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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】歯磨剤
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20240529BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240529BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240529BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240529BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B65D83/00 K
A61Q11/00
A61K8/34
A61K8/60
A61K8/73
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023092990
(22)【出願日】2023-06-06
(65)【公開番号】P2024062924
(43)【公開日】2024-05-10
【審査請求日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2022170963
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸井 学
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-045473(JP,A)
【文献】特開2017-214319(JP,A)
【文献】特開2006-176479(JP,A)
【文献】特開2010-280616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
A61Q 11/00
A61K 8/00- 8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを備えたエアレスポンプ部材が容器本体の上面開口部に連設されてなる正立型ボトル容器(X)に、100%未満の初期充填率で歯磨組成物(Y)が充填されてなる歯磨剤であって、
正立型ボトル容器(X)が、ポンプの操作に連動して、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)を介して歯磨組成物(Y)を吸入させ、かつノズルの吐出口から歯磨組成物(Y)を吐出させる機構を有し、
正立型ボトル容器(X)において、歯磨剤の使用開始前に吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に非浸漬状態であり、
歯磨組成物(Y)において、エーテル化度が1未満であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(yA)を2質量%以上5質量%以下含有し、水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは水不溶性粉体(yx)を含有せず、25℃でのヘリパス粘度(y1)が1300dPa・s以上3000dPa・s以下であり、かつ25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が0.3以上1未満である、歯磨剤。
【請求項2】
歯磨組成物(Y)が、さらにグリセリン、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコール(yB)を含有する請求項1に記載の歯磨剤。
【請求項3】
歯磨組成物(Y)が、さらにエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、及びトレハロースから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール(yC)を含有する請求項1又は2に記載の歯磨剤。
【請求項4】
歯磨組成物(Y)が、さらにエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、及びトレハロースから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール(yC)を含有し、かつ成分(yB)の含有量と成分(yC)の含有量との質量比((yB)/(yC))が、0.4以上1.3以下である請求項に記載の歯磨剤。
【請求項5】
歯磨組成物(Y)が水(yD)を含有し、かつ成分(yB)の含有量及び成分(yC)の含有量の合計と成分(yD)の含有量との質量比([(yB)+(yC)]/(yD))が、0.5以上1.5以下である請求項4に記載の歯磨剤。
【請求項6】
吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)までの距離(xd)が、50mm未満である請求項1又は2に記載の歯磨剤。
【請求項7】
ノズルを備えたエアレスポンプ部材が容器本体の上面開口部に連設されてなる正立型ボトル容器(X)に、100%未満の初期充填率で歯磨組成物(Y)が充填されてなる歯磨剤であって、
正立型ボトル容器(X)が、ポンプの操作に連動して、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)を介して歯磨組成物(Y)を吸入させ、かつノズルの吐出口から歯磨組成物(Y)を吐出させる機構を有し、
正立型ボトル容器(X)において、歯磨剤の使用開始前に吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に非浸漬状態であり、
歯磨組成物(Y)において、グリセリン、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコール(yB)、並びにエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、及びトレハロースから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール(yC)を含有し、成分(yB)の含有量と成分(yC)の含有量との質量比((yB)/(yC))が0.4以上1.3以下であり、水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは水不溶性粉体(yx)を含有せず、25℃でのヘリパス粘度(y1)が1300dPa・s以上3000dPa・s以下であり、かつ25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が0.3以上1未満である、歯磨剤。
【請求項8】
歯磨組成物(Y)が、エーテル化度が1未満であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(yA)を含有する請求項7に記載の歯磨剤。
【請求項9】
歯磨組成物(Y)が水(yD)を含有し、かつ成分(yB)の含有量及び成分(yC)の含有量の合計と成分(yD)の含有量との質量比([(yB)+(yC)]/(yD))が、0.5以上1.5以下である請求項7又は8に記載の歯磨剤。
【請求項10】
吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)までの距離(xd)が、50mm未満である請求項7又は8に記載の歯磨剤。
【請求項11】
ノズルを備えたエアレスポンプ部材が容器本体の上面開口部に連設されてなる正立型ボトル容器(X)と、エーテル化度が1未満であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(yA)を2質量%以上5質量%以下含有し、水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは水不溶性粉体(yx)を含有せず、25℃でのヘリパス粘度(y1)が1300dPa・s以上3000dPa・s以下であり、かつ25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が0.3以上1未満である歯磨組成物(Y)とからなる歯磨剤キットであって、
