(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】繊維強化ポリマーアロイ基材およびそれを用いた成形品
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20240530BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240530BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240530BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
C08L101/00
C08K7/02
C08K7/06
(21)【出願番号】P 2019548080
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2019027109
(87)【国際公開番号】W WO2020017392
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2018134281
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018184572
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】越 政之
(72)【発明者】
【氏名】大内山 直也
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 恵寛
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061597(WO,A1)
【文献】特開2008-231249(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121136(WO,A1)
【文献】特開2006-083355(JP,A)
【文献】特開2003-305779(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046290(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02138530(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04
C08L 101/00
C08K 7/02
C08K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した強化繊維が平行に引き揃えられ隣接する強化繊維の中心距離が5μm~15μmの範囲にあるとともに、ポリマーアロイが含浸された繊維強化ポリマーアロイ基材であって、前記ポリマーアロイとして
、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)と
、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)
から選ばれるいずれかの樹脂との2種類の熱可塑性樹脂を組み合わせたポリマーアロイが使用され、繊維体積含有率が40~70体積%の範囲内にあり、且つ下記の方法によって求められる繊維の分散パラメーターDが90%以上であることを特徴とする繊維強化ポリマーアロイ基材。
(i)前記繊維強化ポリマーアロイ基材の強化繊維配向方向と垂直な横断面を複数の区画に分割し、その中の1つの区画を撮影する。
(ii)前記区画の撮影画像を、式(1)で規定された一辺の長さtを有する複数の正方形ユニットに分割する。
(iii)式(2)で定義する分散パラメーターdを算出する。
(iv)異なる区画について(i)~(iii)の手順を繰り返し、前記横断面から得られる複数の区画の分散パラメーターdの平均値を分散パラメーターDとする。
1.5a≦t≦2.5a (a:繊維直径、t:ユニットの一辺の長さ)・・・(1)
分散パラメーターd=1つの区画内における強化繊維が含まれるユニットの個数/1つの区画内におけるユニットの総個数×100(%)・・・(2)
【請求項2】
前記分散パラメーターdの変動係数が4%以下である、請求項1に記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
【請求項3】
構造周期が0.001~10μmの両相連続構造、または粒子径0.001~10μmの島相と海相とからなる海島構造を形成するポリマーアロイを含有する、請求項1
または2に記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
【請求項4】
前記繊維強化ポリマーアロイ基材中のポリマーアロイの構造周期、または島相を形成する樹脂の粒子径が下記式(6)で表される強化繊維間距離より小さい、請求項
3に記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
z=y-2r(z:強化繊維間距離、y:強化繊維の中心間距離、r:繊維半径)・・・(6)
【請求項5】
厚みが0.01mm~1.5mmの範囲にある、請求項1~
4のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
【請求項6】
前記強化繊維が炭素繊維である、請求項1~
5のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
【請求項7】
ボイド率が2%以下である、請求項1~
6のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
【請求項8】
引き抜き成形によって得られたものである、請求項1~
7のいずれかに繊維強化ポリマーアロイ基材。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材からなる成形品。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材または請求項
9に記載の成形品と、金属材料またはその成形品、もしくは樹脂材料またはその成形品とを一体化してなる複合成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化ポリマーアロイ基材およびそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
連続した強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させてなる繊維強化熱可塑性樹脂基材は、比強度、比剛性に優れ、軽量化効果が高い上に、耐熱性、耐薬品性が高いため、航空機、自動車等の輸送機器や、スポーツ、電気・電子部品などの各種用途へ好ましく用いられている。近年、軽量化に対する需要の高まりにより、航空機、自動車用途を中心に、金属部品から樹脂部品への代替や、部品の小型化、モジュール化が進みつつあることから、より成形性に優れ、かつ、機械特性に優れる材料開発が求められている。
