(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 3/358 20060101AFI20240530BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20240530BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240530BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20240530BHJP
B65D 81/28 20060101ALN20240530BHJP
【FI】
A23L3/358
A01N25/04 102
A01P3/00
A01N59/16 A
B65D81/28 C
(21)【出願番号】P 2022013240
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】394023975
【氏名又は名称】小島 功
(73)【特許権者】
【識別番号】505328672
【氏名又は名称】株式会社 武蔵富装
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 功
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035478(JP,A)
【文献】特表2016-500654(JP,A)
【文献】登録実用新案第3052661(JP,U)
【文献】特開2001-038165(JP,A)
【文献】特表2010-523344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0294919(US,A1)
【文献】国際公開第2016/047568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P,A23L,A23B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~100nmの銀粒子のナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持された1μm以下のナノ金属シリカ粒子を含有する抗菌組成物の層を樹脂の表面に有する、
食品の腐敗抑制用抗菌樹脂。
【請求項2】
1~100nmの銀粒子のナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持された1μm以下のナノ金属シリカ粒子を含有する抗菌組成物を担持した炭酸カルシウム粉末又はカルシウムパウダーがポリオレフィン、ポリエステル又はシリコーン樹脂に配合された、食品の腐敗抑制用抗菌樹脂。
【請求項3】
一次粒子径5nm~100nmの前記
銀粒子のナノ金属シリカ粒子が、前記
銀粒子のナノ金属シリカ粒子の全質量に基づいて、80質量%以上である、又は、
該銀粒子の全質量に基づいて、粒子径2.5nmより大きく10nm以下の銀粒子が、80質量%以上である、請求項1
又は請求項2に記載の
食品の腐敗抑制用抗菌樹脂。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の
食品の腐敗抑制用抗菌樹脂からなる、ポリエチレン袋。
【請求項5】
請求項1に記載の
食品の腐敗抑制用抗菌樹脂からなる、クッション材。
【請求項6】
請求項1に記載の
食品の腐敗抑制用抗菌樹脂からなる、フルーツキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌組成物に関する。より詳細には、ナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持された1μm以下のナノ金属シリカ粒子を含有する抗菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果実、肉、魚介類等の食材、及び食材を加工した食品(以下、食材等ともいう)は、時間がたつにつれて鮮度が低下して、味や香りが劣化することや、腐敗が生じることが知られている。食材等の鮮度の低下は、空気中の酸素による酸化や、カビ等の好気性菌の発生、食材表面に付着した雑菌や水分による腐敗が原因であることが知られており、食材等の輸送や保管時に、食材等を腐らせることなく、鮮度を保つことが望まれている。
そこで、食材等に防腐剤や酸化防止剤等の添加物を加えたり、防カビ剤等を塗布したりすることで、食品の腐敗を抑制する方法が知られている。少量の添加物や防カビ剤は人体に影響はないと考えられているが、長期にわたり摂取することで人体に悪影響を及ぼす恐れが心配されている。
