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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】分層方法、および、分層装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240530BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
A61B5/055 382
A61B5/055 380
A61B10/00 H
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2024500980
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2022046352
(87)【国際公開番号】W WO2023157447
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】202210149360.2
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520268492
【氏名又は名称】医療研究開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】福島 雅典
(72)【発明者】
【氏名】周 ビン
(72)【発明者】
【氏名】洪 震
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 倩▲華▼
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-097988(JP,A)
【文献】特表2020-509036(JP,A)
【文献】国際公開第2020/257159(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0190369(US,A1)
【文献】特開2021-029692(JP,A)
【文献】KIM, Gwang-Won et al.,A pilot study of brain morphometry following donepezil treatment in mild cognitive impairment: volume changes of cortical/subcortical regions and hippocampal subfields,SCIENTIFIC REPORTS,2020年,10:10912
【文献】ZANDIFAR Azar et al.,MRI and cognitive scores complement each other to accurately predict Alzheimer's dementia 2 to 7 years before clinical onset,NeuroImage: Clinical,2020年,Vol.25 (2020) 102121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得部と分類部と出力部とを備える分層装置が行う分層方法であって、
前記取得部が、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、
前記分類部が、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、
前記出力部が、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有し、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの右海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、20.0±1SDであり、
前記第2の閾値は、3.651±1SD[cm]であり、
前記第1の閾値の1SDは6.3であり、
前記第2の閾値の1SDは、0.653[cm]である
分層方法。
【請求項2】
取得部と分類部と出力部とを備える分層装置が行う分層方法であって、
前記取得部が、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、
前記分類部が、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、
前記出力部が、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有し、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの右海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアであり、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第3の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第4の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第3の閾値は、0.111±1SDであり、
前記第4の閾値は、3.651±1SD[cm]であり、
前記第3の閾値の1SDは、2.630であり、
前記第4の閾値の1SDは、0.653[cm]である
分層方法。
【請求項3】
前記取得ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、さらに、当該対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かを示す情報を取得し、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、さらに、前記情報にも基づいて、当該対象者を前記複数のグループのいずれかに分類する
請求項1または請求項2に記載の分層方法。
【請求項4】
取得部と分類部と出力部とを備える分層装置が行う分層方法であって、
前記取得部が、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、
前記分類部が、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、
前記出力部が、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有し、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの右海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知、および、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアを含み、
前記取得ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、さらに、当該対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かを示す情報を取得し、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、(1)当該対象者の、当該対象者に対して前記アルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られる前記スコアである第1のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の、当該対象者に対して行った発症前アルツハイマー病認知機能検査総合結果として得られるスコアである第2のスコアが第7の閾値よりも小さい場合と、(2)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも小さい場合と、(3)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも小さい場合と、(4)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも小さい場合と、に当該対象者を前記第1のグループに分類し、(5)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも大きい場合と、(6)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも大きい場合と、(7)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有していない旨を示す場合と、に当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第5の閾値は、20.0±1SDであり、
前記第6の閾値は、3.651±1SD[cm]であり、
前記第7の閾値は、0.111±1SDであり、
前記第5の閾値の1SDは6.3であり、
前記第6の閾値の1SDは0.653[cm]であり、
前記第7の閾値の1SDは、2.630である
分層方法。
【請求項5】
取得部と分類部と出力部とを備える分層装置が行う分層方法であって、
前記取得部が、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、
前記分類部が、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、
前記出力部が、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有し、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、14.0±1SDであり、
前記第2の閾値は、3.459±1SD[cm]であり、
前記第1の閾値の1SDは、6.9であり、
前記第2の閾値の1SDは、0.5435[cm]である
分層方法。
【請求項6】
取得部と分類部と出力部とを備える分層装置が行う分層方法であって、
前記取得部が、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、
前記分類部が、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、
前記出力部が、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有し、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、12.0であり、
前記第2の閾値は、3.737[cm]である
分層方法。
【請求項7】
取得部と分類部と出力部とを備える分層装置が行う分層方法であって、
前記取得部が、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、
前記分類部が、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、
前記出力部が、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有し、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、21.0であり、
前記第2の閾値は、3.080[cm]である
分層方法。
【請求項8】
取得部と分類部と出力部とを備える分層装置が行う分層方法であって、
前記取得部が、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、
前記分類部が、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、
前記出力部が、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有し、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、24.0であり、
前記第2の閾値は、2.751[cm]である
分層方法。
【請求項9】
取得部と分類部と出力部とを備える分層装置が行う分層方法であって、
前記取得部が、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、
前記分類部が、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、
前記出力部が、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有し、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者それぞれについて、当該対象者の左海馬の容積と当該対象者の前記スコアとの比率を示す容積スコア値を算出し、算出した前記容積スコア値に基づいて、当該対象者を、前記複数のグループのいずれかに分類する
分層方法。
【請求項10】
前記容積スコア値は、前記スコアに対する左海馬の容積[mm]の比率であって、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者それぞれについて、前記容積スコア値が101未満である場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類する
請求項9に記載の分層方法。
【請求項11】
取得部と分類部と出力部とを備える分層装置が行う分層方法であって、
前記取得部が、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、
前記分類部が、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、
前記出力部が、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有し、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者それぞれについて、当該対象者の左海馬の容積と当該対象者の前記スコアとの比率を示す容積スコア値を算出し、算出した前記容積スコア値に基づいて、当該対象者を、前記複数のグループのいずれかに分類する
分層方法。
【請求項12】
前記容積スコア値は、前記スコアに対する左海馬の容積[mm]の比率であって、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者それぞれについて、前記容積スコア値が101未満である場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類する
請求項11に記載の分層方法。
【請求項13】
軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、
前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、
前記分類部による分類結果を出力する出力部と、を備え、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの右海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、20.0±1SDであり、
前記第2の閾値は、3.651±1SD[cm]であり、
前記第1の閾値の1SDは6.3であり、
前記第2の閾値の1SDは、0.653[cm]である
分層装置。
【請求項14】
軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、
前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、
前記分類部による分類結果を出力する出力部と、を備え、
前記臨床心理検査は、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアであり、
前記分類部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第3の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第4の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第3の閾値は、0.111±1SDであり、
前記第4の閾値は、3.651±1SD[cm]であり、
前記第3の閾値の1SDは、2.630であり、
前記第4の閾値の1SDは、0.653[cm]である
分層装置。
【請求項15】
前記取得部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、さらに、当該対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かを示す情報を取得し、
前記分類部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、さらに、前記情報にも基づいて、当該対象者を前記複数のグループのいずれかに分類する
請求項13または請求項14に記載の分層装置。
【請求項16】
軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、
前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、
前記分類部による分類結果を出力する出力部と、を備え、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの右海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知、および、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアを含み、
前記取得部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、さらに、当該対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かを示す情報を取得し、
前記分類部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、(1)当該対象者の、当該対象者に対して前記アルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られる前記スコアである第1のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の、当該対象者に対して行った発症前アルツハイマー病認知機能検査総合結果として得られるスコアである第2のスコアが第7の閾値よりも小さい場合と、(2)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも小さい場合と、(3)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも小さい場合と、(4)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも小さい場合と、に当該対象者を前記第1のグループに分類し、(5)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも大きい場合と、(6)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも大きい場合と、(7)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有していない旨を示す場合と、に当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第5の閾値は、20.0±1SDであり、
前記第6の閾値は、3.651±1SD[cm]であり、
前記第7の閾値は、0.111±1SDであり、
前記第5の閾値の1SDは6.3であり、
前記第6の閾値の1SDは0.653[cm]であり、
前記第7の閾値の1SDは、2.630である
分層装置。
【請求項17】
軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、
前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、
前記分類部による分類結果を出力する出力部と、を備え、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、14.0±1SDであり、
前記第2の閾値は、3.459±1SD[cm]であり、
前記第1の閾値の1SDは、6.9であり、
前記第2の閾値の1SDは、0.5435[cm]である
分層装置。
【請求項18】
軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、
前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、
前記分類部による分類結果を出力する出力部と、を備え、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、12.0であり、
前記第2の閾値は、3.737[cm]である
分層装置。
【請求項19】
軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、
前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、
前記分類部による分類結果を出力する出力部と、を備え、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、21.0であり、
前記第2の閾値は、3.080[cm]である
分層装置。
【請求項20】
軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、
前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、
前記分類部による分類結果を出力する出力部と、を備え、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類部は、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類し、
前記第1の閾値は、24.0であり、
前記第2の閾値は、2.751[cm]である
分層装置。
【請求項21】
軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、
前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、
前記分類部による分類結果を出力する出力部と、を備え、
前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類部は、前記複数の対象者それぞれについて、当該対象者の左海馬の容積と当該対象者の前記スコアとの比率を示す容積スコア値を算出し、算出した前記容積スコア値に基づいて、当該対象者を、前記複数のグループのいずれかに分類する
分層装置。
【請求項22】
前記容積スコア値は、前記スコアに対する左海馬の容積[mm]の比率であって、
前記分類部は、前記複数の対象者それぞれについて、前記容積スコア値が101未満である場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類する
請求項21に記載の分層装置。
【請求項23】
軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、
前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、
前記分類部による分類結果を出力する出力部と、を有し、
