(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】近視の治療のための電気的に調整可能な視力補助具
(51)【国際特許分類】
G02C 7/08 20060101AFI20240530BHJP
G02C 7/06 20060101ALI20240530BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240530BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240530BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240530BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20240530BHJP
A61B 3/103 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
G02C7/08
G02C7/06
G02F1/13 505
G02F1/1347
G02F1/1335
G02F1/1335 510
A61B3/113
A61B3/103
(21)【出願番号】P 2021568848
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 IB2020054524
(87)【国際公開番号】W WO2020245680
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-02-27
(32)【優先日】2019-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515078671
【氏名又は名称】オプティカ アムカ(エー.エー.)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】アロン、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ハダッド、ヤリーフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤディン、ヨアフ
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-519684(JP,A)
【文献】特開2017-173825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0066808(US,A1)
【文献】特表2008-514318(JP,A)
【文献】特開2015-132827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0113772(US,A1)
【文献】特表2017-523445(JP,A)
【文献】米国特許第10268050(US,B2)
【文献】中国実用新案第207380380(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/08
G02C 7/06
G02F 1/13
G02F 1/1347
G02F 1/1335
A61B 3/113
A61B 3/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視力矯正のための装置であって:
屈折異常を有する被験者の眼の近くに取り付けられるように構成された、電気的に調整可能な位相変調器と;
屈折異常を矯正するように選択される所定の屈折力を有する固定レンズ構成要素と;そして
制御回路であって、駆動信号を前記電気的に調整可能な位相変調器に適用して、前記眼の視線を遮る中央ゾーン内に第1の位相変調プロファイルを、そして弧の少なくとも180度にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する周辺ゾーン内に第2の位相変調プロファイルを、前記電気的に調整可能な位相変調器内に生成するように構成される制御回路と;
を有し、
前記第1の位相変調プロファイルは、平坦であり、そして前記電気的に調整可能な位相変調器に入射する光に屈折力を適用せず、そして前記第2の位相変調プロファイルは、前記電気的に調整可能な位相変調器に入射する光にゼロではない屈折力を適用する、
ことを特徴とする視力矯正のための装置。
【請求項2】
前記眼の視線の角度を検出するように構成されるアイトラッカを備え、前記制御回路は、前記視線の角度の変化に応答して前記中央ゾーンおよび前記周辺ゾーンをシフトするために前記駆動信号を変更するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記周辺ゾーンが、弧の少なくとも270度にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記周辺ゾーンは、弧の360度にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する環を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記固定レンズ
