(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ペットフード組成物
(51)【国際特許分類】
A23K 50/40 20160101AFI20240529BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20240529BHJP
【FI】
A23K50/40
A23K10/30
(21)【出願番号】P 2022536896
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 US2020070929
(87)【国際公開番号】W WO2021127701
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-15
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502329223
【氏名又は名称】ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルディー、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】オグレビー、ブレア
(72)【発明者】
【氏名】ジュエル、デニス
(72)【発明者】
【氏名】リンデクランツ、ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】モンテロンゴ、ルイス ジェイ
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0134132(US,A1)
【文献】特表2006-526417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットフード組成物であって、
31.5重量%~45重量%の脂肪と、
100kcalの代謝エネルギー当たり6g~14gのタンパク質源と、
0.5重量%~6重量%の炭水化物と、
10重量%~30重量%の繊維と、を含み、
前記脂肪の少なくとも20%は中鎖トリグリセリドであり、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は、1.5以上であり、式中、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である、ペットフード組成物。
【請求項2】
14重量%~30重量%の繊維を含む、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項3】
0.5重量%~5重量%の炭水化物を含む、請求項1または請求項2に記載のペットフード組成物。
【請求項4】
前記脂肪が、34重量%超~45重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれかに記載のペットフード組成物。
【請求項5】
前記脂肪が、少なくとも25重量%の中鎖トリグリセリドを含む、請求項1~4のいずれかに記載のペットフード組成物。
【請求項6】
100kcalの代謝エネルギー当たり6g~12gのタンパク質を含む、請求項1~5のいずれかに記載のペットフード組成物。
【請求項7】
7重量%未満の量の灰分をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載のペットフード組成物。
【請求項8】
1重量%以下の量のリンをさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載のペットフード組成物。
【請求項9】
PDIスコアが70超である、請求項1~8のいずれかに記載のペットフード組成物。
【請求項10】
セルロース、リグニン、ヘミセルロース、ペクチン、アルギン酸塩、および変性セルロースを含む最適な繊維ブレンドをさらに含む、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項11】
50重量%~60重量%の量の水をさらに含み、前記ペットフード組成物が、湿潤ローフの形態である、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項12】
非消化性ガム繊維と栄養性乳化剤との組み合わせをさらに含む、請求項11に記載のペットフード組成物。
【請求項13】
前記非消化性ガム繊維が、野菜および/または細菌発酵に由来するガムを含み、任意選択的に、前記非消化性ガム繊維が、グアーガム、タラガム、アカシアガム、カロブガム、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む、請求項12に記載のペットフード組成物。
【請求項14】
前記栄養性乳化剤が、少なくとも一つの脂肪酸基を含む栄養性脂肪系乳化剤を含み、任意選択的に、前記乳化剤が、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む、請求項12または13に記載のペットフード組成物。
【請求項15】
100kcalの代謝エネルギー当たり6.5g~12gの量のタンパク質と、
0.5重量%から5重量%未満の炭水化物と、を含み、前記ペットフード組成物が、ネコ科動物ペットフード組成物である、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項16】
コンパニオン動物において高血糖、慢性炎症、または代謝ストレスを治療するか、あるいは癌を有するコンパニオン動物における食欲を維持する方法であって、前記方法が、請求項1~15のいずれかによるペットフード組成物を、前記コンパニオン動物に投与することを含む、方法。
【請求項17】
コンパニオン動物における奇数鎖短鎖脂肪酸(SCFA)の形成を減少させる方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペットフード組成物を、前記コンパニオン動物に投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記奇数鎖SCFAが、プロピオン酸、吉草酸、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
コンパニオン動物の病毒性因子を減少させる方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペットフード組成物を、前記コンパニオン動物に投与することを含み、前記病毒性因子が、エンテロコッカス・フェカリスGI 48190、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE nagK、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE nagH、大腸菌GENE stbA、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE cloSI、大腸菌GENE lacY、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE nagJ、クロストリジウム・パーフリンゲンスGENE pfoA、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE nagI、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE nagL、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE nanI、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE nanH、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE nanJ、大腸菌GENE ompA、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE plc、化膿性連鎖球菌GENE msrD、エンテロコッカス・フェシウムGI 21886745、エンテロコッカス・フェシウムGI 21886747、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE colA、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み、前記病毒性因子の減少が、前記コンパニオン動物の感染を予防または阻害する、方法。
【請求項20】
病原性細菌の成長を阻害し、コンパニオン動物の腸内の有益な細菌の成長を促進する方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペットフード組成物を、前記コンパニオン動物に、投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記有益な細菌が、クロストリジウム・ヒラノニス、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ、酪酸産生細菌、ブチリシコッカス プリカエコルム、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上;またはクロストリジウム・パーフリンジェンス、Paeniclostridium sordellii、クロストリジウム・バラチ、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有益な細菌および前記病原性細菌が、同じ属の中にある、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記病原性細菌が、C.パーフリンジェンスを含み、前記有益な細菌が、C.ヒラノニスを含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
コンパニオン動物の腸内微生物叢における微生物抗生物質耐性遺伝子(ABr)のレベルを低減する方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペットフード組成物を、前記コンパニオン動物に、投与することを含み、前記ABrが、マクロライドmefA膜融合タンパク質emrA、マクロライドm2021ブランチ、センサータンパク質phoQ、センサータンパク質evgS、ポリミキシン耐性に関与するpmrB、バシトラシン耐性bacA、ポリミキシンおよびカチオン性抗菌ペプチドarnA、センサーキナーゼcpxA、マクロライドlnuA、マクロライドmel、センサーキナーゼbaeS、ポリミキシン耐性に関与するpmrC、膜融合タンパク質emrK、調節因子cpxR、膜融合タンパク質acre、内側膜輸送体acrF、ベータ-ラクタムpbp2大腸菌、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む、方法。
【請求項25】
前記A
Brが、アミノグリコシドaph2 Ib、アミノグリコシドaac6’ Im、アミノグリコシドaph3’III、tetW、tet40、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含まない、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
コンパニオン動物の腸内微生物叢における多剤耐性排出ポンプ遺伝子のレベルを低減する方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペットフード組成物を、前記コンパニオン動物に、投与することを含み、前記多剤耐性排出ポンプ遺伝子が、排出ポンプmdtB、排出ポンプmdtA、排出ポンプmdtC、排出ポンプmdtD、排出ポンプmdtD、排出複合体のためのトランスポーターmdtF、排出ポンプbaeR、排出ポンプemrR、排出ポンプmdtN、mdr排出ポンプのためのリプレッサーcrp、排出ポンプmdtO、排出ポンプacrD、排出複合体のリプレッサーacrS、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む、方法。
【請求項27】
コンパニオン動物のフェノールおよびインドールの血液循環レベルを低減する方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペットフード組成物を、前記コンパニオン動物に投与することを含み、前記フェノールが、3-メトキシカテコール硫酸(2)、3-メチルカテコール硫酸(1)、4-アセチルカテコール硫酸(1)、4-アリルカテコール硫酸塩、4-エチルカテコール硫酸塩、4-ヒドロキシカテコール硫酸塩、4-メチルカテコール硫酸、4-ビニルカテコール硫酸塩、カテコール硫酸、4-アセチルフェニル硫酸塩、4-アミノフェノール硫酸塩(2)、4-エチルフェニル硫酸塩、4-ヒドロキシフェニル酢酸塩、4-ヒドロキシフェニルアセチルグリシン、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、4-メトキシフェノール硫酸塩、4-ビニルフェノール硫酸塩、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み、および/または、前記インドールが、7-ヒドロキシインドール硫酸塩、5-ヒドロキシインドール硫酸塩、5-ヒドロキシインドールグルクロニド、3-ヒドロキシインドリン-2-オン硫酸、インドキシルグルクロニド、3-ホルミルインドール、6-ヒドロキシインドール硫酸塩、インドリン-2-オン、3-インドキシル硫酸、5-ヒドロキシインドール酢酸塩、インドールアセチルグルタミン、インドール酢酸、3-インドールグリオキシル酸、インドール-3-酢酸メチル、インドールアクリル酸、インドールプロピオン酸、インドールアセチルグリシン、インドール乳酸、2-オキシインドール-3-酢酸塩、インドールアセチルアラニン、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む、方法。
【請求項28】
コンパニオン動物の結腸における微生物タンパク質分解を減少させる方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペットフード組成物を、前記コンパニオン動物に投与することを含み、前記ペットフード組成物が、タンパク質新生アミノ酸、前記タンパク質新生アミノ酸から形成されるジペプチド、またはそれらの組み合わせを減少させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
非発酵性繊維を有する高タンパク質、低炭水化物食品組成物は、米国特許出願公開第US2011/0081443A1号に開示されている。高タンパク質レベル、高脂肪レベル、低炭水化物レベル、および非発酵性繊維を有する食品組成物が提供された。哺乳類における体重管理のためにこれらの組成物を使用する方法も提供された。
【0002】
動物の健康上の利益のための栄養素ブレンドは、米国特許出願公開第2019/0134132号に開示された。文献は、動物におけるカロリー摂取量を制限せず、または肥満を予防若しくは治療することなく、成長中の動物における脂肪蓄積を最小化する方法を教示し、本方法は、ケトン食餌および栄養素ブレンドを動物に経口投与することを含む。栄養素ブレンドは、動物に対し、クルミ、マイタケキノコ抽出物、EGCG、ウコン根粉末、リコピン、タウリン、EPA、およびDHAからなる群から選択される少なくとも4つの栄養素を含み得る。
【0003】
癌における食事療法の開発は、Hagiharaら(「Hagihara」)に対する米国特許出願公開第2018/0214410号で論じられている。Hagiharaは、癌の治療のための新しい組成物またはその組み合わせを提供する。より具体的には、Hagiharaは、高脂肪食を含む癌治療のための組成物またはその組み合わせを提供する。具体的には、高脂肪食は、50kgの実体重に基づいて、脂肪由来の1日の総エネルギーの約120g/日以上、または約70%以上を有することを特徴とする。食事は、炭水化物制限された高脂肪食であることが好ましく、より好ましくはケトンフォーミュラおよび/またはMCTオイルによって提供される。本開示の高脂肪食による食事療法は、外科的治療、化学療法もしくは放射線療法、またはそれらの組み合わせと共に提供される。
【0004】
糖尿病における食事調整の目的および方法は、R.T.Woodyattにより、Arch Intern Med(Chic).1921;vol.28,iss.2,pp.125~141において議論された。糖尿病の食事管理では、著者は患者が摂取する食物の種類や量と、患者が示す症状や徴候とを相関させる努力をしていた。治療の成功、すなわち全ての種類の症例における結果の平均は、症状または徴候と食物供給との間に存在する関係についての我々の概念の真実に依存する。過去数年間、糖尿病の食事管理で得られた結果の平均は、AllenとJoslinの仕事を通して大幅に改善されており、彼らが開発したシステムは、何らかの点で、これまで我々が有していたいかなるものよりも論理的であり、経験的ではない。しかしながら、対象の文献は、すべての事例を最善の方法で扱うことについて、すべての著者間の全会一致の欠如によって依然として混乱している。
【0005】
ケトン食療法は、イヌおよびヒトの両方の発作を減少させるために用いられる。ケトン食療法の現在の実施の顕著な特徴は、食物繊維の不足である。食物繊維の増加は、心血管疾患および癌を含む多数の疾患の減少と関連している。しかしながら、現在のケトン食療法の実施には、腸内微生物叢に対する有害な影響の可能性について、厳しい警告が付随している。発作寛解については、これは完全に逆効果である。対象に健康で機能する微生物叢が存在しない場合にケトン食餌が有効性を減少させるように、哺乳類の腸内微生物叢はケトン食餌の効果を媒介し、発作を減少させる(The Gut Microbiota Mediates the Anti-Seizure Effects of the Ketogenic Diet.Cell.2018 Jun 14;173(7):1728-1741。したがって、現在のケトン食餌組成物は、発作に対するその有効性が自己限定的である。ケトン食餌のより良い組成物は、発酵性および非発酵性、ならびに可溶性および不溶性繊維を含み、健康な腸内微生物叢を促進し、発作減少のためのケトン食餌の完全な利益の発展を可能にする。
【0006】
中鎖トリグリセリドおよび長鎖トリグリセリドに対するヒトの胃液および十二指腸液の脂質分解活性は、M.Cohen,R.G.H.Morgan、およびA.F.Hofmannによって、Gastroenterology 1971,vol.60,iss.1,pp.1~15に論じられる。十二指腸液逆流による3%未満の汚染を含有する胃の吸引物中のリパーゼの存在(胆汁酸の検査によって判定される)は、タウロデオキシコール酸ナトリウム中で乳化され、pH6で緩衝されたトリオクタノイン基質でアッセイされたとき、73人の対象からの外見上正常な胃液のすべてのサンプルで実証された。この酵素は、十二指腸吸引物中のリパーゼとは対照的に、pH2で安定であり、最適pHがより低く、胆汁酸の存在下であってもトリプシンによって急速に不活化され、脂肪酸の添加によって適度に阻害された。十二指腸リパーゼと同様に、胃リパーゼは、長鎖トリグリセリドよりも短鎖トリグリセリドに対して高い活性を有し、トリグリセリドの2位よりも1位の脂肪酸に対してより活性であった。それは、ゲル濾過クロマトグラフィーにより、十二指腸リパーゼ(>500,000)よりもはるかに小さい見かけの分子量(40,000~50,000)を有し、十二指腸リパーゼと比較して、中程度のエステル化特性のみを有した。合成トリグリセリドは、膵瘻液または十二指腸内容物中の膵リパーゼよりも胃リパーゼによって、よりゆっくりと分割された。ヒト乳粒子のトリグリセリドは、胃リパーゼおよび十二指腸内容物中に存在するリパーゼによって分割されたが、胆汁酸を欠いた膵瘻液では分割されなかった。これは、胆汁酸が存在しない限り、乳粒子トリグリセリドが膵リパーゼに抵抗性であることを示唆するものである。健康な成人では、胃内容物中の胃リパーゼの濃度は、十二指腸内容物中の膵リパーゼのそれよりもはるかに低く、胃リパーゼは、試験食事後の十二指腸内容物の脂肪分解活性に有意な寄与を示さなかった。胃リパーゼは、3人の無酸症患者の胃内容物において有意に減少した。中鎖トリグリセリドは、pH1.8での16時間のインキュベーション、またはpH1での1時間のインキュベーションによって分割されなかったことから、「酸加水分解」は発生しないことが示唆される。胃リパーゼは、おそらく、乳児における乳トリグリセリドの消化、ならびに、特に膵リパーゼ濃度が低下した小児における、投与された中鎖トリグリセリドの加水分解に寄与する。長鎖トリグリセリドに対するその限定的な活性は、胃リパーゼが成人の正常な脂肪消化においてほとんど役割を持たないことを示唆している。
【0007】
ラットにおける中鎖トリグリセリド負荷に対するケトン体生成の応答は、A.BachらによるJ.Nutr.1977,vol.107,iss.10,pp.1863~1870に開示された。著者らは、ラットにおいて、中鎖トリグリセリド(MCT)の単回経口負荷(C8:0 50.5%、C10:0 48.0%、C12:0 1.0%)により誘発されたケトン血症を研究した。中鎖脂肪酸は、肝臓によって合成される脂質に組み込まれるのではなく、そこで酸化され、ケトン体が大量に産生される。重度かつ長期にわたる高ケトン血症が急速に発症した。MCT負荷の増加に伴い、ケトン血症も増加したが、直線的ではなかった。高ケトン血症のレベルは、両性で同等に思われた。絶食ラットによるMCTの摂取は、ケトン血症のさらなる進行を引き起こした。長鎖トリグリセリドは、その成分脂肪酸が脂質に組み込まれるため、酸化の影響を受けにくいので、ケトン体を産生しなかった。脂質は、正常な体重のラットよりも遺伝的に肥満のラットで、重症度の低いケトン血症を誘導する。
【0008】
