(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】車両用内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 19/12 20060101AFI20240530BHJP
F02M 26/00 20160101ALI20240530BHJP
F02D 17/00 20060101ALI20240530BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20240530BHJP
F02P 15/08 20060101ALI20240530BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
F02B19/12 D
F02B19/12 A
F02M26/00 301
F02D17/00 F
F02P13/00 302B
F02P15/08 301C
F02D43/00 301A
F02D43/00 301N
(21)【出願番号】P 2021048819
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 智海
(72)【発明者】
【氏名】福井 利賢
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178719(JP,A)
【文献】特開2019-183809(JP,A)
【文献】特開昭52-125908(JP,A)
【文献】特開昭54-22008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 19/12
F02M 26/00
F02D 17/00
F02P 13/00
F02P 15/08
F02D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に並ぶ3つ以上の気筒を備え、
各気筒が、主燃焼室と、連通孔を介して前記主燃焼室と連通する副室とを有し、
前記3つ以上の気筒が、前記長手方向の両外方にそれぞれ配置される2つの外側気筒と、前記長手方向にて前記2つの外側気筒間に位置する1つ以上の内側気筒とから成る、車両用内燃機関であって、
前記2つの外側気筒における副室及び前記1つ以上の内側気筒における副室のそれぞれに配置される副室点火器と、
前記2つの外側気筒における主燃焼室のそれぞれに配置される主燃焼室点火器と
を備えている車両用内燃機関。
【請求項2】
前記車両用内燃機関の駆動力を調節可能とするように構成される制御装置と、
前記2つの外側気筒からの排出ガスを前記1つ以上の内側気筒に還流可能とするように構成される排出ガス再循環装置と
を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関が暖機状態でない場合に、各外側気筒にて燃焼を実施すべくその外側気筒の主燃焼室点火器の点火を実施するように制御し、かつこの外側気筒の燃焼によって排出される排出ガスを前記1つ以上の内側気筒に還流すべく前記排出ガス再循環装置を制御するようになっている、請求項1に記載の車両用内燃機関。
【請求項3】
前記車両用内燃機関の駆動力を調節可能とするように構成される制御装置を備え、
前記制御装置は、前記車両用内燃機関がその負荷率を第1負荷率閾値未満とするように駆動する低負荷状態である場合に、前記1つ以上の内側気筒のそれぞれを休止状態とすべくその内側気筒における副室点火器の点火を禁止するように制御し、かつ前記2つの外側気筒のそれぞれを稼働状態とすべくその外側気筒における主燃焼室点火器の点火に続いて同副室点火器の点火を実施するように制御し、これによって、前記車両用内燃機関を駆動するようになっている、請求項1又は2に記載の車両用内燃機関。
【請求項4】
前記制御装置は、前記車両用内燃機関がその負荷率を前記第1負荷率閾値以上とし、かつ同負荷率を前記第1負荷率閾値よりも大きな第2負荷率閾値未満とするように駆動する中負荷状態である場合に、前記2つの外側気筒のそれぞれを休止状態とすべくその外側気筒における主燃焼室点火器及び副室点火器の点火を禁止するように制御し、かつ前記1つ以上の内側気筒のそれぞれを稼働状態とすべくその内側気筒における副室点火器の点火を実施するように制御し、これによって、前記車両用内燃機関を駆動するようになっている、請求項3に記載の車両用内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に並ぶ3つ以上の気筒を有し、各気筒が、主燃焼室と、連通孔を介して主燃焼室と連通する副室とを有する、車両用内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジン等の車両用内燃機関においては、長手方向に並ぶ3つ以上の気筒のそれぞれにおける燃焼室が、主燃焼室と、連通孔を介して主燃焼室と連通する副室とに区画されることがある。