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特許7496028有機金属化合物、これを含む前駆体組成物、およびこれを用いた薄膜の製造方法
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  • 特許-有機金属化合物、これを含む前駆体組成物、およびこれを用いた薄膜の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】有機金属化合物、これを含む前駆体組成物、およびこれを用いた薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 13/00 20060101AFI20240529BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20240529BHJP
   C07F 7/10 20060101ALN20240529BHJP
【FI】
C07F13/00 A CSP
C23C16/18
C07F7/10 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023504679
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 KR2020010194
(87)【国際公開番号】W WO2022025333
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0094537
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョ-スク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ミン-ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ソク,チャン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョンウ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524070(JP,A)
【文献】Schneider, Heidi et al,Synthesis and Reactivity of NHC-Stabilized Iron(II)-Mesityl Complexes,European Journal of Inorganic Chemistry ,2017年,2017(19),2600-2616
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C23C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、有機金属化合物:
【化1】
前記化学式1において、
Mは、Mnまたはuであり;
aは、2であり;
bは、1または2であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基であり;
は、-ORまたは-NRであり;
は、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基、または炭素数1乃至6の線状もしくは分枝状アルキルシリル基である。
【請求項2】
、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、およびtert-ブチル基からなる群より選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の有機金属化合物。
【請求項3】
およびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、およびトリエチルシリル基からなる群より選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の有機金属化合物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の有機金属化合物を含む、気相蒸着用前駆体組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の気相蒸着用前駆体組成物をチャンバに導入するステップを含む、薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記薄膜の製造方法は、原子層蒸着法(ALD)または化学気相蒸着法(CVD)を含む、請求項5に記載の薄膜の製造方法。
【請求項7】
反応ガスとして、水素(H)、酸素(O)原子含有化合物、窒素(N)原子含有化合物またはケイ素(Si)原子含有化合物の中から選択されたいずれか1つ以上を注入するステップをさらに含む、請求項5に記載の薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記反応ガスは、水(HO)、酸素(O)、水素(H)、オゾン(O)、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)またはシラン(Silane)の中から選択されたいずれか1つ以上である、請求項7に記載の薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相蒸着により薄膜蒸着が可能な気相蒸着化合物に関し、具体的には、原子層蒸着法または化学気相蒸着法に適用可能であり、反応性、揮発性および熱的安定性に優れた新規有機金属化合物、前記有機金属化合物を含む前駆体組成物、前記前駆体組成物を用いた薄膜の製造方法、および前記前駆体組成物で製造された有機金属含有薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
