(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】情報生成装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240529BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
(21)【出願番号】P 2023073957
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2021096359の分割
【原出願日】2015-03-04
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克彦
(72)【発明者】
【氏名】杉江 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 理
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏平
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-006597(JP,A)
【文献】特開2003-101462(JP,A)
【文献】特開2004-067031(JP,A)
【文献】特開2013-181777(JP,A)
【文献】特開2013-196170(JP,A)
【文献】特開2013-079889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される情報生成装置であって、
前記情報生成装置への接触の有無を判定する判定手段と、
前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、前記判定手段の判定結果とに基づき、前記車両の事故に関連する情報である事故情報を生成する生成手段と、を備え、
前記生成手段は、前記判定手段により前記情報生成装置への接触があると判定された場合に、前記事故情報の取扱いに係る所定の処理を行わない一方で、前記加速度センサが基準値以上の加速度を検出し、かつ、前記判定手段により前記情報生成装置への接触がないと判定された場合に、前記所定の処理を行うことを特徴とする情報生成装置。
【請求項2】
前記車両のルームミラーに内蔵され、またはルームミラーに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の情報生成装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記情報生成装置への接触を検出する接触センサの出力に基づいて、前記情報生成装置への接触を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の情報生成装置。
【請求項4】
前記情報生成装置とともに回転し、前記車両の前方風景を撮影する撮影手段と、
前記車両が走行中において前記撮影手段により撮影された
前方画像を解析し、当該前方画像に含まれ、前記車両の一部となる対象物を特定する特定手段と、をさらに備え、
前記判定手段は、前記特定手段により特定された対象物の前記前方画像中の位置の変化に基づいて前記情報生成装置への接触の有無を判定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項5】
前記事故情報を前記車両の外部に存在する外部装置へ送信する送信手段をさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項6】
車両に搭載される情報生成装置が実行する制御方法であって、
前記情報生成装置への接触の有無を判定する判定工程と、
前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、前記判定工程での判定結果とに基づき、前記車両の事故に関連する情報である事故情報を生成する生成工程と、を備え、
前記生成工程では、前記判定工程により前記情報生成装置への接触があると判定された場合に、前記事故情報の取扱いに係る所定の処理を行わない一方で、前記加速度センサが基準値以上の加速度を検出し、かつ、前記判定工程により前記情報生成装置への接触がないと判定された場合に、前記所定の処理を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
車両に搭載される情報生成装置を制御するコンピュータが実行するプログラムであって、
前記情報生成装置への接触の有無を判定する判定手段と、
前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、前記判定手段の判定結果とに基づき、前記車両の事故に関連する情報である事故情報を生成する生成手段として前記コンピュータを機能させ、
