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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】リブレット構造及び物体
(51)【国際特許分類】
   F15D 1/12 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
F15D1/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020175216
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066714
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】栗田 充
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】飯島 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】古賀 星吾
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155882(JP,A)
【文献】特表2005-522644(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第2899945(FR,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0081021(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104613056(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の波形のリブレットを有するリブレット構造であって、
各前記リブレットは、稜線と当該波形のリブレットの当該波の進行方向である第1の方向とがなす角度が大きいほど低い山高さとされ、前記角度が大きいほど前記第1の方向と直交する方向の山裾間の幅が小さくされ、前記第1の方向と直交する方向の断面の形状のうち山裾での当該リブレットの山の斜面と前記表面とがなす角度又は山裾での曲率がいずれの位置でも同じである
リブレット構造。
【請求項2】
請求項1に記載のリブレット構造であって、
前記波形のリブレットの当該波の進行方向である第1の方向は、前記表面に流れる流体の流れの方向である
リブレット構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリブレット構造であって、
各前記リブレットは、山頂が鋭角的である
リブレット構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のリブレット構造であって、
各前記リブレットの前記稜線は、正弦波状であり、
各前記リブレットの高さは、正弦波状に変化する
リブレット構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載のリブレット構造を表面に有する物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、船舶や流体機械などの分野に適用されるリブレット構造及びそのようなリブレット構造を表面に有する物体に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の分野では、機体の表面にリブレットを形成し、空気抵抗を低減して燃費を向上させる技術が試みられている。また、リブレットを使って流体の抵抗を低減する技術は、航空機以外の様々な分野でも検討されている。
【0003】
本発明者等は、特許文献1において、従来直線形状であったリブレットを波形にすると共にリブレットの高さも波形に変化させるように構成し、抵抗低減性能を高めた技術を提案した(特許文献1参照)。特許文献2には、本発明に関連する技術が開示されている。
【0004】
従来の直線形リブレットよりも高い抵抗低減性能を目標にした、波形リブレットが研究されている。
【0005】
リブレットは、気流の速い山頂部は大きな表面摩擦抵抗を持つ。一方、気流の遅い谷部は、小さな表面摩擦抵抗を持つ。結果として、トータルの表面摩擦抵抗が低減する。直線リブレットでは表面摩擦抵抗のみであるが、波形リブレットは圧力抵抗と表面摩擦抵抗を合わせたものが全抵抗となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-155882号公報
【文献】特開2018-27510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
波形リブレットは、稜線と流れの方向とがなす角度が大きい部分で流れをブロックするため、余計な圧力抵抗が生じる。そこで、圧力抵抗を低減させるために山頂の高さを変えたリブレットが考案された。しかし、稜線と流れの方向とがなす角度に合わせて高さを波形に変化させたリブレットの製作は困難であった。
【0008】
