(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B17/00 E
G08B17/00 L
(21)【出願番号】P 2023023958
(22)【出願日】2023-02-20
(62)【分割の表示】P 2018197096の分割
【原出願日】2018-10-19
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】山本 崇
(72)【発明者】
【氏名】茂木 稜子
(72)【発明者】
【氏名】石田 憲
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-339172(JP,A)
【文献】特開平10-334382(JP,A)
【文献】特開2007-219870(JP,A)
【文献】特開2000-268276(JP,A)
【文献】特開2018-112951(JP,A)
【文献】特開平10-214390(JP,A)
【文献】特開2015-135584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機で通常モードから点検モードに切替えられたときに、前記通常モードで設定された所定の設定が停止状態に切替わる火災報知設備であって、
前記受信機は、火災発報中に前記通常モードから前記点検モードへ切替え操作された場合に、前記点検モードへの切替えに先立ち、前記点検モードの設定状態に切替わったときに現在発生している事象により起きる事態が停止することを表示して前記点検モードへの切替えを実行するか否かを選択させ、前記実行が選択された場合に、前記点検モードへ切替えるモード切替制御手段を備えたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記通常モードでは、地区音響停止設定、機器連動停止設定、移報停止設定の何れか又はすべてを含む組み合わせの停止設定が解除されており、
前記点検モードでは、前記地区音響停止設定、前記機器連動停止設定、及び前記移報停止設定のすべてが停止設定されており、
前記現在発生している事象により起きる事態とは、前記通常モードで停止設定が解除されている地区音響、機器連動、又は移報の少なくとも何れかであることを特徴とする火災報知設備。
【請求項3】
請求項2記載の火災報知設備に於いて、
前記モード切替制御手段は、
現在発生している事象により起きる事態として、前記地区音響、前記機器連動、及び前記移報のすべてを同時に表示可能であり、
前記通常モードで停止設定が解除されている前記地区音響、前記機器連動、及び前記移報について、現在発生している事象により起きる事態を表示することを特徴とする火災報知設備。
【請求項4】
請求項2記載の火災報知設備に於いて、
前記モード切替制御手段は、前記現在発生している事象により起きる事態として、動作させる地区音響装置、及び又は機器連動する機器を表示することを特徴とする火災報知設備。
【請求項5】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記モード切替制御手段は、表示中の事態の原因となっている事象の復旧を検知したとき、復旧した前記事象により起きる事態を消去した表示に自動更新することを特徴とする火災報知設備。
【請求項6】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、前記中継盤から引き出された信号回線に火災感知器が接続され、前記中継盤で火災を検出した場合に、当該中継盤から前記受信機に通知して火災警報を出力させる分散システムが構成されていることを特徴とする火災報知設備。
【請求項7】
請求項6記載の火災報知設備に於いて、
前記現在発生している事象とは、前記受信機と前記中継盤の通信異常状態を含むことを特徴とする火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機から引き出された信号回線に火災感知器を接続して火災を監視する火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R型として知られた火災報知設備にあっては、受信機から引き出された信号回線に、固有のアドレスが設定された伝送機能を有する火災感知器等の端末を接続し、火災発生時には、火災感知器からの火災割込みに基づき、受信機から検索コマンドを発行して発報した火災感知器のアドレスを特定して煙濃度や温度等の火災データを収集し、火災データが所定の火災閾値を超えた場合に火災と判断し、火災代表灯を点灯して主音響警報を出力し、更に、受信機に設けられたディスプレイに、火災発生メッセージ、火災発生場所、火災発生時刻、受信機操作ガイダンス等を表示した火災警報画面を表示させている。
