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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】センサシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
G01S7/497
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023077798
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2019048513の分割
【原出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2023090924
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 宙
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0115357(US,A1)
【文献】実公平03-028269(JP,Y2)
【文献】中国実用新案第201736958(CN,U)
【文献】特開2016-187990(JP,A)
【文献】特開2018-048896(JP,A)
【文献】特開昭61-079184(JP,A)
【文献】実開平05-014961(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0293532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
B60S 1/00 - B60S 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるセンサシステムであって、
光を用いて前記車両の外部の情報を検出するセンサユニットと、
前記センサユニットを覆うように前記車両の外面の一部を形成しており、前記光の通過を許容するカバーと、
前記カバーに隣接するように配置された検出面を有するひずみゲージと、
重力を利用した排液構造を有する流路と、
を備えており
前記検出面は、前記流路内に配置されている、
センサシステム。
【請求項2】
液体を噴射可能なノズルと、
前記ひずみゲージから出力される信号に基づいて、前記ノズルに前記カバーへ向けて前記液体を噴射させるプロセッサと、
を備えている、
請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記液体に超音波を付与する超音波アクチュエータを備えている、
請求項2に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記車両の外部へ照明光を出射するランプユニットを備えており、
前記カバーは、前記照明光の通過を許容する、
請求項1からのいずれか一項に記載のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転支援を行なうために、当該車両の外部の情報を検出するためのセンサユニットが車体に搭載される。特許文献1は、そのようなセンサユニットとしてのレーダを開示している。レーダは、車両の外部を照明するランプ装置の灯室内に配置されている。すなわち、レーダは、灯室を区画するとともに照明光の通過を許容するカバーによって覆われている。カバーは、車両の外面の一部を形成するとともに、レーダが外部の情報を検出するための検出光の通過も許容する。
【0003】
本明細書において用いられる「運転支援」という語は、運転操作(ハンドル操作、加速、減速など)、走行環境の監視、および運転操作のバックアップの少なくとも一つを少なくとも部分的に行なう制御処理を意味する。すなわち、衝突被害軽減ブレーキ機能やレーンキープアシスト機能のような部分的な運転支援から完全自動運転動作までを含む意味である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-106199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、車両の外面の一部を形成するカバーによって覆われたセンサユニットによる情報検出能力の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための第一態様は、車両に搭載されるセンサシステムであって、 光を用いて前記車両の外部の情報を検出するセンサユニットと、
前記センサユニットを覆うように前記車両の外面の一部を形成しており、前記光の通過を許容するカバーと、
前記カバーに隣接するように配置された検出面を有するpHセンサと、
を備えている。
