(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
G01T7/00 A
(21)【出願番号】P 2024520718
(86)(22)【出願日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2023041749
【審査請求日】2024-04-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究 ERATO「片岡ラインX線ガンマ線イメージング」委託研究、産業技術強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】片岡 淳
(72)【発明者】
【氏名】越川 七星
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/035708(WO,A1)
【文献】特開2013-200164(JP,A)
【文献】Wonho Lee et al.,A Dual Modality Gamma Camera Using LaCl3(Ce) Scintillator,IEEE TRANSACTIONS ON NUCLEAR SCIENCE,2009年02月10日,VOL. 56, NO. 1,308-315
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射するガンマ線を、入射角度に応じた確率で透過させる減衰体と、
前記減衰体を透過したガンマ線の少なくとも一部を散乱させる散乱体と、
前記散乱体で散乱されたガンマ線の少なくとも一部を吸収する吸収体と、
ガンマ線の前記散乱体での散乱位置情報、そのガンマ線の前記吸収体での吸収位置情報、そのガンマ線から前記散乱体への第1放出エネルギー値、およびそのガンマ線から前記吸収体への第2放出エネルギー値を用いて、そのガンマ線の前記減衰体への入射方向に関する第1分布情報を生成する第1生成部とを備え
、
前記減衰体は、ガンマ線の数を減衰させる減衰部を有し、
前記第1生成部は、ガンマ線が前記減衰部を通過したと仮定される通過長さをさらに用いて、前記第1分布情報を生成する
測定装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の測定装置において、
前記第1生成部は、
対象平面内でガンマ線が通過した可能性がある候補位置の分布を、そのガンマ線の、前記散乱位置情報、前記吸収位置情報、前記第1放出エネルギー値、および前記第2放出エネルギー値を用いて特定し、
前記分布に含まれる複数の候補位置のそれぞれと、そのガンマ線の前記散乱体での散乱位置との関係に基づいて、前記通過長さを前記複数の候補位置のそれぞれについて導出し、
そのガンマ線が前記複数の候補位置のそれぞれを通過した可能性の高さを示す重みを、前記通過長さを用いて導出し、
前記複数の候補位置と、前記複数の候補位置のそれぞれに対する前記重みを用いて、前記第1分布情報を生成する
測定装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の測定装置において、
前記減衰体は、パラレルコリメータである
測定装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の測定装置において、
前記散乱体で吸収されたガンマ線の、前記散乱体での吸収位置情報を用いて、そのガンマ線がどこから到来したかに関する到来情報を生成する第2生成部をさらに備える
測定装置。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の測定装置において、
前記減衰体と前記散乱体との間隔は5mm以下である
測定装置。
【請求項6】
入射するガンマ線を、入射角度に応じた確率で透過させる減衰体に、ガンマ線を入射させ、
前記減衰体を透過したガンマ線の少なくとも一部を散乱体で散乱させ、
前記散乱体で散乱されたガンマ線の少なくとも一部を吸収体で吸収させ
、
前記減衰体は、ガンマ線の数を減衰させる減衰部を有し、
ガンマ線の前記散乱体での散乱位置情報、そのガンマ線の前記吸収体での吸収位置情報、そのガンマ線から前記散乱体への第1放出エネルギー値、そのガンマ線から前記吸収体への第2放出エネルギー値、およびガンマ線が前記減衰部を通過したと仮定される通過長さを用いて、そのガンマ線の前記減衰体への入射方向に関する第1分布情報を生成する、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンマ線がどの方向から到来したかを検出する装置として、コンプトンカメラがある。コンプトンカメラは例として、物理、天文、医療、環境の分野で用いられる。
【0003】
非特許文献1には、人体内の2種類の放射性医薬品(SPECT薬剤とPET薬剤)の分布を1台のコンプトンカメラで同時にイメージグする技術が記載されている。
【0004】
非特許文献2には、PETイメージングとコンプトンイメージングを同時に行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Takashi Nakano、外14名、「Imaging of 99mTc-DMSA and 18F-FDG in humans using a Si/CdTe Compton camera」、Physics in Medicine & Biology、IOP Publishing、2020年2月28日、65(2020)05LT01
【文献】Mizuki Uenomachi、外7名、「Simultaneous in vivo imaging with PET and SPECT tracers using a Compton-PET hybrid camera」、Scientific Reports、Nature Research、2021年9月9日、(2021)11:17933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1の技術では、コンプトンカメラのみで2つの薬剤の分布をイメージングしていた。その結果、どちらの薬剤についても通常のSPECT装置およびPET装置に比べて解像度が悪く、実用に適さないという問題があった。また、非特許文献2の技術では、SPECT薬剤として汎用的な99mTcのイメージングが困難であり、複数光子を放出し、かつ、99mTcより高エネルギーのガンマ線を放出する特殊な薬剤111Inを用いていた。
【0007】
本発明は、汎用性および精度に優れる放射線測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態によれば、以下の測定装置および測定方法が提供される。
【0009】
1. 入射するガンマ線を、入射角度に応じた確率で透過させる減衰体と、
前記減衰体を透過したガンマ線の少なくとも一部を散乱させる散乱体と、
前記散乱体で散乱されたガンマ線の少なくとも一部を吸収する吸収体と、を備える
測定装置。
2. 1.に記載の測定装置において、
ガンマ線の前記散乱体での散乱位置情報、そのガンマ線の前記吸収体での吸収位置情報、そのガンマ線から前記散乱体への第1放出エネルギー値、およびそのガンマ線から前記吸収体への第2放出エネルギー値を用いて、そのガンマ線の前記減衰体への入射方向に関する第1分布情報を生成する第1生成部をさらに備える
測定装置。
3. 2.に記載の測定装置において、
前記減衰体は、ガンマ線の数を減衰させる減衰部を有し、
前記第1生成部は、ガンマ線が前記減衰部を通過したと仮定される通過長さをさらに用いて、前記第1分布情報を生成する
測定装置。
4. 3.に記載の測定装置において、
前記第1生成部は、
対象平面内でガンマ線が通過した可能性がある候補位置の分布を、そのガンマ線の、前記散乱位置情報、前記吸収位置情報、前記第1放出エネルギー値、および前記第2放出エネルギー値を用いて特定し、
前記分布に含まれる複数の候補位置のそれぞれと、そのガンマ線の前記散乱体での散乱位置との関係に基づいて、前記通過長さを前記複数の候補位置のそれぞれについて導出し、
そのガンマ線が前記複数の候補位置のそれぞれを通過した可能性の高さを示す重みを、前記通過長さを用いて導出し、
前記複数の候補位置と、前記複数の候補位置のそれぞれに対する前記重みを用いて、前記第1分布情報を生成する