【0003】
このような火災報知設備の施工では、防災センター等に設置した受信機から引き出された信号回線に固有のアドレスが設定された火災感知器や防排煙機器等の端末を接続する工事を行い、接続の済んだ端末については動作を確認する試験等を行い、最終的に行われる消防検査に向けて工事を進めている。
【0004】
ところで、火災報知設備の施工工事の際に、受信機は施工モードに切り替えられており、例えば地区音響停止、連動停止、移報停止等の停止設定を行った状態で火災感知器の試験発報を行なっている。また、受信機を施工モードから通常モードに戻すと、通常モードで定位として設定されていた例えば地区音響停止、連動停止、移報停止の各設定停止を解除した元の状態に戻すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-219870号公報
【文献】特開2000-268276号公報
【文献】特開平10-334382号公報
【文献】特開2003-203280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の火災報知設備の受信機にあっては、例えば地区音響を停止設定して火災感知器を試験発報を行っている状態で通常モードに戻したときに、通常モードで設定していた地区音響停止設定が解除された状態に戻った場合、火災感知器が試験復旧せずに発報中であったとすると、地区音響警報が鳴り出してしまうことがあり、火災報知設備を設置している例えばビル全体が騒然となってしまう問題がある。
【0007】
また、移報停止を設定して火災感知器を試験発報を行っている状態で通常モードに戻ししたときに、通常モードで設定していた移報停止設定が解除された状態に戻った場合、火災感知器が試験復旧せずに発報中であったとすると、消防署に対する自動通報が行われ、消防隊が駆け付けてしまう事態となる問題がある。
【0008】
本発明は、受信機で施工モードから通常モードに戻したときに起きる不測の事態の発生を未然に防止可能とする火災報知設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(火災報知設備)
本発明は、受信機で通常モードから点検モードに切替えられたときに、通常モードで設定された所定の設定が停止状態に切替わる火災報知設備であって、
受信機は、火災発報中に通常モードから点検モードへ切替え操作された場合に、点検モードへの切替えに先立ち、点検モードの設定状態に切替わったときに現在発生している事象により起きる事態が停止することを表示して点検モードへの切替えを実行するか否かを選択させ、実行が選択された場合に、点検モードへ切替えるモード切替制御手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
(停止設定の解除)
通常モードでは、地区音響停止設定、機器連動停止設定、移報停止設定の何れか又はすべてを含む組み合わせの停止設定が解除されており、
点検モードでは、地区音響停止設定、機器連動停止設定、及び移報停止設定のすべてが停止設定されており、
現在発生している事象により起きる事態とは、通常モードで停止設定が解除されている地区音響、機器連動、又は移報の少なくとも何れかである。
【0011】
(発生する事象の一覧表示)
モード切替制御手段は、
現在発生している事象により起きる事態として、地区音響、機器連動、及び移報のすべてを同時に表示可能であり、
通常モードで停止設定が解除されている地区音響、機器連動、及び移報について、現在発生している事象により起きる事態を表示する。
【0012】
(発生する事態の詳細表示)
モード切替制御手段は、現在発生している事象により起きる事態として、動作させる地区音響装置、及び又は機器連動する機器を表示する。
【0013】
(表示の更新)
モード切替制御手段は、表示中の事態の原因となっている事象の復旧を検知したとき、復旧した事象により起きる事態を消去した表示に自動更新する。
【0014】
(分散システムの中継盤)
受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、中継盤から引き出された信号回線に火災感知器が接続され、中継盤で火災を検出した場合に、当該中継盤から受信機に通知して火災警報を出力させる分散システムが構成されている。
【0015】
(分散システムの通信異常)
現在発生している事象とは受信機と中継盤の通信異常状態を含む。
【発明の効果】
【0016】
(基本的な効果)
