(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】浴室暖房乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/36 20200101AFI20240530BHJP
D06F 34/04 20200101ALI20240530BHJP
D06F 34/26 20200101ALI20240530BHJP
D06F 58/10 20060101ALI20240530BHJP
D06F 101/14 20200101ALN20240530BHJP
D06F 103/08 20200101ALN20240530BHJP
【FI】
D06F58/36
D06F34/04
D06F34/26
D06F58/10 A
D06F101:14
D06F103:08
(21)【出願番号】P 2020124970
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】梶 兼輔
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-176572(JP,A)
【文献】特開2018-200154(JP,A)
【文献】再公表特許第2018/180654(JP,A1)
【文献】特開2016-129596(JP,A)
【文献】特開2018-084353(JP,A)
【文献】特開2016-165328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/36
D06F 34/04
D06F 34/26
D06F 58/10
D06F 101/14
D06F 103/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室を暖房するための加熱手段と、
前記浴室に干された衣類などの乾燥対象物を、浴室暖房により乾燥させる乾燥運転のモードとして、タイマ運転モードを可能とし、かつこのタイマ運転モードにおいては、前記乾燥運転が所定のタイマ設定時間だけ実行され、前記タイマ設定時間がタイムアップになると停止されるように、前記加熱手段を制御する制御手段と、
この制御手段と所定の通信端末との相互間においてデータ通信を可能とするデータ通信手段と、
前記乾燥対象物の乾燥具合を判断可能な乾燥具合判断手段と、
を備えて
おり、
前記加熱手段は、加熱湯水が供給される熱交換器と、前記浴室の空気を吸い込んで前記熱交換器に作用させて加熱させてから前記浴室に戻す温風送風用の循環ファンと、を備えている、浴室暖房乾燥機であって、
前記制御手段は、前記乾燥運転が前記タイマ運転モードで実行されて、前記タイマ設定時間がタイムアップになったときに、その時点において、前記乾燥対象物の乾燥具合が所定の乾燥状態に達していない場合には、その旨を知らせるためのデータを前記通信端末に送信するように構成されて
いるとともに、
前記乾燥運転が前記タイマ運転モードで実行されている場合において、前記タイマ設定時間がタイムアップとなる前に、前記乾燥対象物が前記所定の乾燥状態に達したと判断された場合には、それ以降においては、前記乾燥運転として、それ以前よりも浴室暖房に用いられる熱量を少なくした状態の特定の乾燥運転が実行されるように構成されており、
前記特定の乾燥運転は、前記熱交換器に供給される湯水の温度を低下させ、または前記循環ファンの回転速度を低下させる乾燥運転であって、前記浴室への温風送風を停止させることなく継続したままとする乾燥運転であることを特徴とする、浴室暖房乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室暖房乾燥機であって、
前記制御手段は、前記乾燥対象物の乾燥具合が所定の乾燥状態に達していない旨を知らせるためのデータを前記通信端末に送信する場合には、追加の乾燥運転を行なうか否かの問い合わせも行ない、かつこれに対応して前記追加の乾燥運転を要求する旨の応答があった場合には、前記追加の乾燥運転を実行させる構成とされている、浴室暖房乾燥機。
【請求項3】
請求項2に記載の浴室暖房乾燥機であって、
前記追加の乾燥運転として、前記乾燥対象物が前記所定の乾燥状態に達するまで継続して実行する態様の乾燥運転を設定することが可能とされている、浴室暖房乾燥機。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の浴室暖房乾燥機であって、