測定装置。
5. 1.から4.のいずれか一つに記載の測定装置において、
前記減衰体は、パラレルコリメータである
測定装置。
6. 5.に記載の測定装置において、
前記散乱体で吸収されたガンマ線の、前記散乱体での吸収位置情報を用いて、そのガンマ線がどこから到来したかに関する到来情報を生成する第2生成部をさらに備える
測定装置。
7. 1.から6.のいずれか一つに記載の測定装置において、
前記減衰体と前記散乱体との間隔は5mm以下である
測定装置。
8. 入射するガンマ線を、入射角度に応じた確率で透過させる減衰体に、ガンマ線を入射させ、
前記減衰体を透過したガンマ線の少なくとも一部を散乱体で散乱させ、
前記散乱体で散乱されたガンマ線の少なくとも一部を吸収体で吸収させる
測定方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、汎用性および精度に優れる放射線測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る測定装置の構成を例示する図である。
【
図2】第1の実施形態に係る減衰体の例を示す図である。
【
図3】散乱体および吸収体を実現するための検出器の構成を例示する図である。
【
図4】第1の実施形態に係る測定装置の構成を例示する図である。
【
図5】第1生成部を実現するための計算機を例示する図である。
【
図6】減衰体、散乱体、および吸収体と、それらに入射するガンマ線との関係を例示する図である。
【
図7】点P
1と、楕円との位置関係を例示する図である。
【
図8】点P
1と点P
Cとの位置関係を例示する図である。
【
図9】第1生成部が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図10】第1生成部が生成する第1分布情報を示す画像を例示する図である。
【
図11】参考例に係る累積分布情報のイメージを例示する図である。
【
図12】第1の実施形態に係る累積分布情報のイメージを例示する図である。
【
図13】第2の実施形態に係る減衰体を例示する斜視図である。
【
図14】第2の実施形態に係る測定装置の機能構成を例示する図である。
【
図15】第2生成部が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図16】第2の実施形態に係る減衰部と、散乱位置(点P
1)、および候補位置(点P
C)の関係を示す図である。
【
図18】実施例1に係る累積分布情報を示す図である。
【
図19】比較例1に係る累積分布情報を示す図である。
【
図22】実施例2に係る累積分布情報を示す図である。
【
図23】比較例2に係る累積分布情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る測定装置10の構成を例示する図である。
図1において、ガンマ線源を黒丸で示している。本実施形態に係る測定装置10は、減衰体120、散乱体140、および吸収体160を備える。減衰体120は、入射するガンマ線20を、入射角度に応じた確率で透過させる。散乱体140は、減衰体120を透過したガンマ線20の少なくとも一部を散乱させる。吸収体160は、散乱体140で散乱されたガンマ線20の少なくとも一部を吸収する。
【0014】
本実施形態に係る測定方法は、減衰体120にガンマ線を入射させることと、減衰体120を透過したガンマ線20の少なくとも一部を散乱体140で散乱させることと、散乱体140で散乱されたガンマ線20の少なくとも一部を吸収体160で吸収させることとを含む。ここで、減衰体120は、入射するガンマ線20を、入射角度に応じた確率で透過させる。
【0015】
本実施形態に係る測定方法は、たとえば本実施形態に係る測定装置10で実現される。
【0016】
本実施形態に係る測定装置10および測定方法によれば、減衰体120を用いることにより、ガンマ線20がどの方向から到来したかを高精度に測定できる。本実施形態に係る測定装置10および測定方法について、以下に詳しく説明する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る減衰体120の例を示す図である。上述した通り、減衰体120は、入射するガンマ線20を、入射角度に応じた確率で透過させる。なお、減衰体120は、全てのエネルギー帯のガンマ線20を、入射角度に応じた確率で透過させる必要はない。減衰体120は、少なくともいずれかのエネルギー帯のガンマ線20(たとえば後述する高エネルギー帯のガンマ線20)を、入射角度に応じた確率で透過させればよい。たとえば、減衰体120は、他のエネルギー帯のガンマ線20を入射角度によらず遮蔽するようなものであってもよい。
【0018】
減衰体120は、ガンマ線20の数を減衰させる減衰部122を有する。すなわち、複数のガンマ線20が減衰部122に入射した場合、それら複数のガンマ線20の一部のみが減衰部122を通過する。ガンマ線20が減衰部122を透過する確率は、ガンマ線20のエネルギー等に依存する。減衰部122はたとえばガンマ線20の数を減衰させる金属からなる。減衰部122はたとえば、タングステン、鉛、錫、および、銅のうち少なくともいずれかを含む。または減衰部122は、タングステン、鉛、錫、および、銅のうち少なくともいずれかを含む合金を含んでもよい。
図2の例において、減衰部122は金属の平板である。また、減衰体120は全体が減衰部122である。本実施形態に係る減衰体120の厚さはたとえば3mm以上15mm以下である。
【0019】
ガンマ線20が減衰部122を透過する確率は、ガンマ線20が減衰部122を通過する通過長さLが長いほど低くなる。すなわち、減衰体120の入射面120aに対するガンマ線20の入射角度が大きいほど、ガンマ線20が減衰部122に吸収されず減衰体120を通過する可能性が低くなる。
【0020】
図2の例において、減衰体120は全体として平板状である。減衰体120における入射面120aは、減衰体120の主面のうちの一つである。減衰体120における出射面120bは、減衰体120の主面のうち他の一つであり、減衰体120の入射面120aとは反対側の面である。減衰体120からのガンマ線20の出射角度は、そのガンマ線20の減衰体120への入射角度と同じである。
【0021】
なお、入射面に対するガンマ線20の入射角度とは、入射面の法線と、そのガンマ線20の入射方向とのなす角である。出射面に対するガンマ線20の出射角度とは、出射面の法線と、そのガンマ線20の出射方向とのなす角である。以後、各部材に対する入射角度および出射角度について同じである。
【0022】
散乱体140は、散乱体140に入射したガンマ線20を散乱させる。すなわち、散乱体140からのガンマ線20の出射角度は、散乱体140へのガンマ線20の入射角度とは異なりうる。たとえば、散乱体140は全体として平板状である。散乱体140における入射面140aは、散乱体140の主面のうちの一つである。散乱体140における出射面140bは、散乱体140の主面のうち他の一つであり、散乱体140の入射面140aとは反対側の面である。
【0023】
減衰体120の出射面120bは、散乱体140の入射面140aに対向している。減衰体120の出射面120bは、散乱体140の入射面140aと平行である。減衰体120と散乱体140との間隔は5mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。減衰体120と散乱体140との間隔が狭いほど、外部からの影響を受けにくく、測定装置10の測定精度が向上する。減衰体120と散乱体140とは接していることがさらに好ましい。すなわち、減衰体120の出射面120bは、散乱体140の入射面140aに接していることが好ましい。ただし、減衰体120と散乱体140との間には、ガンマ線20に影響を与えない他の部材が介在していてもよい。
【0024】
散乱体140は、散乱体140内で散乱されるガンマ線20からエネルギーを受け取る。すなわち、散乱体140内で、ガンマ線20のエネルギーは減衰する。散乱体140は、ガンマ線20から散乱体140へ放出されるエネルギーの大きさ(「第1放出エネルギー値」と呼ぶ。)を検出する機能を有する。また、散乱体140は、散乱体140内でガンマ線20が散乱された位置(「散乱位置」と呼ぶ。)を検出する機能を有する。散乱体140は、散乱位置を、二次元で検出する機能を有してもよいし、三次元で検出する機能を有してもよい。散乱体140はたとえば、
