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特許7496154多色木材プラスチック成形材料、その製造法および木材プラスチック複合板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】多色木材プラスチック成形材料、その製造法および木材プラスチック複合板
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/17 20190101AFI20240530BHJP
   B29C 48/07 20190101ALI20240530BHJP
   B29C 48/18 20190101ALI20240530BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240530BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240530BHJP
   C08K 3/11 20180101ALI20240530BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240530BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240530BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20240530BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20240530BHJP
   B29L 31/10 20060101ALN20240530BHJP
【FI】
B29C48/17
B29C48/07
B29C48/18
B29C48/305
C08K3/04
C08K3/11
C08K3/26
C08L23/06
C08L23/12
B29K23:00
B29L31:10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022566484
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2020088116
(87)【国際公開番号】W WO2021217564
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】515321717
【氏名又は名称】鄒平大美橡塑科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】梁 磊
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-239466(JP,A)
【文献】特開2016-113850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0021915(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102336989(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104744955(CN,A)
【文献】中国実用新案第209817349(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00 - 15/06
B29C 31/00 - 31/04
45/18 - 45/84
48/00 - 48/96
71/00 - 71/02
B29K 23/00
B29L 31/10
C08J 3/22
5/06
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
23/02
23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーマスターバッチと基材からなる多色木材プラスチック成形材料であって、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λは0.26~1.47であり、
前記のカラーマスターバッチの引張弾性率と前記の基材の引張弾性率は、GB/T 1040.2-2006/ISO 527-2:1993規格に基づいて室温で測定されたものであり、
前記の基材は、プラスチック、および有機充填剤と無機充填剤のブレンド物を含み、該有機充填剤は植物由来の繊維材料を含み、
前記のカラーマスターバッチは、プラスチックおよび着色剤を含む、多色木材プラスチック成形材料。
【請求項2】
前記のカラーマスターバッチのGB/T 1040.2-2006/ISO 527-2:1993規格に基づいて測定された引張弾性率(Et)が0.1×10 MPa~3×10 MPaの範囲内である、請求項1に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項3】
前記のカラーマスターバッチが、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、カップリング剤、潤滑剤、分散剤、相溶化剤からなる群から選択される助剤をさらに含む、請求項1または2に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項4】
前記の着色剤が、カーボンブラックおよび酸化鉄レッド、酸化鉄イエロー、チタン白から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項5】
前記の充填剤が軽質炭酸カルシウムから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項6】
前記のカラーマスターバッチの合計重量100重量部に対して、前記のカラーマスターバッチが、ポリエチレンまたはポリプロピレン30~60重量部と、着色剤20~50重量部と、充填剤0~30重量部と、酸化防止剤、光安定剤、カップリング剤、潤滑剤、分散剤および相溶化剤からなる群から選択される助剤0~5重量部とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項7】
前記の基材が
着色剤と、
酸化防止剤、光安定剤、カップリング剤、潤滑剤、分散剤、相溶化剤、難燃剤、防カビ剤、および発泡剤からなる群から選択される助剤と
をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項8】
前記の有機充填剤と無機充填剤のブレンド物が、前記の基材の50重量%以上を占める、請求項1~7のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項9】
カラーマスターバッチと基材との合計重量に対して、前記のカラーマスターバッチの含有量が0.1重量%~0.5重量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項10】
カラーマスターバッチと基材との合計重量に対して、前記のカラーマスターバッチの含有量が0.15重量%~0.3重量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項11】