【0007】
pHセンサの検出面におけるpH値の変化は、検出面に異物が付着したことより引き起こされた蓋然性が高い。この場合、カバーにも異物が付着している可能性が高い。したがって、プロセッサは、このpH値の変化に基づいてカバーに異物が付着していると判断しうる。
【0008】
センサユニットが情報検出に用いる光の進行経路上に位置するカバーの一部に異物が付着すると、センサユニットによる車両の外部の情報の検出の妨げになりうる。しかしながら、上記のように配置されたpHセンサによってそのような異物の付着が検出されるので、検出結果に応じた適切な処理をとることができる。よって、車両の外面の一部を形成するカバーによって覆われたセンサユニットによる情報検出能力の低下を抑制できる。
【0009】
第一態様に係るセンサシステムは、以下のように構成されうる。
液体を噴射可能なノズルと、
前記pHセンサから出力される信号に基づいて、前記ノズルに前記カバーへ向けて前記液体を噴射させるプロセッサと、
を備えている。
【0010】
このような構成によれば、カバーに付着した異物を除去するための処理を自動化できる。したがって、車両の外面の一部を形成するカバーによって覆われたセンサユニットによる情報検出能力の低下の抑制効果が高まる。
【0011】
第一態様に係るセンサシステムは、以下のように構成されうる。
前記検出面は、pH値が管理された液体に浸されている。
【0012】
すなわち、いわゆる湿式として広く普及しているガラス電極法を利用するpHセンサが使用されうる。
【0013】
上記の目的を達成するための第一態様は、車両に搭載されるセンサシステムであって、 光を用いて前記車両の外部の情報を検出するセンサユニットと、
前記センサユニットを覆うように前記車両の外面の一部を形成しており、前記光の通過を許容するカバーと、
前記カバーに隣接するように配置された検出面を有するひずみゲージと、
を備えている。
【0014】
ひずみゲージの検出面における荷重値の変化は、検出面に異物が付着したことより引き起こされた蓋然性が高い。この場合、カバーにも異物が付着している可能性が高い。したがって、プロセッサは、この荷重値の変化に基づいてカバーに異物が付着していると判断しうる。
【0015】
センサユニットが情報検出に用いる光の進行経路上に位置するカバーの一部に異物が付着すると、センサユニットによる車両の外部の情報の検出の妨げになりうる。しかしながら、上記のように配置されたひずみゲージによってそのような異物の付着が検出されるので、検出結果に応じた適切な処理をとることができる。よって、車両の外面の一部を形成するカバーによって覆われたセンサユニットによる情報検出能力の低下を抑制できる。
【0016】
第二態様に係るセンサシステムは、以下のように構成されうる。
液体を噴射可能なノズルと、
前記ひずみゲージから出力される信号に基づいて、前記ノズルに前記カバーへ向けて前記液体を噴射させるプロセッサと、
を備えている。
【0017】
このような構成によれば、カバーに付着した異物を除去するための処理を自動化できる。したがって、車両の外面の一部を形成するカバーによって覆われたセンサユニットによる情報検出能力の低下の抑制効果が高まる。
【0018】
上記の各態様に係るセンサシステムは、以下のように構成されうる。
前記液体に超音波を付与する超音波アクチュエータを備えている。
【0019】
このような構成によれば、ノズルから噴射された液体によるいわゆる超音波洗浄効果が得られ、カバーに付着した異物の剥離や除去をさらに促進できる。
【0020】
上記の各態様に係るセンサシステムは、以下のように構成されうる。
重力を利用した排液構造を有する流路を備えており、
前記検出面は、前記流路内に配置されている。
【0021】
異物が付着しているカバーの表面を流れ落ちる液体は、当該異物の成分を含んでいる蓋然性が高い。したがって、当該液体が流路に受容されると、流路内に配置されているpHセンサの検出面のpH値を変化させる。これにより、カバーへの異物の付着が検出されうる。pHセンサの検出面は、重力による液体の移動経路のどこかに配置すればよい。したがって、pHセンサの配置自由度を高めることができる。
【0022】
異物が付着しているカバーの表面を流れ落ちる液体は、当該異物の少なくとも一部を含んでいる蓋然性が高い。したがって、当該液体が流路に受容されると、当該異物を含まない液体が受容された場合よりも、ひずみゲージの検出面に加わる荷重を大きく変化させる。これにより、カバーへの異物の付着が検出されうる。ひずみゲージの検出面は、重力による液体の移動経路のどこかに配置すればよい。したがって、ひずみゲージの配置自由度を高めることができる。
【0023】
上記の各態様に係るセンサシステムは、以下のように構成されうる。