正立型ボトル容器(X)が、ポンプの操作に連動して、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)を介して歯磨組成物(Y)を吸入させ、かつノズルの吐出口から歯磨組成物(Y)を吐出させる機構を有し、
歯磨組成物(Y)の正立型ボトル容器(X)における初期充填率が100%未満であり、かつ正立型ボトル容器(X)において、歯磨剤キットの使用開始前に吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に非浸漬状態である、歯磨剤キット。
【請求項12】
ノズルを備えたエアレスポンプ部材が容器本体の上面開口部に連設されてなる正立型ボトル容器(X)と、水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは水不溶性粉体(yx)を含有せず、25℃でのヘリパス粘度(y1)が1300dPa・s以上3000dPa・s以下であり、かつ25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が0.3以上1未満である歯磨組成物(Y)とからなる歯磨剤キットであって、
正立型ボトル容器(X)が、ポンプの操作に連動して、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)を介して歯磨組成物(Y)を吸入させ、かつノズルの吐出口から歯磨組成物(Y)を吐出させる機構を有し、
歯磨組成物(Y)において、グリセリン、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコール(yB)、並びにエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、及びトレハロースから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール(yC)を含有し、成分(yB)の含有量と成分(yC)の含有量との質量比((yB)/(yC))が0.4以上1.3以下であり、
歯磨組成物(Y)の正立型ボトル容器(X)における初期充填率が100%未満であり、かつ正立型ボトル容器(X)において、歯磨剤キットの使用開始前に吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に非浸漬状態である、歯磨剤キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正立型ボトル容器に歯磨組成物が充填されてなる歯磨剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプを備えた容器に充填されてなる歯磨剤は、使用時にポンプを押圧するだけで簡易に吐出することができる。なかでも、ポンプとしてエア流入のない「エアレスポンプ」を採用すると、エア流入型のポンプに比べ、内容物の品質劣化を容易に防止できる等の長所を有する。
例えば、特許文献1には、エアレスポンプと歯磨き組成物をエアレスポンプに供給するチューブとを含むポンプ式歯磨き容器に収容され、特定量の増粘用シリカを含む特定粘度の歯磨き組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-8323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、歯磨剤のような高い保形性を有するペーストを正立型のエアレスポンプ容器に充填し、容器から歯磨剤の吐出を試みると、特にエアレスポンプ容器に歯磨剤が初期充填率100%未満で充填されている場合には、容器内に存在するエアが歯磨組成物に混入して吐出時に泡巻き込みが発生するという問題に、本発明者は新たに着目した。
しかしながら、上記特許文献1のような従来技術では、この吐出時の泡巻き込みを充分に抑制しつつ、良好な吐出性や歯ブラシの上での保形性をも両立するには、依然として改善を要する状況にある。
【0005】
したがって、本発明は、エアレスポンプを用いた正立型ボトル容器に歯磨組成物が充填されてなる歯磨剤において、泡巻き込みの発生を充分に抑制しつつ、良好な吐出性や保形性を確保することのできる歯磨剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、吸入口が特定の状態である正立型ボトル容器に、水不溶性粉体の含有が制限された特異な粘度特性を有する歯磨組成物が充填されてなることにより、不要な泡巻き込みを効果的に抑制することができ、かつ良好な吐出性や保形性を確保することのできる歯磨剤が得られることを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、ノズルを備えたエアレスポンプ部材が容器本体の上面開口部に連設されてなる正立型ボトル容器(X)に、100%未満の初期充填率で歯磨組成物(Y)が充填されてなる歯磨剤であって、
正立型ボトル容器(X)が、ポンプの操作に連動して、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)を介して歯磨組成物(Y)を吸入させ、かつノズルの吐出口から歯磨組成物(Y)を吐出させる機構を有し、
正立型ボトル容器(X)において、歯磨剤の使用開始前に吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に非浸漬状態であり、
歯磨組成物(Y)において、水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは水不溶性粉体(yx)を含有せず、25℃でのヘリパス粘度(y1)が1300dPa・s以上3000dPa・s以下であり、かつ25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が0.3以上1未満である、歯磨剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の正立型ボトル容器に歯磨組成物が充填されてなる歯磨剤(以下、「本発明の歯磨剤」とも称する)によれば、歯磨組成物を吐出する際、容器内のエアが歯磨組成物に混入して不要な泡巻き込みが発生するのを効果的に抑制することができ、また過度な糸曳きや不要な垂れをも防止して、良好な吐出性や保形性をも発現することができるので、快適かつ利便性の高い使用を実感することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の歯磨剤を構成する、正立型ボトルの一態様を示す概略図である。
図2図1における容器本体の上面開口部を示す拡大図である。
図3】本発明の歯磨剤を構成する、正立型ボトルの一態様である、エアレスポンプ部材の下端部にディップチューブが配設されてなる容器において、容器本体の上面開口部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、良好な「吐出性」とは、正立型ボトル容器から歯磨組成物を吐出する際において、ポンプの押圧し易さ(押し出し性)、ノズルの吐出口における組成物の垂れや吐出先との間での糸曳きの発生抑制、及びノズルの吐出口や流路等での組成物の不要な固着を防止することによる円滑な吐出の維持(経時的吐出安定性)をも包括する意味である。
また、「泡巻き込み」とは、正立型ボトル容器から吐出した歯磨組成物中にエアが混入し、泡として歯磨組成物中に巻き込こまれて使用感が損なわれる状態を意味する。
さらに「吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に非浸漬状態」とは、正立型ボトル容器の容器本体内において、吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に接触することなく歯磨組成物(Y)から離間している状態を意味する。
【0011】
本発明の歯磨剤は、ノズルを備えたエアレスポンプ部材が容器本体の上面開口部に連設されてなる正立型ボトル容器(X)に、100%未満の初期充填率で歯磨組成物(Y)が充填されてなる。
