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特許7496152レチナール含有マルチラメラ小胞及びそれを含む化粧料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】レチナール含有マルチラメラ小胞及びそれを含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/14 20060101AFI20240530BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240530BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240530BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
A61K8/14
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K8/67
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022520314
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 KR2020012829
(87)【国際公開番号】W WO2021066381
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0120447
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522127955
【氏名又は名称】タルン コスメティックス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAREUN COSMETICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】11F, 335, Hakdong-ro Gangnam-gu, Seoul 06060 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】リー,ドン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】チ,ホン グン
【審査官】河村 明希乃
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0003356(KR,A)
【文献】特表2019-528287(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1642054(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0046997(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0021282(KR,A)
【文献】特開2000-239140(JP,A)
【文献】特開2002-145721(JP,A)
【文献】米国特許第07081254(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0021283(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチナール0.01~5重量%、アブラナ種子ステロール0.1~10重量%、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート0.1~10重量%、ポリグリセリル-10オレエート0.1~8重量%、コレステロール0.1~10重量%、水添レシチン0.01~5重量%、セラミド0.01~5重量%、スクアラン1~15重量%、植物性バター0.1~10重量%、油性液体3~30重量%、グリセリン1~20重量%及び水30~70重量%を含むレチナール含有マルチラメラ小胞。
【請求項2】
レチナール0.02~4重量%、アブラナ種子ステロール0.5~8重量%、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート0.5~8重量%、ポリグリセリル-10オレエート0.2~7重量%、コレステロール0.5~8重量%、水添レシチン0.05~4重量%、セラミド0.05~4重量%、スクアラン2~12重量%、植物性バター0.5~8重量%、油性液体4~25重量%、グリセリン2~18重量%及び水35~68重量%を含むことを特徴とする請求項1に記載のレチナール含有マルチラメラ小胞。
【請求項3】
レチナール0.05~3重量%、アブラナ種子ステロール1~7重量%、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート1~7重量%、ポリグリセリル-10オレエート0.5~5重量%、コレステロール1~7重量%、水添レシチン0.1~3重量%、セラミド0.1~3重量%、スクアラン3~10重量%、植物性バター1~7重量%、油性液体5~20重量%、グリセリン3~15重量%及び水40~65重量%を含むことを特徴とする請求項2に記載のレチナール含有マルチラメラ小胞。
【請求項4】
前記植物性バターが、シアバター、ココアバター、オリーブバター、マカダミアナッツバター、ココナッツバター、アーモンドバター及びそれらの混合物で構成される群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のレチナール含有マルチラメラ小胞。
【請求項5】
