(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】月及び火星の条件に適した非空気式荷重支持部を有する変形可能なホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 9/26 20060101AFI20240529BHJP
B60B 15/00 20060101ALI20240529BHJP
B60C 7/00 20060101ALI20240529BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B60B9/26
B60B15/00 L
B60B15/00 M
B60C7/00 H
B60C9/00 M
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023135923
(22)【出願日】2023-08-23
【審査請求日】2023-08-23
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523321637
【氏名又は名称】ヴェンチュリ ラブ エスア
【氏名又は名称原語表記】VENTURI LAB SA
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【氏名又は名称】古田 昌稔
(74)【代理人】
【識別番号】100219531
【氏名又は名称】南部 麻美
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーノ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】オルソメル,ダヴィド エフ.
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-118913(JP,A)
【文献】特開2016-172522(JP,A)
【文献】特開2022-091511(JP,A)
【文献】特開平06-239106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0114687(US,A1)
【文献】国際公開第2012/121306(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 9/26
B60B 15/00
B60C 7/00
B60C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
月及び火星で遭遇するような厳しい条件下で走行する車両に装備することを目的とした非空気式荷重支持部を有する変形可能なホイール(2、2’)であって、
ハブ(4)、
地面と接触することを目的とし、前記ハブの周囲に配置され、前記ハブと同心である環状積層帯(6)であって、複数の介在層(6b)を介して組み合わされている複数の同心フェルール(6a)を備え、各介在層は、そのヤング率が前記フェルールのヤング率の600,000から1,000分の1である材料で構成されている、積層環状帯、及び、
その外径が0.2mmから5mmの範囲にある複数の金属ケーブル(8)であって、各ケーブルは、一方では外端(8a)によって前記積層帯に固定され、他方では前記複数のケーブルの半径方向の剛性を調整することを可能にする弾性部材(18、18’)を用いて内端(8b)によって前記ハブに固定されながら、前記ハブ(4)を前記積層帯(6)に半径方向に接続し、各弾性部材は、その変形を制限することが可能な支持部(butee)(12、14)に関連付けられている、複数の金属ケーブル、
を備える、ホイール。
【請求項2】
前記積層帯(6)の前記フェルール(6a)は、金属製であるか又は複合材料で作られている、
請求項1に記載のホイール。
【請求項3】
前記積層帯(6)の前記介在層(6b)は、120℃未満のガラス転移温度を有する超弾性エラストマーから構成されている、
請求項
1に記載のホイール。
【請求項4】
前記ケーブル(8)は、引張時の機械的剛性(Kt)と圧縮時の機械的剛性(Kc)との比が50,000から300,000の範囲にある、
請求項
1に記載のホイール。
【請求項5】
前記ケーブル(8)の前記引張時の機械的剛性(Kt)と前記圧縮時の機械的剛性(Kc)との前記比が、25,000から150,000の範囲にある、
請求項4に記載のホイール。
【請求項6】
各ケーブル(8)は、前記ハブの半径方向の平面(Pr)を基準として、0.1°から45°の範囲の角度(
α)で、及び/又は、前記ハブを横切る方向の平面(Pt)を基準として、0.1°から45°の範囲の角度(
