(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】乳化装置
(51)【国際特許分類】
B01F 23/41 20220101AFI20240529BHJP
B01F 33/302 20220101ALI20240529BHJP
G01N 1/38 20060101ALI20240529BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20240529BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B01F23/41
B01F33/302
G01N1/38
C12N15/10 230
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2022559929
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2021058066
(87)【国際公開番号】W WO2021198126
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】クヌート,フィリップ
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0193857(US,A1)
【文献】特表2016-528027(JP,A)
【文献】国際公開第2003/004596(WO,A1)
【文献】特表2012-503773(JP,A)
【文献】特表2008-510607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 23/40 - 23/47
B01F 33/30 - 33/3039
B01F 25/40 - 25/46
G01N 1/38
B01L 1/00 - 99/00
C12M 1/00 - 3/10
C12Q 1/00 - 3/00
C12N 15/00 - 15/90
B81B 1/00
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化装置であって、
(a)2つの開口端を有する円筒形状の外側部品と、
(b)底部を有する円筒形状の内側部品であって、乳化装置の外側部品内に内側部品が入れ子になるのを可能にするのに十分な円周を有し、内側部品および外側部品が自由に摺動することができる、円筒形状の内側部品と、
(c)外側部品の内面または内側部品の外面の少なくとも1本の溝であって、入れ子にされたときに外側部品と内側部品との間のギャップよりも大きい高さを有する溝と、
(d)中実な底部に隣接する、内側部品の少なくとも1つの穴
であって、少なくとも1本の溝と流体連通している、少なくとも1つの穴と、
(e)外側部品の内面または内側部品の外面の半径方向分配チャネル
であって、少なくとも1つの穴と流体連通している、半径方向分配チャネルと、
(f)外側部品の内面の基部または内側部品の外面の基部にある半径方向ノズルチャネル
であって、少なくとも1本の溝と流体連通している、半径方向ノズルチャネルと、
を備える乳化装置。
【請求項2】
乳化装置は、使用するために容器に挿入される、請求項1
に記載の乳化装置。
【請求項3】
容器はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)管である、請求項1
または2に記載の乳化装置。
【請求項4】
容器は、複数のウェルを有するプレートである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項5】
少なくとも1本の溝は、外側部品の内面にある、請求項1~
4のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項6】
少なくとも1つの溝は、内側部品の外面にある、請求項1~
4のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項7】
内側部品が外側部品内に入れ子になったときに、少なくとも1つの溝が閉じられてチャネルを形成する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項8】
少なくとも1本の溝は、乳化装置の使用中に鉛直である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項9】
少なくとも1本の溝は、乳化装置の使用中に水平である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項10】
少なくとも1本の溝は
、1mmの長さ、0.01mm~0.5mmの範囲から選択される深さ、および0.04mm~2mmの範囲から選択される幅を有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項11】
内側部品の半径および外側部品の半径は、少なくとも1つの溝の深さ未満だけ異なる、請求項1~
10のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項12】
半径方向分配チャネルは、内側部品の底部か
ら0.5mm上方にある、請求項1~
11のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項13】
半径方向分配チャネルは
、10μm
~0.2mmの深さを有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項14】
半径方向分配チャネル