図3を用いて詳しく後述する検出器30で実現される。
【0025】
吸収体160は、吸収体160に入射したガンマ線20を吸収する。すなわち、吸収体160に入射したガンマ線20は、吸収体160内でエネルギーを失い、吸収体160から出射されない。たとえば、吸収体160は全体として平板状である。吸収体160における入射面160aは、吸収体160の主面のうちの一つである。
【0026】
散乱体140の出射面140bは、吸収体160の入射面160aに対向している。散乱体140の出射面140bは、吸収体160の入射面160aと平行である。散乱体140と吸収体160との間隔は、目標とする解像度や感度に応じて設定することができる。散乱体140と吸収体160とは、互いに接していてもよいし、離れていてもよい。散乱体140と吸収体160とが互いに接している場合、高い感度が得られる一方、解像度が低くなる。逆に、散乱体140と吸収体160との間隔を広くすることで、解像度を高めることができる一方、感度が下がり、視野が狭まる。散乱体140と吸収体160との間隔は、30mm以上50mm以下であることが好ましい。散乱体140と吸収体160との間隔は、50mm以上であってもよい。
【0027】
吸収体160は、吸収体160内で吸収されるガンマ線20からエネルギーを受け取る。すなわち、吸収体160内で、ガンマ線20のエネルギーは減衰する。吸収体160は、ガンマ線20から吸収体160へ放出されるエネルギーの大きさ(「第2放出エネルギー値」と呼ぶ。)を検出する機能を有する。また、吸収体160は、吸収体160内でガンマ線20が吸収された位置(「吸収位置」と呼ぶ。)を検出する機能を有する。吸収体160は、吸収位置を、二次元で検出する機能を有してもよいし、三次元で検出する機能を有してもよい。吸収体160はたとえば、
図3を用いて詳しく後述する検出器30で実現される。
【0028】
測定装置10において減衰体120、散乱体140、および吸収体160はこの順に配置されている。減衰体120、散乱体140、および吸収体160の相対位置は互いに固定されている。
【0029】
図3は、散乱体140および吸収体160を実現するための検出器30の構成を例示する図である。検出器30は、シンチレータ31のアレイおよび光電変換素子32のアレイを備える。シンチレータ31は、ガンマ線20が放出するエネルギーを光に変換して出力する。光電変換素子32は、シンチレータ31から出力された光を電気信号に変換する。光電変換素子32はたとえばPMT(光電子倍増管)、フォトダイオード、または内部増幅機能をもつ光素子(アバランシェフォトダイオードやシリコンフォトマル)である。光電変換素子32のアレイはたとえば、アレイ化されたPMT、アレイ化されたフォトダイオード、アレイ化されたアバランシェフォトダイオード、またはアレイ化されたシリコンフォトマルである。アレイ化が可能なシリコンフォトマルの例として、Multi-Pixel Photon Counter(MPPC)が挙げられる。
【0030】
図3の例において、検出器30は、ガンマ線20がエネルギーを放出する位置を二次元に検出する。すなわち、複数のシンチレータ31は二次元にアレイ化されている。また、複数の光電変換素子32は、二次元にアレイ化されている。言い換えると、複数のシンチレータ31および複数の光電変換素子32は、ピクセル化されている。エネルギーを放出する位置とは、散乱体140における散乱位置であり、吸収体160における吸収位置である。検出器30が、ガンマ線20がエネルギーを放出する位置を三次元に検出する場合には、複数のシンチレータ31は三次元にアレイ化される。また、複数の光電変換素子32は、三次元にアレイ化される。
【0031】
シンチレータ31は特に限定されないが、たとえばGAGG:Ce(Ce添加Gd3(Al,Ga)5O12)、LYSO:Ce(Ce添加(Lu1-xYx)2SiO5)、およびGSO(Gd2SiO5)のうちいずれかのシンチレータ結晶である。
【0032】
複数の光電変換素子32のそれぞれは、複数のシンチレータ31に貼り付けられている。具体的には、複数の光電変換素子32のそれぞれが、一つのシンチレータ31に貼り付けられていてもよいし、一つの光電変換素子32に対して、二つ以上のシンチレータ31が貼り付けられていてもよい。すなわち、光電変換素子32とシンチレータ31とは一対一で対を成していてもよいし、一つの光電変換素子32(すなわち1ピクセルの光電変換素子32)が、複数のシンチレータ31(すなわち複数ピクセルのシンチレータ31)にまたがって設けられていてもよい。各光電変換素子32は、その光電変換素子32と対をなすシンチレータ31、または、その光電変換素子32に対して設けられた二つ以上のシンチレータ31から出力された光を受光して検出する(すなわち電気信号に変換する)ように構成されている。複数の光電変換素子32からの信号の強度(各ピクセルの信号強度)をモニタし、重心演算などを行うことで、どのシンチレータ31でガンマ線20がエネルギーを放出したかを特定することができる。すなわち、検出器30のうちどの位置でガンマ線20がエネルギーを放出したかを特定することができる。光を検出した光電変換素子32の位置に基づいて、エネルギーが放出された位置を座標として特定できる。
【0033】
さらに、光電変換素子32は、シンチレータ31から出力される光の強さを検出することで、ガンマ線20からそのシンチレータ31へ放出されるエネルギーの大きさを検出することができる。すなわち、光電変換素子32は、シンチレータ31から出力される光の強さを示す電気信号を出力することができる。ガンマ線20からシンチレータ31へ放出されるエネルギーの大きさは、散乱体140における第1放出エネルギー値に対応し、吸収体160における第2放出エネルギー値に対応する。
【0034】
具体的には、光電変換素子32は光を検出するとパルス信号を出力する。パルス信号の振幅の大きさが検出された光の強さを示す。また、光電変換素子32からのパルス信号の出力タイミングを特定することで、ガンマ線20がエネルギーを放出したタイミングを特定することができる。詳しく後述するように、散乱体140でガンマ線20がエネルギーを放出したタイミングと、吸収体160でガンマ線20がエネルギーを放出したタイミングとの関係に基づいて、同一のガンマ線20(光子)の、散乱と吸収とを対応付けることができる。
【0035】
ただし、検出器30における複数のシンチレータ31および複数の光電変換素子32の配置や関係は本例に限定されない。また、散乱体140および吸収体160の構成は本例に限定されない。たとえば散乱体140は、半導体等でガンマ線20のエネルギーを電気信号に変換する検出器でもよい。吸収体160は、半導体等でガンマ線20のエネルギーを電気信号に変換する検出器でもよい。また、散乱体140と吸収体160とは互いに同じ構成を有してもよいし、異なる構成を有してもよい。たとえば、散乱体140と吸収体160とが、互いに異なる素材の検出器を用いて構成されてもよい。
【0036】
図4は、本実施形態に係る測定装置10の構成を例示する図である。本実施形態に係る測定装置10は、第1生成部170をさらに備える。第1生成部170は、ガンマ線20の散乱位置情報、吸収位置情報、第1放出エネルギー値、および第2放出エネルギー値を用いて、そのガンマ線20の減衰体120への入射方向に関する第1分布情報を生成する。散乱位置情報は、そのガンマ線20の散乱体140での散乱位置を示す情報である。吸収位置情報は、そのガンマ線20の吸収体160での吸収位置を示す情報である。第1放出エネルギー値は、そのガンマ線20から散乱体140へ放出されるエネルギーの大きさを示す値である。第2放出エネルギー値は、そのガンマ線20から吸収体160へ放出されるエネルギーの大きさを示す値である。第1生成部170が実行する処理については詳しく後述する。
【0037】
