(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/021 20120101AFI20240529BHJP
F16H 48/10 20120101ALI20240529BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F16H57/021
F16H48/10
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2022553884
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021034994
(87)【国際公開番号】W WO2022071091
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020163737
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】柳原 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴義
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 公伸
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】森本 陽介
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094930(JP,A)
【文献】特開2018-048685(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145037(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/021
F16H 48/10
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体を有する第1駆動力源と、第2回転体を有する第2駆動力源と、第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、これらを収容するケースと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源が、第1軸上に配置され、
前記第1出力部材及び前記第2出力部材が、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記第1軸と前記第2軸とは互いに平行状に配置され、前記第1軸及び前記第2軸と直交する方向を軸直交方向として、
前記ケースは、
前記軸直交方向に延在する第1支持部を有する
と共に、軸方向第1側、及び前記軸方向第1側とは反対側の軸方向第2側が開放された筒状の第1ケース部と、
前記軸直交方向に延在する部分である第1部分を
前記軸方向第1側に有する
と共に、前記軸方向第2側が開放された有底筒状の第2ケース部と、
前記軸直交方向に延在する部分である第2部分を
前記軸方向第2側に有する
と共に、前記軸方向第2側が開放された有底筒状の第3ケース部と、
の3つの部材により構成され、
前記第2ケース部が、前記第1ケース部に対して
前記軸方向第1側に
おいてシール部材でシールされた状態で接合され、
前記第3ケース部が、前記第1ケース部に対して前
記軸方向第2側に
おいてシール部材でシールされた状態で接合され、
前記第1回転体及び前記第1回転体と一体的に回転する第1入力部材が、前記第1支持部と前記第1部分との軸方向の間に、これらに支持された状態で配置され、
前記第2回転体及び前記第2回転体と一体的に回転する第2入力部材が、前記第1支持部と前記第2部分との前記軸方向の間に、これらに支持された状態で配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
第1回転体を有する第1駆動力源と、第2回転体を有する第2駆動力源と、第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、これらを収容するケースと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源が、第1軸上に配置され、
前記第1出力部材及び前記第2出力部材が、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記第1軸と前記第2軸とは互いに平行状に配置され、前記第1軸及び前記第2軸と直交する方向を軸直交方向として、
前記ケースは、
前記軸直交方向に延在する第1支持部を有する
と共に、軸方向第1側、及び前記軸方向第1側とは反対側の軸方向第2側が開放された筒状の第1ケース部と、
前記軸直交方向に延在する部分である第1部分を
前記軸方向第1側に有する
と共に、前記軸方向第2側が開放された有底筒状の第2ケース部と、
前記軸直交方向に延在する部分である第2部分を
前記軸方向第2側に有する
と共に、前記軸方向第2側が開放された有底筒状の第3ケース部と、
の3つの部材により構成され、
前記第1ケース部と前記第2ケース部
とが、前記第1ケース部に対して
前記軸方向第1側
の第1接合面に
おいてシール部材でシールされた状態で接合され、
前記第1ケース部と前記第3ケース部
とが、前記第1ケース部に対して前
記軸方向第2側
の第2接合面に
おいてシール部材でシールされた状態で接合され、
前記第1接合面と前記第2接合面との2つの接合面において接合されて形成され、
前記第1回転体及び前記第1回転体と一体的に回転する第1入力部材が、前記第1支持部と前記第1部分との軸方向の間に、これらに支持された状態で配置され、
前記第2回転体及び前記第2回転体と一体的に回転する第2入力部材が、前記第1支持部と前記第2部分との前記軸方向の間に、これらに支持された状態で配置されている、車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第1駆動力源は、前記第1ケース部及び前記第2ケース部に収容され、前記第2駆動力源は、前記第1ケース部及び前記第3ケース部に収容される、請求項1
又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1駆動力源のトルクを少なくとも前記第1出力部材に伝達すると共に前記第2駆動力源のトルクを少なくとも前記第2出力部材に伝達する動力伝達装置を備え、
前記動力伝達装置は、前記第1ケース部に収容される、請求項1
から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1駆動力源のトルクを少なくとも前記第1出力部材に伝達すると共に前記第2駆動力源のトルクを少なくとも前記第2出力部材に伝達する動力伝達装置を備え、
前記第1出力部材が前記第1部分に支持され、前記第2出力部材が前記第2部分に支持され、前記動力伝達装置が前記第1支持部に支持されている、請求項1から
4の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記第1駆動力源のトルクを少なくとも前記第1出力部材に伝達すると共に前記第2駆動力源のトルクを少なくとも前記第2出力部材に伝達する動力伝達装置を備え、
前記動力伝達装置は、前記第1入力部材に設けられた第1ギヤと、前記第2入力部材に設けられた第2ギヤと、前記第1ギヤに噛み合う第3ギヤ及び当該第3ギヤと一体回転する第4ギヤを備えた第1カウンタギヤ機構と、前記第2ギヤに噛み合う第5ギヤ及び当該第5ギヤと一体回転する第6ギヤを備えた第2カウンタギヤ機構と、前記第4ギヤ及び前記第6ギヤと前記第1出力部材及び前記第2出力部材とを駆動連結する差動歯車機構と、を備え、
前記差動歯車機構が、前記第2軸上に配置され、
前記第1カウンタギヤ機構及び前記第2カウンタギヤ機構が、前記第1軸及び前記第2軸とは異なる軸であって、前記第1軸及び前記第2軸と平行状に配置された第3軸上に配置され、
前記ケースは、前記第1ケース部と前記第2ケース部と前記第3ケース部とにより囲まれたケース内空間に配置された第1補助部材と第2補助部材とを備え、
前記第1補助部材は、前記軸直交方向に延在する第2支持部を備え、
前記第2補助部材は、前記軸直交方向に延在する第3支持部を備え、
前記第1補助部材は、前記第2支持部が前記第1支持部と前記第1部分との前記軸方向の間に配置されるように前記第1ケース部に取り付けられ、
