(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】発動機およびその発動機を備える油圧ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 9/125 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
F04B9/125
(21)【出願番号】P 2020188828
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(72)【発明者】
【氏名】米澤 慶多朗
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-266104(JP,A)
【文献】特開平07-217606(JP,A)
【文献】実開昭62-079971(JP,U)
【文献】実開昭61-037476(JP,U)
【文献】米国特許第05564913(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 9/08 -9/137
F16K 31/122
F15B 11/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発動機本体(4)に形成されるシリンダ孔(7)に当該シリンダ孔(7)の軸方向へ移動可能に挿入されるピストン(8)と、
前記ピストン(8)の前記軸方向の一端側に形成される第1発動室(9)と、
前記ピストン(8)の前記軸方向の他端側に形成される第2発動室(10)と、
前記第2発動室(10)から圧力流体を排出すると共に前記第1発動室(9)に圧力流体を供給する状態と、前記第1発動室(9)から圧力流体を排出すると共に前記第2発動室(10)に圧力流体を供給する状態とを切り換える給排弁(13)と、
前記給排弁(13)の前記軸方向の他端側に形成される給圧室(28)であって、当該給圧室(28)に供給される圧力流体によって前記給排弁(13)を前記軸方向の一端側位置へ押動させる給圧室(28)と、
前記給排弁(13)の前記軸方向の一端側に形成される切換え作動室(40)であって、当該切換え作動室(40)に供給される圧力流体によって前記給排弁(13)を前記軸方向の他端側位置へ押動させる切換え作動室(40)と、
前記ピストン(8)から突設されるパイロット弁体(18)と、
前記パイロット弁体(18)から離間されることにより前記給圧室(28)の圧力流体を前記切換え作動室(40)に供給すると共に、前記パイロット弁体(18)に係合することにより前記給圧室(28)から前記切換え作動室(40)への圧力流体の流れを遮断するスリーブ(44)と、
前記スリーブ(44)に形成される収容孔(44d)に移動可能に挿入されると共に、バネ(48)によって前記パイロット弁体(18)に向けて付勢される弁座部材(47)と、
前記弁座部材(47)に形成される弁座(49)に向けて閉弁バネ(51)によって付勢される圧抜き弁体(50)であって、前記パイロット弁体(18)の前記軸方向への移動によって前記弁座(49)から離間されることにより、切換え作動室(40)の圧力流体を外部へ排出する圧抜き弁体(50)と、を備え、
ことを特徴とする発動機。
【請求項2】
請求項1の発動機において、
前記給排弁(13)は、給排弁本体(24)と、
前記給排弁本体(24)の外周壁に前記軸方向へ移動可能に外嵌めされる筒状の第1弁部材(25)であって、第1バネ(38)によって前記軸方向の一端側へ付勢されると共に、前記給排弁本体(24)に形成される段差部(24b)に前記軸方向の一端側から受け止められる第1弁部材(25)と、
前記給排弁本体(24)の外周壁に前記軸方向へ移動可能に外嵌めされる筒状の第2弁部材(26)であって、第2バネ(39)によって前記軸方向の他端側へ付勢される第2弁部材(26)と、
前記第1弁部材(25)と前記第2弁部材(26)との間に前記軸方向に移動可能となるように挿入される筒状の伝動部材(27)であって、前記第1弁部材(25)と前記第2弁部材(26)とに当接可能になっている伝動部材(27)と、を有し、
前記
伝動部材(27)と前記第1弁部材(25)との間に形成される作業室(35)が、前記給圧室(28)に連通可能となっている、
ことを特徴とする発動機。
【請求項3】
請求項1の発動機において、
前記給排弁(13)は、一体に形成される給排弁本体(24)と、前記給排弁本体(24)から径方向の外方に突設される第1弁部材(25)および第2弁部材(26)と、を有する、
ことを特徴とする発動機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかの発動機において、
前記給排弁(13)の前記軸方向の他端側に補助バネ(42)が装着され、前記補助バネ(42)が前記給排弁(13)を前記軸方向の一端側へ付勢している、
ことを特徴とする発動機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの発動機において、
前記第2発動室(10)と前記切換え作動室(40)とが流路(53)によって連通され、前記流路(53)の一部または全部に絞り路(54)が形成される、
ことを特徴とする発動機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの発動機と、前記発動機によって駆動されるポンプ(3)とを備える油圧ポンプ装置であって、
前記ピストン(8)に連結されると共に、前記ポンプ(3)内に前記軸方向へ移動可能に挿入されるプランジャ(22)であって、当該プランジャ(22)の途中部に形成される大径部(60)を有するプランジャ(22)と、
前記大径部(60)の前記軸方向の一端側に形成される第1ポンプ室(61)と、
前記大径部(60)の前記軸方向の他端側に形成される第2ポンプ室(62)と、
作動油の吸入口(63)を前記第1ポンプ室(61)に連通させる第1吸入路(63a)に設けられる第1吸入弁(65)であって、前記吸入口(63)から前記第1ポンプ室(61)への作動油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する第1吸入弁(65)と、
