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特許7495989局所用ナロキソン組成物およびそれを使用するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】局所用ナロキソン組成物およびそれを使用するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/485 20060101AFI20240529BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240529BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240529BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240529BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240529BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240529BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240529BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240529BHJP
   A61P 9/02 20060101ALI20240529BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240529BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240529BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240529BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240529BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A61K31/485
A61K47/10
A61K47/14
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61P25/04
A61P1/16
A61P9/02
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/00
A61P29/00
A61P37/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022549047
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 US2021017550
(87)【国際公開番号】W WO2021163252
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】62/976,967
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502346286
【氏名又は名称】テイコク ファーマ ユーエスエー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】首藤 十太郎
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,ジェンイェ
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ,ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】スンカラ,アシャ
(72)【発明者】
【氏名】バーナー,ブレット
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-158924(JP,A)
【文献】Ramesh Panchagnula et al.,"Transdermal delivery of naloxone: skin permeation, pharmacokinetic, irritancy and stability studies",International Journal of Pharmaceutics,2005年,Vol.293,p.213-223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
47/00-47/69
9/00-9/72
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナロキソン遊離塩基と、2つ以上の異なるポリエチレングリコールを含む非水性ビヒクルとを含む、 貯蔵安定性非水性局所用組成物であって、
ナロキソンN-オキシドを含まず、ナロキソンを対象の皮膚表面を通して送達するように製剤化される、 前記組成物。
【請求項2】
前記2つ以上の異なるポリエチレングリコールが、異なる平均分子量の2つ以上の異なるポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項3】
前記2つ以上のポリエチレングリコールが、1000g/mol以下の平均分子量を有する第1のポリエチレングリコールと、前記第1のポリエチレングリコールより高い平均分子量を有する第2のポリエチレングリコールとを含む、請求項2に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項4】
前記第2のポリエチレングリコールが、1000g/mol以上の平均分子量を有する、請求項3に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項5】
前記第1のポリエチレングリコールが、600g/mol以下の平均分子量を有し、前記第2のポリエチレングリコールが、1350g/mol以上の平均分子量を有する、請求項4に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項6】
前記第2のポリエチレングリコールよりも多くの前記第1のポリエチレングリコールを含む、請求項5に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項7】
調製された時点で、少なくとも前記第1のポリエチレングリコールが、20ppm以下の過酸化物を含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項8】
1重量%のナロキソン遊離塩基と、50~70重量%の300~400g/molの平均分子量を有する前記第1のポリエチレングリコールと、30~45重量%の1450g/molの平均分子量を有する前記第2のポリエチレングリコールとを含む、請求項3~7のいずれか一項に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項9】
1つ以上の追加の不純物を含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項10】
1つ以上の抗酸化物質を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項11】
前記ナロキソン遊離塩基を局所的に送達するように製剤化される、請求項1~10のいずれか一項に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項12】
クリーム、ゲル、ローションまたは軟膏である、請求項1~11のいずれか一項に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
【請求項13】
前記組成物は、対象の皮膚に適用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ナロキソンは、中枢神経系におけるμオピオイド受容体に対する高い親和性を有する麻薬性μオピオイド受容体(MOR)アンタゴニストである。μ-オピオイド受容体は、エンケファリンおよびβ-エンドルフィンに対する親和性を有するが、ダイノルフィンに対する親和性が低いオピオイド受容体のクラスである。μ-オピオイド受容体の3つのよく特徴付けられた変異体は、典型的には、シナプス前(例えば、脊髄の管周囲灰色領域および表面後角)またはシナプス後に見出されるμ、μ、およびμである。
【0002】
μ-オピオイド受容体の活性化(例えば、アゴニストによる)は、鎮痛、鎮静、血圧低減、かゆみ、吐き気、多幸感、呼吸の低減および減数分裂につながる可能性がある。μ-オピオイド受容体は、腸管にも見出すことができ、これらの受容体の活性化は、時に蠕動作用を阻害して、便秘をもたらし得る。ナロキソンは、商業的にはNarcan(登録商標)またはEvzio(登録商標)としても知られ、また、κ-オピオイド受容体およびδ-オピオイド受容体での親和性がより低い。
【0003】
ナロキソンは、典型的には、静脈内注射または注入などによって非経口投与され、この投与経路は、薬物の迅速な送達および完全な生物学的利用能を提供し、したがってこの経路は予測可能および制御可能となる。非経口投与用の溶液製剤は、本質的に粒子状物質不含でなければならず、また滅菌されていなければならない。それらは、有効性および安全性が予測可能であるように、物理的および化学的に安定していなければならない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の態様は、対象の皮膚にナロキソンを局所的に送達するための局所用ナロキソン組成物を含む。ある特定の実施形態による局所用組成物は、ナロキソン遊離塩基および非水性ビヒクルを含む、貯蔵安定性非水性局所用組成物であり、ナロキソンN-オキシドを実質的に含まない。この局所用組成物を使用して対象にナロキソンを局所的に送達する方法、ならびに局所用ナロキソン組成物を含むキットも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】異なるPEG供給源から調製された様々な軟膏製剤の各々について、ナロキソンN-オキシドの観察されたパーセンテージを示す。
図2】異なるPEG供給源から調製された様々な軟膏製剤の各々について、ナロキソンN-オキシドの観察されたパーセンテージを示す。
図3】1)プラセボ(ナロキソン活性剤なし)、5または2)ナロキソン遊離塩基を有する局所用組成物を適用した34日目および41日目にマウスが示した平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間を示す。
図4】1)プラセボ(ナロキソン活性剤なし)、5または2)ナロキソン遊離塩基を有する局所用組成物を適用した48日目および55日目にマウスが示した平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間を示す。
図5】1)プラセボ(ナロキソン活性剤なし)、または2)ナロキソンHClを有する局所用組成物を適用した34日目および41日目にマウスが示した平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間を示す。
図6】1)プラセボ(ナロキソン活性剤なし)、または2)ナロキソンHClを有する局所用組成物を適用した48日目および55日目にマウスが示した平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間を示す。
図7A】プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物およびナロキソン遊離塩基を有する局所用組成物について、34日目に示された経皮水分損失を示す。
図7B】プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物およびナロキソン遊離塩基を有する局所用組成物について、48日目に示された経皮水分損失を示す。
図7C】プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物およびナロキソン遊離塩基を有する局所用組成物について、55日目に示された経皮水分損失を示す。
図8A】プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物およびナロキソンHClを有する局所用組成物について、33日目目に示された経皮水分損失を示す。
図8B】プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物およびナロキソンHClを有する局所用組成物について、55日目に示された経皮水分損失を示す。
図9A】プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物、ならびにナロキソン遊離塩基および疎水性送達ビヒクルを有する局所用組成物を適用したマウスの皮膚の例示的な写真を示す。
図9B】プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物、ならびにナロキソン遊離塩基および疎水性送達ビヒクルを有する局所用組成物を適用したマウスの皮膚の例示的な写真を示す。
図10A】プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物、ならびにナロキソンHClおよび親水性送達ビヒクルを含有するポリエチレングリコールのみを有する局所用組成物を適用したマウスの皮膚の例示的な写真を示す。
図10B】プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物、ならびにナロキソンHClおよび親水性送達ビヒクルを含有するポリエチレングリコールのみを有する局所用組成物を適用したマウスの皮膚の例示的な写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の態様は、対象の皮膚にナロキソンを局所的に送達するための局所用ナロキソン組成物を含む。ある特定の実施形態による局所用組成物は、ナロキソン遊離塩基および非水性ビヒクルを含む、貯蔵安定性非水性局所用組成物であり、ナロキソンN-オキシドを実質的に含まない。局所用組成物を使用して対象にナロキソンを局所的に送達する方法、ならびに局所用ナロキソン組成物を含むキットも提供される。
本発明の態様には、以下も含まれる。
態様1
ナロキソン遊離塩基と、非水性ビヒクルとを含み、
ナロキソンN-オキシドを実質的に含まない、
貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様2
前記ナロキソン遊離塩基が、0.05~10重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、態様1に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様3