前記第2補助部材は、前記第3支持部が前記第1支持部と前記第2部分との前記軸方向の間に配置されるように前記第1ケース部に取り付けられ、
前記第1カウンタギヤ機構が、前記第1支持部と前記第2支持部との前記軸方向の間にこれらに支持された状態で配置され、
前記第2カウンタギヤ機構が、前記第1支持部と前記第3支持部との前記軸方向の間にこれらに支持された状態で配置されている、請求項1
又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記第1補助部材と前記第1ケース部とがシール部材を介さずに直接接合され、
前記第2補助部材と前記第1ケース部とがシール部材を介さずに直接接合されている、請求項
6に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
第1回転体を有する第1駆動力源と、第2回転体を有する第2駆動力源と、第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、これらを収容するケースと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源が、第1軸上に配置され、
前記第1出力部材及び前記第2出力部材が、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記第1軸と前記第2軸とは互いに平行状に配置され、前記第1軸及び前記第2軸と直交する方向を軸直交方向として、
前記ケースは、前記軸直交方向に延在する第1支持部を有する第1ケース部と、前記軸直交方向に延在する部分である第1部分を有する第2ケース部と、前記軸直交方向に延在する部分である第2部分を有する第3ケース部と、を備え、
前記第2ケース部が、前記第1ケース部に対して軸方向第1側に接合され、
前記第3ケース部が、前記第1ケース部に対して前記軸方向第1側とは反対側の軸方向第2側に接合され、
前記第1回転体及び前記第1回転体と一体的に回転する第1入力部材が、前記第1支持部と前記第1部分との軸方向の間に、これらに支持された状態で配置され、
前記第2回転体及び前記第2回転体と一体的に回転する第2入力部材が、前記第1支持部と前記第2部分との前記軸方向の間に、これらに支持された状態で配置され
、
前記第1駆動力源のトルクを少なくとも前記第1出力部材に伝達すると共に前記第2駆動力源のトルクを少なくとも前記第2出力部材に伝達する動力伝達装置を備え、
前記動力伝達装置は、前記第1入力部材に設けられた第1ギヤと、前記第2入力部材に設けられた第2ギヤと、前記第1ギヤに噛み合う第3ギヤ及び当該第3ギヤと一体回転する第4ギヤを備えた第1カウンタギヤ機構と、前記第2ギヤに噛み合う第5ギヤ及び当該第5ギヤと一体回転する第6ギヤを備えた第2カウンタギヤ機構と、前記第4ギヤ及び前記第6ギヤと前記第1出力部材及び前記第2出力部材とを駆動連結する差動歯車機構と、を備え、
前記差動歯車機構が、前記第2軸上に配置され、
前記第1カウンタギヤ機構及び前記第2カウンタギヤ機構が、前記第1軸及び前記第2軸とは異なる軸であって、前記第1軸及び前記第2軸と平行状に配置された第3軸上に配置され、
前記ケースは、前記第1ケース部と前記第2ケース部と前記第3ケース部とにより囲まれたケース内空間に配置された第1補助部材と第2補助部材とを備え、
前記第1補助部材は、前記軸直交方向に延在する第2支持部を備え、
前記第2補助部材は、前記軸直交方向に延在する第3支持部を備え、
前記第1補助部材は、前記第2支持部が前記第1支持部と前記第1部分との前記軸方向の間に配置されるように前記第1ケース部に取り付けられ、
前記第2補助部材は、前記第3支持部が前記第1支持部と前記第2部分との前記軸方向の間に配置されるように前記第1ケース部に取り付けられ、
前記第1カウンタギヤ機構が、前記第1支持部と前記第2支持部との前記軸方向の間にこれらに支持された状態で配置され、
前記第2カウンタギヤ機構が、前記第1支持部と前記第3支持部との前記軸方向の間にこれらに支持された状態で配置されている、車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1駆動力源と、第2駆動力源と、第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、動力伝達装置と、これらを収納するケースとを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-48685号公報(特許文献1)には、第1駆動力源と、第2駆動力源と、第1出力部材と、第2出力部材と、動力伝達装置と、これらを収容するケースとを備えた車両用駆動装置の一例が開示されている(背景技術において括弧内に付す符号は参照する特許文献のもの。)。この車両用駆動装置(1)では、内側壁(4cL)を有する第1のモータハウジング(4L)と、内側壁(4cR)を有する第2のモータハウジング(4R)と、外側壁(4bL)を有する第1のカバー部材と、外側壁(4bR)を有する第2のカバー部材と、仕切壁(11)を有する減速機ハウジング(9)との5つの部材を備えて、ケースが構成されている。
【0003】
第1駆動力源としての電動モータ(2L)及び第2駆動力源としての電動モータ(2R)は、それぞれ内側壁(4cL,4cR)と外側壁(4bL,4bR)との軸方向の間で、内側壁(4cL,4cR)と外側壁(4bL,4bR)に支持された状態で配置されている。また、電動モータ(2L,2R)のそれぞれの回転体であるロータ(5,5)と一体的に回転する入力部材としてのモータ軸(5a,5a)は、それぞれ内側壁(4cL,4cR)と仕切壁(11)との軸方向の間で、内側壁(4cL,4cR)と仕切壁(11)に支持された状態で配置されている。そして、特許文献1の車両用駆動装置(1)では、一方の外側壁(4bL)を有するカバー部材、一方のモータハウジング(4L)、減速機ハウジング(9)、他方のモータハウジング(4R)、他方の外側壁(4bR)を有するカバー部材が、軸方向に記載の順に接合されてケースが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のようにケースが構成される場合、5つの部材を接合してケースを構成するために計4箇所の接合部が存在し、これら4つの接合部が何れも外部に露出する位置に設けられている。このため、5つの部材が接合される整合部を密閉するためのシール部材も4つの接合部の全てに必要となり、車両用駆動装置の製造コストが高くなる傾向がある。
【0006】
上記に鑑みて、2つの駆動力源を備える複軸構成の車両用駆動装置のケースにおけるシールの必要箇所を低減し、車両用駆動装置の製造コストを低減することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、車両用駆動装置は、第1回転体を有する第1駆動力源と、第2回転体を有する第2駆動力源と、第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、これらを収容するケースと、を備えた車両用駆動装置であって、前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源が、第1軸上に配置され、前記第1出力部材及び前記第2出力部材が、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、前記第1軸と前記第2軸とは互いに平行状に配置され、前記第1軸及び前記第2軸と直交する方向を軸直交方向として、前記ケースは、前記軸直交方向に延在する第1支持部を有する第1ケース部と、前記軸直交方向に延在する第1部分を有する第2ケース部と、前記軸直交方向に延在する第2部分を有する第3ケース部と、を備え、前記第2ケース部が、前記第1ケース部に対して軸方向第1側に接合され、前記第3ケース部が、前記第1ケース部に対して前記軸方向第1側とは反対側の軸方向第2側に接合され、前記第1回転体及び前記第1回転体と一体的に回転する第1入力部材が、前記第1支持部と前記第1部分との軸方向の間に、これらに支持された状態で配置され、前記第2回転体及び前記第2回転体と一体的に回転する第2入力部材が、前記第1支持部と前記第2部分との前記軸方向の間に、これらに支持された状態で配置されている。
【0008】