このような気筒においては、副室にて点火プラグの点火によって混合気が燃焼し、副室の混合気の燃焼によって副室から連通穴を通して主燃焼室に向かうトーチ状の火炎(ジェット火炎)が発生し、このジェット火炎によって主燃焼室内の混合気が燃焼することができる。このような内燃機関は、副室式内燃機関と呼ばれることもある。さらに、車両用内燃機関においては、車両の燃費性能を向上させるために、車両の運転状況、例えば、内燃機関の回転数、負荷率等に応じて複数の気筒のうちいずれかを休止させることがある。
【0003】
上記車両用内燃機関の一例としては、副室に燃料を噴射する副燃料噴射弁の高温化と、それに伴うデポジットの生成とを抑制するために、副室式エンジンの負荷運転領域に応じて休止気筒の数を変更するように構成され、かつ負荷運転領域が低負荷運転領域にあると共に副室式エンジンの出力トルクが小さいほど、休止気筒の数を減少させるように構成される副室式エンジンが挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記車両用内燃機関の一例において、内燃機関の冷機始動時では気筒内で燃料の霧化が促進されない。内燃機関の負荷運転領域が低負荷運転領域にある状態では気筒内のガス流動が停滞するおそれがある。これらの場合、燃焼後に排出されずに副室内に残ったガス、すなわち、副室内の残留ガスによって、副室から連通孔を通って主燃焼室に向かうジェット火炎が消失するように失火が生じるおそれがある。
【0006】
このような失火は、内燃機関の駆動効率を低下させるおそれがある。そのため、失火を防ぐための対策を講じる必要があるが、この対策を講じるに当たって、内燃機関の大型化を防ぐことも肝要となる。
【0007】
このような実情を鑑みると、車両用内燃機関においては、内燃機関の大型化を抑制しながら気筒内での失火を効率的に抑制することが望まれ、ひいては、内燃機関の駆動効率の低下を効率的に抑制することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、一態様に係る車両用内燃機関は、長手方向に並ぶ3つ以上の気筒を備え、各気筒が、主燃焼室と、連通孔を介して前記主燃焼室と連通する副室とを有し、前記3つ以上の気筒が、前記長手方向の両外方にそれぞれ配置される2つの外側気筒と、前記長手方向にて前記2つの外側気筒間に位置する1つ以上の内側気筒とから成る、車両用内燃機関であって、前記2つの外側気筒における副室及び前記1つ以上の内側気筒における副室のそれぞれに配置される副室点火器と、前記2つの外側気筒における主燃焼室のそれぞれに配置される主燃焼室点火器とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る車両用内燃機関においては、内燃機関の大型化を抑制しながら気筒内での失火を効率的に抑制でき、ひいては、内燃機関の駆動効率の低下を効率的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る車両用内燃機関を模式的に示す構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る車両用内燃機関の外側気筒の主燃焼室、副室、及びこれらの周辺部分をその中心軸線に沿って切断した状態で概略的に示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る車両用内燃機関の内側気筒の主燃焼室、副室、及びこれらの周辺部分をその中心軸線に沿って切断した状態で概略的に示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、内燃機関の負荷率と内燃機関の回転速度とに基づいて内燃機関の負荷状態を決定するために用いられるマップである。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る車両用内燃機関の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態に係る車両用内燃機関について説明する。本実施形態に係る車両用内燃機関(以下、必要に応じて、単に「内燃機関」という)は、自動車に搭載されるエンジンとなっている。しかしながら、車両用内燃機関は、自動車以外の車両に搭載されるエンジン等の内燃機関とすることができる。