前記生成手段は、前記判定手段により前記情報生成装置への接触があると判定された場合に、前記事故情報の取扱いに係る所定の処理を行わない一方で、前記加速度センサが基準値以上の加速度を検出し、かつ、前記判定手段により前記情報生成装置への接触がないと判定された場合に、前記所定の処理を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記憶したことを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行情報を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に事故が発生した際に当該車両の位置情報などを含む事故情報を所定のサーバ装置へ無線送信する車載機が知られている。例えば、特許文献1には、車両への衝撃を検知する衝撃検知センサが車両への衝撃を検知したときに車両の位置などの走行情報を通報する車両事故通報装置が開示されている。また、特許文献2には、ハーフミラー、液晶ディスプレイ、及び車両前方を撮影するカメラユニットを備え、ルームミラーに対して取り付け自在なドライブレコーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-266294号公報
【文献】特開2014-229049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような事故通知機能を特許文献2に示されるようなルームミラー取付型のドライブレコーダに付加した場合、運転者がルームミラーの角度を調整したときに所定以上の衝撃がルームミラーに加わると、事故とは関係がない不要な走行情報を通報することになる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ユーザ操作に基づく衝撃を検知した場合であっても、不要に走行情報を生成するのを好適に抑制することが可能な情報生成装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、車両に搭載される情報生成装置であって、前記情報生成装置への接触の有無を判定する判定手段と、前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、前記判定手段の判定結果とに基づき、前記車両の事故に関連する情報である事故情報を生成する生成手段と、を備え、前記生成手段は、前記判定手段により前記情報生成装置への接触があると判定された場合に、前記事故情報の取扱いに係る所定の処理を行わない一方で、前記加速度センサが基準値以上の加速度を検出し、かつ、前記判定手段により前記情報生成装置への接触がないと判定された場合に、前記所定の処理を行うことを特徴とする。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、車両に搭載される情報生成装置が実行する制御方法であって、前記情報生成装置への接触の有無を判定する判定工程と、前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、前記判定工程での判定結果とに基づき、前記車両の事故に関連する情報である事故情報を生成する生成工程と、を備え、前記生成工程では、前記判定工程により前記情報生成装置への接触があると判定された場合に、前記事故情報の取扱いに係る所定の処理を行わない一方で、前記加速度センサが基準値以上の加速度を検出し、かつ、前記判定工程により前記情報生成装置への接触がないと判定された場合に、前記所定の処理を行うことを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、車両に搭載される情報生成装置を制御するコンピュータが実行するプログラムであって、前記情報生成装置への接触の有無を判定する判定手段と、前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、前記判定手段の判定結果とに基づき、前記車両の事故に関連する情報である事故情報を生成する生成手段として前記コンピュータを機能させ、前記生成手段は、前記判定手段により前記情報生成装置への接触があると判定された場合に、前記事故情報の取扱いに係る所定の処理を行わない一方で、前記加速度センサが基準値以上の加速度を検出し、かつ、前記判定手段により前記情報生成装置への接触がないと判定された場合に、前記所定の処理を行うことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1実施例に係るナビゲーション装置のブロック図である。
【