β)で、傾斜している、
請求項
1に記載のホイール。
【請求項7】
各ケーブル(8)は、前記ハブの半径方向の平面(Pr)を基準として、10°の角度(
α)で、及び/又は、前記ハブを横切る方向の平面(Pt)を基準として、10°の角度(
β)で、傾斜している、
請求項6に記載のホイール。
【請求項8】
前記複数のケーブル(8)の前記外端(8a)は、前記積層帯(6)の外面に対して取り付けられた複数のロッド(16)に固定されている、
請求項
1に記載のホイール。
【請求項9】
前記複数のケーブル(8)の前記内端(8b)は、それらの半径方向の剛性を調整することを可能にする複数のリーフスプリング(18)を用いて前記ハブ(4)に固定されている、
請求項
1に記載のホイール。
【請求項10】
前記複数のリーフスプリング(18)は、それらの変形を制限することが可能な前記支持部を形成する前記ハブ(4)の内面(4a)に対して、それぞれの中心の位置で固定され、かつ、前記ハブの周方向に沿った長手方向に延びることができ、各リーフスプリングは、1本のケーブル(8)の前記内端(8b)にそれぞれ接続されている2つの対向する長手方向端部(20、22)を備える、
請求項9に記載のホイール。
【請求項11】
前記ホイールは、前記ホイールの内側で前記ハブの前記内面に対して固定されている複数のリーフスプリングと、前記ホイールの外側で前記ハブの前記内面に対して固定されている複数のリーフスプリングとを備える、
請求項10に記載のホイール。
【請求項12】
各リーフスプリング(18)は、互いに重ね合わされている複数のステンレス鋼リーフ(18a)を備える、
請求項
9に記載のホイール。
【請求項13】
前記ハブ(4)は、半径方向の外側に突出し、かつ、前記積層帯(6)の内面がその変形を制限するために突き当たって支持することが可能な外径を有する少なくとも1つのディスク(12、14)を支持する、
請求項
9に記載のホイール。
【請求項14】
前記複数のケーブル(8)の前記内端(8b)は、前記複数のケーブルの半径方向の剛性を調整することを可能にするスプリングを形成する複数のU字曲げリーフ(18’)を用いて前記ハブに固定されている、
請求項
1に記載のホイール。
【請求項15】
前記複数のU字曲げリーフ(18’)は、それぞれの自由端で前記ハブ(4)の内面(4a)に対して固定され、かつ、前記ハブの軸方向に沿った長手方向に延びることができ、各U字曲げリーフは、1本のケーブル(8)の前記内端(8b)に接続されている、
請求項14に記載のホイール。
【請求項16】
前記ホイールは、前記ホイールの内側で長手方向に延びる複数のU字曲げリーフと、前記ホイールの外側で長手方向に延びる複数のU字曲げリーフとを備える、
請求項15に記載のホイール。
【請求項17】
前記ハブ(4)は、少なくとも1つのディスク(12、14)を支持することができ、前記少なくとも1つのディスクは、半径方向の外側に突出し、かつ、前記複数のU字曲げリーフ(18’)がそれらの変形を制限するために突き当たって支持することが可能な内径、及び、前記積層帯の内面がその変形を制限するために突き当たって支持することが可能な外径を有する、
請求項
14に記載のホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非空気式荷重支持部を有する変形可能なホイールに関する。より詳細には、本発明は、その構造要素によって荷重を支持し、月及び火星で遭遇するような厳しい条件下で走行することを目的とした車両に装備するのに適した作業性能を有するホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
空気式ホイールは、耐荷重性、道路衝撃吸収性、及び力伝達(加速、停止及び方向転換)性を備えており、多くの車両、特に自転車、オートバイ、乗用車、及びトラックに特によく適している。タイヤの衝撃吸収性は、例えば医療機器又は精密電子機器を運ぶ台車といった、他の用途にも有用である。
【0003】
空気式ホイールの代替品も存在する。例えば、ソリッドタイヤ及びバネ仕掛けタイヤを挙げることができる。しかし、これらの代替品には、空気式ホイールが有する性能上の利点はない。特に、ソリッドタイヤは、地面と接触する部分の圧縮に依存して荷重を支える。このタイプのタイヤは重くて硬い場合があり、空気式ホイールが有する衝撃を吸収する能力がない。弾性を高めれば高めるほど、従来の非空気式ホイールは、空気式ホイールの有する耐荷重性又は耐久性を持たなくなる。
【0004】
これらの欠点を克服するために、米国7,418,988号公報は、外側環状帯と、環状帯からホイールのハブへ横切る方向かつ半径方向の内側に延び、環状帯とハブとの間の荷重力を張力で伝達することを目的とした複数のスポークとを備える構造支持部を有するタイヤを提案している。
