(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】天井枠吊り下げ構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/20 20060101AFI20240530BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
E04B9/20 C
E04B9/18 M
(21)【出願番号】P 2021001868
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020075717
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594062260
【氏名又は名称】株式会社佐藤型鋼製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公章
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100069(JP,A)
【文献】特開平04-221150(JP,A)
【文献】特開昭55-072551(JP,A)
【文献】特開2017-040036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/20
E04B 9/18
E04B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井枠吊り下げ材を介して天井枠を吊り下げる天井下地側の水平補強材を形鋼又は角形鋼管により構成すると共に、上記天井枠吊り下げ材を形鋼又は角形鋼管により構成し、上記天井枠吊り下げ材の上部を天井枠吊り下げ材取り付け金具を介して上記水平補強材に鉛直状態で取り付ける一方、上記天井枠吊り下げ材の下部を天井枠取り付け位置調節機能を備えた天井枠取り付け手段を介して上記天井枠に取り付ける天井枠吊り下げ構造であって、
上記天井枠吊り下げ材取り付け金具は、上記水平補強材に上方側から嵌合して当該天井枠吊り下げ材取り付け金具を上記水平補強材に係止するフック構造の第1の嵌合部と、
該第1の嵌合部の上記水平補強材の側面に当接する縦壁部
の両側に天井枠吊り下げ材を挟む一対の対向壁を設けて構成され、上記天井枠吊り下げ材の上部をスライド可能に嵌合する
断面コの字形の第2の嵌合部
を備え、
上記第2の嵌合部には、上記嵌合される天井枠吊り下げ材との間で上記天井枠吊り下げ材の取り付け位置を調節する天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を備えた天井枠吊り下げ材連結手段が設けられている
一方、
同第2の嵌合部の上記一対の対向壁の開放端には、上記第1の嵌合部の上記水平補強材の側面に当接する縦壁部を上記水平補強材の側面に対して螺合する螺合位置を避けて、当該嵌合部内に嵌合された上記天井枠吊り下げ材の当該嵌合部外への移動を阻止する係止部が設けられていることを特徴とする天井枠吊り下げ構造。
【請求項2】
天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を備えた天井枠吊り下げ材連結手段は、天井枠吊り下げ材取り付け金具における第2の嵌合部の天井枠吊り下げ材を挟む一対の対向壁に設けられた上下方向に伸びる所定の長さのルーズ穴と、上記天井枠吊り下げ材に設けられたボルト挿通穴と、上記ルーズ穴およびボルト挿通穴を介して上記第2の嵌合部と上記天井枠吊り下げ材を連結固定する連結ボルトとからなることを特徴とする請求項1記載の天井枠吊り下げ構造。
【請求項3】
第1、第2の嵌合部を形成した天井枠吊り下げ材取り付け金具のフック構造の取り付け金具本体部分には、幅方向の中間部に位置して上記第1、第2の嵌合部の全体に亘って帯状に伸びる補強リブが設けられていることを特徴とする請求項
1又は2記載の天井枠吊り下げ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建物の構造体に対して天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ構造に関し、さらに詳しくは、建物の構造体から吊り下げられた所定の天井下地の天井枠取り付け用の水平材に対して天井枠吊り下げ材を介して天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の構造体(H形鋼など)から吊り下げられた所定の天井下地(鉄骨ぶどう棚など)における天井枠取り付け用の水平材(水平補強材)に対して、天井枠吊り下げ材(鉛直材)を介して在来型の天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ構造は良く知られている。
【0003】
在来型の天井枠は、たとえば溝形鋼よりなる複数本の野縁と該野縁が取り付けられる溝形鋼よりなる複数本の野縁受けとからなり、それら野縁および野縁受けを格子状に組み合わせ、同野縁および野縁受けの上下に交叉する部分を所定の金具で相互に連結して一体に構成されている。
【0004】
一方、このような天井枠が吊り下げられる天井下地側の複数本の水平材は、たとえば溝形鋼等の形鋼により形成されていて、建物の構造体であるH形鋼などから天井の高さ(深さ)に応じた複数本の吊り下げ部材によって所定の高さ位置に吊り下げられて支持されている。
【0005】
そして、上記天井枠は、その吊り下げ部材として複数本の吊りボルトを用い、該吊りボルトを介して上記複数本の水平材に吊り下げられている。
【0006】
複数本の吊りボルトは各々所定の長さのロッド部材よりなり、その上端に水平材に係合する鉤状のフック部材、その下端に野縁受けの下部に係合するU状のハンガー部材が設けられている。そして、それらを利用して、上記野縁受けに当該吊りボルトの下端を、また上記水平材に当該吊りボルトの上端をそれぞれ係合することによって吊り下げるようにしていた(例えば、特許文献1の構成を参照)。
【0007】
しかし、このようなロッド軸構造の吊りボルトおよびフック構造およびハンガー構造の取り付け金具を用いて水平材に天井枠を吊り下げる吊り下げ構造の場合、まず吊りボルト自体の強度、水平材と吊りボルトとの連結強度、吊りボルトと野縁受けとの連結強度が低く、天井枠吊り下げ時の耐震性に欠ける欠点があった。
【0008】
地震発生時の加振力には、縦揺れによる上下鉛直方向の振動、横揺れによる水平方向の振動があり、実際には、それらの振動がさらに複雑に組み合わされたものとなる。したがって、上記吊りボルトおよび上下の取り付け金具には、鉛直方向の荷重に加えて、水平方向の荷重も加わることになり、それら両方向の荷重に対して十分な耐震力があることが要求される。
【0009】
しかるに、ロッド軸構造単体の吊り下げボルトやフック構造およびハンガー構造の取り付け金具では、そのような要求に応えることはできず、吊りボルト部分が曲がり、またフック部、ハンガー部の係合が外れるなどの恐れがある。
【0010】
そのため、従来の構成では、上記横揺れに対応するためのブレース材の設置、フック部、ハンガー部の固定対策などが必要とされていた。
【0011】
本願発明者は、このような課題を解決するために、上記天井枠吊り下げ材を所定の断面形状、所定の外径寸法の形鋼又は角形鋼管により構成することによって断面積を有効に拡大し、鉛直方向の圧縮・引張荷重に対する強度と軸直交方向の剛性、水平方向の強度をそれぞれ向上させるとともに、該所定の断面形状、所定の外径寸法の形鋼又は角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材の上端側を所定の取り付け金具を介して建物側天井枠取り付け用の水平材(水平補強材)に、また下端側を所定の連結金具を介して天井枠にそれぞれ連結することによって、天井枠吊り下げ部の強度、耐震性を大きく向上させた天井枠吊り下げ構造を開発し、すでに出願している(例えば特許文献2の構成を参照)。
【0012】
次に、その中の一つの実施形態の構成の概略について、説明する。
【0013】
図38~
図42は、同出願の発明の実施の形態12に係る天井枠の吊り下げ構造(天井下地側の水平補強材に対する取り付け構造)を示している。
【0014】
(基本となる天井下地構造)
この実施の形態の場合、例えば
図38~
図42に示すように、野縁および野縁受けよりなる格子状の天井枠が吊り下げられる建物上階床下面側の構造体として、例えば水平な左右一対の取り付け縁部10a,10aを備えたH形鋼10,10・・が採用されており、該H形鋼10,10・・の上記取り付け縁部10a,10aに対して、所定の外径寸法の角形鋼管よりなる複数本の鉛直材(補強材吊り下げ材)20,20・・を介して所定の外形寸法のリップ溝形鋼よりなるXY方向の複数本の水平補強材(水平方向の補強材)3,3・・、3,3・・を吊り下げ支持することによって、天井枠取り付け用の基本となるぶどう棚構造の天井下地を構成し、この基本となる天井下地の上記XY方向複数本の水平補強材3,3・・、3,3・・に対して、例えば
図41に示すように、所定の外径寸法の角形鋼管よりなる複数本の天井枠吊り下げ材4,4・・を介して野縁および野縁受けよりなる格子状の天井枠(図示省略)が耐震性良く、安定した状態に吊り下げられるようになっている。
【0015】
上記天井枠取り付け用の水平補強材3,3・・、3,3・・を吊り下げ支持している基本となる天井下地部分の鉛直材(補強材吊り下げ材)20,20・・の長さは、例えば当該建物の天井の高さ(深さ)に応じた寸法に形成され、それらの間には所定の外形寸法の角形鋼管よりなるブレース材29,29・・が対角線方向に挿入連結され、上記XY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・の横揺れに対する耐震強度を高いものに構成している。
【0016】
このような耐震強度向上を目的とする鉛直材20,20・・用の角形鋼管としては、種々の構造のものが考えられるが、この実施の形態の場合には、例えば
図39に示すように、所定の板厚の金属板を断面方形又は長方形状に曲げ加工し、その両側縁20a,20b部分を角部の一側で相互にS字形に抱き合わす形で連結し、一方側の側縁の隣接部内側に折り曲げリブ20cを設けることにより抱き合わせ部(連結部)Aを固定して、角筒状に一体化したカシメ構造のものが採用されている。ブレース材29用の角形鋼管にも同様のものが採用されている。
【0017】
(鉛直材20,20・・上端のH形鋼10,10・・の取り付け縁部10a、10a・・に対する取り付け構造について)
上記鉛直材20,20・・は、その上端側を上記H形鋼10,10・・の取り付け縁部10a、10a・・に対して、
図40に示すような鉛直材取り付け金具21および補助金具22を用いて強固に取り付けられている。
【0018】
この鉛直材取り付け金具21は、上記断面方形の角形鋼管よりなる鉛直材20上端部の断面積および断面形状に対応して安定した着座状態で当接される底壁面(衝合座面)を有した方形箱形(前面側の全体が水平方向前方にU状に開口した直方体形状)の取り付け金具本体と、該取り付け金具本体の前面側(上記H形鋼10の取り付け縁部10a側)に開口された前後方向に所定の深さの断面コ字形の嵌合口21a,21aと、該嵌合口21a,21aの前後方向中央部の上壁面側に位置して上方側から下方に設けられ、取り付け時において上方側から下方側に向けて挿入螺合され、上記取り付け金具本体を上記H形鋼10の取り付け縁部10aに対して上方から固定する締結ボルト24とから構成されている。
【0019】
上記嵌合口21a,21aは、上記取り付け金具本体の前面側開口部左右の両側壁を後方側に所定の深さ切り欠くことによって形成されている。この実施の形態の場合、該嵌合口21a,21aは、取り付け金具本体の側面から見た時の略前後方向前半分部分に設けられている。
【0020】
一方、底壁部分は略全体が上記鉛直材20の上端に当接しており、同当接状態において、底部左右両側に円弧状の連結片を設けた連結ブラケット21bを介してボルト27により、鉛直材20の上端部を強固に連結一体化している。
【0021】
このような構成の場合、上記鉛直材20が断面方形の角形鋼管よりなっているとともに、上記鉛直材取り付け金具21も方形箱形の形状に構成されており、それらが上下1本の角形材構造に一体に連結されている。そして、その上端側鉛直材取り付け金具21を介してH形鋼10の取り付け縁部10aに対して強固に取り付けられている。
【0022】
すなわち、鉛直材20を吊り下げるに際しては、上記方形箱形の鉛直材取り付け金具本体の上記断面コ字形の嵌合口21a,21aを、H形鋼10の手前側の取り付け縁部10aに対して嵌合し、上記締結ボルト24を直交方向下方に挿入螺合し、同締結ボルト24の先端でH形鋼10の取り付け縁部10aの上面側を押さえつけ、同締結ボルト24の先端を介し、上記嵌合口21a,21aの下部側上面とH形鋼10の取り付け縁部10aの下面とを接合して相互に締結一体化することにより、広い方形面積で確実に固定している。
【0023】
このように、鉛直材取り付け金具21の本体が、前後および左右に所定の幅を有する箱形の構成となっていて、その両側に所定の奥行きを有するコの字形の嵌合口21a,21aを有してH形鋼10の取り付け縁部10aに嵌合固定(接合固定)されるようになっていると、従来のフック構造、ハンガー構造での係合、ロッド軸での吊り下げ構造の場合に比較して、取り付け部の接合面が遥かに広くなり、鉛直材20の軸直交方向への変形剛性が高くなり、また垂直荷重に対する支持力も遥かに大きくなる。
【0024】
しかも、この実施の形態の場合、以上の構成に加えて、さらに上記対応するH形鋼10の他方側取り付け縁部10aにも、略同様の構造の補助金具22が設けられている。
【0025】
この補助金具22も、
図40に示すように、方形箱形(前面側の全体が開口した直方体形状)の補助金具本体と、該方形箱形の補助金具本体の前面側(上記H形鋼10の取り付け縁部10a側)に開口された前後方向に所定の深さの断面コ字形の嵌合口と、該断面コ字形の嵌合口の前後方向中央部の上壁面に位置して上方側から下方に設けられ、取り付け時において上方側から下方側に向けて挿入螺合され、上記方形箱形の補助金具本体を上記H形鋼10の他方側の取り付け縁部10aに対して固定する締結ボルトとから構成されており、上記断面コの字型の嵌合口は、上記補助金具本体の前面側開口部左右の両側壁を後方側に所定の深さ切り欠くことによって形成されている。
【0026】
そして、上記鉛直材取り付け金具21と上記補助金具22とは、それぞれの嵌合口を同一水平面方向に対向させた状態において、相互にボルト頭部25,25及びナット部25a,25aを備えた左右2本の連結ロッド23,23により引張状態で連結されるようになっている。
【0027】
したがって、
図40の連結固定状態では、
