンパク質及び変異型EGFR遺伝子も含まれる。
【0181】
EGFRタンパク質の検出方法は、例えば、EGFRタンパク質に特異的に結合する抗体を用いたELISA法、ウエスタンブロッティング法、又は免疫染色法など、通常慣用の検出法が挙げられる。EGFRタンパク質に特異的に結合する抗体は、市販品を使用すること、又は通常慣用の方法で作製することが可能である。
【0182】
また、EGFR遺伝子の検出方法は、例えば、ノーザンブロッティング法、サザンブロッティング法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、デジタルPCR法、DNAマイクロアレイ法、in situハイブリダイゼーション法、シークエンス解析法など、通常慣用の検出法が挙げられる。また、市販のEGFR遺伝子変異検出キットであるコバスEGFR変異検出キット(ロシュ・ダイアグノスティックス)等を用いた検出方法も挙げられる。
【0183】
本明細書において、本発明のピリミジン化合物の「有効量」という用語は、対象の生物学的または医学的応答、例えば、酵素やタンパク質活性の減少もしくは阻害を引き起こし、または症状を改善し、状態を緩和し、疾患の進行を遅くもしくは遅延させ、または疾患を予防する、などの、本発明の化合物の量(治療有効量)を指す。
本明細書において、「対象」という用語は、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、限定されないが、ヒト、チンパンジー、類人猿、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモット、ハリネズミ、カンガルー、モグラ、イノシシ、クマ、トラ、ライオンなどが挙げられる。非哺乳動物の例としては、限定されないが、鳥類、魚類、は虫類などが挙げられる。一実施形態において、対象はヒトであり、本明細書で開示される症状、状態、または疾患のための処置を必要とすると診断されたヒトであってもよい。
【0184】
本発明の化合物又はその塩は医薬として用いるにあたっては、必要に応じて薬学的に許容される担体を配合し、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能であり、該形態としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等のいずれでもよく、好ましくは、経口剤が採用される。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
【0185】
本発明の一実施形態は、本発明の化合物又はその塩を有効成分とする経口投与用の抗腫瘍剤を提供する。また、本発明の一実施形態は、腫瘍の予防及び/又は治療方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物又はその塩の有効量を経口投与することを含む方法を提供する。また、本発明の一実施形態は、経口投与用の抗腫瘍剤を製造するための本発明の化合物またはその塩の使用が提供される。また、本発明の一実施形態は、経口投与して腫瘍の予防及び/又は治療に使用するための本発明の化合物またはその塩が提供される。
【0186】
本発明の一形態は、本発明の化合物又はその塩を含む医薬組成物が提供される。本発明の一実施形態の医薬組成物は、本発明の化合物又はその塩、および薬学的に許容される担体を含む。また、本発明の一実施形態は、医薬組成物を製造するための本発明の化合物またはその塩の使用が提供される。本発明の別の一実施形態は、医薬として使用するための本発明の化合物またはその塩が提供される。
【0187】
薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機或いは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、甘味剤、安定化剤等の製剤添加物を用いることもできる。
【0188】
経口用固形製剤を調製する場合は、本発明のピリミジン化合物に賦形剤、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。
【0189】
注射剤を調製する場合は、本発明のピリミジン化合物にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。
【0190】
上記の各投与単位形態中に配合されるべき本発明のピリミジン化合物の量は、これを適用すべき対象の症状、その剤形等により一定ではないが、一般に投与単位形態あたり、経口剤では0.05~1000mg、注射剤では0.01~500mg、坐剤では1~1000mgとするのが好ましい。
また、上記投与形態を有する薬剤の1日あたりの投与量は、対象の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、本発明の化合物として通常成人(体重50kg)1日あたり0.05~5000mg、好ましくは0.1~1000mgとすればよい。
【0191】
本発明の対象となる悪性腫瘍は特に制限はされないが、例えば、脳腫瘍、頭頚部癌、消化器癌(食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(胆嚢・胆管癌等)、膵臓癌、結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌等)等)、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌、中皮腫等)、乳癌、生殖器癌(卵巣癌、子宮癌(子宮頚癌、子宮体癌等)等)、泌尿器癌(腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍等)、造血器腫瘍(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等)、骨・軟部腫瘍、皮膚癌等が挙げられ、好ましくは肺癌、乳癌、胃癌、頭頸部がん、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、胆道癌、又は子宮癌であり、より好ましくは肺癌、乳癌、結腸直腸癌、又は脳腫瘍である。
【0192】
一実施態様において、本発明の対象となる腫瘍は、EGFR過剰発現、EGFR遺伝子増幅、又はEGFR変異を有する悪性腫瘍であり、具体的な悪性腫瘍は、脳腫瘍、頭頚部癌、消化器癌(食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(胆嚢・胆管癌等)、膵臓癌、結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌等)等)、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌、中皮腫等)、乳癌、生殖器癌(卵巣癌、子宮癌(子宮頚癌、子宮体癌等)等)、泌尿器癌(腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍等)、造血器腫瘍(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等)、骨・軟部腫瘍、皮膚癌等が挙げられ、好ましくは肺癌、乳癌、胃癌、頭頸部癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、胆道癌、又は子宮癌であり、より好ましくは肺癌、乳癌、結腸直腸癌、又は脳腫瘍である。
【0193】
一実施態様において、本発明の対象となる腫瘍は、EGFR陽性腫瘍であり、具体的な腫瘍は、脳腫瘍、頭頚部癌、消化器癌(食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(胆嚢・胆管癌等)、膵臓癌、結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌等)等)、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌、中皮腫等)、乳癌、生殖器癌(卵巣癌、子宮癌(子宮頚癌、子宮体癌等)等)、泌尿器癌(腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍等)、造血器腫瘍(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等)、骨・軟部腫瘍、皮膚癌等が挙げられ、好ましくは肺癌、乳癌、胃癌、頭頸部癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、胆道癌、又は子宮癌であり、より好ましくは肺癌、乳癌、結腸直腸癌、又は脳腫瘍である。
【0194】
一実施態様において、腫瘍は脳腫瘍である。本発明のピリミジン化合物は、血液脳関門の通過を必要とする脳の症状の治療に有用であり得る。一実施態様のピリミジン化合物は、脳への送達のための血液脳関門の好ましい通過性、すなわち優れた脳移行性を有する。化合物の脳への移行性の指標としては、脳内の化合物濃度、Kp値(脳対血漿中薬物濃度比)がある。
【0195】
本発明のピリミジン化合物で治療される脳腫瘍は、転移性脳腫瘍及び原発性脳腫瘍を含む。
【0196】
脳腫瘍は特に制限はないが、例えば、転移性脳腫瘍(例えば、肺癌、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、胆道癌、子宮癌等(好ましくは肺癌、乳癌又は胃癌)の脳転移)、毛様細胞性星状細胞腫、びまん性星細胞腫、乏突起膠腫・乏突起星細胞腫、退形成性星細胞腫・退形成性乏突起膠腫、退形成性乏突起星細胞腫、膠芽腫、上衣腫、退形成性上衣腫、神経節膠腫、中枢性神経細胞腫、髄芽腫、胚腫(germinoma)、中枢神経系悪性リンパ腫、髄膜腫、神経鞘腫、GH産生下垂体腺腫、PRL産生下垂体腺腫、ACTH産生下垂体腺腫、非機能性下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、脊索腫、血管芽腫、類上皮腫等が挙げられる。
【実施例
【0197】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0198】
本明細書において、「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。また以下の化合物の実施例において、%は特記しない限り重量パーセントを示す。
【0199】
実施例で用いた各種試薬は、特に記載のない限り市販品を使用した。シリカゲルクロマトグラフィーには、バイオタージ社製バイオタージSNAPカートリッジUltraまたは塩基性シリカゲルクロマトグラフィーにはバイオタージ社製バイオタージSNAPカートリッジIsolute Flash-NH2を用いた。
【0200】
分取用薄層クロマトグラフィーにはメルク社製KieselgelTM60F254,Art.5744または富士フィルム和光純薬株式会社製NH2シリカゲル60F254プレートワコーを用いた。
H-NMRはJEOL社製AL400(400MHz)、Varian社製Mercury(400MHz)またはVarian社製Inova(400MHz)を使用し、テトラメチルシランを標準物質として測定した。またマススペクトルは、Waters社製MicromassZQまたはSQDを使用し、エレクトロスプレイイオン化法(ESI)もしくは大気圧化学イオン化法(APCI)で測定した。マイクロウェーブ反応は、バイオタージ社製Initiatorを用いて行った。