は0.2mmの深さである、請求項1~
13のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項15】
半径方向分配チャネル
は10μmの深さを有する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項16】
半径方向分配チャネルは10μm未満の深さを有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項17】
半径方向ノズルチャネルは、少なくとも1つの溝と同じ深さである、請求項1~
16のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項18】
少なくとも1本の溝は、20:1の長さ対深さの比を有する、請求項1~
17のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項19】
内側部品の底部は中実である、請求項1~
18のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項20】
内側部品の底部はカップ形状の突出部を備える、請求項
19に記載の乳化装置。
【請求項21】
内側部品の底部は円錐形状または円筒形状の突出部を備える、請求項1~
18のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項22】
少なくとも1つの穴はスリットである、請求項1~
21のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項23】
アレイ状に配置された、請求項1~
22のいずれか一項に記載の複数の乳化装置。
【請求項24】
アレイは、1個より多い数のウェルを有するプレートである、請求項
23に記載の複数の乳化装置。
【請求項25】
プレートは少なくとも96個のウェルを有する、請求項
24に記載の複数の乳化装置。
【請求項26】
請求項1~22のいずれか一項に記載の乳化装置を射出成形で製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される実施形態は、マイクロ流体液滴乳化に関する。より具体的には、本技術の実施形態は、射出成形乳化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体液滴乳化は、1~1000μmの範囲の直径を有する油滴または水滴を生成するために使用される技術である。マイクロ流体液滴乳化は、フレグランス封入、単一細胞シークエンシング、および液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)などの分野で使用されている。これらの分野で共通して、単分散液滴の生成における、より良好な制御が求められている。
【0003】
マイクロ流体液滴乳化機は、2つの一般的なタイプに分けられることができる。1つのタイプは、連続相のせん断流、例えば、ローフローフォーカス型(low flow-focusing)装置およびT字型(T-junction)装置によって液滴を生成する。連続相のせん断応力が高すぎるか、液滴相の慣性力が高すぎると、液滴形成が停止し、噴射が始まる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Utada et al.(2007)Phys.Rev.Lett.99,094502に記載されているように、液滴サイズはまた、流量に反比例する。したがって、せん断流技術を使用して液滴を生成するには、流量を厳密に制御して単分散液滴を制御可能に形成する必要がある。
【0004】
別のタイプのマイクロ流体液滴乳化機は、液滴形成出口で2つの対向するラプラス圧からもたらされるレイリープラトー不安定性を誘発する。第1のラプラス圧力は正であり、噴出する液滴の圧力であり、第2の圧力は負であって、出口におけるネックの圧力である。ネックの半径は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Eggersdorfer et al.(2018)PNAS,115(38):9479-9484に記載されているように、チャネルの特定の幾何学的形状によって固定される。液滴半径が出口高さの2.0倍の臨界値を超えるときなど、これらの圧力の合計がゼロ未満になると、液滴は自発的に形成される。せん断流駆動装置とは対照的に、これらの装置は流量の変動に敏感ではない。
【0005】
レイリープラトー乳化機は、エッジ乳化(edge emulsification)、ステップ乳化(step emulsification)、および溝付きステップ乳化(grooved step emulsification)を含む。エッジ乳化は、擬似的無限の幅であるが有限の高さおよび長さのチャネルを生成することによって達成され、長さと高さとの比は20よりも大きくなければならない(すなわち、l/h>20)(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、蘭国特許発明第2002862号明細書およびvan Dijke et al.,Lab Chip,2009,9,2824-2830を参照されたい)。
【0006】