前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、
前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、
前記分類部は、前記複数の対象者それぞれについて、当該対象者の左海馬の容積と当該対象者の前記スコアとの比率を示す容積スコア値を算出し、算出した前記容積スコア値に基づいて、当該対象者を、前記複数のグループのいずれかに分類する
分層装置。
【請求項24】
前記容積スコア値は、前記スコアに対する左海馬の容積[mm]の比率であって、
前記分類部は、前記複数の対象者それぞれについて、前記容積スコア値が101未満である場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類する
請求項23に記載の分層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease)へ進行するリスクに応じて、正確にリスク度合いの分層を行う進行リスクの分層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽度認知障害の個体群には、将来アルツハイマー型認知症へ進行する人もいれば、進行しない人もいる。
【0003】
軽度認知障害の個体群のうちの、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い人を研究対象として予防治験等を行うことができれば、その予防治験等を効果的に行うことができる。
【0004】
従来、軽度認知障害を患う複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類する技術として、例えば、非特許文献1に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Bin Zhou et. al, Protective Factors Modulate the Risk of Beta Amyloid in Alzheimer’s Disease, Behavioral Neurology, Volume 2020, Article ID 7029642
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載された従来の技術では、βアミロイド脳PET検査の結果を用いて、上記分類を行う。
【0007】
このβアミロイド脳PET検査は、比較的高価な検査である。このため、非特許文献1に記載された従来の技術による上記分類を、広く一般に普及させることは難しい。また、βアミロイド脳PET検査では、異常者のうち、平均26ヵ月の追跡調査において、アルツハイマー型認知症へ進行するのが約41%に過ぎない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、βアミロイド脳PET検査の結果を用いた従来の技術とは異なる方法で、軽度認知障害を患う個体群のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するか否かのリスクの度合いに応じて、該当するグループに分類する分層方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る分層方法は、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の臨床心理検査のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者のアルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとなどを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、前記分層ステップによる分層結果を出力する出力ステップと、を有する。
【0010】
本発明の一態様に係る分層装置は、軽度認知障害を患う複数の対象者のそれぞれについて、個体の臨床心理検査の結果のと、海馬の容積とを取得する取得部分と、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いハイリスクグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いローリスクグループとを含んで分類するデータ分類部分と、前記ステップによって得られる分類結果を出力するデータ出力部分と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る分層方法等によれば、従来の技術とは異なる方法で、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、発明者らが行った、様々な因子を対象とするリスク評価の内容の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施の形態1に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、発明者らが行った追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
図4図4は、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
図5図5は、実施の形態1に係る第1の分類処理のフローチャートである。
図6図6は、実施の形態2に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図7A図7Aは、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
図7B図7Bは、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
図8A図8Aは、実施の形態2に係る第2の分類処理のフローチャートである。
図8B図8Bは、実施の形態2に係る第2の分類処理のフローチャートである。
図9図9は、実施の形態3に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図10A図10Aは、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
図10B図10Bは、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
図11図11は、実施の形態3に係る第3の分類処理のフローチャートである。
図12図12は、実施の形態4に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図13A図13Aは、実施の形態4に係る第4の分類処理のフローチャートである。
図13B図13Bは、実施の形態4に係る第4の分類処理のフローチャートである。
図14図14は、実施の形態5に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図15A図15Aは、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
図15B図15Bは、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
図16図16は、実施の形態5に係る第5の分類処理のフローチャートである。
図17図17は、発明者らが、βアミロイド脳PET検査の陽性者に対してさらに行った、様々な因子を対象とするリスク評価の内容の一例を示す模式図である。
図18図18は、実施の形態6に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図19図19は、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示す極限法による生存推定の一例である。
図20図20は、実施の形態6に係る第6の分類処理のフローチャートである。
図21図21は、変形例1に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図22図22は、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示す極限法による生存推定の一例である。
図23図23は、変形例1に係る第7の分類処理のフローチャートである。
図24図24は、変形例2に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図25図25は、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示す極限法による生存推定の一例である。
図26図26は、変形例2に係る第8の分類処理のフローチャートである。
図27図27は、変形例3に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図28図28は、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示す極限法による生存推定の一例である。
図29図29は、変形例3に係る第9の分類処理のフローチャートである。
図30図30は、実施の形態7に係る分層方法の構成の一例を示すブロック図である。
図31図31は、容量スコア値(Cog_Vol)と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の数との関係を示す対応表である。
図32図32は、容量スコア値(Cog_Vol)と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行するまでの期間との関係を示す相関図である。
図33図33は、容積スコア値(Cog_Vol)と、複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の数との関係を示す対応表である。
図34図34は、容量スコア値(Cog_Vol)と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行するまでの期間、または、アルツハイマー型認知症へと進行しないまま経過した期間との関係を示す相関図である。
図35図35は、容積スコア値(Cog_Vol)と、複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の比率の推移との関係を示す対応表である。
図36図36は、容積スコア値(Cog_Vol)と、複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の数との関係を示す対応表である。
図37図37は、容量スコア値(Cog_Vol)と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行するまでの期間、または、アルツハイマー型認知症へと進行しないまま経過した期間との関係を示す相関図である。
図38図38は、容積スコア値(Cog_Vol)と、複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の比率の推移との関係を示す対応表である。
図39図39は、容積スコア値(Cog_Vol_ab)と、複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の比率の推移との関係を示す対応表である。
図40図40は、実施の形態7に係る第10の分類処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の一態様を得るに至った経緯)
発明者らは、比較的精度よく、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類する分層方法を見つけ出すために、様々な因子を対象として、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行するリスクの評価を行った。
【0014】
図1は、発明者らが行った、様々な因子を対象とするリスク評価の内容の一例を示す模式図である。
【0015】
発明者らは、様々な因子に対するリスク評価を行う過程において、対象者に対して臨床心理検査を行った結果として得られるスコアと、その対象者の海馬の容積とを組み合わせた指標を用いることで、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行するリスクを、比較的精度よく評価することができるとの知見を得た。
【0016】
そして、発明者らは、この知見に基づいて、さらに検討を重ねた。その結果、下記の分層方法等が得られた。
【0017】
本発明の一態様に係る分層方法は、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得ステップと、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類ステップと、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力ステップと、を有する。
【0018】
上記分層方法によると、βアミロイド脳PET検査の結果を用いた従来の技術とは異なる方法で、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類することができる。
【0019】
また、前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの右海馬の容積であるとしてもよい。
【0020】
また、前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であるとしてもよい。
【0021】
また、前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類するとしてもよい。
【0022】
また、前記第1の閾値は、20.0であり、前記第2の閾値は、3.651[cm]であるとしてもよい。
【0023】
また、前記臨床心理検査は、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアであるとしてもよい。
【0024】
また、前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第3の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第4の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類するとしてもよい。
【0025】
また、前記第3の閾値は、0.111であり、前記第4の閾値は、3.651[cm]であるとしてもよい。
【0026】
また、前記取得ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、さらに、当該対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かを示す情報を取得し、前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、さらに、前記情報にも基づいて、当該対象者を前記複数のグループのいずれかに分類するとしてもよい。
【0027】
また、前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知、および、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアを含み、前記取得ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、さらに、当該対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かを示す情報を取得し、前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、(1)当該対象者の、当該対象者に対して前記アルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られる前記スコアである第1のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の、当該対象者に対して行った発症前アルツハイマー病認知機能検査総合結果として得られるスコアである第2のスコアが第7の閾値よりも小さい場合と、(2)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも小さい場合と、(3)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも小さい場合と、(4)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも小さい場合と、に当該対象者を前記第1のグループに分類し、(5)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも大きい場合と、(6)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨を示し、かつ、当該対象者の前記第2のスコアが前記第7の閾値よりも大きい場合と、(7)当該対象者の前記第1のスコアが前記第5の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の右海馬の容積が前記第6の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の前記情報がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有していない旨を示す場合と、に当該対象者を前記第2のグループに分類するとしてもよい。
【0028】
また、前記第5の閾値は、20.0であり、前記第6の閾値は、3.651[cm]であり前記第7の閾値は、0.111であるとしてもよい。
【0029】
また、前記複数の対象者は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であり、前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であるとしてもよい。
【0030】
また、前記分類ステップでは、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類し、当該対象者の前記スコアが前記第1の閾値よりも小さく、かつ、当該対象者の左海馬の容積が前記第2の閾値よりも大きい場合に、当該対象者を前記第2のグループに分類するとしてもよい。
【0031】
また、前記第1の閾値は、14.0であり、前記第2の閾値は、3.459[cm]であるとしてもよい。
【0032】
また、前記第1の閾値は、12.0であり、前記第2の閾値は、3.737[cm]であるとしてもよい。
【0033】
また、前記第1の閾値は、21.0であり、前記第2の閾値は、3.080[cm]であるとしてもよい。
【0034】
また、前記第1の閾値は、24.0であり、前記第2の閾値は、2.751[cm]であるとしてもよい。
【0035】
また、前記分類ステップでは、前記複数の対象者それぞれについて、当該対象者の左海馬の容積と当該対象者の前記スコアとの比率を示す容積スコア値を算出し、算出した前記容積スコア値に基づいて、当該対象者を、前記複数のグループのいずれかに分類するとしてもよい。
【0036】
また、前記容積スコア値は、前記スコアに対する左海馬の容積[mm]の比率であって、
前記分類ステップでは、前記複数の対象者それぞれについて、前記容積スコア値が101未満である場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類するとしてもよい。
【0037】
また、前記複数の対象者のそれぞれの海馬の容積は、前記複数の対象者のそれぞれの左海馬の容積であり、前記臨床心理検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知であり、前記分類ステップでは、前記複数の対象者それぞれについて、当該対象者の左海馬の容積と当該対象者の前記スコアとの比率を示す容積スコア値を算出し、算出した前記容積スコア値に基づいて、当該対象者を、前記複数のグループのいずれかに分類するとしてもよい。
【0038】
また、前記容積スコア値は、前記スコアに対する左海馬の容積[mm]の比率であって、前記分類ステップでは、前記複数の対象者それぞれについて、前記容積スコア値が101未満である場合に、当該対象者を前記第1のグループに分類するとしてもよい。
【0039】
本発明の一態様に係る分層装置は、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者に対して臨床心理検査を行った結果のスコアと、当該対象者の海馬の容積とを取得する取得部と、前記複数の対象者のそれぞれについて、当該対象者の前記スコアと、当該対象者の海馬の容積とに基づいて、当該対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する分類部と、前記分類ステップによる分類結果を出力する出力部と、を備える。
【0040】
上記分層装置によると、βアミロイド脳PET検査の結果を用いた従来の技術とは異なる方法で、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類することができる。
【0041】
以下、本発明の一態様に係る分層方法等の具体例について、図面を参照しながら説明する。
【0042】
ここで示す実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。従って、以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ならびに、ステップ(工程)およびステップの順序等は、一例であって本発明を限定する趣旨ではない。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0043】
本明細書において、分層方法は分類方法とも称し、分層装置は分類装置とも称する。
【0044】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1に係る分層方法を実行する実施の形態1における分層装置について説明する。この分層装置は、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類する装置である。複数のグループには、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いハイリスクグループである第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いローリスクグループである第2のグループとが含まれる。
【0045】
上記分層方法を実行する分層装置は、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見を反映した分類処理を実行する装置の一例である。
【0046】
<構成>
図2は、実施の形態1に係る分層方法を実行する分層装置10の構成の一例を示すブロック図である。
【0047】
分層装置10は、例えば、コンピュータ装置によって実現される。この場合、分層装置10は、例えば、コンピュータ装置に含まれるプロセッサが、コンピュータ装置に含まれるメモリに記憶されたプログラムを実行することで実現される。
【0048】
図2に示すように、分層装置10は、取得部20と、分類部30と、出力部40とを備える。
【0049】
取得部20は、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対して臨床心理検査を行った結果として得られるスコアと、対象者の右海馬の容積とを取得する。右海馬の容積は、例えば、対象者に対して、MRI検査を行い、MRI検査を行った結果取得される頭部のMRI画像に対して画像処理等を行うことで計測することができる。