【0012】
「車両用内燃機関の概略」
図1~
図5を参照して、本実施形態に係る車両用内燃機関1の概略について説明する。すなわち、本実施形態に係る車両用内燃機関1は、概略的には次のように構成される。
図1に示すように、車両用内燃機関1は、その長手方向(両側矢印Lにより示す)に沿って配置される4つの気筒10,20を有する。
【0013】
図1~
図5を参照すると、各気筒10,20は、主燃焼室11,21を有する。各気筒10,20はまた、連通孔13,23を介してその主燃焼室11,21と連通する副室12,22を有する。
図1に示すように、4つの気筒10,20は、長手方向の両外方にそれぞれ配置される2つの外側気筒10と、長手方向にてこれら2つの外側気筒10間に位置する2つの内側気筒20とから成る。
【0014】
しかしながら、内燃機関は、その長手方向に並ぶ3つ以上の気筒を有するように構成することもできる。この場合、3つ以上の気筒は、2つの外側気筒と、1つ以上の内側気筒とから成ることができる。
【0015】
図2~
図5を参照すると、内燃機関1は、各外側気筒10の副室12に配置される副室点火器14を有する。内燃機関1は、各外側気筒10の主燃焼室11に配置される主燃焼室点火器15を有する。内燃機関1は、各内側気筒20の副室22に配置される副室点火器24を有する。
【0016】
さらに、本実施形態に係る車両用内燃機関1は、概略的には次のように構成することができる。
図1に示すように、内燃機関1は、その駆動力を調節可能とするように構成される制御装置2を有する。内燃機関1は、2つの外側気筒10からの排出ガスを2つの内側気筒20に還流可能とするように構成される排出ガス再循環装置(以下、必要に応じて、「EGR装置」という)3を有する。
【0017】
制御装置2は、内燃機関1が暖機状態でない場合に、各外側気筒10にて燃焼を実施すべくその外側気筒10における主燃焼室点火器15の点火を実施するように制御し、かつこの外側気筒10の燃焼によって排出される排出ガスを各内側気筒20に還流すべくEGR装置3を制御するようになっている。なお、制御装置2は、内燃機関1が暖機状態でない場合に、各内側気筒20におけるインジェクタ29の燃料供給(燃料噴射)を禁止することができ、かつ各内側気筒20における副室点火器24の点火を禁止することができる。
【0018】
制御装置2は、内燃機関1が低負荷状態である場合に、各内側気筒20を休止状態とすべくその内側気筒20における副室点火器24の点火を禁止するように制御し、かつ各外側気筒10を稼働状態とすべくその外側気筒10における主燃焼室点火器15の点火に続いて同副室点火器14の点火を実施するように制御し、これによって、内燃機関1を駆動するようになっている。なお、低負荷状態は、内燃機関1がその負荷率(%)を第1負荷率閾値E1未満とするように駆動する状態である。
【0019】
制御装置2は、内燃機関1が中負荷状態である場合に、各外側気筒10を休止状態とすべくその外側気筒10における主燃焼室点火器15及び副室点火器14の点火を禁止するように制御し、かつ各内側気筒20を稼働状態にすべくその内側気筒20おける副室点火器24の点火を実施するように制御し、これによって、内燃機関1を駆動するようになっている。なお、中負荷状態は、内燃機関1がその負荷率を第1負荷率閾値E1以上とし、かつ同負荷率を第2負荷率閾値E2未満とするように駆動する状態である。そして、第2負荷率閾値E2は第1負荷率閾値E1よりも大きい。
【0020】
「車両用内燃機関の詳細」
図1~
図6を参照すると、本実施形態に係る車両用内燃機関1は、詳細には次のように構成することができる。
図1に示すように、内燃機関1は、その冷却水の水温(℃)を検出可能に構成される水温検出部4を有する。内燃機関1は、アクセル開度(%)を検出可能に構成されるアクセル開度検出部5を有する。
【0021】
内燃機関1は、その回転速度(s-1)を検出可能に構成される回転速度検出部6を有する。例えば、回転速度検出部6は、クランク角センサとすることができる。しかしながら、回転速度検出部は、クランク角センサに限定されない。
【0022】
図1に示すように、4つの気筒10,20は、長手方向に延びる長手軸線1a沿って実質的に直列に配置されている。すなわち、内燃機関1は直列型となっている。しかしながら、内燃機関は、3つ以上の気筒を長手方向に沿って並べるように構成されていれば、V型、水平対向型等とすることもできる。
【0023】
特に
図2~