【0005】
この発明に係る構造支持部を有するホイールは、圧縮空気を収容することを目的としたキャビティを含まないため、内部空気圧を維持するためにホイールのリムとシールする必要がない。従って、構造的支持部を有するこのホイールには、通常の意味でのタイヤは必要ない。
【0006】
このホイールのスポークは張力で作動して、ホイールと環状帯との間の荷重力を伝達し、特に車両の質量を支えることを可能にする。支持力は、環状帯の地面と接触する部分に接続されていないスポークの張力によって発生する。スポークは、加速、停止及び回転に必要な力も伝達する。
【0007】
非空気式ホイールの製造について従来技術から知られている代替手段が何であれ、特に月及び火星で遭遇するような厳しい条件下で走行することを目的とする場合、それらは一般に、完全な満足を与えるものではない。実際、そのような状況下では、障害物を通過するとき、月及び火星で見られる土壌のような緩い土壌の上を車両が移動し続けることが可能であるように、低く均一な接地圧を発生しながら、ホイールが強く変形できる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の主な目的は、月及び火星で遭遇するような厳しい条件下で走行することを目的とした車両に特に装備することができる、非空気式荷重支持部を有する変形可能なホイール構造を提案することによって、そのような欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、月及び火星で遭遇するような厳しい条件下で走行する車両に装備することを目的とした非空気式荷重支持部を有する変形可能なホイールによって達成され、当該ホイールは、
ハブ、
地面と接触することを目的とし、ハブの周囲に配置され、ハブと同心である環状積層帯であって、複数の介在層を介して組み合わされている複数の同心フェルールを備え、各介在層は、そのヤング率がフェルールのヤング率の600,000から1,000分の1である材料で構成されている、環状積層帯、及び、
その外径が0.2mmから5mmの範囲にある複数の金属ケーブルであって、各ケーブルは、一方では外端によって積層帯に固定され、他方では複数のケーブルの半径方向の剛性を調整することを可能にする弾性部材を用いて内端によってハブに固定されながら、ハブを積層帯に半径方向に接続し、各弾性部材は、その変形を制限することが可能な支持部(butee)に関連付けられている、複数の金属ケーブル、
を備える。
【0010】
本発明に係るホイールは、特に環状積層帯の存在により注目に値し、環状積層帯は、複数の介在層を介して組み合わされている複数の同心フェルールを備え、各介在層は、そのヤング率がフェルールのヤング率の600,000から1,000分の1である材料、例えばエラストマー材料、で構成されている。外部から加えられた荷重の下では、積層帯の地面と接触する部分は、実質的に円形状ではないが、複数のフェルールの一定の長さを実質的に維持しながら、土壌の表面に追従する形状に変形する。積層帯の複数のフェルールの相対変位は、複数の介在層のせん断によって生じる。そのため、本発明に係るホイールは、地面に対して低く均一な接地圧を発生させることを可能にする。このように、そのようなホイールが装備された車両は、月及び火星で見られるような(砂タイプの)緩い土壌の上でも移動し続けることができる(つまり、砂にスタックしない)。
【0011】
本発明に係るホイールは、半径方向の剛性を調整することを可能にする弾性部材を用いてハブに固定され、ハブを積層帯に半径方向に接続する複数の金属ケーブルの使用についても注目に値する。特に、その固有の特性及び複数の弾性部材の存在により、複数の金属ケーブルは、低い圧縮剛性及び高い引張剛性を有しており、これにより、特に障害物を通過するとき、地面と接触している積層帯に固定された複数のケーブルが曲げられて、道路の衝撃を吸収するとともに、路面の凹凸に積層帯を完全に追従させることができる。
【0012】
より一般的には、このように構成された本発明に係るホイールは、特にそのようなホイールが装備された車両が傾斜地を登るときに、スリップすることなく大きな牽引力を発生させるという利点を有する。さらに、本発明に係るホイールは、ホイール質量に対する負荷荷重の比が15から25の範囲にあることを可能にする。
【0013】
好ましくは、積層帯のフェルールは、金属製であるか又は複合材料で作られている。
【0014】
また、好ましくは、介在層は、120℃未満のガラス転移温度を有する超弾性エラストマーから構成されている。
【0015】