マイクロチャネル乳化としても知られるステップ乳化は、幅広チャネルが、高さ以上の幅の個々のチャネルに離散化されることを除いて、エッジ乳化と同様である(それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ofner et al.,Macromol.Chem.Phys.2017,218,1600472、Sugiura et al.,Journal of Colloid and Interface Science 227,95-103(2000)およびSugiura et al.Langmuir 2002,18,5708-5712を参照されたい)。離散チャネルにおける流体抵抗は、圧力の変動を低減し、エッジ乳化よりもロバストな液滴生成をもたらす。
【0007】
溝付きステップ乳化は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Opalski et al.Lab Chip,2019,19,1183に記載されているように、ステップ乳化技術とエッジ乳化技術のハイブリッドである。離散チャネルは、無限に広いエッジチャネルに溝として存在し、低い流体抵抗のためにわずかに高いスループットでほぼ同じロバスト性のステップ乳化をもたらす。
【0008】
並列化可能な設計のために、遠心分離などの技術を含むステップ乳化は、受動液滴生成に一般的に使用される(Shin et al.,Sensors&Actuators:B.Chemical 301(2019)1277164およびSchuler et al.Lab Chip,2015,15,2759を参照されたい)。さらに、流量に依存しないことは、緊密に密封されたチャネルが必要とされないこと(Nie et al.Anal.Chem.2019,91,1779-1784を参照されたい)を意味し、複数の部品を一緒に化学的に密封することなく装置を組み立てることを可能にする。典型的には、従来技術のマイクロ流体装置は、2つのシートを有し、この2つのシートは、チャネルを生成するために、一緒に密封されなければならない。
【0009】
ステップ乳化で使用するための装置は、一般に、シリコン、ポリジメチルシロキサン(ジメチルシロキサン)、ポリカーボネート、およびガラスから製造される。
【0010】
ステップ乳化は、部分的には、高アスペクト比(l/h>20)のチャネルを有するという前述の条件のために、大量生産可能な設計にはまだ適合していない。さらに、大量生産のために、ステップ乳化に使用される装置を成形するための工具は、従来のフライス加工および旋盤加工技術を使用して形成され、一般的な材料で製造されるべきである。本装置はまた、遠心分離機、サーマルサイクラ、分光光度計、およびリキッドハンドラなどの一般的な実験機器に適合しなければならない。
【0011】
高アスペクト比(長さ(l)/高さ(h)>20)は、単一部品の射出成形では達成できない。さらに、エッチングおよびサンドブラストのようなサブトラクティブ技術を使用して高アスペクト比を達成することは困難である。ソフトリソグラフィー技術またはウェットエッチング技術のような、従来の装置に使用される他の一般的な手法は拡張可能ではなく、従来の装置に使用される部品を接合するための技術は大量生産には適していない。したがって、各々が射出成形によって製造され、接合せずに組み立てられた2つの部品を有する乳化装置は、当技術分野における発明の進歩を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Utada et al.(2007) Phys. Rev. Lett. 99, 094502
【文献】Eggersdorfer et al.(2018) PNAS, 115 (38):9479-9484
【文献】van Dijke et al., Lab Chip, 2009, 9, 2824-2830
【文献】Ofner et al., Macromol.Chem. Phys. 2017, 218, 1600472
【文献】Sugiura et al., Journal of Colloid and Interface Science 227, 95-103 (2000)
【文献】Sugiura et al. Langmuir 2002, 18, 5708-5712
【文献】Opalski et al. Lab Chip, 2019, 19, 1183
【文献】Shin et al., Sensors & Actuators:B.Chemical 301 (2019) 1277164
【文献】Schuler et al. Lab Chip, 2015, 15, 2759
【文献】Nie et al. Anal. Chem. 2019, 91, 1779-1784
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来技術の欠点は、本明細書に開示された、いくつかの実施形態を含む本明細書に記載の実施形態によって克服され、この実施形態は、接合することなく、外側部品内に入れ子になった内側部品を有する射出成形乳化装置を提供する。入れ子にすると、乳化装置は、液滴生成のための単一の管またはマルチウェルアレイに適合する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、乳化装置であって、2つの開口端を有する円筒形状の外側部品と、底部を有する円筒形状の内側部品であって、乳化装置の外側部品内に内側部品が入れ子になるのを可能にするのに十分な円周を有し、内側部品および外側部品が自由に摺動することができる、円筒形状の内側部品と、外側部品の内面または内側部品の外面の少なくとも1つの溝であって、入れ子にされたときに外側部品と内側部品との間のギャップよりも大きい高さを有する少なくとも1つの溝と、底部に隣接する、内側部品の少なくとも1つの穴と、外側部品の内面または内側部品の外面の半径方向分配チャネルと、外側部品の内面の基部または内側部品の外面の基部にある半径方向ノズルチャネルとを備える乳化装置を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、乳化装置は射出成形される。