図3】事故情報通知処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】基準対象物の移動検知方法を説明する図である。
【
図5】第2実施例に係るナビゲーション装置のブロック図である。
【
図6】路面評価情報の生成方法の具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、車両に搭載される情報生成装置であって、前記情報生成装置への接触の有無を判定する判定手段と、前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、前記判定手段の判定結果とに基づき、前記車両の走行状態に関連する情報である走行情報を生成する生成手段と、を備え、前記生成手段は、前記判定手段により前記情報生成装置への接触があると判定された際に前記加速度センサにより検出された加速度に基づく前記走行情報を生成しない。
【0011】
上記情報生成装置は、車両に搭載され、判定手段と、生成手段とを備える。判定手段は、情報生成装置への接触の有無を判定する。生成手段は、車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、判定手段の判定結果とに基づき、車両の走行状態に関連する情報である走行情報を生成する。生成手段は、判定手段により情報生成装置への接触があると判定された際に前記加速度センサにより検出された加速度に基づく走行情報を生成しない。このようにすることで、情報生成装置は、情報生成装置への接触に起因して生じた加速度に基づき走行情報を生成するのを好適に抑制することができる。
【0012】
上記情報生成装置の一態様では、前記車両のルームミラーに内蔵され、またはルームミラーに取り付けられる。この態様では、ルームミラーの角度調整操作により加速度センサが衝撃を検知することが起こり得る。この場合であっても、情報生成装置は、ルームミラーの角度調整操作に起因して生じた加速度に基づき走行情報を生成するのを好適に抑制することができる。
【0013】
上記情報生成装置の他の一態様では、前記生成手段は、前記加速度センサが基準値以上の加速度を検出し、かつ、前記判定手段により前記情報生成装置への接触がないと判定された場合に、前記車両の事故に関連する情報を前記走行情報として生成する。この態様により、情報生成装置は、情報生成装置への接触に起因して生じた加速度に基づき事故に関する情報を誤送信するのを好適に抑制することができる。
【0014】
上記情報生成装置の他の一態様では、前記生成手段は、前記加速度センサにより検出された加速度に基づいて、前記車両が走行した道路の路面の凹凸に関する評価情報を前記走行情報として所定の道路区間ごとに生成するものであって、前記判定手段により前記情報生成装置への接触があると判定された際に走行していた道路区間についての前記走行情報を生成しない。この態様では、情報生成装置への接触に起因して生じた加速度に基づき走行した道路路面の評価情報を生成するのを確実に抑制することができる。
【0015】
上記情報生成装置の他の一態様では、前記判定手段は、前記情報生成装置への接触を検出する接触センサの出力に基づいて、前記情報生成装置への接触を判定する。この態様により、情報生成装置は、搭乗者による情報生成装置への接触を好適に検知することができる。
【0016】
上記情報生成装置の他の一態様では、情報生成装置は、前記情報生成装置とともに回転し、前記車両の前方風景を撮影する撮影手段と、前記車両が走行中において前記撮影手段により撮影された前記前方画像を解析し、当該前方画像に含まれ、前記車両の一部となる対象物を特定する特定手段と、をさらに備え、前記判定手段は、前記特定手段により特定された対象物の前記前方画像中の位置の変化に基づいて前記情報生成装置への接触の有無を判定する。情報生成装置は、この態様によっても、搭乗者による情報生成装置への接触を好適に検知することができる。
【0017】
上記情報生成装置の他の一態様では、情報生成装置は、前記走行情報を前記車両の外部に存在する外部装置へ送信する送信手段をさらに備える。この態様により、情報生成装置は、走行情報を収集する外部装置に、情報生成装置が搭載される車両の走行状態に基づく走行情報を好適に送信することができる。
【0018】
本発明に係る他の実施形態では、車両に搭載される情報生成装置が実行する制御方法であって、前記情報生成装置への接触の有無を判定する判定工程と、前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、前記判定工程での判定結果とに基づき、前記車両の走行状態に関連する情報である走行情報を生成する生成工程と、を有し、前記生成工程では、前記判定工程により前記情報生成装置への接触があると判定された際に前記加速度センサにより検出された加速度に基づく前記走行情報を生成しない。情報生成装置は、この制御方法を実行することで、情報生成装置への接触に起因して生じた加速度に基づき走行情報を生成するのを好適に抑制することができる。
