(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】下衣
(51)【国際特許分類】
A41D 13/06 20060101AFI20240530BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20240530BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
A41D13/06
A41D13/00 107
A41D13/06 105
A41D1/06 501Z
(21)【出願番号】P 2020166310
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228866
【氏名又は名称】日本シグマックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友昭
(72)【発明者】
【氏名】原島 宏治
(72)【発明者】
【氏名】内藤 和哉
(72)【発明者】
【氏名】松本 文平
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-300618(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180551(JP,U)
【文献】特開2003-153928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/06
A41D 13/00
A41D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃の股下部分で、上部生地と下部生地に横方向に分離されており、
前記上部生地の下端部はフリー状態であり、
前記上部生地の前側部には、前記下端部から縦方向に開閉可能な開閉具があることを特徴とする下衣。
【請求項2】
前記上部生地の下端部は、下部生地の上端部を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の下衣。
【請求項3】
前記下部生地は、前記上部生地の裏側に配置されている裏生地によって、前身頃の股下部の切り替え線と接続している請求項1又は2に記載の下衣。
【請求項4】
前記上部生地の開閉具の側部には、サイドポケット部を備える請求項1~3のいずれか1項に記載の下衣。
【請求項5】
前記上部生地の下端部の幅は、下部生地の上端部の幅より広い請求項1~4のいずれか1項に記載の下衣。
【請求項6】
前記開閉具は、スライドファスナー、面ファスナー、ホック及びボタンから選ばれる少なくとも一つである請求項1~5のいずれか1項に記載の下衣。
【請求項7】
前記サイドポケット部の少なくとも後ろ側部にはマチを入れてある請求項
4に記載の下衣。
【請求項8】
前記下衣は、太腿及び/又は膝をサポートする装具が組み込まれており、
前記装具は、前記開閉具を開けることにより得られる開口部から調整可能である、請求項1~7のいずれか1項に記載の下衣。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の下衣は、上衣と一体化していることを特徴とするウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太腿サポーター及び/又は膝サポーターなどを使用した際、膝を曲げて作業する際に、ツッパリなどの支障がなく及び装具の調整または着脱を容易にする下衣、及び前記下衣を上衣と一体化したウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
動作アシスト用衣類、いわゆるアシストスーツは、重い荷物を持ち上げ、運搬し、下ろす作業、農業、土木作業、あるいは介護などの作業において、労働者の負担を軽くし、故障やけがを防止するために従来から使用されている。一部電動スーツも知られているが、高価で使いにくいこともあり、電動を使用せず、弾性生地を使用してアシストスーツを作成するのが使い勝手が良い。
特許文献1には、作業ズボンの表身頃に一体となって接続されている保護パッドであるため、保護パッドの着脱の必要がなく、作業中のずれ、外れが起こることもない作業ズボンが提案されている。特許文献2には、腰部取付帯と膝関節装着サポートは、留め具により自由に着脱ができ、膝関節引上げ用弾性ベルトを自由にすれば日常の起居に支障なくすることができるサポーターが提案されている。特許文献3には、腕背用動作補助具と腰膝用動作補助具や背腰膝用動作補助具とが、ズボンと一体化し若しくは分離し又は分離可能である動作補助作業着が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-186713号公報