【0003】
成形性と機械特性に優れた構造材用複合材料としては、例えば、ポリアミド樹脂に炭素繊維を含有してなる繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ(例えば、特許文献1参照)が知られている。このようなプリプレグは、高い機械特性のために軽量化材料として期待されているが、安定して機械特性を発現するためには、繊維束間へのマトリックス樹脂の含浸性に優れ、強化繊維が繊維強化熱可塑性樹脂基材中に均一に分散することが必要である。
【0004】
さらに、近年、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグは航空機用途を中心に高い耐熱性が要求されており、前述の成形性と機械特性と併せて、繊維強化熱可塑性樹脂基材に使用されるマトリックス樹脂には相反する特性を両立することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特性の両立は、単一樹脂では困難であり、このため異なった物性を持つポリマー同士を組み合わせることにより、それぞれのポリマーの持つ長所を互いに引き出し、短所を補うことによって、単一のポリマーと比較し優れた物性を発現させる技術、すなわちポリマーアロイ技術が注目されている。
【0007】
そこで本発明の課題は、ポリマーアロイをマトリックスとした繊維強化ポリマーアロイ基材に関して、強化繊維がより確実に均一に分散し、高い機械特性と耐熱性が小さいばらつきを持って安定して発現される繊維強化ポリマーアロイ基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、主として、以下の構成を有する。
[1]連続した強化繊維が平行に引き揃えられるとともに、ポリマーアロイが含浸された繊維強化ポリマーアロイ基材であって、前記ポリマーアロイとして2種類以上の熱可塑性樹脂を組み合わせたポリマーアロイが使用され、繊維体積含有率が40~70体積%の範囲内にあり、且つ下記の方法によって求められる繊維の分散パラメーターDが90%以上であることを特徴とする繊維強化ポリマーアロイ基材。
(i)前記繊維強化ポリマーアロイ基材の強化繊維配向方向と垂直な横断面を複数の区画に分割し、その中の1つの区画を撮影する。
(ii)前記区画の撮影画像を、式(1)で規定された一辺の長さtを有する複数の正方形ユニットに分割する。
(iii)式(2)で定義する分散パラメーターdを算出する。
(iv)異なる区画について(i)~(iii)の手順を繰り返し、前記横断面から得られる複数の区画の分散パラメーターdの平均値を分散パラメーターDとする。
1.5a≦t≦2.5a (a:繊維直径、t:ユニットの一辺の長さ)・・・(1)
分散パラメーターd=1つの区画内における強化繊維が含まれるユニットの個数/1つの区画内におけるユニットの総個数×100(%)・・・(2)
[2]前記分散パラメーターdの変動係数が4%以下である、[1]に記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
[3]前記ポリマーアロイがポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)から選ばれる少なくとも2種以上の樹脂を組み合わせたポリマーアロイである、[1]または[2]に記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
[4]構造周期が0.001~10μmの両相連続構造、または粒子径0.001~10μmの島相と海相とからなる海島構造を形成するポリマーアロイを含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
[5]隣接する強化繊維の中心距離が5μm~15μmの範囲にある、[1]~[4]のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
[6]前記繊維強化ポリマーアロイ基材中のポリマーアロイの構造周期、または島相を形成する樹脂の粒子径が下記式(6)で表される強化繊維間距離より小さい、[4]または[5]に記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
z=y-2r(z:強化繊維間距離、y:強化繊維の中心間距離、r:繊維半径)・・・(6)
[7]厚みが0.01mm~1.5mmの範囲にある、[1]~[6]のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
[8]
前記強化繊維が炭素繊維である、[1]~[7]のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
[9]ボイド率が2%以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材。
[10]引き抜き成形によって得られたものである、[1]~[9]のいずれかに繊維強化ポリマーアロイ基材。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材からなる成形品。
[12][1]~[10]のいずれかに記載の繊維強化ポリマーアロイ基材または[11]に記載の成形品と、金属材料またはその成形品、もしくは樹脂材料またはその成形品とを一体化してなる複合成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強化繊維が高い均一性をもって分散し、ポリマーアロイが含浸した、高い機械特性と耐熱性を有しかつそれが小さいばらつきをもって安定的に発現される繊維強化ポリマーアロイ基材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について、実施形態とともに詳細に説明する。
本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材は、平行に引き揃えられた連続した強化繊維に、熱可塑ポリマーアロイを含浸させたものである。本発明において、連続した強化繊維とは、繊維強化ポリマーアロイ基材中で当該強化繊維が途切れのないものをいう。本発明における強化繊維の形態および配列としては、例えば、一方向に引き揃えられたもの、織物(クロス)、編み物、組み紐、トウ等が挙げられる。中でも、特定方向の機械特性を効率よく高められることから、強化繊維が一方向に配列してなることが好ましい。
【0011】
強化繊維の種類としては特に限定されず、炭素繊維、金属繊維、有機繊維、無機繊維が例示される。これらを2種以上用いてもよい。強化繊維に炭素繊維を用いることで、軽量でありながら高い機械特性を有する繊維強化ポリマーアロイ基材が得られる。