【0201】
略号の意味を以下に示す。
s:シングレット
d:ダブレット
t:トリプレット
q:カルテット
dd:ダブル ダブレット
dt:ダブル トリプレット
td:トリプル ダブレット
tt:トリプル トリプレット
ddd:ダブル ダブル ダブレット
ddt:ダブル ダブル トリプレット
dtd:ダブル トリプル ダブレット
tdd:トリプル ダブル ダブレット
m:マルチプレット
br:ブロード
ATP:アデノシン三リン酸
DMSO-d6:重ジメチルスルホキシド
CDCl:重クロロホルム
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
NMP:N-メチルピロリドン
HATU:O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート
HPMC:ヒプロメロース
PdCl(PPh:ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)
【0202】
<参考例1>
参考例1(1) tert-ブチル(2S,4R)-4-(4-アミノ-5-ヨード-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-2-メチルピロリジン-1-カルボキシラート
tert-ブチル (2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-メチルピロリジン-1-カルボキシラート(19.0g)と4-クロロ-5-ヨード-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(13.1g)をTHF(190mL)に溶解して、0℃に冷却後、トリフェニルホスフィン(37.2g)とジイソプロピルアソジカルボキシラート(28.1mL)を加え、室温に昇温して1時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)にて精製し、対応するカップリング体を得た。得られた化合物はさらに精製することなく次の反応に用いた。
【0203】
耐圧管中に、得られたカップリング体とTHF(114mL)とアンモニア水(114mL)を加え、100℃にて14時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却した後、水(285mL)に注ぎ込み、室温にて5時間撹拌した。析出した固体をろ取し、水で洗浄し、乾燥することで目的物(34.5g)を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.27(s,1H) 7.15(s,1H) 5.55-5.73(m,2H) 5.12-5.25(m,1H) 3.86-4.18(m,2H) 3.43-3.57(m,1H) 2.59-2.69(m,1H) 1.92-2.03(m,1H) 1.48(s,9H) 1.30-1.40(m,3H)ESI-MS m/z 444(MH+)
【0204】
参考例1(2) 4-アミノ-7-((3R,5S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-5-メチルピロリジン-3-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボン酸
耐圧管に、参考例1(1)の化合物(28.0g)、10%パラジウム炭素触媒(720mg)、NMP(84mL)、メタノール(26mL)、トリエチルアミン(17.6mL)を加えた後、一酸化炭素置換して、100℃にて2時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、2M水酸化ナトリウム水溶液(79mL)を加え、80℃にて2時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、セライトろ過し、メタノールで洗浄し、ろ液のメタノールを減圧濃縮した。さらに水を加えた後、水層をtert-ブチルメチルエーテルで洗浄した。水層に1M硫酸水素カリウム水溶液を加えpHを約3に調整し、析出した固体をろ取し、水で洗浄し、乾燥することで目的物(23.4g)を得た。
HNMR(400MHz, DMSO-d6)δ: 8.14(s,1H) 8.08(s,1H) 5.16-4.93(m,1H) 4.07-3.79(m,2H) 3.61-3.45(m,1H) 2.53(m,1H) 2.33-2.02(m,1H) 1.42(s,9H) 1.29(d,J=6.1Hz,3H) ESI-MS m/z 362(MH+)
【0205】
<実施例>
実施例1
実施例1(1)tert-ブチル-4-アミノ-6-ブロモ-7-((3R,5S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-5-メチルピロリジン-3-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキシラート
窒素雰囲気下、参考例1(2)の化合物(15.0g)をクロロホルム(150mL)に溶解し、2-tert-ブチル-1,3-ジイソプロピルイソウレア(25mL)を加え60℃に昇温して2時間撹拌した。さらに2-tert-ブチル-1,3-ジイソプロピルイソウレア(25mL)を加え2時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却した後、減圧濃縮した。得られた残渣にtert-ブチルメチルエーテルを加え、析出した固体をろ取し、tert-ブチルメチルエーテルで洗浄した。さらにろ液を減圧濃縮し、得られた残渣にtert-ブチルメチルエーテルを加え、析出した固体をろ取し、tert-ブチルメチルエーテルで洗浄した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)にて精製し、tert-ブチルエステル体を得た。得られた化合物はさらに精製することなく次のハロゲン化反応に用いた。
【0206】
得られたtert-ブチルエステル体をクロロホルム(140mL)に溶解し、N-ブロモスクシンイミド(11.8g)を加え、室温にて24時間撹拌した。反応混合物に順次クロロホルム、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、クロロホルムで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)にて精製し、目的物(13.8g)を得た。
HNMR(CDCl3)δ: 8.02(s,1H) 5.74-5.13(m,2H) 4.07-3.64(m,2H) 2.43-2.29(m,1H) 2.07-1.97(m,1H) 1.63(s,9H) 1.48(m,12H)
ESI-MS m/z 496,498(MH+)
【0207】
実施例1(2)tert-ブチル-7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-ブロモ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキシラート
実施例1(1)の化合物(11.4g)をTHF(57mL)に溶解し、0℃に冷却した後、4M塩化水素の1,4-ジオキサン溶液(114mL)を加え、0℃にて10時間攪拌した。反応混合物に5M水酸化ナトリウム水溶液(92mL)、アセトニトリル(57mL)、ジイソプロピルエチルアミン(20mL)、塩化アクリル(2.0mL)を加え30分間攪拌した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン)にて精製し、目的物(7.72g)を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.26-8.16(m,1H) 6.62-6.30(m,2H) 5.81-5.64(m,1H) 5.33-5.14(m,1H) 4.81-3.75(m,3H) 3.07-2.86(m,1H) 2.67-2.33(m,1H)
1.69-1.61(m,9H) 1.60-1.51(m,3H)
ESI-MS m/z 450,452(MH+)
【0208】
実施例1(3)tert-ブチル-7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキシラート
実施例1(2)の化合物(7.72g)、アセトニトリル(154mL)、トリエチルアミン(7.2mL)、PdCl(PPh(1.2g)、ヨウ化銅(I)(330mg)に1.0MプロピンのDMF溶液(85.7mL)を加え、窒素置換した後、70℃にて4時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン)にて精製し、目的物(4.06g)を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.29-8.17(m,1H) 6.63-6.30(m,2H) 5.81-5.63(m,1H) 5.42-5.15(m,1H) 4.66-3.81(m,3H) 3.01-2.82(m,1H) 2.65-2.32(m,1H) 2.92-2.13(m,3H) 1.65-1.59(m,9H) 1.57-1.49(m,3H)
ESI-MS m/z 410(MH+)
【0209】
実施例1(4)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボン酸
実施例1(3)の化合物(1.52g)をクロロホルム(5mL)に溶解した後、トリフルオロ酢酸(5mL)を加え、室温にて2時間撹拌し、反応混合物を減圧濃縮した。残渣にクロロホルムを加え、再度減圧濃縮した。残渣を減圧乾燥することによって目的物(1.25g)を得た。
ESI-MS m/z 354(MH+)
【0210】
実施例1(5)7-(R)-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(4)の化合物(100mg)のDMF(1.0mL)溶液に、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミン(89.0mg)、ジイソプロピルエチルアミン(0.25mL)、HATU(215mg)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン)にて精製し、表題化合物(60mg)を得た。
HNMR(DMSO-d6)δ: 8.51(d,J=7.3Hz,1H) 8.16(s,1H) 7.25-7.07(m,3H) 6.74-6.47(m,1H) 6.25-6.08(m,1H) 5.78-5.58(m,1H) 5.41-5.21(m,1H)
5.21-5.06(m,1H) 4.45-4.29(m,1H) 4.24-3.91(m,2H) 2.78-2.58(m,1H) 2.52-2.41(m,1H) 2.23(s,3H) 1.48(d,J=7.1Hz,3H) 1.39(d,J=6.1Hz,3H)
ESI-MS m/z 493(MH+)
【0211】