いくつかの実施形態では、乳化装置は、使用するために容器に挿入される。いくつかの実施形態では、容器はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)管である。いくつかの実施形態では、容器は、複数のウェルを有するプレートである。例えば、プレートは、1~40個のウェル、20~60個のウェル、40~80個のウェル、または60~100個のウェルを有していてもよい。いくつかの実施形態では、プレートは100個より多い数のウェルを有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝は、外側部品の内面にある。あるいは、少なくとも1つの溝は、内側部品の外面にあってもよい。いくつかの実施形態では、内側部品が外側部品内に入れ子になっているときに、少なくとも1つの溝は閉じられてチャネルを形成する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝は、乳化装置が使用中であるときに、鉛直である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝は、乳化装置の使用中に水平である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝は、約1mmの長さ、0.01mm~0.5mmの範囲から選択される深さ、および0.04mm~2mmの範囲から選択される幅を有する。いくつかの実施形態では、深さは約0.025mmである。いくつかの実施形態では、幅は約0.1mmである。
【0018】
いくつかの実施形態では、内側部品の半径および外側部品の半径は、少なくとも1つの溝の深さ未満だけ異なる。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは、内側部品の底部から約0.5mm上方にある。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは、約10μm~約0.2mmの深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは約0.2mmの深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは約10μmの深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは10μmの深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは、10μm未満の深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは、約10μm~約50μm、約40μm~約80μm、約70μm~約110μm、約100μm~約140μm、約130μm~約170μm、および約160μm~約200μmからなる群から選択される範囲内の深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199μmからなる群から選択される深さを有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは、約10μmの幅を有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは10μmの幅を有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは、10μm未満の幅を有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは、約10μm~約50μm、約40μm~約80μm、約70μm~約110μm、約100μm~約140μm、約130μm~約170μm、および約160μm~約200μmからなる群から選択される範囲内の幅を有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネルは、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198および199μmからなる群から選択される幅を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、半径方向ノズルチャネルは、少なくとも1つの溝と同じ深さである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝は、20:1の長さ対深さの比を有する。いくつかの実施形態では、内側部品の底部は中実である。いくつかの実施形態における、液滴形成中に気泡を捕捉するための中実な底部。いくつかの実施形態では、内側部品の底部は、円錐形状またはカップ形状の突出部を備える。いくつかの実施形態では、内側部品の底部は、円筒形状の突出部を備える。いくつかの実施形態では、円筒形状または円錐形状の突出部は開口部を備える。いくつかの実施形態では、内側部品の底部の開口部は、気泡を変位させて、液滴形成中により多くの液滴をもたらす。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの穴はスリットである。
【0021】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、アレイ状に配置された複数の乳化装置を提供する。いくつかの実施形態では、アレイは、1個より多い数のウェルを有するプレートである。いくつかの実施形態では、プレートは少なくとも96個のウェルを有する。いくつかの実施形態では、プレートは96個より多い数のウェルを有する。