前記ナロキソン遊離塩基が、0.1~5重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、態様2に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様4
前記非水性ビヒクルが、ポリエチレングリコール成分を含む、態様1~3のいずれかに記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様5
前記ポリエチレングリコール成分が、異なる平均分子量の2つ以上の異なるポリエチレングリコールを含む、態様4に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様6
前記ポリエチレングリコール成分が、1000g/mol以下の平均分子量を有する第1のポリエチレングリコールと、前記第1のポリエチレングリコールより高い平均分子量を有する第2のポリエチレングリコールとを含む、態様5に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様7
前記第2のポリエチレングリコールが、1000g/mol以上の平均分子量を有する、態様6に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様8
前記第1のポリエチレングリコールが、600g/mol以下の平均分子量を有し、第2のポリエチレングリコールが、1350g/mol以上の平均分子量を有する、態様7に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様9
前記第1のポリエチレングリコールが、300~400g/molの平均分子量を有する、態様8に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様10
前記第2のポリエチレングリコールが、1400~1500g/molの平均分子量を有する、態様9に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様11
30~70重量%の前記第1のポリエチレングリコールを含む、態様10に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様12
前記第2のポリエチレングリコールよりも多くの前記第1のポリエチレングリコールを含む、態様10に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様13
30~45重量%の前記第2のポリエチレングリコールを含む、態様12に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様14
調製された時点で、少なくとも前記第1のポリエチレングリコール成分が、20ppm以下の過酸化物を含む、態様6~13のいずれかに記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様15
1重量%のナロキソン遊離塩基と、50~70重量%の300~400g/molの平均分子量を有する第1のポリエチレングリコールと、30~45重量%の1450g/mlの平均分子量を有する第2のポリエチレングリコールとを含む、態様1~14のいずれかに記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様16
1つ以上の追加の不純物を実質的に含まない、態様1~15のいずれかに記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様17
前記1つ以上の追加の不純物が、RRT0.32、RRT0.43、RRT0.82、RRT0.86、およびRRT2.63からなる群から選択される、態様16に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様18
1つ以上の抗酸化物質を含む、態様1~17のいずれかに記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様19
前記1つ以上の抗酸化物質が、0.01~5.0%w/wの範囲の量で存在する、態様18に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様20
前記1つ以上の抗酸化物質が、BHTおよび没食子酸プロピルからなる群から選択される、態様18または19に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様21
前記ナロキソン遊離塩基を局所的に送達するように製剤化される、態様1~20のいずれかに記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様22
適用後2~7時間にわたり前記ナロキソン遊離塩基を局所的に送達するように製剤化される、態様1~21のいずれかに記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様23
クリーム、ゲル、ローションまたは軟膏である、態様1~22のいずれかに記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様24
前記組成物が、軟膏である、態様23に記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物。
態様25
ナロキソン遊離塩基と、非水性ビヒクルとを含む、貯蔵安定性非水性局所用組成物を対象の皮膚に適用することを有しており、
前記組成物は、ナロキソンN-オキシドを実質的に含まない、
方法。
態様26
炎症性皮膚疾患を治療または予防することを有する、態様25に記載の方法。
態様27
前記炎症性皮膚疾患が、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様26に記載の方法。
態様28
非炎症性皮膚疾患を治療または予防することを有する、態様25に記載の方法。
態様29
前記非炎症性皮膚疾患が、慢性痒疹である、態様28に記載の方法。
態様30
そう痒症を治療または予防することを有する、態様25に記載の方法。
態様31
前記そう痒症が、炎症性皮膚疾患、非炎症性皮膚疾患、原発性胆汁性肝硬変、慢性腎不全、腎臓透析、異常な血圧、甲状腺機能不全、老化、がん、貧血、寄生虫、神経学的状態または妊娠のうちの1つ以上に関連する、態様30に記載の方法。
態様32
前記そう痒症が、薬物誘発性そう痒症または起痒物質誘発性そう痒症である、態様31に記載の方法。
態様33
前記組成物が、皮膚状態に関連するかゆみを治療または予防するように製剤化される、態様25~32のいずれかに記載の方法。
態様34
前記局所用組成物が、皮膚状態の場所に直接適用される、態様25~33のいずれかに記載の方法。
態様35
前記局所用組成物が、前記皮膚状態全体を覆うために十分な様式で、前記対象の前記皮膚に適用される、態様34に記載の方法。
態様36
前記局所用組成物が、前記対象の前記皮膚と1時間以上接触して維持される、態様25~35のいずれかに記載の方法。
態様37
前記局所用組成物が、前記対象の前記皮膚と2~7時間接触して維持される、態様25~36のいずれかに記載の方法。
態様38
前記ナロキソン遊離塩基が、0.05~10重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、態様25~37のいずれかに記載の方法。
態様39
前記ナロキソン遊離塩基が、0.1~5重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、態様38に記載の方法。
態様40
前記非水性ビヒクルが、ポリエチレングリコール成分を含む、態様25~39のいずれかに記載の方法。
態様41
前記ポリエチレングリコール成分が、異なる平均分子量の2つ以上の異なるポリエチレングリコールを含む、態様40に記載の方法。
態様42
前記ポリエチレングリコール成分が、1000g/mol以下の平均分子量を有する第1のポリエチレングリコールと、前記第1のポリエチレングリコールより高い平均分子量を有する第2のポリエチレングリコールとを含む、態様41に記載の方法。
態様43
前記第2のポリエチレングリコールが、1000g/mol以上の平均分子量を有する、態様42に記載の方法。
態様44
前記第1のポリエチレングリコールが、600g/mol以下の平均分子量を有し、第2のポリエチレングリコールが、1350g/mol以上の平均分子量を有する、態様43に記載の方法。
態様45
前記第1のポリエチレングリコールが、300~400g/molの平均分子量を有する、態様44に記載の方法。
態様46
前記第2のポリエチレングリコールが、1400~1500g/molの平均分子量を有する、態様45に記載の方法。
態様47
前記組成物が、30~70重量%の前記第1のポリエチレングリコールを含む、態様46に記載の方法。
態様48
前記組成物が、前記第2のポリエチレングリコールよりも多くの前記第1のポリエチレングリコールを含む、態様47に記載の方法。
態様49
前記組成物が、30~45重量%の前記第2のポリエチレングリコールを含む、態様48に記載の方法。
態様50
少なくとも、前記第1のポリエチレングリコール成分が、前記組成物が調製された時点で、20ppm以下の過酸化物を含む、態様42~49のいずれかに記載の方法。
態様51
前記組成物が、1重量%のナロキソン遊離塩基と、50~70重量%の300~400g/molの平均分子量を有する第1のポリエチレングリコールと、30~45重量%の1450g/mlの平均分子量を有する第2のポリエチレングリコールとを含む、態様25~50のいずれかに記載の方法。
態様52
前記組成物が、1つ以上の追加の不純物を実質的に含まない、態様25~51のいずれかに記載の方法。
態様53
前記1つ以上の追加の不純物が、RRT0.32、RRT0.43、RRT0.82、RRT0.86、およびRRT2.63からなる群から選択される、態様52に記載の方法。
態様54
前記組成物が、1つ以上の抗酸化物質含む、態様25~53のいずれかに記載の方法。
態様55
前記1つ以上の抗酸化物質が、0.01~5.0%w/wの範囲の量で存在する、態様54に記載の方法。
態様56
前記1つ以上の抗酸化物質が、BHTおよび没食子酸プロピルからなる群から選択される、態様54または55に記載の方法。
態様57
前記組成物が、前記ナロキソン遊離塩基を局所的に送達するように製剤化される、態様25~56のいずれかに記載の方法。
態様58
前記組成物が、適用後2~7時間にわたり前記ナロキソン遊離塩基を局所的に送達するように製剤化される、態様25~57のいずれかに記載の方法。
態様59
前記組成物が、クリーム、ゲル、ローションまたは軟膏である、態様25~58のいずれかに記載の方法。
態様60
前記組成物が、軟膏である、態様59に記載の方法。
態様61
キットであって、
態様1~24のいずれかに記載の貯蔵安定性非水性局所用組成物と、
分与デバイスと
を備える、キット。
態様62
前記分与デバイスが、チューブを含む、態様61に記載のキット。
態様63
前記チューブが、搾り出し可能なチューブを含む、態様62に記載のキット。
【0007】
本発明がより詳細に説明される前に、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって、もちろん、変化し得ることが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであることも理解されたい。
【0008】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、およびこの記載の範囲内の任意の他の記載される値または中間値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界に従うことを条件として、本発明内にも包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0009】
ある特定の範囲は、「約」という用語によって先行される数値を伴って本明細書において提示される。「約」という用語は、本明細書において、それが先行する正確な数、ならびにその用語が先行する数に近いか、または近似しているその数についての文字通りの裏付けを提供するために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか、または近似するか否かを判定するとき、その近いまたは近似する列挙されない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙されている数の実質的な等価物を提供する数であり得る。
【0010】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料も、本発明の実施または試験に使用され得るが、代表的な例示的な方法および材料が、以下に記載される。
【0011】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許は、あたかも各個々の刊行物または特許が、参照することによって組み込まれるように具体的かつ個々に示されているかのように、参照することによって本明細書に組み込まれ、方法および/または材料を開示および記載するために、参照によって本明細書に組み込まれ、それらの方法および/または材料に関連して刊行物が引用される。いかなる刊行物の引用も、出願日以前のその開示に関するものであり、本発明が、先行発明を理由に、そのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0012】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、冠詞「a」、「an」、および「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、あらゆる選択肢的要素を除外するように起草され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」および「のみ(only)」などの排他的用語の使用のための、または「消極的な」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0013】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載および例証される別個の実施形態の各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他の様々な実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、またはこれらと組み合わされ得る別個の構成要素および特徴を有する。任意の記載された方法は、記載された事象の順序、または論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0014】