【0012】
本発明を構成する正立型ボトル容器(X)は、底面、及び上面開口部を有する容器本体と、容器本体の上面開口部にノズルを備えたエアレスポンプ部材が連設されてなる容器である。すなわち、図1の概略図にも示すように、本発明を構成する正立型ボトル容器(X)1は、容器本体2の上面開口部21、及びエアレスポンプ部材3を介し、ノズル32の吐出口に至るまで流路が形成されてなる。
したがって、使用時には、容器1を正立させたままの状態でエアレスポンプを操作すれば、ノズル32から歯磨組成物を容易に吐出させることができ、使用性・利便性を高めることに寄与する容器である。
また、エアレスポンプ部材3は、エア流入のないポンプを備える部材であり、ポンプの押圧に連動してポンプ内部の圧力が変動し、容器本体2に充填されてなる歯磨組成物の、エアレスポンプ部材3内部への吸入、及びノズル32から外部への吐出が一連の操作として可能となる。
なお、図1に示すエアレスポンプ部材3は、いわゆる「ドーム型ポンプ」と称される形態を呈するポンプ31を備える部材であるが、本発明においてはこれに限定されず、上部を下方へ押圧するピストンのような形態を呈するポンプを備える部材(図示せず)等であってもよく、適宜選択することができる。
【0013】
このように、正立型ボトル容器(X)1は、ポンプ31の操作に連動して、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)を介して歯磨組成物を吸入させ、かつノズル32の吐出口から歯磨組成物を吐出させる機構を有する。例えば、図1に示す正立型ボトル容器(X)1の形態であれば、ポンプ31のボタンを押圧等することによって操作すると、ポンプ31の内圧が変動して、吸入弁(x1-2)を動作させることが可能となる。具体的には、ポンプ31の操作によりポンプ内の内圧が高まれば吸入弁(x1-2)が閉弁し、歯磨組成物の流入を阻止する一方、ポンプ内の内圧が低まれば吸入弁(x1-2)が開弁し、吸入口(x1-1)から歯磨組成物を吸入させる。
【0014】
本発明を構成する正立型ボトル容器(X)においては、歯磨剤の使用開始前には吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に非浸漬状態である。
なお、エアレスポンプ部材の下端部にディップチューブが配設された場合は、吸入口(x1-1)はディップチューブの下端部とする。
【0015】
従来のボトル容器においては、下端部が容器本体の底面近傍に到達する程度に長い形状を有するディップチューブが配設されている。これは、ポンプの初回使用開始から終了まで、底面近傍にわずかに残留する内容物をも充分に吸引して無駄なく吐出できるよう配慮されたものである。
しかしながら、ポンプとしてエア流入のない「エアレスポンプ」を採用し、初期充填率が100%未満であって正立型ボトル容器(X)内に歯磨組成物(Y)の未充填領域が存在する本発明においては、こうした長いディップチューブがエアレスポンプ部材の下端部から容器本体の底面に向けて配設されると、容器内における歯磨組成物に吸入口が浸漬したままの状態が保持されることとなる。そのため、歯磨組成物の残量が減るにつれ、歯磨組成物の未充填領域に存在するエアまでもがポンプの操作に連動して歯磨組成物とともに吸入される。その結果、ノズルから吐出される歯磨組成物にエアが混入してしまい、これが、不要で不快な泡巻き込みが発生してしまう大きな要因となることに、本発明者は新たに着目した。
【0016】
そこで、本発明者は、まず本発明を構成する正立型ボトル容器(X)において、吐出する歯磨組成物における不要な泡巻き込みを有効に抑制すべく、歯磨剤の使用開始前には吸入口(x1-1)を歯磨組成物(Y)に非浸漬状態としながら、後述する水不溶性粉体の含有が制限された特異な粘度特性の歯磨組成物(Y)をこれに充填すべきことを見出した。その結果、本発明であれば、歯磨剤の初回使用開始時に、まずは容器本体における歯磨組成物の未充填領域を占めるエアを数回のポンプ操作で予め排出することが可能である。さらにその後、容器内の歯磨組成物(Y)を使い切るまで泡巻き込みの発生を効果的に抑制するだけでなく、良好な吐出性や保形性の発現をも可能とするものである。
【0017】
歯磨剤の使用開始前に吸入口(x1-1)を歯磨組成物(Y)に非浸漬状態とすべく、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)までの距離(xd)は、不要な泡巻き込みを有効に抑制する観点から、好ましくは50mm未満であり、より好ましくは46mm未満であり、さらに好ましくは35mm未満であり、よりさらに好ましくは25mm未満であり、またさらに好ましくは20mm未満であり、またさらに好ましくは15mm未満であり、またさらに好ましくは10mm未満であり、またさらに好ましくは5mm未満であり、またさらに好ましくは1mm未満である。
また、吸入口(x1-1)における口径は、特異な粘度特性を有する歯磨組成物(Y)の、流路における流動性を確保する観点から、好ましくは1mm以上であり、より好ましくは5mm以上であり、好ましくは15mm以下であり、より好ましくは12mm以下である。
【0018】
正立型ボトル容器(X)の一態様においては、歯磨剤の使用開始前に吸入口(x1-1)を歯磨組成物(Y)に非浸漬状態とする観点から、また好ましくは、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)までの距離(xd)を上記範囲内に制限する観点から、図3に示すように、エアレスポンプ部材3の下端部に配設されたディップチューブ33の下端部により吸入口(x1-1)が形成されてなる。
或いは、正立型ボトル容器(X)の他の一態様においては、図2に示すように、ディップチューブ33が配設されることなくエアレスポンプ部材3の下端部に吸入口(x1-1)が一体的に形成されてなる。
これにより、100%未満の初期充填率で歯磨組成物(Y)が充填されてなる本発明の歯磨剤において、使用開始前に吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に浸漬することを回避させ、容器本体における歯磨組成物の未充填領域を占めるエアを初回使用開始時に排出することが可能となり、吐出時における不要な泡巻き込みの発生を効果的に抑制することができる。
【0019】
エアレスポンプ部材3の下端部にディップチューブ33を配設する場合、かかるディップチューブ33の長さは、不要な泡巻き込みを有効に抑制する観点から、吸入弁(x1-2)からディップチューブ33の下端部までの距離で、好ましくは43mm未満であり、より好ましくは35mm未満であり、さらに好ましくは30mm未満であり、よりさらに好ましくは20mm未満であり、またさらに好ましくは18mm未満である。
さらにより好ましくは、正立型ボトル容器(X)は、エアレスポンプ部材3の下端部にディップチューブは配設しない構成である。
吸入口(x1-1)の内径は、流路における組成物の円滑な流動性を確保し、良好な吐出性を保持する観点から、好ましくは1~15mmであり、より好ましくは2~14mmであり、さらに好ましくは3~13mmであり、よりさらに好ましくは4~12mmであり、またさらに好ましくは5~11mmである。
【0020】
正立型ボトル容器(X)において、ポンプの最大押力(x2)は、良好な吐出性を保持しつつ、使用性を高める観点から、好ましくは10N以上であり、より好ましくは20N以上であり、さらに好ましくは30N以上であり、好ましくは100N以下であり、より好ましくは80N以下であり、さらに好ましくは50N以下である。
【0021】
正立型ボトル容器(X)における歯磨組成物(Y)の初期充填率は、100%未満であって、50~99%であってもよく、60~95%であってもよく、65~90%であってもよく、70~85%であってもよい。
なお、初期充填率(%)とは、本発明の歯磨剤の使用開始前における、正立型ボトル容器(X)の容器本体中での歯磨組成物(Y)の充填率(%)であり、正立型ボトル容器(X)の容器本体の内容積を100%としたときに歯磨組成物(Y)が占める容積割合(%)を意味する。
