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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】潮流発電装置および潮流発電方法
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/26 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
F03B13/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023203507
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2023-12-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519448588
【氏名又は名称】藤崎 早苗男
(73)【特許権者】
【識別番号】521057040
【氏名又は名称】藤崎 伊知子
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 早苗男
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-114936(JP,A)
【文献】特開2011-127613(JP,A)
【文献】特開2015-040562(JP,A)
【文献】国際公開第2014/065282(WO,A1)
【文献】特開2018-071487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮流を用いて電力を発電する潮流発電装置であって、
前記潮流発電装置の一方側において開口して前記潮流発電装置に前記潮流を導入する第1の開口と、
前記潮流発電装置の他方側において開口して前記潮流発電装置に前記潮流を導入する第2の開口と、
前記第1の開口または前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流によって回転する回転体と、
前記第1の開口に設けられ、前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流によって前記第1の開口の一部を閉鎖するとともに、前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流によって前記第1の開口を開放する第1の開閉扉と、
前記第2の開口に設けられ、前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記前記潮流によって第2の開口の一部を閉鎖するとともに、前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流によって前記第2の開口を開放する第2の開閉扉と、
前記回転体の回転を電気に変換する発電機と、
前記回転体を海中に浮揚させるための浮揚体と、を有し、
前記回転体は、前記浮揚体の上方に固定され、前記浮揚体とともに回転可能に設置されることを特徴とする潮流発電装置。
【請求項2】
前記第1の開口と前記第2の開口とは、互いに反対方向に向けて開口することを特徴とする請求項1に記載の潮流発電装置。
【請求項3】
前記第1の開閉扉は、第1の回転軸を中心に回転可能に構成され、前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流により回転して第1のストッパにより回転が止められることで前記第1の開口の一部を閉鎖するように構成され、
前記第2の開閉扉は、第2の回転軸を中心に回転可能に構成され、前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流により回転して第2のストッパにより回転が止められることで前記第2の開口の一部を閉鎖するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の潮流発電装置。
【請求項4】
前記第1の開閉扉は、第1の回転軸を中心に回転可能に構成され、
前記第1の開閉扉の回転を前記潮流と平行な位置までは回転させないように制限する回転制限機構が前記第1の回転軸に設けられ、
前記第2の開閉扉は、第2の回転軸を中心に回転可能に構成され、
前記第2の開閉扉の回転を前記潮流と平行な位置までは回転させないように制限する回転制限機構が前記第2の回転軸に設けられることを特徴とする請求項1に記載の潮流発電装置。
【請求項5】
前記第1の開閉扉は、前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流を受ける向きに配置された第1の面と、前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流を受ける向きに配置された第2の面とを有し、
