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  • 特許-エッチング液組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】エッチング液組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/16 20060101AFI20240529BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240529BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C23F1/16
H01L21/306 F
H01L21/308 F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023144276
(22)【出願日】2023-09-06
(65)【公開番号】P2024037705
(43)【公開日】2024-03-19
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2022142198
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】木村 陽介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛司
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-237873(JP,A)
【文献】特開2002-075186(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0114887(KR,A)
【文献】国際公開第2019/026478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/306
C23F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング液組成物の製造方法であって、
前記エッチング液組成物は、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物であり、
前記エッチング液組成物は、25℃における粘度が11mPa・s以上41mPa・s以下であり、
エッチング液組成物を吐出する充填口を有する充填ノズルを用いて、前記エッチング液組成物を容器に充填する工程を含み、
前記充填ノズルの充填口の素材に対する前記エッチング液の後退接触角が60°以上かつ前進接触角と後退接触角との比(前進接触角/後退接触角)が1.4以下である、エッチング液組成物の製造方法。
【請求項2】
前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有する、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項3】
前記有機酸は、酢酸を含むものである、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項4】
前記有機酸の配合量は、11質量%以上59質量%以下である、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項5】
リン酸、硝酸及び有機酸を含む混酸組成物と、エッチング抑制剤とを配合して前記エッチング液組成物を得る工程を含む、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項6】
前記エッチング抑制剤は、ポリアルキレンイミン及びポリアルキレンポリアミンから選ばれる少なくとも1種の窒素含有化合物である、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項7】
前記エッチング液組成物は、アゾール化合物を含まない、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項8】
前記エッチング液組成物は、過酸化水素を含まない、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項9】
前記エッチング液組成物は、フッ素化合物を含まない、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項10】
前記エッチング液組成物は、pHが1以下である、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項11】
前記金属膜は、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜である、請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項12】
前記基板は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板である、請求項1から11のいずれかに記載のエッチング液組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項に記載のエッチング液組成物の製造方法に使用するための混酸組成物であって、
リン酸、硝酸及び有機酸を含む、混酸組成物。
【請求項14】
容器に充填されたエッチング液組成物であって、
前記エッチング液組成物は、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物であり、
前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、25℃における粘度が11mPa・s以上41mPa・s以下であり、
前記容器の素材に対する前記エッチング液組成物の後退接触角が60°以上かつ前進接触角と後退接触角との比(前進接触角/後退接触角)が1.4以下である、容器入りエッチング液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング液組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程において、例えば、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウム等の少なくとも1種の金属を含む被エッチング膜をエッチングして所定のパターン形状に加工する工程が行われている。エッチング液としては、リン酸、硝酸及び酢酸を含む混酸水溶液が一般的に使用されている。
近年の半導体分野においては高集積化が進んでおり、配線の複雑化や微細化が求められており、パターンの加工技術やエッチング液に対する要求も高まりつつあり、様々なエッチング液組成物やエッチング方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Cu/Mo二重膜をエッチングするために使用されるエッチング液組成物として、リン酸を約50~80重量%、硝酸を約0.5~10重量%、酢酸を約4~30重量%、塩素含有化合物を約0.5~6重量%、及び残量の水を含む、エッチング液組成物が提案されている。
特許文献2には、銅とモリブデンおよび/またはチタンからなる合金の金属積層膜をエッチングするエッチング方法として、リン酸を40~50重量%、硝酸を1.5~3.5重量%、酢酸を25~40重量%および水を配合してなるエッチング液組成物を用いてエッチングするエッチング方法が提案されている。
