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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】換気空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/08 20060101AFI20240530BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240530BHJP
   F24F 7/00 20210101ALI20240530BHJP
   F24F 8/15 20210101ALI20240530BHJP
   F24F 8/24 20210101ALI20240530BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240530BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20240530BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20240530BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20240530BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20240530BHJP
   F24F 8/30 20210101ALI20240530BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20240530BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
F24F7/08 A
F24F7/06 Z
F24F7/06 L
F24F7/00 Z
F24F8/15
F24F8/24
F24F11/74
F24F11/46
F24F3/044
F24F3/16
F24F8/22
F24F8/30
E04B1/70 B
E04B1/76 200D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021138638
(22)【出願日】2021-08-27
(62)【分割の表示】P 2020137383の分割
【原出願日】2020-08-17
(65)【公開番号】P2022033721
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】513114847
【氏名又は名称】株式会社FHアライアンス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】廣石 和朗
(72)【発明者】
【氏名】松原 充則
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/107163(WO,A1)
【文献】特開2014-219159(JP,A)
【文献】特開2009-63227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/08
F24F 7/06
F24F 7/00
F24F 8/15
F24F 8/24
F24F 11/74
F24F 11/46
F24F 3/044
F24F 3/16
F24F 8/22
F24F 8/30
E04B 1/70
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高気密高断熱な建物内の部屋に吸気部と排気手段Aと、開閉量の調節が可能で、前記部屋から室外への排気を完全に閉じることができる開閉機構Bを有する室外への排気手段Bを設け、
前記部屋以外の空間に前記吸気部と前記排気手段Aを設け、
それぞれの前記吸気部に送風する複数の送風部を接続し
複数の前記排気手段から合流して、少なくとも1つの空調部と複数の前記送風部とを有する空調区画に戻る還気路を設け
記還気路に室内空気排気路と室外空気導入路を繋
前記室内空気排気路と前記室外空気導入路の途中に熱交換気ユニットを設け、
前記熱交換気ユニットにより、前記室外空気導入路から導入する室外空気と前記排気手段Aからの還気の一部と熱交換しながら、前記室内空気排気路により、前記還気の一部を室外に排気し、
前記建物内で、前記送風部により、前記部屋又は前記空間の少なくとも一方からの還気と前記室外空気と前記空調部により空調した空気を循環しながら、
室外への前記排気手段Bの前記開閉機構Bにより、前記部屋の前記吸気部からの送風時に、前記部屋から室外へ排気する風量を0から調節可能で、
前記熱交換気ユニットにより、前記建物に導入する室外空気導入量を調節可能で、
複数の前記送風部の合計送風量を前記空調部の空調風量よりも多くしたことを特徴とする換気空調システム。
【請求項2】
外への前記排気手段Bの風路の上流又は下流に換気扇を設けたことを特徴とする請求項1に記載の換気空調システム。
【請求項3】
前記還気路の途中又は前記空調区画内に除する手段又は、脱臭する手段の少なくとも一方を設け、複数の前記送風部のモーターをDCモーターとし、前記排気手段B、又は前記熱交換気ユニットで室外へ排気する風量と、前記除菌する手段又は前記脱臭する手段の少なくとも一方で処理する風量の合計風量が、1時間に前記建物の容積の6倍以上としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調換気システム。
【請求項4】
前記除菌する手段を0.1μm以上の粒子径のウイルスを捕捉可能なHEPAフィルターとし、前記空調区画の還気口に設けたことを特徴とする請求項3に記載の換気空調システム。
【請求項5】
前記熱交換気ユニットから排出された前記還気を室外に排出する排気口を前記空調部の室外機の熱交換器の吸込み側の位置に設けることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調換気システム。
【請求項6】
前記熱交換気ユニットは、バイパスダンパーにより、前記還気の室外への排気について、熱交素子をバイパスさせるバイパスモードと前記熱交素子を通過させる熱交換気モードとを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の複数の部屋を換気し、空調する換気空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物は省エネで快適な暮らし実現のため、ますます高気密化、高断熱化が進んでいる。一方、空気がきれいで健康な暮らし実現のため、換気の重要性が増している。
建物内の部屋、空間をくまなく換気、空調する換気空調システムを有する住宅、非住宅では、換気や空調した空気が、建物内の各部屋や各空間を循環しているため、ある部屋、空間で発生または流入した臭いや菌などの有害物質が、他の部屋や空間、通路等に流入し、他の人が不快になり、菌により感染するリスクがある。
建物全体の換気風量を米国疾病予防管理センター(CDC(2003))のガイドライン(厚生労働省 ホームページ 参考資料 商業施設等における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について P1-P2 令和2年3月30日)により、換気回数6~12回/h以上の大風量にして、すばやく建物内の空気を室外空気と入れ替えれば、臭いや菌などの有害物質を排出することはできるが、騒音も増大し、イニシャルコストが高く、空調負荷が大幅に増大することにより、ランニングコストも高いため、一般の住宅や非住宅では、実際には実現は困難である。
各部屋、空間毎に換気と空調を行うシステムを導入した場合は、その部屋内、空間内だけで、換気や空調した空気が循環するため、他の部屋や空間に臭いや菌などの流入リスクはないが、イニシャル、ランニングコストが高くなり、機器スペースも必要で、各部屋、各空間等の形状や機器の設置、運転状況により、各部屋、各空間毎に、温湿度や菌、埃、臭い等の分布が均一でなく、不快な部屋、空間が発生する。
従来、この種の換気空調システムは、室内に外気を導入して空調空気を作り、室内を排気ファンで負圧にして、空調吹出し空気を均一に室内に導入しながら、排気するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、複数の部屋に給気ファンの吹出し口と排気ファンの吸込み口を設け、給気、排気ダクトに設けられた殺菌装置により、外気が殺菌され、各部屋に導入され、排気される。そして、補助換気扇により負圧に保たれた陰圧居室を空調機で空調し、この部屋から他の部屋への逆流防止のため排気も殺菌するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、互いに連通する複数の部屋のうち、任意の部屋で発生した有害物質が、他の部屋に拡散するのを抑制するため、通常は全部屋が第三種集中換気で、有害物質が発生した部屋は第一種換気に切り替える。そして、全館換気空調システムと連動し、有害物質が発生した部屋の給気(還気と外気を空調した空気)量を換気装置の排気風量より少なくするものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、ある部屋で有害物質が発生した場合の拡散防止のため、有害物質センサーと排気ファンと給気ファンと室外排出ダンパーにより、他の部屋に流出せず、室外に排出されるものが知られている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-221612号公報
【文献】特開2005-257198号公報
【文献】特開2019-211139号公報
【文献】特開2018-151114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の換気空調システムでは、有害物質が室外から流入した場合、又は室内で発生した場合、防虫除菌ユニットによって除菌するが、事務所などで、夜間、人が不在の時に行うことを想定しており、在室時は除菌できず、また、複数の空間、部屋を対象にしておらず、常に外気を空調するため、空調負荷が大きく、イニシャル、ランニングコストが高くなるという問題があった。
また、特許文献2に記載の換気空調システムでは、負圧に保つ部屋に補助換気扇を設け、複数の部屋間を排気ダクトで繋いでいるので、殺菌装置により殺菌されなかった菌が他の部屋に流入するリスクがあるという問題があった。さらに、常に外気を入れて排気しているので、空調負荷が大きく、部屋間の温度も均一でなく、不快であるという問題もあった。
また、特許文献3に記載の換気空調システムでは、第一種換気装置と第三種換気装置の設置された部屋が固定されているので、有害物質が、第三種換気装置の設定された部屋で発生した場合、他の部屋への拡散は防止できないという問題があった。さらに、すべての部屋に第一種換気装置を設けるとイニシャルコストも高くなるという問題もあった。さらにまた、全館換気空調システムの各部屋に供給された空気の還気により、有害物質が他の部屋で発生した場合、他の部屋に拡散するリスクがあるという問題もあった。