前記第2の開閉扉は、前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流を受ける向きに配置された第3の面と、前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流を受ける向きに配置された第4の面とを有することを特徴とする請求項1に記載の潮流発電装置。
【請求項6】
前記回転体は、前記潮流を受けて回転する回転翼を有し、
前記回転翼は、回転軸に固定された固定部と該固定部に対して回動可能に構成された回動部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の潮流発電装置。
【請求項7】
前記潮流発電装置を複数配置し、
前記回転体毎に前記第1の開口と前記第2の開口を設置し、
前記第1の開口が開口する向きは複数の前記潮流発電装置の間で同じであり、
前記第2の開口が開口する向きは複数の前記潮流発電装置の間で同じであることを特徴とする請求項1に記載の潮流発電装置。
【請求項8】
潮流を用いて電力を発電する潮流発電装置であって、
第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに、前記第1の開口に設けられた第1の開閉扉により前記第1の開口の一部を閉鎖しつつ第2の開口に設けられた第2の開閉扉を開放した状態で、前記潮流発電装置に前記第1の開口から前記潮流を導入する工程と、
前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに、前記第2の開閉扉により前記第2の開口の前記一部を閉鎖しつつ前記第1の開閉扉を開放した状態で、前記潮流発電装置に前記第2の開口から前記潮流を導入する工程と、
前記第1の開口または前記第2の開口から前記潮流を前記潮流発電装置に導入して前記潮流によって浮揚体の上方に固定された回転体を前記浮揚体とともに回転させる工程と、
前記回転体の回転を発電機により電気に変換する工程と、を有する潮流発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潮流発電装置および潮流発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川等の水流を利用して水車を回転させることにより電力を発生させる水力発電が従来から利用されている。一般的な水力発電においては、ダム等に貯蓄した水を利用して水流を発生させるため、設置場所や水量等の制限が大きい。
【0003】
一方、海洋には潮流が生じており、海洋は地球の表面積の70%以上を占めている。潮流を利用して発電をすることができれば、より広い範囲で発電をすることができる。しかしながら、非特許文献1に示すように、コスト面等の問題により潮力発電が実用化されるまでには至っていない。
【0004】
潮流の方向は時間によって変動する。例えば、非特許文献2に示すように、関門海峡においては、東向きの潮流である東流と西向きの潮流である西流が交互に繰り返される。潮流を利用して効率的に発電するためには、このような潮流の方向の変動に対応することが重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://pps-net.org/column/111084
【文献】https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN7/kaisyo/stream_hayatomo1.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、潮流を利用した発電を実現可能とする潮流発電装置および潮流発電方法を提供する。特に、潮流の方向が時間によって変動する海域において、潮流の方向が変動しても効率的に発電を効率的に継続することができる潮流発電装置および潮流発電方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、潮流を用いて電力を発電する潮流発電装置であって、前記潮流発電装置の一方側において開口して前記潮流発電装置に前記潮流を導入する第1の開口と、前記潮流発電装置の他方側において開口して前記潮流発電装置に前記潮流を導入する第2の開口と、前記第1の開口または前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流によって回転する回転体と、前記第1の開口に設けられ前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流によって前記第1の開口の一部を閉鎖するとともに前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流によって前記第1の開口を開放する第1の開閉扉と、前記第2の開口に設けられ前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記前記潮流によって第2の開口の一部を閉鎖するとともに前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流によって前記第2の開口を開放する第2の開閉扉と、前記回転体の回転を電気に変換する発電機と、を有する潮流発電装置を提供する。