特許文献3には、リン酸55~70重量%、硝酸3~15重量%、酢酸5~20重量%、リン酸塩0.5~10重量%、塩素系化合物0.1~5重量%、アゾール系化合物0.01~4重量%、及び残量の水を含む薄膜トランジスタ液晶表示装置用エッチング組成物が提案されている。
特許文献4には、基板上に形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金膜の表面にモリブデン膜が積層された複層構造の金属膜をエッチングして所定パターンを形成するためのエッチング液組成物として、リン酸濃度40~70質量%、硝酸濃度0.5~10質量%、酢酸濃度50~15質量%、残部が水からなるエッチング液組成物が提案されている。
特許文献5には、リン酸50~80重量%、硝酸2~15重量%、酢酸3~20重量%、リチウム系化合物0.05~3重量%、リン酸塩系化合物0.1~5重量%、及び残量の水を含む薄膜トランジスタ液晶表示装置のエッチング組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-27274号公報
【文献】特開2012-156248号公報
【文献】特開2009-218601号公報
【文献】特開2008-244205号公報
【文献】特開2007-305996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、エッチング液組成物は、容器に充填されて製品化されており、エッチング液組成物を容器に充填する際には、エッチング液組成物中の異物(パーティクル)の含有量を低減するため、フィルタ等を用いたろ過処理が行われている。そのため、フィルタ通液性に優れ、濾過速度が速いエッチング液が求められる。
また、エッチング液を容器に充填する際に液だれが生じることがある。液だれ回数が多くなるほど、拭き取り作業に時間を要するため、生産性が低くなる。生産性向上の観点から、エッチング液には液だれしにくいことも求められる。さらに、容器に充填されたエッチング液には、容器内のエッチング液を取り出すときの液だれがしにくいことも求められる。
【0006】
そこで、本開示は、一態様において、容器へ充填する際の液だれを抑制できるエッチング液組成物の製造方法を提供する。本開示は、一態様において、容器へ充填する際の液だれの抑制と濾過速度の向上とを両立できるエッチング液組成物の製造方法を提供する。本開示は、一態様において、容器内のエッチング液を取り出すときの液だれを抑制できる容器入りエッチング液組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、エッチング液組成物の製造方法であって、前記エッチング液組成物は、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物であり、前記エッチング液組成物は、エッチング液組成物を吐出する充填口を有する充填ノズルを用いて、前記エッチング液組成物を容器に充填する工程を含み、前記充填ノズルの充填口の素材に対する前記エッチング液の後退接触角が60°以上かつ前進接触角と後退接触角との比(前進接触角/後退接触角)が1.4以下である、エッチング液組成物の製造方法に関する。
【0008】
本開示は、一態様において、本開示のエッチング液組成物の製造方法に使用するための混酸組成物であって、リン酸、硝酸及び有機酸を含む、混酸組成物に関する。
【0009】
本開示は、一態様において、容器に充填されたエッチング液組成物であって、前記エッチング液組成物は、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物であり、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、25℃における粘度が11mPa・s以上40mPa・s未満であり、前記容器の素材に対する前記エッチング液組成物の後退接触角が60°以上かつ前進接触角と後退接触角との比(前進接触角/後退接触角)が1.4以下である、容器入りエッチング液組成物に関する。
【0010】
本開示は、一態様において、リン酸、硝酸及び有機酸を含む混酸組成物の、本開示のエッチング液組成物の製造方法への使用に関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、一態様において、容器へ充填する際の液だれを抑制できるエッチング液組成物の製造方法を提供できる。本開示によれば、一態様において、容器へ充填する際の液だれの抑制と濾過速度の向上とを両立できるエッチング液組成物の製造方法を提供できる。本開示は、一態様において、容器内のエッチング液を取り出すときの液だれを抑制できる容器入りエッチング液組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、充填システムの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、一態様において、充填口の素材に対するエッチング液の接触角(後退接触角、前進接触角/後退接触角)を所定の範囲内とすることで、容器へ充填する際の液だれを抑制でき、さらに、濾過速度を向上できるという知見に基づく。
【0014】
すなわち、本開示は、一態様において、エッチング液組成物の製造方法であって、前記エッチング液組成物は、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物(以下、「本開示のエッチング液組成物」ともいう)であり、エッチング液組成物を吐出する充填口を有する充填ノズルを用いて前記エッチング液組成物を容器に充填する工程(以下、「充填工程」ともいう)を含み、前記充填ノズルの充填口の素材に対する前記エッチング液の後退接触角が60°以上かつ前進接触角と後退接触角との比(前進接触角/後退接触角)が1.4以下である、エッチング液組成物の製造方法(以下、「本態様1のエッチング液製造方法」ともいう)に関する。
本態様1によれば、一又は複数の実施形態において、容器へ充填する際の液だれを抑制できる。さらに、本態様1によれば、一又は複数の実施形態において、容器へ充填する際の液だれの抑制と濾過速度の向上とを両立できる。
【0015】
本態様1の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
同一液体に対しては、後退接触角が所定値以上であることにより液だれ回数が抑制され、前進接触角と後退接触角との比率が所定値以下であることにより、通液性(濾過速度)と液だれ抑制のバランスが取れ生産性が向上することになる。後退接触角がある程度高く、且つ、前進接触角と後退接触角の比率がある一定領域に入っている場合に、その両面の効果によりエッチング処理工程(例えば、エッチングにより電子部材を処理する工程、エッチング処理の準備をする工程)での生産性が向上すると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0016】
本開示は、その他の態様において、リン酸、硝酸、有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含み、25℃における粘度が所定範囲内であるエッチング液を用いることで、容器へ充填する際の液だれの抑制と濾過速度の向上とを両立できるという知見に基づく。
【0017】
すなわち、本開示は、その他の態様において、容器に充填されたエッチング液組成物の製造方法であって、前記エッチング液組成物は、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物(以下、「本開示のエッチング液組成物」ともいう)であり、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、25℃における粘度が11mPa・s以上40mPa・s未満であり、前記エッチング液組成物を容器に充填する工程(以下、「充填工程」ともいう)を含む、エッチング液組成物の製造方法(以下、「本態様2のエッチング液製造方法」ともいう)に関する。