また、特許文献4に記載の空調換気システムでは、他の部屋の換気や各部屋の空調、部屋間の空気の移動については記載無く、全館空調換気ができず、有害物質の発生場所が変わった時に対応できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、通常は、各部屋、各空間の換気と空調を適切に行い、省エネで均一な温度で、空気質のよい、常に快適で、常にきれいな空気の、空間を実現し、いずれかの空間で臭いや菌などの有害物質が流入、発生した場合は、すばやく有害物質の排出をしながら、その空間、空気経路等からの他の空間への拡散を防止するとともに、有害物質が流入、発生していない空間へ供給した空調空気を再び空調に使用し、還気の熱や空気質を有効利用するため、さらに省エネで快適な換気空調システムを提供することを目的としている。
また、還気の流路に除菌または、脱臭機能を設けることにより、建物内を循環する大風量の空気の有害物質や臭いを除去、脱臭するので、より安心な、健康、快適な換気空調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の換気空調システムは上記目的を達成するために、建物内の複数の部屋に吸気部と排気手段を設け、前記吸気部に複数のダクトで送風する複数の送風部を設け、複数の前記排気手段から合流して、前記送風部に戻る還気路を設け、前記送風部により、前記建物内に室内空気を循環させ、前記還気路に、開閉機構を有する室外空気導入路を繋ぐとともに、前記複数の部屋に、開閉機構を有する室外への排気手段を設け、前記建物内で、室外空気と前記室内空気を循環しながら、前記複数の部屋ごとに独立して、室外へ排気するように切替可能としたものである。
この手段により、送風部により、建物内の複数の部屋に吸気部から空調した室内空気を循環させ、空調後の空気である還気が、複数の部屋の各排気手段、例えば、ドアのアンダーカットなどから、合流して、還気路を通って、再び、空調部により空調され、送風部に戻る。
複数の部屋は、室内空気が供給されるので、室外に対して正圧になり、還気路の合流部では、送風部に吸い込まれるので、室外に対して負圧になる。従って、複数の部屋のそれぞれの室外への排気手段の開閉機構、例えば、窓の開閉量を調整することにより、例えば、ある部屋に有害物質を含んだ室内空気が発生、流入した場合、その部屋の窓の開けた部分から、有害物質を含んだ室内空気が室外に排気される量を調整可能である。また、還気路に繋がった室外空気導入路の開閉機構、例えば、窓の開閉量を調整することにより、還気路に導入される室外空気が導入される量を調整可能である。また、還気路の合流部に室外空気導入路が繋がっているため、窓を閉めている部屋のドアのアンダーカットの負圧が、窓を開けている部屋のアンダーカットの負圧より低く、これらを合流した空気の負圧と室外との差圧が、比較的安定し、室外空気を導入するファンが無くても、室外空気が安定して導入される。これらにより、比較的シンプルな構成で、その部屋の室内空気の排気と室外空気と室内空気の供給が同時に行われ、有害物質が流入又は、発生しても、それを室外に排出しながら、新鮮空気を供給可能な換気空調システムが得られる。
また他の手段は、建物内の複数の部屋に吸気部と開閉機構を有する室外への排気手段を設け、前記複数の部屋以外の空間に前記吸気部と排気手段を設け、前記吸気部に複数のダクトで送風する複数の送風部を設け、複数の前記排気手段から合流して、前記送風部に戻る還気路を設け、前記還気路の途中に、少なくとも1つの空調部と複数の前記送風部とを有する空調区画を設け、前記還気路に繋いだ室外空気導入路に、室外空気を導入するファンを設け、前記建物内で、前記室外空気と室内空気を循環しながら、前記複数の部屋ごとに独立して、室外へ排気するように切替可能な換気空調システムにおいて、複数の前記送風部の合計送風量を前記空調部の空調風量及び前記ファンの室外空気導入量よりも多くしたものである。
この手段により、ファンで導入された新鮮な室外空気と、複数の部屋以外の空間、例えば、床下、天井裏、納戸などの空間の空調後の空気である還気が、排気手段、例えば、ドアのアンダーカットなどから、還気路を通って、空調区画に流れ、空調部により空調され、複数の部屋の吸気部及び複数の部屋以外の空間の吸気部とダクトで接続された複数の送風部により、室外空気と空調空気と還気の混合空気を各部屋、各空間に送風することにより、各部屋と各空間を空調する。そして、各部屋では、室外に対して正圧になるため、その部屋の室内空気が、押し出されるように室外への排気手段の開閉機構、例えば、窓の開閉を調整して、室外に排気されながら、混合空気と入れ替わっていくので、その部屋の排気と新鮮で適度な温度の空気の供給が同時に行われ、有害物質が流入又は発生しても、室外に排出しながら、送風部による送風量とファンによる室外空気導入量の調整により、快適な空間を維持可能な換気空調システムが得られる。そして、空調区画で、送風部による合計送風量が、空調部による空調風量及びファンの室外空気導入量より多いので、室外空気と空調空気と還気がよく混合され、外気温と平均室温との差が小さい温度の新鮮空気を大風量で各部屋に送風するため、省エネで、各部屋が均一な温度で、健康快適な空間となる換気空調システムが得られる。
また他の手段は、前記室外への排気手段に換気扇を設けたものである。
これにより、室外への排気手段、例えば、室外と繋がった窓などに設けた換気扇の風量を可変制御し、通常は、24時間換気としての小風量排気を行い、省エネで健康快適な空間を実現し、有害物質が流入又は発生した場合などは、大風量排気を行い、より迅速で確実な有害物質の排出が可能で、隙間などからの他の部屋への拡散するリスクが少なく、より細かい空調制御、換気制御が可能な換気空調システムが得られる。
また、他の手段は、建物内の複数の部屋に吸気部と排気手段と開閉機構を有する室外への排気手段を設け、前記複数の部屋以外の部屋に前記吸気部と前記室外への排気手段と気密性の高いドアを設け、前記吸気部に複数のダクトで送風する複数の送風部を設け、複数の前記排気手段と前記気密性の高いドアから合流して、前記送風部に戻る還気路を設け、前記還気路の途中に、少なくとも1つの空調部と複数の前記送風部とを有する空調区画を設け、前記還気路に繋いだ室外空気導入路に、室外空気を導入するファンを設け、前記建物内で、前記室外空気と室内空気を循環しながら、前記複数の部屋及び、前記複数の部屋以外の部屋ごとに独立して、室外へ排気するように切替可能な換気空調システムにおいて、複数の前記送風部の合計送風量を前記空調部の空調風量及び前記ファンの室外空気導入量よりも多くしたものである。
これにより、複数の部屋以外の部屋、例えば、療養室や喫煙室等の有害物質や臭いが発生する可能性の高い部屋に気密性の高いドアを設け、複数の部屋の排気手段、例えば、ドアのアンダーカットなどから複数の部屋の空調後の空気である還気だけが還気路を通って、空調区画に流入し、ファンにより導入された室外空気とともに空調部により空調され、複数の送風部により、室外空気と空調空気と還気の混合空気が、直接ダクトを通って、複数の部屋と複数の部屋以外の部屋の吸気部から送風されて、各部屋が室外に対して正圧になって、複数の部屋以外の部屋の有害物質や臭いを含んだ空気が、押し出されるように室外への排気手段、例えば、窓の開けた部分から室外に排出されながら、混合空気と入れ替わっていき、複数の部屋では、室外への排気手段から室外へ排出されながら、一部の空調後の空気が、還気として、排気手段から空調区画に戻っていくので、複数の部屋以外の部屋で有害物質が流入又は発生しても、すばやく室外に排出し、他の部屋に有害物質や臭いが拡散するリスクが少なく、複数の部屋では送風部による送風量とアンダーカットからの還気風量と窓の開閉による排気風量の調整により、部屋の負荷に対応した空調が行え、また一部の空調後の空気の熱や空気質は還気として再び空調に利用されるので、さらに省エネで高効率な換気空調システムが得られる。そして、空調区画で、送風部による合計送風量が、空調部による空調風量及びファンによる室外空気導入量より多いので、室外空気と空調部で空調された空気と複数の部屋の還気がよく混合され、外気温と平均室温との差が小さい温度の新鮮空気を大風量で各部屋に送風するため、省エネで、各部屋が均一な温度で、健康快適な空間となる換気空調システムが得られる。
また、他の手段は、前記室外への排気手段に換気扇を設けたものである。
これにより、室外への排気手段、例えば、室外と繋がった窓などに設けた換気扇の風量を可変制御し、通常は、複数の部屋以外の部屋では、換気扇による24時間換気としての小風量排気を行い、複数の部屋では、送風部による送風量とアンダーカットからの還気風量と窓に設けた換気扇による排気風量の調整により、部屋の負荷に対応したより細かい空調が行え、省エネで健康快適な空間を実現し、複数の部屋以外の部屋で、有害物質が流入又は発生した場合などは、換気扇による大風量排気を行い、より迅速で確実な有害物質の排出が可能で、他の部屋に拡散するリスクがさらに少ない換気空調システムが得られる。
また、他の手段は、建物内の複数の部屋に吸気部と排気手段を設け、前記複数の部屋以外の部屋に前記吸気部と室外への排気手段と気密性の高いドアを設け、前記吸気部に複数のダクトで送風する複数の送風部を設け、複数の前記排気手段と前記気密性の高いドアから合流して、前記送風部に戻る還気路を設け、前記還気路の途中に、少なくとも1つの空調部と複数の前記送風部とを有する空調区画を設け、前記還気路に繋いだ室外空気導入路と室内空気排気路に、室外空気と前記排気手段からの還気の一部を熱交換しながら、前記還気路に前記室外空気を導入し、前記還気の一部を室外に排気する熱交換気ユニットを設け、前記建物内で、熱交換した室外空気と室内空気を循環しながら、前記複数の部屋以外の部屋ごとに独立して、室外へ排気するように切替可能な換気空調システムにおいて、複数の前記送風部の合計送風量を前記空調部の空調風量及び前記熱交換気ユニットの室外空気導入量よりも多くしたしたものである。
これにより、複数の部屋以外の部屋、例えば、療養室や喫煙室等の有害物質や臭いが発生する可能性が高い部屋に気密性の高いドアを設け、複数の部屋の排気手段、例えば、ドアのアンダーカットなどから複数の部屋の空調後の空気である還気の一部が空調区画に流入し、還気の一部が熱交換気ユニットにより、室外空気と熱交換され、室外に排出される。熱交換された室外空気と還気の一部は、ともに空調部により空調され、複数の送風部により、室外空気と空調空気と還気の混合空気が、直接ダクトを通って、複数の部屋と複数の部屋以外の部屋の吸気部から送風されて、複数の部屋以外の部屋が室外に対して正圧になって、有害物質や臭いを含んだ空気が、押し出されるように室外への排気手段、例えば、窓の開けた部分などから室外に排出されながら、混合空気と入れ替わっていき、複数の部屋では、空調後の空気が、還気として、排気手段、例えば、ドアのアンダーカットから空調区画及び熱交換気ユニットへ戻っていくので、複数の部屋以外の部屋で有害物質が流入又は発生しても、すばやく室外に排出し、他の部屋に有害物質や臭いが拡散するリスクがさらに少なく、複数の部屋では、送風部による送風量とアンダーカットからの還気風量と熱交換気ユニットによる排気風量と室外空気導入量の調整により、部屋の負荷に対応した空調が行え、排気熱を回収し、また一部の空調後の空気の熱や空気質は還気として再び空調に利用されるので、より省エネで高効率な換気空調システムが得られる。そして、空調区画で、送風部による合計送風量が、空調部による空調風量及び熱交換気ユニットによる室外空気導入量より多いので、室外空気と空調部で空調された空気と複数の部屋の還気がよく混合され、外気温と平均室温との差が小さい温度の新鮮空気を大風量で各部屋に送風するため、省エネで、各部屋が均一な温度で、健康快適な空間となる換気空調システムが得られる。