実施例2 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、(R)-1-フェニルエタン-1-アミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(DMSO-d6)δ: 8.35(d,J=7.8Hz,1H) 8.17-8.13(m,1H) 7.48-7.23(m,5H) 6.76-6.46(m,1H) 6.28-6.06(m,1H) 5.81-5.58(m,1H) 5.43-5.02(m,2H) 4.42-4.28(m,1H) 4.21-3.96(m,2H) 2.74-2.59(m,1H) 2.54-2.41(m,1H) 2.17(s,3H) 1.50(d,J=6.8Hz,3H) 1.42-1.33(m,3H)
ESI-MS m/z 457(MH+)
【0212】
実施例3 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-フェニルプロパン-2-イル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3.5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、2-フェニルプロパン-2-アミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(DMSO-d6)δ: 8.26(s,1H) 8.16-8.08(m,1H) 7.44(dd,J=8.8,1.2Hz,2H) 7.38-7.28(m,2H) 7.21(tt,J=7.3,1.27Hz,1H) 6.76-6.50(m,1H) 6.25-6.10(m,1H) 5.79-5.62(m,1H) 5.45-5.19(m,1H) 4.45-4.30(m,1H) 4.26-4.01(m,2H)
2.79-2.42(m,2H) 2.29-2.22(m,3H) 1.71(s,6H) 1.43-1.36(m,3H)
ESI-MS m/z 471(MH+)
【0213】
実施例4 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルプロピル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、(R)-1-フェニルプロパン-1-アミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(DMSO-d6)δ: 8.35(brd,J=8.0Hz,1H) 8.17-8.11(m,1H) 7.46-7.22(m,5H) 6.74-6.50(m,1H) 6.26-6.08(m,1H) 5.79-5.60(m,1H) 5.40-5.21(m,1H) 4.99-4.87(m,1H) 4.43-4.30(m,1H) 4.23-3.94(m,2H) 2.76-2.42(m,2H) 2.21(s,3H) 1.95-1.74(m,2H) 1.44-1.34(m,3H)
0.91(t,J=7.3Hz,3H)
ESI-MS m/z 471(MH+)
【0214】
実施例5 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-(2-フルオロフェニル)プロパン-2-イル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、2-(2-フルオロフェニル)プロパン-2-アミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl3)δ: 8.28(s,1H) 8.11(d,J=4.4Hz,1H) 8.02(s,1H) 7.47-7.42(m,1H) 7.29-7.23(m,1H) 7.15(t,J=7.7Hz,1H) 7.02(ddd,J=12.5,8.1,1.1Hz,1H) 6.58-6.35(m,2H) 5.79-5.70(m,1H) 5.30-5.19(m,1H) 4.53(t,J=10.1Hz,0.7H) 4.38-4.25(m,1.6H) 3.92(t,J=8.8Hz,0.7H) 2.91-2.78(m,1H) 2.70-2.60(m,0.3H) 2.54-2.43(m,0.7H) 2.28(d,J=7.0Hz,3H) 1.88(dt,J=10.0,5.0Hz,6H) 1.53(t,J=6.2Hz,3H)ESI-MS m/z 489(MH+)
【0215】
実施例6 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-(3-クロロフェニル)エチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、(R)-(+)-1-(3-クロロフェニル)エチルアミン塩酸塩を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl3)δ: 8.22(d,J=5.9Hz,1H) 7.75(d,J=7.0Hz,1H) 7.38(s,1H) 7.35-7.27(m,3H) 6.58-6.33(m,2H) 5.78-5.66(m,1H) 5.29-5.19(m,2H) 4.56(t,J=10.3Hz,0.7H) 4.39-4.20(m,1.6H) 3.89(t,J=8.8Hz,0.7H) 2.94-2.82(m,1H) 2.66-2.58(m,0.3H) 2.46(dt,J=14.5,6.1Hz,0.7H) 2.18(d,J=11.0Hz,3H) 1.60(d,J=7.0Hz,3H) 1.55-1.51(m,3H)
ESI-MS m/z 491,493(MH+)
【0216】
実施例7 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-(2,4-ジフルオロフェニル)エチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、(R)-(+)-1-(2,4-ジフルオロフェニル)エチルアミン塩酸塩を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.20(d,J=5.9Hz,1H) 7.98(d,J=7.7Hz,1H) 7.37-7.31(m,1H) 6.90-6.81(m,2H) 6.58-6.35(m,2H) 5.78-5.65(m,1H) 5.44-5.37(m,1H) 5.30-5.19(m,1H) 4.56(t,J=10.1Hz,0.7H) 4.38-4.23(m,1.6H) 3.88(t,J=8.8Hz,0.7H) 2.94-2.83(m,1H) 2.66-2.57(m,0.3H) 2.51-2.42(m,0.7H) 2.27(d,J=9.2Hz,3H) 1.61(d,J=7.0Hz,3H) 1.56-1.51(m,3H)
ESI-MS m/z 493(MH+)
【0217】
実施例8 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-N-((S)-2,2,2-トリフルオロ-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、(S)-2,2,2-トリフルオロ-1-フェニルエタン-1-アミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.40(d,J=8.8Hz,1H) 8.16(s,1H) 7.44(s,5H) 6.58-6.38(m,2H) 5.92-5.84(m,1H) 5.81-5.69(m,1H) 5.29-5.19(m,1H) 4.55(t,J=10.3Hz,0.7H) 4.41-4.24(m,1.6H) 3.91(t,J=8.6Hz,0.7H) 2.92-2.80(m,1H) 2.70-2.61(m,0.3H) 2.54-2.46(m,0.7H) 2.35(d,J=8.4Hz,3H) 1.54(t,J=7.3Hz,3H)
ESI-MS m/z 511(MH+)
【0218】
実施例9 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-(2-フェニルプロパン-2-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(3)において、1.0MプロピンのDMF溶液に代えて、シクロプロピルアセチレンを用い、実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、2-フェニルプロパン-2-アミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.15(s,1H) 8.00(s,1H) 7.44(d,J=7.7Hz,2H) 7.37(t,J=7.7Hz,2H) 7.32-7.27(m, 1H) 6.66-6.30(m,2H) 5.81-5.69(m,1H) 5.38-5.24(m,1H) 4.48(t,J=9.9Hz,0.7H)
4.42-4.29(m,1.6H) 4.22(t,J=10.4Hz,0.7H)
2.77-2.68(m,1H) 2.67-2.60(m,0.3H) 2.59-2.52(m,0.7H) 1.83(s,6H) 1.60-1.52(m,4H) 1.08-1.01(m,2H) 0.92-0.88(m,2H)
ESI-MS m/z 497(MH+)
【0219】
実施例10 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-(2,3-ジフルオロフェニル)エチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(3)において、1.0MプロピンのDMF溶液に代えて、シクロプロピルアセチレンを用い、実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、(R)-(+)-1-(2,3-ジフルオロフェニル)エチルアミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.17(d,J=4.0Hz,1H) 8.04(d,J=8.1Hz,1H) 7.15-7.05(m,3H) 6.58-6.36(m,2H)5.80-5.68(m,1H) 5.49-5.42(m,1H) 5.34-5.24(m,1H) 4.52(t,J=10.1Hz,0.7H) 4.37-4.23(m,1.6H) 3.92(t,J=8.8Hz,0.7H) 2.86-2.76(m,1H) 2.69-2.63(m,0.3H) 2.52-2.46(m,0.7H) 1.73-1.63(m,4H) 1.55(t,J=5.3Hz,3H) 1.14-1.07(m,2H) 1.01-0.92(m,2H)
ESI-MS m/z 519(MH+)
【0220】
実施例11
実施例11(1) tert-ブチル(2S,4R)-4-(4-アミノ-6-ブロモ-5-(((R)-1-フェニルエチル)カルバモイル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-2-メチルピロリジン-1-カルボキシラート
参考例1(2)の化合物(1.00g)、(R)-(+)-1-フェニルエチルアミン(0.503g)、ジイソプロピルエチルアミン(1.79g)、N,N-ジメチルホルムアミド(10mL)を加え、続いてHATU(1.58g)を加えて室温にて終夜攪拌した。反応混合物に酢酸エチル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン)にて精製し、アミド体(1.53g)を得た。得られた化合物はさらに精製することなく次の反応に用いた。