前記乾燥対象物の乾燥具合として、前記浴室の湿度に関連する所定の値が所定の閾値未満となるように前記浴室内の空気が乾燥した第1の乾燥状態と、この第1の乾燥状態に到達した以降において、前記乾燥運転が所定時間以上実行されることにより得られる第2の乾燥状態と、があり、
前記第2の乾燥状態が、前記所定の乾燥状態に相当している、浴室暖房乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に干した濡れた衣類などの乾燥対象物を乾燥させる用途に好適に用いることができる浴室暖房乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室暖房乾燥機の具体例として、特許文献1,2に記載のものがある。
これらの文献に記載の浴室暖房乾燥機においては、浴室を適宜に換気しながら浴室内に温風を送風することにより、浴室に干された濡れた衣類を乾燥させる乾燥運転が可能であるが、浴室の湿度またはその変化に基づき、衣類の乾燥具合を適宜判断することも可能とされている。このようなことから、浴室暖房乾燥機の乾燥運転モードとしては、衣類が十分に乾燥しているか否かを判断しつつ、乾燥運転を継続し、かつ十分に乾燥した段階で乾燥運転を終了する運転モードがよく用いられている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、浴室暖房乾燥機のユーザとしては、前記したような運転モードとは異なり、いわゆるタイマ運転モードを選択し、所定のタイマ設定時間がタイムアップした時点で、衣類の乾燥運転が終了することを要望する場合が比較的多い。
ただし、このようなタイマ運転モードにおいては、タイマ設定時間が長く設定されている場合には、タイムアップ時点で衣類を十分に乾燥させることができるものの、そうでない場合には、タイムアップ時点で衣類の乾燥が不十分(生乾き状態)となる虞がある。
これに対し、従来においては、前記した生乾き状態が発生した場合に、このことに適切に対応し得る手段は講じられていないのが実情であり、不便を生じていた。たとえば、ユーザが自宅に存在する場合においては、乾燥運転がタイムアップとなって終了した段階で、ユーザは衣類が十分に乾燥しているか否かを実際に衣類に触れるなどして確認し、かつ十分に乾燥していない場合には、浴室暖房乾燥機を再運転させるといったことは可能であるが、そのようなことは甚だ面倒である。また、ユーザが外出しているときに、乾燥運転が終了した場合には、衣類が十分に乾燥していないとしても、そのこと察知することは困難であり、その後外出先から帰宅した際に衣類が十分に乾燥していないことを初めて察知することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4305349号公報
【文献】特許第4433288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、乾燥運転をタイマ運転モードで実行する場合に、タイムアップ後に衣類などの乾燥対象物が適切に乾燥していない状態のまま放置されるなどの不具合を適切に解消することが可能な浴室暖房乾燥機を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される浴室暖房乾燥機は、浴室を暖房するための加熱手段と、前記浴室に干された衣類などの乾燥対象物を、浴室暖房により乾燥させる乾燥運転のモードとして、タイマ運転モードを可能とし、かつこのタイマ運転モードにおいては、前記乾燥運転が所定のタイマ設定時間だけ実行され、前記タイマ設定時間がタイムアップになると停止されるように、前記加熱手段を制御する制御手段と、この制御手段と所定の通信端末との相互間においてデータ通信を可能とするデータ通信手段と、前記乾燥対象物の乾燥具合を判断可能な乾燥具合判断手段と、を備えており、前記加熱手段は、加熱湯水が供給される熱交換器と、前記浴室の空気を吸い込んで前記熱交換器に作用させて加熱させてから前記浴室に戻す温風送風用の循環ファンと、を備えている、浴室暖房乾燥機であって、前記制御手段は、前記乾燥運転が前記タイマ運転モードで実行されて、前記タイマ設定時間がタイムアップになったときに、その時点において、前記乾燥対象物の乾燥具合が所定の乾燥状態に達していない場合には、その旨を知らせるためのデータを前記通信端末に送信するように構成されているとともに、前記乾燥運転が前記タイマ運転モードで実行されている場合において、前記タイマ設定時間がタイムアップとなる前に、前記乾燥対象物が前記所定の乾燥状態に達したと判断された場合には、それ以降においては、前記乾燥運転として、それ以前よりも浴室暖房に用いられる熱量を少なくした状態の特定の乾燥運転が実行されるように構成されており、前記特定の乾燥運転は、前記熱交換器に供給される湯水の温度を低下させ、または前記循環ファンの回転速度を低下させる乾燥運転であって、前記浴室への温風送風を停止させることなく継続したままとする乾燥運転であることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、タイマ運転モードでの乾燥運転が終了した場合に、衣類などの乾燥対象物が十分に乾燥しておらず、所定の乾燥状態に達していない場合には、その旨が通信端末の所持者としてのユーザに通知される。このため、衣類などの乾燥対象物が十分に乾燥していないにも拘わらず、ユーザがその旨を察知せず、乾燥対象物が十分に乾燥していないまま放置されるような不具合をなくすことができる。また、タイマ設定時間がタイムアップとなって、乾燥運転が終了した際に、ユーザが、衣類などの乾燥対象物の乾燥具合を確認することを目的として、浴室に入る必要もなくすことができ、便利である。
さらに、前記構成によれば、乾燥対象物の過乾燥を防止することができ、また浴室暖房に関し、省エネを図ることもできる。さらに、前記構成とは異なり、乾燥対象物が所定の乾燥状態に達した時点で乾燥運転を中断した場合には、その後浴室に湿気を多く含んだ空気が流入するなどして、乾燥対象物が湿気を帯びてしまう虞があるが、前記構成によれば、そのような虞もない。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記乾燥対象物の乾燥具合が所定の乾燥状態に達していない旨を知らせるためのデータを前記通信端末に送信する場合には、追加の乾燥運転を行なうか否かの問い合わせも行ない、かつこれに対応して前記追加の乾燥運転を要求する旨の応答があった場合には、前記追加の乾燥運転を実行させる構成とされている。
【0011】
このような構成によれば、タイマ運転モードでの乾燥運転が終了した場合に、衣類などの乾燥対象物が十分に乾燥していない場合に、追加の乾燥運転を実行し、十分に乾燥させることができる。追加の乾燥運転の要求は、所定の通信端末を利用し、たとえば外出先からも可能であるため、便利である。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記追加の乾燥運転として、前記乾燥対象物が前記所定の乾燥状態に達するまで継続して実行する態様の乾燥運転を設定することが可能とされている。
【0013】
このような構成によれば、乾燥対象物を所定の乾燥状態まで十分に乾燥させることが確実化されることとなり、好ましい。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記乾燥対象物の乾燥具合として、前記浴室の湿度に関連する所定の値が所定の閾値未満となるように前記浴室内の空気が乾燥した第1の乾燥状態と、この第1の乾燥状態に到達した以降において、前記乾燥運転が所定時間以上実行されることにより得られる第2の乾燥状態と、があり、前記第2の乾燥状態が、前記所定の乾燥状態に相当している。
【0017】
このような構成によれば、衣類などの乾燥対象物を乾燥させる場合に、その乾燥状態を確実なものとすることが可能であり、乾燥が不十分であるにも拘わらず、十分な乾燥状態であると過誤判断される虞をなくし、または殆どないものにすることができる。さらに、乾燥対象物が、所定の乾燥状態に達したか否かの判断も容易かつ的確に行なうことが可能である。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る浴室暖房乾燥機およびこれを備えたシステムの一例を示す概略説明図である。
【
図2】
図1に示す浴室暖房乾燥機の一例を示す概略説明図である。
【
図3】
図1および