図38の水平補強材3,3・・、3,3・・(および天井枠)を吊り下げる鉛直材20,20・・上端の鉛直材取り付け金具21,21・・が上記補助金具22,22によって確実に嵌合方向に引張固定されるようになり、鉛直材取り付け金具21に非嵌合方向への外力が作用したとしても、外れるようなことが無くなり、さらにH形鋼取り付け縁部10a、10a両端側の2か所で逆方向に嵌合固定されるようになることから、嵌合状態自体も一層強固になる。その結果、上記複数本の鉛直材20、20・・自体の横揺れが生じにくくなり、天井枠が吊り下げられる天井下地側(水平補強材3,3・・吊り下げ側)の耐震性が大きく向上する。
【0028】
(鉛直材20,20・・下端の水平補強材3,3・・、3,3・・に対する取り付け構造について)
この実施の形態の場合、上記のように複数本の鉛直材20,20・・の上端側は、そのいずれにあっても各々鉛直材取り付け金具21および補助金具22を用いてH形鋼10の取り付け縁部10a、10aに取り付けられている。しかし、他方、下端側は、X方向の水平補強材3,3・・の所定の間隔ごとに(例えば鉛直材20,20・・の2本置きに)、異なる取り付け構造18a、18b,18cが採用されている(詳細については、特許文献2の記載を参照)。
【0029】
また、相互に交叉する上記XY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・は、上記鉛直材20,20・・に対する取り付け部以外の交叉部においても、必要に応じて締結金具17,17・・を用いて相互に連結固定されている(詳細については、特許文献2の記載を参照)。
【0030】
これらの結果、天井枠が取り付けられるXY方向の各水平補強材3,3・・、3,3・・が、建物側のH形鋼10,10・・に対して十分に耐震性高く支持されることになる。
【0031】
(XY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・に対する天井枠の取り付け構造について)
特許文献2の場合、上記のようにして耐震性高く支持されたXY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・の内、一例として
図41に示すように、X方向の水平補強材3,3・・を選択し、かつ天井枠吊り下げ材4,4・・として、上述した
図39の構造の角形鋼管を採用して上述した天井枠が取り付けられるようになっている。
【0032】
図41は、リップ溝形鋼よりなる水平補強材3への天井枠の吊り下げ、すなわち水平補強材3への天井枠吊り下げ材4上端の取り付け構造を示している。この水平補強材3への天井枠吊り下げ材4上端の取り付けに際しては、
図42に示す天井枠吊り下げ材取り付け金具(以下、単に取り付け金具という)11が使用されている(特許文献2の
図44~
図46に示される実施の形態12の構成)。
【0033】
この取り付け金具11は、
図42に示すように、鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側上部に嵌合する筒体構造の第1の嵌合部111と、同鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側下部に嵌合する同じく筒体構造の第2の嵌合部112と、これら第1、第2の嵌合部111、112の中間に位置して、上記X方向の水平補強材3に嵌合する半筒体構造(ハット形)の第3の嵌合部113とからなっている。これら各嵌合部111,112,113は、それぞれ所定の厚さ、所定の幅、所定の長さの強度の高い金属板を折り曲げ加工することによって、それぞれ断面方形の筒状体構造及び断面ハット形の半筒状体構造に形成し、それらを
図42のように溶接により接合一体化して単一の構造の取り付け金具に構成している。
【0034】
第1、第2の嵌合部111、112は、天井枠吊り下げ材4の断面形状、外径寸法に対応した断面方形C形構造の短筒体となっており、開口部(突き合わせ部)の左右両側には突き合わせ用のリブ壁(折り曲げ壁)111b,111b、112b,112bが設けられている。
【0035】
また、その開口部側(突き合わせ部側)を除く3つの壁面部分中央には、ドリルネジ(又はタッピングネジ)16,16・・を挿通する挿通孔111c,111c,111cが設けられている。そして、それら第1、第2の嵌合部111、112には、天井枠吊り下げ材4の上端側がスライド可能な状態で嵌挿され、上下方向の高さ調節(レべル合わせ)を行った後にドリルネジ(又はタッピングネジ)16,16・・を挿通螺合して、
図41のように締結固定される。
【0036】
第3の嵌合部113は、取り付けるべき水平補強材3の断面形状、外径寸法に対応した断面ハット形構造の半筒体となっており、その開口部側の上下に位置して上下両方向に垂直に折り曲げられた第1、第2のフランジ部113d、113eを有し、同第1、第2のフランジ部113d、113e部分を上記第1、第2の嵌合部111、112の突き合わせ面側左右のリブ壁111b,111b、112b,112b部分に溶接により接合して一体に保持している。そして、同第1、第2のフランジ部113d、113eを除く本体側の上下水平壁113a,113b部分中央には、ドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16を挿通する挿通孔113c,113cが上下方向に対応して設けられている。また、背面側本体壁部分(上下垂直壁部分)には、上下に所定の間隔をおいて、2個のドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16を挿通する挿通孔113c,113cが設けられている。
【0037】
そして、同第3の嵌合部113には、上記取り付けるべき水平補強材3が水平方向(X方向に)にスライド可能な状態で嵌挿され、同水平方向(X方向)の位置合わせを行った後にドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16を挿通螺合して締結固定される。
【0038】
この結果、同構成では、角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4の上端側が、リップ溝形鋼よりなる上記X方向の水平補強材3の全周に対して、上記構成の取り付け金具11を介して、
図41のように、確実、かつ強固に取り付けられることになり、水平方向にも上下方向にも移動しにくい耐震性の高い連結構造が実現される。
【0039】
他方、このようにしてX方向の補強材3に対して強固に取り付けられた天井枠吊り下げ材4の下端部に対して、さらに天井枠側の野縁受けが取り付けられて天井枠が吊り下げられる。この天井枠吊り下げ材4の下端部に対する天井枠側野縁受けの取り付けは、特許文献2の公報図面の
図17~
図22に示されるように、所定の連結金具を用いてなされる。そして、この天井枠吊り下げ材4,4・・の下端を野縁受けに連結する連結金具には、取り付けられる天井枠の高さを調節する天井枠取付位置調節機構が設けられており、上記のように取り付け金具11を用いて天井枠吊り下げ材4,4・・の上端を水平補強材3に取り付けた後、最終的に天井枠取付位置調節機構により撓みやすい天井枠の取付位置(高さ)を正確に微調整したうえで連結固定するようになっている。
【0040】
すなわち、天井枠吊り下げ材4,4・・の下端を天井枠に連結する連結金具は、天井枠吊り下げ材4,4・・の下端に位置決め固定される第1の金具と、該第1の金具を介して天井枠吊り下げ材4,4・・の下端に上下方向にスライド可能に嵌合される第2の金具とを備え、第2の金具は、第1の金具に設けられた高さ位置調節用の長穴を介して上下方向にスライド可能に保持された連結ボルトを介して第1の金具の任意の高さ位置に連結され、第1の金具の任意の高さ位置において天井枠を連結支持するようになっている。
【0041】
このような構成によれば、まず第1の金具を天井枠吊り下げ材の下端部に位置決めした上で固定し、該第1の金具を介して天井枠吊り下げ材4,4・・に対して天上枠取り付け用の第2の金具を嵌合すると、上下方向に所定の長さを有する長穴を介して上下方向にスライド可能に支持された連結ボルトを介して天井枠取り付け用の第2の金具が第1の金具に対して上下方向にスライド可能な状態で連結可能となる。そこで、同状態において、天井枠取り付け用の第2の金具の高さ調整を行い、正確な取り付け位置を設定する。
【0042】
そして、その上で、天井枠取り付け用の第2の金具の天井枠嵌合部に天井枠(その野縁受け部)を嵌合すれば、最終的に天井枠を適正な位置に取り付けることができる。
【0043】
この場合の天井枠吊り下げ材に対する天井枠取り付け位置の高さ調節スパンは、連結ボルトを支持している第1の金具の長穴の上下方向の長さによって決まる。連結ボルトは、高さ調節時においては天井枠取り付け用の第2の金具の第1の金具に対する仮止め機能を果たすが、高さ調節完了時においては天井枠取り付け用の第2の金具を第1の金具を介して天井枠吊り下げ材に固定する機能を果たす。
【0044】
なお、以上の
図38~
図42中の符号は、以下に説明する本願発明の実施の形態における符号と重複しないように一部変更して使用しており、先の出願の図面中における符号とは必ずしも一致していない。また、同様の理由で、特許文献2の公報図面の
図17~
図22に示される連結金具の構成(第1、第2の金具等)の説明についても敢えて符号を使用しなかった。
【0045】
以上のように、特許文献2の天井枠吊り下げ構造では、鉛直方向に伸びる天井枠吊り下げ材4,4・・の上端を水平方向に伸びる水平補強材3に対して交差状態で連結する天井枠吊り下げ材取り付け金具11が、天井枠吊り下げ材4,4・・の全周を上下方向に所定の間隔をおいてスライド可能に嵌合する断面方形の筒状体よりなる第1、第2の2組の嵌合部111,112と、該第1、第2の嵌合部111,112を上下方向に所定の間隔をおいて相互に連結一体化し、水平方向に伸びる水平補強材3,3・・に対して側方からスライド可能に嵌合する断面ハット形の第3の嵌合部113とからなり、それら第1~第3の嵌合部111~113が一体の金属部材として構成されている。そして、第1、第2の嵌合部111,112が天井枠吊り下げ材4に、第3の嵌合部113が水平補強材3に、それぞれドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16、16,16・・を用いて強固に締結固定される。
【0046】
したがって、特許文献2の構成では、天井枠吊り下げ材取り付け金具11それ自体の強度が大きく向上し、天井枠吊り下げ材4,4・・が所定の断面形状、所定の外径の角形鋼管よりなることと相俟って、それまでのフック構造およびハンガー構造の取り付け金具を用いたロッド軸に対する取り付け構造に比べて、天井枠取り付け後の耐震強度が遥かに大きく向上する。
【0047】
また、特許文献2の構成の場合、第1、第2の嵌合部111,112は天井枠吊り下げ材4,4・・を上下方向にスライド可能に嵌合し、第3の嵌合部113は水平補強材3にスライド可能に嵌合するようになっている。したがって、上下方向および水平方向共に位置合わせが容易であり、それぞれの取り付けが容易になる。
【0048】
さらに、特許文献2の構成の場合、上記のように天井枠吊り下げ材4,4・・の下端を天井枠側の野縁受けに連結する連結金具部分には、上述のように、天井枠を取り付ける位置(上下方向の高さ)を調節する天井枠取り付け位置調節機構が設けられており、上記のように天井枠吊り下げ材取り付け金具11を用いて天井枠吊り下げ材4,4・・の上端側所定位置を水平補強材3に取り付けた後、最終的に撓みやすい天井枠の高さを正確に調整した上で連結固定するようになっている。したがって、天井枠吊り下げ材取り付け金具11の第1、第2の嵌合部111,112部分で天井枠吊り下げ材4,4・・がスライド可能に嵌合されるようになっていることと相俟って、天井枠の取り付け、上下方向の高さ位置の調整が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【文献】特開2008-50784号公報
【文献】特開2020-007882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0050】
上記特許文献2の天井枠吊り下げ構造の場合、上記天井枠吊り下げ材取り付け金具11の断面ハット型の第3の嵌合部113がコ字形の3面で水平補強材3に強固に締結され、また上下方向に所定の距離を保った角形筒状の第1、第2の嵌合部111,112が断面方形の角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4の全周を嵌合した状態で水平補強材3側に交差状態で強固に連結一体化されるので、天井枠吊り下げ材4の鉛直方向の圧縮、引張荷重に対する強度および軸直交方向の剛性、水平方向の強度が大きく向上する。
【0051】
そのため、当該天井枠吊り下げ部に上向きの風圧が作用し、天井枠吊り下げ材4に相当な圧縮荷重がかかるケースに対応した耐風圧構造の吊り天井として構成することも可能となる。また、地震発生時の縦揺れ、横揺れに対する耐震力が向上し、従来の吊りボルト構造の場合のようなブレース材も不要になる。
【0052】
しかし、上記特許文献2の天井枠吊り下げ構造の場合、上記水平補強材3と天井枠吊り下げ材4との連結時において、次のような課題がある。
【0053】
すなわち、同構成の天井枠吊り下げ材取り付け金具11では、断面ハット型の第3の嵌合部113を水平補強材3に側方から嵌合するようになっており、水平補強材3に対して天井枠吊り下げ材取り付け金具11を所定の位置に仮係合して保持させることはできるが、ドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16・・を螺合しない限り安定した状態に係止することはできない。したがって、位置決め後のズレが生じやすく、第3の嵌合部113の水平補強材3に対する取り付け作業が必ずしも容易でない。また、寸法差が小さい第1、第2の嵌合部111,112内への天井枠吊り下げ材4の嵌挿作業は必ずしも容易でない。
【0054】
また、天井枠吊り下げ材4の下端側の野縁受けとの連結金具部分に一定のスパンの天井枠取り付け位置調節機構が設けられているが、これは最終的な微調節機構であり、調節できるスパン(高さ寸法)には限界がある。したがって、天井枠側に予想を超える撓み(高さ変動)があると、当該天井枠取り付け位置調節機構だけでは対応することができず、天井枠吊り下げ材4の上端側取り付け部での再調節が必要となる。
【0055】
このため、上記特許文献2の構成では、上記天井枠吊り下げ材4上端側取り付け部での位置決めも最終的な天井枠の撓み量を考慮して正確に行わなければならず、水平補強材3に対する天井枠吊り下げ材4の取り付け作業は必ずしも容易なものではなかった。