有機金属前駆体薄膜は、多様な組成の金属薄膜、酸化物薄膜および窒化物薄膜の形成が可能であり、半導体分野に多様に応用される。薄膜を形成する方法には、CVD、ALD蒸着法があり、半導体素材の高集積化、超微細化によって均一な薄膜製造、薄膜厚さ調節可能性、高い段差被覆性などのメリットを有するALD蒸着法の必要性が強調されている。このとき、ALD蒸着法に使用するための前駆体も非常に重要な役割を果たし、高い揮発性および熱的安定性が必要である。
【0003】
有機金属薄膜のうち、特に、マンガン金属薄膜は、有機半導体電極および強磁性電極物質に応用される。マンガン酸化物薄膜は、電極物質、電気化学的蓄電池、軟磁性物質、ペロブスカイト物質、固体電解質のリチウムベースのバッテリ、触媒などに活用できる。また、マンガン窒化物薄膜は、半導体材料配線のバックエンド銅連結材において銅の拡散防止膜および銅接着層として利用可能な次世代物質で、触媒、バッテリ、メモリ素子、ディスプレイ、センサなど多様な応用を期待している。
【0004】
現在知られている代表的な有機金属前駆体のうち、マンガン(Mn)前駆体は、カルボニル化合物Mn(CO)10、シクロペンタジエン化合物Mn(Cp)、ベータジケトナート化合物Mn(tmhd)、アミジナート化合物Mn(tBu-Me-amd)などがある。これらは大部分固体化合物であり、融点が比較的高く、低い安定性を有する。また、薄膜蒸着時、薄膜内に不純物汚染を発生させることがある。その他にも、2つのリガンドの組み合わせからなる化合物Mn(MeCp)(CO)は、液体化合物であるものの、沸点が高く、化合物の安定性が低いというデメリットがある。また、電子ドナーリガンドを導入して配位数を満たす化合物Mn(hfa)(tmeda)は、ベータジケトナート化合物より融点は大きく低下したものの、固体化合物であり、蒸着温度が高いというデメリットがある。このように従来使用している前駆体のもつデメリットの改善のための、新規有機金属前駆体の開発が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のように言及された従来の有機金属前駆体の問題点を解決するためのものであって、反応性、熱的安定性および揮発性に優れた薄膜蒸着用有機金属前駆体化合物を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、前記有機金属前駆体化合物を用いた薄膜の製造方法および有機金属-含有薄膜を提供しようとする。
【0007】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、反応性と揮発性に優れたアルコキシドリガンドに、イミダゾールリガンドを導入することにより、融点が低く、低い温度範囲で揮発性に優れた新規有機金属化合物およびこれを含む前駆体組成物を開発しようとするものであって、本発明では、アルコキシドとイミダゾールリガンドの組み合わせからなる新規有機金属前駆体を提供しようとする。さらに、前記アルコキシドリガンドの置換基を変形させた新規有機金属前駆体を提供しようとする。
【0009】
本願の一側面は、下記化学式1で表される有機金属化合物を提供する。
【化1】
前記化学式1において、Mは、Mn、Cu、Co、FeまたはNiであり;
aは、2であり;bは、1または2であり(ただし、MがCoの場合、bは、2ではない);
およびRは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基であり;Rは、-ORまたは-NRであり;
は、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基、または炭素数1乃至6の線状もしくは分枝状アルキルシリル基である。
【0010】
本願の他の側面は、前記有機金属化合物を含む気相蒸着用前駆体組成物を提供する。
本願のさらに他の側面は、前記気相蒸着用前駆体組成物をチャンバに導入するステップを含む薄膜の製造方法を提供する。
本願のさらに他の側面は、前記気相蒸着用前駆体組成物を用いて製造された有機金属含有薄膜を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による新規有機金属化合物および前記気相蒸着化合物を含む前駆体組成物は、固体または粘度の低い液体化合物であり、揮発性に優れて均一な薄膜蒸着が可能である。
また、本発明の気相蒸着用前駆体組成物は、熱的安定性および反応性が高くて、優れた薄膜物性、厚さおよび段差被覆性の確保が可能である。
前記のような物性は原子層蒸着法および化学気相蒸着法に適した有機金属前駆体を提供し、優れた薄膜特性に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本願の実施例1のMn(MeMeIz)secBuO)化合物の熱重量-示差熱分析(TGDTA)グラフである。
図2】本願の実施例2のMn(MeEtIz)secBuO)化合物の熱重量-示差熱分析(TGDTA)グラフである。
図3】本願の実施例3のMn(MePrIz)secBuO)化合物の熱重量-示差熱分析(TGDTA)グラフである。
図4】本願の実施例4のMn(MeMeIz)(btsa)化合物の熱重量-示差熱分析(TGDTA)グラフである。
図5】本願の実施例5のMn(MeEtIz)(btsa)化合物の熱重量-示差熱分析(TGDTA)グラフである。