また、正立型ボトル容器(X)の形態が、特にパウチ容器のようなフィルム容器である場合であって、図1にも示すように、ノズルを備えたエアレスポンプ部材3を容器本体の上面開口部21にセットして使用するような場合、初期充填率(%)の基準となる正立型ボトル容器(X)の容器本体の内容積とは、セット後のエアレスポンプ部材3及び吸入弁(x1-2)によって遮蔽された容器本体中の全空隙領域の容積を意味する。
【0022】
正立型ボトル容器(X)におけるエアの初期存在率(%)は、容器本体中に、1%超50%未満であってもよく、5%超40%未満であってもよく、10%超45%未満であってもよく、15%超30%未満であってもよい。
なお、エアの初期存在率(%)とは、本発明の歯磨剤の使用開始前における、正立型ボトル容器(X)の容器本体中に存在するエアの総量を示す値であり、正立型ボトル容器(X)の内容積を100%としたときのエアの総量が占める容積割合(%)を意味する。
また、正立型ボトル容器(X)の形態が、特にパウチ容器のようなフィルム容器である場合であって、図1にも示すように、ノズルを備えたエアレスポンプ部材3を容器本体の上面開口部21にセットして使用するような場合、初期存在率(%)の基準となる正立型ボトル容器(X)の容器本体の内容積とは、エアレスポンプ部材3及び吸入弁(x1-2)によって遮蔽された容器本体中の全空隙領域の容積を意味する。
【0023】
正立型ボトル容器(X)の容器本体の内容積は、使用性を考慮して適宜設計し得るが、例えば、好ましくは30~1000mLであり、より好ましくは50~500mLであり、さらに好ましくは75~300mlであり、よりさらに好ましくは80~250mlであり、またさらに好ましくは90~200mlである。
【0024】
正立型ボトル容器(X)において、ポンプの一押圧により、ノズル32の吐出口から吐出される歯磨組成物(Y)の量(x3)は、良好な使用性を確保する観点から、好ましくは0.1g以上であり、より好ましくは0.5g以上であり、さらに好ましくは0.75g以上であり、よりさらに好ましくは0.8g以上であり、好ましくは10g以下であり、より好ましくは7g以下であり、さらに好ましくは5g以下であり、よりさらに好ましくは4g以下である。
【0025】
正立型ボトル容器(X)の材質は、消費される歯磨組成物(Y)の量に応じて変形する程度の柔軟性を有するものが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。なかでも、図1に示すようなエアレスポンプ部材3のポンプ31のボタンの材質は、柔軟性が高く押圧に連動して弾性変形しやすい材質を採用してもよい。
正立型ボトル容器(X)の形態としては、内容物を充填する際の操作性や密閉性等の観点から、フィルム容器とすることが好ましく、具体的には、例えばパウチ容器とすることが好ましい。
【0026】
本発明を構成する歯磨組成物(Y)は、上記正立型ボトル容器(X)に充填されてなり、水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは水不溶性粉体(yx)を含有せず、25℃でのヘリパス粘度(y1)が1300dPa・s以上3000dPa・s以下であり、かつ25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が0.3以上1未満である。
このような、水不溶性粉体の含有が制限された特異な粘度特性を有する歯磨組成物(Y)により、容器内の歯磨組成物(Y)を使い切るまで、エアの混入による不要な泡巻き込みの発生を効果的に抑制することが可能となり、良好な吐出性とともに優れた保形性をも発現することができる。
【0027】
歯磨組成物(Y)の25℃でのヘリパス粘度(y1)は、上記正立型ボトル容器(X)に充填されて、特異な粘度特性を発現しつつ、泡巻き込みの発生を有効に抑制し、良好な吐出性を保持しながら優れた保形性を確保する観点から、1300dPa・s以上であって、好ましくは1350dPa・s以上であり、より好ましくは1400dPa・s以上であり、さらに好ましくは1450dPa・s以上であり、よりさらに好ましくは1500dPa・s以上であり、3000dPa・s以下であって、好ましくは2500dPa・s以下であり、より好ましくは2300dPa・s以下であり、さらに好ましくは2000dPa・s以下であり、さらに好ましくは1800dPa・s以下である。そして、歯磨組成物(Y)の25℃でのヘリパス粘度(y1)は、1300dPa・s以上3000dPa・s以下であって、好ましくは1350~2500dPa・sであり、より好ましくは1400~2300dPa・sであり、さらに好ましくは1450~2000dPa・sであり、よりさらに好ましくは1500~1800dPa・sである。
【0028】
歯磨組成物(Y)の25℃でのB8H粘度(y2)は、上記正立型ボトル容器(X)に充填されて、特異な粘度特性を発現しつつ、泡巻き込みの発生を有効に抑制し、良好な吐出性を保持しながら優れた保形性を確保する観点から、好ましくは1500dPa・s以上であり、より好ましくは1800dPa・s以上であり、さらに好ましくは2500dPa・s以上であり、好ましくは3500dPa・s以下であり、より好ましくは3200dPa・s以下であり、さらに好ましくは3000dPa・s以下である。そして、歯磨組成物(Y)の25℃でのB8H粘度(y2)は、好ましくは1500~3500dPa・sであり、より好ましくは1800~3200dPa・sであり、さらに好ましくは2500~3000dPa・sである。
【0029】
歯磨組成物(Y)において、25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))は、上記正立型ボトル容器(X)に充填されて、特異な粘度特性を発現しつつ、容器内の歯磨組成物(Y)を使い切るまで、エアの混入による不要な泡巻き込みの発生を有効に抑制し、良好な吐出性や保形性を確保する観点、及びノズルの吐出口や流路等での組成物の不要な固着を防止してポンプの円滑な操作等を確保する観点から、0.3以上であって、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.55以上であり、1未満であって、好ましくは0.95以下であり、より好ましくは0.9以下であり、さらに好ましくは0.8以下であり、よりさらに好ましくは0.75以下であり、またさらに好ましくは0.62以下である。
そして、歯磨組成物(Y)において、25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))は、0.3以上1未満であって、好ましくは0.4~0.95であり、より好ましくは0.5~0.9であり、さらに好ましくは0.55~0.8であり、よりさらに好ましくは0.55~0.75であり、またさらに好ましくは0.55~0.62である。
【0030】
本発明の歯磨剤において、容器内の歯磨組成物(Y)を使い切るまで、泡巻き込みの発生を有効に抑制する観点、及び良好な吐出性や保形性を確保する観点から、歯磨組成物(Y)における水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは歯磨組成物(Y)は水不溶性粉体(yx)を含有しない。
ここで、「水不溶性」とは、水100gに対する溶解量(20℃)が1g以下であることを意味する。
【0031】
かかる水不溶性粉体(yx)としては、無水ケイ酸、シリカ軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、無水ケイ酸としては、吸油量が50~150mL/100gである研磨性シリカ、及び吸油量が200~400mL/100gである増粘性シリカが挙げられる。なお、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101-13-2(2004年制定)の方法により、吸収される煮あまに油の量により特定される値を意味する。
【0032】
水不溶性粉体(yx)の含有量は、特異な粘度特性を発現しつつ、泡巻き込みの発生を有効に抑制し、良好な吐出性や保形性を確保する観点から、歯磨組成物(Y)中に、5質量%未満であって、好ましくは4.5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、よりさらに好ましくは2質量%以下であり、またさらに好ましくは0.8質量%以下であり、或いは歯磨組成物(Y)は水不溶性粉体(yx)を含有しない。