【0019】
本発明に係る他の実施形態では、車両に搭載される情報生成装置を制御するコンピュータが実行するプログラムであって、前記情報生成装置への接触の有無を判定する判定手段と、前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサにより検出された加速度と、前記判定手段の判定結果とに基づき、前記車両の走行状態に関連する情報である走行情報を生成する生成手段として前記コンピュータを機能させ、前記生成手段は、前記判定手段により前記情報生成装置への接触があると判定された際に前記加速度センサにより検出された加速度に基づく前記走行情報を生成しない。コンピュータは、このプログラムを実行することで、情報生成装置への接触に起因して生じた加速度に基づき走行情報を生成するのを好適に抑制することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。以後において、「撮影方向」とは、カメラの正面となる方向であって、カメラの視野(撮影範囲)の中心を通る方向を指すものとする。
【0021】
<第1実施例>
[ナビゲーション装置の構成]
図1は、実施例に係るナビゲーション装置1の構成を示す。具体的には、
図1(A)は、ナビゲーション装置1が車室内のルームミラー12に装着された状態(単に「装着状態」とも呼ぶ。)における正面図を示し、
図1(B)は、装着状態におけるナビゲーション装置1の背面図を示し、
図1(C)は、装着状態におけるナビゲーション装置1の上面図を示す。以後では、ナビゲーション装置1の長手方向を「Y軸方向」、ナビゲーション装置1の短手方向を「X軸方向」、X軸及びY軸と垂直な方向を「Z軸方向」とし、各正方向を図のように定める。
【0022】
図1に示すナビゲーション装置1は、内蔵二次電池により駆動され、主に、ミラー部13と、前方撮影カメラ4と、ミラー部13の背面に存在するディスプレイ(表示手段)10と、挟持部14A~14Dとを有する。そして、ナビゲーション装置1は、装着状態において、挟持部14A~14Dがルームミラー12を挟持することでルームミラー12に対して固定される。そして、ナビゲーション装置1の装着状態では、ルームミラー12の鏡面と、ナビゲーション装置1の背面とが重なる。ナビゲーション装置1は、本発明における「情報生成装置」の一例である。
【0023】
前方撮影カメラ4は、車両の前方を撮影した画像(「前方画像Im」とも呼ぶ。)を生成するためのカメラであり、ナビゲーション装置1の装着状態において、ルームミラー12と重ならないナビゲーション装置1の背面部分に配置される。また、前方撮影カメラ4は、ナビゲーション装置1の筺体内に回転可能に収容されており、図示しないリモートコントローラ等への操作に基づき、撮影方向が調整される。
【0024】
ミラー部13は、例えばハーフミラーであって、入射した一部の光を透過させ、その他の光を反射させる。これにより、ミラー部13は、背面にあるディスプレイ10が非発光状態では車両の後方風景を映す通常のミラーとして機能し、ディスプレイ10が発光状態では、ディスプレイ10から出射された光を透過させることで、運転者にディスプレイ10の表示内容を視認させる。ディスプレイ10は、前方撮影カメラ4が撮影した前方画像Imに、運転者を案内するための文字や図形などを表す案内画像を重畳させて表示する。
図1(A)では、ディスプレイ10は、車速を表す案内画像と、点灯した信号灯を強調した四角枠の案内画像とを、前方画像Imに重畳して表示している。
【0025】
ナビゲーション装置1は、前方画像Imを対象とした画像認識処理により、車線、信号機の点灯状態、先行車両などを検知し、検知結果に基づくテキスト画像や図形画像などを前方画像Imに重ねて表示したり、音声情報を出力したりする。また、ナビゲーション装置1は、後述するように、衝撃を検知した際に撮影された前方画像Imを記録するドライブレコーダとして機能する。
【0026】
図2は、ナビゲーション装置1の機能ブロック図である。
図2に示すように、ナビゲーション装置1は、前方撮影カメラ4と、現在位置検出部5と、加速度センサ6と、送信部9と、ディスプレイ10と、画像バッファ部11と、不揮発性メモリ15と、基準対象移動判定部16と、制御部19とを備える。
【0027】
現在位置検出部5は、例えばGPS受信機であり、車両の現在位置を示す情報を制御部19に供給する。加速度センサ6は、X軸、Y軸、及びZ軸の3軸方向の加速度を検出し、その検出信号を制御部19へ供給する。
【0028】