構成要素の前記所定の屈折力は負であり、前記第2の位相変調プロファイルの前記ゼロではない屈折力は、正である、ことを特徴とする請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記第2の位相変調プロファイルが、前記視線に関して半径方向に前記周辺ゾーンを横切って連続的に変化するように、前記駆動信号を適用するように構成される、ことを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記第2の位相変調プロファイルが、前記視線に関して横方向に前記周辺ゾーンを横切ってピークおよびトラフの交互のパターンを含むように、駆動信号を適用するように構成される、ことを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記パターンは、前記第2の位相変調プロファイルが前記ゼロではない屈折力のフレネルレンズをエミュレートするように選択される、ことを特徴とする請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記パターンは、前記第2の位相変調プロファイルが、前記ゼロではない屈折力を有するマイクロレンズのアレイをエミュレートするように選択される、ことを特徴とする請求項
7に記載の装置。
【請求項10】
前記電気的に調整可能な位相変調器は:
電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において、前記電気光学層を横切って当該場所で印加される電圧波形によって決定される有効局所屈折率を有する、電気光学層と;
前記電気光学層の対向する第1および第2の側面上に延びる導電性電極と;
を有し、
前記制御回路は、前記駆動信号を前記導電性電極に適用するように構成される、
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記第1の位相変調プロファイルは、前記中央ゾーン内において前記眼による鮮明な視力を可能にし、一方、前記第2の位相変調プロファイルは、前記周辺ゾーンを介して前記眼に入射する光をぼかすように選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第2の位相変調プロファイルは非放物線状の断面を有する、ことを特徴とする請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2の位相変調プロファイルは、前記視線に関して横方向に前記周辺ゾーンを横切るピークおよびトラフの交互のパターンを有する、ことを特徴とする請求項
11または
12に記載の装置。
【請求項14】
前記パターンは、前記第2の位相変調プロファイルがマイクロ
レンズのアレイをエミュレートするように選択される、ことを特徴とする請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
前記眼の視線の角度を検出するように構成されるアイトラッカを備え、前記制御回路は、前記視線の角度の変化に応答して前記中央ゾーンおよび前記周辺ゾーンをシフトするために前記駆動信号を変更するように構成される、ことを特徴とする請求項
11または
12に記載の装置。
【請求項16】
前記周辺ゾーンが、弧の少なくとも270°にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する、ことを特徴とする請求項
11または
12に記載の装置。
【請求項17】
前記周辺ゾーンは、弧の360度にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する環を有する、ことを特徴とする請求項
16に記載の装置。
【請求項18】
視力矯正のための方法であって:
屈折異常を有する被験者の眼の近くに取り付けられる、電気的に調整可能な位相変調器を提供するステップと;
屈折異常を矯正するように選択される所定の屈折力を有する固定レンズ構成要素を提供するステップと;そして
前記電気的に調整可能な位相変調器を駆動して、前記眼の視線を遮る中央ゾーン内に第1の位相変調プロファイルを、そして弧の少なくとも180度にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する周辺ゾーン内に第2の位相変調プロファイルを、前記電気的に調整可能な位相変調器内に生成するステップと;
を有し、
前記第1の位相変調プロファイルは平坦であり、そして、前記電気的に調整可能な位相変調器に入射する光に屈折力を適用せず、そして前記第2の位相変調プロファイルは、前記電気的に調整可能な位相変調器に入射する光にゼロではない屈折力を適用する、
ことを特徴とする視力矯正のための方法。
【請求項19】
前記眼の前記視線の角度を検出するステップを有し、前記電気的に調整可能な位相変調器を駆動するステップは、前記視線の角度の変化に応答して前記中央ゾーンおよび前記周辺ゾーンをシフトするステップを有する、ことを特徴とする請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記周辺ゾーンが、弧の少なくとも270度にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する、ことを特徴とする請求項
18に記載の方法。
【請求項21】
前記周辺ゾーンは、弧の360度にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する環を有する、ことを特徴とする請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記固定レンズ
構成要素の前記所定の屈折力は負であり、前記第2の位相変調プロファイルの前記ゼロではない屈折力は、正である、ことを特徴とする請求項
18に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の位相変調プロファイルが前記視線に関して半径方向に前記周辺ゾーンを横切って連続的に変化するように、前記電気的に調整可能な位相変調器は駆動される、ことを特徴とする請求項
18~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第2の位相変調プロファイルが前記視線に関して横方向に前記周辺ゾーンを横切ってピークおよびトラフの交互のパターンを含むように、前記電気的に調整可能な位相変調器は駆動される、ことを特徴とする請求項