前記車両の外部へ照明光を出射するランプユニットを備えており、
前記カバーは、前記照明光の通過を許容する。
【0024】
ランプユニットは、車両の外部に照明光を供給するという機能ゆえに、車両における遮蔽物の少ない場所に配置されることが一般的である。このような場所にセンサユニットも配置されることにより、車両の外部の情報を効率的に取得できる。
【0025】
本明細書で用いられる「光」という語は、可視光のみならず、紫外光や赤外光、マイクロ波やミリ波など任意の波長を有する電磁波を意味する。
【0026】
本明細書において用いられる「センサユニット」という語は、所望の情報検出機能を備えつつ、それ自身が単体で流通可能な部品の構成単位を意味する。
【0027】
本明細書において用いられる「ランプユニット」という語は、所望の照明機能を備えつつ、それ自身が単体で流通可能な部品の構成単位を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第一実施形態に係るセンサシステムの構成を例示している。
図2図1のセンサシステムが搭載される車両の外観を例示している。
図3図1のセンサシステムにおけるプロセッサの動作を例示している。
図4図1のセンサシステムにおける流路の構成を例示している。
図5】第二実施形態に係るセンサシステムの構成を例示している。
図6図5のセンサシステムにおけるプロセッサの動作を例示している。
図7図5のセンサシステムにおける流路の構成を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。以下の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0030】
添付の図面において、矢印Fは、図示された構造の前方向を示している。矢印Bは、図示された構造の後方向を示している。矢印Uは、図示された構造の上方向を示している。矢印Dは、図示された構造の下方向を示している。矢印Lは、図示された構造の左方向を示している。矢印Rは、図示された構造の右方向を示している。以降の説明に用いる「左」および「右」は、運転席から見た左右の方向を示している。
【0031】
図1は、第一実施形態に係るセンサシステム1の構成を例示している。センサシステム1は、図2に示される車両100に搭載される。車両100の車体の形状は、例示に過ぎない。
【0032】
センサシステム1は、ハウジング11とカバー12を備えている。ハウジング11は、カバー12とともに収容室13を区画している。
【0033】
センサシステム1は、LiDARセンサユニット14を備えている。LiDARセンサユニット14は、収容室13内に配置されている。カバー12は、LiDARセンサユニット14を覆うように車両100の外面の一部を形成している。
【0034】
LiDARセンサユニット14は、車両100の外部における検出領域に向けて検出光を出射する構成、および当該検出光が検出領域内に存在する物体に反射した結果の戻り光(不図示)を検出する構成を備えている。検出光としては、例えば波長905nmの赤外光が使用されうる。
【0035】
LiDARセンサユニット14は、例えば、ある方向へ検出光を出射したタイミングから戻り光を検出するまでの時間に基づいて、当該戻り光に関連付けられた物体までの距離を取得できる。また、そのような距離データを検出位置と関連付けて集積することにより、戻り光に関連付けられた物体の形状に係る情報を取得できる。これに加えてあるいは代えて、出射光と戻り光の波形の相違に基づいて、戻り光に関連付けられた物体の材質などの属性に係る情報を取得できる。すなわち、LiDARセンサユニット14は、光を用いて車両100の外部の情報を検出する装置である。
【0036】
検出光と戻り光は、カバー12における光通過領域12aを通過する。換言すると、カバー12は、少なくとも検出光と戻り光の通過を許容する材料により形成されている。
【0037】
センサシステム1は、pHセンサ15を備えている。pHセンサ15は、カバー12上に配置されている。より具体的には、pHセンサ15は、カバー12の光通過領域12aを避けた位置に配置されている。カバー12上に配置されることは、カバーに隣接するように配置されることの一例である。
【0038】
pHセンサ15は、検出面15aを有している。pHセンサ15は、検出面15aのpH値を測定し、測定されたpH値に対応するpH信号S11を出力するように構成されている。pHセンサ15は、乾式と称される手法によって検出面15aのpH値を測定する。すなわち、pHセンサ15は、白金線と銀/塩化銀線を備えている。白金線上のネルンスト応答に基づいて白金線と銀/塩化銀線との間に生じる電位差は、検出面15aのpH値に応じて変化する。pH信号S11は、当該電位差に対応して変化する。