また、他の手段は、前記室外への排気手段に換気扇を設けたものである。
これにより、室外への排気手段、例えば、窓に設けた換気扇の風量を可変制御し、通常は、複数の部屋以外の部屋は、換気扇による24時間換気としての小風量排気を行い、複数の部屋は、熱交換気ユニットによる省エネ高効率な熱交換気を行い、送風部による送風量とアンダーカットからの還気風量と熱交換気ユニットによる排気風量と室外空気導入量の調整により、部屋の負荷に対応したより細かい空調が行え、省エネで健康快適な空間を実現し、複数の部屋以外の部屋で有害物質が流入又は発生した場合などは、換気扇による大風量排気を行い、より迅速で確実な有害物質の排出が可能で、隙間などからの拡散のリスクを減らせる換気空調システムが得られる。
また、他の手段は、前記複数の部屋以外の部屋に前記還気路に繋いだ開閉機構を有する排気手段を設けたものである。
これにより、複数の部屋以外の部屋、例えば、療養室と喫煙室等の有害物質や臭いが発生する可能性の高い部屋で、有害物質や臭いの発生が無い場合、還気路に繋いだ排気手段の開閉機構、例えば、廊下と繋がった気密性の高いドアに設けた窓の開閉を調整して、複数の部屋以外の部屋の空調後の空気である還気の風量を調節し、還気の熱を空調区画での空調に利用し、熱交換気ユニットで熱回収し、より省エネで高効率な換気空調システムが得られる。
また、他の手段は、建物内の複数の部屋に吸気部と開閉機構を有する排気手段と開閉機構を有する室外への排気手段と気密性の高いドアを設け、前記吸気部に複数のダクトで送風する複数の送風部を設け、複数の前記排気手段と前記気密性の高いドアから合流して、前記送風部に戻る還気路を設け、前記還気路の途中に、少なくとも1つの空調部と複数の前記送風部とを有する空調区画を設け、前記還気路に繋いだ室外空気導入路と室内空気排気路に、室外空気と前記排気手段からの還気の一部を熱交換しながら、前記還気路に前記室外空気を導入し、前記還気の一部を室外に排気する熱交換気ユニットを設け、前記建物内で、熱交換した室外空気と室内空気を循環しながら、前記複数の部屋ごとに独立して、室外へ排気するように切替可能な換気空調システムにおいて、複数の前記送風部の合計送風量を前記空調部の空調風量及び前記熱交換気ユニットの室外空気導入量よりも多くしたものである。
これにより、部屋を選ばず、通常は複数の部屋の排気手段の開閉機構、例えば、廊下と繋がった気密性の高いドアに設けた窓を開け、室外への排気手段の開閉機構、例えば、室外と繋がった窓を閉めて、空調した後の空気である還気の一部が空調区画に流入し、還気の一部が熱交換気ユニットにより室外空気と熱交換され、室外に排出される。熱交換された室外空気と還気の一部は、ともに空調部により空調され、複数の送風部により、室外空気と空調空気と還気の混合空気が、直接ダクトを通って、複数の部屋の吸気部から送風されて、送風部による送風量と気密性の高いドアの窓の開けた部分からの還気風量と熱交換気ユニットによる排気風量と室外空気導入量の調整より、部屋の負荷に対応した空調が行え、排気熱を回収し、また一部の空調後の空気の熱や空気質は還気として再び空調に利用されるので、より省エネで高効率な換気空調システムが得られる。そして、部屋を選ばず、有害物質や臭いが発生した場合は、その部屋の気密性の高いドアの窓を閉じ、室外と繋がった窓を開け、吸気部からの送風により室外に対して正圧になって、有害物質や臭いを含んだ空気が、押し出されるように、窓の開いた部分から室外に排気されながら、混合空気と入れ替わっていき、有害物質が流入又は発生しても、すばやく室外に排出し、他の部屋に有害物質や臭いが拡散するリスクが少ない換気空調システムが得られる。そして、空調区画で、送風部による合計送風量が、空調部による空調風量及び熱交換気ユニットによる室外空気導入量より多いので、室外空気と空調部で空調された空気と複数の部屋の還気がよく混合され、外気温と平均室温との差が小さい温度の新鮮空気を大風量で各部屋に送風するため、省エネで、各部屋が均一な温度で、健康快適な空間となる換気空調システムが得られる。
また、他の手段は、前記室外への排気手段に換気扇を設けたものである。
これにより、部屋を選ばず、通常は、室外への排気手段、例えば、室外と繋がる窓に設けた換気扇の運転を停止し、有害物質が流入又は発生した場合などは、その部屋の換気扇で大風量排気を行い、より迅速で確実な有害物質の排出が可能で、気密性の高いドア、その窓の隙間などからの拡散のリスクを減らせる換気空調システムが得られる。そして、春や秋の中間期や夏の夜間などは、部屋の気密性の高いドアの窓を閉じ、室外と繋がった窓を開けて、その換気扇の風量を調整し、室外空気を還気と熱交換せず、熱交換気ユニットで空調区画に導入して、送風部により各部屋の吸気部から送風することにより、主に室外空気で空調及び換気するので、より省エネで高効率な換気空調システムが得られる。
また、他の手段は、前記複数の部屋又は、前記複数の部屋以外の部屋の各々の前記送風部による送風量が前記室外への排気手段の前記換気扇による排気風量より多い正圧モードと前記送風量と前記排気風量が等しいバランスモードと前記送風量よりも前記排気風量が多い負圧モードを有するものである。
これにより、通常は正圧モードで、空調優先で省エネ快適運転とし、有害物質や臭いが発生した直後や有害物質が拡散し、又は臭いが激しくなった時は負圧モードで、換気優先で大風量排気による健康運転をし、その他の場合は、バランスモードで、換気と空調のバランスをとった健康快適な運転とする換気空調システムが得られる。
また、他の手段は、前記還気路の途中に、除菌または、脱臭する手段を設けたものである。
これにより、室外から空調区画に導入した室外空気に有害物質や臭いが含まれている場合や排気口からの還気に有害物質や臭いが残留している場合に、例えば、空調区画に設けられた除菌・脱臭装置、例えば、HEPA+脱臭フィルター方式、次亜塩素酸ナトリウム方式、プラズマ放電方式、コロナ放電方式、紫外線照射+光触媒方式などによる装置で、建物内を循環し、空調区画を通過する大風量の空気の有害物質や臭いを除去、脱臭するので、より安心な、健康、快適な換気空調システムが得られる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通常は、各部屋、各空間の小風量排気又は、建物全体での小風量熱交換気と大風量小温度差空調を適切に行い、省エネで、均一な温度、空質のよい、健康快適空間を実現する。いずれかの部屋で臭いや菌などの有害物質が流入、発生した場合は、その部屋の換気風量を増やし、すばやく有害物質の排出をしながら、その部屋、空気経路等からの他の空間への拡散を防止するとともに、有害物質が流入、発生していない部屋、空間へ供給した空調後の大風量の空気を再び空調に使用し、還気の熱や空気質を有効利用するため、さらに省エネで快適な換気空調システムを提供できる。
また、空調又は換気するための大風量の混合空気を除菌または、脱臭することにより、合理的で効率良く、空気質を良くする換気空調システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1における換気空調システムの構成図
図2】同システムの気密性の高いドア及び排気口、開閉機構の平面図と縦断面図
図3】同システムの室外への排気口及び開閉機構の平面図と縦断面図
図4】本発明の実施の形態2における換気空調システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における換気空調システムの構成図である。
図示するように、高気密高断熱住宅である建物(図示せず)に設置された換気空調システム1は、建物内で複数に区画された、複数の部屋である部屋A5、部屋B6、リビング(図示せず)、寝室(図示せず)、トイレ(図示せず)、洗面所(図示せず)、浴室(図示せず)、台所(図示せず)等と、複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、納戸(図示せず)等と、複数の部屋以外の部屋である療養室7、喫煙室(図示せず)等を空調し、換気する。本実施の形態で、療養室7とは、病気にかかった人や要介護者等が、療養する部屋のことで、喫煙室とは、喫煙のための専用の部屋を言い、その他の複数の部屋以外の部屋として対象となるのは、有害となるほどの量、または不快となるほどの量の二酸化炭素、臭気、揮発性有機化合物、細菌、ウイルス等の有害物質や臭いが発生する可能性がある部屋である。
また、本実施の形態では、部屋は、居室が対象であり、空間とは、非居室が対象となり、居室とは居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室を言い、非居室はそうではない室を言うが、居室として判断が難しい用途の室は、利用実態に応じて判断すればよい。
【0010】
本換気空調システム1で、空調、換気する複数の部屋、空間は、各建物ごとに個別に設定できる。
屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、階段下(図示せず)、階段の踊り場(図示せず)、機械室(図示せず)等の非居室に、空調区画10が設けられている。空調区画10内には、外気を導入する外気導入口11、複数の吸込口12を有する送風部13、複数の部屋である部屋A5と部屋B6等と複数の部屋以外の空間(図示せず)と複数の部屋以外の部屋である療養室7、喫煙室(図示せず)等からの還気を廊下(図示せず)や階段室(図示せず)等の還気路を通って導入する還気口14、室外に設置された空調室外機(図示せず)と冷媒配管及び電気配線で接続された空調部15が設けられている。
空調部15は、熱交換器(図示せず)と送風機(図示せず)を有し、送風部13は、ファン(図示せず)とモーター(図示せず)を有している。
【0011】
本実施の形態では、空調区画10内の送風部13を空調部15の送風機(図示せず)と分けているが、熱交換器(図示せず)で熱交換させるための空調送風機能と各部屋、各空間に送風する搬送機能が効果的に作用するならば、どのような送風部13、送風機の構成でも構わない。
本実施の形態では、空調区画10は壁と断熱材で覆われ密閉された空調室であるが、板金や断熱材で覆われたコンパクトな筐体であってもよく、空調部15と送風部13の位置関係で、室外空気と還気と空調前の空気と空調後の空気が、ショートカットせず、よく混合されれば、一部が解放された階段室や廊下や筐体でもよい。但し、空調部15、複数の送風部13が、人が出入り可能でメンテナンスできる程度の大きさが望ましい。