18~22のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記パターンは、前記第2の位相変調プロファイルが前記
ゼロではない屈折力のフレネルレンズをエミュレートするように選択される、ことを特徴とする請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
前記パターンは、前記第2の位相変調プロファイルが、前記
ゼロではない屈折力を有するマイクロレンズのアレイをエミュレートするように選択される、ことを特徴とする請求項
24に記載の方法。
【請求項27】
前記電気的に調整可能な位相変調器は:
電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において、前記電気光学層に当該場所で印加される電圧波形によって決定される有効局所屈折率を有する、電気光学層と;
前記電気光学層の対向する第1および第2の側面上に延びる導電性電極と;
を有し、
前記電気的に調整可能なレンズを駆動するステップは、駆動信号を前記導電性電極に適用するステップを有する、
ことを特徴とする請求項
18~22のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記第1の位相変調プロファイルは、前記中央ゾーン内において前記眼による鮮明な視力を可能にし、一方、前記第2の位相変調プロファイルは、前記周辺ゾーンを介して前記眼に入射する光をぼかす、
ことを特徴とする請求項
18に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の位相変調プロファイルは非放物線状の断面を有する、ことを特徴とする請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の位相変調プロファイルは、前記視線に関して横方向に前記周辺ゾーンを横切るピークおよびトラフの交互のパターンを有する、ことを特徴とする請求項
28または
29に記載の方法。
【請求項31】
前記パターンは、前記第2の位相変調プロファイルがマイクロレンズのアレイをエミュレートするように選択される、ことを特徴とする請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
前記眼の前記視線の角度を検出するステップを有し、前記電気的に調整可能な位相変調器を駆動するステップは、前記視線の前記角度の変化に応答して前記中央ゾーンおよび前記周辺ゾーンをシフトするステップを有する、ことを特徴とする請求項
28または
29に記載の方法。
【請求項33】
前記周辺ゾーンが、弧の少なくとも270度にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する、ことを特徴とする請求項
28または
29に記載の方法。
【請求項34】
前記周辺ゾーンは、弧の360度にわたって前記中央ゾーンの周りに延在する環を有する、ことを特徴とする請求項
33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光学デバイス、特に電気的に調整可能なレンズおよび他の視力補助装置に関する。
【0002】
(関連アプリケーションへの相互参照)
この出願は、2019年6月2日に出願された米国仮特許出願62/856,065(特許文献1)の利益を主張し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
調整可能レンズは、焦点距離や光軸の位置などの光学特性を、通常は電子制御下で使用中に調整可能な光学素子である。そのようなレンズは、特に視力補助としての役割を果たすことを含む、多種多様な用途で使用することができる。例えば、米国特許第7,475,985号(特許文献2)は、視力矯正を目的とした電気活性レンズの使用を記載している。本説明の文脈および特許請求の範囲で使用される「視力補助」という用語は、被験者の目の前に配置され、被験者の視力を高めるために選択される、固定および/または調整可能な光学特性を有する透明な光学要素を指す。
【0004】
電気的に調整可能なレンズは、通常、適切な電気光学材料、つまり、材料を横切って印加される電圧の関数として局所的な有効屈折率が変化する材料、の薄層を含む。屈折率を所望の値に局所的に調整するために、電極または電極のアレイを使用して、所望の電圧を印加する。液晶は、この目的で最も一般的に使用される電気光学材料である(印加電圧によって分子が回転し、複屈折の軸が変化するため、実効屈折率が変化する)が、同様の電気光学特性を有するポリマーゲルなどの他の材料が、この目的のために代替的に使用可能である。
【0005】
一部の調整可能なレンズの設計では、液晶ディスプレイで使用される種類のピクセルグリッドと同様に、電極アレイを使用して液晶内のピクセルのグリッドを画定する。個々のピクセルの屈折率は、電気的に制御されて、所望の位相変調プロファイルを与えることができる。(「位相変調プロファイル」という用語は、本説明および特許請求の範囲において、その領域にわたる局所的に変化する実効屈折率の結果として、層を通過する光に適用される局所的な位相シフトの分布を意味するために使用される。この種のグリッドアレイを使用するレンズは、例えば、上記の米国特許第7,475,985号(特許文献2)に記載されている。
【0006】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるPCT国際出願公開WO2014/049577(特許文献3)は、電気光学層の活性領域内の任意の所与の位置において、その場所の電気光学層に印加される電圧波形によって決定される有効局所屈折率を有する電気光学層を備える光学デバイスを記載している。活性領域上に延びる平行な導電性ストライプを含む励起電極のアレイが、電気光学層の片側または両側に配置されている。制御回路は、それぞれの制御電圧波形を励起電極に印加し、そして励起電極に適用されるそれぞれの制御電圧波形を同時に変更して、電気光学層に指定された位相変調プロファイルを生成するように構成される。