不揮発性メモリ15は、例えばSDカードなどの記憶媒体であり、制御部19の制御に基づき、前方撮影カメラ4が生成した前方画像Im等を記憶する。
【0029】
基準対象移動判定部16は、前方撮影カメラ4の撮影範囲内に存在する車両の一部(「基準対象物Tag」とも呼ぶ。)の前方画像Im中での移動の有無を判定する。そして、基準対象移動判定部16は、基準対象物Tagが前方画像Im中で所定距離以上移動した場合に、ルームミラー12の角度(「ミラー角」とも呼ぶ。)を変更するために搭乗者がルームミラー12に触れたと判断する。基準対象移動判定部16の処理の詳細については、[基準対象物の移動検知]のセクションで説明する。
【0030】
制御部19は、所定時間分の前方画像Imを画像バッファ部11に上書きし、加速度センサ6により基準値以上の加速度(即ち衝撃)を検出した場合に、画像バッファ部11に保存した所定時間分(概ね10~100秒程度)の前方画像Imを不揮発性メモリ15に書き込む。さらに、制御部19は、この場合、事故が発生した旨を通知する情報(「事故情報Ia」とも呼ぶ。)を、ネットワークを介して接続する外部装置であるサーバ装置7へ送信する。ここで、事故情報Iaは、上述の基準値以上の加速度を検知したときに現在位置検出部5が測定した車両位置、当該加速度を検知した時刻、及びナビゲーション装置1が搭載される車両ナンバーなどの情報を含む。また、本実施例では、制御部19は、基準対象移動判定部16の判定結果に基づき、検知した基準値以上の加速度がルームミラー12への搭乗者の接触に起因して発生した加速度であると判断した場合には、前方画像Imの不揮発性メモリ15への保存処理や事故情報Iaの送信処理を行わない。
【0031】
なお、ナビゲーション装置1は、
図2に示す各要素に加え、音声出力部などをさらに備えてもよい。基準対象移動判定部16は、本発明における「特定手段」及び「判定手段」、制御部19は、本発明における「生成手段」の一例である。また、基準対象移動判定部16及び制御部19は、例えばCPUであり、本発明におけるプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0032】
[処理フロー]
図3は、前方画像Imの不揮発性メモリ15への書き込み処理及び事故情報Iaの送信処理に関する手順を示すフローチャートである。制御部19は、
図3のフローチャートの処理を、繰り返し実行する。
【0033】
まず、制御部19は、基準値以上の加速度が加速度センサ6により検出されたか否か判定する(ステップS101)。ここで、「基準値」は、車両の衝突等の事故が発生した際に生じる加速度を勘案して設定される。この場合、制御部19は、XYZ軸の各加速度のうち最も大きい加速度と基準値とを比較してもよく、3次元空間における加速度のベクトル長と基準値とを比較してもよい。そして、基準値以上の加速度が検出されない場合(ステップS101;No)、制御部19は、引き続きステップS101で加速度センサ6が検出する加速度を監視する。
【0034】
そして、基準値以上の加速度が加速度センサ6により検出された場合(ステップS101;Yes)、基準対象移動判定部16は、上記加速度が加速度センサ6により検出された時刻と略同時に前方画像Imでの基準対象物Tagの位置が変化したか否か判定する(ステップS102)。具体的には、基準対象移動判定部16は、基準値以上の加速度が検知される前の前方画像Imと現在取得した前方画像Imとを比較することで、基準対象物Tagの位置変化の有無を所定期間監視する。上記所定期間は、例えば、ステップS101で基準値以上の加速度が検知した時刻を含む1秒以内の期間に設定される。
【0035】
そして、加速度センサ6により基準値以上の加速度が検出された時刻と略同時に前方画像Imでの基準対象物Tagの位置が変化したと基準対象移動判定部16が判断した場合(ステップS102;Yes)、制御部19は、不揮発性メモリ15への書き込みをせず、事故情報Iaをサーバ装置7へ送信する処理も実行しない(ステップS103)。即ち、この場合、制御部19は、搭乗者がミラー角を調整した際の衝撃により基準値以上の加速度が検出され、事故は発生していないと判断し、事故発生時に実行すべき処理は行わない。これにより、制御部19は、不揮発性メモリ15への不要な前方画像Imの書込み及びサーバ装置7への不要な事故情報Iaの送信を防ぐことができる。
【0036】
一方、加速度センサ6により基準値以上の加速度が検出された時刻と略同時に前方画像Imでの基準対象物Tagの位置が変化していないと基準対象移動判定部16が判断した場合(ステップS102;No)、制御部19は、事故が発生したと判断する。よって、この場合、制御部19は、事故情報Iaを生成してサーバ装置7へ送信すると共に、画像バッファ部11に記憶された前方画像Imを不揮発性メモリ15へ記録する処理を実行する(ステップS104)。