本態様2によれば、一又は複数の実施形態において、容器へ充填する際の液だれの抑制と濾過速度の向上とを両立できるエッチング液組成物の製造方法を提供できる。
【0018】
本態様2の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
本態様2のエッチング液組成物は所定範囲の粘度を有するため、容器へ充填する際の液だれを抑制できると考えられる。また、本態様2のエッチング液組成物は有機酸を含有することで、強酸(リン酸、硝酸)とエッチング抑制剤との中和が急激に進んでサブミクロンサイズの微粒子を形成するのを抑制でき、フィルタの通液性が良好となり、濾過速度が向上すると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
以下の説明において、本態様1及び本態様2のエッチング液製造方法をまとめて「本開示のエッチング液製造方法」ともいう。
【0019】
[充填工程]
本開示のエッチング液製造方法は、本開示のエッチング液組成物を容器に充填する工程(充填工程)を含む。前記充填工程は、一又は複数の実施形態において、エッチング液組成物を吐出する充填口を有する充填ノズルを用いて、本開示のエッチング液組成物を容器に充填する工程である。
前記充填工程において、エッチング液組成物の容器への充填方法としては、特に限定されず、容器の形態等によって従来公知の方法により充填することができる。
前記充填工程における、エッチング液組成物の容器への充填方法としては、例えば、図1に示されるような充填システムを用いてエッチング液組成物を容器に充填する方法が挙げられるが、これに限定して解釈されなくてもよい。
前記充填システムは、一又は複数の実施形態において、図1に示されるように、エッチング液組成物を貯留するタンク1と、エッチング液組成物を送液するポンプ2と、エッチング液組成物をろ過処理するフィルタ3と、出口(充填ノズル)5から吐出するエッチング液組成物の流量を制御する出口バルブ4と、タンク1とポンプ2とフィルタ3と出口バルブ4と出口(充填ノズル)5とを接続する配管P1と備え、さらにフィルタ3と出口バルブ4との間の配管P1から分岐してポンプ2の上流側に接続する循環経路P2を備える。また、図1に示される充填システムは、一又は複数の実施形態において、循環経路P2を循環させるエッチング液組成物の流量を制御する循環バルブ7をさらに備える。
図1に示される充填システムは、一又は複数の実施形態において、タンク1内のエッチング液組成物をポンプ2で送液してフィルタ3でろ過し、出口バルブ4を開放して出口(充填ノズル)5から吐出させたエッチング液組成物を容器6に充填し、出口バルブ4の開放中も閉塞中も循環バルブ7を開放してエッチング液組成物を循環経路P2に循環させるように構成されている。
ポンプ2は、一又は複数の実施形態において、タンク1内のエッチング液組成物を配管P1内に送液するポンプである。ポンプの種類は特に限定されなくてもよく、例えば、ダイヤフラムポンプ等が挙げられる。ポンプ2は、一又は複数の実施形態において、循環バルブ7及び出口バルブ4の両方が閉じている場合、停止する。
フィルタ3は、一又は複数の実施形態において、エッチング液組成物をろ過処理するフィルタである。フィルタ3としては、例えば、従来から用いられているメンブレンフィルタ、プリーツ型フィルタ、デプス型フィルタ、ろ過助剤含有フィルタ等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることができる。フィルタ3の段数としては、例えば、1~5段が挙げられる。
出口5は、一又は複数の実施形態において、エッチング液組成物を吐出する充填口を有する充填ノズルである。
なお、図1において、循環経路P2は、フィルタ3の下流側とタンク1とを接続するように構成されているが、フィルタ3の下流側とポンプ2の上流側とを接続できればこれに限定されなくてもよい。例えば、循環経路P2は、フィルタ3の下流側からタンク1とポンプ2との間の配管P1に戻すように構成されていてもよい。
また、図1において、出口バルブ4及び循環バルブ7を別々に設けているが、これら2つのバルブの代わりに、配管P1と循環経路P2の分岐点に三方弁を設けて、エッチング液組成物の流路を切り替えるようにしてもよい。
また、図1における充填システムは、循環経路P2及び循環バルブ7によりエッチング液を循環させるように構成されているが、循環経路P2及び循環バルブ7を備えていない構成(すなわち、エッチング液を循環させない構成)であってもよい。
【0020】
[充填ノズル]
前記充填工程で用いる充填ノズルとしては、エッチング液を充填できるものであればよく、形状や大きさ等は特に限定されない。
充填ノズルの充填口の外径としては、例えば、5mm~1000mmが挙げられる。
充填ノズルの充填口の素材(材質)としては、液だれ抑制の観点から、ポリプロピレン(PP)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、PFA及びPTFEがより好ましい。
【0021】
[容器]
エッチング液組成物が充填される容器としては、例えば、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製又はフッ素樹脂製の容器が挙げられる。前記ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及びこれらの混合物等が挙げられる。フッ素樹脂としては、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでも、容器の素材(材質)としては、液だれ抑制の観点から、ポリプロピレン(PP)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、PFA及びPTFEがより好ましい。
本開示において、「ポリエチレン樹脂製又はポリプロピレン樹脂製の容器」とは、容器のうち少なくともエッチング液組成物を接する部分がポリエチレン樹脂製又はポリプロピレン樹脂製である容器を意味する。本開示における樹脂製容器としては、例えば、エッチング液組成物と接する内層にポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の層を設け、その外側に他の材質の樹脂等を積層させてなる容器を用いてもよい。
なお、市販品として入手可能なポリエチレン樹脂製又はポリプロピレン樹脂製の容器には、一般に、界面活性剤や金属酸化物のような帯電防止剤が添加されていることもあるが、本開示のエッチング液組成物においては、帯電防止剤を含まないことが好ましい。
また、本開示のエッチング液組成物は、硝酸を必須成分として含んでいるので、日光等による分解を防ぐためにも、容器外装が半透明や白色容器よりも、グレーや青等で着色または遮光してある容器であることが好ましい。
本開示における容器の形態としては、例えば、容量が0.1~30Lの樹脂製容器、容量が0.1~30Lの樹脂製内装容器と段ボールとを組み合わせた複合容器、容量が1~30Lの樹脂製内装容器と金属缶とを組み合わせた複合容器、容量が20~300Lの樹脂製ドラム容器、容量が20~300Lの樹脂製内装容器と金属性ドラムとを組み合わせた複合容器、容量が500~1200Lの容量の樹脂製内容容器と金属コンテナとを組み合わせた複合容器、1000以上のISOコンテナタンク等が挙げられる。