この構成によれば、3つの部材により構成されているケースは、第1ケース部と第2ケース部との接合面と、第1ケース部と第3ケース部との接合面との2つの接合面において接合することで形成することができる。つまり、ケース(CS)におけるシールの必要箇所を低減することができる。また、第1回転体及び第1入力部材が、第1ケース部と第2ケース部との間で支持され、第2回転体及び第2入力部材が、第1ケース部と第3ケース部との間で支持されるので、少ない部材によりケースを構成しながら、適切に駆動力源の回転体と、入力部材とをケースによって支持することができる。このように、本構成によれば、2つの駆動力源を備える複軸構成の車両用駆動装置のケースにおけるシールの必要箇所を低減し、車両用駆動装置の製造コストを低減することができる。
【0009】
車両用駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】車両用駆動装置における遊星歯車機構の速度線図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1回転電機1Aと、第2回転電機1Bと、第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材2Aと、第2車輪W2に駆動連結される第2出力部材2Bと、動力伝達装置3と、これらを収容するケースCSとを備えている。尚、第1出力部材2A及び第2出力部材2Bの一部は、ケースCSの外部に露出している。
【0012】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。尚、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0013】
第1回転電機1Aは、「第1駆動力源」に相当し、第2回転電機1Bは、「第2駆動力源」に相当する。尚、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、第1軸X1上に配置されている。具体的には、第1回転電機1Aの回転体である第1ロータ12Aと第2回転電機1Bの回転体である第2ロータ12Bとのそれぞれが、第1軸X1を中心として回転する。また、第1出力部材2A及び第2出力部材2Bは、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。具体的には、第1出力部材2Aと第2出力部材2Bとのそれぞれが、第2軸X2を中心として回転する。
【0014】
動力伝達装置3は、第1回転電機1Aのトルクを少なくとも第1出力部材2Aに伝達すると共に第2回転電機1Bのトルクを少なくとも第2出力部材2Bに伝達する。本実施形態では、動力伝達装置3は、第1回転電機1Aのトルクと第2回転電機1Bのトルクとを合わせたトルクを、第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに分配して伝達するように構成されている。そのため、この動力伝達装置3は、第1ロータ12Aと一体的に回転する第1入力ギヤ4A(第1ギヤ)と、第2ロータ12Bと一体的に回転する第2入力ギヤ4B(第2ギヤ)と、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上にそれぞれ配置される第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bと、第2軸X2上に配置される差動歯車機構としての遊星歯車機構6とを備えている。尚、本実施形態では、第1入力ギヤ4A及び第2入力ギヤ4Bは、第1軸X1上に配置されている。遊星歯車機構6は、第2軸X2上に配置されている。
【0015】
ここで、第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3は、互いに異なる仮想軸であり、互いに平行状に配置されている。また、以下の説明では、上記の第1軸X1、第2軸X2、第3軸X3に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lにおいて、第2回転電機1Bに対して第1回転電機1Aが配置される側を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。また、上記の各軸(X1,X2,X3)のそれぞれに直交する方向(軸直交方向)を、各軸を基準とした「径方向R」とする。尚、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0016】
ケースCSは、
図1に示すように、径方向Rに延在する第1支持部S1を有する第1ケース部CS1と、径方向Rに延在する部分である第1部分C1(第1延在部)を有する第2ケース部CS2と、径方向Rに延在する部分である第2部分C2(第2延在部)を有する第3ケース部CS3との3つの部材を備えて構成されている。第2ケース部CS2は、第1ケース部CS1に対して軸方向第1側L1に接合され、第3ケース部CS3は、第1ケース部CS1に対して軸方向第1側L1とは反対側の軸方向第2側L2に接合されている。
【0017】
図1に示すように、第1ケース部CS1と第2ケース部CS2とは、それぞれケースの外周壁から径方向Rの外側に突出した突出部Tにおいて、第1締結部材B1(ここでは雄ネジ)によって締結されている。第2ケース部CS2の突出部Tには、第1締結部材B1が貫通する第1挿通孔22が形成され、第1ケース部CS1の突出部Tには、第1締結部材B1が螺合する第1雌ネジ孔21が形成されている。第1ケース部CS1と第2ケース部CS2とを当接させ、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向かって軸方向Lに沿って第1締結部材B1が第1挿通孔22に挿入され、第1雌ネジ孔21と螺合する。これにより、第1接合面J1が密着し、第1ケース部CS1と第2ケース部CS2とが接合される。尚、第1ケース部CS1の突出部Tに、第1締結部材B1が貫通する挿通孔が形成され、第2ケース部CS2の突出部Tに、第1締結部材B1が螺合する雌ネジ孔が形成され、軸方向第2側L2から軸方向第1側L1に向かって軸方向Lに沿って第1締結部材B1が挿入される形態であってもよい。
【0018】
同様に、第1ケース部CS1と第3ケース部CS3とは、それぞれケースの外周壁から径方向Rの外側に突出した突出部Tにおいて、第2締結部材B2(ここでは雄ネジ)によって締結されている。第3ケース部CS3の突出部Tには、第2締結部材B2が貫通する第2挿通孔24が形成され、第1ケース部CS1の突出部Tには、第2締結部材B2が螺合する第2雌ネジ孔23が形成されている。第1ケース部CS1と第3ケース部CS3とを当接させ、軸方向第2側L2から軸方向第1側L1に向かって軸方向Lに沿って第2締結部材B2が第2挿通孔24に挿入され、第2雌ネジ孔23と螺合する。これにより、第2接合面J2が密着し、第1ケース部CS1と第3ケース部CS3とが接合される。尚、第1ケース部CS1の突出部Tに、第2締結部材B2が貫通する挿通孔が形成され、第2ケース部CS2の突出部Tに、第2締結部材B2が螺合する雌ネジ孔が形成され、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向かって軸方向Lに沿って第2締結部材B2が挿入される形態であってもよい。
【0019】
3つの部材により構成されているケースCSは、第1ケース部CS1と第2ケース部CS2との接合面である第1接合面J1と、第1ケース部CS1と第3ケース部CS3との接合面である第2接合面J2との2つの接合面において接合されることで形成することができる。つまり、少ない接合面によりケースCSが形成されるので、接合面を形成するためにケースCSにおいて径方向Rに張り出す箇所が少なくなる。その結果、ケースCS全体の径方向Rの寸法の大型化が抑制され、ケースCSの外部に他の部材を配置するスペースを確保し易くなる。例えば、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bを駆動するためのインバータを含む回転電機制御装置を、制御対象の回転電機の近傍に配置することも可能となる。即ち、車両用駆動装置100の小型化と共に、車両用駆動装置の近くに配置される他の部材の搭載性も向上させることができる。
【0020】
尚、第1ケース部CS1と第2ケース部CS2とは、第1接合面J1がシール部材でシールされた状態で接合され、第1ケース部CS1と第3ケース部CS3とは、第2接合面J2がシール部材でシールされた状態で接合されている。これにより、ケースCSを密閉した状態で構成することができる。上述したように、本実施形態では、第1接合面J1と第2接合面J2との2つの接合面において3つの部材を接合することで、ケースCSが形成される。従って、シール部材もこれら2つの接合面に設ければよく、シール部材の使用量を抑制することができる。また、ケースCSの組み立て工数も抑制することができる。