上記のように構成された潮流発電装置では、潮流の方向の変化により、一方側に設けられた第1の開口から潮流発電装置に潮流が流入する時間帯と他方側に設けられた第2の開口から潮流発電装置に潮流が流入する時間帯とが存在する。第1の開口から潮流発電装置に潮流が流入するときには、潮流によって第1の開口の一部を閉鎖するとともに第2の開口を開放する。一方、第2の開口から潮流発電装置に潮流が流入するときには、潮流によって第2の開口の一部を閉鎖するとともに第1の開口を開放する。導入側の開口の一部を閉鎖することにより潮流を回転体に作用させるとともに、排出側の開口を開放することにより潮流を排出する。潮流発電装置に導入された潮流によって回転体を回転させ、回転体の回転運動を発電機によって電気エネルギーに変換する。
【0008】
前記構成において、前記第1の開口と前記第2の開口とは、互いに反対方向に向けて開口する構成としてもよい。
上記のように構成された潮流発電装置では、潮流の方向が時間によって反対方向に変化する海域において、第1の開口と第2の開口から効率的に潮流発電装置に潮流を流入させる。
【0009】
前記構成において、前記第1の開閉扉は第1の回転軸を中心に回転可能に構成され前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流により回転して第1のストッパにより回転が止められることで前記第1の開口の一部を閉鎖するように構成され、前記第2の開閉扉は第2の回転軸を中心に回転可能に構成され前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流により回転して第2のストッパにより回転が止められることで前記第2の開口の一部を閉鎖するように構成される構成としてもよい。
上記のように構成された潮流発電装置では、潮流を導入する側の開口に設けられた開閉扉が潮流により回転してストッパにより所定の位置で回転が止められることで、開口の一部を閉鎖する。
【0010】
前記構成において、前記第1の開閉扉は、第1の回転軸を中心に回転可能に構成され、前記第1の開閉扉の回転を前記潮流と平行な位置までは回転させないように制限する回転制限機構が前記第1の回転軸に設けられ、前記第2の開閉扉は、第2の回転軸を中心に回転可能に構成され、前記第2の開閉扉の回転を前記潮流と平行な位置までは回転させないように制限する回転制限機構が前記第2の回転軸に設けられる構成としてもよい。
上記のように構成された潮流発電装置では、潮流を導入するときに回転扉が潮流を受けて回転扉が回転することで開口の一部を閉鎖する。
【0011】
前記構成において、前記第1の開閉扉は前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流を受ける向きに配置された第1の面と前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流を受ける向きに配置された第2の面とを有し、前記第2の開閉扉は前記第1の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流を受ける向きに配置された第3の面と前記第2の開口から前記潮流が前記潮流発電装置に導入されるときに前記潮流を受ける向きに配置された第4の面とを有する構成としてもよい。
上記のように構成された潮流発電装置では、各開閉扉の潮流を受ける面は、各開閉扉から潮流を導入するときと潮流を排出するときとで異なるように構成される。
【0012】
前記構成において、前記回転体は、前記潮流を受けて回転する回転翼を有し、前記回転翼は、回転軸に固定された固定部と該固定部に対して回動可能に構成された回動部とを備える構成としてもよい。
上記のように構成された潮流発電装置では、回転体の回転翼が固定部と回動部により構成され、潮流により回転翼全体が回転軸を中心として回転するとともに、回動部が固定部に対して回動するように構成される。
【0013】
前記構成において、前記回転体を海中に浮揚させるための浮揚体をさらに備え、前記浮揚体の浮力により前記回転体を水面よりも下に浮揚させるように構成する構成としてもよい。