【0039】
センサシステム1は、制御装置16を備えている。制御装置16は、入力インターフェース161とプロセッサ162を備えている。制御装置16は、収容室13内に配置されてもよいし、収容室13外においてハウジング11に支持されてもよい。あるいは、制御装置16は、ハウジング11とは離れた車両100における適宜の位置に配置されうる。
【0040】
入力インターフェース161は、pHセンサ15から出力されたpH信号S11を受け付ける。プロセッサ162は、pH信号S11に基づいて、カバー12に付着した異物を検出するように構成されている。異物としては、雨滴、雪片、汚泥、虫の死骸などが例示されうる。入力インターフェース161は、必要に応じてpH信号S11をプロセッサ162により行なわれる処理に適した形態に変換する信号処理回路を含みうる。
【0041】
図3は、プロセッサ162により行なわれる処理の流れの一例を示している。プロセッサ162は、まずpH基準値の取得を行なう(STEP11)。具体的には、プロセッサ162は、所定のタイミングで入力インターフェース161にpHセンサ15からpH信号S11を受け付けさせることにより、当該所定のタイミングにおける検出面15aのpH値を、基準値として取得する。所定のタイミングの例としては、センサシステム1の起動時が挙げられる。
【0042】
図1に示されるように、制御装置16は、ストレージ163を備えている。ストレージ163は、適宜の書き替え可能な半導体メモリにより実現されうる。プロセッサ162は、上記のように取得された基準値としてのpH値に対応するデータを、ストレージ163に格納する。
【0043】
続いて、プロセッサ162は、所定の時間間隔で入力インターフェース161にpHセンサ15からpH信号S11を受け付けさせる。すなわち、プロセッサ162は、所定の時間間隔でpHセンサ15の測定値を取得する(STEP12)。所定の時間間隔は、例えば100ミリ秒である。
【0044】
続いて、プロセッサ162は、STEP12で取得されたpHセンサ15の検出面15aのpH測定値を、STEP11でストレージ163に格納されたpH基準値と比較する。プロセッサ162は、測定値と基準値の差異が所定値以上であるかを判断する(STEP13)。
【0045】
基準値が取得された後に生じたpHセンサ15の検出面15aにおけるpH値の変化は、検出面15aに異物が付着したことより引き起こされた蓋然性が高い。この場合、カバー12にも異物が付着している可能性が高い。したがって、検出面15aにおけるpH値に係る測定値と基準値の差異が所定値以上である場合(STEP13においてYES)、プロセッサ162は、カバー12に異物が付着していると判断し、検出信号S12を生成する(STEP14)。
【0046】
検出面15aにおけるpH値に係る測定値と基準値の差異が所定値未満である場合(STEP13においてNO)、プロセッサ162は、カバー12に異物が付着していないと判断し、処理はSTEP12に戻る。
【0047】
図1に示されるように、制御装置16は、出力インターフェース164を備えている。プロセッサ162は、出力インターフェース164に検出信号S12を出力させる。検出信号S12は、車両100における他の制御装置へ送信されうる。例えば、当該他の制御装置は、検出信号S12に基づいて、カバー12に異物が付着している旨の報知を車両100の乗員に対して行ないうる。報知は、視覚的報知、聴覚的報知、触覚的報知の少なくとも一つを通じて行なわれうる。
【0048】
報知を受けた乗員は、適宜の対応をとりうる。例えば、センサシステム1は、カバー12へ向けて液体を噴射するノズル17を備えうる。液体としては、水、湯、洗浄液などが例示されうる。乗員は、ノズル17に液体を噴射させる操作を行ないうる。これにより、カバー12に付着した異物の除去を図ることができる。
【0049】
LiDARセンサユニット14の検出光および戻り光の進行経路上に位置する光通過領域12aに異物が付着すると、LiDARセンサユニット14による車両100の外部の情報の検出の妨げになりうる。しかしながら、上記のように構成されたpHセンサ15によってそのような異物の付着が検出されうるので、検出結果に応じた適切な処理をとることができる。よって、車両100の外面の一部を形成するカバー12によって覆われたLiDARセンサユニット14による情報検出能力の低下を抑制できる。
【0050】
異物の除去処理が行なわれると、処理はSTEP11に戻る。すなわち、この時点におけるpHセンサ15の検出面15aのpH値が取得され、以降の処理における新たな基準値とされる。すなわち、ノズル17の動作後は、pH基準値が取得される所定のタイミングの一例になりうる。
【0051】