【文献】特開2011-36367号公報
【文献】特開2017-192719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来技術は、膝を曲げて作業する際に、ツッパリなどの支障があり、また装具は下衣の中に装着しているため、装具の調整または着脱しにくい問題はさらなる改善が求められていた。とくにアシストスーツは、パンツ(ズボン)内に下半身パーツが組み込まれているので、膝を曲げて作業する際に、ツッパリなどの支障が生じやすいという特有の問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、膝を曲げて作業する際に、ツッパリなどの支障がなく、装具の調整または着脱を容易にする下衣、及び前記下衣を上衣と一体化した動作アシスト用ウェアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の下衣は、装具の上部生地と下部生地に横方向に分離されており、前記上部生地の下端部はフリー状態であり、前記上部生地の前側部には、前記下端部から縦方向に開閉可能な開閉具があることを特徴とする。
【0007】
本発明のウェアは、前記の下衣を上衣と一体化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の下衣は、前身頃の股下部分で、上部生地と下部生地に横方向に分離されており、前記上部生地の下端部はフリー状態であり、前記上部生地の前側部には、前記下端部から縦方向に開閉可能な開閉具があり、膝を曲げて作業する際に、ツッパリなどの支障がなく、装具の調整または着脱を容易にする下衣を提供できる。また、前記下衣を上衣と一体化したウェアを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明の一実施例の下衣の模式的正面図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施例の動作アシスト用ウェアの模式的裏面図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施例の下衣の模式的側面図である。
【
図5】
図5は同、下衣のサイドポケット部の模式的拡大図である。
【
図6】
図6は同、下衣のサイドポケット部に沿った開閉部の模式的説明図である。
【
図7】
図7は同、下衣の腰ベルト部を開いたときの模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の下衣は、前身頃の股下部分、好ましくは前身頃の股下部分から前身頃の膝下部分の間で、または前身頃の股下部分から前身頃の膝上部分の間で、上部生地と下部生地に横方向(足の幅方向)に分離されており、上部生地の下端部はフリー状態である。好ましくは、上部生地の下端部は、下部生地の上端部を覆っている。具体的には下部生地の上端部を上部生地に覆っている長さは5cm以下、好ましくは1.5~3cmとする。これにより、膝を曲げて作業する際に、膝にツッパリなどの支障が出ないようにしている。上部生地の前側部には、下端部から縦方向(足の長さ方向)に開閉可能な開閉具がある。上部生地の内側には、人体の太腿を締め付ける太腿サポーター及び/又は膝サポーターなどの装具があるが、開閉具を開け、締め付け具合を調整することにより、装具の着脱操作が容易となる。
【0011】
下部生地は、上部生地の裏側に配置されている裏生地によって、股下部の切り替え線と接続していることが好ましい。これにより、下部生地は裏生地によって吊り下げられた状態になり、膝を曲げても上部生地と下部生地の間が開いて膝が露出することはなく、さらに裏生地はパンツを着用する際の足のガイドとなり、容易に着用できる利点がある。
【0012】
上部生地の開閉具の側部には、サイドポケット部を備えるのが好ましい。作業服にはサイドポケット部を設けたものが多く、サイドポケット部があれば便利であり、使い勝手も良くなる。
【0013】
上部生地の下端部の幅は、下部生地の上端部の幅より広いのが好ましい。具体的には上部生地の下端部の幅は、下部生地の上端部の幅より1cm以上、好ましくは2~3cm広くする。上部生地内には太腿サポーター及び/又は膝サポーターなどの装具があり、この分、足の直径が太くなるが、これを覆うためには上部生地の下端部の幅を広くすることが好ましいこと、及び膝を深く曲げた時の太腿のツッパリ感を軽減できる。
【0014】