上記のように構成された潮流発電装置では、浮揚体の浮力を調整して回転体を水面よりも下に浮揚させることで、潮流を回転体に作用させる。
【0014】
前記構成において、前記回転体を複数配置し、前記回転体毎に前記第1の開口と前記第2の開口を設置し、前記第1の開口が開口する向きは複数の前記回転体の間で同じであり、前記第2の開口が開口する向きは複数の前記回転体の間で同じである構成としてもよい。
上記のように構成された潮流発電装置では、複数の回転体がそれぞれ第1の開口と第2の開口が開口する向きを同一にして配置される。
【0015】
前記潮流発電装置を潮流発電方法として実施することも可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、潮流を利用した発電を現実的に実現可能とする潮流発電装置および潮流発電方法を提供することができる。特に、潮流の向きが時間によって変動する海域において、潮流の向きが変動しても効率的に発電を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の潮流発電装置の側面図である。
図2】本発明の潮流発電装置の平面図である。
図3】回転体を拡大した平面図である。
図4】潮流が第1の開口から潮流発電装置に導入される状態を示す図である。
図5】潮流が第2の開口から潮流発電装置に導入される状態を示す図である。
図6】潮流発電装置を多数配置する例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、一例として示す図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は、潮流発電装置1の側面図(断面図)である。図2は、本発明の潮流発電装置1の平面図である。潮流発電装置1は、潮流(海流)が発生する海洋に設置される。図1および図2では、海洋に浮かべた台船2に2つの潮流発電装置1を設置した例を示す。また、図1においては、網点が海水を表している。2つの潮流発電装置1の構成は同一であるので、図面内の符号は一方の潮流発電装置1にのみ表示し、他方の潮流発電装置1の符号は省略する。
【0019】
図1図2に示すように、潮流発電装置1は、主要な構成として、潮流発電装置1に潮流(海水)を導入し潮流発電装置1から潮流(海水)を排出するための開口10(第1の開口11、第2の開口12)、開口10から潮流発電装置1に潮流が導入されるときに潮流によって回転する回転体20、回転体20の側面を遮蔽する遮蔽壁30、開口10に設けられて開口10の一部を開閉する開閉扉40(第1の開閉扉41、第2の開閉扉42)、回転体20の回転を電気に変換する発電機50、メンテナンス時に潮流発電装置1を吊り上げるためのクレーン60等を有する。
【0020】
台船2は、海水に対して浮揚することが可能な素材で形成される。台船2の下方は水中に沈むように配置され、台船2の上方は海上に露出するように配置される。台船2の底面はロープ3等の連結手段により海底と連結され、台船2が海底から一定の高さ以上は上方に移動しないように維持されている。台船2の水中部分には、潮流発電装置1を収容するための海中空間4が複数形成されている。台船2の海上部分は、側壁と天井により囲まれて海上空間5を形成する。海上空間5の内部に、発電機50やクレーン60等が配置される。
【0021】
図1に示すように、回転体20は台船2の海中空間4に収容され、回転体20の周囲には海水が満たされている。回転体20は、浮揚体21の上方に固定され、浮揚体21とともに回転可能に設置される。回転体20は、浮揚体21の浮力により海洋に浮揚するように構成される。浮揚体21の浮力と回転体20の重量とのバランスを取ることで、回転体20を水面よりも下に浮揚させる。より具体的には、回転体20の上面が水面よりもやや下方に位置するように浮揚体21の浮力を調整する。つまり、回転体20は海洋に浮揚しつつ、回転体20全体が海中に配置される。また、遮蔽壁30、開閉扉40も、回転体20と同様に、浮揚体21の上方に配置され、水面よりも下に浮揚させる。浮揚体21の上方には、後述する回転体20の回転軸22が移動するのを防ぐための軸受6が設けられる。
【0022】