【0056】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、天井枠吊り下げ材取り付け金具の天井下地側水平補強材に対する嵌合部を天井下地側水平補強材に上方側から嵌合するフック構造に形成する一方、天井枠吊り下げ材に対する嵌合部を同フック構造の嵌合部の縦壁部を利用して同フック構造の嵌合部の縦壁部と一体に設けられた上下方向の嵌合部とし、同上下方向の嵌合部に天井枠吊り下げ材の取り付け位置調節機能を設けることによって天井枠吊り下げ材の取り付け位置を調節できるようにすると共に、同上下方向の嵌合部の開放端に当該嵌合部内に嵌合された天井枠吊り下げ材の当該嵌合部外への移動を阻止する係止部を設けた天井枠吊り下げ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0057】
本願発明の天井枠吊り下げ構造は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0058】
(1)本願発明の第1の課題解決手段
まず本願発明の第1の課題解決手段における天井枠吊り下げ構造は、 天井枠吊り下げ材を介して天井枠を吊り下げる天井下地側の水平補強材を形鋼又は角形鋼管により構成すると共に、上記天井枠吊り下げ材を形鋼又は角形鋼管により構成し、上記天井枠吊り下げ材の上部を天井枠吊り下げ材取り付け金具を介して上記水平補強材に鉛直状態で取り付ける一方、上記天井枠吊り下げ材の下部を天井枠取り付け位置調節機能を備えた天井枠取り付け手段を介して上記天井枠に取り付ける天井枠吊り下げ構造であって、
上記天井枠吊り下げ材取り付け金具は、上記水平補強材に上方側から嵌合して当該天井枠吊り下げ材取り付け金具を上記水平補強材に係止するフック構造の第1の嵌合部と、該第1の嵌合部の上記水平補強材の側面に当接する縦壁部の両側に天井枠吊り下げ材を挟む一対の対向壁を設けて構成され、上記天井枠吊り下げ材の上部をスライド可能に嵌合する断面コの字形の第2の嵌合部を備え、上記第2の嵌合部には、上記嵌合される天井枠吊り下げ材との間で上記天井枠吊り下げ材の取り付け位置を調節する天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を備えた天井枠吊り下げ材連結手段が設けられている一方、同第2の嵌合部の上記一対の対向壁の開放端には、上記第1の嵌合部の上記水平補強材の側面に当接する縦壁部を上記水平補強材の側面に対して螺合する螺合位置を避けて、当該嵌合部内に嵌合された上記天井枠吊り下げ材の当該嵌合部外への移動を阻止する係止部が設けられていることを特徴としている。
【0059】
この第1の課題解決手段では、まず天井下地側の水平補強材に対して天井枠吊り下げ材の上部を取り付ける天井枠吊り下げ材取り付け金具が、上記水平補強材に対して上方側からスライド可能に嵌合して当該天井枠吊り下げ材取り付け金具を上記水平補強材に対して係止するフック構造の第1の嵌合部と、該第1の嵌合部の上記水平補強材の側面に当接する縦壁部の両側に天井枠吊り下げ材を挟む一対の対向壁を設けて構成され、上記天井枠吊り下げ材の上部をスライド可能に嵌合する断面コの字形の第2の嵌合部を備えて構成されている。
【0060】
したがって、天井下地側の水平補強材に対して天井枠吊り下げ材取り付け金具を介して天井枠吊り下げ材の上部を連結するに際しては、まず天井枠吊り下げ材取り付け金具のフック構造の第1の嵌合部を水平補強材に対して上方側から嵌合しさえすれば、当該天井枠吊り下げ材取り付け金具を水平補強材の上部にスライド可能な形で容易に係合することができ、同係合状態において容易に位置決め調整することができる。そして、その後は確実に安定した係止状態に維持することができ、特許文献2の構成の場合のように容易に位置ズレするようなことはない。
【0061】
その結果、同フック構造の第1の嵌合部の縦壁部が当接する水平補強材の側面に対するドリルネジ(又はタッピングネジ)を用いた取り付け作業も容易になる。また、当該天井枠吊り下げ材取り付け金具の水平補強材に対する取り付け強度も向上する。
【0062】
一方、天井枠吊り下げ材の上部を取り付ける第2の嵌合部は、上記フック構造の第1の嵌合部の上記水平補強材の側面に当接する縦壁部の両側に天井枠吊り下げ材を挟む一対の対向壁を一体に設けて構成されており、上記天井枠吊り下げ材の上部を上下方向にスライド可能に嵌合する断面コの字形の嵌合部に形成されている。そして、この第2の嵌合部には、後述するように、当該嵌合部内に嵌合された上記天井枠吊り下げ材の当該嵌合部外への移動を阻止する係止部が設けられていることから、上記天井枠吊り下げ材は上下いずれかの方向から所望に嵌合される。
【0063】
この場合、上記フック構造の第1の嵌合部の縦壁部は、上記水平補強材の側面の全体(上下両端間の全体)に対応する形で設けられる。したがって、同縦壁部に一体化して設けられる第2の嵌合部も上記水平補強材の側面全体に対応する形で形成されることになり、十分に強度の高いものとなる。
【0064】
この第2の嵌合部には、さらに上記天井枠吊り下げ材との間で上記天井枠吊り下げ材上部の取り付け位置を所定の高さ位置に調節する取り付け位置調節機能を備えた天井枠吊り下げ材の連結手段が設けられている。
【0065】
したがって、すでに述べたように、天井枠側に予想を超える撓み(高さ変動)があり、上記天井枠吊り下げ材の下部側天井枠取り付け手段部分の天井枠取り付け位置調節機能だけでは対応することができないような場合にも、当該天井枠吊り下げ材の上部側第2の嵌合部の天井枠吊り下げ材連結手段部分で容易に調節することが可能となる。この場合、この天井枠吊り下げ材上部における天井枠吊り下げ材の取り付け位置調節機能は、たとえば上記天井枠吊り下げ材下部における天井枠取り付け位置調節機能よりも十分に大きく設定される。
【0066】
このため、上記天井枠吊り下げ材の上部側連結部での位置決めは、最終的な天井枠の撓み量を考慮して正確に行なわなくても良くなり、ある程度の水準で位置決めしておいて最後に上下両取り付け位置調節機能を利用してレベル調整すれば良いので、水平補強材に対する天井枠吊り下げ材の取り付け作業が遥かに容易になる。
【0067】
そして、同構成の場合、上記のように第2の嵌合部は、上記第1の嵌合部の上記水平補強材の側面に当接する縦壁部の両側に一体に設けられ、上記天井枠吊り下げ材の上部をスライド可能に嵌合する左右一対の対向壁を備えた断面コの字形の嵌合部となっている。したがって、同第2の嵌合部に嵌合された天井枠吊り下げ材の上下方向のスライド操作は容易である。
【0068】
また、同構成の場合、上記フック構造の第1の嵌合部の縦壁部は、水平補強材の側面の全体(上下両端間の全体)に対応する形で設けられ、同縦壁部および一対の対向壁で形成される断面コの字形の3面構造の第2の嵌合部も水平補強材の側面全体に対応する形で形成される。したがって、フック構造の第1の嵌合部の縦壁部は、水平補強材の側面全体に当接して水平補強材の側面を有効に補強すると共に、一対の対向壁を有する断面コの字形の第2の嵌合部によって、さらに高剛性に補強されて、非常に剛性の高いものとなる。
【0069】
その結果、第1の嵌合部、第2の嵌合部各々の強度および相互の連結強度(一体強度)、剛性が共に高いものとなり、水平補強材に対する天井枠吊り下げ材取り付け金具の取り付け強度、天井枠吊り下げ材取り付け金具に対する天井枠吊り下げ材上部の連結強度も向上する。
【0070】
また、断面コ字形の第2の嵌合部には、上述のように、天井枠吊り下げ材との間で天井枠吊り下げ材上部の取り付け位置を所定の高さ位置に調節する取り付け位置調節機能を備えた天井枠吊り下げ材の連結手段が設けられるが、その設置も容易になる。
【0071】
さらに、同構成の場合、上記第2の嵌合部の一対の対向壁の開放端には、上記第1の嵌合部の上記水平補強材の側面に当接する縦壁部を上記水平補強材の側面に対して螺合する螺合位置を避けて、当該嵌合部内に嵌合された上記天井枠吊り下げ材の当該嵌合部外への移動を阻止する係止部が設けられている。
【0072】
天井枠吊り下げ材を嵌合する第2の嵌合部が一対の対向壁を有し、断面コの字形に開口して形成されている場合、天井枠吊り下げ材の嵌合は容易であるが、他方、嵌合後の位置決め、固定が難しく、正確な位置決め状態で、天井枠吊り下げ材上部を水平補強材に連結するのが困難である。
【0073】
そこで、この発明の課題解決手段の構成では、天井枠吊り下げ材を嵌合する断面コの字形の第2の嵌合部の開口部、すなわち、天井枠吊り下げ材を挟む一対の対向壁の外端に、当該第2の嵌合部内に嵌合された天井枠吊り下げ材の嵌合部外への移動を阻止する係止部を設けることによって位置決めを容易にし、正確な位置決め状態での連結を可能としている。
【0074】
そして、その場合、第1の嵌合部の縦壁部を水平補強材に対して螺合締結することにより天井枠吊り下げ材取り付け金具を水平補強材に対して固定するようになっていることから、上記一対の対向壁外端への係止部の設置に当たっては、上記第1の嵌合部の縦壁部を上記水平補強材に対して螺合する螺合位置を避けて設置するようにしている。
【0075】
これにより、上記第1の嵌合部の縦壁部の上記水平補強材に対する螺合締結作業を容易にしながら、上記第2の嵌合部に嵌合された天井枠吊り下げ材の確実な位置決めを実現することができる。
【0076】
(2)本願発明の第2の課題解決手段
次に本願発明の第2の課題解決手段における天井枠吊り下げ構造は、上記本願発明の第1の課題解決手段の構成において、天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を備えた天井枠吊り下げ材連結手段は、天井枠吊り下げ材取り付け金具における第2の嵌合部の天井枠吊り下げ材を挟む一対の対向壁に設けられた上下方向に伸びる所定の長さの左右一組のルーズ穴と、上記天井枠吊り下げ材に設けられた左右一組のボルト挿通穴と、上記左右一組のルーズ穴および左右一組のボルト挿通穴を介して上記第2の嵌合部と上記天井枠吊り下げ材を連結固定する連結ボルトにより構成されていることを特徴としている。
【0077】
このような構成の場合、フック構造の第1の嵌合部を介して水平補強材に嵌合固定された天井枠吊り下げ材取り付け金具における第2の嵌合部に上記天井枠吊り下げ材の上部を嵌合し、上下方向にスライドさせることによって位置決めし、その状態で、同第2の嵌合部の天井枠吊り下げ材を挟む一対の対向壁のルーズ穴および上記天井枠吊り下げ材のボルト挿通穴に連結ボルトを通してナットで連結すると、当該位置決め位置で確実に固定することができ、上記天井枠吊り下げ材の上部が天井枠吊り下げ材取り付け金具を介して水平補強材に確実に連結固定される。
【0078】
そして、同連結固定後、さらに上記天井枠吊り下げ材の下部を天井枠取り付け位置調節機能を備えた天井枠取り付け手段を介して取り付け位置を調節した上で上記天井枠に取り付ける。
【0079】
この場合において、もしも天井枠側に予想を超える撓み(高さ変動)があり、天井枠吊り下げ材下部側の天井枠取り付け位置調節機能だけでは対応することができないような場合には、天井枠吊り下げ材の上部側第2の嵌合部の上記連結ボルトの連結状態を解除して、同天井枠吊り下げ材の上部側取り付け部でも必要な高さ位置の調節を行い、天井枠吊り下げ材の下部側天井枠取り付け位置調節機能による調節と合わせて可能な限り均一なレベルでの天井枠の取り付けを可能とする。
【0080】
したがって、同構成によれば、天井枠の全体を可能な限り均一なレベルに取り付けることができる。その結果、取り付け作業、レベル調整作業が著しく容易になる。
【0081】
なお、この場合、上記天井枠吊り下げ材の下部側の天井枠取り付け位置調節機能を備えた天井枠取り付け手段の構成については、すでに述べた特許文献2の構成における同取り付け位置調節機能を備えた天井枠取り付け手段が採用される。
【0082】
(3)本願発明の第3の課題解決手段
次に本願発明の第3の課題解決手段における天井枠吊り下げ構造は、上記本願発明の第1又は第2の課題解決手段の構成において、第1、第2の嵌合部を形成した天井枠吊り下げ材取り付け金具のフック構造の取り付け金具本体部分には、幅方向の中間に位置して上記第1、第2の嵌合部の全体に亘って帯状に伸びる補強リブが設けられていることを特徴としている。
【0083】
このような構成によれば、第1、第2の嵌合部を形成した天井枠吊り下げ材取り付け金具のフック構造の取り付け金具本体部分の剛性が大きく向上し、水平補強材および天井枠吊り下げ材各々に対する取り付け強度、水平補強材および天井枠吊り下げ材相互の連結強度が大きく向上する。その結果、より耐震性が高くなる。
【0084】
そして、この場合、同補強リブの高さは、同補強リブの左右両側に位置して螺合される、水平補強材に対する天井枠吊り下げ材取り付け金具締結固定用のドリルネジ(又はタッピングネジ)の頭部の高さよりも高く形成される。このようにすると、天井枠吊り下げ材取り付け金具の第2の嵌合部内に嵌合された天井枠吊り下げ材が、水平補強材に対する天井枠吊り下げ材取り付け金具締結固定用のドリルネジ(又はタッピングネジ)の頭部に接触することなくスムーズにスライドする。したがって、嵌合後の位置決め操作が容易になる。
【発明の効果】
【0085】
以上の結果、本願発明によると、天井枠吊り下げ材および天井下地側水平補強材各々の強度、剛性のアップに加え、天井枠吊り下げ材取り付け部における天井下地側水平補強材との結合強度が大きく向上し、天井枠吊り下げ部全体の強度も大きく向上する。その結果、天井下地全体の耐震性も向上することになり、より耐震性の高い天井枠吊り下げ構造を提供することが可能となる。
【0086】
また、天井下地側水平補強材に対して天井枠吊り下げ材を取り付ける天井枠吊り下げ材取り付け金具は、構造的に単一の金属部材でありながら、水平補強材、天井枠吊り下げ材の各々をスライド可能に嵌合する第1、第2の嵌合部を有し、それぞれを対応する部分にスライド可能に嵌合することによって、確実に安定した係合状態に支持し、それぞれ適切に位置決めした上で、ネジ部材を利用して容易に取り付けることができるようにしている。特に、天井下地側水平補強材に対して嵌合する第1の嵌合部はフック構造になっており、水平補強材の上部に極めて容易に係合される。しかも、その後の係合状態も安定したものとなり、位置ズレ等を招かない。そのため、水平補強材に対して天井枠吊り下げ材を取り付ける取り付け作業も著しく容易になる。
【0087】
また、天井枠吊り下げ材は、その上部側および下部側各取り付け部に取り付け位置の調節機能を備えている。したがって、全体としての大きな高さ位置の調節および精度の高い細かな高さ位置の調節の両方が容易に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】天井下地側の水平補強材をリップ溝形鋼、天井枠吊り下げ材を角形鋼管とした本願発明の実施の形態1の構成に係る天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す斜視図である。
【
図2】同天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す斜視図である。
【
図3】同天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す正面図である。
【
図4】同天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す平面図である。