そこで、食材等に直接添加したり、塗布したりすることをせずに、食材等の鮮度を保ち、腐食を抑制する方法が望まれている。
例えば、抗菌性の有る銀ゼオライト等をエマルションのバインダに分散させた液状物を、食品シートに塗布し、乾燥させて成る生鮮食品用シート又は鮮度保持シートが提案されている(特許文献1及び2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013―154945号公報
【文献】特開平9-172952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の生鮮食品用シートの製造及び特許文献2に記載の鮮度保持シートには、アクリル酸エステル重合体と水とを含むアクリル系エマルションを使用して、食品が接する面に、銀ゼオライトを含むアクリル酸エステル樹脂層を形成する。
しかし、銀ゼオライトを含むアクリル酸エステル樹脂層の表面は抗菌性が認められるが、該樹脂層と接していない部分は鮮度の劣化や、腐食が進むという問題があった。
そのため、食材の運搬や保管時には、シートを準備し、個々の食品をシートで密封する必要があった。
そこで、より安全で簡便に、食材等の鮮度を保持し、腐敗を抑制することが可能な抗菌性製品及びそれに使用される抗菌剤組成物の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、安全で、食材等の鮮度低下や腐敗を抑制するための抗菌剤組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、斯かる抗菌剤組成物を内包させた抗菌樹脂を提供することを課題とする。
また、本発明は、斯かる抗菌剤組成物から形成される層を有する抗菌クッション材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記事情を鑑み、鋭意検討した結果、ナノ金属粒子を非晶質のシリカ粒子の表面に担持させたナノ金属微粒子を用いることで、食材等の鮮度低下や腐敗を抑制でき
る抗菌組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、1μm以下の銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子からなる群より選択される1種以上のナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持された1μm以下のナノ金属シリカ粒子を含有する抗菌組成物に関する。
上記抗菌組成物は、上記抗菌組成物に含有される前記ナノ金属粒子を構成する金属粒子が抗菌組成物の30質量%以下であり、前記非晶質のシリカ粒子が抗菌組成物の70質量%以上であることが好ましい。
上記抗菌組成物は、一次粒子径5nm~100nmの前記ナノ金属シリカ粒子を、前記ナノ金属シリカ粒子の全質量に基づいて、80質量%以上で含有することが好ましい。
上記抗菌組成物は、前記ナノ金属粒子が銀粒子であり、該銀粒子の全質量に基づいて、粒子径2.5nmより大きく10nm以下の銀粒子が、80質量%以上であることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、ポリオレフィン、ポリエステル及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる樹脂に上記抗菌組成物を内包させた抗菌樹脂に関する。
【0009】
また、本発明は、上記抗菌組成物が、水又は有機溶媒に含まれる抗菌組成物含有液に関する。
【0010】
また、本発明は、木材、紙、樹脂、ガラス、繊維、布及び不織布の群より選択されるいずれかのクッション材の表面に上記抗菌組成物含有液からなる層を有する抗菌クッション材に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非晶質のシリカ粒子の表面に、1μm以下の銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子からなる群より選択される1種以上のナノ金属微粒子を担持させることにより、1μm以下のナノ金属シリカ粒子を含有する抗菌組成物、及び該抗菌組成物を含む抗菌組成物含有液、並びに食材等の鮮度低下や腐敗を抑制できる該抗菌組成物を内包させた抗菌樹脂を提供することができる。また、本発明によれば、該抗菌組成物を含む抗菌組成物含有液、及び該抗菌組成物含有液を用いて得られる、食材等の鮮度低下や腐敗を抑制できるクッション材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1で得られたナノメタルシルバーシリカ水溶液の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に関して詳細を説明する。