【0022】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)のための液滴を生成する方法であって、本明細書に記載の乳化装置を、連続相を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)管またはマルチウェルプレートに挿入することと、液滴相を内側部品の貯蔵部にピペットで入れることによって、液滴フレーズが内側部品の穴を通って内側部品と外側部品との間の界面に分配され、それによって、液滴相を液滴として外側部品からPCR管内に放出することとを備える方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】乳化装置の組み立てのいくつかの実施形態を提供する図である。
【
図2A】外側部品のいくつかの実施形態の底面図を提供する図である。
【
図2B】外側部品のいくつかの実施形態の側面図を提供する図である。
【
図3A】内側部品のいくつかの実施形態を提供する図である。
【
図3B】内側部品のいくつかの実施形態を提供する図である。
【
図3C】内側部品のいくつかの実施形態を提供する図である。
【0024】
添付の図面は、本明細書における本開示のいくつかの実施形態を示しており、したがって、その範囲を限定すると見なされるべきではなく、本発明には他の等しく有効な実施形態を認めることができる。任意の実施形態の要素および特徴は、再度言及しなくても他の実施形態にある場合があり、可能な場合には、複数の図において共通する同等の要素を示すために同一の参照番号が使用されていることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書の開示は、大量生産において射出成形されることができる乳化装置を形成するための、2つの円筒形状部品の組み立て、すなわち外側部品内に入れ子になった内側部品の、いくつかの実施形態を記載する。いくつかの実施形態では、乳化装置は、内側部品と外側部品との間に非密封構造を有する。例えば、乳化装置を組み立てるために接着剤も溶接も使用されない。
【0026】
いくつかの実施形態では、入れ子になった内側部品および外側部品は、従来の乳化装置の設計上の欠点を解決する。例えば、従来技術の装置の多くで必要とされる高アスペクト比は、大量生産可能な部品に直接加工されることができない。対照的に、いくつかの実施形態では、乳化装置は、ポンプ、流体制御、またはロボットなどの、一体化された機器を有さない。あるいは、いくつかの実施形態では、乳化装置はシリンジポンプによって駆動される。いくつかの実施形態では、乳化装置は使い捨てである。
【0027】
図2Aおよび
図2Bはそれぞれ、外側部品4のいくつかの実施形態の底面図および側面図である。いくつかの実施形態では、外側部品4は、開いた底部11を有する円筒形のカップ形状の物体である。
【0028】
いくつかの実施形態では、外側部品は、内面7に少なくとも1本の鉛直溝8を備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1本の溝8は、内側部品1の外部にある。いくつかの実施形態では、複数の溝8nは、外側部品4の内面7または内側部品の外部にある。いくつかの実施形態では、溝8の各々は、その深さの少なくとも20倍の長さを有する。いくつかの実施形態では、溝8の各々は1mmの長さである。いくつかの実施形態では、溝8の各々の深さは0.025mmであって、かつ/または各溝8の幅は0.1mmである。
【0029】
いくつかの実施形態では、内側部品1は、中実な底部を有するカップ形状の物体である。いくつかの実施形態では、内側部品1は、底部に開口部を有する。いくつかの実施形態では、貯蔵部9は、内側部品1の内部である。いくつかの実施形態では、内側部品1は、外側部品4の内側半径よりも0.01mm小さい外側半径を有する。いくつかの実施形態では、内側部品1は穴3を備える。いくつかの実施形態では、内側部品1は、底部に隣接する、2つの穴、3つの穴、4つの穴、または複数の穴3nを備える。あるいは、いくつかの実施形態では、穴3または複数の穴3nは、内側部品1の底部にある。いくつかの実施形態では、穴3は、内側部品1に対して鉛直に延び、スリットを形成する。いくつかの実施形態では、内側部品1の底部は、気泡を変位または排除する(例えば、円筒形状のまたは円錐形状の)突出部13を有する。いくつかの実施形態では、内側部品1の底部は、気泡を捕捉する突出部13(例えば、カップ)を有する。いくつかの実施形態では、突出部13は、円筒形状(
図3A)、カップ形状(
図3B)、または円錐形状(
図3C)を有していてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、動作中、液滴相は貯蔵部9に追加され、1つまたは複数の貫通穴3nによって内側部品1と外側部品4との間の界面に分配される。いくつかの実施形態では、液滴相は、内側部品1の外部の半径方向分配チャネル2によって分配される。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネル2は、深さが0.2mmであり、装置の基部から0.5mm上方にある。いくつかの実施形態では、0.5mmの間隔は、半径方向分配チャネル2の長さ対高さの比20:1をもたらす。