【0050】
実施の形態1では、対象者に対して行う臨床心理試験が、アルツハイマー病評価尺度-認知(ADAS-cog(Alzheimer‘s Disease Assessment Scale-cognitive subscale))であるとして説明する。
【0051】
取得部20は、例えば、通信インターフェースを備え、通信インターフェースを介して外部装置から、対象者に対してアルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果得られるスコア(以下、「アルツハイマー病評価尺度-認知のスコア」とも称する)と、対象者の右海馬の容積とを取得してもよいし、持ち運び可能なメモリ(例えば、USBメモリ)からデータを読み出すメモリインターフェースを備え、メモリインターフェースを介して持ち運び可能なメモリから、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと右海馬の容積とを取得してもよいし、分層装置10を利用するユーザによる操作を受け付ける入出力インターフェースを備え、入出力インターフェースを介してユーザによるデータ入力操作を受け付けることで、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと右海馬の容積とを取得してもよい。
【0052】
分類部30は、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、右海馬の容積とに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。実施の形態1では、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループとに加えて、さらに、第3のグループと、第4のグループとからなる4つのグループであるとして説明する。
【0053】
分類部30は、上記分類を、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0054】
具体的には、分類部30は、複数の対象者のそれぞれについて、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第4のグループに分類する。ここで、分類部30は、第1の閾値を20.0とし、第2の閾値を3.651[cm]として、上記分類を行う。
【0055】
以下、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見ついて説明する。
【0056】
発明者らは、コホート研究において、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象として、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行についての追跡調査を行った。
【0057】
図3は、コホート研究において、発明者らが行った追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
【0058】
図3に示されるカプランマイヤー曲線において、横軸は、追跡調査を開始してから経過した時間[年]であり、縦軸は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行した対象者の累積遷移率[%]である。
【0059】
図3に示すように、コホート研究において、発明者らは、軽度認知障害を有する対象者325名を対象として、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行について、約5年間の追跡調査を行った。この約5年間に、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行した対象者は、104名であった。
【0060】
コホート研究において、発明者らは、複数の対象者のそれぞれを、追跡調査の開始時点において、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループC(第1のグループに対応)と、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループB(第2のグループに対応)と、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループD(第3のグループに対応)と、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループA(第4のグループに対応)とのいずれかに分類し、分類後のグループ毎の追跡結果を示すカプランマイヤー曲線を評価した。
【0061】
図4は、コホート研究において、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
【0062】
図4に示されるカプランマイヤー曲線において、横軸は、追跡調査を開始してから経過した時間[年]であり、縦軸は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行した対象者の累積遷移率[%]である。
【0063】
図4に示されるカプランマイヤー曲線から、第1のグループから第4のグループのうち、第1のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループになっていて、第2のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループになっていることがわかる。
【0064】
このように、発明者らは、コホート研究により、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第4のグループに分類することで、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを少なくとも含む複数のグループ(ここでは4つのグループ)のいずれかに分類することができる旨の知見を得た。
【0065】
また、発明者らは、コホート研究により、上記分類において、第1の閾値は20.0±1SDであることが好ましく、第2の閾値は3.651±1SD[cm]であることが好ましい旨の知見も得た。ここで、第1の閾値の1SDは、6.3であり、第2の閾値の1SDは、0.653[cm]である。
【0066】
再び図2に戻って、分層装置10の説明を続ける。
【0067】
出力部40は、分類部30による分類結果を出力する。
【0068】
出力部40は、例えば、出力ポートを備え、出力ポートを介して外部の表示装置に、分類結果を示す画像を表示させるための、分類結果を含む表示制御信号を出力するとしてもよいし、例えば、通信インターフェースを備え、通信インターフェースを介して外部装置に、分類結果を含む分類結果情報を送信するとしてもよい。
【0069】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10が行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0070】
図5は、分層装置10が行う第1の分類処理のフローチャートである。この第1の分類処理は、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、右海馬の容積とに基づいて、対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを少なくとも含む4つのグループのいずれかに分類する処理である。
【0071】
第1の分類処理は、例えば、分層装置10を利用するユーザが、分層装置10に対して、第1の分類処理を開始させる旨の操作を行うことで開始される。
【0072】
第1の分類処理が開始されると、取得部20は、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対してアルツハイマー病評価尺度-認知(ADAS-cog)を行った結果として得られるスコア(以下、「ADAS-cogのスコア」とも称する。)と、対象者の右海馬の容積とを取得する(ステップS5)。
【0073】
複数の対象者のADAS-cogのスコアと右海馬の容積とが取得されると、分類部30は、複数の対象者の中から1人の対象者を選択する(ステップS10)。そして、分類部30は、選択中の対象者のADAS-cogのスコアが20.0以上であるか否かを調べる(ステップS15)。
【0074】
ステップS15の処理において、ADAS-cogのスコアが20.0以上である場合に(ステップS15:Yes)、分類部30は、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS20)。
【0075】
ステップS20の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS20:No)、分類部30は、選択中の対象者を、第1のグループに分類する(ステップS25)。
【0076】
ステップS20の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS20:Yes)、分類部30は、選択中の対象者を、第3のグループに分類する(ステップS30)。
【0077】
ステップS15の処理において、ADAS-cogのスコアが20.0以上でない場合に(ステップS15:No)、分類部30は、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS35)。
【0078】
ステップS35の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS35:No)、分類部30は、選択中の対象者を、第4のグループに分類する(ステップS40)。
【0079】
ステップS35の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS35:Yes)、分類部30は、選択中の対象者を、第2のグループに分類する(ステップS45)。
【0080】
ステップS25の処理が終了した場合と、ステップS30の処理が終了した場合と、ステップS40の処理が終了した場合と、ステップS45の処理が終了した場合とに、分類部30は、複数の対象者の中に、未選択の対象者がいるか否かを調べる(ステップS50)。ここで、未選択の対象者とは、ステップS10の処理で選択されなかった対象者であって、かつ、ステップS15の処理からステップS50:Yesの処理を通って再びステップS15の処理に進むループ処理において、後述のステップS55の処理において未だ選択されたことのない対象者のことを言う。
【0081】
ステップS50の処理において、未選択の対象者がいる場合に(ステップS50:Yes)、分類部30は、未選択の対象者の中から1人の対象者を選択する(ステップS55)。
【0082】
ステップS55の処理が終了するとステップS15の処理へ進む。
【0083】
ステップS50の処理において、未選択の対象者がいない場合に(ステップS50:No)、出力部40は、分類部30が複数の対象者のそれぞれに対して行った分類結果を出力する(ステップS60)。
【0084】
ステップS60の処理が終了すると、分層装置10は、その第1の分類処理を終了する。
【0085】
<考察>
上記構成の分層装置10によると、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類することができる。
【0086】
このため、分層装置10を利用して、軽度認知障害を有する複数の対象者を予め分類しておくことで、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行する人を対象とする予防治験等を効果的に行うことができる。
【0087】
また、上記構成の分層装置10によると、従来の技術とは異なる方法で上記分類を行うことができる。すなわち、分層装置10によると、上記分類において、従来の技術では必要であった、比較的高価な検査であるβアミロイド脳PET検査の結果を利用しない。
【0088】
このため、分層装置10を利用することで、従来の技術を利用する場合に比べて、上記分類を安価で、より効率的に行うことができる。
【0089】
(実施の形態2)
以下、実施の形態1に係る分層方法を実行する実施の形態2における分層装置について説明する。実施の形態2は、実施の形態1に係る分層装置10の機能の一部を変更して構成されるものである。実施の形態1において説明した通り、分層装置10は、軽度認知障害を有する複数の対象者を、アルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られるスコアと、右海馬の容積とに基づいて分類する。これに対して、実施の形態2に係る分層装置は、軽度認知障害を有する複数の対象者を、アルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られるスコアと、右海馬の容積と、に加えて、さらに、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かにも基づいて分類する。ここでは、実施の形態2に係る分層装置について、分層装置10と同様の構成要素については、既に説明済であるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、分層装置10との相違点を中心に説明する。
【0090】
<構成>
図6は、実施の形態2に係る分層方法を実行する分層装置10Aの構成の一例を示すブロック図である。
【0091】
図6に示すように、分層装置10Aは、実施の形態1に係る分層装置10から、取得部20が取得部20Aに変更され、分類部30が分類部30Aに変更されて構成される。
【0092】
取得部20Aは、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対してアルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られるスコアと、対象者の右海馬の容積とに加えて、対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かを示す情報(以下、「ApoE表現型」とも称する)を取得する。
【0093】
分類部30Aは、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、右海馬の容積と、ApoE表現型とに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。実施の形態2では、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループとに加えて、さらに、第3のグループと、第4のグループと、第5のグループと、第6のグループと、第7のグループと、第8のグループとからなる8つのグループであるとして説明する。
【0094】
分類部30Aは、上記分類を、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0095】
より具体的には、分類部30Aは、複数の対象者のそれぞれについて、(1)ApoE表現型が、対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している旨(以下、「ApoEポジティブ」とも称する)を示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)ApoE表現型が、対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有していない旨(以下、「ApoEネガティブ」とも称する)を示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第5のグループに分類し、(6)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第6のグループに分類し、(7)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第7のグループに分類し、(8)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第8のグループに分類する。ここで、分類部30Aは、第1の閾値を20.0とし、第2の閾値を3.651[cm]として、上記分類を行う。
【0096】
以下、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見ついて説明する。
【0097】
コホート研究において、発明者らは、複数の対象者のそれぞれを、追跡調査の開始時点において、まず最初に、第1段階の分類として、(A)アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有していない対象者からなるグループαと、(B)アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している対象者からなるグループβとに分類し、次に、第2段階の分類として、グループαとグループβとのそれぞれについて、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループC(グループαにおいては第1のグループ、グループβにおいては第5のグループに対応)と、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループB(グループαにおいては第2のグループ、グループβにおいては第6のグループに対応)と、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループD(グループαにおいては第3のグループ、グループβにおいては第7のグループに対応)と、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループA(グループαにおいては第4のグループ、グループβにおいては第8のグループに対応)とのいずれかに分類し、分類後のグループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線を評価した。
【0098】
図7Aおよび図7Bは、コホート研究において、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
【0099】
図7Aは、グループαを対象として行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線であり、図7Bは、グループβを対象として行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
【0100】
図7Aおよび図7Bに示されるカプランマイヤー曲線において、横軸は、追跡調査を開始してから経過した時間[年]であり、縦軸は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行した対象者の累積遷移率[%]である。
【0101】
図7Aおよび図7Bに示されるカプランマイヤー曲線から、第1のグループから第8のグループのうち、第1のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループになっていて、第2のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループになっていることがわかる。
【0102】
このように、発明者らは、コホート研究により、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、(1)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)ApoE表現型が、対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有していない旨(以下、「ApoEネガティブ」とも称する)を示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第5のグループに分類し、(6)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第6のグループに分類し、(7)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第7のグループに分類し、(8)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第8のグループに分類することで、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループ(ここでは8つのグループ)のいずれかに分類することができる旨の知見を得た。
【0103】
また、図7Aおよび図7Bに示されるカプランマイヤー曲線から、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有していない対象者からなるグループαに対して上記第2段階の分類を行った分類結果の方が、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している対象者からなるグループβに対して上記第2段階の分類を行った分類結果よりも、より精度よく、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループとを含む複数のグループのいずれかに分類することができることがわかる。
【0104】
このように、発明者らは、コホート研究により、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、右海馬の容積とに加えて、さらに、ApoE表現型にも基づくことで、より精度よく、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類することができる旨の知見を得た。
【0105】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10Aが行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0106】
分層装置10Aは、分層装置10が行う第1の分類処理から、その一部の処理が変更された第2の分類処理を行う。
【0107】
図8Aおよび図8Bは、分層装置10Aが行う第2の分類処理のフローチャートである。
【0108】
図8Aおよび図8Bに示すように、第2の分類処理は、第1の分類処理に対して、ステップS100の処理~ステップS180の処理が追加された処理である。
【0109】
このため、ここでは、ステップS100の処理~ステップS180の処理を中心に説明する。
【0110】
第2の分類処理が開始されると、取得部20Aは、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、ADAS-cogのスコアと、対象者の右海馬の容積と、ApoE表現型とを取得する(ステップS100)。
【0111】
ステップS100の処理が終了すると、ステップS10の処理に進む。
【0112】
ステップS10の処理が終了した場合と、ステップS55の処理が終了した場合に、分類部30Aは、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示しているか否かを調べる(ステップS110)。
【0113】
ステップS110の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示していない場合に(ステップS110:No)、ステップS15の処理に進む。
【0114】