図4の例において、測定装置10は、第1制御部142および第2制御部162をさらに備える。第1制御部142は、散乱体140に接続されており、散乱体140に、ガンマ線20からエネルギーの放出を検出させる。第1制御部142は例として、電源回路、電流電圧変換回路、フィルタ回路、および増幅回路等を備えうる。散乱体140が検出器30で実現される場合、第1制御部142は、散乱体140における複数の光電変換素子32から出力される電気信号を受け取る。第1制御部142は、散乱体140における、ガンマ線20からのエネルギー放出の検出結果を示す信号を出力する。
【0038】
第2制御部162は、吸収体160に接続されており、吸収体160に、ガンマ線20からエネルギーの放出を検出させる。第2制御部162は例として、電源回路、電流電圧変換回路、フィルタ回路、および増幅回路等を備えうる。吸収体160が検出器30で実現される場合、第2制御部162は、吸収体160における複数の光電変換素子32から出力される電気信号を受け取る。第2制御部162は、吸収体160における、ガンマ線20からのエネルギー放出の検出結果を示す信号を出力する。
【0039】
第1生成部170のハードウエア構成について以下に説明する。第1生成部170は、第1生成部170を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、測定装置10の第1生成部170がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0040】
図5は、第1生成部170を実現するための計算機1000を例示する図である。計算機1000は任意の計算機である。たとえば計算機1000は、SoC(System On Chip)、Personal Computer(PC)、サーバマシン、タブレット端末、またはスマートフォンなどである。計算機1000は、第1生成部170を実現するために設計された専用の計算機であってもよいし、汎用の計算機であってもよい。また、第1生成部170は、一つの計算機1000で実現されても良いし、複数の計算機1000の組み合わせにより実現されても良い。
【0041】
計算機1000は、バス1020、プロセッサ1040、メモリ1060、ストレージデバイス1080、入出力インタフェース1100、およびネットワークインタフェース1120を有する。バス1020は、プロセッサ1040、メモリ1060、ストレージデバイス1080、入出力インタフェース1100、およびネットワークインタフェース1120が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1040などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ1040は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの種々のプロセッサである。メモリ1060は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス1080は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、または ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0042】
入出力インタフェース1100は、計算機1000と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。たとえば入出力インタフェース1100には、キーボードなどの入力装置や、ディスプレイなどの出力装置が接続される。入出力インタフェース1100が入力装置や出力装置に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0043】
ネットワークインタフェース1120は、計算機1000をネットワークに接続するためのインタフェースである。この通信網は、たとえば LAN(Local Area Network)や WAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1120がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0044】
計算機1000は、入出力インタフェース1100またはネットワークインタフェース1120を介して、第1制御部142および第2制御部162と接続されている。
【0045】
ストレージデバイス1080は、第1生成部170を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1040は、このプログラムモジュールをメモリ1060に読み出して実行することで、そのプログラムモジュールに対応する機能を実現する。
【0046】
第1生成部170は、測定装置10をコンプトンカメラとして機能させる。第1生成部170によって行われるイメージング処理の原理を以下に説明する。
【0047】
図6は、減衰体120、散乱体140、および吸収体160と、それらに入射するガンマ線20の経路との関係を例示する図である。この図では、一光子のガンマ線20による現象を示している。減衰体120に対し、散乱体140側とは反対側から入射したガンマ線20は、減衰体120を通過し、散乱体140内の点P
1で散乱される。点P
1の位置は、上述した散乱位置に相当する。散乱によってガンマ線20の進行方向は変わる。そして、散乱されたガンマ線20は、散乱体140から出て吸収体160内の点P
2に至り、点P
2で吸収される。点P
2の位置は、上述した吸収位置に相当する。
図6におけるx軸、y軸、およびz軸は、点P
1を原点とし、互いに直交する三軸である。xy平面は散乱体140の主面(入射面140a)に平行である。減衰体120、散乱体140および吸収体160はz方向に並んで配置されている。また、点P
2から点P
1に向かう方向を(θ,φ)で示し、コンプトン散乱の散乱角をαで示している。
【0048】
散乱体140で生じるのはガンマ線20のコンプトン散乱である。点P
1および点P
2の位置が特定された場合、ガンマ線20はコンプトンコーン42のいずれかの母線を到来経路として点P
1に至ったということが特定される。そして、対象平面40内におけるガンマ線20が通過した位置の候補(「候補位置」と呼ぶ。)は、コンプトンコーン42の円錐面と対象平面40との交点として求められる。
図6に示す楕円44のように、対象平面40内において複数の候補位置の集合は真円または楕円を描く。
【0049】
一方、対象平面40内における複数の候補位置のうち、どの候補位置を実際にガンマ線20が通過したかは特定できない。これに対して本実施形態に係る第1生成部170は、複数の候補位置のそれぞれに対して、ガンマ線20が通過した可能性の高さに基づく重み付けを行う。
【0050】
図7は、点P
1と、楕円44との位置関係を例示する図である。楕円44は、上述した通り、複数の候補位置の集合である。点P
Cは複数の候補位置のうちの一つである。
図7において、楕円44および点P
Cはxy平面に投影されている。
図8は、点P
1と点P
Cとの位置関係を例示する図である。
図8は、点P
1が散乱体140の最上面内に位置するとみなした場合の例を示している。
【0051】
ガンマ線20は、点PCから点P1に至るまでの間に減衰体120を通過する。ここで、上述した通り、減衰体120は、入射するガンマ線20を、入射角度に応じた確率で透過させる。詳しくは、上述した通り、減衰体120の入射面120aに対するガンマ線20の入射角度が大きいほど、ガンマ線20が減衰部122を通過する通過長さLが長く、ガンマ線20が減衰体120を通過する確率は低くなる。すなわち、点PCから点P1に至るまでの間に減衰部122内を通過すべき長さLが長いほど、ガンマ線20は点P1に至ることが難しくなる。言い換えると、ガンマ線20が点PCから点P1に至るまでの間に減衰部122内を通過すべき長さLが長いほど、その点PCを実際にガンマ線20が通過した可能性が低い。したがって、第1生成部170は、通過長さLを用いて、複数の候補位置のそれぞれに対して、ガンマ線20が通過した可能性の高さに基づく重み付けを行うことができる。通過長さLはたとえば、点PCと点P1とを結ぶ直線のうち減衰部122に重なる部分の長さであると言える。
【0052】
通過長さLは、点P
1と点P
Cとの位置関係を用いて導出されうる。また、通過長さLは、減衰部122のz方向の厚さT
1を用いて導出されうる。
図7および
図8の例において具体的に、点P