図2に示すように、回転体20の幅方向の左右両端の外側には、遮蔽壁30が配置される。2つの遮蔽壁30の間に挟まれて海中において水平方向(幅方向)および鉛直方向(高さ方向)に海水を遮らない空間を形成しているのが開口10である。開口10の形状は、長方形であると言うことができる。開口10は、第1の開口11と第2の開口12とにより構成される。上面視において、第1の開口11は潮流発電装置1の一方側に開口しているのに対して、第2の開口12は潮流発電装置1の他方側に開口している。より具体的には、第1の開口11と前記第2の開口12とは、互いに反対方向に向けて開口している。言い換えると、第1の開口11が開口する方向と前記第2の開口12が開口する方向は180°異なっている。例えば、一方側の第1の開口11が東を向くように、他方側の第2の開口12が西を向くように潮流発電装置1が配置される。一方側から他方側に向かう潮流が発生しているとき、第1の開口11から潮流を潮流発電装置1に導入し、第2の開口12から潮流を外部へ排出する。他方側から一方側に向かう潮流が発生しているとき、第2の開口12から潮流を潮流発電装置1に導入し、第1の開口11から潮流を外部へ排出する。第1の開口11および第2の開口12は、潮流を外部から潮流発電装置1へ導入する導入口として機能するとともに、潮流を潮流発電装置1から外部へ排出する排出口として機能する。第1の開口11が導入口として機能するとき第2の開口12は排出口として機能し、第2の開口12が導入口として機能するとき第1の開口11は排出口として機能する。
【0023】
各遮蔽壁30は、水平方向と鉛直方向に面を形成した平板状に形成される。また、各遮蔽壁30は、前後方向(潮流の進行方向)における中央付近の連結部31で2枚の板を折れ曲がるように連結して形成される。回転体20の前後方向の中央付近に各遮蔽壁30の連結部31を配置し、遮蔽壁30同士の左右方向(幅方向)の距離は連結部31で最小となるように各遮蔽壁30を折り曲げて配置する。第1の開口11側と第2の開口12側に向けて遮蔽壁30同士の距離が広がるように遮蔽壁30を配置する。つまり、第1の開口11または第2の開口12から回転体20の中央付近の連結部31に向けて潮流の流路が徐々に狭くなるように遮蔽壁30を配置する。潮流発電装置1を2つ並べる場合は、第1の開口11側と第2の開口12側のそれぞれにおいて遮蔽壁30の端部同士を連結する。両端部を連結した遮蔽壁30は、上面視でひし形の形状を有する。これにより、遮蔽壁30同士の間に前方または後方から潮流が流入することを防止する。
【0024】
第1の開口11には第1の開閉扉41が設けられ、第2の開口12には第2の開閉扉42が設けられる。第1の開閉扉41は、回転体20の幅方向の中央付近において鉛直方向に向けて配置された第1の回転軸43を中心に回転可能に構成される。第1の開閉扉41の回転領域は、図2に実線で示す第1の開閉扉41の回転が第1のストッパ45により止められる位置と、図2に破線で示す潮流とほぼ平行になる位置との間である(図2に円弧状の矢印で示す領域)。ただし、図2に破線で示す状態において、第1の開閉扉41は潮流と平行になる位置までは回転せず、平行になる位置の少し手前までしか回転しないように制限されている。第1の開閉扉41の回転を潮流と平行な位置までは回転させないように制限するように、第1の回転軸43には不図示の回転制限機構が設けられる。第2の開閉扉42は、回転体20の幅方向の中央付近において鉛直方向に向けて配置された第2の回転軸44を中心に回転可能に構成される。第2の開閉扉42の回転領域は、図2に実線で示す第1の開閉扉42の回転が第2のストッパ46により止められる位置と、図2に破線で示す潮流とほぼ平行になる位置との間である(図2に円弧状の矢印で示す領域)。ただし、図2に破線で示す状態において、第2の開閉扉42は潮流と平行になる位置までは回転せず、平行になる位置の少し手前までしか回転しないように制限されている。第2の開閉扉42の回転を潮流と平行な位置までは回転させないように制限するように、第2の回転軸44には不図示の回転制限機構が設けられる。
【0025】
図3は、回転体20を拡大した平面図である。図3に示すように、回転体20は全体として平面視で円形状の形状を有する。回転体20は、回転軸22と、回転軸22から放射状に延びる複数の回転翼23を有する。回転軸22は鉛直方向に向けて配置され、回転体20が水平方向に回転するように配置される。各回転翼23は、回転軸22に固定された固定部23Aと、固定部23Aに対して回動軸23Bを介して接続された回動部23Cとを有する。固定部23Aおよび回動部23Cは、ともに水平方向と鉛直方向に面を形成した平板状に形成される。回動部23Cは、固定部23Aに対して回動軸23Bを中心として回動可能に構成される。第1の開口11または第2の開口12から潮流発電装置1に潮流が導入されるとき、回転翼23は潮流を受けることで回転軸22を中心に回転する。回転翼23全体(固定部23Aと回動部23C)が回転軸22を中心に回転するとともに、潮流の速度の増減に応じて回動部23Cが固定部23Aに対して回動軸23Bを中心に前後に回動する。第1の開口11から潮流発電装置1に潮流が導入されるときと第2の開口12から潮流発電装置1に潮流が導入されるときとで、回転軸22を中心に回転翼23全体が回転する方向は同一である(図3においては時計回り)。回転翼23の外周部にはストッパ24が形成されており、回動部23Cが固定部23Aに対して一定角度以上は回転しないように規制している。図1に示すように、鉛直方向に4つの回転翼23を並べて配置し、4つの回転翼23が回転軸22を中心に同軸上で回転するように構成している。