【
図5】同天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す右側面図である。
【
図6】同天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す
図2のA-A線切断部の断面図である。
【
図7】同天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す
図3のB-B線切断部の断面図である。
【
図8】同天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す
図3のC-C線切断部の断面図である。
【
図9】同天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す分解斜視図である。
【
図10】同天井枠吊り下げ構造(
図1~
図9)における天井枠吊り下げ材取り付け金具単体の構造を示す拡大斜視図である。
【
図11】同天井枠吊り下げ構造(
図1~
図9)における水平補強材に対する天井枠吊り下げ材取り付け金具(第1の嵌合部)の取り付け状態(嵌合状態)を示す一部分解斜視図である。
【
図12】同天井枠吊り下げ構造における天井枠吊り下げ材取り付け金具(第2の嵌合部)の天井枠吊り下げ材上端部との連結構造(天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を持った連結構造)を示す分解斜視図である。
【
図13】同天井枠吊り下げ構造の天井枠吊り下げ材下端部に対する天井枠の取り付け構造(天井枠取り付け位置調節機能を持った取り付け構造)を示す示す拡大正面図である。
【
図14】同天井枠吊り下げ構造の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の構成を示す分解斜視図である。
【
図15】同天井枠吊り下げ構造の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の位置決め金具部分の構成を示す拡大斜視図である。
【
図16】同天井枠吊り下げ構造の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の位置決め金具部分の構成を示す拡大正面図である。
【
図17】同天井枠吊り下げ構造の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の位置決め金具部分の構成を示す拡大平面図である。
【
図18】同天井枠吊り下げ構造の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の位置決め金具部分の位置決め状態を示す拡大側面図である。
【
図19】同天井枠吊り下げ構造の天井枠吊り下げ材取り付け金具(第2の嵌合部)における天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機構を用いて天井枠吊り下げ材を最も高い調節位置に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図20】同天井枠吊り下げ構造の天井枠吊り下げ材取り付け金具(第2の嵌合部)における天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機構を用いて天井枠吊り下げ材を最も低い調節位置に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図21】天井下地側の水平補強材をリップ溝形鋼、天井枠吊り下げ材をリップ溝形鋼とした本願発明の実施の形態2に係る天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す斜視図である。
【
図22】同天井枠吊り下げ構造の同要部の構成を示す分解斜視図である。
【
図23】同天井枠吊り下げ構造における天井枠吊り下げ材取り付け金具の天井枠吊り下げ材嵌合部(第2の嵌合部)と天井枠吊り下げ材上端部との連結構造(取り付け位置調節機能を持った連結構造)を示す分解斜視図である。
【
図24】天井下地側の水平補強材を角形鋼管、天井枠吊り下げ材を角形鋼管とした本願発明の実施の形態3に係る天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す斜視図である。
【
図25】天井下地側の水平補強材を角形鋼管、天井枠吊り下げ材をリップ溝形鋼とした本願発明の実施の形態4に係る天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す斜視図である。
【
図26】天井下地側の水平補強材をリップ溝形鋼、天井枠吊り下げ材を角形鋼管とした本願発明の実施の形態5に係る天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す斜視図である。
【
図27】同天井枠吊り下げ構造の要部の構成(天井枠吊り下げ材取り付け金具を介した水平補強材と天井枠吊り下げ材との連結構造および天井枠連結金具を介した天井枠吊り下げ材と野縁受けとの連結構造)を示す斜視図である。
【
図28】同天井枠吊り下げ構造(
図26および
図27)における天井枠吊り下げ材取り付け金具の水平補強材に対する取り付け構造を示す拡大斜視図である。
【
図29】同天井枠吊り下げ構造(
図26および
図27)における天井枠吊り下げ材取り付け金具単体の構造を示す拡大斜視図である。
【
図30】同天井枠吊り下げ構造(
図26および
図27)における天井枠吊り下げ材取り付け金具単体の別構造例を示す拡大斜視図である。
【
図31】同天井枠吊り下げ構造(
図26および
図27)における天井枠吊り下げ材取り付け金具(第2の嵌合部)の天井枠吊り下げ材上端部との連結構造(天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を持った連結構造)を示す分解斜視図である。
【
図32】同天井枠吊り下げ構造(
図26および
図27)の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の位置決め金具の位置決め状態を示す左右方向一側部で前後に切断した拡大断面図である。
【
図33】同天井枠吊り下げ構造(
図26および
図27)の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の位置決め金具の位置決め状態を示す前後方向中央部で左右に切断した拡大断面図である。
【
図34】同天井枠吊り下げ構造(
図26および
図27)の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の位置決め金具部分の構成を示す拡大斜視図である。
【
図35】同天井枠吊り下げ構造(
図26および
図27)の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の位置決め金具部分の構成を示す拡大側面図である。
【
図36】同天井枠吊り下げ構造(
図26および
図27)の天井枠吊り下げ材下端部における天井枠取り付け位置調節機構の位置決め金具部分の構成を示す拡大平面図である。
【
図37】実施の形態5の場合と同様に天井下地側の水平補強材をリップ溝形鋼、天井枠吊り下げ材を角形鋼管とした本願発明の実施の形態6に係る天井枠吊り下げ構造における天井枠吊り下げ材取り付け金具単体の構成を示す拡大斜視図である。
【
図38】本件出願人の先の出願(特許文献2)に係る天井枠吊り下げ構造の天井下地(建物構造体~水平補強材吊り下げ材~水平補強材)部分の構成を示す斜視図である。
【
図39】同先の出願(特許文献2)の天井枠吊り下げ構造における水平補強材吊り下げ材(角形鋼管)の構造を示す要部の拡大斜視図(一部切り欠き斜視図)である。
【
図40】同先の出願(特許文献2)の天井枠吊り下げ構造の天井下地部分(
図26部分)における建物構造体への水平補強材吊り下げ材の連結状態を示す斜視図である。
【
図41】同先の出願(特許文献2)の天井枠吊り下げ構造における天井枠吊り下げ材の上端と水平補強材との連結構造を示す要部の拡大斜視図(一部切り欠き斜視図)である。
【
図42】同先の出願の天井枠吊り下げ構造において、
図29に示した天井枠吊り下げ材と水平補強材との連結に使用される天井枠吊り下げ材取り付け金具の構成を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下、添付の
図1~
図37を参照して、本願発明に係る天井枠吊り下げ構造を実施するための幾つかの具体的な形態について詳細に説明する。
【0090】
<本願発明の実施の形態1に係る天井枠吊り下げ構造について:
図1~
図20>
(天井枠吊り下げ構造全体の基本的な構成)
まず
図1は、すでに述べた先の出願の発明(特許文献2の発明)に係る天井枠吊り下げ構造における天井下地構造(
図38~
図40)を用いて建物構造体(H形鋼10,10・・)に吊り下げられているXY方向の水平補強材3,3・・と、同水平補強材3,3・・に対して水平補強材吊り下げ材(鉛直材)4,4・・を介して吊り下げられた天井枠8部分の構成を示している。
【0091】
この出願の発明の実施の形態の場合にも、複数本の野縁(溝形鋼)2,2・・および野縁受け(溝形鋼)1,1・・よりなる格子状の天井枠8が吊り下げられる建物上階床下面側の構造体として、すでに述べた
図38および
図40に示す水平な左右一対の取り付け縁部10a,10aを備えたH形鋼10が採用されており、該H形鋼10の上記取り付け縁部10a,10aに対して、
図39に示す所定の外径寸法、所定の断面構造の角形鋼管(角形鋼)よりなる複数本の吊り下げ材(鉛直材)20,20・・を介して、所定の外形寸法(縦長)のXY方向の複数本の水平補強材(水平方向の補強材)3,3・・、3,3・・を吊り下げることによって、天井枠8取り付け用の基本となる「ぶどう棚構造」の天井下地が構成されている。
【0092】
そして、この基本となる天井下地の上記XY方向の複数本の水平補強材3,3・・、3,3・・に対して、
図1のように、所定の外径寸法の角形鋼管(
図39の角形鋼管と同様の構造のものを採用)よりなる複数本の天井枠吊り下げ材(鉛直材)4,4・・を介して上記野縁2および野縁受け1よりなる格子状の天井枠8が耐震性良く、安定した状態に吊り下げられるようになっている。
【0093】
なお、
図1の構成の場合、
図38の天井下地構造の水平補強材吊り下げ材(鉛直材)20,20・・から上方の天井下地部分の構成を省略して示しており、またXY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・もX方向の水平補強材3,3・・を省略し、Y方向の水平補強材3,3・・のみを示している。
【0094】
(天井枠8を構成する野縁2,2・・と野縁受け1,1・・相互の取り付け構造について)
本願発明の実施の形態の場合、上記の如く耐震性高く支持されたXY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・の内、一例としてX方向の水平補強材3,3・・を選択して示しており、また同水平補強材3,3・・には一例としてリップ溝形鋼が採用されている。また、天井枠吊り下げ材4,4・・としては、
図39に示した補強材吊り下げ材20,20・・と同様の角形鋼管(角形鋼)を採用して天井枠8が取り付けられるようになっている(
図2参照)。
【0095】
一方、天井枠8は、従来のものと同様に、上部側に位置する複数本の野縁受け1,1・・と、該複数本の野縁受け1,1・・の下部側に取り付けられる複数本の野縁2,2・・とからなり、これら野縁受け1,1・・と野縁2,2・・を相互に格子状に枠組みして構成されている。
【0096】
この実施の形態の場合、野縁受け1,1・・および野縁2,2・・は何れもウエブ部およびウエブ部両端にフランジ部を有する溝形鋼により形成されているが、野縁2,2・・のフランジ部には、
図2および
図3に示すように、それぞれフック構造のリブ(鉤状の曲成片)2a,2aが設けられている。
【0097】
そして、両者は、例えば野縁受け1がウエブ部を上下方向に立てた状態、野縁2がウエブ部を水平方向に寝かせた状態で直交方向に配置され、その交差部に設けられた結合金具(耐震クリップ)7によって相互に連結されている。この結合金具7は、たとえば2枚の同じ形状の板材を拝み状態で重合させており、相互に重合する上端部7a,7aが締結部、野縁受け1を両側から挟む中間部7b,7bが野縁受け固定部、野縁2の鉤状リブ2a,2aの内側にスライド可能に係合して、野縁2を野縁受け1に連結する下端部7c,7cが係合部となっている。また、同係合部である下端部7c,7c位置のリブ2a,2a外周部分には、結合金具7係止(滑り止め)のための固定部材7dがネジ止めされている(
図2、
図3、
図5参照)。
【0098】
そして、上記上端部7a,7aおよび中間部7b,7b部分を、たとえばドリルネジ(又はタッピングネジ)9a,9bで相互に締結固定することにより、
図1~
図5のような交差状態で相互に連結されている。これにより、
図1のような格子構造の天井枠8が形成されている。そして、この天井枠8の下面側には、さらに天井パネル80が設けられる。
【0099】
(天井枠吊り下げ材4,4・・を用いた天井枠8の天井下地側水平補強材3,3・・に対する取り付け構造について)
上記のようにして、野縁受け1に対して野縁2が連結された天井枠8は、たとえば
図2~
図8に示すように、断面方形の角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4を介してH形鋼(
図38、
図40のH型鋼10)に吊り下げられている上述の水平補強材3に対して吊り下げられる。この天井枠吊り下げ材4を構成している断面方形の角形鋼管は、上記天井下地側の水平補強材吊り下げ材20(
図38、
図40参照)と同様に
図39の構成の角形鋼管が採用されている。
【0100】
水平補強材3への天井枠8の吊り下げ、すなわち天井枠吊り下げ材4上端部分の水平補強材3への取り付け(連結)に際しては、例えば
図2~
図8に示すように、
図9および
図10に示す構成の天井枠吊り下げ材取り付け金具5が使用される。
【0101】
この天井枠吊り下げ材取り付け金具5は、上記リップ溝形鋼よりなる水平補強材3に対して上方側から垂直方向にコの字状に嵌合する第1の嵌合部5Aと、該第1の嵌合部5Aの側部にあって、上記鉛直方向に伸びる角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4に対して側方側から水平方向にコの字状に嵌合する第2の嵌合部5Bとからなり、それら第1、第2の嵌合部5A、5Bをたとえば
図10のようなフック形の単一の構造体に相互に一体化して構成されている。
【0102】