【0012】
炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石油タールや石油ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、ビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とするセルロース系炭素繊維、炭化水素などを原料とする気相成長系炭素繊維、これらの黒鉛化繊維などが挙げられる。これら炭素繊維のうち、強度と弾性率のバランスに優れる点で、PAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
【0013】
金属繊維としては、例えば、鉄、金、銀、銅、アルミニウム、黄銅、ステンレスなどの金属からなる繊維が挙げられる。
【0014】
有機繊維としては、例えば、アラミド、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンなどの有機材料からなる繊維が挙げられる。アラミド繊維としては、例えば、強度や弾性率に優れるパラ系アラミド繊維と、難燃性、長期耐熱性に優れるメタ系アラミド繊維が挙げられる。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維などが挙げられ、メタ系アラミド繊維としては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維などが挙げられる。アラミド繊維としては、メタ系アラミド繊維に比べて弾性率の高いパラ系アラミド繊維が好ましく用いられる。
【0015】
無機繊維としては、例えば、ガラス、バサルト、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機材料からなる繊維が挙げられる。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス繊維(電気用)、Cガラス繊維(耐食用)、Sガラス繊維、Tガラス繊維(高強度、高弾性率)などが挙げられる。バサルト繊維は、鉱物である玄武岩を繊維化した物で、耐熱性の非常に高い繊維である。玄武岩は、一般的に、鉄の化合物であるFeOまたはFeO2を9~25重量%、チタンの化合物であるTiOまたはTiO2を1~6重量%含有するが、溶融状態でこれらの成分を増量して繊維化することも可能である。
【0016】
本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材は、補強材としての役目を期待されることが多いため、高い機械特性を発現することが望ましく、高い機械特性を発現するためには、強化繊維として炭素繊維を含むことが好ましい。
【0017】
繊維強化ポリマーアロイ基材において、強化繊維は、通常、多数本の単繊維を束ねた強化繊維束を1本または複数本並べて構成される。1本または複数本の強化繊維束を並べたときの強化繊維の総フィラメント数(単繊維の本数)は、1,000~2,000,000本が好ましい。生産性の観点からは、強化繊維の総フィラメント数は、1,000~1,000,000本がより好ましく、1,000~600,000本がさらに好ましく、1,000~300,000本が特に好ましい。強化繊維の総フィラメント数の上限は、分散性や取り扱い性とのバランスも考慮して、生産性と分散性、取り扱い性を良好に保てるように決められればよい。
【0018】
1本の強化繊維束は、好ましくは平均直径5~10μmである強化繊維の単繊維を1,000~50,000本束ねて構成される。
【0019】
本発明に使用されるポリマーアロイとしては例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリブチレン樹脂等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルホン(PSU)樹脂、変性PSU樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン(PK)樹脂、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK)、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)樹脂、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑エラストマー等から選ばれる2種類以上の樹脂の組み合わせが挙げられる。とりわけ、機械特性および耐熱性の観点からポリマーアロイがポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)から選ばれる少なくとも2種以上の樹脂を組み合わせた熱可塑ポリマーアロイがより好ましく用いられる。
【0020】
上記ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK)としては、例えば、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルエーテルケトンエーテルケトン(PEEKEK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、及びポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEDEK)等やこれらの共重合体、変性体、および2種以上ブレンドした樹脂などであってもよい。
【0021】
本発明のポリマーアロイは、繊維強化ポリマーアロイ基材中で、前記ポリマーアロイが、構造周期0.001~10μmの両相連続構造、または前記ポリマーアロイが粒子径0.001~10μmの島相と海相からなる海島構造を形成することが好ましい。0.001μm~10μmの範囲の両相連続構造、または粒子径0.001~10μmの範囲の島相と海相からなる海島構造に制御することにより、高い機械特性および耐熱性を発現できる。0.01μm~5μmの範囲の両相連続構造、または粒子径0.01~5μmの範囲の島相と海相からなる海島構造を形成することがより好ましく、0.1μm~1μmの範囲の両相連続構造、または粒子径0.1~1μmの範囲の島相と海相からなる海島構造を形成することがさらに好ましい。
【0022】
3種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせたポリマーアロイの場合には、例えば、(i)両相連続構造と海島構造の組合せ、(ii)異なる種類の両相連続構造が組み合わさったもの、(iii)3種以上の樹脂から構成される複数相の連続構造等、各種構造を適宜組み合わせることができる。
【0023】