本開示における容器は、エッチング液組成物の保存又は輸送の目的に使用できればよく、例えば、射出成型、押出成型、又は回転成型により製造されたものが挙げられる。
エッチング液組成物の容器への充填は、一又は複数の実施形態において、ノズル(充填ノズル)を用いて行う場合、そのノズルの出口径(充填口の外径)としては、例えば、外径14mmが挙げられる。
【0022】
[エッチング液組成物]
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸、有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有する。本開示のエッチング液組成物は、その他の一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸、有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、25℃における粘度が11mPa・s以上40mPa・s未満であるエッチング液組成物である。
【0023】
(充填ノズルの充填口の素材(材質)に対するエッチング液の接触角)
充填ノズルの充填口の素材に対する本開示のエッチング液組成物の前進接触角は、液だれ抑制の観点から、70°以上が好ましく、75°以上がより好ましく、79°以上が更に好ましく、そして、生産性の観点から、120°以下が好ましく、100°以下がより好ましく、95°以下が更に好ましい。同様の観点から、前記前進接触角は、70°以上120°以下が好ましく、75°以上100°以下がより好ましく、79°以上100°以下が更に好ましい。
充填ノズルの充填口の素材に対する本開示のエッチング液組成物の後退接触角は、液だれ抑制の観点から、60°以上であって、66°以上が好ましく、70°以上がより好ましく、そして、生産性の観点から、100°以下が好ましく、92°以下がより好ましく、85°以下が更に好ましい。同様の観点から、前記後退接触角は、60°以上100°以下が好ましく、66°以上92°以下がより好ましく、70°以上85°以下が更に好ましい。
充填ノズルの充填口の素材に対する本開示のエッチング液組成物の前進接触角と後退接触角との比(前進接触角/後退接触角)は、液だれの抑制の観点から、1.4以下であって、1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。
本開示において、充填ノズルの充填口の素材に対するエッチング液の接触角(前進接触角、後退接触角)の測定は、25℃の環境下で、接触角測定装置(例えば、KRUSS社製のK-100)を用いて測定できる。具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0024】
(リン酸)
本開示のエッチング液組成物中のリン酸の配合量は、エッチングむら低減の観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、そして、エッチングむら低減の観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中のリン酸の配合量は、10質量%以上90質量%以下が好ましく、15質量%以上80質量%以下がより好ましく、20質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0025】
(硝酸)
本開示のエッチング液組成物中の硝酸の配合量は、エッチング速度向上の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が更に好ましく、4質量%以上が更に好ましく、そして、エッチングむら低減の観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましく、6質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中の硝酸の配合量は、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましく、2質量%以上7質量%以下が更に好ましく、3質量%以上6質量%以下が更に好ましく、4質量%以上6質量%以下が更に好ましい。
【0026】
(有機酸)
本開示のエッチング液組成物に含まれる有機酸としては、例えば、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、トリメリット酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、サリチル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、及びグルタミン酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。容器へ充填する際の液だれの抑制と濾過速度の向上とを両立する観点から、有機酸としては、炭素数1~10の1価の有機酸が好ましく、炭素数1~10の1価のカルボン酸がより好ましく、酢酸を含むものが更に好ましい。有機酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本開示のエッチング液組成物中の有機酸の配合量は、エッチングむら低減の観点から、11質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、そして、濾過速度向上の観点から、59質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中の有機酸の配合量は、11質量%以上59質量%以下が好ましく、15質量%以上50質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下が更に好ましい。有機酸が2種以上の組合せである場合、有機酸の配合量はそれらの合計配合量である。
【0028】
本開示のエッチング液組成物中のリン酸、硝酸及び有機酸の合計配合量は、エッチングむら低減の観点から、70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、99.9質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましい。本開示のエッチング液組成物中のリン酸、硝酸及び有機酸の合計配合量は、70質量%以上99.9質量%以下が好ましく、75質量%以上99質量%以下がより好ましく、80質量%以上98質量%以下が更に好ましい。
【0029】
本開示のエッチング液組成物に含まれる酸は、一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸及び有機酸を含む酸であり、容器へ充填する際の液だれの抑制と濾過速度の向上とを両立する観点から、リン酸、硝酸及び酢酸を含む酸であることが好ましく、リン酸、硝酸及び酢酸からなる混酸であることがより好ましい。
本開示のエッチング液組成物に含まれる酸がリン酸、硝酸及び酢酸からなる混酸である場合、前記混酸中のリン酸の配合量は、エッチングむら低減の観点から、10質量%以上95質量%以下が好ましく、20質量%以上93質量%以下がより好ましく、30質量%以上90質量%以下が更に好ましい。同様の観点から、前記混酸中の硝酸の配合量は、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上10質量%以下が更に好ましい。同様の観点から、前記混酸中の酢酸の配合量は、2質量%以上80質量%以下が好ましく、5質量%以上70質量%以下がより好ましく、15質量%以上60質量%以下が更に好ましい。リン酸と硝酸と酢酸との質量比(リン酸/硝酸/酢酸)は適宜設定することができ、例えば、57/6/37とすることができる。本開示において、混酸中の各成分の配合量は、一又は複数の実施形態において、混酸中の各成分の含有量とみなすことができる。