【0037】
[基準対象物の移動検知]
次に、
図3のステップS102で基準対象移動判定部16が実行する処理の具体例について説明する。
【0038】
図4(A)は、ミラー角が調整される前に前方撮影カメラ4が撮影した前方画像Imを示す。
図4(A)の前方画像Imには、車両の一部であるAピラー32と、ダッシュボード33とが表示されている。
【0039】
この場合、基準対象移動判定部16は、前方画像Imを時系列で比較し、前方画像Imでの位置が変化しないAピラー32及びダッシュボード33を基準対象物Tagとみなす。そして、基準対象移動判定部16は、前方画像Im内におけるAピラー32及びダッシュボード33の輪郭(破線34参照)の座標情報や当該輪郭内の領域の色情報などを記憶する。さらに、基準対象移動判定部16は、Aピラー32及びダッシュボード33の継ぎ目であってこれらの輪郭線の角度が急激に変化している位置35Aを基準対象物Tagの特徴点として検出する。そして、基準対象移動判定部16は、基準対象物Tagの特徴点の位置を断続的に検出してその移動量を監視することにより、基準対象物Tagの移動の有無を監視する。
【0040】
図4(B)は、ミラー角が調整された後に前方撮影カメラ4が撮影した前方画像Imを示す。
図4(B)では、便宜上、
図4(A)において検出した輪郭を示す破線34及び特徴点を示す位置35Aについても図示されている。
【0041】
この例では、ミラー角の調整により、撮影方向が左下方向にずれている。この場合、基準対象移動判定部16は、
図4(B)に示す前方画像Imから検出した基準対象物Tagの輪郭(一点鎖線36参照)の特徴点の位置35Bが、前回算出した基準対象物Tagの特徴点の位置35Aと所定距離以上離れていると判断する。
図4(B)では、前方画像Imの上方向をX軸の正方向とし、前方画像Imの右方向をY軸の正方向とした場合に、基準対象物Tagの特徴点は、X軸方向に移動量「dX」だけ移動し、Y軸方向に移動量「dY」だけ移動している。この場合、基準対象移動判定部16は、搭乗者がルームミラー12に接触したと判断する。これにより、ナビゲーション装置1は、加速度センサ6が検出した衝撃がルームミラー12への操作に起因したものか否かを好適に判定することができる。
【0042】
あるいは、ナビゲーション装置1が備える基準対象移動判定部16により、前述の基準対象物の移動検知を実行させることに代えて、サーバ装置7に基準対象物の移動検知を実行させるようにしてもよい。この場合、ナビゲーション装置1は、前方撮影カメラ4が撮影した前方画像Imをサーバ装置7に常時送信するか、または、加速度センサ6により基準値以上の衝撃を検出した際に、当該衝撃の検出の直前と直後の前方画像Imを送信する。サーバ装置7は、ナビゲーション装置1より受信した前方画像Imに基づいて基準対象物の移動検知を実行し、搭乗者がルームミラー12に接触したと判断した場合に、搭乗者による接触があった旨を含む情報をナビゲーション装置1に送信する。このような形態では、ナビゲーション装置1の処理負荷を軽減することができる。
【0043】
以上説明したように、第1実施例に係るナビゲーション装置1は、車両に搭載され、基準対象移動判定部16と、制御部19とを備える。基準対象移動判定部16は、搭乗者によるナビゲーション装置1への接触の有無を判定する。制御部19は、車両に加わる加速度を検出する加速度センサ6により検出された加速度と、基準対象移動判定部16の判定結果とに基づき、車両の走行状態に関連する事故情報Iaを生成してサーバ装置7へ送信する。この場合、制御部19は、基準対象移動判定部16によりナビゲーション装置1への接触があると判定された際に加速度センサ6により検出された加速度に基づく事故情報Iaの生成及び送信を行わない。このようにすることで、ナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1への接触に起因して生じた加速度に基づき事故情報Iaを生成及び送信するのを好適に抑制することができる。
【0044】
<第2実施例>
図5は、第2実施例に係るナビゲーション装置1Aのブロック構成を示す。第2実施例に係るナビゲーション装置1Aは、第1実施例に係るナビゲーション装置1の構成要素に加え、地図データを記憶する地図データ記憶部18を有する。そして、ナビゲーション装置1Aは、事故情報Iaに代えて、加速度センサ6の出力に基づき走行中の道路の路面状況を評価する情報(「路面評価情報Ib」とも呼ぶ。)を生成し、送信部9によりサーバ装置7へ送信する点で、第1実施例に係るナビゲーション装置1と異なる。
【0045】
サーバ装置7は、複数の車両から路面評価情報Ibを取得し、道路区間ごとに路面評価情報Ibが示す路面評価を関連付けたデータベース(「路面評価データベース」とも呼ぶ。)を生成する。なお、路面評価データベースは、道路の補修管理などの目的に利用される。