本発明者等は、山頂を削ることで山の高さを変えた場合には山頂に平坦な面積が増加するため、表面摩擦抵抗が増大し、リブレットの抵抗低減性能が悪化するという新たな知見を得た。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、抵抗低減性能を高く、製作が容易なリブレット構造及びそのような構造を表面に有する物体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るリブレット構造は、表面に複数の波形のリブレットを有するリブレット構造であって、各前記リブレットは、稜線と当該波形のリブレットの当該波の進行方向である第1の方向とがなす角度が大きいほど低い山高さとされ、前記角度が大きいほど前記第1の方向と直交する方向の山裾間の幅が小さくされ、前記第1の方向と直交する方向の断面の形状のうち山裾での当該リブレットの山の斜面と前記表面とがなす角度又は山裾での曲率がいずれの位置でも同じである。ここで、波形のリブレットの当該波の進行方向である第1の方向は、前記表面に流れる流体の流れの方向である。
【0011】
本発明では、波形のリブレットが稜線と流体の流れの方向とがなす角度が大きいほど低い山高さとされるので余計な圧力抵抗の発生が抑えられ、抵抗低減性能を高くすることができる。しかも、前記角度が大きいほど流体の流れの方向と直交する方向の山裾間の幅が小さくされ、流体の流れの方向と直交する方向の断面の形状のうち山裾での当該山の斜面と表面とがなす角度又は山裾での曲率がいずれの位置でも同じであるので、バイトなどを移動させるだけでリブレットの先端を鋭角的に形成できる凹凸を転写用ローラなどの表面に形成することができ、このローラによって形成されたリブレットは従来のようなリブレットの先端を削る作業は不要となるので、製作が容易となる。
【0012】
本発明に係るリブレット構造はリブレットの山頂はどの位置でも鋭角的である。これにより、表面摩擦抵抗をより低くでき、抵抗低減性能を更に高めることができる。
【0013】
本発明の一形態に係るリブレット構造では、各前記リブレットの断面は、山が三角形、台形、円、又は楕円状の形状である。
【0014】
本発明の一形態に係るリブレット構造では、各前記リブレットの断面は、山が円又は楕円を切断した形状である。
【0015】
本発明の一形態に係るリブレット構造では、各前記リブレットの前記稜線は、正弦波状であり、各前記リブレットの高さは、正弦波状に変化する。
【0016】
本発明に係る航空機や船舶などの物体は、上記のリブレット構造を表面に有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、抵抗低減性能を高く、製作が容易なリブレット構造及びそのような構造を表面に有する物体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るリブレット構造を示す斜視図である。
図2図1に示したリブレット構造の一部を拡大して示す平面図である。
図3図1に示したリブレット構造の一部を拡大して示す側面図である。
図4図2のA-A断面とB-B断面を示す図である。
図5】リブレット構造の実施例に係るリブレットの稜線、山裾線及び山裾間の中心線をx-y-z軸を使って表した図である。
図6図5におけるリブレットの稜線、山裾線及び山裾間の中心線をx-z座標を使って表し、リブレットの高さ(稜線)をx-y座標を使って表したグラフである。
図7】リブレット構造の抵抗低減性能を従来のリブレット構造の抵抗低減性能と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るリブレット構造を示す斜視図である。図2はそのリブレット構造の一部を拡大して示す平面図、図3はそのリブレット構造の一部を拡大して示す側面図である。
【0021】
リブレット構造1は、表面2に複数の周期的に変化する波形のリブレット3を有する。つまり、各リブレット3は、表面2の上(上面)から見て、周期的に変化する波形に形成されている。ここで、周期的に変化する波形とは、典型的には、正弦波状である。
【0022】
リブレット構造1は、そのリブレット3の稜線4等が流体に触れるように物体、例えば飛行機や船舶、プラントの配管、パイプライン等に設けられる。空気、水等の流体の中を進行する航空機や船舶等では、物体の外側の表面にリブレット3が外側に向くように設けられる。液体やガスが内部に流れるプラントの配管やパイプライン等では、物体の内側の表面にリブレット3が内側を向くように設けられる。いずれの場合、各リブレット3は、各リブレット3の周期的に変化する波形、典型的には正弦波状波形の変位の中心線の方向と流体の流れ方向とが一致するように物体の表面に設けられる。
リブレット構造1は、典型的には、表面2に多数のリブレット3が形成されたシートを上記物体の表面に貼って構成される。これに関連する技術は、特許文献2に開示されている。勿論、物体そのものの表面に、リブレット3が形成されていてもよいし、他の形態であってもよい。
【0023】
複数のリブレット3は、当該波形のリブレット3の当該波の進行方向である第1の方向に形成されている。典型的には、複数のリブレット3は、表面2に流れる流体の流れの方向xに沿って形成されている。複数のリブレット3は、各リブレット3の周期的に変化する波形、典型的には正弦波状波形の変位の中心線の方向に形成されていてもよい。