1を原点とした点P
Cの(x,y)座標が(x
C,y
C)であるとき、点P
Cのxy平面への投影点と点P
1との距離dは、d=√(x
C
2+y
C
2)で導出される。そして、通過長さLはL=√(d
2+T
1
2)で導出される。
【0053】
なお、
図8は、減衰体120の入射面120aを対象平面40とする例を示しているが、対象平面40はこの例に限定されない。対象平面40は、散乱体140より外側の任意の面であり得る。「散乱体140より外側」とは、散乱体140を基準として、減衰体120が位置する側を意味する。
【0054】
コンプトンコーン42の一つの母線がガンマ線20の一つの候補経路であるため、コンプトンコーン42の同一母線上において同一の重みを用いることができる。したがって、減衰体120の入射面120aを対象平面40としない場合にも、第1生成部170は各候補位置に対応するガンマ線20経路の、減衰体120の入射面120aにおける入射位置を特定した上で、同様に重みを算出してもよい。
【0055】
また、上述した通り、
図8では、点P
1が散乱体140の最上面内に位置するとみなした場合の例を示しているが、処理の例は本例に限定されない。たとえば、点P
1が散乱体140の厚さ方向の中心面内に位置するとみなしてもよい。その場合、上述した通過長さLの導出において、T
1の代わりに(T
1+T
2/2)を用いればよい。ここで、T
2は、散乱体140のz方向の厚さである。その他、点P
1が散乱体140の最下面内に位置するとみなしてもよい。その場合、上述した通過長さLの導出において、T
1の代わりに(T
1+T
2)を用いればよい。散乱体140において点P
1の三次元座標が特定可能である場合には、その三次元座標を用いて、通過長さLを導出すればよい。
【0056】
図9は、第1生成部170が行う処理の流れを例示するフローチャートである。第1生成部170は、対象平面40内でガンマ線20が通過した可能性がある候補位置の分布を特定する(S10)。S10において、第1生成部170は、そのガンマ線20の、散乱位置情報、吸収位置情報、第1放出エネルギー値、および第2放出エネルギー値を用いて候補位置の分布を特定することができる。また、第1生成部170は、通過長さLを複数の候補位置のそれぞれについて導出する(S20)。S20において第1生成部170は、分布に含まれる複数の候補位置のそれぞれと、そのガンマ線20の散乱体140での散乱位置との関係に基づいて、通過長さLを導出することができる。さらに第1生成部170は、そのガンマ線20が複数の候補位置のそれぞれを通過した可能性の高さを示す重みwを、通過長さLを用いて導出する(S30)。そして、第1生成部170は複数の候補位置と、複数の候補位置のそれぞれに対する重みwを用いて、第1分布情報を生成する(S40)。
【0057】
以下に詳しく説明する通り、第1生成部170は、測定装置10をコンプトンカメラとして動作させる。そこで、第1生成部170は、ガンマ線20が減衰部122を通過したと仮定される通過長さLを用いて、第1分布情報を生成する。具体的には、候補位置の分布のみならず、各候補位置の重みを示す第1分布情報を生成する。そうすることで、コンプトンカメラとしての測定精度が向上する。
【0058】
本実施形態に係る測定方法および第1生成部170が行う処理について、以下に詳しく説明する。第1生成部170は、たとえば200キロ電子ボルト(200keV)以上10メガ電子ボルト(10MeV)以下のエネルギーを有するガンマ線20(「高エネルギー帯のガンマ線20」と呼ぶ。)の検出結果に基づいて、第1分布情報を生成できる。言い換えると、第1生成部170は高エネルギー帯のガンマ線20の減衰体120への入射方向に関する第1分布情報を生成することができる。このようなエネルギー帯のガンマ線は、パラレルコリメータを透過するため、単一光子断層撮影(Single Photon Emission Computed Tomography:SPECT)装置では測定が難しい。したがって、本実施形態に係る測定装置10の使用が有益である。
【0059】
測定に先立ち、減衰体120、散乱体140、および吸収体160は、測定対象領域の方に減衰体120が向くように配置される。すなわち、測定対象領域と散乱体140との間に減衰体120が位置することとなる。たとえば、ガンマ線源が位置すると推定されるような領域を測定対象領域とする。測定装置10が核医学検査に用いられる場合には、測定対象領域は被験者の体の少なくとも一部である。
【0060】
また、測定装置10のユーザは、第1生成部170に対して対象平面40を特定するための操作を行う。測定装置10のユーザは、第1生成部170に対して、対象平面40を特定するための情報を入力してもよい。なお、対象平面40を特定するための操作は、測定後に事後的に行われてもよい。その場合、たとえば第1生成部170は仮に、減衰体120の入射面120aを対象平面40とみなして後述する処理を行ってもよい。その後、第1生成部170は、任意の対象平面40に対する出力データを生成可能である。ユーザは、たとえば計算機1000に接続されたキーボードやマウス等の入力装置を用いて、測定装置10に対する操作を行える。以下において同様である。
【0061】
測定中、測定対象領域から減衰体120へ複数のガンマ線20が入射する。減衰体120を通過したガンマ線20が散乱体140で散乱される。また、散乱体140から出射されたガンマ線20が、吸収体160で吸収される。なお、減衰体120に入射したガンマ線20の全てが減衰体120を通過するとは限らない。一部のガンマ線20は、減衰体120の内部で消失しうる。
【0062】
散乱体140では、ガンマ線20から散乱体140へのエネルギーの放出が検出される。第1生成部170は、散乱体140に接続された第1制御部142から、エネルギー放出の検出結果を示す信号を取得する。第1生成部170は、この信号を処理することで、各ガンマ線20について、散乱位置、第1放出エネルギー値、およびガンマ線20から散乱体140へのエネルギーの放出タイミングを特定する。第1生成部170は、散乱位置情報として、散乱位置の座標を特定する。
【0063】
たとえば上述したように散乱体140が検出器30である場合、第1生成部170は、第1制御部142から出力される信号におけるパルスを検出する。光電変換素子32ごとの位置情報(座標)は予め参照情報において定められており、第1生成部170は、パルスの出力源である光電変換素子32を特定し、参照情報において、その光電変換素子32に対応する位置情報を、散乱位置情報とする。また、第1生成部170は、検出したパルスの振幅の大きさに基づいて、第1放出エネルギー値を特定する。そして、第1生成部170は、検出したパルスのタイミングに基づいて、エネルギーの放出タイミングを特定する。
【0064】
吸収体160では、ガンマ線20から吸収体160へのエネルギーの放出が検出される。第1生成部170は、吸収体160に接続された第2制御部162から、エネルギー放出の検出結果を示す信号を取得する。第1生成部170は、この信号を処理することで、各ガンマ線20について、吸収位置、第2放出エネルギー値、およびガンマ線20から吸収体160へのエネルギーの放出タイミングを特定する。第1生成部170は、吸収位置情報として、吸収位置の座標を特定する。
【0065】
たとえば上述したように吸収体160が検出器30である場合、第1生成部170は、第2制御部162から出力される信号におけるパルスを検出する。光電変換素子32ごとの位置情報(座標)は予め参照情報において定められており、第1生成部170は、パルスの出力源である光電変換素子32を特定し、参照情報において、その光電変換素子32に対応する位置情報を、吸収位置情報とする。また、第1生成部170は、検出したパルスの振幅の大きさに基づいて、第2放出エネルギー値を特定する。そして、第1生成部170は、検出したパルスのタイミングに基づいて、エネルギーの放出タイミングを特定する。
【0066】
なお、第1生成部170が散乱位置情報、吸収位置情報、第1放出エネルギー値、第2放出エネルギー値、散乱体140におけるエネルギーの放出タイミング、および吸収体160におけるエネルギーの放出タイミングを特定する代わりに、他の装置において、これらの情報の少なくとも一部が生成(特定)されてもよい。そして、第1生成部170は、他の装置で生成された情報を取得してもよい。