【0007】
近眼(近視)は、人間の目が光にオーバーフォーカスして、網膜ではなく網膜の前に画像を生成する状態である。その結果、網膜上で知覚される画像がぼやける。米国特許出願公開第2012/0133891号(特許文献4)は、少なくとも1つの適応型レンズ、電源、およびアイトラッカを含む近視を矯正するための電気光学装置および方法を記載している。アイトラッカは、適応型レンズおよび画像センサに動作可能に接続された画像センサおよびプロセッサを含む。プロセッサは、イメージセンサから電気信号を受信し、適応型レンズの矯正力を制御して近視を矯正するように構成されており、矯正力は、ユーザの視線距離、および近視処方強度に依存する。
【0008】
近視の進行を遅らせる(すなわち、遠方の鮮明な視界を可能にするために必要な光パワーの増加を遅らせる)ためのいくつかの治療法が研究されてきた。これらの方法は一般に「近視コントロール」と呼ばれる。例えば、米国特許第7,503,655号(特許文献5)は、一方で中央の、軸上のまたは軸方向の網膜上の焦点位置を維持しながら、中央の、軸上の、または軸方向の焦点に関して周辺の、軸外の焦点を再配置するための少なくとも1つの実質的な矯正刺激を生成するための所定の矯正因子を提供することによって、光学収差を制御して相対的像面湾曲を変更するための方法および装置を記載している。本発明は、同時に近視または遠視の進行を遅延または軽減しながら、連続的で有用な鮮明な視覚画像を提供すると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国仮特許出願62/856,065
【文献】米国特許第7,475,985号
【文献】PCT国際出願公開WO2014/049577
【文献】米国特許出願公開第2012/0133891号
【文献】米国特許第7,503,655号
【発明の概要】
【0010】
以下に記載される本発明の実施形態は、視力矯正、特に近視の治療のための改善された方法および装置を提供する。
【0011】
したがって、本発明の実施形態によれば、視力矯正のための装置であって:屈折異常を有する被験者の眼の近くに取り付けられるように構成された、電気的に調整可能なレンズを有する装置が提供される。制御回路は、駆動信号を電気的に調整可能なレンズに適用して、眼の視線を遮る中央ゾーン内に第1の位相変調プロファイルを、そして弧の少なくとも180度にわたって中央ゾーンの周りに延在する周辺ゾーン内に第2の位相変調プロファイルを、電気的に調整可能なレンズ内に生成するように構成される。第1の位相変調プロファイルは、電気的に調整可能なレンズに入射する光に屈折異常を矯正するように選択された第1の大きさの第1の屈折力を適用し、そして第2の位相変調プロファイルは、電気的に調整可能なレンズに入射する光に第1の位相変調プロファイルより小さい第2の大きさの第2の屈折力を適用する。
【0012】
開示された実施形態では、屈折異常は、眼の近視によるものであり、そして第1の屈折力は、近視を矯正するように選択された第1の大きさの負の屈折力である。
【0013】
いくつかの実施形態では、装置は記眼の視線の角度を検出するように構成されるアイトラッカを備え、制御回路は、視線の角度の変化に応答して中央ゾーンおよび周辺ゾーンをシフトするために駆動信号を変更するように構成される。追加的または代替的に、制御回路は、電気的に調整可能なレンズから眼によって見られる物体までの距離を査定し、当該距離に応答して第1の屈折力を調整するように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、周辺ゾーンが、弧の少なくとも270度にわたって中央ゾーンの周りに延在する。このような1つの実施形態では、周辺ゾーンは、弧の360度にわたって中央ゾーンの周りに延在する環を有する。
【0015】
開示された実施形態では、電気的に調整可能なレンズは、所定の屈折力を有する固定レンズ要素と、駆動信号によって制御される可変屈折力を有する調整可能要素とを含む複合レンズである。
【0016】
一実施形態では、制御回路は、第2の位相変調プロファイルが、視線に関して半径方向に周辺ゾーンを横切って連続的に変化するように、駆動信号を適用するように構成される。
【0017】
他の実施形態では、制御回路は、第2の位相変調プロファイルが、視線に関して横方向に周辺ゾーンを横切ってピークおよびトラフの交互のパターンを含むように、駆動信号を適用するように構成される。そのような一実施形態では、パターンは、第2の位相変調プロファイルが第2の屈折力のフレネルレンズをエミュレートするように選択される。あるいは、パターンは、第2の位相変調プロファイルが、第2の屈折力を有するマイクロレンズのアレイをエミュレートするように選択される。
【0018】
開示された実施形態では、電気的に調整可能なレンズは:電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において、電気光学層に当該場所で印加される電圧波形によって決定される有効局所屈折率を有する、電気光学層と;電気光学層の対向する第1および第2の側面上に延びる導電性電極と;を有し、制御回路は、駆動信号を導電性電極に適用するように構成される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、視力矯正のための装置であって:被験者の眼の近くに取り付けられるように構成された、電気的に調整可能な光位相変調器を有する装置が提供される。制御回路は、駆動信号を光位相変調器に適用して、眼の視線を遮る中央ゾーン内に第1の位相変調プロファイルを、そして弧の少なくとも180度にわたって中央ゾーンの周りに延在する周辺ゾーン内に、第1の位相変調プロファイルとは異なる第2の位相変調プロファイルを、光位相変調器内に生成するように構成される。第1の位相変調プロファイルは、中央ゾーン内において眼による鮮明な視力を可能にするように選択され、一方、第2の位相変調プロファイルは、周辺ゾーンを介して眼に入射する光をぼかすように選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の位相変調プロファイルは放物線状の断面を有し、第2の位相変調プロファイルは非放物線状の断面を有する。開示された実施形態では、第1の位相変調プロファイルは、眼の屈折異常を矯正するように選択された屈折力を、光位相変調器の中央ゾーンに入射する光に適用するように選択される。