【0033】
なかでも、研磨性シリカの含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは4.5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、1質量%以上であってもよい。
また、増粘性シリカの含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.4質量%以下であり、歯磨組成物(Y)は増粘性シリカを含有しないのがよりさらに好ましい。
【0034】
歯磨組成物(Y)は、特異な粘度特性を発現する組成物とする観点から、さらにエーテル化度が1未満であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(yA)を含有することが好ましい。ここで、エーテル化度とは、セルロース一単位あたりに有する3個の水酸基がカルボキシメチル基(-CH2COONa)に置換されているものであって、灰化法によって決定される値である。
【0035】
成分(yA)のエーテル化度は、泡巻き込みの発生を有効に抑制し、良好な吐出性や保形性を確保し得る特異な粘度特性を発現する観点から、1未満であって、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下であり、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.55以上であり、さらに好ましくは0.6以上である。
【0036】
成分(yA)の含有量は、特異な粘度特性を発現する観点から、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは2.5質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以下である。そして、成分(yA)の含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは2~5質量%であり、より好ましくは2.5~4.5質量%であり、さらに好ましくは3~4質量%である。
【0037】
歯磨組成物(Y)は、流路における組成物の円滑な流動性を確保し、良好な吐出性を保持する観点から、さらにグリセリン、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコール(yB)を含有することが好ましく、少なくともグリセリンを含有することがより好ましい。
【0038】
成分(yB)の含有量は、歯磨組成物(Y)中に、合計で、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは32質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。そして、成分(yB)の含有量は、歯磨組成物(Y)中に、合計で、好ましくは10~35質量%であり、より好ましくは12~32質量%であり、さらに好ましくは15~30質量%である。
なかでも、グリセリンの含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、よりさらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。そして、グリセリンの含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは7~25質量%であり、さらに好ましくは10~20質量%であり、よりさらに好ましくは15~20質量%である。
【0039】
歯磨組成物(Y)は、特異な粘度特性を発現する組成物とする観点から、さらにエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、及びトレハロースから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール(yC)を含有することが好ましい。なかでも、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、及びマルチトールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、エリスリトール、ソルビトール、及びマルチトールから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0040】
成分(yC)の含有量は、歯磨組成物(Y)中に、合計で、好ましくは15質量%以上であり、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは22質量%以上であり、さらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。そして、成分(yC)の含有量は、歯磨組成物(Y)中に、合計で、好ましくは15~45質量%であり、好ましくは20~45質量%であり、より好ましくは22~40質量%であり、さらに好ましくは25~35質量%である。
【0041】
歯磨組成物(Y)において、泡巻き込みの発生を有効に抑制し、良好な吐出性や保形性を確保し得る特異な粘度特性を発現する観点から、成分(yB)の含有量と成分(yC)の含有量との質量比((yB)/(yC))は、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.6以上であり、好ましくは1.3以下であり、より好ましくは1.2以下であり、さらに好ましくは1.1以下である。そして、成分(yB)の含有量と成分(yC)の含有量との質量比((yB)/(yC))は、好ましくは0.4以上1.3以下であり、より好ましくは0.5~1.2であり、さらに好ましくは0.6~1.1である。
【0042】
歯磨組成物(Y)は、特異な粘度特性を発現する組成物とする観点から、さらに水(yD)を含有することが好ましい。本発明における成分(yD)の水とは、歯磨組成物に配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、歯磨組成物中に含まれる全水分を意味する。歯磨組成物(Y)が水(yD)を含有することによって、上記各成分を良好に溶解又は分散させ、かかる歯磨組成物(Y)が正立型ボトル容器(X)に充填されて歯磨剤を構成することにより、所望の効果を充分に発揮させることができる。
【0043】
成分(yD)の含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは32質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは57質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。そして、成分(yD)の含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは30~60質量%であり、より好ましくは32~57質量%であり、さらに好ましくは35~50質量%である。
【0044】
なお、成分(yD)の含有量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業社製)を用いることができる。この装置では、歯磨組成物を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0045】
歯磨組成物(Y)において、泡巻き込みの発生を有効に抑制し、良好な吐出性や保形性を確保し得る特異な粘度特性を発現する観点から、成分(yB)の含有量及び成分(yC)の含有量の合計と成分(yD)の含有量との質量比({(yB)+(yC)}/(yD))は、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.75以上であり、よりさらに好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.3以下である。そして、成分(yB)の含有量及び成分(yC)の含有量の合計と成分(yD)の含有量との質量比({(yB)+(yC)}/(yD))は、好ましくは0.5以上1.5以下であり、より好ましくは0.7~1.4であり、さらに好ましくは0.75~1.4であり、よりさらに好ましくは0.8~1.3である。