有利には、ケーブルは、引張時の機械的剛性と圧縮時の機械的剛性との比が50,000から300,000の範囲にあり、好ましくは25,000から150,000の範囲にある。
【0016】
別の有利な配置によれば、各ケーブルは、ハブの半径方向の平面を基準として、0.1°から45°の範囲の、好ましくは10°に等しい、角度アルファで、及び/又は、ハブを横切る方向の平面を基準として、0.1°から45°の範囲の、好ましくは10°に等しい、角度ベータで、傾斜している。半径方向における複数のケーブルのこの不整列により、ホイールに側面から応力が加わったとき(例えば曲がり角で)又は車両がブレーキをかけたときに、ホイールの剛性を向上させることが可能になる。
【0017】
複数のケーブルの外端は、積層帯の外面に対して取り付けられた複数のロッドに固定されうる。
【0018】
一実施形態によれば、複数のケーブルの内端は、それらの半径方向の剛性を調整することを可能にする複数のリーフスプリングを用いてハブに固定されている。
【0019】
この実施形態では、複数のリーフスプリングは、それらの変形を制限することが可能な支持部を形成するハブの内面に対して、それぞれの中心の位置で固定され、かつ、ハブの周方向に沿った長手方向に延びることができ、各リーフスプリングは、1本のケーブルの内端にそれぞれ接続されている2つの対向する長手方向端部を備える。
【0020】
加えて、この実施形態ではさらに、ホイールは、ホイールの内側でハブの内面に対して固定されている複数のリーフスプリングと、ホイールの外側でハブの内面に対して固定されている複数のリーフスプリングとを備えうる。
【0021】
好ましくは、各リーフスプリングは、互いに重ね合わされている複数のステンレス鋼リーフを備える。
【0022】
この実施形態ではさらに、ハブは、半径方向の外側に突出し、かつ、積層帯の内面がその変形を制限するために突き当たって支持することが可能な外径を有する少なくとも1つのディスクを支持しうる。
【0023】
別の実施形態によれば、複数のケーブルの内端は、複数のケーブルの半径方向の剛性を調整することを可能にするスプリングを形成する複数のU字曲げリーフを用いてハブに固定されている。
【0024】
この他の実施形態では、複数のU字曲げリーフは、それぞれの自由端でハブの内面に対して固定され、かつ、ハブの軸方向に沿った長手方向に延びることができ、各U字曲げリーフは、1本のケーブルの内端に接続されている。
【0025】
好ましくは、ホイールは、ホイールの内側で長手方向に延びる複数のU字曲げリーフと、ホイールの外側で長手方向に延びる複数のU字曲げリーフとを備える。
【0026】
この他の実施形態ではさらに、ハブは、少なくとも1つのディスクを支持することができ、少なくとも1つのディスクは、半径方向の外側に突出し、かつ、複数のU字曲げリーフがそれらの変形を制限するために突き当たって支持することが可能な内径、及び、積層帯の内面がその変形を制限するために突き当たって支持することが可能な外径を有する。
【0027】
本発明の他の特徴及び利点は、いかなる限定も含まない例示的な一実施形態を示す添付の図面を参照しつつ、以下の説明から明らかになるであろう。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るホイールの概略斜視図である。
【
図3】
図3は、地面の上に置かれて荷重を受けた
図1のホイールの概略正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係るホイールの2つの異なる視点からの概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係るホイールの2つの異なる視点からの概略図である。
【
図8】
図8は、地面の上に置かれて荷重を受けた
図5及び
図6のホイールの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、月及び火星で遭遇するような厳しい条件下で走行することを目的とした車両に装備するのに適した、
図1に示すような非空気式荷重支持部を有する変形可能なホイールに関する。
【0030】
図1に示されるホイール2は、主に、ハブ4、地面と接触することを目的とした環状積層帯6、及びハブを積層帯に半径方向に接続する複数の金属ケーブル8を備える。
【0031】
図2及び
図4に示すように、積層帯6は、複数の介在層6bを挟み込むことによって組み合わされている複数の同心フェルール6aから構成されており、各介在層6bは、そのヤング率がフェルールのヤング率の600,000から1,000分の1である材料で構成されている。
【0032】