【0021】
追加的または代替的に、第2の位相変調プロファイルは、視線に関して横方向に周辺ゾーンを横切るピークおよびトラフの交互のパターンを有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、装置は眼の視線の角度を検出するように構成されるアイトラッカを備え、制御回路は、視線の角度の変化に応答して中央ゾーンおよび周辺ゾーンをシフトするために駆動信号を変更するように構成される。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、視力矯正のための方法であって:屈折異常を有する被験者の眼の近くに取り付けられる、電気的に調整可能なレンズを提供するステップを有する方法が提供される。電気的に調整可能なレンズは駆動されて、眼の視線を遮る中央ゾーン内に第1の位相変調プロファイルを、そして弧の少なくとも180度にわたって中央ゾーンの周りに延在する周辺ゾーン内に第2の位相変調プロファイルを、電気的に調整可能なレンズ内に生成する。第1の位相変調プロファイルは、電気的に調整可能なレンズに入射する光に屈折異常を矯正するように選択された第1の大きさの第1の屈折力を適用し、そして第2の位相変調プロファイルは、電気的に調整可能なレンズに入射する光に第1の位相変調プロファイルより小さい第2の大きさの第2の屈折力を適用する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、視力矯正のための方法であって:被験者の眼の近くに取り付けられるための、電気的に調整可能な光位相変調器を提供するステップを有する方法がさらに提供される。光位相変調器は駆動されて、眼の視線を遮る中央ゾーン内に第1の位相変調プロファイルを、そして弧の少なくとも180度にわたって中央ゾーンの周りに延在する周辺ゾーン内に、第1の位相変調プロファイルとは異なる第2の位相変調プロファイルを、光位相変調器内に生成する。第1の位相変調プロファイルは、中央ゾーン内において眼による鮮明な視力を可能にし、一方、第2の位相変調プロファイルは、周辺ゾーンを介して眼に入射する光をぼかす。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明から、以下の図面と併せて、より完全に理解されよう:
【
図1】本発明の一実施形態による、適応型眼鏡の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、電気的に調整可能なレンズシステムの概略側面図である。
【
図3A-C】
図3Aは本発明の一実施形態による、電気的に調整可能なレンズの、レンズを横切る位置の関数としての屈折力の概略プロットである。
図3Bは、本発明の一実施形態による、レンズを横切る位置の関数としての、
図3Aの電気的に調整可能なレンズによって印加される位相変調プロファイルの概略プロットである。
図3Cは、本発明の別の一実施形態による、レンズを横切る位置の関数としての、電気的に調整可能なレンズによって印加される位相変調プロファイルの概略プロットである。
【
図4A-B】
図4Aは、本発明の一実施形態による、
図3Aの電気的に調整可能なレンズの、レンズを横切る位置の関数としての屈折力の概略プロットであり、レンズのユーザの眼球の動きに応答した屈折力の横方向のシフトを示している。
図4Bは、本発明の一実施形態による、
図4Aの電気的に調整可能なレンズによって印加される位相変調プロファイルのレンズを横切る位置の関数としての概略プロットである。
【
図5A-B】
図5Aは、本発明の別の一実施形態による、電気的に調整可能なレンズによって印加される位相変調プロファイルの、レンズを横切る位置の関数としての概略プロットである。
図5Bは、本発明の一実施形態による、
図5Aの電気的に調整可能なレンズによって印加される位相変調プロファイルのレンズ全体の位置の関数としての概略プロットであり、レンズのユーザの眼球の動きに応答した位相変調プロファイルのシフトを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(概要)
研究によると、周辺視野に近視のデフォーカスを適用すると、近視の進行が遅くなる可能性がある。周辺視野の遠視デフォーカス(画像が網膜の後ろにフォーカスされていることを意味する)が眼の成長を引き起こし、近視の進行をもたらすと仮定されている。この現象は、視野の周辺部分に近視のデフォーカス(網膜の前に形成された画像)を適用することによって軽減することができる。たとえば、近視制御眼鏡では、レンズの中心がユーザの名目近視処方を有してもよく、一方レンズの周辺が近視のデフォーカスを提供するように設計されている。
【0027】
しかし、この種の近視デフォーカスを適用する際の課題の1つは、目が回転することである。したがって、眼鏡レンズのさまざまな領域が、さまざまな時点で周辺視野に使用される。目が回転すると、視線がデフォーカスの領域と交差するため、中心視力が乱されるが、周辺視力の一部は乱されない。この現象を回避するために、ユーザは目の回転を減らすために頭を回すことを余儀なくされている。
【0028】