図2に示す浴室暖房乾燥機において実行される動作処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1および
図2に示す浴室暖房乾燥機において実行される動作処理の他の例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1に示すシステムSYは、浴室暖房乾燥機Aに加え、給湯装置WH、および無線LANシステム6を構築するルータ60(無線LAN親機)ならびに回線終端装置61(モデム)を備えている。
【0022】
給湯装置WHは、たとえばガス給湯装置、あるいはオイル給湯装置であり、配管部29aを介しての浴槽10への給湯や、台所などの一般給湯が可能な給湯動作部20を備えている。この給湯動作部20は、浴室暖房乾燥機Aに対しても配管部29bを介して接続されており、浴室暖房乾燥機Aにおける温風生成が可能とされている。
【0023】
浴室暖房乾燥機Aは、浴室1の上部または上側に設置された本体部Aa、およびリモコン51を備えている。リモコン51は、浴室暖房乾燥機Aの運転のオン・オフや、これ以外の様々な指示を行なうためのものであり、複数の操作スイッチ51aや、データ表示が可能な表示部51bなどを備えており、ワイヤレス通信方式の可搬型である。ただし、これに代えて、配線通信方式とされて浴室1や脱衣所などに設置された固定設置型であってもよい。
【0024】
浴室暖房乾燥機Aの本体部Aaは、浴室暖房動作部3、制御部5、および通信部50を備えている。
より具体的に説明すると、
図2に示すように、浴室暖房乾燥機Aの本体部Aaは、浴室暖房動作部3を構成し、本発明でいう「浴室を暖房するための加熱手段」の一例に相当する循環ファン31ならびに熱交換器32、換気ファン36、およびこれらを内部に収容する筐体34を備えている。ミスト噴出ノズル41もさらに備えている。
【0025】
循環ファン31および熱交換器32は、浴室暖房動作部3を構成する機器であり、循環ファン31は、浴室1内の空気を浴室1の天井部に設けられた給気口35から吸い込み、かつ空気吹き出し口に設けられたルーバ33を介して浴室1内に送風を行なわせる。熱交換器32は、給気口35から循環ファン31に吸い込まれる空気を加熱するための熱交換器であり、この熱交換器32には、給湯装置WHから加熱用媒体としての加熱湯水が供給可能である。この加熱湯水の供給時には、空気加熱がなされ、ルーバ33から浴室1内に温風送風がなされる。ルーバ33は、後述するミスト噴出ノズル41と同様に、不図示のモータによって向きを変更自在である。
【0026】
換気ファン36は、浴室1内の空気を外部に排気可能であり、好ましくは、この換気ファン36の設置領域36aと筐体34の内部との相互間の連通路は、シャッタ37により開閉自在とされている。換気ファン36の設置領域36aは、トイレや脱衣所からの配管ダクト9a,9bも接続され、それらの箇所の換気に利用されている。シャッタ37を開状態とすれば、浴室1の換気がなされるのに対し、シャッタ37を閉状態とすれば、トイレや脱衣所の換気を継続したまま、浴室1の換気を停止することができる。
【0027】
ミスト噴出ノズル41は、入浴者がミストシャワーを浴びたい場合に、湯水のミストを噴出させるためのノズルである。このミスト噴出ノズル41には、給水用の配管部40が接続され、かつこの配管部40に設けられた開閉バルブV2の開閉により、ミスト噴出のオン・オフが切り替えられる。配管部40には、内部を流通する湯水を加熱して温水を生成可能な加熱部42が設けられ、温水のミスト噴出が可能とされている。
【0028】
制御部5は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、浴室暖房乾燥機Aの各部の動作制御を実行する。また、この制御部5を機能的にみると、
図1に示すように、乾燥具合判断部5a、およびタイマ5bを備えている。
乾燥具合判断部5aは、浴室1の湿度を検出するための静電容量式または抵抗式などの湿度センサSaから送出される信号に基づき、浴室1に干された洗濯衣類(乾燥対象物)の乾燥具合を判断する。乾燥具合の具体的な判断方法については、後述するが、湿度センサSaと乾燥具合判断部5aとの組み合わせは、本発明でいう「乾燥対象物の乾燥具合を判断可能な乾燥具合判断手段」の一例に相当する。
【0029】