フェルール6aは、金属製(例えば鋼製)であるか又は複合材料で作られうる。
【0033】
介在層6bについては、120℃未満のガラス転移温度を有する超弾性エラストマーで作られていることが有利である。
【0034】
積層帯6のこのような構成により、積層帯の地面と接触する部分は、外部から加えられた荷重の下で、積層帯を構成する複数のフェルール6aの一定の長さを実質的に維持しながら、土壌の表面に追従する形状に変形する。積層帯の複数のフェルールの相対変位は、複数の介在層6bのせん断によって生じる。
【0035】
特に
図1に示されるように、ホイールのハブ4は、半径方向の外側に突出する2つのディスク12、14を支持する。これら2つのディスク12、14は、ホイールの軸X-Xに沿って互いに間隔を置いて配置され、それぞれが、積層帯6の内面がその変形を制限するために突き当たって支持することが可能な外径を有する。
【0036】
複数のケーブル8は、積層帯6をハブ4に半径方向に接続する。この目的のために、各ケーブル8は、積層帯の外面に対して取り付けられた複数のロッド16に固定された外端8aを備える。
【0037】
この構成では、ケーブルの外端8aは、積層帯のフェルール6a及び介在層6bのすべてを貫通している。もちろん、ケーブルの外端8aが積層帯の内面に固定されることを想定することも可能である。
【0038】
それぞれの内端で、複数のケーブル8は、複数のケーブルの半径方向の剛性を調整することを可能にする弾性部材18を用いてハブ4に固定されている。ここでもまた、ケーブルの内端8bはハブをその厚さ方向に貫通している。
【0039】
各ケーブル8は、金属コアの周囲に集められた、複数の撚線からなる複数の金属線(例えば鋼製)の集合体から構成されている。例えば、各ケーブルは、それぞれが7本から61本の金属線で構成された6又は7本の撚線を含み、集合体は0.2mmから5mmの範囲の外径を有する。
【0040】
さらに、各ケーブル8は、引張時の機械的剛性Ktと圧縮時の機械的剛性Kcとの比が、50,000から300,000の範囲(すなわち、5,000≦Kt/Kc≦300,000)にあり、好ましくは25,000から150,000の範囲(すなわち、25,000≦Kt/Kc≦150,000)にある。
【0041】
これらの機械的剛性値Kt及びKcは、(鋼製ケーブルの要件に関する)ISO 2408:2017及びISO 17893:2004規格の推奨事項に従い、「INSTRON(登録商標)」ブランドの試験機、モデル34TM-10、を使用して取得されたものである。
【0042】
換言すると、ケーブル8は、引張時の機械的剛性Ktが圧縮時の機械的剛性Kcよりもはるかに大きい、不均整な剛性を有する。
【0043】
さらに、
図1から
図4の第1実施形態では、複数のケーブル8は、それぞれの内端がホイールの内側に配置された
n本のケーブルの第1二重列と、それぞれの内端がホイールの外側に配置された
m本のケーブルの第2二重列とを有する、ホイールの軸X-Xの全周にわたる特定の分布を有する。
【0044】
より具体的には、複数のケーブルの各二重列について、複数の内端は、2つのディスク12、14の一方とハブの(内及び外)側端との間に横方向に配置されることによってハブに取り付けられている。複数のケーブルの本数n、mは、複数のケーブルの各二重列について同じでありうる。
【0045】
加えて、
図2に示すように、各ケーブル8は、ハブ4の半径方向の平面Prを基準として、(絶対値で)0.1°から45°の範囲の、好ましくは(絶対値で)10°に等しい、角度
αで傾斜していることが有利である。
【0046】
特に、複数のケーブルの同じ列について、隣接するケーブル間の傾斜度を交互にするようにすることが有利である可能性がある(この場合、隣接するケーブルのうちの1本が正の傾斜角
α(
図2では「
α+」と表示)を有し、それに隣接するケーブルが負の傾斜角
α(
図2では「
α-」と表示)を有する)。
【0047】
同様に、
図4に示すように、各ケーブル8は、ハブ4を横切る方向の平面Ptを基準として、(絶対値で)0.1°から45°の範囲の、好ましくは(絶対値で)10°に等しい、角度
βで傾斜していることが有利である。
【0048】
特に、複数のケーブルの2つの二重列のそれぞれについて、2つの列のうちの一方に属する全てのケーブルが正の傾斜角
β(
図4では「
β+」と表示)を有し、2つの列のうちのもう一方に属する全てのケーブルが負の傾斜角
β(
図4では「
β-」と表示)を有するようにすることが有利である可能性がある。
【0049】
複数のケーブル8のこれらの傾斜α、βにより、ホイールに側面から応力が加わったとき(例えば曲がり角で)、又はこのようなホイールが装備された車両がブレーキをかけたときに、ホイールの剛性を向上させることが可能になる。
