(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】腕時計のベルトの長さの採寸治具
(51)【国際特許分類】
A44C 5/00 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
A44C5/00 B
(21)【出願番号】P 2024032622
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524084067
【氏名又は名称】隠田 圭典
(74)【代理人】
【識別番号】100173288
【氏名又は名称】浅井 淳
(72)【発明者】
【氏名】隠田 圭典
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3069834(JP,U)
【文献】登録実用新案第3217227(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0188665(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0254960(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0324773(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第115736857(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/00~ 5/24
G04D 7/00~ 7/12
A61B 5/107
A41F 9/00~ 9/02
G01B 5/02~ 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の取り付け部で腕時計本体に取り付けられる長尺の第1の部材と、第2の取り付け部で前記腕時計本体に取り付けられる長尺の第2の部材と、で構成される腕時計用ベルト長さの採寸治具であって、
前記第1の部材が掛けられる
尾錠シャフトと、
前記尾錠シャフトの中央部に回動可能に支持され前記第2の部材と係合する
尾錠ピンと、を有する
尾錠に、前記第1の部材と前記第2の部材とがそれぞれ接続され、
前記第1の部材は、前記
尾錠ピンが通過可能で、前記
尾錠と前記第1の取り付け部との間の前記第1の部材の長さの調整を可能にする切り欠き部を有し、
前記第2の部材は、前記
尾錠ピンと係合されて前記
尾錠と前記第2の取り付け部との間の前記第2の部材の長さの調整を可能にする、長手方向に沿って設けられた複数の穴で構成される穴部を有することを特徴とする腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項2】
長手方向で前記切り欠き部に対応する領域における前記第1の部材の厚さの平均値は、0.1mm以上1.0mm以下であり、長手方向で前記第1の取り付け部と前記切り欠き部との間の領域(前記第1の取り付け部の端部から5mm以内を除く)における前記第1の部材の厚さの平均値は1.1mm以上5.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項3】
長手方向で前記切り欠き部に対応する領域における前記第1の部材は、単層または複数の層が積層された第1の層構成を有し、
長手方向で前記第1の取り付け部と前記切り欠き部との間の領域における前記第1の部材は、複数の層が積層された第2の層構成を有し、
前記第2の層構成の層の数は、前記第1の層構成の層の数より多いことを特徴とする請求項1に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項4】
前記第1の部材と前記第2の部材とは、厚さが0.1mm以上5.0mm以下の非伸縮性かつ可撓性の材料で構成されることを特徴とする請求項1に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項5】
第1の取り付け部で腕時計本体に取り付けられる長尺の第1の部材と、第2の取り付け部で前記腕時計本体に取り付けられる長尺の第2の部材と、で構成される腕時計用ベルト長さの採寸治具であって、
前記第1の部材が掛けられる
Dバックルシャフトと、前記第2の部材と係合する
凸状部材と、を有する
Dバックルに、前記第1の部材と前記第2の部材とがそれぞれ接続され、
前記第1の部材は、
前記Dバックルシャフトを支持する
、前記Dバックルシャフトの長手方向の中央付近に配置されたシャフト支持部が通過可能で、前記
Dバックルと前記第1の取り付け部との間の前記第1の部材の長さの調整を可能にする切り欠き部を有し、
前記第2の部材は、前記
凸状部材と係合されて前記
Dバックルと前記第2の取り付け部との間の前記第2の部材の長さの調整を可能にする、長手方向に沿って設けられた複数の穴で構成される穴部を有することを特徴とする腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項6】
長手方向で前記切り欠き部に対応する領域における前記第1の部材の厚さの平均値は、0.1mm以上1.0mm以下であり、長手方向で前記第1の取り付け部と前記切り欠き部との間の領域(前記第1の取り付け部の端部から5mm以内を除く)における前記第1の部材の厚さの平均値は1.1mm以上5.0mm以下であることを特徴とする請求項