制御部5は、浴室暖房動作部3を駆動させ、浴室1への温風送風を実行させることにより、浴室1に干された洗濯衣類を乾燥させる乾燥運転の種類として、「タイマ運転」と、「自動運転」とが可能である。
ここで、「タイマ運転」の場合には、予めタイマ5bに設定された時間だけ乾燥運転を実行し、タイムアップになると、その時点で乾燥運転を終了する。「自動運転」は、乾燥運転の所要時間を問うことなく乾燥運転を継続し、洗濯衣類の乾燥具合が所定の状態に達すると、その時点で乾燥運転を終了する。
ただし、本実施形態の浴室暖房乾燥機Aにおいては、タイマ運転の場合には、後述するような特徴的な動作制御が実行される。
【0030】
通信部50は、リモコン51との相互間でデータ通信が可能であるとともに、ルータ60および回線終端装置61を介してインターネットなどの通信網Nに通信接続可能である。このことにより、通信端末8と浴室暖房乾燥機Aとの相互間において通信網Nを利用したデータ通信が可能である。通信端末8は、たとえばスマートフォンであり、メールアドレスなどが予め登録されたものである。
【0031】
なお、前記したような通信端末8と浴室暖房乾燥機Aとの相互間のデータ通信は、給湯装置WHのリモコン7を利用して間接的に実行される構成とすることもできる。すなわち、給湯装置WHは、各部を動作制御するための制御部21、および通信部22を備えてい
ることに加え、この通信部22に配線などを介して通信接続された浴室用および台所用などのリモコン7(7A,7B)が付属して具備されている。各リモコン7は、給湯装置WHの運転を制御するための複数の操作スイッチ70や表示部71を具備しており、2つのリモコン7の双方または一方には、リモコン7をルータ60の子機とし、通信網Nへの通信接続を可能とする通信部72がさらに具備されている(
図1では、リモコン7Bに通信部72が具備されている)。浴室暖房乾燥機Aと給湯装置WHは、本来的に、これらの制御部5,21の相互間におけるデータ通信が可能な状態にあるため、浴室暖房乾燥機Aと通信端末8とのデータ通信は、リモコン7Bの通信部72を利用して実行させる構成を採用することも可能である。
浴室暖房乾燥機Aと通信端末8との相互間で所定のデータ通信を実行させるためのプログラムは、たとえば浴室暖房乾燥機Aの製造メーカまたはその関連会社が所有するサーバNsからダウンロードするなどして提供される。
【0032】
次に、前記した浴室暖房乾燥機Aにおいて実行される動作処理手順の一例について、
図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。併せて、その作用も説明する。
【0033】
まず、浴室暖房乾燥機Aのリモコン51が用いられ、浴室1内の衣類を乾燥させるための乾燥運転として、タイマ運転を開始する旨の操作がなされると、タイマ運転が開始される(S1:YES,S2)。このタイマ運転の開始は、ルーバ33から浴室1への温風送風がなされることにより開始される。その際、シャッタ37は開状態とされ、かつ換気ファン36は駆動オンとされることにより、浴室1は換気状態とされる。タイマ設定時間Tsについては、ユーザがリモコン51を操作し、任意の時間に設定することが可能である。
【0034】
タイマ運転が開始された場合、タイマ設定時間Tsがタイムアップする迄の期間においては、次のような動作がなされる。
すなわち、タイマ設定時間Tsよりも短い所定の第1の時間(たとえば、25分程度)T1が経過すると、その時点で、衣類の乾燥具合が制御部5によって判断される(S12:YES,S13)。この判断は、浴室1の換気を停止した状態において、湿度センサSaを利用して検出される湿度(相対湿度)が、所定の第2の時間T2(たとえば、5~7分程度)中にどれだけ上昇するかを観察する湿度判断である。浴室1の換気の停止は、換気ファン36を駆動オフとし、および/またはシャッタ37を閉状態とすることにより設定される。
衣類が余り乾燥していない場合、前記した湿度の上昇幅は大きいものの、その後に衣類がよく乾燥した状態では、前記湿度の上昇幅は小さくなる。したがって、前記湿度の上昇幅が所定の閾値Th未満であるか否かに基づき、衣類が所定以上に乾燥しているか否かを判断することが可能である。
【0035】
以上の点をより
図4を参照して説明すると、次のとおりである。すなわち、