装置および方法は、文法的な流動性のために機能的説明とともに記述されるが、米国特許法第112条に基づいて明確に記載されていない限り、特許請求の範囲は、必ずしも「手段」または「ステップ」の限定の解釈によって限定されると解釈すべきではなく、法的均等論の下で特許請求の範囲によって提供される定義の意味および等価物の完全な範囲を付与されるべきであり、特許請求の範囲が米国特許法第112条に基づいて明確に記載されている場合には、米国特許法第112条に基づく完全な法的等価物を付与されるべきであることを明確に理解されたい。
【0015】
本発明の様々な実施形態のさらなる説明において、最初に、局所用組成物の態様がより詳細に再検討され、次に、皮膚状態を治療するべく対象にナロキソンを送達するために局所用組成物を使用する実施形態が詳細に説明され、主題の局所用ナロキソン組成物を含むキットが再検討される。
【0016】
局所用組成物
上記で要約したように、本発明の態様は、ある量のナロキソン遊離塩基を対象に送達するための局所用組成物を含む。したがって、局所用組成物は、ナロキソン遊離塩基を含む。ナロキソン遊離塩基は、以下の式により説明される。
【0017】
【化1】
【0018】
実施形態では、主題のナロキソン組成物は、ナロキソン遊離塩基を対象に局所的に送達するように製剤化される。「局所的に」という用語は、本明細書では、ナロキソン遊離塩基が皮膚の表面にわたって送達される、例えば皮下、真皮、ならびに角質層、胚芽層、棘層、および基底層を含む表皮のうちの1つ以上に送達される投与経路を指すように、従来の意味で使用される。したがって、ナロキソン遊離塩基を有する局所用組成物は、例えば、腕、脚、臀部、腹部、背中、首、陰嚢、顔、耳の後ろなどの任意の好都合な位置に適用されるように製剤化される。いくつかの実施形態では、皮膚は、健康な無傷の皮膚である。他の実施形態では、皮膚は、1つ以上の層(例えば、角質層、胚芽層、棘層、基底層など)が疾患状態、炎症状態、または完全に無傷ではない状態であってもよい皮膚であり得る。「完全に無傷ではない」という語句は、本明細書では、完全に無傷ではない皮膚の1つ以上の層が疾患、炎症、または他の状態に起因する少なくとも1つの穿孔を含むことを意味するように従来の意味で使用され、ここで、完全に無傷ではない皮膚は、例えば、局所用ナロキソン組成物が適用される表面領域の累積的に0.01%以上、例えば局所用ナロキソン組成物が適用される表面領域の0.05%以上、例えば0.1%以上、例えば0.5%以上、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば97%以上(99%以上を含む)である、皮膚の1つ以上の層に欠陥があるバリア特性(例えば穿孔)を含み得る。
【0019】
ある特定の実施形態において、ナロキソン遊離塩基は、投与部位に局所的に送達される。「局所的に」という用語は、本明細書では、ナロキソンが適用部位の近接部またはその下の近接部内に送達されることを意味するように、従来の意味で使用される。これらの実施形態では、ナロキソン遊離塩基は、適用部位から所定の距離、例えば適用箇所から30cm以内、例えば25cm以内、例えば20cm以内、例えば15cm以内、例えば10cm以内、例えば5cm以内、例えば4cm以内、例えば3cm以内、例えば2cm以内、例えば1cm以内、例えば0.5cm以内(0.1cm以内を含む)の距離だけ拡散する。換言すれば、これらの実施形態では、本発明の組成物は、ナロキソンを投与部位にまたは投与部位から少し離れた位置に送達することを意図して局所投与される。適用部位における皮膚への治り既存遊離塩基の局所的な貫通深度はまた、親水性送達ビヒクル(後述)の成分に応じて様々となり得、0.01mm~15mm、例えば0.05mm~14.5mm、例えば0.1mm~14mm、例えば0.5mm~13.5mm、例えば1mm~13mm、例えば1.5mm~12.5mm、例えば2mm~12mm、例えば2.5mm~11.5mm、例えば3mm~11mm、例えば3.5mm~10.5mm、例えば4mm~10mm(5mm~10mmの適用部位における皮膚への貫通深度を含む)であってもよい。いくつかの場合では、上記のような投与はまた、低用量のナロキソンの全身投与などのナロキソンの全身投与をもたらし得る。
【0020】
ある特定の実施形態では、注目される局所用組成物は、対象へのナロキソンの延長送達用に製剤化される。「延長送達」という用語は、本明細書では、長期間にわたって、例えば数時間(1時間以上を含む)にわたって、例えば2時間以上、例えば3時間以上、例えば4時間以上、例えば5時間以上、例えば6時間以上、例えば7時間以上にわたってナロキソンを送達するように製剤化される組成物を指すように使用される。上記の範囲について、上限期間は、いくつかの場合において、10時間以内、例えば9時間以内、例えば8時間以内、例えば7時間以内である。ある特定の実施形態では、局所用組成物は、例えば1~10時間、例えば2時間~9時間、例えば2時間~7時間の範囲の期間、ナロキソンを対象に送達するように製剤化される。
【0021】
対象の適用部位および生理学、ならびに主題のナロキソン組成物を適用した皮膚上の表面積に応じて、注目される局所用組成物中のナロキソン遊離塩基の量は様々となり得、いくつかの場合では、ナロキソンの量は、0.01mg~2000mg、例えば0.02mg~1750mg、例えば0.03mg~1500mg、例えば0.04mg~1250mg、例えば0.05mg~1000mg、例えば、0.06mg~750mg、例えば0.07mg~500mg、例えば0.08mg~250mg、例えば0.09mg~100mg(0.01mg~50mgを含む)の範囲である。いくつかの実施形態では、遊離塩基の量は、1mg~200mg、例えば2.5mg~175mg、例えば5mg~150mg、例えば7.5mg~125mg(10mg~100mgを含む)の範囲である。いくつかの実施形態では、ナロキソン遊離塩基の量は、局所用組成物の総重量の0.01%w/w~15%w/w、例えば0.05%w/w~12.5%w/w、例えば0.05%w/w~10%w/w(0.1%w/w~10%w/w、例えば0.1%w/w~5%w/w(0.5%w/w~5%w/w、例えば0.75%w/w~2.5%w/wを含む)である。いくつかの実施形態では、局所用組成物中のナロキソン遊離塩基の量は、0.5%w/w、0.75%w/w、1%w/w、1.5%w/w、2%w/w、2.5%w/w、3%w/w、3.5%w/w、4%w/w、4.5%w/w、5%w/w、5.5%w/w、6%w/w、6.5%w/w、7%w/w、7.5%w/w、8%w/w、8.5%w/w、9%w/w、9.5%w/w、または10%w/wである。
【0022】
加えて、組成物は、ナロキソンN-オキシドを実質的に含まない。ナロキソンN-オキシドは、以下の分子式:C1921NOを有し、以下の構造式により説明される。
【0023】
【化2】
【0024】
組成物がナロキソンN-オキシドを実質的に含まないため、組成物中のナロキソンN-オキシドの量は、存在する場合、0.5w/w以下、例えば0.2w/w以下(0.1w/w以下を含む)である。いくつかの例では、組成物は、以下の実験の項に記載されるプロトコルを使用して、製剤中でナロキソン-N-オキシドを検出することができないように、検出可能なナロキソン-N-オキシドを含まない。
【0025】
いくつかの場合において、組成物は貯蔵安定性である。本発明の実施形態の貯蔵安定性組成物は、貯蔵条件下、例えば室温で包装された滅菌条件下で、一定期間、例えば1ヶ月以上、例えば3ヶ月以上(6ヶ月以上、例えば12ヶ月以上を含む)貯蔵後も、ナロキソンN-オキシドを実質的に含まない。いくつかの場合において、局所製剤は、組成物および/または活性剤特性、例えば、色、粘度、活性剤活性などが、室温および上昇温度、例えば40℃以上(50℃以上を含む)で、長期間、例えば1週間以上、2週間以上、1ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上にわたって実質的に変化しないように、貯蔵安定性である。
【0026】
本発明の実施形態による局所用組成物は、非水性局所送達ビヒクルを含む。「局所送達ビヒクル」とは、ナロキソン遊離塩基を運び、対象の皮膚と接触させ、それを通過させる組成物を意味する。実施形態では、主題の局所用組成物は、非水性である。局所送達ビヒクルは非水性であるため、ビヒクルは、例えば溶媒として水を含まない。したがって、ビヒクル(ビヒクルおよびナロキソン遊離塩基を含む組成物)は、水を含まない。
【0027】
いくつかの場合において、非水性ビヒクルは、ポリエチレングリコール成分を含む。「ポリエチレングリコール」という用語は、本明細書では、直鎖ポリエチレングリコール、分枝状ポリエチレングリコール、官能化直鎖ポリエチレングリコール、または多官能化分枝状ポリエチレングリコール、またはそれらの任意の組み合わせなどの、エチレンオキシド骨格構造を有する高分子化合物を指すように、従来の意味で使用される。
【0028】
注目される局所送達ビヒクル組成物は、100g/mol~7500g/mol、例えば150g/mol~5000g/mol、例えば200g/mol~2500g/mol、例えば300g/mol~1500g/molの平均分子量(例えば米国薬局方指定分子量)を有するポリエチレングリコールを有するポリエチレングリコール成分を含む。「平均分子量」という用語は、ポリマーの総重量を分子の総数で割ったものを指すように、従来の意味で使用される。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール成分は、200g/mol~2000g/mol、例えば、300g/molまたは400g/mol~1500g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む。ポリエチレングリコールの平均分子量は、とりわけ滴定、サイズ排除クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ゲル透過クロマトグラフィー、質量分析などを含むがこれらに限定されない、任意の好適な分子量決定プロトコルによって決定され得る。
【0029】
ポリエチレングリコール成分は、1個以上の異なる種類のポリエチレングリコール、例えば2個以上の異なる種類のポリエチレングリコール、例えば3個以上の異なる種類のポリエチレングリコール、例えば4個以上の異なる種類のポリエチレングリコール、例えば5個以上の異なる種類のポリエチレングリコール(10個以上の異なる種類のポリエチレングリコールを含む)を含み得る。ある特定の実施形態では、主題のナロキソン組成物中のポリエチレングリコール成分は、第1のポリエチレングリコールおよび第2のポリエチレングリコールを含む。いくつかのそのような実施形態では、ポリエチレングリコール成分は、室温(RT)未満で液体である第1のポリエチレングリコール(例えばPEG600以下)およびRTまたはRT超でワックス状固体である第2のポリエチレングリコール(例えばPEG1000以上)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレングリコール成分は、1000g/mol以下の平均分子量を有するより低い分子量のポリエチレングリコールであり、第2のポリエチレングリコール成分は、1000g/mol以上の平均分子量を有するより高い分子量のポリエチレングリコールである。例えば、第1のポリエチレングリコール成分は、600g/mol以下、例えば550g/mol以下、例えば500g/mol以下、例えば450g/mol以下、例えば400g/mol以下、例えば350g/mol以下、例えば300g/mol以下の平均分子量を有するポリエチレングリコールであってもよい。例えば、第1のポリエチレングリコール成分は、200g/mol~600g/mol、例えば250g/mol~500g/mol、例えば300g/mol~400g/molの範囲の平均分子量を有するポリエチレングリコールである。ある特定の実施形態では、第1のポリエチレングリコール成分は、300g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールである。ある特定の実施形態では、第1のポリエチレングリコール成分は、400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールである。第2のポリエチレングリコール成分は、1000g/mol以上、例えば1050g/mol以上、例えば1100g/mol以上、例えば1150g/mol以上、例えば1200g/mol以上、例えば1250g/mol以上、例えば1300g/mol以上、例えば1350g/mol以上、例えば1400g/mol以上、例えば1450g/mol以上の平均分子量を有するポリエチレングリコール(1500g/mol以上の平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む)であってもよい。例えば、第2のポリエチレングリコール成分は、1000~6000g/mol、例えば1100g/mol~4000g/mol、例えば1200g/mol~3000g/mol、例えば1300g/mol~2000g/mol(1400g/mol~1500g/molを含む)の範囲の平均分子量を有するポリエチレングリコールであってもよい。ある特定の実施形態では、第2のポリエチレングリコール成分は、1450g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールである。存在するポリエチレングリコールの総量に関して、第1の分子量、例えば300または500g/molのポリエチレングリコールであるパーセンテージは、20~90%、例えば30~70%(50~70%を含む)の範囲で様々となり得る。第2の分子量、例えば1450g/molのポリエチレングリコールであるパーセンテージは、いくつかの場合では、20~50%、例えば30~45%の範囲で様々となり得る。第1の低分子量ポリエチレングリコールが第2の高分子量ポリエチレングリコールと組み合わされる場合、組成物は、第2のポリエチレングリコールよりも多くの第1のポリエチレングリコールを含んでもよく、例えば、第1の低分子量ポリエチレングリコールの量は、第2の高分子量ポリエチレングリコールの量を、例えば2%以上、例えば5%以上(10%以上を含む)だけ超えてもよい。
【0030】
いくつかの場合において、貯蔵安定性非水性局所用組成物は、0.1~1重量%のナロキソン遊離塩基と、50~70重量%の300~400g/molの平均分子量を有する第1のポリエチレングリコールと、30~45重量%の1450g/mlの平均分子量を有する第2のポリエチレングリコールとを含む。注目される製剤は、以下を含む。