【0046】
歯磨組成物(Y)は、さらにアニオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤を含有することができる。
アニオン界面活性剤としては、オレイン酸塩、ラウリン酸塩等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、パルミチル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、オクチル硫酸塩、カプリル硫酸塩等のアルキル硫酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;アルキルリン酸塩等のアルキルリン酸塩;高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩;ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩;N-アシルアミノ酸、N-アシルタウリン、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0047】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ショ糖脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリド等のグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグルコシド;モノステアリン酸デカグリセリド、モノミリスチン酸デカグリセリド等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;並びにポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0048】
界面活性剤の含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2.7質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。そして、界面活性剤の含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは1~3質量%であり、より好ましくは1.5~2.7質量%であり、さらに好ましくは2~2.5質量%である。
【0049】
歯磨組成物(Y)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに上記成分(yA)以外の粘結剤及び/又は粘度調整剤を含有することができる。かかる粘結剤及び/又は粘度調整剤としては、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー等のポリマー系粘結剤;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシセルロース誘導体;エーテル化度が1以上のカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ペクチン、寒天、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェラガム、タマリドガム、サイリウムシードガム等の粘結剤及び/又は粘度調整剤が挙げられる。
【0050】
かかる上記成分(yA)以外の粘結剤及び粘度調整剤の合計含有量は、歯磨組成物(Y)中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
【0051】
歯磨組成物(Y)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに上記成分以外の成分として、フッ化物;トコフェロール酢酸エステル、グリチルレチン酸等の薬効成分;塩化セチルピリジニウム等の抗菌剤;香料;甘味料;着色剤等を含有することができる。
【0052】
本発明は、さらに次の歯磨剤キットとして活用することができる。
すなわち、本発明の歯磨剤キットは、ノズルを備えたエアレスポンプ部材が容器本体の上面開口部に連設されてなる正立型ボトル容器(X)と、水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは水不溶性粉体(yx)を含有せず、25℃でのヘリパス粘度(y1)が1300dPa・s以上3000dPa・s以下であり、かつ25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が0.3以上1未満である歯磨組成物(Y)とからなる歯磨剤キットであって、
正立型ボトル容器(X)が、ポンプの操作に連動して、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)を介して歯磨組成物(Y)を吸入させ、かつノズルの吐出口から歯磨組成物(Y)を吐出させる機構を有し、
歯磨組成物(Y)の正立型ボトル容器(X)における初期充填率が100%未満であり、かつ正立型ボトル容器(X)において、歯磨剤キットの使用開始前に吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に非浸漬状態である。
【0053】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の、正立型ボトル容器に歯磨組成物が充填されてなる歯磨剤及び歯磨剤キットを開示する。
[1]ノズルを備えたエアレスポンプ部材が容器本体の上面開口部に連設されてなる正立型ボトル容器(X)に、100%未満の初期充填率で歯磨組成物(Y)が充填されてなる歯磨剤であって、
正立型ボトル容器(X)が、ポンプの操作に連動して、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)を介して歯磨組成物(Y)を吸入させ、かつノズルの吐出口から歯磨組成物(Y)を吐出させる機構を有し、
正立型ボトル容器(X)において、歯磨剤の使用開始前に吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に浸漬しておらず、
歯磨組成物(Y)において、水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは水不溶性粉体(yx)を含有せず、25℃でのヘリパス粘度(y1)が1300dPa・s以上3000dPa・s以下であり、かつ25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が0.3以上1未満である、歯磨剤。
[2]正立型ボトル容器(X)において、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)までの距離(xd)は、好ましくは50mm未満であり、より好ましくは46mm未満であって、さらに好ましくは35mm未満であり、よりさらに好ましくは25mm未満であり、またさらに好ましくは20mm未満であり、またさらに好ましくは15mm未満であり、またさらに好ましくは10mm未満であり、またさらに好ましくは5mm未満であり、またさらに好ましくは1mm未満である上記[1]の歯磨剤。
【0054】
[3]正立型ボトル容器(X)のエアレスポンプ部材の下端部にディップチューブを配設する場合において、ディップチューブの長さが、吸入弁(x1-2)からディップチューブの下端部までの距離で、好ましくは43mm未満であり、より好ましくは35mm未満であり、さらに好ましくは30mm未満であり、よりさらに好ましくは20mm未満であり、またさらに好ましくは18mm未満である上記[1]又は[2]の歯磨剤。
[4]正立型ボトル容器(X)が、エアレスポンプ部材の下端部にディップチューブは配設しない構成であることがさらにより好ましい上記[1]~[3]いずれか1の歯磨剤。