図1に示されるように、プロセッサ162により生成された検出信号S12は、上記したノズル17を動作させるために使用されうる。すなわち、プロセッサ162は、カバー12に付着した異物が検出されると、ノズル17にカバー12へ向けて液体を噴射させうる。
【0052】
このような構成によれば、カバー12に付着した異物を除去するための処理を自動化できる。したがって、車両100の外面の一部を形成するカバー12によって覆われたLiDARセンサユニット14による情報検出能力の低下の抑制効果が高まる。
【0053】
図1に示されるように、ノズル17は、超音波アクチュエータ171を備えうる。超音波アクチュエータ171は、超音波帯域の周波数で振動し、ノズル17からカバー12に向けて噴射される液体に固有振動を励起する装置である。この場合、プロセッサ162は、ノズル17による液体の噴射時に超音波アクチュエータ171を動作させる制御信号S13を、出力インターフェース164に出力させる。
【0054】
このような構成によれば、ノズル17から噴射された液体によるいわゆる超音波洗浄効果が得られ、カバー12に付着した異物の除去をさらに促進できる。
【0055】
pHセンサ15が配置される位置は、カバー12上に限られない。カバー12に付着した異物の検出が可能であれば、ハウジング11や車両100の車体におけるカバー12に隣接する位置に配置されうる。
【0056】
図1に示されるように、センサシステム1は、流路18を備えうる。流路18は、少なくとも光通過領域12aを通過してカバー12上を流れ落ちる液体を受容するために、カバー12の光通過領域12aよりも下方かつカバー12に隣接する位置に配置される。そのような液体の例としては、雨滴、溶けた雪片、自車両または他車両により路面から跳ね上げられた汚水、ノズル17からカバー12へ噴射された液体などが挙げられる。流路18は、ハウジング11またはカバー12の一部として形成されてもよい。
【0057】
流路18は、重力を利用した排液構造を有している。図1に示される例においては、流路18の第一端部18aよりも第二端部18bの方が下方に位置している。第二端部18bは、外部へ開放されている。したがって、流路18により受容された液体は、流路18内を第二端部18bに向かって流れ、第二端部18bより排出される。
【0058】
この場合、pHセンサ15の検出面15aは、流路18内に配置されうる。したがって、pHセンサ15は、カバー12に隣接するように配置される。
【0059】
異物が付着しているカバー12の表面を流れ落ちる液体は、当該異物の成分を含んでいる蓋然性が高い。したがって、当該液体が流路18に受容されると、流路18内に配置されているpHセンサ15の検出面15aのpH値を変化させる。これにより、図3を参照して説明した上述の手法に基づいてカバー12への異物の付着が検出されうる。pHセンサ15の検出面15aは、重力による液体の移動経路のどこかに配置すればよい。したがって、pHセンサ15の配置自由度を高めることができる。
【0060】
この場合、いわゆる湿式として広く普及しているガラス電極法を利用するpHセンサ15が使用されうる。図4の(A)は、本例に係るpHセンサ15が配置された流路18を上方から見た外観を例示している。図4の(B)は、図4の(A)における線IVB‐IVBに沿って矢印方向から見た流路18の断面を例示している。
【0061】
流路18の底部18cには、凹部18dが形成されている。pHセンサ15は、凹部18d内に配置される。凹部18dは、pH値が管理された液体LQで満たされている。管理されたpH値は、例えば7である。液体LQは、例えば純水である。液体LQは、不図示の液体供給源から供給される。これにより、pHセンサ15の検出面15aは、液体LQに浸される。
【0062】
異物が付着しているカバー12の表面を流れ落ちる液体がこのように構成された流路18に受容されると、凹部18dを満たしている液体LQのpH値と流路18を流れる液体のpH値との差に対応する起電力が、検出面15aに発生する。pHセンサ15は、当該起電力に対応するpH信号S11を出力する。
【0063】
異物の付着が判断されて検出信号S12が出力されると(図3におけるSTEP14)、上述の液体供給源から液体LQが再供給され、新たな液体LQで凹部18dが満たされる。処理はSTEP11へ戻り、この状態で検出面15aのpH値が測定される。測定されたpH値は、以降の処理における新たな基準値とされる。
【0064】
重力を利用した流路18の排液構造は、図1図4の(A)、および図4の(B)に示された例に限られない。例えば、図4の(C)に示されるように、底部18cに設けられた斜面18eと貫通孔18fを通じて液体が排出されてもよい。この場合、第二端部18bは、開放されていなくともよい。図4の(C)に示される構成は、乾式のpHセンサ15を用いる場合にも適用可能である。