前記の木材プラスチック成形材料の表面および表面に平行な任意の面層において、前記のカラーマスターバッチが、直線状、折れ線状、棒状、ストライプ状、斑点状、楕円球状および雲霧状から選択されるレオロジー形態で独立して存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項12】
前記の木材プラスチック成形材料の表面および表面に平行な任意の面層に、2つ以上の色が存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項13】
前記の木材プラスチック成形材料の表面に垂直に垂直な断面に、カラーマスターバッチと同一の色を有する線または点が存在する、請求項1~12のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料の製造方法であって、
前記の基材と前記のカラーマスターバッチを混合して溶融させ押し出すことを含む、製造方法。
【請求項15】
前記の基材の引張弾性率を測定すること、および
測定された基材の引張弾性率に基づいて、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λが0.26~1.47の範囲になるように、適切なカラーマスターバッチを選択することを、
前記の基材と前記のカラーマスターバッチを混合して溶融させ、押し出す前に、さらに含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載の多色木材プラスチック成形材料を含む、木材プラスチック複合板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材プラスチック複合材料に関する。より具体的に、本発明は、多色木材プラスチック成形材料、特に、ポリオレフィン(例えばポリエチレンまたはポリプロピレン)系の木材プラスチック成形材料、その製造法およびそれを含む木材プラスチック複合板に関する。
【背景技術】
【0002】
木材プラスチック複合材料(wood-plastic composite,WPC)は、単に木材プラスチック複合材と呼ばれ、木材とプラスチックの優れた性能を兼備するため、建築分野で広く使われている。使用環境や生産プロセスによって、木材プラスチック複合材は室内装飾材料と屋外建築材料に分けられる。室内木材プラスチック複合材としては、通常、ポリ塩化ビニルを原料として、単軸押出機などの弱混練可塑化装置を用いて押出成形することにより得られた軽量装飾建築材料である。屋外木材プラスチック複合材としては、通常、ポリエチレンまたはポリプロピレンを原料として、平行二軸押出機やテーパ二軸押出機などの強混練可塑化装置を用いて押し出すことにより得られた強度高い荷重建築材料であり、例えば舗床、柵板、塀板、欄干、階段、ベンチ、廊下、あずまやなどに用いられる。この屋外木材プラスチック複合材は、使用環境の要求を満たすために、機械的強度が高く、吸水率が低く、耐老化、防カビなどの特徴がある。ポリ塩化ビニル系の室内軽量木材プラスチック複合材は、低強度、高吸水性などの理由から、屋外環境ではあまり使用されておらず、一方、屋外ポリオレフィン系木材プラスチック複合材は室内でも使用される。
【0003】
現在、木材プラスチック複合材の製造分野では、主に後工程の機械的表面処理技術や多色共押出技術を採用して、木目模様を模した木材プラスチック複合材を製造している。後工程の機械的表面処理の方法では、木材プラスチック複合材製品の表面上のプラスチック表皮を機械的に除去し(例えばサンドミルで磨いたり研磨したりする)、プラスチックのテクスチャーを低減させ、模様が刻まれた熱プレスロールで製品の表面を圧延して木材のテクスチャーを模した表面を形成する。後工程の機械的表面処理技術によって製造された木目模様を模した木材プラスチック複合材では、木目模様を模したテクスチャーは表面にのみ存在し、また、この機械的に形成された木目模様を模したテクスチャーは、時間とともに浅くなることが多く、さらに、木材プラスチック複合材の表層と内部はすべて単一の色で、製品に単調で味気ない視覚効果をもたらす。多色共押出法では、表層用の原料と基層用の原料を、表層用の押出機と基層用の押出機の2つの押出機により、特定の共押出成形型に同時に押し出すことで、表層に木目模様を模したテクスチャーを持つ木材プラスチック成形材料を形成する。多色共押出法では、高価な設備とダイを追加する必要があり、プロセスが複雑でコストが高い。
【0004】
建築材料市場と木材プラスチック複合材製品市場の発展、および環境保護と資源の総合的利用への関心や重視に伴い、優れた性能と美しい視覚的イメージを持つ木材プラスチック成形材料への需要が高まっている。
【発明の概要】
【0005】
一局面では、本発明は、カラーマスターバッチと基材からなる多色木材プラスチック成形材料に関し、ここで、前記のカラーマスターバッチの引張弾性率と前記の基材の引張弾性率(Et)の比λは0.26~1.47である。引張弾性率(modulus of elasticity in tension)は、略してEtとも呼ばれ、前記のカラーマスターバッチ及び/又は前記の基材の弾性及びそれらの間の差異を表現し、比較するために用いられる。
【0006】
別の一局面では、本発明は、カラーマスターバッチ及びその製造方法に関する。前記のカラーマスターバッチは、前記のカラーマスターバッチの合計重量100重量部に対して、約30~約60重量部のポリエチレンまたはポリプロピレン、約20~約50重量部の着色剤、0~約30重量部の充填剤、および0~約5重量部の酸化防止剤、光安定剤、カップリング剤、潤滑剤、分散剤および相溶化剤からなる群から選択される助剤からなり、或いはこれらの成分を含む。前記のカラーマスターバッチのGB/T 1040.2-2006/ISO 527-2:1993規格に基づいて測定された引張弾性率(Et)は、約0.1×10 MPa~約3×10 MPaの範囲内である。
【0007】
別の一局面では、本発明は、前記の基材と前記のカラーマスターバッチとを混合して溶融させ押し出すことを含む、前記の多色木材プラスチック成形材料の製造方法に関する。この混合溶融押出の工程は、意図的に溶融押出温度を上昇させることなく、木材プラスチック材料の通常の製造プロセス温度で行うことができる。本明細書で使用される「木材プラスチック材料の通常の製造プロセス温度」(以下、通常のプロセス温度と略記することがある)という用語とは、当分野において単色の木材プラスチック成形材料に一般的に使用される溶融押出プロセス温度のことであり、通常は150℃以下である。例えば、本発明の多色木材プラスチック成形材料の制造方法の一実施形態によれば、基材及びカラーマスターバッチは、溶融後、約145℃以下の温度で押し出すことができる。
【0008】
別の一局面では、本発明は、例えば木材プラスチック複合床、木材プラスチック複合欄板、木材プラスチック複合柵板、木塑性複合壁板などを含む前記の多色木材プラスチック成形材料の木塑性複合板製品に関する。
【0009】