[5]正立型ボトル容器(X)において、ポンプの最大押力(x2)が、好ましくは10N以上であり、より好ましくは20N以上であり、さらに好ましくは30N以上であり、好ましくは100N以下であり、より好ましくは80N以下であり、さらに好ましくは50N以下である上記[1]~[4]いずれか1の歯磨剤。
[6]正立型ボトル容器(X)における歯磨組成物(Y)の初期充填率は、50~99%であってもよく、60~95%であってもよく、65~90%であってもよく、70~85%であってもよい上記[1]~[5]いずれか1の歯磨剤。
[7]正立型ボトル容器(X)の形態は、フィルム容器とすることが好ましく、パウチ容器とすることがより好ましい上記[1]~[6]いずれか1の歯磨剤。
【0055】
[8]歯磨組成物(Y)の25℃でのヘリパス粘度(y1)が、好ましくは1350dPa・s以上であり、より好ましくは1400dPa・s以上であり、さらに好ましくは1450dPa・s以上であり、よりさらに好ましくは1500dPa・s以上であり、好ましくは2500dPa・s以下であり、より好ましくは2300dPa・s以下であり、さらに好ましくは2000dPa・s以下であり、さらに好ましくは1800dPa・s以下である上記[1]~[7]いずれか1の歯磨剤。
[9]歯磨組成物(Y)の25℃でのB8H粘度(y2)が、好ましくは1500dPa・s以上であり、より好ましくは1800dPa・s以上であり、さらに好ましくは2500dPa・s以上であり、好ましくは3500dPa・s以下であり、より好ましくは3200dPa・s以下であり、さらに好ましくは3000dPa・s以下である上記[1]~[8]いずれか1の歯磨剤。
[10]歯磨組成物(Y)において、25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.55以上であり、好ましくは0.95以下であり、より好ましくは0.9以下であり、さらに好ましくは0.8以下であり、よりさらに好ましくは0.75以下であり、またさらに好ましくは0.62以下である上記[1]~[9]いずれか1の歯磨剤。
【0056】
[11]歯磨組成物(Y)において、水不溶性粉体(yx)の含有量が、5質量%未満であって、好ましくは4.5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、よりさらに好ましくは2質量%以下であり、またさらに好ましくは0.8質量%以下であり、或いは歯磨組成物(Y)は水不溶性粉体(yx)を含有しない上記[1]~[10]いずれか1の歯磨剤。
[12]水不溶性粉体(yx)が、無水ケイ酸、シリカ軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上であり、なかでも、無水ケイ酸としては、吸油量が50~150mL/100gである研磨性シリカ、及び吸油量が200~400mL/100gである増粘性シリカが挙げられる上記[11]の歯磨剤。
[13]歯磨組成物(Y)中における研磨性シリカの含有量が、好ましくは4.5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、1質量%以上であってもよい上記[1]~[12]いずれか1の歯磨剤。
[14]歯磨組成物(Y)中における増粘性シリカの含有量が、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.4質量%以下であり、歯磨組成物(Y)は増粘性シリカを含有しないのがよりさらに好ましい上記[1]~[13]いずれか1の歯磨剤。
【0057】
[15]歯磨組成物(Y)は、さらにエーテル化度が1未満であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(yA)を含有することが好ましく、かかるカルボキシメチルセルロースナトリウム(yA)のエーテル化度が、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下であり、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.55以上であり、さらに好ましくは0.6以上である上記[1]~[14]いずれか1の歯磨剤。
[16]歯磨組成物(Y)において、成分(yA)の含有量が、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは2.5質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以下である上記[15]の歯磨剤。
[17]歯磨組成物(Y)は、さらにグリセリン、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコール(yB)を含有することが好ましく、少なくともグリセリンを含有することがより好ましい上記[1]~[16]いずれか1の歯磨剤。
[18]歯磨組成物(Y)において、成分(yB)の含有量が、合計で、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは32質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である上記[17]の歯磨剤。
[19]歯磨組成物(Y)において、グリセリンの含有量が、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、よりさらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である上記[17]又は[18]の歯磨剤。
【0058】
[20]歯磨組成物(Y)は、さらにエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、及びトレハロースから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール(yC)を含有することが好ましく、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、及びマルチトールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、エリスリトール、ソルビトール、及びマルチトールから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい上記[1]~[19]いずれか1の歯磨剤。
[21]歯磨組成物(Y)において、成分(yC)の含有量が、合計で、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは22質量%以上であり、さらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である上記[20]の歯磨剤。
[22]歯磨組成物(Y)において、成分(yB)の含有量と成分(yC)の含有量との質量比((yB)/(yC))が、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.6以上であり、好ましくは1.3以下であり、より好ましくは1.2以下であり、さらに好ましくは1.1以下である上記[17]~[21]いずれか1の歯磨剤。
[23]歯磨組成物(Y)において、水(yD)を含有することが好ましく、成分(yD)の含有量が、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは32質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは57質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である上記[1]~[22]いずれか1の歯磨剤。
【0059】
[24]歯磨組成物(Y)において、成分(yB)の含有量及び成分(yC)の含有量の合計と成分(yD)の含有量との質量比({(yB)+(yC)}/(yD))が、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.75以上であり、よりさらに好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.3以下である上記[23]の歯磨剤。