【0050】
図1から
図4の第1実施形態では、複数のケーブル8のそれぞれの内端8bをハブ4に固定するのに用いられた複数の弾性部材は、複数のリーフスプリング18である。これらのリーフスプリング18により、複数のケーブルの半径方向の剛性を調整することが可能になる。
【0051】
具体的には、各リーフスプリング18は、ハブ4の周方向に沿った長手方向に延びる細長板の形状を有し、その中心でリベット19によってハブの内面4aに対して固定されている。
【0052】
加えて、各リーフスプリング18は、1本のケーブル8の内端8bにそれぞれ接続されている2つの対向する長手方向端部20、22を備える。そのため、この実施形態では、2つの隣接するケーブルが同じ弾性部材18を共有しており、この弾性部材18により、これらのケーブルの半径方向の剛性を調整することが可能になる。
【0053】
ホイールの長手方向軸X-Xに沿って互いに間隔を置いて配置された2つの列における複数のケーブル8の特定の分布を考慮すると、ホイールの内側のハブの内面4aに対して固定されているn/2個のリーフスプリングが設けられるとともに、ホイールの外側のハブの内面に対して固定されているm/2個のリーフスプリングが設けられる。
【0054】
さらに、
図2及び
図3に示すように、この第1実施形態の複数のリーフスプリング8のそれぞれは、例えば鋼製の、複数(例えば3枚)の金属リーフ18aの重層から構成されている。複数のリーフの重層によれば、複数のリーフのそれぞれの弾性限界に到達することなく大きな変位(たわみ)が可能になるという利点がある。換言すると、複数の基本リーフを可塑化することなく、所望の値に達するように曲げ剛性をサイズ調整することが可能である。
【0055】
この第1実施形態では、ハブ4の内面4aが、複数のバネ仕掛けリーフ18の外側の変形を制限することが可能な支持部を形成していることに留意されたい。
【0056】
図3に示すように、本発明に係るホイールの特定の構造により、ホイール2が荷重を受けたときに、積層帯6の地面と接触する部分Wが、実質的に円形状ではないが、土壌の表面に追従する形状に変形することが可能になる。特に、積層帯の構造により、地面に対して均一な接地圧を発生させることが可能になる。
【0057】
積層帯6の地面と接触する部分Wの位置で角張った状態にある複数のケーブル8-Wは、それらの弱い圧縮時の機械的剛性Kcのために圧縮され、容易に座屈する。
【0058】
積層帯6の地面と接触する部分Wのすぐ上流及びすぐ下流で角張った状態にある複数のケーブル8-Wもまた、それぞれの外端8aが固定されている複数のリーフスプリング18によって吸収される強い牽引力を受ける(これらのケーブル8-Vに関連付けられた複数のバネ仕掛けリーフは、ハブの外側に向かって変形する)。
【0059】
土壌の表面に大きな障害物(例えば岩)がある場合、積層帯6の地面と接触する部分Wは、障害物の輪郭に一致するように変形し続ける。このような状況では、障害物のサイズに応じて、積層帯6の内面が、積層帯が受ける変形を制限するために、ハブ4によって支持されたディスク12、14の外径に突き当たって支持することができる。
【0060】
次に、
図5から
図9に関連して、第2実施形態に係るホイール2’について説明する。
【0061】
この第2実施形態は、複数のケーブル8のそれぞれの内端8bをハブ4に固定するのに用いられた複数の弾性部材が、上述の実施形態と異なる。
【0062】
この実施形態では、これらの弾性部材は、複数のケーブルの半径方向の剛性を調整することを可能にする複数のスプリングを形成する複数のU字(すなわち180°)曲げリーフ18’の形状を有する。
【0063】
リーフ18’は、金属製、例えば鋼製であるか又は複合材料で作られている。それらは、200N/mmから1N/mmの範囲の、好ましくは70N/mmから5N/mmの範囲の曲げ剛性を有する(これらの曲げ剛性値は、「INSTRON(登録商標)」ブランドの試験機、モデル34TM-10、を用いて取得されたものである)。
【0064】
より具体的には、複数のU字曲げリーフ18’は、ねじ/ナットシステム24(
図9を参照)を用いて、それぞれの自由端の位置でハブ4の内面4aに対して固定され、ハブの軸方向に沿った(すなわち、ホイールの長手方向軸X-Xに沿った)長手方向に延びる。
【0065】
さらに、各U字曲げリーフ18’は、その自由端の反対側の端の位置で複数のケーブル8のうちの1つの内端に接続されている。したがって、上述の実施形態とは異なり、複数の金属ケーブルと同数のU字曲げリーフ18’が設けられる。
【0066】