図4のラインLaは、浴室1内の乾燥率を示し、この乾燥率は、乾燥運転が開始されてから時間が経過するにしたがって上昇する。一方、同図のラインLbは、浴室1内の湿度(相対湿度)を示し、この相対湿度は、基本的には、時間の経過に伴って下降していく。
図4において、乾燥運転開始から第1の時間T1が経過すると、その時点で浴室1の換気が停止され、第2の時間T2にわたって1回目の湿度判断がなされる。その際における湿度の上昇幅ΔHが、所定の閾値Th未満であるか否かが、制御部5において判断される。
図4に示す例では、1回目の湿度判断では、湿度の上昇幅ΔH(ΔH1)は、閾値Th以上であり、衣類は未乾燥の状態(第1の乾燥状態未満)と判断される。
【0036】
前記した湿度判定は、一定周期または不定周期で断続的に実行され、前記した1回目の湿度判断後には、所定の第1の時間T1が経過する都度、2回目以降の湿度判断処理が実
行される。なお、第1の時間T1は、一定でなくてもよく、たとえば徐々に短時間となるように変化してもよい。
図4においては、2回目の湿度判断処理時における湿度の上昇幅ΔH(ΔH2)は、未だ閾値Th以上であって、衣類は未乾燥の状態とされているが、3回目の湿度判断処理時における湿度の上昇幅ΔH(ΔH3)は、閾値Th未満となっており、衣類の乾燥状態は、第1の乾燥状態に達したものと制御部5において制御される。
【0037】
本実施形態の浴室暖房乾燥機Aにおいては、衣類の乾燥状態が、3段階に分けてられている。
具体的には、前記した湿度の上昇幅が閾値Th未満であり、衣類が略乾燥していると考えられる第1の乾燥状態、この第1の乾燥状態に達する以前の状態(衣類の未乾燥状態)、および前記第1の乾燥状態よりもさらに衣類の乾燥具合が高められている第2の乾燥状態である。この第2の乾燥状態は、衣類が前記第1の乾燥状態になった以降に、乾燥運転がさらに所定の第3の時間T3(たとえば、30分程度)以上実行されていることを条件として認められる。本実施形態においては、前記第2の乾燥状態が、衣類の適切かつ十分な乾燥状態であるとされ、本発明でいう「所定の乾燥状態」の一例に該当する。
本実施形態とは異なり、湿度のみをパラメータとして衣類の乾燥具合を判断した場合には、衣類の干し方が悪い場合や、衣類の厚みや材質が特異である場合などに、衣類の一部が未だ湿っているにも拘わらず、衣類が十分に乾燥していると過誤判断される虞がある。これに対し、本実施形態の手法によれば、そのような虞を解消することが可能である。
【0038】
乾燥運転が実行され、前記した湿度判断処理が実行される結果、衣類の乾燥状態が、第1の乾燥状態から第2の乾燥状態になった場合には、浴室1への温風送風の熱量を減少させる制御が実行される(S14:YES,S15:YES,S16)。温風送風の熱量を減少させる制御は、具体的には、給湯装置WHから熱交換器32に供給される湯水の温度を低下させる制御、あるいは循環ファン31の回転速度を低下させる制御などが該当する。
衣類が十分に乾燥したにも拘わらず、温風送風が高熱量で実行されていたのではエネルギの無駄が多くなり、また衣類が過乾燥となる虞があるが、前記した制御によれば、そのような虞を解消することができる。また、前記とは異なり、温風送風を完全に停止させたのでは、その後に湿気を含んだ空気が浴室1に流入し、タイマ設定時間Tsがタイムアップした時点で、衣類が湿気を帯びて冷えた状態となる虞があるが、前記した制御によれば、そのような虞も適切に解消することができる。
【0039】
本実施形態において、タイマ運転モードの乾燥運転は、衣類が十分に乾燥したか否かには関係なく継続して実行され、タイマ設定時間Tsがタイムアップになった時点で終了する(S3:YES,S4)。すると、制御部5においては、衣類の乾燥具合が判断される(S5)。この判断は、衣類が前記第2の乾燥状態であるか否かを確認する判断である。タイマ設定時間Tsが、第1の時間T1よりも短い場合には、前記した湿度判断処理が1度も実行されることなくタイムアップとなるため、このような場合には、タイムアップ後に、湿度判断処理を実行させてもよいが、このタイムアップ後の1回目の湿度判断処理によって衣類が第2の乾燥状態にあると判断されることはないため、湿度判断処理を実行する意義は余りない。
【0040】