【0030】
(エッチング抑制剤)
本開示のエッチング液組成物に含まれるエッチング抑制剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示におけるエッチング抑制剤としては、一又は複数の実施形態において、ポリアルキレンイミン及びポリアルキレンポリアミンから選ばれる少なくとも1種の窒素含有化合物が挙げられる。、前記ポリアルキレンイミンとしては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)等が挙げられる。前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0031】
エッチング抑制剤がポリアルキレンイミンである場合、エッチング抑制剤の数平均分子量は、エッチングむら低減、保存安定性、及び濾過速度向上の観点から、300以上が好ましく、600以上がより好ましく、1,200以上が更に好ましく、そして、粘度の観点から、100,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、3,000以下が更に好ましい。より具体的には、エッチング抑制剤の数平均分子量は、300以上100,000以下が好ましく、600以上5,000以下がより好ましく、1,200以上3,000以下が更に好ましい。
エッチング抑制剤がポリアルキレンポリアミンである場合、エッチング抑制剤の数平均分子量又は分子量は、エッチングむら低減、並びに、保存安定性及び濾過速度向上の観点から、50以上が好ましく、80以上がより好ましく、100以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1,000以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。より具体的には、エッチング抑制剤の数平均分子量又は分子量は、50以上1,000以下が好ましく、80以上500以下がより好ましく、100以上300以下が更に好ましい。
【0032】
本開示において平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
本開示のエッチング抑制剤の平均分子量の測定方法の例を以下に示す。
<GPC条件(ポリアルキレンイミン)>
試料液:0.1wt%の濃度に調整したもの
装置/検出器: HLC-8320GPC(一体型GPC)東ソー(株)製
カラム:α-M+α-M(東ソー株式会社製)
溶離液:0.15mol/L Na2SO4,1% CH3COOH/水
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
試料液注入量:100μL
標準ポリマー:分子量が既知のプルラン(Shodex社 P-5、P-50,P-200、P-800)
【0033】
本開示のエッチング液組成物中のエッチング抑制剤の配合量は、エッチングむら低減の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中のエッチング抑制剤の配合量は、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下が更に好ましい。エッチング抑制剤が2種以上の組合せである場合、エッチング抑制剤の配合量はそれらの合計配合量である。
【0034】
(水)
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、水を含む。本開示のエッチング液に含まれる水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が挙げられる。
本開示のエッチング液組成物中の水の配合量は、エッチングむら低減の観点から、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中の水の配合量は、2質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上25質量%以下がより好ましく、7質量%以上20質量%以下が更に好ましい。
【0035】
(その他の成分)
本開示のエッチング液組成物は、本開示の効果が損なわれない範囲で、その他の成分をさらに配合してなるものであってもよい。その他の成分としては、リン酸及び硝酸以外の無機酸、キレート剤、界面活性剤、可溶化剤、防腐剤、防錆剤、殺菌剤、抗菌剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0036】
本開示のエッチング液組成物は、エッチングむら低減の観点から、アゾール化合物を含まないことが好ましい。ここで、「アゾール化合物を含まない」とは、一又は複数の実施形態において、アゾール化合物を含まないこと、実質的にアゾール化合物を含まないこと、又は、エッチング結果に影響を与える量のアゾール化合物を含まないこと、を含む。具体的な本開示のエッチング液組成物中におけるアゾール化合物の配合量は、特に限定されないが、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
【0037】
本開示のエッチング液組成物は、エッチングむら低減の観点から、塩素含有化合物を含まないことが好ましい。ここで、「塩素含有化合物を含まない」とは、一又は複数の実施形態において、塩素含有化合物を含まないこと、実質的に塩素含有化合物を含まないこと、又は、エッチング結果に影響を与える量の塩素含有化合物を含まないこと、を含む。具体的な本開示のエッチング液組成物中における塩素含有化合物の配合量は、特に限定されないが、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
【0038】
本開示のエッチング液組成物は、エッチングむら低減の観点から、リン酸塩系化合物を含まない又は配合されないことが好ましい。ここで、「リン酸塩系化合物を含まない又は配合されない」とは、一又は複数の実施形態において、リン酸塩系化合物を含まない又は配合されないこと、実質的にリン酸塩系化合物を含まない又は配合されないこと、又は、エッチング結果に影響を与える量のリン酸塩系化合物を含まない又は配合されないこと、を含む。具体的な本開示のエッチング液組成物中におけるリン酸塩系化合物の配合量は、特に限定されないが、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと又は配合されない)である。
【0039】
本開示のエッチング液組成物は、エッチングむら低減の観点から、過酸化水素を含まないことが好ましい。ここで、「過酸化水素を含まない」とは、一又は複数の実施形態において、過酸化水素を含まないこと、実質的に過酸化水素を含まないこと、又は、エッチング結果に影響を与える量の過酸化水素を含まないこと、を含む。具体的な本開示のエッチング液組成物中における過酸化水素の配合量は、特に限定されないが、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
【0040】