アミド体(1.53g)にクロロホルム(15mL)を加え、0℃に冷却した後、N-ブロモスクシンイミド(0.88g)を加え、0℃にて1時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)にて精製し、目的物(1.39g)を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.21(s,1H) 7.42-7.28(m,5H) 6.97(d,J=7.3Hz,1H) 5.36-5.29(m,1H) 5.20-5.07(m,1H) 4.30(t,J=10.3Hz,1H) 4.04-3.72(m,2H) 3.00-2.86(m,1H) 2.38(dt,J=14.3,6.0Hz,1H) 1.63(d,J=7.0Hz,3H) 1.53-1.43(m,12H)
ESI-MS m/z 543,545(MH+)
【0221】
実施例11(2) 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-ブロモ-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例11(1)の化合物(600mg)にクロロホルム(3mL)を加え、0℃に冷却した後、トリフルオロ酢酸(4.44g)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣にアセトニトリル(5mL)を加えて再度減圧濃縮し、アミン体を得た。得られた化合物はさらに精製することなく次の反応に用いた。
得られたアミン体にアセトニトリル(3mL)を加え、0℃に冷却した後、塩化アクリル(99.9mg)、ジイソプロピルエチルアミン(713mg)を加え、0℃にて1時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール)にて精製し、目的物(281mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.20(d,J=7.3Hz,1H) 7.42-7.36(m,4H) 7.32-7.28(m,1H) 7.00-6.94(m,1H)
6.57-6.33(m,2H) 5.76-5.66(m,1H) 5.36-5.29(m, 1H) 5.14-5.08(m,1H) 4,71(t,J=9.9Hz,0.7H) 4.42-4.23(m,1.6H) 3.83(t,J=8.6Hz,0.7H) 3.03-2.92(m,1H) 2.60-2.57(m,0.3H) 2.44-2.40(m, 0.7H) 1.64(d,J=6.6Hz,3H) 1.56(dd,J=11.7,6.2Hz,3H)
ESI-MS m/z 497,499(MH+)
【0222】
実施例11(3) 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例11(2)の化合物(65mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(9.2mg)、ヨウ化銅(I)(5.0mg)、シクロプロピルアセチレン(13.0mg)、トリエチルアミン(39.7mg)、N,N-ジメチルホルムアミド(1.3mL)を加え、系内を窒素置換した後、70℃にて2.5時間攪拌した。反応混合物に酢酸エチル、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール)にて精製し、目的物(50mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.22(d,J=5.1Hz,1H) 7.82(d,J=7.3Hz,1H) 7.43-7.35(m,4H) 7.30(t,J=6.8Hz,1H) 6.58-6.34(m,2H) 5.77-5.66(m,1H) 5.35-5.20(m,2H) 4.54(t,J=10.1Hz,0.7H) 4.35-4.25(m,1.6H) 3.88(t,J=8.8Hz,0.7H) 2.90-2.78(m,1H) 2.65-2.56(m,0.3H) 2.49-2.40(m,0.7H) 1.63(d,J=7.0Hz,3H) 1.56-1.45(m,4H) 1.03-0.91(m,2H) 0.84-0.69(m,2H)
ESI-MS m/z 483(MH+)
【0223】
実施例12 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(3,3-ジメチルブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例11(3)において、シクロプロピルアセチレンに代えて、3,3-ジメチル-1-ブチンを用いたこと以外は実施例11と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.22(d,J=5.9Hz,1H) 7.75(d,J=7.7Hz,1H) 7.38(dt,J=15.5,7.1Hz,4H)7.31-7.25(m,1H) 6.57-6.34(m,2H) 5.77-5.65(m,1H) 5.44-5.35(m,1H) 5.33-5.15(m,1H) 4.63(t,J=10.1Hz,0.7H) 4.40-4.20(m,1.6H) 3.89(t,J=8.8Hz,0.7H) 2.90-2.76(m,1H) 2.65-2.55(m,0.3H) 2.49-2.40(m,0.7H) 1.85(s,1H) 1.64(d,J=7.0Hz,3H) 1.55(d,J=5.9Hz,3H) 1.26(s,9H)
ESI-MS m/z 499(MH+)
【0224】
実施例13 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(3-メトキシ-3-メチルブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例11(3)において、シクロプロピルアセチレンに代えて、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチンを用いたこと以外は実施例11と同様にして、表題化合物を得た。HNMR(CDCl)δ: 8.17(s,1H) 7.61(d,J=7.7Hz,1H) 7.43-7.35(m,4H) 7.30(d,J=7.0Hz,1H) 6.57-6.33(m,2H) 5.81-5.68(m,1H) 5.43-5.33(m,1H) 5.29-5.12(m,1H) 4.59(t,J=10.1Hz,0.7H) 4.38-4.22(m,1.6H) 3.92(t,J=8.6Hz,0.7H) 3.30(s,3H) 2.86-2.72(m,1H) 2.70-2.60(m,1.3H) 2.52-2.44(m,0.7H) 1.64(d,J=7.0Hz,3H) 1.55(t,J=5.5Hz,3H) 1.46(d,J=2.2Hz,6H)
ESI-MS m/z 515(MH+)
【0225】
実施例14 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(ブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例11(3)において、シクロプロピルアセチレンに代えて、1-トリメチルシリル-1-ブチン、およびフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムを用いたこと以外は実施例11と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.26-8.25(m,1H) 7.79(d,J=7.3Hz,1H) 7.42-7.36(m,4H) 7.32-7.30(m,1H)
6.57-6.37(m,2H) 5.76-5.66(m,1H) 5.33-5.20(m,2H) 4.57(t,J=10.3Hz,0.7H) 4.36-4.22(m,1.6H) 3.88(t,J=8.8Hz,0.7H) 2.92-2.81(m,1H) 2.65-2.57(m,0.3H) 2.48-2.38(m,2.7H) 1.63(d,J=7.0Hz,3H) 1.54-1.51(m,3H) 1.17-1.12(m,3H)
ESI-MS m/z 471(MH+)
【0226】
実施例15 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-(2-フルオロフェニル)プロパン-2-イル)-6-(3-メチルブチ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例11(1)において、(R)-(+)-1-フェニルエチルアミンに代えて、2-(2-フルオロフェニル)プロパン-2-アミンを用い、実施例11(3)において、シクロプロピルアセチレンに代えて、3-メチル-1-ブチンを用いたこと以外は実施例11と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 7.92(s,1H) 7.44(t,J=7.9Hz,1H) 7.30-7.23(m,1H) 7.14(t,J=7.5Hz,1H) 7.02(dd,J=12.6,8.2Hz,1H) 6.58-6.35(m,2H) 5.80-5.69(m,1H) 5.33-5.16(m,1H) 4.58(t,J=9.9Hz,0.7H) 4.38-4.23(m,1.6H) 3.91(t,J=8.4Hz,0.7H) 3.03-2.93(m,1H) 2.89-2.75(m,1H) 2.69-2.60(m,0.3H) 2.53-2.43(m,0.7H) 1.88(s,6H) 1.55(d,J=5.1Hz,3H) 1.36(d,J=6.6Hz,6H)
ESI-MS m/z 517(MH+)
【0227】
実施例16
実施例16(1)tert-ブチル (2R,4S)-4-(ベンジルオキシ)-2-((トシロキシ)メチル)ピロリジン-1-カルボキシラート
tert-ブチル (2R,4S)-4-(ベンジルオキシ)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシラート(2.0g)を塩化メチレン(20mL)に溶解して、0℃に冷却後、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(2.2g)と塩化トシラート(1.9g)を加え、室温に昇温して4時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)にて精製し、目的物(4.32g)を得た。HNMR(CDCl)δ: 7.78(d,J=8.1Hz,2H),7.42-7.29(m,7H),4.57-4.41(m,2H),4.39-3.96(m,4H),3.61-3.20(m,2H),2.46(s,3H),2.27-2.02(m,2H),1.48-1.31(m,9H)
ESI-MS m/z 462(MH
【0228】
実施例16(2)tert-ブチル (2S,4S)-4-(ベンジルオキシ)-2-エチルピロリジン-1-カルボキシラート