本発明の実施形態は、近視制御用の電気制御眼鏡レンズを提供し、このレンズでは、中心視力の鮮明さを低下させることなく周辺視力のデフォーカスが適用される。これらの実施形態は、被験者の眼の近くに取り付けることができる電気的に調整可能な光学位相変調器、例えば眼鏡レンズを使用する。制御回路は、駆動信号を光位相変調器に印加して、目の視線を遮る中央ゾーンで第1位相変調プロファイルを生成し、中央ゾーンの周囲に広がる周辺ゾーンに別の第2位相変調プロファイルを生成する。第1の位相変調プロファイルは、中央ゾーンの眼による鮮明な視力を可能にするように選択され、第2の位相変調プロファイルは、周辺ゾーンを通って眼に入射する光をぼかす(すなわち、目の網膜の周辺領域に入射する画像をぼかす)ように選択される。
【0029】
以下に説明するいくつかの実施形態では、光位相変調器は、電気的に調整可能なレンズとして構成されている。このレンズは、例えば、ガラスまたはプラスチックから作られた固定レンズを含む複合レンズであり得、これは、1つまたは複数の電気的に調整可能なレンズ要素によって動的に修正されるベースライン屈折力を提供する。制御回路は、駆動信号を電気的に調整可能なレンズに適用して、レンズの中央ゾーンに被験者の屈折異常を矯正するために選択された屈折力を有する位相変調プロファイルを生成し、これが目の視線を遮る。同時にこれらの実施形態の駆動信号は、電気的に調整可能なレンズに対し、中央ゾーンの周りで周辺に延びる周辺ゾーンにおいて、中央ゾーンよりも小さい屈折力を有する位相変調プロファイルを生成させる。
【0030】
本明細書の文脈および特許請求の範囲における「大きさ」という用語は、絶対的な大きさを指し、屈折力の符号は、負または正のいずれかであり得る。近視制御の場合、中央ゾーンの屈折力は負であるが、周辺ゾーンの屈折力は負ではないか、わずかに正の場合もある。周辺ゾーンは、通常、中央ゾーンの周囲に弧の少なくとも180度にわたって延在するが、少なくとも弧の270度、または360度の環全体に亘る場合もある。
【0031】
あるいは、他のタイプの眼科障害を治療するために、他の位相変調プロファイル、屈折力の大きさおよび符号を選択することができ、光学位相変調器は、必ずしも眼の屈折異常を矯正するためのレンズとして構成されるとは限らない。これらの実施形態のいくつかでは、光位相変調器の中央ゾーンの位相変調プロファイルは、放物線断面を有し、これは、平坦な断面、すなわち、無限遠に焦点を合わせた放物線であり得る。(この種のプロファイルは、例えば、
図3B、3C、4Bおよび5Bに示されている。)周辺ゾーンの位相変調プロファイルは、非放物線であり得る。
【0032】
電気的に調整可能な光位相変調器の使用は、視線に関する周辺ゾーンに亘って異なるパターンの空間変動を有する、広範囲の異なる位相変調プロファイルを生成する能力において有利である。位相変調プロファイルは、周辺ゾーン全体で連続的に変化してもよく、または、例えば、ピークおよびトラフの交互のパターンを含むことができ、それはフレネルレンズまたはマイクロレンズのアレイをエミュレートするように選択され得る。さらに、アイトラッカを使用して視線の角度を検出する場合、制御回路は、視線の角度の変化に応じて中央ゾーンと周辺ゾーンをシフトするように駆動信号を変更することができる。したがって、目が動くとき、中央ゾーンは視線のほぼ中央に留まり、周辺ゾーンによって適用されるぼかしは周辺視野にのみ影響する。
【0033】
したがって、本発明の実施形態は、患者の快適性および治療効果を高めるために、各患者の特定のニーズに合わせて眼科治療を調整することを可能にする。位相変調プロファイルは、制御回路を再プログラミングするだけで変更できるため、治療が進むにつれて、電気的に調整可能なレンズまたは他の光位相変調器の特性を更新できる。研究者は、これらの再プログラミング機能を使用して、異なる位相変調プロファイルの治療効果を評価することもできる。
【0034】
(システムの説明)
図1は、本発明の一実施形態による、適応型眼鏡20の概略図である。眼鏡20は、フレーム25に取り付けられた電気的に調整可能なレンズ22および24を含む。屈折力(レンズの中央ゾーンおよび周辺ゾーンの両方を含む)を含むレンズの光学特性、および光学中心(または等価的に、光軸)は、バッテリ28または他の電源によって電力供給される制御回路26によって制御される。制御回路26は、典型的には、ハードワイヤードおよび/またはプログラマブルの論理素子と、本明細書で説明される機能を実行するための適切なインターフェースとを備えた組み込みマイクロプロセッサを備える。眼鏡20のこれらの要素および他の要素は、通常、フレーム25上またはフレーム25内に取り付けられるか、あるいは、ワイヤによってフレーム25に接続された別個のユニット(図示せず)に含まれ得る。
【0035】
眼鏡20は、1つまたは複数のセンサを備え、眼鏡を着用している人の目の視線の方向、および可能であれば、目から人が見ている物体34までの距離も感知する。制御回路26は、センサの読み取り値に従ってレンズ22および24を調整する。図示の例では、センサは、右目と左目のそれぞれの視線32(注視方向)を検出する一対のアイトラッカ30を含む。制御回路26は、通常、感知された視線方向に応答してレンズのそれぞれの光軸をシフトする。さらに、制御回路は、アイトラッカ30によって測定される瞳孔間の距離を使用して、(実際の注視方向を分析しなくても)ユーザの焦点距離を推定し、場合によっては目から物体34までの距離を識別することができる。
【0036】
これに基づいて、制御回路26は、レンズ22および24の屈折力を調整して、距離調節においてユーザの目を支援し、したがって、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるPCT国際出願WO2019/012385に記載されているように、ユーザの調節の必要性を低減または排除することができる。制御回路26は、レンズから物体34までの距離を査定し、その距離に基づいてレンズの少なくとも中央ゾーン37の屈折力を調整する。具体的には、遠方視力に対して特定の大きさの負の屈折矯正を有する近視眼の場合、制御回路26は、ユーザが近くの物体を見ているときに矯正の大きさを低減することができる。