0.1%のナロキソン遊離塩基/60~65%のPEG400/39.9~34.9%のPEG1450
0.5%のナロキソン遊離塩基/60~65%のPEG400/39.5~34.5%のPEG1450
1%のナロキソン遊離塩基/60~65%のPEG400/39~34%のPEG1450
【0031】
いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールは、規制機関(例えば、米国薬局方、USPおよび国民医薬品集、欧州薬局方など)によって認証された(すなわち分析証明書を有する)分子量を有する医薬グレードのポリエチレングリコールである。いくつかの場合において、少なくとも第1のポリエチレングリコール成分は、組成物が調製された時点で、ほとんどまたはまったくペルオキシドを含まないものであり、例えば、50ppm以下、例えば40ppm以下(30ppm以下を含み、20ppm以下を含み、10ppm以下を含み、5ppm以下を含み、1ppm以下を含む)である。本発明の実施形態において使用され得る市販のポリエチレングリコールは、Super Refined(商標)ポリエチレングリコール(Croda、East Yorkshire,England)、Emprove(登録商標)Milliporeポリエチレングリコール(Merck KGaA、Darmstadt,Germany)、Pluriol(登録商標)ポリエチレングリコール(BASF)、日本薬局方Macrogolポリエチレングリコール(日油株式会社)などを含む。
【0032】
所望により、非水性送達ビヒクルは、1つ以上の抗酸化剤を含み得る。存在する場合、1つ以上の抗酸化剤の量は、いくつかの場合において0.01~5.0%w/w、例えば0.02~2.0%w/wの量の範囲で様々となり得る。不純物の発生を低減する任意の好都合な抗酸化剤が、例えば以下の実験の項に記載されるように存在してもよく、そのような抗酸化剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピルなどが挙げられる。
【0033】
局所用ナロキソン組成物中に存在する非水性送達ビヒクル(例えばPEG)の量は様々となり得、90%w/w~99.9%w/w、例えば95%w/w~99.9%w/w、例えば99%w/w~99.9%w/wの範囲であり得る。
【0034】
局所用ナロキソン組成物は、所望に応じて様々となり得る。いくつかの場合において、局所用ナロキソン組成物は、軟膏である。「軟膏」という用語は、皮膚または粘膜への外部適用を意図する半固体調製物を指すように使用される。いくつかの場合において、軟膏は、25%以下、例えば20%以下の乾燥減量を示す。いくつかの場合において、軟膏は、300,000~2,000,000cp、例えば350,000~1,800,000cp(400,000~1,700,000cpを含む)の範囲の粘度を示す。いくつかの場合において、局所用ナロキソン組成物は、クリームである。「クリーム」という用語は、好適な塩基中に溶解または分散した1つ以上の原薬を含有する半固体剤形を指すように使用される。いくつかの場合において、クリームは、25,000~900,000cp、例えば30,000~800,000cp(50,000~700,000cpを含む)の範囲の粘度を示す。いくつかの場合において、局所用ナロキソン組成物は、ローションである。「ローション」という用語は、皮膚への適用を意図した局所用懸濁液、溶液および乳剤を指す。いくつかの場合において、ローションは、40%以上、例えば50%以上の乾燥減量を示す。いくつかの場合において、ローションは、1,000~50,000cp、例えば2,000~40,000cp(5,000~30,000cpを含む)の範囲の粘度を示す。いくつかの場合において、局所用ナロキソン組成物は、ゲルである。「ゲル」という用語は、小さな無機粒子または液体によって相互貫通された大きな有機分子で構成された懸濁液からなる半固体系を指す。いくつかの場合において、ゲルは、60%以上、例えば70%以上の乾燥減量を示す。いくつかの場合において、ゲルは、5,000~100,000cp、例えば、5,000~70,000cpの範囲の粘度を示す。ある特定の場合において、局所用ナロキソン組成物は液体として製剤化され、スプレー、エアロゾル、またはフォームとして分与され得る。
【0035】
本発明の実施形態による局所用ナロキソン組成物は、適用部位における対象の皮膚に対して非刺激性である。皮膚の刺激は、本明細書では、例えば、赤み(紅斑)、疼痛、腫れ(浮腫)、または乾燥などの皮膚に対する副作用、変色、または損傷を指すように、一般的な意味で言及される。したがって、主題の局所用組成物は、対象の皮膚に適用される場合、皮膚の質が正常なままであり、ナロキソンの局所送達が投薬間隔全体を通して一貫性を維持するように製剤化される。
【0036】
いくつかの実施形態では、局所用ナロキソン組成物は、対象の皮膚の1つ以上の層を通して所定量のナロキソンを局所的に送達するように製剤化される。
【0037】
ある特定の実施形態では、主題の局所用ナロキソン組成物は、最初にパッチに適用され、対象の皮膚部位に適用され得るか、または、局所用ナロキソン組成物が適用された皮膚部位の上に、パッチが配置され得る。パッチは、ナロキソンを吸収しない材料から製造され得る。注目されるパッチは、限定されないが、不織布、織布、フィルム(シートを含む)、多孔質体、発泡体、紙、不織布または織布上にフィルムを積層することによって得られる複合材料、およびそれらの組み合わせを含む。不織布は、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂;レーヨン、ポリアミド、ポリ(エステルエーテル)、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、およびスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー、ならびにこれらの組み合わせを含み得る。布地は、綿、レーヨン、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせを含み得る。フィルムは、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレートおよびポリエチルメタクリレートなどのポリアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂;ならびにセロファン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、およびポリスルホンの他に、これらの組み合わせを含み得る。紙は、含浸紙、コーティング紙、上質紙、クラフト紙、和紙、グラシン紙、合成紙、およびこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、パッチは、閉塞材料である。
【0038】
パッチのサイズは、局所用ナロキソン組成物を適用した皮膚上の領域に応じて様々となり得、いくつかの場合において、パッチは、対象上の適用部位全体を覆うようなサイズである。したがって、パッチは、2~100cm、例えば4~60cmの範囲の長さ、および2~100cm、例えば4~60cmの範囲の幅を有し得る。注目されるパッチの表面積は、4cm~1000cm、例えば5cm~500cm、例えば10cm~250cm、例えば15cm~100cm(20cm~50cmを含む)の範囲であってもよい。
【0039】
局所用ナロキソン組成物を適用するための方法
本発明の態様は、本発明の局所用ナロキソン組成物を対象に適用するための方法も含む。上述のように、局所とは、ナロキソンが皮膚にわたって送達される投与経路を指し、例えば皮下、真皮、ならびに角質層、胚芽層、棘層、および基底層を含む表皮のうちの1つ以上に送達される。したがって、方法は、主題のナロキソン組成物を、腕、脚、臀部、肩、腰、太もも、腹部、背中、首、陰嚢、顔、耳の後ろなどの皮膚部位に適用することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、本発明の組成物を健康な無傷の皮膚に適用することを含む。他の実施形態では、方法は、1つ以上の層(例えば、角質層、胚芽層、棘層、基底層など)が疾患状態、炎症状態、または完全に無傷ではない状態であってもよい皮膚、例えば疾患、炎症または他の状態に起因して角質層などの1つ以上の層に欠陥があるバリア特性(例えば穿孔)を含む皮膚に、主題の組成物を適用することを含む。例えば、方法は、皮膚が1つ以上の層に、局所用ナロキソン組成物が適用される表面領域の累積的に0.01%以上、例えば局所用ナロキソン組成物が適用される表面領域の0.05%以上、例えば0.1%以上、例えば0.5%以上、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば97%以上(99%以上を含む)である欠陥があるバリア特性(例えば穿孔)を含む対象の皮膚表面に適用することを含み得る。
【0040】
本発明の方法を説明する場合、「対象」という用語は、局所用組成物が適用され、接触して維持される人または生物を意味する。したがって、本発明の対象は、これらに限定されないが、哺乳動物、例えばヒトおよび他の霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種、イヌ、ウサギ、ネコおよび他の家畜化されたペットなどを含み得、ある特定の実施形態において、対象は、ヒトである。対象という用語はまた、任意の年齢、体重、または他の身体的特徴を有する人または生物を含むことを意味し、対象は、成人、子供、乳児、または新生児であってもよい。
【0041】
上述のように、本発明の方法は、対象の皮膚表面に局所用ナロキソン組成物を適用することと、対象にナロキソンを送達するために十分な期間にわたって、局所用組成物を対象と接触状態に維持することとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象の皮膚部位へのナロキソンの延長送達を含む。「延長経皮送達」とは、局所用組成物が、長期間にわたって、例えば、1時間以上、例えば2時間以上、例えば3時間以上、例えば4時間以上、例えば5時間以上(6時間以上、例えば7時間以上を含む)を含む数時間にわたってナロキソンの送達を提供するように製剤化されることを意味する。例えば、局所用組成物は、0.1時間~20時間、例えば0.5時間~15時間、例えば1時間~10時間、例えば2時間~7時間の持続時間、対象の皮膚部位にナロキソンを送達するように製剤化され得る。
【0042】
ある特定の実施形態では、プロトコルは、複数の投薬間隔を含み得る。「複数の投薬間隔」とは、2つ以上の用量の局所用組成物が、順次対象に適用され、対象と接触して維持されることを意味する。したがって、局所用組成物の第1の適用は、対象との接触状態から除去され(例えば、水で洗い流されるか、または湿った布で拭き取られる)、局所用組成物の第2の用量が、対象の皮膚表面に適用される。本発明の方法の実践において、治療レジメンは2つ以上の投薬間隔、例えば3つ以上の投薬間隔、例えば4つ以上の投薬間隔、例えば5つ以上の投薬間隔(10個以上の投薬間隔を含む)を含み得る。
【0043】
複数の投薬間隔の治療プロトコルにおける投薬間隔の間の持続時間は、対象の生理学に応じて、または医療従事者によって決定される治療プロトコルによって様々となり得る。例えば、複数の投薬の治療プロトコルにおける投薬間隔の間の持続時間は、所定のものであってもよく、規則的な間隔に従ってもよい。したがって、投薬間隔の間の時間は様々となり得、1時間以上、例えば2時間以上、例えば4時間以上、例えば6時間以上、例えば8時間以上、例えば12時間以上、例えば16時間以上(24時間以上を含む)であってもよい。ある特定の実施形態において、複数の投薬間隔のプロトコルは、1日以上、例えば2日以上、例えば3日以上、例えば4日以上、例えば5日以上、例えば6日以上、例えば7日以上、例えば10日以上(30日以上を含む)の投薬間隔の間の時間を提供する。投薬間隔の間の期間上限は、いくつかの場合において、30日以内、例えば28日以内、例えば21日以内、例えば14日以内、例えば7日以内(3日以内を含む)である。ある特定の実施形態では、投薬間隔の間の時間は、例えば2日~30日、例えば3日~28日、例えば4日~21日、例えば5日~14日(6日~10日を含む)の範囲である。ある特定の場合において、投薬間隔の間の持続時間は、特定の状態(以下でより詳細に記載されるように)の治療の進行、皮膚の過敏性、皮膚の乾燥、または治療された状態の症状が緩和される程度(例えばかゆみの軽減)に依存し得る。
【0044】
ある特定の実施形態による、局所用ナロキソン組成物を適用し、対象と接触状態に維持するための方法は、炎症性皮膚疾患、非炎症性皮膚疾患、そう痒症、または炎症性皮膚疾患、非炎症性皮膚疾患、もしくはそう痒症に関連する1つ以上の症状などの皮膚状態の治療または予防に使用される。例えば、いくつかの場合における方法は、炎症性皮膚疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、またはそれらの組み合わせを治療または予防するために、対象の皮膚表面に局所用組成物を適用することを含む。他の場合において、方法は、慢性痒疹などの非炎症性皮膚疾患を治療または予防するために、局所用組成物を対象の皮膚表面に適用することを含む。さらに他の場合において、方法は、上述の局所用ナロキソン組成物のうちの1つ以上を対象の皮膚に適用することによって、そう痒症を局所的に治療または予防することを含む。ある特定の場合において、そう痒症は、原発性胆汁性肝硬変、慢性腎不全、腎臓透析、異常な血圧、甲状腺機能不全、老化、がん、貧血、寄生虫、神経学的状態または妊娠のうちの1つ以上に関連するそう痒症である。ある特定の実施形態では、そう痒症は、薬物誘発性そう痒症または起痒物質誘発性そう痒症である。ある特定の実施形態では、そう痒症は、帯状疱疹、乾癬、じんましん、背部異常感覚、グロヴァー病、慢性腎臓病、およびヘイリー・ヘイリー病から選択される状態に関連する。そう痒症は、皮膚発赤、皮膚隆起、斑点または水疱、乾燥肌またはひび割れ肌、革質肌または鱗状の質感がある肌を伴う可能性があり、方法は、そう痒症に付随する皮膚発赤、皮膚隆起、斑点または水疱、乾燥肌またはひび割れ肌、革質肌または鱗状の質感がある肌のうちの1つ以上を治療するために十分な量の主題のナロキソン組成物を適用することも含み得る。
【0045】
ある特定の実施形態による、皮膚状態を治療する方法において、局所用ナロキソン組成物は、皮膚の罹患領域(例えば、炎症性皮膚状態、非炎症性皮膚状態、またはそう痒症の場所)に直接適用され得る。局所用組成物は、皮膚の罹患領域のすべてまたは一部に、例えば皮膚の患部の5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上(99%以上を含む)に適用され得る。いくつかの場合において、皮膚の罹患領域全体に局所用組成物が適用される。ある特定の場合において、皮膚の罹患領域よりも大きい領域に、例えば罹患皮膚領域に直接隣接する皮膚表面の量、例えば皮膚上の周囲面積の追加の5%以上(疾患皮膚のサイズに基づいて)、例えば追加の10%以上、例えば追加の15%以上(皮膚上の周囲面積の追加の25%以上を含む)で局所用組成物が適用される。