[25]歯磨組成物(Y)において、成分(yA)以外の粘結剤及び粘度調整剤の合計含有量が、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である上記[1]~[24]いずれか1の歯磨剤。
[26]ノズルを備えたエアレスポンプ部材が容器本体の上面開口部に連設されてなる正立型ボトル容器(X)と、水不溶性粉体(yx)の含有量が5質量%未満であるか、或いは水不溶性粉体(yx)を含有せず、25℃でのヘリパス粘度(y1)が1300dPa・s以上3000dPa・s以下であり、かつ25℃でのヘリパス粘度(y1)と25℃でのB8H粘度(y2)との比((y1)/(y2))が0.3以上1未満である歯磨組成物(Y)とからなる歯磨剤キットであって、
正立型ボトル容器(X)が、ポンプの操作に連動して、吸入口(x1-1)から吸入弁(x1-2)を介して歯磨組成物(Y)を吸入させ、かつノズルの吐出口から歯磨組成物(Y)を吐出させる機構を有し、
歯磨組成物(Y)の正立型ボトル容器(X)における初期充填率が100%未満であり、かつ正立型ボトル容器(X)において、歯磨剤キットの使用開始前に吸入口(x1-1)が歯磨組成物(Y)に非浸漬状態である、歯磨剤キット。
【実施例
【0060】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、歯磨組成物における各成分の含有量は質量%を示す。
【0061】
[実施例1~4、比較例1~4]
正立型ボトル容器として、実施例1~4、及び比較例1~2、4については、下記の容器A(図1に示す態様であるディップチューブを配設してない容器)を用い、比較例3については、容器B(ディップチューブを配設してなる容器)を用いた。
各歯磨組成物について、表1に示す処方にしたがって調製した後、得られた歯磨組成物を適宜各正立型ボトル容器に充填した。次いで、下記方法にしたがって各測定及び評価を行った。
なお、容器Aにおいては、使用開始前に正立状態で吸入口が充填した歯磨組成物に浸漬しておらず、容器Bについては、使用開始前に正立状態で吸入口が充填した歯磨組成物に浸漬していた。
結果を表1に示す。
【0062】
《正立型ボトル容器》
・容器A
距離(xd):18mm
吸入口(x1-1)の内径:9mm
ポンプの最大押力(x2):38N
初期充填率:72%
・容器B
距離(xd):58mm(ディップチューブ長さ:40mm)
吸入口(x1-1)の内径:9mm
ポンプの最大押力(x2):38N
初期充填率:72%
【0063】
《ポンプの最大押力》
圧縮試験機(M1000E、MECMESHIN社製)を用い、下記条件にてポンプのボタン中心部を押すことにより、押し始めてから完全に押し込まれるまでの間における最大押力(N)をポンプの最大押力として測定した。
圧子:半径1cmの円形圧子
圧点:ポンプのボタン中心部
圧縮スピード:50mm/分
【0064】
《ヘリパス粘度》
得られた各歯磨組成物を粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後、ヘリパス型粘度計(VISCOMETER TVB-10、東機産業社製)を用いて、ロータT-C、回転数2.5rpm、1分間の条件で測定した。
【0065】
《B8H粘度》
得られた各歯磨組成物を粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後、B8H型粘度計(TVB-10R、東機産業社製)を用いて、ロータH7、回転速度2.5rpm、1分間の条件で測定した。
【0066】
《吐出性》
各正立型ボトル容器の容器本体に、表1に示す各歯磨組成物を100ml充填した後、エアレスポンプ部材を取り付けて密封し、25℃にて24時間保存した。次いで、ポンプのボタン中心部を完全に押し込み、1g吐出し、押し出し性、吐出口からの垂れや糸曳き、及び経時的吐出安定性について、各々下記内容及び基準にしたがって評価した。
【0067】
・押し出し性
ポンプのボタン中心部を押し込んだ際に感じる、ポンプの硬さの程度について、評価した。
1:全く硬さを感じなかった
2:あまり硬さを感じなかった
3:どちらともいえない
4:やや硬さを感じた
5:気になるほど硬さを感じた
【0068】
・吐出口からの垂れや糸曳き
ポンプのボタン中心部を押し込み、歯ブラシの毛先上に歯磨組成物を吐出して、吐出口における歯磨組成物の垂れ具合や、吐出口と歯ブラシの毛先との間における糸曳きの程度について観察し、評価した。
1:吐出口での垂れはなく、吐出口と歯ブラシの毛先との間においても糸曳きがなく、切れがよかった
2:吐出口での垂れはなく、吐出口と歯ブラシの毛先との間においてもほぼ糸曳きがなく、切れがよかった
3:吐出口での垂れがややあり、吐出口と歯ブラシの毛先との間においてやや糸曳きが発生した
4:吐出口での垂れがあり、吐出口と歯ブラシの毛先との間においても糸曳きが発生した
【0069】
・経時的吐出安定性
ポンプのボタン中心部を完全に押し込んだ後(初回吐出)、さらに各正立型ボトル容器を1週間保存して再度ポンプのボタン中心部を完全に押し込み、吐出口周辺における歯磨組成物の固着の有無による吐出性の変化について、評価した。
1:歯磨組成物の固着もなく、初回の吐出と変わらず吐出しやすかった
2:歯磨組成物の固着がややあり、初回よりやや硬いものの吐出しやすかった
3:歯磨組成物の固着があり、初回よりも固くやや吐出しにくかった
4:歯磨組成物の固着があり、初回よりも固く吐出しにくかった
【0070】
《泡巻き込み抑制》
各正立型ボトル容器の容器本体に、表1に示す各歯磨組成物を100ml充填した後、エアレスポンプ部材を取り付けて密封し、25℃にて24時間保存した。次いで、容器内の歯磨組成物がなくなるまで吐出口から歯磨組成物を吐出し、吐出の開始から終了までの間に泡巻き込みが発生した回数をカウントしながら官能評価し、下記基準にしたがって、泡巻き込み抑制効果の評価の指標とした。下記基準に基づく値が小さいほど、泡巻き込み抑制効果を有効に発揮していることを意味する。
1:泡巻き込みが全く気にならなかった(泡巻き込み回数が10回未満)
2:泡巻き込みがやや気になった(泡巻き込み回数が10回以上20回未満)
3:泡巻き込みがやや気になり、違和感があった(泡巻き込み回数が20回以上30回未満)
4:泡巻き込みが気になった(泡巻き込み回数が30回以上40回未満)
5:泡巻き込みが非常に気になった(泡巻き込み回数が40回)
【0071】
《ポンプの操作性》
各正立型ボトル容器の容器本体に、表1に示す各歯磨組成物を100ml充填した後、エアレスポンプ部材を取り付けて密封し、25℃にて24時間保存した。次いで、ポンプのボタン中心部を1回押圧し、ボタンが元の状態に戻る様子を官能評価した。下記基準に基づく値が小さいほど、流路における歯磨組成物の流動性に優れ、良好な吐出性を保持して、ポンプの操作性に悪影響を及ぼすことなく、容器内の歯磨組成物を有効に使い切ることができることを意味する。
1:速やかにボタンが元の状態に戻る
2:ほぼ速やかにボタンが元の状態に戻る
3:ボタンの元の状態への戻りがやや遅い
4:ボタンの元の状態への戻りが遅い
【0072】
《保形性》
各正立型ボトル容器の容器本体に、表1に示す各歯磨組成物を115g充填した後、エアレスポンプ部材を取り付けて密封し、25℃にて24時間保存した。次いで、ボトル容器の吐出口より約2gの歯磨組成物を歯ブラシの毛先上に吐出して、かかる毛先上での歯磨組成物の流動性や垂れ具合を視認し、下記基準にしたがって、歯磨組成物における保形性を評価した。下記基準に基づく値が小さいほど、歯磨組成物の保形性が優れていることを意味する。
1:全く流動しなかった
2:ほぼ流動しなかった
3:やや流動するが、毛先上からは垂れなかった
4:吐出後直ちに流動しはじめ、30秒以内に毛先上から垂れた
5:吐出後直ちに毛先上から垂れた
【0073】
【表1】
【符号の説明】
【0074】
1 :歯磨剤
2 :容器本体
21:容器本体の上面開口部
3 :エアレスポンプ部材
31:ポンプ
32:ノズル
33:ディップチューブ
x1-1:吸入口
x1-2:吸入弁
xd :吸入口から吸入弁までの距離
図1
図2
図3