【0046】
次に、路面評価情報Ibの生成方法について説明する。制御部19は、加速度センサ6が検出する車両の上下方向(即ち
図1のX軸方向)の加速度に基づき、車両が道路を走行している際に生じる上下振動量を算出し、車両が走行する道路区間ごとに、当該道路区間の路面状況(詳しくは凹凸具合)の評価を行う。このとき、制御部19は、現在位置検出部5が測定した現在位置と、地図データ記憶部18が記憶する地図データとに基づき、車両が現在走行している道路区間を認識する。ここで、上述の地図データは、例えば、道路に相当するリンクと、道路の接続部分(交差点)に相当するノードとにより表された道路データを含んでいる。そして、制御部19は、車両が道路区間を通過するごとに、通過した道路区間の路面評価に関する情報と、通過した道路区間の識別情報とを含む路面評価情報Ibを生成し、サーバ装置7へ送信する。このとき、制御部19は、例えば、道路データの各リンクを各道路区間とみなし、リンクに相当する区間を通過するごとに路面評価情報Ibの生成及び送信を行う。
【0047】
また、基準対象移動判定部16は、前方画像Im内での基準対象物Tagの位置を監視することで、ルームミラー12への接触を常時監視する。そして、制御部19は、車両が通過した道路区間のうち、ルームミラー12への接触があったと基準対象移動判定部16が判断した道路区間については、路面評価情報Ibをサーバ装置7へ送信しない。第1実施例でも述べたように、ルームミラー12への接触があった場合には、車両の振動とは関係なく加速度センサ6が検出する加速度が高くなる。以上を勘案し、第2実施例では、制御部19は、ルームミラー12への接触を検知した道路区間については加速度センサ6の出力に基づき路面評価を行うのは妥当ではないと判断し、当該道路区間に対する路面評価情報Ibをサーバ装置7に送信しない。
【0048】
次に、路面評価情報Ibの生成及び送信に関する具体例について、
図6を参照して説明する。
【0049】
図6(A)は車両が走行する道路区間(ここでは区間A及び区間B)を含む地図を示し、
図6(B)は、区間A及び区間Bを走行時に加速度センサ6が検出する車両の上下方向(即ち
図1のX軸方向)の加速度を示す。
図6(A)において、マーク8A~8Dは、ナビゲーション装置1Aが搭載される車両の位置の遷移を示す。
図6の例では、制御部19は、各道路区間において計測されたX軸方向の加速度の最大値に基づき、当該道路区間の路面評価として「非常に悪い」、「悪い」、「普通」、「良い」の4段階からいずれかを選択する。
【0050】
まず、制御部19は、車両が区間Aを通過した場合、ナビゲーション装置1Aを搭載した車両が区間Aを走行している時刻「t1」から時刻「t2」の間に基準対象移動判定部16がルームミラー12(即ちナビゲーション装置1)への接触を検知しなかったことから、区間Aに対応する路面評価情報Ibを生成し、サーバ装置7に送信する。この場合、まず、制御部19は、ナビゲーション装置1Aを搭載した車両が区間Aを走行中に加速度センサ6が計測したX軸方向の加速度の最大値(プロットP1参照)を認識する。そして、制御部19は、認識した最大値が評価レベル「普通」に対応する範囲に属すると判断し、評価レベルが「普通」である旨及び区間Aの識別情報(例えばリンクID)を路面評価情報Ibとしてサーバ装置7へ送信する。
【0051】
一方、制御部19は、車両が区間Bを通過した場合、ナビゲーション装置1Aを搭載した車両が区間Bを走行中の時刻「t3」から時刻「t4」の間に基準対象移動判定部16がルームミラー12への接触を検知したことから、路面評価情報Ibの生成及び送信を行わない。ここで、ルームミラー12への接触を検知した期間では、ルームミラー12を搭乗者が操作した衝撃により、走行中の道路の路面状況とは関係なくX軸方向の加速度が急激に上昇している。よって、仮に区間Bの路面状況を評価した場合、制御部19は、区間Bでの加速度の最大値(プロットP2参照)に基づき、実際の路面状況に基づかない評価レベル「非常に悪い」であると不当に評価することになる。よって、制御部19は、区間Bに関する路面評価情報Ibをサーバ装置7へ送信しないことで、サーバ装置7が記憶する路面評価データベースの正確性が損なわれるのを好適に抑制することができる。
【0052】
<変形例>
以下、第1及び第2実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0053】
[変形例1]
ナビゲーション装置1は、基準対象移動判定部16による前方画像Imの画像解析によりルームミラー12への搭乗者の接触を判定した。これに代えて、ナビゲーション装置1は、ルームミラー12に搭乗者が接触したことを検出するための接触センサを備え、当該接触センサの出力に基づきミラー角度の変化を検知してもよい。