【0046】
「治療」という用語は、本明細書では、対象が罹患している状態に関連する症状の少なくとも改善が達成されることを意味するように従来の意味で使用され、ここで、改善は、治療されている状態に関連するパラメータ、例えば症状の大きさの少なくとも低減を指すように広い意味で使用される。したがって、治療はまた、対象がもはや状態、または少なくとも状態を特徴付ける症状に罹患しないように、病理学的状態、または少なくともそれに関連する症状が完全に排除される状況を含む。「管理する」という用語は、本明細書では、対象が罹患する状態に関連する症状が、少なくとも制御された状態にある(すなわち、症状の大きさが所定のレベル内に維持される)ことを意味するように従来の意味で使用され、いくつかの場合においては、根本的な状態を排除することなく症状が改善される。
【0047】
「予防」という用語は、本明細書では、主題の局所用組成物が、対象の皮膚表面に予防的に適用され、示される皮膚状態が発生することを完全に防止される、または状態に関連する状態もしくは症状の重症度の低減が対象によって経験される場合など、特定の状態の発生の低減または完全な排除を意味するように従来の意味で使用される。したがって、ある特定の実施形態による方法は、状態または状態に関連する症状の重症度を、資格がある医療従事者により決定されるように5%以上(例えば疾患皮膚のサイズ、炎症の量などに基づく)、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上(99%以上を含む)低減するために十分な主題の局所用ナロキソン組成物を予防的に適用することを含む。いくつかの実施形態では、主題の方法に従って局所用ナロキソン組成物を適用することは、状態または皮膚疾患に関連する任意の症状の発生を完全に排除するために十分である。いくつかの実施形態では、局所用ナロキソン組成物を対象の皮膚表面に予防的に適用することは、例えば0.1日以上、例えば0.5日以上、例えば1日以上、例えば2日以上、例えば3日以上、例えば4日以上、例えば5日以上、例えば6日以上、例えば7日以上(14日以上を含む)、皮膚状態の持続時間を低減するために十分である。他の実施形態では、対象の皮膚表面に局所用ナロキソン組成物を予防的に適用することは、かゆみなどの皮膚状態に関連する症状の重症度を低減するために十分である。例えば、対象の皮膚表面に局所用ナロキソン組成物を予防的に適用することは、1時間当たり1回以上、例えば1時間当たり2回以上、例えば1時間当たり3回以上、例えば1時間当たり5回以上、例えば1時間当たり10回以上、例えば1時間当たり15回以上、例えば1時間当たり25回以上、例えば1時間当たり50回以上(1時間当たり100回以上を含む)、皮膚状態に応じて皮膚表面が引っ掻かれる回数を低減するために十分であり得る。方法がそう痒症を予防的に治療することを含む場合、局所用ナロキソン組成物は、そう痒症に関連する症状(例えば、かゆみ、皮膚発赤、うろこ状皮膚、水疱または隆起など)の発症の1時間以上前、例えば3時間以上前、例えば6時間以上前、例えば12時間以上前(24時間以上前を含む)に、症状の発症のために対象の皮膚表面に適用され得る。
【0048】
実施形態では、局所用組成物は、皮膚状態またはその関連する症状(例えば、薬物または起痒物質により誘発されるそう痒症)が予想される1時間以上前、例えば2時間以上前、例えば4時間以上前、例えば6時間以上前、例えば8時間以上前、例えば12時間以上前、例えば16時間以上前、例えば20時間以上前、例えば24時間以上前(48時間以上前を含む)に、対象の皮膚表面に予防的に適用され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、方法は、そう痒症の治療または予防において局所用ナロキソン組成物を対象の皮膚表面に適用することを含む。そう痒症は、原発性胆汁性肝硬変、慢性腎不全、腎臓透析、異常な血圧、甲状腺機能不全、老化、がん、貧血、寄生虫、神経学的状態、妊娠のうちの1つ以上に関連し得るか、または薬物誘発性そう痒症もしくは起痒物質誘発性そう痒症であり得る。ある特定の実施形態では、ナロキソン組成物は、そう痒症に付随する皮膚発赤、皮膚隆起、斑点または水疱、乾燥肌またはひび割れ肌、革質肌または鱗状の質感がある肌鱗状の皮膚のうちの1つ以上を治療または予防するように製剤化される。これらの実施形態では、局所用ナロキソン組成物を適用することは、そう痒症の重症度を、例えば5%以上(例えば、患者応答調査、所定期間中に皮膚表面が引っ掻かれる回数による)、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上(99%以上を含む)低減するために十分である。ある特定の場合において、局所用ナロキソン組成物を皮膚表面に適用し接触状態に維持することは、そう痒症を取り除くために十分である。例えば、主題の局所用ナロキソン組成物を適用することは、1時間当たり1回以上、例えば1時間当たり2回以上、例えば1時間当たり3回以上、例えば1時間当たり5回以上、例えば1時間当たり10回以上、例えば1時間当たり15回以上、例えば1時間当たり25回以上、例えば1時間当たり50回以上(1時間当たり100回以上を含む)、そう痒症に応じて皮膚表面が引っ掻かれる回数を低減するために十分である。方法がそう痒症を予防的に治療することを含む場合、局所用ナロキソン組成物は、そう痒症に関連する症状(例えばかゆみ)の発症の1時間以上前、例えば3時間以上前、例えば6時間以上前、例えば12時間以上前(24時間以上前を含む)に、症状の発症のために対象の皮膚表面に適用され得る。
【0050】
他の実施形態では、方法は、アトピー性皮膚炎、湿疹、または乾癬などの炎症性皮膚状態の治療または予防において、対象の皮膚表面に局所用ナロキソン組成物を適用することを含む。ある特定の実施形態では、皮膚状態は、そう痒症に関連するアトピー性皮膚炎である。いくつかの場合において、ナロキソン組成物は、アトピー性皮膚炎、湿疹または乾癬によって引き起こされるかゆみなどの炎症性皮膚状態に関連する症状を治療または予防するために製剤化される。これらの実施形態では、局所用ナロキソン組成物を適用することは、炎症性皮膚状態に関連する症状(例えばかゆみ)の重症度を、例えば5%以上(例えば、患者応答調査、所定期間中に皮膚表面が引っ掻かれる回数による)、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上(99%以上を含む)低減するために十分である。ある特定の場合において、局所用ナロキソン組成物を皮膚表面に適用し接触状態に維持することは、炎症性皮膚状態に関連する症状(例えばかゆみ)を取り除くために十分である。例えば、主題の局所用ナロキソン組成物を適用することは、1時間当たり1回以上、例えば1時間当たり2回以上、例えば1時間当たり3回以上、例えば1時間当たり5回以上、例えば1時間当たり10回以上、例えば1時間当たり15回以上、例えば1時間当たり25回以上、例えば1時間当たり50回以上(1時間当たり100回以上を含む)、炎症性皮膚状態により引き起こされるかゆみに応じて皮膚表面が引っ掻かれる回数を低減するために十分である。
【0051】
さらに他の実施形態では、方法は、ステロイド治療、抗炎症剤または免疫抑制剤などの他の活性剤による治療に部分的または完全に耐性であることが見出される炎症性皮膚状態の治療または予防において、対象の皮膚表面に局所用ナロキソン組成物を適用することを含む。これらの実施形態では、本明細書に記載の局所用ナロキソン組成物を適用することは、皮膚状態を処置するために対象に投与されるステロイド、抗炎症剤または免疫抑制剤の量を、例えば5重量%以上、例えば10重量%以上、例えば25重量%以上、例えば50重量%以上、例えば75重量%以上、例えば90重量%以上(95重量%以上を含む)低減するために十分である。ある特定の実施形態では、主題の局所用ナロキソン組成物を皮膚表面に適用および維持することは、ステロイド、抗炎症剤または免疫抑制剤による炎症性皮膚状態の治療を完全に置き換えるために十分である。
【0052】
ある特定の場合において、方法は、本明細書に記載の局所用ナロキソン組成物を適用することにより、炎症性皮膚状態(例えば、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬)の治療において投与されるステロイド治療剤、抗炎症剤または免疫抑制剤の1回以上の投薬を、例えば2回以上、例えば3回以上、例えば4回以上、例えば5回以上、例えば6回以上、例えば7回以上、例えば8回以上、例えば9回以上、例えば10回以上、例えば15回以上、例えば25回以上、例えば50回以上、例えば75回以上(100回以上を含む)の、炎症性皮膚状態を治療するためのステロイド治療薬、抗炎症剤または免疫抑制剤のスケジュールされた投与を置き換えることを含む。したがって、本明細書に記載の局所用ナロキソン組成物を適用および維持することは、炎症性皮膚状態の治療におけるステロイド治療剤、抗炎症剤または免疫抑制剤のスケジュールされた投与の数を、5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上低減する(炎症性皮膚状態の治療におけるステロイド治療剤、抗炎症剤または免疫抑制剤のスケジュールされた投与の数を99%以上低減することを含む)ために十分となり得る。
【0053】
ある特定の実施形態では、主題の方法は、本明細書に記載の局所用ナロキソン組成物による炎症性皮膚状態の治療において、ステロイド治療剤、抗炎症剤または免疫抑制剤の投与を完全に置き換えるために適切である。
【0054】
ある特定の実施形態では、方法は、炎症性皮膚状態の治療におけるステロイド治療、抗炎症剤または免疫抑制剤の投与と併せて、主題の局所用ナロキソン組成物のうちの1つ以上を適用および維持することを含む。いくつかの場合において、局所用ナロキソン組成物を対象と接触させた場合、炎症性皮膚状態の治療において低減された用量のステロイド、抗炎症剤または免疫抑制剤が対象に投与され得、例えば、ステロイド、抗炎症剤または免疫抑制剤の各々のスケジュール投与の用量は、5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば50%以上(75%以上を含む)低減される。いくつかの場合において、ステロイド、抗炎症剤または免疫抑制剤の投与のスケジュールされた投薬のうちの1つ以上が、例えば1回のスケジュールされた投薬毎に、2回のスケジュールされた投薬毎に、3回のスケジュールされた投薬毎に、4回のスケジュールされた投薬毎に、またはいくつかの他の間隔で排除される(すなわちスキップされる)。ある特定の場合において、主題の局所用ナロキソン組成物のうちの1つ以上を適用することは、ステロイド、抗炎症剤、または免疫抑制剤の連続的なスケジュールされた投薬、例えばステロイド、抗炎症剤または免疫抑制剤の2回以上の連続的なスケジュールされた投薬、例えば3回以上の連続的なスケジュールされた投薬(4回以上の連続的なスケジュールされた投薬を含む)を排除するために十分である。
【0055】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、同じまたは無関係の状態を治療するための他の治療剤の前、それと同時、またはその後に投与され得る。別の治療剤と同時に提供される場合、主題の局所用ナロキソン組成物は、同じまたは異なる組成物中で投与され得る。したがって、注目されるナロキソン組成物および他の治療剤は、併用療法によって対象に投与され得る。「併用療法」とは、療法を受けている対象に物質の組み合わせの治療効果がもたらされるような対象への投与を意図する。例えば、併用療法は、特定の投薬レジメンに従い、本発明のナロキソン組成物を、組み合わさって治療有効投薬量を構成する少なくとも1つの他の薬剤、例えば、他の種類の治療薬のうち、抗炎症剤、免疫抑制剤、ステロイド、鎮痛剤、麻酔剤、降圧剤、化学療法剤を有する医薬組成物とともに投与することにより達成され得る。療法を受けている対象にこれらの物質の組み合わせの治療効果がもたらされる限り、別個の医薬組成物の投与は、同時にまたは異なる時間に(すなわち、同じ日または異なる日に、いずれかの順序で順次)行うことができる。
【0056】
ナロキソン組成物が、同じ状態を治療するために第2の治療剤と同時に投与される場合、ナロキソン対第2の治療剤の重量比は、1:2~1:2.5、1:2.5~1:3、1:3~1:3.5、1:3.5~1:4、1:4~1:4.5、1:4.5~1:5、1:5~1:10、および1:10~1:25、またはこれらの範囲であってもよい。例えば、ナロキソン対第2の治療薬の重量比は、1:1~1:5、1:5~1:10、1:10~1:15、または1:15~1:25の範囲であってもよい。あるいは、第2の治療剤対ナロキソンの重量比は、2:1~2.5:1、2.5:1~3:1、3:1~3.5:1、3.5:1~4:1、4:1~4.5:1、4.5:1~5:1、5:1~10:1、および10:1~25:1、またはこれらの範囲である。例えば、第2の治療剤対ナロキソンの重量比は、1:1~5:1、5:1~10:1、10:1~15:1、または15:1~25:1の範囲であり得る。
【0057】
上述のように、本発明の態様は、ナロキソンを対象に送達するために十分な期間にわたって、対象に局所用ナロキソン組成物を適用することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、ナロキソンの標的投薬量を対象の局所皮膚表面に送達する、例えば、総局所薬物曝露によって、または1日平均局所薬物曝露によって決定される標的用量を送達するために十分な様式で、局所用組成物を対象と接触状態に維持することを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、局所用ナロキソン組成物は、対象の皮膚表面に適用される場合、組成物が、ワセリンなどの疎水性送達ビヒクルを含有するナロキソン組成物によって示されるものよりも少ない経皮水分損失を示すように製剤化される。例えば、本明細書に記載の局所用ナロキソン組成物は、対象の皮膚表面に適用される場合、組成物が、0.5g/m/時間以上、例えば1g/m/時間以上、例えば1.5g/m/時間以上、例えば2g/m/時間以上、例えば3g/m/時間以上、例えば5g/m/時間以上、例えば10g/m/時間以上(25g/m/時間以上を含む)、疎水性送達ビヒクルを含有するナロキソン組成物によって示されるものよりも少ない経皮水分損失を示すように製剤化される。いくつかの実施形態では、対象の皮膚表面に適用される場合、局所用ナロキソン組成物は、25g/m/時間以下、例えば20g/m/時間以下、例えば15g/m/時間以下、例えば10g/m/時間以下(5g/m/時間以下を含む)の経皮水分損失を示す。