5に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項7】
長手方向で前記切り欠き部に対応する領域における前記第1の部材は、単層または複数の層が積層された第1の層構成を有し、
長手方向で前記第1の取り付け部と前記切り欠き部との間の領域における前記第1の部材は、複数の層が積層された第2の層構成を有し、
前記第2の層構成の層の数は、前記第1の層構成の層の数より多いことを特徴とする請求項
5に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項8】
前記第1の部材と前記第2の部材とは、厚さが0.1mm以上5.0mm以下の非伸縮性かつ可撓性の材料で構成されることを特徴とする請求項
5に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項9】
腕時計本体と前記腕時計本体の第1の連結部との間、及び前記腕時計本体と前記腕時計本体の第2の連結部との間に移動可能に通され、長尺の第1の部分と、長尺の第2の部分と、を有する長尺の部材の腕時計用ベルト長さの採寸治具であって、
前記第1の部分が掛けられる
尾錠シャフトと、
前記尾錠シャフトの中央部に回動可能に支持され前記第2の部分と係合する
尾錠ピンと、を有する
尾錠に、前記第1の部分と前記第2の部分とがそれぞれ接続され、
前記第1の部分は、前記
尾錠ピンが通過可能で、前記
尾錠と前記第1の連結部との間の前記第1の部分の長さの調整を可能にする切り欠き部を有し、
前記第2の部分は、前記
尾錠ピンと係合される、長手方向に沿って設けられた1つ以上の穴で構成される穴部を有することを特徴とする腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項10】
前記第1の部分と前記第2の部分とは、厚さが0.1mm以上2.0mm以下の非伸縮性かつ可撓性の材料で構成されることを特徴とする請求項
9に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項11】
前記切り欠き部の長手方向の長さは30mm以上140mm以下であることを特徴とする請求項
9に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項12】
腕時計本体と前記腕時計本体の第1の連結部との間、及び前記腕時計本体と前記腕時計本体の第2の連結部との間に移動可能に通され、長尺の第1の部分と、長尺の第2の部分と、を有する長尺の部材の腕時計用ベルト長さの採寸治具であって、
前記第1の部分が掛けられる
Dバックルシャフトと、前記第2の部分と係合する
凸状部材と、を有する
Dバックルに、前記第1の部分と前記第2の部分とがそれぞれ接続され、
前記第1の部分は、前記
Dバックルシャフトを支持する
、前記Dバックルシャフトの長手方向の中央付近に配置されたシャフト支持部が通過可能で、前記
Dバックルと前記第1の連結部との間の前記第1の部分の長さの調整を可能にする切り欠き部を有し、
前記第2の部分は、前記
凸状部材と係合される、長手方向に沿って設けられた1つ以上の穴で構成される穴部を有することを特徴とする腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項13】
前記第1の部分と前記第2の部分とは、厚さが0.1mm以上2.0mm以下の非伸縮性かつ可撓性の材料で形成されることを特徴とする請求項
12に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【請求項14】
前記切り欠き部の長手方向の長さは30mm以上140mm以下であることを特徴とする請求項
12に記載の腕時計用ベルト長さの採寸治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計のベルトの長さの採寸治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オーダーメイドの腕時計のベルトや留め具を購入可能なインターネット等を利用したオンライン販売サイトがある。このような販売サイトでは、ユーザの使用する腕時計の寸法と、ユーザが測定した腕回りの長さに基づく所定の計算式でベルトの長さを算出することがある。また、実開昭59-74305号公報では、模型の腕時計とベルトを使った採寸治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、所定の計算式を使う方法では、ユーザの腕の形状に個人差があるため、ベルトの長さが適切でない場合がある。また、留め具や腕時計本体の形状によっても装着感が異なるため、ベルトの長さがユーザの好みに合わない場合があった。また、実開昭59-74305号公報の採寸治具では、腕時計本体や留め具の形状や大きさが、使用する腕時計本体や留め具と異なるため、計算式を使う方法と同様にベルトの長さがユーザの好みに合わない場合がある。