ステップS110の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示している場合に(ステップS110:Yes)、分類部30Aは、選択中の対象者のADAS-cogのスコアが20.0以上であるか否かを調べる(ステップS120)。
【0115】
ステップS120の処理において、ADAS-cogのスコアが20.0以上である場合に(ステップS120:Yes)、分類部30Aは、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS130)。
【0116】
ステップS130の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS130:No)、分類部30Aは、選択中の対象者を、第5のグループに分類する(ステップS140)。
【0117】
ステップS130の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS130:Yes)、分類部30Aは、選択中の対象者を、第7のグループに分類する(ステップS150)。
【0118】
ステップS120の処理において、ADAS-cogのスコアが20.0以上でない場合に(ステップS120:No)、分類部30Aは、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS160)。
【0119】
ステップS160の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS160:No)、分類部30Aは、選択中の対象者を、第8のグループに分類する(ステップS170)。
【0120】
ステップS160の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS160:Yes)、分類部30Aは、選択中の対象者を、第6のグループに分類する(ステップS180)。
【0121】
ステップS140の処理が終了した場合と、ステップS150の処理が終了した場合と、ステップS170の処理が終了した場合と、ステップS180の処理が終了した場合とに、ステップS50の処理に進む。
【0122】
ステップS60の処理が終了すると、分層装置10Aは、その第2の分類処理を終了する。
【0123】
<考察>
上記構成の分層装置10Aは、軽度認知障害を有する複数の対象者を、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、右海馬の容積と、に加えて、さらに、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かにも基づいて分類する。これにより、分層装置10Aは、より精度よく、対象者を分類することができるようになる。
【0124】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3に係る分層方法を実行する実施の形態3における分層装置について説明する。実施の形態3に係る分層装置は、実施の形態1に係る分層装置10の機能の一部を変更して構成されるものである。実施の形態1において説明した通り、分層装置10は、軽度認知障害を有する複数の対象者を、対象者に対して行う臨床心理試験であるアルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られるスコアと、右海馬の容積とに基づいて分類する。これに対して、実施の形態3に係る分層装置は、軽度認知障害を有する複数の対象者を、対象者に対して行う臨床心理試験である発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコア(PACC(Preclinical Alzheimer Cognitive Composit))と、右海馬の容積とに基づいて分類する。ここでは、実施の形態3に係る分層装置について、分層装置10と同様の構成要素については、既に説明済であるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、分層装置10との相違点を中心に説明する。
【0125】
<構成>
図9は、実施の形態3に係る分層方法を実施する分層装置10Bの構成の一例を示すブロック図である。
【0126】
図9に示すように、分層装置10Bは、実施の形態1に係る分層装置10から、取得部20が取得部20Bに変更され、分類部30が分類部30Bに変更されて構成される。
【0127】
取得部20Bは、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対して発症前アルツハイマー病のいくつかの認知機能検査を行った結果として得られるスコア(以下、「発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコア」とも称する)と、対象者の右海馬の容積とを取得する。
【0128】
分類部30Bは、複数の対象者のそれぞれについて、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアと、右海馬の容積とに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。実施の形態3では、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループとに加えて、さらに、第3のグループと、第4のグループとからなる4つのグループであるとして説明する。
【0129】
分類部30Bは、上記分類を、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0130】
より具体的には、分類部30Bは、複数の対象者のそれぞれについて、(1)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第4のグループに分類する。ここで、分類部30Bは、第4の閾値を0.111とし、第4の閾値を3.651[cm]として、上記分類を行う。
【0131】
以下、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見ついて説明する。
【0132】
コホート研究において、発明者らは、複数の対象者のそれぞれを、追跡調査の開始時点において、まず最初に、第1段階の分類として、(A)アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有していない対象者からなるグループαと、(B)アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している対象者からなるグループβとに分類し、次に、第2段階の分類として、グループαとグループβとのそれぞれについて、(1)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい対象者からなるグループA(グループαにおいては第1のグループ、グループβにおいては第5のグループに対応)と、(2)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい対象者からなるグループD(グループαにおいては第2のグループ、グループβにおいては第6のグループに対応)と、(3)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい対象者からなるグループB(グループαにおいては第3のグループ、グループβにおいては第7のグループに対応)と、(4)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい対象者からなるグループC(グループαにおいては第4のグループ、グループβにおいては第8のグループに対応)とのいずれかに分類し、分類後のグループ毎の追跡結果を示すカプランマイヤー曲線を評価した。
【0133】
図10Aおよび図10Bは、コホート研究において、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
【0134】
図10Aは、グループαを対象として行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線であり、図10Bは、グループβを対象として行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
【0135】
図10Aおよび図10Bに示されるカプランマイヤー曲線において、横軸は、追跡調査を開始してから経過した時間[年]であり、縦軸は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行した対象者の累積遷移率[%]である。
【0136】
図10Aおよび図10Bに示されるカプランマイヤー曲線から、第1のグループから第8のグループのうち、第1のグループと第5のグループとは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループになっていて、第2のグループと第6のグループとは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループになっていることがわかる。
【0137】
このように、発明者らは、コホート研究により、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、(1)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を前記第1のグループに分類し、(2)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第4のグループに分類することで、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを少なくとも含む複数のグループ(ここでは4つのグループ)のいずれかに分類することができる旨の知見を得た。
【0138】
また、発明者らは、コホート研究により、上記分類において、第1の閾値は0.111±1SDであることが好ましく、第2の閾値は3.651±1SD[cm]であることが好ましい旨の知見も得た。ここで、第1の閾値の1SDは、2.630であり、第2の閾値の1SDは、0.653[cm]である。
【0139】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10Bが行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0140】
図11は、分層装置10Bが行う第3の分類処理のフローチャートである。この第3の分類処理は、複数の対象者のそれぞれについて、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアと、右海馬の容積とに基づいて、対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを少なくとも含む4つのグループのいずれかに分類する処理である。
【0141】
第3の分類処理は、例えば、分層装置10Bを利用するユーザが、分層装置10Bに対して、第3の分類処理を開始させる旨の操作を行うことで開始される。
【0142】
第3の分類処理が開始されると、取得部20Bは、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対して行った発症前アルツハイマー病認知機能検査総合(PACC)結果として得られるスコア(以下、「PACCのスコア」とも称する。)と、対象者の右海馬の容積とを取得する(ステップS205)。
【0143】
複数の対象者のPACCのスコアと右海馬の容積とが取得されると、分類部30Bは、複数の対象者の中から1人の対象者を選択する(ステップS210)。そして、分類部30Bは、選択中の対象者のPACCのスコアが0.111以上であるか否かを調べる(ステップS215)。
【0144】
ステップS215の処理において、PACCのスコアが0.111以上でない場合に(ステップS215:No)、分類部30Bは、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS220)。
【0145】
ステップS220の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS220:No)、分類部30Bは、選択中の対象者を、第1のグループに分類する(ステップS225)。
【0146】
ステップS220の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS220:Yes)、分類部30Bは、選択中の対象者を、第3のグループに分類する(ステップS230)。
【0147】
ステップS215の処理において、PACCのスコアが0.111以上である場合に(ステップS215:Yes)、分類部30Bは、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS235)。
【0148】
ステップS235の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS235:No)、分類部30Bは、選択中の対象者を、第4のグループに分類する(ステップS240)。
【0149】
ステップS235の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS235:Yes)、分類部30Bは、選択中の対象者を、第2のグループに分類する(ステップS245)。
【0150】
ステップS225の処理が終了した場合と、ステップS230の処理が終了した場合と、ステップS240の処理が終了した場合と、ステップS245の処理が終了した場合とに、分類部30Bは、複数の対象者の中に、未選択の対象者がいるか否かを調べる(ステップS250)。ここで、未選択の対象者とは、ステップS210の処理で選択されなかった対象者であって、かつ、ステップS215の処理からステップS250:Yesの処理を通って再びステップS215の処理に進むループ処理において、後述のステップS255の処理において未だ選択されたことのない対象者のことを言う。
【0151】
ステップS250の処理において、未選択の対象者がいる場合に(ステップS250:Yes)、分類部30Bは、未選択の対象者の中から1人の対象者を選択する(ステップS255)。
【0152】
ステップS255の処理が終了するとステップS215の処理へ進む。
【0153】
ステップS250の処理において、未選択の対象者がいない場合に(ステップS250:No)、出力部40は、分類部30Bが複数の対象者のそれぞれに対して行った分類結果を出力する(ステップS260)。
【0154】
ステップS260の処理が終了すると、分層装置10Bは、その第3の分類処理を終了する。
【0155】
<考察>
上記構成の分層装置10Bによると、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類することができる。
【0156】
このため、分層装置10Bを利用して、軽度認知障害を有する複数の対象者を予め分類しておくことで、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行する人を対象とする予防治験等を効果的に行うことができる。
【0157】
また、上記構成の分層装置10Bによると、従来の技術とは異なる方法で上記分類を行うことができる。すなわち、分層装置10Bによると、上記分類において、従来の技術では必要であった、比較的高価な検査であるβアミロイド脳PET検査の結果を利用しない。
【0158】
このため、分層装置10Bを利用することで、従来の技術を利用する場合に比べて、上記分類を安価で、より効率的に行うことができる。
【0159】
(実施の形態4)
以下、実施の形態4に係る分層方法を実施する実施の形態4における分層装置について説明する。実施の形態4に係る分層装置は、実施の形態3に係る分層装置10Bの機能の一部を変更して構成されるものである。実施の形態3において説明した通り、分層装置10Bは、軽度認知障害を有する複数の対象者を、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアと、右海馬の容積とに基づいて分類する。これに対して、実施の形態4に係る分層装置は、軽度認知障害を有する複数の対象者を、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアと、右海馬の容積と、に加えて、さらに、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かにも基づいて分類する。ここでは、実施の形態4に係る分層装置について、分層装置10Bと同様の構成要素については、既に説明済であるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、分層装置10Bとの相違点を中心に説明する。
【0160】
<構成>
図12は、実施の形態4に係る分層方法を実施する分層装置10Cの構成の一例を示すブロック図である。
【0161】
図12に示すように、分層装置10Cは、実施の形態3に係る分層装置10Bから、取得部20Bが取得部20Cに変更され、分類部30Bが分類部30Cに変更されて構成される。
【0162】
取得部20Cは、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対して行った発症前アルツハイマー病認知機能検査総合の結果として得られるスコアと、対象者の右海馬の容積とに加えて、ApoE表現型を取得する。
【0163】
分類部30Cは、複数の対象者のそれぞれについて、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアと、右海馬の容積と、ApoE表現型とに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。実施の形態4では、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループとに加えて、さらに、第3のグループと、第4のグループと、第5のグループと、第6のグループと、第7のグループと、第8のグループとからなる8つのグループであるとして説明する。
【0164】
分類部30Cは、上記分類を、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0165】
より具体的には、分類部30Cは、複数の対象者のそれぞれについて、(1)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第5のグループに分類し、(6)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第6のグループに分類し、(7)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第7のグループに分類し、(8)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第8のグループに分類する。ここで、分類部30Cは、第3の閾値を0.111とし、第4の閾値を3.651[cm]として、上記分類を行う。
【0166】
以下、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見ついて説明する。
【0167】
図10Aおよび図10Bに示されるカプランマイヤー曲線から、第1のグループから第8のグループのうち、第1のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループになっていて、第2のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループになっていることがわかる。
【0168】
このように、発明者らは、コホート研究により、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、(1)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第5のグループに分類し、(6)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第6のグループに分類し、(7)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも大きい場合に、対象者を第7のグループに分類し、(8)ApoE表現型がApoEネガティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第3の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第4の閾値よりも小さい場合に、対象者を第8のグループに分類することで、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを少なくとも含む複数のグループ(ここでは8つのグループ)のいずれかに分類することができる旨の知見を得た。
【0169】
また、図10Aおよび図10Bに示されるカプランマイヤー曲線から、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有していない対象者からなるグループαに対して上記第2段階の分類を行った分類結果の方が、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有している対象者からなるグループβに対して上記第2段階の分類を行った分類結果よりも、より精度よく、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループとを含む複数のグループのいずれかに分類することができることがわかる。
【0170】
このように、発明者らは、コホート研究により、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアと、右海馬の容積とに加えて、さらに、ApoE表現型にも基づくことで、より精度よく、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類することができる旨の知見を得た。
【0171】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10Cが行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0172】
分層装置10Cは、分層装置10Bが行う第3の分類処理から、その一部の処理が変更された第4の分類処理を行う。
【0173】
図13Aおよび図13Bは、分層装置10Cが行う第4の分類処理のフローチャートである。
【0174】
図13Aおよび図13Bに示すように、第4の分類処理は、第3の分類処理に対して、ステップS300の処理~ステップS380の処理が追加された処理である。
【0175】
このため、ここでは、ステップS300の処理~ステップS380の処理を中心に説明する。
【0176】
第4の分類処理が開始されると、取得部20Cは、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、PACCのスコアと、対象者の右海馬の容積と、ApoE表現型とを取得する(ステップS300)。
【0177】
ステップS300の処理が終了すると、ステップS210の処理に進む。
【0178】
ステップS210の処理が終了した場合と、ステップS255の処理が終了した場合に、分類部30Cは、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示しているか否かを調べる(ステップS310)。
【0179】
ステップS310の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示していない場合に(ステップS310:No)、ステップS215の処理に進む。