【0026】
図1に示すように、回転軸22の上端には発電機50が接続されている。発電機50は、回転体20の回転軸22と同軸で回転する歯車51、歯車51の回転運動を増速する増速機構52、増速された回転運動を電気エネルギーに変換する発電機構53、発電機構53を制御するための制御盤54等を有する。上述した発電機50を構成する各機構は、海上空間5の内部に収容されている。歯車51、増速機構52、発電機構53、制御盤54の機能は、一般的な発電機と同様であるのでこれらの機能の詳細な発明は省略する。
【0027】
図4は第1の開口11から潮流発電装置1に潮流が導入される状態を示し、図5は第2の開口12から潮流発電装置1に潮流が導入される状態を示す。図4および図5を用いて潮流発電装置1の作動を説明する。以下の説明において、第1の扉41が反時計周りに回転するときに潮流を受ける面を第1の面41A、時計回りに回転するときに潮流を受ける面を第2の面41B、第2の扉42が反時計周りに回転するときに潮流を受ける面を第3の面42A、時計回りに回転するときに潮流を受ける面を第4の面42Bとする。第1の面41Aおよび第4の面42Bは第1の開口11から潮流が潮流発電装置1に導入されるときに潮流を受ける向きに配置された面であり、第2の面41Bおよび第3の面42Aは第2の開口12から潮流が潮流発電装置1に導入されるときに潮流を受ける面である。
【0028】
第1の開口11から潮流発電装置1に潮流が導入されるとき、図4に示すように、第1の開閉扉41の第1の面41Aは潮流を受けて反時計回りに回転する。回転した第1の開閉扉41は、第1のストッパ45により回転が止められる。これにより、第1の開閉扉41は第1の開口11の一部(図4において左半分)を閉鎖する。つまり、第1の開口11の開口面積を減少させる。このとき、第2の開閉扉42の第4の面42Bは潮流発電装置1から外部へ排出される潮流を受けて時計回りに回転する。回転した第2の回転扉42は、潮流とほぼ平行な位置(平行な位置よりは第2のストッパ46に近い側)まで回転した状態で潮流により回転位置が維持される。これにより、第2の開閉扉42は、第2の開口12を閉鎖せずに開放する。第1の開口11の一部を閉鎖し、第2の開口12を開放した状態で、第1の開口11から潮流発電装置1に潮流が導入される。導入された潮流により回転体20は時計回りに回転する。回転体20の回転を発電機50により電気に変換する。潮流発電装置1に侵入した潮流は第2の開口12から潮流発電装置1の外部へ排出される。
【0029】
第2の開口12から潮流発電装置1に潮流が導入されるとき、図5に示すように、第2の開閉扉42の第3の面42Aは潮流を受けて反時計回りに回転する。回転した第2の開閉扉42は、第2のストッパ46により回転が止められる。これにより、第2の開閉扉42は第2の開口12の一部(図5において右半分)を閉鎖する。つまり、第2の開口12の開口面積を減少させる。このとき、第1の開閉扉41の第2の面41Bは潮流発電装置1から外部へ排出される潮流を受けて時計回りに回転する。回転した第1の回転扉41は、潮流とほぼ平行な位置(平行な位置よりは第1のストッパ45に近い側)まで回転した状態で潮流により回転位置が維持される。これにより、第1の開閉扉41は、第1の開口11を閉鎖せずに開放する。第2の開口12の一部を閉鎖し、第1の開口11を開放した状態で、第2の開口12から潮流発電装置1に潮流が導入される。導入された潮流により回転体20は時計回りに回転する。回転体20の回転を発電機50により電気に変換する。潮流発電装置1に侵入した潮流は第1の開口11から潮流発電装置1の外部へ排出される。
【0030】
以上のように構成された潮流発電装置1においては、潮流発電装置1の一方側に開口した第1の開口11と他方側に開口した第2の開口12とを設けることで、潮流の方向が変化した場合に、潮流発電装置1の方向や開口の方向を変えなくても潮流の方向に応じて自動的に潮流を導入する開口を切り替えて潮流発電装置1に潮流を導入することができる。第1の開口11と第2の開口12とが互いに反対方向になるように配置すれば、潮流の方向が時間によって180°変化する海域において効率的に潮流発電装置1に潮流を導入することができる。
【0031】