すなわち、上記第1の嵌合部5Aは、上記水平補強材3の上下リップ部3b,3b側の側面全体に当接する上下長さの縦壁部51と、該縦壁部51の上端から上記水平補強材3の天面部側に直交し、同天面部を超えて他面側のウエブ部3a側まで伸びる天壁部52と、該天壁部52のウエブ部3a端からウエブ部3a面に沿って所定長さ下方に直交する係合壁部53とからなり、全体として垂直断面(側面視)が7の字形状のフック構造に構成されている。そして、その縦壁部51から天壁部52、天壁部52から係合壁部53に至るフック構造の本体壁(取り付け金具5本体の本体プレート部分)の左右幅方向中間部には、
図10のように、上端側が偏平面に形成された所定の隆起高さの補強リブ54が設けられており、同補強リブ54によって上記縦壁部51から天壁部52、天壁部52から係合壁部53の全体に至る本体壁(本体プレート)のフック構造体としての十分な剛性及び強度が補強されている。また、同補強リブ54の本体壁面からの隆起高さは、当該フック構造体を上記水平補強材3の上下リップ部3b,3b部分にドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57で螺合締結した時に、当該ドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57の頭部が第2の嵌合部5B内をスライドする天井枠吊り下げ材4の側壁面に干渉しない高さのものとされている。なお、符号51a,51a、51a,51aは、上記水平補強材3の上下リップ部3b,3b部分に対応する縦壁部51部分のドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57螺合用のネジ穴である。
【0103】
上記第2の嵌合部5Bは、上記第1の嵌合部5Aの縦壁部51を利用して構成されており、上記第1の嵌合部5Aの上記補強リブ54を有する縦壁部51とその両側に設けた左右一対の対向壁(嵌合部形成用の対向壁)55,55とによって水平断面(平面視)がコの字形の3面構造の天井枠吊り下げ材嵌合部を形成している。
【0104】
すなわち、同構成では、上記第1の嵌合部5Aの縦壁部51の左右両側に上記鉛直方向に伸びる角形鋼よりなる天井枠吊り下げ材4に対して側方側から水平方向にコの字状に嵌合する左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55を設けることにより、上記第1の嵌合部5Aの上記補強用リブ54を有する縦壁部51面とその両側の左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55面との3つの壁面によって、上記鉛直方向に伸びる角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・を上下方向にスライド自在に嵌合する断面コの字形の嵌合部を形成している。左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55の幅は、角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・の側壁部の幅に対応したものとなっている。
【0105】
そして、上記左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55の左右方向中央部には、それぞれ上下鉛直方向に所定の長さ伸びる天井枠吊り下げ材4の取り付け位置(高さ)を調節するためのルーズ穴(長孔)55a,55aが設けられている。また、同左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55の左下部には、上下方向に所定の間隔を開けて当該第2の嵌合部5B部分を角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4に対してドリルネジ(又はタッピングネジ)58,58、58,58で固定するネジ穴55b,55b、55b,55bが設けられている。一方、角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4の左右両側壁部分には、たとえば上下方向の上方側2/3高さ部分において、内外両方向に貫通する左右一組のボルト挿通穴4a,4aが設けられている(
図9参照)。そして、上記左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55の天井枠吊り下げ材取り付け位置(高さ)調節用のルーズ穴(長孔)55a,55aおよび上記天井枠吊り下げ材4の左右一組のボルト挿通穴4a,4aには、角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4が上記第2の嵌合部5B部分に嵌合され、一定の高さ調節(レベル調節)がなされた段階において、連結ボルト56が挿通され、上記左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55および上記天井枠吊り下げ材4が平ワッシャー56a、バネワッシャー56b、固定用ナット56c(
図12参照)を介して相互に連結固定される(
図2、
図6、
図7、
図8参照)。また、同連結ボルト56および平ワッシャー56a、バネワッシャー56b、固定用ナット56cによる連結固定後、さらにドリルネジ(又はタッピングネジ)58,58、58,58によって、上記左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55が上記天井枠吊り下げ材4の側壁部に対して螺合締結され、確実に係止固定される。
【0106】
この実施の形態の場合、上記左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55間における天井枠吊り下げ材取り付け位置調節用の左右一組のルーズ穴55a,55a、天井枠吊り下げ材4の左右一組のボルト挿通穴4a,4a、連結ボルト56、平ワッシャー56a、バネワッシャー56b、固定用ナット56cが上記第2の嵌合部5B部分における天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を持った天井枠吊り下げ材連結手段を構成している。連結ボルト56、平ワッシャー56a、バネワッシャー56b、固定用ナット56c各々の外形は、上記ルーズ穴55a,55aの幅よりも大きく形成されている。
【0107】
この天井枠吊り下げ材連結手段部分における天井枠吊り下げ材取り付け位置の調節スパン(高さ調節範囲)は、上記左右一組のルーズ穴55a,55aの上下長によって設定されており、たとえば
図19に示す最も高い位置と
図20に示す最も低い位置との間で所望の高さに無段階で調節されるようになっている。しかも、同調節スパンは十分に大きく設定されており、その調節操作は単に上記連結ボルト56の締付け状態を変更すること(緩める)のみにより容易に実現されるようになっている。
【0108】
また、同状態では、上記のように天井枠吊り下げ材取り付け金具5は、上記第1の嵌合部5Aおよび第2の嵌合部5Bに共通する上記剛性の高い縦壁部51部分を利用して上記補強リブ54左右両側上下のドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57により上記水平補強材3のリップ部3b,3bに螺合締結することにより、水平補強材3に対して強固に取り付けられている。
【0109】
ところで、上記水平補強材3を構成しているリップ溝形鋼は、リップ部3b,3b側が開放されているために、リップ部3b,3b側では大きな吊り下げ力が掛かると内側に変形しやすくなり、安定したフック面(天面)および安定した取り付け面(リップ部3b,3b面)を維持しにくい傾向がある。
【0110】
ところが、上記のように、取り付け時において水平補強材3のリップ部3b,3b面に当接する第1の嵌合部5Aの縦壁部でもあり、天井枠吊り下げ材4,4・・を嵌合する第2の嵌合部5Bの縦壁部でもある上記縦壁部51が、中央部に断面コの字形の補強用リブ54を有する十分に剛性の高い縦壁部51に形成されていて、その上下両端左右両側部分をそれぞれドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57を介してリップ部3b,3bに螺合締結されていると、上記水平補強材3のリップ部3b,3b間が断面コの字形の補強用リブ54を有する十分に剛性の高い縦壁部51によって強固に支持されるようになり、大きな吊り下げ荷重が作用した場合にも、内側への変形が生じなくなる。その結果、上記水平補強材3側の安定したフック面(天面)および安定した取り付け面(リップ部3b,3b面)を維持することが可能となる。
【0111】
また、この実施の形態の場合、上記縦壁部51の左右幅方向の中間部に位置して所定の高さ隆起し、上下方向に帯状に伸びた断面コの字形の補強用リブ54が設けられており、同補強用リブ54は、上記第1の嵌合部5Aの天壁部52およびその先端の係合壁部53部分まで一体に連続する状態で設けられている(
図3、
図6、
図9~
図11参照)。したがって、縦壁部51はもちろん、天壁部52および係合壁部53各々の剛性が同様に向上し、水平補強材3側の上記安定したフック面(天面)に対する第1の嵌合部5A側のフック機能、ウエブ面3a側との係合機能もより確実なものとなる。その結果、天井枠吊り下げ材取り付け金具5による水平補強材3に対する天井枠吊り下げ材4の取り付け機能がより確実になり、さらに耐震強度が向上する。
【0112】
そして、この補強リブ54の本体壁面からの隆起高さ(突出高さ)は、当該フック構造体を上記水平補強材3の上下リップ部3b,3bにドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57で螺合締結した時に、同ドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57の頭が第2の嵌合部5B内における天井枠吊り下げ材4,4・・面に干渉しないような高さのものとされている(
図3、
図6参照)。
【0113】
(天井枠吊り下げ材4の下端部に対する天井枠8の取付構造:
図13~
図18)
他方、以上のようにして、上端部側が上記水平補強材3に対して強固に取り付けられた天井枠吊り下げ材4の下端部に対しては、さらに以下のようにして天井枠8(同天井枠8の野縁受け1部分)が取り付けられる。この天井枠吊り下げ材4の下端部に対する天井枠8の取り付けは、例えば
図13~
図18に示す天井枠8の取付位置調節機能(微調節機能)を備えた連結金具6を用いてなされる。
【0114】
すなわち、この天井枠8の取付位置調節機能を備えた連結金具6は、天井枠吊り下げ材4の下端部の正面(野縁受け1に取り付けられる面と反対側の面)に取り付けられる位置決め金具6Bと、この位置決め金具6Bを介して天井枠吊り下げ材4の下端部および野縁受け1に取り付けられる固定金具6Aと、上記位置決め金具6Bに対して固定金具6Aを上下移動可能な高さ調節状態および上下移動不可能な固定状態に連結する連結ボルト12と、上記位置決め金具6Bを天井枠吊り下げ材4の下端部に螺合固定するドリルネジ13,13と、上記固定金具6Aを天井枠吊り下げ材の下端部に螺合固定するドリルネジ14,14と、上記固定金具6Aを天上枠側野縁受け1に螺合固定するドリルネジ15,15とからなっている。なお、上記固定金具6Aを天井枠吊り下げ材の下端部に螺合固定するドリルネジ14,14は、上下に2本ではなく、中央部に1本でも構わない。
【0115】
位置決め金具6Bは、上下に長い溝形のボルト装着部61aと、該ボルト装着部61aの中央部に形成された上下方向に延びる長穴(スロット)61bと、上記ボルト装着部61aの両側に一体に形成されたフランジ形の固定部61c,61cと、該フランジ形の固定部61c,61cの中央部に設けられたドリルネジ挿通孔61d,61dとを備えた全体として断面ハット形の金属板とからなっている。
【0116】
そして、該位置決め金具6Bには、まず上記溝形のボルト装着部(断面コ字形の溝部)61aに対して、ボルト軸部分が上記長穴61bから手前側に突出し、頭部が溝部内に納まる状態で連結ボルト12を装着支持させる。次に、同連結ボルト12を支持させた状態において、上記フランジ形の固定部61c,61c部分を上記天井枠吊り下げ材4の下端部正面(取り付け面)に対して位置合わせ(上下および左右共に)し、その上で、そのドリルネジ挿通孔61d,61d部分を介して上記天井枠吊り下げ材4の下端部にドリルネジ13,13を螺合することによって当該天井枠吊り下げ材4の下端部の正面に確実に固定して取り付けられる。
【0117】
この場合、上記フランジ形の固定部61c,61c部分の上記天井枠吊り下げ材4の下端部の正面(取り付け面)に対する位置合わせは、上述した位置決め金具6Bの下端部端面の左右に設けた第2の嵌合爪61f,61fの上面を天上枠吊り下げ材4の下端面に突き合わすと共にフランジ形の固定部61c,61cの両側面を天上枠吊り下げ材4の両側面に一致させる形で行なわれる。すなわち、位置決め金具6Bの左右の幅寸法は、天上枠吊り下げ材4の左右の幅寸法に等しく形成されている。
【0118】
また、上記ボルト装着部61aの溝部は、連結ボルト12のボルト頭部の厚さ寸法よりも少し深く形成されていて、当該位置決め金具6Bの上記天井枠吊り下げ材4の下端部に対する固定状態においても、ボルト軸を介したボルト12自体の上下スライドが可能となるように構成されている。この点は長穴61bの幅寸法とボルト軸の直径との関係も同様である。
【0119】
他方、固定金具6Aは、
図14のような全体として断面ハット形の形状に成形された金属板本体60よりなり、平面視U字形の天井枠吊り下げ材4に対する第1の嵌合部60aと、該第1の嵌合部60aのU状部基端壁(後端壁)に形成された長穴(スロット)60bと、上記第1の嵌合部60aの左右両側壁中央部の上下2カ所に形成されたドリルネジ挿通孔60c,60c、60c,60cと、該ドリルネジ挿通孔60c,60c、60c,60cに挿通されるドリルネジ14,14、14,14と、上記第1の嵌合部60aの左右両側壁先端部の外側(左右両側)に位置して一体に設けられた(かつクロスして設けられた)側面視コ字形の天上枠(交差方向の野縁受け1)に対して嵌合する第2の嵌合部60d,60dと、該第2の嵌合部60d,60dのコ字状部基端壁(後端壁)中央に形成されたドリルネジ挿通孔60c,60cと、該ドリルネジ挿通孔60c,60cに挿通されるドリルネジ15,15とからなっている。平面視U字形の第1の嵌合部60aは、上記角形鋼菅よりなる天井枠吊り下げ材4の下端部に正面側から嵌合するようになっているとともに、これとクロス方向の側面視コ字形の第2の嵌合部60d,60dは、上記溝形鋼よりなる天上枠の野縁受け1の側面に嵌合するようになっている。
【0120】
固定金具6Aの第1の嵌合部60aは、上記角形鋼菅よりなる天井枠吊り下げ材4の下端部に嵌合するに際し、上記位置決め金具6Bおよび上記位置決め金具6Bのボルト装着部61aに装着された連結ボルト12を介して嵌合されるようになっており、嵌合後、連結ボルト12により連結され、ワッシャー12aおよびナット12bを介して最終的に締結固定されるまでの間は、上記位置決め金具6Bの上記長穴61bおよび固定金具6Aの長穴60bを介して上下方向に自由にスライドし、所定の高さ位置に調節することが可能となっている。