【0037】
追加的または代替的に、カメラ36は、物体を識別し、焦点距離を設定する際に制御回路26によって使用されるために、物体34の画像を獲得する。アイトラッカ30またはカメラ36のいずれかを焦点距離の決定に使用することができるが、これらのセンサの両方を一緒に使用して、物体のより信頼性の高い識別を与えることができる。代替的または追加的に、カメラ36は、物体34までの距離を測定する距離計または他の近接センサによって置き換えられるか、または補足され得る。
【0038】
制御回路26は、メモリ38に記憶されている位相変調プロファイルパラメータに従って、駆動信号をレンズ22および24に適用する。例えば、近視制御の場合、これらのパラメータは、レンズの中央ゾーン37および周辺ゾーン39の両方に適用される特性を示す。(図の例では、周辺ゾーン39は環状で、中央ゾーン37の周りに360°延在しているが、代替的に、周辺ゾーン39は、上記で説明したように、より小さな弧の角度で周りに延在することができる。)前述のように、各レンズ22、24の中央ゾーン37の位相変調プロファイルは、通常、中央ゾーンの屈折力が、それぞれの眼の屈折異常を矯正する大きさを有するように選択される。周辺ゾーン39のパラメータは、これらのゾーンの屈折力の大きさが対応する中央ゾーンよりも小さくなるように選択される。小さくされた大きさは、周辺ゾーンが眼に治療効果を有するように、例えば近視の進行を遅らせるように、選択される。上記のように、制御回路26は、視線32の角度の変化に応答して、中央ゾーン37および周辺ゾーン39の位置をシフトする。
【0039】
図2は、本発明の実施形態による、電気的に調整可能なレンズ22の概略側面図である。レンズ24は通常、同様の設計である。
【0040】
図の実施形態では、レンズ22は、複数の要素を含む複合レンズである。典型的にはガラスまたはプラスチックで作られた固定レンズ40および41は、ベースライン屈折力を提供し、それは、2つの電気的に調整可能な位相変調器42および44により動的に変更される。このような位相変調器は、球面レンズ、トリミングレンズ、レンズアレイ、非球面レンズ、またはこれらのプロファイルの組み合わせなど、さまざまな位相変調プロファイルをパネルのさまざまな領域に実装するために使用できる。さらに、位相変調器は、異なる位相プロファイルの実装間で動的に切り替えることができる。
【0041】
固定レンズ40および41は、調整可能な位相変調器42および44から物理的に分離されているように示されているが、実際には、これらの構成要素は、通常、眼鏡レンズの形で単一のパッケージにカプセル化されている。(このため、レンズ22自体は電気的に調整可能なレンズと見なすことができる。)したがって、レンズ22の領域内の任意のゾーンにわたるレンズ22の総屈折力は、通常、固定屈折力の合計となり、可変の屈折力(または他の位相変調プロファイル)が位相変調器42および44により印加される。あるいは、レンズ22は、電気的に調整可能な要素のみを含み得、レンズ40および41が必要とされない場合があり、それは特に屈折補正の大きさが小さい場合である。いくつかの実施形態では、レンズ22はまた、以下に記載されるような機能を備えた、偏光子および/または偏光回転子などの偏光素子46を含む。
【0042】
電気的に調整可能な位相変調器42および44は、ユーザの視線の角度、および場合によってはユーザによって見られている物体までの距離に応答して、レンズ22の位相変調プロファイルを調整し、レンズは上記のように定義されるレンズ22の中央ゾーン37および周辺ゾーン39を有する。これに基づいて、位相変調器42および44の光軸48は、注視方向32の変化に応答してシフトされる。位相変調器42および44は、1次元位相変調器(位相変調プロファイルが1つの軸内の位置の関数である位相変調器)を含み得、それらは、直交する軸上で動作するように配置され、例えば、直交するシリンドリカル軸を有する電気的に調整可能なシリンドリカルレンズがある。あるいは、位相変調器42および44は、2次元位相変調プロファイルを生成し、したがって、球面または非球面レンズ(またはそれらのフレネル同等物)をエミュレートするように構成され得る。これらの種類のレンズ構成の両方、およびレンズを駆動するための波形は、上記のWO2014/049577(特許文献3)に詳細に記載されている。
【0043】
WO2014/049577(特許文献3)の
図2A~Cおよび3A~Dを参照して説明すると、本実施形態の変調器42および44は、液晶層などの電気光学層と、対向する第1および第2の電気光学層の側面に延びる導電性電極とを備える。電気光学層は、その活性領域内の任意の所与の位置に有効局所屈折率を有し、これは、その位置の電極間の電気光学層に印加される電圧波形によって決定される。制御回路26は、メモリ38内の屈折および治療用位相変調プロファイルパラメータに従って、適切な電圧波形を有する駆動信号を電極に適用する。
【0044】
位相変調器42および44がそれぞれの偏光依存電気光学層を含むいくつかの実施形態では、電気光学層は、相互に直交する偏光を屈折するように配向される。これらの位相変調器の1つ、例えば、変調器42は、X方向(
図2に示す図のページの中に向かう方向を指している)に偏光された光で動作し、Y方向(この図で上向き)に偏光された光に影響を与えない。位相変調器44は、Y方向に偏光された光で動作し、X方向に偏光された光に影響を与えない。したがって、位相変調器42および44を通過する非偏光は、両方の距離に集束され、光の約半分は、位相変調器42によって集束され、残りの半分は、位相変調器44によって集束される。あるいは、偏光素子46は偏光回転子を備え、それは、入射光を遮断し、その偏光を回転させて、位相変調器42および44の電気光学層に入射する光が、それぞれの偏光のそれぞれに成分を有することを保証する。