本発明は、受信機で通常モードから点検モードに切替えられたときに、通常モードで設定された所定の設定が停止状態に切替わる火災報知設備であって、受信機は、通常モードから点検モードへ切替え操作された場合に、点検モードへの切替えに先立ち、点検モードの設定状態に切替わったときに現在発生している事象により起きる事態を表示して点検モードへの切替えを実行するか否かを選択させ、実行が選択された場合に、点検モードへ切替えるモード切替制御手段を備えたため、利用者が受信機で通常モードから点検モードに切替え操作した場合、点検モードへの切替えに先立ち、モードに切替わったときに発生する事態が表示され、利用者は、点検モードに切替えたときに起きる事態を事前に把握できるので、適切な予防対処をとることができる。
【0017】
(停止設定の解除による効果)
また、通常モードでは、地区音響停止設定、機器連動停止設定、移報停止設定の何れか又はすべてを含む組み合わせの停止設定が解除されており、点検モードでは、地区音響停止設定、機器連動停止設定、及び移報停止設定のすべてが停止設定されており、現在発生している事象により起きる事態とは、通常モードで停止設定が解除されている地区音響、機器連動、又は移報の少なくとも何れかであるため、地区音響停止設定、機器連動停止設定及び移報停止設定のすべてが停止設定されている施工モードから、地区音響停止設定、機器連動停止設定、移報停止設定の何れか又はすべてを含む組み合わせの停止設定が解除されている通常モードに切替わることにより起きる事態を事前に把握して適切な予防対処をとることができる。
【0018】
(発生する事象の一覧表示による効果)
また、モード切替制御手段は、現在発生している事象により起きる事態として、地区音響、機器連動、及び移報のすべてを同時に表示可能であり、通常モードで停止設定が解除されている地区音響、機器連動、及び移報について、現在発生している事象により起きる事態を表示するため、点検モードから通常モードに切替わったときに、地区音響、機器連動、及び移報について、現在発生している事象により起きる事態を一覧表示により確認することで、通常モードに切替わることにより起きる事態を漏れなく把握して適切な予防対処ができる。
【0019】
(発生する事態の詳細表示による効果)
また、モード切替制御手段は、現在発生している事象により起きる事態として、動作させる地区音響装置、及び又は機器連動する機器を表示するため、通常モードに戻したときに現在発生している事象により動作させる地区音響装置及び又は機器連動する機器の詳細情報が表示され、通常モードに戻ることにより起きる地区音響及び又は機器連動を具体的に把握して適切な予防対処ができる。
【0020】
(表示の更新による効果)
また、モード切替制御手段は、表示中の事態の原因となっている事象の復旧を検知したとき、復旧した事象により起きる事態を消去した表示に自動更新するため、通常モードに切替わることにより起きる事態は、常に、現在発生している事象により起きる事態にリアルタイムに対応しており、通常モードに切替わることにより起きる事態を正確に把握して適切な予防対処ができる。
【0021】
また、試験による発報が時間経過で復旧した場合など全ての事態が復旧している場合には、地区音響、機器連動、及び移報が行われることが表示されないことから、特に意識することなく安心して通常モードに戻すことが可能となる。
【0022】
(地区音響停止設定の解除に対する効果)
また、モード切替制御手段は、通常モードで地区音響停止設定が解除されており、点検モードから通常モードの地区音響停止設定の解除に戻ったときに、現在発生している火災感知器の火災発報により起きる地区音響警報が出力される事態を表示して通常モードへの戻しを判断させるようにしたため、通常モードに戻ることにより起きる地区音響警報の鳴動を事前に把握して、火災発報の復旧を待って通常モードに戻すという適切な予防対処をとることができる。
【0023】
(連動停止設定の解除による効果)
また、モード切替制御手段は、通常モードで連動停止設定が解除されており、点検モードから通常モードの連動停止設定の解除に戻ったときに、現在発生している火災感知器の火災発報により起きる連動制御が行われる事態を表示して通常モードへの戻しを判断させるようにしたため、通常モードに戻ることにより起きる防火シャッターや防火戸等の防災機器の不必要な作動を事前に把握して、火災発報の復旧を待って通常モードに戻すという適切な予防対処をとることができる。
【0024】
(移報停止設定の解除による効果)
また、モード切替制御手段は、通常モードで移報停止設定が解除されており、点検モードから通常モードの移報停止設定の解除に戻ったときに、現在発生している火災感知器の火災発報により起きる移報制御が行われる事態を表示して通常モードへの戻しを判断させるようにしたため、通常モードに戻ることにより起きる例えば消防機関への自動通報を事前に把握して、火災発報の復旧を待って通常モードに戻すという適切な予防対処をとることができる。