隣接するリブレット3は、x方向とは直交する方向zに所定の間隔、例えば物体が航空機の場合には、100μm程度の間隔をおいて平行になるように形成されている。
以下では1つのリブレット3について説明するが、各リブレット3は同一の形状である。
【0024】
リブレット3は、典型的には、断面の形状が三角形である。例えば、リブレット3は、流体の流れの方向xと直交するy-z断面が山頂角45°前後の二等辺三角形である。表面摩擦抵抗低減性能を高めるためには山頂角は小さいほど好ましいが、例えば既に示した特許文献2の技術を採用したときには、リブレット3は塗料により構成され、その場合には製作面とのトレードオフで45°を選択することが好ましかった。勿論、本発明は、この山頂角には限定されるものではない。山頂の先端は、鋭角でなく多少のなまり、つまり拡大してみると先端が平面を持つ台形や円、又は楕円といった曲面等に変形していてもそれは本発明の技術的範囲に含まれる。本明細書においてはリブレット3の山頂の連続線を稜線4とする。
【0025】
リブレット3は、稜線4と流体の流れの方向xとがなす角度βが大きいほど低い高さHとされている。つまり、リブレット3の高さHは、一定ではなく、稜線4と流体の流れの方向xとがなす角度βが最も大きい位置で最も低く、稜線4と流体の流れの方向xとがなす角度βが0の位置で最も高く、これらの間の位置では徐々に連続的に変化した高さとなる。つまり、リブレット3は、高さHも周期的に波状に変化する。
【0026】
リブレット3は、稜線4と流体の流れの方向xとがなす角度βが大きいほど流体の流れの方向xと直交する方向zの山裾5-6間の幅Wが小さい。つまり、上記の幅Wは、一定ではなく、稜線4と流体の流れの方向xとがなす角度βが最も大きい位置、すなわちリブレット3の高さHが最も低い位置で最も狭く、稜線4と流体の流れの方向xとがなす角度βが0の位置、すなわちリブレット3の高さHが最も高い位置で最も広く、これらの間の位置では徐々に連続的に変化した幅となる。なお、リブレット3の山裾5、6の連続線を山裾線7、8とする。
【0027】
図4図2のA-A断面とB-B断面を示す図である。
本実施形態に係るリブレット3は、流体の流れの方向xと直交する方向の断面の形状がいずれの位置でも相似形である。また、本実施形態に係るリブレット構造1は、すべてのリブレット3は同じ形状である。従って、すべてのリブレット3は、流体の流れの方向xと直交する方向の断面の形状が相似形である。別言すると、隣接するリブレット3は、流体の流れの方向xと直交する方向の断面の形状がいずれの位置でも相似形である。
本発明者等は、特許文献1においてリブレットを波形形状にすると共にリブレットの高さHも波状に変化させるように構成し、抵抗低減性能を高めた技術を提案した。そのようなリブレットを製造する方法は、典型的には、特許文献2に記載されている。この技術は、リブレット構造1の表面形状が転写された水溶性樹脂にリブレット構造1を構成する材料を塗ったシートを作り、このシートを航空機の機体等の物体の表面に張り、その表面の水溶性樹脂を除去するものである。リブレット構造1の表面形状が転写された水溶性樹脂は、その一方の表面にリブレット構造1の表面形状に応じた凹凸を有するローラにより転写される。
【0028】
本実施形態に係るリブレット3は、稜線4と流体の流れの方向xとがなす角度βが大きいほど流体の流れの方向xと直交する方向の山裾5-6間の幅Wが小さくなるように構成され、流体の流れの方向と直交する方向zの断面の形状のうち山裾5(6)での当該山の斜面5a(6a)と表面2とがなす角度αがいずれの位置でも同じである。また、本実施形態に係るリブレット構造1では、すべてのリブレット3は同じ形状であるので、すべてのリブレット3は、稜線4と流体の流れの方向xとがなす角度βが大きいほど流体の流れの方向xと直交する方向の山裾5-6間の幅Wが小さくなるように構成され、流体の流れの方向と直交する方向zの断面の形状のうち山裾5(6)での当該山の斜面5a(6a)と表面2とがなす角度αが同じである。別言すると、隣接するリブレット3は、稜線4と流体の流れの方向xとがなす角度βが大きいほど流体の流れの方向xと直交する方向の山裾5-6間の幅Wが小さくなるように構成され、流体の流れの方向と直交する方向zの断面の形状のうち山裾5(6)での当該山の斜面5a(6a)と表面2とがなす角度αがいずれの対向位置でも同じである。
従って、バイトを移動させるだけでリブレット3の先端を鋭角的に形成できる凹凸をローラの表面に形成することができ、このローラを使って転写されたリブレット3は、従来のようなリブレットの先端を削る作業は不要となる。よって、本実施形態に係るリブレット構造1は、製作が容易となるばかりか、リブレット3の先端がどの位置でも鋭角的であるので、表面摩擦抵抗を低くでき、抵抗低減性能を高めることができる。
なお、ローラの表面の凹凸はバイトではなくエンドミルにより形成することもできる。この場合もエンドミルを移動させるだけでリブレット3の先端を鋭角的に形成できる凹凸をローラの表面に形成することができる。この場合、リブレット3は、流体の流れの方向と直交する方向zの断面の形状のうち山裾5(6)での当該山の斜面5a(6a)と表面2との間は曲面となるが、これらの曲面の曲率はいずれの位置でも同じにすればよい。