図6】本願の実施例6のMn(MePrIz)(btsa)化合物の熱重量-示差熱分析(TGDTA)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の実施形態および実施例を詳細に説明する。しかし、本願は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態および実施例に限定されない。
【0014】
本発明は、原子層蒸着法または化学気相蒸着法に適用可能であり、反応性、揮発性および熱的安定性に優れた新規有機金属化合物、前記有機金属化合物を含む前駆体組成物、前記前駆体組成物を用いた薄膜の製造方法、および前記前駆体組成物で製造された有機金属-含有薄膜に関する。
【0015】
本願明細書全体において、用語「アルキル」は、1乃至4個の炭素原子を有する線状もしくは分枝状アルキル基、およびこれらのすべての可能な異性体を含む。例えば、前記アルキル基としては、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(Pr)、iso-プロピル基(Pr)、n-ブチル基(Bu)、tert-ブチル基(Bu)、iso-ブチル基(Bu)、sec-ブチル基(secBu)、およびこれらの異性体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本願明細書全体において、用語「Iz」は、「イミダゾール」の略語を意味し、用語「btsa」は、「ビス(トリメチルシリル)アミド」の略語を意味する。
【0017】
本願の一側面は、下記化学式1で表される有機金属化合物を提供する。
【化2】
前記化学式1において、Mは、Mn、Cu、Co、FeまたはNiであり;
aは、2であり;bは、1または2であり(ただし、MがCoの場合、bは、2ではない);
およびRは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基であり;Rは、-ORまたは-NRであり;
は、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基、または炭素数1乃至6の線状もしくは分枝状アルキルシリル基であることが好ましい。
【0018】
本願の一実施形態において、より好ましくは、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、およびtert-ブチル基からなる群より選
択されるいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
本願の一実施形態において、より好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、およびトリエチルシリル基からなる群より選択されるいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本願の一実施形態において、前記有機金属化合物は、常温で液体または固体であってもよく、液体であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0021】
本願の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式2で表されることを特徴とするM(イミダゾール)(アルコキシド)化合物であってもよい。
【化3】
前記化学式2において、Mは、Mn、Cu、FeまたはNiであり;R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基であることが好ましい。
例えば、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、およびtert-ブチル基からなる群より選択されるいずれか1つであることがさらに好ましい。
【0022】
本願の一実施形態において、前記化学式2で表される有機金属化合物は、下記反応式1のような反応により製造できる。
【化4】
前記反応式1において、Mは、Mn、Cu、FeまたはNiであり;Xは、ハロゲン元素(例えば、Cl、BrまたはI)であり;R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基である。
【0023】
例えば、前記化学式2で表される有機化合物中、中心金属(M)がマンガンであるMn(イミダゾール)(アルコキシド)化合物の例として、下記のようなマンガン化合物があり得るが、これに限定されるものではない:
ジ-sec-ブトキシ-ビス(1,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)マンガン[Mn(MeMeIz)secBuO)];
ジ-sec-ブトキシ-ビス(1-エチル-3-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)マンガン[Mn(MeEtIz)secBuO)];
ジ-sec-ブトキシ-ビス(1-メチル-3-プロピル-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)マンガン[Mn(MePrIz)secBuO)]。
【0024】
本願の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式3で表されることを特徴とするM(イミダゾール)(アミド)化合物であってもよい。
【化5】
前記化学式3において、Mは、Mn、Cu、FeまたはNiであり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基、または炭素数1乃至6の線状もしくは分枝状アルキルシリル基であることが好ましい。
【0025】