【0025】
(分散システムの中継盤の効果)
また、受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、中継盤から引き出された信号回線に火災感知器が接続され、中継盤で火災を検出した場合に、当該中継盤から受信機に通知して火災警報を出力させる分散システムが構成されているため、分散システムの中継盤についても、利用者が受信機からの操作で中継盤を点検モードから通常モードに切替えた場合、通常モードへの切替えに先立ち、通常モードに切替わったときに発生する事態が表示され、利用者は、通常モードに切替わったときに起きる事態を事前に把握できるので、適切な予防対処をとることができる。
【0026】
(分散システムの通信異常による効果)
また、現在発生している事象とは、受信機と中継盤の通信異常状態を含むため、受信機で通常モードに切替わったときに分散システムに固有な受信機と中継盤の通信異常状態により起きる事態を表示することで、通信異常を解消した後に通常モードに切替えるといった適切な予防対処ができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明が適用されるR型の火災報知設備の概要を示した説明図
【
図2】施工モード終了のガイダンス画面を示した説明図
【
図3】ガイダンス画面の詳細釦を開いて地区ベルが鳴る事態が起きることを示した説明図
【
図4】通常モードで移報停止設定のみを解除していたときの施工モード終了のガイダンス画面を示した説明図
【
図5】ガイダンス画面の詳細釦を開いて防火シャッターを閉鎖する事態が起きることを示した説明図
【
図6】受信機と中継盤で構成された分散システムを示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
[火災報知設備]
図1は本発明が適用されるR型の火災報知設備の概要を示した説明図である。
【0029】
(実施形態の基本的概念)
本実施形態による火災報知設備は、施工工事では受信機に施工モードを設定して、信号回線に対する火災感知器や防排煙機器等の端末を接続する工事、接続の済んだ端末については動作を確認する試験等の設備工事を進めており、施工モードでは感知器試験による地区音響鳴動、連動制御、移報制御等を停止するためスイッチ操作により停止設定を行っており、施工工事が完了に近づいたとき又は完了したときに受信機で施工モードから通常モードに戻すと、通常モードで設定していた停止設定を解除したスイッチ定位の設定状態に戻るようにしている。
【0030】
しかしながら、施工モードで行っていた発報試験で発報した火災感知器が復旧する前に通常モードに戻すと、停止設定の解除となることで、火災発報に基づき地区音響鳴動、防排煙機器の連動制御、消防署への自動通報が行われるという不測の事態が発生することから、本実施形態にあっては、施工モードから通常モードへの戻しに先立ち、即ち受信機による施工モードの終了操作の途中段階で、通常モードの設定状態に戻ったときに地区音響鳴動、防排煙機器の連動制御、消防署への自動通報等が起きる旨を表示することで、利用者に通常モードに戻したときに起きる事態を事前に把握できるようにし、このような事態が起きないように、例えば試験発報している火災感知器の復旧を待って通常モードに戻すといった適切な予防対処をとることを可能とするものである。以下、具体的に説明する。
【0031】
(火災報知設備の概要)
図1に示すように、施工工事が完了して運用状態にある火災報知設備は、火災報知設備が設置された建物の一階の管理人室などには例えばR型の受信機10が設置され、受信機10から警戒区域に対し系統毎に分けて信号回線12-1~12-3が引き出されている。なお、以下の説明では、信号回線12-1~12-3を区別する必要がない場合は、信号回線12という場合がある。
【0032】
信号回線12-1には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する複数のアナログ火災感知器14が接続され、また、固有のアドレスが設定された伝送機能を有する中継器16から引き出された感知器回線17にオンオフ火災感知器18及び発信機20が接続されている。
【0033】
信号回線12-2には複数のアナログ火災感知器14の接続に加え、固有のアドレスが設定された伝送機能を有するアドレッサブル発信機22が接続されている。更に、信号回線12-3には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する中継器16を介して地区音響装置24a、防火シャッター(防火戸を含む)24b、排煙機器24c等の制御負荷が接続されている。
【0034】