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネル2は、約10μm~約0.2mmの深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネル2は約10μmの深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネル2は10μmの深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネル2は、10μm未満の深さを有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネル2は、約10μm~約0.2mmの幅を有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネル2は、約10μmの幅を有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネル2は10μmの幅を有する。いくつかの実施形態では、半径方向分配チャネル2は、10μm未満の幅を有する。いくつかの実施形態では、外側部品4の内面7の底部の半径方向溝12は、ステップ乳化テラス型ノズルを提供する。いくつかの実施形態では、半径方向溝12の深さは0.025mmである。
【0031】
いくつかの実施形態では、乳化装置は、連続相中の液滴相の接触角が、120°よりも大きい材料で製造される。いくつかの実施形態では、120°未満の接触角は、液滴相が乳化装置を濡らし、レイリープラトー不安定性を示さないという結果をもたらす。いくつかの実施形態では、乳化装置はポリプロピレン製である。ポリプロピレンは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ozkan et al.2017 Surf.Topogr.:Metrol.Prop.5 024002に示されているように、約151°のヘキサデカン中水接触角を有する。疎水性としても知られるポリプロピレンの特定の濡れ性は、内側部品と外側部品とを接合するのに十分な、単純な圧入シールを形成する。いくつかの実施形態では、乳化装置は、油相としてアルカンを使用する。いくつかの実施形態では、乳化装置は、ポリプロピレンの、高いアルカン中水接触角(151°)を利用して、新規の界面活性剤または表面処理の必要性を排除することにより、製造中のコスト削減をもたらす。いくつかの実施形態では、乳化装置はポリカーボネート製である。ポリカーボネートは、140°のアルカン中水接触角を有する。ポリカーボネートは、ポリプロピレンと比較して、ガラス転移温度がより高く、収縮率がより低いため、ポリプロピレンより親和性の高い射出成形部品をもたらす。
【0032】
いくつかの実施形態は、複数の乳化装置を含む。いくつかの実施形態では、複数の乳化装置は、アレイ状に配置される。いくつかの実施形態では、複数の乳化装置は、マルチウェルプレート、例えば、24個のウェルフォーマット、48個のウェルフォーマット、96個のウェルフォーマット、または384個のウェルフォーマットに収めてもよい。
【0033】
I.装置の組み立て
図1はPCR管に挿入された乳化装置のいくつかの実施形態の分解図を提供する。いくつかの実施形態では、乳化装置は、内側部品1を外側部品4内に入れ子にすることによって組み立てられる。いくつかの実施形態では、内側部品1および外側部品4は、乳化装置が組み立てられるときに同心円状に入れ子になる。あるいは、内側部品1および外側部品4は、乳化装置が組み立てられるとき、内側および接線方向に入れ子になる。いくつかの実施形態では、内側部品1および外側部品4の半径方向の対称性は、従来技術に示される乳化装置(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Nie et al.Anal.Chem.2019,91,1779-1784)とは対照的に、乳化装置の組み立て中の位置合わせの必要性、及び乳化装置を一緒に保持するためのクランプ力の必要性を低減する。いくつかの実施形態では、乳化装置が組み立てられたときに、圧入シールが内側部品1と外側部品4との間にある。
【0034】
いくつかの実施形態では、乳化装置が組み立てられるとき、内側部品1と外側部品4との間のギャップは、ロバストな乳化を達成するように溝8の高さ未満である。
【0035】
いくつかの実施形態では、半径方向の幾何学的形状からもたらされる濡れ力が、乳化装置を駆動して、内側部品1の外部の円周と外側部品4の内面7の円周との間に均一な間隔を有するようにする。いくつかの実施形態では、内側部品1および外側部品4は、旋盤加工などの当技術分野で知られている鋳型製造技術を使用して高精度で製造され、強い力、制御された温度フラックス、および/または光学的可視化を含む検査技法に適している。
【0036】
いくつかの実施形態は、外側部品4の内面7に製造された少なくとも1つの溝8を含み、これは、内側部品1が外側部品内に入れ子になることによって乳化装置が組み立てられるときに閉じられたチャネルを形成する。あるいは、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝8は、内側部品1の外部に形成され、内側部品1が外側部品4内に入れ子になることによって乳化装置が組み立てられたときに閉じられたチャネルを形成する。いくつかの実施形態では、複数の溝8nが外側部品4の内面7に形成されるか、または内側部品1の外部に形成される。
【0037】