腸内微生物叢、代謝的健康、および肥満個人における中鎖トリグリセリド食事の潜在的な有益効果は、S.A.Rial らによって、Nutrients 2016 vol.8,iss.5,p 281に論じられる。非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)および2型糖尿病(T2D)などの肥満および関連する代謝性合併症は、世界中で絶え間なく増加している。ほとんどの肥満患者が、いくつかの代謝異常および生体測定の異常ならびに併存疾患を示す一方で、診断基準に応じて、肥満成人の3%~57%に相当する患者のサブグループは、代謝的に健康のままである。他の多くの要因の中でも、腸内微生物叢は今や、代謝的に不健康な肥満(MUHO)である個体の病因、および内毒血症、腸および全身の炎症、ならびにインスリン抵抗性などの肥満関連疾患における決定因子として特定される。興味深いことに、最近の研究は、最適な健康様腸内微生物叢構造が、代謝的に健康な肥満(MHO)表現型に寄与し得ることを示唆している。中鎖トリグリセリド(MCT)は、腸の生態系と浸透性の両方を改善する能力を介して、代謝疾患を改善することができる。したがって、MCT強化食は、腸内微生物叢の改変を介して代謝疾患を管理するために使用することができる。
【0009】
中鎖トリグリセリドエマルジョンによるヒト好中球の機能的変化、食作用、殺細菌、および酸化活性の評価は、R.Bellinati-Piresにより、J.Leukoc.Biol.1993,vol 53,iss.4,pp 404~410で論じられている。栄養療法で現在使用されている中鎖トリグリセリド(MCT)および長鎖トリグリセリド(LCT)エマルジョンは、好中球の酸化的代謝、食作用、および殺細菌活性に対するインビトロ効果について評価された。健康な成人男性ボランティアからの好中球は、20mg/mlの最終トリグリセリド濃度で、LCT、MCT、または50%MCTおよび50%LCTの混合物を含有する市販の脂肪エマルジョンとの血液インキュベーション後に評価された。全血に対して直接実施される細胞化学ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)試験によって判定されるように、MCT含有エマルジョンは、好中球によるNBT色素還元を刺激することが観察された。この効果は用量依存性であった。しかしながら、細胞洗浄による脂質除去後、MCT処置された好中球は、細菌性リポ多糖類またはホルボールミリステートアセテート刺激に応答する、過酸化水素(H2O2) の産生およびNBT還元の低下、ならびに黄色ブドウ球菌の障害のある食作用および死滅を示した。対照的に、LCTエマルジョンは、評価した好中球機能のいずれも変化させなかった。本データは、おそらく脂肪粒子の食作用によって、および脂質濃度に依存して、MCTが好中球の酸化的代謝を誘発し、この効果が可逆的ではなく、後続する膜刺激に対する細胞応答の障害につながる可能性があることを示唆している。
【0010】
ブタにおけるシクロホスファミド誘発性腸炎、酸化的ストレス、およびバリア機能に対するカプリン酸の機能は、S.I.LeeおよびK.S.Kang.2017.Scientific Reports vol.7,16530により論じられている。小腸は、栄養素の吸収に不可欠であるだけでなく、重要な免疫器官としての役割も果たす。中鎖脂肪酸は、栄養効果および代謝効果を有し、腸上皮の完全性を支持する。しかしながら、ブタの腸管免疫におけるそれらの役割は、完全には理解されていない。著者らは、免疫抑制性シクロホスファミドを用いた治療後の、ブタ上皮細胞およびミニブタにおける腸酸化的ストレス、炎症、およびバリア機能に対する中鎖脂肪酸、カプリン酸の効果を調査した。カプリン酸は、炎症性サイトカイン産生(TNF-αおよびIL-6)および関連する遺伝子発現(NF-κB、TNF-α、IFN-γ)を緩和し、酸化的ストレス(GSSG/GSH比、H2O2、およびマロンジアルデヒド)を軽減し、ならびにシクロホスファミド処置IPEC-J2細胞における酸化的ストレス関連遺伝子発現(SOD1およびGCLC)を増加した。シクロホスファミド処置IPEC-J2細胞におけるFD-4の浸透性、ならびにZO-1およびOCLNの発現は、カプリン酸によって減少した。食物カプリン酸(dietary capric acid)は、シクロホスファミド処置したミニブタにおいて、TNF-α、IL-6、およびMDAレベルを減少させ、SOD、GPx、ならびに炎症促進性、酸化的ストレス、および腸管バリア機能に関連する遺伝子の発現を増加させた。これらの結果から、カプリン酸は、ブタにおけるシクロホスファミド誘発性小腸機能障害に対する防御効果を有することが明らかになった。
【0011】
子ブタの成績および回腸の粘膜上皮構造に対する食物カプリル酸およびカプリン酸の影響は、E.Hanczakowska、A.Szewczyk、およびK.Okonにより、J.Anim.Feed Sci.2011,vol.20,iss.4,pp.556~565で論じられている。子ブタの成績、栄養素の明白な消化率、腸内微生物叢および小腸(回腸)構造に対する、カプリル酸および/またはカプリン酸で補充された食餌の影響が調査された。実験は、4つの実験群(各6同腹仔)に割り当てられた252匹の子ブタ(24同腹仔)に対して行われた。動物に、標準飼料混合物(対照)、または飼料1kg当たり2gのカプリル酸またはカプリン酸(それぞれ、群C8およびC10)を補充した同じ混合物を与えた。群C8+C10は、1gのカプリル酸と1gのカプリン酸を与えられた。見掛けの消化率を、Cr2O3を指標として使用して推定し、一方で微生物学的分析を標準的な寒天プレートを使用して行った。回腸および盲腸消化物の短鎖脂肪酸(SCFA)含有量を、Varian 340アナライザーを使用して分析した。カプリル酸またはカプリン酸を与えられた子ブタは、対照の子ブタよりも有意に速く成長した(P<0.01)(実験全体中(すなわち、年齢の1日目~84日目)の平均1日増加量は、それぞれ288、269、278および234gであった)。最良の飼料利用量(1kg当たり1.3kg)は、カプリル酸を与えられた動物で見出された。酸はまた、子ブタの死亡率を低下させたが、一方でタンパク質消化率は有意に増加し(P<0.01)、また、より少ない程度(P<0.05)で、繊維消化率も増加した。消化物の酸性度には、対照群と実験群との間に有意差はなかった。カプリン酸は、対照群と比較して好気性細菌の量を増加させたが、大腸菌の量は変化しなかった。クロストリジウム・パーフリンジェンスの集団は、カプリル酸およびカプリン酸の両方によって減少した(P<0.01)。酸は回腸のSCFA含量に影響を与えなかったが、盲腸消化物の酢酸含量を低下させた。カプリン酸は、絨毛に対して、対照群(233μm)よりも有意に高い(306μm)最も強い効果を有した。陰窩の深さの差は小さかったが、陰窩はカプリン酸を与えられた子ブタで最も深かった。この結果から、飼料に添加されたカプリル酸およびカプリン酸は、おそらく回腸の粘膜上皮構造の陽性変化によって、子ブタの成績を改善することが示唆される。
【0012】
商業および研究空間におけるコンパニオン動物用ドライフードの数十年間の生産にもかかわらず、ケトン食餌の基準を満たすキブル、トリーツ、またはその他の食餌の事例は記録されていない。すなわち、約1.5以上のケトン比を示す、主要栄養素組成物。さらに、最新のケト原性市販乾燥キブルのケト原性の相対的レベルを示す公表された報告書はない。ケトン比(KR)は、抗ケト原性因子の総和に対するケト原性因子の総和の比であり(KR=K/AK)、1900年代初頭に、食物の予想されるケト原性を決定するための厳格で証拠に基づくアプローチとして定義された。Zilberter T,Zilberter Y.Ketogenic Ratio Determines Metabolic Effects of Macronutrients and Prevents Interpretive Bias.Frontiers in Nutrition.2018;5:75。分析データに基づく計算は、ケト原性であると主張するまたは売り込む市販製品の事例が、典型的にはその高いタンパク質レベルのせいで、ケト原性に関する科学的および医学的基礎を実際には満たしていないことを示す。さらに、これらの最先端の商業的ケト原性食品を消費したイヌにおける循環血液中ケトンの測定は、公表された文献で入手可能な値と比較した場合、ケトン(例えば、D-ベータ-ヒドロキシブチレート;BHB)の特に高いレベルを明らかにしなかった。しかしながら、利用可能な歴史的実例は、ケト原性市販乾燥キブルの出現に先立つものであり、典型的には、非キブル半液体脂肪飼料を供給する期間が後に続く、絶食期間を採用していたことに留意されたい。Lathan A.Crandall,Jr.A Comparison Of Ketosis In Man And Dog.J.Biol.Chem.1941、138:123~128。したがって、現在のケト原性市販ドライペットフードキブルは、より高い循環血液中BHBケトンレベルを生成しないことによる、最適なケト原性よりも少ないと考えられる。ケト原性の市販食餌は、中鎖トリグリセリドなどのケト原性脂肪酸を含まないことに留意されたい。さらに、イヌは、ヒトと比較して、種としてケトーシスに特に耐性があることが知られていることに留意されたい。同書。イヌ科動物に呈されるケトーシスに対する耐性は、従来的または最新のケト原性の市販のペットフード組成物が有するイヌ科動物にケトーシスを最適に誘導する能力を、さらに妨げる。前述を考慮すると、当業者であれば、ケトン食餌の推奨を、単にまたはシンプルに、ヒトからコンパニオン動物またはペットに容易に移すことはできないことを理解するであろう。したがって、自明ではない、および/または反直感的であり得る、別個のおよび特注の解決策を開発する必要がある。
【0013】
さらに、こうした食餌は、腸の健康をサポートするのに十分な食物繊維を欠く。最後に、このような食餌は、高レベルの無機灰分、具体的に腎臓の健康に有害であり得るリンを含有する。
【0014】
ペットフード組成物を製剤化する技術における多くの進歩が、その疾患を治療する能力の向上に関して行われているが、多くの課題が残されている。より具体的には、この生理学的状態に対して抵抗性であることが知られているペット種においてケトーシスをより良く達成するために、小片で、味がよく、かつ組成物中の脂肪レベルの含有の増加を可能にするケト原性ペットフード組成物に対する、当技術分野で認識されているニーズがある。これに関して、乾燥押出成形キブルとしてのケト原性ペットフード組成物の送達は、乾燥キブル押出成形の当業者にとって困難であることが知られている。乾燥キブル押出成形では、本組成物中における穀物、マメ科植物および塊茎を含むがこれらに限定されないデンプン含有原料の使用が、炭水化物としての飼料エネルギーの供給源を提供するだけでなく、実行可能な乾燥キブル製品がエンドユーザーによって消費され得、かつ将来も消費されるであろうことを保証する、三つの重要な非栄養的役割も果たす。第一に、デンプンは、過剰な破損および損失(当技術分野では、「細粒」と呼ばれる)がなく、商業生産プロセスを通してエンドユーザーに伝達され得るほどの十分な耐久性を有する乾燥キブルを生産することを可能にする、必須結合剤とみなされる。第2に、デンプンは、乾燥キブルにおいて適切に増殖された発泡細胞構造を確保するために使用され、見た目の良さをペットに提供し、全体的な嗜好性を増加させる。第3に、デンプンの含有によって可能になる乾燥キブルにおけるより大きな発泡細胞構造は、増加した表面積にわたり局所的に添加されるコーティング(例えば、脂肪、美味剤)の含有の増加の調節も可能にする。理想的な解決策は、強化されたケト原性をもたらすだけでなく、強化されたまたは改善された、1)耐久性、2)嗜好性、および3)脂肪含有、をももたらすことにより、存在する開示された最新のケト原性ペットフード乾燥キブルに改善を加えるであろう。
【0015】
本開示の実施形態は、これらの、および他のニーズを満たすように設計されている。
【発明の概要】
【0016】
本開示は、コンパニオン動物に完全かつバランスの取れた栄養を提供する組成物を対象とする。組成物は、以下の特徴を有する:約1.5または約1.7以上のケトン比、低レベルの可消化炭水化物、および存在する脂肪の20%は中鎖トリグリセリドの形態である。さらに、一実施形態では、組成物はkcal当たりを基準に中程度のタンパク質を含む。さらに、一実施形態では、組成物は、微生物叢に高親和性である繊維(high microbiome-friendly fiber)を含む。さらに、一実施形態では、組成物は、低レベルの灰分もしくは低レベルのリン、またはその両方を含む。
【0017】
組成物は、通常一緒には使用されない食物成分を組み合わせて、プロセスにおいて重大な技術的課題を克服することによって、市販の製品よりも顕著な改善をもたらす。
【0018】
一実施形態において、本開示の組成物は、成体のイヌ科動物またはネコ科動物の乾燥メンテナンスキブルが7.5g/100kcal ME以下のタンパク質レベル、少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の乾燥物質ベースの繊維、6重量%以下、5重量%以下、または3.5重量%以下の可消化デンプンおよび/または糖、少なくとも35%重量の乾燥物質ベースの脂肪、少なくとも20%の中鎖トリグリセリドとしての脂肪、6重量%以下の灰分、0.7重量%以下のリン、ならびに1.7より大きいケトン比(KR)を有するものである。
【0019】
乾燥キブルおよびトリーツ形態のための調合には、タンパク質および繊維の戦略的組み合わせを利用する。
【0020】
一実施形態では、本開示の組成物は、乾燥キブルまたはトリーツであり、機能性タンパク質および繊維が、下部消化管の窒素負荷を低減し、ならびに腸内微生物叢に食物と栄養とを与える。低灰分プロファイルの遵守は、この削減の実践による利益をさらに高める。そのような組成物のケトン比KRは、1.5より大きく、これはいかなる市販のコンパニオン動物食よりも高い。
【0021】
本開示の組成物は、脂肪、または脂肪(fats)を含む。脂肪は、炭水化物およびタンパク質とともに、三つの中心的な主要栄養素のうちの一つである。脂肪分子は、主に炭素原子および水素原子からなり、したがって疎水性であり、有機溶媒に可溶性であり、水に不溶性である。一実施形態では、本開示の組成物は、約35重量%超の脂肪、または約42重量%超の脂肪を含む。
【0022】
脂肪は、少なくとも20重量%の中鎖トリグリセリドからなる。あるいは、食餌組成物の脂肪は、約10重量%~約35重量%の中鎖トリグリセリドからなる。トリグリセリドは、グリセロールと三つの脂肪酸に由来するエステルである。「中鎖トリグリセリド」という語句は、脂肪酸のトリグリセリドが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、およびラウリン酸を含む、6~12個の炭素原子長であることを意味する。
【0023】
本開示の組成物は、タンパク質を含む。植物源、動物源、または両方を含む、当業者に公知の任意の種々の供給源により、粗タンパク質を供給してもよい。動物源としては、例えば、肉、食肉副産物、海産物、乳製品、卵などが挙げられる。
【0024】
一実施形態では、本開示の組成物は、100kcalの代謝エネルギー当たり約4.5g~約14gのタンパク質、100kcalの代謝エネルギー当たり約6g~約12gのタンパク質、または100kcalの代謝エネルギー当たり約7g~約10gのタンパク質を含む。別の実施形態では、本開示の組成物は、100kcalの代謝エネルギー当たり約4.5g~7.5gのタンパク質を含む。特許請求される組成物は、約3000~約5000kcal/kgの代謝エネルギー含有量を含み得る。
【0025】
本開示の食餌組成物の成分の一つは、多糖類および糖類を含む炭水化物である。一実施形態では、本開示の組成物は、約3.5重量%未満の炭水化物を含む。
【0026】
本開示の食餌組成物の成分の一つは、食物繊維である。食物繊維とは、動物の消化酵素による消化に耐性を有する植物の構成要素を意味する。食物繊維、または総食物繊維は、不溶性繊維および可溶性繊維からなる。
【0027】
本開示はまた、35重量%を超える脂肪、タンパク質、3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ケトン比が約1.5よりも大きい、コンパニオン動物の食餌組成物も対象とする。
【0028】
ケトン比(KR)は、抗ケト原性因子の総和に対するケト原性因子の総和の比である:KR=K/AK。ケトン比は、
KR=(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)の式で定義され、
式中、Fは脂肪のグラムであり、Pはタンパク質のグラムであり、Cは炭水化物のグラムである。
【0029】
一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は、約1.5よりも大きい。
【0030】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は約30重量%~約60重量%のタンパク質を含む。他の実施形態において、本明細書に記載の組成物は約32.5重量%~約57.5重量%のタンパク質を含む。さらなる実施形態において、本明細書に記載の組成物は約35重量%~約55重量%のタンパク質を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物は約37.5重量%~約52.5重量%のタンパク質を含む。さらに他の実施形態が、約40重量%~約50重量%のタンパク質を含む組成物を提供する。幾つかの実施形態において、タンパク質は、動物性タンパク質、植物性タンパク質、またはその組み合わせを含む。
【0031】
コンパニオン動物のための食餌組成物は、追加の成分をさらに含み得る。本開示の組成物中に発生する微量栄養素には、コンパニオン動物に推奨または許容可能なレベルの微量ミネラル、ビタミン、関連する化合物およびその供給源が含まれる。
【0032】
一実施形態では、本開示の組成物は、約6重量%未満の灰分を含む。
【0033】
一実施形態では、本開示の組成物は、低レベルのリンを含む。食餌性リンのレベルを低下させることは、腎臓病の進行を遅らせ、寿命を延ばすとされてきた。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.7重量%未満のリンを含む。
【0034】
食品組成物は、当業者に公知の従来の食品調製プロセスを使用して、缶詰またはウェット形態で調製され得る。食品組成物は、当業者に公知の従来のプロセスを使用して、乾燥形態で調製され得る。通常、動物性タンパク質、植物性タンパク質、穀物等の乾燥原料を粉砕して、混合する。次に、脂肪、油、動物性タンパク質、水等を含む湿性または液体の原料を加え、乾燥混合物と混合する。次に、混合物をドライフード片へと加工する。別の方法として、または追加的に、非水湿原料は、減圧システム(例えば、真空)の適用を伴ってもまたは伴わなくてもよい方法を介して、乾燥後に、食品片の表面にコーティングされ得る。
【0035】
食品組成物は、例えば、動物食品用のキブル、トリーツ、およびおもちゃなど、組成物をコンパニオン動物に与えるのに便利な任意の形態であり得る。一般に、乾燥原料と湿った原料の混合物を、高圧及び高温にて機械操作にかけ、小さな開口部から押し出して、回転ナイフでキブルに切断する押出成形プロセスを使用して、キブルを形成する。次に、乾燥キブルを乾燥させて、随意に、風味剤、脂肪、油類、粉末等の、一つ以上の局所コーティング材でコーティングする。
【0036】
本開示はまた、有効量の食餌組成物を含むペットフードを動物に与えることによって、コンパニオン動物の健康を改善する方法を対象とする。ケトン食餌ペットフードは、癌、炎症性腸疾患、糖尿病、肥満、高血糖症、高トリグリセリド血症、慢性炎症、腸内微生物叢の抗生物質耐性、または腸内微生物叢の病原性腸内毒素症、神経学的発作、高血糖、代謝ストレス、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、いくつかの兆候または状態に適用される。食餌組成物を含むペットフードの投与は、動物の代謝をグルコース変換代謝から脂肪燃焼代謝へシフトさせる。
【0037】
第一の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0038】
第2の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0039】
第3の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約1.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0040】
第4の態様では、本開示は、約43重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0041】
第5の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%であり、脂肪は少なくとも20重量%の中鎖トリグリセリドからなる、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0042】
第6の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%であり、脂肪は約10重量%から約35重量%の中鎖トリグリセリドからなる、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0043】
第7の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%であり、1000kcalの代謝エネルギー当たり約4.5g~75gのタンパク質を含む、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0044】
第8の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%であり、6重量%未満の灰分を含む、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0045】
第9の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%であり、3重量%未満の灰分をさらに含む、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0046】
第十の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%であり、0.7重量%未満のリンをさらに含む、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0047】
第十一の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%であり、0.3重量%未満のリンをさらに含む、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0048】