またこれらの両相連続構造、もしくは分散構造を確認するためには、規則的な周期構造が確認されることが好ましい。これは例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認に加えて、小角X線散乱装置または光散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることの確認が必要である。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λm(nm)は、両相連続構造の場合、構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ(nm)、散乱極大を与える散乱角θm(deg°)を用いて次式(7)
Λm=(λ/2)/sin(θm/2)・・・(7)
により計算することができる。
【0024】
また、両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズが上記の範囲にあっても、一部構造的に粗大な部分などがあると、例えば衝撃を受けた際そこを起点として破壊が進行するなど、本来のポリマーアロイの特性が得られないことがある。したがって、ポリマーアロイの両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離の均一性が重要となる。この均一性は、上述のポリマーアロイの小角X線散乱測定または、光散乱測定により評価することが可能である。小角X線散乱測定と光散乱測定では、分析可能な相分離構造サイズが異なるので、分析するポリマーアロイの相分離構造サイズに応じて適宜使い分ける必要がある。小角X線散乱測定および光散乱測定は両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズに加え、その分布に関する情報が得られる。具体的には、それら測定で得られるスペクトルにおける散乱極大のピーク位置、すなわち散乱角θm(deg°)が両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズに対応し、そのピークの拡がり方が、構造の均一性に対応する。優れた機械特性等の物理特性を得るためには、構造均一性が高い方が好ましく、本発明におけるポリマーアロイは小角X線散乱測定または光散乱測定により得られた散乱スペクトルが極大値を有することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材は、連続した強化繊維に前述の熱可塑ポリマーアロイを含浸させたものであり、必要に応じて、さらに、充填材、各種添加剤などを含有してもよい。
【0026】
充填材としては、一般に樹脂用フィラーとして用いられる任意のものを用いることができ、繊維強化ポリマーアロイ基材やそれを用いた成形品の強度、剛性、耐熱性、寸法安定性をより向上させることができる。充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状無機充填材、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、アルミノシリケート、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカなどの非繊維状無機充填材などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これら充填材は中空であってもよい。また、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で処理されていてもよい。また、モンモリロナイトとして、有機アンモニウム塩で層間イオンをカチオン交換した有機化モンモリロナイトを用いてもよい。なお、繊維状充填材は、不連続繊維からなるものであれば、連続繊維からなる強化繊維の補強効果を損なうことなく機能を付与できる。
【0027】
各種添加剤としては、例えば、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
【0028】
本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材は、連続した強化繊維にポリマーアロイを含浸させることにより得ることができる。
【0029】
含浸方法としては、例えば、フィルム状のポリマーアロイを溶融し、加圧することで強化繊維束にポリマーアロイを含浸させるフィルム法、繊維状のポリマーアロイと強化繊維束とを混紡した後、繊維状のポリマーアロイを溶融し、加圧することで強化繊維束にポリマーアロイを含浸させるコミングル法、粉末状のポリマーアロイを強化繊維束における繊維の隙間に分散させた後、粉末状のポリマーアロイを溶融し、加圧することで強化繊維束にポリマーアロイを含浸させる粉末法、溶融したポリマーアロイ中に強化繊維束を浸し、加圧することで強化繊維束にポリマーアロイを含浸させる引き抜き法が挙げられる。様々な厚み、繊維体積含有率など多品種の繊維強化ポリマーアロイ基材を作製できることから、引き抜き法が好ましい。
【0030】
本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材の厚さとしては、0.01~1.5mmが好ましい。厚さが0.01mm以上であれば、繊維強化ポリマーアロイ基材を用いて得られる成形品の強度を向上させることができる。0.05mm以上がより好ましい。一方、厚さが1.5mm以下であれば、強化繊維にポリマーアロイをより含浸させやすい。1mm以下がより好ましく、0.7mm以下がさらに好ましく、0.6mm以下が一層好ましい。
【0031】
また、本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材では、繊維強化ポリマーアロイ基材全体100体積%中、強化繊維を40体積%以上70体積%以下含有する。強化繊維を40体積%以上含有することにより、繊維強化ポリマーアロイ基材を用いて得られる成形品の強度をより向上させることができる。45体積%以上がより好ましく、50体積%以上がさらに好ましい。一方、強化繊維を70体積%以下含有することにより、強化繊維にポリマーアロイをより含浸させやすい。65体積%以下がより好ましく、60体積%以下がさらに好ましい。
【0032】
なお、繊維強化ポリマーアロイ基材の強化繊維体積含有率Vfは、繊維強化ポリマーアロイ基材の質量W0(g)を測定したのち、該繊維強化ポリマーアロイ基材を空気中500℃で30分間加熱してポリマーアロイ成分を焼き飛ばし、残った強化繊維の質量W1(g)を測定し、式(3)により算出した。
Vf(体積%)=(W1/ρf)/{W1/ρf+(W0-W1)/ρ1}×100・・・(3)
ρf:強化繊維の密度(g/cm3)
ρ1:ポリマーアロイの密度(g/cm3)
【0033】