本発明者らは、木材プラスチック成形材料を製造する原料としてカラーマスターバッチと基材とを混合する場合、カラーマスターバッチの弾性が一定の範囲内、例えば、カラーマスターバッチの引張弾性率(Et)が3×10 MPa以下の範囲内であると、熱可塑性エラストマーであるカラーマスターバッチは、木材プラスチック複合材料の製造過程において、押出機のスクリューから溶融状態のカラーマスターバッチに加わるせん断応力と引張応力によって視覚的に観察できる形態変化を示すことを見出した。さらに、本発明者らは、前記のカラーマスターバッチの引張弾性率(Et)と前記の基材の引張弾性率(Et)の比λを0.26~1.47の特定の範囲にすることで、同じ基材を用いた場合、カラーマスターバッチの引張弾性率の値を一定の範囲に調整することにより、溶融状態でのカラーマスターバッチの形態変化、およびカラーマスターバッチと基材との相溶性を調整し、カラーマスターバッチの所望の縞模様の形態と製品の混合色が得られることを見出した。また、同じマスターバッチの場合でも、異なる引張弾性率の基材によって、溶融状態での形態変化およびカラーマスターバッチと基材との相溶性は異なる。また、本発明者らは、マスターバッチと基材との引張弾性率の比が上記特定の比率範囲を超える場合、例えば、マスターバッチと基材との引張弾性率の比率が大きすぎたり小さすぎたりすると、得られる木材プラスチック成形材料が単色を呈することも見出した。
【0010】
従来技術では、製造されたカラーマスターバッチと木材プラスチック基材との溶融温度および粘度の差を利用し、通常のプロセス温度よりも高い温度、例えば150℃~180℃、またはそれ以上の温度で、木目テクスチャーまたは流動的なテクスチャーを生成することがある。このような技術では、エネルギー消費とコストを増加させるだけでなく、木粉のある程度の炭化とプラスチックの老化による分解をもたらし、木材プラスチック複合製品の品質が低下することがある。また、製造されたカラーマスターバッチと木材プラスチック基材との溶融流動性の違いを利用し、カラーマスターバッチと木材プラスチック基材を混合して押し出すことにより、木目テクスチャーまたは流動的なテクスチャーを生成することを提案した。このような技術では、一般的に、カラーマスターバッチ成分を多量に添加する必要があり、カラーマスターバッチがカラーマスターバッチと木材プラスチック基材との混合物の10重量%~30重量%を占め、また、製造プロセス温度も木材プラスチック複合材料の通常の製造プロセス温度より高い。
【0011】
従来の製品では、木目テクスチャーまたは流動的なテクスチャーは通常、皮として木材プラスチック複合製品の外面に存在し、プラスチックのような滑らかなテクスチャーを有する。プラスチックの表皮層を機械的に除去して木目テクスチャーを強化すると、木目テクスチャーまたは流動的なテクスチャーの効果が損なわれたり消えたりする。
【0012】
従来技術と比較して、本発明の多色木材プラスチック成形材料の製造方法は、押出温度が150℃以下(例えば、130℃~150℃)の木材プラスチック複合材料の通常の製造プロセス温度で、多色木材プラスチック成形材料を製造することができ、それによってエネルギー消費と生産コストを抑えながら製品の品質を確保することができるという顕著な特徴がある。カラーマスターバッチの添加量は極めて低く、カラーマスターバッチと木材プラスチック基材の混合物に対して0.1重量%~0.5重量%、好ましくは0.15重量%~0.3重量%である。従来技術におけるカラーマスターバッチと木材プラスチック基材との混合物に対するカラーマスターバッチの添加量が10重量%~30重量%である場合と比較すると、同等以上の製品効果で、カラーマスターバッチの使用量は数十倍乃至数百倍に低減し、多色木材プラスチック成形材料の生産コストの低減に役立つ。
【0013】
本発明によって得られたこれらの技術的効果は、当業者の予想および想像を超えている。
【0014】
本発明の多色木材プラスチック成形材料の製造方法において、カラーマスターバッチと基材の引張弾性率を選択・調整することにより、カラーマスターバッチの溶融形態の異なる縞模様、カラーマスターバッチと基材の異なる程度の相溶による混合色を容易に得ることができ、異なるユーザーの審美的な要求と好みを満たすために、さまざまな製品効果を容易に設計・生産することができる。
【0015】
本発明の多色木材プラスチック成形材料の外面は2つ以上の色を有し、それぞれの色は独立して存在してもよく、あるいは互いに部分的に混合して、グラデーションを有する多色の天然木材のようなテクスチャーを呈する。前記の多色木材プラスチック成形材料の外面、および外面に平行な内面層のいずれも天然木材の色及びテクスチャーを有するため、外面に研磨などの表面処理プロセスを施した後も、新しい表面は、天然木材の色及びテクスチャーを維持する。そのため、木材製品に代わる理想的な木材プラスチック複合製品である。
【0016】
本発明の多色木材プラスチック成形材料の製造方法は、従来の単色木材プラスチック成形材料を製造する設備との互換性が高く、高価な設備や金型を追加する必要がなく、生産設備とプロセスに改造や調整を加える必要がなく、プロセスが成熟して信頼性が高く、操作が容易であるため、生産コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、比較例13で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図2図2は、比較例14で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図3図3は、実施例1で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図4図4は、実施例2で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図5図5は、実施例3で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図6図6は、実施例4で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図7図7は、実施例4で得られた木材プラスチック成形材料の断面図である。
図8図8は、実施例5で得られた木材プラスチック成形材料の表面研磨処理前後の比較図である。
図9図9は、実施例6で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図10図10は、実施例7で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図11図11は、実施例8で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図12図12は、実施例9で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図13図13は、実施例9で得られた木材プラスチック成形材料の断面図である。
図14図14は、実施例10で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図15図15は、実施例11で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