図5を参照すると、各気筒10,20は、この気筒10,20内を中心軸線10a,20aに沿って往復移動可能に構成されるピストン16,26を有する。各気筒10,20の主燃焼室11,21は、この気筒10,20の気筒10,20のボア壁10b,20b、シリンダヘッド10c,20c、及びピストン16,26に囲まれている。各気筒10,20の副室12,22は、この気筒10,20のシリンダヘッド10c,20cにてこの気筒10,20の中心軸線10a,20a上に配置されている。
【0024】
各気筒10,20は、この気筒10,20のシリンダヘッド10c,20cに設けられる2つの吸気口10d,20dと、これら2つの吸気口10d,20dをそれぞれ開閉可能とするように構成される2つの吸気バルブ17,27とを有する。各気筒10,20はまた、この気筒10,20のシリンダヘッド10c,20cに設けられる2つの吸気口10d,20dと、これら2つの吸気口10d,20dをそれぞれ開閉可能とするように構成される2つの排気バルブ18,28とを有する。
【0025】
しかしながら、各気筒は、1つ以上の吸気口と、このような1つ以上の吸気口を開閉可能とするように構成される1つ以上の吸気バルブを有することができる。各気筒はまた、1つ以上の排気口と、このような1つ以上の排気口を開閉可能とするように構成される1つ以上の排気バルブとを有することができる。
【0026】
さらに、各気筒10,20の各吸気口10d,20dは、内燃機関1の長手軸線1a及びこの気筒10,20の中心軸線10a,20aに対してこの気筒10,20の径方向の一方側(以下、必要に応じて、「吸気側」という)に配置される。各気筒10,20の各排気口10e,20eは、内燃機関1の長手軸線1a及びこの気筒10,20の中心軸線10a,20aに対してこの気筒10,20の径方向の他方側(以下、必要に応じて、「排気側」という)に配置される。
【0027】
図2及び
図3を参照すると、各外側気筒10の主燃焼室点火器15は、この外側気筒10の主燃焼室11にて、各吸気口10d,20dと各排気口10e,20eとの間に配置される。各外側気筒10の主燃焼室点火器15は、内燃機関1の長手軸線1a上に配置される。各外側気筒10の主燃焼室点火器15は、この気筒10,20の中心軸線10a,20aに対して、内燃機関1の長手方向の外方側に配置される。
【0028】
図4及び
図5に示すように、各内側気筒20の主燃焼室21には、点火器、すなわち、主燃焼室点火器は設けられない。
図1に示すように、各気筒10,20は、その主燃焼室11,21及びその副室12,22に燃料を供給可能とするように構成されるインジェクタ19,29を有する。各気筒10,20は、それぞれ、その2つの吸気口10d,20dからその主燃焼室11,21及びその副室12,22に燃料を供給可能とするように構成される2つのインジェクタ19,29を有する。
【0029】
図1に示すように、内燃機関1は、各気筒10,20の各吸気口10d,20dに接続されるインテークマニホールド7を有する。内燃機関1は、各気筒10,20の各排気口10e,20eに接続されるエキゾーストマニホールド8を有する。しかしながら、内燃機関は、エキゾーストマニホールドの代わりに、集合排気管を有することもできる。
【0030】
EGR装置3は、各外側気筒10の各排気口10eに接続されるエキゾーストマニホールド8の外側管8aと、各内側気筒20の各吸気口20dに接続されるインテークマニホールド7の内側管7aとを接続する循環管3aを有する。EGR装置3は、各外側気筒10の各排気口10eから各内側気筒20の各吸気口20dに向かうように循環管3aを通る排出ガスの流れ(片側矢印Gにより示す)を開放及び遮断可能とすべく開閉可能に構成される排出ガス再循環バルブ(以下、必要に応じて、「EGRバルブ」という)3bを有する。
【0031】
各気筒10,20の休止状態は、全吸気バルブ17,27がそれぞれ全吸気口10d,20dを閉じており、全排気バルブ18,28がそれぞれ全排気口10e,20eを閉じており、インジェクタ19,29が燃料の供給を停止し、かつ主燃焼室11,21及び副室12,22にて燃焼が行われない状態となる。
【0032】
「制御装置の詳細」
図1を参照すると、制御装置2は、詳細には次のように構成することができる。制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、入力インターフェース、出力インターフェース等の電子部品と、かかる電子部品を配置した電気回路とを含むように構成される。ROMには、種々の制御定数、種々のマップ等と一緒に、制御装置2の機能を発揮するためのプログラムが記憶されている。そのため、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行するときに、制御装置2の機能を発揮することができる。しかしながら、制御装置はこれに限定されない。