窒素雰囲気下、ヨウ化銅(2.04g)をジエチルエーテル(12mL)に懸濁させ、0℃に冷却後、1.04Mメチルリチウムのジエチルエーテル溶液(0.36mL)を加え、0℃にて30分間攪拌した。ついで、実施例16(1)の化合物(1.98g)の塩化メチレン(4.0mL)溶液を加え、室温に昇温して1時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)にて精製し、目的物(707mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ 7.42-7.25(m,5H),4.66-4.40(m,2H),4.17-4.03(m,1H),4.00-3.26(m,3H),2.24-2.09(m,1H),1.96-1.71(m,2H),1.48(s,9H),1.45- 1.31(m,1H),0.86(t,J=7.4Hz,3H)
ESI-MS m/z 306(MH
【0229】
実施例16(3)tert-ブチル (2S,4S)-2-エチル-4-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキシラート
実施例16(2)の化合物(1.06g)、10%水酸化パラジウム炭素触媒(160mg)をエタノール(11mL)とTHF(11mL)に懸濁させた後、水素置換して、室温にて20時間攪拌した。反応混合物をセライト濾過して、エタノールで洗浄して、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)にて精製し、目的物(709mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ 4.46-4.36(m,1H),4.02-3.81(m,1H),3.71-3.35(m,2H),2.15-1.99(m,1H),1.95-1.72(m,2H),1.49(s,9H),1.46-1.35(m,1H),0.86(t,J=7.5Hz,3H)
ESI-MS m/z 216(MH
【0230】
実施例16(4)tert-ブチル (2S,4R)-4-(4-クロロ-5-ヨード-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-2-エチルピロリジン-1-カルボキシラート
実施例16(3)の化合物(709mg)と4-クロロ-5-ヨード-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(1.11g)をTHF(7.1mL)に溶解して、0℃に冷却後、トリフェニルホスフィン(1.3g)とジイソプロピルアゾジカルボキシラート(1.00mL)を加え、室温に昇温して1時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)にて精製し、対応するカップリング体を得た。得られた化合物はさらに精製することなく次の反応に用いた。耐圧管中に、得られたカップリング体とTHF(5.4mL)とアンモニア水(5.4mL)を加え、100℃にて14時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却した後、水(12.8mL)に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン)にて精製し、目的物(797mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ 8.29(s,1H),7.14(s,1H),5.67(br s,2H),5.32-5.09(m,1H),4.24-4.08(m,1H),3.95-3.79(m,1H),3.46(dd,J=9.3,11.0Hz,1H),2.70-2.55(m,1H),2.06-1.95(m,1H),1.59-1.51(m,2H),1.49(s,9H),0.91(t,J=7.5Hz,3H)ESI-MS m/z 458(MH
【0231】
実施例16(5)tert-ブチル (2S,4R)-4-(4-アミノ-6-ブロモ-5-(((R)-1-フェニルエチル)カルバモイル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-2-エチルピロリジン-1-カルボキシラート
実施例16(4)の化合物(797mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(25mg)、(R)-(+)-1-フェニルエチルアミン(0.55mL)をDMF(8.0mL)に懸濁させた後、一酸化炭素置換して、80℃にて2時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン)にて精製し、対応するアミド体を得た。得られた化合物はさらに精製することなく次の反応に用いた。得られたアミド体をアセトニトリル(8.2mL)に溶解して、-10℃に冷却後、N-ブロモスクシンイミド(457mg)のアセトニトリル(8.2mL)溶液をゆっくりと滴下して、反応混合物に30分間攪拌した。反応混合物に亜硫酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン)にて精製し、目的物(650mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ 8.23(s,1H),7.49-7.29(m,5H),6.98(d,J=7.4Hz,1H),5.41-5.28(m,1H),5.24-5.04(m,1H),4.38-4.22(m,1H),4.07-3.68(m,1H),3.19-2.83(m,1H),2.43-2.29(m,1H),2.25-1.67(m,3H),1.66(d,J=6.9Hz,3H),1.51(s,9H),0.98(t,J=7.4Hz,3H)
ESI-MS m/z 557,559(MH
【0232】
実施例16(6)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-エチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-ブロモ-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例16(5)の化合物(650mg)にアセトニトリル(9.7mL)を加え、0℃に冷却した後、ヨウ化ナトリウム(1.05g)と塩化トリメチルシリル(0.89mL)を加え、0℃にて1時間攪拌した。反応混合物に順次、エタノール(9.7mL)、イロプロピルエチルアミン(2.0mL)とアクリル酸無水物(0.16mL)を加え、0℃にて30分間攪拌した。反応混合物にアンモニア水と水を加え、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン)にて精製し、目的物(256mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ 8.27-8.16(m,1H),7.47-7.29(m,5H),6.98(d,J=7.3Hz,1H),6.61-6.29(m,2H),5.84-5.63(m,1H),5.43-5.26(m,1H),5.22-5.01(m,1H),4.80-3.82(m,3H),3.23-2.92(m,1H),2.58-2.30(m,1H),2.22-1.79(m,2H),1.66(d,J=7.0Hz,3H),1.07-0.96(m,3H)
ESI-MS m/z 511,513(MH
【0233】
実施例16(7)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-エチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例16(6)の化合物(120mg)、アセトニトリル(1.2mL)、トリエチルアミン(0.10mL)、PdCl(PPh(8.2mg)、ヨウ化銅(I)(0.4mg)に1.0MプロピンのDMF溶液(0.70mL)を加え、窒素置換した後、60℃にて2時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール)にて精製し、目的物(102mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.26(s,1H),7.79(br d,J=7.0Hz,1H),7.46-7.30(m,5H),6.58-6.31(m,2H),5.80-5.65(m,1H),5.33-5.15(m,2H),4.59-3.85(m,3H),3.03-2.33(m,2H),2.25-1.70(m,5H),1.65(d,J=6.8Hz,6H),1.09-0.91(m,3H)
ESI-MS m/z 471(MH
【0234】
実施例17 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-エチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例16(7)において、1.0MプロピンのDMF溶液に代えて、シクロプロピルアセチレンを用いたこと以外は実施例16と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.31-8.16(m,1H),7.84(d,J=7.4Hz,1H),7.46-7.30(m,5H),6.64-6.32(m,2H),5.82-5.67(m,1H),5.39-5.17(m,2H),4.67-3.81(m,3H),3.02-2.80(m,1H),2.62-1.71(m,3H),1.65(d,J=6.9Hz,3H),1.58-1.47(m,1H),1.06-0.92(m,5H),0.85-0.70(m,2H)
ESI-MS m/z 497(MH
【0235】
実施例18 7-((3R,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例16(4)において、実施例16(3)の化合物に代えて、tert-ブチル (2R,4S)-4-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシラートを用い、実施例16(7)において、1.0MプロピンのDMF溶液に代えて、シクロプロピルアセチレンを用いたこと以外は実施例16と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.29-8.22(m,1H),7.86-7.80(m,1H),7.36-7.44(m,4H),7.34-7.28(m,1H),6.48-6.37(m,2H),5.78-5.69(m,1H),5.29-5.15(m,2H),4.55-4.30(m,2H),3.96-3.65(m,3H),3.42(s,3H),3.18-3.06(m,0.3H),2.90-2.80(m,0.3H),2.64-2.58(m,0.3H),2.47-2.35(m,0.7H),1.64(d,3H,J=6.9Hz),1.58-1.47(m,1H),1.04-0.94(m,2H),0.87-0.69(m,2H)
ESI-MS m/z 513(MH
【0236】
実施例19 7-((3R,5R)-1-アクリロイル-5-(エトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例16(4)において、実施例16(3)の化合物に代えて、tert-ブチル (2R,4S)-2-(エトキシメチル)-4-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドを用い、実施例16(7)において、1.0MプロピンのDMF溶液に代えて、シクロプロピルアセチレンを用いたこと以外は実施例16と同様にして、表題化合物を得た。HNMR(CDCl)δ: 8.28-8.18(m,1H),7.84(br d,J=7.0Hz,1H),7.47-7.29(m,5H),6.82-6.35(m,2H),5.79-5.68(m,1H),5.40-5.14(m,2H),4.63-3.53(m,7H),3.20-2.79(m,1H),2.69-2.40(m,1H),1.67-1.63(m,3H),1.59-1.47(m,1H),1.22(t,J=7.0Hz,3H),1.05-0.92(m,2H),0.87-0.72(m,2H)