前記したステップS5の判断において、衣類の乾燥具合が第2の乾燥状態に達していないと判断した場合、制御部5は、その旨のデータを通信端末8に送信するとともに、追加の乾燥運転を実行するか否か、および実行するならば、追加の乾燥運転をタイマ運転と自動運転のいずれのモードで実行するかを問い合わせるためのデータをも送信する(S6:YES,S7)。このことにより、通信端末8の所持者は、乾燥運転によって衣類が十分に乾燥していない旨を、自宅の内外を問わず、いずれの場所においても察知し、かつこの
ことに対してどのように対応するかを浴室暖房乾燥機Aに対して適切に指令することができる。
【0041】
通信端末8に対する前記したデータ送信に対し、通信端末8から応答があり、追加の乾燥運転を行なう旨のデータ、およびその運転モードを指定するデータなどが返信された場合、制御部5は、その指定されたモードで追加の乾燥運転を開始させる(S8:YES,S9)。追加の乾燥運転は、タイマ運転モードの場合には、再度のタイマ設定時間がタイムアップとなった時点で終了し、自動運転モードである場合には、衣類の乾燥状態が前記した第2の乾燥状態に達した時点で終了する(S10:YES,S11)。再度のタイマ設定時間は、たとえば通信端末8を操作することにより、その所持者が任意に指示可能とされている。
【0042】
前記とは異なり、ステップS4の乾燥運転を終了した段階で、衣類の乾燥状態が第2の乾燥状態に達していれば、通信端末8に対する前記したような通知はなされず、追加の乾燥運転は勿論実行されない(S6:NO)。また、ステップS7に対する通知に対し、通信端末8から浴室暖房乾燥機Aに適当な応答がない場合にも、追加の乾燥運転は実行されない(S8:NO)。
【0043】
前記したような動作処理によれば、衣類の乾燥運転をタイマ運転モードで実行した場合に、タイムアップ前に、衣類が適切に乾燥した場合には、途中から省エネが図られた状態でタイムアップの時刻まで適切に衣類の乾燥運転が継続される。その一方、タイムアップになった時点で、衣類が適切に乾燥していない場合には、その旨が通信端末8の所持者に通知され、的確な対応措置を採ることが可能であり、便利である。
【0044】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴室暖房乾燥機の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0045】
上述の実施形態においては、乾燥対象物の乾燥具合として、浴室の湿度の上昇幅が所定の閾値Th未満に低下した第1の乾燥状態と、この第1の乾燥状態に達した後に、乾燥運転がさらに所定の時間(第3の時間T3)実行された第2の乾燥状態とを設けており、乾燥運転は、最終的には、第2の乾燥状態を目指すようにしているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、第1の乾燥状態を、最終的に目指す十分な乾燥状態として設定してもよい。また、乾燥対象物の乾燥具合を判断するための手法としては、上述した実施形態の手法(浴室の換気停止時における相対湿度の上昇幅または上昇スピード)に基づく手法以外として、種々の手法があり、その具体的な内容は限定されない。
【0046】
通信端末は、スマートフォンの他、携帯電話機、タブレット型端末などであってもよいことは勿論のこと、これ以外として、たとえば浴室暖房乾燥機のリモコン、給湯装置のリモコンなどとすることもできる。ただし、通信端末は、浴室暖房乾燥機が設置される浴室の外部において、浴室暖房乾燥機との相互間でデータ通信が可能なものがユーザにとって便利であり、好ましくは、そのような通信端末とされる。また、通信端末は、複数であってもよく、複数の通信端末に対して所定のデータが一斉送信されるように構成してもよい。
【0047】
本発明は、浴室内を加熱して暖房する浴室暖房乾燥機であれば、その具体的な加熱手段の種類は問わない。たとえば、電熱式のヒータを利用して浴室内を加熱・乾燥させるものにも適用することができる。
上述した実施形態におけるタイマ設定時間Ts、第1ないし第3の時間T1~T3などの具体的な値は限定されない。
【符号の説明】
【0048】
A 浴室暖房乾燥機
Sa 湿度センサ(乾燥具合判断手段)
1 浴室
31 循環ファン(加熱手段)
32 熱交換器(加熱手段)
5 制御部(制御手段)
5a 乾燥具合判断部(乾燥具合判断手段)
5b タイマ
50 通信部(データ通信手段)
51 リモコン
8 通信端末