【0033】
制御装置2は、EGR装置3のEGRバルブ3bの開閉を制御可能に構成される。制御装置2は、水温検出部4により検出される水温の検出値Tが所定の水温閾値T1以上である場合に、内燃機関1が暖機状態であると判定し、かつ水温の検出値Tが所定の水温閾値T1未満である場合に、内燃機関1が暖機状態でないと判定するように構成される。
【0034】
さらに、制御装置2は、内燃機関1が暖機状態でない場合に、各外側気筒10の副室点火器14の点火を禁止することができ、かつ各内側気筒20の副室点火器24の点火を禁止することができる。制御装置2は、内燃機関1が暖機状態でない場合に、EGR装置3のEGRバルブ3bを開き、かつ内燃機関1が暖機状態である場合に、EGRバルブ3bを閉じるように構成される。
【0035】
制御装置2は、少なくともアクセル開度検出部5により検出されるアクセル開度の検出値Aと、回転速度検出部6により検出される回転速度の検出値Rとに基づいて、内燃機関1の負荷率を算出可能に構成される。特に
図6を参照すると、制御装置2は、少なくとも負荷率の算出値Eが第1負荷率閾値E1未満である場合に、内燃機関1が低負荷状態にあると判定することができる。なお、
図6において、横軸Rは、回転速度の検出値R(s
-1)を示し、かつ縦軸Eは、負荷率の算出値E(%)を示す。
【0036】
さらに、
図6において、低負荷状態は、斜線のハッチング領域P1により示された低負荷領域内の状態である。特に、制御装置2は、負荷率の算出値Eが第1負荷率閾値E1未満であり、かつ回転速度の検出値Rが第1回転速度閾値R1未満である場合に、内燃機関1が低負荷状態にあると判定することができる。
【0037】
制御装置2は、少なくとも負荷率の算出値Eが第1負荷率閾値E1以上であると共に第2負荷率閾値E2未満である場合に、内燃機関1が中負荷状態にあると判定することができる。
図6において、中負荷状態は、斜線のハッチング領域P2により示された中負荷領域内の状態である。特に、制御装置2は、負荷率の算出値Eが第1負荷率閾値E1以上であると共に第2負荷率閾値E2未満であり、かつ回転速度の検出値Rが第1回転速度閾値R1以上であると共に第2回転速度閾値R2未満である場合に、内燃機関1が中負荷状態にあると判定することができる。なお、第2回転速度閾値R2は、第1回転速度閾値R1よりも大きくなっている。
【0038】
制御装置2は、少なくとも負荷率の算出値Eが第2負荷率閾値E2以上である場合に、内燃機関1が高負荷状態にあると判定することができる。
図6において、高負荷状態は、斜線のハッチング領域P3により示された高負荷領域内の状態である。特に、制御装置2は、負荷率の算出値Eが第2負荷率閾値E2以上であり、かつ回転速度の検出値Rが第2回転速度閾値R2以上である場合に、内燃機関1が高負荷状態にあると判定することができる。
【0039】
制御装置2は、内燃機関1が高負荷状態にある場合、全気筒10,20を稼働状態とすべく全気筒10,20の副室点火器14,24の点火を実施するように構成される。このとき、制御装置2は、各外側気筒10の主燃焼室点火器15の点火を禁止することができる。しかしながら、制御装置は、内燃機関が高負荷状態にある場合、各外側気筒の主燃焼室点火器の点火を実施することもできる。
【0040】
図1~
図5を参照すると、制御装置2は、各外側気筒10の休止状態では、全吸気バルブ17がそれぞれ全吸気口10dを閉じ、全排気バルブ18がそれぞれ全排気口10eを閉じ、インジェクタ19が燃料の供給を停止し、副室点火器14の点火を禁止し、かつ主燃焼室点火器15の点火を禁止するように内燃機関1を制御することができる。制御装置2は、各内側気筒20の休止状態では、全吸気バルブ27がそれぞれ全吸気口20dを閉じ、全排気バルブ28がそれぞれ全排気口20eを閉じ、インジェクタ29が燃料の供給を停止し、かつ副室点火器24の点火を禁止するように内燃機関1を制御することができる。
【0041】
「車両用内燃機関の制御方法」
図7を参照して、本実施形態に係る車両用内燃機関1の制御方法の一例について説明する。最初に、車両のイグニッションスイッチ(図示せず)のオフ状態からオン状態への切替等によって、内燃機関1を起動する(ステップS1)。
【0042】