【0021】
また、第1接合面J1は第1支持部S1よりも軸方向第1側L1に配置され、第2接合面J2は第1支持部S1よりも軸方向第2側L2に配置されている。接合部が第1支持部S1から軸方向Lに沿って離れて位置するため、ケースCSにおける第1支持部S1の径方向Rの外側にスペースを確保し易い。このため、車両用駆動装置100を車両に搭載した場合に、車両用駆動装置100以外の部材を車両に搭載するスペースを確保し易くなる。
【0022】
第1回転電機1Aは、第1ステータ11Aと、第1ロータ12Aとを備えている。第1ステータ11Aは、非回転部材(ここでは、第1ケース部CS1)に固定された第1ステータコア111Aを有している。第1ロータ12Aは、第1ステータ11Aに対して回転可能な第1ロータコア121Aを有している。第1ロータコア121Aには、軸方向Lに沿って延在する第1ロータ軸13Aが一体的に回転するように連結されている。同様に、第2回転電機1Bは、第2ステータ11Bと、第2ロータ12Bとを備えている。第2ステータ11Bは、非回転部材(ここでは、第1ケース部CS1)に固定された第2ステータコア111Bを有している。第2ロータ12Bは、第2ステータ11Bに対して回転可能な第2ロータコア121Bを有している。第2ロータコア121Bには、軸方向Lに沿って延在する第2ロータ軸13Bが一体的に回転するように連結されている。
【0023】
本実施形態では、第1ロータ12A及び第1ロータ12Aと一体的に回転する第1入力部材としての第1入力軸14Aが、第1ケース部CS1の第1支持部S1と第2ケース部CS2の第1部分C1との軸方向Lの間に、これらに支持された状態で配置されている。また、第2ロータ12B及び第2ロータ12Bと一体的に回転する第2入力部材としての第2入力軸14Bが、第1ケース部CS1の第1支持部S1と第3ケース部CS3の第2部分C2との軸方向Lの間に、これらに支持された状態で配置されている。
【0024】
即ち、第1ロータ12A及び第1入力軸14Aが、第1ケース部CS1と第2ケース部CS2との間で支持され、第2ロータ12B及び第2入力軸14Bが、第1ケース部CS1と第3ケース部CS3との間で支持される。これにより、少ない部材によりケースCSを構成しながら、適切に駆動力源の回転体と、動力伝達装置3への入力部材とをケースCSによって支持することができる。
【0025】
尚、本実施形態では、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、インナロータ型の回転電機である。そのため、第1ステータコア111Aよりも径方向Rの内側に、第1ロータコア121Aが配置され、第2ステータコア111Bよりも径方向Rの内側に第2ロータコア121Bが配置されている。そして、第1ロータコア121Aに対して径方向Rの内側に第1ロータ軸13Aが配置され、第2ロータコア121Bに対して径方向Rの内側に、第2ロータ軸13Bが配置されている。また、本実施形態では、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは回転界磁型の回転電機である。そのため、第1ステータコア111Aには、当該第1ステータコア111Aから軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するコイルエンド部が形成されるように第1ステータコイル112Aが巻装されている。また、第2ステータコア111Bには、当該第2ステータコア111Bから軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するコイルエンド部が形成されるように第2ステータコイル112Bが巻装されている。また、第1ロータコア121Aには、第1永久磁石122Aが設けられ、第2ロータコア121Bには、第2永久磁石122Bが設けられている。
【0026】
第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、互いに独立して回転可能に設けられる。つまり、第1ロータ12Aと第2ロータ12Bとは、一体的に回転するようには連結されておらず、第1ロータ12Aの回転速度と第2ロータ12Bの回転速度との比は、車両用駆動装置100の状態に応じて変化する。本実施形態では、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bとして、互いに同じ出力特性を備える2つの回転電機が用いられている。尚、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとで、異なる出力特性を備える回転電機を用いても良い。
【0027】
本実施形態では、第1ロータ軸13Aに、軸方向Lに沿って延在する第1入力軸14Aが一体的に回転するように連結されている。そして、第1入力軸14Aには、第1入力ギヤ4Aが一体的に回転するように連結されている。こうして、第1入力ギヤ4Aが、第1回転電機1Aの第1ロータ12Aと一体的に回転する。つまり、第1入力ギヤ4Aは、第1駆動力源の回転体と一体的に回転する「第1ギヤ」に相当する。
【0028】
また、本実施形態では、第2ロータ軸13Bに、軸方向Lに沿って延在する第2入力軸14Bが一体的に回転するように連結されている。そして、第2入力軸14Bには、第2入力ギヤ4Bが一体的に回転するように連結されている。こうして、第2入力ギヤ4Bが、第2回転電機1Bの第2ロータ12Bと一体的に回転する。つまり、第2入力ギヤ4Bは、第2駆動力源の回転体と一体的に回転する「第2ギヤ」に相当する。
【0029】
上述したように、動力伝達装置3は、第1入力ギヤ4A(第1ギヤ)と、第2入力ギヤ4B(第2ギヤ)と、第1カウンタギヤ機構5Aと、第2カウンタギヤ機構5Bと、遊星歯車機構6とを備えている。第1カウンタギヤ機構5Aは、第1カウンタ入力ギヤ51A(第3ギヤ)と、第1カウンタ出力ギヤ52A(第4ギヤ)とを備えており、第2カウンタギヤ機構5Bは、第2カウンタ入力ギヤ51B(第5ギヤ)と、第2カウンタ出力ギヤ52B(第6ギヤ)とを備えている。遊星歯車機構6は、後述するように、第1カウンタ出力ギヤ52A(第4ギヤ)と第2カウンタ出力ギヤ52B(第6ギヤ)とのそれぞれを、第1出力部材2Aと第2出力部材2Bとの双方に駆動連結する。
【0030】
第1カウンタ入力ギヤ51Aは、第1カウンタギヤ機構5Aの入力要素であり、第2カウンタ入力ギヤ51Bは、第2カウンタギヤ機構5Bの入力要素である。第1カウンタ入力ギヤ51Aは、第1入力ギヤ4Aに噛み合っており、第2カウンタ入力ギヤ51Bは、第2入力ギヤ4Bに噛み合っている。つまり、第1カウンタ入力ギヤ51Aは、第1ギヤ(第1入力ギヤ4A)に噛み合う「第3ギヤ」に相当し、第2カウンタ入力ギヤ51Bは、第2ギヤ(第2入力ギヤ4B)に噛み合う「第5ギヤ」に相当する。
【0031】
第1カウンタ出力ギヤ52Aは、第1カウンタギヤ機構5Aの出力要素であり、第2カウンタ出力ギヤ52Bは、第2カウンタギヤ機構5Bの出力要素である。第1カウンタ出力ギヤ52Aは、第1カウンタ入力ギヤ51Aと一体的に回転するように連結されており、第2カウンタ出力ギヤ52Bは、第2カウンタ入力ギヤ51Bと一体的に回転するように連結されている。つまり、第1カウンタ出力ギヤ52Aは、第3ギヤ(第1カウンタ入力ギヤ51A)と一体的に回転する「第4ギヤ」に相当し、第2カウンタ出力ギヤ52Bは、第5ギヤ(第2カウンタ入力ギヤ51B)と一体的に回転する「第6ギヤ」に相当する。
【0032】
本実施形態では、第1カウンタ出力ギヤ52Aは、軸方向Lに延在する第1カウンタ軸53Aを介して、第1カウンタ入力ギヤ51Aと連結されており、第2カウンタ出力ギヤ52Bは、軸方向Lに延在する第2カウンタ軸53Bを介して、第2カウンタ入力ギヤ51Bと連結されている。また、第1カウンタ出力ギヤ52Aは、遊星歯車機構6の第1遊星入力ギヤ7Aに噛み合っており、第2カウンタ出力ギヤ52Bは、遊星歯車機構6の第2遊星入力ギヤ7Bに噛み合っている。
【0033】