【0029】
<リブレット構造の実施例>
図5はリブレット構造1の実施例に係るリブレット3の稜線4、山裾線7、8及び山裾5-6間の中心線9をx-y-z軸を使って表した図である。図6はそのリブレット3の山裾線7、8及び山裾5-6間の中心線9をx-z座標を使って表し、リブレットの高さ(稜線)をx-y座標を使って表したグラフである。なお、x方向は流体の流れの方向、yはリブレット3の高さの方向である。
【0030】
リブレットの山が三角形の場合、1つのリブレット3に隣接するリブレット3との間の谷の中央線をza、山裾5-6間の中心線9をzc、リブレット3の山の高さH、一方の山裾線7をzb1、他方の山裾線8をzb2としたとき、それぞれ以下の関数で表される曲線とした。
【0031】
za=A・sin(2πx/λ
zc=za+s/2=A・sin(2πx/λ)+s/2
H=(h-a)-a・cos(2πx/λ
λ:リブレット3を表面2の上(上面)から見た波形の波長
λ:リブレット3の高さの波長 λ=0.5*λ
A:谷の中央線のx-z平面の振幅
s:リブレット間の間隔
h:山の最高の高さ
a:山の高さの振幅
zb1=zc-Htanθ
=(A・sin(2πx/λ)+s/2)
-((h-a)-a・cos(2πx/λ))tanθ
zb2=zc+Htanθ
=(A・sin(2πx/λ)+s/2)
+((h-a)-a・cos(2πx/λ))tanθ
本実施例に係るリブレット構造1の抵抗低減性能を確認するために本発明者等が行った解析結果を図7に示す。図7は風洞試験で得られた各種リブレットの抵抗低減率を示している。なお、いずれのリブレットも頂角は45°である。ここでの抵抗低減率(DRtotal)は、リブレットの山間隔(上記の間隔sに相当)の壁指標s+に対するものである。
【0032】
s+ = s(uτ/ν)
ここで、s:リブレット間の間隔(m)
uτ:摩擦速度(m/s)
ν:動粘度(m/s)
抵抗低減率(DRtotal)={(リブレット面での全抵抗)-(滑面での全抵抗)}/(滑面での全抵抗)
である。滑面とはリブレットがない平坦な面で、滑面での全抵抗は表面摩擦抵抗である。
【0033】
図7に示したように、本発明に係る波形リブレットと山頂を削って山高さを調整した波形リブレットとを比較すると、気流条件Reτによって差はあるが、本発明に係る波形リブレットの方が、抵抗低減性能がより良いことがわかる。最大で約8%抵抗低減できることがわかる。
【0034】
図7から、最も抵抗低減率が小さくなるのはs+=17付近であることがわかる。加えて、s+=17付近以外であっても本実施例に係る波形のリブレットは従来の波形リブレットと比較して抵抗低減効果が改善することがわかる。例えば航空機にリブレットを実装する際には、必ずしもリブレットの最適条件付近で飛行できるとは限らないため、最適条件以外のs+の値に対するロバストネスは重要である。つまり、本実施例に係る波形のリブレットによって、従来の波形リブレットよりも抵抗低減効果のロバストネスが改善されたといえる。
【0035】
<その他>
本発明は上記の実施形態には限定されず、その技術思想の範囲内で様々な変形や応用が可能である。その実施の範囲も本発明の技術的範囲に包含される。
上記の実施形態においては、リブレット3の断面は三角形の形状であり、流体の流れの方向xと直交する方向の断面の形状がいずれの位置でも相似形であったが、流体の流れの方向と直交する方向の断面の形状のうち山頂付近の形状がいずれの位置でも相似形であれば断面形状はその形状に限定されない。山頂付近とは、敢えて定義するならば、リブレットの最低高さ分山頂より低い領域をいう。
【0036】
上記の実施形態においては、リブレット3の山頂の頂角は45°程度であったが、勿論これよりも小さくして抵抗低減効果を高めてもよい。リブレット3の山頂の頂角は45°程度よりも大きくして強度を高めるようにしてもよい。
【0037】
上記の実施形態における波形とは、典型的には正弦波状であるが、正弦波状以外の曲面がある程度連続するようであればそれも含む意味である。
【0038】
本発明では、リブレット構造を構成するリブレットのすべてが本発明に係る波形のリブレットであってもよいが、一部の領域が波形リブレットあってもよい。
【0039】
本発明は様々な技術分野に適用することが可能であり、例えば本発明をプラントの配管やパイプラインなどに適用することで流体輸送効率等を改善することが可能である。本発明を流体機械の分野に適用することで、表面摩擦抵抗を低減することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 :リブレット構造
2 :表面
3 :リブレット
4 :稜線
5 :山裾
6 :山裾
H :リブレットの高さ
θ :リブレットの山頂の半頂角
α :山裾での山の斜面と表面とがなす角度
β :稜線と流体の流れの方向
W :山裾間の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7