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  • 特許-氷、及び氷の製造方法 図1
  • 特許-氷、及び氷の製造方法 図2
  • 特許-氷、及び氷の製造方法 図3
  • 特許-氷、及び氷の製造方法 図4
  • 特許-氷、及び氷の製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】氷、及び氷の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/00 20060101AFI20240530BHJP
   F25C 1/00 20060101ALI20240530BHJP
   A23G 9/42 20060101ALI20240530BHJP
   A23L 19/00 20160101ALN20240530BHJP
【FI】
A23G9/00 101
F25C1/00 B
A23G9/42
A23L19/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019225180
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021093914
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年12月9日に大日本印刷株式会社のウェブサイトhttps://www.dnp.co.jp/news/detail/1193348_1587.htmlでアイスボールに関する情報を公開した事実
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年12月8日に日本経済新聞においてアイスボールに関する記事を公開した事実
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年12月10日に酒類飲料日報及びそのウェブ版でアイスボールに関する情報を公開した事実
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年8月1日に大日本印刷株式会社およびアサヒビール株式会社にアイスボールの試作品を配付した事実
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年12月9日にアイティメディア株式会社のウェブサイトhttps://www.itmedia.co.jp/business/articles/1912/09/news089.htmlでアイスボールに関する情報を公開した事実
(73)【特許権者】
【識別番号】519431188
【氏名又は名称】FULLLIFE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】豊田 剛史
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-147422(JP,A)
【文献】Strawberry Ice Candy,記録番号(ID#)4901021,MintelGNPD,2017年,[online],[検索日 2023.12.19], Retrieved from the Internet: <URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4901021/>
【文献】Strawberry & Grape Frozen Sorbet,記録番号(ID#)5973617,MintelGNPD,2018年,[online],[検索日 2023.12.19], Retrieved from the Internet: <URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/5973617/>
【文献】Red Fruits Flavoured Sorbet Sticks,記録番号(ID#)6655695,MintelGNPD,2019年6月,[online],[検索日 2023.12.19], Retrieved from the Internet: <URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/6655695/>
【文献】Blackcurrant and Florida Orange Flavoured Ice Bar,記録番号(ID#) 5987097,MintelGNPD,2018年,[online], [検索日 2023.12.19], Retrieved from the Internet: <URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/5987097/>
【文献】Frozen Organic Juice,記録番号(ID#) 3475203,MintelGNPD,2015年,[online],[検索日 2023.12.19], Retrieved from the Internet: <URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3475203/>
【文献】大日本印刷株式会社ウェブサイトに掲載された2019年12月 9日付けニュースリリース「オープンイノベーションで『BEERDROPS』を開発 新たな体験価値を創出し、若年層にビールの魅力をアピール!」,2019年12月 9日,[オンライン],[検索日 2023.12.19],インターネット,URL,https://www.dnp.co.jp/news/detail/1193348_1587.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G,A23L,F25C