【0067】
次いで、第1生成部170は、散乱体140におけるエネルギーの放出タイミングと吸収体160におけるエネルギーの放出タイミングとに基づいて、散乱位置情報、吸収位置情報、第1放出エネルギー値、および第2放出エネルギー値を互いに対応付ける。具体的には第1生成部170は、散乱体140におけるエネルギー放出のタイミングと吸収体160におけるエネルギー放出のタイミングとの差が、所定値Δt以下である場合、それらのエネルギー放出は、同一のガンマ線20によるものであるとみなす。すなわち、第1生成部170は、それらのエネルギー放出を検出して得られた散乱位置情報、吸収位置情報、第1放出エネルギー値、および第2放出エネルギー値を互いに対応付ける。ここで、所定値Δtはたとえば1マイクロ秒(1μs)以下である。
【0068】
第1生成部170は次いで、互いに対応付けられた散乱位置情報、吸収位置情報、第1放出エネルギー値、および第2放出エネルギー値を用いて、以下のように候補位置の分布を特定する(S10)。
【0069】
第1生成部170は、散乱位置情報および吸収位置情報を用いてコンプトンコーン42の軸の単位ベクトル(θ,φ)を導出する。単位ベクトル(θ,φ)は、吸収位置から散乱位置へ向かう方向の単位ベクトル(極座標)として得られる。
【0070】
また第1生成部170は、以下の式(1)を用いてcosαの値を算出する。mec2は電子の静止エネルギーであり、E1は第1放出エネルギー値であり、E2は第2放出エネルギー値である。αはコンプトン散乱の散乱角である。
【0071】
【0072】
ここで、散乱位置(点P1)を頂点とする円錐面(コンプトンコーン)の方程式は以下の式(2)で表される。点Pは円錐面上の点である。vベクトルは円錐の軸の単位ベクトルである。
【0073】
【0074】
また、単位ベクトル(θ,φ)を直交座標に変換すると以下の式(3)が成り立つ。
【0075】
【0076】
点P1を原点とし、対象平面40のz座標をztとした以下の式(4)を、式(3)とともに式(2)に代入すると、以下の式(5)が得られる。
【0077】
【0078】
第1生成部170は、式(5)の左辺と右辺の差が所定の閾値よりも小さい点(x,y,zt)を、円錐と対象平面40の交差する曲線上にある点、すなわち候補位置として特定する。このような候補位置は複数特定される。
【0079】
以上のようにして、第1生成部170は、複数の候補位置の位置を特定できる。すなわち、第1生成部170は、候補位置の分布を特定することができる。
【0080】
次いで、第1生成部170は、複数の候補位置のそれぞれに対して上述した通過長さLを導出する(S20)。第1生成部170は、散乱位置情報(点P
1)と、候補位置(点P
C)の座標と、減衰体120において減衰部122が占める領域を示す情報とを少なくとも用いて幾何的に通過長さLを導出できる。減衰体120において減衰部122が占める領域を示す情報は、たとえば、減衰部122の厚さT
1である。第1生成部170はさらに、散乱体140の厚さT
2を用いて通過長さLを導出してもよい。導出方法の一例は
図7および
図8を参照して上述した通りである。
【0081】
そして第1生成部170は、複数の候補位置のそれぞれに対して、導出した通過長さLを用い、重みwを導出する(S30)。ガンマ線20が通過厚さLを通過する可能性の高さは、線減弱係数μを用いてe-μLで表される。第1生成部170はたとえばe-μLを重みwとする。第1生成部170はe-μLにさらに何らかの係数等を乗じた値を重みwとしてもよい。eは自然数である。μは減衰部122を構成する物質と、ガンマ線20のエネルギーに依存する係数である。第1生成部170は、重みwの算出のために、予め定められたμの値を用いることができる。
【0082】
他の例として、散乱位置と候補位置との位置関係と、重みwとの関係を示す重み参照情報(たとえばテーブル)が予め準備されていてもよい。その場合、第1生成部170は、S10で複数の候補位置を特定した後、通過長さLを導出する代わりに、散乱位置情報と、候補位置の座標と、重み参照情報とを用いて重みwを特定してもよい。
【0083】
第1生成部170は、複数の候補位置のそれぞれに対して、算出した重みwを対応付けた情報を、第1分布情報として生成する(S40)。第1分布情報はたとえば、複数の位置座標(すなわち複数の候補位置の位置座標)のそれぞれに重みwが対応付けられた情報である。
【0084】
第1生成部170はさらに、減衰体120を透過する複数のガンマ線20のそれぞれについて第1分布情報を生成してもよい。そして、生成した複数の第1分布情報を累積させることで、累積分布情報を生成してもよい。この場合、対象平面40内の座標ごとに重みwが足し合わされる。情報を累積するガンマ線20の数は特に限定されないが、たとえば1000以上である。
【0085】
第1生成部170は、第1分布情報または累積分布情報の少なくとも一方を出力データとして出力できる。第1生成部170は、出力データをテーブル等の形態で出力してもよいし、画像として出力してもよい。画像では、重みwまたは重みwの累積値に応じた色や輝度で、分布が示されてもよい。また、第1生成部170は、出力データを、測定対象領域を撮影した画像と重ね合わせて出力してもよい。第1生成部170は、出力データを、第1生成部170を実現する計算機1000に接続されたディスプレイに表示させてもよいし、第1生成部170を実現する計算機1000のストレージデバイス1080または測定装置10の外部の記憶装置に保持させるよう出力してもよい。
【0086】
図10は、第1生成部170が生成する第1分布情報を示す画像を例示する図である。複数の候補位置の集合である楕円が表示されており、各候補位置について、重みwの大きさ、すなわち、尤もらしさが色で示されている。こうすることで、複数の候補位置に対し、重みwの大きさ、すなわち、尤もらしさが識別可能である。
【0087】
図11は、参考例に係る累積分布情報のイメージを例示する図である。
図12は、本実施形態に係る累積分布情報のイメージを例示する図である。
図11の参考例は、候補位置に対する重み付けがされない場合の例を示しており、各ガンマ線20に対する複数の候補位置(すなわち楕円)のすべてが一様に示されている。この場合、多くのガンマ線20について情報を蓄積しなければ、ガンマ線源が実際にどこに位置するのか(
図11中星印で示している。)を把握することができない。一方、本実施形態に係る累積分布情報は、可能性の高さに基づく重み付けがされているため、より少ない数のガンマ線20の情報からでも、尤もらしいガンマ線源の位置(
図12中星印で示している。)を把握できる。
【0088】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、入射するガンマ線20を、入射角度に応じた確率で透過させる減衰体120を用いることにより、候補位置について重み付けが可能となり、ガンマ線がどの方向から到来したかを簡便な構成で高精度に検出できる。
【0089】
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態に係る減衰体120を例示する斜視図である。本実施形態に係る測定装置10および測定方法は、以下に説明する点を除いて第1の実施形態に係る測定装置10および測定方法とそれぞれ同じである。
【0090】
本実施形態に係る減衰体120は、パラレルコリメータである。
図13の例において、減衰体120は、減衰部122の壁を複数有する。減衰部122の壁の厚さは、例えば0.1mm以上3mm以下である。減衰体120では、減衰部122の壁が格子状に設けられている。言い換えると、減衰体120では、減衰部122が、たとえば複数の四角形を描くように設けられている。これらの四角形の内側は空間であってよい。減衰体120には複数の貫通孔が設けられていると言える。貫通孔の形状(すなわち貫通孔の軸に垂直な断面の形状)は特に限定されず、たとえば三角形、四角形、六角形等の多角形であってもよいし、円形であってもよいし、楕円形であってもよい。
【0091】