前記吸入口(63)を前記第2ポンプ室(62)に連通させる第2吸入路(63b)に設けられる第2吸入弁(66)であって、前記吸入口(63)から前記第2ポンプ室(62)への作動油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する第2吸入弁(66)と、
前記第1ポンプ室(61)を作動油の吐出口(64)に連通させる第1吐出路(64a)に設けられる第1吐出弁(67)であって、前記第1ポンプ室(61)から前記吐出口(64)への作動油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する第1吐出弁(67)と、
前記第2ポンプ室(62)を作動油の吐出口(64)に連通させる第2吐出路(64b)に設けられる第2吐出弁(68)であって、前記第2ポンプ室(62)から前記吐出口(64)への作動油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する第2吐出弁(68)と、を備える、
ことを特徴とする油圧ポンプ装置。
【請求項7】
請求項6の油圧ポンプ装置において、
前記プランジャ(22)は、前記ピストン(8)に連結される第1小径部(22a)と、その第1小径部(22a)よりも大径に形成されると共に、当該第1小径部(22a)に連結される前記大径部(60)と、前記第1小径部(22a)と略同じ直径寸法に形成されるように前記大径部(60)に連結される第2小径部(22b)とを備える、ことを特徴とする油圧ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力流体によってピストンを駆動する形式の発動機およびその発動機を備える油圧ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧ポンプ装置には、従来では、特許文献1(日本国・特開平7-217606号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
【0003】
上記の従来技術の油圧ポンプ装置では、発動機本体内に設けられるピストンからパイロット弁体が弁ケース内に突設される。弁ケース内に筒状の給排弁が上下方向に移動可能に挿入される。給排弁の筒孔に筒状のスリーブが上下方向へ移動可能に挿入される。そのスリーブの筒孔内にパイロット弁体が上下方向に移動可能に挿入される。スリーブの筒孔の内周壁に形成される弁座に向けて、圧抜き弁体がバネによって付勢される。上記の給排弁の下側に給圧室が形成されると共に、給排弁の上側に切換え作動室が形成される。上記のパイロット弁体が上限位置に移動されているときには、パイロット弁体が圧抜き弁体を押し上げて、切換え作動室の圧縮エア(圧力流体)を外部に排出する。そのパイロット弁体を上限位置から下限位置に移動させていくと、圧抜き弁体がバネによって弁座に当接されて切換え作動室と外部との流路が遮断される。次いで、パイロット弁体がスリーブから離間されることにより、給圧室が切換え作動室に連通されて、給圧室の圧縮エアが切換え作動室に流入する。切換え作動室の圧縮エアが給排弁を下降させることにより、ピストンの上側に形成される作動室が外部に連通される。次いで、ピストンが下限位置に到達すると、引き続いて、ピストンの下側に形成される作動室に装着される駆動バネがピストンを上限位置へ上昇させていく。すると、パイロット弁体がスリーブに係合して、給圧室から切換え作動室への圧縮エアの流れが遮断される。次いで、パイロット弁体が圧抜き弁体を弁座から離間させて、切換え作動室の圧縮エアを外部へ排出する。すると、給排弁が給圧室の圧縮エアの圧力によって上昇される。以上の一連の動作が繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術は次の問題がある。
上記油圧ポンプ装置では、ピストンが緩やかに動作するときがある。このとき、パイロット弁体が圧抜き弁体を弁座から僅かに離間させると、切換え作動室内の圧縮エアが僅かずつ漏れ出る。このため、給排弁が上限位置と下限位置の途中位置へ移動して切換え動作ができなくなるおそれがある。この場合、ピストンの上側の作動室が給圧室と外部との両方に連通されて、油圧ポンプ装置が動作不能となることがある。
本発明の目的は、ピストンが緩やかに動作するときでも、確実に給排弁を切換えることができる油圧ポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、
図1から
図5,
図6に示すように、発動機を次のように構成した。
【0007】
発動機本体4に形成されるシリンダ孔7にピストン8が当該シリンダ孔7の軸方向へ移動可能に挿入される。前記ピストン8の前記軸方向の一端側に第1発動室9が形成される。前記ピストン8の前記軸方向の他端側に第2発動室10が形成される。前記第2発動室10から圧力流体を排出すると共に前記第1発動室9に圧力流体を供給する状態と、前記第1発動室9から圧力流体を排出すると共に前記第2発動室10に圧力流体を供給する状態とを給排弁13が切り換える。前記給排弁13の前記軸方向の他端側に給圧室28が形成され、その給圧室28に供給される圧力流体によって前記給排弁13を前記軸方向の一端側位置へ押動させる。前記給排弁13の前記軸方向の一端側に切換え作動室40が形成され、その切換え作動室40に供給される圧力流体によって前記給排弁13を前記軸方向の他端側位置へ押動させる。前記ピストン8からパイロット弁体18が突設される。前記パイロット弁体18からスリーブ44が離間されることにより、前記給圧室28の圧力流体を前記切換え作動室40に供給する。また、前記パイロット弁体18にスリーブ44が係合することにより、前記給圧室28から前記切換え作動室40への圧力流体の流れを遮断する。前記スリーブ44に形成される収容孔44dに移動可能に挿入される弁座部材47が、バネ48によって前記パイロット弁体18に向けて付勢される。前記弁座部材47に形成される弁座49に向けて圧抜き弁体50が閉弁バネ51によって付勢される。前記パイロット弁体18の前記軸方向への移動によって圧抜き弁体50が前記弁座49から離間されることにより、切換え作動室40の圧力流体が外部へ排出される。