【0180】
ステップS310の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示している場合に(ステップS310:Yes)、分類部30Cは、選択中の対象者のPACCのスコアが0.111以上であるか否かを調べる(ステップS320)。
【0181】
ステップS320の処理において、PACCのスコアが0.111以上でない場合に(ステップS320:No)、分類部30Cは、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS330)。
【0182】
ステップS330の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS330:No)、分類部30Cは、選択中の対象者を、第5のグループに分類する(ステップS340)。
【0183】
ステップS330の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS330:Yes)、分類部30Cは、選択中の対象者を、第7のグループに分類する(ステップS350)。
【0184】
ステップS320の処理において、PACCのスコアが0.111以上である場合に(ステップS320:Yes)、分類部30Cは、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS360)。
【0185】
ステップS360の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS360:No)、分類部30Cは、選択中の対象者を、第8のグループに分類する(ステップS370)。
【0186】
ステップS360の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS360:Yes)、分類部30Cは、選択中の対象者を、第6のグループに分類する(ステップS380)。
【0187】
ステップS340の処理が終了した場合と、ステップS350の処理が終了した場合と、ステップS370の処理が終了した場合と、ステップS380の処理が終了した場合とに、ステップS250の処理に進む。
【0188】
ステップS260の処理が終了すると、分層装置10Cは、その第4の分類処理を終了する。
【0189】
<考察>
上記構成の分層装置10Cは、軽度認知障害を有する複数の対象者を、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアと、右海馬の容積と、に加えて、さらに、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かにも基づいて分類する。これにより、分層装置10Cは、より精度よく、対象者を分類することができるようになる。
【0190】
(実施の形態5)
以下、実施の形態5に係る分層方法を実行する分層装置について説明する。実施の形態5に係る分層装置は、実施の形態1に係る分層装置10の機能の一部を変更して構成されるものである。実施の形態1において説明した通り、分層装置10は、軽度認知障害を有する複数の対象者を、アルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られるスコアと、右海馬の容積とに基づいて分類する。これに対して、実施の形態5に係る分層方法は、軽度認知障害を有する複数の対象者を、アルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られるスコアと、右海馬の容積と、に加えて、さらに、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合結果としてのスコアと、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かとにも基づいて分類する。ここでは、実施の形態5に係る分層方法を実施する分層装置について、分層装置10と同様の構成要素については、既に説明済であるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、分層装置10との相違点を中心に説明する。
【0191】
<構成>
図14は、実施の形態5に係る分層方法を実行する分層装置10Dの構成の一例を示すブロック図である。
【0192】
図14に示すように、分層装置10Dは、実施の形態1に係る分層装置10から、取得部20が取得部20Dに変更され、分類部30が分類部30Dに変更されて構成される。
【0193】
取得部20Dは、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対してアルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られるスコアと、対象者の右海馬の容積とに加えて、対象者に対して行った発症前アルツハイマー病認知機能検査総合結果として得られるスコアと、対象者がアポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かを示す情報(ApoE表現型)とを取得する。
【0194】
分類部30Dは、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、右海馬の容積と、ApoE表現型と、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアとに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第6のグループ、第7のグループ、および、第8のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第1のグループ、および、第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。実施の形態5では、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループと、第6のグループと、第7のグループと、第8のグループとに加えて、さらに、第3のグループと、第4のグループと、第5のグループとからなる8つのグループであるとして説明する。
【0195】
分類部30Dは、上記分類を、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0196】
より具体的には、分類部30Dは、複数の対象者のそれぞれについて、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEネガティブを示す場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも大きい場合と、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも大きい場合とに、対象者を第2のグループに分類し、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さく、かつ、ApoE表現型がApoEネガティブを示す場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEネガティブを示す場合に、対象者を第5のグループに分類し、(6)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも小さい場合と、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも小さい場合とに、対象者を第6のグループに分類し、(7)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さい場合に、対象者を第7のグループに分類し、(8)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも小さい場合に、対象者を第8のグループに分類する。ここで、分類部30Dは、第5の閾値を20.0とし、第6の閾値を3.651[cm]とし、第7の閾値を0.111として、上記分類を行う。
【0197】
以下、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見ついて説明する。
【0198】
コホート研究において、発明者らは、複数の対象者のそれぞれを、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEネガティブを示す対象者からなる第1のグループと、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも大きい対象者、または、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも大きい対象者からなる第2のグループと、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも大きい対象者からなる第3のグループと、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さく、かつ、ApoE表現型がApoEネガティブを示す対象者からなる第4のグループと、(5)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEネガティブを示す対象者からなる第5のグループと、(6)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも小さい対象者、または、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも小さい対象者からなる第6のグループと、(7)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さい対象者からなる第7のグループと、(8)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも小さい対象者からなる第8のグループとのいずれかに分類し、分類後のグループ毎の追跡結果を示すカプランマイヤー曲線を評価した。
【0199】
図15A図15Bは、コホート研究において、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示すカプランマイヤー曲線である。
【0200】
図15A図15Bに示されるカプランマイヤー曲線において、横軸は、追跡調査を開始してから経過した時間[年]であり、縦軸は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行した対象者の累積遷移率[%]である。
【0201】
図15A図15Bからわかるように、追跡調査を開始してから経過した時間が3年を超えると、対象者の人数が少なくなるため、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行した対象者の累積遷移率の信頼性が低くなっている。このため、コホート研究においては、追跡調査を開始してから経過した時間が3年を超えた時点での、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行した対象者の累積遷移率の値を用いずに議論している。
【0202】
図15A図15Bに示されるカプランマイヤー曲線から、第1のグループから第8のグループのうち、第6のグループ、第7のグループ、および、第8のグループとは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループになっていて、第1のグループ、および、第2のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループになっていることがわかる。
【0203】
このように、発明者らは、コホート研究により、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEネガティブを示す場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも大きい場合と、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも大きい場合とに、対象者を第2のグループに分類し、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さく、かつ、ApoE表現型がApoEネガティブを示す場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEネガティブを示す場合に、対象者を第5のグループに分類し、(6)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも小さい場合と、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも大きく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも小さい場合とに、対象者を第6のグループに分類し、(7)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも大きく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さい場合に、対象者を第7のグループに分類し、(8)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第5の閾値よりも小さく、かつ、右海馬の容積が第6の閾値よりも小さく、かつ、ApoE表現型がApoEポジティブを示し、かつ、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアが第7の閾値よりも小さい場合に、対象者を第8のグループに分類することで、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第6のグループ、第7のグループ、および、第8のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第1のグループ、および、第2のグループとを少なくとも含む複数のグループ(ここでは8つのグループ)のいずれかに分類することができる旨の知見を得た。
【0204】
また、発明者らは、コホート研究により、上記分類において、第5の閾値は20.0±1SDであることが好ましく、第6の閾値は3.651±1SD[cm]であることが好ましく、第7の閾値は、0.111±1SDであることが好ましい旨の知見を得た。ここで、第5の閾値の1SDは、6.3であり、第6の閾値の1SDは、0.653[cm]であり、第7の閾値の1SDは、2.630である。
【0205】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10Dが行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0206】
図16は、分層装置10Dが行う第5の分類処理のフローチャートである。この第5の分類処理は、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、右海馬の容積と、ApoE表現型と、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアとに基づいて、対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第6のグループ、第7のグループ、および、第8のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第1のグループ、および、第2のグループとを少なくとも含む8つのグループのいずれかに分類する処理である。
【0207】
第5の分類処理は、例えば、分層装置10Dを利用するユーザが、分層装置10Dに対して、第5の分類処理を開始させる旨の操作を行うことで開始される。
【0208】
第5の分類処理が開始されると、取得部20Dは、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対してアルツハイマー病評価尺度-認知(ADAS-cog)を行った結果として得られるスコア(ADAS-cogのスコア)と、対象者に対して行った発症前アルツハイマー病認知機能検査総合(PACC)の結果として得られるスコア(PACCのスコア)と、対象者の右海馬の容積と、ApoE表現型とを取得する(ステップS405)。
【0209】
複数の対象者のADAS-cogのスコアとPACCのスコアと右海馬の容積とApoE表現型とが取得されると、分類部30Dは、複数の対象者の中から1人の対象者を選択する(ステップS410)。そして、分類部30Dは、選択中の対象者のADAS-cogのスコアが20.0以上であるか否かを調べる(ステップS415)。
【0210】
ステップS415の処理において、ADAS-cogのスコアが20.0以上でない場合に(ステップS415:No)、分類部30Dは、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS420)。
【0211】
ステップS420の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS420:Yes)、分類部30Dは、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示しているか否かを調べる(ステップS425)。
【0212】
ステップS425の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示していない場合に(ステップS425:No)、分類部30Dは、選択中の対象者を、第1のグループに分類する(ステップS430)。
【0213】
ステップS420の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS420:No)、分類部30Dは、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示しているか否かを調べる(ステップS435)。
【0214】
ステップS435の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示していない場合に(ステップS435:No)、分類部30Dは、選択中の対象者を、第4のグループに分類する(ステップS440)。
【0215】
ステップS435の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示している場合に(ステップS435:Yes)、分類部30Dは、選択中の対象者のPACCのスコアが0.111以上であるか否かを調べる(ステップS445)。
【0216】
ステップS445の処理において、PACCのスコアが0.111以上である場合に(ステップS445:Yes)、分類部30Dは、選択中の対象者を、第3のグループに分類する(ステップS450)。
【0217】
ステップS445の処理において、PACCのスコアが0.111以上でない場合に(ステップS445:No)、分類部30Dは、選択中の対象者を、第8のグループに分類する(ステップS455)。
【0218】
ステップS415の処理において、ADAS-cogのスコアが20.0以上である場合に(ステップS415:Yes)、分類部30Dは、選択中の対象者の右海馬の容積が3.651以上であるか否かを調べる(ステップS460)。
【0219】
ステップS460の処理において、右海馬の容積が3.651以上である場合に(ステップS460:Yes)、分類部30Dは、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示しているか否かを調べる(ステップS465)。
【0220】
ステップS465の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示していない場合に(ステップS465:No)、分類部30Dは、選択中の対象者を、第5のグループに分類する(ステップS470)。
【0221】
ステップS425の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示している場合と(ステップS425:Yes)、ステップS465の処理において、選択中の対象者のApoE表現型がApoEポジティブを示している場合と(ステップS465:Yes)に、分類部30Dは、選択中の対象者のPACCのスコアが0.111以上であるか否かを調べる(ステップS475)。
【0222】
ステップS475の処理において、PACCのスコアが0.111以上である場合に(ステップS475:Yes)、分類部30Dは、選択中の対象者を、第2のグループに分類する(ステップS480)。
【0223】
ステップS475の処理において、PACCのスコアが0.111以上でない場合に(ステップS475:No)、分類部30Dは、選択中の対象者を、第6のグループに分類する(ステップS485)。
【0224】
ステップS460の処理において、右海馬の容積が3.651以上でない場合に(ステップS460:No)、分類部30Dは、選択中の対象者を、第7のグループに分類する(ステップS490)。
【0225】
ステップS430の処理が終了した場合と、ステップS440の処理が終了した場合と、ステップS450の処理が終了した場合と、ステップS455の処理が終了した場合と、ステップS470の処理が終了した場合と、ステップS480の処理が終了した場合と、ステップS485の処理が終了した場合と、ステップS490の処理が終了した場合とに、分類部30Dは、複数の対象者の中に、未選択の対象者がいるか否かを調べる(ステップS495)。ここで、未選択の対象者とは、ステップS410の処理で選択されなかった対象者であって、かつ、ステップS415の処理からステップS495:Yesの処理を通って再びステップS415の処理に進むループ処理において、後述のステップS496の処理において未だ選択されたことのない対象者のことを言う。
【0226】
ステップS495の処理において、未選択の対象者がいる場合に(ステップS495:Yes)、分類部30Dは、未選択の対象者の中から1人の対象者を選択する(ステップS496)。
【0227】
ステップS496の処理が終了するとステップS415の処理へ進む。
【0228】
ステップS495の処理において、未選択の対象者がいない場合に(ステップS495:No)、出力部40は、分類部30Dが複数の対象者のそれぞれに対して行った分類結果を出力する(ステップS497)。
【0229】
ステップS497の処理が終了すると、分層装置10Dは、その第5の分類処理を終了する。
【0230】
<考察>
上記構成の分層装置10Dは、軽度認知障害を有する複数の対象者を、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、右海馬の容積と、に加えて、さらに、発症前アルツハイマー病認知機能検査総合スコアと、アポリポ蛋白Eε4遺伝子を有しているか否かとにも基づいて分類する。これにより、分層装置10Dは、より精度よく、対象者を分類することができるようになる。
【0231】
(実施の形態6)
発明者らは、さらに精度よく、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類する分層方法を見つけ出すために、βアミロイド脳PET検査の陽性者に対して、さらに、様々な因子を対象として、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行するリスクの評価を行った。ここでは、AV45をトレーサとしてPET検査を行った結果のスコアが1.11よりも大きな値を示した人物のことを、βアミロイド脳PET検査の陽性者と称している。