第1の開口11に第1の開閉扉41を、第2の開口12に第2の開閉扉42を設けることで、潮流により第1の開閉扉41と第2の開閉扉42を開閉する。第1の開口11から潮流発電装置1に潮流を導入するとき、第1の開閉扉41は潮流によって第1の開口11の一部を閉鎖するのに対して、第2の開閉扉42は潮流によって第2の開口12を開放する。逆に第2の開口12から潮流発電装置1に潮流を導入するとき、第2の開閉扉42は潮流によって第2の開口12の一部を閉鎖するのに対して、第1の開閉扉41は潮流によって第1の開口11を開放する。つまり、潮流を導入する側の開口の一部を閉鎖し、潮流を排出する側の開口を開放する。これにより、潮流の流路を導入側では絞り込んで効率的に回転体20に作用させるとともに、排出側では最大限に潮流を排出することができる。導入側の開閉扉の回転はストッパで制限するのに対して、排出側の開閉扉の回転は潮流とほぼ平行な位置まで回転扉が回転することで自然に位置決めされる。このような構成を採用することで、電気的な制御機構等を用いずに潮流の方向の変化のみに依存して開閉扉を自動的に開閉することができる。開閉扉が潮流と平行な位置まで回転可能な構造とすると潮流を導入するときに開閉扉が確実に回転しない可能性があるため、開閉扉の回転を潮流と平行な位置までは回転させないように制限する回転制限機構が設けられている。
【0032】
回転体20の回転翼23は、回転軸22に固定された固定部23Aと固定部23Aに対して回動軸23Bを中心に回動可能に構成された回動部23Cとを備えるように構成している。回転翼全体を回転軸に固定すると、潮流の僅かな変動により生じる抵抗が回転軸22に直接作用する。回動部23Cが固定部23Aに対して前後に回動可能な構成とすることで、上述した回転軸22に作用する抵抗の一部を逃すことができる。つまり、回転軸22に作用する負荷を軽減することができる。また、回転体20は浮揚体21の上方に配置される。浮揚体21の浮力を調整して回転体20を水面よりも下に浮揚させるように構成することで、回転体20全体に潮流を効率的に作用させることができる。
【0033】
本発明の潮流発電装置によって得られる出力を概略的に計算する。回転体の回転軸の中心から半径方向にr[m]の位置で微小幅dr[m]に加わる力ΔFを考える。力ΔFは、回転体に作用する海水の重さにより生じる力であるので、回転体の高さをH[m]、海水の密度をρ[kg/m]、潮流の速度をV[m/s] 、重力加速度をg[m/s]とすると、力ΔFは以下の式(1)により示すことができる。
ΔF=ρ×H×dr×V×g (1)

ここで一旦、回転体の回転数n[rpm]を求める。潮流の速度Vを2m/s、回転体の半径rを2m、円周率πを3.14とすると、回転数nは以下の式(2)により計算することができる。
n=V×60/(2×π×r)
=2×60/(2×3.14×2)
≒9.55 (2)

回転体の回転軸の中心から半径方向にr[m]の位置で1分間あたりに潮流が回転体に与える仕事Lを求める。回転体の円周方向の移動距離をD[m]とすると、力Fと移動距離Dとを用いて微小幅drにおいて潮流が回転体に与える仕事ΔLは以下の式(3)により示すことができる。ここで半径方向にr[m]の位置における円周方向の移動距離Dは、回転数nを用いて2×π×r×nと表すことができる。
ΔL=ΔF×D=ρ×H×dr×V×g×2×π×r×n (3)

回転体の半径を2mとして、回転軸の中心から外周部分までの領域において潮流が回転体に与える仕事の合計Lは、以下の式(4)により示すことができる。
【数1】
上述の式(4)に、海水の密度ρ=1.02×10kg/m、回転体の高さH=10m(2.5m×4段)、潮流の速度V=2m/s、重力加速度g=9.81、回転数n=9.55を代入すると、仕事Lは約24000kJとなる。1秒あたりの仕事、つまり動力Pは、P=L/60=24000/60=400kWとなる。発電効率ηを0.35と仮定すると、実質的な動力P’=η×E=140kWとなる。図2に示すように回転体を2基並べるとすると、発電装置により得られる動力P’(total)は280kWとなる。24時間で得られる電力量は6720kWh、365日で2452800kWh(≒2.45GWh)となる。
【0034】
図6は、潮流発電装置1を多数配置する例を示す平面図である。本実施例では、台船2を平行に5つ並べ台船2の間に4列、合計で64基の潮流発電装置1を配置した例を示す。各潮流発電装置1は、上述した実施例と同様の構成を有する。潮流発電装置1を配置するとき、第1の開口が開口する向きは複数の潮流発電装置1の間で同じであり、第2の開口が開口する向きは複数の潮流発電装置1の間で同じとする。つまり、潮流がある一定の方向に向けて流れた場合に、第1の開口11または第2の開口12から複数の潮流発電装置1に同時に潮流が導入される。このように、潮流発電装置1を多数並べて配置することで、発電可能な電気エネルギーを増加させることができる。
【0035】