ESI-MS m/z 527(MH
【0237】
比較例1 4-アミノ-N-(4-(メトキシメチル)フェニル)-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
国際公開第2017/146116号の実施例95に記載の方法により、表題化合物を得た。
ESI-MS m/z 390(MH+)
【0238】
比較例2 1-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2,3-ジメチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド
国際公開第2017/038838号の実施例79に記載の方法により、表題化合物を得た。
ESI-MS m/z 505(MH+)
【0239】
比較例3 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(シクロヘキシルメチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、シクロヘキシルメタンアミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(DMSO-d6)δ:8.68-8.31(m,1H) 8.20-8.10(m,1H) 8.09-7.97(m,1H) 7.59-7.20(m,1H) 6.74-6.49(m,1H) 6.25-6.09(m,1H) 5.78-5.60(m,1H) 5.40-5.20(m,1H) 4.44-4.29(m,1H) 4.23-3.92(m,2H) 3.25-3.12(m,2H) 2.76-2.40(m,2H) 2.25(s,3H) 1.81-1.45(m,5H) 1.43-1.34(m,3H) 1.30-0.90(m,6H)
ESI-MS m/z 449(MH+)
【0240】
比較例4 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-メチルベンジル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、o-トリルメタンアミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(DMSO-d6)δ:8.37-8.27(m,1H) 8.19-8.09(m,1H) 7.39-7.30(m,1H) 7.26-7.11(m,4H) 6.68-6.48(m,1H) 6.24-6.07(m,1H) 5.80-5.60(m,1H) 5.36-5.17(m,1H) 4.52(d,J=5.7Hz,2H) 4.42-4.28(m,1H) 4.22-3.92(m,2H) 2.73-2.42(m,2H) 2.33(s,3H) 2.02(s,3H) 1.43-1.32(m,3H)
ESI-MS m/z 457(MH+)
【0241】
比較例5 7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-メチル-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
実施例1(5)において、(R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)エタン-1-アミンに代えて、(R)-N-メチル-1-フェニルエタン-1-アミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表題化合物を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.23(d,J=5.9Hz,1H) 7.50-7.28(m,4H) 7.09-6.88(m,1H) 6.57-6.34(m,2H)
5.79-5.64(m,1H) 5.22(t,J=9.3Hz,1H) 4.48(t,J=9.7Hz,0.6H) 4.39-4.20(m,1.9H) 3.90(t,J=8.6Hz,0.5H) 2.85(s,4H) 2.66-2.63(m,0.4H) 2.51-2.44(m,0.6H) 2.07(s,2H) 1.66(d,J=4.8Hz,3H) 1.52(d,J=5.9Hz,3H)
ESI-MS m/z 471(MH+)
【0242】
比較例6
比較例6(1) tert-ブチル(2S,4R)-4-(4-アミノ-5-(((R)-1-フェニルエチル)カルバモイル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-2-メチルピロリジン-1-カルボキシラート
実施例11(1)(230mg)、アセトニトリル(4.6mL)、トリエチルアミン(0.29mL)、PdCl(PPh(5.9mg)、ヨウ化銅(I)(1.6mg)に1.0MプロピンのDMF溶液(2.1mL)を加え、窒素置換した後、70℃にて1時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)にて精製し、目的物(193mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.23(s,1H) 7.79(d,J=6.8Hz,1H)7.46-7.27(m,5H) 5.40-5.17(m,2H) 4.28-3.64(m,3H) 2.85-2.68(m,1H) 2.46-2.36(m,1H)
2.15-1.97(m,3H) 1.62(d,J=6.8Hz,3H) 1.56-1.32(m,12H)
ESI-MS m/z 503(MH+)
【0243】
比較例6(2)4-アミノ-7-((3R,5S)-5-メチルピロリジン-3-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド塩酸塩
比較例6(1)(530mg)に4M塩酸の1,4-ジオキサン溶液(5mL)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、目的物(420mg)を得た。ESI-MS m/z 403(MH+)
【0244】
比較例6(3) 4-アミノ-7-((3R,5S)-1-((E)-ブツ-2-エノイル)-5-メチルピロリジン-3-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
比較例6(2)(18mg)にアセトニトリル(0.5mL)を加え、0℃に冷却した後、塩化アクリル(0.004mL)、ジイソプロピルエチルアミン(0.036mL)を加え、0℃にて1時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、逆相分取HPLC(水:アセトリトリル(0.1%ギ酸))にて精製し、目的物(8.7mg)を得た。
HNMR(CDCl)δ: 8.31(s,1H) 8.14(d,J=6.2Hz,1H)7.77(d,J=7.0Hz,1H) 7.39-7.36(m,4H) 7.33-7.31(m,1H) 7.03-6.90(m,1H) 6.06(dd,J=14.3Hz,1H) 5.28-5.17(m,2H) 4.48(t,J=10.1Hz,1H) 4.35-4.20(m,2H) 3.88(t,8.8Hz,1H) 2.84-2.76(m,1H) 2.64-2.40(m,1H) 2.05(d,J=10.6Hz,3H) 1.92(d,J=6.6Hz,1H) 1.85(d,J=7.0Hz,2H) 1.62(d,J=7.0Hz,3H) 1.55(dd,J=9.0,5.7Hz,3H)
ESI-MS m/z 471(MH+)
【0245】
以下に、上記実施例および比較例で合成した化合物を示す。
【0246】
【表1】
【0247】
【表2】
【0248】
試験例1 野生型及び変異型EGFRに対するリン酸化活性阻害作用(in vitro)の測定
野生型及び変異型EGFRに対する化合物のin vitroでの阻害活性測定はカルナバイオサイエンス株式会社に委託して実施した(Kinase Profiling Book、https://www.carnabio.com/japanese/product/search.cgi?mode=profiling)。
【0249】
具体的には、まず、本発明の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)で段階希釈した。次に、キナーゼ反応用緩衝液(20mM HEPES(pH 7.5)、1mM ジチオトレイトール、0.01% Triton X-100)中にEGFR蛋白質、基質ペプチド(Srctide、終濃度は1μM)、塩化マグネシウム(終濃度は5mM)、塩化マンガン(終濃度は1mM)、ATP(終濃度は各EGFRのKm付近)、及び本発明の化合物のDMSO溶液(DMSOの終濃度は1%)を加えて室温で1時間インキュベーションしキナーゼ反応を行った。そこへTermination Bufferを加え、キナーゼ反応を停止させた。最後に、LabChipTM EZ Reader II(パーキンエルマー社)を用いて、リン酸化されなかった基質ペプチド(S)とリン酸化されたペプチド(P)とをマイクロ流路キャピラリー電気泳動によって分離・検出した。SとPそれぞれのピークの高さからリン酸化反応量を求め、リン酸化反応を50%抑制することのできる化合物濃度をIC50値(nM)と定義し、以下の表に示した。
【0250】
【表3】
【0251】
以上の結果より、本発明の化合物は、野生型及び変異型EGFRに対して、優れた阻害活性を有することが明らかとなった。
【0252】
試験例2 EGFR過剰発現細胞株及びエクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株に対する増殖阻害活性の測定
EGFR過剰発現細胞株及びエクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株に対する増殖阻害活性は、EGFR過剰発現ヒト乳癌細胞株であるMDA-MB-468細胞(ATCC)、L858R及びT790M変異型EGFR陽性ヒト肺癌細胞であるNCI-H1975細胞(ATCC)、ヒト正常乳腺細胞であるMCF10A細胞に対してEGFR遺伝子(WT、D769_N770insASV変異型、D770_N771insSVD変異型、H773_V774insNPH変異型)を導入した細胞であるMCF10A_EGFR細胞、MCF10A_EGFR/V769_D770insASV細胞、MCF10A_EGFR/D770_N771insSVD細胞、MCF10A_EGFR/H773_V774insNPH細胞(公立大学法人福島県立医科大学)を用いて評価した。
【0253】