【0014】
[抗菌組成物]
本発明の抗菌組成物は、1μm以下の銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子等から選択される1種以上のナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持された1μm以下のナノ金属シリカ粒子を含有する。
【0015】
本発明に使用されるナノ金属粒子は、抗菌性を有する1μm以下の金属粒子であれば特に限定されず、好ましくは銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子等から選択され、より好ましくは銀粒子である。
ナノ金属粒子は、1種だけでもよく、2種以上を混合して使用することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のナノサイズの金属微粒子を含んでいてもよ
い。
ナノ金属粒子は、硫化金属、硝酸金属等の塩の形態で用いてもいし、金属コロイド又はその塩の形態で使用することもでき、金属コロイドの形態が好ましい。
【0016】
1μm以下のナノ金属粒子の粒子径としては、例えば0.3nm~1μm、例えば0.3nm~500nm、例えば1~100nmであり、例えば、2.5nmより大きく10nm以下である。
好ましくは、ナノ金属粒子の全質量に基いて、粒子径2.5nmより大きく10nm以下の粒子が80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。特にナノ金属粒子が銀粒子であることが好ましい。
粒子径が上記範囲であることにより、表面積が大きく、ナノ金属シリカ粒子の抗菌作用や触媒作用が発揮されると考えられる。
【0017】
本発明の使用されるシリカ粒子は、非晶質シリカ粒子であればよく、その粒径としては、例えば、5nm~1000nm、例えば5nm~100nm、例えば5nm~50nm、例えば5nm~20nmである。
【0018】
結晶性シリカは、粒子径が大きく、微細化してもナノサイズの均一な微粒子を製造することが難しいが、非晶質シリカを使用することで、ナノサイズの均一な微粒子を得ることができる。そのため、本発明の抗菌組成物は、従来の結晶質シリカを用いた抗菌剤よりも粒径及びナノ金属粒子の分散性が均一化し、ナノ金属粒子の表面積の巨大化が図れ、空気及び菌に接触する面積が最大化するため、抗菌性能を高くすることができる。
【0019】
本発明のナノ金属シリカ粒子の粒径は1μm以下であればよく、例えば5nm~1000nmである。
【0020】
なお、本明細書において、粒子径は数平均粒子径を意味し、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製、JEM-2100P)を用いて、100個の粒子を観察し、各粒子の最大径の数平均値として算出する。
【0021】
本発明の抗菌組成物を構成する、ナノ金属粒子は、抗菌組成物の全質量に対して0.1~50質量%であり、好ましくは0.1~30質量%であり、より好ましくは0.5~30質量%以下である。
また、本発明の抗菌組成物を構成する、非晶質シリカ粒子は、抗菌組成物の全質量に対して70質量%以上であり、好ましくは50質量%であり、より好ましくは30質量%以上である。
【0022】
ナノ金属粒子が、抗菌組成物に対して30質量%よりも多く、非晶質のシリカ粒子の含有量が70質量%未満であると、ナノ金属粒子がシリカ粒子表面に均一に分散できず、菌や酸素にふれるナノ金属粒子の表面積が低下し、十分な抗菌性や、金属の触媒作用が発揮されないおそれがある。
【0023】
本発明の抗菌組成物は、シリカ粒子の表面に担持された抗菌性を有するナノ金属粒子は、酸素ラジカルにて抗菌効果を発揮することから臭いが少なく、人体に対する刺激性も低いため、抗菌剤として有用性が高いと考えられる。
抗菌性を有する金属粒子は、金属粒子に接触したものの抗菌性を発揮することが知られている。本発明の抗菌組成物は、更に、密閉された空間内に存在すると、その空間内の食材等の鮮度低下や腐敗を防止することができる。
【0024】
これは、ナノメートルサイズの金属粒子は、空気中又は液体中の酸素を、原子状の酸素
(酸素ラジカル)に変化させることができ、この酸素ラジカルが菌に作用して抗菌作用を示すと考えられている。