【0121】
すなわち、位置決め金具6Bのボルト装着部61aの溝部の深さは、すでに述べたように、連結ボルト12のボルト頭部の厚さ寸法よりも少し深く形成されており、位置決め金具6Bの上記天井枠吊り下げ材10の下端部に対する固定状態においても、長穴61bの上下方向の長さに応じてボルト軸を用いた連結ボルト12自体の上下スライドが可能となっている。この点は長穴61bの幅寸法とボルト軸の直径との関係も同様であり、左右にスライド可能な隙間を有して連結ボルト12のボルト軸が遊嵌されており、それによって連結ボルト12の上下スライドが可能となっている。
【0122】
そして、天井枠吊り下げ材4の下端部を野縁受け1に取り付ける固定金具6Aの第1の嵌合部60aは、その取り付けに当たって上記天井枠吊り下げ材4の下端部に嵌合される際に、まず先に天井枠吊り下げ材4の下端部に固定されている位置決め金具6Bに支持され、上記のように上下方向にスライド可能な状態に保持されている連結ボルト12の先端側ボルト軸(長穴61b)から突出しているボルト軸部分)が固定金具6A側U状部基端壁の長穴60bを貫通し、同長穴60bの突出端側で同長穴60bの径よりも直径の大きいワッシャー12bを介してナット12cを螺合することにより締結固定される。この場合、固定金具6Aの第1の嵌合部60aの左右両側壁部の長さは、もちろん上記位置決め金具6Bのボルト装着部61aの高さ寸法を考慮して、第2の嵌合部60d,60dが正確に野縁受け1に嵌合され得る長さに形成されている。また、位置決め金具6B側の長穴61bと固定金具6A側の長穴60bとの長さ関係は、長穴61bの長さの方が遥かに長く形成されており、長穴60bの方の長さは連結ボルト12のボルト軸の直径の2倍程度の短いものに形成されている。これは、基本的に天井枠吊り下げ材4に対する天井枠取り付け時(野縁受け1取り付け時)の高さ調節は長穴61bの方で行うが、長穴61bのみでは調節寸法が不足する時の調節寸法の補充、又は最終的に固定する時の固定金具6Aのみの操作による細かいレベル調整は長穴60bを利用して行うようにしているためである。
【0123】
このような構成によると、たとえば天井枠取り付け部材である上記水平補強材3に天井枠吊り下げ材取り付け金具5を介して強固に取り付けられた鉛直方向の天井枠吊り下げ材(角形鋼管)4の下端部に対して最終的に天井枠8を取り付けるに際して、次のように、固定金具6Aを連結ボルト12を介して位置決め金具6B(すなわち天井枠吊り下げ材4)に対して上下に移動させることにより、長穴61b(および長穴60b)の長さを利用した取り付け高さの調節を行った上で、最終的に天井枠吊り下げ材4の下端部に固定され、かつ天井枠8の野縁受け1部分を嵌合固定する固定金具6Aを適正な取り付け高さに正確に取り付けることができる。この結果、天井枠8の野縁受け1部分に荷重による撓み等があっても、同部分で、それを修正した可及的に水平な取り付けが可能となる。
【0124】
しかも、この実施の形態の場合、上記位置決め金具6Bの金具本体部分に設けられた天井枠吊り下げ材4に対して嵌合される嵌合爪は、当該位置決め金具6Bの上端部両側にあって天井枠吊り下げ材4の左右両側に嵌合される第1の嵌合爪61e,61eと、同位置決め金具6Bの下端部の左右にあって天井枠吊り下げ材4の位置決め金具6B取り付け部下端部の左右に下方側から水平に係合される表面側から裏面側に水平方向に直角に折り曲げて設けられた鉤状の第2の嵌合爪61f,61fよりなっている。この場合、上端部左右両側の第1の嵌合爪61e,61eは、位置決め金具6Bの金具本体左右の一部を天井枠吊り下げ材4側に90度折り曲げて形成されている。他方、下端部左右の第2の嵌合爪61f,61fは、位置決め金具6Bの金具本体底部の一部(左右両側の一部)を天井枠吊り下げ材4の下端部を係合可能に表面側から裏面側に直角に折り曲げて形成されている(水平な係合縁部を形成)。
【0125】
このような構成によると、位置決め金具6Bを天上枠吊り下げ材4の下端部に固定するに際し、位置決め金具6Bの下端部の水平方向に直角に折り曲げられた鉤状の第2の嵌合爪61f,61f(
図14、
図15および
図17参照)を天上枠吊り下げ材4の位置決め金具6B取り付け面の下端部に直角に係合することによって、上下方向の取り付け位置を決めるとともに、同位置決め金具6Bの上端部両側の第1の嵌合爪61e,61eを天上枠吊り下げ材4の両側に嵌合(抱合)することにより、左右方向の取り付け位置を決めて、その全体を確実に仮止めすることができる(
図18の状態を参照)。
【0126】
すなわち、同構成によれば、上下左右の各取り付け位置を正確に位置決めした上で確実に仮止め固定し、その上でドリルネジ13,13により固定することができる。その結果、作業者が手で支持していなくても確実に位置決め状態に保持され、またドリルネジ13,13を螺合しても全く位置ずれすることなく正確に固定することができるようになる。
【0127】
したがって、位置決め金具6Bを天上枠吊り下げ材4に固定する際の作業性が大きく改善されることはもちろん、天上枠8を嵌合固定する固定金具6Aの位置決め金具6Bを介した天上枠吊り下げ材4に対する取り付け位置の調節が容易になり、天上枠吊り下げ材4に対する天上枠8の取り付け精度も向上する。
【0128】
また、この場合、上記位置決め金具6B下端部の第2の嵌合爪61f,61fは、水平方向に直角に折り曲げられた構成となっているので、天井枠吊り下げ材4,4・・に上述した抱き合わせ部(連結部)A(
図27参照)があっても支障なく
図18の状態に係合させることができる。
【0129】
以上のように、この発明の実施の形態の構成では、建物の天井下地側水平補強材3,3・・および該天井下地側水平補強材3,3・・に対して天井枠8を吊り下げる天井枠吊り下げ材4,4・・が、それぞれ断面略長方形状の高強度のリップ溝形鋼および断面正方形状の角形鋼管により構成されている(
図1~
図9、
図11、
図12等参照)。
【0130】
したがって、天井枠吊り下げ材4,4・・が取り付けられる天井下地側水平補強材3,3・・の剛性および強度が高くなるのはもちろん、天井枠吊り下げ材4,4・・自体の鉛直方向の圧縮および引張荷重に対する強度および軸直交方向の剛性、水平方向の強度が従来のボルト軸だけの場合(特許文献1の構成)に比べて遥かに大きく向上する。
【0131】
このため、当該天井枠吊り下げ部に上向きの風圧が作用し、天井枠吊り下げ材4,4・・に大きな圧縮荷重がかかるケースに対応した耐風圧構造の吊り天井として構成することも可能になる。
【0132】
しかも、同構成では、その上で、上記天井枠吊り下げ材4,4・・の上端部を天井枠吊り下げ材取り付け金具5を介して上記天井下地側水平補強材3,3・・に鉛直状態で連結する一方、上記天井枠吊り下げ材4,4・・の下端部を天井枠取り付け位置調節機能を備えた連結金具6を介して上記天井枠8に連結するようにしている(
図2、
図3、
図6、
図9、
図11および
図13~
図18参照)。
【0133】
そして、上記天井枠吊り下げ材4,4・・の上端部を上記天井下地側水平補強材3,3・・に鉛直状態で連結する上記天井枠吊り下げ材取り付け金具5は、上記水平補強材3,3・・に上方側からスライド可能に嵌合して当該天井枠吊り下げ材取り付け金具5を上記水平補強材3,3・・に係止固定するフック構造の第1の嵌合部5Aと、該第1の嵌合部5Aの上記水平補強材3,3・・の側面(リップ部3b,3b面)に当接する縦壁部51部分にあって、上記天井枠吊り下げ材4,4・・の上端部を側方からスライド可能に嵌合する断面コの字形の第2の嵌合部5Bとからなり、上記第2の嵌合部5Bには、上記天井枠吊り下げ材4,4・・との間で上記天井枠吊り下げ材4,4・・上端部の取り付け位置を所定の高さ位置に調節する天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を有する連結手段が設けられている。
【0134】
したがって、天井下地側の水平補強材3,3・・に対して天井枠吊り下げ材取り付け金具5を介して天井枠吊り下げ材4,4・・の上端部を連結するに際しては、まず当該天井枠吊り下げ材取り付け金具5のフック構造の第1の嵌合部5Aを水平補強材3,3・・に対して上方側から嵌合しさえすれば、当該天井枠吊り下げ材取り付け金具5を水平補強材3,3・・の上部にスライド可能な形で容易に係合することができ、同係合状態において容易に位置決め調整することができる。そして、その後は確実に安定した係止状態に維持することができ、特許文献2の構成の場合のように容易に位置ズレするようなことはない。
【0135】
その結果、同第1の嵌合部5Aの当接する水平補強材3,3・・のリップ部3b,3b面に対する左右各2本のドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57を用いた取り付け作業も容易になる。また、当該天井枠吊り下げ材取り付け金具5の水平補強材3,3・・に対する取り付け強度も向上する。
【0136】
一方、天井枠吊り下げ材4,4・・の上端部を取り付ける第2の嵌合部5Bは、上記第1の嵌合部5Aの上記水平補強材3,3・・のリップ部3b,3b面に当接する縦壁部51に一体化されており、天井枠吊り下げ材4,4・・の上端部を側方からスライド可能に嵌合する断面コの字形の嵌合部に形成されている。
【0137】
したがって、特許文献2のような筒体構造の場合と異なって、天井枠吊り下げ材4,4・・の嵌合は極めて容易であり、嵌合後の上下方向のスライド操作(位置決め操作)も容易である。また、第1の嵌合部5Aの縦壁部51は水平補強材3,3・・のリップ部3b,3b面全体に対応する形で設けられ、断面コ字形の第2の嵌合部5Bも水平補強材3,3・・のリップ部3b,3b面全体に対応する形で形成されている。したがって、第1の嵌合部5Aの縦壁部51は、水平補強材3,3・・のリップ部3b,3b面全体に当接して水平補強材3,3・・のリップ部3b,3b面を効果的に補強すると共に、さらに一対の対向壁55,55を有する断面コ字形の第2の嵌合部5Bによって有効に補強されて、非常に剛性の高いものとなる。その結果、第1の嵌合部5Aおよび第2の嵌合部5Bの強度、剛性が共に高いものとなり、水平補強材3,3・・に対する天井枠吊り下げ材4,4・・上端部の連結強度も向上する。
【0138】
しかも、上記断面コ字形の第2の嵌合部5Bには、上述のように、上記天井枠吊り下げ材4,4・・との間で上記天井枠吊り下げ材4,4・・上端部の取り付け位置を所定の高さ位置に調節する天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を有する連結手段が設けられている。
【0139】
したがって、すでに述べたように、天井枠8側に予想を超える撓み(高さ変動)があり、最終的な微調整を主とする天井枠吊り下げ材4,4・・下端部側天井枠取り付け手段、すなわち上記連結金具6部分の天井枠取り付け位置調節機能だけでは対応することができないような場合にも、天井枠吊り下げ材4,4・・の上端側取り付け部で容易に調節することが可能となる。しかも、この第2の嵌合部5Aにおける連結手段部分の天井枠吊り下げ材の取り付け位置調節機能は、上記
図19~
図20に示すように、上記連結金具6部分の天井枠取り付け位置調節機能の調節スパンに比べて調節可能なスパン量が相当に大きく設定されている。
【0140】
このため、本実施の形態の場合、上記天井枠吊り下げ材4,4・・上端部側連結部での位置決めは、最終的な天井枠8の撓み量を考慮して正確に行なわなくても良くなり、ある程度の水準で位置決めしておいて、最後に上記連結金具6部分の天井枠取り付け位置調節機能との関係で正確な取り付け位置に調節すれば良いので、水平補強材3,3・・に対する天井枠吊り下げ材4,4・・の取り付け作業が遥かに容易になる。
【0141】
天井枠吊り下げ材4,4・・上端部側の天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を備えた連結手段は、上記のように、第2の嵌合部5Bの天井枠吊り下げ材4,4・・を挟む対向壁55,55に設けられた上下方向に伸びる所定の長さのルーズ穴55a,55aと、上記天井枠吊り下げ材4,4・・に設けられたボルト挿通穴4a,4aと、上記ルーズ穴55a,55aおよびボルト挿通穴4a,4aを介して上記第2の嵌合部5Bと上記天井枠吊り下げ材4,4・・を連結固定する連結ボルト56、同連結ボルト56頭部側の平ワッシャー56a、同連結ボルト56端部側のバネワッシャー56b、同連結ボルト56端部側の締結固定用ナット56cとから構成されている(
図7~
図9、
図12参照)。
【0142】
このような構成の場合、第2の嵌合部5Bに上記天井枠吊り下げ材4,4・・の上端部を嵌合し、上下方向にスライドさせることによって位置決めし、その状態で、同第2の嵌合部5Bの対向壁55,55のルーズ穴55a,55aおよび上記天井枠吊り下げ材4,4・・のボルト挿通穴4a,4aに連結ボルト56を通して平ワッシャー56aおよびバネワッシャー56b、締結固定ナット56cを介して連結すると(
図12、
図7、
図8参照)、当該位置決め位置で確実に固定することができ、上記天井枠吊り下げ材4,4・・の上端部が天井枠吊り下げ材取り付け金具5を介して天井下地側水平補強材3,3・・に確実に連結固定される(
図1~
図8参照)。
【0143】
そして、同連結固定後、さらに上記天井枠吊り下げ材4,4・・の下端部を上記天井枠取り付け位置調節機能を備えた連結金具6を介して、上述したように取り付け位置(レベル)を細かく調節した上で上記天井枠8を取り付ける。
【0144】
この場合において、もしも天井枠8側に予想を超える撓み(高さ変動)があり、当該天井枠吊り下げ材4,4・・下端部側連結金具6部分の天井枠取り付け位置調節スパンだけでは対応することができないような場合には、上記天井枠吊り下げ材4,4・・上端部側第2の嵌合部5Bの天井枠吊り下げ材連結手段である上記連結ボルト56の連結状態を解除して、改めて同天井枠吊り下げ材4,4・・の上端部側連結部で必要な高さ位置の調節(ルーズ穴55a,55aに沿った連結ボルト56の昇降操作)を行い、天井枠吊り下げ材4,4・・の下端部側連結金具6部分での天井枠取り付け位置調節機能と合わせて可能な限り均一なレベルでの天井枠8の取り付けを可能とする。
【0145】
したがって、同構成によれば、天井枠8の全体を可能な限り均一なレベルに取り付けることができる。その結果、取り付け作業、取り付け位置調節作業が著しく容易になる。
また、以上の構成の場合、上記第1、第2の嵌合部5A、5Bを備えたフック構造の天井枠吊り下げ材取り付け金具5の取り付け金具本体部分(縦壁部51~天壁部52~係合壁部53)には、その左右幅方向の中間部に位置して上記第1、第2の嵌合部5A,5Bの全体に亘って帯状に伸びる補強リブ54が設けられている(
図2、
図3、
図9~