【0045】
代替の実施形態(図には示されていない)では、電気的に調整可能なレンズは、上記の実施形態の特徴を組み合わせた4つの光学位相変調器を含む:X位置の関数として光を変調し(例えば、X軸に平行なシリンドリカル軸を備えるシリンドリカルレンズをエミュレート)、それぞれX偏光とY偏光で動作する2つの一次元位相変調器;Y位置の関数として光を変調し(例えば、Y軸に平行なシリンドリカル軸を備えるシリンドリカルレンズをエミュレート)、それぞれX偏光とY偏光で動作する2つの一次元位相変調器。したがって、この電子的に調整可能なレンズは、すべての偏光の光に二次元の屈折プロファイルを適用することができる。あるいは、アプリケーションの要件に応じて、電極の向きと電気光学層の分極の他の組み合わせを使用することもできる。そのような組み合わせはすべて、本発明の範囲内であると見なされる。
【0046】
(近視制御のための調整可能なレンズプロファイル)
以下の図は、レンズを横切って走る線に沿った、例えば中央ゾーン37および周辺ゾーン39を横切る水平(X)軸に沿った、位置の関数としての電気的に調整可能な位相変調器42および44の屈折力および位相シフトの光学プロファイルを示す。これらのプロファイルは、位相変調器42および44のそれぞれによって個別に(レンズが二次元プロファイルを生成できると仮定して)、または2つの位相変調器42および44を組み合わせて、例えば直交円筒軸に沿って適用することができる。あるいは、同様の種類のプロファイルが、他の種類の電気的に調整可能なレンズで生成され得る。
【0047】
これらの例では、中央ゾーン37の直径は4 mmであると想定されているが、より大きな直径またはより小さな直径を使用することもできる。例えば、制御回路26は、アイトラッカ30によって測定される、瞳孔寸法の関数として中央ゾーン37のサイズを増加または減少させることができる。
【0048】
図3Aは、本発明の一実施形態による、レンズを横切る位置の関数としての、電気的に調整可能な位相変調器42および44の屈折力(ジオプトリ単位)の概略プロット50である。この例では、固定レンズ40および41は、ユーザが必要とする屈折矯正に等しいベースライン屈折力、例えば、-2D(2ジオプトリー、負の符号)を提供すると想定されている。したがって、制御回路26は、位相変調器42および44を駆動して、中央ゾーン37に追加の屈折力を適用しない。周辺ゾーン39では、位相変調器42および44は、+1Dの追加の屈折力を適用し、それによりレンズ22のネット屈折力は-1Dである。周辺ゾーンでの屈折力の大きさの減少は、近視の制御に役立ちうる。
【0049】
図3Bは、本発明の一実施形態による、位相変調器42および44によって適用される、レンズを横切る位置の関数としての位相変調プロファイル(任意の位相単位、AU)の概略プロット52である。この場合、プロット52によって表される位相変調プロファイルは、原点X = 0に位置する視線に対して半径方向に周辺ゾーンを横切って連続的に変化する。
【0050】
図3Cは、本発明の別の一実施形態による、位相変調器42および44によって適用される、レンズを横切る位置の関数としての位相変調プロファイルの概略プロット54である。この場合の位相変調プロファイルは、視線に対して横方向(プロファイルが円対称である場合の半径方向に対応する)に周辺ゾーン39を横切って山と谷の交互のパターンで構成される。パターンは、位相変調プロファイルがフレネルレンズをエミュレートするように選択される。フレネルレンズは、プロット52の滑らかなプロファイルと同じ屈折力(+ 1D)を実現するが、最大位相シフトは低くなる。したがって、滑らかなプロファイルとは対照的なフレネルプロファイルを使用することにより、レンズ42および44においてより薄い電気光学層を使用することが可能になり、レンズを駆動する際により低い電圧を使用することが可能になる。
【0051】
図4Aは、本発明の一実施形態による、レンズを横切る位置の関数としての位相変調器42および44の屈折力の概略プロット56であり、レンズ22の使用者の眼球の動きに応答した屈折力のシフトを示している。この例では、アイトラッカ30は、視線32と位相変調器42および44との交点が1mmずれていることを検出した。したがって、制御回路26は、レンズに適用される駆動信号を変更して、中央ゾーン37がシフトして新しい視線が中央となるようにする。
【0052】
図4Bは、本発明の一実施形態による、レンズを横切る位置の関数として位相変調器42および44によって適用される位相変調プロファイルの概略プロット58である。この例では、位相変調器42および44は、フレネル位相変調プロファイルを適用し(
図3Cのように)、プロファイルの中心はシフトされて、中央ゾーン37の位置の中で所望のシフトを提供する。
【0053】
図5Aおよび5Bは、本発明の別の一実施形態による、レンズを横切る位置の関数としての位相変調器42および44によって適用される位相変調プロファイルの概略プロット60および62である。ここでも、位相シフトは任意の単位でプロットされる。プロット60および62の位相変調プロファイルは、周辺ゾーン39のマイクロレンズのアレイをエミュレートするピークおよびトラフの交互のパターンを含む。プロット62は、ユーザの目の動きに応答した位相変調プロファイルのシフトを示す。
【0054】
上記の実施形態は例として引用され、本発明は、上記で特に示され、説明されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせおよびサブ組合せの両方、ならびに前述の説明を読んだときに当業者に想起される、先行技術に開示されていないその変形および修正を含む。