図16図16は、実施例12で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される単数形「1種」、「1つ」および「前記(該)」には、特に明示的に規定されていない限り、複数の指示物が含まれる。例えば、「1種のカラーマスターバッチ」という場合は、単一のカラーマスターバッチの場合、および2つ以上のカラーマスターバッチの場合などが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される「例えば」、「のような」または「挙げられる」という用語は、より上位の概念をさらに明確にする実例を導入することを意図する。特に規定がない限り、これらの例は、本開示で説明する実施形態を理解するための補助的な説明として提供され、限定されるものではない。
【0020】
実施例または別に明記されていない限り、明細書および特許請求の範囲に記載されている材料の量、温度、持続時間、材料の定量的性質などを表す全ての数字は、「約」が使用されているかどうかにかかわらず、すべての場合に「約」という用語で修飾されているとが理解されるべきである。
【0021】
本明細書に記載されている任意の数値範囲は、実施例または明細書に記載されているように、その範囲内の任意のサブ範囲、およびその範囲またはサブ範囲の端点の任意の組合せを含むことが理解されるべきである。
【0022】
また、本明細書において、特定の上位概念または実施例部分で詳述する下位概念を通じて説明された本発明の任意の構成要素は、一実施形態において、本明細書の他の箇所でこの構成要素に関する範囲の任意の端点の代替的な対応定義として使用することができ、したがって、非限定的な実施形態では、他の箇所で説明されたこのような範囲の端点を置き換えるために使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0023】
本明細書で明示的または暗黙的に開示されている、および/または特許請求の範囲に記載されている、構造的、組成的、および/または機能的に関連する化合物、材料または物質のグループに該当する任意の化合物、材料または物質は、前記のグループ内の単一の代表とそのすべての組み合わせを含むことが理解されるべきである。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語または単語は、厳密に一般的な意味または辞書的な意味を持つと解釈されるべきではなく、発明者が最適な方法で発明を解釈できるように用語を適切に定義できることに基づいて発明思想の意味および概念を解釈すべきである。
【0025】
本明細書で使用される「多色」という用語は、2つ以上の色が存在することを意味し、それぞれの色は独立して存在してもよく、および/または互いに部分的に混合して複色を形成してもよい。「多色」が製品に使用される場合、これは、前記の製品の少なくとも外面に2つ以上の色が現れ、且つそれぞれの色が独立して存在してもよく、および/または互いに部分的に混合してもよいことを意味する。さらに、例えば、前記の製品の外面および外面に平行な面層の少なくとも一部、好ましくは全ての面層は、2種類以上の色を呈する。一実施形態では、基材の色とカラーマスターバッチの色のような色は、それぞれ独立して存在する。別の実施の形態では、基材の色とカラーマスターバッチの色のような色は、部分的に互いに混合されて複色を形成する。別の実施の形態では、基材の色とカラーマスターバッチの色のような色は、2つ以上の色が混合され、グラデーションの複色効果を示す。
【0026】
本明細書で使用される「木材プラスチック成形材料」という用語は、熱溶融成形された木材プラスチック複合材料である。木材プラスチック複合材料の原材料と補助材料および成形方法は当技術分野で公知である。成形方法の例としては、押出が挙げられるが、これに限定されない。また、木材プラスチック複合材は、発泡剤を添加することによって製造された比較的低密度の軽量木材プラスチック製品を含む。
【0027】
本明細書で使用される「基材」という用語は、木材プラスチック成形材料の製造中に溶融状態で連続相として存在する基礎材料を指す。前記の基材は、プラスチック(例えば、熱可塑性樹脂)及び充填剤を含み、また、必要に応じて、着色剤、および発泡剤を含む助剤を含む。
【0028】
本明細書で使用される「カラーマスターバッチ」という用語は、木材プラスチック成形材料の製造中に溶融状態で分散相として存在する着色剤であるマスターバッチを指す。前記のカラーマスターバッチとしては、プラスチック(例えば熱可塑性樹脂)及び着色剤が挙げられ、また、必要に応じて、助剤を含んでもよい。
【0029】
本発明において、引張弾性率は、GB/T 1040.2-2006/ISO 527-2:1993規格に従って、サーボ制御引張試験機などの試験装置を用いて室温で測定される。引張弾性率という指標は、カラーマスターバッチおよび/または基材の弾性特性を表現または比較するために使用される。
【0030】
一局面では、本発明は、カラーマスターバッチと基材からなる多色木材プラスチック成形材料に関し、ここで、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λは0.26~1.47である。なお、2つ以上のカラーマスターバッチを使用した場合、各カラーマスターバッチのそれぞれの引張弾性率(Et)と基材の引張弾性率(Et)との比λ(カラーマスターバッチ:基材)は、いずれも約0.26~1.47である。
【0031】
本発明の多色木材プラスチック成形材料のカラーマスターバッチは、プラスチックと着色剤を含み、また、充填剤および助剤を含んでもよい。前記の助剤の例として、酸化防止剤、光安定剤、カップリング剤、潤滑剤、分散剤、および相溶化剤が挙げられるが、これらに限定されない。前記の助剤は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。一実施形態では、前記の多色木材プラスチック成形材料のラーマスターバッチは、主にプラスチックおよび着色剤からなる。別の一実施形態では、前記の多色木材プラスチック成形材料のカラーマスターバッチは、主にプラスチック、着色剤および充填剤からなる。ここで、「主に……からなる」とは、前記の成分の重量パーセントが約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに一実施形態では約90%以上或いは約95%以上であることを意味する。
【0032】
カラーマスターバッチに用いられるプラスチックは、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λが約0.26~約1.47の範囲内であれば、特に制限されない。一実施形態では、前記のカラーマスターバッチ中のプラスチックは熱可塑性樹脂、特にポリオレフィン系樹脂である。好ましくは、前記のポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせである。前記のポリエチレンの例として、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびそれらのブレンド物が挙げられるが、これらに限定されない。前記のポリエチレンは、グラフト変性またはブレンド変性のポリエチレンのような変性ポリエチレンを含んでもよく、変性剤は、例えば、ナイロン6、ナイロン66などの通常の変性剤から選択される少なくとも1つであってもよい。前記のポリプロピレンは、未変性ポリプロピレンと変性ポリプロピレンを含み、前記の変性ポリプロピレンは、グラフト変性ポリプロピレンおよびブレンド変性ポリプロピレンを含む。好ましい実施形態では、前記のカラーマスターバッチは、1種類のみのポリエチレン(例えば、1種類の低密度ポリエチレンまたは1種類の高密度ポリエチレン)または1種類のみのポリプロピレンをプラスチック成分として含み、これにより、2種類以上のプラスチックのブレンド物(プラスチック合金)を混合することによる複雑なプロセスを回避し、製品の製造コストをさらに削減することができる。