複数の送風部13と、複数の部屋である部屋A5、部屋B6、リビング(図示せず)、寝室(図示せず)、トイレ(図示せず)、洗面所(図示せず)、浴室(図示せず)、台所(図示せず)等と、複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、納戸(図示せず)等と、複数の部屋以外の部屋である療養室7、喫煙室(図示せず)等の各天井や壁等に設けられた複数の吸気部16とは、複数のダクト17又は送風用チャンバー(図示せず)で、それぞれ1対1対1で接続されている。複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、納戸(図示せず)等にも複数の吸気部16を設けて、複数の送風部13で混合空気を送風するのは、たとえ人の在室機会がほとんどない空間でも、建物全体を混合空気で空調すると、建物全体が、部屋間、空間温度差の少ない均一な温度になり、熱の移動も少なく、快適な空間を維持するのにかえって省エネであるからである。特に屋根裏(図示せず)と床下(図示せず)は、建物の外壁に面した大きな空間のため、建物にとってさらに高断熱化となり、省エネ空調となるからである。
【0012】
複数の部屋である部屋A5、部屋B6等と複数の部屋以外の空間のドア18のアンダーカットなどの排気口(排気手段)19と、複数の部屋以外の部屋である療養室7等の気密性の高いドア20の開閉機構21を有する排気口(排気手段)22は、非居室である廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等の還気路で合流し、還気路は、空調区画10に設けられた還気口14と連結している。
複数の部屋である部屋A5、部屋B6等と複数の部屋以外の部屋である療養室7等には、室外25と繋がった室外への排気口(室外への排気手段)26を設け、それぞれ開閉機構27を有する。なお、開閉機構21、27は、少なくとも完全に閉じる、完全に開ける動作ができるものとし、途中で何段階もしくは無段階での開閉量の調節が可能なものの方が、排気風量を細かく調整できるため、好ましい。
【0013】
室外への排気口26の下流側の室外25に面した外壁の開口部には、雨水や鳥、虫、埃等の侵入を防止できる屋外フード29がそれぞれ設けられている。
なお、複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、納戸(図示せず)等には、室外への排気口26を設けていない。人が在室する機会ほとんど無く、仮に有害物質が発生、流入しても、送風部13による混合空気の循環により、ある程度時間経過すると有害物質が希釈され、また、後述する除菌・脱臭装置40により、除菌・脱臭されるからである。
また、複数の部屋以外の部屋である療養室7等には、室外への排気口26に室外25に排気する換気扇28を有する。なお、換気扇28は、排気口26が短い場合など空気抵抗が小さい場合は、プロペラファンをACモーターで回転させる窓や壁取付型でもよいが、ダクトなどが長く、空気抵抗が比較的大きい場合は、シロッコファンをDCモーターで回転させる天井埋込み型の方が、省エネで換気量を細かく調整できるため、好ましい。
空調区画10内に外気を導入させる外気導入ファン30は、室外25とダクト31で繋がり、空調区画10の外気導入口11とはダクト32で繋がり、内部には、室外空気の有害物質検知手段33とHEPAフィルター34とファンモーター35を有する。
【0014】
なお、本実施の形態では、室外25と還気路を繋ぐ室外空気導入路に、外気導入ファン30を設けているが、外気導入ファン30の代わりに、開閉機構を設け、例えば、室外25に繋がる窓の開閉度合いを調整して、外気導入量を調整すると、調整幅が小さく、精度よく調整するのが困難ではあるが、手動で、容易に実施可能である。
また、本実施の形態では、外気導入ファン30は、室外25とダクト31で繋がり、空調区画10とダクト32で繋がっているが、結果的に、空調区画10に室外空気が導入され、空調された空気と部屋、空間からの還気と混合された混合空気が、各部屋、各空間に送風されればよく、例えば、空調区画10の還気口14の上流側の廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等の還気路に、外気導入ファン30と、ダクト等で、繋いでもよい。
なお、有害物質検知手段33は、二酸化炭素、臭気、揮発性有機化合物、細菌、ウイルスなどを検知する。
また、複数の部屋以外の部屋である療養室7の換気扇28の上流側にも、療養室7内の空気の有害物質検知手段36を有する。
【0015】
空調区画10内には、除菌・脱臭装置40を有し、大風量で建物内を循環する室外空気、空調後の空気である還気、空調空気、それらを空調区画で混合した混合空気を除菌・脱臭する。
なお、除菌・脱臭装置40としては、例えば、HEPA+脱臭フィルター方式、次亜塩素酸ナトリウム方式、プラズマ放電方式、コロナ放電方式、紫外線照射+光触媒方式などがあり、除去したい有害物質の種類及びその程度、装置の形状、空調区画10の形状、空調区画10内の空気の風速等により選択すればよく、有害物質だけ除去し、臭いは除去しなくてよい場合は、対象とする有害物質の除去に有効な除菌装置だけを設け、その逆で、対象とする臭いの脱臭に有効な脱臭装置だけを設けてもよい。例えば、HEPAフィルターで捕捉可能な0.1μm以上の粒子径のウイルスを対象とし、活性炭による脱臭フィルターで脱臭できる臭いを対象とする場合、それらのフィルターを、空調区画10の還気口14の内側に密着する形で、脱着可能で設ければ、建物内を循環する全ての還気が、この還気口14を通過するので、スペースを大きく必要とせず、メンテナンスも還気口14を外せば可能であるので容易である。
なお、本実施の形態では、除菌・脱臭装置40を空調区画10内に設けたが、部屋及び空間のドア18のアンダーカットなどの排気口19と、療養室7等の気密性の高いドア20の排気口22から、非居室である廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等で合流し、還気口14から空調区画10に入るまでの還気路の途中であれば、建物内を大風量で循環する空気を合理的に、効率よく、除菌・脱臭する効果作用には差がない。
ただし、通常、除菌・脱臭装置40は、フィルターの清掃、取替、水や薬品の補給、その他の清掃、取替などが定期的に必要なため、除菌・脱臭装置40を設ける場所は、空調区画10のように、人が出入り可能で、作業が行える大きさが望ましい。
【0016】
図1では、建物内の部屋と空間としては、部屋A5、部屋B6、療養室7以外は省略しており、それに対応して、送風部13、吸気部16、ダクト17、ドア18、排気口19等も省略している。
【0017】
図2は、同システムの気密性の高いドア及び排気口、開閉機構の平面図と縦断面図で、図2(a)は開閉機構が閉まった状態、図2(b)、(c)は開閉機構が開いた状態を表している。
図2(a)は、複数の部屋以外の部屋である療養室7等の気密性の高いドア20の排気口22に設けられた開閉機構21の開閉板41を閉じて、排気口22を塞いだ状態である。開閉板41は左右に設けられた軸42を中心に、0度(閉じた状態)から90度(開いた状態)まで、軸42に取り付けたモーター(図示せず)を設けて、電動で、無段階で調整可能である。なお、手動で0度から180度まで無段階で調整可能としてもよい。気密性の高いドア20は、左側中央にあるドアノブをもって、右側のヒンジを中心に、手前に引いて開けるようになっている。
図2(b)は、気密性の高いドア20の開閉板41を90度開いて、排気口22が完全に開いた状態である。
図2(c)は、図2(b)の縦断面の拡大図である。
【0018】
図2(a)、(b)において、気密性の高いドア20の4方の周囲のドア気密部43(網掛け部)には、図2(c)における、建物の部屋等の出入口の4方に設けられたドア凸部44に、気密用シール、パッキン(図示せず、ポリプロピレン製、ポリエステル製、塩化ビニル製、EPDMゴム製等)が貼り付けられ、気密用シール、パッキンと気密性の高いドア20と4方で面接触し、気密性の高いドア20を閉めた状態での気密性を高く維持している。
なお、通常のドアに対し、ドアの4方の周囲に、ドア気密部43の機能を果たすように、気密性シール、パッキン、部材等を取り付けて、気密性を高めることも可能だが、ドアを閉めた時に、気密性シール、パッキンを圧縮する方向に貼り付けなければ、ドアの開閉を繰り返すと、気密性が悪くなる可能性がある。
また、図2(a)において、排気口22の4方の周囲の排気口気密部45(網掛け部)には、図2(b)、(c)における、排気口22の4方に設けられた排気口凸部46に、気密用シール、パッキン(図示せず、ポリプロピレン製、ポリエステル製、塩化ビニル製、EPDMゴム製等)が貼り付けられ、図2(a)の開閉板4が閉じられた状態では、気密用シール、パッキンが開閉板41と4方で面接触し、閉めた時の気密性を高く維持している。
図2(c)において、気密性の高いドア20の左側は、部屋(本実施の形態1では、複数の部屋以外の部屋である療養室7、実施の形態2では、複数の部屋及び複数の部屋以外の部屋)の内側で、右側は、非居室である廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等である。開閉板41を開くと、療養室7と、非居室である廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等と連結し、結果的に、空調区画10に設けられた還気口14と連結した状態となる。大きい矢印は、気密性の高いドア20を開けた時の風の流れる方向を示し、小さい矢印は、開閉板41の回転方向を示している。気密性の高いドア20は、左側の部屋の内側に引いて開けるようになっている。
【0019】
本実施の形態では、1枚の開閉板41の中心の両側に軸42を設けて、開閉させるため、シンプルな構造で、開けた時の空気抵抗が少なく、閉めた時の開閉板41にかかる風圧が均一なため勝手に開いたりしにくい構造となっている。また、開けた時に、排気口22の開口が大きいため、気密性の高いドア20を占めた状態で、療養中の方の食事などを部屋内に出し入れしやすい。
なお、1枚の開閉板41ではなく、複数の小さい開閉板を並べて、軸42をリンク等で連結して開閉させると、排気口22の前後への開閉板41の出っ張りが少なくなり、開閉板41を開けた時の外観上の美観も向上する。
また、本実施の形態では、気密性の高いドア20に排気口22が設けられているが、廊下(図示せず)等に面した壁に排気口22を設けて、開閉板41を開いた状態では、部屋(本実施の形態1では、複数の部屋以外の部屋である療養室7、実施の形態2では、複数の部屋及び複数の部屋以外の部屋)と廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等で合流し、還気路と連結し、結果的に、空調区画10に設けられた還気口14と連結した状態となればよい。
また、本実施の形態では、気密性の高いドア20に排気口22が設けられているが、排気口22が設けられない場合は、開閉可能な窓を設け、手動で、その窓の開き具合を調整することで、廊下(図示せず)等の還気路に流れる還気の風量を調節可能であるが、自動で開閉できない点と窓を閉めた状態での窓枠との気密性を高く維持する点に注意を図る必要がある。
【0020】
図3は、同システムの室外への排気口及び開閉機構の平面図と縦断面図で、図3(a)は開閉機構が閉まった状態、図3(b)、(c)は開閉機構が開いた状態を表している。
図3(a)は、複数の部屋である部屋A5、部屋B6等と複数の部屋以外の部屋である療養室7等に設けられた、室外25と繋がった室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47を0度に閉じて、室外への排気口26を塞いだ状態である。