前記実施例において記載した潮流発電装置1の数や回転体20の大きさ等は例示に過ぎない。潮流発電装置1を設置する場所や発電する電力量等の様々な条件を考慮して潮流発電装置1の仕様を最適に設定すればよい。潮流発電装置1を配置するために台船2を使用することも必須ではない。
【0036】
前記実施例において、第1の開口11が開口する方向と前記第2の開口12が開口する方向が180°異なる構成を示したが、本発明は必ずしもこの構成に限られない。潮流発電装置を設置する海域の潮流の方向の時間的な変化を考慮して、開口の角度を最適に調整することが可能である。
【0037】
前記実施例において、第1の開口11から潮流を導入するときに第1の扉41が反時計周りに回転し、第2の開口12から潮流を導入するときに第2の扉42が反時計回りに回転する構成を説明したが、扉の回転方向はこれに限られない。第1の開口11から潮流を導入するときに第1の扉41が時計周りに回転し、第2の開口12から潮流を導入するときに第2の扉42が時計回りに回転する構成としてもよい。また、潮流を導入する際の回転方向が、第1の扉41と第2の扉42とで逆方向であってもよい。回転体20の回転方向も反時計回りに限定されず、時計回りに回転する構成としてもよい。
【0038】
前記実施例において、導入側の開閉扉の回転はストッパで制限し、排出側の開閉扉の回転は潮流により自然に位置決めする構成を説明したが、本発明は必ずしもこの構成に限られない。例えば、導入側の開閉扉の回転を潮流により自然に位置決めする構成とすることも可能であるし、排出側の開閉扉の回転をストッパで制限する構成とすることも可能である。また、ストッパは、開閉扉の回転軸に設けられていてもよい。開閉扉の回転を所定の回転角度で制限する機構のことをストッパと呼んでいる。
【0039】
前記実施例において、導入側の開閉扉により第1の開口のうちの約半分を閉鎖する構成を示したが、開口を閉鎖する範囲は必ずしもこれに限らない。開口の少なくとも一部を閉鎖する構成は本発明に含まれる。また、潮流の排出時に開閉扉により第1の開口11および開口を開放する構成を示したが、開口を開放するとは必ずしも開閉扉が潮流を完全に遮らない状態のみを示している訳ではない。潮流が若干変動することにより開閉扉が若干左右に移動する可能性があるが、それにより潮流が若干遮蔽される可能性がある。そのような場合であっても、開閉扉が潮流に対して略平行に配置されている状態であれば開口を開放している状態であると言うことができる。
【0040】
前記実施例において、回転翼23を固定部23Aと回動部23Cとにより構成する例を示したが、本発明は必ずしもこの構成に限られない。回動部を設けずに回転軸22を中心として一体に回転する回転翼を採用することも可能である。また、回転翼の形状は平板状に限られない。当然のことながら、曲面を有する回転翼を使用することも可能であり、従来の水力発電用の水車等で使用されている様々な羽根車を本発明の回転翼として使用することが可能である。
【0041】
前記実施例において、発電機50の構成は例示に過ぎない。回転運動を効率的に電気エネルギーに変換するために従来から知られている様々な構成を発電機に追加することが可能である。
【0042】
なお、本発明は前記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・前記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0043】
1…潮流発電装置、2…台船、3…ロープ、4…海中空間、5…海上空間、6…軸受、10…開口、11…第1の開口、12…第2の開口、20…回転体、21…浮揚体、22…回転軸、23…回転翼、24…ストッパ、30…遮蔽壁、31…連結部、40…開閉扉、41…第1の開閉扉、42…第2の開閉扉、43…第1の回転軸、44…第2の回転軸、45…第1のストッパ、46…第2のストッパ、50…発電機、51…歯車、52…増速機構、53…発電機構、54…制御盤、60…クレーン。
【要約】
【課題】潮流を利用した発電を実現可能とする潮流発電装置および潮流発電方法を提供する。特に、潮流の方向が時間によって変動する海域において、潮流の方向が変動しても効率的に発電を継続することができる潮流発電装置および潮流発電方法を提供する。
【解決手段】潮流を用いて電力を発電する潮流発電装置であって、潮流発電装置に潮流を導入する第1の開口および第2の開口と、第1の開口または第2の開口から潮流が潮流発電装置に導入されるときに潮流によって回転する回転体と、第1の開口および第2の開口に設けられ潮流が潮流発電装置に導入されるときに潮流によって第1の開口および第2の開口の一部を開閉する第1の開閉扉および第2の開閉扉と、回転体の回転を電気に変換する発電機と、を有する潮流発電装置およびこれを利用した潮流発電方法。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6