ここで、信号回線12-1~12-3に接続されるアナログ火災感知器14、中継器16等の端末機器に設定される最大アドレス数を例えば255としており、1回線当り最大255台のアナログ火災感知器14を含む端末機器が接続できる。
【0035】
(受信機の機能構成)
受信機10には、メインCPU26と複数のサブCPU基板28-1~28-3が設けられ、サブCPU基板28-1~28-3にはサブCPU30-1~30-3と伝送部32-1~32-3が設けられている。
【0036】
メインCPU26とサブCPU30-1~30-3は、シリアル転送バス34で接続されており、相互にデータを送受信する。なお、以下の説明では、サブCPU30-1~30-3及び伝送部32-1~32-3を区別する必要がない場合はサブCPU30及び伝送部32という場合がある。
【0037】
メインCPU26には、液晶表示パネル等を用いたタッチパネル付きのディスプレイ36、火災、ガス漏れ、障害の代表灯、LED表示灯等が設けられた表示部40、火災監視や保守管理に必要な各種のスイッチが設けられた操作部38、スピーカが設けられた音響警報部42、及び、移報部44が接続されている。
【0038】
ここで、操作部38に設けられるスイッチとしては、地区音響停止スイッチ、連動停止スイッチ、移報停止スイッチ等の停止設定スイッチがあり、各停止設定スイッチは停止解除位置を定位としており、スイッチ操作を行うと停止解除が設定される。また、地区音響停止スイッチ、連動停止スイッチ、移報停止スイッチ等の停止設定スイッチは、通常モードと施工モードの各々で個別に停止と停止解除を設定することができ、通常モードと施工モードにおける停止又は停止解除はメモリに制御情報として記憶されており、施工モードから通常モードに戻すと通常モードで設定していた停止又は停止解除となり、一方、通常モードから施工モードに切り替えると施工モードで設定していた停止又は停止解除となる。
【0039】
また、操作部38には通常モードと施工モードを切り替えるモード切替スイッチが設けられるが、モード切替スイッチはディスプレイの画面操作によるモード切替スイッチとしても良い。
【0040】
メインCPU26にはプログラムの実行により実現される機能として火報制御部46、施工管理制御部48及びモード切替制御部50が設けられる。
【0041】
施工管理制御部48は火災報知設備の施工工事に伴い受信機10を施工モードに切り替えた場合に機能する。また、火報制御部46は火災報知設備の施工工事が完了して受信機10を通常モードに切り替えた運用中に機能する。
【0042】
モード切替制御部50は、操作部38又はディスプレイ36に画面表示したモード切替スイッチの操作により通常モードから施工モードへの切替え又は施工モードから通常モードへの切替えを制御し、特に、本実施形態にあっては、通常モードへの切替えに先立ち、通常モードの設定状態に戻ったときに起きる地区音響鳴動、防排煙機器の連動制御、消防署への自動通報等の事態をディスプレイ36に表示する制御を行う。
【0043】
また、移報部44からの移報信号は自動通報装置45に出力されており、移報信号を受信した自動通報装置45は電話回線を介して消防署に火災発生を自動通報する移報制御を行うようにしている。
【0044】
(受信機の火災監視制御)
火災報知設備の施工工事が完了して受信機10を通常モードに切り替えた運用中における火災監視制御は次のようになる。
【0045】
サブCPU基板28-1のサブCPU30-1を例にとると、サブCPU30-1は伝送部32-1に指示してアナログ火災感知器14との間で所定の通信プロトコルに従って信号を送受信することで、火災監視制御を行っている。
【0046】
サブCPU30-1による火災監視制御は、通常の監視中にあっては、一定周期毎に、伝送部32-1に指示して、一括AD変換コマンドを含むブロードキャストの一括AD変換信号を送信しており、この一括AD変換信号を受信したアナログ火災感知器14は、煙濃度又は温度をセンサデータとして検出して保持する。続いて、サブCPU30-1は、端末アドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を送信している。
【0047】
アナログ火災感知器14は自己アドレスに一致するアドレスを持つ呼出信号を受信すると、そのとき保持しているセンサのアナログデータを含む応答信号を伝送部32-1に送信する。また、アナログ火災感知器14はセンサのアナログデータが所定の火災判定レベルより低い所定の火災注意レベルに達したことを検出すると伝送部32-1に対し火災割込み信号を送信する。
【0048】