第十二の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である、コンパニオン動物のための組成物を含む栄養的に完全なペットフードを対象とする。
【0049】
第十三の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である、コンパニオン動物のための組成物を含む栄養的に完全なペットフードを対象とし、このペットフードはウェットペットフードである。
【0050】
第十四の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である、コンパニオン動物のための組成物を含む栄養的に完全なペットフードを対象とし、このペットフードはドライペットフードである。
【0051】
第十五の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含む有効量の食餌組成物を含むペットフードをコンパニオン動物に投与することを含む、コンパニオン動物において、高血糖、慢性炎症、代謝ストレス、または癌を治療する方法を対象とし、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である。
【0052】
第十六の態様では、本開示は、約35重量%超の脂肪、タンパク質、約3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含む有効量の食餌組成物を含むペットフードをコンパニオン動物に投与することを含む、コンパニオン動物において、高血糖、慢性炎症、代謝ストレス、または癌を治療する方法を対象とし、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%であり、食餌組成物は栄養的に完全なドッグフードである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
例示を目的として、本開示の原理は、その様々な例示的な実施形態を参照することによって説明される。本開示の特定の実施形態が本明細書に具体的に記述されているが、当業者であれば、同じ原理が同様に適用可能であり、他の装置および方法に採用されうることを容易に認識するであろう。本開示の実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、示される任意の特定の実施形態の詳細にその用途を限定しないことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、説明の目的のためであり、限定の目的のためではない。
【0054】
本発明で使用する場合、および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別様を規定しない限り、複数形を含む。成分の任意のクラスの単数形は、そのクラス内の一つの化学種を指すだけでなく、それらの化学種の混合物を指し、例えば、単数形の用語「MCFA」は、各々がまたMCFAであると考えられる化合物の混合物を指す場合がある。用語「a」(または「an」)、「一つ以上」、および「少なくとも一つ」は、本明細書では互換的に使用されうる。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」は、互換的に使用されうる。「含む(include)」という用語は、「含む(include)」と解釈されるべきであるが、これに限定されない。「含む(including)」という用語は、「含む(including)」と解釈されるべきであるが、これに限定されない。
【0055】
本明細書で使用される略語および記号は、別段の示唆がない限り、通常の意味を有する。
【0056】
記号「cP」は、センチポアズまたはミリパスカル秒を意味する。記号「kcal」は、キロカロリーまたは約4182Jを意味する。記号「°」は、角度および摂氏度を含む度を指す。
【0057】
略語「AAFCO」は、「米国飼料検査官協会」を意味し、「NRC」は栄養研究協議会を意味し、「ME」は代謝エネルギーを意味し、「KR」はケトン比を意味し、「DMB」は乾燥物質ベースを意味し、「MCT」は中鎖トリグリセリドを意味し、「MCFA」は中鎖脂肪酸を意味し、「GMO」は遺伝子改変生物を意味する。
【0058】
略語「wt%」は重量パーセントを意味する。
【0059】
数値を指す場合の用語「約」は、その数値の10%の範囲内の任意の数値を意味する。例えば、語句「約35重量%」は、31.5000重量%と38.5000重量%との間の数を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語または表現「可消化炭水化物」(以下、「炭水化物」)は、吸収後にエネルギーカロリーを提供することが知られている任意の食事性単糖類、またさらに哺乳類消化性糖分解酵素によって加水分解され得るデンプンを含むオリゴまたは多糖類などの糖の任意のポリマーを指してもよい。
【0061】
全体を通して使用されている通り、範囲は、その範囲内にある各値およびすべての値を示すための省略表現として使用される。範囲内の任意の値を、その範囲の末端として選択することができる。したがって、例えば「約35重量%超」という語句は、35重量%の値を含む。
【0062】
「コンパニオン動物」という語句は、家庭内コンパニオンとして、または1人以上の人間と日々密接に関係することで、身体的、感情的、行動的、および社会的ニーズを容易に満たすことができる、家畜または家庭内で飼育される動物を指す。一実施形態では、コンパニオン動物の定義に含まれる種は、イヌ(dogs)、イヌ科動物、ネコ(cats)、ネコ科動物、ウマ、ウサギ、フェレット、モルモット、および他の小型哺乳類を含む。別の実施形態では、コンパニオン動物の定義に含まれる種は、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、フェレット、モルモット、および他の小型哺乳類、鳥類、小型爬虫類、魚類、および家畜動物である。
【0063】
用語「イヌ」の定義は、コンパニオンドッグ、番犬、狩猟犬、放牧犬、および作業犬を含む。
【0064】
用語「ネコ」の定義は、飼いネコ、Felis catus、およびFelis silvestris catusを含む。「ネコ」という用語の定義は、家ネコおよび野良ネコを含む。用語「ネコ科動物(feline)」および「ネコ(cat)」は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、語句「アダルトペット」は「ペット」のサブセットを指し、例えば、約3歳~約8歳の飼育犬(イヌ科動物)および飼育ネコ(ネコ科動物)を含む。
【0066】
本明細書で使用される場合、語句「シニアペット」は「ペット」のサブセットを指し、例えば、約9歳以上の飼育犬(イヌ科動物)および飼育ネコ(ネコ科動物)を含む。
【0067】
「食餌組成物」という語句は、コンパニオン動物による消費のための食品、またはイヌによる消費のための食品を指す。この語句は広義に解釈されるべきものであり、その語句には、コンパニオン動物またはイヌが排他的に消費する食品、コンパニオン動物またはイヌが定期的に消費する食品、コンパニオン動物またはイヌが時折消費する食品、およびコンパニオン動物またはイヌが稀に消費する食品が含まれる。
【0068】
属を例示または定義するために使用される種のリスト内の任意のメンバーは、種のリストの他の任意のメンバーと相互に異なるか、重複するか、サブセットであるか、同等であるか、ほぼ同一であるか、同一である可能性がある。さらに、マーカッシュ群を列挙する場合など、明示的に記載されない限り、属を定義または例示する種のリストは公開されており、列挙する他の種と同様に、またはそれ以上に、属を定義または例示する他の種が存在しうることが示されている。
【0069】
さらに、本明細書内で引用される参照文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示における定義と、引用された参照文献における定義に矛盾がある場合、本開示が支配する。
【0070】
本開示は、コンパニオン動物に完全かつバランスの取れた栄養を提供する組成物を対象とする。組成物は、以下の特徴を有する:1.7以上のケトン比、低レベルの可消化炭水化物、および存在する脂肪の20%は中鎖トリグリセリドの形態である。さらに、一実施形態では、組成物はkcal当たりを基準に中程度のタンパク質を含む。さらに、一実施形態では、組成物は、ケトン食餌の利点の完全な発現を可能にする、一種の健康な微生物叢を促進することが知られている繊維の高レベルのブレンドを含む。さらに、一実施形態では、組成物は、低レベルの灰分もしくは低レベルのリン、またはその両方を含む。
【0071】
本開示の組成物は、コンパニオン動物用のドライフード形態にデンプンを多分に置き換えるように設計された繊維およびタンパク質のブレンドを含む。
【0072】
本開示の組成物の一つの利点は、組成物が、ケトン食餌の科学的および医学的に立証された正式な定義を超え、一方で、任意の既存のケト原性コンパニオン動物乾燥キブルおよびトリーツに見出せない特徴を提供することである。
【0073】
組成物は、通常一緒には使用されない食物成分を組み合わせて、プロセスにおいて重大な技術的課題を克服することによって、市販の製品よりも顕著な改善をもたらす。
【0074】
一実施形態において、本開示の組成物は、成体のイヌ科動物またはネコ科動物の乾燥メンテナンスキブルが7.5g/100kcal ME以下のタンパク質レベル、少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の乾燥物質ベースの繊維、6重量%以下、5重量%以下、または3.5重量%の可消化デンプンおよび/または糖、少なくとも35%重量の乾燥物質ベースの脂肪、少なくとも20%の中鎖トリグリセリドとしての脂肪、6重量%以下の灰分、1重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、または0.6重量%以下のリン、ならびに1.7より大きいケトン比(KR)を、全ての栄養素をME密度ベースでAAFCOおよびNRCレベルにスケールして、有するものである。
【0075】
一実施形態において、本開示の組成物は、7.5g/100kcal ME以下のタンパク質レベル、少なくとも15重量%の乾燥物質ベースの繊維、6重量%以下、5重量%以下、または3.5重量%以下の可消化デンプンおよび/または糖、少なくとも34%重量の乾燥物質ベースの脂肪、少なくとも20%の中鎖トリグリセリドとしての脂肪、7重量%以下の灰分、1重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、または0.6重量%以下のリン、ならびに1.5より大きいケトン比(KR)を、全ての栄養素をME密度ベースでAAFCOおよびNRCレベルにスケールして、有するイヌ科動物またはネコ科動物の乾燥メンテナンスキブルである。
【0076】
一実施形態において、本開示の組成物は、7.0g/100kcal ME未満のタンパク質レベル、少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の乾燥物質ベースの繊維、1.5重量%未満の可消化デンプンおよび/または糖、43%超の乾燥物質ベースの脂肪、20%超の中鎖トリグリセリドとしての脂肪、6重量%未満の灰分、1重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、または0.6重量%以下のリン、ならびに2.0より大きいケトン比(KR)を有する、イヌ科動物またはネコ科動物の乾燥ベイクトリーツである。
【0077】
乾燥キブルおよびトリーツ形態のための調合には、タンパク質および繊維の戦略的組み合わせを利用する。調合には、少なくとも二つの異なる目的を果たすタンパク質の広範なブレンドを採用する。第1に、タンパク質は消化性が高く、下部消化管の低い窒素負荷へと導く。第2に、これらのタンパク質は、見た目が良い、低デンプンの乾燥キブルの形成を助ける、食品生産機能特性を有する。
【0078】
同様に、調合にはまた、少なくとも二つの目的を果たす繊維の広範なブレンドも採用する。第1に、繊維は消化をバイパスし、腸内微生物叢に栄養を与える一方で、同時に植物ポリフェノールを提供してこの微生物叢の代謝を活性化する、多様なタイプの繊維である。これらの繊維およびポリフェノールは、ケトン食餌の抗発作有効性を促進することができる細菌の種類を増加させることが示されている(例えば、アッケルマンシア属およびパラバクテロイド)。第2に、これらの繊維は、見た目が良い、低デンプンの乾燥キブルの形成を助ける、食品生産機能特性を有する。
【0079】
調合は、タンパク質レベルに対して制御され、これは、本明細書に記載される高度に可消化であるタンパク質源の使用と共に、下部消化管の窒素負荷の低減を助ける。ケト原性食品は、健康な体重管理のためにしばしば用いられる。本開示の組成物が37重量%の(DMB)タンパク質を有するという事実にもかかわらず、これは典型的な例示的な市販の体重減少用のイヌ科動物用食品よりも多くのタンパク質であるが、代謝エネルギーベース当たりのグラムで評価された場合、タンパク質レベルはこの例示的な食品と同一である。本開示の組成物は、37.2g/100gのタンパク質DMB、8.2g/100kcalのMEを含有し、KR=1.7であり、一方で市販の比較用食餌は、28.4g/100gのタンパク質DMB、8.2g/100kcalのMEを含有するが、KR=0.4である。したがって、コンパニオン動物が同レベルのキロカロリーの食餌を摂食した場合、食物中のタンパク質は中程度の量のみである。本開示の組成物と比較して、コンパニオン動物食品の市販の例は、その食品中に過度に高いレベルのタンパク質を使用する。
【0080】
一実施形態では、ケトン比KRは、式によって定義される。
KR=(0.9×脂肪%+0.46×タンパク質%)/(炭水化物%+0.58×タンパク質%+0.1×脂肪%)
式中、脂肪%は、食餌中の脂肪の重量パーセントであり、タンパク質%は、食餌中のタンパク質の重量パーセントであり、炭水化物%は、炭水化物の重量パーセントである。この方程式は、
KR=(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)に書き換えられ、
式中、F、P、およびCはそれぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である。
【0081】
科学的および医学的に立証されたケト原性状態が導出されるケトン比の方程式は、タンパク質レベルを増加させると、全体的なKRが減少することを示す。これは、KR方程式の、分母中のタンパク質の余因子が、分子中のタンパク質の余因子よりも大きいため、明らかである(分子=0.46対分母=0.58)。
【0082】
ケトン比の方程式はまた、脂肪レベルの増加がKRを増加させることを示す。これは、分子の余因子が分母の余因子の9倍であるためである。
【0083】
これらの観察結果は、生化学的プロセスと一致しており、ほとんどのアミノ酸は糖原性であり、インビボでのその異化作用は、糖新生作用のプロセスを通してグルコースの産生につながる。本開示の組成物の二つの例、および二つの市販のキブル食餌CおよびDのケト原性解析を、それぞれ表2、3、4、および5に示す。比較食餌CおよびDの組成物は、主要栄養素の分析結果に基づいて、それぞれ1.15および0.97のKRを有する。しかしながら、本開示の組成物のキブル形態は、1.7のKRを有し、トリーツ形態は、KR=2.17を有する。
【0084】
KR=1.5のカットオフは、(科学的根拠なしに単に「ケト」を言葉にするマーケティング仕掛けではなく)食品の真の科学的および医学的に有効なケト原性について長く指定されてきた。例えば、Woodyatt、前掲書中を参照されたい。ヒトに対してケト原性であると称する食事は、最近KR基準に従って再評価されており、それらの内の少数しか真に基準を満たさない。Zilberter、前掲書中を参照されたい。この分析から、ケト原性であると主張するコンパニオン動物用の市販の食品が、この指定に対する科学的および医学的基準を順守していないことは明らかである。
【0085】
ケト原性状態を達成するための相乗効果をもたらす調合に重要な要素の一つは、中鎖トリグリセリド(MCT)としての、大部分の調合脂肪の存在であり、これは根本的にエネルギーのケト原性形態である。MCTは、長鎖脂肪酸含有トリグリセリドに対する親和力を超える親和力で、膵リパーゼにより中鎖脂肪酸(MCFA)に加水分解される。MCFAは概して、カプロン酸、ヘキサン酸、CH3(CH2)4COOH、C6:0、カプリル酸、オクタン酸、CH3(CH2)6COOH、C8:0、カプリン酸、デカン酸、CH3(CH2)8COOH、およびC10:0などの飽和カルボン酸からなる。カプリル酸とカプリン酸は両方とも、より一般的なMCFAの形態である。なぜなら、それらは、より長い鎖脂肪酸よりもはるかに大きな程度まで、ケトン産生を増加させる一方で、消化器系の不調を減少させるためである(すなわち、≧C12:0)。MCFAは、門脈循環を介して肝臓に直接吸収される。異化作用エネルギー産生中、MCFAは、ミトコンドリア内に往復輸送されるカルニチンを必要とせず、肝臓のケトン体に広範に転換され、その後全身循環へと運び出され、ケトン血症に至り、MCTが「ケト原性」と指定される。例えば、Bachら、前掲書中を参照されたい。MCTは、代謝状態および過体重状態を改変するための栄養処方において顕著である。一実施形態では、MCTは腸障壁完全性を増加させ、腸内微生物叢と相互作用して宿主の健康を改善する。MCTは、腸内微生物叢を改変する。これは、肥満個体の代謝の健康を改善するためのこれらの脂肪の作用機序である。例えば、Rialら、前掲書中を参照されたい。さらに、MCTは、食作用および酸化的殺細菌を含む好中球機能に影響を与え、これは腸内微生物叢の構成に影響を与え得る。例えば、Bellinati-Piresら、前掲書中を参照されたい。MCTは、炎症モデルにおいて腸障壁完全性にプラスの影響を与えることが示されており、これは全身循環における微生物代謝物の出現に影響を与える可能性がある。例えば、Lee & Kang、前掲書中を参照されたい。腸の炎症に関連し、MCTは細菌応答性炎症経路の活性を減少させ、大腸炎の減少に有効性を示している。例えば、Hanczakowskaら、前掲書中を参照されたい。腸内微生物叢に栄養を与え、活性化させることが知られている高レベルの繊維の使用と並行して、MCTを使用することが、一実施形態では、いずれの薬剤単独でも不可能な方法で消化器系の健康への利益を増大させる。
【0086】
本開示の組成物は、高レベルのMCTを含む。表1に開示される例示的なキブルは、栄養素の分析結果に基づいて、3.63重量%のカプリル酸および2.98重量%のカプリン酸を含む。二つの市販のコンパニオン動物食餌CおよびDはそれぞれ、0.02重量%未満のカプリル酸および0.02重量%未満のカプリン酸を含む。本開示の例示的なキブルにおけるMCTのレベルは、腸内微生物叢を改善し、宿主の健康を改善することが知られている高ケト原性脂肪の100倍超の高さである。重要なことに、一部の消化を逃れた脂肪およびカプリル酸は、腸内微生物および結腸細胞によるベータ酸化を介して、酪酸および3-ヒドロキシ酪酸に変換されることが知られている。酪酸は、結腸細胞の主要なエネルギー源であり、3-ヒドロキシ酪酸は、インビボでの一次ケトン体である。いかなる理論にも束縛されるものではないが、同時に生成される酪酸および3-ヒドロキシ酪酸は、相乗的健康利益を提供することが提示されており、それゆえ、本開示の組成物は、MCTとしてかなりの量の脂肪を提供することによって健康を大幅に改善すると予想される。例示的なキブルでは、7.7%の脂肪がMCT(DMB)として存在し、したがって総脂肪レベルが36%(DMB)で、MCTは総脂肪の約20%を含む。
【0087】
一実施形態では、本開示の組成物は、低レベルの灰分(<6%、<7%など)を有し、この灰分を、中程度のタンパク質レベルおよび高繊維含有量と組み合わせて、腎機能に対するストレス要因の低減を補助する場合、成体コンパニオン動物に対する多数の給餌指標(feeding indication)の下で使用することができる。例えば、組成物は、約7重量%未満の灰分、約6重量%未満の灰分、または約5.5重量%未満の灰分を有してもよい。表1に開示される例示的なキブルは、栄養素の分析結果に基づいて、5.5重量%の灰分、および0.67重量%のリンを含む。本明細書に開示される他の実施形態は、約6.2重量%の灰分、約5.9重量%の灰分、約7.0重量%の灰分、約6.1重量%の灰分、約6.7重量%の灰分、または約6.1重量%の灰分を含み得る。本明細書に開示される他の実施形態はまた、約0.63重量%のリン、約0.72重量%のリン、約0.58重量%のリン、約0.62重量%のリン、または約0.56重量%のリンを含んでもよい。比較用の市販の例Cは、栄養素の分析によって決定されるように、8.6重量%の灰分DMBおよび1.2重量%のリンDMBを含む。比較用の市販の例Dは、栄養素の分析によって決定されるように、9.9重量%の灰分DMBおよび1.2重量%のリンDMBを含む。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本開示の組成物は、コンパニオン動物の腎機能に対してより健康的である。
【0088】
調合物は、MEに従って添加された微量栄養素を有し、その結果、ビタミンおよびミネラルのレベルの増加(DMBパーセント基準で)が含まれ、この食品は、従来のデンプン系キブルと比較して有意により高いエネルギー含有量を有するので、健康的な体重を維持するために与えられた時に、コンパニオン動物がこの食品のより少ないグラム数を摂取するであろうという事実を説明する。
【0089】
一実施形態では、本開示の組成物は、乾燥キブルまたはトリーツであり、機能性タンパク質および繊維が、下部消化管の窒素負荷を低減し、ならびに腸内微生物叢に食物と栄養とを与える。低灰分プロファイルの遵守は、この削減の実践による利益をさらに高める。そのような組成物のケトン比KRは、1.5より大きく、これはいかなる市販のコンパニオン動物食よりも高い。成分の直交機能性の組み合わせは(例えば、栄養および食品生産)、新規であり、自明ではない。
【0090】
本開示は、約34重量%超の脂肪、または35重量%超の脂肪、タンパク質、6重量%未満の炭水化物、または3.5重量%未満の炭水化物、および約10重量%超の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%である、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。