前記油性液体が、サフラワー油、ヒマワリ種子油、ホホバ油、オリーブ油、ティーツリー油、カノーラ油、ヒマシ油、パーム油、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸イソセチル、イソノナン酸セチル、イソノナン酸セテアリル、ノナン酸セテアリル、イソノナン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸エチルヘキシル及びそれらの混合物で構成される群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のレチナール含有マルチラメラ小胞。
【請求項6】
マルチラメラ小胞の平均直径の大きさが、50~400nmであることを特徴とする請求項1に記載のレチナール含有マルチラメラ小胞。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のレチナール含有マルチラメラ小胞を含む化粧料(cosmetic)組成物。
【請求項8】
レチナール抽出物含有マルチラメラ小胞を1~60重量%で含むことを特徴とする請求項7に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチナール含有マルチラメラ小胞に関し、より詳細には、レチナール0.01~5重量%、アブラナ種子ステロール0.1~10重量%、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート0.1~10重量%、ポリグリセリル-10オレエート0.1~8重量%、コレステロール0.1~10重量%、水添レシチン0.01~5重量%、セラミド0.01~5重量%、スクアラン1~15重量%、植物性バター0.1~10重量%、油性液体3~30重量%、グリセリン1~20重量%及び水30~70重量%を含むレチナール含有マルチラメラ小胞に関するものである。
また、本発明は、前記レチナール含有マルチラメラ小胞を含む化粧料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品の消費者は、高い効能及び効果、並びに安全性と皮膚刺激の回避を求めている。このため、消費者の高機能性化粧品に対する消費者の要望に応えて、化粧品(cosmetics)と医薬品(pharmaceutical)を組み合わせた「薬用化粧品(cosmeceutical)」という言葉が生まれた。薬用化粧品の開発に伴い、医療技術から化粧品まで、他の分野の技術を組み合わせた製品が増えている。このような機能性材料の開発により、化粧品原材料の安定性を高める様々な機能化方法が広く研究されている。特に、光、熱及び空気中の酸素が機能性原材料の生物学的活性を著しく低下せることはよく知られている。従って、様々な化粧品原材料の安定化のための新しい機能化技術が必要である。
【0003】
ビタミンAは視覚機能に関与し、成長因子として機能する。ビタミンAは、目の網膜で代謝産物である、吸光分子レチナールの形態として作用するが、レチナールは、薄明視力(暗闇の中で物体を見る能力)と色覚に絶対的に必要である。ビタミンAはまた、レチノールが不可逆的に酸化された形態であるレチノイン酸の形で、上皮細胞のホルモンのような重要な上皮成長因子として機能をする。動物性食品に含まれるビタミンAのほとんどは、パルミチン酸レチニル(retinyl palmitate)などのエステルの形で存在する。食物と一緒に摂取された後、ビタミンAは小腸でアルコールの一種であるレチノールに変換される。人体は、ビタミンAをレチノールの形態で保存し、必要に応じてレチナール(レチンアルデヒド)(視覚系で作用するアルデヒド)に変換される。レチノールとレチナールはどちらもトレチノイン(全transレチノイン酸)の前駆体であり、レチノイド代謝によって合成される(図1)。図1において、「律速」と記されている場所は、レチノールがレチナールに移行する段階であり、この段階はレチノイド代謝において最も困難な段階である。すなわち、どれだけ高濃度のレチノールを適用しても、この段階を通過することができないため、レチノインの濃度はレチノールの量に比例して増加しない。しかし、レチナールはこの段階を通過しているため、トレチノインに容易に変換される可能性がある。レチナールは、皮膚の角化を調節することによって、面皰(黒ずみ、白ずみ)を除去するのに役立ち、皮膚のシワや肌のきめを改善するのに役立ち、皮膚バリア機能と保湿を改善することができる。
【0004】
しかし、レチナールは熱、光、湿気などに対して不安定であり、皮膚に吸収され難いため、これらの問題を改善する必要がある。レチナールを安定化するための例として、特許文献1では、水性成分に分散されたリポソームを含み、前記リポソームは、レシチン化合物及び界面活性剤を含むリン脂質層;及び前記リン脂質層内部に担持され、レチナール、セラミド及びペンタエリトリトールテトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロシンナメートを1:5~20:0.1~3重量比で含むキャリア;を含み、前記界面活性剤は、非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤のうちの一つ以上を含むことを特徴とするレチナールリポソームを含む化粧料組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国 特開第10-2018-0003356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の技術的課題は、レチナールを安定した状態で効率的に皮膚に送達することができるレチナール含有送達システムを提供することである。