例えば、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、およびtert-ブチル基からなる群より選択されるいずれか1つであることがさらに好ましく;RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、およびトリエチルシリル基からなる群より選択されるいずれか1つであることがさらに好ましい。
【0026】
本願の一実施形態において、前記化学式3で表される有機金属化合物は、下記反応式2のような反応により製造できる。
【化6】
前記反応式2において、Mは、Mn、Cu、FeまたはNiであり;Xは、ハロゲン元素(例えば、Cl、BrまたはI)であり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1乃至4の線状もしくは分枝状アルキル基、または炭素数1乃至6の線状もしくは分枝状アルキルシリル基である。
【0027】
例えば、前記化学式3で表される有機化合物中、中心金属(M)がマンガンであるMn(イミダゾール)(アミド)化合物の例として、下記のようなマンガン化合物があり得るが、これに限定されるものではない:
ビス(ビス(トリメチルシリル)アミノ)-ビス(1,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)マンガン[Mn(MeMeIz)(btsa)];
ビス(ビス(トリメチルシリル)アミノ)-ビス(1-エチル-3-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)マンガン[Mn(MeEtIz)(btsa)];

ビス(ビス(トリメチルシリル)アミノ)-ビス(1-メチル-3-プロピル-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)マンガン[Mn(MePrIz)(btsa)]。
【0028】
本願の他の側面は、前記有機金属化合物を含む気相蒸着用前駆体組成物を提供する。
【0029】
本願のさらに他の側面は、前記気相蒸着用前駆体組成物をチャンバに導入するステップを含む薄膜の製造方法を提供する。前記気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップは、物理吸着、化学吸着、または物理および化学吸着するステップを含むことができる。
【0030】
本願のさらに他の側面は、前記気相蒸着用前駆体組成物を用いて製造された有機金属含有薄膜を提供する。
【0031】
本発明による気相蒸着用前駆体、薄膜の製造方法、および有機金属含有薄膜は、前記有機金属化合物について記述された内容をすべて適用することができ、重複する部分については詳細な説明を省略したが、その説明が省略されても同一に適用可能である。
【0032】
本願の一実施形態において、前記薄膜の製造方法は、本発明の気相蒸着前駆体と反応ガスを順次に導入する原子層蒸着法(原子層堆積法、ALD)と、本発明の気相蒸着前駆体と反応ガスを継続的に注入して成膜する化学気相蒸着法(化学気相成長法、CVD)をすべて含むことができる。
【0033】
より具体的には、前記蒸着法は、有機金属化学気相蒸着(有機金属化学気相成長法、MOCVD)、低圧化学気相蒸着(低圧化学気相成長法、LPCVD)、パルス化化学気相蒸着法(P-CVD)、プラズマ強化原子層蒸着法(PE-ALD)、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本願の一実施形態において、前記薄膜の製造方法は、反応ガスとして、水素(H)、酸素(O)原子含有化合物(または混合物)、窒素(N)原子含有化合物(または混合物)またはケイ素(Si)原子含有化合物(または混合物)の中から選択されたいずれか1つ以上の反応ガスを注入するステップをさらに含むことができる。
【0035】
より具体的には、水(HO)、酸素(O)、水素(H)、オゾン(O)、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)またはシラン(Silane)の中から選択されたいずれか1つ以上を反応ガスとして使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0036】
具体的には、有機金属酸化物薄膜を蒸着するために、反応ガスとして、水(HO)、酸素(O)およびオゾン(O)を使用することができ、有機金属窒化物薄膜を蒸着す
るために、反応ガスとして、アンモニア(NH)またはヒドラジン(N)を使用することができる。
【0037】
また、金属有機金属薄膜を蒸着するために、反応ガスとして、水素(H)を使用することができ、有機金属シリサイド(MnSiまたはMnSi)薄膜を蒸着するために、反応ガスとして、シラン類の化合物を使用することができる。
【0038】
本発明の薄膜の製造方法により製造された薄膜は、有機金属薄膜、有機金属酸化薄膜、有機金属窒化薄膜または有機金属シリサイド薄膜であってもよいが、これに限定されるものではない。
【実施例
【0039】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例により限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]Mn(MeMeIz)secBuO)の合成
シュレンクフラスコに、MnCl(1当量、13g)、1,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド(2当量)、カリウム2-ブトキシド(4当量)およびテトラヒドロフラン(THF)を入れて、室温で一晩撹拌した後、反応を終了させ、減圧ろ過して溶媒を除去した。得られた化合物を70℃および0.3Torrで減圧蒸留して、橙色液体を得た。