本開示のエッチング液組成物は、エッチングむら低減の観点から、フッ素化合物を含まないことが好ましい。ここで、「フッ素化合物を含まない」とは、一又は複数の実施形態において、フッ素化合物を含まないこと、実質的にフッ素化合物を含まないこと、又は、エッチング結果に影響を与える量のフッ素化合物を含まないこと、を含む。具体的な本開示のエッチング液組成物中におけるフッ素化合物の配合量は、特に限定されないが、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
【0041】
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、リン酸と、硝酸と、有機酸と、エッチング抑制剤と、水と、所望により上述した任意成分とを公知の方法で配合することにより得ることができる。したがって、本開示のエッチング液製造方法は、一又は複数の実施形態において、少なくとも、リン酸と、硝酸と、有機酸と、エッチング抑制剤と、水とを配合する工程を含むことができる。
本開示において「少なくとも、リン酸と、硝酸と、有機酸と、エッチング抑制剤と、水とを配合する」とは、一又は複数の実施形態において、リン酸と、硝酸と、有機酸と、エッチング抑制剤と、水と、必要に応じて上述した任意成分とを同時に又は順に混合することを含む。混合する順序は、特に限定されなくてもよい。前記配合は、例えば、プロペラ型撹拌機、ポンプによる液循環撹拌、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。
本開示のエッチング液製造方法において各成分の好ましい配合量は、上述した本開示のエッチング液組成物中の各成分の好ましい配合量と同じとすることができる。
【0042】
本開示において「エッチング液組成物中の各成分の配合量」とは、一又は複数の実施形態において、エッチング工程に使用される、すなわち、エッチング処理への使用を開始する時点(使用時)でのエッチング液組成物中の各成分の配合量をいう。
本開示のエッチング液組成物中の各成分の配合量は、一又は複数の実施形態において、本開示のエッチング液組成物中の各成分の含有量とみなすことができる。ただし、中和の影響を受ける場合は、配合量と含有量が異なる場合がある。
【0043】
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸及び有機酸を含む混酸組成物と、エッチング抑制剤とを配合することにより得ることができる。したがって、本開示のエッチング液製造方法は、一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸及び有機酸を含む混酸組成物と、エッチング抑制剤とを配合して前記エッチング液組成物を得る工程を含むことができる。前記混酸組成物には、水、及び、必要に応じて上述したその他の成分が含まれていてもよい。前記混酸組成物と前記エッチング抑制剤との配合は、上述した混合器を用いて行うことができる。
前記混酸組成物中のリン酸の配合量は、エッチングむら低減の観点から、10質量%以上95質量%以下が好ましく、20質量%以上93質量%以下がより好ましく、30質量%以上90質量%以下が更に好ましい。
前記混酸組成物中の硝酸の配合量は、同様の観点から、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
前記混酸組成物中の有機酸の配合量は、同様の観点から、2質量%以上80質量%以下が好ましく、5質量%以上70質量%以下がより好ましく、15質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
前記混酸組成物中のリン酸と硝酸と有機酸との質量比(リン酸/硝酸/有機酸)は、10~95/0.5~20/2~80が好ましく、20~93/1~15/5~70がより好ましく、30~80/1.5~10/15~60が更に好ましい。
前記混酸組成物中の水の配合量は、エッチング特性の観点から、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上25質量%以下がより好ましく、5質量%以上20質量%以下が更に好ましい。
前記混酸組成物は、一又は複数の実施形態において、本開示のエッチング液組成物の製造に使用される。したがって、本開示は、一態様において、本開示のエッチング液組成物の製造方法に使用するための混酸組成物であって、リン酸、硝酸及び有機酸を含む、混酸組成物に関する。また、本開示は、一態様において、リン酸、硝酸及び有機酸を含む混酸組成物の、本開示のエッチング液製造方法への使用に関する。
【0044】
本開示のエッチング液組成物の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1液型であってもよいし、使用時に混合される、いわゆる2液型であってもよい。2液型のエッチング液組成物としては、水が第1液と第2液とに分かれており、リン酸、硝酸、有機酸及びエッチング抑制剤がそれぞれ、第1液及び第2液のうちのいずれか一方又は双方に含まれており、使用時に第1液と第2液とが混合されるものが挙げられる。第1液及び第2液はそれぞれ必要に応じて上述した任意成分を含有してもよい。
【0045】
本開示のエッチング液組成物のpHは、エッチングむら低減の観点から、1以下が好ましく、0以下がより好ましく、0未満が更に好ましく、-1程度が更に好ましい。なお、本開示のエッチング液組成物のpHは、好ましくは-5以上、より好ましくは-3以上とすることができる。本開示において、エッチング液組成物のpHは、25℃における値であって、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0046】
本開示のエッチング液組成物の25℃における粘度は、液だれ抑制の観点から、11mPa・s以上が好ましく、13mPa・s以上がより好ましく、20mPa・s以上が更に好ましく、そして、濾過速度向上の観点から、40mPa・s未満が好ましく、39mPa・s以下がより好ましく、38mPa・s以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物の25℃における粘度は、11mPa・s以上40mPa・s未満が好ましく、13mPa・s以上39mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以上38mPa・s以下が更に好ましい。本開示において、エッチング液組成物の粘度は、B型粘度計やウベローデ粘度計といった汎用の粘度計を用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。エッチング液組成物の25℃にける粘度は、例えば、水や有機溶剤により調整できる。
【0047】
本開示のエッチング液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造・輸送コストを低くできる点で好ましい。そしてこの濃縮液は、必要に応じて水又は酸水溶液を用いて適宜希釈してエッチング工程で使用することができる。希釈割合は例えば、3~100倍とすることができる。
【0048】
[被エッチング膜]
本開示のエッチング液組成物を用いてエッチング処理される被エッチング膜は、基板上に形成された金属膜(以下、「被エッチング金属膜」ともいう)である。
基板は、一又は複数の実施形態において、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板である。
被エッチング金属膜は、一又は複数の実施形態において、少なくとも1種の金属を含む金属膜である。被エッチング金属膜としては、本開示の効果の奏する限り特に限定されるものではないが、例えば、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜が挙げられる。被エッチング金属膜は、一又は複数の実施形態において、銅及びアルミニウムを含まない。