【0033】
カラーマスターバッチに用いられる着色剤は、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λが約0.26~約1.47の範囲内であれば、所望の着色効果に応じて具体的に選択することができるが、特に制限されない。前記の着色剤は、無機顔料および/または有機顔料および/または金属顔料を含む。前記の無機顔料の例としては、チタン白、酸化鉄レッド、酸化鉄イエロー、酸化鉄ブラウン、酸化鉄ブルー、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、ホワイトカーボンのうちの1つまたは複数の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。前記の金属顔料の例としては、銅粉、青銅粉(銅亜鉛合金粉)、銀粉(アルミニウム粉)が挙げられる。前記の有機顔料の例としては、アゾ顔料、複素環顔料、その他の顔料のうちの1つまたは複数の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、前記の顔料は、カーボンブラックおよび酸化鉄レッドから選択される。一実施形態では、前記のカラーマスターバッチの合計重量100重量部に対して、前記の顔料の含有量は約20重量部~約50重量部、好ましくは約20重量部~約40重量部である。
【0034】
カラーマスターバッチに用いられる充填剤は、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λが約0.26~約1.47的範囲内であれば、特に制限されない。前記の充填剤は、無機充填剤および/または有機充填剤を含む。前記の有機充填剤は、一般的に植物由来の繊維材料を指し、その例としては、木粉、おがくず、籾殻、竹粉、大麻のうちの1つまたは複数の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。前記の無機充填剤の例としては、軽質炭酸カルシウム(炭酸カルシウム)、タルク、シリカ、カオリン、マイカ、ケイ酸カルシウム、ガラス繊維およびフライアッシュのうちの1つまたは複数の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前記の充填剤は無機充填剤であり、特に軽質炭酸カルシウムであることが好ましい。一実施形態では、前記のカラーマスターバッチの合計重量100重量部に対して、前記の充填剤の使用量は0~約35重量部、例えば約5重量部~約30重量部である。充填剤、特に無機充填剤を使用した場合、前記のカラーマスターバッチの合計重量に対して、前記の顔料と充填剤との合計重量は、約35重量%超、好ましくは約40重量%以上であり、好ましくは約65重量%以下である。それらの合計重量がこの範囲内であると、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λを約0.26~約1.47の範囲内に容易に調整することができる。
【0035】
カラーマスターバッチに助剤として用いられる酸化防止剤、光安定剤、カップリング剤、潤滑剤、分散剤および相溶化剤は、木材プラスチック複合材料において一般的に使用されるものである。前記の酸化防止剤の例としては、ホスファイト系およびヒンダードフェノール系の酸化防止剤が挙げられるが、これらに限定されない。前記の光安定剤の例としては、ベンゾフェノン系およびベンゾトリアゾール系の光安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。前記のカップリング剤の例としては、チタネート系およびシラン系のカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されない。前記の潤滑剤の例としては、金属石鹸、脂肪酸及びその塩、脂肪酸アミド系の潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されない。前記の分散剤の例としては、脂肪酸エステルおよび脂肪族アルコール系の分散剤が挙げられるが、これらに限定されない。前記の相溶化剤の例としては、マレイン酸変性ポリオレフィン系相溶化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
一実施形態では、前記のカラーマスターバッチは、前記のカラーマスターバッチの合計重量100重量部に対して、ポリエチレンまたはポリプロピレン約30~約60重量部、着色剤、特に無機顔料または金属顔料約20~約50重量部、無機充填剤0~約30重量部、および酸化防止剤、光安定剤、カップリング剤、潤滑剤、分散剤および相溶化剤からなる群から選択される助剤0~約5重量部を含むか、またはそれらの成分からなる。好ましくは、ポリエチレンまたはポリプロピレンと無機顔料または金属顔料との合計重量は、前記のカラーマスターバッチの合計重量の60重量部~99.9重量部、特に約70重量部~約98重量部、特に約75重量部~約97重量部であることが好ましい。好ましくは、無機顔料または金属顔料と無機充填剤との合計重量は、前記のカラーマスターバッチの30重量部~75重量部、特に約35重量部~約70重量部、特に約40重量部~約65重量部であることが好ましい。カラーマスターバッチが上記範囲内の成分を有すると、前記のカラーマスターバッチと前記の基材(特に、リサイクルポリエチレン材料のようなリサイクル材料による基材)との引張弾性率(Et)の比λを約0.26~約1.47の範囲内に調整しやすくなり、且つ前記のカラーマスターバッチを少量(例えば、カラーマスターバッチと基材との合計重量に対して0.1重量%~0.5重量%)で使用することができるため、さらなる製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
本発明の多色木材プラスチック成形材料の基材は、プラスチックと充填剤を含み、また、必要に応じて着色剤と助剤をさらに含んでもよい。前記の助剤の例としては、酸化防止剤、光安定剤、カップリング剤、潤滑剤、分散剤、相溶化剤、難燃剤、防カビ剤、および発泡剤が挙げられるが、これらに限定されない。前記の助剤は、単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0038】
基材に用いられるプラスチックは、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λが約0.26~約1.47の範囲内であれば、特に制限されない。一実施形態では、前記の基材中のプラスチックは、熱可塑性樹脂、特にポリオレフィン系樹脂である。好ましくは、前記のポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせである。前記のポリエチレンの例としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびそれらのブレンド物が挙げられるが、これらに限定されない。前記のポリエチレンは、リサイクルポリエチレンも含む。好ましい実施形態では、前記の基材は、リサイクルポリエチレン(例えば、リサイクル高密度ポリエチレン、リサイクル低密度ポリエチレン、またはそれらの混合物)のみをプラスチック成分として使用することにより、製品の製造コストをさらに低減することができる。一実施形態では、前記の基材は、前記の基材の合計重量100重量部に対して、約20~約60重量部のポリオレフィン系樹脂、特に約25~約50重量部の樹脂、特に約25~約40重量部の樹脂を含む。