【0054】
この場合、接触センサは、ルームミラー12のミラー面上に設けられたタッチパネルであってもよいし、搭乗者がルームミラー12を角度変更する際に接触するナビゲーション装置1のハウジングあるいはルームミラー12のレバーに設けられた感圧スイッチなどであってもよい。この場合、制御部19は、
図3のステップS102において、接触センサの出力信号に基づき、ルームミラー12(即ちナビゲーション装置1)への接触があると判断した場合に、ルームミラー12への搭乗者の接触による衝撃に起因して基準値以上の加速度が検出されたと判断し、不揮発性メモリ15への前方画像Imの書き込みや事故情報Iaの送信処理を行わない。
【0055】
同様に、第2実施例のナビゲーション装置1Aは、基準対象移動判定部16に代えて上述の接触センサを備えてもよい。この場合、制御部19は、接触センサの出力信号に基づき、ルームミラー12への接触があると判断した道路区間に対応する路面評価情報Ibの生成及び送信を行わない。
【0056】
[変形例2]
ナビゲーション装置1、1Aは、車両に付属する純正のルームミラー12にナビゲーション装置1を挟み込んで保持するための挟持部14A~14Dを備えた。これに代えて、ナビゲーション装置1、1Aは、挟持部14A~14Dを備えず、ルームミラーに内蔵され、車両に付属する純正のルームミラーと交換できるものであってもよい。
【0057】
他の例では、ナビゲーション装置1、1Aは、ルームミラー12に取付けまたは内蔵されるものに限定されず、車両のダッシュボード上に設置されたディスプレイと一体に構成され、搭乗者によりディスプレイが視認しやすい向きに角度を変更自在なナビゲーション装置であってもよい。
【0058】
さらに別の例では、ナビゲーション装置1、1Aは、各種操作を入力するための操作キーなどを一体に備えるナビゲーション装置であって、搭乗者が操作キーに接触することで衝撃が発生するものであってもよい。この場合、第1実施例では、制御部19は、基準値以上の加速度が検知した際に操作キーへの入力があった場合には、検知された加速度が操作キーへのユーザ操作に基づき発生したと判断して事故情報Iaの送信を行わない。また、第2実施例では、制御部19は、操作キーへの入力操作を検知した際に走行中の道路区間に対応する路面評価情報Ibの生成及び送信を行わない。
【0059】
さらに別の例では、ナビゲーション装置1、1Aは、経路案内機能を有しないドライブレコーダなどであってもよい。
【0060】
[変形例3]
第2実施例において、ナビゲーション装置1Aは、サーバ装置7に路面評価情報Ibを送信する代わりに、決定した路面評価を道路区間ごとに関連付けて地図データとして記憶してもよい。この場合、ナビゲーション装置1Aは、例えば、記憶した路面評価の情報を参照し、路面評価が所定レベルよりも低い悪路を回避する経路探索等を実行する。
【0061】
[変形例4]
第2実施例において、ナビゲーション装置1Aがサーバ装置7に路面評価情報Ibを送信することに代えて、ナビゲーション装置1Aは、車両が道路を走行している際に生じる上下振動量、および現在位置をサーバ装置7に送信し、サーバ装置7が、通過した道路区間に関する路面評価情報Ibを生成するようにしてもよい。この場合、ナビゲーション装置1Aは、現在位置検出部5が測定した現在位置と、加速度センサ6が検出する車両の上下方向の加速度に基く上下振動量と、前方撮影カメラ4が撮影した前方画像Imをサーバ装置7に送信する。サーバ装置7は、第2実施例におけるナビゲーション装置1Aと同様に、ナビゲーション装置1より受信した前方画像Imに基づいて基準対象物の移動検知を実行するとともに、ナビゲーション装置1Aより受信した現在位置、および上下振動量に基づいて路面評価情報Ibを生成する。このとき、サーバ装置7は、基準対象物の移動検知によりルームミラー12への接触があったと判断した道路区間については、路面評価情報Ibを路面評価データベースに記憶しないようにする。
【0062】
さらに別の例では、ナビゲーション装置1Aは、前方画像Imに代えて、ルームミラー12に搭乗者が接触したことを検出するための接触センサの出力情報を、サーバ装置7に送信し、サーバ装置7は、受信した接触センサの出力情報に基づいて、ルームミラー12への接触があったかを判断してもよい。
【0063】
このような形態では、ナビゲーション装置1の処理負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ナビゲーション装置
4 前方撮影カメラ
5 現在位置検出部
10 ディスプレイ
11 画像バッファ部
12 ルームミラー
15 不揮発性メモリ
16 基準対象移動判定部
19 制御部