本実施形態では、第1カウンタ入力ギヤ51Aは、第1カウンタ出力ギヤ52Aよりも大径であり、第2カウンタ入力ギヤ51Bは、第2カウンタ出力ギヤ52Bよりも大径である。そして、軸方向Lにおける第1カウンタ出力ギヤ52Aと第2カウンタ出力ギヤ52Bとの間に、第1カウンタ入力ギヤ51Aと第2カウンタ入力ギヤ51Bとが配置されている。このため、第1カウンタ入力ギヤ51A及び第2カウンタ入力ギヤ51Bが軸方向Lにおいて第1カウンタ出力ギヤ52Aと第2カウンタ出力ギヤ52Bを挟むように配置された構成と比較して、大径の第1カウンタ入力ギヤ51A及び第2カウンタ入力ギヤ51Bと遊星歯車機構6との干渉を避けて、遊星歯車機構6を第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bに対して径方向Rに近付けて配置し易い。これにより、例えば、車両用駆動装置100の径方向Rの寸法を小さく抑え、車両用駆動装置100をより小型化することが容易となる。
【0034】
また、第1入力ギヤ4A、第2入力ギヤ4B、第1カウンタギヤ機構5A、第2カウンタギヤ機構5Bは、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間に、配置されている。これにより、第1入力ギヤ4A及び第2入力ギヤ4Bだけでなく、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bも、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bと重複するように配置することが容易となる。従って、車両用駆動装置100の径方向Rの寸法を小さく抑え、車両用駆動装置100をより小型化することが容易となる。
【0035】
図1に示すように、ケースCSは、第1ケース部CS1と第2ケース部CS2と第3ケース部CS3とにより囲まれたケース内空間Eに配置された第1補助部材H1と第2補助部材H2とをさらに備えている。そして、第1補助部材H1は、径方向Rに延在する第2支持部S2を備えており、第2補助部材H2は、径方向Rに延在する第3支持部S3を備えている。具体的には、第1補助部材H1は、第2支持部S2が第1支持部S1と第1部分C1との軸方向Lの間に配置されるように第1ケース部CS1に取り付けられている。また、第2補助部材H2は、第3支持部S3が第1支持部S1と第2部分C2との軸方向Lの間に配置されるように第1ケース部CS1に取り付けられている。第1カウンタギヤ機構5Aは、第1支持部S1と第2支持部S2との軸方向Lの間にこれらに支持された状態で配置されている。また、第2カウンタギヤ機構5Bは、第1支持部S1と第3支持部S3との軸方向Lの間にこれらに支持された状態で配置されている。
【0036】
尚、第1補助部材H1及び第2補助部材H2は、第1ケース部CS1に接合されている。例えば、
図1に示すように、第1補助部材H1は、第3締結部材B3(例えばネジ)によって第1ケース部CS1に締結接合されている。また、第2補助部材H2は、第4締結部材B4(例えばネジ)によって第1ケース部CS1に締結接合されている。
【0037】
第1補助部材H1によって、第1支持部S1と第1部分C1との軸方向Lの間に第2支持部S2を適切に設置することができ、第2補助部材H2によって、第1支持部S1と第2部分C2との軸方向Lの間に第3支持部S3を適切に設置することができる。これにより、第1ケース部CS1の径方向Rの内側に第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bを適切に収容することができる。第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、第1軸X1上に配置されており、第1出力部材2A及び第2出力部材2B並びに遊星歯車機構6は、第2軸X2上に配置されている。そして、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bは、第3軸X3上に配置されているため、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bが、第1軸X1上又は第2軸X2上に配置された構成と比較して、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法も小さく抑えることができる。
【0038】
上述したように、第1ケース部CS1と第2ケース部CS2とは、第1接合面J1がシール部材でシールされた状態で接合され、第1ケース部CS1と第3ケース部CS3とは、第2接合面J2がシール部材でシールされた状態で接合されている。これにより、ケースCSを密閉した状態で構成することができる。一方、第1ケース部CS1に取り付けられている第1補助部材H1と第1ケース部CS1とは、シール部材を介さずに直接接合されている。また、第1ケース部CS1に取り付けられている第2補助部材H2と第1ケース部CS1とも、シール部材を介さずに直接接合されている。第1補助部材H1及び第2補助部材H2は、ケースCSのケース内空間Eに備えられるため、油の漏れ出しや水の侵入等を抑制するためにシールする必要がない。従って、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bを支持するための第2支持部S2及び第3支持部S3を備えても、これによってシールが必要な箇所が増加することはない。このため、製造コストの増加も抑制される。
【0039】
第1カウンタギヤ機構5Aは、第1入力ギヤ4Aの回転を変速し、第2カウンタギヤ機構5Bは、第2入力ギヤ4Bの回転を変速する。第1カウンタギヤ機構5Aによって変速された第1入力ギヤ4Aの回転は、第1遊星入力ギヤ7Aを介して遊星歯車機構6に入力される。また、第2カウンタギヤ機構5Bによって変速された第2入力ギヤ4Bの回転は、第2遊星入力ギヤ7Bを介して遊星歯車機構6に入力される。本実施形態では、第1カウンタギヤ機構5Aは、第1入力ギヤ4Aの回転を減速して第1遊星入力ギヤ7Aに伝達する。同様に、第2カウンタギヤ機構5Bは、第2入力ギヤ4Bの回転を減速して第2遊星入力ギヤ7Bに伝達する。
【0040】
具体的には、本実施形態では、第1カウンタ入力ギヤ51Aは、第1入力ギヤ4Aよりも大径に形成されており、第1カウンタ出力ギヤ52Aは、第1遊星入力ギヤ7Aよりも小径に形成されている。そのため、第1入力ギヤ4Aの回転は、第1入力ギヤ4Aと第1カウンタ入力ギヤ51Aとの歯数比に応じて減速されると共に、第1カウンタ出力ギヤ52Aと第1遊星入力ギヤ7Aとの歯数比に応じて更に減速されて(つまり、二段階に減速されて)、遊星歯車機構6に入力される。
【0041】
同様に、本実施形態では、第2カウンタ入力ギヤ51Bは、第2入力ギヤ4Bよりも大径に形成されており、第2カウンタ出力ギヤ52Bは、第2遊星入力ギヤ7Bよりも小径に形成されている。そのため、第2入力ギヤ4Bの回転は、第2入力ギヤ4Bと第2カウンタ入力ギヤ51Bとの歯数比に応じて減速されると共に、第2カウンタ出力ギヤ52Bと第2遊星入力ギヤ7Bとの歯数比に応じて更に減速されて(つまり、二段階に減速されて)、遊星歯車機構6に入力される。
【0042】
尚、本実施形態では、第1入力ギヤ4A、第1カウンタ入力ギヤ51A、第1カウンタ出力ギヤ52A、第1遊星入力ギヤ7A、第2入力ギヤ4B、第2カウンタ入力ギヤ51B、第2カウンタ出力ギヤ52B、及び第2遊星入力ギヤ7Bのそれぞれは、はす歯歯車である。
【0043】
上述したように、第1回転電機1Aの回転は、第1カウンタギヤ機構5Aを介して遊星歯車機構6に入力され、第2回転電機1Bの回転は、第2カウンタギヤ機構5Bを介して遊星歯車機構6に入力される。つまり、遊星歯車機構6の回転要素の回転速度が適切な回転速度となるように、遊星歯車機構6に入力される回転が変速される。従って、遊星歯車機構6の負荷を小さく抑えることができる。
【0044】
遊星歯車機構6は、リングギヤR6と、第1ピニオンギヤP61、及び当該第1ピニオンギヤP61と一体的に回転すると共にリングギヤR6に噛み合う第2ピニオンギヤP62を回転可能に支持するキャリヤC6と、第1ピニオンギヤP61に噛み合う第1サンギヤS61と、第2ピニオンギヤP62に噛み合う第2サンギヤS62とを備えている。
【0045】
リングギヤR6は、第1カウンタ出力ギヤ52Aに噛み合う第1遊星入力ギヤ7Aと一体的に回転するように連結されている。キャリヤC6は、第1出力部材2Aと一体的に回転するように連結されている。キャリヤC6は、第1ピニオンギヤP61及び第2ピニオンギヤP62を、それらの径方向Rの内側から回転可能に支持するピニオン軸P63を保持している。第1ピニオンギヤP61及び第2ピニオンギヤP62は、同軸に配置されている。また、第1ピニオンギヤP61と第2ピニオンギヤP62とは一体的に回転するように連結されている。第1ピニオンギヤP61及び第2ピニオンギヤP62は、それらの軸心を中心として回転(自転)すると共に、第2軸X2を中心として回転(公転)する。また、第1ピニオンギヤP61及び第2ピニオンギヤP62は、それらの公転軌跡に沿って複数対設けられている。本実施形態では、第1ピニオンギヤP61は、第2ピニオンギヤP62よりも小径である。