【0039】
基材に用いられる充填剤は、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λが約0.26~約1.47の範囲内であれば、特に制限されない。前記の充填剤は、有機充填剤および/または無機充填剤を含む。前記の有機充填剤の例としては、木粉、おがくず、籾殻、竹粉、大麻のうちの1つまたは複数の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。前記の無機充填剤の例としては、軽質炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カオリン、マイカ、ケイ酸カルシウム、ガラス繊維、フライアッシュのうちの1つまたは複数の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、前記の充填剤は、有機充填剤と無機充填剤のブレンド物である。好ましい実施形態では、前記の有機充填剤と無機充填剤のブレンド物は、前記の基材の約50重量%以上または約60重量%以上を占める。より好ましい実施形態では、前記の有機充填剤は、前記の基材の約40重量%以上または約50重量%以上を占める。
【0040】
基材に用いられる着色剤は、所望の着色効果およびカラーマスターバッチ中の着色剤に応じて具体的に選択することができるが、特に制限されない。前記の基材に用いられる着色剤は、無機顔料および/または有機顔料を含む。前記の無機顔料の例としては、チタン白、酸化鉄レッド、酸化鉄イエロー、酸化鉄ブラウン、酸化鉄ブルー、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、ホワイトカーボンのうちの1つまたは複数の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。前記の有機顔料は、アゾ顔料、複素環顔料、その他の顔料のうちの1つまたは複数の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、前記の着色剤は、チタン白、酸化鉄レッドおよび酸化鉄イエローから選択される無機顔料である。一実施形態では、前記の基材の合計重量100重量部に対して、前記の着色剤の含有量は、約10重量部以下または約5重量部以下であり、或いは着色剤を含まない。好ましい実施形態では、前記の着色剤の含有量は約2重量部~約4重量部である。
【0041】
基材に助剤として用いられる酸化防止剤、光安定剤、カップリング剤、潤滑剤、分散剤、相溶化剤、難燃剤、防カビ剤、および発泡剤は、木材プラスチック複合材料において一般的に使用されるものである。その例としては、カラーマスターバッチに用いられる助剤について上記説明したものが挙げるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の実施形態では、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λは約0.26~約1.47の範囲内である。本発明の発明人は、カラーマスターバッチと基材との引張弾性率(Et)の比を一定の数値範囲内で選択・制御することにより、外面および外面に平行な各面にいずれも優れた木目模様を模したテクスチャーを持つ多色木材プラスチック成形材料が得られるという驚くべきことを見出した。本発明者らは、同一の基材、装置、工程などの条件下で、異なる弾性特性を有するますたーばっち、すなわち異なる引張弾性率を有するカラーマスターバッチを選択・交換することで、引張弾性率(Et)の比率λがカラーマスターバッチの引張弾性率の低下に伴い上記範囲内で徐々に低下し、基材中の溶融カラーマスターバッチのレオロジー形態が点状、斑状から折れ線状、棒状、広縞、細縞、及び拡散状態に至るまでの形状上で変化することを、複数の実験を行い、比較することにより見出した。λが1.68である場合、カラーマスターバッチの形態は微小な点状であり、成形材料は基材の単一の色を呈する。また、λが0.20である場合、カラーマスターバッチは完全に溶融し、成形材料はカラーマスターバッチと基材の混合色を呈する。一実施形態では、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λが約0.70~約1.47の範囲内であり、得られた木材プラスチック成形材料において基材とカラーマスターバッチが独立して存在し、それぞれの色を示す。別の実施形態では、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λが約0.26以上、約0.70未満、特に約0.69未満、特に約0.68未満、特に約0.67未満の範囲内であるため、得られた木材プラスチック成形材料中において基材とカラーマスターバッチが少なくとも部分的に溶融した状態で存在し、これにより、この木材プラスチック成形材料は、基材の色とカラーマスターバッチの色を混合することによるグラデーションの複色効果を示す。
【0043】
一実施形態では、前記のカラーマスターバッチのGB/T 1040.2-2006/ISO 527-2:1993規格に従って測定された引張弾性率(Et)は、約0.1×10 MPa~約3×10 MPaの範囲内である。例えば、約0.2×10 MPa~約3×10 MPaの範囲内、好ましくは約0.5×10 MPa~約2.5×10 MPaの範囲内であり、具体的に、例えば約2.42×10 MPa、約2.11×10 MPa、約1.92×10 MPa、約1.80×10 MPa、約1.66×10 MPa、約1.55×10 MPa、約1.45×10 MPa、約1.24×10 MPa、約1.12×10 MPa、または約0.86×10 MPaであってもよい。
【0044】
好ましい実施形態では、基材中のカラーマスターバッチの溶融形態は、はっきりした典型的な細長い縞模様であり、研磨処理後、表面層と同じはっきりした細長い縞模様が表面層と平行な任意の内面に存在する。成形材料の表面には、主に基材の地色と表面の黒い縞の2色があり、さらに2色の混合色が少しある。別の好ましい実施形態では、基材は同一であるが、異なるカラーマスターバッチを使用することで、基材中のカラーマスターバッチの溶融形態は、比較的広い縞模様であり、前記の木材プラスチック成形材料の表面に垂直な断面には、カラーマスターバッチと同一の色を有する線または点が存在する。別の好ましい実施形態では、基材中のカラーマスターバッチの溶融形態は、はっきりした棒状であり、成形材料の表面には基材の地色と表面の黒い縞の2色のみが存在する。別の好ましい実施形態では、基材中のカラーマスターバッチは、拡散及び混濁した形状の溶融形態を呈し、成形材料の表面には、基材の地色、カラーマスターバッチの黒色、および濃淡の異なるグラデーションの混合色が存在する。
【0045】