【0065】
図1に示されるように、センサシステム1は、ランプユニット19を備えうる。ランプユニット19は、車両100の外部へ照明光を出射する装置である。ランプユニット19としては、前照灯ユニット、車幅灯ユニット、方向指示灯ユニット、霧灯ユニット、リアコンビネーションランプユニットなどが例示されうる。
【0066】
ランプユニット19は、収容室13内に配置される。したがって、ランプユニット19は、カバー12によって覆われる。カバー12は、ランプユニット19から出射された照明光の通過も許容する。この場合、カバー12は、可視光についても透明な材料によって形成される。
【0067】
ランプユニット19は、車両100の外部に照明光を供給するという機能ゆえに、車両100における遮蔽物の少ない場所に配置されることが一般的である。このような場所にLiDARセンサユニット14も配置されることにより、車両100の外部の情報を効率的に取得できる。
【0068】
上記の処理を実行可能なプロセッサ162は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサとして提供されてもよいし、専用集積回路素子の一部として提供されてもよい。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUなどが例示されうる。汎用メモリとしては、RAMやROMが例示されうる。書き替え可能な汎用メモリがストレージ163の機能を担ってもよい。専用集積回路素子としては、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどが例示されうる。プロセッサ162とストレージ163は、独立した素子として提供されてもよいし、単一の素子内にパッケージされていてもよい。
【0069】
図5は、第二実施形態に係るセンサシステム2の構成を例示している。第一実施形態に係るセンサシステム1と実質的に同一の構成要素には同一の参照符号を付与し、繰り返しとなる説明は省略する。センサシステム2は、図2に示される車両100に搭載される。
【0070】
センサシステム2は、ひずみゲージ25を備えている。ひずみゲージ25は、カバー12上に配置されている。より具体的には、ひずみゲージ25は、カバー12の光通過領域12aを避けた位置に配置されている。カバー12上に配置されることは、カバーに隣接するように配置されることの一例である。
【0071】
ひずみゲージ25は、検出面25aを有している。ひずみゲージ25は、検出面25aのひずみを検出することにより、検出面25aに印加されている荷重を測定する装置である。ひずみゲージ25は、測定された荷重に対応する荷重信号S21を出力するように構成されている。
【0072】
センサシステム2は、制御装置26を備えている。制御装置26は、入力インターフェース261とプロセッサ262を備えている。制御装置26は、収容室13内に配置されてもよいし、収容室13外においてハウジング11に支持されてもよい。あるいは、制御装置26は、ハウジング11とは離れた車両100における適宜の位置に配置されうる。
【0073】
入力インターフェース261は、ひずみゲージ25から出力された荷重信号S21を受け付ける。プロセッサ262は、荷重信号S21に基づいて、カバー12に付着した異物を検出するように構成されている。異物としては、雨滴、雪片、汚泥、虫の死骸などが例示されうる。入力インターフェース261は、必要に応じて荷重信号S21をプロセッサ262により行なわれる処理に適した形態に変換する信号処理回路を含みうる。
【0074】
図6は、プロセッサ262により行なわれる処理の流れの一例を示している。プロセッサ262は、まず荷重基準値の取得を行なう(STEP21)。具体的には、プロセッサ262は、所定のタイミングで入力インターフェース261にひずみゲージ25から荷重信号S21を受け付けさせることにより、当該所定のタイミングにおける検出面25aに印加された荷重を、基準値として取得する。所定のタイミングの例としては、センサシステム1の起動時が挙げられる。
【0075】
図5に示されるように、制御装置26は、ストレージ263を備えている。ストレージ263は、適宜の書き替え可能な半導体メモリにより実現されうる。プロセッサ262は、上記のように取得された基準値としての荷重に対応するデータを、ストレージ263に格納する。
【0076】
続いて、プロセッサ262は、所定の時間間隔で入力インターフェース261にひずみゲージ25から荷重信号S21を受け付けさせる。すなわち、プロセッサ262は、所定の時間間隔でひずみゲージ25の測定値を取得する(STEP22)。所定の時間間隔は、例えば100ミリ秒である。