本発明の繊維強化ポリマーアロイ基材は繊維強化ポリマーアロイ基材に含まれるボイドの含有率(ボイド率)が2%以下であることが好ましい。ボイド率が2%以下であることにより、強化繊維の機械特性を損なうことなく、繊維強化ポリマーアロイ基材の機械特性を発現することができる。ボイド率としては、1.5%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0034】
本発明における繊維強化ポリマーアロイ基材のボイド率は、繊維強化ポリマーアロイ基材の厚み方向断面を以下のように観察して求めた。繊繊維強化ポリマーアロイ基材をエポキシ樹脂で包埋したサンプルを用意し、繊維強化ポリマーアロイ基材の厚み方向断面が良好に観察できるようになるまで、前記サンプルを研磨した。研磨したサンプルを、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VHX-9500(コントローラー部)/VHZ-100R(測定部)((株)キーエンス製)を使用して、拡大倍率400倍で撮影した。撮影範囲は、繊維強化ポリマーアロイ基材の厚み×幅500μmの範囲とした。撮影画像において、基材の断面積および空隙(ボイド)となっている部位の面積を求め、式(4)により含浸率を算出した。
ボイド率(%)=(ボイドが占める部位の総面積)/(繊維強化ポリマーアロイ基材の総面積)×100・・・(4)
【0035】
本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材では下記の方法で定義される分散パラメーターDが90%以上である。分散パラメーターDが90%以上であることにより、繊維強化ポリマーアロイ基材の機械特性のバラつきを低減することができる。
【0036】
(分散パラメーターDの算出)
(i)繊維強化ポリマーアロイ基材の強化繊維配向方向と垂直な横断面を複数の区画に分割し、その中の1つの区画を撮影する。
(ii)上記区画の撮影画像を、式(1)で規定された一辺の長さtを有する複数の正方形ユニットに分割する。
(iii)式(2)で定義する分散パラメーターdを算出する。
(iv)異なる区画について(i)~(iii)の手順を繰り返し、上記横断面から得られる複数の区画の分散パラメーターdの平均値を分散パラメーターDとする。
1.5a≦t≦2.5a (a:繊維直径、t:ユニットの一辺の長さ)・・・(1)
分散パラメーターd=1つの区画内における強化繊維が含まれるユニットの個数/1つの区画内におけるユニットの総個数×100(%)・・・(2)
【0037】
(評価方法)
試料である繊維強化ポリマーアロイ基材を、エポキシ樹脂「エポクイック」(登録商標:ビューラー社製)に埋め込み、室温で24時間硬化させた後、繊維強化ポリマーアロイ基材における強化繊維の配向方向にほぼ垂直な横断面を研磨し、次いで研磨面を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VHX-9500(コントローラー部)/VHZ-100R(測定部)((株)キーエンス製)で、位置を変えながら撮影する。
【0038】
撮影された繊維強化ポリマーアロイ基材の横断面写真について画像解析を行い、式(1)を1辺の長さとする、相互に重なり合わない略正方形の複数のユニットに分割した。この略正方形ユニットを順に画像解析し、略正方形ユニット内に強化繊維を含むユニットをカウントして、式(2)より分散パラメーターdを算出した。
【0039】
上記の画像処理は、区画された略正方形ユニットの総数に対するユニット内に強化繊維を含むユニットの数を算出することによって分散パラメーターdが求められる。2値化は原則として判別分析法を採用するが、場合によっては撮影写真と対比しつつ手動で実施することも可能である。
【0040】
また、正方形のユニット内に含まれる強化繊維は、強化繊維の一部でも含まれていればカウントされ、二つ以上の強化繊維が含まれていてもユニットとしては1つとしてカウントされる。
【0041】
1つの研磨面について、撮影位置を変えながら20回以上の枚数に亘って撮影し、各々の横断面写真から得られる繊維強化ポリマーアロイ基材の分散パラメーターdに対し、その平均値を分散パラメーターDとして求めればよく、その値から、繊維強化ポリマーアロイ基材における強化繊維の分布状態を定量的に評価することが可能となる。なお、横断面の撮影枚数が十分に確保できない場合には、繊維強化ポリマーアロイ基材の異なる横断面の研磨面を複数枚撮影し、分散パラメーターdを算出し、最終的に分散パラメーターDを求めることも可能である。
【0042】
式(1)で求められるユニットの大きさは、観察される強化繊維の直径との関係により規定される。ユニットの大きさが式(1)の範囲より小さければ、分散パラメーターは体積含有率に収斂され分散性を正確に表現できない。一方、式(1)の範囲より大きければ、分散性の良否に関わらず値は一定となり、正確ではない。従って、ユニットの大きさは式(1)の範囲であることが必要である。
【0043】
さらに、分散パラメーターdの変動係数は式(5)より求められる。変動係数が4%を超えると繊維強化ポリマーアロイ基材の各箇所により強化繊維の疎密が大きくなる。したがって変動係数は4%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
変動係数=分散パラメーターdの平均値/分散パラメーターdの標準偏差×100・・・(5)
【0044】
本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材では、隣接する強化繊維の中心間距離が5μm~15μmの範囲にあることが好ましい。隣接する強化繊維の中心間距離が5μm以上であることにより、ポリマーアロイが強化繊維間に均一に存在することができるため、高い機械特性と耐熱性に優れる。6μm以上がより好ましい。15μm以下であることにより、強化繊維がポリマーアロイを効果的に補強するため、機械特性および耐熱性に優れる。10μm以下が好ましく、9μm以下がさらに好ましい。
【0045】
(評価方法)
試料である繊維強化ポリマーアロイ基材を、エポキシ樹脂「エポクイック」(登録商標:ビューラー社製)に埋め込み、室温で24時間硬化させた後、繊維強化ポリマーアロイ基材における強化繊維の配向方向にほぼ垂直な横断面を研磨し、次いで研磨面を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VHX-9500(コントローラー部)/VHZ-100R((株)キーエンス製)で、位置を変えながら撮影する。
【0046】
(測定部)
撮影された繊維強化ポリマーアロイ基材の横断面写真について、強化繊維の単糸を所定本数選択し、選択した単糸と隣接する繊維すべてについて、画像処理を用いてその繊維間距離を測定する。
【0047】
単糸の選択は横断面写真から測定が重複しないように行われる。具体的には繊維強化ポリマーアロイ基材の厚みを3分割する大きさでなる正方形の区画に分割し、各ブロックの中心付近から単糸を選択する。単糸は少なくとも50本以上を選択し、隣接する繊維との繊維間が200点以上評価され、その平均値を代表値とする。