本発明の抗菌組成物では、ナノ金属粒子をナノサイズに粒径を調整可能な非晶質シリカ粒子に担持されているため、ナノ金属シリカ粒子の表面積が、結晶性シリカを使用したものよりも非常に大きくなる。これにより、酸素ラジカルの発生が増加し、食材等の酸化や、抗菌組成物に直接接触していない好気性のカビ、ウイルス、菌等の繁殖を抑制できるからと考えられる。
また、本発明の抗菌性組成物に含まれる非晶質シリカは、果物の熟成が進む原因となるエチレンガスを吸収できるため、本発明の抗菌組成物は、果物の熟成を抑制し、果物の腐食を抑制することができると考えられる。
【0025】
ナノ金属シリカ粒子の製造方法としては、溶媒に、上記ナノ金属粒子と非晶質シリカ粒子を加えて撹拌しても良いし、ナノ金属粒子が均一に分散した溶媒と、非晶質シリカ粒子が均一に分散した溶媒とを混合して得ることができる。
使用する溶媒としては、原料であるナノ金属微粒子及び非晶質シリカ粒子、並びに製造物であるナノ金属シリカ粒子が均一に分散できればよく特に限定されないが、水及び有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、イソアミルアルコール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール、ハイドロフルオロカーボン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテルなどのエチレングリコールのモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエチレングリコールのジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類などが挙げられる。
溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶媒として使用しても良い。
好ましくは、安全性の観点から、水、エタノール及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0026】
[抗菌樹脂]
本発明の抗菌樹脂は、上記抗菌組成物を、ポリオレフィン、ポリエステル及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる樹脂に内包させてなる。
【0027】
樹脂としては特に限定されないが、製品の製造の観点から熱可塑性を有するものがよい。
ポリオレフィンとしては、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体及びプロピレン/1-ヘキセン共重合体など挙げられる。
ポリエステルとしては特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。
シリコーン樹脂としては、ジメチルポリシロキサンや変性シリコーン、例えば、アミノ
変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アミドポリエーテル変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等を挙げることができる。
【0028】
本発明の抗菌樹脂は、上記樹脂に、本発明の抗菌剤組成物を混合して製造することができる。
混合する方法としては、樹脂組成物に、本発明の抗菌組成物を粉末の形態でもよいし、上記溶媒に均一に分散した形態で添加してもよい。また、炭酸カルシウム等の樹脂組成物に添加する充填剤等に本発明の抗菌組成物を担持させたもの使用しても良い。例えば、充填剤と、粉末又は液体に分散させた抗菌組成物を混合して、充填剤表面に本発明の抗菌組成物を担持した充填剤を得ることができる。
【0029】
本発明の金属ナノ微粒子は非晶質シリカ粒子表面にナノ金属粒子が担持されたものであって熱に強いため、本発明の抗菌樹脂は従来のプラスチック樹脂と同様に成形して種々の成形品を製造することができる。
成形方法としては、通常の方法を使用することができ、例えば、射出成形法、発泡射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、インフレーション成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、真空成形法、さらに、インモールド成形法、ガスプレス成形法、2色乃至多色成形法、サンドイッチ成形法等公知の任意の成形方法を採用することができる。また、シート状、フィルム状に成形する際においては、その成形時あるいはその成形後に、一軸方向又は二軸方向、乃至は多軸方向(インフレーション法、チューブラー法による延伸等)に延伸することが可能である。他の樹脂組成物と多層化しても良い。本発明の製造方法ではまた、混合工程で発泡剤を含有させ、従来公知の発泡法、例えば、射出発泡,押出発泡,発泡ブロー等の液相発泡、あるいは、ビーズ発泡,バッチ発泡,プレス発泡,常圧二次発泡等の固相発泡を用いて発泡成形することも可能である。また、繊維状に成形する際においては、公知の溶融紡糸法により製造することができ、例えば紡糸機及び巻取機を用いて紡糸繊維を製造することも可能である。