後述する低エネルギー帯のガンマ線20については、減衰部122に入射せず、貫通孔を通過したガンマ線20のみが減衰体120を通過する。一方、減衰部122に入射したガンマ線20は、減衰部122で吸収され、減衰体120を透過しない。したがって、貫通孔を通過できる位置および角度で減衰体120へ入射した減衰体120のみが散乱体140に至る。一方、上述した高エネルギー帯のガンマ線20については、第1の実施形態で説明したのと同様、減衰体120は入射角度に応じた確率でガンマ線20透過させる。
【0092】
本実施形態に係る減衰体120において、互いに対向する減衰部122の壁の間の距離は、たとえば0.5mm以上5mm以下である。本実施形態に係る減衰体120の、入射面120aに垂直な方向の厚さはたとえば3mm以上15mm以下である。なお、減衰体120における減衰部122の壁と、検出器30におけるシンチレータ31や光電変換素子32との位置関係は特に限定されない。
【0093】
本実施形態によれば、減衰体120がパラレルコリメータであることにより、測定装置10を、SPECT装置としても機能させることができる。
【0094】
図14は、本実施形態に係る測定装置10の機能構成を例示する図である。本実施形態に係る測定装置10は、第2生成部180をさらに備える。第2生成部180は、散乱体140で吸収されたガンマ線20の、散乱体140での吸収位置情報を用いて、そのガンマ線20がどこから到来したかに関する到来情報を生成する。第2生成部180は、測定装置10を、SPECT装置として機能させる。
【0095】
第2生成部180を実現する計算機のハードウエア構成は、第1生成部170と同様に、たとえば
図5によって表される。ただし、第2生成部180を実現する計算機1000のストレージデバイス1080には、第2生成部180の機能を実現するプログラムモジュールが記憶されている。なお、第2生成部180を実現するための計算機1000は、第1生成部170を実現するための計算機1000を兼ねていてもよいし、別に設けられてもよい。
【0096】
第2生成部180は、たとえば20キロ電子ボルト(20keV)以上200キロ電子ボルト(200keV)以下のエネルギーを有するガンマ線20(「低エネルギー帯のガンマ線20」と呼ぶ)の検出結果に基づいて、到来情報を生成できる。言い換えると、第2生成部180は低エネルギー帯のガンマ線20がどこから到来したかに関する到来情報を生成することができる。すなわち、到来情報は、第1分布情報よりも低エネルギーのガンマ線20に関する情報であると言える。
【0097】
本実施形態では減衰体120がパラレルコリメータであるため、減衰体120に対して斜めに入射する上記のような低エネルギー帯のガンマ線20を遮蔽することができる。したがって、減衰体120の入射面120aに対し、およそ、その法線方向から入射したガンマ線20のみが減衰体120を通過し、散乱体140に入射する。そして、散乱体140に入射したガンマ線20が散乱体140で吸収される。すなわち、散乱体140は吸収体としても機能しうる。散乱体140に入射したガンマ線20は散乱体140を通過せず、すなわち散乱体140から出射されない。
【0098】
測定装置10をSPECT装置として機能させる場合の測定の流れを以下に詳しく説明する。測定に先立ち、減衰体120、散乱体140、および吸収体160は、測定対象領域の方に減衰体120が向くように配置される。すなわち、測定対象領域と散乱体140との間に減衰体120が位置することとなる。たとえば、ガンマ線源が位置すると推定されるような領域を測定対象領域とする。測定装置10が核医学検査に用いられる場合には、測定対象領域は被験者の体の少なくとも一部である。
【0099】
測定中、測定対象領域から減衰体120へ複数のガンマ線20が入射する。減衰体120を通過したガンマ線20が散乱体140で吸収される。なお、上述した通り、減衰体120に入射したガンマ線20の全てが減衰体120を通過するとは限らない。減衰体120に対して斜めに入射したガンマ線20は、減衰体120の内部で消失する。
【0100】
散乱体140では、ガンマ線20が散乱体140に吸収される際、ガンマ線20から散乱体140へのエネルギーの放出が検出される。第2生成部180は、散乱体140に接続された第1制御部142から、エネルギー放出の検出結果を示す信号を取得する。第2生成部180は、この信号を処理することで、各ガンマ線20について、散乱体減衰体120での吸収位置情報を特定する。具体的には第2生成部180は、第1生成部170が散乱位置情報を特定するのと同様にして、散乱体140での吸収位置情報として、散乱体140における吸収位置の座標を特定することができる。
【0101】
第2生成部180はさらに、第1生成部170が第1エネルギー値を特定するのと同様にして、ガンマ線20が散乱体140に吸収される際、ガンマ線20から散乱体140へ放出されるエネルギー(すなわち、吸収されるエネルギー)の大きさを特定する。第2生成部180は、このエネルギー値と、吸収位置情報とを互いに関連付ける。
【0102】
なお、ガンマ線20が散乱体140に吸収される際の、吸収位置情報、および吸収されるエネルギーの大きさを第2生成部180が特定する代わりに、他の装置において、これらの情報の少なくとも一方が生成(特定)されてもよい。そして、第2生成部180は、他の装置で生成された情報を取得してもよい。
【0103】
図15は、第2生成部180が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
【0104】
第2生成部180は、ガンマ線20が散乱体140に吸収される際の吸収位置情報を含む到来情報を生成する(S60)。第2生成部180は、この吸収位置情報そのものを到来情報とすることができる。
【0105】
または、第2生成部180は、散乱体140に吸収されたエネルギーが、予め定められた対象エネルギー帯域内であるか否かを判定してもよい。ここで対象エネルギー帯域は、どこから到来したかに関する情報を得たいガンマ線20のエネルギー帯域に応じて定めることができる。散乱体140に吸収されたエネルギーが、対象エネルギー帯域内である場合、第2生成部180は、そのエネルギーに対応付けられた吸収位置情報を到来情報とする。一方、散乱体140に吸収されたエネルギーが、対象エネルギー帯域内でない場合、第2生成部180は、そのエネルギーに関連付けられた吸収位置情報を到来情報とはしない。そうすることで、所望のエネルギー帯のガンマ線20について情報を得ることができる。
【0106】
第2生成部180はさらに、減衰体120を透過する複数のガンマ線20のそれぞれについて到来情報を生成してもよい。そして、生成した複数の到来情報を累積させることで、累積到来情報を生成してもよい。具体的には第2生成部180は、座標ごとに、検出されたガンマ線20の数(到来情報の数)を足し合わせる。累積到来情報としては、ガンマ線がどこから到来したかに関する分布が得られる。情報を累積するガンマ線20の数は特に限定されないが、たとえば1000以上である。
【0107】
第2生成部180は、到来情報または累積到来情報の少なくとも一方を出力データとして出力できる。第2生成部180は、出力データをテーブル等の形態で出力してもよいし、画像として出力してもよい。画像では、ガンマ線20の累積数に応じた色や輝度で、分布が示されてもよい。また、第2生成部180は、出力データを、測定対象領域を撮影した画像と重ね合わせて出力してもよい。第2生成部180は、出力データを、第2生成部180を実現する計算機1000に接続されたディスプレイに表示させてもよいし、第2生成部180を実現する計算機1000のストレージデバイス1080または測定装置10の外部の記憶装置に保持させるよう出力してもよい。
【0108】
本実施形態に係る測定装置10では、測定装置10をコンプトンカメラとして機能させるか、SPECT装置として機能させるかが、切り替え可能である。すなわち、本実施形態に係る測定装置10では、第1生成部170が処理を行って、第1分布情報を生成するか、第2生成部180が処理を行って、到来情報を生成するかが切り替え可能である。たとえば、ユーザが測定装置10に対して所定の操作を行うことで、第1分布情報を生成するか、到来情報を生成するかを切り替えることができる。
【0109】
本実施形態に係る第1生成部170が行う処理について以下に説明する。本実施形態に係る第1生成部170が行う処理は、通過長さLを導出する方法を除いて第1の実施形態に係る第1生成部170が行う処理と同じである。
【0110】