【0048】
繊維間距離の測定は単糸を真円に近似して行い、単糸の中心間距離を測定して繊維間距離を評価する。
【0049】
選択した単糸と隣接する繊維とは、単糸の中心間を直線で結んだ際に、直線上に他の繊維が干渉しない二つの繊維をいう。
【0050】
本発明の繊維強化ポリマーアロイ基材において、前記ポリマーアロイの構造周期、または島相を形成する樹脂の粒子径が下記式(6)で表される強化繊維間距離より小さいことが好ましい。
z=y-2r(z:強化繊維間距離、y:強化繊維の中心間距離、r:繊維半径)・・・(6)
【0051】
ポリマーアロイの構造周期、または島相を形成する樹脂の粒子径が強化繊維間距離より小さいことにより、強化繊維間においてポリマーアロイが海島構造を形成できるため、繊維強化ポリマーアロイ基材は高い機械特性、耐熱性を小さいバラつきをもって安定的に発現できる。
【0052】
ここで、本発明に係る繊維強化熱可塑性ポリマーアロイ基材の製造方法について詳細に説明する。
【0053】
製造装置としては、例えば、マトリックス樹脂を含浸させる前の強化繊維束が巻き取られたボビンを1つまたは複数保持できるクリール部、このクリール部から強化繊維束を連続的に送り出すフィード部、連続的に送り出された強化繊維束に、溶融したマトリックス樹脂を付着させ、圧力を加えて含浸するとともに、所定の形状へ賦形する含浸ダイ、溶融したマトリックス樹脂を冷却固化して繊維強化熱可塑性ポリマーアロイ基材を形成するための冷却ロールから構成される。
【0054】
含浸工程では、連続的に送り出されてくる強化繊維束に、溶融したマトリックス樹脂を含浸させる。連続的に送り出される強化繊維束は通常、薄い層状の形態を有している。製造装置において、強化繊維の連続した単繊維を1,000~50,000本集めて束状とした強化繊維束を巻き付けたボビンを複数準備し、これら複数のボビンから強化繊維束を引き出し、横に並べて全体として薄い層状(テープ状)の形態とし、複数の糸道ガイドを介して、強化繊維束を、溶融したマトリックス樹脂が貯留された含浸ダイ内に進入させる。また、層状の強化繊維束は2層以上に積層した状態で含浸ダイに進入させることが好ましい。層状の強化繊維束を2層以上に積層することにより、寸法の調整が容易となる。層状の強化繊維束は平滑化処理した後、液溜り部に導くことが繊維分散性を向上でき好ましい。平滑化処理法は特に制限は無いが、対向ロールなどで物理的に押しつける方法や空気流を用いて強化繊維を動かす方法などを例示できる。物理的に押しつける方法は簡便かつ、強化繊維の配列を乱しにくいため好ましい。
【0055】
製造装置に備えられた含浸ダイは、強化繊維束の移送方向を向く直方体となっており、この含浸ダイの内部には、フィーダーから供給されたマトリックス樹脂が溶融した状態で貯留されている。強化繊維束の移送方向において上流側に位置する含浸ダイの入口には、前記強化繊維束が通過可能な入口孔が形成されており、この入口孔を介して、強化繊維束は含浸ダイの内部に入ってゆく。含浸ダイ内部は繊維の進行方向に向けて断続的に断面積が減少する構成を有しており、含浸ダイの出口に位置し、樹脂貯留部の強化繊維束の導入側の断面積よりも小さい断面積を有するスリット状のノズルが形成されている。強化繊維束は、マトリックス樹脂の随伴流を伴ってノズル方向に引き取られることから、ノズルに近づくにつれて樹脂の圧力が増大し、マトリックス樹脂が含浸される。任意の厚みに賦形するために複数枚の強化繊維束を単層の状態で含浸ダイに導入し、各層にマトリックス樹脂を付着・含浸させた状態で積層することも可能である。
【0056】
繊維強化ポリマーアロイ基材の含浸性を向上させるために、含浸ダイ内部にバーやロールを設けることで強化繊維束に張力を与えながら含浸させることも可能であるし、含浸ダイの通過後にバーやロール、プレス工程などの追含浸装置を設けることも可能である。分散性の観点から追含浸装置を設けることが好ましい。バーやロール、プレス工程などの含浸操作を行う際は、分散性の観点から強化繊維の幅を規制する機構を設けることが好ましい。幅を規制することにより強化繊維束の過度の拡がりを抑制することができ分散性を向上することが可能である。
【0057】
また、含浸工程において、含浸のために加える力が小さければ、強化繊維束の配列を乱すことなく生産が可能であり、強化繊維の分散性が向上できる。含浸のために加える力を小さくする方法としては、含浸ダイ内の溶融樹脂に超音波を印加する方法や強化繊維束を振動する方法、薄い強化繊維束層に樹脂を含浸させた後に各層を積層する方法が挙げられる。
【0058】
溶融したマトリックス樹脂が含浸された強化繊維束を含浸ダイもしくは追含浸装置から連続して引き抜くことで、強化繊維束に含浸したマトリックス樹脂が固化する前に、所定の形状に賦形し、その後、冷却固化工程で、溶融したマトリックス樹脂を冷却固化し、一定形状の繊維強化熱可塑性樹脂を形成する。賦形工程と冷却固化工程は同時に行ってもよい。含浸ダイおよび追含浸装置の出口にはダイノズルが設けられており、引取ロールによって引き出され、マトリックス樹脂が含浸した強化繊維束を、所定の断面形状に賦形させる。ダイノズルの強化繊維束の移送方向における寸法は強化繊維束がダイノズルを通過する時間が0.1秒以上の通過時間である長さが好ましい。0.4秒以上がより好ましく、1.0秒以上がさらに好ましい。通過時間が0.1秒以上のダイノズル寸法であることにより、強化繊維束の分散に要する時間が確保され、強化繊維束の分散性が良い繊維強化ポリマーアロイ基材を得ることができる。
【0059】
ここで、マトリックス樹脂を含浸した強化繊維束の引き取り張力は、単繊維12,000本当たり、好ましくは5~200N、より好ましくは5~150Nとする。引取張力が5N未満では、強化繊維束が動きやすくなることにより隣接する強化繊維束との重なりや隣接する繊維束との間でギャップを生じやすくなることにより、強化繊維束の分散性が悪化する。また、200Nを超えると、強化繊維束が収束することにより、マトリックス樹脂の含浸性が低下する。引き取り張力は予備張力の設定条件や、搬送速度により、適宜調整可能である。搬送速度を高めることで引き取り張力を高くすることができる。また、引き取り張力はロールの形状やロールの配置によって適宜調整可能である。
【0060】
本発明においては、本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材を、任意の構成で1枚以上積層後、必要に応じて熱および/または圧力を付与しながら成形することにより成形品が得られる。
【0061】