また、近年では留め具の形状が多様化しているため、上記の採寸治具では、腕時計本体に対する留め具の位置に関係する、腕時計の12時側(以下ショート側という)のベルトとの長さと、腕時計の6時側(以下ロング側という)のベルトの長さのバランスを変えて採寸することができず、留め具の位置について満足を得られないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の腕時計用ベルト長さの採寸治具は、第1の取り付け部で腕時計本体に取り付けられる長尺の第1の部材と、第2の取り付け部で前記腕時計本体に取り付けられる長尺の第2の部材と、で構成される腕時計用ベルト長さの採寸治具であって、前記第1の部材が掛けられる尾錠シャフトと、前記尾錠シャフトの中央部に回動可能に支持され前記第2の部材と係合する尾錠ピンと、を有する尾錠に、前記第1の部材と前記第2の部材とがそれぞれ接続され、前記第1の部材は、前記尾錠ピンが通過可能で、前記尾錠と前記第1の取り付け部との間の前記第1の部材の長さの調整を可能にする切り欠き部を有し、前記第2の部材は、前記尾錠ピンと係合されて前記尾錠と前記第2の取り付け部との間の前記第2の部材の長さの調整を可能にする、長手方向に沿って設けられた複数の穴で構成される穴部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の腕時計用ベルト長さの採寸治具によれば、ユーザが使用する予定の腕時計本体及び留め具を使って採寸可能なので、使用予定に近い構成での使用感を確認しながら採寸が可能になる。また、留め具と腕時計までのショート側とロング側の長さのバランスを変更した場合の使用感を確認しながら採寸可能になる。また、複数の種類の留め具に対応して採寸が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)、(B)は、実施形態1の第1の部材と第2の部材の説明図である。
【
図2】実施形態1の第1の部材と第2の部材が腕時計本体50に取り付けられた状態を示す説明図である。
【
図3】実施形態1の採寸治具の採寸可能な状態を示す断面模式図である。
【
図4】(A)~(C)は、実施形態1の採寸治具の採寸可能な状態への移行手順を説明する断面模式図である。
【
図5】(A)~(D)は、
図4に続く移行手順、及び採寸手順を説明する断面模式図である。
【
図6】(A)~(C)は、
図5に続く採寸手順を説明する断面模式図である。
【
図7】(A)、(B)は、実施形態1の第1の部材と第2の部材の断面模式図である。
【
図8】(A)、(B)は、実施形態1の第1の部材と第2の部材の断面模式図である。
【
図9】(A)、(B)は、実施形態1の第1の部材と第2の部材の断面模式図である。
【
図10】実施形態2で使用される留め具の一例を示す概略斜視図である。
【
図11】実施形態2の採寸治具の採寸可能な状態を示す断面模式図である。
【
図12】(A)~(D)は、実施形態2の採寸治具の採寸可能な状態への移行手順を説明する説明図である。
【
図13】(A)~(C)は、
図12に続く移行手順、及び採寸手順を説明する断面模式図である。
【
図14】(A)~(C)は、
図13に続く採寸手順を説明する断面模式図である。
【
図15】実施形態3の採寸治具を説明する図である。
【
図16】実施形態3の採寸治具を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、各図において、同一の部材または要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0009】
[実施形態1]
実施形態1では2つの部材で構成される採寸治具について、留め具に尾錠を用いた場合の例について説明する。
(実施例1)
【0010】
図1は、第1の部材10と第2の部材20で構成される採寸治具1を示す説明図である。
図1(A)は長手方向に延びる切り欠き部11と、図の下方に配置され、腕時計本体50に取り付けられる第1の取り付け部12を有する第1の部材10を示している。
図1(B)は、長手方向に並んで配置された複数の穴で構成される穴部21と、図の下方に配置され、腕時計本体50に取り付けられる第2の取り付け部22を有する第2の部材20を示している。
【0011】
図2は、第1の部材10と第2の部材20が腕時計本体50に取り付けられた状態を示す説明図である。第1の部材10は第1の取り付け部12で、第2の部材20は第2の取り付け部22で、それぞれ腕時計本体50に取り付けられる。
【0012】
図3は、腕時計本体50に取り付けられた第1の部材10と第2の部材20のそれぞれに留め具である尾錠30が接続され、腕に通して採寸可能な状態を示す断面模式図である。留め具である尾錠30は、尾錠枠31に支持される懸架部である尾錠シャフト33と、尾錠シャフト33に回動可能に支持され、係合部である尾錠ピン32から構成されている。第1の部材10は、懸架部である尾錠シャフト33に掛けられる。また、尾錠ピン32は、第2の部材20の穴部21の穴の1つに挿入されることで第2の部材20と係合する係合部である。第1の部材10が掛けられる尾錠シャフト33と、第2の部材20と係合する尾錠ピン32とを有する尾錠30に、第1の部材10と第2の部材20とがそれぞれ接続されている。
【0013】
図3において、第1の取り付け部12には、腕時計本体50の連結部51に取り付け可能なバネシャフト等が入る隙間が設けられている。第1の取り付け部12と反対側の端部の形状は剣先状であってもよい。第1の部材10には、第1の部材10の短手方向の中央付近に長手方向に延びる切り欠き部11が設けられている。第1の部材10の大きさは、長手方向が80mm以上150mm以下、短手方向が6mm以上30mm以下であることが好ましい。切り欠き部11は、長手方向で30mm以上100mm以下、短手方向は0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0014】