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜(ただし、銅及びアルミニウムを含まない)のエッチングに用いられることが好ましい。本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、タングステン膜、モリブデン膜、又はニッケル膜のエッチングに好適に用いられる。すなわち、被エッチング膜としては、一又は複数の実施形態において、タングステン膜、モリブデン膜又はニッケル膜が挙げられる。
【0049】
[キット]
本開示は、一態様において、本開示のエッチング液組成物を製造するためのキット(以下、「本開示のキット」ともいう)に関する。
本開示のキットとしては、一又は複数の実施形態において、第1液と第2液とを相互に混合されない状態で含み、リン酸、硝酸、有機酸及びエッチング抑制剤がそれぞれ、第1液及び第2液のうちのいずれか一方又は双方に含まれており、使用時に第1液と第2液とが混合されるキット(2液型エッチング液)が挙げられる。第1液と第2液とが混合された後、必要に応じて水又は酸水溶液を用いて希釈されてもよい。第1液又は第2液には、エッチング液の調製に使用する水の全量又は一部が含まれていてもよい。第1液及び第2液にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分が含まれていてもよい。
本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸及び有機酸を含む混酸組成物(第1a液)と、エッチング抑制剤を含む溶液(第2a液)とを相互に混合されない状態で含み、これらが使用時に混合されるキット(2液型エッチング液)が挙げられる。第1a液と第2a液とが混合された後、必要に応じて水又は酸水溶液を用いて希釈されてもよい。第1a液又は第2a液には、エッチング液の調製に使用する水の全量又は一部が含まれていてもよい。第1a液に含まれる酸は、エッチング液の調製に使用する酸の全量でもよいし、一部でもよい。第2a液は、酸を含んでいてもよい。第1a液及び第2a液にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分が含まれていてもよい。
本開示のキットによれば、容器へ充填する際の液だれの抑制と濾過速度の向上とを両立可能なエッチング液を得ることができる。
【0050】
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、電子デバイス、特に、半導体ウエハの製造工程において、金属をエッチングするために用いることができる。
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板の作製に好適に用いることができる。
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、電子デバイス、特に、NAND型フラッシュメモリを含む不揮発性メモリ等の半導体メモリの製造工程において、電極をエッチングするために用いることができる。
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、三次元構造を有するパターンの作製に好適に用いることができる。これにより、大容量化されたメモリ等の高度なデバイスを得ることができる。
本開示のエッチング液組成物は、例えば、特開2020-145412号公報に開示されるようなエッチング方法に用いることができる。
【0051】
[容器入りエッチング液組成物]
本開示は、一態様において、容器に充填されたエッチング液組成物が、リン酸、硝酸、有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含み、25℃における粘度が所定範囲内であり、容器の素材に対する接触角(前進接触角、前進接触角/後退接触角)が所定の範囲であることにより、容器内のエッチング液を取り出すときの液だれを抑制できるという知見に基づく。
【0052】
すなわち、本開示は、一態様において、容器に充填されたエッチング液組成物であって、前記エッチング液組成物は、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物であり、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、25℃における粘度が11mPa・s以上40mPa・s未満であり、前記容器の素材に対する前記エッチング液組成物の後退接触角が60°以上かつ前進接触角と後退接触角との比(前進接触角/後退接触角)が1.4以下である、容器入りエッチング液組成物(以下、「本開示の容器入りエッチング液組成物」ともいう)に関する。
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、容器内のエッチング液を取り出すときの液だれを抑制できる。
【0053】
本開示の容器入りエッチング液組成物において、容器に充填されたエッチング液組成物としては、一又は複数の実施形態において、上述した本開示のエッチング液組成物が挙げられる。
本開示の容器入りエッチング液組成物において、容器としては、上述した本開示のエッチング液組成物が充填される容器が挙げられる。
本開示の容器入りエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、本開示のエッチング液製造方法を用いて得ることができる。例えば、本開示の容器入りエッチング液組成物は、図1に示されるような充填システムを用いて本開示のエッチング液組成物を容器6に充填することにより得ることができる。図1に示す充填システムの詳細については上述したとおりである。
【0054】
(容器の素材(材質)に対するエッチング液の接触角)
本開示の容器入りエッチング液組成物における、容器に充填されたエッチング液組成物は、液だれ抑制の観点から、容器の素材に対する後退接触角が60°以上かつ前進接触角と後退接触角との比(前進接触角/後退接触角)が1.4以下であり、容器の素材に対する前進接触角、後退接触角、比(前進接触角/後退接触角)の好ましい値は、上述した充填ノズルの充填口の素材に対する前進接触角、後退接触角、比(前進接触角/後退接触角)の好ましい値と同様とすることができる。
本開示において、容器の素材に対するエッチング液組成物の接触角の測定は、上述した充填ノズルの充填口の素材に対するエッチング液組成物の接触角の測定方法と同様の方法を用いて測定できる。
【実施例
【0055】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
1.エッチング液の調製(実施例1~12、比較例1~6)
リン酸、硝酸、表1~2に示す有機酸、表1~2に示すエッチング抑制剤、及び水を配合して実施例1~12及び比較例1~6のエッチング液(pH:-2~0)を得た。調製したエッチング液における各成分の配合量(質量%、有効分)を表1~2に示した。なお、表1~2中の水の配合量には、酸水溶液等に含まれる水の配合量も含まれている。
【0057】
エッチング液の調製には、下記成分を用いた。
リン酸[燐化学工業社製、濃度85%]
硝酸[富士フイルム和光純薬株式会社、濃度70%]
(有機酸)
酢酸[富士フイルム和光純薬株式会社、濃度100%]
(エッチング抑制剤)
ポリエチレンイミン[数平均分子量1,800、株式会社日本触媒製の「エポミンSP-018」]
ジエチレントリアミン[分子量103、東ソー株式会社の「DETA」]
(水)