内燃機関1が暖機状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。内燃機関1が暖機状態にない場合(NO)、各外側気筒10にて燃焼を実施すべくその外側気筒10における主燃焼室点火器15の点火を実施し、各外側気筒10の副室点火器14の点火を禁止し、かつ各内側気筒20の副室点火器24の点火を禁止し、かつ各外側気筒10の燃焼によって排出される排出ガスを各内側気筒20に還流すべくEGRバルブ3bを開く(ステップS3)。再びステップS2に戻る。なお、内燃機関1が暖機状態でない場合に、各内側気筒20におけるインジェクタ29の燃料供給(燃料噴射)を禁止することができ、かつ各内側気筒20における副室点火器24の点火を禁止することができる。
【0043】
上記ステップS2にて、内燃機関1が暖機状態にある場合(YES)、EGRバルブ3bを閉じる(ステップS4)。内燃機関1が低負荷状態であるか否かを判定する(ステップS5)。内燃機関1が低負荷状態である場合(YES)、各内側気筒20を休止状態とすべくその内側気筒20における副室点火器24の点火を禁止し、かつ各外側気筒10を稼働状態とすべくその外側気筒10における主燃焼室点火器15の点火に続いて同副室点火器14の点火を実施する(ステップS6)。
【0044】
車両のイグニッションスイッチ(図示せず)のオン状態からオフ状態への切替等によって、内燃機関1が停止したか否かを判定する(ステップS7)。内燃機関1が停止していない場合(NO)、ステップS5に戻る。内燃機関1が停止した場合(YES)、内燃機関1の制御を終了する。
【0045】
上記ステップS5にて、内燃機関1が低負荷状態でない場合(NO)、内燃機関1が中負荷状態であるか否かを判定する(ステップS8)。内燃機関1が中負荷状態である場合(YES)、各外側気筒10を休止状態とすべくその外側気筒10における主燃焼室点火器15及び副室点火器14の点火を禁止し、かつ各内側気筒20を稼働状態にすべくその内側気筒20おける副室点火器24の点火を実施する(ステップS9)。
【0046】
車両のイグニッションスイッチ(図示せず)のオン状態からオフ状態への切替等によって、内燃機関1が停止したか否かを判定する(ステップS7)。内燃機関1が停止していない場合(NO)、ステップS5に戻る。内燃機関1が停止した場合(YES)、内燃機関1の制御を終了する。
【0047】
上記ステップS8にて、内燃機関1が中負荷状態でない場合(NO)、内燃機関1は高負荷状態にある(ステップS10)。全気筒10,20を稼働状態とすべく全気筒10,20の副室点火器14,24の点火を実施する(ステップS11)。
【0048】
車両のイグニッションスイッチ(図示せず)のオン状態からオフ状態への切替等によって、内燃機関1が停止したか否かを判定する(ステップS7)。内燃機関1が停止していない場合(NO)、ステップS5に戻る。内燃機関1が停止した場合(YES)、内燃機関1の制御を終了する。
【0049】
以上、本実施形態に係る車両用内燃機関1は、長手方向に並ぶ3つ以上の気筒10,20を備え、各気筒10,20が、主燃焼室11,21と、連通孔13,23を介して前記主燃焼室11,21と連通する副室12,22とを有し、前記3つ以上の気筒10,20が、前記長手方向の両外方にそれぞれ配置される2つの外側気筒10と、前記長手方向にて前記2つの外側気筒10間に位置する1つ以上の内側気筒20とから成る、車両用内燃機関1であって、前記2つの外側気筒10における副室12及び前記1つ以上の内側気筒20における副室22のそれぞれに配置される副室点火器14,24と、前記2つの外側気筒10における主燃焼室11のそれぞれに配置される主燃焼室点火器15とを備えている。
【0050】
このような内燃機関1においては、外側気筒10にて副室点火器14の点火によって副室12内の混合気が燃焼できずに失火が生じた場合であっても、主燃焼室点火器15の点火によって主燃焼室11内の混合気を燃焼させることができる。また、外側気筒10の周囲のデッドスペースは内側気筒20の周囲のデッドスペースよりも大きいので、内燃機関1の大型化を抑制するように外側気筒10及びその周囲のデッドスペースに、主燃焼室点火器15に関連する部品を設置することができる。よって、内燃機関1の大型化を抑制しながら気筒内10,20での失火を効率的に抑制でき、ひいては、内燃機関1の駆動効率の低下を効率的に抑制できる。
【0051】
本実施形態に係る車両用内燃機関1は、前記車両用内燃機関1の駆動力を調節可能とするように構成される制御装置2と、前記2つの外側気筒10からの排出ガスを前記1つ以上の内側気筒20に還流可能とするように構成される排出ガス再循環装置3とを備え、前記制御装置2は、前記内燃機関1が暖機状態でない場合に、各外側気筒10にて燃焼を実施すべくその外側気筒10の主燃焼室点火器15の点火を実施するように制御し、かつこの外側気筒10の燃焼によって排出される排出ガスを前記1つ以上の内側気筒20に還流すべく前記排出ガス再循環装置3を制御するようになっている。