【0059】
いくつかの実施形態では、方法は、局所用ナロキソン組成物を、対象に所定量のナロキソンを送達するために十分な様式で対象と接触状態に維持することを含み得る。プロトコルが、対象に所定量のナロキソンを送達することを含む場合、ナロキソンの局所送達量は、0.001mg~2mg、例えば0.005~1.9mg、例えば0.01mg~1.8mg、例えば0.05~1.7mg、例えば0.1mg~1.6mg、例えば0.5mg~1.5mg(0.5mg~1mgを含む)の範囲であってもよい。
【0060】
ある特定の実施形態では、対象に送達される所定量のナロキソンは、局所用組成物中に存在するナロキソンの総量のパーセンテージであり得る。例えば、対象に局所的に送達される所定量のナロキソンは、局所用組成物中に存在するナロキソンの総量の1%以上、例えば局所用組成物中に存在するナロキソンの総量の2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上(50%以上を含む)であってもよい。換言すれば、方法は、単回投薬間隔にわたって局所用組成物中のナロキソンの5%以上を対象に局所的に送達するために十分な様式で、ナロキソン組成物を対象と接触状態に維持することを含み得る。例えば、局所用組成物が1mgのナロキソンを含有する場合、方法は、投薬間隔にわたって0.05mg以上の局所用組成物中のナロキソンを、例えば0.1mg以上、例えば0.25mg以上、例えば0.4mg以上、例えば、0.45mg以上(0.5mg以上を含む)のナロキソンを対象に局所的に送達するために十分な様式で、局所用組成物を対象と接触状態に維持することを含み得る。
【0061】
ある特定の実施形態では、上述の主題の方法の各々は、投薬間隔の終了時に局所用組成物を対象との接触状態から除去するステップをさらに含み得る。例えば、局所用組成物は、0.1時間以上、例えば0.5時間以上、例えば1時間以上、例えば2時間以上、例えば4時間以上、例えば6時間以上、例えば8時間以上、例えば12時間以上、例えば16時間以上、例えば20時間以上(24時間以上を含む)局所用組成物を対象と接触状態に維持した後に接触状態から除去されてもよい。
【0062】
上述のように、投薬間隔は、局所用組成物を適用し、対象と接触状態に維持する単回投与であり、これは対象の皮膚に局所用組成物を適用することから始まり、局所用組成物を対象との接触状態から除去したとき、または組成物中のすべてのナロキソンが対象に局所的に送達されたときに終了する。ある特定の実施形態では、プロトコルは、複数の投薬間隔を含み得る。本発明の方法の実践において、治療レジメンは2つ以上の投薬間隔、例えば3つ以上の投薬間隔、例えば4つ以上の投薬間隔、例えば5つ以上の投薬間隔(10個以上の投薬間隔を含む)を含み得る。
【0063】
ある特定の場合において、治療レジメンにおける後続の投与間隔は、以前の投与間隔よりも高いまたは低い濃度のナロキソンを含有してもよい。例えば、ナロキソンの濃度は、後続の投薬間隔において、10%以上、例えば20%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上(100%以上を含む)増加されてもよい。後続の投薬間隔におけるナロキソンの濃度の増加の上限は、いくつかの場合において、10倍以下、例えば5倍以下、例えば2倍以下、例えば1倍以下、例えば0.5倍以下(0.25倍以下を含む)である。
【0064】
一方、ナロキソンの濃度は、後続の投薬間隔において、例えば10%以上、例えば20%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上(100%以上を含む)減少されてもよい。後続の投薬間隔におけるナロキソンの濃度の減少の上限は、いくつかの場合において、10倍以下、例えば5倍以下、例えば2倍以下、例えば1倍以下、例えば0.5倍以下(0.25倍以下を含む)である。
【0065】
他の場合において、後続の投薬間隔は、上述のように、ポリエチレングリコールの異なる種類、ポリエチレングリコールの量など、以前の投与間隔とは異なるナロキソン遊離塩基の製剤を含有し得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、皮膚は、局所用ナロキソン組成物が適用される皮膚の任意の変化を査定するように、例えば、適用部位における皮膚の質または色、および局所用ナロキソン組成物を対象と接触状態に維持することによって任意の損傷、疼痛、腫脹または乾燥が緩和されたかを決定するように評価される。ある特定の実施形態では、皮膚は、皮膚による経皮水分損失を査定するために評価される。
【0067】
適用部位は、主題の方法の間、任意の時点で評価され得る。いくつかの場合において、皮膚は、定期的に、例えば0.25時間毎、0.5時間毎、1時間毎、2時間毎、4時間毎、12時間毎、24時間毎(72時間毎を含む)、またはいくつかの他の間隔で皮膚を観察または触診することによって、局所用組成物を対象と接触状態に維持しながら評価される。例えば、局所用組成物を対象と接触状態に維持しながら、局所用組成物を対象に適用してから15分後、局所用組成物を適用してから30分後、局所用組成物を適用してから1時間後、局所用組成物を適用してから2時間後、局所用組成物を適用してから4時間後、局所用組成物を適用してから8時間後、局所用組成物を適用してから12時間後(局所用組成物を適用してから24時間後を含む)に適用部位が評価されてもよい。
【0068】
他の実施形態では、局所適用部位は、局所用組成物が対象との接触状態から除去した後に評価される。例えば、適用部位は、局所用組成物を除去してから30分後、例えば局所用組成物を除去してから1時間後、例えば局所用組成物を除去してから2時間後、例えば局所用組成物を除去してから4時間後、例えば局所用組成物を除去してから8時間後、例えば局所用組成物を除去してから12時間後(局所用組成物を除去してから24時間後を含む)に評価されてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、局所用組成物が適用される部位は、投薬間隔を開始する前に皮膚の色および質感を記録するように、局所用組成物が対象に適用される前に評価される。例えば、適用部位は、局所用組成物を適用する5分前、例えば局所用組成物を適用する10分前、例えば30分前、例えば60分前、例えば120分前、例えば240分前(480分前を含む)に評価されてもよい。方法が連続的に適用される複数の投薬間隔を含む場合、適用部位は、皮膚からの局所用組成物の各除去後、およびその後の局所用組成物投薬が適用される前に評価されてもよい。例えば、第1の局所用組成物が除去される場合、適用部位は、除去してから2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後など、第2の局所用組成物の適用前に評価されてもよい。その後の局所用組成物は、皮膚を評価した直後に前の適用部位に適用されてもよく、または皮膚を評価してから所定の時間後に、例えば皮膚を評価してから1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、18時間後、または24時間後に適用されてもよい。
【0070】
いくつかの場合において、方法は、局所用組成物の投与後に治療される状態の重症度を査定して、例えば組成物が状態の対象の治療に有効であることを判定することを含む。したがって、方法は、局所用組成物の投与後、炎症性皮膚疾患、非炎症性皮膚疾患、そう痒症、または炎症性皮膚疾患、非炎症性皮膚疾患もしくはそう痒症に関連する1つ以上の症状などの皮膚状態に関する対象の重症度を査定することを含み得る。例えば、いくつかの場合における方法は、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、またはそれらの組み合わせなどの炎症性皮膚疾患の重症度を査定することを含む。他の場合において、方法は、慢性痒疹などの非炎症性皮膚疾患の重症度を査定することを含む。さらに他の場合において、方法は、そう痒症の重症度を査定することを含む。ある特定の場合において、そう痒症は、原発性胆汁性肝硬変、慢性腎不全、腎臓透析、異常な血圧、甲状腺機能不全、老化、がん、貧血、寄生虫、神経学的状態または妊娠のうちの1つ以上に関連するそう痒症である。ある特定の実施形態では、そう痒症は、薬物誘発性そう痒症または起痒物質誘発性そう痒症である。ある特定の実施形態では、そう痒症は、帯状疱疹、乾癬、じんましん、背部異常感覚、グロヴァー病、慢性腎臓病、およびヘイリー・ヘイリー病から選択される状態に関連する。そう痒症は、皮膚発赤、皮膚隆起、斑点または水疱、乾燥肌またはひび割れ肌、革質肌または鱗状の質感がある肌を伴う可能性があり、方法は、そう痒症に付随する皮膚発赤、皮膚隆起、斑点または水疱、乾燥肌またはひび割れ肌、革質肌または鱗状の質感がある肌のうちの1つ以上を治療するために十分な量の主題のナロキソン組成物を適用することも含み得る。
【0071】
キット
本明細書に記載のある特定の方法の実践において使用するためのキットもまた提供される。ある特定の実施形態では、キットは、例えば上述のような1つ以上の局所用ナロキソン組成物を含む。ある特定の実施形態では、キットは、スポイトまたは計量ディスペンサなどの分与デバイスを含む。いくつかの場合において、局所用ナロキソン組成物は、搾り出し可能なチューブ、例えば軟膏を保持するように構成された搾り出し可能なチューブの中に存在する。キットはまた、スポンジ、ブラシ、ドクターブレード、拡散デバイス、平滑化デバイス、またはそれらの組み合わせなどのアプリケータを含み得る。ある特定の実施形態では、キットは、局所用組成物の適用部位を覆うために使用され得る防水接着性オーバーレイなどのオーバーレイをさらに含む。
【0072】
主題の局所用組成物のうちの2つ以上を含む所与のキットでは、組成物は、個別に包装され得るか、または共通の容器内に存在し得る。ある特定の実施形態では、キットは、主題の方法を実践するための説明またはそれを得るための手段(例えば、説明書を提供するウェブページに使用者を誘導するウェブサイトURL)をさらに含み、これらの説明書は基板上に印刷されてもよく、基板は、添付文書、パッケージ、試薬容器などのうちの1つ以上であってもよい。主題のキットでは、1つ以上の構成要素は、好都合な、または望ましい場合に応じて、同じまたは異なる容器内に存在する。
【0073】
以下の実施例は、例示として提示されるものであって、限定として提示されるものではない。
【0074】
実験
A.分解生成物の検出
まず、PEG1450を除くすべての成分(例えば、低MWのPEG、NLX、および他の添加剤、例えば抗酸化物質、グリセロール、クエン酸など)を室温で添加および攪拌することによって、以下でさらに詳述される製剤を調製した。次いで、PEG1450を添加し、すべてのPEG1450が溶解するまで、約50℃に加熱した。均質な混合物が形成されたら、それをチューブ(Albeaからの0.305インチのオリフィスを有する1インチのラミネートチューブ)に充填し、箔で密封した。ラミネートの内層は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)であった。充填したチューブを室温まで冷却して、チューブ内に不透明な軟膏を形成した。
【0075】
PEGベースのナロキソン軟膏製剤の安定性試験を、25℃、40℃および60℃で行った。1つの特定の分解生成物(「関連物質」とも称される)の形成は、これらの温度条件のそれぞれで一貫して観察された。この関連物質は、典型的には、製剤作製の1週間以内に現れた。主にHPLCを使用して、我々は、温度および湿度の増加が、ナロキソンと比較して分解生成物の量をさらに増加させることを見出した。この関連物質は、有意に高いレベルで形成され、様々な賦形剤および貯蔵条件を使用した場合にも一貫して現れることが分かった。経時的に、わずかな割合のナロキソンが酸化プロセスによって化学的に分解され、関連物質を生成するように考えられる(HPLCによる相対保持時間(RRT)は0.79)。RRT0.79における不純物は、未知の関連物質であった。
【0076】
また、ナロキソンHClは、PEGベース製剤において不安定であることが分かった。ナロキソンHClの9.1%水溶液を作製した。1.00gのこの9.1%ナロキソンHCl水溶液を、4.70gのPEG300および4.30gのPEG1450と組み合わせることによって、PEGベース製剤を、10.00gのこの0.91%ナロキソンHClの総重量で調製した。このナロキソンHCl製剤の室温での安定性を、2ヶ月にわたってHPLCにより査定した。2ヶ月目には、以下の表1に示すように分解生成物の成長が大きく増加した。これは、このPEGベース製剤においてもナロキソンHClが不安定であることを示す。Deg 1は、前述の未知の関連物質の相対保持時間と一致する。
【0077】
【表1】
【0078】
B.ナロキソンN-オキシドの単離および同定
注目される分解生成物を同定するために大量のPEG材料を分離する必要があることからかなりの時間および労力を要する多段階液体クロマトグラフィー法を使用して、未知の関連物質を単離した。PEG300中の約200gの1%ナロキソン遊離塩基軟膏を、湿度チャンバ内でエージングし、単離に使用した。6.2mMの1-オクタンスルホン酸ナトリウム水溶液を0.1%リン酸で洗浄し、次いで40%メタノール溶液で溶出するC18カートリッジにより、注目される分解生成物を製剤試料中で濃縮した。関連物質を含有する画分を合わせ、凍結乾燥した。分解物を、Shimadzu Prominence Preparative HPLCシステムを使用して、調製HPLCにより単離した。Security Guard PREP C18カートリッジ(21.2×15mm)を備えるPhenomenex Luna C18カラム(5μm、21.2×150mm)を使用した。
【0079】
0.1%リン酸移動相を有する、6.2mMの1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩水溶液中の35%メタノールを使用した。流速は、18分間の定組成ランで20mL/分であった。UV検出器の波長は205nmであった。100uV/秒の傾きおよび50,000uVのレベルが観察された7~14分の間に、画分を収集した。分析用HPLCによる画分の再分析では、画分試料中に存在する関連物質が99%超の純度を有することが示された(付録A23)。6.2mMの水溶液中の定組成35%メタノールで実行するAgilent Zorbax Eclipse XDB-C18(5μm、4.6×150mm)分析カラムを用いた。
【0080】