図12参照)。
【0146】
このような構成によれば、第1、第2の嵌合部5A,5Bを有するフック構造の天井枠吊り下げ材取り付け金具5本体部分の剛性が大きく向上し、水平補強材3,3・・および天井枠吊り下げ材4,4・・各々に対する取り付け強度、水平補強材3,3・・および天井枠吊り下げ材4,4・・相互の連結強度が大きく向上する。その結果、より耐震性が高くなる。
【0147】
そして、この場合、同補強リブ54の高さは、同補強リブ54の左右両側に螺合される、水平補強材3,3・・のリップ部3b,3bに対して天井枠吊り下げ材取り付け金具5自体を締結固定するドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57の頭部の高さよりも高く形成されている(
図6、
図8参照)。したがって、天井枠吊り下げ材取り付け金具5の第2の嵌合部5B内に嵌合された天井枠吊り下げ材4,4・・が当該ドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57の頭部に接触することなくスムーズにスライドする。その結果、上記取り付け位置の調整が容易になる。
【0148】
<本願発明の実施の形態2に係る天井枠吊り下げ構造について:
図21~
図23>
以上の
図1~
図20の実施の形態1の構成では、天井下地側の水平補強材3,3・・がリップ溝形鋼、天井枠吊り下げ材4,4・・が
図27の角型鋼管である場合について説明したが、上術した天井枠吊り下げ材取り付け金具5の構成は、たとえば
図21~
図23に示すように、天井下地側の水平補強材3が上下方向に長い断面略長方形状のリップ溝形鋼、天井枠吊り下げ材4,4・・が断面略正方形状のリップ溝形鋼である場合にも全く同様に適用することができる。
【0149】
天井枠吊り下げ材4,4・・がリップ溝形鋼の場合、ウエブ部の反対側面がリップ部4b、4bを有する開放面となっており、角形鋼管のような閉断面の構造体ではないが、それに近い十分な耐圧縮荷重強度、引張荷重強度を有し、軸直交方向の剛性も高い。したがって、やはり角形鋼管と略同様の天井枠吊り下げ強度向上作用、地震発生時の水平方向の加振力に対する有効な耐振力向上作用を実現することができる。
【0150】
ただし、リップ溝形鋼の場合、ウエブ部の反対側面がリップ部4b、4bを有する開放面となっていることから、上述したボルト挿通穴4a,4a間にはスリーブ構造のスペーサ50が介装され、同スペーサ50内を通して連結ボルト56が挿通される。このようにすると、連結時における連結部の支持剛性(圧縮荷重強度)が高くなり、角形鋼管に勝る連結強度を得ることができる。
【0151】
<本願発明の実施の形態3に係る天井枠吊り下げ構造について:
図24>
以上の
図1~
図20の実施の形態1の構成では、天井下地側の水平補強材3,3・・がリップ溝形鋼、天井枠吊り下げ材4,4・・が
図27の角型鋼管である場合について説明したが、上術した天井枠吊り下げ材取り付け金具5の構成は、たとえば
図24に示すように、天井下地側の水平補強材3が上下方向に長い断面長方形状の角形鋼管、天井枠吊り下げ材4,4・・が断面正方形状の角形鋼管である場合にも全く同様に適用することができる。
【0152】
角形鋼管は閉断面の構造体であり、十分な耐圧縮荷重強度、引張荷重強度を有し、軸直交方向の剛性も高い。したがって、水平補強材3,3・・および天井枠吊り下げ材4,4・・の各々に角形鋼管を採用すると、より十分な天井枠吊り下げ強度向上作用、地震発生時の水平方向の加振力に対する、より有効な耐振力向上作用を実現することができる。
【0153】
<本願発明の実施の形態4に係る天井枠吊り下げ構造について:
図25>
以上の
図1~
図20の実施の形態1の構成では、天井下地側の水平補強材3,3・・がリップ溝形鋼、天井枠吊り下げ材4,4・・が
図27の角型鋼管である場合について説明したが、上術した天井枠吊り下げ材取り付け金具5の構成は、たとえば
図25に示すように、天井下地側の水平補強材3が実施の形態3と同様の上下方向に長い断面長方形状の角形鋼管、天井枠吊り下げ材4,4・・が実施の形態2と同様の断面略正方形状のリップ溝形鋼である場合にも全く同様に適用することができる。
【0154】
角形鋼管は閉断面の構造体であり、十分な耐圧縮荷重強度、引張荷重強度を有し、軸直交方向の剛性も高い。したがって、水平補強材3,3・・に角形鋼管を採用すると、同部分で、より十分な天井枠吊り下げ強度向上作用、地震発生時の水平方向の加振力に対する、より有効な耐振力向上作用を実現することができる。
【0155】
他方、リップ溝形鋼の場合、ウエブ部の反対側面がリップ部4b、4bを有する開放面となっており、角形鋼管のような閉断面の構造体ではないが、それに近い十分な耐圧縮荷重強度、引張荷重強度を有し、やはり軸直交方向の剛性も高い。したがって、角形鋼管と略同様の天井枠吊り下げ強度向上作用、地震発生時の水平方向の加振力に対する有効な耐振力向上作用を実現することができる。
【0156】
ただし、リップ溝形鋼の場合、ウエブ部の反対側面がリップ部4b、4bを有する開放面となっていることから、上記実施の形態2の場合と同様に上述したボルト挿通穴4a,4a間にはスリーブ構造のスペーサ50が介装され、同スペーサ50内を通して連結ボルト56を挿通するようにする。このようにすると、連結時における連結部の支持剛性(圧縮荷重強度)が高くなり、角形鋼管に勝る連結強度を得ることができる。
【0157】
<本願発明の実施の形態5に係る天井枠吊り下げ構造について:
図26~
図36>
さらに、
図26~
図36は、本願発明の実施の形態5に係る天井枠吊り下げ構造を示している。上述した実施の形態1~4に係る天井枠吊り下げ構造では、第2の嵌合部5Bは、第1の嵌合部5Aの縦壁部51を利用して構成されており、第1の嵌合部5Aの補強リブ54を有する縦壁部51とその両側に設けた左右一対の対向壁(嵌合部形成用の対向壁)55,55とによって水平断面(平面視)がコの字形の3面構造の天井枠吊り下げ材嵌合部を形成している。
【0158】
すなわち、同構成では、第1の嵌合部5Aの縦壁部51の左右両側に上記鉛直方向に伸びる角形鋼管(又はリップ溝形鋼)よりなる天井枠吊り下げ材4に対して側方側から水平方向にコの字状に嵌合する左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55を設けることにより、第1の嵌合部5Aの補強用リブ54を有する縦壁部51面とその両側の左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55面との3つの壁面によって、鉛直方向に伸びる角形鋼管(又はリップ溝形鋼)よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・を上下方向にスライド自在に嵌合する断面コの字形の嵌合部を形成している。左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55の幅は、角形鋼管(又はリップ溝形鋼)よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・の側壁部の幅に対応したものとなっている。
【0159】
そして、左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55の左右方向中央部には、それぞれ上下鉛直方向に所定の長さ伸びる天井枠吊り下げ材4の取り付け位置(高さ)を調節するためのルーズ穴(長孔)55a,55aが設けられている。また、同左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55の左下部には、上下方向に所定の間隔を開けて当該第2の嵌合部5B部分を角形鋼管(又はリップ溝形鋼)よりなる天井枠吊り下げ材4に対してドリルネジ(又はタッピングネジ)58,58、58,58で固定するネジ穴55b,55b、55b,55bが設けられている。
【0160】
一方、角形鋼管(又はリップ溝形鋼)よりなる天井枠吊り下げ材4の左右両側壁部分には、たとえば上下方向の上方側2/3高さ部分において、内外両方向に貫通するボルト挿通穴4a,4aが設けられている(
図9、
図22等参照)。そして、上記左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55の天井枠吊り下げ材取り付け位置(高さ)調節用のルーズ穴(長孔)55a,55aおよび上記天井枠吊り下げ材4のボルト挿通穴4a,4aには、角形鋼管(又はリップ溝形鋼)よりなる天井枠吊り下げ材4が上記第2の嵌合部5B部分に嵌合され、一定の高さ調節(レベル調節)がなされた段階において、連結ボルト56が挿通され、上記左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55および上記天井枠吊り下げ材4が、平ワッシャー56a、バネワッシャー56b、固定用ナット56c(
図12、
図23等参照)を介して相互に連結固定される(
図2~
図8、
図20、
図21、
図24、
図25等参照)。また、同連結ボルト56および平ワッシャー56a、バネワッシャー56b、固定用ナット56cによる連結固定後、ドリルネジ(又はタッピングネジ)58,58、58,58によって、上記左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55が上記天井枠吊り下げ材4の側壁部に対して螺合締結されて確実に係止固定される。
【0161】
そして、上記左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55間における天井枠吊り下げ材取り付け位置調節用のルーズ穴55a,55a、天井枠吊り下げ材4のボルト挿通穴4a,4a、連結ボルト56、平ワッシャー56a、バネワッシャー56b、固定用ナット56cが上記第2の嵌合部5A部分における天井枠吊り下げ材取り付け位置調節機能を持った天井枠吊り下げ材連結手段を構成している。
【0162】
この天井枠吊り下げ材連結手段部分における天井枠吊り下げ材取り付け位置の調節スパン(高さ調節範囲)は、上記ルーズ穴55a,55aの上下長によって設定されており、たとえば
図19に示す最も高い位置と
図20に示す最も低い位置との間で所望の高さに調節されるようになっている(
図21、
図24、
図25は略中間位置)。しかも、同調節スパンは十分に大きく設定されており、その調節操作は上記連結ボルトの締付け状態を変更すること(緩める)により容易に実現される。
【0163】
また、上記天井枠吊り下げ材取り付け金具5は、上記第1の嵌合部5Aの一部を形成する第2の嵌合部5Bの上記剛性の高い縦壁部51の補強リブ54左右両側上下部分をドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57により上記角形鋼管よりなる水平補強材3の側壁(又はリップ溝形鋼よりなる水平補強材3のリップ部3b,3b)に螺合締結することにより、水平補強材3に対して強固に取り付けられている。
【0164】
このような構成の場合、上記天井枠吊り下げ材取り付け金具5の第2の嵌合部5Bの左右一対の対向壁55,55が、上記天井枠吊り下げ材4,4・・の側壁幅に対応して側方に開放した平板構造の挟板となっていることから、上記第2の嵌合部5B部分に対する上記天井枠吊り下げ材4,4・・の嵌合は、側方から水平方向に嵌め合わせるだけで良いので、その嵌合操作は容易である。また、嵌合部が完全に水平方向側方に開放されていることから、縦壁部51の補強リブ54左右両側をドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57で上記水平補強材3に螺合締結するのも容易である。
【0165】
しかし、同構成の場合、嵌合操作そのものは容易であるものの、第2の嵌合部5Bへの嵌合後、嵌合された天井枠吊り下げ材4を正確な位置決め状態に保持することが難しい課題が残されている。
【0166】
すなわち、同構成の場合、第2の嵌合部5Bに嵌合された天井枠吊り下げ材4が開放された側方側に移動しやすい(係止されない)ので、同第2の嵌合部5B内に確実に嵌合し、安定した垂直状態に維持しておくことが難しい。そのため、上記左右一対の対向壁55,55に設けられた天井枠吊り下げ材取り付け位置(高さ)調節用の一方側ルーズ穴(長孔)55aを介して天井枠吊り下げ材4のボルト挿通穴4a,4aに連結ボルト56を挿通し、他方側ルーズ穴(長孔)55a側にボルト先端を突出させるのも必ずしも容易でない。また、その後、高さ位置を調節した上で、ドリルネジ(又はタッピングネジ)58,58、58,58によって左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55部分が天井枠吊り下げ材4の側壁部に螺合締結されるが、この場合にも、ルーズ穴(長孔)55a,55aがルーズであることもあり、天井枠吊り下げ材4を縦壁部51の補強リブ54に当接した状態で第2の嵌合部5B内に確実に嵌合し、確実な鉛直状態に維持した上で、螺合締結することが難しい。
【0167】
そこで、この実施の形態では、例えば
図26~
図31に示すように、天井枠吊り下げ材取り付け金具5の第2の嵌合部5Bの左右一対の対向壁55,55の開放端側に、嵌合された天井枠吊り下げ材4の開放口側への移動を阻止する係止片59,59を設け、天井枠吊り下げ材4を第2の嵌合部5Bに対して、上方から下方、又は下方から上方に挿入することによって嵌合するように構成し、第2の嵌合部5B内に嵌合された天井枠吊り下げ材4が確実に縦壁部51の補強リブ54に当接した状態で垂直状態に維持されるようにしている。
【0168】
このような構成によると、高さ位置さえ調節すればよくなり、上記左右一対の対向壁55,55に設けられた天井枠吊り下げ材取り付け位置(高さ)調節用の一方側ルーズ穴(長孔)55aを介して天井枠吊り下げ材4のボルト挿通穴4a,4aに連結ボルト56を挿通し、他方側ルーズ穴(長孔)55a側にボルト先端を突出させるのが容易になる。また、それにより、連結ボルト56のボルト軸位置は、当然にルーズ穴(長孔)55aの幅方向中間位置に位置決めされることになり、正確な位置で締結することが可能となる。
【0169】
また、同状態においては、上記第2の嵌合部5B内に嵌合された天井枠吊り下げ材4が確実に縦壁部51の補強リブ54に当接した状態で正確に垂直状態に維持されているので、その後のドリルネジ(又はタッピングネジ)58,58、58,58による左右一対の対向壁(嵌合壁)55,55の天井枠吊り下げ材4の側壁部に対する螺合締結も、ルーズ穴(長孔)55a,55aの穴径の影響を受けることなく、正確な位置に締結することができる。
【0170】
さらに、以上のように係止片59,59を設けると、第2の嵌合部5B部分の強度も向上する。なお、同構成の場合、実施の形態1~4のように天井枠吊り下げ材4を側方から嵌合することはできなくなるが、
図42に示す従来のものと異なって嵌合部が1カ所であり、上方側又は下方側から自由に挿入して嵌合することができるので、嵌合操作自体は容易である。