【0232】
図17は、発明者らが、βアミロイド脳PET検査の陽性者に対してさらに行った、様々な因子を対象とするリスク評価の内容の一例を示す模式図である。
【0233】
発明者らは、図17に示すリスク評価の内容に対して検討を重ねた結果、実施の形態6に係る分層方法に想到した。
【0234】
以下、実施の形態6に係る分層方法を実行する分層装置について説明する。実施の形態6に係る分層装置は、実施の形態1に係る分層装置10の機能の一部を変更して構成されるものである。実施の形態6に係る分層装置は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類する装置である。複数のグループには、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いハイリスクグループである第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いローリスクグループである第2のグループとが含まれる。
【0235】
実施の形態6に係る分層装置は、発明者らによる、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見を反映した分類処理を実行する装置の一例である。
【0236】
ここでは、実施の形態6に係る分層装置について、分層装置10と同様の構成要素については、既に説明済であるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、分層装置10との相違点を中心に説明する。
【0237】
<構成>
図18は、実施の形態6に係る分層方法を実行する分層装置10Eの構成の一例を示すブロック図である。
【0238】
図18に示すように、分層装置10Eは、実施の形態1に係る分層装置10から、取得部20が取得部20Eに変更され、分類部30が分類部30Eに変更されて構成される。
【0239】
取得部20Eは、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対してアルツハイマー病評価尺度-認知を行った結果として得られるスコアと、対象者の左海馬の容積とを取得する。左海馬の容積は、右海馬の容積と同様に、例えば、対象者に対して、MRI検査を行い、MRI検査を行った結果取得される頭部のMRI画像に対して画像処理等を行うことで計測することができる。
【0240】
分類部30Eは、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積とに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。実施の形態6では、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループとに加えて、さらに、第3のグループと、第4のグループとからなる4つのグループであるとして説明する。
【0241】
分類部30Eは、上記分類を、発明者らによる、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0242】
具体的には、分類部30Eは、複数の対象者のそれぞれについて、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい場合に、対象者を第4のグループに分類する。ここで、分類部30Eは、第1の閾値を14.0とし、第2の閾値を3459[mm]として、上記分類を行う。
【0243】
以下、発明者らによる、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見ついて説明する。
【0244】
発明者らは、コホート研究において、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象として、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行についての追跡調査を行った。
【0245】
図19は、コホート研究において、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示す積極限法による生存推定の一例である。
【0246】
図19に示される積極限法による生存推定において、横軸は、追跡調査を開始してから経過した時間[年]であり、縦軸は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行しない対象者の累積比率である。
【0247】
図19に示すように、コホート研究において、発明者らは、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する対象者220名を対象として、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行について、約5年間の追跡調査を行った。この約5年間に、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行した対象者は、70名であった。
【0248】
コホート研究において、発明者らは、複数の対象者のそれぞれを、追跡調査の開始時点において、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループA(第1のグループに対応)と、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループB(第2のグループに対応)と、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループC(第3のグループに対応)と、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループD(第4のグループに対応)とのいずれかに分類し、分類後のグループ毎の追跡結果を示す積極限法による生存推定を評価した。
【0249】
図19に示される積極限法による生存推定から、第1のグループから第4のグループのうち、第1のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループになっていて、第2のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループになっていることがわかる。
【0250】
また、発明者らは、コホート研究により、上記分類において、第1の閾値は14.0±1SDであることが好ましく、第2の閾値は3459[mm]±1SDであることが好ましい旨の知見も得た。ここで、第1の閾値の1SDは6.9であり、第2の閾値の1SDは543.5[mm]である。
【0251】
特に、第1の閾値と第2の閾値を上記値とすることで、第2のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクがないグループとすることができることがわかった点は重要である。
【0252】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10Eが行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0253】
図20は、分層装置10Eが行う第6の分類処理のフローチャートである。この第6の分類処理は、βアミロイド脳PET検査の陽性者である複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積とに基づいて、対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを少なくとも含む4つのグループのいずれかに分類する処理である。
【0254】
第6の分類処理は、例えば、分層装置10Eを利用するユーザが、分層装置10Eに対して、第6の分類処理を開始させる旨の操作を行うことで開始される。
【0255】
第6の分類処理が開始されると、取得部20Eは、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれについて、対象者に対してアルツハイマー病評価尺度-認知(ADAS-cog)を行った結果として得られるスコア(ADAS-cogのスコア)と、対象者の左海馬の容積とを取得する(ステップS605)。
【0256】
複数の対象者のADAS-cogのスコアと左海馬の容積とが取得されると、分類部30Eは、複数の対象者の中から1人の対象者を選択する(ステップS610)。そして、分類部30Eは、選択中の対象者のADAS-cogのスコアが14.0以上であるか否かを調べる(ステップS615)。
【0257】
ステップS615の処理において、ADAS-cogのスコアが14.0以上である場合に(ステップS615:Yes)、分類部30Eは、選択中の対象者の左海馬の容積が3459以上であるか否かを調べる(ステップS620)。
【0258】
ステップS620の処理において、左海馬の容積が3459以上でない場合に(ステップS620:No)、分類部30Eは、選択中の対象者を、第1のグループに分類する(ステップS625)。
【0259】
ステップS620の処理において、左海馬の容積が3459以上である場合に(ステップS620:Yes)、分類部30Eは、選択中の対象者を、第3のグループに分類する(ステップS630)。
【0260】
ステップS615の処理において、ADAS-cogのスコアが14.0以上でない場合に(ステップS615:No)、分類部30Eは、選択中の対象者の左海馬の容積が3459以上であるか否かを調べる(ステップS635)。
【0261】
ステップS635の処理において、左海馬の容積が3459以上でない場合に(ステップS635:No)、分類部30Eは、選択中の対象者を、第4のグループに分類する(ステップS640)。
【0262】
ステップS35の処理において、左海馬の容積が3459以上である場合に(ステップS635:Yes)、分類部30Eは、選択中の対象者を、第2のグループに分類する(ステップS645)。
【0263】
ステップS625の処理が終了した場合と、ステップS630の処理が終了した場合と、ステップS640の処理が終了した場合と、ステップS645の処理が終了した場合とに、分類部30Eは、複数の対象者の中に、未選択の対象者がいるか否かを調べる(ステップS650)。ここで、未選択の対象者とは、ステップS610の処理で選択されなかった対象者であって、かつ、ステップS615の処理からステップS650:Yesの処理を通って再びステップS615の処理に進むループ処理において、後述のステップS655の処理において未だ選択されたことのない対象者のことを言う。
【0264】
ステップS650の処理において、未選択の対象者がいる場合に(ステップS650:Yes)、分類部30Eは、未選択の対象者の中から1人の対象者を選択する(ステップS655)。
【0265】
ステップS655の処理が終了するとステップS615の処理へ進む。
【0266】
ステップS650の処理において、未選択の対象者がいない場合に(ステップS650:No)、出力部40は、分類部30Eが複数の対象者のそれぞれに対して行った分類結果を出力する(ステップS660)。
【0267】
ステップS660の処理が終了すると、分層装置10Eは、その第6の分類処理を終了する。
【0268】
<考察>
上記構成の分層装置10Eは、軽度認知障害を有する複数の対象者を、βアミロイド脳PET検査の陽性者に絞り込んで、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて分類する。これにより、分層装置10Eは、より精度よく、対象者を分類することができるようになる。
【0269】
(変形例1)
以下、実施の形態6に係る分層装置10Eの機能の一部を変更して構成される変形例1に係る分層装置について説明する。実施の形態6において説明した通り、分層装置10Eは、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて、第1の閾値を14.0とし、第2の閾値を3459[mm]として、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を分類する。これに対して、変形例1に係る分層装置は、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて、第1の閾値を12.0とし、第2の閾値を3737[mm]として、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を分類する。すなわち、変形例1に係る分層装置は、分層装置10Eから、上記分類において、第1の閾値を14.0から12.0に変更し、第2の閾値を3459[mm]から3737[mm]に変更して構成されたものである。
【0270】
ここでは、変形例1に係る分層装置について、分層装置10Eと同様の構成要素については、既に説明済であるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、分層装置10Eとの相違点を中心に説明する。
【0271】
<構成>
図21は、変形例1に係る分層方法を実行する分層装置10Fの構成の一例を示すブロック図である。
【0272】
図21に示すように、分層装置10Fは、実施の形態6に係る分層装置10Eから、分類部30Eが分類部30Fに変更されて構成される。
【0273】
分類部30Fは、分類部30Eと同様に、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積とに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。変形例1では、実施の形態6と同様に、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループとに加えて、さらに、第3のグループと、第4のグループとからなる4つのグループであるとして説明する。
【0274】
分類部30Fは、上記分類を、分類部30Eと同様に、発明者らによる、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0275】
具体的には、分類部30Fは、第1の閾値を12.0とし、第2の閾値を3737[mm]とする点を除いて、分類部30Eの行う分類と同様に、上記分類を行う。
【0276】
以下、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見ついて説明する。
【0277】
発明者らは、コホート研究において、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象として、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行についての追跡調査を行った。
【0278】
図22は、コホート研究において、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示す積極限法による生存推定の他の一例である。
【0279】
図22に示される積極限法による生存推定において、図19に示される積極限法による生存推定と同様に、横軸は、追跡調査を開始してから経過した時間[年]であり、縦軸は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行しない対象者の比率である。
【0280】
コホート研究において、発明者らは、複数の対象者のそれぞれを、追跡調査の開始時点において、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループA(第1のグループに対応)と、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループB(第2のグループに対応)と、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループC(第3のグループに対応)と、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループD(第4のグループに対応)とのいずれかに分類し、分類後のグループ毎の追跡結果を示す積極限法による生存推定を評価した。
【0281】
図22に示される積極限法による生存推定から、第1のグループから第4のグループのうち、第1のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループになっていて、第2のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループになっていることがわかる。
【0282】
また、発明者らは、コホート研究により、上記分類において、第1の閾値は12.0であることが好ましく、第2の閾値は3737[mm]であることが好ましい旨の知見も得た。
【0283】
特に、第1の閾値と第2の閾値を上記値とすることで、第2のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクがないグループとすることができることがわかった点は重要である。
【0284】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10Eが行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0285】
分層装置10Fは、分層装置10Eが行う第6の分類処理の替わりに、第7の分類処理を行う。
【0286】
図23は、分層装置10Fが行う第7の分類処理のフローチャートである。
【0287】
第7の分類処理において、ステップS705の処理~ステップS710の処理、ステップS725の処理~ステップS730の処理、および、ステップS740の処理~ステップS760の処理は、それぞれ、実施の形態6に係る第6の分類処理における、ステップS605の処理~ステップS610の処理、ステップS625の処理~ステップS630の処理、および、ステップS640の処理~ステップS660の処理に対して、分類部30Eを分類部30Fに読み替えて、分層装置10Eを分層装置10Fに読み替えた処理と同様の処理である。このため、ここでは、これらの処理については説明済であるとして、これらの説明を省略し、ステップS715の処理と、ステップS720の処理と、ステップS735の処理とを中心に説明する。
【0288】
ステップS710の処理が終了すると、分類部30Fは、選択中の対象者のADAS-cogのスコアが12.0以上であるか否かを調べる(ステップS715)。
【0289】
ステップS715の処理において、ADAS-cogのスコアが12.0以上である場合に(ステップS715:Yes)、分類部30Fは、選択中の対象者の左海馬の容積が3737以上であるか否かを調べる(ステップS720)。
【0290】
ステップS720の処理において、左海馬の容積が3737以上でない場合に(ステップS720:No)、ステップS725の処理に進む。
【0291】
ステップS720の処理において、左海馬の容積が3737以上である場合に(ステップS720:Yes)、ステップS730の処理に進む。
【0292】
ステップS715の処理において、ADAS-cogのスコアが12.0以上でない場合に(ステップS715:No)、分類部30Fは、選択中の対象者の左海馬の容積が3737以上であるか否かを調べる(ステップS735)。
【0293】
ステップS735の処理において、左海馬の容積が3737以上でない場合に(ステップS735:No)、分類部30Fは、選択中の対象者を、第4のグループに分類する(ステップS740)。
【0294】
ステップS735の処理において、左海馬の容積が3737以上である場合に(ステップS735:Yes)、分類部30Fは、選択中の対象者を、第2のグループに分類する(ステップS745)。
【0295】
ステップS760の処理が終了すると、分層装置10Fは、その第7の分類処理を終了する。
【0296】
<考察>
上記構成の分層装置10Fは、分層装置10Eと同様に、軽度認知障害を有する複数の対象者を、βアミロイド脳PET検査の陽性者に絞り込んで、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて分類する。これにより、分層装置10Fは、分層装置10Eと同様に、より精度よく、対象者を分類することができるようになる。
【0297】
(変形例2)
以下、実施の形態6に係る分層装置10Eの機能の一部を変更して構成される変形例2に係る分層装置について説明する。実施の形態6において説明した通り、分層装置10Eは、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて、第1の閾値を14.0とし、第2の閾値を3459[mm]として、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を分類する。これに対して、変形例2に係る分層装置は、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて、第1の閾値を21.0とし、第2の閾値を3080[mm]として、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を分類する。すなわち、変形例2に係る分層装置は、分層装置10Eから、上記分類において、第1の閾値を14.0から21.0に変更し、第2の閾値を3459[mm]から3080[mm]に変更して構成されたものである。
【0298】
ここでは、変形例2に係る分層装置について、分層装置10Eと同様の構成要素については、既に説明済であるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、分層装置10Eとの相違点を中心に説明する。
【0299】
<構成>
図24は、変形例2に係る分層方法を実行する分層装置10Gの構成の一例を示すブロック図である。
【0300】
図24に示すように、分層装置10Gは、実施の形態6に係る分層装置10Eから、分類部30Eが分類部30Gに変更されて構成される。
【0301】
分類部30Gは、分類部30Eと同様に、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積とに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。変形例2では、実施の形態6と同様に、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループとに加えて、さらに、第3のグループと、第4のグループとからなる4つのグループであるとして説明する。
【0302】
分類部30Gは、上記分類を、分類部30Eと同様に、発明者らによる、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0303】
具体的には、分類部30Gは、第1の閾値を21.0とし、第2の閾値を3080[mm]とする点を除いて、分類部30Eの行う分類と同様に、上記分類を行う。
【0304】
以下、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見ついて説明する。
【0305】
発明者らは、コホート研究において、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象として、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行についての追跡調査を行った。
【0306】
図25は、コホート研究において、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示す積極限法による生存推定の他の一例である。
【0307】
図25に示される積極限法による生存推定において、図19に示される積極限法による生存推定と同様に、横軸は、追跡調査を開始してから経過した時間[年]であり、縦軸は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行しない対象者の比率である。