第2の取り付け部22にも、第1の取り付け部12と同様に腕時計本体50の連結部52に取り付け可能なバネシャフト等が入る隙間が設けられている。第2の取り付け部22と反対側の端部の形状は剣先状であってもよい。第2の部材20の大きさは、長手方向が40mm以上160mm以下、短手方向が6mm以上30mm以下であることが好ましい。第2の部材20には、係合部である尾錠ピン32が挿入可能な大きさの穴が長手方向に複数並んで構成される穴部21が設けられている。穴部21の穴の数は3個から20個程度であるがこれに限られない。また、穴と穴の長手方向における中心の間隔は、3mm以上10mm以下で、4mm以上6mm以下であることが好ましい。
【0015】
第1の部材10及び第2の部材20は、非伸縮性かつ可撓性の材料で構成される。例えば革ベルトの芯材に使われる材料でもよい。また、第1の部材10及び第2の部材20の厚さは、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
【0016】
次に、
図2に示す状態から、
図3に示す採寸可能な状態への移行手順について説明する。
図4(A)から
図4(C)は、採寸可能な状態への移行手順を説明する断面模式図である。
図4(A)は、尾錠30の内側から尾錠枠31内に第1の部材10の端部を差し込み、第1の部材10の端部を図の左上方に向けて尾錠枠31に通す様子を示している。
【0017】
図4(B)は、尾錠ピン32を第1の部材10の切り欠き部11に通した状態を示す。第1の部材10は、尾錠ピン32が通過可能な短手方向の長さの切り欠き部11を有しているので、尾錠ピン32は切り欠き部11を通過する。
【0018】
図4(C)では、第1の部材10の端部を図の下方に引き下げ、第1の部材10が尾錠シャフト33に掛けられている状態を示している。なお、図面の下方が重力方向である。上記の手順により、尾錠30は第1の部材10と接続される。
【0019】
図5(A)から
図5(D)は、
図4に続く移行手順を説明する断面模式図である。
図5(A)は、図の右から左に向けて第2の部材20の端部を先頭に、第2の部材20を尾錠枠31内に差し込む状態を示している。
図5(B)は、第2の部材20の端部で尾錠ピン32を倒しながら第2の部材20を図の左方向に押している状態を示している。
【0020】
図5(C)は、尾錠ピン32を第2の部材20の穴部21の穴の1つに仮挿入し、第2の部材20と尾錠30とを接続させた図である。
図5(D)は、尾錠ピン32が尾錠枠31に当接するまで、第2の部材20を図の右方向に戻した状態を示している。尾錠30と第2の部材20とが接続されたことで、腕時計本体50、第1の部材10、尾錠30、第2の部材20、腕時計本体50のループが形成され、腕に入れて採寸可能な状態になる。
【0021】
次に採寸の説明を行う。ユーザは尾錠30と第1の取り付け部12の間の第1の部材10の長さを決める第1の採寸を行う。また、ユーザは尾錠30と第2の取り付け部22との間の第2の部材20の長さを決める第2の採寸を行う。必要であれば第1の採寸と第2の採寸を繰り返し行うことで最適な採寸が可能になる。第1の採寸と第2の採寸の順番は任意であるが、以下の説明では第2の採寸を先に行う。
【0022】
第2の部材20は、尾錠ピン32と係合されて尾錠30と第2の取り付け部22との間の第2の部材20の長さの調整を可能にする複数の穴で構成される穴部21を有している。そこで、ユーザは第2の採寸において、
図5(C)から
図5(D)の手順で、穴部21の複数の穴の中から尾錠30と第2の取り付け部22との間の第2の部材20の長さが最適になる穴を選択する。なお、ユーザの選択した穴を容易に特定するため、複数の穴の横に穴の番号や記号を記してもよい。
【0023】
図6(A)から
図6(C)は第1の採寸手順を説明する断面模式図である。第1の部材10は、尾錠30と第1の取り付け部12と間の第1の部材10の長さの調整を可能にする切り欠き部11を有している。そこでユーザは
図6(A)から
図6(C)の第1の採寸を行う。ユーザは、長手方向における切り欠き部11の範囲内で、第1の部材10を尾錠シャフト33で折り返すことで折り返し位置を調整する。
図6(A)から
図6(B)に示すように、ユーザは、尾錠30と第1の取り付け部12の間の第1の部材10の長さが適切になるまで第1の部材10の端部を図の左下方に引く。折り返しの位置が決定すると、ユーザは
図6(C)に示すように、折り返しの位置がずれないように、折り返した第1の部材10を保持部材40で挟み込む。保持部材40として事務用のクリップ、テープ等を使用してもよい。
【0024】
上記の採寸手順によりユーザは、使用する予定の腕時計本体及び留め具を使って採寸可能なので、腕時計本体や留め具の形状、大きさに合った使用感を確認しながら採寸が可能になる。また、留め具から腕時計までの、ショート側とロング側の長さのバランスを変更した場合の使用感を確認しながら採寸を行うことが可能になる。
【0025】