【0041】
本実施例1で合成された下記化学式2-1で表される化合物[Mn(MeMeIz)secBuO)]の熱重量-示差熱分析の結果を、図1に示した。
【化7】
【0042】
[実施例2]Mn(MeEtIz)secBuO)の合成
シュレンクフラスコに、MnCl(1当量、13g)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(2当量)、カリウム2-ブトキシド(4当量)およびTHFを入れて、一晩還流した後、反応を終了させ、室温まで温度を下げて、減圧ろ過して溶媒を除去した。得られた化合物を70℃および0.2Torrで減圧蒸留して、橙色液体を得た。
【0043】
本実施例2で合成された下記化学式2-2で表される化合物[Mn(MeEtIz)secBuO)]の熱重量-示差熱分析の結果を、図2に示した。
【化8】
【0044】
[実施例3]Mn(MePrIz)secBuO)の合成
シュレンクフラスコに、MnCl(1当量、13g)、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムクロライド(2当量)、カリウム2-ブトキシド(4当量)およびTHFを入れて、室温で一晩撹拌した後、反応を終了させ、減圧ろ過して溶媒を除去した。得られた化合物を65℃および0.2Torrで減圧蒸留して、橙色液体を得た。
【0045】
本実施例3で合成された下記化学式2-3で表される化合物[Mn(MePrIz)secBuO)]の熱重量-示差熱分析の結果を、図3に示した。
【化9】
【0046】
[実施例4]Mn(MeMeIz)(btsa)の合成
シュレンクフラスコに、MnCl(1当量、3g)、1,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド(2当量)、カリウムビス-トリメチルシリルアミド(4当量)およびTHFを入れて、一晩還流した後、反応を終了させ、室温まで温度を下げて、減圧ろ過して溶媒を除去した。得られた化合物を90℃および1Torrで昇華して、黄褐色固体を得た。
【0047】
本実施例4で合成された下記化学式3-1で表される化合物[Mn(MeMeIz)(btsa)]の熱重量-示差熱分析の結果を、図4に示した。
【化10】
【0048】
[実施例5]Mn(MeEtIz)(btsa)の合成
シュレンクフラスコに、MnCl(1当量、3g)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(2当量)、カリウムビス-トリメチルシリルアミド(4当量)およびTHFを入れて、一晩還流した後、反応を終了させ、室温まで温度を下げて、減圧ろ過して溶媒を除去した。得られた化合物を80℃および0.4Torrで蒸留して、橙色液体を得た。
【0049】
本実施例5で合成された下記化学式3-2で表される化合物[Mn(MeEtIz)(btsa)]の熱重量-示差熱分析の結果を、図5に示した。
【化11】
【0050】
[実施例6]Mn(MePrIz)(btsa)の合成
シュレンクフラスコに、MnCl(1当量、3g)、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムクロライド(2当量)、カリウムビス-トリメチルシリルアミド(4当量)およびTHFを入れて、一晩還流した後、反応を終了させ、室温まで温度を下げて、減圧ろ過して溶媒を除去した。得られた化合物を60℃および0.4Torrで蒸留して、橙色液体を得た。
【0051】
本実施例6で合成された下記化学式3-3で表される化合物[Mn(MePrIz)(btsa)]の熱重量-示差熱分析の結果を、図6に示した。
【化12】
【0052】
[製造例1]原子層蒸着法(ALD)を用いたマンガン-含有薄膜の製造
基板上に、実施例1乃至6のいずれか1つの新規マンガン前駆体と酸素(O)を含む反応ガスを交互に供給してマンガン薄膜を製造した。前駆体と反応ガスを供給した後は、それぞれパージガスであるアルゴンを供給して、蒸着チャンバ内に残存する前駆体と反応ガスをパージした。前駆体の供給時間は8乃至15秒に調節し、反応ガスの供給時間も8乃至15秒に調節した。蒸着チャンバの圧力は1乃至20torrに調節し、蒸着温度は80乃至300℃に調節した。
【0053】
従来の有機金属化合物は、常温で不安定というデメリットによって前駆体への使用が難しかった。これに対し、本発明によるイミダゾールリガンドを含む新規マンガン前駆体は、熱安定性が相対的に高いと同時に、酸化性反応気体との反応性も高いというメリットがある。
【0054】
また、本発明によるイミダゾールリガンドを含む新規有機金属前駆体により均一な薄膜蒸着が可能であり、これによって優れた薄膜物性、厚さおよび段差被覆性を確保することができる。
【0055】
本発明の範囲は上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、気相蒸着により薄膜蒸着が可能な気相蒸着化合物に関し、具体的には、原子層蒸着法または化学気相蒸着法に適用可能であり、反応性、揮発性および熱的安定性に優れている。
また、本発明による新規有機金属化合物および前記気相蒸着化合物を含む前駆体組成物は、固体または粘度の低い液体化合物であり、揮発性に優れて均一な薄膜蒸着が可能であり、熱的安定性および反応性が高くて、優れた薄膜物性、厚さおよび段差被覆性の確保が可能である。
上記のような物性は原子層蒸着法および化学気相蒸着法に適した有機金属-含有前駆体を提供し、優れた薄膜特性に寄与する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6