【0091】
本開示の組成物は、脂肪、または脂肪(fats)を含む。脂肪は、炭水化物およびタンパク質とともに、三つの中心的な主要栄養素のうちの一つである。脂肪分子は、主に炭素原子および水素原子からなり、したがって疎水性であり、有機溶媒に可溶性であり、水に不溶性である。
【0092】
脂肪という用語は広く解釈され、コレステロール、リン脂質、トリグリセリド、脂質、および食用油を含むべきである。脂肪の消化によって遊離される一部の脂肪酸は、より単純な成分から体内で合成することができないため、必須と称される。この用語は、アルファ-リノレン酸、およびリノール酸などの必須脂肪酸を含む。この用語はまた、必須脂肪酸および他の脂肪から合成され得る、体が必要とする脂質を含む。脂肪という用語はまた、膵臓で産生されるリパーゼによって体内で分解される脂肪および他の脂質を指す。
【0093】
脂肪という用語はまた、飽和脂肪である脂肪が、鎖内の炭素の間に二重結合を有しておらず、不飽和脂肪が、鎖内に一つ以上の二重結合炭素を有し、油および脂肪が、複数の二重結合、および多価不飽和脂肪を有することを意味する。不飽和脂肪には、自然界で最も一般的なシス脂肪およびトランス脂肪が含まれる。脂肪はまた、触媒の存在下での水素との反応によって変化した不飽和脂肪を含み、飽和脂肪を作る。
【0094】
一実施形態では、脂肪は粗脂肪である。一実施形態では、脂肪は精製脂肪である。粗脂肪または脂肪は、肉、食肉副産物、魚油、および植物を含む、当業者に公知の任意の種々の源より供給されてよい。植物性脂肪源としては、小麦、亜麻仁、ライ麦、大麦、米、モロコシ、トウモロコシ、オート麦、アワ、コムギ胚芽、トウモロコシ胚芽、大豆、ピーナッツ、および綿実、並びにこれらおよび他の植物性脂肪源由来の油が挙げられる。組成物の脂肪含有量は、当業者に公知の任意の数の方法により判定され得る。脂肪は、精選白色獣脂および植物油などの脂肪源に由来し得る。
【0095】
一実施形態では、本開示の組成物は、約30重量%超の脂肪、約34重量%超の脂肪、または約35重量%超の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約37重量%超の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約40重量%超の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約42重量%超の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約45重量%超の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約50重量%超の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約55重量%超の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約60重量%超の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約65重量%超の脂肪を含む。
【0096】
一実施形態では、本開示の組成物は、約35重量%(すなわち、31.5重量%~約38.5重量%)~約70重量%の脂肪(すなわち、63重量%~77重量%)を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約40重量%~約70重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約45重量%~約70重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約50重量%~約70重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約60重量%~約70重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約35重量%~約60重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約40重量%~約60重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約45重量%~約60重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約50重量%~約60重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約35重量%~約50重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約40重量%~約50重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約45重量%~約50重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約35重量%~約45重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約40重量%~約45重量%の脂肪を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約35重量%~約40重量%の脂肪を含む。
【0097】
一実施形態では、脂肪は少なくとも20重量%の中鎖トリグリセリドからなる。トリグリセリド、トリアシルグリセロール、またはトリアシルグリセリドは、グリセロールと三つの脂肪酸とに由来するエステルである。トリグリセリドは、哺乳動物および他の脊椎動物における体脂肪、および植物脂肪の主な成分である。トリグリセリドはまた、血液中に存在し、筋肉、脂肪組織、肝臓、および他の体組織からの脂肪の移動を可能にする。
【0098】
用語「トリグリセリド」は広く定義される。トリグリセリドの定義には、飽和トリグリセリドおよび不飽和トリグリセリドが含まれる。飽和トリグリセリドは融点がより高く、室温で固体である可能性が高い。不飽和脂肪は、炭素原子の一部の間に二重結合を有する。不飽和トリグリセリドは、より低い融点を有し、室温で液体である可能性が高い。
【0099】
「中鎖トリグリセリド」という語句は、脂肪酸のトリグリセリドが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、およびラウリン酸を含む、6~12個の炭素原子長であることを意味する。6~12個の炭素の脂肪酸の追加的な例には、ヘキサン酸、CH3(CH2)4COOH、エナント酸、ヘプタン酸、CH3(CH2)5COOH、エナンティック酸(enantic acid)、オクタン酸、CH3(CH2)6COOH、ペラルゴン酸、ノナン酸、CH3(CH2)7COOH、デカン酸、CH3(CH2)8COOH、ウンデシル酸、ウンデカン酸、CH3(CH2)9COOH、およびそれらの混合物を含む。
【0100】
中鎖トリグリセリドは、天然由来または合成のいずれかであってもよい。中鎖トリグリセリドオイルは、SASOL Limited(南アフリカ共和国、サントン)からMiglyol 812、Croda Int’l (英国、ヨークシャー州、スナイス)からCRODAMOL GTCC-PN、Stepan Co.(米国、イリノイ州、ノースフィールド)からNeobees M-5オイル、として市販されている。他の低溶解性中鎖オイルも本開示で使用され得る。
【0101】
一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、少なくとも20重量%、少なくとも21重量%、少なくとも22重量%、または少なくとも23重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、少なくとも25重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、少なくとも30重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、少なくとも35重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、少なくとも40重量%の中鎖トリグリセリドからなる。
【0102】
一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約10重量%~約35重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約15重量%~約35重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約20重量%~約35重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約25重量%~約35重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約10重量%~約25重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約15重量%~約25重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約20重量%~約25重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約10重量%~約20重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約15重量%~約20重量%の中鎖トリグリセリドからなる。一実施形態では、食餌組成物の脂肪は、約10重量%~約15重量%の中鎖トリグリセリドからなる。
【0103】
本開示の食餌組成物の成分の一つは、粗タンパク質である。植物源、動物源、または両方を含む、当業者に公知の任意の種々の供給源により、粗タンパク質を供給してもよい。動物源としては、例えば、肉、食肉副産物、海産物、乳製品、卵などが挙げられる。肉には、例えば、家禽、魚および哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)の肉が含まれる。食肉副産物としては、例えば、肺、腎臓、脳、肝臓、および胃腸(全てまたは本質的に全てのそれらの内容物を除いた)が挙げられる。植物性タンパク質には、大豆、綿実、およびピーナッツなどの植物タンパク質が含まれる。タンパク質はインタクトであり、殆ど完全に加水分解されているか、部分的に加水分解されていることができる。食餌のタンパク質含有量は、当業者に公知のいくつかの方法、例えば、公式分析化学者協会(Association of Official Analytical Chemists)が発行しているOfficial Methods of Analysis(「OMA」)の988.05法などで測定することができる。本明細書に開示される組成物の「粗タンパク質」の量は、当業者に周知の方法に従って組成物の窒素の量に基づいて決定され得る。
【0104】
用語「タンパク質」は、ポリペプチド、ペプチド、またはアミノ酸のポリマーを意味する。この用語は、自然発生的および非自然発生(合成)ポリマーおよび人工化学模倣品が一つ以上のアミノ酸に置換されているポリマーを包含する。この用語はまた、同じまたは実質的に同じ特性を有し、元の配列と同じまたは実質的に同じ機能を実行する断片、バリアント、および相同体を包含する。用語は、約2~1000、4~800、6~600、および8~400アミノ酸を含有するポリマーを含む、任意の長さのポリマーを包含する。この用語は、合成され、天然源から単離および精製されるアミノ酸ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、または「タンパク質」は互換的に使用される。
【0105】
タンパク質は、本開示の組成物中に無視できない量で存在する。一実施形態では、タンパク質レベルは約1重量%超である。一実施形態では、本開示の組成物は、約1重量%~約30重量%のタンパク質を含む。
【0106】
一実施形態では、本開示の組成物は、1000kcalの代謝エネルギー当たり約4.5g~75gのタンパク質を含む。特許請求される組成物は、約3000~約5000kcal/kgの代謝エネルギー含有量を含み得る。
【0107】
食餌の代謝エネルギー(ME)は、糞便、尿、および可燃性ガス中に排泄されるエネルギーを減算した後の、食餌の摂取時に動物に利用可能なエネルギーである。代謝エネルギー値は、米国飼料管理協会役員会:公式刊行物、ジョージア州、アトランタ、160~165ページ(2006)によって詳述されるなど、当業者に公知の方法によって決定され得る。
【0108】
本開示の食餌組成物の成分の一つは、炭水化物である。本明細書で使用する用語「炭水化物」には、加水分解されるとエネルギーとして代謝される多糖類(例えば、デンプンやデキストリンなど)や糖類(例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、グルコース、フルクトースなど)が含まれる。本明細書に開示される組成物に含有するのに好適な炭水化物源の例としては、限定されるものではないが、トウモロコシ、グレインソルガム、小麦、大麦、および米が挙げられる。
【0109】
一実施形態では、炭水化物は、トウモロコシ、小麦、蒸留用乾燥穀物(distiller’s dried grain)、コーンスターチ、米、コーングルテンミール、およびそれらの混合物からなる群から選択された炭水化物源から得られる。
【0110】
一実施形態では、炭水化物構成要素は、一つ以上の炭水化物源の混合物を含む。好適な炭水化物源は、例えば、オート麦繊維、セルロース、ピーナッツ殻、ビートパルプ、パーボイルドライス、コーンスターチ、コーングルテンミールおよびそれらの混合物からなる群から選択される炭水化物を含む。炭水化物源のバランスを適切にとることによって、当業者は、最終生成物のテクスチャを操作することができる。例えば、短鎖多糖類は、粘り気や糊気が出やすく、長鎖多糖類は、短鎖よりも粘り気や糊気が出にくく、このハイブリッド食品の所望の質感は、長鎖多糖類および天然または加工デンプン、セルロースなどの加工デンプンによって達成される。
【0111】
炭水化物混合物は、追加の塩、スパイス、調味料、ビタミン、ミネラル、風味剤、着色剤などの任意の構成要素を追加的に含み得る。任意の添加剤の量は、動物の異なるライフステージに対する栄養要件に少なくとも部分的に依存する。
【0112】
一実施形態では、本開示の組成物は、約6重量%未満の炭水化物、約5重量%未満の炭水化物、約4重量%未満の炭水化物、または約3.5重量%未満の炭水化物を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約2.5重量%未満の炭水化物を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約2重量%未満、または1.5重量%未満の炭水化物を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%未満の炭水化物を含む。
【0113】
一実施形態では、組成物は、約0.5重量%~約6重量%の炭水化物を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%~約3.5重量%の炭水化物を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約1.5重量%~約3.5重量%の炭水化物を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約2.5重量%~約3.5重量%の炭水化物を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%~約2.5重量%の炭水化物を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約1.5重量%~約2.5重量%の炭水化物を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%~約1.5重量%の炭水化物を含む。
【0114】
本開示の食餌組成物の成分の一つは、食物繊維である。食物繊維とは、動物の消化酵素による消化に耐性を有する植物の構成要素を意味する。食物繊維、または総食物繊維は、不溶性繊維および可溶性繊維からなる。
【0115】
本明細書で使用される場合、語句「可溶性繊維」は、消化中に水を引き寄せ、栄養素吸収の速度を遅くする食物繊維を指す。可溶性繊維は、小腸での消化および吸収に対して耐性があり、かつ、大腸で完全にまたは部分的に発酵されるものであり、オートブラン、種、マメ、および例えばビートパルプ、グアーガム、チコリーの根、オオバコ、ペクチン、ブルーベリー、クランベリー、カボチャ、リンゴ、オート麦、マメ、柑橘類、大麦、またはエンドウなどの特定の果物および野菜を含む、多様な植物源に典型的には見いだされる。語句は、当業者に明らかであるように、本明細書に開示される組成物に適した可溶性繊維の任意の供給源を包含する。
【0116】
セルロース、全麦製品、小麦オート麦(wheat oat)、コーンブラン、亜麻仁、ブドウ、セロリ、インゲン豆、カリフラワー、ジャガイモの皮、果物の皮、野菜の皮、ピーナッツ殻、および大豆繊維を含む任意の種々の源から、不溶性繊維を供給してよい。
【0117】
粗繊維としては、例えば、米、トウモロコシ、およびマメ等の穀物の殻のような、穀物等の植物の細胞壁および細胞含有物に含有される難消化性構成要素が挙げられる。
【0118】
一実施形態では、本開示の組成物は、約10重量%超の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約13重量%超の繊維を含む。一実施形態では、組成物は、約15重量%超の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約16重量%超の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約20重量%超の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約25重量%超の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約30重量%超の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約40重量%超の繊維を含む。
【0119】
一実施形態では、本開示の組成物は、約10重量%~約40重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約13重量%~約40重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約16重量%~約40重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約20重量%~約40重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約25重量%~約40重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約30重量%~約40重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約10重量%~約30重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約13重量%~約30重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約16重量%~約30重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約20重量%~約30重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約25重量%~約30重量%の繊維を含む。
【0120】
一実施形態では、本開示の組成物は、約10重量%~約25重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約13重量%~約25重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約16重量%~約25重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約20重量%~約25重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約10重量%~約20重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約13重量%~約20重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約16重量%~約20重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約10重量%~約16重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約13重量%~約16重量%の繊維を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約10重量%~約13重量%の繊維を含む。
【0121】
本開示はまた、35重量%を超える(すなわち、31.5重量%~38.5重量%)脂肪、タンパク質、3.5重量%未満の炭水化物、および約10重量%超の繊維を含み、ケトン比が約1.5よりも大きい、コンパニオン動物の食餌組成物も対象とする。
【0122】
ケトン比(KR)は、抗ケト原性因子の総和に対するケト原性因子の総和の比である:KR=K/AK。方程式の抗ケト原性部分は1に等しいため、KRは常に2:1、4:1などとして、または単に「:1」部分を含まない数で表される。したがって、ケトン比1.7は、ケトン比1.7:1である。
【0123】
ケト原性分子の酸化と両立する最大比は、KR=1で可能となり、1未満のKRを抗ケト原性、2超のKRをケト原性とする。食品のKRは、ざっくり言えば、脂肪含有量が、炭水化物とタンパク質の合計の何倍あるかを表す。(The KR of a food in terms of times the fat content exceeds the amount of carbohydrate and protein combined,roughly.)