【0077】
続いて、プロセッサ262は、STEP22で取得されたひずみゲージ25の検出面25aの荷重測定値を、STEP21でストレージ263に格納された荷重基準値と比較する。プロセッサ262は、測定値と基準値の差異が所定値以上であるかを判断する(STEP23)。
【0078】
基準値が取得された後に生じたひずみゲージ25の検出面25aにおける荷重値の変化は、検出面25aに異物が付着したことより引き起こされた蓋然性が高い。この場合、カバー12にも異物が付着している可能性が高い。したがって、検出面25aにおける荷重に係る測定値と基準値の差異が所定値以上である場合(STEP23においてYES)、プロセッサ262は、カバー12に異物が付着していると判断し、検出信号S22を生成する(STEP24)。
【0079】
検出面25aにおける荷重に係る測定値と基準値の差異が所定値未満である場合(STEP23においてNO)、プロセッサ262は、カバー12に異物が付着していないと判断し、処理はSTEP22に戻る。
【0080】
図5に示されるように、制御装置26は、出力インターフェース264を備えている。プロセッサ262は、出力インターフェース264に検出信号S22を出力させる。検出信号S22は、車両100における他の制御装置へ送信されうる。例えば、当該他の制御装置は、検出信号S22に基づいて、カバー12に異物が付着している旨の報知を車両100の乗員に対して行ないうる。報知は、視覚的報知、聴覚的報知、触覚的報知の少なくとも一つを通じて行なわれうる。
【0081】
報知を受けた乗員は、適宜の対応をとりうる。例えば、センサシステム2は、カバー12へ向けて液体を噴射するノズル27を備えうる。液体としては、水、湯、洗浄液などが例示されうる。乗員は、ノズル27に液体を噴射させる操作を行ないうる。これにより、カバー12に付着した異物の除去を図ることができる。
【0082】
LiDARセンサユニット14の検出光および戻り光の進行経路上に位置する光通過領域12aに異物が付着すると、LiDARセンサユニット14による車両100の外部の情報の検出の妨げになりうる。しかしながら、上記のように構成されたひずみゲージ25によってそのような異物の付着が検出されうるので、検出結果に応じた適切な処理をとることができる。よって、車両100の外面の一部を形成するカバー12によって覆われたLiDARセンサユニット14による情報検出能力の低下を抑制できる。
【0083】
異物の除去処理が行なわれると、処理はSTEP21に戻る。すなわち、この時点におけるひずみゲージ25の検出面25aに加わる荷重の値が取得され、以降の処理における新たな基準値とされる。すなわち、ノズル27の動作後は、荷重基準値が取得される所定のタイミングの一例になりうる。
【0084】
図5に示されるように、プロセッサ262により生成された検出信号S22は、上記したノズル27を動作させるために使用されうる。すなわち、プロセッサ262は、カバー12に付着した異物が検出されると、ノズル27にカバー12へ向けて液体を噴射させうる。
【0085】
このような構成によれば、カバー12に付着した異物を除去するための処理を自動化できる。したがって、車両100の外面の一部を形成するカバー12によって覆われたLiDARセンサユニット14による情報検出能力の低下の抑制効果が高まる。
【0086】
図5に示されるように、ノズル27は、超音波アクチュエータ271を備えうる。超音波アクチュエータ271は、超音波帯域の周波数で振動し、ノズル27からカバー12に向けて噴射される液体に固有振動を励起する装置である。この場合、プロセッサ262は、ノズル27による液体の噴射時に超音波アクチュエータ271を動作させる制御信号S23を、出力インターフェース264に出力させる。
【0087】
このような構成によれば、ノズル27から噴射された液体によるいわゆる超音波洗浄効果が得られ、カバー12に付着した異物の除去をさらに促進できる。
【0088】
ひずみゲージ25が配置される位置は、カバー12上に限られない。カバー12に付着した異物の検出が可能であれば、ハウジング11や車両100の車体におけるカバー12に隣接する位置に配置されうる。
【0089】
図5に示されるように、センサシステム1は、流路28を備えうる。流路28は、少なくとも光通過領域12aを通過してカバー12上を流れ落ちる液体を受容するために、カバー12の光通過領域12aよりも下方かつカバー12に隣接する位置に配置される。そのような液体の例としては、雨滴、溶けた雪片、自車両または他車両により路面から跳ね上げられた汚水、ノズル27からカバー12へ噴射された液体などが挙げられる。流路28は、ハウジング11またはカバー12の一部として形成されてもよい。
【0090】