【0052】
このような内燃機関1においては、特に、冷機始動時にて、外側気筒10にて副室点火器14の点火によって副室12内の混合気が燃焼できずに失火が生じた場合であっても、主燃焼室点火器15の点火によって主燃焼室11内の混合気を燃焼させることができる。これに加えて、このような外側気筒10の燃焼後のガスを内側気筒20に還流させ、これによって、内側気筒20を暖機することができる。よって、内燃機関1の大型化を抑制しながら気筒10,20内での失火を効率的に抑制でき、ひいては、内燃機関1の駆動効率の低下を効率的に抑制できる。
【0053】
本実施形態に係る車両用内燃機関1においては、前記制御装置2は、前記車両用内燃機関1がその負荷率を第1負荷率閾値E1未満とするように駆動する低負荷状態である場合に、前記1つ以上の内側気筒20のそれぞれを休止状態とすべくその内側気筒20における副室点火器24の点火を禁止するように制御し、かつ前記2つの外側気筒10のそれぞれを稼働状態とすべくその外側気筒10における主燃焼室点火器15の点火に続いて同副室点火器14の点火を実施するように制御し、これによって、前記車両用内燃機関1を駆動するようになっている。
【0054】
一般的に、内燃機関の気筒においては、圧縮工程にてピストンが上昇するときに燃焼室が圧縮され、これによって、副室内の残留ガスが排出される。特に、内燃機関が低負荷状態にある場合には、点火器の点火タイミングがピストンの上死点手前となるので、副室内の残留ガスの影響によって混合気が燃焼し難くなる。
【0055】
これに対して、本実施形態に係る車両用内燃機関1においては、内燃機関1が低負荷状態にある場合、外側気筒10において、主燃焼室点火器15の点火に続いて副室点火器14の点火を実施する。そのため、副室点火器14の点火の前に、主燃焼室11の混合気の燃焼によって副室12内の残留ガスが掃気されるので、副室12の混合気を確実に燃焼させることができる。すなわち、外側気筒10の副室12の失火を効率的に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る車両用内燃機関1においては、内燃機関1が低負荷状態にある場合、弁駆動の休止も含めるように内側気筒20を休止状態とすることができるので、内側気筒20の内部温度の低下を抑制でき、かつ内側気筒20のボア壁20bの温度低下を抑制できる。その結果、内燃機関1が低負荷状態から中負荷以上の状態に移行した直後であっても、内側気筒20を効率的に稼働させることができる。よって、内燃機関1の駆動効率の低下を効率的に抑制できる。
【0057】
本実施形態に係る車両用内燃機関1においては、前記制御装置2は、前記車両用内燃機関1がその負荷率を前記第1負荷率閾値E1以上とし、かつ同負荷率を前記第1負荷率閾値E1よりも大きな第2負荷率閾値E2未満とするように駆動する中負荷状態である場合に、前記2つの外側気筒10のそれぞれを休止状態とすべくその外側気筒10における主燃焼室点火器15及び副室点火器14の点火を禁止するように制御し、かつ前記1つ以上の内側気筒20のそれぞれを稼働状態とすべくその内側気筒20における副室点火器24の点火を実施するように制御し、これによって、前記車両用内燃機関1を駆動するようになっている。
【0058】
このような内燃機関1においては、内燃機関1が中負荷状態にある場合、外側気筒10を休止状態とする一方で、内側気筒20の稼働を継続させるので、主燃焼室点火器を設けていない内側気筒20の内部温度及び内側気筒20のボア壁20bの温度を、失火を防ぐように高温に維持することができる。特に、内燃機関1が低負荷状態から中負荷状態に移行したときでは、内側気筒20の内部温度及び内側気筒20のボア壁20bの温度は、失火を防ぐように高温になり易いので、内燃機関1の負荷状態が変化する場合であっても、内側気筒20での失火を効率的に抑制することができる。
【0059】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…車両用内燃機関、内燃機関
2…制御装置
3…排出ガス再循環装置、EGR装置
10…気筒、外側気筒、11…主燃焼室、12…副室、13…連通孔、14…副室点火器、15…主燃焼室点火器
20…気筒、内側気筒、21…主燃焼室、22…副室、23…連通孔、24…副室点火器
E1…第1負荷率閾値、E2…第2負荷率閾値