また、本発明の別の技術的課題は、前記レチナール含有送達システムを含む化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、レチナール0.01~5重量%、アブラナ種子ステロール0.1~10重量%、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート0.1~10重量%、ポリグリセリル-10オレエート0.1~8重量%、コレステロール0.1~10重量%、水添レシチン0.01~5重量%、セラミド0.01~5重量%、スクアラン1~15重量%、植物性バター0.1~10重量%、油性液体3~30重量%、グリセリン1~20重量%及び水30~70重量%を含むレチナール含有マルチラメラ小胞を提供する。
また、本発明は、前記レチナール含有マルチラメラ小胞を含む化粧料(cosmetic)組成物を提供する。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の一側面によれば、レチナール0.01~5重量%、アブラナ種子ステロール0.1~10重量%、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート0.1~10重量%、ポリグリセリル-10オレエート0.1~8重量%、コレステロール0.1~10重量%、水添レシチン0.01~5重量%、セラミド0.01~5重量%、スクアラン1~15重量%、植物性バター0.1~10重量%、油性液体3~30重量%、グリセリン1~20重量%及び水30~70重量%を含むレチナール含有マルチラメラ小胞が提供される。
【0009】
本発明において、レチナールは、アブラナ種子ステロール、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート、ポリグリセリル-10オレエート、コレステロール、水添レシチン、セラミド、スクアラン、植物性バター、油性液体、グリセリン及び水を使用してマルチラメラ小胞(MLV)調製することにより、安定化した方法で効率的に皮膚内に送達することができる。
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、レチナール(レチンアルデヒド)を0.01~5重量%、好ましくは0.02~4重量%、より好ましくは0.05~3重量%含む。本発明のレチナール含有マルチラメラ小胞において、レチナールが0.01重量%未満の場合、レチナールによる効能が弱くなり、5重量%を超える場合、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
【0010】
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、アブラナ種子ステロール(rapeseed sterol)を0.1~10重量%、好ましくは0.5~8重量%、より好ましくは1~7重量%含む。アブラナ種子ステロールは、植物ステロール(phytosterol)で、例えば、BASF社製の「Generol(登録商標)R」の商品名で市販されている。本発明において、アブラナ種子ステロールは、マルチラメラ小胞の二重膜に安定性を付与する。本発明において、アブラナ種子ステロールが0.1重量%未満の場合、アブラナ種子ステロールによる安定性付与効果が弱くなり、10重量%を超える場合、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
本発明のレチナール含有マルチラメラ小胞は、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート(phytosteryl/behenyl/octyldodecyl lauroyl glutamate)を0.1~10重量%、好ましくは0.5~8重量%、より好ましくは1~7重量%含む。フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメートは、フィトステロール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール及びラウロイルグルタミン酸の混合エステルであり、本発明において、マルチラメラ小胞の安定性を高めることができる。フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメートが0.1重量%未満又は10重量%を超える場合、マルチラメラ小胞の形成に問題生じる可能性がある。
【0011】
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、ポリグリセリル-10オレエートを0.1~8重量%、好ましくは0.2~7重量%、より好ましくは0.5~5重量%含む。ポリグリセリル-10オレエートは、ポリグリセリン-10とオレイン酸(oleic acid)のエステル(ester)である。本発明において、ポリグリセリル-10オレエートは、水添レシチンと共にマルチラメラ小胞の脂質二重層を形成する。本発明において、ポリグリセリル-10オレエートが0.1重量%未満又は8重量%を超える場合、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、コレステロールを0.1~10重量%、好ましくは0.5~8重量%、より好ましくは1~7重量%含む。本発明において、コレステロールはマルチラメラ小胞の二重膜に安定性を与えることによって、より安定したマルチラメラ小胞を形成するのを助けることができる。本発明において、コレステロールが0.1重量%未満の場合、安定化効果が弱く、10重量%を超えると、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
【0012】