【0171】
この場合、上記左右一対の対向壁55,55開放端側の係止片59,59は、例えば
図30に示すように、上記左右一対の対向壁55,55の全体を相互に対抗するように内側に所定の幅だけ直角に折り曲げて形成することも可能である。ただし、そのようにした場合、水平補強材3に対する縦壁部51の補強リブ54左右両側のドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57螺合位置を係止片59,59による制約を受けない内側位置(補強リブ54に隣接する位置)に変更する必要がある(変更しないと、係止片59,59があるため、ドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57を揉みにくい)。他方、ドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57螺合位置を係止片59,59による制約を受けない内側位置(補強リブ54に隣接する位置)に変更すると、螺合位置間の左右幅が狭くなるので、縦壁部51の水平補強材3に対する締結強度が相対的に低下する。
【0172】
そこで、この実施の形態では、上記左右一対の対向壁55,55開放端側の係止片59,59は、例えば
図28、
図29に示すように、上記左右一対の対向壁55,55の全体ではなく、上記ドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57の螺合位置に対応する部分(
図29のa,a、b,b部分)を除く、それらの間の中間部分のみに設けている。このような構成にすると、係止片59,59の影響を受けることなく、ドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57の自由な螺合が可能となる。また、螺合位置間の左右幅を狭くすることもなく、縦壁部51の水平補強材3に対する十分な締結強度を実現することができる。この場合にも、係止片59,59は同様の折り曲げ加工によって形成される。
【0173】
そして、この実施の形態の場合にも、上記実施の形態1~4の場合と同様に、天井枠吊り下げ材4の下端部には、例えば
図26に示すように天井枠8が吊り下げられる。この天井枠吊り下げ材4の下端部に対する天井枠8の取り付けは、例えば
図27に示す天井枠8の取付位置調節機能(微調節機能)を備えた連結金具6を用いてなされる。
【0174】
すなわち、この天井枠8の取付位置調節機能を備えた連結金具6は、天井枠吊り下げ材4の下端部の正面(野縁受け1に取り付けられる面と反対側の面)に取り付けられる位置決め金具6Bと、この位置決め金具6Bを介して天井枠吊り下げ材4の下端部および野縁受け1に取り付けられる固定金具6Aと、上記位置決め金具6Bに対して固定金具6Aを上下移動可能な高さ調節状態および上下移動不可能な固定状態に連結する連結ボルト12と、上記位置決め金具6Bを天井枠吊り下げ材4の下端部に螺合固定するドリルネジ13,13と、上記固定金具6Aを天井枠吊り下げ材の下端部に螺合固定するドリルネジ14,14と、上記固定金具6Aを天上枠側野縁受け1に螺合固定するドリルネジ15,15とからなっている。
【0175】
位置決め金具6Bは、例えば
図27および
図34~
図36に示すように、上下に長い溝形のボルト装着部61aと、該ボルト装着部61aの中央部に形成された上下方向に延びる長穴(スロット)61bと、上記ボルト装着部61aの両側に一体に形成されたフランジ形の固定部61c,61cと、該フランジ形の固定部61c,61cの中央部に設けられたドリルネジ挿通孔61d,61d(
図27ではドリルネジ13,13が螺合されているために見えない。)備えた全体として断面ハット形の金属板からなっている。
【0176】
そして、該位置決め金具6Bには、まず上記溝形のボルト装着部(断面コ字形の溝部)61aに対して、ボルト軸部分が上記長穴61bから手前側に突出し、頭部が溝部内に納まる状態で連結ボルト12を装着支持させる。次に、同連結ボルト12を支持させた状態において、上記フランジ形の固定部61c,61c部分を上記天井枠吊り下げ材4の下端部正面(取り付け面)に対して位置合わせ(上下および左右共に)し、その上で、そのドリルネジ挿通孔61d,61d部分を介して、上記天井枠吊り下げ材4の下端部にドリルネジ13,13を螺合することによって当該天井枠吊り下げ材4の下端部の正面に確実に固定して取り付けられる。
【0177】
この場合、上記フランジ形の固定部61c,61c部分の上記天井枠吊り下げ材4の下端部の正面(取り付け面)に対する位置合わせは、上述した位置決め金具6Bの下端部端面の左右に設けた第2の嵌合爪61f,61fの上面を天上枠吊り下げ材4の下端面に突き合わすと共にフランジ形の固定部61c,61cの両側面を天上枠吊り下げ材4の両側面に一致させる形で行なわれる。すなわち、位置決め金具6Bの左右の幅寸法は、天上枠吊り下げ材4の左右の幅寸法に等しく形成されている(
図32、
図33を参照)。
【0178】
また、上記ボルト装着部61aの溝部は、連結ボルト12のボルト頭部の厚さ寸法よりも少し深く形成されていて、当該位置決め金具6Bの上記天井枠吊り下げ材4の下端部に対する固定状態においても、ボルト軸を介したボルト12自体の上下スライドが可能となるように構成されている。この点は長穴61bの幅寸法とボルト軸の直径との関係も同様である。
【0179】
他方、固定金具6Aは、上記実施の形態1の
図14のものと同様に、全体として断面ハット形の形状に成形された金属板本体60よりなり、平面視U字形の天井枠吊り下げ材4に対する第1の嵌合部60aと、該第1の嵌合部60aのU状部基端壁(後端壁)に形成された長穴(スロット)60bと、上記第1の嵌合部60aの左右両側壁中央部の上下2カ所に形成されたドリルネジ挿通孔60c,60c、60c,60cと、該ドリルネジ挿通孔60c,60c、60c,60cに挿通されるドリルネジ14,14、14,14と、上記第1の嵌合部60aの左右両側壁先端部の外側(左右両側)に位置して一体に設けられた(かつクロスして設けられた)側面視コ字形の天上枠(交差方向の野縁受け1)に対して嵌合する第2の嵌合部60d,60dと、該第2の嵌合部60d,60dのコ字状部基端壁(後端壁)中央に形成されたドリルネジ挿通孔60c,60cと、該ドリルネジ挿通孔60c,60cに挿通されるドリルネジ15,15とからなっている。平面視U字形の第1の嵌合部60aは、上記角形鋼菅(又はリップ溝形鋼)よりなる天井枠吊り下げ材4の下端部に正面側から嵌合するようになっているとともに、これとクロス方向の側面視コ字形の第2の嵌合部60d,60dは、上記溝形鋼よりなる天上枠の野縁受け1の側面に嵌合するようになっている。
【0180】
固定金具6Aの第1の嵌合部60aは、上記角形鋼菅よりなる天井枠吊り下げ材4の下端部に嵌合するに際し、上記位置決め金具6Bおよび上記位置決め金具6Bのボルト装着部61aに装着された連結ボルト12を介して嵌合されるようになっており、嵌合後、連結ボルト12により連結され、ワッシャー12aおよびナット12bを介して最終的に締結固定されるまでの間は、上記位置決め金具6Bの上記長穴61bおよび固定金具6Aの長穴60bを介して上下方向に自由にスライドし、所定の高さ位置に調節することが可能となっている。
【0181】
すなわち、位置決め金具6Bのボルト装着部61aの溝部の深さは、すでに述べたように、連結ボルト12のボルト頭部の厚さ寸法よりも少し深く形成されており、位置決め金具6Bの上記天井枠吊り下げ材10の下端部に対する固定状態においても、長穴61bの上下方向の長さに応じてボルト軸を用いた連結ボルト12自体の上下スライドが可能となっている。この点は長穴61bの幅寸法とボルト軸の直径との関係も同様であり、左右にスライド可能な隙間を有して連結ボルト12のボルト軸が遊嵌されており、それによって連結ボルト12の上下スライドが可能となっている。
【0182】
そして、天井枠吊り下げ材4の下端部を野縁受け1に取り付ける固定金具6Aの第1の嵌合部60aは、その取り付けに当たって上記天井枠吊り下げ材4の下端部に嵌合される際に、まず先に天井枠吊り下げ材4の下端部に固定されている位置決め金具6Bに支持され、上記のように上下方向にスライド可能な状態に保持されている連結ボルト12の先端側ボルト軸(長穴61bから突出しているボルト軸部分)が固定金具6A側U状部基端壁の長穴60bを貫通し、同長穴60bの突出端側で同長穴60bの径よりも直径の大きいワッシャー12bを介してナット12cを螺合することにより締結固定される。この場合、固定金具6Aの第1の嵌合部60aの左右両側壁部の長さは、もちろん上記位置決め金具6Bのボルト装着部61aの高さ寸法を考慮して、第2の嵌合部60d,60dが正確に野縁受け1に嵌合され得る長さに形成されている。また、位置決め金具6B側の長穴61bと固定金具6A側の長穴60bとの長さ関係は、長穴61bの長さの方が遥かに長く形成されており、長穴60bの方の長さは連結ボルト12のボルト軸の直径の2倍程度の短いものに形成されている。これは、基本的に天井枠吊り下げ材4に対する天井枠取り付け時(野縁受け1取り付け時)の高さ調節は長穴61bの方で行うが、長穴61bのみでは調節寸法が不足する時の調節寸法の補充、又は最終的に固定する時の固定金具6Aのみの操作による細かいレベル調整は長穴60bを利用して行うようにしているためである。
【0183】
このような構成によると、たとえば天井枠取り付け部材である上記水平補強材3に天井枠吊り下げ材取り付け金具5を介して強固に取り付けられた鉛直方向の天井枠吊り下げ材(角形鋼管)4の下端部に対して最終的に天井枠8を取り付けるに際して、次のように、固定金具6Aを連結ボルト12を介して位置決め金具6B(すなわち天井枠吊り下げ材4)に対して上下に移動させることにより、長穴61b(および長穴60b)の長さを利用した取り付け高さの調節を行った上で、最終的に天井枠吊り下げ材4の下端部に固定され、かつ天井枠8の野縁受け1部分を嵌合固定する固定金具6Aを適正な取り付け高さに正確に取り付けることができる。この結果、天井枠8の野縁受け1部分に荷重による撓み等があっても、同部分で、それを修正した可及的に水平な取り付けが可能となる。
【0184】
しかも、この実施の形態の場合、上記位置決め金具6Bの金具本体部分に設けられた天井枠吊り下げ材4に対して嵌合される嵌合爪は、当該位置決め金具6Bの上端部両側にあって天井枠吊り下げ材4の左右両側に嵌合される第1の嵌合爪61e,61eと、同位置決め金具6Bの下端部の左右にあって天井枠吊り下げ材4の位置決め金具6B取り付け部下端部の左右に下方側から水平に係合される表面側から裏面側にU状に折り曲げて設けられた鉤状の第2の嵌合爪61f,61fよりなっている(
図32および
図33を参照)。
【0185】
この場合、上端部左右両側の第1の嵌合爪61e,61eは、位置決め金具6Bの金具本体左右の一部を天井枠吊り下げ材4側に90度折り曲げて形成されている。他方、下端部左右の第2の嵌合爪61f,61fは、位置決め金具6Bの金具本体底部の一部(左右両側の一部)を天井枠吊り下げ材4の下端部を係合し得るように表面側から裏面側に先ず水平方向に直角に折り曲げ、さらに同水平方向に直角に折り曲げた折り曲げ部の先端61g,61gを所定の水平な係合面を残して所定高さ上方に直角に折り曲げて、U状に形成されている(
図34~
図36を参照)。
【0186】
このような構成によると、位置決め金具6Bを天上枠吊り下げ材4の下端部に固定するに際し、位置決め金具6Bの下端部の水平方向に直角に折り曲げられた鉤状の第2の嵌合爪61f,61f(
図32、
図33)を天上枠吊り下げ材4の位置決め金具6B取り付け面の下端部に直角に係合することによって、上下方向の取り付け位置を決めるとともに、同位置決め金具6Bの上端部両側の第1の嵌合爪61e,61eを天上枠吊り下げ材4の両側に嵌合(抱合)することにより、左右方向の取り付け位置を決めて、その全体を確実に仮止めすることができる(
図32、
図33の状態を参照)。
【0187】
すなわち、同構成によれば、上下左右の各取り付け位置を正確に位置決めした上で確実に仮止め固定し、その上でドリルネジ13,13により固定することができる。その結果、作業者が手で支持していなくても確実に位置決め状態に保持され、またドリルネジ13,13を螺合しても全く位置ずれすることなく正確に固定することができるようになる。
【0188】
したがって、位置決め金具6Bを天上枠吊り下げ材4に固定する際の作業性が大きく改善されることはもちろん、天上枠8を嵌合固定する固定金具6Aの位置決め金具6Bを介した天上枠吊り下げ材4に対する取り付け位置の調節が容易になり、天上枠吊り下げ材4に対する天上枠8の取り付け精度も向上する。
【0189】
また、この場合、上記位置決め金具6B下端部の第2の嵌合爪61f,61fは、かしめ構造を採用した角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・の抱き合わせ部(連結部)A(
図39参照)の厚さを顧慮した所定幅の水平な係合面を残してU状に折り曲げられた構成となっているので、天井枠吊り下げ材4,4・・の一角に同かしめ構造による抱き合わせ部(連結部)A(
図39参照)があっても支障なく
図32の状態に係合させることができる。また、U状に折り曲げられ、先端61g、61gが係合片として機能するので、より係合状態が確実になる。
【0190】
<本願発明の実施の形態6に係る天井枠吊り下げ構造について:
図37>
さらに、
図37は、本願発明の実施の形態6に係る天井枠吊り下げ構造を示している。この実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造では、上記実施の形態5に係る天井枠吊り下げ構造の第2の嵌合部5Bの左右一対の対向壁55,55の開放端側に設けられる、天井枠吊り下げ材4の開放口側への移動を阻止する係止片59,59部分を角形鋼管(又はリップ溝形鋼)に対応した筒体構造の係止壁59Aとしたことを特徴とするものである。
【0191】
この場合、同筒体構造の係止壁59Aは、上端側が寸法a,aだけ、下端側が寸法b,bだけ切除され(寸法a,a、寸法b,bは、実施の形態5の
図29と同一である)、上述の実施の形態5の場合と全く同様に、ドリルネジ(又はタッピングネジ)57,57、57,57の螺合に支障がないように構成されている。
【0192】
したがって、このような構成によれば、上述の実施の形態5と全く同様の作用効果を実現することができる。しかも、それに加えて、第2の嵌合部5B部分の強度をより向上させることができるメリットがある。
【符号の説明】
【0193】
1は、野縁受け
2は、野縁
3は、天井下地側の水平補強材
4は、天井枠吊り下げ材
5は、天井枠吊り下げ材取り付け金具
5Aは、第1の嵌合部
5Bは、第2の嵌合部
6は、連結金具
7は、結合金具
8は、天井枠
10は、H形鋼
20は、水平補強材吊り下げ材
51は、縦壁部
52は、天壁部
53は、係合壁部
59は、係止片
59Aは、係止壁