次に第1の部材10、第2の部材20の厚さに関する説明を行う。上記で説明したように、第1の採寸で、長手方向で切り欠き部11に対応する領域にある第1の部材10を折り返すことで、尾錠30と第1の取り付け部12との間の第1の部材10の長さの調整を行う。第1の部材10の厚さが厚過ぎる場合には、長手方向で切り欠き部11に対応する領域における第1の部材10の剛性が高いため、折り返し部の曲率半径が大きくなり、折り返し部分が撓んでしまう。撓んだ状態では折り返し位置が不明確になり、採寸の精度を悪化させるおそれがある。また、第1の部材10の厚さが薄過ぎる場合、採寸時に第1の部材10の破断や、延伸が発生する可能性がある。そこで、上記の2つの観点から、長手方向で切り欠き部11に対応する領域における第1の部材10の厚さの平均値は、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0026】
また、第1の部材10の、特に採寸時に腕に近接又は接触する領域(以下採寸時に腕に近接する領域という)の厚さや剛性を、ユーザが使用するベルトの厚さや剛性にできるだけ近づけ、採寸時の装着感を実際の装着感に近づけることが望ましい。ユーザが使用するベルトの厚さや剛性の範囲を考慮した場合、採寸時に腕に近接する領域における第1の部材10の厚さは平均値で1.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。なお、採寸時に腕に近接する領域は、長手方向で第1の取り付け部12と切り欠き部11との間の領域である。ただし、第1の取り付け部12の端部から5mm以内は、バネシャフト等が入る隙間が形成され下記の測定器で測定ができない。そこで測定範囲から「第1の取り付け部12の端部から5mm以内」を除くことにする。
【0027】
第1の部材10及び第2の部材20の厚さの測定には、シックネスゲージ(株式会社ミツトヨ製、547-301A)が用いられる。測定条件は、対象領域について1か所につき3回測定した平均値を算出し、短手方向の中央部を測定中心として長手方向に沿って10mm間隔で測定を繰り返し、平均値を算出するものとする。
【0028】
次に、実施例1の第1の部材10、および第2の部材20の構成の詳細について説明する。
図7(A)、(B)は、それぞれ第1の部材10と第2の部材20の断面模式図である。
【0029】
第1の部材10は、以下のように作成される。まず、厚さ0.6mmの革ベルト用の芯材を所定の幅で切り出す。
【0030】
次に切り出した芯材に、所定の大きさの切り欠き部11を形成する。次に第1の取り付け部12に相当する位置で
図7(A)の下方に示す隙間を設けて折り返し、接着剤で接着することで第1の取り付け部12を形成する。次に第1の取り付け部12で折り返した芯材を、切り欠き部11における第1の取り付け部12側の端部付近の位置で切断する。次に折り返した芯材に接着剤を塗布して芯材を重ねて貼り合わせる。また、切断された芯材の端部は、
図7(A)に示すように段差が形成されないように斜めに削って傾斜部を形成してもよい。なお、上記に示した手順は一例であり、上記の構成を持つ第1の部材10の作成手順を限定するものではない。
【0031】
第1の部材10は、採寸時に腕に近接する領域である第1の取り付け部12と切り欠き部11との間の領域では2層構成で、厚さは1.2mmである。また、採寸時に折り返される領域である切り欠き部11では単層構成で、厚さは0.6mmである。
【0032】
第1の部材10を、採寸時に腕に近接する領域で2層構成にすることで、ユーザの使用予定のベルトの剛性に合わせ易くなり、ユーザは実際のベルトに近い装着感を持ちながら採寸が可能になる。また、切り欠き部11の領域の第1の部材10を単層構成とすることで、折り返しが容易になり、折り返し部の曲率半径が大きくなることに起因する採寸の精度低下を抑制できる。
【0033】
図7(B)は第2の部材20の断面模式図である。第2の部材20でも、採寸時に腕に近接する領域がユーザの使用予定のベルトの剛性に近くなるように2層構成にして厚さ1.2mmとしている。ここで第2の部材20についての「採寸時に腕に近接する領域」は、第2の取り付け部22と穴部21との間の領域をいう。第2の部材20の作成は、第1の部材10の説明と同様に、芯材を切り出し、長手方向に沿って所定の大きさ、間隔、数の穴を開け、穴部21を形成する。次に、第2の取り付け部22に相当する位置で
図7(B)の下方に示すような隙間を設けた状態で折り返し、接着剤で接着することで第2の取り付け部22を形成する。次に、折り返した芯材が穴部21のうちの最も第2の取り付け部22側の穴の位置付近になる長さで芯材を切断する。次に、接着剤を塗布して芯材と芯材を重ね、貼り合わせる。切断された芯材の先端部分は、
図7(B)に示すように斜めに削り、傾斜部を形成してもよい。なお、上記に示した手順は一例であり、上記の構成を作成する手順を限定するものではない。
【0034】
以上説明したように、第2の部材20も、採寸時に腕に近接する領域で2層構成にすることで、ユーザの使用予定のベルトの剛性や厚さに合わせ易くなり、ユーザは実際のベルトに近い装着感を持ちながら採寸が可能になる。また、実施例1では穴部21における第2の部材20の厚さは芯材1枚分の0.6mmである。穴部21における第2の部材20の剛性が小さいことから、尾錠ピン32を穴部21の穴の一つに係合させるユーザの操作が容易になる。
(実施例2)
【0035】