【0008】
上記の本発明は次の作用効果を奏する。
本発明の発動機では、パイロット弁体が圧抜き弁体を弁座から緩やかに離間させて、切換え作動室の圧力流体が外部へ漏れ出るときに、切換え作動室の圧力流体の僅かな圧力低下に応じて弁座部材が圧抜き弁体から離間する方向へ移動される。このため、切り換え作動室の圧力流体が圧抜き弁体と弁座との間の開弁隙間から外部へ迅速に排出されて、給排弁が一端側に確実に移動される。
【0009】
上記の発明は、下記(1)から(6)の構成を加えることが好ましい。
(1)前記給排弁13は、給排弁本体24と、第1弁部材25と、第2弁部材26と、伝動部材27とを備える。前記給排弁本体24の外周壁に前記軸方向へ移動可能に外嵌めされる筒状の第1弁部材25が、第1バネ38によって前記軸方向の一端側へ付勢される。その第1弁部材25が、前記給排弁本体24に形成される段差部24bに前記軸方向の一端側から受け止められる。前記給排弁本体24の外周壁に前記軸方向へ移動可能に外嵌めされる筒状の第2弁部材26が、第2バネ39によって前記軸方向の他端側へ付勢される。前記第1弁部材25と前記第2弁部材26との間に筒状の伝動部材27が前記軸方向に移動可能となるように挿入される。その伝動部材27が、前記第1弁部材25と前記第2弁部材26とに当接可能になっている。前記伝動部材27と前記第1弁部材25との間に形成される作業室35が、前記給圧室28に連通可能となっている。
この場合、給排弁が一端側位置へ移動されたときに、第1バネによって第1弁部材が一端側へ付勢されることにより、第1発動室から圧力流体を排出する流路が第1弁部材によって遮断されると共に、第1発動室に圧力流体を供給する流路が連通される。このとき、作動室が給圧室に連通されて、作動室の圧力流体が伝動部材を介して第2弁部材を一端側へ移動させる。すると、第2発動室に圧力流体を供給する流路が第2弁部材によって確実に遮断されると共に、第2発動室から圧力流体を排出する流路が確実に連通される。
また、給排弁が他端側位置へ移動されたときに、給排弁本体が段差部を介して第1弁部材を他端側へ移動させて、第1発動室に圧力流体を供給する流路が第1弁部材によって確実に遮断されると共に、第1発動室から圧力流体を排出する流路が確実に連通される。このとき、第2弁部材が第2バネによって他端側へ付勢されることにより、第2発動室から圧力流体を排出する流路が第2弁部材によって確実に遮断されると共に、第2発動室に圧力流体を供給する流路が確実に連通される。
【0010】
(2)前記給排弁13は、一体に形成される給排弁本体24と、前記給排弁本体24から径方向の外方に突設される第1弁部材25および第2弁部材26と、を有する。
この場合、給排弁の構成を簡素にすることができる。
【0011】
(3)前記給排弁13の前記軸方向の他端側に補助バネ42が装着される。前記補助バネ42が前記給排弁13を前記軸方向の一端側へ付勢している。
この場合、給圧室に圧力流体の圧力が供給される前において、給排弁のパッキン抵抗力などの摩擦力や給排弁の自重による抵抗力を上回るように、補助バネが給排弁を一端側位置へ付勢して確実に移動させる。これにより、給排弁が一端側位置と他端側位置との間にある中間位置に移動されて、第1発動室および第2発動室に圧力流体が供給されながら排出される状態になることで発動機が動作不能になることを防止できる。
【0012】
(4)前記第2発動室10と前記切換え作動室40とが流路53によって連通される。その流路53の一部または全部に絞り路54が形成される。
この場合、上記の発動機では、切換え作動室に供給される圧力流体が給排弁を他端位置へ向けて押動させている状態において、その切換え作動室から、何らかの原因によって、圧力流体がわずかずつ漏れ出ることがある。この場合、給排弁が一端側位置と他端側位置との間にある中間位置へ移動しようとするが、第2発動室の圧力流体が流路(絞り路)を通って緩やかに切換え作動室へ供給されるので、給排弁が他端位置で保持される。その結果、発動機が動作不能となることを防止できる。
【0013】
(5)本発明の油圧ポンプ装置は、前記発動機と、前記発動機によって駆動されるポンプ3とを備える。前記ポンプ3は、プランジャ22と第1ポンプ室61と第2ポンプ室62と第1吸入弁65と第2吸入弁66と第1吐出弁67と第2吐出弁68とを備える。プランジャ22は、前記ピストン8に連結されると共に、前記ポンプ3内に前記軸方向へ移動可能に挿入される。そのプランジャ22の途中部に大径部60が形成される。前記大径部60の前記軸方向の一端側に第1ポンプ室61が形成される。前記大径部60の前記軸方向の他端側に第2ポンプ室62が形成される。作動油の吸入口63を前記第1ポンプ室61に連通させる第1吸入路63aに第1吸入弁65が設けられ、その第1吸入弁65が前記吸入口63から前記第1ポンプ室61への作動油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する。前記吸入口63を前記第2ポンプ室62に連通させる第2吸入路63bに第2吸入弁66が設けられ、その第2吸入弁66が前記吸入口63から前記第2ポンプ室62への作動油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する。前記第1ポンプ室61を作動油の吐出口64に連通させる第1吐出路64aに第1吐出弁67が設けられ、その第1吐出弁67が前記第1ポンプ室61から前記吐出口64への作動油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する。前記第2ポンプ室62を作動油の吐出口64に連通させる第2吐出路64bに第2吐出弁68が設けられ、その第2吐出弁68が前記第2ポンプ室62から前記吐出口64への作動油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する。
この場合、プランジャは、発動機によって往路と復路において略同じ駆動力で移動され、その往路を移動するときと、復路を移動するときの両方において作動油を連続的に吐出できる。
【0014】