流路28は、重力を利用した排液構造を有している。図5に示される例においては、流路28の第一端部28aよりも第二端部28bの方が下方に位置している。第二端部28bは、外部へ開放されている。したがって、流路28により受容された液体は、流路28内を第二端部28bに向かって流れ、第二端部28bより排出される。
【0091】
この場合、ひずみゲージ25の検出面25aは、流路28内に配置されうる。したがって、ひずみゲージ25は、カバー12に隣接するように配置される。図7の(A)は、本例に係るひずみゲージ25が配置された流路28を上方から見た外観を例示している。図7の(B)は、図7の(A)における線VIIB‐VIIBに沿って矢印方向から見た流路28の断面を例示している。
【0092】
異物が付着しているカバー12の表面を流れ落ちる液体は、当該異物の少なくとも一部を含んでいる蓋然性が高い。したがって、当該液体が流路28に受容されると、当該異物を含まない液体が受容された場合よりも、ひずみゲージ25の検出面25aに加わる荷重を大きく変化させる。これにより、図6を参照して説明した上述の手法に基づいてカバー12への異物の付着が検出されうる。ひずみゲージ25の検出面25aは、重力による液体の移動経路のどこかに配置すればよい。したがって、ひずみゲージ25の配置自由度を高めることができる。
【0093】
重力を利用した流路28の排液構造は、図5図7の(A)、および図7の(B)に示された例に限られない。例えば、図7の(C)に示されるように、底部28cに設けられた斜面28eと貫通孔28fを通じて液体が排出されてもよい。この場合、第二端部28bは、開放されていなくともよい。
【0094】
図5に示されるように、センサシステム2は、ランプユニット29を備えうる。ランプユニット29は、車両100の外部へ照明光を出射する装置である。ランプユニット29としては、前照灯ユニット、車幅灯ユニット、方向指示灯ユニット、霧灯ユニット、リアコンビネーションランプユニットなどが例示されうる。
【0095】
ランプユニット29は、収容室13内に配置される。したがって、ランプユニット29は、カバー12によって覆われる。カバー12は、ランプユニット29から出射された照明光の通過も許容する。この場合、カバー12は、可視光についても透明な材料によって形成される。
【0096】
ランプユニット29は、車両100の外部に照明光を供給するという機能ゆえに、車両100における遮蔽物の少ない場所に配置されることが一般的である。このような場所にLiDARセンサユニット14も配置されることにより、車両100の外部の情報を効率的に取得できる。
【0097】
上記の処理を実行可能なプロセッサ262は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサとして提供されてもよいし、専用集積回路素子の一部として提供されてもよい。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUなどが例示されうる。汎用メモリとしては、RAMやROMが例示されうる。書き替え可能な汎用メモリがストレージ263の機能を担ってもよい。専用集積回路素子としては、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどが例示されうる。プロセッサ262とストレージ263は、独立した素子として提供されてもよいし、単一の素子内にパッケージされていてもよい。
【0098】
上記の各実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の各実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更、改良、あるいは組合せがなされうる。
【0099】
上記の各実施形態に係るLiDARセンサユニット14に加えてあるいは代えて、車両100の外部の情報を検出するために光を用いる適宜のセンサユニットが、収容室13内に配置されうる。そのようなセンサユニットとしては、可視光を用いるカメラユニット、赤外光を用いるTOF(Time of Flight)カメラユニット、ミリ波を用いるレーダユニットなどが例示されうる。
【符号の説明】
【0100】
1、2:センサシステム、12:カバー、14:LiDARセンサユニット、15:pHセンサ、15a:検出面、25:ひずみゲージ、25a:検出面、162、262:プロセッサ、17、27:ノズル、171、271:超音波アクチュエータ、18、28:流路、19、29:ランプユニット、100:車両、S11:pH信号、S21:荷重信号、LQ:pHが管理された液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7