熱および/または圧力を付与する方法としては、例えば、任意の構成で積層した繊維強化ポリマーアロイ基材を型内もしくはプレス板上に設置した後、型もしくはプレス板を閉じて加圧するプレス成形法、任意の構成で積層した成形材料をオートクレーブ内に投入して加圧・加熱するオートクレーブ成形法、任意の構成で積層した成形材料をフィルムなどで包み込み、内部を減圧にして大気圧で加圧しながらオーブン中で加熱するバッギング成形法、任意の構成で積層した繊維強化ポリマーアロイ基材に張力をかけながらテープを巻き付け、オーブン内で加熱するラッピングテープ法、任意の構成で積層した繊維強化ポリマーアロイ基材を型内に設置し、同じく型内に設置した中子内に気体や液体などを注入して加圧する内圧成形法等が挙げられる。とりわけ、得られる成形品内のボイドが少なく、外観品位にも優れる成形品が得られることから、金型を用いてプレスする成形方法が好ましく用いられる。
【0062】
本発明の繊維強化ポリマーアロイ基材またはその成形品は、インサート成形、アウトサート成形などの一体化成形や、加熱による矯正処置、熱溶着、振動溶着、超音波溶着などの生産性に優れた接着工法や接着剤を用いた一体化を行うことができ、一体化により複合成形品を得ることができる。
【0063】
本発明の繊維強化ポリマーアロイ基材またはその成形品と一体化される成形用基材またはその成形品には特に制限はなく、例えば、樹脂材料またはその成形品、金属材料またはその成形品、無機材料またはその成形品などが挙げられる。中でも、樹脂材料またはその成形品もしくは金属材料またはその成形品が本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材による補強効果を効果的に発現することができる。樹脂材料またはその成形品は繊維強化ポリマーアロイ基材との接着強度の点で好ましく、繊維長が5~100mmの強化繊維マットにマトリックス樹脂を含浸してなる繊維強化樹脂が成形性と機械特性の点からより好ましい。金属材料またはその成形品としては、高張力鋼やアルミニウム合金、チタン合金およびマグネシウム合金等が使用可能であり、金属層や金属部材、金属部品に要求される特性に応じて選択すればよい。
【0064】
本発明の繊維強化ポリマーアロイ基材と一体化される成形材料またはその成形品のマトリックス樹脂は、繊維強化ポリマーアロイ基材またはその成形品と同種の樹脂であってもよいし、異種の樹脂であってもよい。接着強度をより高めるためには、同種の樹脂であることが好ましい。異種の樹脂である場合は、界面に樹脂層を設けるとより好適である。
【0065】
本発明の繊維強化ポリマーアロイ基材またはその成形品は、その優れた特性を活かし、航空機部品、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明における繊維強化ポリマーアロイ基材またはその成形品は、とりわけ、安定した機械特性が要求される航空機エンジン周辺部品、航空機用部品の外装部品、自動車ボディー部品としての車両骨格、自動車エンジン周辺部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、自動車内装部品、自動車外装部品、吸排気系部品、エンジン冷却水系部品や、自動車電装部品、電気・電子部品用途に特に好ましく用いられる。
【0066】
具体的には、本発明における繊維強化ポリマーアロイ基材またはその成形品は、ファンブレードなどの航空機エンジン周辺部品、ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、各種シート、フロントボディー、アンダーボディー、各種ピラー、各種メンバ、各種フレーム、各種ビーム、各種サポート、各種レール、各種ヒンジなどの自動車ボディー部品、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、排ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、ターボチャージャ、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オルタネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、電気・電子部品としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、抵抗器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ、ナイフスイッチ、多極ロッド、モーターケース、テレビハウジング、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、ICやLED対応ハウジング、コンデンサー座板、ヒューズホルダー、各種ギヤー、各種ケース、キャビネットなどの電気部品、コネクタ、SMT対応のコネクタ、カードコネクタ、ジャック、コイル、コイルボビン、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレー、リレーケース、リフレクタ、小型スイッチ、電源部品、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品などに好ましく用いられる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。各実施例および比較例における特性評価は下記の方法にしたがって行った。
【0068】
(耐熱性)
実施例および比較例により得られたポリマーアロイおよび熱可塑性樹脂をプレスし、プレスフィルムを作製した。(長さ)40mm×(幅)8mm×(厚み)0.1mmに切削加工し、セイコーインスツルメンツ社製動的粘弾性測定装置(DMS6100)を用いて、下記に示す測定条件で貯蔵弾性率E'を測定した。この貯蔵弾性率E'の測定値は、3サンプルの平均値である。尚、この貯蔵弾性率E'の値が大きいほど材料の高温剛性が優れており、且つ耐熱性が向上しているといえる。
・測定モード:引張モード
・温度条件:第1ステップ50℃×2分保持、第2ステップ50℃→270℃まで昇温
・昇温速度:2℃/min
・測定周波数:1Hz
・最小張力:200mN
・歪振幅:10μm
・張力ゲイン:1.5
・力振幅初期値:2000mN
【0069】
(引張強度)
各実施例および比較例により得られた繊維強化ポリマーアロイ基材および繊維強化熱可塑性樹脂基材を繊維方向が一方向となるように揃えて、厚さ1±0.2mmとなるように積層した積層体を、型温度がマトリックス樹脂の溶融温度+30℃に加熱された成形型に投入した。続いて、積層体を、圧力3MPaで1分間加熱加圧プレスした後、圧力3MPaで冷却プレスを行い、成形板を得た。成形板から、繊維軸方向を長辺として、250mm×15mmの試験片を切り出した。得られた試験片に対して、“インストロン”(登録商標)万能試験機4201型(インストロン社製)を用いて、JIS K7165-2008に準拠した引張試験を行い、引張強度を測定した。3回測定を行い、その平均値と標準偏差より変動係数を算出した。
引張強度の変動係数を機械特性の安定性に対する判断基準とし、以下の2段階で評価し、○を合格とした。
○ :変動係数が5%未満である。