【0046】
第1サンギヤS61は、第2出力部材2Bと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1サンギヤS61は、軸方向Lに沿って延在する第1連結軸9Aを介して、第2出力部材2Bと連結されている。第2サンギヤS62は、第2カウンタ出力ギヤ52Bに噛み合う第2遊星入力ギヤ7Bと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2サンギヤS62は、第2連結軸9Bを介して、第2遊星入力ギヤ7Bと連結されている。尚、本実施形態では、第1サンギヤS61は、第2サンギヤS62よりも大径である。
【0047】
図1に示すように、本実施形態では、遊星歯車機構6は、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの何れか一方と軸方向Lの配置領域が重なっている。本実施形態では、遊星歯車機構6の軸方向Lの配置領域が、第1回転電機1Aの軸方向Lの配置領域と重なっている。一方、遊星歯車機構6の軸方向Lの配置領域は、第2回転電機1Bの軸方向Lの配置領域と重なっていない。また、本実施形態では、第1カウンタ出力ギヤ52Aが、第1カウンタ入力ギヤ51Aに対して、軸方向Lにおける第1回転電機1Aの側(軸方向第1側L1)に配置されている。そして、第1ピニオンギヤP61が、第2ピニオンギヤP62に対して、軸方向Lにおける第1回転電機1Aの側(軸方向第1側L1)に配置されている。
【0048】
上述したように、動力伝達装置3を構成する第1カウンタギヤ機構5A、第2カウンタギヤ機構5B、第1入力ギヤ4A、第2入力ギヤ4Bは、第1支持部S1に支持されている。そして、
図1に示すように、第1出力部材2Aは、第1部分C1に支持され、第2出力部材2Bは第2部分C2に支持されている。動力伝達装置3は、ケースCSの内部に収容されている。従って、動力伝達装置3が第1ケース部CS1に設けられた第1支持部S1に支持されることで、適切にケースCSの内部に動力伝達装置3を支持しつつ、収容することができる。一方、第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材2A及び第2車輪W2に駆動連結される第2出力部材2Bの一部は、ケースCSの外部に露出する。従って、第1出力部材2Aが第1部分C1に支持され、第2出力部材2Bが第2部分C2に支持されることで、ケースCSによって第1出力部材2A及び第2出力部材2Bを支持しつつ、これらの一部をケースCSの外部に露出させて車輪と駆動連結させることができる。
【0049】
尚、本実施形態では、第1回転電機1Aから第1出力部材2Aまでの動力伝達経路の変速比と、第2回転電機1Bから第2出力部材2Bまでの動力伝達経路の変速比とが同一である。また、本実施形態では、下記の式(1)が成立するように、遊星歯車機構6を構成する各ギヤ(R6,P61,P62,S61,S62)の歯数が設定されている。
【0050】
1/Zr=1/Zs2-1/Zs1×Zp1/Zp2・・・(1)
【0051】
ここで、上記式(1)において、ZrはリングギヤR6の歯数であり、Zp1は第1ピニオンギヤP61の歯数であり、Zp2は第2ピニオンギヤP62の歯数であり、Zs1は第1サンギヤS61の歯数であり、Zs2は第2サンギヤS62の歯数である。
【0052】
図3は、遊星歯車機構6の速度線図を示している。
図3の速度線図において、縦軸は、遊星歯車機構6の各回転要素の回転速度に対応している。そして、並列配置された複数本の縦線のそれぞれが、遊星歯車機構6の各回転要素に対応している。
図3に示すように、上記式(1)において、「1/Zr」は、リングギヤR6とキャリヤC6との間の歯数比を表している。そして、「1/Zs2」は、第2サンギヤS62とキャリヤC6との間の歯数比を表している。更に、「1/Zs1×Zp1/Zp2」は、第1サンギヤS61とキャリヤC6との間の歯数比を表している。したがって、「1/Zs2-1/Zs1×Zp1/Zp2」は、第2サンギヤS62と第1サンギヤS61との間の歯数比を表している。つまり、上記式(1)は、リングギヤR6とキャリヤC6との間の歯数比と、第2サンギヤS62と第1サンギヤS61との間の歯数比とが同一であることを表している。
【0053】
また、本実施形態では、第1カウンタギヤ機構5Aの変速比と、第2カウンタギヤ機構5Bの変速比とが同一である。つまり、第1カウンタ入力ギヤ51Aと第2カウンタ入力ギヤ51Bとが同径であり、第1カウンタ出力ギヤ52Aと第2カウンタ出力ギヤ52Bとが同径である。
【0054】
上述したように、第1出力部材2Aは、第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2出力部材2Bは、第2車輪W2と一体的に回転するように連結される。そして、キャリヤC6は、第1出力部材2Aと一体的に回転するように連結され、第1サンギヤS61は、第2出力部材2Bと一体的に回転するように連結される。よって、車両用駆動装置100が搭載された車両の直進時には、キャリヤC6の回転速度と第1サンギヤS61の回転速度とが等しくなり、遊星歯車機構6が備える4つの回転要素が同速で回転する状態(つまり、遊星歯車機構6が差動動作を行わない状態)となる。一方、車両の旋回時には、
図3に一例を示すように、遊星歯車機構6が備える4つの回転要素が互いに異なる回転速度で回転する状態(つまり、遊星歯車機構6が差動動作を行う状態)となる。
図3では、第1車輪W1が内側の車輪(旋回中心に近い側の車輪)となる方向に車両が旋回している状態を示している。
【0055】
即ち、本実施形態では、1つの遊星歯車機構6により、第1出力部材2Aと第2出力部材2Bとのトルク差を適切に制御することができる。従って、車両用駆動装置100を簡易な構成とすることができる。その結果、車両用駆動装置100の製造コストを低減することができる。
【0056】
尚、遊星歯車機構6が差動動作を行う場面は、車両の旋回時に限定される。遊星歯車機構6が差動動作を行う場面は、車両の旋回時に限定されるため、遊星歯車機構6が差動動作を行う際に発生し得るギヤノイズの影響を小さく抑えることが可能となっている。また、本実施形態では、遊星歯車機構6を構成する各ギヤ(R6,P61,P62,S61,S62)は平歯車である。この場合、各ギヤが受ける荷重を主にラジアル荷重として、各ギヤを軸方向Lに支持するための構成を簡略化することも可能である。
【0057】
また、
図1に示すように、軸方向Lにおいて、第1カウンタ出力ギヤ52A及び第2カウンタ出力ギヤ52Bを挟んで、遊星歯車機構6とは反対側にオイルポンプ20が配置されている。本実施形態では、車両用駆動装置100を大型化することなく、オイルポンプ20を有した車両用駆動装置が適切に構成することができる。本実施形態では、オイルポンプ20の軸方向Lの配置領域が、第2回転電機1Bの軸方向Lの配置領域と重なっている。上述したように、遊星歯車機構6の軸方向Lの配置領域は、第1回転電機1Aの軸方向Lの配置領域と重なっている。それぞれの回転電機の軸方向Lの配置領域に重なるように、遊星歯車機構6及びオイルポンプ20が配置されており、軸方向Lにおいてバランスよく部材が配置された車両用駆動装置100が実現される。
【0058】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0059】
(1)上記においては、第1入力ギヤ4A、第2入力ギヤ4B、第1カウンタギヤ機構5A、第2カウンタギヤ機構5Bが、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間に配置されている形態を例示して説明した。しかし、例えば、第1カウンタギヤ機構5A、第2カウンタギヤ機構5Bは、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの何れか一方、又は双方と径方向R視で重複する位置(軸方向Lの配置位置が重複する位置)に配置されていてもよい。
【0060】