15分間にわたる0.1%リン酸移動相を有する1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩を分析純度に使用した。メタノールで洗浄し、次いで水中の5%HClで溶出する強力なカチオン交換(SCX)カートリッジを使用して緩衝液を除去すると、不純物の最終的な単離が完了した。関連物質を含有する画分を合わせ、pHを7.0±0.5に調整した。分解物を、クロロホルムおよびイソプロパノールの3:1溶液の等量で4回抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して乾燥させた。SCXカートリッジ上で精製した後、単離された分解物の純度は92%に低下した。
【0081】
十分な量のミリグラムの分解生成物が単離されたら、それを質量分析およびNMRを使用して特性評価した。単離された分解物の高分解能質量分析データを、Waters UNIFIソフトウェアによって制御されたシステムのWaters UPLC Xevo G2-XS QTを使用して取得した。Waters CORTECS UPLC Shield RP18(1.6μm 3×50mm)カラムを使用した。移動相Aは、水中0.1%ギ酸であり、移動相Bは、0.1%ギ酸アセトニトリルであった。流速は、0.2mL/分であった。5分間で5%~90%Bの勾配を適用した。HRMSにより、5ppm未満の質量誤差でC19H21NO5の分子式を得た。
【0082】
周囲温度でBruker 400MHz分光計でNMRデータを取得した。化学的シフトは、TMSに対してppmで報告された。H、13C、および15Nの核を使用したNMR実験、ならびに二次元NMR実験を行った。取得された1H NMRスペクトルにおける観察されたシグナルは、提案された構造のためのプロトンの予想される数およびプロトンの種類と一致する。13C NMRスペクトルの分析は、19個の炭素の18個の共鳴を示した。炭素の帰属は、すべてのNMR実験から入手可能なデータを使用して行った。得られた15N NMRスペクトルは、129.2ppmで1個の窒素の1つの共鳴を示した。観察された15Nシフトは、N-オキシドとしての提案された構造の帰属を裏付けている。NMRデータでは、ナロキソンコア構造が無傷であり、プロトンまたは炭素シグナルの損失がないことが確認される。重要なことに、21個のプロトン、5個のCH炭素、および7個のCH2炭素が観察され、質量スペクトルデータから同定された追加の酸素が任意の炭素原子に結合していないことを示している。ナロキソンと比較して、2つの交換可能なプロトン、ならびにH9、H16、H17、およびH10に帰属されたシグナルについて有意なダウンフィールドのシフトが観察された。窒素NMRの結果は、41.5ppm(ナロキソン)から129.2ppm(分解物)への有意なシフトを示した。これらのデータは、不純物のために窒素原子の周囲の電子に有意な変化を示した。MSデータにより、不純物はナロキソンN-オキシドであると結論付けられた。最後に、単離された関連物質を、HPLCによって、市販のナロキソンN-オキシドの標準物質と直接比較した。ナロキソンN-オキシドの量は、最初にナロキソン標準物質によって決定され、次いで応答係数について補正される。ナロキソンN-オキシドの応答係数は1.19である。
【0083】
ナロキソンおよびナロキソンN-オキシド構造の比較:
【0084】
【化3】
【0085】
C.ナロキソンの強制分解試験
5N塩酸、5N水酸化ナトリウム、または3%過酸化水素のいずれかの存在下で、18時間または60℃で2週間、0.5%ナロキソン原薬(Siegfried、Batch 1530F001)の強制分解を対照として試験した。過酸化水素処理を除いて、対照および他の処理で検出された関連物質の合計は、総面積に対してピーク面積の1%未満であった。対照的に、3%の過酸化水素では、18時間後に、3つの分解生成物(0.66RRTで1.75%、0.72RRTで1.59%、および0.94RRTで20.42%)が観察された。0.72におけるピークは、ナロキソンN-オキシドとして同定された0.79RRTにおける関連物質のピークに対応した。0.94RRTにおけるピークは、ナロキソンピークと共溶出した。この強制分解は、他の応力と比較して、ナロキソンと過酸化物との反応性および酸化による分解の可能性を明確に示している。
【0086】
D.PEGベースナロキソン軟膏の安定化の試みの概要
PEGベースナロキソン軟膏の製剤開発中に遭遇した主な問題は、酸化によるナロキソンとPEGとの間の相互作用に起因する化学的不安定性である。この安定性の問題に対処するために、以下のようないくつかの異なるアプローチが調査された。
・抗酸化物質(クエン酸、BHT、トコフェロール、およびメタ重亜硫酸ナトリウム)の使用
・不活性ガス(アルゴンガスまたは窒素ガス)による製造加工および貯蔵管理
・異なるPEGの使用(PEG300対PEG400)
・異なるPEG源(Dow、Croda、BASF、EMD Millipore、およびClariantからのPEG)の使用
【0087】
要約すると、最良の安定性を有する製剤は、以下の必須アプローチによって得ることができる。
1.未開封の容器からCrodaのsuper refined PEG400を使用する
2.混合プロセス中にアルゴン保護を実行する
3.充填前に溶かした軟膏にアルゴンを吹き込む
4.チューブまたは容器のヘッドスペースにアルゴンブランケットを使用して、軟膏が空気に触れないようにする
【0088】
1.抗酸化剤を用いた製剤
最初に室温でPEG1450を除くすべての成分を添加して攪拌することによって、製剤を調製した。次いで、PEG1450を添加し、すべてのPEG1450が溶解するまで、約50℃に加熱した。均質な混合物が形成されたら、それをチューブに充填してキャップし、室温まで冷却して不透明な軟膏を形成した。抗酸化剤として、トコフェロールおよび/またはクエン酸を1%PEGベースナロキソン(NLX)軟膏に添加した。PEG300およびPEG400の両方を、25℃で3ヶ月にわたり安定性の差について調べた。結果を以下の表2に示す。
【0089】
【表2-1】
【0090】
【表2-2】
【0091】
製剤間でいくつかの差異が観察されたが、抗酸化物質の添加、または使用されるPEGの変更のいずれも、軟膏を安定化させてナロキソンN-オキシドを十分に低い(ゼロに近い)レベルまで低減することはなかった。他の製剤の追加の試験をより短い時点で実行した。結果を以下の表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
ここでも、抗酸化物質の添加は、軟膏中のナロキソンをほぼゼロレベルのナロキソンN-オキシドに十分に安定させることはなかった。
【0094】
2.非常に低い過酸化物価を有する低分子量PEGの使用
1%(w/w)のナロキソン塩基軟膏を、異なる供給源(Dow、Croda、BASF、EMD Millipore、およびClariant)からのPEG300またはPEG400で調製した。使用した低分子量PEGの初期過酸化物価、およびナロキソンN-オキシド分解物の成長に反映されるナロキソンの安定性について、異なる供給源からのPEGを調べた。これらの軟膏は、以下の必須プロセスを使用して調製した。
1.未開封の容器からPEG300またはPEG400を使用する
2.混合プロセス中にアルゴン保護を実行する
3.充填前に溶かした軟膏にアルゴンを吹き込む
4.チューブまたは容器のヘッドスペースにアルゴンブランケットを使用して、軟膏が空気に触れないようにする
【0095】
以下の表4に要約するように、以下の1%ナロキソン軟膏を調製した。
【0096】
【表4】
【0097】
これらの軟膏の各々に対するナロキソンN-オキシドのパーセンテージは、図1および図2に示されており、12ppm以下の過酸化物を含有するPEG300またはPEG400のいずれかから調製された軟膏は、無視できる薬学的に許容されるレベルのナロキソンN-オキシドを示し、一方、より高いレベルの過酸化物を有する低分子量PEGで調製されたものは、DOWから得られた精製されたPEG400であっても、時間とともにこの特定された分解物の許容されない成長を示した。
【0098】
以下の表5は、Croda super refined PEG 400(1%API、60% PEG400、39% PEG1450)で調製した1%ナルトレキソン塩基(w/w)製剤の安定性データを示す。1.19の応答係数を使用して、分解物ナロキソンN-オキシドのレベルを計算した。他の未知の関連物質については、応答係数は1であると仮定される。以下の表におけるこれらのデータは、これらのアッセイに関して、低過酸化物PEG400源および前述の方法で調製されたこの製剤が、6ヶ月、40℃/75%RHデータに基づいて、室温で2年間にわたって許容される安定性であることを示している。
【0099】
【表5】
【0100】
3.処理および貯蔵におけるアルゴンの最小限の効果
1.0%ナロキソン遊離塩基(NLX)PEGベース軟膏を、溶融軟膏へのアルゴンの吹き込みおよびチューブのブランケットあり、ならびになしで、Croda super refined(低過酸化物)PEG400(60%)およびPEG1450(39%)を用いて調製した。また、過酸化物が低くはないPEG400、および追加のアルゴン処理を用いてこの同じ製剤を調製した。6ヶ月間、40℃/75%RHでの加速安定性試験において、アルゴン処理の有無にかかわらず、低過酸化物PEG400(SR)製剤は、低濃度の分解物1(ナロキソンN-オキシド)を示し、より高い過酸化物のPEG400製剤は、この分解物のより高い濃度を示した(以下の表6を参照されたい)。より高い過酸化物のPEG400(Hi)製剤について、より長い時間では、この効果は、実際にはナロキソンN-オキシドが他の分解物にさらに分解することにより、部分的に不明瞭であることに留意されたい。PEG400源の過酸化物のレベルは重大な影響を及ぼすが、アルゴン処理は、分解速度に明らかな改善をもたらすことはない。
【0101】
【表6】
【0102】
E.追加の不純物の同定
1.勾配アッセイ法
以前の研究に使用されたHPLC法(「旧式」の方法)では、N-オキシドと共溶出した別の不純物が疑われた。この潜在的に新しい不純物の定量化を提供するために、より長い実行時間を有する「新規」の勾配法を開発した。加えて、「旧式」の方法は、100μg/mLの試料濃度を有し、これは、より大きな定量限界(LOQ)および検出限界(LOD)をもたらす。「新規」の方法は、試料濃度を500μg/mLに増加させることにより、より高い感度を提供した。「新規」の不純物法のLOQは約0.03%であり、LODは0.02%である。比較のためのアッセイ方法として、「旧式」の不純物法を同時に利用した。「新規」の方法は、以下の実施例で使用される。
【0103】
【表7】
【0104】
【表8】
【0105】
2.高分子量PEGの効果
2つの異なるメーカー(DowおよびBASF)からのCroda super refined(低過酸化物)PEG400(60%)およびPEG1450(39%)を用いて、1.0%ナロキソン遊離塩基(NLX)PEGベース軟膏を調製した。アルゴンを流しながら両方の軟膏を調製した。表9において、これら5つのRRTにおける不純物の成長が、特に40℃で貯蔵した場合、DOW PEG1450において一貫してより大きかったことが明らかである。換言すれば、BASF PEG1450とCroda PEG400との使用は、より安定していた。
【0106】
【表9】
【0107】
3.BASF PEG1450を用いた製剤に対する抗酸化剤の効果
この同じより安定な製剤、すなわちCroda PEG400を含むBASF PEG1450もまた、ポリエチレングリコールに可溶性である選択された抗酸化剤、BHTおよびガラクトプロピルを添加して調製した。
【0108】
この一連の実験では、以下のように変更した。まず、60℃条件での貯蔵を40℃条件での貯蔵に置き換えた。40℃の条件は、このPEG軟膏の典型的な加速安定性条件ではない。これは、40℃未満では、組成物は液体成分と固体成分との両方を含有し得るが、一方軟膏は40℃で液体であり、すなわち液体への相転移があり、40℃であっても単なる温度逸脱よりも安定性へのより極端な課題を呈するからである。60℃での貯蔵は、強制劣化状態と同様であり、最悪の場合とみなすことができる。60℃未満では、軟膏は完全に液体形態である。60℃での1ヶ月は、25℃での約2年と考えられる。この極端な温度は、異なる劣化経路を可能にし得るため、60℃で生じ得るいくつかの劣化は、より低い温度では起こらない可能性がある。第二に、この試験において、アッセイは総軟膏の%として報告される。目標API投入量は1%である。
【0109】
抗酸化物質は、Dow PEGを用いた製剤に過去に使用されていたが、抗酸化物質の効果が観察されなかったDow PEG製剤においては不純物濃度が高すぎた。Croda super-refined PEG400およびBASF PEG1450では、全体的な不純物レベルは、以前の製剤と比較してはるかに低い。この場合、Croda PEG400およびBASF PEG1450では、選択された抗酸化物質の使用は有益であるように考えられる。表10および表11は、抗酸化物質、1%没食子酸プロピル、および0.1% BHTあり、またはなしでの、Croda PEG400およびBASF PEG1450を用いた製剤を比較している。ロット209-132-1は、BASF PEG1450を含むことを除いて、表9のロット209-115-1と同様である。具体的には、表10における0.1% BHTを含む製剤は、60℃で1ヶ月後に0.2%を超える任意の不純物を有さないが、一方で1%没食子酸プロピルを含む製剤もまた、抗酸化物質を含まない同じ配合物よりも安定であることが分かった。
【0110】
【表10】
【0111】
液体への相転移がない、より厳しくない加速条件として、30℃の貯蔵条件もまた使用した。30℃で3ヶ月後であっても、抗酸化物質を含まない製剤は安定性が低く、没食子酸プロピル製剤はより安定であり、BHT製剤は最も安定であった。
【0112】
【表11】
【0113】
このクロダPEG400/BASF PEG1450におけるナロキソンの安定性に対するBHT濃度の影響を決定するために、安定性を40℃で試験したところ、0.02% BHTでも改善された安定性を示した。
【0114】
【表12】
【0115】
PEG1450に近い分子量の第3の源であるJP Macrogol 1500Rもまた調査したところ(表6)、抗酸化物質による安定性の改善を示し、Dow PEG1450よりも優れているがBASF PEG1450ほど良好ではないことが分かった。
【0116】
【表13】
【0117】
抗酸化物質を用いた追加の例を以下の表に示すが、BHTおよび没食子酸プロピルで前述の改善結果を確認したことに加えて、没食子酸プロピルが0.1%没食子酸プロピルでも安定性を改善したことを示している。この同じCroda PEG400/BASF PEG1450について、0.05%の没食子酸プロピルと0.1%のBHTとを比較したデータを収集し、60℃で3ヶ月の時点で、RRT0.81における不純物のレベルは、それぞれ0.05および0.06であった。BASF PEG1450の使用と組み合わせた0.05%の没食子酸プロピルまたは0.02%のBHTといった低いレベルが、軟膏の安定性を改善した。