実施例2では、第2の部材20の構成が実施例1の第2の部材20の構成と一部異なる。採寸治具のその他の構成や大きさ、尾錠タイプの留め具を使用する点、採寸手順等については実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
図8(A)、(B)は、実施例2の構成の断面模式図である。
図8(B)に示されるように、第2の部材20の穴部21についても芯材を2枚重ねる2層構成にしている点が実施例1とは異なる。実施例1の構成では、尾錠の形状等の関係で、尾錠ピン32を穴部21の穴へ挿入する操作を容易にするため、穴部21における第2の部材20を単層にすることで厚さを薄くしていた。しかし、穴部21における第2の部材20の厚さを薄くしなくても尾錠ピン32を穴部21の穴へ挿入する操作が容易な場合には、実施例2の構成のようにすることも可能である。
(実施例3)
【0037】
実施例3では、第1の部材10、及び第2の部材20の厚さ方向の構成が実施例1や実施例2の構成と異なる。実施例3の構成を、
図9(A)、(B)に示す断面模式図を用いて説明する。なお、実施例3では、第1の部材10、及び第2の部材20の大きさ、採寸手順等については実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0038】
実施例3では、あらかじめ2種類の芯材を貼り合わせた2層構成の複合部材を用意し、複合部材を使って第1の部材10、第2の部材20を作成する。
図9(A)は実施例3の第1の部材10の断面模式図である。まず、厚さ0.2mmの芯材101と厚さ0.6mmの芯材102を接着剤で貼り合わせ、厚さ0.8mmの2層構成の複合部材を形成する。次に、複合部材を所定の幅で長尺に切り出し、実施例1と同様に、切り欠き部11を形成する。次に所定の位置で折り返し、第1の取り付け部12を形成する。折り返した部材を切り欠き部11の範囲に入る前の位置で切断し、2枚の部材を接着剤で接着し、第1の部材10とする。上記の手順で作成された第1の部材10の厚さは、採寸時に腕に近接する領域で1.6mm、切り欠き部11の領域で0.8mmである。なお、上記に示した手順は一例であり、上記の構成を作成する手順を限定するものではない。
【0039】
図9(B)は、実施例3の第2部材20の断面模式図である。第2の部材20も、厚さ0.2mmの芯材201と厚さ0.6mmの芯材202を接着剤で貼り合わせ、厚さ0.8mmの2層構成の複合部材を形成する。次に、所定の幅で長尺に切り出した複合部材について、穴部21を形成する。次に、穴部21を形成した複合部材を所定の位置で折り返し、接着剤で接着することで第2の取り付け部22を形成する。次に、折り返した複合部材を穴部21の範囲に入らない位置で切断し、2枚の複合部材を接着剤で接着することで第2の部材20とする。なお、上記に示した手順は一例であり、上記の構成を作成する手順を限定するものではない。上記の手順で作成された第2の部材20の厚さは、採寸時に腕に近接する領域で1.6mm、穴部21の領域で0.8mmである。
【0040】
実施例3の構成により、異なる種類や厚さの芯材を組み合わせることで、ユーザが使用予定のベルトの厚さや剛性により近い厚さや剛性の採寸治具を提供可能になる。
【0041】
実施例1から実施例3の第1部材、第2部材の層構成については以下のようにまとめられる。切り欠き部11に対応する領域における第1の部材10の層構成を第1の層構成とする。また、採寸時に腕に近接する領域である第1の取り付け部12と切り欠き部11との間の領域における第1の部材10の層構成を第2の層構成とする。実施例1から実施例3の第1の部材10の第1の層構成は、単層または複数の層が積層された構成である。実施例1から実施例3の第2の層構成は、複数の層が積層された構成である。また、実施例1から実施例3において、第2の層構成の層の数は、第1の層構成の層の数より多い。
[実施形態2]
【0042】
実施形態1では、尾錠タイプの留め具を使用した例を説明したが、実施形態2では、Dバックルタイプの留め具を使用した例を説明する。
【0043】
図10は、実施形態2で使われる留め具であるDバックル60の一例を示す概略斜視図である。Dバックル60は尾錠と異なり、係合部であって凸状の部材であるDバックルピン61がロング側のベルトの穴に差し込まれた状態で着脱される。そしてDバックル60を、展開軸65を中心に折り畳み、又は展開することで、腕時計の腕に対する着脱が可能になる。
【0044】
また、Dバックルピン61の図面上方の位置に、回動軸66の周りに回動可能な抜け止め部材64が配置されている。抜け止め部材64を回動させて開き、ベルトの穴をDバックルピン61に差し込んで抜け止め部材64を閉じると、ベルトの穴がDバックルピン61から抜けることがなく、ベルトとDバックル60の位置が固定される。
図10の左側には懸架部である、ショート側のベルトが掛けられるDバックルシャフト62が配置されている。実施形態2では、Dバックルシャフト62の長手方向の中央付近に、Dバックルシャフト62を支持するシャフト支持部63が設けられている。
【0045】
図11は、腕時計本体50に取り付けられた第1の部材10と第2の部材20のそれぞれに留め具であるDバックル60が接続され、腕に通して採寸可能な状態を示す断面模式図である。第1の部材10と第2の部材20は、腕時計本体50に取り付けられている。第1の部材10は、Dバックルシャフト62の位置で折り返されている。また、Dバックルピン61は、第2の部材20の穴部21を構成する穴の1つに挿入されている。