(6)前記プランジャ22は、第1小径部22aと大径部60と第2小径部22bとを有する。第1小径部22aは、前記ピストン8に連結されている。その第1小径部22aよりも大径に形成される前記大径部60が、第1小径部22aに連結される。前記第1小径部22aと略同じ直径寸法に形成される第2小径部22bが前記大径部60に連結される。
この場合、本発明の油圧ポンプ装置は、往路と復路においてほぼ同じ量だけ作動油を連続的に吐出できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ピストンが緩やかに動作するときでも、確実に給排弁を切換えることができる油圧ポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示し、油圧ポンプ装置の断面視の模式図である。
【
図2】
図2は、上記油圧ポンプ装置の動作説明図であって、上記
図1に類似する模式図である。
【
図3】
図3は、
図2中のA部分を示す部分断面視した拡大図である。
【
図4】
図4は、上記油圧ポンプ装置の動作説明図であって、
図3に類似する図である。
【
図5】
図5は、上記油圧ポンプ装置の動作説明図であって、
図3に類似する図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態を示し、油圧ポンプ装置の一部を断面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から
図5は、本発明の第1実施形態を参照して説明する。この実施形態では、本発明の発動機を複動式油圧ポンプ装置に適用している。
【0018】
その油圧ポンプ装置1は、圧力流体としての圧縮エアを利用して往復直線運動する空圧ピストン発動機(以下、単に発動機という)2と、その発動機2で駆動されて高圧油を吐出するプランジャ式油圧ポンプ(以下、単にポンプという)3とによって構成されている。その発動機2は、圧縮エアの圧力エネルギーを動力に変換する発動機本体4と、この発動機本体4に圧縮エアを供給・排出する圧縮エア給排機構(以下、単に給排機構という)5とから構成される。その発動機2がポンプ3の上部に固定される。
【0019】
上記の発動機本体4内にシリンダ孔7が上下方向(軸方向)に形成され、そのシリンダ孔7に駆動用のピストン8が保密状で上下方向(シリンダ孔7の軸方向であり、以下、単に、前記軸方向という)へ移動可能に挿入される。その発動機本体4の上壁4aとピストン8との間、すなわち、ピストン8の上側(前記軸方向の一端側)に第1発動室9が形成される。また、発動機本体4の下壁4bとピストン8との間、すなわち、ピストン8の下側(前記軸方向の他端側)に第2発動室10が形成される。その第2発動室10から圧縮エアが排出されると共に、第1発動室9に圧縮エアが供給されると、ピストン8が下限位置へ移動されていく。また、第1発動室9から圧縮エアが排出されると共に、第2発動室10に圧縮エアが供給されると、ピストン8が上限位置へ移動されていく。
【0020】
上記の給排機構5は、発動機本体4の上側に配置された弁ケース12内に設けられ、給排弁13を有している。これにより、第1発動室9および第2発動室10が給排弁13によって給圧口14と排圧口15とに切換え接続可能となっている。給圧口14は、供給弁16を介して圧縮エア源17に接続されており、排圧口15が外界(弁ケース12の外部)へ連通されている。また、給排弁13は、ピストン8から上方へ突設されるパイロット弁体18によって、
図1に示す上限位置に押動された状態と
図2に示す下限位置に押動された状態とに切換え可能となるように構成されている。
【0021】
上記のポンプ3は、ピストン8から下方に突設されるプランジャ22を有し、ポンプ3内に上下方向へ形成されるポンプ室21内にプランジャ22が保密状で上下方向(前記軸方向)へ移動可能に挿入される。そのプランジャ22が上下方向へ移動することにより、ポンプ室21の作動油が吐出されて、その作動油がシリンダ装置23に供給される。
【0022】
次に、上記の給排機構5の構成を、
図1および
図2を参照して説明する。
【0023】
上記の給排機構5の弁ケース12内に筒状の給排弁13が上下方向(前記軸方向)へ移動可能に挿入される。その給排弁13は、筒状の給排弁本体24と、その給排弁本体24の下部の外周壁に保密状で上下方向(前記軸方向)へ移動可能に外嵌めされる筒状の第1弁部材25と、給排弁本体24の上部の外周壁に保密状で上下方向(前記軸方向)へ移動可能に外嵌めされる筒状の第2弁部材26と、第1弁部材25と第2弁部材26との間に挿入される筒状の伝動部材27とを有している。その第1弁部材25は、下側(前記軸方向の他端側)から順に形成される小径部と大径部とを有する。また、第2弁部材26は、下側(前記軸方向の他端側)から順に形成される大径部と小径部とを有する。給排弁13は、給排弁本体24に第1弁部材25と第2弁部材26と伝動部材27とが組合わされた1つの組立体となっている。このため、本発明の発動機では、組立体が上限位置または下限位置へ一体的に移動されるときに、第1発動室9への圧縮エアの供給および排出と、第2発動室10への圧縮エアの供給および排出とを給排弁13が同時に、または、時間ずらして同期して切り換えることができるように構成される。ここで、本実施形態では、伝動部材27と第2弁部材26とが別々の部材によって構成されることに代えて、伝動部材27と第2弁部材26とが一体に形成された部材または複数の部材を組み合わせた部材によって構成されるようにしてもよい。
【0024】