上部生地の前側部には、前記下端部から縦方向に開閉可能な開閉具がある、好ましくは、股下部の切り替え線から下端部まで縦方向(足の長さ方向)に開閉可能な開閉具である。開閉具は、スライドファスナー、面ファスナー、ホック及びボタンから選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。これにより、開閉具を開けた状態の開口部から、装具例えば太腿サポーターの着脱操作又は調整することが容易となる。さらに好ましいのはスライドファスナーにより構成され、開閉程度が自由にできる利点がある。前記裏生地により、開閉具を開けた状態の開口部から素肌は見えない状態とすることができる。
【0015】
サイドポケット部の少なくとも後ろ側部にはマチを入れるのが好ましい。マチは2つ折りさせて形成でき、マチ幅は1cm以上、好ましくは2~4cmとする。これにより、上部生地の下端部の幅は、下部生地の上端部の幅より広くするのと同じ効果が得られるとともに、膝にツッパリなどの支障がでなくなり、ポケット内も大きくできる。
【0016】
裏生地は、縦方向に伸縮するワンウエイ伸縮性生地又はツーウエイ伸縮性生地が好ましい。これにより、膝を深く曲げても膝と太腿のツッパリ感を無くすことができる。
裏生地の素材は面ファスナーにつきにくい生地、例えばパイル状になっていない生地や目の細かな生地が好ましい。また、肌に接触する面に使われるため、例えばメッシュ状生地や吸水速乾性や通気性を有する生地が好ましい。なお、材質としては特に制限されるものではなく、天然繊維、再生繊維及び化学繊維等が使用される。製造業、建設業、物流業、農作業、介護・飲食サービス業等の作業、あるいはスポーツ時に着用するため、通気、撥水、防炎、抗菌、抗ウイルス、消臭、伸縮性、防汚、帯電防止の機能を持つ布帛が好ましい。さらに、太腿サポーター及び/又は膝サポーターなどの装具は裏生地を巻いて配置するため、動作によってずれにくく、擦れに強い生地が好ましい。
【0017】
装具は、大腿サポーター及び/又は支持材膝サポーターなどの大腿部や膝部を固定又は支持する部材であり、通常は巻き付けて使用される。なお、下半身パーツ、例えば動作アシスト用下半身パーツとして、腰ベルト等と一体化されたものとして用いられることもある。
前記装具は、直接素肌の上に装着するのもよいし、裏生地を巻いて配置されており、前記装具にある面ファスナーにより裏生地の上から着脱可能であるのも好ましい。このようにすると、人体の太腿及び/又は膝は裏生地を介して前記装具で巻かれるので、摩擦などで肌を痛めることが防止できる。なお、装具は、機能を不要とする場合、大腿部や膝部への巻き付けを緩めておき締め付け感を無くすことができ、機能使用時に開閉具を開けた開口部を通して確実に巻き付け固定する(調整する)ことができる。
【0018】
下衣の下部生地は、膝回りに膝部を大きくする複数のダーツを配置するのが好ましい。また、複数のダーツは、膝を中心に左右上下に4か所配置するのが好ましい。このようにすると、膝を深く曲げても膝のツッパリ感を無くすことができる。
【0019】
本発明の下衣は、装具として、動作アシスト用下半身パーツを組み込んだ下衣であって、前記動作アシスト用下半身パーツは、腰ベルト部と太腿サポーターがクロスベルトで一体化されており、下衣に組み込まれているのが好ましい。下半身パーツを組み込んだ下衣と、背当てパーツは、背面の腰の位置で連結部により着脱可能に連結されるのが好ましい。これにより、電動具無しで重い荷物を持ち上げ、運搬、下ろす作業、あるいは介護などの作業において、着用者の負担を軽くしている。本発明において下衣とは、ズボンと同義である。なお、腰ベルト部は、腰椎を保護するため剛性を高めた腰椎固定部を有している。
【0020】
伸縮性生地は、特に限定されるものではないが、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ウレタン繊維などの合成繊維からなり、荷重4~5Nにおいて、伸長率は120%~200%であり、目付は100~500g/m2の生地を使用できる。一例として、材質:ナイロン/ポリウレタン繊維織物からなり、幅5cmで伸長率は4.9Nの荷重時:タテ175%、ヨコ150%、17.6Nの荷重時:タテ218%/ヨコ192%、20%伸ばした時の荷重:タテ1N/ヨコ1.4Nであり、生地目付:348g/m2を使用した。
【0021】
下衣は長裾でもよいし、膝当たりのショートパンツでもよい。上下一体化されたウェア、例えばつなぎ服でもよい。
【0022】