水[栗田工業株式会社製の連続純水製造装置(ピュアコンティ PC-2000VRL型)とサブシステム(マクエース KC-05H型)を用いて製造した超純水]
【0058】
2.パラメータの測定方法
[エッチング液のpH]
エッチング液の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜ディーケーケー社製)を用いて測定した値であり、pHメータの電極をエッチング液へ浸漬して1分後の数値である。
【0059】
[エッチング液の粘度]
エッチング液の粘度は、下記粘度計を用いて下記条件で測定した。
装置名:東機産業社製のTVB-10形粘度計(恒温槽付き)
ローター:Spindle No. M1, Cord No. 20
回転数:100rpm,60秒後の粘度値を測定
測定温度:25℃
【0060】
[充填ノズルの充填口の素材に対するエッチング液組成物の前進接触角、後退接触角、前進接触角/後退接触角]
充填ノズルの充填口の素材に対するエッチング液組成物の前進接触角及び後退接触角は、下記測定装置を用いて下記条件で測定した。
装置名:KRUSS社製K-100
サンプル板の大きさ:20(mm)×50(mm)×2(mm)
サンプル板の素材(材質):表1~2に示す素材[PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、塩ビ(ポリ塩化ビニル)]
浸漬液:エッチング液組成物
<測定条件>
温度:25℃
測定速度:1mm/min
浸漬最大深さ:5mm
浸漬最小深さ:1mm
測定回数:3回
データ習得ステップ:0.2mm
<解析方法>
3回目の測定結果を、浸漬深さ-Force Plotした際の傾きから算出
<操作方法>
サンプル板をエッチング液組成物に徐々に浸漬させて行く過程での先端部の接触角(前進接触角)を測定した。また、エッチング液組成物に浸漬されたサンプル板を徐々に引き上げてくる過程での最後尾の接触角(後退接触角)を測定した。そして、前進接触角と後退接触角との比(前進接触角/後退接触角)を算出した。結果を表1~2に示した。
【0061】
3.エッチング液の評価
調製したエッチング液組成物を、図1に示す充填システムを用いて下記条件で容器に充填し、実施例1~12及び比較例1~6の容器入りエッチング液組成物を得た。そして、下記の評価を行い、結果を表1~2に示した。
ここで、図1に示す充填システムは、エッチング液組成物を貯留するタンク1と、エッチング液組成物を送液するポンプ2と、エッチング液組成物をろ過処理するフィルタ3と、出口(充填ノズル)5から吐出するエッチング液組成物の流量を制御する出口バルブ4と、タンク1とポンプ2とフィルタ3と出口バルブ4と出口(充填ノズル)5とを接続する配管P1と備え、さらにフィルタ3と出口バルブ4との間の配管P1から分岐してポンプ2の上流側に接続する循環経路P2を備える。また、図1に示す充填システムは、循環経路P2を循環させるエッチング液組成物の流量を制御する循環バルブ7をさらに備える。
まず、調製したエッチング液組成物をタンク1に収容する。そして、タンク1内のエッチング液組成物をポンプ2で送液し、フィルタ3でろ過し、濾過後のエッチング液組成物を出口(充填ノズル)5の充填口から吐出し、容器6の開口部から容器6内に充填する。
<充填システム>
ポンプ2:ダイヤフラムポンプDP-10BPT(ヤマダコーポレーション社製)
配管P1、P2:波形フレキホース15A(フロンケミカル社製)
フィルタ3:メンブレンフィルタ
出口5(充填ノズル):外径14mm、充填ノズルの充填口の素材:PTFE
容器6:20L樹脂製容器
<条件>
ろ過温度:25℃
ろ過圧力:0.3MPa
ろ過流量:0.1~20kg/(m2・分)
スケール:エッチング液組成物300kg
充填流量:0.1~20kg/(m2・分)
循環流量:0.1~20kg/(m2・分)
【0062】
[充填時の液だれ回数]
図1に示す充填システムを用いて上記条件で容器6内に所定量のエッチング液組成物を充填した後、次の空の充填容器に充填するため、出口5(充填ノズル)を容器6の開口部より引き上げた際に、容器6の開口部周辺や壁面に液だれが発生する頻度を評価した。左記の操作を10回行った時の発生頻度(液だれ回数)を表1~2に示した。液だれ回数が少ないほど、液だれが抑制されていると判断できる。
【0063】
[通液性の評価]
調製した未ろ過のエッチング液組成物を所定のフィルタ(アドバンテック社製、親水性PTFE0.20(孔径)μmフィルタ、型式:25HP020AN)で、液温25℃、エアー圧力0.30MPaの一定圧力の下でフィルタに通液させ、初期1分間で通液した通液量(g/分)を求め、表1に示した。尚、本条件による0.20μmフィルタ通液量は、該エッチング液組成物を容器に充填する際の濾過速度の指標とすることができる。すなわち、通液量が高いほど、高速で濾過が可能なエッチング液組成物と評価することができる。
【0064】
[生産性の評価]
該エッチング液組成物の生産性は、濾過速度すなわち濾過通液性と充填時の液だれ頻度の総和で評価することができる。例えば、濾過通液性が良好で、充填時の液だれ頻度が極めて少ないものは容器の開口部周辺や壁面の拭き取り作業が少ないため、非常に生産性が高い「A」と評価できる。一方で、濾過通液性が良好で、充填時の液だれ頻度が極めて高いものは容器の開口部周辺や壁面の拭き取り作業が非常に多くなるため、非常に生産性が悪い「D」と評価できる。そして、以下のように4段階で評価基準を設定し、結果を表1に示した。
<評価基準>
A:濾過通液性が良好であり、拭き取り作業が殆どないため、非常に生産性が高い
B:濾過通液性が良好であり、拭き取り作業が少ないため、非常が高い
C:拭き取り作業は殆どない。濾過通液性は悪いため、生産性は劣る
D:濾過通液性は良好だが、拭き取り作業が多く、中断回数が増加するため非常に生産性が低い
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1に示されるように、充填ノズルの充填口の素材に対するエッチング液の後退接触角が60°以上かつ(前進接触角/後退接触角)が1.4以下の条件を満たす実施例1~9は、容器へ充填する際の液だれ回数が少なく、液だれが抑制されていた。
また、リン酸、硝酸、有機酸及びエッチング抑制剤を含み、25℃における粘度が11mPa・s以上40mPa・s未満である実施例1~7のエッチング液は、リン酸、硝酸、有機酸及びエッチング抑制剤を含み、25℃における粘度が40mPa・s以上である実施例8~9、リン酸、硝酸、有機酸及びエッチング抑制剤を含み、25℃における粘度が11mPa・s未満である比較例1に比べて、容器へ充填する際の液だれの抑制と濾過速度の向上とを両立できており、生産性が向上していることが分かる。
表2に示されるように、充填ノズルの充填口の素材に対するエッチング液の後退接触角が60°以上かつ(前進接触角/後退接触角)が1.4以下の条件を満たす実施例1、10~11、7、12は、充填ノズルの充填口の素材に対するエッチング液の後退接触角が60°以上かつ(前進接触角/後退接触角)が1.4以下の条件を満たさない比較例2~6に比べて、容器へ充填する際の液だれ回数が少なく、液だれを抑制できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示のエッチング液組成物は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板等の基板上の金属膜のエッチングに有用である。
【符号の説明】
【0069】
1:タンク、2:ポンプ、3:フィルタ、4:出口バルブ、5:出口(充填ノズル)、6:容器、7:循環バルブ、P1:配管、P2:循環経路
図1