MDA-MB-468細胞は、非働化した10%ウシ胎児血清を含むLeibovitz’s L-15培地中に懸濁させた。NCI-H1975細胞は、非働化した10%ウシ胎児血清を含むRPMI-1640培地中に懸濁させた。MCF10A_EGFR細胞、MCF10A_EGFR/V769_D770insASV細胞、MCF10A_EGFR/D770_N771insSVD細胞、MCF10A_EGFR/H773_V774insNPH細胞は、終濃度が10μg/mL insulin、500ng/mL hydrocortisone、5μmol/L forskolin、及び非働化した5%ウマ血清を含むDMEM/Ham’s F-12培地(L-グルタミン、フェノールレッド、HEPES、ピルビン酸ナトリウム含有)で懸濁させた。細胞懸濁液を96ウェル平底プレートの各ウェルに1ウェルあたりの細胞数が500個になるよう播種し、MDA-MB-468細胞は炭酸ガス不含の培養器にて、その他の細胞は5%炭酸ガス含有の培養器にて、37℃で1日間培養した。本発明化合物について、DMSOにて1mMとなるよう調製後、培地にて1/200に希釈し5μM溶液を調製した。その後、本発明の化合物のDMSO溶液を細胞の懸濁に用いた培地で希釈し、被験化合物の最高濃度の終濃度が1000nMになるように加え、MDA-MB-468細胞は炭酸ガス不含の培養器にて、その他の細胞は5%炭酸ガス含有の培養器にて、37℃でさらに3日間培養した。
【0254】
培養開始時(day0)及び培養後(day3)の細胞数の計測はCellTiter-Glo(登録商標)2.0 Reagent(プロメガ)を用いて、メーカーの推奨するプロトコールに基づき行った。以下の式より増殖阻害率を算出し、50%阻害する被験化合物の濃度(GI50(nM))を求めた。結果を表4に示す。
【0255】
1)Tday3≧Cday0の場合
増殖率(%)=(Tday3-Cday0)/(Cday3-Cday0)×100
T:被験化合物を添加したウェルの発光強度
C:被験化合物を添加しなかったウェルの発光強度
day0:被験化合物を添加する日
day3:評価日
【0256】
2)Tday3<Cday0の場合
増殖率(%)=(Tday3-Cday0)/(Cday0)×100
T:被験化合物を添加したウェルの発光強度
C:被験化合物を添加しなかったウェルの発光強度
day0:被験化合物を添加する日
day3:評価日
【0257】
【表4】
【0258】
以上の結果より、本発明の化合物群は、野生型EGFR過剰発現株であるMDA-MB-468細胞、野生型EGFRを遺伝子導入し発現させたMCF10A_EGFR細胞、L858R及びT790M変異型EGFR陽性細胞であるNCI-H1975細胞、エクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株(MCF10A_EGFR/V769_D770insASV細胞、MCF10A_EGFR/D770_N771insSVD細胞、MCF10A_EGFR/H773_V774insNPH細胞)においても優れた細胞増殖抑制活性を有することが明らかとなった。
【0259】
試験例3 エクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株に対する増殖阻害活性の測定
エクソン20挿入変異型EGFRに対する増殖阻害活性は、NCI-H1975細胞を用いて、遺伝子改変によりD770_N771insSVD変異型EGFRを発現させ、かつ内在性EGFR(T790M/L858R)をノックアウトしたH1975-EGFRinsSVD細胞、及びV769_D770insASV変異型EGFR陽性ヒト肺癌患者由来腫瘍であるLXF 2478細胞(Charles river)を用いて評価した。
【0260】
H1975-EGFRinsSVD細胞は、NCI-H1975細胞にD770_N771insSVD(insSVD)をコードしたPB-CMV-MCS-EF1-RFP+PuroベクターをSuper PiggyBacTransposase発現ベクターと共にAmaxa(登録商標) Cell Line Nucleofector(登録商標) Kit Rによる電気穿孔法により導入した後ピューロマイシン(SIGMA)にて選択した後、XTN(登録商標) TALENs Site-Specific Nucleases(Transposagen)をAmaxa(登録商標) Cell
Line Nucleofector(登録商標) Kit Rによる電気穿孔法により導入し、内在性EGFR(T790M/L858R)がノックアウトされた細胞をシーケンスにより選択した。
【0261】
細胞増殖抑制効果の評価に際し、それぞれの細胞をRPMI-1640培地中に懸濁させた。細胞懸濁液を96ウェル平底プレートの各ウェルに1ウェルあたりの細胞数が3,000個になるよう播種し、5%炭酸ガス含有の培養器中37℃で1日培養した。本発明化合物及び比較例化合物について、DMSOにて1mMとなるよう溶解後、被験化合物の最高濃度の終濃度が1000nM、公比が3となるようTecan D300eデジタルディスペンサー(Tecan)を用いて添加し、5%炭酸ガス含有の培養器中37℃で3日培養した。培養開始時(day0)及び培養後(day3)の細胞数の計測はCellTiter-Glo(登録商標)2.0 Reagent(プロメガ)を用いて、メーカーの推奨するプロトコールに基づき行った。以下の式より増殖阻害率を算出し、50%阻害する被験化合物の濃度(GI50(nM))を求めた。結果を表5に示す。
【0262】
1)Tday3≧Cday0の場合
増殖率(%)=(Tday3-Cday0)/(Cday3-Cday0)×100
T:被験化合物を添加したウェルの発光強度
C:被験化合物を添加しなかったウェルの発光強度
day0:被験化合物を添加する日
day3:評価日
【0263】
2)Tday3<Cday0の場合
増殖率(%)=(Tday3-Cday0)/(Cday0)×100
T:被験化合物を添加したウェルの発光強度
C:被験化合物を添加しなかったウェルの発光強度
day0:被験化合物を添加する日
day3:評価日。
【0264】
【表5】
【0265】
以上の結果より、本発明の化合物群は、エクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株(H1975-EGFRinsSVD及びLXF 2478)においても優れた細胞増殖抑制活性を有することが明らかとなった。
【0266】
試験例4 経口吸収性の評価
本発明の化合物を0.5%HPMC水溶液、0.1N塩酸に懸濁又は溶解し、BALB/cAマウス(日本クレア株式会社)に50mg/kg/dayの用量にて経口投与した。経口投与後、0.5、1、2、4及び6時間後に顔面静脈より経時採血し血漿を得た。得られた血漿中の化合物濃度をLC-MS/MSにより測定し、経口吸収性の評価を行った。結果を以下の表6に示した。
【0267】
【表6】
【0268】
以上の結果より、本発明の化合物は十分な血漿中濃度が観測され、良好な経口吸収性を示した。それに対して、比較例2は経口吸収性が本発明の化合物と比較して4倍以上減弱した。
【0269】
試験例5 脳移行性の評価
本発明の化合物を0.5%HPMC水溶液、0.1N塩酸に懸濁又は溶解し、BALB/cAマウス日本クレア株式会社)に50mg/kg/dayの用量にて経口投与した。経口投与後、0.5時間後に顔面静脈より採血後、全脳を摘出し血漿及び脳サンプルを得た。得られた脳サンプルに3倍量の水を添加後、超音波ホモジナイザーを用いてホモジナイズし、脳ホモジネートを得た。得られた血漿中及び脳ホモジネート中の化合物濃度をLC-MS/MSにより測定し、脳/血漿中化合物濃度から脳移行性を評価した。結果を以下の表7に示した。
【0270】
【表7】
【0271】
以上の結果より、本発明の化合物は比較例2と比較して脳/血漿中化合物濃度(Kp値)が高く、良好な脳移行性を示した。また、比較例2は脳中化合物濃度が、本発明の化合物と比較して80倍以上減弱していた。
【0272】
試験例6 H1975-EGFRinsSVD細胞株の皮下移植モデルに対する抗腫瘍効果確認試験(in vivo)
H1975-EGFRinsSVD細胞株は、非働化した10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むRPMI-1640(4.5g/L グルコース、10mM HEPES及び1mMピルビン酸ナトリウム含有)(富士フィルム和光純薬株式会社)培地において、5%
CO2インキュベーター中において37℃で細胞株を培養した。
【0273】
H1975-EGFRinsSVD細胞をPBS中に8×10 cells/mLの濃度で再懸濁した。1mLツベルクリン用シリンジと25Gの注射針を用いて、6週齢のヌードマウス(BALB/cAJcl-nu/nu、日本クレア株式会社)の右側胸部の皮下に8×10 cells/0.1 mLずつ細胞懸濁液を移植した。
【0274】
腫瘍が生着したヌードマウスの腫瘍体積が100-200mm程度になった時点で、各群の腫瘍体積の平均が均一になるよう無作為層別化により1群6匹を割り付けた。
【0275】
被験化合物としては、実施例2、11、12(Example 2、11、12)を用い、コントロール(Control)としては0.5%HPMC水溶液を用いた。実施例2、11及び12(Example 2、11及び12)は各々25mg/kg/day、25mg/kg/day及び50mg/kg/dayの用量にて経口投与した。
【0276】
被験化合物又はコントロールは1日1回、群分け翌日から14日間(Day1-14)連日経口投与した。
【0277】
各被験化合物の投与における腫瘍の経時的増殖推移を比較するため、経時的に週二回の頻度で腫瘍体積(Tumor volume、以下「TV」とも称する)を測定した。また、体重の測定には動物用電子天秤を用いた。体重変化率(Body Weight Change)は、以下「BWC」とも称する。n日目の体重(BWn)からn日目の体重変化率(BWCn)を下記の式により算出した。各個体のTV及びBWCの平均値の推移を図1及び図2に示した。
【0278】
BWCn(%)=[(n日目の体重)-(群分け日の体重)]/(群分け日の体重)×100
【0279】
最終評価日(Day15)の化合物投与群の平均TV値が、Control群の平均TV値より小さく、かつ統計的有意差(Dunnett type多重比較検定)を示した場合に、化合物は、有効である(P<0.001)と判定し、図中に*印で示す。結果を図1に示した。
【0280】
Dunnett type多重比較検定にて解析した結果、発明化合物はいずれも、コントロール群に比して統計学的に有意に低い(P<0.001)ことが示された。この試験結果から、実施例2、11、12(Example 2、11、12)の化合物は、ヌードマウス右側胸部の皮下に移植したエクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株(H1975―EGFRinsSVD)に対して、優れた抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。また、各化合物を投与したマウスは、全ての個体で20%以上の体重減少は見られなかった。
【0281】
試験例7 Luciferase遺伝子導入エクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株(H1975―EGFRinsSVD―Luc)の脳直接移植モデルに対する抗腫瘍効果確認試験(in vivo)
脳直接移植モデルによる発明化合物の抗腫瘍効果及び延命効果は、ヒト変異型EGFR導入細胞株であるH1975-EGFRinsSVDにLuciferaseを導入したH1975-EGFRinsSVD-Luc株を用いて評価した。