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.5 気圧以上3.0 気圧以下の高圧下で、イチゴを150℃以上250℃以下に加熱して、濃縮果汁を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出した濃縮果汁と、果実のピューレまたは果汁とを混合する混合ステップと、
前記混合ステップにおいて混合された混合物を凍らせて成形する成形ステップと
を有する氷の製造方法。
【請求項2】
前記混合ステップにおいて、前記濃縮果汁は、前記果実のピューレまたは果汁に対し、質量比で0.5%以上かつ1%未満となるように混合される
請求項1に記載の氷の製造方法。
【請求項3】
前記濃縮果汁は、1.9気圧以上2.2 気圧以下の高圧下で、イチゴを190℃以上210℃以下で煮詰めた後に不要成分を除去されたものである
請求項1に記載の氷の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷、及び氷の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、構成脂肪酸としてラウリン酸を3~50質量%含み、20℃のSFCが20以下であり、且つ30℃のSFCが1.0以下である、冷凍菓子用油脂組成物が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、冷菓ミックスを第1フリーザーから吐出して具材と混合し、得られた具材入り冷菓を第2フリーザーで-8~-15℃に急速凍結して吐出することを特徴とする、具材入り冷菓の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-134053
【文献】特開2016-123298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より保形成に優れた果実由来の氷を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る氷は、果実のピューレまたは果汁と、イチゴの濃縮果汁とを含む。
【0007】
好適には、前記濃縮果汁は、前記果実のピューレまたは果汁に対し、質量比で0.5%以上かつ1%未満である。
【0008】
本発明に係る氷の製造方法は、1.5気圧以上3.0気圧以下の高圧下で、イチゴを150℃以上250℃以下に加熱して、濃縮果汁を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップにおいて抽出した濃縮果汁と、果実のピューレまたは果汁とを混合する混合ステップと、前記混合ステップにおいて混合された混合物を凍らせて成形する成形ステップとを有する。
【0009】
好適には、前記混合ステップにおいて、前記濃縮果汁は、前記果実のピューレまたは果汁に対し、質量比で0.5%以上かつ1%未満となるように混合される。
【0010】
好適には、前記濃縮果汁は、1.9気圧以上2.2気圧以下の高圧下で、イチゴを190℃以上210℃以下で煮詰めた後に不要成分を除去されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の氷は、従来品に比し、高い保形性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は、レモンを使用したアイスボール1の写真であり、(b)は、氷菓子としたアイスボール1の写真であり、(c)は、氷としてのアイスボール1の写真である。
図2】アイスボール1の製造方法を説明するフローチャートである。
図3】コップに入れた水に、アイスボール1と果汁氷とを入れた場合の、経過時間に伴う温度と状態の変化とを表した写真である。
図4】コップに入れた水に、アイスボール1と果汁氷とを入れた場合の、経過時間に伴う温度と状態の変化とを表した表である。
図5】アイスボール1と果汁氷との水温の変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、レモンを使用したアイスボール1を例示する写真である。
アイスボール1は、果実のピューレ10a、または果汁10bと、濃縮果汁12とを含む氷である。果実のピューレ10aは、果物を生のまま、あるいは加熱し、すり潰した後、裏ごし器を通過させたものである。果汁10bは、果物を搾った汁である。果実のピューレ10a、または果汁10bに適した果実は、例えば、パイン、ピーチ、マンゴー、トマト、レモン、キウイ、メロン、ぶどう、かぼす、ゆず等ある。また、果実のピューレ10a、または果汁10bは、2種類以上の果実を組み合わせたものでもよい。
【0014】
濃縮果汁12は、イチゴから抽出された濃縮果汁である。具体的には、濃縮果汁12は、果実の水分を除去して固形分40%以上としたものである。果実の水分を除去するとは、果実、果汁、又は果実を破砕等したものから水分を除去することをいう。濃縮果汁12は、ペクチン、クエン酸、オリゴ糖、及びイチゴポリフェノールを含む。濃縮果汁12は、1.5気圧以上3.0気圧以下の高圧下で、イチゴを150℃以上250℃以下に加熱して、濃縮果汁を抽出することにより得られる。より具体的には、濃縮果汁12は、1.9気圧以上2.2気圧以下の高圧下で、イチゴを190℃以上210℃以下で煮詰めた後に不溶成分を除去されたものである。不溶成分を除去する前にイチゴを煮詰めることにより、イチゴの不溶成分に含まれるポリフェノールが果汁中に溶け出し、濃縮果汁に含まれるポリフェノールの量を増やすことができる。
【0015】
図1の(a)は、果実のピューレ10a、または果汁10bに、レモンを使用したアイスボール1の一例を示した写真である。本例において、アイスボール1は、球形であるが、これに限定されず、直方体、立方体等のキューブ型でもよい。アイスボール1は、本発明に係る氷の一例である。