図3(b)は、室外への排気口26の開閉板47を90度開いて、室外への排気口26が完全に開いた状態である。
図3(c)は、図3(b)の縦断面の拡大図である。
開閉板47は左右に設けられた軸48を中心に、0度(閉じた状態)から90度(開いた状態)まで、軸48に取り付けたモーター(図示せず)を設けて、電動で、無段階で調整可能である。なお、手動で0度から180度まで無段階で調整可能としてもよい。
【0021】
図3(a)において、室外への排気口26の木枠50の4方の周囲の排気口気密部51(網掛け部)には、図3(c)における、木枠50の内側4方に設けられた排気口凸部52に、気密用シール、パッキン(図示せず、ポリプロピレン製、ポリエステル製、塩化ビニル製、EPDMゴム製等)が貼り付けられ、図3(a)の開閉板47が閉じられた状態では、気密用シール、パッキンと4方で面接触し、閉めた時の気密性を高く維持している。
図3(c)において、室外への排気口26の左側は、部屋(複数の部屋である部屋A5、部屋B6等と複数の部屋以外の部屋である療養室7等)の内側で、右側は、室外25であり、開閉板47を開くと、部屋A5、部屋B6、療養室7と、室外25とが連結した状態となる。大きい矢印は、開閉板47を開けた時の風の流れる方向を示し、小さい矢印は、開閉板47の回転方向を示している。
本実施の形態では、1枚の開閉板47の中心の両側に軸48を設けて、開閉させるため、シンプルな構造で、開閉板47を開けた時の空気抵抗が少なく、閉めた時の開閉板47にかかる風圧が均一なため、外風圧等により勝手に開いたりしにくい構造となっている。
なお、1枚の開閉板47ではなく、複数の小さい開閉板を並べて、軸48をリンク等で連結して開閉させると、室外への排気口26の前後への開閉板の出っ張りが少なくなり、開閉板47を開けた時の外観上の美観も向上する。
なお、本実施の形態では、室外25に面した壁55を貫通する形で、室外への排気口26を設けているが、室外25に面した部屋、空間でない場合は、室外への排気口26の室外側をダクト(図示せず)やチャンバー(図示せず)により、室外25に面した壁に設けた室外への開口部(図示せず)に接続してもよい。
また、室外25に面した部屋に窓(図示せず)があり、その他の場所に室外への排気口26を設けることが困難で、窓(図示せず)に、開閉機構27を設置できない場合は、窓(図示せず)を手動で開閉し、その開き具合を調整することで、室外に排気する排気風量を調整可能であるが、自動で開閉できず、雨水や鳥、虫、埃等の侵入に注意を図る必要がある。
【0022】
図1において、複数の送風部13、空調部15、開閉機構21、27、換気扇28、外気導入ファン30、有害物質検知手段33、36、除菌・脱臭装置40等の入力、出力手段は、それぞれ複数の信号線61により、制御部60と電気的に接続され、通信を行い、本換気空調システム1を適正に制御している。なお、本実施形態では、通信は、信号線61による有線方式であるが、それぞれに無線通信部を設けて、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)、赤外線などの無線方式で行っても構わない。
【0023】
上記構成において、制御部60に接続されたコントローラ(図示せず)により、本換気空調システム1の運転を開始すると、外気導入ファン30により、室外空気が、ダクト31から導入され、有害物質検知手段33で室外空気の有害物質(臭気、細菌等)の有無/濃度/量等を検知し、HEPAフィルターで清浄され、ダクト32を通って、外気導入口11から空調区画10に入る。
各部屋、各空間からの還気が還気口14から空調区画10に入り、室外空気と空調後の空気である還気の一部が、空調部15により空調され、その空調空気と室外空気と還気の一部が、複数の送風部13による大風量で、空調区画10内でさらに混合され、その混合空気が、除菌・脱臭装置40により、除菌・脱臭され、複数の送風部13により、複数のダクト17を通して送風される。そして、混合空気は、複数の部屋である部屋A5、部屋B6、リビング(図示せず)、寝室(図示せず)、トイレ(図示せず)、洗面所(図示せず)、浴室(図示せず)、台所(図示せず)等と、複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、納戸(図示せず)等と、複数の部屋以外の部屋である療養室7等の各天井や壁等に設けられた複数の吸気部16から吹き出し、各部屋、各空間を空調する。
【0024】
複数の部屋である部屋A5、部屋B6等では、室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47をある程度開き、混合空気の供給により、室外25に対して正圧になった空調後の空気の一部は、各部屋の室外25へ排気される。また、空調後の空気の残りの一部は、各部屋のドア18のアンダーカットなどの排気口19から、廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等の還気路で合流し、空調区画10に戻る。
各部屋の吸気部16からの混合空気の送風量は、各部屋の室外への排気口26からの室外25への排気風量と排気口19からの還気路への還気風量に分配される。各部屋の室外への排気口26からの室外25への排気風量は、ある程度開いた開閉機構27の開閉板47の角度による室外への排気口26の開口断面積と室外25との差圧により決まり、また、排気口19からの還気路への還気風量は、排気口19の開口面積と、廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)との差圧により決まる。
通常状態では、排気風量は、建物全体として必要な最低限の24時間換気風量を部屋毎の面積で分配した小風量となるように、各部屋の室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47を調整し、送風量のうち残りは、大部分の還気風量となり、還気として、排気口19から、空調区画10に戻り、再び空調され、各部屋に循環される。
複数の部屋以外の部屋である療養室7等で、通常状態では、療養室7の有害物質検知手段36により検知した有害物質のレベルが、有害物質検知手段33で検知した室外空気の有害物質のレベルより低いため、制御部60にて、正圧モードと判定される。気密性の高いドア20の排気口22に設けられた開閉機構21の開閉板41を90度開いて、排気口22を完全に開けた状態にし、室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47をある程度開いて、換気扇28を停止させ、混合空気の送風量が室外への排気口26の排気風量より多いため、室外25に対して正圧になった空調後の空気の一部は、療養室7の室外25へ排気される。また、空調後の空気の残りの一部は、療養室7の気密性の高いドア20の排気口22から、廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等の還気路で合流し、空調区画10に戻る。
療養室7の吸気部16からの混合空気の送風量は、室外への排気口26からの室外25への排気風量と排気口22からの還気路への還気風量に分配され、その各風量は、複数の部屋である部屋A5、部屋B6の通常状態と同様な考え方で決定され、分配される。
排気口19、22が合流する還気路の還気は、送風部13により吸い込まれるため、室外25に対して負圧となるので、本実施の形態のように、室外25と還気路を繋ぐ室外空気導入路に、外気導入ファン30を設けてなくても、代わりに、開閉機構(図示せず)を設け、その開閉機構を調整すると、外気導入量を調整できる。例えば、室外に繋がる窓の開閉度合いの調整や、室外に繋がる開口部に設けられた開閉ダンパーの調整により、外気導入量を調整できるが、外気導入ファンによる調整と比べて、調整幅が小さく、精度よく調整するのが困難である。
空調後の空気である還気が、空調区画10にて、再度、空調され、各部屋、各空間に供給されるので、空調後の空気である還気の熱や空質が再利用され、結果的に省エネとなる。
【0025】
療養室7でウイルスに感染した者が療養している場合や、喫煙室(図示せず)で喫煙した場合などは、療養室7等の有害物質検知手段36により検知した有害物質のレベルが、有害物質検知手段33で検知した室外空気の有害物質のレベルより高くなり、制御部60にて、負圧モードと判定され、気密性の高いドア20の排気口22に設けられた開閉機構21の開閉板41を0度に閉じて、排気口22を完全に閉じた状態にし、室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47を90度開いて、室外への排気口26を完全に開けた状態で、換気扇28を大風量で運転させることにより、療養室7等では、混合空気の送風量より、室外への排気口26の排気風量が多くなり、室外25に対して負圧になり、空調後の空気は、療養室7の室外への排気口26から、換気扇28により、供給された空気を全て室外25に排気し、療養室7等内の有害物質(臭気、細菌など)を室外25に排出させ、さらに、療養室7のドア、窓、壁等の微小な隙間から他の部屋、空間の空気を吸って、室外25へ排気しようとするが、気密性の高いドア20と気密性の高い排気口22の開閉機構21により、廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等の還気路への有害物質の流出は発生しない。つまり、有害物質がすばやく室外25に排出され、他の部屋、他の空間に拡散するリスクが大幅に減る。
【0026】
負圧モードが一定時間経過し、療養室7等の有害物質検知手段36で検知した有害物質のレベルが、当初より減少し、ある閾値を下回ったが、室外空気の有害物質のレベルより大きい場合は、制御部60は、バランスモードと判定し、換気扇28による室外への排気口26の排気風量を混合空気の送風量と等しくなるまで減少させる。よって、有害物質を排出し、他の部屋、他の空間に拡散するリスクを減らしながら、室外への排気風量、熱量も適当に減らすので、負圧モードよりは、空調負荷が減り、省エネとなる。
なお、負圧モードやバランスモードで、換気扇28が無い場合や故障等で運転しない場合、混合空気の供給により、部屋内は正圧になり、室外への排気口26が完全に開いた状態のため、ほぼバランスモードと同様に、室外への排気口26の排気風量と混合空気の送風量とが等しくなり、部屋内の有害物質を排出でき、負圧である廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等への有害物質の流出に関しては、気密性の高いドア20と気密性の高い排気口22の開閉機構21が完全にしまっている状態により、リスクが減少する。
【0027】
正圧モードでは、複数の部屋である部屋A5、部屋B6等及び複数の部屋以外の部屋である療養室7等の室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47の角度を制御部60で調整することにより、室外への排気口26からの排気風量と排気口19及び22からの還気風量を制御する。つまり、各部屋の開閉機構27の開閉板47の角度による排気風量と、還気風量の調整とファン30による室外空気導入量の調整と、送風部13による送風量の調整で、各部屋の空調負荷に対応し、省エネで快適な温度となるように、制御部60が制御する。