図16は、本実施形態に係る減衰部122と、散乱位置(点P
1)、および候補位置(点P
C)の関係を示す図である。
図16において、楕円44および点P
Cはxy平面に投影されている。
図16において、減衰部122の壁を縦横の直線で示している。また、複数の候補位置の集合を楕円で示しており、点P
Cは一つの候補位置である。
【0111】
本実施形態に係る第1生成部170は、散乱位置と、候補位置と、減衰部122の構造とに基づいて、ガンマ線20が減衰部122を通過する通過長さLを導出する。減衰部122の構造を示す情報は、予め定められている。減衰部122の構造を示す情報には、減衰部122の複数の壁の位置(たとえば間隔)および壁の厚さを示す情報が含まれる。本実施形態において、第1生成部170は、ガンマ線20が通過する壁の数を、散乱位置と、候補位置と、減衰部122の複数の壁の位置に基づいて導出する。そして第1生成部170は、減衰部122の壁の厚さに、ガンマ線20が通過する壁の数を乗ずることにより、通過長さLを導出できる。
図16の例では、ガンマ線20が点P
Cから点P
1に至るまでの間に、縦方向に1つ、横方向に2つの壁を通過する。したがって、ガンマ線20が通過する壁の数は3つである。第1生成部170は、減衰部122の壁の厚さに3を乗じて得られる値を、その候補位置の通過長さLとする。第1生成部170は、第1の実施形態と同様に通過長さLを用いて重みwを導出する。
【0112】
本実施形態においても、他の例として、散乱位置と候補位置との位置関係と、重みwとの関係を示す重み参照情報(たとえばテーブル)が予め準備されていてもよい。その場合、第1生成部170は、S10で複数の候補位置を特定した後、通過長さLを導出する代わりに、散乱位置情報と、候補位置の座標と、重み参照情報とを用いて重みwを特定してもよい。
【0113】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態においては第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。加えて、本実施形態によれば、減衰体120がパラレルコリメータであることにより、測定装置10を、低エネルギー帯のガンマ線20を測定可能なSPECT装置としても機能させることができる。
【実施例】
【0114】
以下、本実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0115】
(実施例1)
実施例1では、第2の実施形態に係る測定方法で測定を行った。
【0116】
図17は、実施例1に係る測定構成を示す図である。筐体91の内部に散乱体140および吸収体160を配置し、筐体91の上に減衰体120を配置した。すなわち、減衰体120と散乱体140との間には、筐体91の上面を構成する板(樹脂製)が介在していた。減衰体120と散乱体140との間隔は4mm程度であった。減衰体120としては、
図13に示したようなパラレルコリメータ(タングステン製、Z方向における厚み5mm、格子状に設けられた壁の厚さ1.5mm、格子状に設けられた壁の間隔0.5mm)を用いた。散乱体140および吸収体160としてはそれぞれ第1の実施形態で説明したような検出器30を用いた。シンチレータ31としてはGAGG:Ceシンチレータ結晶を用いた。
【0117】
また、減衰体120の上にガンマ線源92を配置した。ガンマ線源92としては133Ba(356keV)を用いた。減衰体120の中心と、ガンマ線源92の中心との距離は2cmであった。
【0118】
第2の実施形態に係る第1生成部170が行う処理によって、
図18に示す累積分布情報を得た。
図18に示す累積分布情報が得られたときの撮影時間は10分間であり、検出したイベント数(ガンマ線の数)は12000であった。この図に示すように、測定装置10によりガンマ線源92の位置が検出された。なお、
図18においては、ガンマ線源92の下面を含む平面を対象平面とし、減衰体120の中心を原点としたXY平面を示している。後の
図19、
図20、
図22、
図23、および
図24においても同様である。
【0119】
(比較例1)
減衰体120を用いず、複数の候補位置のそれぞれに対する重みづけを行わなかった点を除き、実施例1と同様にして測定を行った。すなわち、筐体91の上にガンマ線源92を直接配置し、得られた複数の位置候補を一様に扱った。そうして得られた、複数のガンマ線の候補位置の分布データを累積させて
図19を得た。
図19に示す累積分布情報が得られたときの撮影時間は10分間であり、検出したイベント数(ガンマ線の数)は24000であった。
【0120】
図20は、
図18および
図19のそれぞれに示した累積分布情報の、プロファイルである。
図18および
図19のそれぞれに示すイメージの、Y=-1.5mmからY=6mmまでの範囲内における画素値を、X座標ごとに積算して得られた値を、
図20にプロットした。
図20から、実施例1において、比較例1よりも鋭いピークが得られ、高いS/N比で測定できたことが確認された。
【0121】
(実施例2)
ガンマ線源92を二つ減衰体120上に配置した点を除き、実施例1と同様にして測定を行った。
【0122】
図21は、実施例2に係る測定構成を示す図である。二つのガンマ線源92の中心間距離は5cmであった。また、二つのガンマ線源92間の中心と減衰体120の中心とを一致させた。
図21における右のガンマ線源92は、左のガンマ線源92の2倍程度のガンマ線強度を有していた。
【0123】
第2の実施形態に係る第1生成部170が行う処理によって、
図22に示す累積分布情報を得た。
図22に示す累積分布情報が得られたときの撮影時間は10分間であり、検出したイベント数(ガンマ線の数)は11000であった。この図に示すように、測定装置10により二つのガンマ線源92の位置が検出された。
【0124】
(比較例2)
減衰体120を用いず、複数の候補位置のそれぞれに対する重みづけを行わなかった点を除き、実施例2と同様にして測定を行った。用いたガンマ線源およびそれらの配置は実施例2と同じであった。
【0125】
比較例1と同様に、得られた複数の位置候補を一様に扱って、
図23に示す累積分布情報を得た。
図23に示す累積分布情報が得られたときの撮影時間は10分間であり、検出したイベント数(ガンマ線の数)は20000であった。
【0126】
図24は、
図22および
図23のそれぞれに示した累積分布情報の、プロファイルである。
図22および
図23のそれぞれに示すイメージの、Y=-1.5mmからY=6mmまでの範囲内における画素値を、X座標ごとに積算して得られた値を、
図24にプロットした。
図24から、実施例2において、比較例2よりも二つのピークが明確に分離され、高いS/N比で測定できたことが確認された。
【0127】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。たとえば、上述の説明で用いたシーケンス図やフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0128】
10 測定装置
20 ガンマ線
30 検出器
31 シンチレータ
32 光電変換素子
40 対象平面
42 コンプトンコーン
44 楕円
91 筐体
92 ガンマ線源
120 減衰体
122 減衰部
140 散乱体
142 第1制御部
160 吸収体
162 第2制御部
170 第1生成部
180 第2生成部
1000 計算機
1020 バス
1040 プロセッサ
1060 メモリ
1080 ストレージデバイス
1100 入出力インタフェース
1120 ネットワークインタフェース
【要約】
測定装置(10)は、減衰体(120)、散乱体(140)、および吸収体(160)を備える。減衰体(120)は、入射するガンマ線(20)を、入射角度に応じた確率で透過させる。散乱体(140)は、減衰体(120)を透過したガンマ線(20)の少なくとも一部を散乱させる。吸収体(160)は、散乱体(140)で散乱されたガンマ線(20)の少なくとも一部を吸収する。また、一例において第1生成部は、ガンマ線(20)の散乱位置情報、吸収位置情報、第1放出エネルギー値、および第2放出エネルギー値を用いて、そのガンマ線(20)の減衰体(120)への入射方向に関する第1分布情報を生成する。