【0118】
【表14】
【0119】
【表15】
【0120】
F.アトピー性皮膚炎そう痒症のラットモデルにおけるナロキソン軟膏の有効性
マウス(HOS:HR-1ヘアレス)に特別な飼料の食事10を提供することによって、アトピー性皮膚炎の皮膚症状を誘発した。すべての群を、34日目から開始して3週間連続で、各マウスの背中全体にわたり毎日0.1ml/日の軟膏で治療した。マウスを、投与前(ベースライン活性)に30分間ビデオ記録し、適用後34、35、38、41、45、48、および55日目に、1時間の期間にわたり引っ掻きについて観察した。局所用ナロキソン活性剤組成物を1時間乾燥させた後、引っ掻き挙動のビデオ記録を行った。引っ掻き挙動は、5分毎に1時間監視し、スクラッチバウトの数は、後ろ足を上げる、背中を引っ掻く、または脚を床に下げるの動作のうちの1つ以上を含む。引っ掻き挙動の累積期間もまた決定した。また、34日目、48日目、55日目、20日目(フェーズ2)、および33日目および55日目(フェーズ3)に測定される経皮水分損失(TEWL)も測定した。群に応じた治療用の製剤を、以下の表16に示す。
【0121】
【表16】
【0122】
図3は、34日目および41日目にマウスによって示された平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間を示し、図4は、1)プラセボ(ナロキソン活性剤なし)、5または2)ナロキソン遊離塩基を有する局所用組成物を適用した48日目および55日目にマウスが示した平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間を示す。結果はまた、ポリエチレングリコールを含有する親水性送達ビヒクルを有する、または疎水性送達ビヒクル(ワセリン)の存在下での局所用組成物が適用されたマウスの引っ掻き挙動を比較している。
【0123】
図5は、34日目および41日目にマウスによって示された平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間を示し、図6は、1)プラセボ(ナロキソン活性剤なし)、または2)ナロキソンHClを有する局所用組成物を適用した48日目および55日目にマウスが示した平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間を示す。結果はまた、ポリエチレングリコールを含有する親水性送達ビヒクルを有する、または疎水性送達ビヒクル(ワセリン)の存在下での局所用組成物が適用されたマウスの引っ掻き挙動を比較している。
【0124】
図3図6に示されるように、平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間は両方とも、ナロキソン遊離塩基またはナロキソンHClのいずれかの局所送達によって低減された。加えて、ナロキソン活性剤および親水性送達ビヒクル(ポリエチレングリコール)のみを有する局所用組成物を適用することによって、平均スクラッチバウトおよび累積スクラッチ持続時間が有意に低減された。
【0125】
図7A図7Cは、プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物およびナロキソン遊離塩基を有する局所用組成物について、34日目、48日目および55日目に示された経皮水分損失を示す。図7A図7Cに示されるように、疎水性送達ビヒクルを含有する組成物によって、より大きな経皮水分損失が示されたが、これは、ワセリンなどの疎水性送達5ビヒクルが一般に水分損失を低減するため、典型的ではない。
【0126】
図8A図8Bは、プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物およびナロキソンHClを有する局所用組成物について、33日目および55日目に示された経皮水分損失を示す。ナロキソン遊離塩基を有する組成物と同様に、疎水性送達ビヒクルを含有する組成物によって、親水性送達ビヒクルを含有するポリエチレングリコールのみを含む組成物によって示されるものよりも大きな経皮水分損失が示された。
【0127】
図9Aおよび図9Bは、プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物、ならびにナロキソン遊離塩基および疎水性送達ビヒクルを有する局所用組成物を適用したマウスの皮膚の例示的な写真を示す。図10Aおよび図10Bは、プラセボ(ナロキソン活性剤なし)組成物、ならびにナロキソンHClおよび親水性送達ビヒクルを含有するポリエチレングリコールのみを有する局所用組成物を適用したマウスの皮膚の例示的な写真を示す。図9Aおよび図9B図10Aおよび図10Bとの比較により、親水性送達ビヒクルのみを含む局所用組成物を適用したマウス対象の皮膚が示す、スクラッチバウトに起因する刺激、発赤および損傷がより少なくなることが実証される。
【0128】
試験したナロキソン局所用組成物はすべて、ヘアレスマウスモデルにおいてかゆみ止め効果を示した。プラセボ群と比較して、ナロキソン塩基+PEG(41日目および55日目)ならびにナロキソン塩基+Shea XP(48日目および55日目)では、引っ掻き挙動の有意な低減が見られた。プラセボ群と比較して、ナロキソンHCl+PEG(34日目および55日目)ならびにナロキソンHCl+Shea XP(34日目、41日目、48日目および55日目)では、引っ掻き挙動の有意な低減が見られた。しかしながら、経皮水分損失は、ナロキソン塩基またはナロキソンHClのいずれかを含むPEG製剤と比較して、Shea XPを含有する製剤の方が有意に高かった。
【0129】
前述した実施形態の少なくともいくつかでは、ある実施形態で使用される1つ以上の要素は、かかる置き換えが技術的に実現可能でない限り、別の実施形態で互換的に使用することができる。特許請求された主題の範囲から逸脱することなく、上記の方法および構造に対して様々な他の省略、追加および修正がなされ得ることが、当業者によって理解される。かかるすべての修正および変更は、添付の特許請求の範囲によって規定される主題の範囲内であることが意図される。
【0130】
一般に、本明細書で、および、特に、添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、概して、「オープン」用語として意図されること(例えば、「含んでいる(including)」という用語は、「含んでいるが、それに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は、「含むが、それに限定されない」と解釈されるべきである、など)が当業者によって理解される。特定の数の導入された特許請求列挙が意図される場合、そのような意図は特許請求項に明示的に列挙されるし、そのような列挙がない場合、そのような意図は存在しないことが、当業者によってさらに理解される。例えば、理解の補助として、以下の添付の特許請求の範囲は、特許請求記載を導入するために、導入句「少なくとも1つ」および「1つ以上」の使用を含むことがある。しかしながら、同じ特許請求項が「1つ以上」または「少なくとも1つ」という導入句、および「a(1つの)」または「an(1つの)」のような不定冠詞を含む場合であっても、そのような句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による特許請求記載の導入が、そのような導入された特許請求記載を含む任意の特定の特許請求項を、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味するように解釈されるべきではなく(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、クレーム記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても同じことが当てはまる。また、特定の数の導入された特許請求記載が明示的に列挙されていても、当業者であれば、そのような列挙は、少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきことを認識する(例えば、他の修飾語を含まない「2つの列挙」のベアな列挙は、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)。さらに、「A、B、およびCなどのうちの少なくとも1つ」に類似する慣例が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者なら慣例を理解するという意味で意図される(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、以下に限定されないが、A単独、B単独、C単独、AおよびBともに、AおよびCともに、BおよびCともに、ならびに/またはA、B、およびCともになどを有するシステムを含む)。「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ、など」に類似する慣例が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者なら慣例を理解するという意味で意図される(例えば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、以下に限定されないが、A単独、B単独、C単独、AおよびBともに、AおよびCともに、BおよびCともに、ならびに/またはA、B、およびCともになどを有するシステムを含む)。明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれであろうと、2つ以上の代替用語を提示する実質的に任意の離接語および/または離接句は、用語のうちの1つ、用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を意図すると理解されるべきことが、当業者にはさらに理解される。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」もしくは「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解される。
【0131】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの観点から記載される場合、当業者であれば、本開示が、それによって、マーカッシュグループの任意の個々のメンバー、またはマーカッシュグループのメンバーの任意のサブグループの観点からも記載されることを認識する。
【0132】
当業者には理解されるように、書面による説明を提供することなど、ありとあらゆる目的のために、本明細書に開示されるすべての範囲はまた、ありとあらゆる可能なサブ範囲、ならびにそのサブ範囲の組み合わせも包含する。任意のリストされた範囲は、同じ範囲が、少なくとも等しい2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されることを十分に示し、分解されることを可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、容易に、下側の3分の1、真ん中の3分の1、および上側の3分の1などに分解され得る。当業者に同様に理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より少ない」などのすべての用語は、記載される数を含み、上述のようにサブ範囲に後に分解され得る範囲を指す。最後に、当業者に理解されるように、範囲は各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の物品を有する群は、1個、2個、または3個の物品を有する群を指す。同様に、1~5個の物品を有する群は、1個、2個、3個、4個、または5個の物品を有する群を指す、等々である。
【0133】
上記の発明は、明確な理解のために例示および例により多少詳しく説明されてきたが、当業者であれば、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正が行われ得ることが、容易に明らかである。
【0134】
したがって、上述した内容は単に本発明の原理を説明したものである。当業者であれば、本明細書には明示的に記載も示されてもいないが、本発明の原理を具現化し、本発明の趣旨および範囲内に含まれる様々な変更を考案し得ることが、理解される。さらに、本明細書に列挙されるすべての例および条件付き用語は、主に、読者が、本発明の原理、および当該技術分野をさらに進めるために発明者らによって提供された概念を理解することを助ける点を意図しており、そのような具体的に列挙される例および条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態を列挙する、本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することが意図される。さらに、そのような等価物は、構造に関係なく、現在知られている等価物と、将来開発される等価物との両方、すなわち、同じ機能を実行するように開発されたあらゆる要素を含むことが意図される。さらに、本明細書に開示されるいかなるものも、そのような開示が特許請求の範囲において明示的に列挙されているか否かにかかわらず、公に献呈するように意図されていない。
【0135】
したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、記載される例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。特許請求の範囲においては、米国特許法第112条(f)または米国特許法第112条(6)は、「のための手段(means for)」または「のためのステップ(step for)」と完全に一致する語句が、特許請求項における限定の始まりで列挙されるときにのみ、特許請求項におけるそのような限定を喚起しているとして明確に定義されており、そのような完全に一致する語句が、特許請求項における限定に使用されていない場合、米国特許法第112条(f)も米国特許法第112条(6)も適用されない。
【0136】
関連出願の相互参照
米国特許法第119条(e)に基づいて、本出願は、2020年2月14日に出願された米国仮特許出願第62/976,967号の出願日の優先権を主張するものであり、この出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
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図7A
図7B
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図9B
図10A
図10B