図示されていない実施形態の一変形例では、複数のU字曲げリーフは、複数のリーフが互いに適切な位置合わせを確保するように(そして、これにより、ホイール上の固定点を中心として複数のリーフが回転することを回避するように)、ホイールの中央部で一緒に接続されているいくつかのリーフ(例えば2枚から10枚の範囲、好ましくは4枚)のグループにグループ化される。
【0067】
ホイール2’の長手方向軸X-Xに沿って互いに間隔を置いて配置された2つの列における複数のケーブル8の特定の分布を考慮すると、ホイールの内側のハブの内面4aに固定されているn個のU字曲げリーフ18’が設けられるとともに、ホイールの外側のハブの内面に固定されているm個のU字曲げリーフ18’が設けられる。
【0068】
ホイールの内側に固定されている複数のU字曲げリーフは、ホイールの内側に向かって長手方向に(つまり、ホイールの長手方向軸X-Xに平行に)延び、ホイールの外側に固定されている複数のU字曲げリーフは、ホイールの外側に向かって長手方向に延びる。
【0069】
さらに、上述の実施形態と同様に、複数のケーブル8は、それぞれの内端8bがホイールの内側に配置された複数のU字曲げリーフに固定されているn本のケーブルの第1二重列と、それぞれの内端がホイールの外側に配置された複数のU字曲げリーフに固定されているm本のケーブルの第2二重列とを有する、ホイール2’の軸X-Xの全周にわたる特定の分布を有する。
【0070】
同様に、この第2実施形態では、
図7及び
図9に示すように、各ケーブル8は、ハブの半径方向の平面Prを基準として、(絶対値で)0.1°から45°の範囲の角度
α、及び/又は、ハブを横切る平面Ptを基準として、(絶対値で)0.1°から45°の範囲の角度
βで傾斜していることが有利である。
【0071】
複数のケーブルの2つの二重列のそれぞれについて、同じ列に属する全てのケーブルが半径方向の平面を基準として正の傾斜角
α(
図7では「
α+」と表示)を有し、もう一方の列に属する全てのケーブルが半径方向の平面を基準として負の傾斜角
α(
図7では「
α-」と表示)を有するようにすることが有利である可能性がある。
【0072】
同様に、複数のケーブルの2つの二重列のそれぞれについて、2つの列のうちの一方に属する全てのケーブルが、横切る方向の平面を基準として正の傾斜角
β(
図9では「
β+」と表示)を有し、2つの列のうちのもう一方に属する全てのケーブルが、横切る方向の平面を基準として負の傾斜角
β(
図9では「
β-」と表示)を有するようにすることが有利である可能性がある。
【0073】
この第2実施形態では、ハブ4はまた、半径方向の外側に突出する2つのディスク12、14を支持する。これらの2つのディスクのそれぞれは、複数のU字曲げリーフ18’がそれらの変形を制限するために突き当たって支持することが可能な内径を有する。
【0074】
第1実施形態の場合と同様に、2つのディスク12、14のそれぞれは、積層帯6の変形を制限するために積層帯6の内面が突き当たって支持することが可能な外径を有する。
【0075】
この第2実施形態に係るこのホイール2’の特定の構造の力学的挙動は、第1実施形態に関するものと同一であることにも留意されたい。特に、
図8に示すように、ホイール2’が荷重を受けると、本発明に係るホイールの特定の構造により、積層帯6の地面と接触する部分Wが、実質的に円形状ではないが、土壌の表面に追従する形状に変形することが可能になる。
【0076】
積層帯6の地面と接触する部分Wの位置で角張った状態にある複数のケーブル8-Wは、それらの弱い圧縮時の機械的剛性Kcのために圧縮され、容易に座屈する。
【0077】
積層帯6の地面と接触する部分Wのすぐ上流及びすぐ下流で角張った状態にある複数のケーブル8-Wについては、これらのケーブル8-Vは、それぞれの外端8aが固定されている複数のU字曲げリーフ18’によって吸収される強い牽引力を受ける(これらのケーブル8-Vに関連付けられた複数のバネ仕掛けリーフは、ハブの外側に向かって変形する)。
【0078】
さらに、
図10に示すように、土壌の表面に大きな障害物(例えば岩26)がある場合、障害物の上を走行するホイール2’の積層帯6の部分W’は、障害物の輪郭に一致するように変形し続ける。
【0079】
このような状況では、障害物のサイズに応じて、積層帯6の内面が、積層帯が受ける変形を制限するために、ハブ4によって担持されたディスク12、14の外径に突き当たって支持することができる。
【0080】
さらに、積層帯とディスク12、14との接触を和らげるために、ディスク12、14の外径に緩和ラミネート28(例えば金属/エラストマー)の帯を設けることが有利である可能性がある。