【0124】
ケトン比は、
KR=(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)の式で定義され、
式中、Fは脂肪のグラムであり、Pはタンパク質のグラムであり、Cは炭水化物のグラムである。
【0125】
一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は、約1.5よりも大きい。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は、約1.7よりも大きい。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は、約2よりも大きい。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は、約2.5よりも大きい。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は、約3よりも大きい。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約4よりも大きい。
【0126】
一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約1.5~約4である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約1.7~約4である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約2~約4である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約2.5~約4である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約3~約4である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約1.5~約3である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約1.7~約3である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約2~約3である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約2.5~約3である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約1.5~約2.5である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約1.7~約2.5である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は、約2~約2.5である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約1.5~約2である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約1.7~約2である。一実施形態では、本開示の組成物のケトン比は約1.5~約1.7である。
【0127】
本開示は、35重量%超の脂肪(すなわち、31.5重量%~38.5重量%)、タンパク質、3.5重量%未満の炭水化物、および少なくとも10重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも16重量%の繊維を含み、ここで、(0.9F+0.46P)/(0.1F+0.58P+C)は約1.5より大きく、F、P、およびCは、それぞれ、脂肪、タンパク質、および炭水化物の重量%であり、追加の成分をさらに含む、コンパニオン動物のための食餌組成物を対象とする。脂肪、タンパク質、炭水化物、および繊維は主要栄養素とみなされるが、これらの追加の成分は微量栄養素である。
【0128】
本開示はまた、食餌組成物を含む栄養的に完全なペットフードも対象とする。
【0129】
本開示の組成物中に発生する微量栄養素には、コンパニオン動物に推奨または許容可能なレベルの微量ミネラル、ビタミン、関連する化合物およびその供給源が含まれる。微量ミネラルの例としては、ホウ素、コバルト、クロム、銅、ヨウ素、鉄、マンガン、モリブデン、セレン、および亜鉛が挙げられる。ビタミンおよび関連化合物の例としては、ビタミンB複合体、ビタミンB1、チアミン、ビタミンB2、リボフラビン、ビタミンB3、ナイアシン、ビタミンB5、パントテン酸、ビタミンB6、ピリドキシン、ピリドキサル-5-リン酸、ピリドキサミン、ビタミンB7、ビオチン、ビタミンB9、葉酸、ビタミンB12、コバラミン、コリン、ビタミンA、レチノール、ビタミンC、アスコルビン酸、ビタミンE、トコフェロール、トコトリエノール、ビタミンK、ビタミンK1、フィロキノン、ビタミンK2、メナキノン、カロチノイド、アルファカロチン、ベータカロチン、クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ゼアキサンチンが挙げられる。
【0130】
一実施形態では、本開示の組成物は、灰分を含む。「灰分」は、有機でも水でもない化合物からなり、一般的に生物学的材料の燃焼によって生成される。灰分は、当業者に公知の任意の数の方法により判定され得る。
【0131】
一実施形態では、本開示の組成物は、約6重量%超の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約7%未満の灰分、または約6重量%未満の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約4重量%未満の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約2重量%未満の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約1重量%未満の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%未満の灰分を含む。
【0132】
一実施形態では、組成物は、約0.5重量%~約7重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%~約6重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約1重量%~約6重量%、または約7重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約2重量%~約6重量%、または約7重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約4重量%~約6重量%、または約7重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%~約4重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約1重量%~約4重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約2重量%~約4重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%~約2重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約1重量%~約2重量%の灰分を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%~約1重量%の灰分を含む。
【0133】
一実施形態では、本開示の組成物は、低レベルのリンを含む。食餌性リンのレベルを低下させることは、腎臓病の進行を遅らせ、寿命を延ばすとされてきた。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.7重量%未満(すなわち、約0.63重量%未満~約0.77重量%未満)のリンを含む。例えば、組成物は、約0.77重量%未満、約0.7重量%未満、または約0.63重量%未満のリンを含み得る。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.5重量%未満のリンを含む。一実施形態では、本開示の組成物は、約0.3重量%未満のリンを含む。
【0134】
水分は、食餌組成物中の水の量である。乾燥キブルは6~10%、セミモイストフードは15~30%、およびウェットフードは約75%の水分含有量を有する傾向がある。
【0135】
栄養的に完全なペットフードは、ビタミン、ミネラル、充填剤、嗜好性エンハンサー、結合剤、風味剤、安定剤、乳化剤、甘味料、着色剤、緩衝剤、塩、コーティング材等の当業者に公知の追加の原料を含む。安定剤には、防腐剤、協力剤および捕捉剤、包装ガス、安定剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、および湿潤剤などの組成物の貯蔵寿命を増加させる傾向がある物質が含まれる。乳化剤および/または増粘剤の例としては、ゼラチン、セルロースエーテル、デンプン、デンプンエステル、デンプンエーテル、および加工デンプンが挙げられる。各組成物構成要素、食品原料、および他の原料の具体的な量は、組成物に含まれる特定の構成要素や原料、患畜の種、患畜の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食餌内容、動物の消費率、治療対象となる疾患の種類など、さまざまな要因によって異なる。したがって、構成要素および原料の量は大きく異なり得、本明細書に記載される好ましい割合から逸脱し得る。
【0136】
食品組成物は、当業者に公知の従来の食品調製プロセスを使用して、缶詰またはウェット形態で調製され得る。通常、粉砕した動物タンパク質組織を、魚油、穀粒、バランス原料、特殊用途向け添加物(例えば、ビタミンおよびミネラル混合物、無機塩、セルロースおよびビートパルプ、嵩高剤等)ならびに処理に十分な量の水などのその他の原料と混合する。これらの原料は、構成要素のブレンド中に加熱を行うのに好適な容器中で混合する。例えば、直接蒸気注入、または熱交換器を備えた容器を使用する等の、任意の好適な方法を使用して、混合物の加熱を行う。最後の原料の添加後、混合物は約10℃~約100℃の温度に加熱される。この範囲外の温度は許容可能であるが、他の加工助剤を使用しないと商業的に実用的でない場合がある。適切な温度まで加熱をすると、材料は通常、粘性液体の形態となるであろう。粘性液体を缶に詰める。蓋を付け、容器を密閉する。次いで、密閉した缶を、内容物を滅菌するために設計した従来の装置の中に配置する。殺菌は、通常、約110℃を超える温度まで、使用する温度、組成物、および類似の要因に依存して、適切な時間加熱することにより達成することができる。本開示の組成物は、調製の前、最中、または後に、食品組成物に添加され得る。
【0137】
食品組成物は、当業者に公知の従来のプロセスを使用して、乾燥形態で調製され得る。通常、動物性タンパク質、植物性タンパク質、穀物等の乾燥原料を粉砕して、混合する。次に、脂肪、油、動物性タンパク質、水等を含む湿性または液体の原料を加え、乾燥混合物と混合する。次に、混合物をドライフード片へと加工する。
【0138】
食品組成物は、例えば、動物食品用のキブル、トリーツ、およびおもちゃなど、組成物をコンパニオン動物に与えるのに便利な任意の形態であり得る。一般に、乾燥原料と湿った原料の混合物を、高圧及び高温にて機械操作にかけ、小さな開口部から押し出して、回転ナイフでキブルに切断する押出成形プロセスを使用して、キブルを形成する。次に、湿性キブルを乾燥させて、随意に、風味剤、脂肪、油類、粉末等の、一つ以上の局所コーティング材でコーティングする。キブルはまた、押出成形ではなくベーキング法を用いてドウより作製することができ、この方法では、ドウをモールド内に配置した後、乾燥加熱プロセスを行う。トリーツには、例えば、イヌ用の骨やイヌ科動物向けのビスケットなど、食事の時間ではない間に、動物に食欲を起こさせるために与えられる組成物が含まれる。トリーツは栄養があってもよく、組成物は一つ以上の栄養素を含むか、食品様組成物を有し得る。栄養のないトリーツは、無毒性の任意の他のトリーツを包含する。組成物または構成要素は、トリーツにコーティングされるか、トリーツに組み込まれてもよく、またはその両方であってもよい。本開示のトリーツは、ドライフードに使用されるものと類似の押出成形または焼成加工により調製され得る。また、既存のトリーツ形状の外側に組成物をコーティングしたり、既存のトリーツ形状に組成物を注入したりするために、他の加工方法を使用することもできる。おもちゃは、人工骨のような噛むことのできるおもちゃや、動物にとって魅力的な自然の食べ物を模した食品組成物などを含む。本開示の食品組成物は、おもちゃを含むことができるか、またはおもちゃの表面上もしくはおもちゃの構成要素の表面上にコーティングを形成することができる。組成物は、おもちゃの部分的にか、またはおもちゃの完全なる全体に、またはその両方に組み込まれてもよい。一実施形態では、組成物は、意図された使用動物によって経口的にアクセス可能である。本開示は、部分的に消費可能なおもちゃ、例えばプラスチック部品からなるおもちゃや、完全に消費可能なおもちゃ、例えば各種人工骨やそれに類する食品などを包含する。さらに、本開示は、ヒトと非ヒトの両方の使用のためのおもちゃを包含し、特にコンパニオン動物、農場動物、および動物園の動物の使用のためのおもちゃ、さらに特にネコ科動物とイヌ科動物の使用のためのおもちゃを包含する。
【0139】
本開示はまた、有効量の食餌組成物を含むペットフードを動物に与えることによって、コンパニオン動物の健康を改善する方法を対象とする。ケトン食餌ペットフードは、高血糖、慢性炎症、代謝ストレス、および癌を含む、いくつかの兆候または状態に適用される。食餌組成物を含むペットフードの投与は、動物の代謝をグルコース変換代謝から脂肪燃焼代謝へシフトさせる。
【0140】
少なくとも一つの実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物の任意の一つ以上の構成要素または原料は、複数の機能または目的を提供してもよく、特に、ケト原性を増大させるか、または食事性ケトーシスの対象の健康を増強するための、および高脂肪含有レベルを有する耐久性のある嗜好性キブルの調合を助けるための、両方の栄養上の利点を提供する構成要素が選択された。
【0141】
一実施形態では、組成物は、低灰分であり、生物利用可能性が高いという点で、およびコンパニオン動物の栄養に十分な量ですべての必須アミノ酸を含有するという点の両方で、栄養に有益であるタンパク質源を含む。さらに、これらのタンパク質の第2の群は、摂取後のアミノ酸栄養の送達を早める、消化しやすいように調理済みの加水分解物である。ケト原性乾燥キブル生産の観点からは、選択されたタンパク質は第1に、業界で水活性であると測定されるタンパク質、特に、加工中に導入される水および蒸気を吸収するのに充分な親水性および吸湿性であるタンパク質であってもよい。第2に、タンパク質は、得られたキブル製品が輸送および消費に対して耐久性があるように、結合の要素を完成した乾燥キブルに提供し得る。第3に、タンパク質の供給源は、大量の食物性可消化炭水化物を含有してはならない。好ましくは、タンパク質供給源中の可消化炭水化物レベルは5%未満、さらにより好ましくは3%未満、さらにより好ましくは2%未満である。第3の点に関して、これは、タンパク質供給源が肉ではない(例えば、乳製品または野菜由来である)場合、タンパク質濃縮物ではなくタンパク質単離物の使用を伴うことが好ましい。前述の栄養利益および生産利益の両方を提供するために、一実施形態は、以下の一つ以上のインタクト(非加水分解)タンパク質を含み得る。1)10%未満の灰分、10%未満の脂肪を含む、肉タンパク質単離物(供給源が豚肉、牛肉、ヒツジ、ヤギ、鳥類、魚、貝);2)15%未満の灰分、20%未満の脂肪を含む、乾燥肉(供給源が豚肉、牛肉、ヒツジ、ヤギ、鳥類、魚、貝);3)(ニワトリ、七面鳥、ダチョウ)属から、乾燥させた全鳥卵または卵白(10%未満の灰分、50%未満の脂肪);4)(ウシ、ヤギ(Capra aegagrus hircus)、ヒツジ、ラクダ、アメリカバイソン、スイギュウ)属、および関連する属から、牛乳、カゼインまたはホエイタンパク質単離物(10%未満の灰分、10%未満の脂肪);5)粘着性のタンパク質(Glutinous protein)が、Triticum spp.コムギ属の穀物から抽出される;6)豚肉、牛肉、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、または魚類由来のゼラチンを含むコラーゲン動物タンパク質;および/または7)エンドウ豆、レンズマメ、豆、穀物、塊茎、または前述のレベル未満の食物性可消化炭水化物を有するという条件の他の供給源由来であり得る、植物由来のタンパク質単離物(10%未満の灰分、10%未満の脂肪、10%未満の繊維)。この実施形態は、1)約30%以上の加水分解の程度(元のタンパク質中の隣接アミノ酸間のペプチド結合の約30%超が遊離アミノ末端に加水分解されている、および/または2)約1000ダルトン~約100,000ダルトンの平均分子量、を有する、一つ以上の消化しやすいように調理済みのタンパク質加水分解物を含み得る。これらの加水分解物は、以下から選択され得る:1)10%未満の灰分、10%未満の脂肪を含む、加水分解肉タンパク質単離物(供給源が豚肉、牛肉、ヒツジ、ヤギ、鳥類、魚、貝);2)15%未満の灰分、20%未満の脂肪を含む、加水分解乾燥肉(供給源が豚肉、牛肉、ヒツジ、ヤギ、鳥類、魚、貝);3)(ニワトリ、七面鳥、ダチョウ)属から、加水分解された乾燥させた全鳥卵または卵白(10%未満の灰分、50%未満の脂肪);4)(ウシ、ヤギ(Capra aegagrus hircus)、ヒツジ、ラクダ、アメリカバイソン、スイギュウ)属、および関連する属から、加水分解された乳、カゼインまたはホエイタンパク質単離物(30%超程度の加水分解、10%未満の灰分、10%未満の脂肪);および/または5)豚肉、牛肉、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、または魚由来のゼラチンを含む加水分解コラーゲン動物タンパク質。
【0142】
別の実施形態では、組成物は、腸内微生物叢に栄養を与える、および許容可能な便の質を促進する、という点の両方のコンパニオン動物栄養に対して利益をもたらす、食物性非消化性繊維の供給源を含む。これらの繊維はまた、上述の水活性タンパク質と協働して作用し、真にケト原性の主要栄養素調合を支持することができる基質を形成するという点で、ケト原性乾燥キブル生産に二重利益を提供する。原料は、セルロース、リグニン、ヘミセルロース、ペクチン、アルギン酸塩、変性セルロース(メチルセルロース、ヒドロキシイソプロピルセルロースを含む)、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を提供するように選択され得る。同様に、好ましくは、約1000を超える平均多糖類の重合度を有し、および以下の単糖類、すなわち、グルコース、アラビノース、キシロース、マンノース、ガラクトース、および/または関連する糖または糖酸(例えば、ガラクツロン酸)から構成される繊維を含有してもよい。二重機能性繊維を提供するために、原料は、精製セルロース、柑橘類パルプ、ピーカン殻粉末、ビートパルプ、クランベリーパルプ、リンゴパルプ、亜麻仁、オオバコ、オートブランという供給源または関連する供給源を、単独でまたはそれらから組み合わせて使用され得る。
【0143】
一実施形態では、組成物は、食物中鎖トリグリセリド(MCT)の供給源を含む。これらのMCTは、脂肪として貯蔵される代わりにケトンに熱心に変換されることによって、食後のケトン血症を増加させる。さらに、それらは、その固有の特性である低粘度、自己酸化の影響を受けにくいことにより、ケト原性キブルの生成に利益をもたらす。これらのMCTは、低温(標準冷却温度4℃を含む)で液体である。低粘度は、脂肪エネルギーをより良く乾燥キブルに浸漬することを容易にし、可能にする。さらに、MCTの酸化安定性は、味覚保存の増加および酸敗の減少に役立ち、これは特に疾患または好みによる食欲不良のペットにおいて、食物摂取量を改善するはずである。MCTを提供する原料は、分留パーム脂肪、ココナッツ脂肪、またはバター脂肪から誘導され得る。これらの供給源は、構成脂肪酸としてC8:0オクタン酸および/またはC10:0デカン酸を有するMCTとして50%超の脂肪エネルギーを供給することが好ましい。C8:0およびC10:0は、C8:0/C10の比率で、好ましくは0.99~0.01、より好ましくは0.99~0.2、最も好ましくは0.99~0.4である。
【0144】
一実施形態では、組成物は、アミロペクチンの形態の可消化炭水化物デンプンの供給源を含む。これは可消化デンプンであり、その含有は食事のケト原性を減少させるが、顕著なアミロースを含まない純粋なアミロペクチンは、乾燥キブルの見た目のよさを改善することができる深く水活性デンプンである。アミロペクチン含有物の適切な調合レベルが選択される場合、全体的な乾燥キブルのケトン比は、1.5を超えて保存されてもよく、一方で、コンパニオン動物に対する嗜好性および食物受容性を改善するための見た目のよさを強化してもよい。ケト原性乾燥キブル調合が、食物繊維が低くあることが好ましい場合、約3重量%未満、約2重量%未満、またはそれよりも低いなどの低レベルでのアミロペクチン含有は、残留水活性繊維およびタンパク質と相乗効果を発揮して、喜ばしく、嗜好性のある製品を製造し得る。アミロペクチンを提供する原料は、ジャガイモ(または関連する塊茎)または米(または他の穀物)に由来する場合がある。これらの供給源は、90%超のアミロペクチンおよび10%未満のアミロースを供給することが好ましい。
【0145】