複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)等では、混合空気の送風により、室外25に対して正圧になるが、室外への排気口が無いため、全ての空調後の空気である還気は、排気口19より、廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等の還気路を通って、還気口14から、空調区画10に戻る。
各送風部13の各送風量は、各部屋、各空間の容積から決定する。空調のために必要な送風量は、部屋2.5m3当たり少なくとも8m3/h以上、理想的には20m3/h以上が望ましく、部屋の大きさや日射などの空調負荷によって送風量を調整する。送風部13は、高効率なDCモーター(図示せず)でシロッコファン(図示せず)を回転させるので、空調負荷等によって、シロッコファン(図示せず)の回転数を制御部60で制御する。
【0028】
空調部15は建物の空調負荷により、能力、台数を選定する。
空調区画10で、外気導入ファン30により導入された新鮮な室外空気と空調部15で空調された空調空気と各部屋、各空間から還気を確実に混合させ、各部屋、各空間の温度差の少ない均一な温度、つまり、各部屋、各空間の目標温度に対し、冷房時5K以内、暖房時10K以内の温度差の混合空気となるように、空調部15の風量は、複数の送風部13の合計送風量の50%以下の風量とするのが望ましい。
その混合空気を複数の送風部13で、複数のダクト17を通して、各部屋、各空間の天井や壁に設けられた吸気部16から送風することにより、各部屋、各空間を均一な快適な温度に空調する。
例えば、建物の床面積が約100m、天井高さは2.5mの場合、4kW相当の冷房能力をもつ空調部15を設置し、弱風モードでは冷房運転時空調風量は700m3/hとなる。各部屋、各空間に送風する送風部13は、1台あたりの送風量が、弱風量で100m3/h程度、中風量で150m3/h程度、強風量で200m3/hのものを設定し、15台の送風部13の場合の合計送風量は1500m3/h~3000m3/h程度になり、空調機15の空調風量よりも多く、合計送風量の23~47%の風量が空調部15の空調風量(弱風モード)として設定する。
なお、空調風量とは、空調部15の熱交換器(図示せず)を通過する風量であり、大風量で各部屋に混合空調空気を吹出せるように、熱交換器通過による圧力損失を避けるため、熱交換器をバイパスする風路を有する空調部15の場合は、バイパス風路の風量は空調風量から除くものとする。
【0029】
外気導入ファン30で導入する室外空気導入量、各室外への排気口26からの合計排気風量、いわゆる換気風量としては、通常の正圧モードで、床面積約100m、天井高さ2.5mの換気回数0.5回/hの場合、24時間換気風量125m/hとする。有害物質が発生、流入した場合、負圧モードで、その部屋の換気扇28の排気風量が150m3/h程度増えるため、室外空気導入量も300m/h以上に風量を増やして、建物全体の給排バランスを維持する。バランスモードでは、その風量を150m3/h~250m3/h程度とする。
空調区画10に外気導入ファン30で導入する室外空気導入量は、多いほど、新鮮空気を供給する等、換気としての効果は大きいが、その分空調負荷が増大するため、基本的に、送風部13の合計送風量より少なくし、通常は、24時間換気風量を最低確保し、有害物質が発生、流入した場合は、その部屋の室外からの排気口26からの排気風量増大分だけ、増やすのが望ましい。
複数の部屋、空間の各排気風量は、各容積及び在室人員に応じて排気するのが望ましいが、通常の正圧モードでは、10~30m3/h程度とし、室外への排気口26からの排気風量がその程度となるように、開閉板47の角度を制御部60で調整し、建物全体での換気風量を適正に保てば、通常の水分や二酸化炭素、臭気、VOC他を排出でき、省エネで健康快適な空調を実現できる。
【0030】
療養室7で有害物質が発生、流入した場合、負圧モードで、療養室7の排気風量が150~200m3/hとなるよう、換気扇28を運転し、その他の部屋、空間の排気風量は正圧モードと同じ風量を維持すれば、療養室7の有害物質をすばやく室外に排出しながら、建物全体としての、水分や二酸化炭素他の最低限の排出は可能である。この場合、療養室7の排気風量が増え、空調空気の熱量も排出されるため、あわせて療養室7の送風部13の送風量をその分増やす、空調部15の設定温度を冷房時であれば下げる、暖房時であれば上げるなどを同時に実施するのが望ましい。
バランスモードでは、療養室7の排気風量を30~150m3/hとし、その他の部屋、空間の合計排気風量は正圧モードと同じ風量で維持する。空調空気の熱量も排出されるため、負圧モードと同様な考え方で、送風量、設定温度を制御するのが望ましい。
以上の風量となるよう、制御部60は、複数の送風部13の各送風量、空調部15の設定温度と空調風量、開閉機構21、27の開閉板41、47の角度、換気扇28の排気風量、外気導入ファン30の外気導入量等を制御する。
【0031】
なお、本実施の形態では、空調部15を熱交換器(図示せず)と空調送風機(図示せず)が一体の筐体に収められた、いわゆる空調室内機として、送風部13をいわゆる送風機として、空調区画10を空調室のような、四方を断熱壁に囲まれた1坪程度の比較的コンパクトな部屋として説明しているが、空調区画10を板金などに囲まれた筐体とし、筐体内に、空調部15として、熱交換器だけを設け、送風部13として、複数の送風機を設け、複数の送風機により、室外空気と還気を熱交換器に通過することにより空調空気とし、熱交換器をバイパスして通過させない室外空気と還気を空調空気と筐体内で混合させ、混合空気として、各部屋、各空間に送風してもよい。その場合でも、空調部15、複数の送風部13、除菌・脱臭装置40を、人が出入り可能でメンテナンス、作業できる程度の大きさが望ましい。
また、本実施例では、送風部13から複数のダクト17を通して、各部屋、各空間に、1対1で送風するが、例えば、広い1階のLDKなどは、建材で区画された送風チャンバーを通して、ダクト数本分の送風量をまとめて送風してもよい。また、直接的に、各部屋、各空間に送風するのではなく、天井裏空間や床下空間や階間区間を経由して、間接的に各部屋、各空間に送風してもよい。また、広い部屋、空間の吸気部16は、部屋内の温度分布を良くするため、複数あってもよい。但し、有害物質の他の部屋、空間への拡散のリスクを避けるため、複数の部屋以外の部屋、例えば、療養室7や喫煙室(図示せず)等へのダクト17は、送風部13と必ず1対1とし、複数の吸気部16をそのダクト17に接続する場合でも、他の部屋、空間にまたがらず、同一の部屋、空間に設ける必要がある。また、その場合でも、全ての送風部13とダクト17が1対1でないため、ダクト17の先の吸気部16の送風量を個別に制御できず、その吸気部16の設けられた部屋、空間の空調負荷にそれぞれ対応するのは困難になる。
【0032】
また、空調区画10に除菌・脱臭装置40を有しているので、室外空気に含まれている有害物質を除菌・脱臭するのは勿論、仮に、療養室7等で有害物質が発生、流入し、換気扇28でも有害物質が排出されず、気密性が高いドア20から、廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等へ有害物質が流出し、還気路を通って、還気口14から空調区画10に流入したとしても、その有害物質を除菌・脱臭するため、他の部屋、他の空間への送風による拡散は防止できる。
また、除菌・脱臭装置40は、必ずしも除菌と脱臭の両方の機能を備えている必要はなく、特にリスクの高い有害物質だけ除去し、臭いは除去しなくてよい場合は、対象とする有害物質の除去に非常に有効な除菌装置だけを設けてもよい。例えば、特に、近年、発生する頻度が増えている、新型ウイルス等による感染症等を防止するためには、以下に記述する方法が有効である。
つまり、米国疾病予防管理センター(CDC(2003))のガイドラインによると、感染症の患者を隔離する医療施設(負圧施設)の換気の基準として、
ア)換気回数が毎時12回(新規の建物)、毎時6回(既存の建物)を上回ること
イ)排気を屋外に出すか、高性能粒子フィルター(HEPAフィルター)を使って循環させること
(厚生労働省 ホームページ 参考資料 商業施設等における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について P1-P2 令和2年3月30日)
を示しており、感染病棟の感染防止対策として、空気循環経路にHEPAフィルターを設けることで効果があるとしている。本実施の形態の一例として、建物の床面積が約100m、天井高さは2.5mの場合、各部屋や各空間を均一な温度に省エネで換気空調するために、各部屋や各空間に送風する合計送風量が1500m/hであれば、循環回数6回/hとなり、合計送風量を3000m3/hに増加すれば、循環回数12回/hとなるので、除菌・脱臭装置40をHEPAフィルターとすれば、CDCの基準を満足することとなる。一般にHEPAフィルターは、通風抵抗が大きく、それだけの大風量を通過させると、送風機の性能(P-Q等)を大幅に向上させなければならず、また、騒音も増大するが、本実施の形態では、複数の送風部13、例えば、15台の送風部13で送風し、建物内を循環させるため、1台当たりの送風部13の性能向上は緩和される。また、1台当たりの送風量を増加させるのは、各送風部13のDCモーターの回転数を上げることで容易であり、消費電力の増加量がACモーターに比べると少なく、合理的に、省エネ高効率で、合計送風量を増やし、建物内の空気を除菌できる。
さらに、HEPAフィルターの通過風速を1m/s以下となるような空調区画10の還気口14の大きさとすれば、騒音の増大は抑えられるが、空調区画10を大きくすることは、建物内のスペースが十分あれば、比較的容易である。
さらに、通常、除菌・脱臭装置40は、どの方式であっても、定期的にメンテナンスが必要であるので、その装置をメンテナンスのために、人が出入り可能で、ある程度広い空調区画10に設けると、よりメンテナンスしやすく、空調区画10の断面積がダクト17等より大きく、空気の通過流速が遅いため、除菌・脱臭装置40の浄化効率が良化する。
【0033】
以上により、複数の部屋以外の部屋、例えば、療養室7や喫煙室(図示せず)等の有害物質や臭いが発生、流入する可能性の高い部屋に、気密性の高いドア20と開閉機構21を有する排気口22を設ける。通常は、正圧モードで、複数の部屋である部屋A5等及び複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)等の排気口19と複数の部屋以外の部屋である療養室7等の排気口22から、各部屋及び各空間を空調した空気である還気が、空調区画10に流入し、外気導入ファン30により導入された室外空気とともに空調部15により空調され、室外空気と空調空気と還気の混合空気となって、除菌・脱臭装置40により、除菌、脱臭され、複数の送風部13により、直接ダクト17を通って、各部屋、各空間の吸気部16から送風される。各部屋が室外に対して正圧になって、混合空気と入れ替わっていき、室外への排気口26から室外へ排出されながら、一部の空調後の空気が、還気として、排気口19、22から空調区画10に戻っていく。複数の部屋以外の部屋で有害物質が流入又は発生した場合は、負圧モード又は、バランスモードで、換気扇28により、すばやく室外25に排出し、他の部屋に有害物質や臭いが拡散するリスクが少なく、複数の部屋では、送風部13による吸気部16からの送風量と排気口19からの還気風量と室外への排気口26からの排気風量の調整により、部屋の負荷に対応した空調が行え、また一部の空調後の空気の熱や空気質は還気として再び空調に利用されるので、さらに省エネで高効率な空調換気を実現できる。