また、アイスボール1は、直径2cm~4cmであるが、これに限定されず、用途に応じて、大きさを、適宜変更可能である。
アイスボール1は、図1(b)のように、氷菓子(アイス)として使用してもよいし、図1(c)のように、保冷用の氷として飲み物に入れて使用してもよい。
【0016】
濃縮果汁12に適したイチゴは、例えば、トチオトメ、ダナー、アイベリー、あまおう、ももいちご、あきひめ、さがほのか、あすかルビー、豊の香、宝交早生、福羽、女峰、久留米49号、栃の峰、好ましくはトチオトメが挙げられ、イチゴの部分としては、例えば果実、葉、茎、根、好ましくは果実が挙げられる。
イチゴポリフェノールには、抗酸化機能(アンチエイジング)、抗肥満機能(ダイエット)、美白効果(メラニン抑制)、抗炎症機能、及び抗アレルギー機能が認められているため、アイスボール1を食べることで、濃縮果汁12に含まれるイチゴポリフェノールの効能が期待できる。
【0017】
図2は、アイスボール1の製造方法を説明するフローチャートである。
図2に例示するように、ステップ100(S100)において、高温高圧でイチゴから濃縮果汁を抽出する。具体的には、1.9気圧以上2.2気圧以下の高圧下で、イチゴを190℃以上210℃以下で煮詰めた後に不溶成分を除去し、濃縮果汁12を抽出する。
ステップ105(S105)において、S100で抽出した濃縮果汁12を、レモンの搾汁の質量に対して、0.5%の質量で、レモンの搾汁(果汁10b)に添加する。
ステップ110(S110)において、S105において、添加された濃縮果汁12とレモンの搾汁(果汁10b)とを混合する。
ステップ115(S115)において、S110において混合された濃縮果汁12とレモンの果汁10bとの混合物を型に流し込み、-18°以下で冷凍する。固まった混合物を型から外してアイスボール1が製造される。
【0018】
図3は、コップに入れた水に、アイスボール1と果汁氷とを入れ、経過時間に伴う温度と状態の変化とを表した写真であり、図4は、アイスボール1と果汁氷とを入れ、経過時間に伴う温度と状態の変化とを表した表である。
図3に例示するように、コップに常温の水を入れ、さらにアイスボール1を2個入れたものと、コップに常温の水を入れ、アイスボール1と同じ大きさの果汁氷を2個入れたものを用意し、時間の経過における温度変化と状態変化とを観察した。ここで、果汁氷は、濃縮果汁12を含まず、アイスボール1と同様の果汁のみを凍らせたものである。
【0019】
図4に例示するように、アイスボール1は、4分後に沈み始め、9分後に輪郭がはっきりしなくなる。アイスボール1は、15分後以降形状を保てなくなるが、固まりとして水中に存在し、水と混ざり合うことはなく、水が濁ることはなかった。
アイスボール1に対して果汁氷は、2分後には水が濁り始め、4分後には形状がはっきりしなくなった。果汁氷は、7分後には溶けて形状が無くなると共に、水と混ざり、水が果汁氷の色味を帯びた。すなわち、アイスボール1は、水中で濃縮果汁12を含まない果汁氷と比べて、より長く形状を保持することができる。
【0020】
図5は、アイスボール1と果汁氷との水温の変化を表すグラフである。
常温の水に果汁氷を入れた場合と、常温の水にアイスボール1を入れた場合との時間の経過における水温の変化を観察した。ここで、果汁氷は、濃縮果汁12を含まず、アイスボール1と同様の果汁のみを凍らせたものである。
図5に例示するように、アイスボール1は、9分間で水温が9℃まで下がり、その後、経過時間25分まで、水温は略一定である。アイスボール1に対して果汁は、6分間で水温10℃まで下がり、その後、経過時間25分まで徐々に水温が上昇している。すなわち、アイスボール1は、果汁氷に比べて、水温をより長い時間低温に保つことができる。これは、アイスボール1が、濃縮果汁12を含まない果汁氷と比べ、長い時間解けきらずに形状を保っているためである。
【0021】
したがって、アイスボール1は、濃縮果汁12を有し、保形成が高いため、図1(b)のように氷菓子として使用しても、長時間、味や食感を損なうことがない。また、アイスボール1は、図1(c)のように、お酒やジュースの保冷用の氷として使用しても、水を凍らせただけの氷よりも、飲み物を長時間冷たいままで維持することができる。さらに、アイスボール1は、果実ピューレ、又は100%の果汁を使用しているため、お酒やジュースに溶けた時に、お酒やジュースの味を薄めることがない。そして、時間をかけてアイスボール1が溶けるため、徐々に変化するお酒やジュースの味や見た目を楽しむことができる。また、アイスボール1は、水を凍らせただけの氷に比べ、2~4倍の時間溶けきらずに形状を保持することができる。
【0022】
上記実施形態では、果実ピューレ10a、または果汁10bの質量に対し、0.5%~1%の濃縮果汁12を加えてアイスボール1を製造しているが、これに限定されず、例えば、果実ピューレ10a、または果汁10bの質量に対し、0.5%未満の濃縮果汁12を加えてアイスボール1を製造し、0.5%~1%の質量の濃縮果汁12を加えたアイスボール1よりも溶けるスピードを速くしてもよい。また、果実ピューレ10a、または果汁10bの質量に対し、1%以上の質量の濃縮果汁12を加えて、0.5%~1%の質量の濃縮果汁12を加えたアイスボール1よりも溶けるスピードが遅いアイスボール1を製造してもよい。
さらに、アイスボール1に使用する果実ピューレ10aまたは果汁10bの果実を変えることで、アイスボール1の溶けるスピードを調節することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…アイスボール
10a…果実ピューレ
10b…果汁
12…濃縮果汁
図1
図2
図3
図4
図5