いくつかの実施形態では、乳化装置は、使用のために容器内に収まる。例えば、容器は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)管5などの管であってもよく、または容器はマルチウェルプレートであってもよい。いくつかの実施形態では、内側部品1は、外側部品4内に入れ子にされ、市販のDNA単離キットに見られるインサートと同様にPCR管5に挿入される。いくつかの実施形態では、外側部品4は、PCR管5の内周よりも大きい外周を有するリップ10を含む。いくつかの実施形態では、リップ10は、PCR管5内への外側部品4の浸漬を防止する。いくつかの実施形態では、容器は連続相を含む。いくつかの実施形態では、乳化装置は、連続相に少なくとも部分的に浸漬され、内側部品1と外側部品4との間の界面が連続相で濡れている。
【0038】
いくつかの実施形態では、乳化装置は、遠心力によって密封されたマイクロ流体チャネルを備える。いくつかの実施形態では、乳化装置は、内側部品1および外側部品4が、遠心力によって駆動される容器内の適切な位置にあるときに開く入口ポートを備える。いくつかの実施形態では、乳化装置はシリンジポンプによって駆動される。いくつかの実施形態では、乳化装置は、射出成形工具製造において放電加工(EDM)を利用することによって、5~50μmの浅い深さのチャネルを有する。
【0039】
II.乳化方法
いくつかの実施形態では、乳化装置の動作のために、液滴相は、内側部品1の貯蔵部9内にピペットで注入され、乳化装置から液滴として放出され、容器内に沈降することが可能である。いくつかの実施形態では、乳化装置は、低密度油相に水滴を直接挿入する。対照的に、従来技術は、相間の空気のギャップを使用する。いくつかの実施形態では、本明細書の乳化装置を使用する乳化方法は、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)油または3M社のFluorinert(TM)油などのフッ素油の代わりに、ヘキサデカンのようなアルカンを油として使用する。
【0040】
いくつかの実施形態では、液滴相は、正の空気圧または遠心力のいずれかによる貯蔵部9内の圧力によって駆動されてもよい。形成された液滴の体積は、内側部品にピペットで注入された液滴相の体積である。液滴が形成されると、液滴は容器内の連続相を変位させる。オーバーフローを防止するために、外側部品と容器との間の空間の体積は、貯蔵部の体積以上でなければならない。この空間は、装置動作の開始時に空気で占有されるべきである。いくつかの実施形態では、乳化装置はシリンジポンプによって駆動される。
【0041】
本方法のいくつかの実施形態では、結果はバルク蛍光によって測定される。
【0042】
III.定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本技術が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様または同等の方法および材料を、開示された技術の実施形態の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義も含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0043】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上明らかにそうでないことを指示しない限り、複数を含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、「アレイ」という用語は、乳化を実行するために使用することができる複数のパーティションを有する容器を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「射出成形された」という用語は、材料の溶融相を、物品を形成する鋳型に注入することを含む、物品の製造技術を指す。
【0046】
均等物
本明細書で言及される構成のすべての範囲は、それらの間の範囲を含み、終点を含むことも除外することもできる。任意の、含まれる範囲は、それらの間の(または1つの元の終点を含む)、言及された桁の整数値であり、またはその次に小さい桁である。例えば、下限値が0.2である場合、任意の、含まれる終点は、0.3、0.4~1.1、1.2など、加えて、1、2、3などとすることができる。上限値が8である場合、任意に含まれる終点は、7、6など、加えて7.9、7.8などとすることができる。3つ以上などの片側境界も同様に、言及された桁の整数値、または1つ小さい桁から始まる一貫した境界(または範囲)を含む。例えば、3以上は、4または3.1以上を含む。
【0047】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、「いくつかの実施形態」、または「ある実施形態」への言及は、記載された特徴、構造、材料、または特性が本開示のいくつかの実施形態に含まれることを示す。したがって、本明細書全体を通して、「1つまたは複数の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」、「いくつかの実施形態では」、または「ある実施形態では」などの語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。
【0048】
本明細書で言及された特許出願および特許の公報、ならびに他の非特許文献は、あたかも個々の公報または参考文献の各々が、参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように言及された部分全体に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本出願が優先権を主張するいかなる特許出願もまた、公報および参考文献について上述した手法で、参照により本明細書に組み込まれる。