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、水添レシチン(hydrogenated lecithin)を0.01~5重量%、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは0.1~3重量%含む。レシチンは、様々なリン脂質の混合物を指し、リン脂質の組成は、その起源に応じて変化し得る。水添レシチンは、レシチンに水素を添加して得ることができる。本発明において、水添レシチンが0.05重量%未満又は4重量%を超える場合、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、セラミドを0.01~5重量%、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは0.1~3重量%含む。セラミドは、スフィンゴシン(sphigosine)と脂肪酸で構成される脂質物質であり、マルチラメラ小胞に柔軟性を与えると同時に皮膚の保湿效果を与えることができる。本発明において、セラミドが0.01重量%未満の場合、セラミドが提供する効果が弱くなり、5重量%を超える場合、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
【0013】
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、スクアランを1~15重量%、好ましくは2~12重量%、より好ましくは3~10重量%含む。スクアランは、スクアレンの水素化によって得られ、マルチラメラ小胞に柔軟性を与えるとともに、皮膚に保湿效果を与えることができる。本発明において、スクアランが1重量%未満の場合、スクアランによる効果が弱く、15重量%を超える場合、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
本発明のレチナール含有マルチラメラ小胞は、植物性バターを0.1~10重量%、好ましくは0.5~8重量%、より好ましくは1~7重量%含む。
本発明による一実施形態において、植物性バターの例には、シアバター、ココアバター、オリーブバター、マカダミアナッツバター、ココナッツバター、アーモンドバター又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
本発明において、植物性バターが0.1重量%未満又は10重量%を超える場合、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
【0014】
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、油性液体を3~30重量%、好ましくは4~25重量%、より好ましくは5~20重量%含む。
本発明による一実施形態では、油性液体の例には、サフラワー油、ヒマワリ種子油、ホホバ油、オリーブ油、ティーツリー油、カノーラ油、ヒマシ油、パーム油、エチルヘキサン酸セチル(cetyl ethylhexanoate)、エチルヘキサン酸イソセチル(isocetyl ethylhexanoate)、イソノナン酸セチル(cetyl isononanoate)、イソノナン酸セテアリル(cetearyl isononanoate)、ノナン酸セテアリル(cetearyl nonanoate)、イソノナン酸エチルヘキシル(ethylhexyl isononanoate)、イソステアリン酸エチルヘキシル(ethylhexyl isostearate)又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
本発明において、油性液体が3重量%未満又は30重量%を超える場合、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
【0015】
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、溶媒としてグリセリン及び水を含む。本発明のマルチラメラ小胞は、グリセリンを1~20重量%、好ましくは2~18重量%、より好ましくは3~15重量%含む。本発明のマルチラメラ小胞は、水を30~70重量%、好ましくは35~68重量%、より好ましくは40~65重量%含む。本発明において、グリセリン及び水が前記範囲外である場合、マルチラメラ小胞の形成に問題が生じる可能性がある。
本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞は、レチナール、アブラナ種子ステロール、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート、ポリグリセリル-10オレエート、コレステロール、水添レシチン、セラミド、スクアラン、植物性バター、油性液体、グリセリン及び水の成分を必須の構成成分とするが、マルチラメラ小胞の本質的な特性に影響を及ぼさない範囲以内で、必要に応じて、安定化剤、抗酸化剤などの成分をさらに含むことができる。本発明のマルチラメラ小胞リポソームの平均粒子径は、好ましくは50~400nm、より好ましくは100~350nmである。
【0016】
本発明の別の側面によれば、前記レチナール含有マルチラメラ小胞を含む化粧料組成物が提供される。
本発明において、化粧料組成物は、例えば、トナー、ローション、クリーム、エッセンスなどに調製することができるが、これらに限定されない。化粧料組成物には、本発明によるレチナール含有マルチラメラ小胞が、好ましくは1~60重量%、より好ましくは3~55重量%で含まれる。本発明において、化粧料組成物が1重量%未満のレチナール含有マルチラメラ小胞を含む場合、レチナールによる効果が弱くなり得、60重量%を超える場合、その添加に見合ったレチナールによる効果の増加は期待できないため、経済的に望ましくない場合がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レチナールは皮膚に類似した構造を有するマルチラメラ小胞を介して非常に安定した形態で皮膚内に効率的に送達することができ、それにより、生体利用率を高め、レチナールによる皮膚の弾力性及び皮膚のシワを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】レチノイド代謝を示す模式図である。