別の一実施形態では、基材の引張弾性率(Et)との比λがいずれも約0.26~約1.47である2種類以上のカラーマスターバッチを組み合わせて使用することにより、得られた木材プラスチック成形材料の外面および外面と平行な各面層に、それぞれのカラーマスターバッチの縞模様が存在する。一実施形態では、前記の基材が白色であり、また、前記のカラーマスターバッチが黒色のカラーマスターバッチおよび茶色のカラーマスターバッチを含むことにより、得られた木材プラスチック成形材料の表面には黒色と茶色の縞模様が存在する。
【0046】
別の一局面では、本発明は、前記の基材和前記のカラーマスターバッチを混合して溶融させ押し出すことを含む多色木材プラスチック成形材料の製造方法に関する。一実施形態では、前記の基材と前記のカラーマスターバッチとを混合して溶融させ、押し出す前に、前記の方法は、前記の基材の引張弾性率を測定する工程と、測定された基材の引張弾性率に基づいて、前記のカラーマスターバッチと前記の基材との引張弾性率(Et)の比λが0.26~1.47の範囲になるように、適切なカラーマスターバッチを選択する工程とをさらに含んでもよい。本発明の多色木材プラスチック成形材料の製造方法によれば、ユーザーが希望する木材プラスチック成形材料の縞模様に応じて、低コストの基材に適したカラーマスターバッチを選択することができるため、ユーザーの様々な審美的な要求と好みに応えるように様々な効果のある製品を容易に設計し、生産することができる。
【0047】
混合、溶融および押出によって得られた木材プラスチック成形材料には、冷却、切断及び表面処理の1つ以上の操作を施すことができる。表面処理の例としては、研磨、刷毛引き、エンボス、表面処理剤(例えば仕上げ塗り)による表面処理などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
前記の基材および前記のカラーマスターバッチは、溶融およひ押出の操作の前に混合してもよいし、溶融および押出の際に混合してもよい。一実施形態において、前記の製造方法は、所定の割合のカラーマスターバッチと基材をミキサーで均一に撹拌した後、押出機に供給し、押出機で連続的に溶融押出を行い、多色木材プラスチック成形材料を製造することを含んでもよい。別の実施形態では、前記の基材とカラーマスターバッチを同時に別々に押出機に供給し、押出機のスクリューのせん断攪拌によって混合した後、押出機で連続的に溶融押出して多色木材プラスチック成形材料を製造することを含む。このような実施形態では、カラーマスターバッチと基材の比率は、供給機構の回転数によって調整することができる。前記の押出機としては、熱可塑性樹脂の加工に用いられる通常の押出機を使用してもよい。押出機の例としては、単軸押出機、二軸押出機および多軸押出機が挙げられるが、これらに限定されない。前記の押出機の各シリンダー(区画)内の温度とスクリューの回転数は、押し出す材料に応じて適宜決定することができる。本発明の多色木材プラスチック成形材料の製造方法では、押出機の各シリンダー(区画)内の温度を150℃以下にすることができる。例えば、可塑化押出シリンダー(区画)におけるコンフルエンスコア(confluence core)とダイの温度を145℃以下に制御することができる。このような木材プラスチック複合材料の通常の製造プロセス温度で多色木材プラスチック成形材料を製造することにより、安定した製品品質と低いエネルギー消費コストを実現することができる。
【0049】
前記のカラーマスターバッチ及び前記の基材は、当該技術分野で公知の方法により製造することができる。例えば、プラスチック、顔料、必要に応じて助剤を所定の比例で高速混合機に添加して均一に混合した後、得られた混合物を押出機(例えば二軸押出機)で溶融押出し、さらに、冷却、造粒、遠心脱水、空気乾燥を経て製造することができる。
【0050】
別の一局面では、本発明は、例えば舗床、欄干、階段、ベンチ、廊下、あずまやなどを含む前記の多色木材プラスチック成形材料の製品に関する。好ましくは、前記の製品は、例えば木材プラスチック複合床、木材プラスチック複合柵板、木材プラスチック複合塀板、木材プラスチック複合壁板などの木材プラスチック複合板である。
【0051】
実施例
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。また、以下の説明では、特に規定がない限り、「部」は「重量部」を指し、「%」は「重量%」を指す。
【0052】
各実施例で用いた材料を以下の表1に示す。
【表1】
【0053】
カラーマスターバッチの製造実施例
表2に示すプラスチック、顔料および助剤を、示される重量パーセントで高速混合機SHR-300Aに加え、1480rpmの回転数で10分間攪拌した。得られた混合物を、平行同方向回転二軸押出機AK-73(Nanjing Keya Chemical Equipment社)に投入し、溶融押出と造粒を行った後、各カラーマスターバッチ(番号H1-1~H3-1は黒色のカラーマスターバッチであり、番号Z1-1およびZ1-2は茶色のカラーマスターバッチである)を得た。溶融押出の条件:スクリューのアスペクト比L/D=44、スクリューの回転数600rpm、押出機の1~11区画の温度設定は順次に100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、170℃、180℃、190℃であり、溶融温度は190℃である。
サーボ制御引張試験機AI-7000-M1(High Speed Rail Testing Instruments (Dongguan)社)を使用してそれぞれのカラーマスターバッチの引張弾性率を測定し、結果を表2に示す。
【0054】
基材の製造実施例
表3に示すリサイクルPE材料、顔料および助剤を、示される重量パーセントで高速混合機SHR-300Aに加え、1480rpmの回転数で10分間攪拌した。得られた混合物を、平行同方向回転二軸押出機AK-73(Nanjing Keya Chemical Equipment社)に投入し、溶融押出と造粒を行った後、各基材を得た。溶融押出の条件:スクリューのアスペクト比L/D=44、スクリューの回転数600rpm、押出機の1~11区画の温度設定は順次に100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、170℃、180℃、190℃であり、溶融温度は190℃である。
サーボ制御引張試験機AI-7000-M1(High Speed Rail Testing Instruments (Dongguan)社)を使用してそれぞれのカラーマスターバッチの引張弾性率を測定し、結果を表3に示す。
【表2】
【表3】
【0055】
実施例1~12および比較例13~14
実施例9以外の各実施例および比較例における各基材と各カラーマスターバッチを、表4に示す組み合わせと使用量で、異方向コニカル二軸押出機SJZ65/132型(Shanghai Jinwei Machinery Manufacturing社)に投入し、溶融押出を行った後、木材プラスチック成形材料を得た。溶融押出の条件:スクリューの回転数34.7rpm;押出機温度:1区画150℃、2区画150℃、3区画140、4区画140℃、コンフルエンスコア温度140℃;ダイ温度:140℃、140℃、140℃、140℃。各カラーマスターバッチと木材プラスチック成形材料との引張弾性率の比λも表4に示す。ここで、カラーマスターバッチの添加割合は、実施例1が0.5%、実施例2が0.5%、実施例3が0.1%、実施例4~7および9が0.25%、実施例8および10が0.3%、実施例11が茶色のカラーマスターバッチ0.3%と黒色のカラーマスターバッチ0.1%、実施例12が0.25%、比較例13および比較例14が0.25%である。