ケトン食餌は、しばしば循環系および尿系の酸性代謝負荷を誘発する場合があることが理解されるべきである。このように、クエン酸カリウムは、腎臓結石の発生または形成を低減するために、本明細書に開示されるペットフード食品または組成物に組み込まれてもよい。クエン酸カリウムは、尿路結石の溶解を含む、泌尿器の健康に利益を提供し得る。クエン酸カリウムのペットフード組成物への含有は取るに足らないことでも、明らかなことでもないため、クエン酸カリウムを含有するケト原性コンパニオン動物食品は、現在存在しないことに留意されたい。例えば、クエン酸カリウムの組み込みは、以下に限定されないが、カチオンおよびアニオン、残留カリウム、結果として生じる尿pH、全体的な嗜好性、またはそれらの組み合わせを含む、様々な因子/変数の非自明なバランス化を必要とする。本開示は、クエン酸カリウムを含むためのそれらの重要なハードルを克服し、その後、一例よりもさらに、循環血中クエン酸塩を増加させ、尿pHを修正することを立証する。したがって、幾つかの実施形態では、組成物は、1キログラムの代謝体重当たり1~6ミリ当量(mEq)のクエン酸カリウム(1~6mEq K3クエン酸塩/kg0.75)を好ましくは提供するのに十分な量でクエン酸カリウムを含有してもよい。組成物は、2~4mEq K3クエン酸塩/kg0.75)をより好ましくは提供し得る。組成物は、最も好ましくは、3mEq K3クエン酸塩/kg0.75)を提供し得る。
【0146】
ケトン食餌は、大きな割合の脂肪としてのエネルギー摂取量に起因して、食事脂肪の異化作用に対して代謝負荷を誘発する。継続的な炭水化物制限は、遺伝子発現および酵素活性の変化をもたらし、その結果、脂肪代謝への代謝シフトおよびエネルギー消費の増加をもたらす。脂肪代謝を増加させるための遺伝子発現および酵素活性のこれらの変化は、それらが必要とする脂肪代謝補助因子が、非補助食で存在する可能性のある量よりも多い量で提供された場合、最適に役立つであろう。事実、脂肪代謝の増加を可能にするための十分な補助的因子が利用可能でない限り、ケトン食餌は最大限に価値を発揮しない場合がある。これにもかかわらず、現在の最先端技術のケト原性コンパニオン動物食品は、追加された脂肪代謝因子を含まない。これらの市販食品のこれらのラベルは、添加カルニチン、タウリン、ベタイン、およびリポ酸について調査された。さらに、これらの脂肪代謝栄養補助食品について、食品を化学的に分析した。ラベルも分析も、添加カルニチン、添加タウリン、添加ベタイン、および/または添加リポ酸の存在を示さなかった。脂肪代謝を最大化する値の認識において、幾つかの実施形態では、組成物は、0.01~0.1%の添加カルニチン、0.1~0.5%の添加タウリン、0.25~1%の添加ベタイン、および/または0.005~0.05%の添加リポ酸を含有し得る。種差のため、リポ酸はコンパニオン動物ネコ科動物の調合に含まれない。
【0147】
本開示のケトン食餌は、成体ペットまたはシニアペットの健康を改善するためにも使用され得る。
【0148】
本開示は、従来的なペットフード組成物と比較して比較的大きな耐久性を維持しながら、制限された量のデンプンを含むケト原性ペットフード組成物を提供し得る。例えば、本明細書に開示されるペットフード組成物は、ペレット耐久性指数スコア(PDI)に基づいて、70超、75超、80超、85超、または90超の耐久性を有してもよい。
【0149】
本開示はまた、従来的なペットフード組成物よりも改善された嗜好性を維持または提示しながら、比較的高い耐久性を有するケト原性ペットフード組成物を提供し得る。例えば、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、嗜好性に悪影響を及ぼさない改善された耐久性を示し得る。
【0150】
本開示は、キブルの形態のケト原性ペットフード組成物を提供し得る。別の実施形態では、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、湿潤ローフの形態であってもよい。例えば、ケト原性ペットフード組成物は、気密容器などの容器内に配置または包装された湿潤ローフであってもよい。例示的な容器は、限定するものではないが、レトルトパウチ、サシェ、TETRA PAK(登録商標)、ボトル、トレイ、金属缶(例えば、スズ缶)など、またはそれらの組み合わせであってもよいし、それらを含んでもよい。本明細書に開示される実施形態に従って調製された湿潤ローフは、非消化性ガム繊維、乳化剤、ゼラチン、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み得る。本明細書で使用される場合、非消化性ガム繊維は、野菜および/または細菌発酵に由来する任意のガムを指し得る。例示的非消化性ガム繊維には、限定されるものではないが、グアーガム、タラガム、アカシアガム、カロブガムなど、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。乳化剤は、少なくとも一つの脂肪酸基を含む栄養性脂肪系乳化剤を含み得る。例示的乳化剤としては、限定されるものではないが、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。湿潤ローフは、容器から移動し、切断し、プレスした後に、明らかな脂肪または油の分離を示さない場合がある。好ましい実施では、本明細書に開示される湿潤ローフケト原性ペットフード組成物は、約0.5重量%~約3重量%の量の非消化性ガム繊維、コンパニオン栄養と両立する乳化剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。少なくとも一つの実施形態では、湿潤ローフケト原性ペットフード組成物は、ゼラチンを含む。別の実施形態では、湿潤ローフケト原性ペットフード組成物は、ゼラチンを含まないか、または実質的に含まない。
【0151】
本開示は、乾燥キブルの形態の、ネコ科動物用のケト原性ペットフード組成物を提供し得る。例えば、本開示は、少なくとも1.5のケトン比を維持しながら、ネコ科動物のタンパク質要件を満たし、かつそれを超えるケト原性ペットフード組成物を提供し得る。ネコ科動物用のケト原性ペットフード組成物は、飼育されているネコのための完全かつバランスの取れた栄養であり得、また少なくとも1.5のケトン比も提供し得る。ネコ科動物用のケト原性ペットフード組成物は、概して、実施例5のケト原性乾燥キブル例VIIIによって代表され得る。
【0152】
本開示は、コンパニオン動物における癌、炎症性腸疾患、糖尿病、肥満、高血糖症、高トリグリセリド血症、慢性炎症、腸内微生物叢の抗生物質耐性、または腸内微生物叢の病原性腸内毒素症、またはそれらの任意の組み合わせを治療または抑制するための方法を提供し得る。方法は、本明細書に開示されるペットフード組成物の任意の一つ以上を、それを必要とするコンパニオン動物に投与することを含み得る。
【0153】
本開示は、ケト原性状態の維持を抑制または妨げ得る、奇数鎖短鎖脂肪酸の形成を減少させるためのケト原性ペットフード組成物を提供し得る。このように、本開示は、ケト原性状態の維持を抑制または妨げ得る、奇数鎖SCFAの形成を減少させるための方法を提供し得る。具体的には、本明細書に開示されるケト原性食品は、従来のイヌ科動物の食品および従来的または最新の商業的ケト原性食品と比較して、腸内微生物からの奇数鎖SCFA(C3:0、C5:0)の産生を減少させ得る。例示的奇数鎖短鎖脂肪酸は、プロピオン酸(C3:0)および吉草酸(C5:0)であり得るか、またはそれらを含み得るが、それらに限定されない。方法は、本明細書に開示されるペットフード組成物のいずれかを、コンパニオン動物に給餌または投与することを含み得る。
【0154】
本開示は、腸の健康(例えば、消化器系の健康)を改善する方法、および/または本明細書に開示されるケト原性ペットフードおよび組成物を用いた腫瘍学的支援を提供する方法を提供し得る。例えば、本開示は、腸の健康を改善する、および/または腫瘍学的支援を提供するケト原性ペットフード組成物を提供し得る。例えば、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、以下を提供し得る:ケト原性ペットフード組成物を与えられたイヌにおける病毒性因子の減少;宿主結腸上皮糖を分解および改変することが知られているいくつかの細菌酵素をコードする遺伝子のレベルの減少;病原性であることが知られている細菌のレベルの減少;病原性細菌の成長を阻害し、同時に有益な細菌の成長を促進する。病毒性因子は、エンテロコッカス・フェカリス GI 48190、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE nagK、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE nagH、 大腸菌 GENE stbA、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE cloSI、大腸菌 GENE lacY、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE nagJ、クロストリジウム・パーフリンゲンス GENE pfoA、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE nagI、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE nagL、クロストリジウム・パーフリンジェンスGENE nanI、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE nanH、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE nanJ、大腸菌 GENE ompA、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE plc、化膿性連鎖球菌 GENE msrD、エンテロコッカス・フェシウム GI 21886745、エンテロコッカス・フェシウム GI 21886747、クロストリジウム・パーフリンジェンス GENE colA、 またはそれらの組み合わせ、の一つ以上を含み得る。
【0155】
有益な細菌は、クロストリジウム・ヒラノニス(Clostridium hiranonis)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、酪酸産生細菌、ブチリシコッカス プリカエコルム、またはそれらの組み合わせ、のうちの一つ以上を含み得る。病原性細菌は、クロストリジウム・パーフリンジェンス、Paeniclostridium sordellii、クロストリジウム・バラチ、またはそれらの組み合わせ、のうちの一つ以上を含み得る。ケト原性ペットフード組成物は、驚くべきことに、予想外に、良好な細菌の成長を促進し、同属における病原性細菌の成長を阻害する。例えば、本明細書に開示する実施形態に従って開発する、例示的なペットフード組成物(例、IV)をイヌに与えた後、C.パーフリンジェンス(病原性) は減少し、C.ヒラノニス(有益)は増加した。ケト原性ペットフード組成物は、病毒性因子を検出不可能なレベルまで減少させ得る。
【0156】
本開示は、コンパニオン動物の腸内微生物叢において抗生物質耐性遺伝子(ABr)および/または多剤耐性排出タンパク質(MDR)を減少させ、それによって全体的なペットの健康を改善し、癌の回復を支持し、および/または慢性胃腸疾患(例えば、炎症性腸疾患(IBD))を治療もしくは抑制する方法を提供し得る。例えば、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、ケト原性ペットフード組成物を与えられた動物において、ABrおよび/またはMDRを有意に減少させ得る。ケト原性ペットフード組成物は、悪液質に対抗する助けとなり、感染速度を減少させ、癌およびIBD患畜の感染を治療するための抗生物質の有効性を改善し得る。ABrは、マクロライドmefA膜融合タンパク質emrA、マクロライドm2021ブランチ、センサータンパク質phoQ、センサータンパク質evgS、ポリミキシン耐性に関与するpmrB、バシトラシン耐性bacA、ポリミキシンおよびカチオン性抗菌ペプチドarnA、センサーキナーゼcpxA、マクロライドlnuA、マクロライドmel、センサーキナーゼbaeS、ポリミキシン耐性に関与するpmrC、膜融合タンパク質emrK、調節因子cpxR、膜融合タンパク質acre、内側膜輸送体acrF、ベータ-ラクタムpbp2大腸菌、またはそれらの組み合わせ、の一つ以上を含み得る。少なくとも一つの実施では、ABrは、アミノグリコシドaph2 Ib、アミノグリコシドaac6’Im、アミノグリコシドaph3’III、tetW、tet40、またはそれらの組み合わせ、のうちの一つ以上を含まない場合がある。さらに別の実施では、ABrはtetMを含む。MDRは、一つ以上の排出ポンプmdtB、排出ポンプmdtA、排出ポンプmdtC、排出ポンプmdtD、排出ポンプmdtD、排出複合体のためのトランスポーターmdtF、排出ポンプbaeR、排出ポンプemrR、排出ポンプmdtN、mdr排出ポンプのためのリプレッサーcrp、排出ポンプmdtO、排出ポンプacrD、排出複合体のリプレッサーacrS、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0157】
本開示はまた、腎臓および消化器系の健康を支持するため、腸内細菌のタンパク質分解および/または腐敗を阻害し、それによって、循環フェノールおよびインドールを減少させるための方法を提供し得る。例えば、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、腸内細菌のタンパク質分解および/または腐敗を低減または阻害し得る。フェノールは、3-メトキシカテコール硫酸(2)、3-メチルカテコール硫酸(1)、4-アセチルカテコール硫酸(1)、4-アリルカテコール硫酸塩、4-エチルカテコール硫酸塩、4-ヒドロキシカテコール硫酸塩、4-メチルカテコール硫酸、4-ビニルカテコール硫酸塩、カテコール硫酸、4-アセチルフェニル硫酸塩、4-アミノフェノール硫酸塩(2)、4-エチルフェニル硫酸塩、4-ヒドロキシフェニル酢酸塩、4-ヒドロキシフェニルアセチルグリシン、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、4-メトキシフェノール硫酸塩、4-ビニルフェノール硫酸塩、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み得る。一例では、インドールは、7-ヒドロキシインドール硫酸塩、5-ヒドロキシインドール硫酸塩、5-ヒドロキシインドールグルクロニド、3-ヒドロキシインドリン-2-オン硫酸、インドキシルグルクロニド、3-ホルミルインドール、6-ヒドロキシインドール硫酸塩、インドリン-2-オン、3-インドキシル硫酸、5-ヒドロキシインドール酢酸塩、インドールアセチルグルタミン、インドール酢酸、3-インドールグリオキシル酸、インドール-3-酢酸メチル、インドールアクリル酸、インドールプロピオン酸、インドールアセチルグリシン、インドール乳酸、2-オキシインドール-3-酢酸塩、インドールアセチルアラニン、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み得る。別の例では、インドールは、インドキシルグルクロニド、3-ホルミルインドール、6-ヒドロキシインドール硫酸塩、インドリン-2-オン、3-インドキシル硫酸、5-ヒドロキシインドール酢酸塩、インドールアセチルグルタミン、インドール酢酸、3-インドールグリオキシル酸、インドール-3-酢酸メチル、インドールアクリル酸、インドールプロピオン酸、インドールアセチルグリシン、インドール乳酸、2-オキシインドール-3-酢酸塩、インドールアセチルアラニン、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み得る。
【0158】
本開示は、タンパク質新生アミノ酸、タンパク質新生アミノ酸から形成される形成されるジペプチド、またはそれらの組み合わせを減少させることができるか、または減少するように構成される、ケト原性ペットフード組成物を提供し得る。タンパク質新生アミノ酸から形成されるジペプチドは、アラニルロイシン、グリシルイソロイシン、グリシルロイシン、グリシルバリン、イソロイシルグリシン、ロイシルアラニン、ロイシルグルタミン、ロイシルグリシン、リシルロイシン、フェニルアラニルアラニン(phenylalanylalanine)、フェニルアラニルグリシン、スレオニルフェニルアラニン(threonylphenylalanine)、トリプトフィルグリシン、チロシルグリシン、バリルグルタミン、バリルグリシン、バリルロイシン、またはそれらの組み分けのうちの一つ以上を含み得る。タンパク質新生アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、システイン、シスチン、グルタミン酸塩、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み得る。
【0159】
本開示は、癌の治療を受けるコンパニオン動物を支持するために、よりエネルギー密度が高い、ケト原性ペットフード組成物を提供し得る。例えば、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、既存のケト原性乾燥キブル食餌よりも約10%~約13%多い代謝エネルギー含有量を有してもよい。
【0160】
少なくとも一つの実施では、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、鶏油、乾燥卵、鶏脂肪、乾燥卵、肉タンパク質単離物(豚肉)、乾燥肉(鶏肉)、mctオイル(c8:0、c10:0)、加水分解した乾燥鶏肉、ピーカン殻繊維、亜麻の種全体、セルロース繊維、加水分解カゼインタンパク質単離物、加水分解ホエイタンパク質単離物、美味剤、ミネラル、ゼラチン、ジャガイモアミロース、アミノ酸、ビートパルプ繊維、柑橘類パルプ繊維、乳酸、可溶性オート麦繊維、クエン酸カリウム、リンゴパルプ繊維、魚油、オオバコ殻繊維、ビタミン、ベタイン、カルニチン、アルギン酸繊維、クランベリーパルプ繊維、メチルセルロース繊維、ペクチン繊維、タウリン、抗酸化物質、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み得る。
【0161】
少なくとも一つの実施では、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、鶏脂肪、肉タンパク質単離物(豚肉)、乾燥卵、mctオイル(c8:0、c10:0)、乾燥肉(鶏肉)、亜麻の種全体、美味剤、ピーカン殻繊維、セルロース繊維、加水分解カゼインタンパク質単離物、加水分解ホエイタンパク質単離物、ミネラル、ゼラチン、ジャガイモアミロース、ビートパルプ繊維、柑橘類パルプ繊維、可溶性オート麦繊維、乳酸、クエン酸カリウム、オオバコ殻繊維、リンゴパルプ繊維、魚油、ビタミン、ベタイン、アルギン酸繊維、メチルセルロース繊維、ペクチン繊維、クランベリーパルプ繊維、タウリン、カルニチン、抗酸化物質、リポ酸、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み得る。
【0162】
別の実施では、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、鶏脂肪、肉タンパク質単離物(豚肉)、乾燥卵、mctオイル(c8:0、c10:0)、乾燥肉(鶏肉)、亜麻の種全体、美味剤、加水分解した乾燥鶏肉、ピーカン殻繊維、セルロース繊維、加水分解カゼインタンパク質単離物、加水分解ホエイタンパク質単離物、ミネラル、ゼラチン、ジャガイモアミロース、ビートパルプ繊維、柑橘類パルプ繊維、可溶性オート麦繊維、乳酸、クエン酸カリウム、オオバコ殻繊維、リンゴパルプ繊維、魚油、ビタミン、ベタイン、アルギン酸繊維、メチルセルロース繊維、ペクチン繊維、クランベリーパルプ繊維、タウリン、カルニチン、抗酸化物質、リポ酸、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み得る。
【0163】
別の実施では、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、水、ニワトリ首、豚肝臓、小麦グルテン、セルロース繊維、鶏脂肪、mct(c8:0、c10:0)、美味剤、牛肉肺、非消化性ガム繊維#1、クエン酸カリウム、ベタイン、カルニチン、ミネラル、リポ酸、ビタミン、タウリン、栄養性乳化剤#1、ゼラチン、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む湿潤ローフであってもよい。
【0164】
さらに別の実施では、本明細書に開示されるケト原性ペットフード組成物は、鶏脂肪、乾燥卵、肉タンパク質単離物(豚肉)、乾燥肉(鶏肉)、mctオイル(c8:0、c10:0)、加水分解した乾燥鶏肉、ピーカン殻繊維、亜麻の種全体、セルロース繊維、加水分解カゼインタンパク質単離物、加水分解ホエイタンパク質単離物、美味剤、ミネラル、ゼラチン、ジャガイモアミロース、アミノ酸、ビートパルプ繊維、柑橘類パルプ繊維、乳酸、可溶性オート麦繊維、クエン酸カリウム、リンゴパルプ繊維、魚油、オオバコ殻繊維、ビタミン、ベタイン、カルニチン、アルギン酸繊維、クランベリーパルプ繊維、メチルセルロース繊維、ペクチン繊維、タウリン、抗酸化物質、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上を含み得る。
【実施例】
【0165】
実施例1
表1は、本開示による二つの例示的な組成物を記載する。原料は、商業的供給源から取得した。例示的なキブル食餌は、成体のイヌ科動物のメンテナンスのためのAAFCOおよびNRCの栄養勧告に従って調合された(例I)。調合物中のタンパク質、繊維、および脂肪タイプの原料の各々は、タンパク質に対する、灰分、脂肪、炭水化物のレベル、および繊維に対する繊維タイプの仕様に対して、上記に説明された原則を遵守する。組成物は、タンパク質および繊維の最適化されたブレンドは、コンパニオン動物用のドライフード形態にデンプンを多分に置き換えることができ、またケト原性食餌を摂取する時にコンパニオン動物の健康に強化された利益ももたらすであろうという命題に基づいて、押出成形により調合および製造された。真空エンロービングを使用して脂肪および美味剤でベースキブルを飽和させる前に、押出成形されたキブルを乾燥させた。
【0166】
例示的なトリーツ食餌(例II)を、表1に示すように、飼育されているイヌ科動物またはネコ科動物のいずれかに適切な栄養特性で調合した。混合、圧延、および蒸気対流ベーキングを介してトリーツを作製した。ベーキングされたトリーツを、摂取前に、100℃のオーブンで6時間乾燥させて、水分を約8%に低減した。
【0167】
繊維およびタンパク質のブレンドは、コンパニオン動物用のドライフード形態にデンプンを多分に置き換えることが想定される。
【表1】
【0168】