上記の弁ケース12内で給排弁本体24の下側(前記軸方向の他端側)に給圧室28が形成される。その給圧室28は、弁ケース12に形成される給圧口14を介して圧縮エア源17に連通されている。その給圧室28は、給排弁13の下部の外周側に形成される第1作業室29に連通されると共に、給排弁本体24に上下方向(前記軸方向)へ形成される連通路30を通って、給排弁13の上部の外周側に形成される第2作業室31に連通される。第1作業室29が、弁ケース12に形成される第1給排孔32を介して第1発動室9に連通される。また、第2作業室31が、弁ケース12に形成される第2給排孔33を介して第2発動室10に連通される。第1作業室29の内部に前記第1弁部材25が配置され、第2作業室31の内部に前記第2弁部材26が配置される。また、給排弁本体24の上側大径部の外周側であって第1作業室29と第2作業室31との間に排圧室34が形成され、排圧室34の内部に伝動部材27が配置される。その伝動部材27の下部が第1弁部材25の筒孔に上下方向に移動可能で保密状に挿入されると共に、伝動部材27の下端面が第1弁部材25に当接可能となっている。また、伝動部材27の上端面が第2弁部材26に当接可能となっている。その伝動部材27の下面と第1弁部材25の上面との間に作動室35が形成され、その作動室35に圧縮エアを給排する連通孔36が第1弁部材25に形成される。その連通孔36が作動室35と第1作業室29とを連通させている。なお、上記の排圧室34は、第1作業室29と第2作業室31とに連通されると共に、弁ケース12内に形成される流路と、弁ケース12の上部に装着される消音器37を介して排圧口15に連通されている。
【0025】
上記の第1作業室29内であってその第1作業室29の底面と第1弁部材25の大径部の下面との間に第1バネ38が装着される。その第1バネ38が弁ケース12に対して第1弁部材25を上方へ付勢する。また、第2作業室31内であって第2作業室31の天井面と第2弁部材26の大径部の上面との間に第2バネ39が装着される。その第2バネ39が弁ケース12に対して第2弁部材26を下方へ付勢している。
【0026】
上記の第1作業室29の底面に第1給圧側弁座29aが形成される。その第1給圧側弁座29aに当接可能な第1給圧側弁面25aが、第1弁部材25の下面に形成される。また、第1作業室29の天井面に第1排圧側弁座29bが形成される。その第1排圧側弁座29bに当接可能な第1排圧側弁面25bが、第1弁部材25の上面に形成される。
【0027】
上記の第2作業室31の天井面に第2給圧側弁座31aが形成される。その第2給圧側弁座31aに当接可能な第2給圧側弁面26aが、第2弁部材26の上面に形成される。また、第2作業室31の底面に第2排圧側弁座31bが形成される。その第2排圧側弁座31bに当接可能な第2排圧側弁面26bが、第2弁部材26の下面に形成される。
【0028】
上記の給排弁13を挟んで給圧室28とは反対側(上側)に切換え作動室40が形成される。より詳しくいえば、給排弁本体24の筒孔24aの内側および給排弁本体24の上端部の上側に切換え作動室40が形成される。
【0029】
上記給排弁本体24の上端部の下側にバネ室41が形成される。そのバネ室41は、呼吸孔を通って排圧口15に連通される。そのバネ室41に補助バネ42が装着され、その補助バネ42が弁ケース12に対して給排弁本体24を上方(前記軸方向の一端側)に向けて付勢している。これにより、給圧口14に供給される圧縮エアの圧力が給排弁13に作用する前において、補助バネ42が給排弁13を上方へ確実に付勢するので、給排弁13が上限位置(前記軸方向の一端側位置)へ押動される。その結果、給排弁13が上限位置と下限位置(前記軸方向の他端側位置)との間にある中間位置に移動することで、第1発動室9および第2発動室10が給圧口14および排圧口15の両方へ連通されて油圧ポンプ装置が動作不能となることを防止できる。ここで、補助バネ42の付勢力が、少なくとも、給排弁13とその給排弁13を収容する収容孔との間に生じる摩擦抵抗(パッキン抵抗)や給排弁13の自重などによる抵抗力を上回る程度となるように当該補助バネ42のバネ定数が設定されている。
【0030】
上記給排弁本体24の上端部は、その下側部分より直径が大きくなるように形成されており、その上端部の受圧面積が、下側部分の受圧面積よりも広くなるように設定されている。このため、後述するように、パイロット弁体18が下限位置へ移動して、給圧室28がパイロット弁室45などを介して切換え作動室40に連通されたときには、給圧室28の圧縮エアの上向きの圧力が給排弁本体24の下側部分の受圧面に作用すると共に、切換え作動室40の圧縮エアの圧力が給排弁本体24の上端部の受圧面に作用する。従って、切換え作動室40の圧縮エアの圧力が上端部の受圧面積に作用する下方への押圧力から、給圧室28の圧縮エアの圧力が下側部分の受圧面積に作用する上方への押圧力を差し引いた差力が給排弁本体24に下向きに作用する。ここで、下側部分の受圧面積とは、封止部材46よりもシリンダ孔7の半径方向の外方であり、かつ、封止部材13aの前記半径方向の内方の下側部分の断面の面積であって、給圧室28の圧縮エアの圧力が作用する下側部分の断面の面積である。また、上端部の受圧面積とは、封止部材46よりも前記半径方向の外方であり、かつ、封止部材13bの前記半径方向の内方の下側部分の断面の面積であって、切換え作動室40の圧縮エアの圧力が作用する下側部分の断面の面積である。
【0031】
上記実施形態の油圧ポンプ装置では、弁ケース12内にパイロット弁機構が設けられ、そのパイロット弁機構が、給圧室28と切換え作動室40とを連通させる状態と、遮断させる状態とに切り換える。そのパイロット弁機構を
図1および
図2を参照に説明する。
【0032】
上記の給排弁本体24の筒孔24a内に、筒状のスリーブ44の下半部分である小径部が上下方向へ移動可能に挿入される。その下半部分よりも大径の上半部分が、弁ケース12の上部に形成される収容孔43に上下方向に移動可能に挿入される。そのスリーブ44の筒孔内にパイロット弁室45が形成される。そのパイロット弁室45にパイロット弁体18が上下方向(前記軸方向)へ移動可能に挿入される。
【0033】
上記の給排弁本体24の筒孔24aの内周面とスリーブ44の外周面との間に隙間が形成されている。パイロット弁体18の外周面と筒孔24aの内周面との間に環状封止部材46が保密状に挿入される。その環状封止部材46は、スリーブ44の下端部に設けられる受止め部44bによって上方への移動が制限されている。
【0034】
上記のスリーブ44の筒孔(収容孔)44dに弁座部材47が保密状で上下方向に移動可能に挿入される。上記の弁ケース12に対して弁座部材47がバネ48によって下方へ付勢され、その弁座部材47が、スリーブ44の内周壁に形成される段差部を介してスリーブ44を下方に押している。弁座部材47の筒孔の内周壁に圧抜き弁座49が設けられ、この弁座49に球状の圧抜き弁体50が閉弁バネ51によって下方に向けて付勢される。その圧抜き弁体50は、パイロット弁体18の先端側に形成される操作部18aと当接可能となっている。また、弁ケース12の上部に形成される圧抜き口52が、排圧口15を通って弁ケース12の外部(外界)に連通されている。なお、弁座部材47を収容する収容孔44dがスリーブ44の筒孔によって構成されることに代えて、収容孔44dがスリーブ44の他の場所に形成された孔によって構成されるようにしてもよい。