【0056】
また、実施例9は、2台の押出機が同時に作動する共押出法を用いた点で上記と異なる。この実施例9では、リサイクルPE材料25%、木粉60%、軽質炭酸カルシウム10%、複合潤滑剤2%、相溶化剤2.5%、補助酸化防止剤0.5%を含むコア層材料を、異方向コニカル二軸押出機SJZ65/132型を使用して、上記と同じ条件下で、木材プラスチック成形材料のコア層を押し出した。同時に、表4に示す実施例9のカラーマスターバッチと基材を混合して表面層材料とし、単軸押出機SJ20型を使用して、20rpmのスクリュー回転数でコア層材料の表面に共押出面層を形成した。共押出ダイ(Huangshi High-tech Plastic Die社)温度は、140℃、140℃、140℃、140℃である。
【0057】
その後、すべての実施例及び比較例で得られた押出製品の表面に表面処理を行い、表面のプラスチック表皮を機械的に除去した。また、実施例1、実施例3、実施例7、実施例8、比較例13及び比較例14で得られた製品の表面に対して、さらに熱エンボス機械処理を行った。
【表4】
【0058】
製造された木材プラスチック成形材料のそれぞれの外面の色と模様を観察した。なお、図1(比較例13)、図2(比較例14)、図3(実施例1)、図5(実施例3)、図10(実施例7)、図11(実施例8)の表面写真に示す長尺の貫通縞は、熱エンボスロールを用いたその後の機械処理によるものである。比較例13(λ=1.68)は、白色の木材プラスチック基材の単一原色を呈し、図示の模様は熱エンボスロールを用いたその後の熱プレス処理により得られた規則的な模様であり(図1参照);一方、比較例14(λ=0.20)は、茶色のカラーマスターバッチの単一原色を呈し、図示の模様は熱エンボスロールを用いたその後の熱プレス処理により得られた規則的な模様である(図2参照)ことが分かった。これに対して、本発明の実施例では、引張弾性率の比が1.47から0.26に低下するにつれて、図3~16に示すように、溶融カラーマスターバッチのレオロジー形態は、斑点-折れ線-棒状-幅が広く短い縞-細長い縞-拡散状態に変化した。図3~16は、実施例1(λ=1.47)、実施例2(λ=1.33)、実施例3(λ=0.70)、実施例4(λ=0.63)、実施例5(λ=0.58)、実施例6(λ=0.51)、実施例7(λ=0.44)、実施例8(λ=0.67)、実施例9(λ=0.45)、実施例10(λ=0.26)、実施例11(λ=0.37およびλ=0.48)、実施例12(λ=0.29)で得られた木材プラスチック成形材料の表面写真をそれぞれ示す。基材中のカラーマスターバッチの溶融形態は、実施例1では小さな斑点(図3参照、楕円枠で示す)として現れ、実施例2では折れ線状(図4参照、楕円枠で示す)として現れ、実施例3および実施例8ではそれぞれ大きな斑点と棒状(図5および図11参照、楕円枠で示す)として現れ、実施例4および実施例5ではそれぞれ幅が広く短い縞と細長い縞(図6および図8参照、楕円枠で示す)として現れ、実施例6、実施例7、実施例9、実施例10、実施例11および実施例12では異なる程度に拡散した雲霧状(図9図10図12図14図15および図16参照、楕円枠で示す)として現れた。斑点、折れ線、棒状、幅が広く短い縞、細長い縞、拡散状態の形状変化とは、機械的熱ロールプレスで得られた浅い地色と長い貫通縞以外の色模様のことである。
【0059】
また、図5に示すように、実施例3で得られた木材プラスチック成形材料では、白色(基材)と黒色(カラーマスターバッチ)はそれぞれ独立して存在し、成形材料表面には白色と黒色の2色のみが存在した。図8に示すように、実施例5で得られた木材プラスチック成形材料では、紅色(基材)と黒色(カラーマスターバッチ)が部分的に融合し、その複色として異なる濃淡を有する赤褐色を呈した結果、木材プラスチック成形材料の表面には赤、黒、および異なる濃淡を有する赤褐色が存在したため、カラーマスターバッチの色と基材の色は、2種以上の混合したグラデーション色の効果を示した。同様に、図6に示すように、実施例4で得られた木材プラスチック成形材料では、紅色、黒色および茶色は、混合したグラデーションの複色効果を示した。これは、本発明の木材プラスチック成形材料において、カラーマスターバッチの色と基材の色は、基材中にカラーマスターバッチが非溶融-部分溶融-完全溶融の様々な形態で存在するため、2つ以上の混合したグラデーションの複色効果を呈することができることを示している。実用では、所望の模様に応じて、カラーマスターバッチと基材との異なる組み合わせを選択して、理想的な外観効果を得ることができる。
【0060】
図8は、実施例5で得られた木材プラスチック成形材料の表面処理前後の比較を示す写真である。右側は製品の表面層をサンドレーザで削った後の内面層の写真である。試験でいくつかの層を削った製品は、いずれの層の正面にも異なる色と溶融レオロジー形態のカラーマスターバッチが見られる。
【0061】
図7は実施例4の断面図であり、図13は実施例9の断面図である。これらの図から、前記の木材プラスチック成形材料の表面に垂直な断面には、カラーマスターバッチと同じ色の線や斑点が存在したことが分かる。また、図13の共押出面層(白色部分)に示すように、共押出面層材料の溶融レオロジー形態の生成過程は、同じメカニズム及び制御方法に従う。
【0062】
さらに、上記の各実施例で使用した溶融押出装置および温度は、通常の非多色木材プラスチック成形材料の製造に一般的に使用されるものである。これは、本発明に係る多色木材プラスチック成形材料の製造方法が、従来の木材プラスチック成形材料の製造方法および製造装置との互換性に優れ、高価な設備とダイを追加する必要がなく、生産設備とプロセスに改造や調整を加える必要がなく、プロセスが成熟して信頼性が高く、操作が容易であるため、生産コストが低いことを示している。また、同じ温度と押出機のスクリューの回転数は、木材プラスチック成形材料の押出生産の生産効率および製品品質を保証する。
【0063】
機械的性能評価
実施例1~12で得られた木材プラスチック成形材料は、EN 15534-1:2014の7.1.2.1に従って落下衝撃試験を行い、EN 15534-1:2014 Annex Aに従って耐屈曲性試験を行い、EN 15534-1:2014の8.3.3に従って沸騰試験を行い、EN 15534-1:2014の9.2に従って線膨張係数試験を行い、EN 15534-1:2014の7.4.1に従ってクリープ挙動試験を行い、EN 15534-1:2014の8.3.1に従って吸水膨張試験を行った結果、いずれも合格であった。
【0064】
特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であり、その要素を等価で置換できることは、当業者にとって明らかである。本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲内に含まれるすべての実施形態を包含する。
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