下衣本体の生地は、綿繊維のような天然繊維、レーヨン繊維のような再生繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ウレタン繊維のような化学繊維よりなる織布、編布、パイル生地などを単独又は任意に選択組合せて形成することができる。制電糸のような機能糸を混合しても良く、難燃加工素材等を用いても良い。横方向や縦方向にストレッチ性を有する素材がさらに好ましい。また、製造業、建設業、物流業、農作業、介護・飲食サービス業等の作業、あるいはスポーツ時に着用するため、通気、撥水、防炎、抗菌、抗ウイルス、消臭、2WAYストレッチ、タテ伸びストレッチ、ヨコ伸びストレッチ、通気性、防汚の機能を持つ布帛が好ましい。質量(目付)100~350g/m2の作業着用生地を使用できる。
【実施例】
【0023】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0024】
以下図面を用いて説明する。以下において同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施例の下衣2の模式的正面図、
図2は動作アシスト用ウェア1の模式的裏面図、
図3は同下衣2の模式的側面図である。
【0025】
図2に示すように、動作アシスト用ウェア1は、下半身パーツを組み込んだ下衣2と、背当てパーツ3とを連結具4a,4bで着脱可能に連結している。連結具は1個でもよいし、2個以上の複数個でもよいが、2個が強度面及びバランス面で安定である。背当てパーツ3は連結具4a,4bと装着することによって、前傾姿勢時の上半身の支持と持ち上げ動作のアシストにもなるメリットがある。背当てパーツ3の素材は通気性を有するメッシュと腰椎固定部15と同様の剛性がある素材が好ましい。
【0026】
図1に示すように、下衣2の前身頃5は、尻回り部5aと上部生地5bと下部生地5cで構成されており、上部生地5bと下部生地5cは膝上部分で分離されている。上部生地5bの下端部はフリー状態で下部生地5cの上端部を覆っている。上部生地5bの前側部には、股下部の切り替え線6から下端部まで縦方向に開閉可能な開閉具7a,7bがある。下部生地5cは、上部生地の裏側に配置されている裏生地8a,8bによって、股下部の切り替え線6と接続している。裏生地8a,8bは、切り替え線6部分で、尻回り部5a及び上部生地5bと一体化されている。23a,23bはポケット部である。
【0027】
なお、本実施例に用いる下衣2の前身頃や後身頃の生地は、経糸として綿繊維とポリエステル繊維の混紡糸(15番手)、緯糸としてポリエステル繊維の合糸(150デニール×2)を用いた織物からなり、混率はポリエステル繊維65%、綿繊維35%である。目付は200g/m2であり、横方向にストレッチ性を有する。
【0028】
図4は
図1のI-I線の模式的断面図である。下部生地5cは、上部生地5bの裏側に配置されている裏生地8bによって、股下部の切り替え線6と接続している。太腿サポーター9aは裏生地8aの上から太腿部を巻くことができる。裏生地の素材は面ファスナーにつきにくい生地、例えばパイル状になっていない生地や目の細かな生地が好ましい。また、肌に接触する面に使われるため、例えばメッシュ状生地や吸水速乾性や通気性を有する生地が好ましい。なお、材質としては特に制限されるものではなく、天然繊維、再生繊維及び化学繊維等が使用される。製造業、建設業、物流業、農作業、あるいは介護・飲食サービス業等の作業、あるいはスポーツ時に着用するため、通気、撥水、防炎、抗菌、抗ウイルス、消臭、伸縮性、防汚、帯電防止の機能を持つ布帛が好ましい。さらに、太腿サポーターは裏生地を巻いて配置するため、動作によってずれにくく、擦れに強い生地が好ましい。
【0029】
図2に示すように、腰ベルト部14には、下からクロスベルト14a,第1ベルト14b,第2ベルト14cが接続されている。太腿サポーター9a,9bは、吊りベルト13及びクロスベルト14aの下部に接続している。
【0030】
図5は同、下衣のサイドポケット部10の模式的拡大図である。上部生地5bの開閉具7bの側部には、サイドポケット部10が設けられている。サイドポケット部10の後ろ側はマチ11が形成されており、膨らむことを許容している。また、上部生地5bの下端部の幅は、下部生地5cの上端部の幅より広くしている。これにより、太腿サポーターを内部に存在させて膝を深く曲げた時の太腿のツッパリ感を軽減している。
【0031】
図6は同、パンツのサイドポケット部10に沿った開閉部7bを開けた模式的説明図である。股下部の切り替え線6から下端部まで縦方向に開閉可能な開閉具7bを開けて、内部の太腿サポーターの着脱操作をする。
【0032】
図1に示すように、パンツの下部生地5cは、膝回りに膝部を大きくする複数のダーツ12a-12dを形成している。このダーツは、生地をU字系に摘まみ、上端を縫製することにより形成できる。ダーツを入れることにより、膝を深く曲げても膝のツッパリ感を無くすことができる。