【0035】
上記のスリーブ44の上半部分の外周壁と弁ケース12の収容孔43の内周壁との間に絞り路Gが設けられる。その絞り路Gは、弁ケース12に形成される流路53と、その流路53の一部によって構成される絞り路54と、第2給排路33とを通って第2発動室10および第2作業室31に連通されている。その絞り路Gを開閉する開閉手段が、スリーブ44の上端部と、弁ケース12の上壁との間に設けられる。その開閉手段は、弁ケース12の上壁に形成される環状溝に装着される環状の封止部材55と、スリーブ44の上端面に形成される環状の係合面44cとを有している。そのスリーブ44の係合面44cと封止部材55とが当接可能に隙間をあけて対面されている。そのスリーブ44が上昇されて係合面44cが封止部材55に当接されると絞り路Gが閉鎖され、係合面44cが封止部材55から離間されると絞り路Gが開放される。すなわち、切換え作動室40の圧力が設定圧力を下回っているときには、弁ケース12の上壁と弁座部材47との間に装着される圧縮バネ48が当該弁座部材47を介してスリーブ44を下方へ移動させて絞り路Gが開放される(開閉手段が開弁される)。また、切換え作動室40の圧力が設定圧力を上回るときには、切換え作動室40の圧縮エアがスリーブ44を上端位置へ移動させて絞り路Gが遮蔽される(開閉手段が閉弁される)。
【0036】
上記実施形態の開閉手段は、下記の異常状態において、次のように動作する。
上記のポンプ装置1の圧抜き弁体50が圧抜き弁座49に当接されて閉弁された状態において、切換え作動室40の圧縮エアが何らかの原因によって漏れ出ていくことがある(異常状態)。このような異常状態において、本実施形態の開閉手段等を備えない装置では、漏れた分だけ圧縮エアが補充されないと、給排弁13が中立位置へ移動して、給圧口14が第1作業室29および第2作業室31を通って排圧口15へ連通されると共に、第1発動室9および第2発動室10が排圧口15へ連通されて、最悪の場合、圧油ポンプ装置が動作不能状態となる。これに対して、本実施形態の油圧ポンプでは、切換え作動室40の圧縮エアが漏れても、第2発動室10および第2作業室31の圧縮エアが流路53を通って緩やかに切換え作動室40へ補充されるので、上記のような油圧ポンプ装置の動作不能状態となるのを防止できる。
【0037】
なお、本実施形態の流路53のように、その流路53の一部に絞り路54を設けることに代えて、流路53の全部に絞り路54を設けるようにしてもよい。
【0038】
上記ポンプ装置のパイロット弁体18と開閉手段とは、次のように作動する。
【0039】
上記のピストン8の下降に同行してパイロット弁体18が
図1の上限位置から
図2の下限位置に切換えられる(下降されていく)場合には、まず、圧抜き弁体50が閉弁バネ51によって圧抜き弁座49に着座されて、その圧抜き口52が閉じられる。次いで、圧抜き弁体50からパイロット弁体18の操作部18aが離間される。引き続いて、
図2に示すように、パイロット弁体18の外周面が環状封止部材46から下方へ離間される。すると、給圧室28内の圧縮エアが、パイロット弁体18と環状封止部材46との開弁隙間,パイロット弁室45,スリーブ44の貫通孔44aを通って切換え作動室40へ導入される。その切換え作動室40の圧縮エアによってスリーブ44が閉弁バネ51とバネ48との下方への付勢力に抗して上昇されて、スリーブ44の係合面44cが、弁ケース12の上端壁に装着される封止部材55に係合される。すると、切換え作動室40が急速に加圧されていき、切換え作動室40の圧縮エアが補助バネ42の上方への付勢力に抗して給排弁本体24を強力に押し下げて
図2の下限位置に移動させる。すると、給排弁本体24の大径部と小径部との間に形成される段差部24bが第1弁部材25を第1バネ38に抗して押し下げる。すると、第1排圧側弁面25bを第2排圧側弁座29bから離間(開弁)させると共に、第1給圧側弁面25aを第1給圧側弁座29aに係合(閉弁)させる。これにより、第1発動室9は、第1給排孔32と第1作業室29と排圧室34とを通って排圧口15に連通される。次いで、第2バネ39の下方への付勢力と給圧室28から連通路30を通って第2作業室31に供給される圧縮エアの圧力によって第2弁部材26が押し下げられる。すると、第2弁部材26の第2給圧側弁面26aが第2給圧側弁座31aから離間(開弁)されると共に、第2排圧側弁面26bが第2排圧側弁座31bに係合(閉弁)される。これにより、第2発動室10は、第2給排孔33と第2作業室31と給圧室28とを通って給圧口14に連通される。その結果、ピストン8の上昇復帰行程が開始される。
【0040】
そして、ピストン8の上昇に同行してパイロット弁体18が
図2の下限位置から
図1の上限位置に切換えられる(上昇される)場合には、まず、パイロット弁体18の外周面が環状封止部材46の内周面に封止接触する。次いで、操作ロッド46が圧抜き弁体50を閉弁バネ51に抗して圧抜き弁座49から離間させ、切換え作動室40内の圧縮エアをスリーブ44の貫通孔44a,圧抜き弁座49と圧抜き弁体50との間の開弁隙間,圧抜き口52の経路で排圧口15から弁ケース12の外部へ排出させる。これにより、給圧室28の圧縮エアの圧力および補助バネ42の付勢力によって給排弁本体24が押し上げられて上限位置に切換えられる。すると、給排弁本体24の外周壁に装着される封止部材56および第1弁部材25の間に作用する摩擦力と、第1バネ38の上方への付勢力と、給圧室28の圧力による押圧力とが第1弁部材25を押し上げる。すると、第1弁部材25の第1給圧側弁面25aを第1給圧側弁座29aから離間(開弁)させると共に、第1排圧側弁面25bを第1排圧側弁座29bに係合(閉弁)させる。これにより、第1発動室9は、第1給排孔32と第1作業室29と給圧室28とを通って給圧口14に連通される。また、第1作業室29内の圧縮エアが連通孔36を通って作動室35に供給され、その作動室35の圧縮エアによる押圧力が伝動部材27を介して第2弁部材26を第2バネ39に抗して押し上げる。すると、第2排圧側弁面26bが第2排圧側弁座31bから離間(開弁)されると共に、第2給圧側弁面26aが第2給圧側弁座31aに係合(閉弁)される。これにより、第2発動室10は、第2給排孔33と第2作業室31と排圧室34とを通って排圧口15に連通される。その結果、ピストン8の下降駆動行程が再び開始される。