【0308】
コホート研究において、発明者らは、複数の対象者のそれぞれを、追跡調査の開始時点において、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループA(第1のグループに対応)と、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループB(第2のグループに対応)と、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループC(第3のグループに対応)と、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループD(第4のグループに対応)とのいずれかに分類し、分類後のグループ毎の追跡結果を示す積極限法による生存推定を評価した。
【0309】
図25に示される積極限法による生存推定から、第1のグループから第4のグループのうち、第1のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループになっていて、第2のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループになっていることがわかる。
【0310】
また、発明者らは、コホート研究により、上記分類において、第1の閾値は21.0であることが好ましく、第2の閾値は3080[mm]であることが好ましい旨の知見も得た。
【0311】
特に、第1の閾値と第2の閾値を上記値とすることで、第1のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が約80%という極めてリスクが高いグループとすることができることがわかった点は重要である。
【0312】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10Gが行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0313】
分層装置10Gは、分層装置10Eが行う第6の分類処理の替わりに、第8の分類処理を行う。
【0314】
図26は、分層装置10Gが行う第8の分類処理のフローチャートである。
【0315】
第8の分類処理において、ステップS805の処理~ステップS810の処理、ステップS825の処理~ステップS830の処理、および、ステップS840の処理~ステップS860の処理は、それぞれ、実施の形態6に係る第6の分類処理における、ステップS605の処理~ステップS610の処理、ステップS625の処理~ステップS630の処理、および、ステップS640の処理~ステップS660の処理に対して、分類部30Eを分類部30Gに読み替えて、分層装置10Eを分層装置10Gに読み替えた処理と同様の処理である。このため、ここでは、これらの処理については説明済であるとして、これらの説明を省略し、ステップS815の処理と、ステップS820の処理と、ステップS835の処理とを中心に説明する。
【0316】
ステップS810の処理が終了すると、分類部30Gは、選択中の対象者のADAS-cogのスコアが21.0以上であるか否かを調べる(ステップS815)。
【0317】
ステップS815の処理において、ADAS-cogのスコアが21.0以上である場合に(ステップS815:Yes)、分類部30Gは、選択中の対象者の左海馬の容積が3080以上であるか否かを調べる(ステップS820)。
【0318】
ステップS820の処理において、左海馬の容積が3080以上でない場合に(ステップS820:No)、ステップS825の処理に進む。
【0319】
ステップS820の処理において、左海馬の容積が3080以上である場合に(ステップS820:Yes)、ステップS830の処理に進む。
【0320】
ステップS815の処理において、ADAS-cogのスコアが21.0以上でない場合に(ステップS815:No)、分類部30Gは、選択中の対象者の左海馬の容積が3080以上であるか否かを調べる(ステップS835)。
【0321】
ステップS835の処理において、左海馬の容積が3080以上でない場合に(ステップS835:No)、分類部30Gは、選択中の対象者を、第4のグループに分類する(ステップS840)。
【0322】
ステップS835の処理において、左海馬の容積が3080以上である場合に(ステップS835:Yes)、分類部30Gは、選択中の対象者を、第2のグループに分類する(ステップS845)。
【0323】
ステップS860の処理が終了すると、分層装置10Gは、その第8の分類処理を終了する。
【0324】
<考察>
上記構成の分層装置10Gは、分層装置10Eと同様に、軽度認知障害を有する複数の対象者を、βアミロイド脳PET検査の陽性者に絞り込んで、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて分類する。これにより、分層装置10Gは、分層装置10Eと同様に、より精度よく、対象者を分類することができるようになる。
【0325】
(変形例3)
以下、実施の形態6に係る分層装置10Eの機能の一部を変更して構成される変形例3に係る分層装置について説明する。実施の形態6において説明した通り、分層装置10Eは、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて、第1の閾値を14.0とし、第2の閾値を3459[mm]として、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を分類する。これに対して、変形例3に係る分層装置は、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて、第1の閾値を24.0とし、第2の閾値を2751[mm]として、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を分類する。すなわち、変形例2に係る分層装置は、分層装置10Eから、上記分類において、第1の閾値を14.0から24.0に変更し、第2の閾値を3459[mm]から2751[mm]に変更して構成されたものである。
【0326】
ここでは、変形例3に係る分層装置について、分層装置10Eと同様の構成要素については、既に説明済であるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、分層装置10Eとの相違点を中心に説明する。
【0327】
<構成>
図27は、変形例3に係る分層方法を実行する分層装置10Hの構成の一例を示すブロック図である。
【0328】
図27に示すように、分層装置10Hは、実施の形態6に係る分層装置10Eから、分類部30Eが分類部30Hに変更されて構成される。
【0329】
分類部30Hは、分類部30Eと同様に、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積とに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。変形例2では、実施の形態6と同様に、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループとに加えて、さらに、第3のグループと、第4のグループとからなる4つのグループであるとして説明する。
【0330】
分類部30Hは、上記分類を、分類部30Eと同様に、発明者らによる、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0331】
具体的には、分類部30Hは、第1の閾値を24.0とし、第2の閾値を2751[mm]とする点を除いて、分類部30Eの行う分類と同様に、上記分類を行う。
【0332】
以下、発明者らによる、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見ついて説明する。
【0333】
発明者らは、コホート研究において、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象として、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行についての追跡調査を行った。
【0334】
図28は、コホート研究において、発明者らが行った、グループ毎の追跡調査の結果を示す積極限法による生存推定の他の一例である。
【0335】
図28に示される積極限法による生存推定において、図19に示される積極限法による生存推定と同様に、横軸は、追跡調査を開始してから経過した時間[年]であり、縦軸は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へ進行しない対象者の比率である。
【0336】
コホート研究において、発明者らは、複数の対象者のそれぞれを、追跡調査の開始時点において、(1)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループA(第1のグループに対応)と、(2)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループB(第2のグループに対応)と、(3)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも大きく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも大きい対象者からなるグループC(第3のグループに対応)と、(4)アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアが第1の閾値よりも小さく、かつ、左海馬の容積が第2の閾値よりも小さい対象者からなるグループD(第4のグループに対応)とのいずれかに分類し、分類後のグループ毎の追跡結果を示す積極限法による生存推定を評価した。
【0337】
図28に示される積極限法による生存推定から、第1のグループから第4のグループのうち、第1のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いグループになっていて、第2のグループは、追跡調査の開始時点において、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いグループになっていることがわかる。
【0338】
また、発明者らは、コホート研究により、上記分類において、第1の閾値は24.0であることが好ましく、第2の閾値は2751[mm]であることが好ましい旨の知見も得た。
【0339】
特に、第1の閾値と第2の閾値を上記値とすることで、第1のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が約91%という極めてリスクが高いグループとすることができることがわかった点は重要である。
【0340】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10Hが行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0341】
分層装置10Hは、分層装置10Eが行う第6の分類処理の替わりに、第9の分類処理を行う。
【0342】
図29は、分層装置10Hが行う第9の分類処理のフローチャートである。
【0343】
第9の分類処理において、ステップS905の処理~ステップS910の処理、ステップS925の処理~ステップS930の処理、および、ステップS940の処理~ステップS960の処理は、それぞれ、実施の形態6に係る第6の分類処理における、ステップS605の処理~ステップS610の処理、ステップS625の処理~ステップS630の処理、および、ステップS640の処理~ステップS660の処理に対して、分類部30Eを分類部30Hに読み替えて、分層装置10Eを分層装置10Hに読み替えた処理と同様の処理である。このため、ここでは、これらの処理については説明済であるとして、これらの説明を省略し、ステップS915の処理と、ステップS920の処理と、ステップS935の処理とを中心に説明する。
【0344】
ステップS910の処理が終了すると、分類部30Hは、選択中の対象者のADAS-cogのスコアが24.0以上であるか否かを調べる(ステップS915)。
【0345】
ステップS915の処理において、ADAS-cogのスコアが24.0以上である場合に(ステップS915:Yes)、分類部30Hは、選択中の対象者の左海馬の容積が2751以上であるか否かを調べる(ステップS920)。
【0346】
ステップS920の処理において、左海馬の容積が2751以上でない場合に(ステップS920:No)、ステップS925の処理に進む。
【0347】
ステップS920の処理において、左海馬の容積が2751以上である場合に(ステップS920:Yes)、ステップS930の処理に進む。
【0348】
ステップS915の処理において、ADAS-cogのスコアが24.0以上でない場合に(ステップS915:No)、分類部30Hは、選択中の対象者の左海馬の容積が2751以上であるか否かを調べる(ステップS935)。
【0349】
ステップS935の処理において、左海馬の容積が2751以上でない場合に(ステップS935:No)、分類部30Hは、選択中の対象者を、第4のグループに分類する(ステップS940)。
【0350】
ステップS935の処理において、左海馬の容積が2751以上である場合に(ステップS935:Yes)、分類部30Hは、選択中の対象者を、第2のグループに分類する(ステップS945)。
【0351】
ステップS960の処理が終了すると、分層装置10Hは、その第9の分類処理を終了する。
【0352】
<考察>
上記構成の分層装置10Hは、分層装置10Eと同様に、軽度認知障害を有する複数の対象者を、βアミロイド脳PET検査の陽性者に絞り込んで、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて分類する。これにより、分層装置10Hは、分層装置10Eと同様に、より精度よく、対象者を分類することができるようになる。
【0353】
(実施の形態7)
発明者らは、図17に示すリスク評価の内容に対してさらに検討を重ねて、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類するための新たな変数を見出した。
【0354】
すなわち、発明者らは、対象者の左海馬の容積とその対象者のADAS-cogのスコアとの比率を示す容積スコア値(Cog_Vol)を用いて上記分類を行うことで、さらに精度よく上記分類を行うことができることを見出した。
【0355】
以下では、容積スコア値(Cog_Vol)が、ADAS-cogのスコアに対する左海馬の容積[mm]の比率であるとする場合、すなわち、対象者の左海馬の容積[mm]をその対象者のADAS-cogのスコアで除算することで得られる値であるとする場合の例について説明する。
【0356】
すなわち、以下では、容積スコア値(Cog_Vol)は具体的には次式により算出される。
【0357】
Cog_Vol=左海馬の容積[mm]/ADAS-cogのスコア
【0358】
以下、実施の形態7に係る分層方法を実行する分層装置について説明する。実施の形態7に係る分層装置は、実施の形態6に係る分層装置10Eの機能の一部を変更して構成されるものである。実施の形態7に係る分層装置は、分層装置10Eと同様に、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類する装置である。複数のグループには、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高いハイリスクグループである第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低いローリスクグループである第2のグループとが含まれる。
【0359】
実施の形態7に係る分層装置は、発明者らによって見出された容積スコア値(Cog_Vol)を用いた分類処理を実行する装置の一例である。
【0360】
ここでは、実施の形態7に係る分層装置について、分層装置10Eと同様の構成要素については、既に説明済であるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、分層装置10Eとの相違点を中心に説明する。
【0361】
<構成>
図30は、実施の形態7に係る分層方法を実行する分層装置10Iの構成の一例を示すブロック図である。
【0362】
図30に示すように、分層装置10Iは、実施の形態6に係る分層装置10Eから、分類部30Eが分類部30Iに変更されて構成される。
【0363】
分類部30Iは、分類部30Eと同様に、複数の対象者のそれぞれについて、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積とに基づいて、対象者を、少なくとも、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に高い第1のグループと、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクが相対的に低い第2のグループとを含む複数のグループのいずれかに分類する。実施の形態7では、複数のグループは、第1のグループと、第2のグループとからなる2つのグループであるとして説明する。
【0364】
分類部30Iは、上記分類を、発明者らによる、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を対象としたコホート研究により得られた知見に基づいて行う。
【0365】
具体的には、分類部30Iは、複数の対象者のそれぞれについて、コホート研究を通じて発明者らによって新たに見出された容積スコア値(Cog_Vol)に基づいて上記分類を行う。ここで、分類部30Iは、容積スコア値(Cog_Vol)が101未満である場合に、対象者を第1のグループに分類し、容積スコア値(Cog_Vol)が101未満でない場合に、第2のグループに分類する。
【0366】
以下、コホート研究を通じて発明者らによって新たに見出された容積スコア値(Cog_Vol)について説明する。
【0367】
図31は、容量スコア値(Cog_Vol)と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の数との関係を示す対応表である。
【0368】
図32は、βアミロイド脳PET検査の陽性者における、容量スコア値(Cog_Vol)と、容積スコア値(Cog_Vol)が算出されてからアルツハイマー型認知症へと進行するまでの期間との関係を示す相関図である。
【0369】
図32に示される相関図において、横軸は、容積スコア値(Cog_Vol)であり、縦軸は、容積スコア値(Cog_Vol)が算出されてからアルツハイマー型認知症へと進行するまでの期間[年]である。
【0370】
図31図32に示すように、容積スコア値(Cog_Vol)が101未満となる、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する対象者17名のうち16名が、すなわち、該当する対象者17名のうちの94.14%が、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した。
【0371】
また、図32に示すように、該当する対象者17名のうちの13名が、1年以内に軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した。
【0372】
このように、発明者らは、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者を、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が約94%という極めてリスクが高いグループに分類することができる新たな変数である容積スコア値(Cog_Vol)を見出した。
【0373】
発明者らは、さらに検討を重ねて、容積スコア値(Cog_Vol)に対して複数の閾値を設定することで、βアミロイド脳PET検査の陽性者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、さらにきめ細かく、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類することができるとの知見を得た。
【0374】
図33は、軽度認知障害を有する対象者のうち、βアミロイド脳PET検査の陽性者である対象者についての、容量スコア値(Cog_Vol)と、発明者らが見出した複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の数との関係を示す対応表である。
【0375】
図34は、βアミロイド脳PET検査の陽性者における、容量スコア値(Cog_Vol)と、容積スコア値(Cog_Vol)が算出されてからアルツハイマー型認知症へと進行するまでの期間、または、アルツハイマー型認知症へと進行しないまま経過した期間との関係を示す相関図である。
【0376】
図34に示される相関図において、横軸は、容積スコア値(Cog_Vol)であり、縦軸は、容積スコア値(Cog_Vol)が算出されてからアルツハイマー型認知症へと進行するまでの期間[年]、または、アルツハイマー型認知症へと進行しないまま経過した期間[年]である。
【0377】
図35は、軽度認知障害を有する対象者のうち、βアミロイド脳PET検査の陽性者である対象者についての、容量スコア値(Cog_Vol)と、発明者らが見出した複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の比率の推移との関係を示す対応表である。
【0378】
図33図35に示すように、発明者らは、軽度認知障害を有する対象者のうち、βアミロイド脳PET検査の陽性者である対象者のそれぞれについて、(1)容積スコア値(Cog_Vol)が第1の閾値である101未満である場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)容積スコア値(Cog_Vol)が第1の閾値である101以上であり、第2の閾値である142以下である場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)容積スコア値(Cog_Vol)が第2の閾値である142より大きく、第3の閾値である266以下である場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)容積スコア値(Cog_Vol)が第3の閾値である266より大きく、第4の閾値である340以下である場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)容積スコア値(Cog_Vol)が第4の閾値である340より大きい場合に、対象者を第5のグループに分類することで、第1のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が94.1%というグループとし、第2のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が60.0%というグループとし、第3のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が32.6%というグループとし、第4のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が10.4%というグループとし、第5のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が0%というグループとすることができるとの知見を得た。
【0379】