図2】レチナール含有マルチラメラ小胞の粒子径サイズをPhotal、ELS-Zを使用して、測定した結果である。
図3】レチナール含有マルチラメラ小胞の安定性測定のためにゼータ電位をPhotal、ELS-Zを使用して、測定した結果である。
図4】レチナール含有マルチラメラ小胞の低温電子顕微鏡写真である。
図5】比較例2のクリーム(クリームA)及び実施例4のクリーム(クリームB)で測定されたレチナール含量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を以下の実施例でより具体的に説明する。しかしながら、本発明の保護範囲は実施例に限定されないことを理解しなければならない。
【0020】
実施例1:レチナール含有マルチラメラ小胞の調製
下記表1の組成に従って、成分を容器に導入し、80℃で溶解させた。得られた成分を、ホモミキサーを利用して5分の間混合し、1000バールの高圧ホモジナイザーに3回通した後、冷却、脱気して、レチナールを安定化させたマルチラメラ小胞を得た。
【表1】
【0021】
比較例1:レチナールを含有する一般的なリポソームの調製
下記表2の組成に従って、各成分を容器に導入し、80℃で溶解させた。得られた成分を、ホモミキサーを利用して5分間混合し、1000バールの高圧ホモジナイザーに連続3回通した後、冷却、脱気して、リポソーム組成物を得た。
【表2】
【0022】
実施例2:レチナール含有マルチラメラ小胞を用いたトナーの調製
下記表3の組成に従って、レチナール含有マルチラメラ小胞を使用してトナーを製造した。
【表3】
【0023】
実施例3:レチナール含有マルチラメラ小胞を用いたローションの調製
下記表4の組成に従って、レチナール含有マルチラメラ小胞を使用してローションを得た。
【表4】
【0024】
実施例4:レチナール含有マルチラメラ小胞を用いたクリームの製造
下記表5の組成に従って、レチナール含有マルチラメラ小胞を使用してクリームを得た。
【表5】
【0025】
比較例2:レチナールを含有するクリームの調製
下記表6の組成に従って、レチナールを含有するクリームを得た。
【表6】
【0026】
実施例5:レチナール含有マルチラメラ小胞を用いたエッセンスの調製
下記表7の組成に従って、レチナール含有マルチラメラ小胞を使用してエッセンスを得た。
【表7】
【0027】
実験例1:粒子分布の測定
実施例1で調製されたレチナール含有マルチラメラ小胞の粒子分布をPhotal、ELS-Zを使用して測定し、その結果を図2に示した。測定結果から、レチナール含有マルチラメラ小胞の平均粒径が308.1nmであることが分かった。
【0028】
実験例2:レチナール含有マルチラメラ小胞の安定性の測定
実施例1で調製されたレチナール含有マルチラメラ小胞の安定性測定のために、ゼータ電位をPhotal、ELS-Zを使用して測定し、その結果を図3に示した。測定結果から電位は-63.91mVであり、マルチラメラ小胞は安定していることが分かった。
【0029】
実験例3:電子顕微鏡撮影
実施例1で調製されたレチナール含有マルチラメラ小胞を撮影した。粒径が非常に細かいため、一般的な光学顕微鏡では写真を撮ることができなかった。そのため、極低温電子顕微鏡写真を撮影した(図4)。図4からマルチラメラ小胞が良好に形成されていることが分かった。
【0030】
実験例4:レチナール含有マルチラメラ小胞の経皮吸収促進効果実験
人工皮膚であるNeoderm(Tego Science、韓国)をFranzタイプ拡散セル(Lab fine instruments、韓国)に取り付けた。Franzタイプ拡散セルのレセプター容器(5mL)に50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4、0.1M NaCl)を加えた後、拡散セルを32℃、600rpmで混合して分散させ、50μLの実施例1のマルチラメラ小胞及び比較例1のリポソームをそれぞれドナー容器に加えた。所定の時間に応じて吸収・拡散を行い、吸収・拡散が生じた皮膚の面積は0.64cm2であった。有効成分の吸収・拡散が完了後、吸収されずに皮膚に残った残留物を、乾燥したKimwipes(登録商標)又は10mLのエタノールで洗浄した。有効成分が吸収・拡散した皮膚をチップ式ホモジナイザー(homogenizer)でホモジナイズし、吸収したレチナールを4mLのジクロロメタンで抽出した。次に、抽出物を0.45μmナイロンメンブレンフィルターでろ過した。レチナール含量を以下の条件でHPLCにより測定し、その結果を表8に示した。
【0031】
【表8】

前記表8から分かるように、本発明のマルチラメラ小胞は、レチナールを非常に効率的に皮膚内に送達することができることが分かった。
【0032】
実験例5:含量変化の分析
レチナールの光及び温度に対する安定性を評価するために、比較例2のクリーム(クリームA)及び実施例4のクリーム(クリームB)中のレチナールの含量変化を分析し、その結果を図5に示した。分析条件は、前記表8と同じで、HPLC(Model 510 Waters、USA)を使用した。図5から分かるように、本発明のマルチラメラ小胞がレチナールを効果的に安定化することが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5