(2)上記においては、第1カウンタ入力ギヤ51Aが第1カウンタ出力ギヤ52Aよりも大径であり、第2カウンタ入力ギヤ51Bが第2カウンタ出力ギヤ52Bよりも大径であり、軸方向Lにおける第1カウンタ出力ギヤ52Aと第2カウンタ出力ギヤ52Bとの間に、第1カウンタ入力ギヤ51Aと第2カウンタ入力ギヤ51Bとが配置された構成を例示して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1カウンタ入力ギヤ51Aが第1カウンタ出力ギヤ52Aよりも小径であり、第2カウンタ入力ギヤ51Bが第2カウンタ出力ギヤ52Bよりも小径であっても良い。この場合、軸方向Lにおける第1カウンタ入力ギヤ51Aと第2カウンタ入力ギヤ51Bとの間に、第1カウンタ出力ギヤ52Aと第2カウンタ出力ギヤ52Bとが配置されると好適である。
【0061】
(3)上記においては、遊星歯車機構6は、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの何れか一方と軸方向Lの配置領域が重なっている構成を例示して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、遊星歯車機構6の軸方向Lの配置領域が、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの何れの軸方向Lの配置領域とも重なっていない構成としても良い。或いは、遊星歯車機構6の軸方向Lの配置領域が、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの双方の軸方向Lの配置領域と重なっている構成としても良い。
【0062】
(4)上記においては、遊星歯車機構6が、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bの双方と重複するように配置された構成を例示して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、遊星歯車機構6が、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bの何れか一方のみと重複するように配置されていても良い。或いは、遊星歯車機構6が、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bの何れにも重複しないように配置されていても良い。
【0063】
(5)上記においては、第1回転電機1Aから第1出力部材2Aまでの動力伝達経路の変速比と、第2回転電機1Bから第2出力部材2Bまでの動力伝達経路の変速比とが同一で構成を例示して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1回転電機1Aから第1出力部材2Aまでの動力伝達経路の変速比と、第2回転電機1Bから第2出力部材2Bまでの動力伝達経路の変速比とが異なる構成としても良い。この場合、車両用駆動装置100が搭載された車両の直進時における、第1ロータ12Aの回転速度と第2ロータ12Bの回転速度とは異なることになる。それに応じて、例えば、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとで異なる出力特性を備える回転電機を用いても良い。
【0064】
(6)上記においては、リングギヤR6とキャリヤC6との間の歯数比と、第2サンギヤS62と第1サンギヤS61との間の歯数比とが同一であり、第1カウンタギヤ機構5Aの変速比と、第2カウンタギヤ機構5Bの変速比とが同一である構成を例示して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、リングギヤR6とキャリヤC6との間の歯数比と、第2サンギヤS62と第1サンギヤS61との間の歯数比とが異なり、第1カウンタギヤ機構5Aの変速比と、第2カウンタギヤ機構5Bの変速比とが異なる構成としても良い。この構成は、第1回転電機1Aから第1出力部材2Aまでの動力伝達経路の変速比と、第2回転電機1Bから第2出力部材2Bまでの動力伝達経路の変速比とが同一である場合であっても異なる場合であっても適用可能である。
【0065】
(7)上記においては、1/Zr=1/Zs2-1/Zs1×Zp1/Zp2の式が成立するように、遊星歯車機構6を構成する各ギヤ(R6,P61,P62,S61,S62)の歯数を設定する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、Zp1=Zp2を前提として、Zr:Zs2:Zs1=2:1:2となるように、遊星歯車機構6を構成する各ギヤ(R6,P61,P62,S61,S62)の歯数を設定しても良い。これにより、遊星歯車機構6の出力トルク差(キャリヤC6から出力されるトルクと第1サンギヤS61から出力されるトルクとの差)を、遊星歯車機構6の入力トルク差(リングギヤR6に入力されるトルクと第2サンギヤS62に入力されるトルクとの差)の3倍とすることができる。
【0066】
(8)上記においては、第1駆動力源及び第2駆動力源の双方が回転電機である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1駆動力源及び第2駆動力源の一方又は双方として、回転電機以外の駆動力源を用いることもできる。回転電機に代えて用いる駆動力源として、例えば、内燃機関を例示することができる。尚、内燃機関とは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
【0067】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について簡単に説明する。
【0068】
1つの態様として、車両用駆動装置(100)は、第1回転体(12A)を有する第1駆動力源(1A)と、第2回転体(12B)を有する第2駆動力源(1B)と、第1車輪(W1)に駆動連結される第1出力部材(2A)と、第2車輪(W2)に駆動連結される第2出力部材(2B)と、これらを収容するケース(CS)と、を備えた車両用駆動装置(100)であって、前記第1駆動力源(1A)及び前記第2駆動力源(1B)が、第1軸(X1)上に配置され、前記第1出力部材(2A)及び前記第2出力部材(2B)が、前記第1軸(X1)とは異なる第2軸(X2)上に配置され、前記第1軸(X1)と前記第2軸(X2)とは互いに平行状に配置され、前記第1軸(X1)及び前記第2軸(X2)と直交する方向を軸直交方向として、前記ケース(CS)は、前記軸直交方向に延在する第1支持部(S1)を有する第1ケース部(CS1)と、前記軸直交方向に延在する部分である第1部分(C1)を有する第2ケース部(CS2)と、前記軸直交方向に延在する部分である第2部分(C2)を有する第3ケース部(CS3)と、を備え、前記第2ケース部(CS2)が、前記第1ケース部(CS1)に対して軸方向第1側(L1)に接合され、前記第3ケース部(CS3)が、前記第1ケース部(CS1)に対して前記軸方向第1側(L1)とは反対側の軸方向第2側(L2)に接合され、前記第1回転体(12A)及び前記第1回転体(12A)と一体的に回転する第1入力部材(14A)が、前記第1支持部(S1)と前記第1部分(C1)との軸方向(L)の間に、これらに支持された状態で配置され、前記第2回転体(12B)及び前記第2回転体(12B)と一体的に回転する第2入力部材(14B)が、前記第1支持部(S1)と前記第2部分(C2)との前記軸方向(L)の間に、これらに支持された状態で配置されている。
【0069】
この構成によれば、3つの部材により構成されているケース(CS)は、第1ケース部(CS1)と第2ケース部(CS2)との接合面と、第1ケース部(CS1)と第3ケース部(CS3)との接合面との2つの接合面において接合することで形成することができる。つまり、ケース(CS)におけるシールの必要箇所を低減することができる。また、第1回転体(12A)及び第1入力部材(14A)が、第1ケース部(CS1)と第2ケース部(CS2)との間で支持され、第2回転体(12B)及び第2入力部材(14B)が、第1ケース部(CS1)と第3ケース部(CS3)との間で支持されるので、少ない部材によりケース(CS)を構成しながら、適切に駆動力源の回転体と、入力部材とをケース(CS)によって支持することができる。このように、本構成によれば、2つの駆動力源を備える複軸構成の車両用駆動装置のケースにおけるシールの必要箇所を低減し、車両用駆動装置の製造コストを低減することができる。