【0282】
H1975-EGFRinsSVD-Luc細胞は、NCI-H1975-EGFRinsSVD細胞にLuciferaseをコードしたpJTI(登録商標)FAST DESTベクターをpJTI(登録商標)PhiC31 Integrase発現ベクターと共にAmaxa(登録商標) Cell Line Nucleofector(登録商標) Kit Rによる電気穿孔法により導入した後、ハイグロマイシンB(ナカライテスク株式会社)にて選択したものを使用した。
【0283】
H1975-EGFRinsSVD-Luc株は、非働化した10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むRPMI-1640(4.5g/L グルコース、10mM HEPES及び1mMピルビン酸ナトリウム含有)(富士フィルム和光純薬株式会社)培地において、5% CO2インキュベーター中において37℃で細胞株を培養した。
【0284】
H1975-EGFRinsSVD-Luc細胞をPBS中に12.5×10 cells/mLの濃度で再懸濁した。
【0285】
マウス用イヤーバーを用いて約6~7週齢のヌードマウス(BALB/cAJcl-nu/nu、日本クレア株式会社)を脳定位固定装置に固定し、頭頂部の皮膚に滅菌綿棒を用いイソジン含有消毒液を塗布することで消毒後に、メスにて切開した。
【0286】
マイクロドリルを用いて、頭蓋骨に穴をあけ、針、マニピュレーター、及びシリンジポンプを用いて、細胞懸濁液2μLを0.8μL/minの条件で脳内に移植した。
【0287】
脳内腫瘍量の目安として、移植26日後に生存例全例について、IVIS(PerkinElmer,Inc.,型式:Lumina II)を用いてTotal Flux(Photon/sec)を測定した。その結果から、各群のTotal Fluxの平均が均一になるよう無作為層別化により1群10匹を割り付けた。
【0288】
被験化合物としては、実施例11の化合物を用い、コントロール(Control)としては0.5%HPMC水溶液を用いた。実施例11(Example 11)は12.5mg/kg/day、又は25mg/kg/dayの用量にて投与した。
【0289】
本発明化合物またはコントロールは1日1回、群分け日翌日から38日間(Day27-64)連日経口投与した。
【0290】
抗腫瘍効果の有無の判断には、群分け日翌日(Day27)から薬剤3週間投与後となる抗腫瘍効果の判定日(Day47)のTotalFluxを対数変換(Log10)した値を用いた。
【0291】
縦軸に各群の平均TotalFluxの値、横軸に移植後の日数(Day)を設定したグラフを作成し、薬剤投与期間中のTotalFluxの経時的推移を観察した。
【0292】
延命効果の有無の判断のために、コントロール群と比較した被験化合物群の細胞移植後から延命効果の最終評価日(Day0-65)までの生存日数について、Log-Rank検定を用いて解析した.
【0293】
結果を以下の図3及び図4に示した。各群のDay47のTotalFluxを対数変換(Log10)した値をDunnett type多重比較検定で解析した結果、被験化合物群はコントロール群に比して、統計学的に有意(有意水準両側5%)に低いことが示された(P<0.001)。この試験結果から、本発明の化合物は、ヌードマウス脳内に移植したエクソン20挿入変異型EGFR発現細胞株(H1975―EGFRinsSVD―Luc)に対して、抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。
【0294】
加えて、コントロール群と比較した被験化合物群の細胞移植後から延命効果の最終評価日(Day0-65)までの生存日数について、Log-Rank検定を用いて解析した結果、コントロール群に比して統計学的に有意な延命効果が認められた(P<0.05)。
【0295】
以上の通り、本発明の化合物又はその塩は、EGFR阻害活性を有し、かつ脳移行性を有するものであり、EGFR阻害剤又はEGFR陽性腫瘍の治療剤として有用である。

本発明は、下記の態様を含む。
<1>
下記一般式(I)
【化1】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、EGFRが関与する疾患の治療剤。
<2>
前記ピリミジン化合物が、下記一般式(II)
【化2】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物である、<1>に記載の治療剤。
<3>
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、置換基としてC1-C4アルコキシ基を1から5個有しても良いC1-C6アルキル基である化合物である、<1>又は<2>に記載の治療剤。
<4>
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基である化合物である、<1>~<3>のいずれかに記載の治療剤。
<5>
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、フッ素原子及び塩素原子からなる群から選択される置換基を1又は2個有してもよいフェニル基である化合物である、<1>~<4>のいずれかに記載の治療剤。
<6>
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、メチル基、tert-ブチル基、又はシクロプロピル基である化合物である、<1>~<5>のいずれかに記載の治療剤。
<7>
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、又はエトキシメチル基である化合物である、<1>~<6>のいずれかに記載の治療剤。
<8>
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、メチル基である化合物である、<1>~<7>のいずれかに記載の治療剤。
<9>
前記ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、水素原子である、<1>~<8>のいずれかに記載の治療剤。
<10>
ピリミジン化合物が、一般式(I)又は一般式(II)中、
が、フェニル基である化合物である、<1>~<9>のいずれかに記載の治療剤。
<11>
前記ピリミジン化合物が、以下の(1)~(3)から選択される化合物である、<1>~<10>のいずれかに記載の治療剤。
(1)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-N-((R)-1-フェニルエチル)-6-(プロプ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(2)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
(3)7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(3,3-ジメチルブチ-1-イン-1-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
<12>
前記ピリミジン化合物が、7-((3R,5S)-1-アクリロイル-5-メチルピロリジン-3-イル)-4-アミノ-6-(シクロプロピルエチニル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドである、<1>~<11>のいずれかに記載の治療剤。
<13>
EGFRが関与する疾患が、EGFR過剰発現、EGFR遺伝子増幅、又はEGFR変異を有する悪性腫瘍である、<1>~<12>のいずれかに記載の治療剤。
<14>
下記一般式(I)
【化3】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、EGFR阻害剤。
<15>
下記一般式(I)
【化4】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、EGFR陽性腫瘍の治療剤。
<16>
下記一般式(I)
【化5】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表されるピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む、EGFRが関与する疾患の治療に使用するための医薬組成物。
<17>
EGFRが関与する疾患が、EGFR過剰発現、EGFR遺伝子増幅、又はEGFR変異を有する悪性腫瘍である、<16>に記載の医薬組成物。
<18>
EGFRが関与する疾患を治療するための、下記一般式(I)
【化6】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
<19>
EGFRが関与する疾患を治療するための、下記一般式(I)
【化7】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
<20>
EGFRが関与する疾患の治療剤を製造するための、下記一般式(I)
【化8】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
<21>
EGFR陽性腫瘍を治療するための、下記一般式(I)
【化9】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
<22>
EGFR陽性腫瘍を治療するための、下記一般式(I)
【化10】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
<23>
EGFR陽性腫瘍の治療剤を製造するための、下記一般式(I)
【化11】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
<24>
EGFRが関与する疾患の治療方法であって、それを必要とする対象に、下記一般式(I)
【化12】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することを含む、方法。
<25>
EGFR陽性腫瘍の治療方法であって、それを必要とする対象に、下記一般式(I)
【化13】
(式中、
は、置換基としてC1-C4アルコキシ基を有しても良いC1-C4アルキル基、又はC3-C4シクロアルキル基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基としてC1-C4アルコキシ基若しくはフッ素原子をそれぞれ1から5個有しても良いC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基を示し;
は、水素原子、又は置換基としてフッ素原子を1から5個有しても良いC1-C4アルキル基を示し;
は、水素原子、又はC1-C4アルキル基を示し;
は、フッ素原子及び塩素原子から選択される置換基を1から3個有してもよいフェニル基を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することを含む、方法。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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