そして、空調区画10で、複数の送風部13による空調部15の空調風量及び外気導入ファン30の室外空気導入量より多い合計送風量により、室外空気と空調部15で空調された空気と還気がよく混合され、除菌・脱臭装置40で除菌・脱臭し、外気温と平均室温との差が小さい温度の新鮮空気を大風量で各部屋に送風するため、各部屋が均一な温度で快適で、空気清浄された健康な空間を実現できる。そして、空調室外機の圧縮機等を駆動させることにより、単位風量当たりのランニングコストが高い空調風量と、単位風量当たりの空調負荷が大きい室外空気導入量よりも、単位風量当たりのランニングコストと空調負荷が大幅に低く、小さい合計送風量を多くして、空気質の良い混合空気を建物内に循環させるシステムのため、省エネである。
【0034】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における換気空調システムの構成図である。図4に示す換気空調システム100は、実施の形態1の換気空調システム1と基本的な構成は同じで、説明の簡単化のため、同じ構成要素には同じ番号を付与し、その説明及び、なお書き、但し書きは省略し、一部の構成要素は省略する。図1と同様に、矢印は、風の流れる方向を示す。
【0035】
屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、階段下(図示せず)、階段の踊り場(図示せず)、機械室(図示せず)等の非居室に、空調区画10が設けられている。空調区画10内には、外気を導入する外気導入口11、複数の吸込口12を有する送風部13、複数の部屋である部屋A5と部屋B6等と複数の部屋以外の空間(図示せず)と複数の部屋以外の部屋である療養室7等からの還気を廊下(図示せず)や階段ホール(図示せず)等の還気路を通って導入する還気口14、室外に設置された空調室外機117と冷媒配管及び電気配線で接続された空調部15が設けられている。
【0036】
複数の送風部13と、複数の部屋である部屋A5、部屋B6、リビング(図示せず)、寝室(図示せず)、トイレ(図示せず)、洗面所(図示せず)、浴室(図示せず)、台所(図示せず)等と、複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、納戸(図示せず)等と、複数の部屋以外の部屋である療養室7、喫煙室(図示せず)等の各天井や壁等に設けられた複数の吸気部16とは、複数のダクト17又は送風用チャンバー(図示せず)で、それぞれ1対1対1で接続されている。
複数の部屋以外の空間のドア(図示せず)のアンダーカットなどの排気口(図示せず)と、複数の部屋である部屋A5、部屋B6と複数の部屋以外の部屋である療養室7等に設けられた気密性の高いドア20の開閉機構21を有する排気口22は、非居室である廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等で合流し、還気路を通って、空調区画10に設けられた還気口14と連結している。
複数の部屋である部屋A5、部屋B6等と複数の部屋以外の部屋である療養室7等には、室外25と繋がった室外への排気口26を設け、それぞれ開閉機構27を有する。なお、開閉機構21、27は、少なくとも完全に閉じる、完全に開ける動作ができるものとし、途中で何段階もしくは無段階での開閉量の調節が可能なものの方が、排気風量を細かく調整できるため、好ましい。
なお、複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、納戸(図示せず)等には、室外への排気口26を設けていない。
また、複数の部屋以外の部屋である療養室7等には、室外への排気口26に室外に排気する換気扇28を有する。
【0037】
外壁114に設けられた室外空気を建物内に導入する給気口115が、ダクト31によりフィルターボックス120と熱交換気ユニット130と繋がり、ダクト32で、空調区画10の外気導入口11に繋がっている。給気口115から外気導入口11までの風路を室外空気導入路とする。フィルターボックス120には、室外空気を清浄するHEPAフィルター34と、室外空気の有害物質検知手段33を有する。
なお、本実施の形態では、熱交換気ユニット130は、室外25とダクト31で繋がり、空調区画10とダクト32で繋がっているが、結果的に、空調区画10に、還気の一部と熱交換した室外空気が導入され、空調された空気と還気とが混合された混合空気が、各部屋、各空間に送風されればよい。例えば、空調区画10の還気口14の上流側であって、熱交換気ユニット130の排気側と接続されたダクト110の下流側の廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等の還気路に、外気導入口11を設け、熱交換気ユニット130の給気側と、ダクト等によって、繋いでもよい。
熱交換気ユニット130には、全熱熱交素子131と給気ファン(図示せず)と給気モーター(図示せず)と排気ファン(図示せず)と排気モーター(図示せず)とバイパスダンパーを有する。室外空気を給気ファンと給気モーターで給気し、建物内の還気の一部を排気ファンと排気モーターで排気しながら、全熱熱交素子131で全熱交換し、熱回収した新鮮な室外空気をダクト32で空調区画10に導入する。給気モーターと排気モーターは別々に回転数を制御し、室外空気導入量と排気風量を各々調整できる。また、バイパスダンパーは、モーターにより、電動で動作し、バイパスダンパーにより、室外への排気を全熱熱交素子131に通さないで、バイパスするバイパスモードと、全熱熱交素子131に通す熱交換気モードに切り替え可能である。
【0038】
廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)から空調区画10に設けられた還気口14に繋がった各部屋、各空間からの還気路と、熱交換気ユニット130はダクト110で接続され、外壁114に設けられた排気口116とはダクト111で接続されている。還気路からダクト110を通って、排気口116までの風路を室内空気排気路とする。つまり、還気路に繋いだ室外空気導入路と室内空気排気路に、熱交換気ユニット130は設けられている。
排気口116は、空調室外機117の熱交換器(図示せず)の吸込み側に設けられ、排気口116からの排出空気が漏れなく、熱交換器(図示せず)に吸い込まれるように、空調室外機117と外壁114との間に隔壁118が設けられている。
また、複数の部屋である部屋A5、部屋B6等と複数の部屋以外の部屋である療養室7の室外への排気口26、換気扇28の上流側にも、各部屋の空気の有害物質検知手段36を有する。
【0039】
複数の送風部13、空調部15、開閉機構21、27、換気扇28、熱交換気ユニット130、有害物質検知手段33、36、除菌・脱臭装置40等の入力、出力手段は、それぞれ複数の信号線161により、制御部160と電気的に接続され、通信を行い、本換気空調システム100を適正に制御している。
上記構成において、制御部160に接続されたコントローラ(図示せず)により、本換気空調システム100の運転を開始すると、熱交換気ユニット130により、室外空気が、給気口115、ダクト31から導入され、フィルターボックス120に入り、有害物質検知手段33で室外空気の有害物質(臭気、細菌等)の有無/濃度/量等を検知し、HEPAフィルター34で清浄され、ダクトを通って、熱交換気ユニット130で、室外空気と建物内の還気の一部と全熱熱交素子131で全熱交換し、熱回収した新鮮な室外空気をダクト32で、外気導入口11から空調区画10に入る。
各部屋、各空間からの還気の一部が還気口14から空調区画10に入り、室外空気と還気の一部が、空調部15により空調され、その空調空気と室外空気と還気の一部が、空調区画10内でさらに混合され、その混合空気が、除菌・脱臭装置40により、除菌・脱臭され、複数の送風部13により、複数のダクト17を通して送風される。そして、混合空気は、複数の部屋である部屋A5、部屋B6、リビング(図示せず)、寝室(図示せず)、トイレ(図示せず)、洗面所(図示せず)、浴室(図示せず)、台所(図示せず)等と、複数の部屋以外の空間である屋根裏(図示せず)、床下(図示せず)、納戸(図示せず)等と、複数の部屋以外の部屋である療養室7、喫煙室(図示せず)等の各天井や壁等に設けられた複数の吸気部16から混合空気が吹き出し、各部屋、各空間を空調する。
【0040】
複数の部屋である部屋A5、部屋B6等と複数の部屋以外の部屋である療養室7等で、通常状態では、各部屋の有害物質検知手段36により検知した有害物質のレベルが、有害物質検知手段33で検知した室外空気の有害物質のレベルより低いため、制御部160にて、正圧モードと判定される。気密性の高いドア20の排気口22に設けられた開閉機構21の開閉板41を90度開いて、排気口22を完全に開けた状態にし、換気扇28を停止させ、室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47を0度に閉じ、室外への排気口26を完全に閉じた状態にし、混合空気が各部屋に送風されるため、各部屋が正圧となり、空調後の空気は排気口22から廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等を通って、還気口14に繋がる還気路に流入する。
還気の一部は、還気口14から空調区画10に戻り、再び空調され、各部屋、各空間に供給されるので、空調後の空気の熱や空気質が再利用され、結果的に省エネとなる。
残る還気の一部は、ダクト110を通って、熱交換気ユニット130で、室外空気と全熱熱交素子131で全熱交換され、ダクト111を通って、外壁114に設けられた排気口116から室外25に排出され、空調後の空気の熱を回収して新鮮な室外空気を建物内に導入しながら、空調後の空気を室外25に排出するので、さらに省エネで、健康で快適な空間を常に実現できる。
【0041】
療養室7で、ウイルスに感染した者が療養している場合や、喫煙室(図示せず)で、喫煙した場合などは、有害物質検知手段36により検知した有害物質のレベルが、有害物質検知手段33で検知した室外空気の有害物質のレベルより高くなり、制御部160にて、負圧モードと判定される。療養室7の気密性の高いドア20の排気口22に設けられた開閉機構21の開閉板41を0度に閉じて排気口22を完全に閉じた状態にし、室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47を90度開き、室外への排気口26を完全に開いて、換気扇28を大風量で運転させることにより、療養室7への混合空気の送風量より、室外への排気口26の排気風量が多いため、室外25に対して負圧になり、空調後の空気は、療養室7の室外への排気口26から、換気扇28により、供給された空気を全て室外25に排気し、療養室7内の有害物質(臭気、細菌など)を室外25に排出させ、さらに、療養室7のドア、窓、壁等の微小な隙間から他の部屋、空間の空気を吸って、室外25へ排気しようとするが、気密性の高いドア20と気密性の高い排気口22の開閉機構21により、廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等への有害物質の流出は発生しない。つまり、有害物質がすばやく室外25に排出され、他の部屋、他の空間に拡散するリスクが大幅に減る。