【0046】
図12(A)から
図12(D)は、実施形態2の採寸治具の採寸可能な状態への移行手順を説明する説明図で、図面の下方が重力方向である。
【0047】
まず
図12(A)に示される第1の部材10とDバックル60の配置について説明する。ユーザは、一端が腕時計本体50に取り付けられた第1の部材10を、他端側を上方に向けて配置する。次にユーザは、第1の部材10の奥側に、Dバックルシャフト62を手前側に向け、第1の部材10の切り欠き部11とシャフト支持部63とが重なる位置で、Dバックルピン61が図の上方になるようにDバックル60を配置する。次にユーザは、Dバックルシャフト62の長手方向が重力方向に向くように、Dバックルシャフト62の長手方向の中心を通り前奥方向に延びる軸を中心にDバックル60を左に90度回転させる(
図12(A))。次にユーザは、Dバックル60を手前側に移動させ、Dバックルシャフト62及びシャフト支持部63を奥側から手前側に向けて切り欠き部11に差し込む(
図12(A))。
【0048】
第1の部材10の切り欠き部11はシャフト支持部63が通過可能な短手方向の長さを有しているので、Dバックルシャフト62及びシャフト支持部63が切り欠き部11より手前側に差し込まれた状態でDバックル60を回転させることができる(
図12(B))。
【0049】
次にユーザは、
図12(A)の状態から
図12(B)の状態を経てDバックルシャフト62の長手方向が図の左右方向になる
図12(C)の状態までDバックル60を右に90度回転させる。このときDバックル60は、Dバックルピン61が図の上方を向く状態に戻る。
【0050】
図12(C)の状態からユーザは上方に向けて配置されている第1の部材10の他端側を持ちながら、第1の部材10を手前側下方に引き下げる。
図12(D)は、
図12(C)の右側からDバックル60及び第1の部材10を見た図である。
図12(D)では、図の左下で第1の部材10の他端側が下方に垂れ下がり、第1の部材10がDバックルシャフト62に懸架されている状態が示されている。
図12(A)から
図12(D)までの手順により、第1の部材10はDバックル60と接続される。
【0051】
図13(A)から
図13(C)は、
図12から続く、採寸可能な状態への移行手順を説明する断面模式図である。
【0052】
ユーザは、
図13(A)に示すように、Dバックル60の抜け止め部材64を開く。次にユーザは、
図13(B)に示すように、第2の部材20の穴部21を構成する穴の1つにDバックルピン61を挿入する。次にユーザは
図13(C)に示すように、抜け止め部材64を閉じて元の位置に戻す。
図13(A)から
図13(C)までに示す手順により、第2の部材20と留め具であるDバックル60は接続され、採寸可能な状態になる。
【0053】
次に採寸の説明を行う。ユーザはDバックル60と第1の取り付け部12の間の長さを決める第1の採寸を行う。また、ユーザはDバックル60と第2の取り付け部22との間の長さを決める第2の採寸を行う。必要であれば第1の採寸と第2の採寸を繰り返し行うことで最適な採寸が可能になる。第1の採寸と第2の採寸の順番は任意であるが、以下の説明では第2の採寸を先に行う。
【0054】
第2の部材20は、Dバックルピン61と係合されて第2の取り付け部22とDバックル60の間の第2の部材20の長さの調整を可能にする複数の穴で構成される穴部21を有している。そこで、ユーザは
図13(A)から
図13(C)に示す第2の採寸で、穴部21の複数の穴の中からDバックル60の位置が最適になる穴を選択する。なお、ユーザの選択した穴の位置の特定を容易にするため、複数の穴の横に各穴の番号又は記号等を記してもよい。
【0055】
続いて第1の採寸では、
図14(A)から
図14(C)の手順で、Dバックル60と第1の取り付け部12の間の第1の部材10の長さを決定する。第1の部材10は、Dバックル60と第1の取り付け部12の間の第1の部材10の長さの調整を可能にする切り欠き部11を有している。そこでユーザは
図14(A)から
図14(C)に示す第1の採寸で、Dバックルシャフト62部で折り返す第1の部材10の位置を次に説明する手順で決定する。
【0056】
まずユーザは、
図14(A)に示すように第1の部材10の端部を把持する。続けてユーザは、
図14(B)に示すように、第1の部材10及び第2の部材20の撓みが適切になる位置まで第1の部材10を図の左下方へ引き下げる。折り返しの位置が決定すると、ユーザは
図14(C)に示すように、折り返しの位置がずれないように、折り返した第1の部材10を保持部材40で挟み込む。保持部材40として事務用のクリップ、テープ等を使用してもよい。
【0057】
実施形態2の構成によれば、ユーザが使用予定の時計及びDバックル等の留め具を使って採寸可能なので、使用予定に近い構成での使用感を確認しながらベルトの長さの採寸が可能になる。また、Dバックル等の留め具と取り付け部までのショート側とロング側のベルト長さのバランスについても、使用予定に近い構成での使用感を確認しながら採寸が可能になる。また、複数の種類の留め具についてベルトの長さの採寸が可能になる。
【0058】
なお、実施形態2の採寸治具に、実施形態1で説明した
図7から
図9に示す複数の層構成を有する第1の部材10、及び第2の部材20を適用可能である。
【0059】