【0041】
上記のポンプ装置において、
図2および
図3に示すピストン8の下限位置から当該ピストン8が上昇する行程の途中で、上記ポンプ3の吐出口64の圧力が、プランジャ22によって圧縮された第1ポンプ室61の圧力と略等しくなることがある。この場合、プランジャ22の駆動が低速となっていき、やがて停止される。その後、吐出口の圧油の圧力が、何らかの原因により僅かずつ低下されていくと、ピストン8がプランジャ22及びパイロット弁体18をゆっくりと駆動させていく。特に、パイロット弁体18がゆっくりと上昇されていくときに、
図4に示すように、操作ロッド46が圧抜き弁体50を僅かに持ち上げる。すると、切り換え作動室36内の圧縮エアが開弁隙間を通って外部へわずかずつ漏れ出て、その切り換え作動室36内の圧力が僅かに低下する。次いで、
図5に示すように、スリーブ44に比べて重量が軽くてパッキン抵抗が小さい弁座部材47が、進出バネ58の付勢力によって下方へ移動される。これにより、開弁隙間が大幅に広がって切換え作動室40の圧力が急速に低下する。その後、
図1に示すように、バネ48が弁座部材47を介してスリーブ44を下方へ移動させることにより、スリーブ44の係合部44cが封止部材47から離間される。
【0042】
上記のように、ピストン8が通常動作時よりも遅い速度で動作して、パイロット弁体18が圧抜き弁体50をわずかに開弁させるときでも、当該圧抜き弁50が一旦開弁されて圧力低下が生じると進出バネ54が弁座部材47を圧抜き弁体50から急速に離間させる。このため、切り換え作動室36の圧力は、急速に低下して、給排弁13が下限位置から上限位置に速やかに切り換えられる。よって、給排弁13が下限位置と上限位置の間の途中位置で停止するような油圧ポンプ装置の動作不能状態が発生するのを防止できる。
【0043】
次に、上記のプランジャ式油圧ポンプ3の構成を、
図1および
図2を参照して説明する。
上記ピストン8から下方へ突設されるプランジャ22が、ポンプ3の筐体20内に形成されるポンプ室21に上下方向へ移動可能に挿入される。そのプランジャ22は、上方(一端側)から順に形成される第1小径部22aと、その第1小径部22aよりも直径寸法が大きい大径部60と、第1小径部22aとほぼ同じ直径寸法の第2小径部22bとを有している。第1小径部22aの直径寸法と第2小径部22bの直径寸法とが略同じになるように設定されているため、そのプランジャ22がポンプ室21から押し出す作動油は、往路における吐出量と復路における吐出量とが略同じとなる。なお、往路における吐出量と復路における吐出量とに差を設けたい場合には、第1小径部22aの直径寸法と第2小径部22bの直径寸法とを異なる寸法に設定すればよい。この場合、第2小径部22bを省略してもよい。
【0044】
上記の大径部60がポンプ室21に保密状に挿入される。また、大径部60の上側に第1ポンプ室61が形成されると共に、大径部60の下側に第2ポンプ室62が形成される。その油圧ポンプ3の筐体20に吸入口63と吐出口64が形成されている。その吸入口63は、作動油のタンク(図示しない)に接続されており、吐出口64は、外部へと接続されている。吸入口63は、第1吸入路63aを介して第1ポンプ室61に連通されると共に、第2吸入路63bを介して第2ポンプ室62に連通される。また、吐出口64は、第1吐出路64aを介して第1ポンプ室61に連通されると共に、第2吐出路64bを介して第2ポンプ室62に連通される。第1吸入路63aの途中部に第1吸入弁65が設けられ、第2吸入路63bの途中部に第2吸入弁66が設けられる。その第1吸入弁65および第2吸入弁66は、ポンプ3内に設けられる弁座と、その弁座に向けてバネによって付勢される弁体とから構成される逆止弁である。その第1吸入弁65は、吸入口63から第1ポンプ室61への油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する。第2吸入弁66は、吸入口63から第2ポンプ室62への油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する。また、第1吐出路64aの途中部に第1吐出弁67が設けられ、第2吐出路64bの途中部に第2吐出弁68が設けられる。その第1吐出弁67および第2吐出弁68とは、第1吸入弁65等と同様の構造の逆止弁である。第1吐出弁67は、第1ポンプ室61から吐出口64への油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する。また、第2吐出弁68は、第2ポンプ室62から吐出口64への油の流れを許容すると共に、その逆の流れを制限する。
【0045】
上記のポンプ3は、次のように作動される。
上記のピストン8を
図1の上限位置から
図2の下限位置まで下降駆動させると、ピストン8に連動してプランジャ22の大径部60が下降される。このとき、その第2ポンプ室62の作動油の圧力が高められて、その第2ポンプ室62内の高圧の作動油が第2吐出弁体76を押し開いて、その高圧の作動油が吐出口64から(図示しない)外部へ吐出される。また、このとき、第1ポンプ室61の内圧が吸入口63内の作動油の圧力よりも低くなり、吸入口63の作動油が第1吸入弁体70を押し開いて、吸入口63の作動油が第1ポンプ室61に吸入される。
【0046】
上記のピストン8を
図2の下限位置から