この際、発明者らは、第1のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が70.5%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が88.2%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が94.1%であり、第2のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が10.0%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が26.6%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が60.0%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率が60.0%であり、第3のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が5.9%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が13.9%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が28.7%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率が32.7%であり、第4のグループまたは第5のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が1.4%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が1.4%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が1.4%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率が4.16%であるとの知見を得た。
【0380】
このように、容積スコア値(Cog_Vol)がより大きい程、アルツハイマー型認知症発症率がより低くなることがわかる。
【0381】
発明者らは、さらに検討を重ねて、対象者がβアミロイド脳PET検査の陽性者であるか否かに関わらず、容積スコア値(Cog_Vol)に対して複数の閾値を設定することで、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類することができるとの知見を得た。
【0382】
図36は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であるか否かに関わらず、軽度認知障害を有する対象者についての、容量スコア値(Cog_Vol)と、発明者らが見出した複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の数との関係を示す対応表である。
【0383】
図37は、βアミロイド脳PET検査の陽性者であるか否かに関わらず、容量スコア値(Cog_Vol)と、容積スコア値(Cog_Vol)が算出されてからアルツハイマー型認知症へと進行するまでの期間、または、アルツハイマー型認知症へと進行しないまま経過した期間との関係を示す相関図である。
【0384】
図37に示される相関図において、横軸は、容積スコア値(Cog_Vol)であり、縦軸は、容積スコア値(Cog_Vol)が算出されてからアルツハイマー型認知症へと進行するまでの期間[年]、または、アルツハイマー型認知症へと進行しないまま経過した期間[年]である。
【0385】
図36図37に示すように、発明者らは、アミロイド脳PET検査の陽性者であるか否かに関わらず、軽度認知障害を有する対象者のそれぞれについて、(1)容積スコア値(Cog_Vol)が第1の閾値である101未満である場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)容積スコア値(Cog_Vol)が第1の閾値である101以上であり、第2の閾値である142以下である場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)容積スコア値(Cog_Vol)が第2の閾値である142より大きく、第3の閾値である266以下である場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)容積スコア値(Cog_Vol)が第3の閾値である266より大きく、第4の閾値である340以下である場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)容積スコア値(Cog_Vol)が第4の閾値である340より大きい場合に、対象者を第5のグループに分類することで、第1のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が78.1%というグループとし、第2のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が60.3%というグループとし、第3のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が34.6%というグループとし、第4のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が10.3%というグループとし、第5のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が3.2%というグループとすることができるとの知見を得た。
【0386】
発明者らは、さらに検討を重ねて、βアミロイド脳PET検査の陽性者、陰性者、および、陽性か陰性かの情報を有さない対象者を対象にして、容積スコア値(Cog_Vol)に対して複数の閾値を設定することで、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類することができるとの知見を得た。
【0387】
図38は、βアミロイド脳PET検査の陽性者、陰性者、および、陽性か陰性かの情報を有さない対象者であって、軽度認知障害を有する対象者についての、容量スコア値(Cog_Vol)と、発明者らが見出した複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の比率の推移との関係を示す対応表である。
【0388】
図38に示すように、発明者らは、βアミロイド脳PET検査の陽性者、陰性者、および、陽性か陰性かの情報を有さない対象者であって、軽度認知障害を有する対象者のそれぞれについて、(1)容積スコア値(Cog_Vol)が第1の閾値である101未満である場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)容積スコア値(Cog_Vol)が第1の閾値である101より大きく、第2の閾値である142以下である場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)容積スコア値(Cog_Vol)が第2の閾値である142より大きく、第3の閾値である266以下である場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)容積スコア値(Cog_Vol)が第3の閾値である266より大きく、第4の閾値である340以下である場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)容積スコア値(Cog_Vol)が第4の閾値である340より大きい場合に、対象者を第5のグループに分類することで、第1のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が79.4%というグループとし、第2のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が61.6%というグループとし、第3のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が36.4%というグループとし、第4のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が10.8%というグループとし、第5のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が0.6%というグループとすることができるとの知見を得た。
【0389】
この際、発明者らは、第1のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が34.9%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が55.5%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が60.3%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率63.5%、5年以内のアルツハイマー型認知症発症率が68.3%、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が79.4%であり、第2のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が15.0%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が30.1%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が45.9%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率が53.4%、5年以内のアルツハイマー型認知症発症率が54.9%であり、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が61.6%であり、第3のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が6.4%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が16.0%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が25.4%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率が29.3%、5年以内のアルツハイマー型認知症発症率が31.5%、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が36.4%であり、第4のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が3.2%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が5.4%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が6.5%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率が7.6%、5年以内のアルツハイマー型認知症発症率が8.7%、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が10.8%であり、第5のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が0%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が0%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が0.6%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率0.6%、5年以内のアルツハイマー型認知症発症率が1.7%、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が3.4%であるとの知見を得た。
【0390】
このように、容積スコア値(Cog_Vol)がより大きい程、アルツハイマー型認知症発症率がより低くなることがわかる。
【0391】
発明者らは、軽度認知障害を有する対象者のうち、βアミロイド脳PET検査の結果が、陽性と陰性とのいずれかであることが判明している対象者についてのコホート研究をさらに進めた。
【0392】
その結果、発明者らは、図33に示した閾値とは異なる閾値を用いて、βアミロイド脳PET検査の結果が、陽性と陰性とのいずれかであることが判明している対象者であって、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、さらに精度よく、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類することができるとの知見を得た。
【0393】
図39は、軽度認知障害を有する対象者のうち、βアミロイド脳PET検査の結果が、陽性と陰性とのいずれかであることが判明している対象者についての、容量スコア値(Cog_Vol_ab)と、発明者らが見出した複数の閾値と、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症へと進行した対象者の比率の推移との関係を示す対応表である。
【0394】
図39において、容積スコア値(Cog_Vol_ab)は、図33における容積スコア値(Cog_Vol)と同様の方法で算出されるものであるが、上述したように、図33における容積スコア値(Cog_Vol)の2つのパラメータに加えて、3つ目のパラメータとして、βアミロイド脳PET検査の結果が判明しているか否かというパラメータを用いて、βアミロイド脳PET検査の結果が判明している人物を対象者に限定して算出されるものである。また、図39における容積スコア値(Cog_Vol_ab)は、図33に示した閾値とは異なる閾値を用いて行う分類に使用される値であるため、ここでは、図33における容積スコア値(Cog_Vol)と区別するために、容積スコア値(Cog_Vol_ab)と表現している。
【0395】
図39に示すように、発明者らは、軽度認知障害を有する対象者のうち、βアミロイド脳PET検査の結果が、陽性と陰性とのいずれかであることが判明している対象者のそれぞれについて、(1)容積スコア値(Cog_Vol_ab)が第1の閾値である67未満である場合に、対象者を第1のグループに分類し、(2)容積スコア値(Cog_Vol_ab)が第1の閾値である67より大きく、第2の閾値である135以下である場合に、対象者を第2のグループに分類し、(3)容積スコア値(Cog_Vol_ab)が第2の閾値である135より大きく、第3の閾値である177以下である場合に、対象者を第3のグループに分類し、(4)容積スコア値(Cog_Vol_ab)が第3の閾値である177より大きく、第4の閾値である392以下である場合に、対象者を第4のグループに分類し、(5)容積スコア値(Cog_Vol_ab)が第4の閾値である392より大きい場合に、対象者を第5のグループに分類することで、第1のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が94.1%というグループとし、第2のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が43.3%というグループとし、第3のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が27.8%というグループとし、第4のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が5.1%というグループとし、第5のグループを、将来アルツハイマー型認知症へ進行する割合が0%というグループとすることができるとの知見を得た。
【0396】
この際、発明者らは、第1のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が64.7%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が82.4%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が88.2%、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が94.1%であり、第2のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が11.1%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が13.3%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が34.4%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率が38.8%、5年以内のアルツハイマー型認知症発症率が38.8%であり、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が43.3%であり、第3のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が7.4%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が13.0%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が24.0%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率が25.9%、5年以内のアルツハイマー型認知症発症率が25.9%、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が27.8%であり、第4のグループに分類された対象者は、1年以内のアルツハイマー型認知症発症率が1.3%、2年以内のアルツハイマー型認知症発症率が2.5%、3年以内のアルツハイマー型認知症発症率が3.2%、4年以内のアルツハイマー型認知症発症率が3.2%、5年以内のアルツハイマー型認知症発症率が3.8%、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が5.1%であり、第5のグループに分類された対象者は、6年以内のアルツハイマー型認知症発症率が0%であるとの知見を得た。
【0397】
このように、容積スコア値(Cog_Vol_ab)がより大きい程、アルツハイマー型認知症発症率がより低くなることがわかる。
【0398】
<動作>
以下、上記構成の分層装置10Iが行う動作について図面を参照しながら説明する。
【0399】
分層装置10Iは、分層装置10Eが行う第6の分類処理の替わりに、第10の分類処理を行う。
【0400】
図40は、分層装置10Iが行う第10の分類処理のフローチャートである。
【0401】
第10の分類処理において、ステップS1005の処理~ステップS1010の処理、および、ステップS1050の処理~ステップS1060の処理は、それぞれ、実施の形態6に係る第6の分類処理における、ステップS605の処理~ステップS610の処理、および、ステップS650の処理~ステップS660の処理に対して、分類部30Eを分類部30Iに読み替えて、分層装置10Eを分層装置10Iに読み替えた処理と同様の処理である。このため、ここでは、これらの処理については説明済であるとして、これらの説明を省略し、ステップS1015の処理~ステップS1040の処理を中心に説明する。
【0402】
ステップS1010の処理が終了すると、分類部30Iは、選択中の対象者の左海馬の容積をその対象者のADAS-cogのスコアで除算することで、容積スコア値(Cog_Vol)を算出する(ステップS1015)。
【0403】
そして、分類部30Iは、算出した容積スコア値(Cog_Vol)が101未満であるか否かを調べる(ステップS1020)。
【0404】
ステップS1020の処理において、容積スコア値(Cog_Vol)が101未満である場合に(ステップS1020:Yes)、分類部30Iは、選択中の対象者を、第1のグループに分類する(ステップS1030)。
【0405】
ステップS1020の処理において、容積スコア値(Cog_Vol)が101未満でない場合に(ステップS1020:No)、分類部30Iは、選択中の対象者を、第2のグループに分類する(ステップS1040)。
【0406】
ステップS1030の処理が終了すると、または、ステップS1040の処理が終了すると、ステップS1050の処理へ進む。
【0407】
ステップS1060の処理が終了すると、分層装置10Iは、その第10の分類処理を終了する。
【0408】
<考察>
上記構成の分層装置10Iは、分層装置10Eと同様に、軽度認知障害を有する複数の対象者を、βアミロイド脳PET検査の陽性者に絞り込んで、アルツハイマー病評価尺度-認知のスコアと、左海馬の容積と基づいて分類する。これにより、分層装置10Iは、分層装置10Eと同様に、より精度よく、対象者を分類することができるようになる。
【0409】
(補足)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1~実施の形態7および変形例1~3に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、これら実施の形態および変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態および変形例に施したものや、異なる実施の形態および変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0410】
本発明の一態様は、このような分層装置10~分層装置10Iだけではなく、分層装置10~分層装置10Iに含まれる特徴的な構成部をステップとする分層方法であってもよい。また、本発明の一態様は、分層方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本発明の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
【0411】
なお、本発明の一態様に係る分層方法は、アルツハイマー病予防開発の際に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0412】
本発明は、軽度認知障害を有する複数の対象者のそれぞれを、将来アルツハイマー型認知症へ進行するリスクに応じた複数のグループのいずれかに分類する分層方法等に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0413】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I 分層装置
20、20A、20B、20C、20D、20E 取得部
30、30A、30B、30C、30D、30E、30F、30G、30H、30I 分類部
40 出力部
図1
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図7A
図7B
図8A
図8B
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図10A
図10B
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図13A
図13B
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図15B
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