その他の部屋では、有害物質等が発生、流入していないため、有害物質検知手段36により検知した有害物質のレベルが、有害物質検知手段33で検知した室外空気の有害物質のレベルより低いので、制御部160にて、正圧モードと判定される。
【0042】
また、春や秋の中間期や夏の夜間など、室外気温が室内の目標温度に近い場合は、空調部15を停止させ、熱交換気ユニット130をバイパスモードとして、給気モーターの回転数を大風量側に調整し、室外空気を排気する還気と全熱熱交素子131で熱交換しないで空調区画に導入して、送風部13により各部屋の吸気部16から送風し、各部屋の排気口22の開閉機構21の開閉板41を閉じ、室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47の角度を開けるように調整し、換気扇28の風量を大風量側へ調整することにより、室外空気で、各部屋を空調及び換気するので、より省エネで高効率な換気空調を実現できる。
部屋A5等の換気扇28が無い部屋で、特別な臭いが発生した場合など、有害物質検知手段36により検知した有害物質のレベルが、有害物質検知手段33で検知した室外空気の有害物質のレベルより少し高くなり、制御部160は、バランスモードと判定し、部屋A5の気密性の高いドア20の排気口22に設けられた開閉機構21の開閉板41を0度に閉じて排気口22を完全に閉じた状態にし、室外への排気口26の開閉機構27の開閉板47を90度開き、室外への排気口26を完全に開くことにより、混合空気の送風により、有害物質を押し出すように室外25へ排出し、室外への排気口26の排気風量を混合空気の送風量とほぼ等しくし、負圧である廊下(図示せず)、階段ホール(図示せず)、玄関(図示せず)等への有害物質の流出に関しては、気密性の高いドア20と気密性の高い排気口22の開閉機構21が完全にしまっている状態により、リスクが減少する。また、室外への排気風量、熱量も適当に減るので、負圧モードよりは、空調負荷が減り、省エネとなる。
【0043】
また、排気口116からの熱交換気ユニット130で回収されなかった全熱を有する排出空気と室外空気が合流して、隔壁118により、空調室外機117の熱交換器(図示せず)に吸い込まれる。つまり、夏季は、冷房された室内空気(還気の一部、排出空気)と室外空気が熱交換気ユニット130で熱交換されても、全熱でも通常50%から70%程度しか熱交換できない。従って、室外空気より全熱の少ない(温度、湿度が低い)排出空気が排気口116から排出され、その空気と室外空気が合流し、室外空気よりも全熱の少ない空気となって、凝縮器である熱交換器(図示せず)に通過させ、冷媒に全熱交換させる。また、冬季は、暖房された室内空気(還気の一部、排出空気)と室外空気が熱交換気ユニット130で熱交換されても、全熱でも通常60%から80%程度しか熱交換できない。従って、室外空気より全熱の多い(温度、湿度が高い)排出空気が排出口116から排出され、その空気と室外空気が合流し、室外空気よりも全熱の多い空気となって、蒸発器である熱交換器(図示せず)に通過させ、冷媒に全熱交換させる。
このように、熱交換気ユニット130から排出された排出空気を室外25に排出する排気口116を空調室外機117の熱交換器(図示せず)の吸込み側に設けたことにより、熱交換気ユニット130で回収しきれなかった熱をさらに回収し、より省エネな換気空調を実現できる。
【0044】
熱交換気ユニット130で導入する室外空気導入量、室外への排気風量は、基本的に同等とし、通常の正圧モードで、床面積約100m、天井高さ2.5mの換気回数0.5回/hの場合、24時間換気風量125m/hとする。有害物質が発生、流入した場合、負圧モードでは、発生した部屋の換気扇28による大風量排気で、建物全体として、排気風量が150m3/h程度増えるため、熱交換気ユニット130の室外空気導入量も300m3/h以上に風量を増やしながら、室外への排気風量は125m3/hと維持して、建物全体の給排バランスを維持する。バランスモードでは、室外空気導入量を150m3/h~250m3/h程度とする。
各送風部13の各送風量と合計送風量、空調部15の能力と空調風量、複数の部屋と空間の各排気風量等は、実施の形態1と同様に決定する。
【0045】
以上の風量となるよう、制御部160は、複数の送風部13の各送風量、空調部15の設定温度と空調風量、開閉機構21、27の開閉板41、47の角度、換気扇28の排気風量、熱交換気ユニット130の外気導入量等を制御する。
なお、本実施の形態の全熱熱交素子131は、室外25に排出する排出空気側の水分が、建物内に導入する室外空気側に適当に移動するが、臭いは移動しにくい構造、材質、例えば、活性炭などの吸着性材料を含有するのが望ましい。
また、結露や臭いが非常に多い環境下の使用については、熱交換効率が悪く、ドレン水の排水工事が必要となるが、全熱熱交素子131の代わりに、顕熱熱交換素子を使用してもよい。
【0046】
以上により、部屋を選ばず、通常は、正圧モードとして、複数の部屋の排気口22の開閉機構21を開け、室外への排気口26の開閉機構27を閉じ、空調した後の空気である還気の一部が空調区画10に流入し、還気の一部が熱交換気ユニット130により室外空気と熱交換され、室外に排出される。熱交換された室外空気と還気の一部は、ともに空調部15により空調され、複数の送風部13により、室外空気と空調空気と還気の混合空気が、直接ダクト17を通って、複数の部屋の吸気部16から送風されて、送風部13による送風量と排気口22を通る還気風量と熱交換気ユニット130による排気風量と室外空気導入量の調整により、部屋の負荷に対応した空調が行え、より多くの排気熱を回収し、また一部の空調空気の熱や空気質は還気として再び空調に利用されるので、より省エネで高効率な換気空調を実現できる。
ある部屋で有害物質が流入又は発生した場合は、負圧モード又は、バランスモードで、その部屋の換気扇28を運転又は、排気口26の開閉機構27を開けて、すばやく室外25に有害物質を排出し、気密性の高いドア20の排気口22の開閉機構21を閉めて、他の部屋に有害物質や臭いが拡散するリスクを少なくする。その他の部屋では、送風部13による吸気部16からの送風量と排気口22からの還気風量と熱交換気ユニット130による排気風量と室外空気導入量の調整により、部屋の負荷に対応した空調が行え、排気からの熱交換気ユニット130と空調室外機117による熱回収で、また一部の空調後の空気の熱や空気質は還気として再び空調に利用されるので、さらに省エネで高効率な空調換気を実現できる。
そして、空調区画10で、複数の送風部13による空調部15の空調風量及び熱交換気ユニット130の室外空気導入量より多い合計送風量により、室外空気と空調部15で空調された空気と還気がよく混合され、除菌・脱臭装置40で除菌・脱臭し、外気温と平均室温との差が小さい温度の新鮮空気を大風量で各部屋に送風するため、各部屋が均一な温度で快適で、空気清浄された健康な空間を実現できる。
そして、空調室外機117の圧縮機等を駆動させることにより、単位風量当たりのランニングコストが高い空調風量と、単位風量当たりの空調負荷が大きい室外空気導入量よりも、単位風量当たりのランニングコストと空調負荷が大幅に低く、小さい合計送風量を多くして、空気質の良い混合空気を建物内に循環させるシステムのため、省エネである。
また、室外への排気口26に設けた換気扇28により、部屋を選ばず、通常は、室外への排気口26に設けた換気扇28の運転を停止し、有害物質が流入又は発生した場合などは、その部屋の換気扇28で大風量排気を行い、より迅速で確実な有害物質の排出が可能な換気空調を実現できる。そして、春や秋の中間期や夏の夜間などは、部屋の排気口22の開閉機構21を閉じ、室外への排気口26の開閉機構27を開けて、その換気扇28の風量を調整し、室外空気を熱交換気ユニット130で熱交換せず、空調区画10に導入して、送風部13により各部屋の吸気部16から給気することにより、室外空気で空調及び換気するので、より省エネで高効率な換気空調を実現できる。
また、複数の部屋とフィルターボックス120に、有害物質検知手段33、36を設け、 空調部15、送風部13、熱交換気ユニット130、換気扇28、排気口22の開閉機構21、室外への排気口26の開閉機構27等を制御部160で制御するようにしたため、通常は正圧モードで、空調優先で省エネ快適運転とし、有害物質や臭いが発生した直後や有害物質が拡散し、又は臭いが激しくなった時は負圧モードで、換気優先で大風量排気による健康運転とし、その他の場合は、バランスモードで、換気と空調のバランスをとった健康快適な運転をするように、自動で制御を行う換気空調を実現できる。
また、空調区画10に除菌・脱臭装置40を有しているので、建物内のどこに有害物質が発生又は流入しても、換気扇28や熱交換気ユニット130により、室外に排出されない空気は、還気として、大風量で建物内を循環し、空調区画10で、除菌・脱臭装置40により、その有害物質を除菌・脱臭するため、建物内の全ての有害物質を室外へ排出又は、除菌・脱臭できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
建物内全体の高効率な換気及び空調空気の流れを作り出すことができるシステムであり、建物内のどこかで有害物質が発生、流入するリスクがある建物であれば、一般住宅だけでなく、部屋数の多いホテルや事務所、商業施設、病院、工場、研究施設などの建物の換気空調にも適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 換気空調システム
5 部屋A
6 部屋B
7 療養室
10 空調区画
11 外気導入口
12 吸込口
13 送風部
14 還気口
15 空調部
16 吸気部
17 ダクト
18 ドア
19 排気口(排気手段)
20 気密性の高いドア
21 開閉機構
22 排気口(排気手段)
25 室外
26 室外への排気口(室外への排気手段)
27 開閉機構
28 換気扇
29 屋外フード
30 外気導入ファン
31 ダクト
32 ダクト
33 有害物質検知手段
34 HEPAフィルター
35 ファンモーター
36 有害物質検知手段
40 除菌・脱臭装置
41 開閉板
42 軸
43 ドア気密部
44 ドア凸部
45 排気口気密部
46 排気口凸部
47 開閉板
48 軸
50 木枠
51 排気口気密部
52 排気口凸部
55 壁
60 制御部
61 信号線
100 換気空調システム
110 ダクト
111 ダクト
114 外壁
115 給気口
116 排気口
117 空調室外機
118 隔壁
120 フィルターボックス
130 熱交換気ユニット
131 全熱熱交素子
160 制御部
161 信号線

図1
図2
図3
図4