図1の上限位置まで上昇駆動させると、ピストン8に連動してプランジャ22の大径部60が上昇される。このとき、第1ポンプ室61の作動油の圧力が高められて、その第1ポンプ室61内の高圧の作動油が第1吐出弁体74を押し開いて、その高圧の作動油が吐出口64から外部へ吐出される。また、このとき、第2ポンプ室62の内圧が吸入口63内の作動油の圧力よりも低くなり、吸入口63の作動油が第2吸入弁体72を押し開いて、吸入口63の作動油が第2ポンプ室62に吸入される。以上の行程を繰り返すことにより、高圧の作動油が往路と復路との両方で吐出口64から外部へ送り出される。このため、プランジャ22は、発動機2によって往路と復路において略同じ駆動力で移動され、その往路を移動するときと、復路を移動するときの両方において圧油を連続的に吐出できる。往路においてのみ圧油を吐出する従来技術に比べて、圧油の吐出量を増やすことができる。また、本発明の油圧ポンプ装置は、圧油を連続して吐出するので、圧油の脈動を低減できる。
【0047】
図6は、本発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態においては、上記の第1実施形態の構成部材と同じ部材(または類似する部材)には原則として同一の参照数字を付けて説明する。
【0048】
上記の第1実施形態と異なる点は次の通りである。
【0049】
図1に示す第1実施形態の油圧ポンプ装置1の給排弁13が、給排弁本体24と第1弁部材25と第2弁部材26の別々の部材が組み合わされているのに代えて、
図6に示す第2実施形態の油圧ポンプ装置1では、給排弁13が給排弁本体24と第1弁部材25と第2弁部材26とが一体に形成されるようにしてもよい。これにより、上記実施形態の給排弁13よりも、構成を簡素にすることができる。
【0050】
上記油圧ポンプ装置1の第1作業室29の底壁に収容溝が周方向へ形成され、リング状の第1弁座部材82が装着される。その第1弁座部材82の上面に第1給圧側弁座29aが形成される。その給排弁13が下限位置へ移動して、第2弁部材26の第2排圧側弁面26bが第2排圧側弁座31bに当接すると共に、第1弁部材25の第1給圧側弁面25aが第1弁座部材82の第1給圧側弁座29aに当接される。このとき、第1弁座部材82は、給排弁13によって弾性変形されるので、給排弁13と弁ケース12との加工誤差や組付け誤差などを吸収するように上記の弁面と弁座とが確実かつ同時または時間をずらして同期して当接(閉弁)される。
【0051】
また、第2作業室31の天井壁に収容溝が周方向へ形成され、その収容溝に第1弁座部材82と同様のリング状の第2弁座部材83が装着される。その弁座部材83の下面に第2弁座31aが形成される。その給排弁13が上限位置へ移動して、第1弁部材25の第1排圧側弁面25bが第1排圧側弁座29bに当接されると共に、第2弁部材26の第2給圧側弁面26aが第2弁座部材83の第2排圧側弁座31aに当接する。このとき、第2弁座部材83は、給排弁13によって弾性変形されるので、給排弁13と弁ケース12との加工誤差や組付け誤差などを吸収するように上記の弁面と弁座とが確実に当接される。
【0052】
上記の各実施形態は次のように変更可能である。
【0053】
上記の圧力流体は、例示した圧縮エアに代えて、他の気体または圧油等の液体であってもよい。
【0054】
上記第1実施形態の給排弁13は、下側から順に形成される小径部と大径部とを有するように構成されるのに代えて、下側から順に形成される大径部と小径部とを有するようにしてもよい。
【0055】
上記の給圧室28を給排弁13の下側(前記軸方向の他端側)に設けることに代えて、給排弁13の上側(前記軸方向の一端側)に設けてもよい。また、切換え作動室40を給排弁13の上側(前記軸方向の一端側)に設けることに代えて、給排弁13の下側(前記軸方向の他端側)に設けてもよい。
【0056】
上記給圧口14を油圧ポンプ装置の右側に設けることに代えて、上側やほかの場所に設けてもよい。
【0057】
上記の補助バネ42を省略してもよい。また、上記の第1バネ38および第2バネ39を省略してもよい。
【0058】
上記の環状封止部材46,55,56などは、Oリング等の断面が円形であるものに限られず、断面形状がV字状のものやU字状のものその他形状であってもよい。また、その材質は、ゴム等のシール性能が優れるものや、樹脂等の耐摩耗性が優れるものであってもよく、複数種の部材を組み合わせて構成してもよい。さらに、環状封止部材46は、スリーブ44の下面に装着することに代えて、スリーブ44の内周面に装着してもよい。
また、上記の発動機2は、上記の実施形態のように空圧作動式に構成することに代えて、窒素などの他の種類のガスで作動させたり、油圧で作動させたりすることもできる。
【0059】
上記第2実施形態の第1弁座部材82および第2弁座部材83は、樹脂、ゴム、その他の素材、それらの2以上の素材を組み合わせたもの、また、皿バネやコイルバネとリング状の部材とを組み合わせたものなどによって構成されるようにしてもよい。なお、上記の第1弁座部材82が、第1作業室29の底壁の収容溝に装着されることに代えて、第1作業室29の天井壁に形成される収容溝に装着されるようにしてもよい。この場合、第1弁座部材82の下面に第1排圧側弁座29bが形成される。また、上記の第2弁座部材83が、第2作業室31の天井壁の収容溝に装着されることに代えて、第2作業室31の底壁に形成される収容溝に装着されるようにしてもよい。この場合、第2弁座部材83の上面に第2排圧側弁座31bが形成される。
【0060】
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
3:ポンプ,4:発動機本体,7:シリンダ孔,8:ピストン,9:第1発動室,10:第2発動室,13:給排弁,18:パイロット弁体,22:プランジャ,22a:第1小径部,22b:第2小径部,24:給排弁本体,24b:段差部,25:第1弁部材,26:第2弁部材,27:伝動部材,28:給圧室,38:第1バネ,39:第2バネ,40;切換え作動室,42:補助バネ,44:スリーブ,44d:収容孔,47:弁座部材,48:バネ,49:弁座,50:弁座,51:閉弁バネ,53:流路,54:絞り路,60:大径部,61:第1ポンプ室,62:第2ポンプ室,63:吸入口,63a:第1吸入路,63b第2吸入路,64:吐出口,64a:第1吐出路,64b:第2吐出路,65:第1吸入弁,66:第2吸入弁,67:第1吐出弁,68:第2吐出弁.