サブCPU30-1は伝送部32-1を介して火災割込み信号を受信すると、グループ検索コマンド信号を送信して火災を検出しているアナログ火災感知器14を含むグループを特定し、続いて、火災を検出しているアナログ火災感知器14のアドレスを特定してセンサのアナログデータを集中的に収集し、シリアル転送バス34を介してメインCPU26に送信する。
【0049】
メインCPU26はサブCPU30-1から受信したアナログデータを所定の火災判定レベルと比較しており、アナログデータが火災判定レベルに達した場合に火災と判定し、表示部40の火災代表灯を点灯し、音響警報部42のスピーカから火災発生を示す所定の主音響警報を出力させ、ディスプレイ36に火災が検出された感知器アドレスに基づき火災発生場所を含む火災警報情報を表示させ、更に、移報部44により火災移報信号を外部に出力して所定の移報制御等を行わせる。
【0050】
サブCPU基板28-2に設けられたサブCPU30-2と伝送部32-2による火災監視制御も、前述したサブCPU基板28-1の場合と同じになる。また、サブCPU基板28-3に設けられたサブCPU30-3と伝送部32-3については、メインCPU26で火災が検知された場合に予め記憶された連動情報に基づき地区音響装置24a、防火シャッター24b、防排煙機器24c等の連動制御を行う。
【0051】
(火災報知設備の施工)
図1に示した火災報知設備の施工工事は、まず管理人室等に受信機10を設置し、続いて受信機10から警戒区域に向けて信号回線12-1~12-3を引き出して敷設する配線工事を行う。
【0052】
続いて、受信機10から引き出された信号回線12-1~12-3に、アナログ火災感知器14、オンオフ火災感知器18が接続された中継器16、アドレッサブル発信機22、地区音響装置24a、防火シャッター24b、防排煙機器24c等が接続された中継器16等の端末を接続する施工作業を行い、接続後に試験を行って正常に動作することを確認し、全ての施工工事が終了したら消防検査が行われ、これに合格した場合に、受信機10を火災監視モードに切り替えて運用を開始し、火災監視制御に入ることになる。
【0053】
施工モードで機能する施工管理制御部48は、信号回線12-1~12-3に対するアナログ火災感知器14、オンオフ火災感知器18が接続された中継器16、アドレッサブル発信機22、地区音響装置24a、防火シャッター24b、防排煙機器24c等の端末の施工状況を示す施工端末情報を生成して管理すると共に施工端末情報に基づき施工状況管理画面を生成してディスプレイに表示する制御を行い、これにより工事関係者は工事の進捗状況を確認しながら作業をすすめることができる。
【0054】
[モード切替制御]
受信機10のメインCPU26に設けられたモード切替制御部50は、操作部38又はディスプレイ36に画面表示したモード切替スイッチの操作により通常モードと施工モードの切替えを制御し、通常モードへの切替えに先立ち、通常モードの設定状態に戻ったときに起きる事態をディスプレイ36に表示する制御を行う。
【0055】
図2は通常モードへの戻しに先立って表示される施工モード終了のガイダンス画面を示した説明図である。
図2に示すように、ディスプレイ36の画面52には、施工モードで現在発生している事象を示す発生事象54として地区番号「00-01-007」」、発生事象「火災」、端末名称「火災用中継器」が表示され、続いて、施工モード終了のガイダンス画面55が表示される。なお、発生事象54の内容は、
図1のオンオフ火災感知器18を感知器回線17を介して接続している火報用の中継器16による火災発報の検出状態を示している。
【0056】
施工モード終了のガイダンス画面55は、ガイダンス情報56として、問合せ「施工モードを終了しますか?」、現在発生中の事象「現在、火災発報中です」、及び、「終了すると、施工モードに移行する前のスイッチ状態となります」が表示される。ここで「施工モードに移行する前のスイッチ状態」とは、通常モードで設定していたスイッチ状態であり、例えば、操作部38に設けられた地区音響停止スイッチ、連動停止スイッチ、移報停止スイッチの停止又は停止解除のスイッチ状態を意味する。
【0057】
ガイダンス情報56に続いては、通常モードで、例えば、地区音響停止設定、移報停止設定、及び機器連動停止設定の全ての停止設定が解除されていたとすると、通常モードに戻したときに、現在発生している事象である「現在、火災発報中です」により起きる事態として、地区音響57a、移報57b及び機器連動57cが表示される。
【0058】
本実施形態では、地区音響57aには「ベルが鳴ります」が表示され、移報57bには「消防署に自動通報します」が表示され、機器連動57cには「防火シャッター等が閉鎖します」が表示される。
【0059】