【0030】
[抗菌組成物含有液]
本発明の抗菌組成物含有液は、上記抗菌組成物が、水又は有機溶媒に溶解又は均一に分散したものである。
有機溶媒としては、抗菌組成物の製造に使用した有機溶媒が挙げられる。
使用する溶媒としては、安全性の観点から、水、エタノール及びこれらの混合溶媒が好ましい。
【0031】
本発明の抗菌組成物含有液は、本発明の効果を損なわない範囲で、バインダを含有しても良い。
バインダとしては、熱硬化性樹脂のモノマー、オリゴマーもしくはポリマー、電磁波硬化型樹脂のモノマー、オリゴマーもしくはポリマー、光硬化性のモノマー、オリゴマーもしくはポリマーなどが挙げられる。例えば、上記抗菌樹脂に用いるポリマー又はそれを構成するモノマーもしくはオリゴマーが挙げられる。
【0032】
本発明の抗菌組成物は、木材、紙、樹脂、ガラス、繊維、布、不織布、プラスチック等に塗布又は噴霧し、乾燥させることで、これら表面に抗菌組成物を付着させることができる、例えば、市販の密閉容器や密閉式袋の内部に、本発明の抗菌組成物を塗布又は噴霧して乾燥させることで、簡便に容器や袋内に入れた食品の鮮度低下や腐食を抑制することができる。また、例えば、壁紙、家具や、車内に、本発明の抗菌組成物を塗布又は噴霧して乾燥させることで、家具等に抗菌性を持たせることができ、カビの発生による匂い等を抑制することもできる。
【0033】
[抗菌クッション材]
本発明の抗菌クッション材は、木材、紙、樹脂、ガラス、繊維、布、不織布等のいずれかのクッション材の表面に上記抗菌組成物含有液から形成される層を設けてなる。
【0034】
クッション材の表面に、上記抗菌組成物含有液を塗布又は噴霧し乾燥させることで、クッション材表面に、本発明の抗菌剤組成物を付着させることができる。
本発明のナノ金属シリカ粒子は1μm以下の為、クッション材の表面の微細な凹凸に付着できるため、バインダを使用しなくても、クッション材表面から剥離することなく層を形成することができる。バインダを使用した場合、クッション材表面に抗菌樹脂の層を形成できる。
【0035】
クッション材としては、食品の運搬や保存に使用されている公知のクッション材を使用でき、例えば、発泡ポリスチレンシート、フルーツキャップ、エアーパッキン、エアークッション、発泡スチロール、バラ緩衝材、ウレタンフォーム、発泡ウレタンフォーム、紙製緩衝材、木毛、おが屑などが挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限
り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
<ナノ銀シリカ粒子含有水溶液(ナノメタルシルバーシリカ水溶液)の調製>
平均1.0nmのナノメタルシルバーを0.002質量%で含むコロイド水溶液と、平均粒子径1.0nmの非晶質シリカ粒子を0.02質量%で含むコロイド水溶液と、水とを、室温で1時間撹拌し、濃縮して、非晶質シリカ表面にナノメタルシルバーが担持したナノメタルシルバーシリカを2000ppmで含むナノメタルシルバーシリカ水溶液を調製した。
【0038】
(実施例2)
水を加えて200ppmに調整した実施例1のナノメタルシルバーシリカ水溶液を、市販のポリエチレン袋(230mm×340mm)の内側に塗布し、乾燥させて、ナノメタルシルバーシリカ0.2mgでコーティングされたポリエチレン袋を作製した。
得られたナノメタルシルバーシリカコーティングされたポリエチレン袋に、桃を入れて開口部を結び、9月初旬の室内に放置して、外観観察を行った。
【0039】
(実施例3)
ホタテ貝殻由来の炭酸カルシウム粉末1000gを攪拌しながら、実施例1で調整したナノメタルシルバーシリカ水溶液1000mlを噴霧して、乾燥させて、2000ppmのナノメタルシルバーシリカの担持した炭酸カルシウム粉末を得た。
この炭酸カルシウム粉末を、ナノメタルシルバーシリカの濃度が50ppmとなるようにポリエチレン樹脂に配合した組成物から、ポリエチレン袋を作製した。
得られたナノメタルシルバーシリカ配合ポリエチレン袋に、桃を入れて開口部を結び、9月初旬の室内に放置して、外観観察を行った。