× :変動係数が5%以上である。
【0070】
(原料)
実施例および比較例において、原料は以下に示すものを用いた。
熱可塑樹脂および熱可塑ポリマーアロイ
ポリフェニレンスルフィド(PPS) :東レ(株)製“トレリナ”(登録商標)
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK):ビクトレックス・ジャパン(株)製“VICTREX”(登録商標)
ポリエーテルケトンケトン(PEKK) :アルケマ(株)製“KEPSTAN”(登録商標)
ポリエーテルスルホン(PES) :住友化学(株)製“スミカエクセル”(登録商標)
ポリエーテルイミド (PEI) :サビック(株)製“ULTEM”(登録商標)
【0071】
(実施例1)
表1に示す配合組成で、原料を混合し、二軸押出機のフィード口に投入した。二軸押出機としては、スクリュー径が25mm、L/D=41の同方向回転二軸押出機((株)パーカーコーポレーション社製、HK-25D(41D))を使用した。所定の混練温度、スクリュー回転数で溶融混錬を行い吐出口よりストランド状の溶融樹脂を吐出した。吐出されたストランド状の溶融樹脂を、冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより引取ながら裁断することにより、ポリマーアロイのペレット状のサンプルを得た。得られたポリマーアロイを前記評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0072】
強化繊維として炭素繊維(表1ではCFと表記)を使用し、炭素繊維束が巻かれたボビンを6本準備し、それぞれボビンから連続的に糸道ガイドを通じて炭素繊維束を送り出した。連続的に送り出された炭素繊維束に、含浸ダイ内において、充填したフィーダーから定量供給されたマトリックス樹脂(東レ(株)製“トレリナ”(登録商標):ポリフェニレンスルフィド[表1ではPPSと表記]とサビック(株)製“ULTEM”(登録商標):ポリエーテルイミド[表1ではPEIと表記]とのポリマーアロイ)を含浸させた。含浸ダイ内で強化繊維束の分散が悪化しない程度の弱い力でマトリックス樹脂としてのポリマーアロイを含浸した炭素繊維を、引取ロールを用いて含浸ダイのノズルから1m/minの引き抜き速度で連続的に引き抜いた。炭素繊維束のノズルの通過時間は4.0秒であった。引き抜かれた炭素繊維束は、冷却ロールを通過してポリマーアロイが冷却固化され、連続した繊維強化ポリマーアロイ基材のテープとして巻取機に巻き取られた。得られた繊維強化ポリマーアロイ基材の厚さは0.1mm、幅は50mmであり、強化繊維方向は一方向に配列していた。得られた繊維強化ポリマーアロイ基材を前記評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
(実施例2~6)
マトリックス樹脂を表1に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にして繊維強化ポリマーアロイ基材を得た。得られた繊維強化ポリマーアロイ基材を前記評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0075】
(実施例7~9)
強化繊維として炭素繊維(表1ではCFと表記)を使用し、炭素繊維束が巻かれたボビンを6本準備し、それぞれボビンから連続的に糸道ガイドを通じて炭素繊維束を送り出した。連続的に送り出された炭素繊維束を、固定したロールにS字状に通過させることで平滑化処理を施した。平滑にされた炭素繊維束と充填したフィーダーから定量供給されたマトリックス樹脂(東レ(株)製“トレリナ”(登録商標):ポリフェニレンスルフィド[表1ではPPSと表記]とサビック(株)製“ULTEM”(登録商標):ポリエーテルイミド[表1ではPEIと表記]とのポリマーアロイ)を含浸させた。含浸ダイ内で樹脂圧によりポリマーアロイを含浸した炭素繊維を、追含浸装置で強化繊維束の分散が悪化しない程度の弱い力でマトリックス樹脂としてのポリマーアロイを含浸させた。含浸ダイおよび追含浸装置では分散性が悪化しないように強化繊維束の幅を規制した。引取ロールを用いて追含浸装置のスリットから1m/minの引き抜き速度で連続的に引き抜いた。引き抜かれた炭素繊維束は、冷却ロールを通過してポリマーアロイが冷却固化され、連続した繊維強化ポリマーアロイ基材のテープとして巻取機に巻き取られた。得られた繊維強化ポリマーアロイ基材の幅は50mmであり、強化繊維方向は一方向に配列していた。得られた繊維強化ポリマーアロイ基材を前記評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0076】
(実施例10~12)
マトリックス樹脂を表1に示す条件に変更した以外は実施例7と同様にして繊維強化ポリマーアロイ基材を得た。得られた繊維強化ポリマーアロイ基材を前記評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0077】
(比較例1)
マトリックス樹脂(東レ(株)製“トレリナ”(登録商標):ポリフェニレンスルフィド[表2ではPPSと表記])を使用した以外は実施例7と同様にして繊維強化熱可塑性樹脂基材を得た。得られた繊維強化熱可塑性樹脂基材を前記評価に供した。評価結果を表2に示す。
【0078】
(比較例2~4)
比較例2では、実施例1の条件に比べ、繊維体積含有率を30%とし、比較例3、4では、本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材の前述したような各種好ましい製造条件の範囲を外れたことにより、とくに分散パラメーターDが90%以上を達成できなかったので、得られた繊維強化ポリマーアロイ基材の評価、とくに引張強度の評価が合格レベルに達しなかった。評価結果を表2に示す。
【0079】
【0080】
実施例1~12と比較例1~4との比較により、強化繊維とポリマーアロイが均一に分散した本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材は高い耐熱性と均一な所望の機械特性を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材は、オートクレーブ成形、プレス成形、フィルム成形などの任意の成形方法により、所望の形状に成形することが可能である。本発明に係る繊維強化ポリマーアロイ基材を用いた成形により得られる成形品は、例えば、航空機エンジン周辺部品、航空機内装部品、航空機外装部品、車両骨格、自動車エンジン周辺部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、自動車内装部品、自動車外装部品、吸排気系部品、エンジン冷却水系部品、自動車電装部品などの自動車用途、LEDリフレクタやSMTコネクタなどの電気・電子部品用途などに有効である。