地区音響57a、移報57b及び機器連動57cの表示は、通常モードで解除している停止設定に対応しており、地区音響停止、移報停止設定、及び機器連動停止設定の解除に対応して地区音響57a、移報57b及び機器連動57cの何れか又はその組み合わせが表示される。
【0060】
また、地区音響57aと機器連動57cに対応して詳細釦58a,58cが設けられ、利用者が詳細釦58a,58cをタッチ操作すると、通常モードで停止解除を設定していた場合に現在発生中の事象「火災発報中」によって起きる事態の詳細をポップアップ形式により表示させる。
【0061】
更に、施工モード終了のガイダンス画面55の表示中に、現在発生している事象である火災発報が復旧したときは、ガイダンス情報56の「現在、火災発報中です」の表示および通常モードに戻ったときに起きる事態を示す地区音響57a、移報57b、機器連動57cの表示が消去された画面に自動更新され、通常モードに戻しても問題となる事態が発生しないことを確認可能とする。
【0062】
なお、本実施形態でディスプレイ36に画面表示される釦とは、用途、機能などを図や絵柄、簡単な文字で表したアイコンとしての機能を備え、併せて、タッチ操作により対応する処理動作を実行させる操作釦(ツール釦)としての機能を併せて備える。
【0063】
施工モード終了のガイダンス画面55に「はい」釦60と「いいえ」釦62が配置されており、利用者は詳細釦58を開いて通常モードに戻った場合に起きる事態を確認し、必要な場合は防止対策を行い、「はい」釦60をタッチ操作すると、通常モードに切り替わり、火災監視制御に移行する。
【0064】
(地区ベル鳴動)
図3はガイダンス画面の詳細釦を開いて地区ベルが鳴る事態が起きることを示した説明図である。
図3に示すように、施工モード終了のガイダンス画面55で
図2に示した詳細釦58aをタッチ操作すると、詳細ガイダンス64aとして地区名一覧としての「オフィス棟、地下階」に続いて「地区ベルが鳴ります」が表示される。
【0065】
このため利用者は、このまま通常モードに戻すとオフィス棟及び地下階の地区ベルが鳴って騒然とする不測の事態が起きることを事前に知り、現在発生している事象である「現在、火災発報中です」から例えば試験治具を使用して試験発報した火災感知器から煙が抜けきらずに復旧していないと判断し、発生事象54及びガイダンス情報56の中の「現在、発報中です。」の表示が火災感知器の復旧を示す内容に変わることを確認した後、「はい」釦60をタッチ操作して通常モードに戻すこととなり、通常モードに戻っても地区ベルが鳴動するという予測しない事態が起きてしまうことを確実に防止できる。
【0066】
(自動通報)
図4は通常モードで移報停止設定のみを解除していたときの施工モード終了のガイダンス画面を示した説明図である。
図4に示すように、施工モード終了のガイダンス画面55では、通常モードで移報停止スイッチの停止解除が設定されていることから、ガイダンス情報56に続いて移報57bとして「消防署へ自動通報します」が表示される。
【0067】
このため利用者は、このまま通常モードに戻すと消防署に自動通報されるという不測の事態が起きることを事前に知り、発生事象54及びガイダンス情報56の中の「現在、発報中です。」の表示が例えば試験発報した火災感知器の復旧を示す内容に変わることを確認した後、「はい」釦60をタッチ操作して通常モードに戻すことで、消防署に自動通報されるという予測しない事態が起きてしまうことを確実に防止できる。
【0068】
(連動制御)
図5はガイダンス画面の詳細釦を開いて防火シャッターが閉鎖する事態が起きることを示した説明図である。
図5に示すように、施工モード終了のガイダンス画面55で
図2に示した詳細釦58cをタッチ操作すると、このとき通常モードで連動停止スイッチの停止解除が設定されていることから、詳細ガイダンス64cとして「オフィス棟の防火シャッターを閉鎖します」が表示される。
【0069】
このため利用者は、このまま通常モードに戻すと防火シャッターが閉鎖されるという不測の事態が起きることを事前に知り、発生事象54及びガイダンス情報56の中の「現在、発報中です。」の表示が例えば試験発報した火災感知器の復旧を示す内容に変わることを確認した後、「はい」釦60をタッチ操作して通常モードに戻すことで、防火シャッターが突然閉鎖されて人身事故等の危険な状態を招くといった予測しない事態が起きてしまうことを確実に防止できる。
【0070】
[分散システムのモード変更]
図6は受信機と中継盤で構成された分散システムを示した説明図である。監視対象とする施設が複数の住棟に分かれる等して大規模になる場合には、
図6に示すように、防災センター等に設置した受信機10に対し例えば住棟毎に分けて中継盤100が設置され、受信機10と中継盤100の間はイーサネット(登録商標)等のネットワーク回線106により通信接続されている。