ケトン産生能の概要は、例I(キブル)については表2に、例II(トリーツ)については表3に示す。例Iの値は、最終製品キブルについて分析的に決定される。これらの値は、粗タンパク質、粗脂肪、デンプン、および総非デンプン糖の標準分析を通して分析的に決定される。総食物繊維も同様に測定され、可溶性および不溶性繊維の総和を含む。例IIの値は、調合物中の原料の分析に基づいて予測される。両方の表について、ならびに表4および5について、各原料の重量%は、マクロg/kg列の10分の1である。
【表2】
【表3】
【0169】
現在市販されている比較用食餌CおよびDの二つのみのケトン産生能の概要を表4および5に要約する。これらの値は、粗タンパク質、粗脂肪、デンプン、および総非デンプン糖の標準分析を通して分析的に決定される。総食物繊維も同様に測定され、可溶性および不溶性繊維の総和を含む。
【表4】
【表5】
【0170】
実施例2
キブルが割れないように、デンプンは耐久性に大きく寄与する。割れた破片のキブルは、「細粒」と呼ばれ、製品に対する顧客の受け入れが低下するほどに、美的に好ましくない。当然のことながら、コンパニオン動物食品の顧客ベースのセグメントは、細粒の著しい負担を含むドッグフードを再び買うことはないであろう。デンプンが、ケト原性乾燥キブルからほぼ排他的に制限されることにより、これらの特殊食品は割れやすさを疑われ、乏しい耐久性の懸念が生じる。実施例1の例示的な乾燥キブルペットフード組成物(例I)、ならびに追加の例示的なペットフード組成物(例III;表6に要約される組成物;表7に要約されるケトン産生能)の耐久性を、二つの比較用ペットフード組成物(食餌CおよびD)と比較した。
【表6】
【表7】
【0171】
耐久性を、その実施、状況、および結果の関連性が、乾燥キブル押出成形の技術分野の当業者に明らかであろう標準アッセイを用いて試験した。簡潔に述べると、所与の食餌から計量された量の乾燥キブルを、無傷のキブルを保持するように選択されたメッシュサイズを有するスクリーン上でふるいにかけた。これにより、破損した細粒がスクリーンを通して取り除かれ、耐久性試験が無傷のキブルのみで開始されたことが保証された。重量を測定した無傷のキブルの部分を100%として選択した。その後、キブルの無傷部分は、標準化された時間および標準化された強度で、標準的な金属重量で閉じた容器中で振ることによって衝撃損傷を受けた。損傷の誘発後、キブルを容器から取り出し、前と同じスクリーン上に配置し、ふるい分けし、スクリーン上に残った無傷のキブルの部分を計量した。損傷の誘発後にスクリーン上に残っているキブルの開始量の割合は、「ペレット耐久性指数」と呼ばれた。当然のことながら、これは、乾燥キブルが柔らかい折り畳み可能な袋で輸送される際に被る厳しい条件を模倣することができるオムニバス評価である。この耐久性比較の結果を、表8に要約する。
【表8】
【0172】
表8に記載されるデータによって説明されるように、二つの別個の例示的なキブル組成物(例I)および(例III)は、比較用キブル食餌CおよびDよりも有意に耐久性が高かった。これは、例Iについて選択された概念化と実施化が現在の最先端技術よりも優れた耐久性を提供したことを明らかにし、また、この改善は、使用不可能な壊れたキブルからの廃棄物を削減し、顧客の受け入れを向上させることで、価値を追加することが期待できることを明らかにする。
【0173】
実施例3
当業者であれば、耐久性の向上が、動物へのアピールおよび嗜好性と反比例し得ることを認識するであろう。例えば、耐久性は、乾燥キブルがイヌにとってもはや魅力的または口に合うとみなされないほどに、極限まで突き詰められ得る。質感は、コンパニオン動物の食品の嗜好性に寄与する重要な要因であり、耐久性が極端に向上すると、キブルが食べるのが難しくなる可能性がある。嗜好性を犠牲にして耐久性を向上させることは望ましくないものであり、逆効果である場合さえある。例Iは、食餌CおよびDと比較して耐久性が著しく向上しているので、市販の食餌よりも嗜好性が低いと疑われた。したがって、食餌Cおよび食餌Dに対するペットフード組成物(例 III)についての複数の製造ロットの試験を含み、ペットフード組成物(例1)および(例III)、ならびに追加の(例IV、表9に要約した組成物;表10に要約したケトン産生能)の反復試験を含む、標準化されたフォーマットの嗜好性試験が実施された。
【表9】
【表10】
【0174】
嗜好性を標準化された試験で評価した。ボウルを選り好みしないことが知られている25匹のイヌに、二つのボウルが提供され、各ボウルには、その日のカロリー必要量の食品が含まれていた。これは2日間連続で行われ、2日目にボウルの位置を逆転させた。ボウルの重量は、食品を食べるためにイヌに与えられた30分間のアクセスの前および後に記録した。摂取された試験食品の重量を、摂取された全食品(試験および対照)の重量で割ったものを、「摂取比」と称し、= T/(T+C)の形態をとる。摂取比0.5は、どちらの食品にも選好しなかったことを表す。0.5より大きい摂取比は、試験食品が対照食品よりも好ましかったことを示し、質感および味覚が、対照食品と比較して試験食品のアピールの増加に寄与した要因であることを意味する。さらに、より有益なのは、嗜好性試験のうち、実施例をより多くを食べる(好む)、比較用食餌を好む、または選好しない対象の割合である。
【0175】
要約すると、本明細書に記述されたデータは、本開示によるペットフード組成物によって提供される改善された耐久性が、嗜好性に悪影響を及ぼさないことを実証し、これは驚くべきものであり、予想外であった。対照的に、結果は、本明細書に開示されているペットフード(例I、例III、例IVで表される)は、既存の乾燥ケト原性キブル(食餌CおよびDによって表される)と比較して、著しく改善された嗜好性を提供する。本明細書に開示されるペットフード(例I、例III、例IV)は、食餌CまたはDのいずれかに対して、ひとつの嗜好性試験も失わなかった。さらに、優位性は大きく統計的に強いものであった。具体的には、五つの試験うち三つでは、100%のイヌが例示的なペットフードを好んだ(例 I、例III、例IV)。すべての試験において、90%を超えるイヌが例示的なペットフードを好んだ(例I、例III、例IV)。
【表11】
【0176】
実施例4
可消化炭水化物(デンプン)含量が厳しく制限されるケト原性コンパニオン動物食品の製造に関連する課題は、乾燥押出成形キブルの製造に限定されない。また、典型的には密封された缶で販売される、湿潤ローフ形態の食品の製造に関連する広く認識された課題もある。ケト原性湿潤ローフ食品の製造に関連する課題は、押出成形乾燥キブル中のデンプンを制限する課題とは異なる。湿潤ローフ製品では、高脂肪内容物は、レトルトの調理プロセス中にバルク固体(例えば、タンパク質、繊維)から分離する傾向がある。湿潤ローフコンパニオン動物食品は、濃厚なローフからより水っぽいシチューまで、質感に変化があり得るが、好ましい見た目のよさにおける共通点は、脂肪および油がローフおよびその関連する液体に十分に統合されていることである。ここでは、本開示の追加の例示的な組成物(例V)、(例VI)、および(例VII)を記載する。具体的には、本明細書に開示される実施形態によるペットフード組成物の湿潤形態である。湿潤ペットフード組成物(例V)、(例VI)、および(例VII)の組成を表12に要約する。以下でさらに示されるように、これらの湿潤ローフ組成物の各々は、様々な濃度で首尾よく調製された。ペットフード組成物の湿潤形態(例V)および(例VI)の主要栄養素の構成およびケトン産生能を、表13および14にそれぞれ要約する。ペットフード組成物(例VII)は、見た目のよさと質感とを比較する目的でのみ調製され、主要栄養素またはケトン産生能の値については分析されなかった。表13および14は、粗タンパク質、粗脂肪、デンプン、および総非デンプン糖の標準分析を通して分析的に判定された。
【0177】
現在、市販のコンパニオン動物湿潤ローフ形態ケト原性食品はなく、それにより、嗜好性の目的に対する唯一の可能な比較例は、標準的なイヌ科動物の成体メンテナンスフォーミュラしかないことに留意されたい。比較用湿潤ローフ食餌(食餌E)の、主要栄養素の構成およびケトン産生能を、表15に要約して示す。比較用食餌Eは、ペットフード組成物(例V)、(例VI)、および(例VII)と同じ日に、同じ施設で製造され、このことが、処理の変動を低減した。
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0178】
例V、例VI、および例VIIについて、レトルトの缶詰プロセスが完了後、缶を3日間冷却し、プラスチック皿に開け、バルク固体から分離した油および脂肪の存在を評価した。
【0179】
湿潤ローフペットフード組成物(例V)および(例VI)は、切断する前にバルク固体から明らかな脂肪または油の分離を有していなかったことが、容易に明らかとなった。切断および圧入後も、明らかな脂肪または油の分離は観察されなかった。しかしながら、湿潤ローフペットフード組成物(例VII)は、切断および押すと水様シチューに崩壊する脆弱なゲルを生成した。しかしながら、脂肪は、湿潤ローフペットフード組成物(例VII)について、バルク固体中に大部分が乳化され、およびいくらかの分離が観察された。ペットフード組成物(例VII)について、理論に拘束されることなく、選択された結合剤、すなわちゼラチンと、結合剤としての栄養ガム繊維の除去とが、脆弱なゲルを産生したと考えられる。前述の観点から、本明細書に開示される実施形態による湿潤ローフペットフード組成物は、約0.5重量%~約3重量%の量の非消化性ガム繊維、およびコンパニオン栄養と両立し、かつ脂肪としてカロリーを提供する乳化剤(すなわち、レシチン)を用いて調製され得ることが、驚くべきことに、そして予想外に発見された。本明細書に開示される実施形態による湿潤ローフペットフード組成物が、ゼラチンと共に、またはゼラチンなしで調製され得ることが、さらに驚くべきことに、そして予想外に発見された。
【0180】
ペットフード組成物(例V)および(例VI)を、対照食品として比較用食餌Eを使用したことを除いて、乾燥キブルについて上述したのと同じ標準化された嗜好性試験で試験した。表16に、嗜好性試験の結果を要約する。
【表16】
【0181】
表16に示されるように、湿潤ローフ(例V)および(例VI)は、食餌Eよりも改善された嗜好性を示した。理論に束縛されるものではないが、質感が知覚される嗜好性において重要な要素であると十分認識されるので、ガム繊維および乳化剤の含有は、質感の改善だけでなく、嗜好を高めることにも寄与したと考えられる。
【0182】
実施例5
当然のことながら、トリーツおよび栄養補助食品は、定義によれば、完全かつバランスの取れた栄養ではなく、また実施例1のトリーツ(例II)は、完全かつバランスの取れた栄養となるように設計もされず、コンパニオン動物管理機関規制によって要求もされなかった。コンパニオン動物は、トリーツおよび栄養補助食品の提供とは別に、完全かつバランスのとれた栄養を摂取することが期待されている。したがって、トリーツの形態のケト原性トリーツまたは栄養補助食品(例II)を摂取するイヌは、バランスのとれた栄養食品(例えば、完全かつバランスの取れた栄養である例I)を依然として必要とする。しかしながら、上述のイヌ科動物のケト原性組成物(例I、例III、例IV、例V、および例VI)は、種としてのネコの特別な栄養の必要性があるので、完全かつバランスの取れた栄養として飼育されているネコ科動物に単に供給することはできない。これは、ヒト標的のケトン食事は、栄養要件の種差により、コンパニオン動物に単純に供給することができないという概念に類似している。上述したように、食物タンパク質には抗ケト原性の性質があり、また正しく肉食獣であるネコ科動物の食餌にはタンパク質の高い必要性があるため、ケトン比の厳密な定義である少なくとも1.5に適合するケト原性食餌を適応させることが重要である。イヌについては、アメリカ飼料検査官協会(AAFCO)は、100kcal代謝エネルギー(ME)当たり最小4.5gの粗タンパク質の食物タンパク質を指定している。一方、イヌ科動物のペットフード組成物(例I)、(例III)、および(例IV)は、すべてこれよりも有意に高く(100kcalのME当たり7.6~8.3gの粗タンパク質)、したがって、ほぼ全ての可能な摂食シナリオに対して豊富な食物タンパク質を提供するが、それらは、同じ管理機関によって割り当てられたネコ科動物の最小食物タンパク質要件(100kcalのME当たり6.5の粗タンパク質)よりも顕著に大きいわけではない。ネコ科動物のケト原性食餌を調合して、少なくとも1.5のケトン比を維持しつつ、適切なタンパク質栄養を提供するには、特別なケアおよび新規のアプローチを取る必要がある。特に、食品が、疾患から回復する病弱なペットに供給するために、または減量食品として、または座ったままのペットに供給するために使用される場合、これらの状況での1日の総エネルギー摂取量の減少は、ネコをタンパク質栄養不良のリスクにさらす。しかしながら、タンパク質の抗ケト原性の性質は、ある時点でタンパク質レベルの増加を防止する。既存の市販のネコ科動物の栄養に適切なケト原性乾燥キブルは一つのみであり(表4において比較用食餌Cとして要約)、これはイヌおよびネコの両方に対して適切に販売されている食餌である。食餌Cは、100kcalのME当たり15.8粗タンパク質でタンパク質が豊富であり、この値は食餌要件の2倍以上であり、この食品を食べるネコがケトーシスを最大に発現することを防止する。したがって、ケトン比の概念を組み込むことによって、唯一の既存の商業的ネコ科動物ケト原性乾燥キブルを改善することができる。特に、このような高いタンパク質レベルでは、食餌Cは、そのケトン比がどうしても限定されるが、これは1.15(表4)のみであり、1.5のKRよりもケト原性が約24%少ない。
【0183】
飼育されたネコに完全かつバランスの取れた栄養を提供する一方で、少なくとも1.5のケトン比も提供する、本明細書に開示される実施形態によるケト原性乾燥キブル(例VIII)を調製した。ケト原性乾燥キブル(例VIII)の組成を表17に要約する。このネコ科動物乾燥キブル例VIIIの主要栄養素の構成およびケトン比についての分析値を、表18に要約する。総食物繊維も同様に測定され、可溶性および不溶性繊維の総和を含む。
【表17】
【表18】
【0184】
実施例6
実施例4のイヌ科動物のペットフード組成物(例IV)を、奇数鎖短鎖脂肪酸、すなわち、プロピオン酸(C3:0)および吉草酸(C5:0)の減少におけるその有効性について評価した。例示的なペットフード組成物(例IV)は、成体の維持のためのAAFCOおよびNRCの栄養勧告に従って調合された。組成物は、繊維およびタンパク質の最適化されたブレンドは、コンパニオン動物用のドライフード形態にデンプンを多分に置き換えることができるであろうという命題に基づいて、押出成形により調合および製造された。真空エンロービングを使用して脂肪でベースキブルを飽和させ、続いて美味剤でコーティングする前に、押出成形されたキブル(例IV)を乾燥させた。例示的なペットフード組成物(例IV)は約1.71のケトン比を有した。当然のことながら、例示的なペットフード組成物(例IV)は、MCTと魚油の組み合わせを含んでいた。例示的なペットフード組成物(例IV)はさらに、奇数鎖SCFA産生をサポートしない腸内微生物基質を提供する最適な繊維ブレンドを含んだ。具体的には、最適な繊維ブレンドは、腸内微生物叢に栄養を与える、および許容可能な便の質を促進する、という点の両方のコンパニオン動物栄養に対して利益をもたらす、食物性非消化性繊維の供給源を含んだ。原料は、セルロース、リグニン、ヘミセルロース、ペクチン、アルギン酸塩、および変性セルロース(メチルセルロース、ヒドロキシイソプロピルセルロースを含む)を提供するように選択された。同様に、1000超の平均的な多糖類の重合度を有し、グルコース、アラビノース、キシロース、マンノース、ガラクトース単量体、および糖酸ガラクツロン酸から構成される繊維。二重機能性繊維を提供するために、原料は、精製セルロース、柑橘類パルプ、ピーカン殻粉末、ビートパルプ、クランベリーパルプ、リンゴパルプ、亜麻仁、オオバコ、およびオートブランの組み合わせであった。
【0185】
前臨床無作為化デザインクロスオーバー摂食試験は、例示的なペットフード組成物、ならびに標準的なイヌ科動物の食品および既存の商業的ケト原性食品の両方を摂食して6週目に、糞便採取を有するイヌ科動物対象(n=35)で実施された。標準的なイヌ科動物の食品は、表19に記載されるとおりであり、既存の商業的ケト原性食品は、食餌Dであった。
【0186】
イヌがケト原性食餌Dおよび標準的食餌Fを摂取した場合と比較して、そのイヌが例IVを摂取したときに、ログベース2変換された糞便短鎖脂肪酸レベルに対して、依存試料対のt検定を実施した。研究を表20に要約する。
【0187】
ケト原性状態は、多くの場合、糖新生(GNG)の過程を通したグルコースの内因性産生によって妨げられる。グルコースは、糖原性アミノ酸(例えばアラニン)および奇数鎖脂肪酸(例えばプロピオン酸;C3:0または吉草酸;C5:0)を含む、GNGのいくつかの非炭水化物基質から生成することができる。ケトーシスを予防するためのグルコースの生成に最も強力な奇数鎖脂肪酸は、C3:0およびC5:0である。これは、より長い奇数鎖脂肪酸(C7:0~C23:0など)中の追加の炭素(C3を超えて)は、GNGではグルコースに変換されず、代わりにベータ酸化を介して、C3:0のみが残るまで、アセチル-CoAに順次変換されるからである。C5:0脂肪酸は、ベータ酸化の1ラウンド後のC3:0の即時前駆体である。
【0188】
奇数鎖脂肪酸は、クレブス回路(TCA)およびその後GNGへのC3:0エントリーの介在性を介してグルコースに代謝される。C3:0提供は、肝臓および腎臓、両方の標準的な糖新生組織からインビボでグルコースを産生するということが、十分に文書化されている。プロピオン酸のGNGへの流束が定量化されている。
【0189】
GNGを介したアミノ酸からのグルコースの産生は、「供給主導」ではなく、「需要主導」であり、そのため除脂肪量維持に必要な量を超える追加の食物タンパク質は、有害なグルコース産生にはつながらない可能性があることが示唆されてきたが、C3:0からのGNGについては同じことは言えない。グルコースの需要が低いときにC3:0がGNGから転用され、むしろC3:0からのグルコース産生がケトーシスの維持の損傷にスムーズに進行することを示す入手可能な証拠はない。
【0190】
食物タンパク質:脂肪比の厳格な制御、ならびに食物糖原性アミノ酸の制限は、GNGの基質の利用可能性を最小化し、ゆえにケトーシスの維持を妨げる内因性グルコース産生を最小化することができる。奇数鎖脂肪酸は、食品では無視できる程度であり、したがって、GNGを介したグルコースの産生のための奇数鎖脂肪酸の利用可能性を、単に食事レベルを減少させるだけで減少させる明白な方法は、成功しない可能性が高い。奇数鎖脂肪酸の供給源としての食品以外に、C3:0およびC5:0の両方が、宿主状態に関わらず結腸内の腸内微生物によって生成される。したがって、C3:0産生は、宿主の観点からは制御されていない。すなわち、ケトーシスを保護するために、C3:0産生をホルモン性に減少させる機構は存在しない。
【0191】
全体として考えると、ケトーシスを達成および維持するための現在の栄養の最先端分野は、腸内微生物生産C3:0およびC5:0からのグルコースの産生を減衰させる機構を甚だしく欠いており、現在の技術は、C3:0およびC5:0の産生が減少した場合に生じるケトーシスのレベルを最大化できないことが明らかである。本明細書に記載されるペットフード組成物またはペットフードは、標準的なイヌ科動物の食品ならびに既存の商業的ケト原性食品の両方と比較して、腸内微生物からの奇数鎖SCFA(C3:0、C5:0)産生を減少させるケト原性食品である。
【表19】
【表20】
【0192】
表20に示すように、例IVを与えられたイヌは、標準イヌ科動物食品(食餌F)および商業的ケト原性食品(食餌D)の両方を摂取するイヌと比較して、C3:0およびC5:0の奇数鎖SCFAの両方の糞便レベルの減少を示した。これは驚くべきことで、予想外であった。したがって、例示的なペットフード組成物(例IV)は、循環グルコースを減少させ、栄養ケトーシスの増加を支持する方法で、糖新生C3:0およびC5:0の奇数鎖SCFAの産生を抑制した。
【0193】
実施例7
例示的なペットフード組成物(例IV)を、腸内細菌病毒性レベルを低減して腫瘍学的支援および消化器系の健康に利益をもたらすことにおける有効性について評価した。
【0194】
無作為化デザインクロスオーバー臨床摂食試験は、例示的なペットフード組成物(例IV)、既存の商業的ケト原性食品(食餌D)、および標準的な食品(食餌F)を摂食して6週目に、糞便採取を有するイヌ科動物対象(n=35)で実施された。血液を臨床上の測定および循環ケトンについて評価し、イヌにおける食品がケトーシスを誘発した程度を評価した。血液および糞便試料を、メタボロミクスプロファイリング(高圧液体クロマトグラフィー質量分析法、HPLC-MS)により分析し、糞便を、短鎖脂肪酸(同じくHPLC-MSより)および腸内微生物叢遺伝子含量(ショットガンメタゲノミクス配列決定)についてさらに分析した。
【0195】
例示的なペットフード組成物例IVの特徴は、ケト原性食餌Dおよび標準食餌Fに関して、表21の食餌Dおよび食餌Fと比較される。例IVにより示された食餌Dからのパーセント変化は、「(例IV-食餌D)/食餌D」で計算され、同様に例IVの食餌Fからのパーセント変化は、「(例IV-食餌F)/食餌F」で計算される。
【表21】
【0196】
例IVは、標準(非ケト原性)食餌Fまたは既存の市販のケト原性乾燥キブル食餌Dのいずれかと比較して、より高い循環血液中ケトン(BHB)レベルを生成した。血液中BHBのmmol/Lでの値は(平均±標準誤差)、例IV 0.144 ± 0.014 mmol/L BHB;標準食餌F 0.94 ± 0.003 mmol/L BHB;ケト原性食餌D 0.0.101 ± 0.06 mmol/L BHBであった。依存試料t検定により評価した時、BHBのレベルは統計的に有意により高かった(p=0.001対食餌F、およびp=0.006対食餌D)。したがって、ペットフードの例IVは、現在の最先端技術のケト原性イヌ科動物乾燥キブルよりも平均で40%高い循環ケトンレベルを産生した。
【0197】
結腸内微生物叢を含む腸内細菌は、宿主の健康に必須機能を提供するが、その病毒性因子を介して疾患をも誘発し得る。さらに、有害な細菌は、病原性および病毒性を増加させるために、宿主結腸上皮細胞表面糖を分解または改変することができる酵素をコードする遺伝子を担持する。これらの病毒性因子および細胞表面改変遺伝子を減少させることは均一に有益であるが、細菌属の包括的な減少は明確に常に有益であるとは限らない。例えば、クロストリジウム属は、有害である種(パーフリンジェンス種)および有益である種(ヒラノニス種)を含有する。