【0070】
ここで、前記第1駆動力源(1A)は、前記第1ケース部(CS1)及び前記第2ケース部(CS2)に収容され、前記第2駆動力源(1B)は、前記第1ケース部(CS1)及び前記第3ケース部(CS3)に収容されると好適である。
【0071】
この構成によれば、第1ケース部(CS1)と第2ケース部(CS2)と第3ケース部(CS3)との3つの部材、つまり、少ない部材によりケース(CS)を構成しつつ、2つの駆動力源を適切にケース(CS)に収容することができる。
【0072】
また、前記第1駆動力源(1A)のトルクを少なくとも前記第1出力部材(2A)に伝達すると共に前記第2駆動力源(1B)のトルクを少なくとも前記第2出力部材(2B)に伝達する動力伝達装置(3)を備え、前記動力伝達装置(3)は、前記第1ケース部(CS1)に収容されると好適である。
【0073】
この構成によれば、第1ケース部(CS1)と第2ケース部(CS2)と第3ケース部(CS3)との3つの部材、つまり、少ない部材によりケース(CS)を構成しつつ、2つの駆動力源のそれぞれと2つの出力部材のそれぞれとを駆動連結する動力伝達機構(3)を適切にケース(CS)に収容することができる。
【0074】
また、前記第1駆動力源(1A)のトルクを少なくとも前記第1出力部材(2A)に伝達すると共に前記第2駆動力源(1B)のトルクを少なくとも前記第2出力部材(2B)に伝達する動力伝達装置(3)を備えている場合に、前記第1出力部材(2A)が前記第1部分(C1)に支持され、前記第2出力部材(2B)が前記第2部分(C2)に支持され、前記動力伝達装置(3)が前記第1支持部(S1)に支持されていると好適である。
【0075】
動力伝達装置(3)が第1ケース部(CS1)に設けられた第1支持部(S1)に支持されることで、適切にケース(CS)の内部に動力伝達装置(3)を支持しつつ、収容することができる。一方、第1車輪(W1)に駆動連結される第1出力部材(2A)及び第2車輪(W2)に駆動連結される第2出力部材(2B)の一部は、ケース(CS)の外部に露出する。従って、第1出力部材(2A)が第1部分(C1)に支持され、第2出力部材(2B)が第2部分(C2)に支持されることで、ケース(CS)によって第1出力部材(2A)及び第2出力部材(2B)を支持しつつ、これらの一部をケース(CS)の外部に露出させて車輪と駆動連結させることができる。
【0076】
また、前記第1駆動力源(1A)のトルクを少なくとも前記第1出力部材(2A)に伝達すると共に前記第2駆動力源(1B)のトルクを少なくとも前記第2出力部材(2B)に伝達する動力伝達装置(3)を備えている場合に、前記動力伝達装置(3)は、前記第1入力部材(14A)に設けられた第1ギヤ(4A)と、前記第2入力部材(14B)に設けられた第2ギヤ(4B)と、前記第1ギヤ(4A)に噛み合う第3ギヤ(51A)及び当該第3ギヤ(51A)と一体回転する第4ギヤ(52A)を備えた第1カウンタギヤ機構(5A)と、前記第2ギヤ(4B)に噛み合う第5ギヤ(51B)及び当該第5ギヤ(51B)と一体回転する第6ギヤ(52B)を備えた第2カウンタギヤ機構(5B)と、前記第4ギヤ(52A)及び前記第6ギヤ(52B)と前記第1出力部材(2A)及び前記第2出力部材(2B)とを駆動連結する差動歯車機構(6)と、を備え、前記差動歯車機構(6)が、前記第2軸(X2)上に配置され、前記第1カウンタギヤ機構(5A)及び前記第2カウンタギヤ機構(5B)が、前記第1軸(X1)及び前記第2軸(X2)とは異なる軸であって、前記第1軸(X1)及び前記第2軸(X2)と平行状に配置された第3軸(X3)上に配置され、前記ケース(CS)は、前記第1ケース部(CS1)と前記第2ケース部(CS2)と前記第3ケース部(CS3)とにより囲まれたケース内空間(E)に配置された第1補助部材(H1)と第2補助部材(H2)とを備え、前記第1補助部材(H1)は、前記軸直交方向に延在する第2支持部(S2)を備え、前記第2補助部材(H2)は、前記軸直交方向に延在する第3支持部(S3)を備え、前記第1補助部材(H1)は、前記第2支持部(S2)が前記第1支持部(S1)と前記第1部分(C1)との前記軸方向(L)の間に配置されるように前記第1ケース部(CS1)に取り付けられ、前記第2補助部材(H2)は、前記第3支持部(S3)が前記第1支持部(S1)と前記第2部分(C2)との前記軸方向(L)の間に配置されるように前記第1ケース部(CS1)に取り付けられ、前記第1カウンタギヤ機構(5A)が、前記第1支持部(S1)と前記第2支持部(S2)との前記軸方向(L)の間にこれらに支持された状態で配置され、前記第2カウンタギヤ機構(5B)が、前記第1支持部(S1)と前記第3支持部(S3)との前記軸方向(L)の間にこれらに支持された状態で配置されていると好適である。
【0077】
この構成によれば、第1補助部材(H1)によって、第1支持部(S1)と第1部分(C1)との軸方向(L)の間に第2支持部(S2)を適切に設置することができ、第2補助部材(H2)によって、第1支持部(S1)と第2部分(C2)との軸方向(L)の間に第3支持部(S3)を適切に設置することができる。これにより、第1ケース部(CS1)の径方向(R)の内側に第1カウンタギヤ機構(5A)及び第2カウンタギヤ機構(5B)を適切に収容することができる。第1駆動力源(1A)及び第2駆動力源(1B)は、第1軸(X1)上に配置されており、第1出力部材(2A)及び第2出力部材(2B)並びに差動歯車機構(6)は、第2軸(X2)上に配置されている。そして、第1カウンタギヤ機構(5A)及び第2カウンタギヤ機構(5B)は、第3軸(X3)上に配置されているため、第1カウンタギヤ機構(5A)及び第2カウンタギヤ機構(5B)が、第1軸(X1)上又は第2軸(X2)上に配置された構成と比較して、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法も小さく抑えることができる。
【0078】
また、前記第1ケース部(CS1)と前記第2ケース部(CS2)とがシール部材でシールされた状態で接合され、前記第1ケース部(CS1)と前記第3ケース部(CS3)とがシール部材でシールされた状態で接合され、前記第1補助部材(H1)と前記第1ケース部(CS1)とがシール部材を介さずに直接接合され、前記第2補助部材(H2)と前記第1ケース部(CS1)とがシール部材を介さずに直接接合されていると好適である。
【0079】
第1ケース部(CS1)と第2ケース部(CS2)とがシール部材でシールされた状態で接合され、第1ケース部(CS1)と第3ケース部(CS3)とがシール部材でシールされた状態で接合されていることにより、ケース(CS)を密閉した状態で構成することができる。一方、第1補助部材(H1)は、第1ケース部(CS1)にシール部材を介さずに直接接合され、第2補助部材(H2)も、第1ケース部(CS1)にシール部材を介さずに直接接合されている。第1補助部材(H1)及び第2補助部材(H2)は、ケース(CS)のケース内空間(E)に備えられるため、油の漏れ出しや水の侵入等を抑制するためにシールする必要がない。従って、第1カウンタギヤ機構(5A)及び第2カウンタギヤ機構(5B)を支持するために第2支持部(S2)及び第3支持部(S3)を備えても、これによってシールが必要な箇所が増加することはない。このため、製造コストの増加も抑制される。
【符号の説明】
【0080】
100:車両用駆動装置、1A:第1回転電機(第1駆動力源)、12A:第1ロータ(第1回転体)、1B:第2回転電機(第2駆動力源)、12B:第2ロータ(第2回転体)、2A:第1出力部材、2B:第2出力部材、3:動力伝達装置、4A:第1入力ギヤ(第1ギヤ)、4B:第2入力ギヤ(第2ギヤ)、5A:第1カウンタギヤ機構、14A:第1入力軸(第1入力部材)、14B:第2入力軸(第2入力部材)、51A:第1カウンタ入力ギヤ(第3ギヤ)、52A:第1カウンタ出力ギヤ(第4ギヤ)、5B:第2カウンタギヤ機構、51B:第2カウンタ入力ギヤ(第5ギヤ)、52B:第2カウンタ出力ギヤ(第6ギヤ)、6:遊星歯車機構(差動歯車機構)、C1:第1部分、C2:第2部分、CS:ケース、CS1:第1ケース部、CS2:第2ケース部、CS3:第3ケース部、E:ケース内空間、H1:第1補助部材、H2:第2補助部材、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、S1:第1支持部、S2:第2支持部、S3:第3支持部、X1:第1軸、X2:第2軸、X3:第3軸、W1:第1車輪、W2:第2車輪