【0071】
受信機10は
図1に示したと同じであり、これに対し中継盤100は
図1の受信機10からディスプレイ36、表示部40、操作部38及び音響警報部42を含む操作表示機能を除いた構成となり、それ以外は、受信機10と基本的に同じとなり、警戒区域に引き出された伝送回線102にアナログ火災感知器14を含む端末機器が受信機10と同様に接続されている。
【0072】
受信機10には
図1と同様に、火報制御部46、施工管理制御部48及びモード切替制御部50の機能が設けられ、中継盤100には中継盤制御部104と施工管理制御部148の機能が設けられ、受信機10で通常モードと施工モードの間のモード切替えを行うと、ネットワーク回線106を経由した通信制御により中継盤100の連動したモード切替が行われる。
【0073】
また、受信盤10で施工モードから通常モードに戻す場合には、モード切替制御部50による受信機10のモード切替えに加え、中継盤100の各々について、通常モードへの切替えに先立ち
図3乃至
図5に示した施工モード終了のガイダンス画面55がディスプレイ36に画面表示され、詳細釦58を開いて通常モードに戻したときに起きる事態を確認してから施工モードを終了する「はい」釦6 0 のタッチ操作を行う。
【0074】
このため受信機10と中継盤100で構成された分散システムにおいても、受信機10からの操作で受信機10と連動して中継盤100を施工モードから通常モードに戻す場合、通常モードへの戻しに先立ち、中継盤100を通常モードに戻したときに発生する事態が表示され、利用者は、受信機10及び中継盤100を通常モードに戻したときに起きる事態を事前に把握できるので、適切な予防対処をとって通常モードに戻ることができる。
【0075】
また、受信機10と中継盤100で構成された分散システムでは、施工モードから通常モードに戻すときに発生する分散システムに固有な事象として、中継盤100の電源が入っていないときや受信機10と中継盤100を結ぶネットワーク回線106の影響により発生する通信異常状態があり、
図3に示した施工モード終了のガイダンス画面55におけるガイダンス情報56に現在発生中の事象として「現在、通信異常状態です」が表示され、その下の通常モードに戻した場合に発生する事態の表示として例えば「中継盤による火災監視ができなくなります」が表示される。
【0076】
このため受信機10と中継盤100との間の通信異常状態を解消する対処を行うことで、通常モードに戻したときに中継盤100による火災監視ができなくなる事態を回避することができる。
【0077】
[本発明の変形例]
(P型受信機)
上記の実施形態は、R型の受信機からの信号回線を介してR型の火災感知器を接続した火災報知設備を例にとっているが、P型の受信機から引き出した感知器回線にアドレスを設定すると共に伝送機能を備えたアドレッサブル火災感知器を接続した火災報知設備についても、同様に、受信機の施工管理制御部で生成管理されている施工端末情報を工事関係者の携帯端末に送信して施工状況管理サブ画面を表示させるようにしても良い。
【0078】
また、回線単位に火災を監視するP型の受信機から引き出した感知器回線にオンオフ型火災感知器を接続したP 型火災報知設備にも同様に適用できる。
【0079】
(その他)
本発明は、施工モードだけでなく、運用中の点検等で音響停止、移報停止、連動停止等の設定を行う点検モードにおいても適用可能である。
【0080】
また、通常モード時に発報中であるときに施工モードや点検モードに移行するときに音響停止、移報停止、連動停止等が行われる旨を表示し、注意喚起するようにしても良い。
【0081】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0082】
10:受信機
12-1~12-3:信号回線
14:アナログ火災感知器
16:中継器
17:感知器回線
18:オンオフ火災感知器
20:発信機
22:アドレッサブル発信機
24a:地区音響装置
24b:防火シャッター
24c:排煙機器
26:メインCPU
28-1~28-3:サブCPU基板
30-1~30-3:サブCPU
32-1~32-3:伝送部
34:シリアル転送バス
36:ディスプレイ
38:操作部
40:表示部
42:音響警報部
44:移報部
45:自動通報装置
46:火報制御部
48,148:施工管理制御部
50:モード切替制御部
52:画面
54:発生事象
55:ガイダンス画面
56:ガイダンス情報
57a:地区音響
57b:移報
57c:機器連動
58a,58c:詳細釦
60:「はい」釦
62:「いいえ」釦
64a,64c:詳細ガイダンス
100:中継盤
104:中継盤制御部
106:ネットワーク回線