【0198】
ケトン食餌は、腫瘍の負荷/増殖を防止し、悪液質の管理を助けるための癌サポートに効果的であることが証明されているが、腸の健康に有害であるとして、門外漢や一部の科学界で批判もされている、というのも、それは有益な細菌を減少させたり、常駐する微生物の病原性を増大させたりする可能性があるからである。
【0199】
有益な細菌の減少または病毒性の増加は、放射線または化学療法を受けている癌患者にとっては、免疫系の衰弱のせいで特に有害であり得る。最適なケトン食餌ソリューションは、高エネルギーを提供し、除脂肪量を維持するだけでなく、病毒性も低減して、このリスクを抱える集団における日和見感染を防止するであろう。糞便微生物叢ショットガンメタゲノミクスデータは、健康および疾患に影響を及ぼすことが知られている微生物因子のレベルに関する情報を提供する。
【0200】
この例では、腸内微生物叢因子のレベルは、1)病毒性因子、2)宿主結腸上皮糖を改変する細菌酵素、および3)病原性または有益である細菌、のマーカーのクラスから評価された。例示的なペットフード組成物(例IV)または商業的ケト原性食品(食餌D)を摂取した後のイヌの糞便試料間の差異について、対のt検定を実施した。結果を表22~24に要約する。値は、リード・パー・キロベース・ミリオン(Reads Per Kilobase Million)(RPKM)として示され、差異は、例IVを供給されたイヌにおけるレベルを、そのイヌが商業的ケトン食餌Dを摂食していたときに見出されるレベルに対するパーセンテージとして表した。
【表22】
【表23】
【表24】
【0201】
表22に示すように、例示的なペットフード組成物を与えられたイヌにおける病毒性因子のほぼ均一な減少があった。具体的には、例示的なペットフード組成物を与えられたイヌにおいて、20中19の有意な減少が観察され、20の病毒性因子のうちの11が除去された。例示的なペットフード組成物による病毒性因子の平均±SD減少は約95±9%であった。
【0202】
例示的なペットフード組成物(例IV)はまた、表23に示すように、宿主結腸上皮糖を分解および改変することが知られているいくつかの細菌酵素をコードする遺伝子のレベルを減少させた。9中6の改変酵素について、例示的なペットフード組成物は、遺伝子レベルを99%以上減少させた。例示的なペットフード組成物による病毒性因子の平均±SD減少は、92±14%であった。
【0203】
例示的なペットフード組成物は、表24に要約されるように、病原性であることが知られている細菌レベルをさらに減少させた。具体的には、C.パーフリンジェンス、C.バラチ、およびP.sordelliiは、それぞれ83%、72%、および100%減少した。表24は、例示的なペットフード組成物が、比較用の商業的ケト原性食品(食餌D)よりも最大約2.65倍高く有益な細菌を増加させたことをさらに示した。
【0204】
宿主生理学に及ぼす健康面の影響について対峙する同属内の二つの種、C.パーフリンジェンス(病原性)およびC.ヒラノニス(有益)が、例示的なペットフード組成物(例IV)によって、宿主またはペットのGIの健康に有益であると予想される方向に、有意に変化されたことは、驚くべき、かつ予想外の発見であった。具体的には、本明細書に開示する実施形態に従って開発する、例示的なペットフード組成物(例、IV)をイヌに与えた後、C.パーフリンジェンスは減少し、C.ヒラノニスは増加した。
【0205】
要約すると、例示的なペットフード組成物(例IV)は、病毒性因子を劇的に減少させ、その低下は、変化された病毒性因子の50%超の検出不可能なレベルまでの低下であった。例示的なペットフード組成物(例IV)はさらに、宿主結腸上皮糖を分解および改変することが知られているいくつかの細菌酵素をコードする遺伝子のレベルを減少させた。さらに、例示的なペットフード組成物(例IV)は、病原体であることが知られている細菌のレベルを減少させ、および同属内の対向する細菌種を含む有益な細菌を増加させた。
【0206】
例示的なペットフード組成物(例IV)の影響は、癌療法の改善である。例えば、癌療法は、免疫能力を低下させ、腸内細菌からの日和見感染をもたらし得る。したがって、除脂肪体重維持のための高エネルギー食品を提供できるだけでなく、腸内細菌の病原性を減少させることができるペットフード組成物が、治療的な見地から最適である。したがって、例示的なペットフード組成物(例IV)は、悪液質との闘いを助けるだけでなく、癌患者の感染率も低下させる。
【0207】
実施例8
例示的なペットフード組成物(例IV)を、腫瘍学的支援および消化器系の健康に利益を提供すると同時に、完全かつバランスのとれたケト原性栄養を提供するように、微生物抗生物質耐性遺伝子および多剤耐性排出ポンプ遺伝子のレベルを低減することに対する有効性について評価した。
【0208】
結腸内微生物叢を含む特定の腸内細菌は、宿主または動物の健康に必須機能を提供するが、他の腸内に棲む細菌は疾患を誘発する。これらの後者の細菌は、病原性共生生物と呼ばれる。病原性共生生物の成長と活性を阻止するように設計された現代の医療薬剤レジメンは、薬剤の有効性を妨害する、病原性共生生物ゲノムに存在する遺伝子要素によって、多くの場合妨げられる。一般に、病原性共生生物を標的とする薬剤は「抗生物質」と呼ばれ、抗生物質の作用に抵抗する病原性共生生物に収容される遺伝子要素は「抗生物質耐性遺伝子」(以下、ABr)と呼ばれる。薬物耐性を誘発する能力の一般性のせいで、ペットの健康に特に問題となるABrの特別なクラスは、抗生物質の細胞内濃度が病原性共生生物に対してもはや有効ではなくなるレベルまで低減するように、細菌細胞から抗生物質をポンプアウトするタンパク質である。これらのポンプは、多剤耐性排出タンパク質(以下、MDR)と呼ばれる。
【0209】
ABrおよびより具体的には、MDRがペットの健康に有害な影響を与え、回復/生存の可能性を減少させることができる、少なくとも二つの病態がある。癌では、免疫監視の弱体化は、腸を越えて病原性共生生物のペット組織への浸潤をもたらし、敗血症につながる可能性がある。さらに、慢性胃腸疾患、例えば炎症性腸疾患(IBD)は、腸障壁完全性の減少および病原性共生生物の侵襲性の増加をもたらす。
【0210】
均質化された便試料の配列決定を通して、ABrおよびMDRの存在量のメタゲノミクス解析を実施した。無作為化デザインクロスオーバー臨床摂食試験は、例示的なペットフード組成物(例IV)、および商業的ケト原性食品(食餌D)を摂食して6週目に、糞便採取を有するイヌ科動物対象(n=35)で実施された。例示的なペットフード組成物(例IV)および商業的ケト原性食品(食餌D)間の特徴の比較を表21に示す。例示的なペットフード組成物(例IV)または商業的ケト原性食品(食餌D)を摂取した後のイヌの糞便試料間の差異について、以下のマーカーのクラスについて、対のt検定を実施した:1)ABr、2)MDR。結果を表25に要約する。表25のABRおよびMDR遺伝子含量のレベルの値は、RPKMとして示され、差異は、例IVを供給されたイヌにおけるレベルを、そのイヌが商業的ケトン食餌Dを摂食していたときに見出されるレベルに対するパーセンテージとして表した。
【表25】
【0211】
ABrおよびMDRの分析では、39の遺伝的要素は、商業的ケト原性食品(例IV)および例示的なペットフード組成物(食餌D)の両方を摂取したイヌの対のt検定によって判定されるように、有意に異なっていた。これらのうち、イヌが例示的なペットフード組成物(例IV)を摂取したときに、同じイヌが従来の高繊維ケト原性食品(食餌D)を摂取した時と比較して、約87%(39中34)が統計的に有意に減少した。さらに、例示的なペットフード組成物(例IV)によって低減された、これらのABr/MDR要素の約26%(34中9)が、検出不可能なレベルまで低減され、その結果、それらのABr/MDR要素の存在量はゼロであった。さらに、ペットフード組成物(例IV)によって低減されたが、検出不可能なレベルまでは低減されない25のABr/MDR要素を考慮すると、例示的なペットフード組成物(例IV)による存在量の平均平均減少量は、従来の高繊維ケト原性食品(食餌D)の87%下だった。
【0212】
例IVは、アミノグリコシド/テトラサイクリンクラスのではない酵素のレベルを低減するのにより有効であったことに留意されたい。実際、これらの遺伝子のレベルは、イヌが食餌Dと比較して例IVを摂取したときに増加した。この新規で驚くべき所見は、本明細書に開示される実施形態に従って調製されたペットフードが、コンパニオン動物患畜が呈する抗生物質耐性のタイプについて獣医学的試験の結果に従うための組成物として役立つことができることを明らかにする。この設定では、ABrおよびMDRの存在に関する糞便検査結果は、ケト原性キブルで介入することの適切性について、獣医師に知らせることになるであろう。獣医が、コンパニオン動物がアミノグリコシドクラス(アミノグリコシドaph2 Ib、アミノグリコシドaac6’Im、アミノグリコシドaph3’III)またはテトラサイクリンクラス(tetWおよびtet40であるが、tetMではない)においてABrの存在を示すと観察した場合、その獣医は、ケト原性キブルをそのイヌに提供する前に、他の要因および解決策を考慮する。アミノグリコシドaph2 Ib、aac6’Im、aph3’III、または二つのテトラサイクリン遺伝子tetWおよびtet40のリストにないABrが、コンパニオン動物に顕在化する場合、その獣医は、そのABrの管理を助けるケト原性キブルを提供することによって、コンパニオン動物に対する栄養をパーソナライズすることができる。
【0213】
要約すると、例示的なペットフード組成物は、ABrおよびMDRを劇的に減少させ、この減少は、ABr/MDR要素の25%超に対して検出不能レベルにまで及んだ。当然のことながら、例示的なペットフード組成物は、癌およびIBDの治療を支持または改善する。例えば、癌療法は、免疫能力を低下させ、腸内細菌からの日和見感染をもたらし得る。したがって、除脂肪体重維持のための高エネルギー食品を提供するだけでなく、腸内細菌の病原性能を減少させる、例示的なペットフード組成物が、治療的に最適である。さらに、IBDは腸障壁完全性の喪失をもたらすため、侵襲的な種の薬物療法に対する耐性を防止する例示的なペットフード組成物は、従来の高繊維ケトン食餌の有意な改善となるであろう。したがって、本明細書に開示された例示的なペットフード組成物は、悪液質に対抗する助けとなり、感染速度を減少させ、癌およびIBD患畜の感染を治療するための抗生物質の有効性を改善する。
【0214】
実施例9
例示的なペットフード組成物(例IV)を、腎臓および胃腸の健康に有益であると共に、循環フェノールおよびインドールを減少させるために腸内細菌タンパク質分解および腐敗を阻害する一方で、栄養ケトーシスを誘発するためのその有効性について評価した。
【0215】
ペプチドおよびアミノ酸(タンパク質分解)、ならびにフェノールおよびインドール(腐敗性尿毒症毒素)のメタボロミクス解析を、例示的なペットフード組成物(例IV)、および商業的ケト原性食品(食餌F)をクロスオーバー設計で与えられたイヌから採取して均質化した便試料のショットガンメタボロミクスによって実施した。データは、JMP 15.0の混合モデルにより、食餌を独立変数とし、対象をランダム因子として分析した。個々のp値は、最小二乗平均でのTukeyの事後(post hoc)評価によって評価された。
【0216】
無作為化デザインクロスオーバー臨床摂食試験は、例示的なペットフード組成物(例IV)、および既存の商業的標準タンパク質イヌ科動物メンテナンス食品(食餌F)を摂食して6週目に、糞便採取を有するイヌ科動物対象(n=35)で実施された。例示的なペットフード組成物と商業的タンパク質イヌ科動物メンテナンス食品とのタンパク質、脂肪および非消化性繊維の特徴の比較を表21に要約する。
【0217】
例示的なペットフード組成物(例IV)またはイヌ科動物メンテナンス食品(食餌F)を摂取した後のイヌの糞便サンプル間の差異について、以下のマーカーのクラスについて、統計的試験を実施した:1)不完全なタンパク質分解(糞便ジペプチド)表26、2)完全なタンパク質分解(糞便アミノ酸)表27、3)フェノール尿毒症毒素(血清フェノール)表28、および4)インドール尿毒症毒素(血清インドール)表29。これらの表中の値は、代謝物内中央値中心相対倍率濃度(within-metabolite median centered relative fold concentration)として表され、単位なしであり、大きさは直接比較可能である。
【表26】
【0218】
不完全なタンパク質分解のマーカーである、すべての検出された糞便ジペプチドの100%は、イヌが標準メンテナンス食品(食餌F)を摂取した時と比較して、そのイヌが例示的なペットフード組成物(例IV)を消費した後に統計的に有意に減少した。さらに、食餌Fからのパーセント変化は、これらのタンパク質分解の減少が大きな効果サイズを有することを示唆した。尿毒症毒素の産生につながる可能性のあるジペプチドとしては、フェニルアラニルアラニン、フェニルアラニルグリシン、スレオニルフェニルアラニン、トリプトフィルグリシン、およびチロシルグリシンが挙げられる。
【表27】
【0219】
完全なタンパク質分解のマーカーである、すべての検出された糞便アミノ酸の100%は、食餌Fを摂取した時と比較して、例示的なペットフード組成物(例IV)を摂取した後に統計的に有意に減少した。さらに、食餌Fからのパーセント変化は、これらのタンパク質分解の減少が大きな効果サイズを有することを示唆した。尿毒症毒素の産生につながる可能性のあるアミノ酸には、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが含まれる。
【表28】
【0220】
腎臓の健康に関連する17の尿毒症フェノール(purefactionのマーカー)のうち、17中12は、例示的なペットフード組成物例IVと比較用食餌Fとの間で有意に異なっていた。有意に異なっていた17中の12は、イヌが例IVを摂取した後、有意に減少した。さらに、食餌Fからのパーセント変化は、これらのフェノール性腐敗の減少が大きな効果サイズを有することを示唆した。
【表29】
【0221】
検出された20の尿毒症インドール(腐敗のマーカー)のうち、12は例示的なペットフード組成物と対照との間で有意に異なっていた。12中9は、イヌがメンテナンス食品(食餌F)を摂取した時と比較して、例示的なペットフード組成物(例IV)を摂取した後に統計的に有意に減少した(12中3は増加した)。さらに、食餌Fからのパーセント変化は、これらのインドール腐敗の減少が大きな効果サイズを有することを示唆した。
【0222】
本発明者らが、30%多いタンパク質および8分の1の炭水化物を有する本明細書に開示される例示的なペットフード組成物が、さらにタンパク質分解および腐敗を著しく低減することを、驚くべきことに、そして予想外に発見したことを、理解すべきである。例示的なペットフード組成物は、腎臓の健康を改善するために利用されてもよい。例示的なペットフード組成物は、比較的高い食餌性タンパク質を摂食することを可能にすると同時に、微生物腐敗の尿毒症毒素の減少をもたらす。
【0223】
コンパニオン動物栄養学の当業者であれば、食餌性タンパク質の増加は、未消化タンパク質の結腸への輸送の増加をもたらし、そこで常在する結腸微生物により腐敗に供され、動物内に再吸収されて健康および寿命を減少させ得る、腐敗代謝物を産生することを理解されたい。一般的に、食餌中のタンパク質レベルが高いほど、未消化タンパク質の微生物の腐敗度が高くなり、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)の分解から尿毒症毒素が産生される。しかしながら、本明細書に開示されるペットフード組成物が、芳香族アミノ酸分解(フェノールおよびインドール)の腸内微生物叢代謝物のレベルを減少させることが予想外に判明した。理論に拘束されるものではないが、高い生物学的利用能を有するタンパク質含有成分の選択的な含有、およびこの効果をもたらした食物繊維との適切なバランスが考えられる。
【0224】
実施例10
本明細書に開示される例示的なペットフードは、明らかに、癌の治療を受けているコンパニオン動物に利益を提供することが期待され得る。これは、以下の理由による。本明細書に開示される例示的なペットフードは、よりエネルギー密度が高く、既存のケト原性乾燥キブル食餌である食餌Cおよび食餌Dよりも10~13%高い代謝エネルギー含有量を有する。癌患畜は、疾患およびその治療プロトコルに付随する悪液質およびサルコペニック筋喪失を改善するために増加したエネルギーを必要とする。キブルのエネルギー密度が10~13%高いペットフードによって、ペットフードが、癌患畜に適切な食餌エネルギーを送達するための既存のケト原性乾燥キブルの能力を改善することが期待される。
【0225】
また、本明細書に開示される例示的なペットフードには高い嗜好性があり、既存の利用可能なケト原性乾燥イヌ科動物キブルよりも好ましかった。癌患畜はしばしば食欲低下を経験するため、これは重要である。さらに、微生物病毒性因子、抗生物質耐性、多剤耐性を減少させるための分子的利益は、免疫低下した、および癌療法を受けている患畜に利益をもたらすことが期待される。
【0226】
しかしながら、頭頸部癌を経験している多くの癌患畜は、食品を噛み、食べることが困難となる。食品が高度に嗜好性であるとしても、そしゃくの身体的制約は、コンパニオン動物患畜における適切なエネルギー摂取に対する障壁となり得る。
【0227】
前述の観点から、ケト原性乾燥キブル食餌D、および標準(非ケト原性)乾燥キブル食餌Fと共に、ペットフード組成物(例IV)が、テクスチャプローブ分析に供され、癌患畜が食品を摂取する能力に影響を与え得る硬さを評価した。簡潔に述べると、歯を模倣したプローブを使用して、それぞれの乾燥キブル上の集中領域に力を印加する機器上でテクスチャプローブ分析を実施し、次いで、その力の「歯」への印加に対する抵抗を測定した。平らなねじ回し形状のプローブを使用して、Stable Micro Systems TA XT Plus上で試験を実施した。(1)キブルを破砕するために記録されたピーク力、(2)キブルが完全に破砕する前のプローブがキブルと接触していた接触時間、および(3)破砕する前にキブルが圧縮された変形距離を含む、三つのパラメータを捕捉した。各食餌から50の代表的なキブルを選択して個別に試験し、次にその結果を食餌別に平均した。テクスチャプローブ分析の結果を、表30に要約する。
【表30】
【0228】
表30に示すように、ペットフード組成物(例IV)は、キブルを破砕するために必要な力の量が約30%低く、破砕前の接触時間およびキブルの変形において同じ量が減少した。対照的に、例IVは、ケト原性食餌Dよりも、破砕前にプローブからのエネルギーを約2倍必要とした。同時に、例IVは、比較用ケト原性食餌Dよりも、模擬歯との接触時間がわずかに長く、破砕前により変形可能であった。これらの結果は、例示的なペットフード組成物が、高い嗜好性を支持する構成要素であり得る、ユニークで新規の質感の組み合わせを提供することを示す。また、ペットフードが癌を患うコンパニオン動物が食べるには困難であり過ぎるという懸念がないことも、明らかである。ピーク力は標準イヌ科動物メンテナンスキブルよりも1/3少ないため、例示的なペットフードは、癌患畜によって容易に摂取され得ると予想される。
【0229】
実施例11
例示的なペットフード組成物(例1)および(例IV)を、体重の維持または回復の目的で、急性ケアを受けているかまたは急性ケアから回復しているペットにとって、魅力的な質感を有して高いエネルギー密度を提供する有効性について評価した。
【0230】
ペットフード組成物(例1)および(例IV)の有効性を、左目のすぐ上の領域を侵す軟部組織肉腫と診断された3.75歳のオス去勢イヌで評価した。外科的除去およびその後の組織病理学的検査により、その高度に侵襲的な性質による腫瘍の不完全な除去が明らかになった。イヌが回復した後、フォローアップ放射線療法が推奨された。しかしながら、術後の痛みと疾患の性質により、イヌは、食欲の減退と、12日間で74.8ポンドから66.8ポンドに低下という有意な体重減少を生じ、11%の体重減少により放射線療法の対象から遠のくこととなった。例示的なペットフード組成物(例1)および(例IV)をこのイヌに与え、イヌは両方ともよく食べ、提供されたすべての部分を消費した。10日後、イヌは4ポンドの体重を回復し、27日目までにイヌは5.7ポンドを回復した。ペットの飼い主は、イヌのエネルギーレベルが正常に戻ったと報告した。54日目までに、イヌは6.1ポンド回復し、外科手術による創傷は治癒し、イヌは追加の放射線療法を受ける準備ができた。イヌは、放射線療法中に例示的なペットフード組成物(例1)および(例IV)を消費し続け、治療全体を通して身体状態を維持した。イヌは今や、癌の1年生存犬である。
【0231】
癌を有するペットは、その基礎疾患から根本的に、あるいは癌の進行を遅らせるために与えられる薬物治療(化学療法剤)、術後の痛み、または放射線療法から二次的に生じ得る、食欲不振に罹ることが理解されるべきである。一般的に、癌と診断されたイヌの大部分(約69%)は、診断前にいくらかの体重減少を経験し、有意な割合(約35%)は筋肉量の喪失を経験する。さらに、最大約91%のネコが、癌と診断される前に筋肉/体重減少の既往を有する。さらに、最低の身体状態を有するネコは、一般的に、最低の生存時間を呈する。
【0232】
前述を考慮すると、癌を有するペットの食欲の刺激および維持は、癌を有するペットの、生活の質の維持、向上、および延長、ならびに延命における重要な因子である。さらに、癌または他の衰弱性疾患を有するペットは、典型的な量の食品を掴む力または能力が減少する場合がある。したがって、エネルギー密度、タンパク質に完全で、高い嗜好性かつ消化可能な食品の組み合わせは、ペットが、1日に必要な量のカロリー、タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、およびミネラルを、より小さなエネルギー密度の食餌で摂取することができるため、特に有利である。
【0233】
本開示は、完全な開示を行う目的でかなり詳細に説明されているいくつかの実施形態を参照して説明されているが、こうした実施形態は単に例示的であり、本開示のすべての態様の網羅的な列挙を限定または表すことを意図していない。本開示の範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲から決定されるべきである。さらに、当業者には、本発明の精神および原理から逸脱することなく、このような詳細において数多くの変更がなされ得ることは明白であろう。