【0040】
(比較例1)
市販のポリエチレン袋に、桃を入れて開口部を結び、9月初旬の室内に放置して外観観察を行った。
【0041】
実施例2、3及び比較例1で使用した桃は、同日に収穫した桃であり、3つの試験は同時に開始された。
実施例2の桃は、4日目までは外観は良好で鮮度が保たれており、5日目には上部が変色して柔らかくなり、7日目に全体が変色した。
実施例3の桃は、11日経過後も外観及び手触り共に変化なかった。そして、ふくろから取り出し、2つに切断したところ、切断面はきれいであり、匂いも良好であり、鮮度が保たれていた。
それに対し、比較例1の桃は、2日目には全体が変色して柔らかくなっており、3日目には液状化が進行していた。
試験結果より、本発明のナノメタルシリカの使用により、食品の鮮度を保ち、腐敗を抑制できることが示された。
また、実施例2及び3のポリエチレン袋内の桃は、ポリエチレン袋に接していない桃表面の鮮度も保っていたことから、本発明の抗菌組成物は、直接接触していない桃の熟成や、桃に付着している好気性のカビや菌等の繁殖を抑制できたと考えられる。
【0042】
(実施例4)
発泡ポリエチレン製のフルーツキャップ(日栄産業製、フルーツキャップW9)に、水を加えて200ppmに調整したナノメタルシルバーシリカ水溶液0.5mlを噴霧して、ナノメタルシルバーシリカでコーティングされたフルーツキャップを作製した。
得られたナノメタルシルバーシリカコーティングされたフルーツキャップに、マンゴーを入れて、9月初旬の室内に放置して、外観観察を行った。
【0043】
(比較例2)
発泡ポリエチレン製のフルーツキャップに、マンゴーを入れて9月初旬の室内に放置して、外観観察を行った。
【0044】
実施例4及び比較例2で使用したマンゴーは、同日に収穫したマンゴーであり、2つの試験は同時に開始された。
実施例4のマンゴーは、12日経過後も外観及び手触り共に変化なかった。そして、2つに切断したところ、切断面はきれいであり、匂いも良好であり、鮮度が保たれていた。
それに対し、比較例2のマンゴーは、12日経過後には、表面が黒く変色して柔らかくなっており、二つに切断したところ、内部まで柔らかくなっており、食べられる状態ではなかった。
試験結果より、本発明のナノメタルシリカの使用により、食品の鮮度を保ち、腐敗を抑制できることが示された。
また、実施例4で使用したマンゴーは、フルーツキャップに接していないマンゴー表面及び内部の鮮度も保っていたことから、本発明の抗菌組成物は、直接接触していないマンゴーの熟成や、マンゴーに付着している好気性のカビや菌等の繁殖を抑制できたと考えられる。
【0045】
(実施例5)
実施例1で調整したナノメタルシルバーシリカ水溶液を、ナノメタルシルバーシリカの濃度が50ppmとなるようにポリエチレン樹脂に配合した組成物から、ポリエチレン袋を作製した。
得られたナノメタルシルバーシリカ配合ポリエチレン袋に、リンゴを入れて9月下旬の室内に放置して、外観観察を行った。
【0046】
(実施例6)
市販のカルシウムパウダー1000gを攪拌しながら、実施例1で調整したナノメタルシルバーシリカ水溶液1000mlを噴霧して、乾燥させて、2000ppmのナノメタルシルバーシリカの担持したカルシウムパウダーを得た。
このカルシウムパウダーを、ナノメタルシルバーシリカの濃度が50ppmとなるよう
にポリエチレン樹脂に配合した組成物から、ポリエチレン袋を作製した。
得られたナノメタルシルバーシリカ配合ポリエチレン袋に、リンゴを入れて9月下旬の室内に放置して、外観観察を行った。
【0047】
(実施例7)
実施例3で製造したナノメタルシルバーシリカ配合ポリエチレン袋に、リンゴを入れて9月下旬の室内に放置して、外観観察を行った。
【0048】
実施例5乃至7で使用したリンゴは、同日に収穫したリンゴであり、3つの試験は同時に開始された。
実施例5乃至7に記載のリンゴは、1ヶ月経過後も外観に変化がなく、身も柔らかくなっていなかった。そして、107日経過後には、表面にしわができていたが、黒ずみや柔らかくなっている部分は無く腐敗は進行していなかった。
そして、夫々のリンゴを袋から取り出し、二つに切ったところ、切断面は瑞々しくきれいであり、匂いも良好であった。果肉部を食べたところ、瑞々しく甘かった。
試験結果より、本発明のナノメタルシリカの使用により、食品の鮮度を保ち、腐敗を抑制できることが示された。また、実施例5乃至7で使用したリンゴは、フルーツキャップに接していないリンゴ表面及び内部の鮮度も保っていたことから、本発明の抗菌組成物は、直接接触していないリンゴの熟成や、リンゴに付着している好気性のカビや菌等の繁殖を抑制できたと考えられる。