複数の層構成を有する第1の部材10、及び第2の部材20を適用することで、Dバックルの留め具を使った場合でも、ユーザが使用予定のベルトの厚さや剛性に、より近づけた厚さや剛性を持つ採寸治具を提供可能になり、ユーザの好みに合った採寸が可能になる。
[実施形態3]
【0060】
実施形態1、及び実施形態2の採寸治具は、2つの部材で構成されていた。実施形態3の採寸治具は1つの部材で構成される。
【0061】
図15は、実施形態3の採寸治具の一例を説明する図である。
図15には採寸治具である長尺の第3の部材70が、腕時計本体50と腕時計本体50の第1の連結部51との間、及び腕時計本体50と腕時計本体50の第2の連結部52との間に通されている状態が示されている。第3の部材70は、腕時計本体50に対して移動可能である。
【0062】
図16は、実施形態3の採寸治具の一例を説明する断面模式図である。
図16尾錠タイプの留め具を用いる例で、長尺の第3の部材70は、長尺の第1の部分73と長尺の第2の部分74を有している。第1の部分73は係合部が通過可能で、留め具である尾錠30と第1の連結部51との間の第1の部分73の長さの調整を可能にする切り欠き部71を有している。また、第2の部分74は、係合部である尾錠ピン32と係合される長手方向に沿って設けられた1つ以上の穴で構成される穴部72を有している。実施形態3においても、留め具は尾錠タイプだけでなく、Dバックルタイプの使用も可能である。Dバックルタイプの留め具では、第1の部分73は、懸架部であるDバックルシャフト62を支持する支持部であるシャフト支持部63が通過可能な切り欠き部71を有している。また、切り欠き部71は、留め具であるDバックル60と第1の連結部51との間の第1の部分73の長さの調整を可能にする。
【0063】
第3の部材70の採寸可能な状態への移行手順は、実施形態1における採寸可能な状態への移行手順の説明と同様であるため説明を省略する。上記のように、第3の部材70は、腕時計本体50に対し移動可能である。そのため、留め具と第2の連結部との間の長さの採寸では、ユーザが第3の部材70を腕時計本体50に対し適切な位置に移動させること行われる。
【0064】
第3の部材70が腕時計本体50に対し移動可能であるため、穴部72の穴の数は必ずしも複数である必要はない。1つ以上の穴の数があれば、留め具と第2の連結部との間の第2の部分74の採寸が可能になる。調整後の第3の部材70の腕時計本体50に対する位置を残すため、連結部51や連結部52に対応する位置等を第3の部材70にマークしてもよい。留め具と第1の連結部との間の第1の部分74の調整は、部材70の腕時計本体50に対する移動、及び切り欠き部71での折り返し位置の決定により行われる。
【0065】
第3の部材70は、非伸縮性かつ可撓性の材料で構成される。例えば革ベルトの芯材に使われる材料でもよい。また、第3の部材70(第1の部分73、及び第2の部分74)の厚さは、腕時計本体50と第1の連結部等の連結部との隙間の関係から0.1mm以上2.0mm以下が好ましい。
【0066】
また、切り欠き部71の長手方向の長さは30mm以上140mm以下であることが好ましい。
【0067】
実施形態1、実施形態2の構成では、第2の採寸時にユーザは穴の位置を決めるので、穴の間隔で採寸精度が決まる。
【0068】
一方実施形態3では、第3の部材70を腕時計本体50に対して移動させることが可能であるため、実施形態1、及び実施形態2の構成より高い精度で採寸が可能になる。
【0069】
また、実施形態1、実施形態2の効果と同様に、ユーザが使用予定の腕時計及び留め具を使って採寸可能なので、使用予定に近い構成での使用感を確認しながらベルトの長さの採寸が可能になる。また、留め具と腕時計までのショート側とロング側のベルト長さのバランスについても、使用予定に近い構成での使用感を確認しながら採寸が可能になる。また、複数の種類の留め具に対応してベルトの長さの採寸が可能になる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1:採寸治具、10:第1の部材、11:切り欠き部、12:第1の取り付け部、20:第2の部材、21:穴部、22:第2の取り付け部、30:尾錠、31:尾錠枠、32:尾錠ピン、33:尾錠シャフト、40:保持部材、50:腕時計本体、51:連結部、52:連結部、60:Dバックル、61:Dバックルピン、62:Dバックルシャフト、63:シャフト支持部、64:抜け止め部材、70:第3の部材、71:切り欠き部、72:穴部、73:第1の部分、74:第2の部分
【要約】
【課題】切り欠き部を有する第1の部材と穴部を有する第2の部材で構成される腕時計用ベルト長さの採寸治具を提供する。
【解決手段】腕時計用ベルト長さの採寸治具は、第1の取り付け部で腕時計本体に取り付けられる長尺の第1の部材と、第2の取り付け部で前記腕時計本体に取り付けられる長尺の第2の部材と、で構成され、第1の部材が掛けられる懸架部と、第2の部材と係合する係合部と、を有する留め具に、第1の部材と前記第2の部材とがそれぞれ接続され、第1の部材は、係合部が通過可能で、留め具と前記第1の取り付け部との間の第1の部材の長さの調整を可能にする切り欠き部を有し、第2の部材は、係合部と係合されて留め具と第2の取り付け部との間の第2の部材の長さの調整を可能にする、長手方向に沿って設けられた複数の穴で構成される穴部を有する。
【選択図】
図3