【0033】
図2に示すように、背当てパーツ3は背当て16と、肩ベルト17と、下部ベルト18と、肩ベルト17と下部ベルト18を繋ぐ連結ベルト19で構成され、重い荷物の重量を身体全体に分散し、腰椎を傷めないようにしている。
【0034】
図7は同、下衣2の腰ベルト部14を開いたときの模式的正面図である。腰ベルト部14の裏側にはすべり止め層24を設けてもよい。すべり止め層24はゴム又はエラストマーをコーティングする、または弾性糸を露出させてもよい。ゴムすべり止め層24があると、ベルト部14を締めたとき緩みにくくなる。また、腰ベルト部14の先端部付近の裏側には面ファスナー25を配置する。面ファスナー25で腰ベルト部14を開閉すると使い勝手が良い。
【0035】
図2に示すように、腰ベルト部14(腰椎固定部15を含む)の下方には第1の伸縮性生地20aを配置している。これにより、腰ベルト部14を胴部にきつく縛った状態で腰を深く曲げても、第1の伸縮性生地20aが伸びることにより腰のツッパリ感は低減できる。第1の伸縮性生地20aは、臀部の上方において、臀部の凸部に相当する部分(
図2の矢印L1,L2)の幅を広くするのが好ましい。この部分は、右臀部及び左臀部の凸部に相当する部分であり、幅を広くすることにより、臀部の凸部に相当する部分の伸びを大きくできる。背当てパーツ3は連結具4a,4bと装着することによって、前傾姿勢時の上半身の支持と持ち上げ動作のアシストにもなるメリットがある。背当てパーツ3の素材は通気性を有するメッシュと腰椎固定部15と同様の剛性がある素材が好ましい。
【0036】
図3に示すように、第1の伸縮性生地20aはパンツ側面では下方に傾斜し、この傾斜部の上方には、第1の伸縮性生地20aより伸縮性の低い第2の伸縮性生地20bを配置している。これにより、下衣2のウエスト部の伸縮性を高くし、サイズ的に広く対応できるとともに、ウエスト部を細目に仕上げることにより、しわの発生を防止できる。第2の伸縮性生地20bの肌面側にはすべり止め層を設けてもよい。すべり止め層はゴム又はエラストマーをコーティングする、または弾性糸を露出させてもよい。すべり止め層があると、ずり落ちを防止できる。これに対して第1の伸縮性生地20aの肌面側にはすべり止め層は不要である。腰ベルト部14の下方にあり、ずり落ち機能を付与する必要性がない。
【0037】
第1の伸縮性生地20aと前身頃との境界部には、下衣上端部の側部から前身頃と後身頃の縫製線まで伸びる補強布22が存在するのが好ましい。これにより、端部からのほつれや傷みを防止できる。
【0038】
下衣2の上端部は、背面より前面の方の位置が低いのが好ましい。これにより、骨盤と腰椎の保護の機能が高くなる。また、姿勢変化の際に第2の伸縮性生地の肌面側のすべり止め層の働きによって、皮膚の伸びに追随するのでずれることなく、立ち上がる動作のアシスト及び、腰を深く曲げやすい利点がある。
【0039】
以上のように作成した動作アシスト用ウェア1を着用試験したところ、膝を深く曲げた時の太腿のツッパリ感を軽減できる。さらにアシスト機能を使用しないときは大腿サポーターを緩めておき、締め付け感なく使用でき、アシスト機能を必要とする場合、開口部から大腿サポーターを締め付け固定することにより、例えば重い荷物を持ち上げる作業を繰り返しても腰への負担は少なく、膝及び腰のツッパリなどの支障のないアシストスーツであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の下衣は、繰り返しまたは長時間、重い荷物を持ち上げ、運搬し、下ろす作業、製造、建設、物流、農業、土木作業、あるいは介護・飲食サービス等の作業服に有用である。また、スポーツ時における、膝周りまたは大腿部のケガ、再発の予防するための装具の上に着用する下衣等にも有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 動作アシスト用ウェア
2 下衣
3 背当てパーツ
4a,4b 連結具
5 前身頃
5a 前身頃尻回り部
5b 前身頃上部生地
5c 前身頃下部生地
6 股下部切り替え線
7a,7b 開閉具
8a,8b 裏生地
9a,9b 太腿サポーター
10,10a,10b サイドポケット部
11 マチ
12a-12d ダーツ
13 吊りベルト
14 腰ベルト部
14a クロスベルト
14b 第1ベルト
14c 第2ベルト
15,15a-15c 腰椎固定部
16 背当て
17 肩ベルト
18 下部ベルト
19 連結ベルト
20 伸縮性生地
20a 第1の伸縮性生地
20b 第2の伸縮性生地
22 補強布
23a,23b ポケット部
24 すべり止め層
25 面ファスナー